説明

新生物を処置するための組成物および方法

本発明は、難治性または再発性の新生物を含む新生物を、VEGF拮抗剤を使用して処置するための組成物および方法に関連する。さらに、本発明は、それらの疾患を処置するための治療レジメンを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、再発性または難治性の新生物増殖を含む新生物増殖を、VEGF拮抗剤を単剤または他の治療と組み合わせて使用し、処置するための組成物および方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
新生物は、がん性または良性であり得る異常な細胞増殖である。形質細胞(形質B細胞またはプラズマ細胞とも呼ばれる)は、成熟Bリンパ球(B細胞)から発生し、通常は体内の外来性因子(例えば、細菌またはウイルス感染)と闘うために抗体の分泌に関与している。形質細胞新生物の存在は、より活性が低く健全でない赤血球細胞、白血球細胞、および血小板をもたらし得る。この状態は、貧血症もしくは易出血性を引き起こす、または感染を受けやすくする可能性がある。異常な形質細胞は、多くの場合に、骨中または体の軟組織中に腫瘍を形成する。形質細胞新生物はまた、体に必要とされず、感染との闘争を介助せず、かつ腎臓に損傷を与え得る、Mタンパク質(またはモノクローナルタンパク質、骨髄腫タンパク質もしくはパラプロテイン)と称される大量の単一抗体も産生する可能性がある。いくつかの場合において、悪性形質細胞は重鎖および軽鎖を作製して対にさせる能力を喪失し、そのためκおよびλ軽鎖(ベンスジョーンズタンパク質とも称される)は非付着性の細胞から離れて血中に入り、尿中へ排泄される。形質細胞新生物の例は、多発性骨髄腫(MM)、孤立性骨形質細胞腫(SPB)、形質細胞白血病、および髄外性形質細胞腫(EMP)を含む。
【0003】
多発性骨髄腫(MM)は、モノクローナル免疫グロブリン(例えば、IgG、IgA、IgD、IgEまたは遊離κもしくはλ軽鎖)を産生する形質B細胞の増殖により特徴付けられる悪性腫瘍である。MMを患う患者の全体生存率は、数ヶ月から長年と大きく異なり、平均およそ5年である。貧血症、高カルシウム血症、および骨損傷が、骨髄腫細胞の全質量と直接的に関連し、かつ重要な予後的意義を有する。他の予後因子は、年齢、形質細胞ラベリングインデックス、血清β2ミクログロブリン、C反応性タンパク質、チミジンキナーゼ、および可溶性インターロイキン6受容体を含む。感染および腎不全のような主要な合併症は、骨髄腫患者の死亡に関する最も一般的な原因である。多発性骨髄腫を患うほとんど全ての患者は、最終的に再発する危険性を有する(Kyle, RK et al., (2004) N Engl J Med 351: 1860-1873(非特許文献1))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kyle, RK et al., (2004) N Engl J Med 351: 1860-1873
【発明の概要】
【0005】
本発明は、VEGF拮抗剤を投与する段階を含む、プロテアソーム阻害治療に対して再発性または難治性の患者において新生物を処置するための方法を提供する。本発明はまた、VEGF拮抗剤を投与する段階を含む、アルキル化剤治療に対して再発性または難治性の患者において形質細胞新生物を処置するための方法も提供する。本発明は、VEGF拮抗剤およびプロテアソーム阻害剤を投与する段階を含む、再発性または難治性の患者において新生物を処置するための方法をさらに提供する。本発明は、VEGF拮抗剤およびサリドマイドまたはサリドマイド類似体を投与する段階を含む、再発性または難治性の患者において新生物を処置するための方法をさらに提供する。
【0006】
一つの態様によると、再発性もしくは難治性の患者は、サリドマイドまたはサリドマイド類似体をさらに投与される。別の態様によると、再発性または難治性の患者は、プロテアソーム阻害剤をさらに投与される。別の態様によると、再発性または難治性の患者は、単剤としてVEGF拮抗剤を投与される。
【0007】
さらに別の態様によると、再発性または難治性の患者は、追加の治療剤をさらに投与される。一つの態様によると、追加の治療剤は、アルキル化剤、ステロイド、ビスフォスフォネート、およびプロテアソーム阻害剤からなる群より選択される。別の態様によると、追加の治療剤は、メルファラン、プレドニゾン、サリドマイド、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、ドキソルビシン塩酸塩リポソーム注射(Doxil(登録商標))、ボルテゾミブ(velcade(登録商標))、レナリドマイド(CC-5013、Revlimid(登録商標))、デキサメタゾン、ビンクリスチン(Oncovin(登録商標))、カルムスチン、およびシクロホスファミド(シトキサン)からなる群より選択される。
【0008】
さらに別の態様において、再発性または難治性の患者は、併用療法をさらに施される。一つの態様において、併用療法は以下からなる群より選択される:メルファラン/プレドニゾン併用(MP)、メルファラン/プレドニゾン/サリドマイド併用(MPT)、ドキシル/ボルテゾミブ併用、サリドマイド/デキサメタゾン併用(TD)、ボルテゾミブ/ドキソルビシン/サリドマイド/デキサメタゾン併用(BATD)、ボルテゾミブ/サリドマイド併用(BT)、ボルテゾミブ/メルファラン/デキサメタゾン/サリドマイド併用(BMDT)、ボルテゾミブ/メルファラン/プレドニゾン/サリドマイド(BMPT)併用、ボルテゾミブ/ペグ化リポソーマルドキソルビシン/サリドマイド併用(BTD)、ボルテゾミブ/シクロホスファミド/プレドニゾン(BCP)、ビンクリスチン/カルムスチン/メルファラン/シクロホスファミド/プレドニゾン併用(VBMCP)、およびビンクリスチン/ドキソルビシン/デキサメタゾン併用(VAD)。
【0009】
一つの態様において、プロテアソーム阻害剤は、ヒト20Sまたは26Sプロテアソームを阻害する。さらなる態様において、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、MG132、ラクタシスチン、エポキソミシン、(epoxomicin)およびサリノスポラミドA(salinosporamide A)からなる群より選択される。一つの好ましい態様において、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブである。別の態様において、アルキル化剤はメルファランである。
【0010】
一つの態様によると、新生物はがんである。別の態様によると、がんは、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん、および肺扁平上皮がんを含む)、腹膜がん、肝細胞がん、胃がん(gastric cancer)または胃がん(stomach cancer)(胃腸管がんを含む)、膵臓がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞腫、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がんまたは子宮がん、唾液腺がん、腎臓がんまたは腎がん、肝臓がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝がん、上咽頭がん、神経膠腫、頭頸部がん、ならびに造血器腫瘍(例えば、B細胞新生物)からなる群より選択される。一つの態様によると、造血器腫瘍は、B細胞リンパ腫、B細胞白血病、T細胞リンパ腫、およびT細胞白血病からなる群より選択される。一つの態様によると、B細胞リンパ腫は、非ホジキン型リンパ腫である。さらなる態様において、NHLは濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、および辺縁帯リンパ腫からなる群より選択される。別の態様において、造血器腫瘍は、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞白血病、慢性骨髄芽球性白血病、および多発性骨髄腫からなる群より選択される。
【0011】
一つの態様によると、形質細胞新生物は、多発性骨髄腫(MM)、形質細胞腫、マクログロブリン血症、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)、形質細胞性白血病、高グロブリン血症性紫斑、およびカーラー病からなる群より選択される。一つの好ましい態様によると、形質細胞新生物は多発性骨髄腫である。
【0012】
一つの態様によると、VEGF拮抗剤は、抗VEGF抗体、VEGF-Trap(例えば、VEGF受容体-Fc融合体)、または抗VEGF受容体抗体である。さらに別の態様によると、抗VEGF抗体はヒトまたはヒト化抗VEGF抗体である。一つの好ましい態様において、抗VEGF抗体は、AVASTIN(登録商標)抗体である。
【0013】
本発明において提供される、治療剤の組合せを含む組成物も企図される。一つの態様において、組成物は、VEGF拮抗剤およびプロテアソーム阻害剤を含む。別の態様において、組成物はアルキル化剤、ステロイド、ビスフォスフォネート、および異なるVEGF拮抗剤からなる群より選択される別の治療剤をさらに含む。本明細書において提供される適応症を処置する医薬の製造における、VEGF拮抗剤の単独での使用、または本明細書に記載の他の治療剤と組み合わせた使用も企図される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】LAGk-1A腫瘍の移植、および続く抗VEGF抗体を用いた処置の後のマウスにおけるヒトIgGレベルを示す:(A)表形式および(B)グラフ形式。
【図2】腫瘍の移植、および続く抗VEGF抗体を用いた処置の後のマウスにおけるLAGk-1A腫瘍の腫瘍体積を示す:(A)表形式および(B)グラフ形式。
【図3】LAGk-1B腫瘍の移植、および続く抗VEGF抗体を用いた処置の後のマウスにおけるヒトIgGレベルを示す:(A)表形式および(B)グラフ形式。
【図4】腫瘍の移植、および続く抗VEGF抗体を用いた処置の後のマウスにおけるLAGk-1B腫瘍の腫瘍体積を示す:(A)表形式および(B)グラフ形式。
【図5A】LAGk-1B腫瘍の移植、および続く21日目の抗VEGF抗体を用いた処置の後のマウスにおけるヒトIgGレベルを示す。
【図5B】腫瘍の移植、および続く21日目の抗VEGF抗体を用いた処置の後のマウスにおける、LAGk-1B腫瘍の腫瘍体積を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
定義
プロテアソームは、真核生物、真正細菌、および古細菌に見出される、複合サブユニットの円柱状プロテアーゼである。プロテアソームの活性部位は、円柱状粒子内に埋設される中心チャンバーに面している。真核生物のプロテアソームには、20Sプロテアソーム、および非常により大型のATP依存性26Sプロテアソームの二つのサイズが存在する。後者は、20Sプロテアソームが、19S制御複合体として公知の一つまたは二つの複合サブユニットATPアーゼ含有粒子へ結合した際に形成される。26Sプロテアソームは、ユビキチン化タンパク質を分解する役割を担い、従って、細胞周期回転、転写制御、酵素レベルの調節、およびアポトーシスを含む非常に多数の細胞プロセスに不可欠である。20Sおよび26Sプロテアソームの双方は、他のタンパク質複合体と結合し得る。
【0016】
「プロテアソーム阻害剤」は、プロテアソームのプロテアーゼ活性を阻害する薬剤を指す(例えば、キモトリプシン活性、トリプシン活性、およびぺプチジルグルタミルペプチド加水分解活性のいずれか一つまたは全て)。一つの好ましい態様によると、プロテアソームはヒト20Sおよび/または26Sプロテアソームである。プロテアソーム阻害剤の例は、ボルテゾミブ、MG132、ラクタシスチン、エポキソミシン、およびサリノスポラミドA(NPI-0052、Nereus Pharmaceutical)を含む。例えば、Voorhees, PM et al., (2006) 46: 189-213において開示される構造、国際公開公報第95/24914号、国際公開公報第91/13904号、Iqbal et al., (1995) J. Med. Chem. 38: 2276-2277のペプチドアルデヒド、国際公開公報第96/13266号のペプチドホウ酸、ラクタシスチン、およびラクタシスチン類似体(Fenteany et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 3358;国際公開公報第96/32105)、ならびにサリノスポラミドA(Macheria, VR, et al., (2005) 48: 3684-7)を参照のこと。
【0017】
本明細書で使用される「VEGF」または「VEGF」という用語は、Leung et al. Science, 246: 1306 (1989)、およびHouck et al. Mol. Endocrin., 5: 1806 (1991)に記載された、165アミノ酸のヒト血管内皮細胞増殖因子、ならびに関連の121、189および206アミノ酸のヒト血管内皮細胞増殖因子、ならびに、それらの天然のアリルおよびプロセッシングされた形状を指す。「VEGF」という用語はまた、マウス、ラットまたは霊長類のような非ヒト種由来のVEGFも指す。時に、特定の種由来のVEGFは、ヒトVEGFに関してhVEGF、ネズミVEGFに関してmVEGF等のような用語によって示される。「VEGF」という用語はまた、165アミノ酸のヒト血管内皮細胞増殖因子の、アミノ酸8〜109位または1〜109位を含む切断されたポリペプチドを指すためにも使用される。任意のそのような形態のVEGFに対する参照は、例えば、「VEGF(8〜109)」、「VEGF(1〜109)」、または「VEGF165」と本出願中で同定される場合がある。「切断された」天然VEGFに関するアミノ酸位置は、天然VEGF配列中に示されるように番号付けられる。例えば、切断された天然VEGF中のアミノ酸位置17(メチオニン)はまた、天然VEGF中の位置17(メチオニン)でもある。切断された天然VEGFは、天然VEGFに匹敵するKDRおよびFlt-1受容体への結合親和性を有する。
【0018】
「VEGF拮抗剤」は、一つまたは複数のVEGF受容体への結合を含むVEGF活性を遮断、阻害、抑止、減少または干渉することが可能な分子を指す。VEGF拮抗剤は、VEGFへ特異的に結合し、それによって一つまたは複数の受容体への結合を妨げる、抗VEGF抗体およびその抗原結合断片、アプタマー、受容体分子、ならびに誘導体、抗VEGF受容体抗体およびVEGFRチロシンキナーゼの小型分子阻害剤のようなVEGF受容体拮抗剤を含む。VEGF拮抗剤の例は、FLT-Fc、KDR-Fc、FLT/KDR-Fc、バタラニブ(PTK-787/ZK222584)、SU-5416(セマキサニブ(semaxanib))、SU-6668、SU-11248、SU-14813、AZD-6474、AZD-2171、CGP-41251、CEP-5214、BIBF1000、VGA1102、CP-547632、CEP-7055、AG-013736、IM-842(L-グルタミルおよびL-トリプトファンのジペプチド)またはGW-786034、ならびに国際公開公報第02/36564号、国際公開公報第99/52869号、国際公開公報第00/18734号、国際公開公報第00/73297号、国際公開公報第01/27080号、国際公開公報第01/27081号、国際公開公報第01/32651号、国際公開公報第01/60814号、国際公開公報第99/48868号、および国際公開公報第98/35958号に記載されたものを含むが、これらに限定されない。
【0019】
「抗VEGF抗体」は、十分な親和性および特異性を伴いVEGFへ結合する抗体である。好ましくは、本発明の抗VEGF抗体は、VEGF活性が関与する疾患または状態を標的とし、かつそれに干渉する際に治療剤として使用され得る。抗VEGF抗体は、VEGF-BもしくはVEGF-Cのような他のVEGF相同体、またはP1GF、PDGFもしくはbFGFのような他の増殖因子へ通常結合しないと考えられる。好ましい抗VEGF抗体は、ハイブリドーマATCC HB 10709によって産生されるモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1と同一のエピトープへ結合するモノクローナル抗体である。より好ましくは、抗VEGF抗体は、ベバシズマブ(BV;AVASTIN(登録商標)抗体)として公知の抗体を含むがこれに限定されない、Presta et al. (1997) Cancer Res. 57: 4593-4599に従って生成された、組み換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体である。
【0020】
「rhuMAb VEGF」または「AVASTIN(登録商標)」としても公知である、抗VEGF抗体「ベバシズマブ(BV)」は、Presta et al. (1997) Cancer Res. 57: 4593-4599に従って生成された、組み換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体である。該抗体は、変異型ヒトIgG1フレームワーク領域、および、ヒトVEGFのその受容体への結合を遮断する、ネズミ抗hVEGFモノクローナル抗体A4.6.1由来の抗原結合相補性決定領域を含む。フレームワーク領域の大部分を含む、ベバシズマブのおよそ93%のアミノ酸配列は、ヒトIgG1に由来し、かつ約7%の配列は、ネズミ抗体A4.6.1に由来する。ベバシズマブは約149,000ダルトンの分子量を有し、かつグリコシル化される。
【0021】
「難治性」とは、疾患もしくは状態の、処置に対する抵抗性または非応答性を指す(例えば、たとえ処置が施されても、新生物性形質細胞の数は増加する)。他に示されない限り、「難治性」という用語は、化学療法および幹細胞移植処置を含むがこれらに限定されない、任意の過去の処置に対する抵抗性または非応答性を指す。
【0022】
「再発性」とは、患者の病気が以前の疾患状態へ戻る退行、とりわけ明確な回復または部分的回復に続く症状の回帰を指す。他に示されない限り、再発性状態は、化学療法および幹細胞移植処置を含むがこれらに限定されない、過去の処置以前の病気へ回帰する過程、またはそれへの回帰に言及する。
【0023】
「がん」および「がん性」という用語は、調節されない細胞増殖を典型的に特徴とする、哺乳動物における生理学的な状態を指し、または記載する。がんの例は、がん腫、リンパ腫、芽球腫、肉腫、および白血病を含むが、これらに限定されない。そのようながんの、より特定された例は、扁平上皮がん、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん、および肺扁平上皮がんを含む)、腹膜がん、肝細胞がん、胃がん(gastric cancer)または胃がん(stomach cancer)(胃腸管がんを含む)、膵臓がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞腫、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜または子宮がん、唾液腺がん腫、腎臓または腎がん、肝臓がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝がん、上咽頭がん、神経膠腫、および様々な種類の頭頸部がん、ならびにB細胞白血病(低悪性度/濾胞性非ホジキン型リンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL; 中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞型NHL;巨大腫瘤病変NHL;マントル細胞リンパ腫(MCL);AIDS関連リンパ腫;およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含む)のような造血器悪性腫瘍;慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);有毛細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;多発性骨髄腫ならびに移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)を含む。
【0024】
「B細胞新生物」とは、がん性または良性である可能性があり、かつ多くの場合制御されない細胞分裂を有する異常なB細胞増殖を指す。B細胞新生物は、形質細胞新生物、リンパ球優位型ホジキン病(LPHD)を含むホジキン病;非ホジキン型リンパ腫(NHL);濾胞中心細胞(FCC)リンパ腫;急性リンパ球性白血病(ALL);慢性リンパ球性白血病(CLL);有毛細胞白血病、およびCD20陽性新生物を含むが、これらに限定されない。非ホジキン型リンパ腫は、低悪性度/濾胞性非ホジキン型リンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非切れ込み核細胞型NHL、巨大腫瘤病変NHL、形質細胞様リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含む。これらのがんの再発の処置もまた、企図される。LPHDは、放射線または化学療法処置にもかかわらず、頻繁に再発する傾向があるホジキン病の一種である。CLLは白血病の四つの主要な種類の一つである。リンパ球と称される成熟B細胞のがんであるCLLは、血液、骨髄およびリンパ性組織中の細胞の進行性蓄積を呈する。緩慢性リンパ腫は、平均的な患者が、何度もの寛解および再発に続き6〜10年間生存する、遅増殖性の不治の疾患である。
【0025】
本明細書で使用される、「非ホジキン型リンパ腫」または「NHL」という用語は、ホジキン型リンパ腫以外のリンパ系がんを指す。ホジキン型リンパ腫は、ホジキン型リンパ腫におけるリードシュテルンベルク細胞の存在および非ホジキン型リンパ腫における該細胞の非存在によって、一般に非ホジキン型リンパ腫から識別され得る。本明細書において使用される用語に包含される非ホジキン型リンパ腫の例は、Color Atlas of Clinical Hematology, Third Edition; A. Victor HoffbrandおよびJohn E. Petit (eds.) (Harcourt Publishers Limited 2000)(とりわけ、図11.57、11.58および/または11.59を参照のこと)において記載されるRevised European-American Lymphoma(REAL)スキームのような当技術分野において公知の分類スキームに応じて、当業者(例えば、腫瘍学者または病理学者)によって同定されると考えられる、任意のものを含む。より具体的な例は、再発性または難治性NHL、最前線低悪性度NHL、ステージIII/IV NHL、化学療法耐性NHL、前駆Bリンパ芽球性白血病および/もしくはリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、B細胞慢性リンパ球性白血病および/もしくは前リンパ球性白血病および/もしくは小リンパ球性リンパ腫、B細胞性前リンパ球性白血病、免疫細胞腫および/もしくはリンパ形質細胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、節外性辺縁帯-MALTリンパ腫、節性辺縁帯リンパ腫、有毛細胞白血病、形質細胞腫および/もしくは形質細胞骨髄腫、低悪性度/濾胞性リンパ腫、中悪性度/濾胞性NHL、マントル細胞リンパ腫、濾胞中心細胞リンパ腫(濾胞性)、中悪性度びまん性NHL、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、侵攻性NHL(侵攻性最前線NHLおよび侵攻性再発性NHLを含む)、自己幹細胞移植後の再発性または難治性のNHL、縦隔原発B細胞性大細胞型リンパ腫、原発性体腔性リンパ腫、高悪性度性免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非切れ込み核細胞型NHL、巨大腫瘤病変NHL、バーキットリンパ腫、前駆(末梢性)T細胞リンパ性白血病および/もしくはリンパ腫、成人T細胞リンパ腫および/もしくは白血病、T細胞慢性リンパ球性白血病および/もしくは前リンパ球性白血病、大顆粒リンパ球性白血病、菌状息肉症および/もしくはセザリー症候群、節外性ナチュラルキラー/T細胞(鼻型)リンパ腫、腸症型T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、皮膚(皮膚性)リンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫、血管中心性リンパ腫、腸管T細胞リンパ腫、末梢性T細胞(他に特定されない限り)リンパ腫、ならびに血管免疫芽球T細胞リンパ腫を含むが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書において使用される場合、「形質細胞新生物」とは、がん性または良性である可能性があり、かつ多くの場合制御されない細胞分裂を有する異常な形質細胞増殖を指す。形質細胞新生物の例は、多発性骨髄腫(MM)、形質細胞腫(例えば、髄外性形質細胞腫(EMP)、孤立性骨形質細胞腫(SPB)、悪性形質細胞腫)、マクログロブリン血症(例えば、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(リンパ形質細胞性白血病))、意義不明単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)、形質細胞白血病、高グロブリン血症性紫斑およびカーラー病を含む。
【0027】
多発性骨髄腫は、とりわけ骨破壊、腎不全、貧血症、および高カルシウム血症によって特徴付けられることが可能である。MMの共通の症状は、疲労、骨痛、および反復性感染症を含む。骨髄腫細胞の数が増加するにつれて、赤血球細胞、白血球細胞および血小板の生成はより減少する。骨髄腫細胞はまた、骨の堅固な部分も破壊し、かつ脆弱化させる。しかしながら、多発性骨髄腫は、時にはいかなる症状も引き起こさない。稀な場合には、多発性骨髄腫は臓器不全を引き起こし得る。これは、アミロイド症と呼ばれる状態によって引き起こされる可能性がある。抗体タンパク質が蓄積し、共に結合して、腎臓および心臓のような臓器中に集積する可能性がある。これによって、臓器が硬化し、かつ機能することが不可能になる。
【0028】
形質細胞腫は、形質細胞新生物の一種で、異常な形質細胞(骨髄腫細胞)が一つの位置に集合し、かつ単一腫瘍を形成する。形質細胞腫は、骨髄中に形成されるか、または骨髄外(骨髄外の軟組織中)にある可能性がある。骨の形質細胞腫は、多くの場合、多発性骨髄腫になる。骨髄外形質細胞腫は、一般に咽喉および鼻腔の組織中に形成される。
【0029】
マクログロブリン血症は、骨髄、リンパ節、および/または脾臓中に集積された異常な形質細胞である。細胞は、血液を濃厚にする大過剰のMタンパク質を作製する。リンパ節、肝臓および脾臓は、膨張する可能性がある。濃厚な血液は、微小血管中の血流に問題を引き起こす可能性がある。マクログロブリン血症の症状は、影響される体の部分に依存する。マクログロブリン血症を患う大多数の患者は、いかなる症状も有しない。この種の形質細胞新生物においては、骨髄中に異常な形質細胞が存在するが、がんは存在しない。異常な形質細胞は、ルーチンの血液または尿検査の間に見出される可能性があるMタンパク質を産生する。大多数の患者において、Mタンパク質の量は、同一のままであり、いかなる症状または問題も存在しない。幾人かの患者において、MGUSは後に、多発性骨髄腫またはリンパ腫のようなより重篤な状態になる可能性がある。
【0030】
ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(WM)は、稀な、無痛性の(遅増殖の)非ホジキン型リンパ腫(免疫系の細胞中に生じるがん)である。WMはまた、リンパ形質細胞性リンパ腫とも称される。WMは、Bリンパ球またはB細胞と称される白血球細胞から発生する形質細胞において生じる。高齢者、とりわけ女性において生じるマクログロブリン血症は、貧血、高グロブリン血症、および白血球細胞または骨髄中の形質細胞に類似した細胞の増殖によって特徴付けられる。WMにおいて、異常な形質細胞が制御不能に増殖し、大量のモノクローナルマクログロブリン(IgM)抗体と称されるタンパク質を産生する。血液中の高いレベルのIgMは、高粘度(濃度または粘性)を引き起こし、ワルデンシュトレームの多数の症状をもたらす。
【0031】
本発明による有用な治療剤、および治療剤の併用の例は、AVASTIN(登録商標)抗体、ビスフォスフォネート、サリドマイド類似体、ボルテゾミブ、メルファラン;プレドニゾン;サリドマイド;アドリアマイシン(ドキソルビシン);ドキソルビシン塩酸塩リポソーム注射(Doxil(登録商標));ボルテゾミブ(velcade(登録商標));レナリドマイド(CC-5013、Revlimid(登録商標));デキサメタゾン;ビンクリスチン(Oncovin(登録商標))、カルムスチン、シクロホスファミド(シトキサン)、メルファラン/プレドニゾン/サリドマイド併用(MPT);サリドマイド/デキサメタゾン併用(TD);ボルテゾミブ/ドキソルビシン/サリドマイド/デキサメタゾン併用(BATD);ボルテゾミブ/メルファラン/デキサメタゾン/サリドマイド併用(BMDT);ボルテゾミブ/メルファラン/プレドニゾン/サリドマイド(BMPT)併用;ボルテゾミブ/ペグ化リポソーマルドキソルビシン/サリドマイド併用(BTD)、ならびに他のアルキル化剤併用療法および副腎皮質ステロイド剤併用療法を含む。
【0032】
アルキル化剤は、メルファランおよびシクロホスファミドを含むが、これらに限定されない。アルキル化剤併用療法の一例は、ビンクリスチン、カルムスチン、メルファラン、シクロホスファミド、プレドニゾン(VBMCP)を含むが、これに限定されない。
【0033】
「ステロイド」は、デキサメタゾンおよびプレドニゾンのような副腎皮質ステロイドを含むが、これらに限定されない。副腎皮質ステロイド剤併用療法の一例は、ビンクリスチン/ドキソルビシン/デキサメタゾン(VAD)を含むが、これに限定されない。
【0034】
「ビスフォスフォネート」は、パミドロネート(例えば、Aredia(登録商標)、他)、ゾレドロン酸(例えば、Zometa(登録商標))、およびクロドロネート(例えば、Bonefos(登録商標))(クロドロネート)を含むが、これらに限定されない。
【0035】
「サリドマイド類似体」とは、サリドマイドの免疫調節性類似体を指し、レナリドマイド(Revlimid(登録商標))、CC-4047(Actimid(商標))、CC11006、ENMD-0995、およびCC11006を含むが、これらに限定されない。Machado, AL et al., (2002) Bioorganic & Med. Chem. Lets. 15: 1169-1172;Lepper, ER et al., (2004) J. Med. Chem. 47: 2219-2217;米国特許第7,719,106号および第7,041,680号も参照のこと。
【0036】
「プロテアソーム阻害治療」とは、プロテアソーム阻害剤を投与する段階を含む任意の治療処置を指す。
【0037】
「アルキル化剤治療」とは、アルキル化剤を投与する段階を含む任意の治療処置を指す。
【0038】
「サリドマイドまたはサリドマイド類似体治療」は、各々、サリドマイドまたはサリドマイド類似体を投与する段階を含む任意の治療処置を指す。
【0039】
「慢性的」投与とは、長期間、初期的治療効果(活性)を維持するための、急性的様式とは対照的な継続的様式での薬剤の投与を指す。
【0040】
「間欠的」投与は、中断なく継続的に成される処置ではなく、むしろ性質上周期的である。
【0041】
一つまたは複数のさらなる治療剤「との併用での」投与は、任意の順序における、治療剤の同時投与、および連続的投与を含む。
【0042】
本明細書において開示される治療剤の「有効量」とは、具体的な一定の目的を達成するために十分な量である。「有効量」は、経験的に、および、一定の目的に関連する様々な方法によって決定され得る。
【0043】
「治療的有効量」という用語は、哺乳動物(別称、患者)における疾患または障害を「処置する」ために有効な本発明の治療剤の用量を指す。がんの場合において、薬物の治療的有効量によって、がん細胞数を減少させることが可能であり、腫瘍サイズを減少させることが可能であり、末梢器官へのがん細胞の浸潤を阻害する(すなわち、ある程度遅延させる、かつ好ましくは停止させる)ことが可能であり、腫瘍転移を阻害する(すなわち、ある程度遅延させる、かつ好ましくは停止させる)ことが可能であり、腫瘍の増殖をある程度阻害することが可能であり、かつ/またはがんに関連する一つもしくは複数の症状をある程度緩和させることが可能である。本明細書における「処置」の定義を参照のこと。治療的有効量は、薬物が増殖を防止することが可能である、かつ/または存在するがん細胞を破壊することが可能な程度まで、細胞増殖抑制的かつ/または細胞障害性であり得る。治療的有効量は、治療剤および処置されるべき疾患に依存して、増殖阻害量または細胞障害量であり得る。
【0044】
「処置する」または「処置」または「緩和」とは、目的が標的の病理学的状態または障害を予防する、または遅延させる(減少させる)ことである治療的手段を指す。処置を必要とする者は、すでに障害を有する者、ならびに障害を有する傾向がある者、または障害が予防されるべき者を含む。これらの用語は、もし、症状、合併症もしくは疾患に関連する他の問題を緩和する、軽減する、もしくは減少させる、または、症状、合併症もしくは疾患に関連する他の問題の発症の機会もしくは頻度を緩和する、軽減する、もしくは減少させる場合に、本明細書における治療的使用および予防的使用が成功裏であることを示す。
【0045】
本発明の治療剤の「増殖阻害量」は、細胞、とりわけインビトロまたはインビボいずれかの、腫瘍、例えばがん細胞の増殖を阻害することが可能な量である。新生物細胞増殖を阻害する目的のための本発明の治療剤の「増殖阻害量」は、経験的に、および公知の方法または本明細書において提供される例によって決定され得る。
【0046】
本発明の治療剤の「細胞障害量」は、細胞、とりわけインビトロまたはインビボいずれかの、腫瘍、例えばがん細胞の破壊を引き起こすことが可能な量である。新生物細胞増殖を阻害する目的のための「細胞障害量」は、経験的に、および当技術分野において公知の方法によって決定され得る。
【0047】
「抗体」という用語は、最も広範な意味において使用され、例えば、単一のモノクローナル抗体(作動薬、拮抗剤および中和抗体を含む)、ポリエピトープ的特異性を有する抗体組成物、ポリクローナル抗体、一本鎖抗体、および天然のポリペプチドに特異的に結合し、かつ/または本発明の生物活性もしくは免疫活性を示す抗体断片(以下を参照のこと)を具体的に網羅する。一つの態様によると、抗体は、標的タンパク質の、例えば三量体型のようなオリゴマー型へ結合する。別の態様によると、抗体はタンパク質へ特異的に結合し、この結合が本発明のモノクローナル抗体(例えば、本発明の寄託抗体等)によって阻害され得る。抗体の「機能的断片または類似体」という句は、参照される抗体と共通の定性的な生物活性を有する化合物である。例えば、本発明の抗体の機能的断片または類似体は、VEGFへ特異的に結合し得るものである可能性がある。一つの態様において、抗体は、VEGFが細胞増殖を誘導する能力を防止し得る、または実質的に減少させ得る。「免疫グロブリン(Ig)」という用語は、本明細書において「抗体」と置換可能に使用される。
【0048】
「単離された抗体」とは、その天然の環境の構成成分から同定され、かつ分離され、かつ/または回収されたものである。天然の環境の混入構成成分は、抗体に関する診断または治療的使用に干渉すると考えられる材料であり、酵素、ホルモンおよび他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質を含み得る。好ましい態様において、抗体は、(1)ローリー法によって決定される抗体重量の95%より大きくなるまで、かつ最も好ましくは重量の99%を上回るまで、(2)スピニングカップシーケネーターの使用によって、N末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クーマシーブルー、または好ましくは銀染色を用いて、非還元または還元条件下でSDS-PAGEにより均一になるまで、精製されると考えられる。抗体の天然環境の少なくとも一つの成分は存在しないと考えられるため、単離された抗体は、組み換え細胞内のインサイチューの抗体を含む。しかしながら、通常、単離された抗体は少なくとも一つの精製段階によって調製されると考えられる。
【0049】
基礎的な4鎖抗体ユニットは、二つの同一の軽(L)鎖および二つの同一の重(H)鎖から構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である(IgM抗体は、J鎖と称される追加のポリペプチドと共に、五個の基礎的なヘテロ四量体ユニットからなり、したがって10個の抗原結合部位を含むが、分泌されるIgA抗体は、J鎖と共に2〜5個の基礎的4鎖ユニットを含む多価集合体を形成するよう重合し得る)。IgGの場合、4鎖ユニットは一般に約150,000ダルトンである。各L鎖は、一個の共有ジスルフィド結合によってH鎖へ連結され、一方二つのH鎖は、H鎖アイソタイプに依存して、一つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに連結される。各HおよびL鎖もまた、規則的に空間を空けて配置される鎖間ジスルフィド架橋を有する。各H鎖は、N末端に、αおよびγ鎖の各々に関して一個の可変ドメイン(VH)、それに続く三個の定常ドメイン(CH)、ならびにμおよびεアイソタイプに関しては四個のCHドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(VL)、他方の末端にそれに続く定常ドメイン(CL)を有する。VLはVHと並列され、かつCLは重鎖の最初の定常ドメイン(CH1)と並列される。特定のアミノ酸残基が、軽鎖および重鎖可変ドメイン間の境界面を形成すると考えられている。VHおよびVLの対合は、単一の抗原結合部位を共に形成する。異なるクラスの抗体の構造および特徴に関して、例えばBasic and Clinical Immunology, 8th edition, Daniel P. Stites, Abba I. TerrおよびTristram G. Parslow (eds.), Appleton & Lange, Norwalk, CT, 1994の71ページおよび第6章を参照のこと。
【0050】
任意の脊椎動物種由来のL鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κおよびλと称される、二つの明確に異なる種類のうちの一つに充当され得る。それらの重鎖(CH)の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは、異なるクラスまたはアイソタイプに充当され得る。免疫グロブリンには五個のクラスが存在し、各々α、δ、γ、εおよびμと命名される重鎖を有するIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMである。γおよびαのクラスは、CH配列および機能における比較的軽微な違いに基づいてサブクラスへさらに分割され、例えば、ヒトはIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2を発現する。
【0051】
「可変の」という用語は、可変ドメインの特定のセグメントが、抗体間で、配列において広範囲に渡り異なるという事実を指す。Vドメインは、抗原結合を媒介し、かつ特定の抗原に関する特定の抗体の特異性を規定する。しかしながら、可変性は、可変ドメインの110アミノ酸スパンに渡って均等に分布してはいない。その代わり、V領域は、各々9〜12アミノ酸長の「超可変領域」と称される極度に可変性のより短い領域によって分離される、15〜30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と称される比較的不変なストレッチからなる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは、各々四個のFRを含み、大部分はシート構造を採り、シート構造を連結し、ある場合にはその一部分を成すループを形成する三個の超可変領域によって連結される。各鎖中の超可変領域は、FRによって、他の鎖由来の超可変領域と共に非常に隣接して共に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗原への抗体の結合に直接的に関与しないが、抗体依存性細胞毒性(ADCC)における抗体の関与のような、様々なエフェクター機能を示す。
【0052】
本明細書において使用される場合、「超可変領域」という用語は、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、VL中の残基約24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)周辺、ならびにVH中の約1〜35(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3)周辺(一つの態様において、H1は約31〜35周辺);Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))ならびに/または「超可変ループ」由来の残基(例えば、VL中の残基26〜32(L1)、50〜52(L2)および91〜96(L3)、ならびにVH中の26〜32(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3);Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196: 901-917 (1987))を一般的に含む。
【0053】
本明細書において使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一の抗体の集合から得られる抗体、すなわち微量に存在し得る可能な天然の変異を除き、集合に含まれる個々の抗体が同一であることを指す。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に対して方向付けられる。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対して方向付けられる、異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原の単一の決定基に対して方向付けられる。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体が混入することなく合成され得るという点において有利である。修飾語「モノクローナル」は、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきでない。例えば、本発明において有用なモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256: 495 (1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ方法によって調製することが可能であり、または、細菌、真核動物もしくは植物細胞において、組み換えDNA技術を使用して作製することが可能である(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)。「モノクローナル抗体」はまた、Clackson et al., Nature, 352:624-628(1991)、Marks et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1991)に記載される技術を使用してファージ抗体ライブラリーから、および、例えば以下の実施例によっても単離され得る。
【0054】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、それらが本発明の生物活性を示す限り、重鎖および/もしくは軽鎖の一部が、特定の種由来の、または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるか、もしくは相同性があるが、鎖の残りの部分は、別の種由来の、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるか、もしくは相同性がある、「キメラ」抗体、ならびにそのような抗体の断片を含む(例えば、米国特許第4,816,567号、およびMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6851-6855 (1984)を参照のこと)。本明細書において関心対象のキメラ抗体は、非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル、類人猿等)由来の可変ドメイン抗原結合配列、およびヒト定常領域配列を含む、「霊長類化」抗体を含む。
【0055】
「無傷」抗体は、抗原結合部位、ならびにCL、および少なくとも重鎖定常ドメインCH1、CH2、およびCH3を含む抗体である。定常ドメインは、天然配列の定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変種であり得る。好ましくは、無傷抗体は、一つまたは複数のエフェクター機能を有する。
【0056】
「抗体断片」は、無傷抗体の一部、好ましくは無傷抗体の抗原結合または可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片;ダイアボディ;線形抗体(米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapata et al., Protein Eng. 8(10): 1057-1062 [1995]を参照のこと);一本鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体を含む。「線形抗体」という表現は、一般に、Zapata et al., Protein Eng. 8(10): 1057-1062(1995)に記載される抗体を指す。端的には、これらの抗体は、相補的軽鎖ポリペプチドと共に抗原結合領域対を形成する、直列のFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)の対を含む。線形抗体は、二重特異的または単一特異的であり得る。
【0057】
抗体のパパイン消化は、容易に結晶化する能力を反映する呼称である「Fab」断片、および残りの「Fc」断片と称される二つの同一の抗原結合断片を産生する。Fab断片は、H鎖の可変領域ドメイン(VH)および一つの重鎖(CH1)の最初の定常ドメインと共にL鎖全体からなる。各Fab断片は、抗原結合に関して単一特異的であり、すなわち、それは単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理によって、二価の抗原結合活性を有する二個のジスルフィド結合したFab断片に大まかに対応し、かつ依然として抗原を架橋することが可能な、単一の大型F(ab’)2断片が得られる。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の一つまたは複数のシステインを含むCH1ドメインのC末端にさらなる数残基を有する点で、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’に対する、本明細書における呼称である。F(ab')2抗体断片は、元来、それらの間のヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学架橋もまた、公知である。
【0058】
Fc断片は、ジスルフィドによって共に保持される、双方のH鎖のC末端部分を含む。抗体のエフェクター機能はFc領域の配列によって決定され、この領域もまた、特定の細胞種に見出されるFc受容体(FcR)によって認識される一部である。
【0059】
「Fv」は、完全な抗原認識および結合部位を含む、最小限の抗体断片である。この断片は、強固な、非共有結合による、一つの重鎖および一つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。これらの二個のドメインの折り畳みから、抗原結合に関するアミノ酸残基に寄与し、かつ抗体に抗原結合特異性を与える六個の超可変ループ(H鎖およびL鎖由来の各々3個のループ)が生じる。しかしながら、結合部位全体よりもより低い親和性ではあるが、単一の可変ドメイン(または抗原に関して特異的な三個のCDRのみを含むFvの半分)でさえも、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0060】
「sFv」または「scFv」としても略記される「一本鎖Fv」も、単一ポリペプチド鎖に連結されるVHおよびVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、抗原結合に関してsFvが所望の構造を形成することを可能にする、VHとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。sFvの総説に関して、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)中のPluckthun; 下記のBorrebaeck 1995を参照のこと。
【0061】
「ダイアボディ」という用語は、鎖内でなく鎖間のVドメインの対合が達成され、二価の断片、すなわち二個の抗原結合部位を有する断片がもたらされるように、VHドメインとVLドメインとの間の短いリンカー(約5〜10残基)を用いてsFv断片(前述のパラグラフを参照)を構築することによって調製される、小型の抗体断片を指す。二重特異的なダイアボディは、二つの抗体のVHおよびVLドメインが、異なるポリペプチド鎖に存在する二個の「交差」sFv断片のヘテロダイマーである。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404,097号、国際公開公報第93/11161号、およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993)中に、より全面的に記載される。
【0062】
非ヒト(例えば、げっ歯類)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体由来の最小限の配列を含むキメラ抗体である。多くの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域由来の残基が、所望の抗体特異性、親和性および活性を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域由来の残基によって置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中またはドナー抗体中に見出されない残基を含み得る。これらの改変は、抗体の性能をさらに改良するために成される。一般に、ヒト化抗体は、全てのまたは実質的に全ての超可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものと対応し、かつ全てのまたは実質的に全てのFRがヒト免疫グロブリン配列である、少なくとも一つ、典型的には二つの可変ドメインの全てを実質的に含むと考えられる。ヒト化抗体はまた、典型的にはヒト免疫グロブリンのものである、少なくとも一部分の免疫グロブリン定常領域(Fc)も任意で含むと考えられる。さらなる詳細に関して、Jones et al., Nature 321: 522-525 (1986);Riechmann et al., Nature 332: 323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2: 593-596 (1992)を参照のこと。
【0063】
「種依存性抗体」は、第二の哺乳動物種由来の抗原相同体に対して有するよりも、第一の哺乳動物種由来の抗原に対してより強い結合親和性を有する抗体である。通常、種依存性抗体は、ヒト抗原に「特異的に結合する」(すなわち、約1×10-7 Mを超えない、好ましくは約1×10-8 Mを超えない、かつ最も好ましくは約1×10-9 Mを超えない結合親和性(Kd)値を有する)が、第二の非ヒト哺乳動物種由来の抗原相同体に対して、そのヒト抗原に対する結合親和性よりも、少なくとも約50倍、または少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍弱い結合親和性を有する。種依存性抗体は、上に規定されるような任意の様々な種類の抗体であり得るが、好ましくはヒト化またはヒト抗体である。
【0064】
関心対象の標的に「結合する」本発明の治療剤は、治療剤が、標的を発現する、または有する細胞または組織への作用の際に治療剤として有用であり、かつ他の標的と有意に交差反応しないような、十分な親和性を伴い標的に結合するものである。そのような態様において、「非標的」に対する治療剤の結合の程度は、例えば、蛍光標識細胞ソーティング(FACS)解析または放射性免疫沈降(RIA)によって決定される場合、その特定の標的に対する治療剤の結合の約10%未満であると考えられる。標的分子に対する治療剤の結合に関して、特定の標的もしくは特定の標的上のエピトープへの「特異的結合」、またはそれらに「特異的に結合する」、またはそれらに「関して特異的」という用語は、非特異的相互作用と明確に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、一般的に、結合活性を有しない類似構造の分子である対照分子の結合と比較して、分子の結合を決定することによって測定され得る。例えば、特異的結合は、例えば過剰量の非標識標的のような、標的に類似の対照分子との競合によって決定され得る。この場合、もし、プローブに対する標識された標的の結合が、過剰量の非標識標的によって競合的に阻害されたならば、特異的結合が示される。本明細書において使用される、特定のポリペプチドもしくは特定のポリペプチド標的上のエピトープへの「特異的結合」、またはそれらに「特異的に結合する」、またはそれらに「関して特異的」という用語は、例えば、標的に関して少なくとも約10-4 M、あるいは少なくとも約10-5 M、あるいは少なくとも約10-6 M、あるいは少なくとも約10-7 M、あるいは少なくとも約10-8 M、あるいは少なくとも約10-9 M、あるいは少なくとも約10-10 M、あるいは少なくとも約10-11 M、あるいは少なくとも約10-12 M、またはより大きいKdを有する分子によって示され得る。一つの態様において、「特異的結合」という用語は、分子が、任意の他の標的もしくはエピトープへの実質的な結合なしに、特定の標的または特定の標的上のエピトープに対して結合するような結合を指す。
【0065】
「患者」とは、処置される被験体を指す。好ましい態様において、被験体は哺乳動物である。
【0066】
処置を目的とする「哺乳動物」は、ヒト、飼育動物または放牧動物、非ヒト霊長類、ならびに動物園の動物、スポーツ動物、またはイヌ、ウマ、ネコ、ウシ等のようなペット動物を含む、哺乳動物として分類される任意の動物を指す。一つの好ましい態様において、哺乳動物はヒトである。
【0067】
本発明の組成物は、一つまたは複数の本発明の治療剤および担体を含み得る。本明細書において使用される「担体」は、利用される用量および濃度で、それらに曝露される細胞または哺乳動物に対して非毒性である、薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤を含む。多くの場合、生理学的に許容される担体は、水溶性pHバッファー溶液である。生理学的に許容される担体の例は、リン酸、クエン酸、および他の有機酸のようなバッファー;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンもしくはリジンのようなアミノ酸;単糖、二糖、およびグルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;マンニトールもしくはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような塩形成対イオン;ならびに/またはTWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS(登録商標)のような非イオン性界面活性剤を含む。
【0068】
用量
処置されるべき適応症および当分野における医師が精通していると考えられる用量に関連する因子に依存して、本発明の治療剤は、毒性および副作用を最小化しつつ、その適応症の処置のために効果的な用量で投与されるであろう。例えば、抗VEGF抗体に関する開始用量レジメンは、二週間毎に5〜10 mg/kgであり得る。一つの態様において、ボルテゾミブに関する開始用量は、1.3 mg/m2、週に二回で二週間であり、その後10日間の休止期間が続く。別の態様において、レナリドマイドの開始用量は、10 mg、一日一回である。本発明の治療剤は、必要に応じて、慢性的、周期的、逐次的または同時に投与されてもよい。
【0069】
本明細書において引用される全ての刊行物(特許および特許出願を含む)は、2006年12月11日出願の米国特許仮出願第60/874,460号を含め、それらの全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0070】
本明細書および特許請求の範囲全体に渡って、「含む」という語、または「含む」もしくは「含んでいる」のような変形は、規定の完全体もしくは完全体群の包含を意味するが、任意の他の完全体もしくは完全体群の排除を意味しないことが理解されると考えられる。
【0071】
前述の書面記載は、当業者が本発明を実施し得るために十分であると考慮される。以下に続く実施例は、例示的目的のみのために提供され、かついかなる様式においても本発明の範囲を限定することを意図しない。真に、本明細書において示されかつ記載されるものに加えて、本発明の様々な改変が前述の記載から当業者にとって明らかになり、かつ添付の特許請求の範囲の範囲内に入ると考えられる。
【0072】
実施例
実施例1−試料および方法
多発性骨髄腫と診断された患者由来の骨髄生検を得た。Ig重鎖および軽鎖のアイソタイプを、免疫固定電気泳動法(IFE)で決定した。LAGλ-1(Los Angeles IgG λ軽鎖-1)として公知の一つの試料は、メルファランに耐性である患者由来の侵攻性増殖腫瘍由来である(Campbell, RA et al., (2006) Int. J. Onc. 28: 1409-1417)。LAGk-1Aはボルテゾミブに感受性である患者の腫瘍由来である。LAGk-1Bはボルテゾミブに耐性である患者の腫瘍由来である。LAPCLκ-1は、患者由来の形質細胞白血病である。
【0073】
これらの研究において使用されたG6-31として公知の抗VEGF抗体は、以前に記載されている(国際公開公報第2005/012359号)。抗ブタクサmIgG2aを対照として使用した。一般的に、投与に先立ち、抗VEGF MAbを100%PBS中で希釈した。抗VEGF MAbを5 mg/kgで週2回、腹腔内(i.p.)注射を介して投与した。対照IgGを、5 mg/kgで週2回、i.p.注射を介して投与した。
【0074】
ヒトIgG(hIgG)レベルの決定。ヒトIgGサブクラス1のレベルを、酵素免疫測定法(ELISA)によって決定した。ヒトIgA、IgM、IgGおよびIgGサブクラスプロファイルELISAキットをZymed Laboratories(South San Francisco, CA)から購入した。腫瘍を有するマウスについて、眼窩後方から毎週採血した。13,000 rpmで試料を30分間回転し、血清を収集した。IgGサブクラス1 ELISAキットを、製造業者の取扱説明書に従って調製した。550 nmの参照波長を用いて、450 nMでの吸光度をKC Juniorソフトウェア(BioTek Instruments, Winooski, VT)を有するμQuantマイクロプレート分光光度計で決定した。
【0075】
実施例2−抗VEGF抗体単剤多発性骨髄腫(MM)研究
6〜8週齢のオス重症複合免疫不全(SCID)マウスを、この研究において使用した。各マウスについて、2.0〜4.0 mm3のLAGk-1AまたはLAGk-1Bを左後脚の浅臀筋(superficial gluteal muscle)中へ外科的に移植した。ヒトIgGレベルがマウス血清中で検出可能になる14日の間、腫瘍を増殖させ、かつ二つの処置群のうちの一つへマウスを盲験的に充当した。
【0076】
マウスを以下の通り処置した:
LAGκ-1Aマウス(ボルテゾミブ感受性MM)
対照mIgG2a(5 mg/kg、IP、一週間に2回)
抗VEGF MAb G6-31(5 mg/kg、IP、一週間に2回)

LAGκ-1Bマウス(ボルテゾミブ耐性MM)
対照mIgG2a(5 mg/kg、IP、一週間に2回)
抗VEGF MAb G6-31(5 mg/kg、IP、一週間に2回)
【0077】
抗VEGF抗体を用いた処置を、14日目または21日目に開始した。一般的に、研究の終了まで、マウスを一日に一回、一週間に5回検量した。標準的な測径器を用いて、腫瘍体積を一週間に2回測定した。マウスから毎週採血し、かつネズミ血清中のhIgGレベルをELISAによって測定した。
【0078】
LAGκ-1A(ボルテゾミブ感受性)腫瘍の結果は、図1A〜Bおよび2A〜Bに示される。LAGκ-1B(ボルテゾミブ耐性)腫瘍の結果は、図3A〜B、4A〜バンド5A〜B中に示される。抗VEGF抗体を受けたマウスは、対照抗体を受けたマウスと比較して、腫瘍増殖の顕著な阻害(p=0.0005)、およびパラプロテインレベルの減少(p=0.0002)を示した。42日目には、抗VEGF抗体を受けたLAGκ-1A保有マウスは、対照抗体により処置された動物と比較して、ヒトパラプロテインレベルにおいて70%の減少、および腫瘍体積において80%の減少を示した。抗VEGF抗体を用いた処置は、いかなる観察された毒性にも関連しなかった。
【0079】
とりわけ、抗VEGF抗体を受けたLAGκ-1B保有マウス(ボルテゾミブ耐性)は、対照抗体により処置された動物と比較して、ヒトパラプロテインレベルおよび腫瘍体積において実質的な減少を示した。したがって、単剤としての抗VEGF抗体は、この研究において、ボルテゾミブ感受性および耐性の腫瘍の減少において効果的であった。腫瘍を21日間増殖させた際には、抗VEGF抗体を用いる処置以前に、腫瘍体積は相当の大きさになっていた。図5A〜Bは、増加した腫瘍のサイズにも関わらず、単剤としての抗VEGF抗体が、ヒトIgG1レベルおよびLAGκ-1B腫瘍体積の減少において効果的であったことを示す。
【0080】
実施例3−抗VEGF/ボルテゾミブ併用研究
腫瘍が約100mm3の平均サイズに達する際に、実施例1に記載される、MM/PCL腫瘍を保持するSCIDマウスを無作為に処置群(n=10マウス/群)へ充当する。マウスがそれらの適切な処置群へ無作為化された際に、処置を開始する。
【0081】
投与に先立ち、適切な用量で、ボルテゾミブを0.9%生理食塩水中に希釈する。ボルテゾミブを、0.1 mg/kgで1週間に3回、静脈内(i.v.)注射を介して投与する。対照的に、対照として、小型分子阻害剤媒体(SMIv)を、0.5%メチルセルロース:0.2% Tween 80:99.3%希釈剤において調製する。決定される用量で、強制経口を介して、SMIvを毎日投与する。
【0082】
マウスを以下の通り処置する。

【0083】
研究の終了まで、マウスを毎日一回、一週間に5回検量する。標準的測径器を使用して、腫瘍体積を一週間に二回測定する。マウスから毎週採血し、かつネズミ血清中のhIgGレベルをELISAによって測定する。腫瘍体積、腫瘍重量、およびhIgGレベルの平均値は、各群に包含されるであろう。媒体、単独療法治療、併用療法の間で比較を行う。
【0084】
実施例4−抗VEGF/ボルテゾミブ/レナリドマイド併用研究
腫瘍が約100 mm3の平均サイズへ達する際に、実施例1に記載される、MM/PCL腫瘍を保持するSCIDマウスを無作為に処置群(n=10マウス/群)へ充当する。マウスがそれらの適切な処置群へ無作為化された際に、処置を開始する。
【0085】
投与に先立ち適切な用量で、ボルテゾミブを0.9%生理食塩水中に希釈する。ボルテゾミブを、0.1 mg/kgで1週間に3回、静脈内(i.v.)注射を介して投与する。対照的に、対照として、小型分子阻害剤媒体(SMIv)を、0.5%メチルセルロース:0.2% Tween 80:99.3%希釈剤において調製する。決定される用量で、強制経口を介して、SMIvを毎日投与する。
【0086】
レナリドマイドを、10 mg/mlでDMSO中に溶解する。保管溶液を、無菌0.9%生理食塩水溶液中で1 mg/mlの濃度に希釈する。全ての実験におけるレナリドマイドの最終濃度は、0.01%未満である。
【0087】
マウスを以下の通り処置する。

【0088】
研究の終了まで、マウスを毎日一回、一週間に5回検量する。標準的測径器を使用して、腫瘍体積を一週間に二回測定する。マウスから毎週採血し、かつネズミ血清中のhIgGレベルをELISAによって測定する。腫瘍体積、腫瘍重量、およびhIgGレベルの平均値は、各群に包含されるであろう。媒体、単独療法治療、併用療法の間で比較を行う。
【0089】
実施例3−メルファラン耐性MMモデル
6〜8週齢のオス重症複合免疫不全(SCID)マウスを、この研究において使用する。各マウスについて、LAGλ-1を左後脚の浅臀筋中へ外科的に移植する。腫瘍を増殖させ、かつ二つの処置群のうちの一つへマウスを盲験的に充当する。
LAGλ-1マウス(メルファラン耐性MM)
対照mIgG2a(5 mg/kg、IP、一週間に2回)
抗VEGF MAb G6-31(5 mg/kg、IP、一週間に2回)
【0090】
研究の終了まで、マウスを毎日一回、一週間に5回検量する。標準的測径器を使用して、腫瘍体積を一週間に二回測定する。マウスから毎週採血し、かつネズミ血清中のhIgGレベルをELISAによって測定する。腫瘍体積、腫瘍重量、およびhIgGレベルの平均値は、各群に包含されるであろう。媒体、単独療法治療、併用療法の間で比較を行う。
【0091】
実施例4−形質細胞白血病モデル
この研究において、6〜8週齢のオス重症複合免疫不全(SCID)マウスを使用する。各マウスについて、LAPCLκ-1を左後脚の浅臀筋中へ外科的に移植する。腫瘍を増殖させ、かつ二つの処置群のうちの一つへマウスを盲験的に充当する。
LAPCLκ-1マウス(形質細胞白血病)
対照mIgG2a(5 mg/kg、IP、一週間に2回)
抗VEGF MAb G6-31(5 mg/kg、IP、一週間に2回)
【0092】
研究の終了まで、マウスを毎日一回、一週間に5回検量をする。標準的測径器を使用して、腫瘍体積を一週間に二回測定する。マウスから毎週採血し、かつネズミ血清中のhIgGレベルをELISAによって測定する。腫瘍体積、腫瘍重量、およびhIgGレベルの平均値は、各群に包含されるであろう。媒体、単独療法治療、併用療法の間で比較を行う。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図3A】

【図3B】

【図4A】

【図4B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
VEGF拮抗剤を投与する段階を含む、プロテアソーム阻害治療に対して再発性または難治性の患者において新生物を処置するための方法。
【請求項2】
VEGF拮抗剤を投与する段階を含む、アルキル化剤治療に対して再発性または難治性の患者において形質細胞新生物を処置するための方法。
【請求項3】
VEGF拮抗剤およびプロテアソーム阻害剤を投与する段階を含む、再発性または難治性の患者において新生物を処置するための方法。
【請求項4】
VEGF拮抗剤およびサリドマイドまたはサリドマイド類似体を投与する段階を含む、再発性または難治性の患者において形質細胞新生物を処置するための方法。
【請求項5】
再発性または難治性の患者が、サリドマイドまたはサリドマイド類似体をさらに投与される、請求項1から3のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
再発性患者が、プロテアソーム阻害剤をさらに投与される、請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
再発性または難治性の患者が、単剤としてVEGF拮抗剤を投与される、請求項1または2記載の方法。
【請求項8】
患者が、プロテアソーム阻害剤に対して難治性でない、請求項1または6記載の方法。
【請求項9】
患者が、サリドマイドまたはサリドマイド類似体に対して難治性でない、請求項4記載の方法。
【請求項10】
再発性または難治性の患者が、追加の治療剤をさらに投与される、請求項1から9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
追加の治療剤が、アルキル化剤、ステロイド、ビスフォスフォネート、およびプロテアソーム阻害剤からなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
再発性または難治性の患者が、併用療法をさらに施される、請求項1から6のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
併用療法が、メルファラン/プレドニゾン併用(MP)、メルファラン/プレドニゾン/サリドマイド併用(MPT)、サリドマイド/デキサメタゾン(TD)、ボルテゾミブ/ドキソルビシン/サリドマイド/デキサメタゾン併用(BATD)、ボルテゾミブ/メルファラン/デキサメタゾン/サリドマイド併用(BMDT)、ボルテゾミブ/メルファラン/プレドニゾン/サリドマイド(BMPT)併用、ボルテゾミブ/ペグ化リポソーマルドキソルビシン/サリドマイド併用(BTD)、ボルテゾミブ/シクロホスファミド/プレドニゾン(BCP)、ビンクリスチン/カルムスチン/メルファラン/シクロホスファミド/プレドニゾン(VBMCP)、およびビンクリスチン/ドキソルビシン/デキサメタゾン(VAD)からなる群より選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
プロテアソーム阻害剤が、ヒト20Sまたは26Sプロテアソームを阻害する、請求項1または3記載の方法。
【請求項15】
プロテアソーム阻害剤が、ボルテゾミブ、MG132、ラクタシスチン、エポキソミシンおよびサリノスポラミドAからなる群より選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
プロテアソーム阻害剤がボルテゾミブである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
アルキル化剤がメルファランである、請求項2または11記載の方法。
【請求項18】
新生物または形質細胞新生物が、がんである、請求項1から3のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
がんが造血器腫瘍である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
造血器腫瘍が、非ホジキン型リンパ腫(NHL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ球芽性白血病(ALL)、有毛細胞白血病、および慢性骨髄芽球性白血病からなる群より選択される、請求項18記載の方法。
【請求項21】
NHLが、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、および辺縁帯リンパ腫からなる群より選択される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
新生物または形質細胞新生物が、多発性骨髄腫(MM)、形質細胞腫、マクログロブリン血症、意義不明単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)、形質細胞性白血病、高グロブリン血症性紫斑、およびカーラー病からなる群より選択される、請求項1から3のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
形質細胞新生物が多発性骨髄腫である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
VEGF拮抗剤が、抗VEGF抗体、VEGFに結合するVEGF受容体配列を含む可溶性ポリペプチド、抗VEGF受容体抗体、およびVEGFへ結合するアプタマーからなる群より選択される、請求項1から23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
抗VEGF抗体が、Fab、Fv、F(ab’)2、scFV、ダイアボディおよび二重特異性抗体からなる群より選択される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
抗VEGF抗体が、ヒトまたはヒト化抗VEGF抗体である、請求項24記載の方法。
【請求項27】
抗VEGF抗体が、AVASTIN(登録商標)抗体である、請求項26記載の方法。

【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2010−512407(P2010−512407A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541425(P2009−541425)
【出願日】平成19年5月4日(2007.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/068300
【国際公開番号】WO2008/073509
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(509012625)ジェネンテック インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】