説明

新型構造とする冶金スラグポット及びその製造方法

ポット口の口径がポットボトムの直径より大きい、溶融状の鋼(鉄)スラグを装うためのポット形容器であって、前記冶金スラグポットが鋼板により溶接されてなることを特徴とする新型構造とする冶金スラグポットを提供する。本発明の新型構造とする冶金スラグポットによれば、溶接プロセスにより、圧延した鋼板をポットに溶接することができる。これにより、環境への汚染を大幅に減少することができる。前記冶金スラグポットのポット壁を構成する鋼板の結晶粒は、その粗さが均一で、キャビテーション、収縮孔、気孔、偏析、罅割れ、非金属不純物、高温割れ、低温割れ等の欠陥が殆ど存在しないため、且つ、スラグポットのポット壁を構成する鋼板の結晶粒の均一性は一般の圧延鋼材と同一であるため、スラグポットの溶接性と修復性が良く、スラグポットの使用寿命を大幅に延長すると共に、生産現場における常に発生するスラグポットの割れ等の安全危険をなくすことができ、コストを大きく低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冶金分野に係り、具体的に、冶金鋳造に用いる新型構造とする冶金スラグポット及びその製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
スラグポットは、鉄鋼製錬の時に使われる鋼(鉄)スラグを装うための容器である。いままで、従来のスラグポットは、基本的に伝統的な鋳造プロセスにより鋳造される鋼(鉄)スラグを装う容器である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
伝統的な鋳造プロセスにより冶金スラグポットを製造する方法については、以下のような問題がある。
【0004】
(一)環境への汚染。周知のように、鋳造は、機械加工の分野において環境保護問題が最も大きいものであり、即ち、所謂「一番汚い」職種の一つである。スラグポットの鋳造は同様である。例えば、鋳造した残りの液体の鋼スラグ又は鉄スラグを砂窪に転覆する過程で、大量の粉塵、煙、水蒸気が空間に充満するように上がり、作業環境が劣悪となり、現場の汚染は、電器設備の故障が常に発生することをもたらす恐れがあり、鋼スラグ及び廃気における有害気体、有機炭(TOC)及び重金属(カドミウム、クロム、銅、水銀、ニッケル、鉛、亜鉛)の排出濃度が高く、作業員の身体健康が深刻に影響されるようになっている。そのため、スラグポットの鋳造による環境への汚染問題は非常に大きい。
【0005】
(二)安全危険は存在する。鋳造によるスラグポットの結晶粒は一般の圧延した鋼材より粗い(熱圧力加工を経過していないため、結晶粒は依然として原始状態にある)、そして粗さが均一でない(冷却条件の違いにより)ため、大型の冶金設備による鋳造においてキャビテーション、収縮孔、気孔、偏析、罅割れ、非金属不純物、高温割れ、低温割れ等のような各種の欠陥が避けずに存在し、製造、使用過程の生産現場にはスラグポットの割れが常に発生し、生産及び操作人員に対して安全危険が齎される。
【0006】
(三)前記の原因によれば、大型の冶金設備による鋳造においてキャビテーション、収縮孔、気孔、偏析、罅割れ、非金属不純物、高温割れ、低温割れ等のような各種の欠陥が避けずに存在し、その使用性能に深刻に影響される。
【0007】
(四)前記の原因によれば、鋳造によるスラグポットは、その溶接性が悪く、修復性が悪く、修理コストが高くなる。そのため、鋳造によるスラグポットの使用寿命が短くなる。
【0008】
(五)同様に、スラグポットによる鋳造は、各種の欠陥の原因が避けずにいつも存在するため、前記スラグポットが数ヶ月使用された後廃棄されることになる。一方、スラグポットの使用量がかなり大きいため、例えば、我が国においてある大手鉄鋼会社を例として、近年となり、5.3立方メートル容量のスラグポットだけは一年間当たりに100個以上消耗され、現行の鋳造スラグポットの使用コストが極めて大きくなり、コスト低減及び利益増加に不利である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記問題を解決するために、本発明に係る新型構造とする冶金スラグポットの技術手段は以下である。
【0010】
本発明に係る新型構造とする冶金スラグポットは、ポット口の口径がポットボトムの直径より大きく、溶融状の鋼スラグ又は鉄スラグを装う、転覆用のポット形の容器であって、
前記冶金スラグポットは、合金鋼板又は炭素鋼板をスラグポットのポット壁及びスラグポットのポット壁として溶接されてなる、ことを特徴とするものである。
【0011】
本発明による新型構造とする冶金スラグポットは、前記新型構造とする冶金スラグポット用の合金鋼板又は炭素鋼板の厚さが40mm〜120mmの範囲にある、ことを特徴とするものである。
【0012】
本発明による新型構造とする冶金スラグポットは、前記新型構造とする冶金スラグポットの外周面において、補強リブ(板)が溶接されている、ことを特徴とするものである。
【0013】
本発明による新型構造とする冶金スラグポットは、前記新型構造とする冶金スラグポットのポット口の外周において、「補強フランジリング」が溶接されて形成し、前記「補強フランジリング」は、ポット口の外周に溶接されて形成する補強リブ(板)である、ことを特徴とするものである。
【0014】
本発明による新型構造とする冶金スラグポットは、前記新型構造とする冶金スラグポットのポット壁の傾斜角(勾配)は75度〜55度の範囲にあり、スラグポットのポット壁の傾斜角(勾配)は、スラグポットのポット壁とポットボトムに平行する平面とのなす角(α)である、ことを特徴とするものである。
【0015】
本発明による新型構造とする冶金スラグポットは、前記新型構造とする冶金スラグ鍋が熱間圧延合金鋼板又は熱間圧延炭素鋼板をポット壁及びポットボトムとして溶接されてなる、ことを特徴とするものである。
【0016】
本発明による新型構造とする冶金スラグポットは、前記新型構造とする冶金スラグポットにおける転覆負荷受け部が「十字架」補強リブ(板)の構造を採用し、所謂「十字架」補強リブ(板)の構造が、ポット体の両トラニオン側面に一枚の縦向きの長い補強リブ板と一枚の横向きの補強リブ板が夫々溶接されて形成する「十字架」のような補強リブ(板)構造である、ことを特徴とするものである。
【0017】
本発明による新型構造とする冶金スラグポットは、前記新型構造とする冶金スラグポットのトラニオン負荷受け域において、「三縦二横」と「カバー」との組み合わせによる補強リブ(板)構造が採用され、所謂「三縦二横」と「カバー」との組み合わせによる補強リブ(板)構造が、スラグポットのトラニオン負荷受け域に三枚の長さが異なる縦向きの補強リブ板と二枚の横向きの補強リブ板が溶接され、更にその上外側に一枚の補強リブ板がカバーのように溶接されている構造である、ことを特徴とするものである。
【0018】
本発明による新型構造とする冶金スラグポットは、前記新型構造とする冶金スラグポットのポットボトムが「T型ボトム」補強リブ板の構造であるが、「円弧ボトム」補強リブ板の構造でもよい、ことを特徴とするものである。
【0019】
所謂「T型ボトム」構造は、即ち、ポットボトムが平板状の合金鋼板又は炭素鋼板を前記スラグポットのポットボトムとして使用すると共にポット壁に溶接し、平板状のポットボトムの下部において補強リブ板が溶接され、平板状のポットボトムとその下部に溶接された補強リブ板との断面形状が「T」字形のような構造である。
【0020】
所謂「円弧ボトム」構造は、即ち、プレスされた下に凹んだ円弧状の合金鋼板又は炭素鋼板を前記スラグポットのポットボトムとして使用すると共にポット壁に溶接し、円弧状の板の下部に補強リブ板が溶接されたものである。前記下に凹んだ円弧状の合金鋼板又は炭素鋼板の断面形状は下に凹んだ円弧線である。
【0021】
本発明による新型構造とする冶金スラグポットは、前記新型構造とする冶金スラグポットのトラニオンは鍛造成形を採用する、ことを特徴とするものである。
【0022】
本発明の目的は、更に新型構造とする冶金スラグポットの製造方法を提供することにある。
【0023】
本発明による新型構造とする冶金スラグポットの製造方法において、前記方法は、鋼板切断→開先加工と鋼板プレス成形→アセンブリ→ポット体溶接→熱処理→トラニオン部の加工及び取付け→製品というプロセスを備え、合金鋼又は炭素鋼の鋼板を3〜12枚切断して、加工成形法(又は巻付け、巻押し成形)により、スラグポットのポットボトム及びポット壁を形成し、前記鋼板を、ポット口の口径がポットボトムの直径より大きい、溶融状の鋼スラグ又は鉄水スラグを装う、転覆用のポット形の容器のように溶接する、ことを特徴とするものである。
【0024】
また、図5を参照して、前記「ポット体溶接」段階は、トラニオンシート、ポット口フランジ部、転覆負荷受け部、ベース、リブ板及び補助装置などの溶接と取付けを備え、前記「トラニオン部加工及び取付け」段階は、トラニオンシート加工、トラニオン孔加工及びトラニオンの測定、取付けを備える。
【0025】
本発明による新型構造とする冶金スラグポットの製造方法は、前記開先加工と鋼板プレス成形の段階で、切断された鋼板をポット体のポット壁、ポット体ベースにおけるベースプレート形成用の形状に夫々プレスし、ポット壁突合、補強フランジリング、転覆負荷受け部、トラニオン負荷受け域において、縦向きのメインリブ板等の溶接が「X」形開先を採用し、ポット体ベースにおけるベースプレートの溶接が「K」形開先を採用し、他の溶接箇所は片側「V」形開先を採用し、開先角度は35°〜55°であり、炎と機械加工との方法により切断される、ことを特徴とするものである。
【0026】
本発明による新型構造とする冶金スラグポットの製造方法は、前記新型構造とする冶金スラグポットのポット壁の傾斜角は75度〜55度の範囲にあり、前記ポット壁の傾斜角は、スラグポットのポット壁とポットボトムに平行する平面とのなす角(α)である、ことを特徴とするものである。
【0027】
本発明による新型構造とする冶金スラグポットの製造方法は、前記ポット体溶接の段階で、前記新型構造とする冶金スラグポットのポット口におけるトラニオン側の転覆負荷受け部が「十字架」の補強リブ板の構造であり、即ち、ポット体の両トラニオン側に一枚の縦向きの長いリブ板と一枚の横向きのリブ板が夫々溶接され、「十字」形のような構造が形成される、ことを特徴とするものである。
【0028】
本発明による新型構造とする冶金スラグポットの製造方法は、前記補強リブ板が本発明に係る前記切断された鋼板を使用してもよい、ことを特徴とするものである。
【0029】
本発明による新型構造とする冶金スラグポットの製造方法は、前記ポット体溶接の段階で、前記新型構造とする冶金スラグポットのポット口におけるトラニオン負荷受け域において、「三縦二横」と「カバー」との組み合わせによる補強リブ板の構造が採用され、即ち、トラニオン負荷受け域に三枚の長さが異なる縦向きのリブ板と二枚の横向きのリブ板が溶接され、更に前記縦向きのリブ板と横向きのリブ板の上には、一枚の補強リブ板がカバーのように溶接されている、ことを特徴とするものである。
【0030】
本発明による新型構造とする冶金スラグポットの製造方法は、前記ポット体溶接の段階で、前記新型構造とする冶金スラグポットのポットボトムのベースがフラットボトム又は円弧ボトムの構造であり、所謂フラットボトムのポットボトムは、平板状の合金鋼板又は炭素鋼板をポットボトムとして採用しポット壁に溶接すると共に、下部には補強リブ板が溶接され、平板状のポットボトムとその下部に溶接された補強リブ板との断面形状は「T」字形のような構造であり、所謂「円弧ボトム」構造は、プレスされて下に凹んだ円弧鋼板をポットボトムとして採用しポット壁に溶接し、下部に補強リブ板が溶接されている、ことを特徴とするものである。
【0031】
本発明による新型構造とする冶金スラグポットの製造方法は、ポット体溶接の段階で、前記新型構造とする冶金スラグポットのポット口において、補強リブ板により形成された「補強フランジリング」が溶接される、ことを特徴とするものである。
【0032】
本発明による新型構造とする冶金スラグポットの製造方法は、スラグポットのポットボトム及びポット壁としての合金鋼又は炭素鋼の鋼板が熱間圧延鋼板であり、その厚さが40mm〜120mmの範囲にある、ことを特徴とするものである。
【0033】
本発明による新型構造とする冶金スラグポットの製造方法は、前記開先加工と鋼板プレス成形の段階で、前記鋼板プレス成形が加工成形法(又は巻付け、巻押し成形)を採用する、ことを特徴とするものである。
【0034】
本発明による新型構造とする冶金スラグポットの製造方法は、前記ポット体溶接の段階で、前記スラグポットのポット体溶接はサブマージアーク溶接又はエレクトロスラグ溶接を採用し、溶接ワイヤーとしてH08Mn、H08MnA、H10Mn2又はH08Mn2Si中の一種類を採用し、或いは、手動でCO2気体による溶接保護を基とし、溶接ワイヤーとしてH08Mn2Si、Φ1.2mmを選択して使用し、その後、サブマージアーク溶接又はエレクトロスラグ溶接を行い、前記手動電気アーク溶接の溶接ワイヤーはΦ4mmのE5015、E5015−G又はJ507RH中の一種類を選択して使用する、ことを特徴とするものである。
【0035】
本発明による新型構造とする冶金スラグポットの製造方法は、前記ポット体溶接の段階で、溶接前の予熱及び層温(層間温度)制御が行われ、前記溶接前の予熱及び層温制御は、コンピューターでの温度制御器具を採用することにより、自動電気加熱方法で溶接開先及びその開先の両側150mmの範囲内を100℃〜150℃まで加熱すると共に、層間温度が予熱温度より低くないようにする、ことを特徴とするものである。
【0036】
本発明による新型構造とする冶金スラグポットの製造方法は、前記熱処理の階段で、熱処理プロセス曲線が、加熱温度:620±20℃、昇温速度:≦150℃/h、保温時間:220〜240min、降温速度:≦100〜150℃/h、400℃以下の空冷である、ことを特徴とするものである。前記新型構造とする冶金スラグポットは、厚さが40mm〜120mmの範囲にある合金鋼板又は炭素鋼板をスラグポットのポット壁及びポットボトムとして採用する。
【0037】
本発明による新型構造とする冶金スラグポットの製造方法は、前記新型構造とする冶金スラグポットのトラニオンは鍛造成形を採用する、ことを特徴とするものである。
【0038】
本発明に係る新型溶接構造とする冶金スラグポット及びその製造方法によれば、前記冶金スラグポットは、溶接プロセスにより、切断された鋼板を溶接してなるポットである。これにより、環境への汚染を大幅に減少することができる。前記冶金スラグポットのポット壁を構成する鋼板の結晶粒は、その粗さが均一で、キャビテーション、収縮孔、気孔、偏析、罅割れ、非金属不純物、高温割れ、低温割れ等の欠陥が殆ど存在しないため、且つ、スラグポットのポット壁を構成する鋼板の結晶粒の均一性は一般の圧延鋼材と同一であるため、スラグポットの溶接性と修復性が良く、スラグポットの使用寿命を大幅に延長すると共に、生産現場における常に発生するスラグポットの割れ等の安全危険をなくすことができ、コストを大きく低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は本発明の新型溶接構造とする冶金スラグポット(slag pot)の一例の外観斜視図である。
【図2】図2は本発明の新型溶接構造とする冶金スラグポットのさらに一例の外観斜視図である。
【図3】図3は熱処理プロセス曲線図である。
【図4】図4は本発明の新型構造とする冶金スラグポットの製造プロセスフローチャートである。
【図5】図5は本発明の新型溶接構造とする冶金スラグポットのトラニオン(trunnion)における一部の断面図である。
【図6】図6は本発明の新型溶接構造とする冶金スラグポットのトラニオンと垂直における一部の断面図である。
【図7】図7は図6の左側から見た部分断面図である。
【図8】図8は図6の平面図である。
【0040】
図においては、符号1はスラグポット本体であり、符号3はポット壁であり、符号2はポット口補強リングであり、符号4はトラニオン負荷受け域であり、符号5は転覆負荷受け部の「十字架」構造であり、符号6はスラグポットベースであり、符号7はトラニオンであり、符号8は補強リブ板であり、符号αはスラグポットのポット壁傾斜角(勾配)である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の新型構造とする冶金スラグポット及びその製造方法については、図面を参照しながら具体的な実施例で詳細に説明する。
【実施例1】
【0042】
(1)材料選定或いは材料規格選定:炭素鋼又は低合金鋼、例えば16Mn(Q345B、C、D)、SM490(B、C)等の等幅等厚さの合金鋼板を3〜8枚選択して使用する。前記鋼板の厚さ範囲は40mm〜80mmである。
【0043】
(2)材料切断及び開先加工:ポット体厚板の突合、ポット口補強フランジ、転覆負荷受け部のメインプレート、トラニオン負荷受け域における縦向きのメインリブ等の溶接は全て「X」形開先を採用し、ポット体ベースにおけるベースプレートは「K」形開先を採用し、その他は片側「V」形開先を採用する。開先角度は35°〜55°である。炎を機械加工に足す方法により、(自動的に)切断される。
【0044】
(3)鋼板のプレス成形(巻付け成形):常温冷間加工によるプレス成形法を採用する。
(4)ポット体(筒体)の溶接:自動サブマージアーク溶接(automatic submerged arc welding)を採用する。溶接ワイヤーは、H08Mn、H08MnA、H10Mn2又はH08Mn2Si等を用いる。手動でCO2気体による溶接保護を基にし、H08Mn2Si、Φ1.2mmを溶接ワイヤーとして、その後サブマージアーク溶接等の方法を使用してもよい。手動電気アーク溶接(manual electric arc welding)はE5015又はE5015−G又はJ507RH、Φ4mmを採用する。
【0045】
(5)トラニオンシート(trunnion seat)は「三縦二横とカバーの組合せ」及び「十字架構造」による設計を採用する。取付け及び溶接の際に、「先ずは縦、後に横」、「先ずは裏、後に外」という原則を十分に理解して運用するべきである。
【0046】
(6)非破壊検査(non-destructive testing)はJB/T4730−2005とGB/T2970−91<中厚鋼板超音波検査方法>又はGB/T6402−91を選択して使用する。
【0047】
図に示すように、符号1はスラグポット本体であり、ポット壁又はポットベース又は補強リブ板として、広幅厚板合金鋼又は厚板炭素鋼を採用し、前記広幅厚板合金鋼又は厚板炭素鋼を3〜12枚使用する。前記鋼板は、その厚さ範囲が40mm〜120mmであって、溶接方法により製造される。
【0048】
符号2はポット口補強リング、即ち、ポット口フランジである。前記「補強フランジリング」は、開口における強度及び変形の問題を解決するために、即ち、ポット口における高温強度を解決してポット口における変形を防止するために、スラグポットのポット口の外周縁に、補強リブ(板)として縦横方向に一体接続される補強リブ条又は補強リブ片が形成される。
【0049】
符号3はポット壁である。前記新型構造とする冶金スラグポットは、そのポット壁勾配(勾配)(α)が75°〜45°の範囲にある。前記スラグポットのポット壁傾斜角(勾配)は、即ち、スラグポットのポット壁と、ポットボトムと平行する平面とのなす角(α)である。その目的は、高温放熱、高温スラグ粉(slag particle)がスラグポットのポット壁に対する接着、ウォッシュ、溶込み(fusion penetration)、ブレークアウト(breakout)の問題及びスラグロード、スラグアンロード等のプロセス操作過程中の問題を解決することにある。
【0050】
符号4はトラニオン負荷受け域である。「三縦二横」と「カバー」との組合せによる補強リブ(板)の構造が採用される。所謂「三縦二横」と「カバー」との組合せによる補強リブ(板)の構造は、即ちトラニオン負荷受け域において三枚の長さが異なる縦向きの補強リブ板と二枚の横向きの補強リブ板が溶接された構造に、カバーのように溶接された一枚のリブ補強カバーを加え、構成される組合せ構造であり、その目的は、トラニオンの負荷受け問題を解決するものである。
【0051】
符号5は転覆負荷受け部である。「十字架」による補強リブ(板)の構造が採用される。各種の作動条件における(例えば、転覆、走行等)転覆設備には適用である。前記「十字架」の構造は、即ち「十字」の形による補強リブ(板)の構造である。
【0052】
符号6はスラグポットベースである。ポットボトム(ベース)は「T型」リブ板構造を採用する。即ち、平板状の鋼板をスラグポットベースとして、ポット壁としての鋼板と一体に溶接させ、更に平板状のスラグポットベースの下部に補強リブ板を溶接し、平板状のスラグポットベースとその下部に溶接された補強リブ板との断面は「T」字形に形成されている。
【0053】
符号7はトラニオンである。スラグポットトラニオンとポット体とは高強度ボルトにより接続され、トラニオンは鍛造成形を採用し、その材料は炭素鋼又は合金鋼を採用してもよい。
【0054】
本実施例において、トラニオン加工の技術要求は以下のように示されている。
スラグポットトラニオンは35#鋼鍛造物を選択して使用し、GB/T699―1988<優れた品質の炭素鋼の技術条件>を満たしている。トラニオン(未加工品、半加工品)に対する探傷は、超音波探傷試験(Ultrasonic Test)を採用し、基準GB/T6402−91の要求と一致し、II級以上(II級を含む)のものであれば、合格と判定される。鍛造はJB/T5000.8―1998<鍛造物通用技術条件>のV組基準に応じて検収する。鍛造物は、焼ならしと焼戻しとの方法により熱処理される必要があり、最終に硬度HB=131〜187に至る。熱処理曲線は、図4のように示されている。
【0055】
トラニオン連続用高強度ボルトについて、トラニオンとポット体とはボルトにより連結され、そのボルトは高強度六角穴付きボルト(GB/T70.1―2000)、規格M30×70、性能級8.8、材料35CrMoを採用する。
【0056】
符号8は補強リブ板である。補強リブは、ポット口における補強リブ(板)、ポット体における転覆補強リブ(板)、トラニオン負荷受け域における補強リブ(板)及びベースにおける補強リブ(板)等を備える。その目的は、スラグポットの強度及び剛性の向上、軽量化、材料節約、応力分布均一、負荷最適化などを図れるためのものである。補強リブ板は本発明の切断鋼板を使用する。
【0057】
本実施例において、材料の再検証及び検証基準は以下のように示されている。
【0058】
【表1】

【0059】
本実施例においては、溶接前の予熱及び層温(層間温度)制御が以下のように行われる。コンピューターでの温度制御器具を採用することにより、自動電気加熱方法で溶接グルーブ及びそのグルーブの両側150mmの範囲内を100℃〜150℃まで加熱すると共に、層間温度が予熱温度より低くないようにする。ポット体本体における溶接の継ぎ目は、自動サブマージアーク溶接方法又はエレクトロスラグ溶接方法で溶接を行う際に、その溶接ワイヤーはH10Mn2Ф4mmを採用し、溶接剤はSJ101を採用する。
【0060】
(12)溶接の要求:手動電気溶接棒で溶接する際に、直流電源を使用し、E5015−G(J507RH)Ф4mmの溶接棒を採用し、溶接電流は150Aであり、各溶接棒の溶接長さは150〜200mmに収め、多層多行において溶接が行われ、各行においてスラグが除去され、更に、一行の溶接が終わった後、振動スピア(Vibrance Spear)で応力除去の処理を行うと共に、新たな欠陥の現れを防止するように鉄ワイヤーで清潔にブラシする。
【0061】
本実施例において、二酸化炭素を利用して手動半自動方法によりすみ肉溶接に対する溶接を行う際に、直流電源の反極性溶接(正極に溶接棒が接続される)が用いられる。溶接ワイヤーは、開かれた後、直ちに使うという原則を使用し、つまり、当日に開かれて、当日に使い切る。溶接ワイヤーの検収は、関連基準に応じる。溶接に使用する二酸化炭素気体は、GB6052<工業液体二酸化炭素>一級質量基準と一致するようにするべきであり、更に、その体積容量が99.5%より大きく、水分含有量が0.05%を超えないようにするべきである。ボトル内における二酸化炭素気体の圧力は1MPaより小さい際に、溶接気孔の発生を防止するようにその二酸化炭素気体の使用を停止する。
【0062】
本実施例に係る新型構造とする冶金スラグポットの製造プロセス工程は図5のように示されている。
【0063】
本実施例において、図3のように、新型構造とする冶金スラグポットの製造プロセスにおける熱処理プロセスは以下のように示されている。
【0064】
熱処理プロセス曲線:加熱温度:620±20℃、昇温速度:≦150℃/h、保温時間:220−240min、降温速度:120−150℃/h、400℃以下の空冷。
【0065】
これにより、本発明に係るその体積が5.3立方メートル、15立方メートル、18立方メートル乃至33立方メートルのスラグポットは、夫々製作することができるようになる。
【実施例2】
【0066】
後記のほかに、実施例1と同様に、本発明に係るその体積が5.3立方メートル、15立方メートル、18立方メートル乃至33立方メートルのスラグポット等は、夫々製作することができる。
【0067】
材料選定或いは材料規格選定:例えば、20g、20#、25#の等幅厚炭素鋼板を8〜12枚選択して使用する。巻付け成形又は巻押し成形法により成形される。前記鋼板の厚さ範囲は80mm〜120mmである。ポット体の溶接は、自動エレクトロスラグ溶接を採用する。前記新型構造とする冶金スラグポットは、勾配(α)が75°〜55°の範囲にあるポット壁傾斜度を採用する。ポットボトムは「円弧ボトム(arc bottom)」という構造であり、つまり、下面に凹んだ円弧状の鋼板を用いてスラグポットベースとし、ポット壁の鋼板と一体に溶接し、更に、下に凹んだ円弧状のスラグポットベースの下部において補強リブ板を溶接する構造である。
【0068】
降温速度は、90〜120℃/hである。ポット口の外周縁、トラニオンの負荷受け域、転覆負荷受け部及びポットボトムに補強リブ板が設置されるのほか、更に、ポットボトムの外側周縁にも補強リブ板が設置される。
【0069】
本発明に係る新型溶接構造とする冶金スラグポット及びその製造方法によれば、前記冶金スラグポットは、溶接プロセスにより圧延した鋼板を溶接してなるポットである。これにより、環境への汚染を大幅に減少することができる。前記冶金スラグポットのポット壁を構成する鋼板の結晶粒は、その粗さが均一で、キャビテーション、収縮孔(Shrinkage Porosity)、気孔、偏析、罅割れ、非金属不純物、高温割れ、低温割れ等の欠陥が殆ど存在しないため、且つ、スラグポットのポット壁を構成する鋼板の結晶粒の均一性は一般の圧延鋼材と同一であるため、スラグポットの溶接性と修復性が良く、スラグポットの使用寿命を大幅に延長すると共に、生産現場における常に発生するスラグポットの割れ等の安全危険を無くすことができ、コストを大きく低減することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポット口の口径がポットボトムの直径より大きい、溶融状の鋼スラグ又は鉄スラグを装う、転覆用のポット形容器であって、前記冶金スラグポットは、合金鋼板又は炭素鋼板をスラグポットのポット壁及びスラグポットのポットボトムとして溶接されてなる、ことを特徴とする新型構造とする冶金スラグポット。
【請求項2】
前記新型構造とする冶金スラグの外周面においては、補強リブ板が溶接されている、ことを特徴とする請求項1に記載の新型構造とする冶金スラグポット。
【請求項3】
前記新型構造とする冶金スラグポットのポット口の外周縁においては、補強リブ板が溶接され、「補強フランジリング」が形成される、ことを特徴とする請求項2に記載の新型構造とする冶金スラグポット。
【請求項4】
前記新型構造とする冶金スラグポットのポット壁の傾斜角は75度〜55度の範囲にあり、前記ポット壁の傾斜角は、スラグポットのポット壁とポットボトムに平行する平面とのなす角である、ことを特徴とする請求項1に記載の新型構造とする冶金スラグポット。
【請求項5】
スラグポットのポット体における両トラニオン転覆負荷受け域は、「十字架」形の補強リブ板の構造であり、即ち、ポット体の両トラニオン側に一枚の縦向きの長いリブ板と一枚の横向きのリブ板が夫々溶接されて形成する「十字」形のような構造である、ことを特徴とする請求項2に記載の新型構造とする冶金スラグポット。
【請求項6】
前記新型構造とする冶金スラグポットのトラニオン負荷受け域においては、「三縦二横」と「カバー」との組み合わせによる補強リブ構造が採用され、即ち、トラニオン負荷受け域に三枚の長さが異なる縦向きのリブ板と二枚の横向きのリブ板が溶接され、更に前記縦向きのリブ板と横向きのリブ板の上には、一枚の補強リブ板がカバーのように溶接されている、ことを特徴とする請求項2に記載の新型構造とする冶金スラグポット。
【請求項7】
前記新型構造とする冶金スラグポットのポットボトムはフラットボトム又は円弧ボトムの構造であり、所謂フラットボトムのポットボトムは、平板状の合金鋼板又は炭素鋼板を前記スラグポットのポットボトムとしてポット壁と溶接すると共に、下部には補強リブ板が溶接され、平板状のポットボトムとその下部に溶接された補強リブ板との断面形状は「T」字形のような構造であり、即ち、所謂「円弧ボトム」構造は、プレスされた下に凹んだ円弧鋼板をポットボトムとして採用するものである、ことを特徴とする請求項1に記載の新型構造とする冶金スラグポット。
【請求項8】
前記方法は、鋼板切断→開先加工と鋼板プレス成形→アセンブリ→ポット体溶接→熱処理→トラニオン部加工及び取付け→製品というプロセスを備え、合金鋼又は炭素鋼の鋼板を3〜12枚切断して、プレス成形によりスラグポットのポットボトム及びポット壁とし、前記鋼板を、ポット口の口径がポットボトムの直径より大きい、溶融状の鋼スラグ又は鉄水スラグを装う、転覆用のポット形の容器に溶接する、ことを特徴とする新型構造とする冶金スラグポットの製造方法。
【請求項9】
前記開先加工と鋼板プレス成形の段階で、鋼板をポット体のポット壁、ポット体ベースにおけるベースプレート形成用の形状に夫々プレスし、ポット壁突合、補強フランジリング、転覆負荷受け部、トラニオン負荷受け域における縦向きのメインリブ板等の溶接は「X」形開先を採用し、ポット体ベースにおけるベースプレートの溶接は「K」形開先を採用し、他の溶接箇所は「V」形開先を採用し、開先角度は35°〜55°である、ことを特徴とする請求項8に記載の新型構造とする冶金スラグポットの製造方法。
【請求項10】
前記新型構造とする冶金スラグポットのポット壁の傾斜角は75度〜55度の範囲にあり、前記ポット壁の傾斜角は、スラグポットのポット壁とポットボトムに平行する平面とのなす角である、ことを特徴とする請求項9に記載の新型構造とする冶金スラグポットの製造方法。
【請求項11】
前記ポット体溶接の段階では、前記新型構造とするスラグポットのポット口におけるトラニオン側の転覆負荷受け部が「十字架」の補強リブ板の構造であり、即ち、ポット体の両トラニオン側に一枚の縦向きの長いリブ板と一枚の横向きのリブ板が夫々溶接され、「十字」形のような構造が形成されるものである、ことを特徴とする請求項8に記載の新型構造とする冶金スラグポットの製造方法。
【請求項12】
前記ポット体溶接の段階では、前記新型構造とする冶金スラグポットのポット口におけるトラニオン負荷受け域において、「三縦二横」と「カバー」との組み合わせによる補強リブ板の構造が採用され、即ち、トラニオン負荷受け域に三枚の長さが異なる縦向きのリブ板と二枚の横向きのリブ板が溶接され、更に前記縦向きのリブ板と横向きのリブ板の上には、一枚の補強リブ板がカバーのように溶接されている、ことを特徴とする請求項8に記載の新型構造とする冶金スラグポットの製造方法。
【請求項13】
前記ポット体溶接の段階では、前記新型構造とする冶金スラグポットのポットボトムがフラットボトム又は円弧ボトムの構造であり、所謂フラットボトムのポットボトムは、平板状の合金鋼板又は炭素鋼板を前記スラグポットのポットボトムとして採用しポット壁に溶接すると共に、下部には補強リブ板が溶接され、平板状のポットボトムとその下部に溶接された補強リブ板との断面形状は「T」字形のような構造であり、所謂「円弧ボトム」構造は、即ち、プレスされた下に凹んだ円弧鋼板をポットボトムとして採用し、下部に補強リブ板が溶接されているものである、ことを特徴とする請求項8に記載の新型構造とする冶金スラグポットの製造方法。
【請求項14】
ポット体溶接の段階では、前記新型構造とする冶金スラグポットのポット口において、補強リブ板により形成された「補強フランジリング」が溶接される、ことを特徴とする請求項8に記載の新型構造とする冶金スラグポットの製造方法。
【請求項15】
スラグポットのポットボトム及びポット壁としての合金鋼又は炭素鋼の鋼板は、熱間圧延鋼板であり、その厚さは40mm〜120mmの範囲にある、ことを特徴とする請求項8に記載の新型構造とする冶金スラグポットの製造方法。
【請求項16】
前記開先加工と鋼板プレス成形の段階では、前記鋼板プレス成形が加工成形法(又は巻付け、巻押し成形)を採用する、ことを特徴とする請求項8に記載の新型構造とする冶金スラグポットの製造方法。
【請求項17】
前記ポット体溶接の段階では、前記スラグポットのポット体溶接はサブマージアーク溶接又はエレクトロスラグ溶接を採用し、溶接ワイヤーとしてH08Mn、H08MnA、H10Mn2又はH08Mn2Si中の一種類を採用し、或いは、手動でCO2気体による溶接保護を基とし、溶接ワイヤーとしてH08Mn2Si、Ф1.2mmを選択して使用し、その後、サブマージアーク溶接又はエレクトロスラグ溶接を行い、前記手動電気アーク溶接の溶接ワイヤーはФ4mmのE5015、E5015−G又はJ507RH中の一種類を選択して使用する、ことを特徴とする請求項8に記載の新型構造とする冶金スラグポットの製造方法。
【請求項18】
前記ポット体溶接の段階では、溶接前の予熱及び層温制御が行われ、前記溶接前の予熱及び層温制御は、コンピューターでの温度制御器具を採用することにより、自動電気加熱方法で溶接開先及びその開先の両側150mmの範囲内を100℃〜150℃まで加熱すると共に、層間温度が予熱温度より低くないようにする、ことを特徴とする請求項8に記載の新型構造とする冶金スラグポットの製造方法。
【請求項19】
前記熱処理の階段では、熱処理プロセス曲線が、加熱温度:620±20℃、昇温速度:≦150℃/h、保温時間:220〜240min、降温速度:≦100〜150℃/h、400℃以下の空冷である、ことを特徴とする請求項8に記載の新型構造とする冶金スラグポットの製造方法。
【請求項20】
前記新型構造とする冶金スラグポットのポット口におけるトラニオンは、鍛造成形を採用する、ことを特徴とする請求項8に記載の新型構造とする冶金スラグポットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−523980(P2011−523980A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511958(P2011−511958)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【国際出願番号】PCT/CN2009/072066
【国際公開番号】WO2009/146638
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(302022474)宝山鋼鉄股▲分▼有限公司 (17)
【Fターム(参考)】