断層画像処理方法、装置およびプログラムならびにこれを用いた光断層画像化システム
【課題】光トモグラフィー計測により得られる断層画像の分解能の劣化を防止する。
【解決手段】光Lを射出したときに得られる干渉信号ISが異なる波長帯域毎に複数分割され、複数の分割干渉信号IS1〜IS4が取得される。そして、複数の複数の干渉信号IS1〜IS4についてそれぞれスペクトル解析が行われ、複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)が取得される。この複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)を用いて断層情報r(z)が取得され、断層情報r(z)に基づき断層画像Pが生成され表示される。
【解決手段】光Lを射出したときに得られる干渉信号ISが異なる波長帯域毎に複数分割され、複数の分割干渉信号IS1〜IS4が取得される。そして、複数の複数の干渉信号IS1〜IS4についてそれぞれスペクトル解析が行われ、複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)が取得される。この複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)を用いて断層情報r(z)が取得され、断層情報r(z)に基づき断層画像Pが生成され表示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OCT(Optical Coherence Tomography)計測により光断層画像を生成する断層画像処理方法、装置およびプログラムならびにこれを用いた断層画像化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生体組織の光断層画像を生成する際に、OCT計測を利用した光断層画像取得装置が用いられることがある。この光断層画像取得装置では、光源から射出された低コヒーレント光を測定光と参照光とに分割した後、該測定光が測定対象に照射されたときの測定対象からの反射光と参照光とを合波し、該反射光と参照光との干渉光の強度に基づいて光断層画像を生成する。上記のような光断層画像取得装置では、参照光の光路長を変更することにより、測定対象に対する深さ方向の位置(以下、深さ位置という)を変更し光断層画像を生成するTD−OCT(Time domain OCT)計測を利用した装置がある。
【0003】
また、近年では、上述した参照光の光路長を変更することなく高速に光断層画像を生成するFD−OCT(フーリエドメイン−OCT)計測を利用したOCT装置が提案されている。このFD−OCT(フーリエドメイン−OCT)計測として、所定の波長帯域を有する低コヒーレント光をマイケルソン型干渉計等を用いて断層画像を取得するSD−OCT(Spectral Domain OCT)計測と、SS−OCT(Swept source OCT)計測とがある(特許文献1〜3、非特許文献1参照)。このうち、SS−OCT計測においては、光源から射出されるレーザ光の周波数を掃引させて反射光と参照光とを各波長において干渉させ、一連の波長に対する干渉スペクトルをフーリエ変換することにより測定対象の深さ位置における反射光強度を検出し、これを用いて光断層画像を構成するようになっている。
【0004】
ここで、上述したSS−OCT計測において、掃引する波長は揺らぐため1周期の掃引波長のタイミングが常に一定とは限らない。そこで、特許文献3のように観測された干渉信号が波数kについて等間隔になるように干渉信号を信号変換することが提案されている。
【特許文献1】特開2006−132996号公報
【特許文献2】特開2005−283155号公報
【特許文献3】米国第5956355号明細書
【非特許文献1】Yoshiaki Yasuno, Violeta Dimitrova Madjarova and Shuichi Makita, "Three-dimensional and high-speed swept-source optical coherence tomography for in vivo investigation of human anterior eye segments," OPTICS EXPRESS 2005 Vol. 13, No. 26.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した干渉信号をスペクトル解析により所定の深さ位置における反射情報を得るためには干渉信号が波数kについて等間隔に配列されている必要がある。しかし、干渉信号ISが波数kにおいて等間隔に配列されていない場合、断層画像の分解能の低下が生じてしまう。この分解能の低下を抑えるために、特許文献3において、予め光源ユニットの波長掃引特性を記憶しておき、この波長掃引特性に基づいて波数kについて等間隔になるように干渉信号のデータ列を再配列している。
【0006】
この特許文献3においては、掃引される周波数が時間に対して線形に変化しない場合で、かつ、変化の仕方に再現性がある場合を前提として、波数kについて等間隔になるように干渉信号のデータ列を再配列するものである。しかし、実際には上記前提のように光源ユニットがどの周期においても同じ波長掃引特性をもって波長を掃引することは困難であり、動作環境等により各周期毎に波長が揺らぐ場合がある。このような波長の揺らぎがある場合、上述のような信号変換を行ったとしても、波数kにおいて等間隔に再配列することはできず、分解能が低下してしまう場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、断層画像の分解能を向上させることができる断層画像処理方法、装置プログラムならびに光断層画像化システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光断層画像処理方法は、所定の波長帯域の光を射出し、射出した光を測定光と参照光とに分割し、測定光が測定対象の各深さ位置において反射したときの反射光と参照光とを合波し、合波した反射光と参照光との干渉光を干渉信号として検出したときに、干渉信号から断層画像を生成する断層画像処理方法であって、光が射出されたときに検出される干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成し、生成した複数の分割干渉信号をそれぞれ解析することにより測定対象の各深さ位置の断層情報を中間断層情報として複数取得し、取得した複数の中間断層情報を用いて測定対象の断層情報を取得し、取得した断層情報を用いて測定対象の断層画像を生成することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の光断層画像処理装置は、所定の波長帯域の光を射出し、射出した光を測定光と参照光とに分割し、測定光が測定対象の各深さ位置において反射したときの反射光と参照光とを合波し、合波した反射光と参照光との干渉光を干渉信号として検出したときに、干渉信号から断層画像を生成する断層画像処理装置であって、光が射出されたときに検出される干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成する干渉信号分割手段と、干渉信号分割手段により生成された複数の分割干渉信号をそれぞれ解析することにより測定対象の各深さ位置の断層情報を中間断層情報として複数取得する干渉信号解析手段と、干渉信号解析手段において取得された複数の中間断層情報を用いて測定対象の断層情報を取得する断層情報取得手段と、断層情報取得手段により取得された断層情報を用いて測定対象の断層画像を生成する断層画像生成手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の光断層画像処理プログラムは、所定の波長帯域の光を射出し、射出した光を測定光と参照光とに分割し、測定光が測定対象の各深さ位置において反射したときの反射光と参照光とを合波し、合波した反射光と参照光との干渉光を干渉信号として検出したときに、コンピュータに、光が射出されたときに検出される干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成し、生成した複数の分割干渉信号をそれぞれ解析することにより測定対象の各深さ位置の断層情報を中間断層情報として複数取得し、取得した複数の中間断層情報を用いて測定対象の断層情報を取得し、取得した断層情報を用いて測定対象の断層画像を生成することを実行させることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の光断層画像化システムは、所定の波長帯域の光を射出する光源ユニットと、光源ユニットから射出された光を測定光と参照光とに分割する光分割手段と、光分割手段により分割された測定光が測定対象の各深さ位置において反射したときの反射光と参照光とを合波する合波手段と、合波手段により合波された反射光と参照光との干渉光を干渉信号として検出する干渉光検出手段と、干渉光検出手段により検出された干渉信号から測定対象の断層情報を取得し測定対象の断層画像を生成する断層画像処理手段とを備え、断層情報処理手段が、干渉光検出手段により検出された干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成する干渉信号分割手段と、干渉信号分割手段により分割された複数の前記分割干渉信号をそれぞれ解析することにより測定対象の各深さ位置の断層情報を中間断層情報として複数取得する干渉信号解析手段と、干渉信号解析手段において取得された複数の中間断層情報を用いて測定対象の断層情報を取得する断層情報取得手段と、断層情報取得手段により取得された断層情報を用いて測定対象の断層画像を生成する断層画像生成手段とを備えたものであることを特徴とするものである。
【0012】
ここで、反射光とは、測定対象からの反射光および後方散乱光を意味する。
【0013】
また、干渉信号解析手段は、干渉信号から各深さ位置における断層情報を取得するものであればその方法は問わず、たとえばフーリエ変換処理、最大エントロピー法、Yule−Walker法等のスペクトル解析により断層情報を取得するようにしてもよい。
【0014】
干渉信号分割手段は、分割干渉信号の波長帯域幅が略同一になるように分割するものであってもよいし、それぞれ異なる波長帯域幅になるように干渉信号を分割するようにしてもよい。
【0015】
さらに、干渉信号分割手段は、分割干渉信号の波長帯域がそれぞれ重複するように分割するものであってもよいし、分割したときの干渉信号が重複しないものであっても良い。
【0016】
また、断層情報取得手段は、複数の中間断層情報を用いて断層情報を取得するものであればその手法は問わず、たとえば複数の中間断層情報の平均値を算出することにより断層情報を取得するようにしても良いし、複数の中間断層情報を重み付け加算することにより断層情報を取得するようにしても良い。あるいは、断層情報取得手段が、複数の中間断層情報の平均値を算出し、平均値から最も離れた値を有する中間断層情報を除く複数の中間断層情報の平均値を算出することにより断層情報を取得するものであってもよい。さらには、断層情報取得手段が、複数の中間断層情報の平均値を算出し、平均値に近いほど重み付けが大きくなるように、各中間断層情報に重み付け加算を行うことにより断層情報を取得するものであってもよい。もしくは、断層情報取得手段は、複数の中間断層情報の平均値および分散値を算出し、複数の中間断層情報のうち、中間断層情報と平均値との差が分散値よりも小さい中間断層情報を抽出し、抽出した中間断層情報を用いて断層情報を取得するものであってもよい。
【0017】
さらに、光が掃引されたときに得られる時間変化に対する干渉信号もしくは分割干渉信号を、光の波長が掃引されたときの波数変化に対する干渉信号に変換する干渉信号変換手段をさらに備えたものであってもよい。このとき、干渉信号解析手段が、干渉信号変換手段により変換された干渉信号を解析することにより測定対象の各深さ位置の断層情報を中間断層情報として複数取得することになる。なお、干渉信号分割手段は干渉信号変換手段により変換された干渉信号を分割して分割干渉信号を生成するようにしてもよいし、干渉信号分割手段が複数の分割干渉信号を生成した後、各分割干渉信号についてそれぞれ干渉信号変換手段による変換が行われるようにしても良い。
【0018】
なお、光源ユニットは波長帯域内において波長を掃引しながら周期的に光を射出するものであって、いわゆるSS−OCT計測により断層画像を取得するものであってもよい。このとき、干渉信号分割手段は光が1周期分射出されたときに検出される干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成する。あるいは、光源ユニットが、所定の波長帯域からなる低コヒーレンス光を周期的に射出するものであって、いわゆるSD−OCT計測により断層画像を取得するものであっても良い。このときも、干渉信号分割手段は、光が1周期分射出されたときに検出される干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光断層画像化装置によれば、所定の波長帯域の光を射出し、射出した光を測定光と参照光とに分割し、測定光が測定対象の各深さ位置において反射したときの反射光と参照光とを合波し、合波した反射光と参照光との干渉光を干渉信号として検出したときに、干渉信号から断層画像を生成する断層画像処理方法であって、光が射出されたときに検出される干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成し、生成した複数の分割干渉信号をそれぞれ解析することにより測定対象の各深さ位置の断層情報を中間断層情報として複数取得し、取得した複数の中間断層情報を用いて測定対象の断層情報を取得し、取得した断層情報を用いて測定対象の断層画像を生成することにより、射出される光の波長に揺らぎが生じて、断層画像処理手段において想定されている干渉信号の波長帯域と実際に射出された光の波長帯域との間にずれが生じた場合であっても、複数の中間断層情報を用いて揺らぎの影響を最小限にした断層情報を取得し断層画像を生成することができるため、分解能を向上させることができる。
【0020】
なお、干渉信号分割手段が分割干渉信号の波長帯域幅が略同一になるように干渉信号を分割したとき、各分割干渉信号を解析するときに同一のアルゴリズムを用いることができるため、効率よく各分割干渉信号の解析を行うことができる。
【0021】
また、干渉信号分割手段が分割干渉信号の波長帯域がそれぞれ重複するように分割するものであるとき、解析しない波長帯域が発生するのを防止して分解能を向上させることができる。
【0022】
さらに、断層情報取得手段が、複数の中間断層情報の平均値を算出することにより断層情報を取得するとき、各干渉信号に含まれるノイズ成分等を相殺して分解能を向上させることができる。
【0023】
また、断層情報取得手段が、複数の中間断層情報の平均値を算出し、平均値から最も離れた値を有する中間断層情報を除く複数の中間断層情報の平均値を算出することにより断層情報を取得する場合、あるいは、複数の中間断層情報の平均値を算出し、平均値に近いほど重み付けが大きくなるように、各中間断層情報に重み付け加算を行うことにより断層情報を取得する各干渉信号に含まれるノイズ成分等を相殺して分解能を向上させることができる。特に、ある波長帯域の干渉信号が大きなノイズ成分を有しているときに、ノイズ成分の大きい中間断層情報を除外して断層情報を取得することができるため、より分解能を向上させることができる。
【0024】
干渉信号もしくは分割干渉信号を、光の波長が掃引されたときの波数変化に対する干渉信号もしくは分割干渉信号に変換する干渉信号変換手段をさらに備えているとき、スペクトル解析するときの前提となる波数変化に対する干渉信号へ変換するときに、光源ユニットの波長掃引特性に基づいて変換することができるため、分解能の向上を図ることができる。
【0025】
なお、光が、波長帯域内において波長を掃引しながら周期的に射出されるものであり、干渉信号分割手段が、光が1周期分射出されたときに検出される干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成するものであるときのような、いわゆるSS−OCT計測により断層画像を取得するときであっても、上述のような分解能の向上を図ることができる。
【0026】
光が、所定の波長帯域からなる低コヒーレンス光を周期的に射出されるものであり、干渉信号分割手段が、光が1周期分射出されたときに検出される干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成するものであるときのような、いわゆるSD−OCT計測により断層画像を取得するときであっても、上述のような分解能の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の光断層画像化システムの実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の光断層画像化システムの好ましい実施の形態を示す概略図である。光断層画像化システム1は、体腔内に光プローブ10を挿入することにより、体腔内の生体組織や細胞等の測定対象Sの断層画像をSS−OCT(Swept source OCT)計測により取得するものである。この光断層画像化システム1は、光プローブ10、干渉計20、光源ユニット30、周期クロック生成手段80、A/D変換ユニット90、断層画像処理手段100、表示装置110等を有している。
【0028】
図2は図1の光プローブ10の先端部分の一例を示す模式図である。図2の光プローブ10は、たとえば鉗子口を介して体腔内に挿入されるものであって、プローブ外筒(シース)11、光ファイバ12、光学レンズ15等を有している。プローブ外筒11は、可撓性を有する筒状の部材からなっており、測定光L1および反射光L3が透過する材料からなっている。なお、プローブ外筒11は先端がキャップ11aにより閉塞された構造を有している。
【0029】
光ファイバ12は、干渉計20から射出された測定光L1を測定対象Sまで導波するとともに、測定光L1が測定対象Sに照射されたときの測定対象Sからの反射光(後方散乱光)L3を干渉計20まで導波するものであって、プローブ外筒11内に収容されている。また光ファイバ12の外周側にはバネ13が固定されており、光ファイバ12およびバネ13は回転駆動ユニット10Aに機械的に接続されている。そして、光ファイバ12およびバネ13は回転駆動ユニット10Aによりプローブ外筒11に対し矢印R1方向に回転するようになっている。なお、回転駆動ユニット10Aは回転エンコーダを具備しており(図示せず)、回転制御手段10Bは回転エンコーダからの信号に基づいて測定光L1の照射位置を認識するようになっている。
【0030】
光学レンズ15は、光ファイバ12から射出した測定光L1を測定対象Sに対し集光するために略球状の形状を有しており、測定対象Sからの反射光L3を集光し光ファイバ12に入射する。ここで、光学レンズ15の焦点距離は、たとえば光ファイバ12の光軸LPからプローブ外筒の径方向に向かって距離D=3mmの位置に形成されている。光学レンズ15は光ファイバ12の光出射端部に固定部材14を用いて固定されており、光ファイバ12が矢印R1方向に回転したとき、光学レンズ15も一体的に矢印R1方向に回転する。よって、光プローブ10は、測定対象Sに対し光学レンズ15から射出される測定光L1を矢印R1方向(プローブ外筒11の円周方向)に対し走査しながら照射することになる。
【0031】
図1の光ファイバ12および光学レンズ15を回転させる回転駆動ユニット10Aの動作は回転制御手段10Bにより制御されており、回転制御手段10Bはたとえば約20Hzでプローブ外筒11に対し矢印R1方向に回転するように制御する。そして、回転制御手段10Bは回転駆動ユニット10Aの回転エンコーダからの信号に基づき光ファイバ12が1回転したと判断したとき、回転クロック信号RCLKを断層画像処理手段100に出力するようになっている。
【0032】
図3は光源ユニット30の一例を示す模式図である。光源ユニット30は、波長を周期T0で掃引させながらレーザ光Lを射出するものである。具体的には、光源ユニット30は、半導体光増幅器(半導体利得媒質)311と光ファイバFB30とを有しており、光ファイバFB30が半導体光増幅器311の両端に接続された構造を有している。半導体光増幅器311は駆動電流の注入により微弱な放出光を光ファイバFB30の一端側に射出するとともに、光ファイバFB30の他端側から入射された光を増幅する機能を有している。そして、半導体光増幅器311に駆動電流が供給されたとき、半導体光増幅器311および光ファイバFB30により形成される光共振器によりパルス状のレーザ光Lが光ファイバFB30へ射出されるようになっている。
【0033】
さらに、光ファイバFB30には光分岐器312が結合されており、光ファイバFB30内を導波する光の一部が光分岐器312から光ファイバFB31側へ射出されるようになっている。光ファイバFB31から射出した光はコリメータレンズ313、回折格子素子314、光学系315を介して回転多面鏡(ポリゴンミラー)316において反射される。そして反射された光は光学系315、回折格子素子314、コリメータレンズ313を介して再び光ファイバFB31に入射される。
【0034】
ここで、この回転多面鏡316は矢印R30方向に回転するものであって、各反射面の角度が光学系315の光軸に対して変化するようになっている。これにより、回折格子素子314において分光された光のうち、特定の波長帯域の光だけが再び光ファイバFB31に戻るようになる。この光ファイバFB31に戻る光の波長は光学系315の光軸と反射面との角度によって決まる。そして光ファイバFB31に入射した特定の波長の光が光分岐器312から光ファイバFB30に入射され、特定の波長のレーザ光Lが光ファイバFB1a側に射出されるようになっている。
【0035】
したがって、回転多面鏡316が矢印R30方向に等速で回転したとき、再び光ファイバFB1aに入射される光の波長λは、時間の経過に伴って周期的で変化することになる。具体的には、図4に示すように、光源ユニット30は最小掃引波長λminから最大掃引波長λmaxまで波長を一定の周期T0(たとえば約50μsec)で掃引した光Lを射出する。そして、光源ユニット30から射出された光Lは、光ファイバカプラ等からなる光分岐手段2により、光ファイバFB1b、FB1cにそれぞれ分岐され、干渉計20および周期クロック生成手段80にそれぞれ入射される。
【0036】
なお、光源ユニット30としてポリゴンミラーを回転させることにより波長を掃引させる場合について例示しているが、たとえばASE光源ユニット等のような公知の技術により周期的に波長を掃引させながら射出するようにしても良い。
【0037】
図5は図1の光断層画像化システム1における干渉計20の一例を示す模式図である。干渉計20はマッハツェンダー型の干渉計であって、筐体20Aに各種光学部品を収容することにより構成されている。干渉計20は、光源ユニット30から射出された光Lを測定光L1と参照光L2とに分割する光分割手段3と、光分割手段3により分割された測定光L1が測定対象Sに照射されたときの測定対象Sからの反射光L3と参照光L2とを合波する合波手段4と、合波手段4により合波された反射光L3と参照光L2との干渉光L4を検出する干渉光検出手段70とを備えている。なお、干渉計20と光源ユニット30とはAPC(Angled physical contact)コネクタを用いて接続されている。APCコネクタを用いることにより光コネクタ(光ファイバ)の接続端面からの反射戻り光を極限にまで低減し、断層画像Pの画質劣化を防止することができる。
【0038】
光分割手段3は、たとえば2×2の光ファイバカプラからなっており、光源ユニット30から光ファイバFB1cを導波した光Lをそれぞれ測定光L1と参照光L2とに分割する。このとき、光分割手段3は、たとえば測定光L1:参照光L2=99:1の割合で分割する。光分割手段3は、2つの光ファイバFB2、FB3にそれぞれ光学的に接続されており、分割された測定光L1は光ファイバFB2側に入射され、参照光L2は光ファイバFB3側に入射されるようになっている。
【0039】
光ファイバFB2には光サーキュレータ21が接続されており、光サーキュレータ21には光ファイバFB4、FB5がそれぞれ接続されている。光ファイバFB4には測定光L1を測定対象Sまで導波する光プローブ10が接続されており、光プローブ10から射出した測定光L1は光ファイバFB2から光プローブ10へ導波され、測定対象Sに照射される。また、測定対象Sを反射した反射光L3は光ファイバFB4を介して光サーキュレータ21に入射され、光サーキュレータ21から光ファイバFB5側に射出されるようになっている。なお、光ファイバFB4と光プローブ10とはAPC(Angled physical contact)コネクタを用いて接続されており、光コネクタ(光ファイバ)の接続端面からの反射戻り光を極限にまで低減し、断層画像Pの画質劣化を防止するようになっている。
【0040】
一方、光ファイバFB3には光サーキュレータ22が接続されており、光サーキュレータ22には光ファイバFB6、FB7がそれぞれ接続されている。光ファイバFB6には、断層画像の取得領域を調整するために参照光L2の光路長を変更する光路長調整手段40が接続されている。光路長調整手段40は、光路長を粗調整する光路長粗調整用光ファイバ40Aと、光路長を微調整する光路長微調整手段40Bとを有している。
【0041】
光路長粗調整用光ファイバ40Aは、一端側が光ファイバFB2に対し着脱可能に接続されており、他端側が光路長微調整手段40Bに着脱可能に接続されている。光路長粗調整用光ファイバ40Aは予め異なる長さのものが複数用意されており、必要に応じて適切な長さの光路長粗調整用光ファイバ40Aが適宜取り付けられる。なお、この光路長粗調整用光ファイバ40Aは、光ファイバFB6および光路長微調整手段40BとAPC(Angled physical contact)コネクタを用いて接続されており、光コネクタ(光ファイバ)の接続端面からの反射戻り光を極限にまで低減し、断層画像Pの画質劣化を防止するようになっている。
【0042】
光路長微調整手段40Bは、反射ミラー43、光ターミネータ44等を有している。反射ミラー43は、光路長粗調整用光ファイバ40Aから射出された参照光L2を光ターミネータ44側に反射するとともに、光ターミネータ44から反射した参照光L2を再び光路長粗調整用光ファイバ40A側に反射するものである。反射ミラー43はこの反射ミラー43は可動ステージ(図示せず)上に固定されており、ミラー移動手段により参照光L2の光軸方向(矢印A方向)に移動することにより、参照光L2の光路長が変更する。この可動ステージは医師等により、光路長調整操作部46が操作されることにより反射ミラー43を矢印A方向に移動させるようになっている。
【0043】
さらに、光ファイバFB7には偏波コントローラ50が光学的に接続されている。この偏波コントローラ50は参照光L2の偏波方向を回転させる機能を有している。なお偏波コントローラ50としてたとえば特開2001−264246号公報等の公知の技術を用いることができる。偏波コントローラ50は、医師等により偏波調整操作部51が操作されることにより偏波方向を調整するようになっており、たとえば反射光L3と参照光L2とが合波手段4において合波されるときにそれぞれの偏波方向が一致するように偏波調整操作部51を操作することにより、断層画像が鮮明になるように調整することができる。
【0044】
合波手段4は、2×2の光ファイバカプラからなり、光ファイバFB5を導波した反射光L3と光ファイバFB7を導波した参照光L2とを合波するものである。具体的には合波手段4は、光ファイバFB5を導波した反射光L3を2つの光ファイバFB8、FB9に分岐するとともに、光ファイバFB7を導波した参照光L2を2つの光ファイバFB8、FB9に分岐する。したがって、各光ファイバFB8、FB9においてそれぞれ反射光L3と参照光L2とが合波され、光ファイバFB8内を第1干渉光L4aが導波し、光ファイバFB9内を第2干渉光L4bが導波することになる。つまり、合波手段4は、反射光L3と参照光L2との干渉光L4を2つに干渉光L4a、L4bに分岐する光分岐手段5としても機能している。
【0045】
干渉光検出手段70は、第1干渉光L4aを検出する第1光検出部71と、第2干渉光L4bを検出する第2光検出部72と、第1光検出部71により検出された第1干渉光L4aと第2光検出部72により検出された第2干渉光L4bとの差分を干渉信号ISとして出力する差分アンプ73とを有している。各光検出部71、72は、たとえばフォトダイオード等からなっており、可変光アッテネータ60A、60Bを介して入射される各干渉光L4a、L4bを光電変換し差分アンプ73に入力するものである。差分アンプ73は各干渉光L4a、L4bの差分を増幅し干渉信号ISとして出力するものである。このように、各干渉光L4a、L4bを差分アンプ73によりバランス検波することにより、干渉信号ISを増幅して出力しながら干渉信号IS以外の同相光雑音が除去することができ、断層画像Pの画質の向上を図ることができる。
【0046】
光分岐手段5(合波手段4)と干渉光検出手段70との間には可変光アッテネータ60A、60Bが設けられている。この可変光アッテネータ60A、60Bは第1干渉光L4aおよび第2干渉光L4bのそれぞれの光量を各波長帯域毎に異なる減衰率で減衰し、干渉光検出手段70側に射出するものである。なお、第1干渉光L4aおよび第2干渉光L4b毎にそれぞれ可変光アッテネータ60A、60Bが設けられている。
【0047】
図6は可変光アッテネータ60Aの一例を示す模式図である。可変光アッテネータ60Aは、円盤状の減光フィルタ(NDフィルタ)62と、減光フィルタ62を回転させる駆動手段64とを有している。減光フィルタ62は、図7に示すように、たとえば円周方向(矢印R10方向)に沿って黒色の濃さの度合いが異なるように形成されており、光の減衰率(透過率)が異なっている。この減光フィルタ62のスポット位置62aに第1干渉光L4aが入射され、第1干渉光L4aはスポット位置62aの減衰率(透過率)に従い減衰し、光ファイバFB12に入射される。よって減光フィルタ62が駆動手段64により矢印R10方向に回転したとき、干渉光L4aが透過する位置の減衰率が時間変化することになる。なお、可変光アッテネータ60Bも図6と同一の構成を有している。そして、可変光アッテネータ60A、60Bによる減衰率は、各波長帯域において各光検出部71、72において検出される各干渉光L4a、L4bの光の強度レベルが略均等になるように設定されている。
【0048】
よって、可変光アッテネータ60A、60Bに時間変化とともに異なる波長の干渉光L4a、L4bが入射されたとき、可変光アッテネータ60A、60Bは干渉光L4a、L4bを、波長変化に合わせて減衰率を変えて干渉光L4a、L4bをそれぞれ減衰する。そして、可変光アッテネータ60A、60Bは各波長帯域において各干渉光L4a、L4bの光量が略均等にした状態で干渉光検出手段70側に射出する。これにより、各光検出部71、72において検出される各干渉光L4a、L4bの光強度レベルが全波長帯域において略均等になり、干渉光検出手段70においてバランス検波するときのS/N比の向上を図ることができる。
【0049】
なお、図5において各可変光アッテネータ60A、60Bを設けている場合について例示しているが、各可変光アッテネータ60A、60Bを設けなくても各光検出部71、72における光強度バランスが全波長帯域において略均等である場合には、各可変光アッテネータ60A、60Bは不要である。
【0050】
また、図6および図7において各波長帯域毎にそれぞれ光分岐手段5による分岐比が異なるものであって、各可変光アッテネータ60A、60Bは各波長帯域毎に減衰率を可変とする場合について例示しているが、各光検出部71、72において検出される各干渉光L4a、L4bの光強度レベルの特性が全波長帯域において一定である場合、減衰率を可変にする必要はなく、その特性に合わせた一定の減衰率のアッテネータを用いればよい。
【0051】
また、干渉光検出手段70から出力された干渉信号ISは、増幅器74により増幅された後、信号帯域フィルタ75を介してA/D変換ユニット90に出力される。この信号帯域フィルタ75を設けることにより、干渉信号ISからノイズを除去し、S/N比の向上を図ることができる。
【0052】
図8は図1に示すA/D変換ユニット90の一例を示すブロック図である。A/D変換ユニット90は、干渉光検出手段70により検出された干渉信号ISをデジタル信号に変換し出力するものであって、A/D変換器91、サンプリングクロック発生回路92、制御コントローラ93、干渉信号記憶手段94を有している。A/D変換器91は、干渉計20からアナログ信号として出力される干渉信号ISをデジタル信号にするものである。A/D変換器91は、サンプリングクロック発生回路92から出力されるサンプリングクロックに基づいて干渉信号ISのA/D変換を行うものである。干渉信号記憶手段94はたとえばRAM(ランダムアクセスメモリ)等からなり、デジタル信号化された干渉信号ISを一時的に記憶するものである。このA/D変換器91、サンプリングクロック発生回路92、干渉信号記憶手段94の動作は制御コントローラ93により制御されている。
【0053】
ここで、干渉信号記憶手段94により記憶された干渉信号ISは、周期クロック信号TCLKが干渉信号変換手段101(図11参照)に対し出力されたときに、干渉信号変換手段101により周期クロック信号TCLKが出力されたタイミングを基準として1周期分だけ取得されるようになっている。
【0054】
図9は上述した周期クロック信号TCLKを生成する周期クロック生成手段80の一例を示す模式図である。周期クロック生成手段80は、光源ユニット30から射出される光Lが波長が1周期掃引される毎に1つの周期クロック信号TCLKを出力するものであって、光学レンズ81、83、光学フィルタ82、光検出部84を備えている。そして、光ファイバFB1cから射出された光Lが光学レンズ81を介して光学フィルタ82に入射される。光学フィルタ82を透過した光Lが光学レンズ83を介して光検出部84により検出され、周期クロック信号TCLKをA/D変換ユニット90に出力するようになっている。
【0055】
光学フィルタ82はたとえばエタロン等からなり、光源ユニット30から射出される光の波長が掃引される波長帯域λmin〜λmax内において設定された設定波長λrefの光のみを透過し、それ以外の波長帯域の光を遮光する機能を有している。したがって、図10に示すように、光源ユニット30から周期的に波長が掃引された光Lが射出され、光Lの波長が設定波長λrefになったとき、周期クロック信号TCLKが出力されることになる。
【0056】
このように、実際に光源ユニット30から射出される光Lを用いて周期クロック信号TCLKを生成し出力することにより、光源ユニット30から射出される光Lが波長の掃引開始から所定の光強度になるまでの時間が各周期毎に変わってしまう場合であっても、設定波長λrefから所定の期間T(図4参照)の波長帯域の干渉信号ISを取得することができる。よって、断層画像処理手段100において想定されている波長帯域の干渉信号ISを取得するタイミングで周期クロック信号TCLKを出力することができ、分解能の劣化を抑えることができる。
【0057】
特に、設定波長λrefが、波長の掃引を開始してから所定の時間Tref経過後に射出される波長λrefに設定されているとき、射出される光Lの特性にぶれが生じやすい掃引開始直後の光を用いて断層画像の取得が行われるのを防止し、断層画像の分解能の劣化を抑えることができる。
【0058】
図11は本発明の断層画像処理装置(断層画像処理手段)の好ましい実施の形態を示すブロック図であり、図11を参照して断層画像処理装置(断層画像処理手段)100について説明する。なお、図11のような断層画像処理装置100の構成は、補助記憶装置に読み込まれた断層画像処理プログラムをコンピュータ(たとえばパーソナルコンピュータ等)上で実行することにより実現される。このとき、この断層画像処理プログラムは、CD−ROM等の情報記憶媒体に記憶され、もしくはインターネット等のネットワークを介して配布され、コンピュータにインストールされることになる。
【0059】
断層画像処理手段100は、干渉信号変換手段101、干渉信号分割手段102、干渉信号解析手段103、断層情報取得手段104、断層画像生成手段105等を有している。干渉信号変換手段101は、周期クロック信号TCLKを基準に1周期分の干渉信号ISを干渉信号記憶手段94から取得し、この1周期分の干渉信号ISを波数k(=2π/λ)軸において等間隔になるように変換するものである。なお、この信号変換手法の詳細はUS5956355号明細書に開示されている。
【0060】
具体的には、干渉信号変換手段101には、図12(A)に示すように、光源ユニット30における期間T(図4参照)における時間と波長との関係を示す掃引特性データが記憶されている。そして、干渉信号変換手段101は、図12(B)のような時間変化に対する光強度として干渉信号ISを取得したとき、各時刻における波長を図12(A)の掃引特性データに基づいて割り出す。そして、干渉信号変換手段101は、図12(C)に示すように、波数k(=2π/λ)変化に対する光強度を示す干渉信号ISになるようにデータ列を再配列する。これにより、干渉信号ISから断層情報を算出するときに、フーリエ変換処理、最大エントロピー法による処理等の周波数空間において等間隔であることを前提とするスペクトル解析により分解能の高い断層画像Pを取得することができる。
【0061】
なお、図12においては、説明の便宜上、干渉信号ISのある深さ位置に対応する成分の波形を示し説明しているものであって、実際の干渉信号ISは各深さ位置に対応する成分の波形が重畳した波形となる。
【0062】
図11の干渉信号分割手段102は、光Lが射出されたときに検出される干渉信号ISを異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号IS1〜IS4を生成するものである。具体的には、干渉信号分割手段102は、図12(C)のような測定対象Sのある部位に波長を1周期分掃引しながら測定光L1が照射されたときの干渉信号ISを、図13(A)〜(D)に示すようにたとえば4つの波長帯域の分割干渉信号IS1〜IS4に分割する。このとき、干渉信号分割手段102は、分割干渉信号IS1〜IS4の波長帯域が略同一であって、それぞれ波長帯域が重複するように各分割干渉信号IS1〜IS4を分割する。
【0063】
干渉信号解析手段103は、干渉信号分割手段102により分割された複数の分割干渉信号IS1〜IS4をそれぞれ解析し、各深さ位置における断層情報を中間断層情報r1(z)〜r4(z)として取得するものである。たとえば干渉信号解析手段103は、各分割干渉信号IS1〜IS4をそれぞれスペクトル解析する第1干渉信号解析手段103a〜第4干渉信号解析手段103dを備えている。
【0064】
各干渉信号解析手段103a〜103dは、たとえばフーリエ変換処理、最大エントロピー法(MEM)、Yule−Walker法等の公知のスペクトル解析技術を用いて、図14に示すように深さ位置それぞれについて断層情報(反射率)を逐次取得していく。そして、各干渉信号解析手段103a〜103dは、図17(A)〜(D)に示すような深さ方向について所定の範囲について、各深さ位置における中間断層情報r1(z)〜r4(z)を算出する。
【0065】
ここで、上述のように、各分割干渉信号IS1〜IS4が同一の波長帯域幅になるように生成されたものであるため、第1干渉信号解析手段103a〜第4干渉信号解析手段103dの解析アルゴリズムをほぼ同一のものにすることができるため、効率よくスペクトル解析を行うことができる。
【0066】
また、図16(A)〜(D)に示すように、各分割干渉信号IS1〜IS4がそれぞれ重複した波長帯域を有しているため、干渉信号ISにおいて干渉しない波長帯域が生じるのを防止し、精度良く各深さ位置における中間断層情報r1(z)〜r4(z)を算出することができる。
【0067】
図11の断層情報取得手段104は、干渉信号解析手段103により取得された複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)を用いて断層画像の生成に用いる断層情報r(z)を取得するものである。具体的には、断層情報取得手段104は、図17(A)〜(D)のように取得された複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)について、各深さ位置毎にそれぞれ複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)の平均値を算出することにより、断層画像の生成に用いる断層情報r(z)を取得する。つまり、深さ位置z1の断層情報r(z1)を取得する場合、各中間断層情報r1(z1)〜r4(z1)の平均値=(r1(z1)+r2(z1)+r3(z1)+r4(z1))/4を断層情報r(z1)として算出し取得する。そして、各深さ位置について上述のような計算が行われることにより各深さ位置における断層情報r(z)が取得される。
【0068】
断層画像生成手段105は、断層情報取得手段104により取得された1周期分の干渉信号ISから得られた断層情報r(z)を1ライン分の断層情報r(z)として断層情報蓄積手段105aに記憶する。また、断層画像生成手段105は、図1の光プローブ10により測定光L1が測定対象Sに対し走査されながら照射されたときに、順次取得される複数の断層情報r(z)を記憶していく。そして、回転制御手段32から回転クロック信号RCLKが出力されたとき、記憶していたnライン分の断層情報r(z)を用いて図16に示すような断層画像Pを生成する。たとえば、光源ユニット30から周期クロックTCLKが20kHzで出力され、光プローブ10が20Hzで測定光L1を矢印R1方向に走査され回転クロック信号RCLKが20Hzで出力されるとき、断層画像生成手段105は、n=1024ライン分の断層情報r(z)を用いて1枚の断層画像Pを生成する。
【0069】
このように、複数の分割干渉信号IS1〜IS4から複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)を取得し、断層情報r(z)を取得し断層画像Pを生成することにより、ノイズを低減するとともに、サイドローブ等アーティファクトの増加を防ぎ、分解能を向上させることができる。
【0070】
すなわち、OCT計測においては反射光L3と参照光L2との光路長差が干渉信号の波長(周波数)に1対1でエンコードされている。したがって、図17に示すように、波数kの空間における干渉信号ISをフーリエ変換等のスペクトル解析することにより、測定対象Sの深さ位置における断層情報を得ることができる。よって、上述した図12に示すように、干渉信号変換手段101において干渉信号ISの変換を行うようにしている。
【0071】
しかし、実際には、掃引波長の揺らぎや光断層画像化システム1に用いる各種光学部品の波長依存特性等により、干渉信号ISを波数kに対し等間隔に再配列されない場合がある。たとえば図18(A)に示すように、動作環境等の影響により想定している波長掃引特性(図18(A)中の波線)からずれた波長の掃引が行われ、ある深さ位置から図18(B)のような干渉信号ISが得られたとする。このとき、干渉信号変換手段101において干渉信号ISの変換が行われたとしても、図18(C)に示すように、干渉信号ISを波数kに対し等間隔に再配列することができない。したがって、干渉信号解析手段103において変換された干渉信号ISを解析したとき、図18(D)に示すように、ある深さ位置のみにピークを有するような断層情報を得ることができず、分解能の低下を招くことになる。
【0072】
特に、SS−OCT計測に代表されるFD−OCT計測においては、干渉信号ISのどの波長帯域の信号成分からでも、各深さ位置における断層情報の情報が含まれているという性質を有している。この性質を利用し、1周期分の干渉信号ISから複数の分割干渉信号IS1〜IS4を生成し、各分割干渉信号IS1〜IS4から複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)を取得し、各中間断層情報r1(z)〜r4(z)にそれぞれ含まれている波長掃引の揺らぎに起因するノイズ成分等を相殺することにより、分解能を向上させることができる。また、複数の干渉信号IS1〜IS4を取得するために、測定対象Sの同一の部位に複数周期分の光を照射する必要がなく、分解能を向上させながら高速に断層画像Pの取得を行うことができ、特に断層画像Pを動画表示するときに有効である。
【0073】
さらに、上述した掃引される波長の揺らぎに限らず、干渉計20に用いられる光ファイバ等の光学部品の波長依存特性や測定対象Sの波長分散特性等に起因するノイズ成分等を除去し分解能を向上させることができる。たとえば光ファイバは波長帯域毎に光路長が異なる特性を有する場合があり、この光路長のずれは、光源ユニット30から射出される光Lの時間経過に対する波長と、干渉光検出手段70において検出される干渉光L4の時間経過に対する波長との間のずれとなって表れる。さらに、生体組織等の測定対象Sに波長分散特性を有する場合があり、この波長分散特性によっても上述したずれが生じる。したがって、干渉信号変換手段101による光源ユニット30波長掃引特性に基づく再配列を行っただけでは波数kに対し等間隔に再配列できない場合がある。また、上述した光断層画像化システム1や測定対象Sに内在する不確定要素のすべてを予め把握することは困難である。
【0074】
一方、図11の断層情報取得手段104において、測定対象Sの同一の部位から取得された複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)を用いて断層情報r(z)を取得することにより、各中間断層情報r1(z)〜r4(z)に含まれている光学部品の波長依存特性や測定対象Sの波長分散特性等に起因するノイズ成分等を相殺することにより、分解能を向上させることができる。
【0075】
なお、上記実施の形態において、断層情報取得手段104は複数の中間断層情報r1(z)〜r4(r)の平均値から断層情報r(z)を取得するようにしているが、他の方法により取得するようにしてもよい。
【0076】
たとえば、中間断層情報r1(z)〜r4(z)のうち、複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)の平均値raveを算出し、この平均値raveから最も離れた中間断層情報(たとえばr4(z)とする)を除外した中間断層情報r1(z)〜r3(z)の平均値を断層情報r(z)とするものであってもよい。これにより、ある波長帯域(たとえば分割干渉信号IS4にのみ含まれる波長帯域)について波長掃引の揺らぎが大きい場合や光学部品の波長依存特性や測定対象Sの波長分散特性等が特に大きい場合、この波長帯域から取得した分割干渉信号IS4を除外した複数の中間断層情報r1(z)〜r3(z)から断層情報r(z)を取得することができるため、より分解能を向上させることができる。
【0077】
あるいは、平均値raveに近い値であればあるほど重み付けを大きくするような関数を用いて断層情報を取得するようにしてもよい。具体的には、断層情報取得手段104において、複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)の平均値raveが算出され、重み付け関数g(x)を用いて、i=1〜4:分割干渉信号の数として
【数1】
【0078】
が算出される。
【0079】
ここで、重み付け関数g(x)はたとえばg(x)=( | x |p + ε)-1(εは係数)で定義されている。したがって、上記式(1)は平均値raveからの距離(ri−rave)が大きい中間断層情報riほど、値の小さい重み付け関数g(x)が乗算され、重み付け加算がなされることになる。
【0080】
あるいは、断層情報取得手段104が、複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)の平均値raveおよび分散値σを算出し、複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)のうち、中間断層情報riと平均値raveとの差が分散値σよりも小さい中間断層情報riを抽出し、抽出した中間断層情報riを用いて断層情報r(z)を取得するようにしてもよい。具体的には、上記式(1)の重み付け関数g(x)として
【数2】
【0081】
を用いるようにしてもよい。なお、式(2)のσは分散(σ2=Σ(ri−rave)2)であり、cは調整用の係数である。この場合、式(1)は平均値に近い中間断層情報riのみを用いて重み付け加算がなされることになる。
【0082】
この場合であっても、ある波長帯域について波長掃引の揺らぎが大きい場合や光学部品の波長依存特性や測定対象Sの波長分散特性等が特に大きい場合、この波長帯域から取得した分割干渉信号IS4を除外した複数の中間断層情報riから断層情報r(z)を取得することができるため、より分解能を向上させることができる。
【0083】
図19は本発明の断層画像処理方法の好ましい実施形態を示すフローチャートであり、図1から図19を参照して光断層画像化システムの動作例について説明する。まず、光源ユニット30から所定の波長帯域内において一定の周期で掃引された光Lが射出される(ステップST1)。光Lは光分岐手段2において2分され、干渉計20と周期クロック生成手段80とにそれぞれ入射される。干渉計20の光分割手段3において光Lは測定光L1と参照光L2とに光分割され、測定光L1は光ファイバFB2側に射出され、参照光L2は光ファイバFB3側に射出される(ステップST2)。
【0084】
測定光L1は光サーキュレータ21、光ファイバFB4および光プローブ10を導波し測定対象Sに照射される。そして、測定対象Sの各深さ位置zにおいて反射した反射光L3および後方散乱した光が再び光プローブ10に入射される。この反射光L3は光プローブ10、光サーキュレータ21および光ファイバFB5を介して合波手段4に入射される。
【0085】
一方、参照光L2は光ファイバFB3、光サーキュレータ22、光ファイバFB6を介して光路長調整手段40に入射される。そして、光路長調整手段40により光路長が調整された参照光L2が再び光ファイバFB6、光サーキュレータ22、偏波コントローラ50、光ファイバFB7を導波し合波手段4に入射される。
【0086】
合波手段4において、反射光L3と参照光L2とが合波されるとともに(ステップSt3)、合波されたときの干渉光L4が合波手段4(光分岐手段5)において分岐され、2つの干渉光L4a、4bが光ファイバFB8、FB9にそれぞれ射出される。そして、各光ファイバFB8、FB9を導波した各干渉光L4a、L4bが可変光アッテネータ60A、60Bにより減衰され、干渉光検出手段70においてバランス検波される(ステップST4)。
【0087】
ここで、干渉光検出手段70におけるバランス検波の前に、分岐された第1干渉光L4aおよび第2干渉光L4bを各干渉光L4a、L4bの全波長帯域において略均等になるように、波長帯域毎に異なる減衰率で減衰する可変光アッテネータ60A、60Bを設けることにより、干渉光検出手段70でのバランス検波により非干渉成分を確実に除去してS/N比の向上を図ることができる。
【0088】
干渉光検出手段70によりバランス検波により検出された干渉光L4は干渉信号ISとして出力され、増幅器74および信号帯域フィルタ75を経てA/D変換ユニット90に出力される。その後、干渉信号ISは、A/D変換ユニット90においてA/D変換され、干渉信号記憶手段94に格納される。
【0089】
光源ユニット30から光分岐手段2を介して周期クロック生成手段80に入射された光Lの波長が設定波長λrefであるとき、光学フィルタ82を通過した光Lが光学レンズ83を介して光検出部84に検出される。すると、周期クロック生成手段80から信号変換手段101に周期クロック信号TCLKが出力され、信号変換手段101において、干渉信号記憶手段94に記憶された干渉信号ISのうち1周期分の干渉信号が取得される。
【0090】
断層画像処理手段100において、干渉信号変換手段101により1ライン分の干渉信号ISに波数kについて等間隔になるように信号変換処理が施される(ステップST5、図12参照)。信号変換された干渉信号ISは、干渉信号分割手段102により複数の分割干渉信号IS1〜IS4に分割される(ステップST6、図13参照)。その後、干渉信号解析手段103により、各分割干渉信号IS1〜IS4がスペクトル解析されることにより、各分割干渉信号IS1〜IS4からそれぞれ各深さ位置における断層情報(反射率)が中間断層情報r1(z)〜r4(z)として取得される(ステップST7、図14参照)。
【0091】
断層情報取得手段104において、各中間断層情報r1(z)〜r4(z)を用いて断層画像として用いる断層情報r(z)が取得される。具体的には、たとえば各中間断層情報r1(z)〜r4(z)の平均値を算出することにより、断層情報r(z)が取得される(ステップST8)。断層画像生成手段105において、取得した断層情報r(z)が測定光L1の走査方向(矢印R1方向)についてnライン分だけ蓄積される。そして、回転クロック信号RCLKが検出したとき、蓄積した複数の断層情報r(z)を用いて1枚の断層画像Pが生成される(ステップST9)。その後、画質補正手段106において、生成した断層画像Pについて画質補正が行われ、画質補正された断層画像Pが図1の表示装置110に表示される(ステップST10、図16参照)。
【0092】
上記実施の形態によれば、複数の分割干渉信号IS1〜IS4を取得し、各分割干渉信号IS1〜IS4をそれぞれ解析することにより測定対象Sの各深さ位置の断層情報を中間断層情報r1(z)〜r4(z)として複数取得し、取得した複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)を用いて測定対象Sの断層情報r(z)を取得し、取得した断層情報r(z)を用いて測定対象Sの断層画像Pを生成することにより、射出される光の波長に揺らぎが生じて、断層画像処理手段において想定されている干渉信号の波長帯域と実際に射出された光の波長帯域との間にずれが生じた場合であっても、複数の中間断層情報を用いて揺らぎの影響を最小限にした断層情報を取得し断層画像を生成することができるため、分解能を向上させることができる。
【0093】
なお、図13に示すように、波長を1周期分掃引したときに取得した干渉信号ISを異なる波長帯域毎に複数分割することにより、複数の干渉信号IS1〜IS4を取得するようにしたとき、FD−OCT計測においては、干渉信号ISのどの波長帯域の信号成分からでも、各深さ位置における断層情報の情報が含まれているという性質を利用し、複数の干渉信号を取得するために、測定対象Sの同一の部位に複数周期分の光を照射する必要がなく、分解能を向上させながら高速に断層画像Pの取得を行うことができ、特に断層画像Pを動画表示するときに有効である。
【0094】
さらに、干渉信号分割手段102が干渉信号IS1〜IS4の波長帯域幅が略同一になるように分割したとき、各干渉信号IS1〜IS4を解析するときに同一のアルゴリズムを用いることができるため、効率よく各干渉信号IS1〜IS4の解析を行うことができる。
【0095】
また、干渉信号分割手段102が分割したときの干渉信号IS1〜IS4の波長帯域がそれぞれ重複するように分割するものであるとき、解析しない波長帯域が発生するのを防止して分解能を向上させることができる。
【0096】
さらに、断層情報取得手段104が、複数の中間断層情報の平均値を算出することにより断層情報を取得するとき、各干渉信号IS1〜IS4に含まれるノイズ成分等を相殺して分解能を向上させることができる。
【0097】
また、断層情報取得手段104が、複数の中間断層情報の平均値を算出し、平均値から最も離れた値を有する中間断層情報を除く複数の中間断層情報の平均値を算出することにより断層情報を取得する場合、あるいは、複数の中間断層情報の平均値を算出し、平均値に近いほど重み付けが大きくなるように、各中間断層情報に重み付け加算を行うことにより断層情報を取得する各干渉信号IS1〜IS4に含まれるノイズ成分等を相殺して分解能を向上させることができる。特に、1周期分の干渉信号を分割して得られた複数の干渉信号から複数の中間断層情報を取得したとき、ある波長帯域の干渉信号が大きなノイズ成分を有しているときに、ノイズ成分の大きい中間断層情報を除外して断層情報r(z)を取得することができるため、より分解能を向上させることができる。
【0098】
光Lが周期的に掃引されたときに時間変化とともに得られる干渉信号ISを、光Lの波長が掃引されたときの波数変化に対する干渉信号ISに変換する干渉信号変換手段101をさらに備えているとき、スペクトル解析するときの前提となる波数変化に対する干渉信号ISへ変換するときに、光源ユニット30の波長掃引特性に基づいて変換することができるため、分解能の向上を図ることができる。
【0099】
本発明の実施の形態は、上記実施の形態に限定されない。たとえば、図11の干渉信号分割手段102において、図13のような4つの分割干渉信号IS1〜IS4を取得する場合について例示しているが、4つに限られるものではなく複数であればいくつでもよい。
【0100】
さらに、図11の断層情報取得手段104において、平均値や重み付け加算により断層情報r(z)を取得する場合について例示しているが、最頻法(Mode)や中央値(メディアン)等を利用した公知の手法により、断層情報r(z)を取得するようにしてもよい。
【0101】
さらに、図13において、干渉信号変換手段101により信号変換された後、干渉信号分割手段102が複数の干渉信号IS1〜IS4を取得するようにしているが、干渉信号分割手段102が複数の干渉信号IS1〜IS4を取得した後、干渉信号変換手段101により干渉信号IS1〜IS4の信号変換を行うようにしても良い。その後、断層情報取得手段104が、中間断層情報r1(z)〜r4(z)から上述した各種方法により断層情報r(z)を取得してもよい。
【0102】
さらに、図2の光プローブ10は、円周方向(矢印R1方向)に測定光L1を走査しながら照射する場合について例示しているが、光プローブ10の長手方向に測定光L1を走査しながら照射するものであっても良い。このとき、光ファイバ12および光学レンズ15はプローブ外筒11に対し、光プローブ10の長手方向に移動可能な構造を有している。
【0103】
また、上記実施の形態において図11の断層画像処理装置100をいわゆるSS−OCT計測に適用した場合について例示しているが、図20に示すようなSD−OCT計測を用いた光断層画像化システムについても同様に適用することができる。なお、図21においては、光学ユニット130は、広帯域な低コヒーレンス光を射出するものであり、干渉光検出手段170において、干渉光L4がレンズ171介して回折格子素子172に入射され、回折格子素子172において各波長帯域毎に分光された後、レンズ173を介して複数の光検出素子(フォトダイオード等)が配列された光検出部174によって干渉信号ISとして検出されることになる。
【0104】
図20のようなSD−OCT計測による光断層画像化システムであっても、上記SS−OCT計測の場合と同様、干渉計20に用いられる光ファイバ等の光学部品の波長依存特性や測定対象Sの波長分散特性等に起因するノイズ成分等が含まれている場合がある。さらに、SD−OCT計測特有の問題として、ディテクタアレイ等に構成された光検出部174によって干渉信号ISを観測する場合、各ディテクタの波長検出特性により光検出部174が観測する干渉光L4の所定の波長帯域が波長(周波数)について線形になっていない場合があり、この場合にも分解能の劣化が生じる。
【0105】
そこで、干渉信号ISのどの波長帯域の信号成分からでも、各深さ位置における断層情報の情報が含まれているという性質を利用し、各分割干渉信号IS1〜IS4から取得した複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)を用いて断層情報r(z)を取得することにより、各中間断層情報r1(z)〜r4(z)に含まれているノイズ成分等を除去し分解能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の光断層画像化システムの好ましい実施の形態を示す概略構成図
【図2】図1の光断層画像化システムに使用される光プローブの一例を示す模式図
【図3】図1の光断層画像化システムにおける光源ユニットの一例を示す模式図
【図4】図3の光源ユニットから射出される光の波長が掃引される様子を示すグラフ
【図5】図1の光断層画像化システムにおける干渉計の一例を示す模式図
【図6】図5の干渉計における可変光アッテネータの一例を示す模式図
【図7】図6の可変光アッテネータにおける減光フィルタの一例を示す模式図
【図8】図1の光断層画像化システムにおけるA/D変換ユニットの一例を示すブロック図
【図9】図1の光断層画像化システムにおける周期クロック生成手段の一例を示す模式図
【図10】図10の周期クロック生成手段により生成される周期クロック信号の一例を示すグラフ
【図11】図1の断層画像処理手段の一例を示すブロック図
【図12】図11の信号変換手段において干渉信号が変換される様子を示す模式図
【図13】図11の干渉信号分割手段において複数の干渉信号が複数取得される様子を示すグラフ
【図14】図11の干渉信号解析手段においてある深さ位置から得られる中間断層情報の一例を示すグラフ
【図15】図11の干渉信号解析手段において取得された複数の中間断層情報の一例を示すグラフ
【図16】図11の断層画像生成手段により生成される断層画像の一例を示す模式図
【図17】干渉信号から断層情報が取得される様子を示すグラフ
【図18】干渉信号変換手段により干渉信号を変換した場合にも分解能の低下を引き起こす場合の一例を示すグラフ
【図19】本発明の断層画像処理方法の好ましい実施形態を示すフローチャート
【図20】本発明の光断層画像化システムの別の実施形態を示す模式図
【符号の説明】
【0107】
1 光断層画像化システム
3 光分割手段
4 合波手段
10 光プローブ
20 干渉計
30、130 光源ユニット
70、170 干渉光検出手段
100 断層画像処理手段(断層画像処理装置)
101 干渉信号変換手段
102 干渉信号分割手段
103 干渉信号解析手段
104 断層情報取得手段
105 断層画像生成手段
106 画質補正手段
110 表示装置
IS 干渉信号
IS1〜IS4 分割干渉信号
L 光
L1 測定光
L2 参照光
L3 反射光
L4 干渉光
P 断層画像
r 断層情報
r1(z)〜r4(z) 中間断層情報
S 測定対象
【技術分野】
【0001】
本発明は、OCT(Optical Coherence Tomography)計測により光断層画像を生成する断層画像処理方法、装置およびプログラムならびにこれを用いた断層画像化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生体組織の光断層画像を生成する際に、OCT計測を利用した光断層画像取得装置が用いられることがある。この光断層画像取得装置では、光源から射出された低コヒーレント光を測定光と参照光とに分割した後、該測定光が測定対象に照射されたときの測定対象からの反射光と参照光とを合波し、該反射光と参照光との干渉光の強度に基づいて光断層画像を生成する。上記のような光断層画像取得装置では、参照光の光路長を変更することにより、測定対象に対する深さ方向の位置(以下、深さ位置という)を変更し光断層画像を生成するTD−OCT(Time domain OCT)計測を利用した装置がある。
【0003】
また、近年では、上述した参照光の光路長を変更することなく高速に光断層画像を生成するFD−OCT(フーリエドメイン−OCT)計測を利用したOCT装置が提案されている。このFD−OCT(フーリエドメイン−OCT)計測として、所定の波長帯域を有する低コヒーレント光をマイケルソン型干渉計等を用いて断層画像を取得するSD−OCT(Spectral Domain OCT)計測と、SS−OCT(Swept source OCT)計測とがある(特許文献1〜3、非特許文献1参照)。このうち、SS−OCT計測においては、光源から射出されるレーザ光の周波数を掃引させて反射光と参照光とを各波長において干渉させ、一連の波長に対する干渉スペクトルをフーリエ変換することにより測定対象の深さ位置における反射光強度を検出し、これを用いて光断層画像を構成するようになっている。
【0004】
ここで、上述したSS−OCT計測において、掃引する波長は揺らぐため1周期の掃引波長のタイミングが常に一定とは限らない。そこで、特許文献3のように観測された干渉信号が波数kについて等間隔になるように干渉信号を信号変換することが提案されている。
【特許文献1】特開2006−132996号公報
【特許文献2】特開2005−283155号公報
【特許文献3】米国第5956355号明細書
【非特許文献1】Yoshiaki Yasuno, Violeta Dimitrova Madjarova and Shuichi Makita, "Three-dimensional and high-speed swept-source optical coherence tomography for in vivo investigation of human anterior eye segments," OPTICS EXPRESS 2005 Vol. 13, No. 26.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した干渉信号をスペクトル解析により所定の深さ位置における反射情報を得るためには干渉信号が波数kについて等間隔に配列されている必要がある。しかし、干渉信号ISが波数kにおいて等間隔に配列されていない場合、断層画像の分解能の低下が生じてしまう。この分解能の低下を抑えるために、特許文献3において、予め光源ユニットの波長掃引特性を記憶しておき、この波長掃引特性に基づいて波数kについて等間隔になるように干渉信号のデータ列を再配列している。
【0006】
この特許文献3においては、掃引される周波数が時間に対して線形に変化しない場合で、かつ、変化の仕方に再現性がある場合を前提として、波数kについて等間隔になるように干渉信号のデータ列を再配列するものである。しかし、実際には上記前提のように光源ユニットがどの周期においても同じ波長掃引特性をもって波長を掃引することは困難であり、動作環境等により各周期毎に波長が揺らぐ場合がある。このような波長の揺らぎがある場合、上述のような信号変換を行ったとしても、波数kにおいて等間隔に再配列することはできず、分解能が低下してしまう場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、断層画像の分解能を向上させることができる断層画像処理方法、装置プログラムならびに光断層画像化システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光断層画像処理方法は、所定の波長帯域の光を射出し、射出した光を測定光と参照光とに分割し、測定光が測定対象の各深さ位置において反射したときの反射光と参照光とを合波し、合波した反射光と参照光との干渉光を干渉信号として検出したときに、干渉信号から断層画像を生成する断層画像処理方法であって、光が射出されたときに検出される干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成し、生成した複数の分割干渉信号をそれぞれ解析することにより測定対象の各深さ位置の断層情報を中間断層情報として複数取得し、取得した複数の中間断層情報を用いて測定対象の断層情報を取得し、取得した断層情報を用いて測定対象の断層画像を生成することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の光断層画像処理装置は、所定の波長帯域の光を射出し、射出した光を測定光と参照光とに分割し、測定光が測定対象の各深さ位置において反射したときの反射光と参照光とを合波し、合波した反射光と参照光との干渉光を干渉信号として検出したときに、干渉信号から断層画像を生成する断層画像処理装置であって、光が射出されたときに検出される干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成する干渉信号分割手段と、干渉信号分割手段により生成された複数の分割干渉信号をそれぞれ解析することにより測定対象の各深さ位置の断層情報を中間断層情報として複数取得する干渉信号解析手段と、干渉信号解析手段において取得された複数の中間断層情報を用いて測定対象の断層情報を取得する断層情報取得手段と、断層情報取得手段により取得された断層情報を用いて測定対象の断層画像を生成する断層画像生成手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の光断層画像処理プログラムは、所定の波長帯域の光を射出し、射出した光を測定光と参照光とに分割し、測定光が測定対象の各深さ位置において反射したときの反射光と参照光とを合波し、合波した反射光と参照光との干渉光を干渉信号として検出したときに、コンピュータに、光が射出されたときに検出される干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成し、生成した複数の分割干渉信号をそれぞれ解析することにより測定対象の各深さ位置の断層情報を中間断層情報として複数取得し、取得した複数の中間断層情報を用いて測定対象の断層情報を取得し、取得した断層情報を用いて測定対象の断層画像を生成することを実行させることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の光断層画像化システムは、所定の波長帯域の光を射出する光源ユニットと、光源ユニットから射出された光を測定光と参照光とに分割する光分割手段と、光分割手段により分割された測定光が測定対象の各深さ位置において反射したときの反射光と参照光とを合波する合波手段と、合波手段により合波された反射光と参照光との干渉光を干渉信号として検出する干渉光検出手段と、干渉光検出手段により検出された干渉信号から測定対象の断層情報を取得し測定対象の断層画像を生成する断層画像処理手段とを備え、断層情報処理手段が、干渉光検出手段により検出された干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成する干渉信号分割手段と、干渉信号分割手段により分割された複数の前記分割干渉信号をそれぞれ解析することにより測定対象の各深さ位置の断層情報を中間断層情報として複数取得する干渉信号解析手段と、干渉信号解析手段において取得された複数の中間断層情報を用いて測定対象の断層情報を取得する断層情報取得手段と、断層情報取得手段により取得された断層情報を用いて測定対象の断層画像を生成する断層画像生成手段とを備えたものであることを特徴とするものである。
【0012】
ここで、反射光とは、測定対象からの反射光および後方散乱光を意味する。
【0013】
また、干渉信号解析手段は、干渉信号から各深さ位置における断層情報を取得するものであればその方法は問わず、たとえばフーリエ変換処理、最大エントロピー法、Yule−Walker法等のスペクトル解析により断層情報を取得するようにしてもよい。
【0014】
干渉信号分割手段は、分割干渉信号の波長帯域幅が略同一になるように分割するものであってもよいし、それぞれ異なる波長帯域幅になるように干渉信号を分割するようにしてもよい。
【0015】
さらに、干渉信号分割手段は、分割干渉信号の波長帯域がそれぞれ重複するように分割するものであってもよいし、分割したときの干渉信号が重複しないものであっても良い。
【0016】
また、断層情報取得手段は、複数の中間断層情報を用いて断層情報を取得するものであればその手法は問わず、たとえば複数の中間断層情報の平均値を算出することにより断層情報を取得するようにしても良いし、複数の中間断層情報を重み付け加算することにより断層情報を取得するようにしても良い。あるいは、断層情報取得手段が、複数の中間断層情報の平均値を算出し、平均値から最も離れた値を有する中間断層情報を除く複数の中間断層情報の平均値を算出することにより断層情報を取得するものであってもよい。さらには、断層情報取得手段が、複数の中間断層情報の平均値を算出し、平均値に近いほど重み付けが大きくなるように、各中間断層情報に重み付け加算を行うことにより断層情報を取得するものであってもよい。もしくは、断層情報取得手段は、複数の中間断層情報の平均値および分散値を算出し、複数の中間断層情報のうち、中間断層情報と平均値との差が分散値よりも小さい中間断層情報を抽出し、抽出した中間断層情報を用いて断層情報を取得するものであってもよい。
【0017】
さらに、光が掃引されたときに得られる時間変化に対する干渉信号もしくは分割干渉信号を、光の波長が掃引されたときの波数変化に対する干渉信号に変換する干渉信号変換手段をさらに備えたものであってもよい。このとき、干渉信号解析手段が、干渉信号変換手段により変換された干渉信号を解析することにより測定対象の各深さ位置の断層情報を中間断層情報として複数取得することになる。なお、干渉信号分割手段は干渉信号変換手段により変換された干渉信号を分割して分割干渉信号を生成するようにしてもよいし、干渉信号分割手段が複数の分割干渉信号を生成した後、各分割干渉信号についてそれぞれ干渉信号変換手段による変換が行われるようにしても良い。
【0018】
なお、光源ユニットは波長帯域内において波長を掃引しながら周期的に光を射出するものであって、いわゆるSS−OCT計測により断層画像を取得するものであってもよい。このとき、干渉信号分割手段は光が1周期分射出されたときに検出される干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成する。あるいは、光源ユニットが、所定の波長帯域からなる低コヒーレンス光を周期的に射出するものであって、いわゆるSD−OCT計測により断層画像を取得するものであっても良い。このときも、干渉信号分割手段は、光が1周期分射出されたときに検出される干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光断層画像化装置によれば、所定の波長帯域の光を射出し、射出した光を測定光と参照光とに分割し、測定光が測定対象の各深さ位置において反射したときの反射光と参照光とを合波し、合波した反射光と参照光との干渉光を干渉信号として検出したときに、干渉信号から断層画像を生成する断層画像処理方法であって、光が射出されたときに検出される干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成し、生成した複数の分割干渉信号をそれぞれ解析することにより測定対象の各深さ位置の断層情報を中間断層情報として複数取得し、取得した複数の中間断層情報を用いて測定対象の断層情報を取得し、取得した断層情報を用いて測定対象の断層画像を生成することにより、射出される光の波長に揺らぎが生じて、断層画像処理手段において想定されている干渉信号の波長帯域と実際に射出された光の波長帯域との間にずれが生じた場合であっても、複数の中間断層情報を用いて揺らぎの影響を最小限にした断層情報を取得し断層画像を生成することができるため、分解能を向上させることができる。
【0020】
なお、干渉信号分割手段が分割干渉信号の波長帯域幅が略同一になるように干渉信号を分割したとき、各分割干渉信号を解析するときに同一のアルゴリズムを用いることができるため、効率よく各分割干渉信号の解析を行うことができる。
【0021】
また、干渉信号分割手段が分割干渉信号の波長帯域がそれぞれ重複するように分割するものであるとき、解析しない波長帯域が発生するのを防止して分解能を向上させることができる。
【0022】
さらに、断層情報取得手段が、複数の中間断層情報の平均値を算出することにより断層情報を取得するとき、各干渉信号に含まれるノイズ成分等を相殺して分解能を向上させることができる。
【0023】
また、断層情報取得手段が、複数の中間断層情報の平均値を算出し、平均値から最も離れた値を有する中間断層情報を除く複数の中間断層情報の平均値を算出することにより断層情報を取得する場合、あるいは、複数の中間断層情報の平均値を算出し、平均値に近いほど重み付けが大きくなるように、各中間断層情報に重み付け加算を行うことにより断層情報を取得する各干渉信号に含まれるノイズ成分等を相殺して分解能を向上させることができる。特に、ある波長帯域の干渉信号が大きなノイズ成分を有しているときに、ノイズ成分の大きい中間断層情報を除外して断層情報を取得することができるため、より分解能を向上させることができる。
【0024】
干渉信号もしくは分割干渉信号を、光の波長が掃引されたときの波数変化に対する干渉信号もしくは分割干渉信号に変換する干渉信号変換手段をさらに備えているとき、スペクトル解析するときの前提となる波数変化に対する干渉信号へ変換するときに、光源ユニットの波長掃引特性に基づいて変換することができるため、分解能の向上を図ることができる。
【0025】
なお、光が、波長帯域内において波長を掃引しながら周期的に射出されるものであり、干渉信号分割手段が、光が1周期分射出されたときに検出される干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成するものであるときのような、いわゆるSS−OCT計測により断層画像を取得するときであっても、上述のような分解能の向上を図ることができる。
【0026】
光が、所定の波長帯域からなる低コヒーレンス光を周期的に射出されるものであり、干渉信号分割手段が、光が1周期分射出されたときに検出される干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成するものであるときのような、いわゆるSD−OCT計測により断層画像を取得するときであっても、上述のような分解能の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の光断層画像化システムの実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の光断層画像化システムの好ましい実施の形態を示す概略図である。光断層画像化システム1は、体腔内に光プローブ10を挿入することにより、体腔内の生体組織や細胞等の測定対象Sの断層画像をSS−OCT(Swept source OCT)計測により取得するものである。この光断層画像化システム1は、光プローブ10、干渉計20、光源ユニット30、周期クロック生成手段80、A/D変換ユニット90、断層画像処理手段100、表示装置110等を有している。
【0028】
図2は図1の光プローブ10の先端部分の一例を示す模式図である。図2の光プローブ10は、たとえば鉗子口を介して体腔内に挿入されるものであって、プローブ外筒(シース)11、光ファイバ12、光学レンズ15等を有している。プローブ外筒11は、可撓性を有する筒状の部材からなっており、測定光L1および反射光L3が透過する材料からなっている。なお、プローブ外筒11は先端がキャップ11aにより閉塞された構造を有している。
【0029】
光ファイバ12は、干渉計20から射出された測定光L1を測定対象Sまで導波するとともに、測定光L1が測定対象Sに照射されたときの測定対象Sからの反射光(後方散乱光)L3を干渉計20まで導波するものであって、プローブ外筒11内に収容されている。また光ファイバ12の外周側にはバネ13が固定されており、光ファイバ12およびバネ13は回転駆動ユニット10Aに機械的に接続されている。そして、光ファイバ12およびバネ13は回転駆動ユニット10Aによりプローブ外筒11に対し矢印R1方向に回転するようになっている。なお、回転駆動ユニット10Aは回転エンコーダを具備しており(図示せず)、回転制御手段10Bは回転エンコーダからの信号に基づいて測定光L1の照射位置を認識するようになっている。
【0030】
光学レンズ15は、光ファイバ12から射出した測定光L1を測定対象Sに対し集光するために略球状の形状を有しており、測定対象Sからの反射光L3を集光し光ファイバ12に入射する。ここで、光学レンズ15の焦点距離は、たとえば光ファイバ12の光軸LPからプローブ外筒の径方向に向かって距離D=3mmの位置に形成されている。光学レンズ15は光ファイバ12の光出射端部に固定部材14を用いて固定されており、光ファイバ12が矢印R1方向に回転したとき、光学レンズ15も一体的に矢印R1方向に回転する。よって、光プローブ10は、測定対象Sに対し光学レンズ15から射出される測定光L1を矢印R1方向(プローブ外筒11の円周方向)に対し走査しながら照射することになる。
【0031】
図1の光ファイバ12および光学レンズ15を回転させる回転駆動ユニット10Aの動作は回転制御手段10Bにより制御されており、回転制御手段10Bはたとえば約20Hzでプローブ外筒11に対し矢印R1方向に回転するように制御する。そして、回転制御手段10Bは回転駆動ユニット10Aの回転エンコーダからの信号に基づき光ファイバ12が1回転したと判断したとき、回転クロック信号RCLKを断層画像処理手段100に出力するようになっている。
【0032】
図3は光源ユニット30の一例を示す模式図である。光源ユニット30は、波長を周期T0で掃引させながらレーザ光Lを射出するものである。具体的には、光源ユニット30は、半導体光増幅器(半導体利得媒質)311と光ファイバFB30とを有しており、光ファイバFB30が半導体光増幅器311の両端に接続された構造を有している。半導体光増幅器311は駆動電流の注入により微弱な放出光を光ファイバFB30の一端側に射出するとともに、光ファイバFB30の他端側から入射された光を増幅する機能を有している。そして、半導体光増幅器311に駆動電流が供給されたとき、半導体光増幅器311および光ファイバFB30により形成される光共振器によりパルス状のレーザ光Lが光ファイバFB30へ射出されるようになっている。
【0033】
さらに、光ファイバFB30には光分岐器312が結合されており、光ファイバFB30内を導波する光の一部が光分岐器312から光ファイバFB31側へ射出されるようになっている。光ファイバFB31から射出した光はコリメータレンズ313、回折格子素子314、光学系315を介して回転多面鏡(ポリゴンミラー)316において反射される。そして反射された光は光学系315、回折格子素子314、コリメータレンズ313を介して再び光ファイバFB31に入射される。
【0034】
ここで、この回転多面鏡316は矢印R30方向に回転するものであって、各反射面の角度が光学系315の光軸に対して変化するようになっている。これにより、回折格子素子314において分光された光のうち、特定の波長帯域の光だけが再び光ファイバFB31に戻るようになる。この光ファイバFB31に戻る光の波長は光学系315の光軸と反射面との角度によって決まる。そして光ファイバFB31に入射した特定の波長の光が光分岐器312から光ファイバFB30に入射され、特定の波長のレーザ光Lが光ファイバFB1a側に射出されるようになっている。
【0035】
したがって、回転多面鏡316が矢印R30方向に等速で回転したとき、再び光ファイバFB1aに入射される光の波長λは、時間の経過に伴って周期的で変化することになる。具体的には、図4に示すように、光源ユニット30は最小掃引波長λminから最大掃引波長λmaxまで波長を一定の周期T0(たとえば約50μsec)で掃引した光Lを射出する。そして、光源ユニット30から射出された光Lは、光ファイバカプラ等からなる光分岐手段2により、光ファイバFB1b、FB1cにそれぞれ分岐され、干渉計20および周期クロック生成手段80にそれぞれ入射される。
【0036】
なお、光源ユニット30としてポリゴンミラーを回転させることにより波長を掃引させる場合について例示しているが、たとえばASE光源ユニット等のような公知の技術により周期的に波長を掃引させながら射出するようにしても良い。
【0037】
図5は図1の光断層画像化システム1における干渉計20の一例を示す模式図である。干渉計20はマッハツェンダー型の干渉計であって、筐体20Aに各種光学部品を収容することにより構成されている。干渉計20は、光源ユニット30から射出された光Lを測定光L1と参照光L2とに分割する光分割手段3と、光分割手段3により分割された測定光L1が測定対象Sに照射されたときの測定対象Sからの反射光L3と参照光L2とを合波する合波手段4と、合波手段4により合波された反射光L3と参照光L2との干渉光L4を検出する干渉光検出手段70とを備えている。なお、干渉計20と光源ユニット30とはAPC(Angled physical contact)コネクタを用いて接続されている。APCコネクタを用いることにより光コネクタ(光ファイバ)の接続端面からの反射戻り光を極限にまで低減し、断層画像Pの画質劣化を防止することができる。
【0038】
光分割手段3は、たとえば2×2の光ファイバカプラからなっており、光源ユニット30から光ファイバFB1cを導波した光Lをそれぞれ測定光L1と参照光L2とに分割する。このとき、光分割手段3は、たとえば測定光L1:参照光L2=99:1の割合で分割する。光分割手段3は、2つの光ファイバFB2、FB3にそれぞれ光学的に接続されており、分割された測定光L1は光ファイバFB2側に入射され、参照光L2は光ファイバFB3側に入射されるようになっている。
【0039】
光ファイバFB2には光サーキュレータ21が接続されており、光サーキュレータ21には光ファイバFB4、FB5がそれぞれ接続されている。光ファイバFB4には測定光L1を測定対象Sまで導波する光プローブ10が接続されており、光プローブ10から射出した測定光L1は光ファイバFB2から光プローブ10へ導波され、測定対象Sに照射される。また、測定対象Sを反射した反射光L3は光ファイバFB4を介して光サーキュレータ21に入射され、光サーキュレータ21から光ファイバFB5側に射出されるようになっている。なお、光ファイバFB4と光プローブ10とはAPC(Angled physical contact)コネクタを用いて接続されており、光コネクタ(光ファイバ)の接続端面からの反射戻り光を極限にまで低減し、断層画像Pの画質劣化を防止するようになっている。
【0040】
一方、光ファイバFB3には光サーキュレータ22が接続されており、光サーキュレータ22には光ファイバFB6、FB7がそれぞれ接続されている。光ファイバFB6には、断層画像の取得領域を調整するために参照光L2の光路長を変更する光路長調整手段40が接続されている。光路長調整手段40は、光路長を粗調整する光路長粗調整用光ファイバ40Aと、光路長を微調整する光路長微調整手段40Bとを有している。
【0041】
光路長粗調整用光ファイバ40Aは、一端側が光ファイバFB2に対し着脱可能に接続されており、他端側が光路長微調整手段40Bに着脱可能に接続されている。光路長粗調整用光ファイバ40Aは予め異なる長さのものが複数用意されており、必要に応じて適切な長さの光路長粗調整用光ファイバ40Aが適宜取り付けられる。なお、この光路長粗調整用光ファイバ40Aは、光ファイバFB6および光路長微調整手段40BとAPC(Angled physical contact)コネクタを用いて接続されており、光コネクタ(光ファイバ)の接続端面からの反射戻り光を極限にまで低減し、断層画像Pの画質劣化を防止するようになっている。
【0042】
光路長微調整手段40Bは、反射ミラー43、光ターミネータ44等を有している。反射ミラー43は、光路長粗調整用光ファイバ40Aから射出された参照光L2を光ターミネータ44側に反射するとともに、光ターミネータ44から反射した参照光L2を再び光路長粗調整用光ファイバ40A側に反射するものである。反射ミラー43はこの反射ミラー43は可動ステージ(図示せず)上に固定されており、ミラー移動手段により参照光L2の光軸方向(矢印A方向)に移動することにより、参照光L2の光路長が変更する。この可動ステージは医師等により、光路長調整操作部46が操作されることにより反射ミラー43を矢印A方向に移動させるようになっている。
【0043】
さらに、光ファイバFB7には偏波コントローラ50が光学的に接続されている。この偏波コントローラ50は参照光L2の偏波方向を回転させる機能を有している。なお偏波コントローラ50としてたとえば特開2001−264246号公報等の公知の技術を用いることができる。偏波コントローラ50は、医師等により偏波調整操作部51が操作されることにより偏波方向を調整するようになっており、たとえば反射光L3と参照光L2とが合波手段4において合波されるときにそれぞれの偏波方向が一致するように偏波調整操作部51を操作することにより、断層画像が鮮明になるように調整することができる。
【0044】
合波手段4は、2×2の光ファイバカプラからなり、光ファイバFB5を導波した反射光L3と光ファイバFB7を導波した参照光L2とを合波するものである。具体的には合波手段4は、光ファイバFB5を導波した反射光L3を2つの光ファイバFB8、FB9に分岐するとともに、光ファイバFB7を導波した参照光L2を2つの光ファイバFB8、FB9に分岐する。したがって、各光ファイバFB8、FB9においてそれぞれ反射光L3と参照光L2とが合波され、光ファイバFB8内を第1干渉光L4aが導波し、光ファイバFB9内を第2干渉光L4bが導波することになる。つまり、合波手段4は、反射光L3と参照光L2との干渉光L4を2つに干渉光L4a、L4bに分岐する光分岐手段5としても機能している。
【0045】
干渉光検出手段70は、第1干渉光L4aを検出する第1光検出部71と、第2干渉光L4bを検出する第2光検出部72と、第1光検出部71により検出された第1干渉光L4aと第2光検出部72により検出された第2干渉光L4bとの差分を干渉信号ISとして出力する差分アンプ73とを有している。各光検出部71、72は、たとえばフォトダイオード等からなっており、可変光アッテネータ60A、60Bを介して入射される各干渉光L4a、L4bを光電変換し差分アンプ73に入力するものである。差分アンプ73は各干渉光L4a、L4bの差分を増幅し干渉信号ISとして出力するものである。このように、各干渉光L4a、L4bを差分アンプ73によりバランス検波することにより、干渉信号ISを増幅して出力しながら干渉信号IS以外の同相光雑音が除去することができ、断層画像Pの画質の向上を図ることができる。
【0046】
光分岐手段5(合波手段4)と干渉光検出手段70との間には可変光アッテネータ60A、60Bが設けられている。この可変光アッテネータ60A、60Bは第1干渉光L4aおよび第2干渉光L4bのそれぞれの光量を各波長帯域毎に異なる減衰率で減衰し、干渉光検出手段70側に射出するものである。なお、第1干渉光L4aおよび第2干渉光L4b毎にそれぞれ可変光アッテネータ60A、60Bが設けられている。
【0047】
図6は可変光アッテネータ60Aの一例を示す模式図である。可変光アッテネータ60Aは、円盤状の減光フィルタ(NDフィルタ)62と、減光フィルタ62を回転させる駆動手段64とを有している。減光フィルタ62は、図7に示すように、たとえば円周方向(矢印R10方向)に沿って黒色の濃さの度合いが異なるように形成されており、光の減衰率(透過率)が異なっている。この減光フィルタ62のスポット位置62aに第1干渉光L4aが入射され、第1干渉光L4aはスポット位置62aの減衰率(透過率)に従い減衰し、光ファイバFB12に入射される。よって減光フィルタ62が駆動手段64により矢印R10方向に回転したとき、干渉光L4aが透過する位置の減衰率が時間変化することになる。なお、可変光アッテネータ60Bも図6と同一の構成を有している。そして、可変光アッテネータ60A、60Bによる減衰率は、各波長帯域において各光検出部71、72において検出される各干渉光L4a、L4bの光の強度レベルが略均等になるように設定されている。
【0048】
よって、可変光アッテネータ60A、60Bに時間変化とともに異なる波長の干渉光L4a、L4bが入射されたとき、可変光アッテネータ60A、60Bは干渉光L4a、L4bを、波長変化に合わせて減衰率を変えて干渉光L4a、L4bをそれぞれ減衰する。そして、可変光アッテネータ60A、60Bは各波長帯域において各干渉光L4a、L4bの光量が略均等にした状態で干渉光検出手段70側に射出する。これにより、各光検出部71、72において検出される各干渉光L4a、L4bの光強度レベルが全波長帯域において略均等になり、干渉光検出手段70においてバランス検波するときのS/N比の向上を図ることができる。
【0049】
なお、図5において各可変光アッテネータ60A、60Bを設けている場合について例示しているが、各可変光アッテネータ60A、60Bを設けなくても各光検出部71、72における光強度バランスが全波長帯域において略均等である場合には、各可変光アッテネータ60A、60Bは不要である。
【0050】
また、図6および図7において各波長帯域毎にそれぞれ光分岐手段5による分岐比が異なるものであって、各可変光アッテネータ60A、60Bは各波長帯域毎に減衰率を可変とする場合について例示しているが、各光検出部71、72において検出される各干渉光L4a、L4bの光強度レベルの特性が全波長帯域において一定である場合、減衰率を可変にする必要はなく、その特性に合わせた一定の減衰率のアッテネータを用いればよい。
【0051】
また、干渉光検出手段70から出力された干渉信号ISは、増幅器74により増幅された後、信号帯域フィルタ75を介してA/D変換ユニット90に出力される。この信号帯域フィルタ75を設けることにより、干渉信号ISからノイズを除去し、S/N比の向上を図ることができる。
【0052】
図8は図1に示すA/D変換ユニット90の一例を示すブロック図である。A/D変換ユニット90は、干渉光検出手段70により検出された干渉信号ISをデジタル信号に変換し出力するものであって、A/D変換器91、サンプリングクロック発生回路92、制御コントローラ93、干渉信号記憶手段94を有している。A/D変換器91は、干渉計20からアナログ信号として出力される干渉信号ISをデジタル信号にするものである。A/D変換器91は、サンプリングクロック発生回路92から出力されるサンプリングクロックに基づいて干渉信号ISのA/D変換を行うものである。干渉信号記憶手段94はたとえばRAM(ランダムアクセスメモリ)等からなり、デジタル信号化された干渉信号ISを一時的に記憶するものである。このA/D変換器91、サンプリングクロック発生回路92、干渉信号記憶手段94の動作は制御コントローラ93により制御されている。
【0053】
ここで、干渉信号記憶手段94により記憶された干渉信号ISは、周期クロック信号TCLKが干渉信号変換手段101(図11参照)に対し出力されたときに、干渉信号変換手段101により周期クロック信号TCLKが出力されたタイミングを基準として1周期分だけ取得されるようになっている。
【0054】
図9は上述した周期クロック信号TCLKを生成する周期クロック生成手段80の一例を示す模式図である。周期クロック生成手段80は、光源ユニット30から射出される光Lが波長が1周期掃引される毎に1つの周期クロック信号TCLKを出力するものであって、光学レンズ81、83、光学フィルタ82、光検出部84を備えている。そして、光ファイバFB1cから射出された光Lが光学レンズ81を介して光学フィルタ82に入射される。光学フィルタ82を透過した光Lが光学レンズ83を介して光検出部84により検出され、周期クロック信号TCLKをA/D変換ユニット90に出力するようになっている。
【0055】
光学フィルタ82はたとえばエタロン等からなり、光源ユニット30から射出される光の波長が掃引される波長帯域λmin〜λmax内において設定された設定波長λrefの光のみを透過し、それ以外の波長帯域の光を遮光する機能を有している。したがって、図10に示すように、光源ユニット30から周期的に波長が掃引された光Lが射出され、光Lの波長が設定波長λrefになったとき、周期クロック信号TCLKが出力されることになる。
【0056】
このように、実際に光源ユニット30から射出される光Lを用いて周期クロック信号TCLKを生成し出力することにより、光源ユニット30から射出される光Lが波長の掃引開始から所定の光強度になるまでの時間が各周期毎に変わってしまう場合であっても、設定波長λrefから所定の期間T(図4参照)の波長帯域の干渉信号ISを取得することができる。よって、断層画像処理手段100において想定されている波長帯域の干渉信号ISを取得するタイミングで周期クロック信号TCLKを出力することができ、分解能の劣化を抑えることができる。
【0057】
特に、設定波長λrefが、波長の掃引を開始してから所定の時間Tref経過後に射出される波長λrefに設定されているとき、射出される光Lの特性にぶれが生じやすい掃引開始直後の光を用いて断層画像の取得が行われるのを防止し、断層画像の分解能の劣化を抑えることができる。
【0058】
図11は本発明の断層画像処理装置(断層画像処理手段)の好ましい実施の形態を示すブロック図であり、図11を参照して断層画像処理装置(断層画像処理手段)100について説明する。なお、図11のような断層画像処理装置100の構成は、補助記憶装置に読み込まれた断層画像処理プログラムをコンピュータ(たとえばパーソナルコンピュータ等)上で実行することにより実現される。このとき、この断層画像処理プログラムは、CD−ROM等の情報記憶媒体に記憶され、もしくはインターネット等のネットワークを介して配布され、コンピュータにインストールされることになる。
【0059】
断層画像処理手段100は、干渉信号変換手段101、干渉信号分割手段102、干渉信号解析手段103、断層情報取得手段104、断層画像生成手段105等を有している。干渉信号変換手段101は、周期クロック信号TCLKを基準に1周期分の干渉信号ISを干渉信号記憶手段94から取得し、この1周期分の干渉信号ISを波数k(=2π/λ)軸において等間隔になるように変換するものである。なお、この信号変換手法の詳細はUS5956355号明細書に開示されている。
【0060】
具体的には、干渉信号変換手段101には、図12(A)に示すように、光源ユニット30における期間T(図4参照)における時間と波長との関係を示す掃引特性データが記憶されている。そして、干渉信号変換手段101は、図12(B)のような時間変化に対する光強度として干渉信号ISを取得したとき、各時刻における波長を図12(A)の掃引特性データに基づいて割り出す。そして、干渉信号変換手段101は、図12(C)に示すように、波数k(=2π/λ)変化に対する光強度を示す干渉信号ISになるようにデータ列を再配列する。これにより、干渉信号ISから断層情報を算出するときに、フーリエ変換処理、最大エントロピー法による処理等の周波数空間において等間隔であることを前提とするスペクトル解析により分解能の高い断層画像Pを取得することができる。
【0061】
なお、図12においては、説明の便宜上、干渉信号ISのある深さ位置に対応する成分の波形を示し説明しているものであって、実際の干渉信号ISは各深さ位置に対応する成分の波形が重畳した波形となる。
【0062】
図11の干渉信号分割手段102は、光Lが射出されたときに検出される干渉信号ISを異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号IS1〜IS4を生成するものである。具体的には、干渉信号分割手段102は、図12(C)のような測定対象Sのある部位に波長を1周期分掃引しながら測定光L1が照射されたときの干渉信号ISを、図13(A)〜(D)に示すようにたとえば4つの波長帯域の分割干渉信号IS1〜IS4に分割する。このとき、干渉信号分割手段102は、分割干渉信号IS1〜IS4の波長帯域が略同一であって、それぞれ波長帯域が重複するように各分割干渉信号IS1〜IS4を分割する。
【0063】
干渉信号解析手段103は、干渉信号分割手段102により分割された複数の分割干渉信号IS1〜IS4をそれぞれ解析し、各深さ位置における断層情報を中間断層情報r1(z)〜r4(z)として取得するものである。たとえば干渉信号解析手段103は、各分割干渉信号IS1〜IS4をそれぞれスペクトル解析する第1干渉信号解析手段103a〜第4干渉信号解析手段103dを備えている。
【0064】
各干渉信号解析手段103a〜103dは、たとえばフーリエ変換処理、最大エントロピー法(MEM)、Yule−Walker法等の公知のスペクトル解析技術を用いて、図14に示すように深さ位置それぞれについて断層情報(反射率)を逐次取得していく。そして、各干渉信号解析手段103a〜103dは、図17(A)〜(D)に示すような深さ方向について所定の範囲について、各深さ位置における中間断層情報r1(z)〜r4(z)を算出する。
【0065】
ここで、上述のように、各分割干渉信号IS1〜IS4が同一の波長帯域幅になるように生成されたものであるため、第1干渉信号解析手段103a〜第4干渉信号解析手段103dの解析アルゴリズムをほぼ同一のものにすることができるため、効率よくスペクトル解析を行うことができる。
【0066】
また、図16(A)〜(D)に示すように、各分割干渉信号IS1〜IS4がそれぞれ重複した波長帯域を有しているため、干渉信号ISにおいて干渉しない波長帯域が生じるのを防止し、精度良く各深さ位置における中間断層情報r1(z)〜r4(z)を算出することができる。
【0067】
図11の断層情報取得手段104は、干渉信号解析手段103により取得された複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)を用いて断層画像の生成に用いる断層情報r(z)を取得するものである。具体的には、断層情報取得手段104は、図17(A)〜(D)のように取得された複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)について、各深さ位置毎にそれぞれ複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)の平均値を算出することにより、断層画像の生成に用いる断層情報r(z)を取得する。つまり、深さ位置z1の断層情報r(z1)を取得する場合、各中間断層情報r1(z1)〜r4(z1)の平均値=(r1(z1)+r2(z1)+r3(z1)+r4(z1))/4を断層情報r(z1)として算出し取得する。そして、各深さ位置について上述のような計算が行われることにより各深さ位置における断層情報r(z)が取得される。
【0068】
断層画像生成手段105は、断層情報取得手段104により取得された1周期分の干渉信号ISから得られた断層情報r(z)を1ライン分の断層情報r(z)として断層情報蓄積手段105aに記憶する。また、断層画像生成手段105は、図1の光プローブ10により測定光L1が測定対象Sに対し走査されながら照射されたときに、順次取得される複数の断層情報r(z)を記憶していく。そして、回転制御手段32から回転クロック信号RCLKが出力されたとき、記憶していたnライン分の断層情報r(z)を用いて図16に示すような断層画像Pを生成する。たとえば、光源ユニット30から周期クロックTCLKが20kHzで出力され、光プローブ10が20Hzで測定光L1を矢印R1方向に走査され回転クロック信号RCLKが20Hzで出力されるとき、断層画像生成手段105は、n=1024ライン分の断層情報r(z)を用いて1枚の断層画像Pを生成する。
【0069】
このように、複数の分割干渉信号IS1〜IS4から複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)を取得し、断層情報r(z)を取得し断層画像Pを生成することにより、ノイズを低減するとともに、サイドローブ等アーティファクトの増加を防ぎ、分解能を向上させることができる。
【0070】
すなわち、OCT計測においては反射光L3と参照光L2との光路長差が干渉信号の波長(周波数)に1対1でエンコードされている。したがって、図17に示すように、波数kの空間における干渉信号ISをフーリエ変換等のスペクトル解析することにより、測定対象Sの深さ位置における断層情報を得ることができる。よって、上述した図12に示すように、干渉信号変換手段101において干渉信号ISの変換を行うようにしている。
【0071】
しかし、実際には、掃引波長の揺らぎや光断層画像化システム1に用いる各種光学部品の波長依存特性等により、干渉信号ISを波数kに対し等間隔に再配列されない場合がある。たとえば図18(A)に示すように、動作環境等の影響により想定している波長掃引特性(図18(A)中の波線)からずれた波長の掃引が行われ、ある深さ位置から図18(B)のような干渉信号ISが得られたとする。このとき、干渉信号変換手段101において干渉信号ISの変換が行われたとしても、図18(C)に示すように、干渉信号ISを波数kに対し等間隔に再配列することができない。したがって、干渉信号解析手段103において変換された干渉信号ISを解析したとき、図18(D)に示すように、ある深さ位置のみにピークを有するような断層情報を得ることができず、分解能の低下を招くことになる。
【0072】
特に、SS−OCT計測に代表されるFD−OCT計測においては、干渉信号ISのどの波長帯域の信号成分からでも、各深さ位置における断層情報の情報が含まれているという性質を有している。この性質を利用し、1周期分の干渉信号ISから複数の分割干渉信号IS1〜IS4を生成し、各分割干渉信号IS1〜IS4から複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)を取得し、各中間断層情報r1(z)〜r4(z)にそれぞれ含まれている波長掃引の揺らぎに起因するノイズ成分等を相殺することにより、分解能を向上させることができる。また、複数の干渉信号IS1〜IS4を取得するために、測定対象Sの同一の部位に複数周期分の光を照射する必要がなく、分解能を向上させながら高速に断層画像Pの取得を行うことができ、特に断層画像Pを動画表示するときに有効である。
【0073】
さらに、上述した掃引される波長の揺らぎに限らず、干渉計20に用いられる光ファイバ等の光学部品の波長依存特性や測定対象Sの波長分散特性等に起因するノイズ成分等を除去し分解能を向上させることができる。たとえば光ファイバは波長帯域毎に光路長が異なる特性を有する場合があり、この光路長のずれは、光源ユニット30から射出される光Lの時間経過に対する波長と、干渉光検出手段70において検出される干渉光L4の時間経過に対する波長との間のずれとなって表れる。さらに、生体組織等の測定対象Sに波長分散特性を有する場合があり、この波長分散特性によっても上述したずれが生じる。したがって、干渉信号変換手段101による光源ユニット30波長掃引特性に基づく再配列を行っただけでは波数kに対し等間隔に再配列できない場合がある。また、上述した光断層画像化システム1や測定対象Sに内在する不確定要素のすべてを予め把握することは困難である。
【0074】
一方、図11の断層情報取得手段104において、測定対象Sの同一の部位から取得された複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)を用いて断層情報r(z)を取得することにより、各中間断層情報r1(z)〜r4(z)に含まれている光学部品の波長依存特性や測定対象Sの波長分散特性等に起因するノイズ成分等を相殺することにより、分解能を向上させることができる。
【0075】
なお、上記実施の形態において、断層情報取得手段104は複数の中間断層情報r1(z)〜r4(r)の平均値から断層情報r(z)を取得するようにしているが、他の方法により取得するようにしてもよい。
【0076】
たとえば、中間断層情報r1(z)〜r4(z)のうち、複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)の平均値raveを算出し、この平均値raveから最も離れた中間断層情報(たとえばr4(z)とする)を除外した中間断層情報r1(z)〜r3(z)の平均値を断層情報r(z)とするものであってもよい。これにより、ある波長帯域(たとえば分割干渉信号IS4にのみ含まれる波長帯域)について波長掃引の揺らぎが大きい場合や光学部品の波長依存特性や測定対象Sの波長分散特性等が特に大きい場合、この波長帯域から取得した分割干渉信号IS4を除外した複数の中間断層情報r1(z)〜r3(z)から断層情報r(z)を取得することができるため、より分解能を向上させることができる。
【0077】
あるいは、平均値raveに近い値であればあるほど重み付けを大きくするような関数を用いて断層情報を取得するようにしてもよい。具体的には、断層情報取得手段104において、複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)の平均値raveが算出され、重み付け関数g(x)を用いて、i=1〜4:分割干渉信号の数として
【数1】
【0078】
が算出される。
【0079】
ここで、重み付け関数g(x)はたとえばg(x)=( | x |p + ε)-1(εは係数)で定義されている。したがって、上記式(1)は平均値raveからの距離(ri−rave)が大きい中間断層情報riほど、値の小さい重み付け関数g(x)が乗算され、重み付け加算がなされることになる。
【0080】
あるいは、断層情報取得手段104が、複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)の平均値raveおよび分散値σを算出し、複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)のうち、中間断層情報riと平均値raveとの差が分散値σよりも小さい中間断層情報riを抽出し、抽出した中間断層情報riを用いて断層情報r(z)を取得するようにしてもよい。具体的には、上記式(1)の重み付け関数g(x)として
【数2】
【0081】
を用いるようにしてもよい。なお、式(2)のσは分散(σ2=Σ(ri−rave)2)であり、cは調整用の係数である。この場合、式(1)は平均値に近い中間断層情報riのみを用いて重み付け加算がなされることになる。
【0082】
この場合であっても、ある波長帯域について波長掃引の揺らぎが大きい場合や光学部品の波長依存特性や測定対象Sの波長分散特性等が特に大きい場合、この波長帯域から取得した分割干渉信号IS4を除外した複数の中間断層情報riから断層情報r(z)を取得することができるため、より分解能を向上させることができる。
【0083】
図19は本発明の断層画像処理方法の好ましい実施形態を示すフローチャートであり、図1から図19を参照して光断層画像化システムの動作例について説明する。まず、光源ユニット30から所定の波長帯域内において一定の周期で掃引された光Lが射出される(ステップST1)。光Lは光分岐手段2において2分され、干渉計20と周期クロック生成手段80とにそれぞれ入射される。干渉計20の光分割手段3において光Lは測定光L1と参照光L2とに光分割され、測定光L1は光ファイバFB2側に射出され、参照光L2は光ファイバFB3側に射出される(ステップST2)。
【0084】
測定光L1は光サーキュレータ21、光ファイバFB4および光プローブ10を導波し測定対象Sに照射される。そして、測定対象Sの各深さ位置zにおいて反射した反射光L3および後方散乱した光が再び光プローブ10に入射される。この反射光L3は光プローブ10、光サーキュレータ21および光ファイバFB5を介して合波手段4に入射される。
【0085】
一方、参照光L2は光ファイバFB3、光サーキュレータ22、光ファイバFB6を介して光路長調整手段40に入射される。そして、光路長調整手段40により光路長が調整された参照光L2が再び光ファイバFB6、光サーキュレータ22、偏波コントローラ50、光ファイバFB7を導波し合波手段4に入射される。
【0086】
合波手段4において、反射光L3と参照光L2とが合波されるとともに(ステップSt3)、合波されたときの干渉光L4が合波手段4(光分岐手段5)において分岐され、2つの干渉光L4a、4bが光ファイバFB8、FB9にそれぞれ射出される。そして、各光ファイバFB8、FB9を導波した各干渉光L4a、L4bが可変光アッテネータ60A、60Bにより減衰され、干渉光検出手段70においてバランス検波される(ステップST4)。
【0087】
ここで、干渉光検出手段70におけるバランス検波の前に、分岐された第1干渉光L4aおよび第2干渉光L4bを各干渉光L4a、L4bの全波長帯域において略均等になるように、波長帯域毎に異なる減衰率で減衰する可変光アッテネータ60A、60Bを設けることにより、干渉光検出手段70でのバランス検波により非干渉成分を確実に除去してS/N比の向上を図ることができる。
【0088】
干渉光検出手段70によりバランス検波により検出された干渉光L4は干渉信号ISとして出力され、増幅器74および信号帯域フィルタ75を経てA/D変換ユニット90に出力される。その後、干渉信号ISは、A/D変換ユニット90においてA/D変換され、干渉信号記憶手段94に格納される。
【0089】
光源ユニット30から光分岐手段2を介して周期クロック生成手段80に入射された光Lの波長が設定波長λrefであるとき、光学フィルタ82を通過した光Lが光学レンズ83を介して光検出部84に検出される。すると、周期クロック生成手段80から信号変換手段101に周期クロック信号TCLKが出力され、信号変換手段101において、干渉信号記憶手段94に記憶された干渉信号ISのうち1周期分の干渉信号が取得される。
【0090】
断層画像処理手段100において、干渉信号変換手段101により1ライン分の干渉信号ISに波数kについて等間隔になるように信号変換処理が施される(ステップST5、図12参照)。信号変換された干渉信号ISは、干渉信号分割手段102により複数の分割干渉信号IS1〜IS4に分割される(ステップST6、図13参照)。その後、干渉信号解析手段103により、各分割干渉信号IS1〜IS4がスペクトル解析されることにより、各分割干渉信号IS1〜IS4からそれぞれ各深さ位置における断層情報(反射率)が中間断層情報r1(z)〜r4(z)として取得される(ステップST7、図14参照)。
【0091】
断層情報取得手段104において、各中間断層情報r1(z)〜r4(z)を用いて断層画像として用いる断層情報r(z)が取得される。具体的には、たとえば各中間断層情報r1(z)〜r4(z)の平均値を算出することにより、断層情報r(z)が取得される(ステップST8)。断層画像生成手段105において、取得した断層情報r(z)が測定光L1の走査方向(矢印R1方向)についてnライン分だけ蓄積される。そして、回転クロック信号RCLKが検出したとき、蓄積した複数の断層情報r(z)を用いて1枚の断層画像Pが生成される(ステップST9)。その後、画質補正手段106において、生成した断層画像Pについて画質補正が行われ、画質補正された断層画像Pが図1の表示装置110に表示される(ステップST10、図16参照)。
【0092】
上記実施の形態によれば、複数の分割干渉信号IS1〜IS4を取得し、各分割干渉信号IS1〜IS4をそれぞれ解析することにより測定対象Sの各深さ位置の断層情報を中間断層情報r1(z)〜r4(z)として複数取得し、取得した複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)を用いて測定対象Sの断層情報r(z)を取得し、取得した断層情報r(z)を用いて測定対象Sの断層画像Pを生成することにより、射出される光の波長に揺らぎが生じて、断層画像処理手段において想定されている干渉信号の波長帯域と実際に射出された光の波長帯域との間にずれが生じた場合であっても、複数の中間断層情報を用いて揺らぎの影響を最小限にした断層情報を取得し断層画像を生成することができるため、分解能を向上させることができる。
【0093】
なお、図13に示すように、波長を1周期分掃引したときに取得した干渉信号ISを異なる波長帯域毎に複数分割することにより、複数の干渉信号IS1〜IS4を取得するようにしたとき、FD−OCT計測においては、干渉信号ISのどの波長帯域の信号成分からでも、各深さ位置における断層情報の情報が含まれているという性質を利用し、複数の干渉信号を取得するために、測定対象Sの同一の部位に複数周期分の光を照射する必要がなく、分解能を向上させながら高速に断層画像Pの取得を行うことができ、特に断層画像Pを動画表示するときに有効である。
【0094】
さらに、干渉信号分割手段102が干渉信号IS1〜IS4の波長帯域幅が略同一になるように分割したとき、各干渉信号IS1〜IS4を解析するときに同一のアルゴリズムを用いることができるため、効率よく各干渉信号IS1〜IS4の解析を行うことができる。
【0095】
また、干渉信号分割手段102が分割したときの干渉信号IS1〜IS4の波長帯域がそれぞれ重複するように分割するものであるとき、解析しない波長帯域が発生するのを防止して分解能を向上させることができる。
【0096】
さらに、断層情報取得手段104が、複数の中間断層情報の平均値を算出することにより断層情報を取得するとき、各干渉信号IS1〜IS4に含まれるノイズ成分等を相殺して分解能を向上させることができる。
【0097】
また、断層情報取得手段104が、複数の中間断層情報の平均値を算出し、平均値から最も離れた値を有する中間断層情報を除く複数の中間断層情報の平均値を算出することにより断層情報を取得する場合、あるいは、複数の中間断層情報の平均値を算出し、平均値に近いほど重み付けが大きくなるように、各中間断層情報に重み付け加算を行うことにより断層情報を取得する各干渉信号IS1〜IS4に含まれるノイズ成分等を相殺して分解能を向上させることができる。特に、1周期分の干渉信号を分割して得られた複数の干渉信号から複数の中間断層情報を取得したとき、ある波長帯域の干渉信号が大きなノイズ成分を有しているときに、ノイズ成分の大きい中間断層情報を除外して断層情報r(z)を取得することができるため、より分解能を向上させることができる。
【0098】
光Lが周期的に掃引されたときに時間変化とともに得られる干渉信号ISを、光Lの波長が掃引されたときの波数変化に対する干渉信号ISに変換する干渉信号変換手段101をさらに備えているとき、スペクトル解析するときの前提となる波数変化に対する干渉信号ISへ変換するときに、光源ユニット30の波長掃引特性に基づいて変換することができるため、分解能の向上を図ることができる。
【0099】
本発明の実施の形態は、上記実施の形態に限定されない。たとえば、図11の干渉信号分割手段102において、図13のような4つの分割干渉信号IS1〜IS4を取得する場合について例示しているが、4つに限られるものではなく複数であればいくつでもよい。
【0100】
さらに、図11の断層情報取得手段104において、平均値や重み付け加算により断層情報r(z)を取得する場合について例示しているが、最頻法(Mode)や中央値(メディアン)等を利用した公知の手法により、断層情報r(z)を取得するようにしてもよい。
【0101】
さらに、図13において、干渉信号変換手段101により信号変換された後、干渉信号分割手段102が複数の干渉信号IS1〜IS4を取得するようにしているが、干渉信号分割手段102が複数の干渉信号IS1〜IS4を取得した後、干渉信号変換手段101により干渉信号IS1〜IS4の信号変換を行うようにしても良い。その後、断層情報取得手段104が、中間断層情報r1(z)〜r4(z)から上述した各種方法により断層情報r(z)を取得してもよい。
【0102】
さらに、図2の光プローブ10は、円周方向(矢印R1方向)に測定光L1を走査しながら照射する場合について例示しているが、光プローブ10の長手方向に測定光L1を走査しながら照射するものであっても良い。このとき、光ファイバ12および光学レンズ15はプローブ外筒11に対し、光プローブ10の長手方向に移動可能な構造を有している。
【0103】
また、上記実施の形態において図11の断層画像処理装置100をいわゆるSS−OCT計測に適用した場合について例示しているが、図20に示すようなSD−OCT計測を用いた光断層画像化システムについても同様に適用することができる。なお、図21においては、光学ユニット130は、広帯域な低コヒーレンス光を射出するものであり、干渉光検出手段170において、干渉光L4がレンズ171介して回折格子素子172に入射され、回折格子素子172において各波長帯域毎に分光された後、レンズ173を介して複数の光検出素子(フォトダイオード等)が配列された光検出部174によって干渉信号ISとして検出されることになる。
【0104】
図20のようなSD−OCT計測による光断層画像化システムであっても、上記SS−OCT計測の場合と同様、干渉計20に用いられる光ファイバ等の光学部品の波長依存特性や測定対象Sの波長分散特性等に起因するノイズ成分等が含まれている場合がある。さらに、SD−OCT計測特有の問題として、ディテクタアレイ等に構成された光検出部174によって干渉信号ISを観測する場合、各ディテクタの波長検出特性により光検出部174が観測する干渉光L4の所定の波長帯域が波長(周波数)について線形になっていない場合があり、この場合にも分解能の劣化が生じる。
【0105】
そこで、干渉信号ISのどの波長帯域の信号成分からでも、各深さ位置における断層情報の情報が含まれているという性質を利用し、各分割干渉信号IS1〜IS4から取得した複数の中間断層情報r1(z)〜r4(z)を用いて断層情報r(z)を取得することにより、各中間断層情報r1(z)〜r4(z)に含まれているノイズ成分等を除去し分解能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の光断層画像化システムの好ましい実施の形態を示す概略構成図
【図2】図1の光断層画像化システムに使用される光プローブの一例を示す模式図
【図3】図1の光断層画像化システムにおける光源ユニットの一例を示す模式図
【図4】図3の光源ユニットから射出される光の波長が掃引される様子を示すグラフ
【図5】図1の光断層画像化システムにおける干渉計の一例を示す模式図
【図6】図5の干渉計における可変光アッテネータの一例を示す模式図
【図7】図6の可変光アッテネータにおける減光フィルタの一例を示す模式図
【図8】図1の光断層画像化システムにおけるA/D変換ユニットの一例を示すブロック図
【図9】図1の光断層画像化システムにおける周期クロック生成手段の一例を示す模式図
【図10】図10の周期クロック生成手段により生成される周期クロック信号の一例を示すグラフ
【図11】図1の断層画像処理手段の一例を示すブロック図
【図12】図11の信号変換手段において干渉信号が変換される様子を示す模式図
【図13】図11の干渉信号分割手段において複数の干渉信号が複数取得される様子を示すグラフ
【図14】図11の干渉信号解析手段においてある深さ位置から得られる中間断層情報の一例を示すグラフ
【図15】図11の干渉信号解析手段において取得された複数の中間断層情報の一例を示すグラフ
【図16】図11の断層画像生成手段により生成される断層画像の一例を示す模式図
【図17】干渉信号から断層情報が取得される様子を示すグラフ
【図18】干渉信号変換手段により干渉信号を変換した場合にも分解能の低下を引き起こす場合の一例を示すグラフ
【図19】本発明の断層画像処理方法の好ましい実施形態を示すフローチャート
【図20】本発明の光断層画像化システムの別の実施形態を示す模式図
【符号の説明】
【0107】
1 光断層画像化システム
3 光分割手段
4 合波手段
10 光プローブ
20 干渉計
30、130 光源ユニット
70、170 干渉光検出手段
100 断層画像処理手段(断層画像処理装置)
101 干渉信号変換手段
102 干渉信号分割手段
103 干渉信号解析手段
104 断層情報取得手段
105 断層画像生成手段
106 画質補正手段
110 表示装置
IS 干渉信号
IS1〜IS4 分割干渉信号
L 光
L1 測定光
L2 参照光
L3 反射光
L4 干渉光
P 断層画像
r 断層情報
r1(z)〜r4(z) 中間断層情報
S 測定対象
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の波長帯域の光を射出し、射出した光を測定光と参照光とに分割し、該測定光が測定対象の各深さ位置において反射したときの反射光と前記参照光とを合波し、合波した前記反射光と前記参照光との干渉光を干渉信号として検出したときに、該干渉信号から断層画像を生成する断層画像処理方法であって、
前記光が射出されたときに検出される前記干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成し、
生成した前記複数の分割干渉信号をそれぞれ解析することにより前記測定対象の各深さ位置の断層情報を中間断層情報として複数取得し、
取得した複数の前記中間断層情報を用いて前記測定対象の断層情報を取得し、
取得した前記断層情報を用いて前記測定対象の断層画像を生成する
ことを特徴とする断層画像処理方法。
【請求項2】
所定の波長帯域の光を射出し、射出した光を測定光と参照光とに分割し、該測定光が測定対象の各深さ位置において反射したときの反射光と前記参照光とを合波し、合波した前記反射光と前記参照光との干渉光を干渉信号として検出したときに、該干渉信号から断層画像を生成する断層画像処理装置であって、
前記光が射出されたときに検出される前記干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成する干渉信号分割手段と、
該分割干渉信号生成手段により生成された前記複数の分割干渉信号をそれぞれ解析することにより前記測定対象の各深さ位置の断層情報を中間断層情報として複数取得する干渉信号解析手段と、
該干渉信号解析手段において取得された前記複数の中間断層情報を用いて前記測定対象の断層情報を取得する断層情報取得手段と、
該断層情報取得手段により取得された前記断層情報を用いて前記測定対象の断層画像を生成する断層画像生成手段と
を備えたことを特徴とする断層画像処理装置。
【請求項3】
前記干渉信号分割手段が、前記各分割干渉信号の波長帯域幅が略同一になるように前記干渉信号を分割するものであることを特徴とする請求項2記載の断層画像処理装置。
【請求項4】
前記干渉信号分割手段が、前記各分割干渉信号の波長帯域がそれぞれ重複するように前記干渉信号を分割するものであることを特徴とする請求項2または3記載の断層画像処理装置。
【請求項5】
前記断層情報取得手段が、前記複数の中間断層情報の平均値を算出することにより前記断層情報を取得するものであることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項記載の断層画像処理装置。
【請求項6】
前記断層情報取得手段が、前記複数の中間断層情報の平均値を算出し、該平均値から最も離れた値を有する前記中間断層情報を除く前記複数の中間断層情報の平均値を算出することにより前記断層情報を取得するものであることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項記載の断層画像処理装置。
【請求項7】
前記断層情報取得手段が、前記複数の中間断層情報の平均値を算出し、該平均値に近いほど重み付けが大きくなるように、前記各中間断層情報に重み付け加算を行うことにより前記断層情報を取得するものであることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項記載の断層画像処理装置。
【請求項8】
前記断層情報取得手段が、前記複数の中間断層情報の平均値および分散値を算出し、前記複数の中間断層情報のうち、前記中間断層情報と前記平均値との差が前記分散値よりも小さい前記中間断層情報を抽出し、抽出した前記中間断層情報を用いて前記断層情報を取得するものであることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項記載の断層画像処理装置。
【請求項9】
前記干渉信号もしくは前記分割干渉信号を、前記光の波長が掃引されたときの波数変化に対する前記干渉信号もしくは前記分割干渉信号に変換する干渉信号変換手段をさらに備えたことを特徴とする請求項2から8のいずれか1項記載の断層画像処理装置。
【請求項10】
前記光が、前記波長帯域内において波長を掃引しながら周期的に射出されるものであり、前記干渉信号分割手段が、前記光が1周期分射出されたときに検出される前記干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成するものであることを特徴とする請求項2から9のいずれか1項記載の断層画像処理装置。
【請求項11】
前記光が、前記所定の波長帯域からなる低コヒーレンス光を周期的に射出されるものであり、前記干渉信号分割手段が、前記光が1周期分射出されたときに検出される前記干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成するものであることを特徴とする請求項2から9のいずれか1項記載の断層画像処理装置。
【請求項12】
所定の波長帯域の光を射出し、射出した光を測定光と参照光とに分割し、該測定光が測定対象の各深さ位置において反射したときの反射光と前記参照光とを合波し、合波した前記反射光と前記参照光との干渉光を干渉信号として検出したときに、
コンピュータに、
前記光が射出されたときに検出される前記干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成し、生成した前記複数の分割干渉信号をそれぞれ解析することにより前記測定対象の各深さ位置の断層情報を中間断層情報として複数取得し、
取得した複数の前記中間断層情報を用いて前記測定対象の断層情報を取得し、
取得した前記断層情報を用いて前記測定対象の断層画像を生成する
ことを実行させるための断層画像処理プログラム。
【請求項13】
所定の波長帯域の光を射出する光源ユニットと、
該光源ユニットから射出された光を測定光と参照光とに分割する光分割手段と、
該光分割手段により分割された前記測定光が測定対象の各深さ位置において反射したときの反射光と前記参照光とを合波する合波手段と、
該合波手段により合波された前記反射光と前記参照光との干渉光を干渉信号として検出する干渉光検出手段と、
該干渉光検出手段により検出された前記干渉信号から前記測定対象の断層情報を取得し該測定対象の断層画像を生成する断層画像処理手段と
を備え、
該断層情報処理手段が、
前記干渉光検出手段により検出された前記干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成する干渉信号分割手段と、
該干渉信号分割手段により生成された前記複数の分割干渉信号をそれぞれ解析することにより前記測定対象の各深さ位置の断層情報を中間断層情報として複数取得する干渉信号解析手段と、
該干渉信号解析手段において取得された前記複数の中間断層情報を用いて前記測定対象の断層情報を取得する断層情報取得手段と、
該断層情報取得手段により取得された前記断層情報を用いて前記測定対象の断層画像を生成する断層画像生成手段と
を備えたものであることを特徴とする光断層画像化システム。
【請求項14】
前記光源ユニットが、前記波長帯域内において波長を掃引しながら周期的に前記光を射出するものであり、前記干渉信号分割手段が、前記光が1周期分射出されたときに検出される前記干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成するものであることを特徴とする請求項13記載の光断層画像化システム。
【請求項15】
前記光源ユニットが、前記所定の波長帯域からなる低コヒーレンス光を周期的に射出するものであり、前記干渉信号分割手段が、前記光が1周期分射出されたときに検出される前記干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成するものであることを特徴とする請求項13記載の光断層画像化システム。
【請求項1】
所定の波長帯域の光を射出し、射出した光を測定光と参照光とに分割し、該測定光が測定対象の各深さ位置において反射したときの反射光と前記参照光とを合波し、合波した前記反射光と前記参照光との干渉光を干渉信号として検出したときに、該干渉信号から断層画像を生成する断層画像処理方法であって、
前記光が射出されたときに検出される前記干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成し、
生成した前記複数の分割干渉信号をそれぞれ解析することにより前記測定対象の各深さ位置の断層情報を中間断層情報として複数取得し、
取得した複数の前記中間断層情報を用いて前記測定対象の断層情報を取得し、
取得した前記断層情報を用いて前記測定対象の断層画像を生成する
ことを特徴とする断層画像処理方法。
【請求項2】
所定の波長帯域の光を射出し、射出した光を測定光と参照光とに分割し、該測定光が測定対象の各深さ位置において反射したときの反射光と前記参照光とを合波し、合波した前記反射光と前記参照光との干渉光を干渉信号として検出したときに、該干渉信号から断層画像を生成する断層画像処理装置であって、
前記光が射出されたときに検出される前記干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成する干渉信号分割手段と、
該分割干渉信号生成手段により生成された前記複数の分割干渉信号をそれぞれ解析することにより前記測定対象の各深さ位置の断層情報を中間断層情報として複数取得する干渉信号解析手段と、
該干渉信号解析手段において取得された前記複数の中間断層情報を用いて前記測定対象の断層情報を取得する断層情報取得手段と、
該断層情報取得手段により取得された前記断層情報を用いて前記測定対象の断層画像を生成する断層画像生成手段と
を備えたことを特徴とする断層画像処理装置。
【請求項3】
前記干渉信号分割手段が、前記各分割干渉信号の波長帯域幅が略同一になるように前記干渉信号を分割するものであることを特徴とする請求項2記載の断層画像処理装置。
【請求項4】
前記干渉信号分割手段が、前記各分割干渉信号の波長帯域がそれぞれ重複するように前記干渉信号を分割するものであることを特徴とする請求項2または3記載の断層画像処理装置。
【請求項5】
前記断層情報取得手段が、前記複数の中間断層情報の平均値を算出することにより前記断層情報を取得するものであることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項記載の断層画像処理装置。
【請求項6】
前記断層情報取得手段が、前記複数の中間断層情報の平均値を算出し、該平均値から最も離れた値を有する前記中間断層情報を除く前記複数の中間断層情報の平均値を算出することにより前記断層情報を取得するものであることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項記載の断層画像処理装置。
【請求項7】
前記断層情報取得手段が、前記複数の中間断層情報の平均値を算出し、該平均値に近いほど重み付けが大きくなるように、前記各中間断層情報に重み付け加算を行うことにより前記断層情報を取得するものであることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項記載の断層画像処理装置。
【請求項8】
前記断層情報取得手段が、前記複数の中間断層情報の平均値および分散値を算出し、前記複数の中間断層情報のうち、前記中間断層情報と前記平均値との差が前記分散値よりも小さい前記中間断層情報を抽出し、抽出した前記中間断層情報を用いて前記断層情報を取得するものであることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項記載の断層画像処理装置。
【請求項9】
前記干渉信号もしくは前記分割干渉信号を、前記光の波長が掃引されたときの波数変化に対する前記干渉信号もしくは前記分割干渉信号に変換する干渉信号変換手段をさらに備えたことを特徴とする請求項2から8のいずれか1項記載の断層画像処理装置。
【請求項10】
前記光が、前記波長帯域内において波長を掃引しながら周期的に射出されるものであり、前記干渉信号分割手段が、前記光が1周期分射出されたときに検出される前記干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成するものであることを特徴とする請求項2から9のいずれか1項記載の断層画像処理装置。
【請求項11】
前記光が、前記所定の波長帯域からなる低コヒーレンス光を周期的に射出されるものであり、前記干渉信号分割手段が、前記光が1周期分射出されたときに検出される前記干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成するものであることを特徴とする請求項2から9のいずれか1項記載の断層画像処理装置。
【請求項12】
所定の波長帯域の光を射出し、射出した光を測定光と参照光とに分割し、該測定光が測定対象の各深さ位置において反射したときの反射光と前記参照光とを合波し、合波した前記反射光と前記参照光との干渉光を干渉信号として検出したときに、
コンピュータに、
前記光が射出されたときに検出される前記干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成し、生成した前記複数の分割干渉信号をそれぞれ解析することにより前記測定対象の各深さ位置の断層情報を中間断層情報として複数取得し、
取得した複数の前記中間断層情報を用いて前記測定対象の断層情報を取得し、
取得した前記断層情報を用いて前記測定対象の断層画像を生成する
ことを実行させるための断層画像処理プログラム。
【請求項13】
所定の波長帯域の光を射出する光源ユニットと、
該光源ユニットから射出された光を測定光と参照光とに分割する光分割手段と、
該光分割手段により分割された前記測定光が測定対象の各深さ位置において反射したときの反射光と前記参照光とを合波する合波手段と、
該合波手段により合波された前記反射光と前記参照光との干渉光を干渉信号として検出する干渉光検出手段と、
該干渉光検出手段により検出された前記干渉信号から前記測定対象の断層情報を取得し該測定対象の断層画像を生成する断層画像処理手段と
を備え、
該断層情報処理手段が、
前記干渉光検出手段により検出された前記干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成する干渉信号分割手段と、
該干渉信号分割手段により生成された前記複数の分割干渉信号をそれぞれ解析することにより前記測定対象の各深さ位置の断層情報を中間断層情報として複数取得する干渉信号解析手段と、
該干渉信号解析手段において取得された前記複数の中間断層情報を用いて前記測定対象の断層情報を取得する断層情報取得手段と、
該断層情報取得手段により取得された前記断層情報を用いて前記測定対象の断層画像を生成する断層画像生成手段と
を備えたものであることを特徴とする光断層画像化システム。
【請求項14】
前記光源ユニットが、前記波長帯域内において波長を掃引しながら周期的に前記光を射出するものであり、前記干渉信号分割手段が、前記光が1周期分射出されたときに検出される前記干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成するものであることを特徴とする請求項13記載の光断層画像化システム。
【請求項15】
前記光源ユニットが、前記所定の波長帯域からなる低コヒーレンス光を周期的に射出するものであり、前記干渉信号分割手段が、前記光が1周期分射出されたときに検出される前記干渉信号を異なる波長帯域毎に分割して複数の分割干渉信号を生成するものであることを特徴とする請求項13記載の光断層画像化システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図7】
【公開番号】特開2008−128710(P2008−128710A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311288(P2006−311288)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100134245
【弁理士】
【氏名又は名称】本澤 大樹
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100134245
【弁理士】
【氏名又は名称】本澤 大樹
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]