説明

新規なトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物及びそれらを用いたα−オレフィン重合触媒、並びにその重合触媒によるα−オレフィン・(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法。

【課題】高圧ラジカル法によらないで、機械的かつ熱的な物性に優れ、有用な成形体として応用可能なα−オレフィン・(メタ)アクリル酸系共重合体の製造を実現しうる触媒成分、及び、それを使用する、当共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】トリアリールホスフィン又はトリアリールアルシンからなる群から選択される配位子と、8〜10族の遷移金属化合物とを反応させて得られるα−オレフィン重合触媒。該重合触媒を用いて、α−オレフィン・(メタ)アクリル酸系共重合体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物及びそれらを用いたα−オレフィン重合触媒、並びにその重合触媒によるα−オレフィン・(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法に関し、詳しくは、次亜リン酸構造の置換基を有する新規なトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物、及びそれらを用いたα−オレフィン重合触媒、並びにその重合触媒による、機械的かつ熱的な物性に優れ、有用な成形体として応用可能なα−オレフィン・(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、エチレンと、極性基含有ビニルモノマーである酢酸ビニルや(メタ)アクリル酸又はエステルとの共重合体は、高圧ラジカル法を用いて製造されてきたが、高圧法以外で共重合体を得ることは困難であり、チーグラー触媒やメタロセン触媒を用いた場合には触媒失活を避けられなかった。
近年では、後周期遷移金属錯体触媒による、極性基含有コモノマー共重合が精力的に研究されており、これらの多くはキレート配位子を有している(非特許文献1)。
【0003】
これらのキレート配位子群のうち、キレート配位子の片側にホスフィン配位子を有する化合物が多く報告されており、キレート配位子のもう一方の側には、ホスフィン配位子(特許文献1)、アミン配位子(特許文献1)、イミン配位子(特許文献2)、アミド配位子(特許文献3)、ピリジン配位子(特許文献4)、フェノラート配位子(非特許文献1)、カルボキシラート配位子(非特許文献2)、スルホナート配位子(非特許文献3、特許文献5〜10)、ホスホラート配位子(特許文献5〜10)、アルコラート配位子(特許文献11)を有する化合物が報告されている。このうち、スルホナート配位子を有する群は、オレフィンと極性コモノマーを共重合可能である点が注目され、近年、数多くの報告がある。
【0004】
これに対して、キレート配位子群のうちで、ホスフィン配位子とホスフィナート配位子を有するキレート化合物(以下、「ホスフィンホスフィナート」と称す。)は、これを重合触媒に用いた例は報告されていない。ホスフィンホスフィナートの合成報告例は極めて少なく、Riegerによる合成報告例があるのみである(非特許文献4)。
これまでのホスフィンホスフィナートの合成報告例においては、三価ホスフィン上の芳香環はフェニル基、すなわち全て水素原子であり、重合触媒としての活性向上に有効な、ホスフィン上のアリール基のオルソ位に置換基を有するホスフィンホスフィナートの合成報告例は未だなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−255713号公報
【特許文献2】WO9840420号公開公報
【特許文献3】WO9830610号公開公報
【特許文献4】WO9946271号公開公報
【特許文献5】特開2007−63280号公報
【特許文献6】特開2007−77395号公報
【特許文献7】特開2007−117991号公報
【特許文献8】特開2008−214628号公報
【特許文献9】特開2007−214629号公報
【特許文献10】特開2007−214630号公報
【特許文献11】DE3445090号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】M.Brookhart etal,Chem.Rev.2000,1169−1204.
【非特許文献2】W.Keim,Stud.Surf.Sci.Catal.,1986,25,201.
【非特許文献3】E.Drent etal.,Chem.Commun.,2002,744.
【非特許文献4】B.Rieger etal.,Dalton Trans.,2007,272.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した背景技術の状況を踏まえて、本発明は、高圧ラジカル法によらないで、機械的かつ熱的な物性に優れ、有用な成形体として応用可能なα−オレフィン・(メタ)アクリル酸系共重合体の製造を実現しうる触媒成分、及び、それを使用する、当共重合体の製造方法を開発することを、発明が解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記した本発明の課題を解決することを目指して、後周期遷移金属錯体触媒における配位子化合物を種々探索した結果、トリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物において、ホスフィナート部位を有するトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン新規化合物が、上記の目的の重合触媒の成分として機能することを見い出し、本発明を実現するに至った。
すなわち、本出願に係る重合触媒を形成する化合物は、三価ホスフィン上アリール基のオルソ位に置換基を有するホスフィン(又はアルシン)ホスフィナートであり、化合物として新規であって、かつ、触媒としての適用も新規である。
【0009】
その特定の構造を有するトリアリールホスフィン及びトリアリールアルシン化合物は、本発明の第一の発明を構成する新規な化合物であり、すなわち、下記一般式(1)で表される新規なトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物である。(なお、「本発明」とは、以下の第一発明から第六発明の各発明単位により成る発明群を意味する。)
【0010】
【化1】

【0011】
(一般式(1)中、Yは、リン又は砒素であり、Zは、−P(R15)(O)(OH)である。
〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、アリーロキシ基で置換された炭素数7〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基からなる群より選ばれた置換基を示す。R、Rの少なくとも一つ、又は、R、Rの少なくとも一つは、水素原子以外に置換されている。
〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基からなる群より選ばれた置換基を示す。
15は、炭素素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、アリーロキシ基で置換された炭素数7〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基からなる群より選ばれた置換基を示す。)
【0012】
本発明の第二の発明として、第一の発明の化合物と、8〜10族の遷移金属とを反応させて得られるα−オレフィン重合触媒が開示される。
本発明の第三の発明として、下記一般式(2)で表されることを特徴とする金属錯体が開示される。
【0013】
【化2】

【0014】
(一般式(2)中、Yは、リン又は砒素であり、Zは、−P(R15)(O)O−である。
〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、アリーロキシ基で置換された炭素数7〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基からなる群より選ばれた置換基を示す。R、Rの少なくとも一つ、又は、R、Rの少なくとも一つは、水素原子以外に置換されている。
〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基からなる群より選ばれた置換基を示す。
15は、炭素素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、アリーロキシ基で置換された炭素数7〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基からなる群より選ばれた置換基を示す。
【0015】
Mは、8〜10族の遷移金属からなる群より選択された金属原子を示し、Aは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、アリーロキシ基で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数1〜30のアリールオキシ基からなる群より選ばれた置換基を示す。
Bは、Mに配位した任意のリガンドを示す。また、AとBは互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0016】
本発明の第四の発明として、第三の発明の金属錯体を含むα−オレフィン重合触媒が開示される。
本発明の第五の発明として、第二又は四の発明の重合触媒が、更に微粒子担体を含むα−オレフィン重合触媒が開示される。
本発明の第六の発明として、第二,四,五のいずれかの発明の、α−オレフィン重合触媒の存在下に、α−オレフィンと、(メタ)アクリル酸又はエステルとを共重合することを特徴とする、α−オレフィン・(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法が開示される。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、本発明に係る重合触媒の存在下に、α−オレフィンと(メタ)アクリル酸又はエステルの共重合を行うことにより、α−オレフィン・(メタ)アクリル酸系共重合体が製造可能になった。
このオレフィン共重合体は、機械的かつ熱的な物性に優れ、有用な成形体として応用可能であり、具体的には、当共重合体は、塗装性、印刷性、帯電防止性、無機フィラー分散性、他樹脂との接着性、他樹脂との相溶化能などにおける良好な性質を利用して、様々な用途、例えば、フィルム、シート、接着性樹脂、バインダー、相溶化剤などとして応用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、特定の構造を有する新規なトリアリールホスフィン及びトリアリールアルシン化合物、それらの新規な化合物が特定の金属元素に配位した触媒、それらを使用したα−オレフィン・(メタ)アクリル酸系共重合体の製造に係るものである。
以下において、それらの新規化合物、重合触媒、重合体の構成成分(モノマー成分)、及び重合方法などについて詳細に説明する。
【0019】
1.トリアリールホスフィン及びトリアリールアルシン化合物
本発明の重合触媒において、特定の金属元素に対する配位子となる新規なトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物は、下記の一般式(1)で示される。
【0020】
【化3】

【0021】
(一般式(1)中、Yは、リン又は砒素であり、Zは、−P(R15)(O)(OH)である。
〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、アリーロキシ基で置換された炭素数7〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基からなる群より選ばれた置換基を示す。R、Rの少なくとも一つ、又は、R、Rの少なくとも一つは、水素原子以外に置換されている。
〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基からなる群より選ばれた置換基を示す。
15は、炭素素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、アリーロキシ基で置換された炭素数7〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基からなる群より選ばれた置換基を示す。)
【0022】
〜Rは、15族原子(リン又は砒素)からみてオルト位であり、錯化した際に中心金属のアキシャル方向に位置すると予想される。この立体効果が触媒性能の向上に影響しているものと考えられる。
したがって、R、Rの少なくとも一つ、又は、R、Rの少なくとも一つが水素原子以外に置換されていることが必要である。好ましくは、R、Rの少なくとも一つが水素原子以外であり、且つ、R、Rの少なくとも一つが水素原子以外のものである。更に好ましくは、R、Rの片方が水素原子、もう片方が水素原子以外であり、且つ、R、Rの片方が水素原子、もう片方が水素原子以外のものである。
【0023】
〜Rとして好ましい炭素数1〜30の炭化水素基は、更に好ましくは炭素数1〜13の炭化水素基であり、好ましい具体例は、メチル基、エチル基、1−プロピル基、1−ブチル基、1−ペンチル基、1−ヘキシル基、1−ヘプチル基、1−オクチル基、1−ノニル基、1−デシル基、t−ブチル基、トリシクロヘキシルメチル基、1,1−ジメチル−2−フェニルエチル基、イソプロピル基、1−ジメチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、イソブチル基、1,1−ジメチルブチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、4−ヘプチル基、2−プロピルヘプチル基、2−オクチル基、3−ノニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、エキソ−ノルボルニル基、エンド−ノルボニル基、2−ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ノピニル基、デカヒドロナフチル基、メンチル基、ネオメンチル基、ネオペンチル基、5−デシル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基、トリル基、キシリル基、及びp−エチルフェニル基などが挙げられる。
これらの中で、更に好ましい置換基としては、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基であり、特に好ましくは、イソプロピル基である。
【0024】
〜Rとしてハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基は、好ましくは、前述の炭素数1〜30の炭化水素基をフッ素、塩素、又は臭素で置換した置換基であり、具体的に好ましい例として、トリフルオロメチル基、又はペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
【0025】
〜Rとしてアルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基は、好ましくは、前述の炭素数1〜30の炭化水素基をメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、1−プロポキシ基、1−ブトキシ基、又はt−ブトキシ基で置換した置換基である。更に好ましくはメトキシ基又はエトキシ基で置換された炭素数1〜6の炭化水素基であり、具体的には、1−(メトキシメチル)エチル基、1−(エトキシメチル)エチル基、1−(フェノキシメチル)エチル基、1−(メトキシエチル)エチル基、1−(エトキシエチル)エチル基、1−(ジメチルアミノメチル)エチル基、1−(ジエチルアミノメチル)エチル基、ジ(メトキシメチル)メチル基、ジ(エトキシメチル)メチル基、ジ(フェノキシメチル)メチル基が挙げられる。特に好ましくは、1−(メトキシメチル)エチル基、1−(エトキシメチル)エチル基である。
【0026】
〜Rとしてアリーロキシ基で置換された炭素数7〜30の炭化水素基は、好ましくは、前述の炭素数1〜30の炭化水素基をフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、2,6−ジーt−ブチルフェノキシ基で置換した置換基である。更に好ましくはフェノキシ基又は2,6−ジメチルフェノキシ基で置換された炭素数1〜6の炭化水素基であり、特に好ましくは、1−(フェノキシメチル)エチル基、又は1−(2,6−ジメチルフェノキシ基メチル)エチル基である。
【0027】
〜Rとして炭素数1〜30のアルコキシ基は、好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基であり、好ましい具体例は、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、1−プロポキシ基、1−ブトキシ基、及びt−ブトキシ基などである。これらの中で、更に好ましい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、又はイソプロポキシ基であり、特に好ましくは、メトキシ基である。
【0028】
〜Rとして炭素数6〜30のアリールオキシ基は、好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、好ましい具体例は、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、及び2,6−ジーt−ブチルフェノキシ基が挙げられる。これらの中で、更に好ましい置換基としては、フェノキシ基、又は2,6−ジメチルフェノキシ基であり、特に好ましくは、フェノキシ基である。
【0029】
これらのR〜Rとして好ましい群のうち、特に好ましくは、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基が挙げられ、最も好ましいのはイソプロピル基である。
【0030】
〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基からなる群より選ばれた置換基を示す。
【0031】
これらの置換基は、錯体形成時に中心金属から比較的離れた部位の置換基であるため、ホスフィンホスフィナート配位子の錯形成に悪影響を与えない置換基であればよい。これらの置換基の立体的な影響に比べ、電子的効果は触媒性能に影響すると考えられ、電子供与性置換基が好ましい。これらの置換基は同一でも異なってもよい。
【0032】
〜R14として好ましいハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素などが挙げられる。
【0033】
〜R14として炭素数1〜30の炭化水素基としては、好ましくは例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基が挙げられる。
ここで、アルキル基、シクロアルキル基の例は、メチル基、エチル基、1−プロピル基、1−ブチル基、1−ペンチル基、1−ヘキシル基、1−ヘプチル基、1−オクチル基、1−ノニル基、1−デシル基、t−ブチル基、トリシクロヘキシルメチル基、1,1−ジメチル−2−フェニルエチル基、イソプロピル基、1−ジメチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、イソブチル基、1,1−ジメチルブチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、4−ヘプチル基、2−プロピルヘプチル基、2−オクチル基、3−ノニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、エキソ−ノルボルニル基、エンド−ノルボニル基、2−ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ノピニル基、デカヒドロナフチル基、メンチル基、ネオメンチル基、ネオペンチル基、及び5−デシル基などが挙げられる。
これらの中で、好ましい置換基としては、メチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基である。
【0034】
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基、シンナミル基、スチリル基が挙げられ、好ましくは、シクロヘキセニル基である。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基が挙げられ、これらのアリール基の芳香環に存在させうる置換基の例としては、アルキル基、アリール基、融合アリール基、フェニルシクロヘキシル基、フェニルブテニル基、トリル基、キシリル基、p−エチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。これらの中で、好ましい置換基としては、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基である。
【0035】
〜R14としてハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基は、好ましくは前述の炭素数1〜30の炭化水素基をフッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子で置換した置換基である。
〜R14としてアルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基は、好ましくは前述の炭素数1〜30の炭化水素基をメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、1−プロポキシ基、1−ブトキシ基、又はt−ブトキシ基で置換した置換基である。更に好ましくはメトキシ基又はエトキシ基で置換された炭素数1〜6の炭化水素基であり、具体的には、1−(メトキシメチル)エチル基、1−(エトキシメチル)エチル基、1−(フェノキシメチル)エチル基、1−(メトキシエチル)エチル基、1−(エトキシエチル)エチル基、1−(ジメチルアミノメチル)エチル基、1−(ジエチルアミノメチル)エチル基、ジ(メトキシメチル)メチル基、ジ(エトキシメチル)メチル基、ジ(フェノキシメチル)メチル基が挙げられる。特に好ましくは、1−(メトキシメチル)エチル基、1−(エトキシメチル)エチル基である。
【0036】
〜R14として炭素数1〜30のアルコキシ基は、好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基であり、好ましい具体例は、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、1−プロポキシ基、1−ブトキシ基、及びt−ブトキシ基などである。これらの中で、更に好ましい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、又はイソプロポキシ基であり、特に好ましくは、メトキシ基が挙げられる。
【0037】
〜R14として炭素数6〜30のアリールオキシ基は、好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、好ましい具体例は、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、及び2,6−ジーt−ブチルフェノキシ基である。これらの中で、更に好ましい置換基としては、フェノキシ基、又は2,6−ジメチルフェノキシ基であり、特に好ましくは、フェノキシ基である。
【0038】
炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基は、好ましくは炭素数3〜18のシリル基であり、好ましい具体例は、トリメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリプロピルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリブチルシリル基、トリヘキシルシリル基、シクロヘキシルジメチルシリル基、トリベンジルシリル基が挙げられる。特に好ましくは、トリメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基である。
【0039】
これらのR〜R14として好ましい群のうち、更に好ましくは、水素原子、メチル基、イソプロピル基が挙げられ、特に好ましくは水素原子である。
【0040】
15は、炭素素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、アリーロキシ基で置換された炭素数7〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基からなる群より選ばれた置換基を示す。
【0041】
15として炭素数1〜30の炭化水素基は、好ましくは炭素数1〜13の炭化水素基であり、好ましい具体例は、メチル基、エチル基、1−プロピル基、1−ブチル基、1−ペンチル基、1−ヘキシル基、1−ヘプチル基、1−オクチル基、1−ノニル基、1−デシル基、t−ブチル基、トリシクロヘキシルメチル基、1,1−ジメチル−2−フェニルエチル基、イソプロピル基、1−ジメチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、イソブチル基、1,1−ジメチルブチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、4−ヘプチル基、2−プロピルヘプチル基、2−オクチル基、3−ノニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、エキソ−ノルボルニル基、エンド−ノルボニル基、2−ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ノピニル基、デカヒドロナフチル基、メンチル基、ネオメンチル基、ネオペンチル基、5−デシル基、アリル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基、トリル基、キシリル基、及びp−エチルフェニル基などである。
これらの中で、更に好ましい置換基としては、メチル基、エチル基、アリル基、及びフェニル基であり、特に好ましくは、フェニル基が挙げられる。
【0042】
15としてアルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基は、好ましくは、前述の炭素数1〜30の炭化水素基をメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、1−プロポキシ基、1−ブトキシ基、及びt−ブトキシ基などで置換した置換基が挙げられる。特に好ましくは、4−メトキシフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基である。
【0043】
15としアリーロキシ基で置換された炭素数7〜30の炭化水素基は、好ましくは、前述の炭素数1〜30の炭化水素基をフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、2,6−ジーt−ブチルフェノキシ基で置換した置換基が挙げられる。更に好ましくはフェノキシ基又は2,6−ジメチルフェノキシ基で置換された炭素数1〜6の炭化水素基であり、特に好ましくは、1−(フェノキシメチル)エチル基、又は1−(2,6−ジメチルフェノキシ基メチル)エチル基である。
【0044】
15として炭素数1〜30のアルコキシ基は、好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基であり、好ましい具体例は、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、1−プロポキシ基、1−ブトキシ基、t−ブトキシ基、及びフェノキシ基などが挙げられる。これらの中で、更に好ましい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、又はフェノキシ基であり、特に好ましくは、フェノキシ基である。
【0045】
15として炭素数6〜30のアリールオキシ基は、好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、好ましい具体例は、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、及び2,6−ジーt−ブチルフェノキシ基が挙げられる。これらの中で、更に好ましい置換基としては、フェノキシ基、又は2,6−ジメチルフェノキシ基であり、特に好ましくは、フェノキシ基である。
これらのR15として好ましい群のうち、更に好ましくは、メチル基、エチル基、アリル基、フェニル基、フェノキシ基であり、特に好ましいのはフェニル基である。
【0046】
2.重合触媒の合成
本発明の重合触媒は、一般式(1)で表される新規なトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物と、8〜10族(長周期型;Fe、Co,Ni、Pdなど)の遷移金属化合物とを反応させて得られるα−オレフィン重合触媒である。
触媒組成物の合成は、一般に、8〜10族の遷移金属化合物と配位子とを溶液又はスラリー中で接触して行う。
【0047】
遷移金属化合物として好ましくは、10族の遷移金属化合物であり、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、硫酸パラジウム、酢酸パラジウム、ビス(アリルパラジウムクロライド)、塩化パラジウム、臭化パラジウム、(シクロオクタジエン)パラジウム(メチル)クロライド、ジメチル(テトラメチルエチレンジアミン)パラジウム、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、(テトラメチルエチレンジアミン)ニッケル(メチル)クロライド、ジメチル(テトラメチルエチレンジアミン)ニッケル、(シクロオクタジエン)ニッケル(メチル)クロライドなどを使用して合成する。
【0048】
錯形成反応は、α−オレフィンとの共重合に使用する反応器中で行ってもよいし、該反応器とは別の容器中で行ってもよい。錯形成後に、金属錯体を単離抽出して触媒に用いてもよいし、単離せずに触媒に用いてもよい。更に、後述する多孔質担体の存在下実施することも可能である。
また、本発明の触媒組成物は、一種類を単独で用いてもよいし、複数種の触媒組成物を併用してもよい。特に、分子量分布やコモノマー含量分布を広げる目的には、こうした複数種の触媒組成物の併用が有用である。
【0049】
一般式(1)で表されるトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物と、第8〜10族の遷移金属化合物を反応させてなる金属錯体は、下記一般式(2)で表されるものであってよい。
【0050】
【化4】

【0051】
(一般式(2)中、Yは、リン又は砒素であり、Zは、−P(R15)(O)O−である。
〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、アリーロキシ基で置換された炭素数7〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基からなる群より選ばれた置換基を示す。R、Rの少なくとも一つ、又は、R、Rの少なくとも一つは、水素原子以外に置換されている。
〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基からなる群より選ばれた置換基を示す。
15は、炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、アリーロキシ基で置換された炭素数7〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基からなる群より選ばれた置換基を示す。
【0052】
Mは、8〜10族の遷移金属からなる群より選択された金属原子を示し、Aは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、アリーロキシ基で置換された炭素数7〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基からなる群より選ばれた置換基を示す。
Bは、Mに配位した任意のリガンドを示す。また、AとBは互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0053】
ここで、Y、Z、R〜R15は、前述の一般式(1)で表されるトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物における置換基と同様である。
Mは、第8〜10族の遷移金属を示すが、Fe、Co、Ni、Pd、Pt及びランタニドが好ましく、より好ましくは、Ni、Pdである。
【0054】
Aとしてアルキル基は、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、アシル基、アセトキシ基が挙げられる。
また、Aとしてアリール基は、好ましくは炭素数6〜13のアリール基であり、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、フェナシル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。特に好ましい置換基としては、水素原子、メチル基とフェニル基が挙げられる。
【0055】
Bは、Mに配位した任意のリガンドである。そのようなリガンドとは、配位結合可能な原子として酸素、窒素、リン、硫黄を有する炭素数1〜20の炭化水素化合物である。
具体的なリガンドとしては、ホスフィン類、ピリジン誘導体、ピペリジン誘導体、アルキルエーテル誘導体、アリールエーテル誘導体、アルキルアリールエーテル誘導体、ケトン類、環状エーテル類、アルキルニトリル誘導体、アリールニトリル誘導体、アルコール類、アミド類、脂肪族エステル類、芳香族エステル類、アミン類などを挙げることができ、好ましくは、ケトン類、環状エーテル類、ホスフィン類、ピリジン誘導体であり、特に好ましくは、アセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、ルチジン、トリフェニルホスフィンである。
【0056】
3.微粒子担体
本発明で使用する微粒子担体は、本発明の主旨をそこなわない限りにおいて、任意の微粒子担体を用いることができる。
一般に、無機酸化物やポリマー担体が好適に使用できる。具体的には、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThOなど又はこれらの混合物が挙げられ、SiO−Al、SiO−V、SiO−TiO、SiO−MgO、SiO−Crなどの混合酸化物も使用することができ、無機ケイ酸塩、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドなどの担体も使用可能である。
これらの担体の中で、好ましくは、無機酸化物からなる担体が用いられる。また、好ましくは、イオン交換性層状珪酸塩が用いられ、なお更に好ましくは、スメクタイト族が用いられる。
【0057】
上記のイオン交換性層状珪酸塩としては、粘土、粘土鉱物、ゼオライト、珪藻土などが使用可能である。これらは、合成品を用いてもよいし、天然に産出する鉱物を用いてもよい。
粘土、粘土鉱物の具体例としては、アロフェンなどのアロフェン族、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイトなどのカオリン族、メタハロイサイト、ハロイサイトなどのハロイサイト族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライトなどの蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライトなどのスメクタイト族、バーミキュライトなどのバーミキュライト鉱物、イライト、セリサイト、海緑石などの雲母鉱物、アタパルジャイト、セピオライト、パイゴルスカイト、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、ヒシンゲル石、パイロフィライト、リョクデイ石群などが挙げられる。これらは混合層を形成していてもよい。
人工合成物としては、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライトなどが挙げられる。
【0058】
これら具体例のうち好ましくは、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイトなどのカオリン族、メタハロサイト、ハロサイトなどのハロサイト族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライトなどの蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライトなどのスメクタイト族、バーミキュライトなどのバーミキュライト鉱物、イライト、セリサイト、海緑石などの雲母鉱物、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライトが挙げられ、特に好ましくはモンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライトなどのスメクタイト、バーミキュライトなどのバーミキュライト鉱物、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライトが挙げられる。
【0059】
これらの微粒子担体は、そのまま用いてもよいが、塩酸、硝酸、硫酸などによる酸処理及び/又は、LiCl、NaCl、KCl、CaCl、MgCl、LiSO、MgSO、ZnSO、Ti(SO、Zr(SO、Al(SOなどの塩類処理を行ってもよい。該処理において、対応する酸と塩基を混合して反応系内で塩を生成させて処理を行ってもよく、また粉砕や造粒などの形状制御や乾燥処理を行ってもよい。
これらの微粒子担体については、粒径などに特に制限はなく、任意のものが使用可能であるが、好ましい粒径は平均粒径5μm〜200μm、更に好ましくは10μm〜100μmである。
【0060】
微粒子担体は、有機アルミニウム化合物で処理して用いることができる。ここで用いられる有機アルミニウム化合物は、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲン、水素、アルコキシ基又はアミノ基から選ばれる置換基を有する。これらの置換基の中で、炭素数1〜20アルキル基、水素、炭素数1〜20アルコキシ基が好ましく、更に好ましくは炭素数1〜20アルキル基である。複数ある置換基は同一であっても異なっていてもよく、また、有機アルミニウム化合物は、単独で或は複数種を組み合わせて使用することができる。
【0061】
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどが挙げられる。
これらのうち、好ましくは、トリアルキルアルミニウム及びアルキルアルミニウムヒドリドである。更に好ましくは、炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムである。
【0062】
4.重合触媒の使用態様
トリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物、第8〜10族の遷移金属化合物、及び微粒子担体は、任意の順番で接触することができる。接触させるとき、各成分を固体で接触させてもよいし、溶媒スラリー化又は均一溶液にして接触させても良い。各成分の接触順番は、例えば、以下のとおりである。
(1)トリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物と第8〜10族の遷移金属化合物を接触させた後、微粒子担体を接触させる方法。
(2)トリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物と微粒子担体を接触させた後、第8〜10族の遷移金属化合物を接触させる方法。
(3)第8〜10族の遷移金属化合物と微粒子担体を接触させた後、トリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物を接触させる方法。
これらの接触方法の中で、(1)が好ましい。また、微粒子担体と他の触媒成分を接触させた後、触媒成分に対して反応性が無い溶媒で洗浄することもできる。溶媒としては、炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素が好ましい。
【0063】
微粒子担体1gに対し、トリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物は、通常、0.001〜10ミリモル、好ましくは0.001〜1ミリモルの範囲で用いられる。
各成分を接触させる温度は、溶媒の沸点以下であれば任意の温度で実施することが可能だが、室温から溶媒の沸点以下が好ましい。
接触させた触媒成分は、そのまま重合評価に用いることもできるが、乾燥して固体状態にして、保存しておくこともできる。また、更に以下で説明する予備重合を行うこともできる。
【0064】
接触させた触媒成分は、重合槽内で、或は重合槽外でオレフィンの存在下で予備重合を行ってもよい。オレフィンとは炭素間二重結合を少なくとも1個含む炭化水素をいい、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチルブテン−1、スチレン、ジビニルベンゼンなどが例示されるが、特に種類に制限はなく、これらと他のオレフィンとの混合物を用いてもよい。好ましくは炭素数2又は3のオレフィンである。
オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的に或いは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。
【0065】
5.使用モノマー
共重合体の製造に用いられるモノマーとしては、以下に説明する、(a)α−オレフィン、(b)(メタ)アクリル酸又はエステル、(c)その他オレフィンが挙げられる。それぞれのモノマー成分は、単独で使用しても良いし、複数を併用しても良い。
【0066】
(a)α−オレフィン
本発明に用いられるモノマーの一つは、一般式CH=CHR16で表されるα−オレフィン(以下、「(a)成分」と称することがある)である。ここで、R16は、水素又は炭素数1〜20のアルキル基である。なかでも、好ましい(a)成分として、炭素数1〜10のR16を有するα−オレフィンが挙げられる。更に好ましい(a)成分としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンが挙げられ、特に好ましい(a)成分としては、エチレンが挙げられる。
【0067】
(b)(メタ)アクリル酸又はエステル
本発明に用いられるモノマーの別の一つは、一般式CH=C(R17)CO(R18)で表される、(メタ)アクリル酸、又は(メタ)アクリル酸エステルである(以下、「(b)成分」と称することがある)。ここで、R17は、水素又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、分岐、環、及び/又は不飽和結合を有していてもよい。R18は、水素又は炭素数1〜30のアルキル基である。更に、R18内の任意の位置にヘテロ原子を含有していてもよい。
【0068】
好ましい(b)成分として、炭素数1〜5のR17を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸が挙げられる。より好ましい(b)成分としては、R17がメチル基であるメタクリル酸エステル又はR17が水素であるアクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
更に好ましい(b)成分としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸などが挙げられる。特に好ましい(b)成分としては、アクリル酸メチルが挙げられる。
【0069】
(c)その他オレフィン
本発明に用いてもよいモノマーの別の一つは、その他オレフィンである(以下、「(c)成分」と称する)。
好ましい(c)成分として、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン、エチリデンノルボルネンなどの環状オレフィンモノマー、p−メチルスチレンなどのスチレン系モノマーなどを挙げることができ、これらの骨格に、水酸基、アルコキサイド基、カルボン酸基、エステル基、アルデヒド基を含有してもよい。
【0070】
ノルボルネン系オレフィンは、シクロペンタジエンを使用するディールスアルダー反応([4+2]シクロ付加)で作ることができる。使用するジエノフィルは例えば、ジエチルアゾジカルボキシレート、アルデヒド、マレイン酸無水物、ジヒドロフラン、ビニルピリジン、アルキルアクリレート又は上記の置換オレフィンである(T.L.Gilchrist,”Heterocyclic Chemistry”,1985,4.3.3章参照)。これらのモノマーは、式(5a)〜(5f)で表すことができる。ここで、R19は、炭素数1〜30の炭化水素基であり、分岐、環、又は不飽和結合を有していてもよい。
【0071】
更にまた、(a)成分で規定されたモノマーに、水酸基、アルコキサイド基、カルボン酸基、エステル基、アルデヒド基などを付与したモノマーでもよく、その他、ジエン誘導体、無水マレイン酸、酢酸ビニルなども使用可能である。
【0072】
【化5】

【0073】
6.共重合反応
本発明における共重合反応は、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素溶媒や液化α−オレフィンなどの液体、また、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、安息香酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、ホルミルアミド、アセトニトリル、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなどのような極性溶媒の存在下或いは非存在下に行われる。また、ここで記載した液体化合物の混合物を溶媒として使用してもよい。なお、高い重合活性や高い分子量を得るうえでは、上述の炭化水素溶媒がより好ましい。
【0074】
本発明における共重合に際して、公知の添加剤の存在下又は非存在下で共重合を行うことができる。添加剤としては、ラジカル重合禁止剤や、生成共重合体を安定化する作用を有する添加剤が好ましい。例えば、キノン誘導体やヒンダードフェノール誘導体などが好ましい添加剤の例として挙げられる。
具体的には、モノメチルエーテルハイドロキノンや、2,6−ジ−t−ブチル4−メチルフェノール(BHT)、トリメチルアルミニウムとBHTとの反応生成物、4価チタンのアルコキサイドとBHTとの反応生成物などが使用可能である。
また、添加剤として、無機及び又は有機フィラーを使用し、これらのフィラーの存在下で重合を行ってもよい。
【0075】
本発明において、重合形式に特に制限はない。媒体中で少なくとも一部の生成重合体がスラリーとなるスラリー重合、液化したモノマー自身を媒体とするバルク重合、気化したモノマー中で行う気相重合、又は、高温高圧で液化したモノマーに生成重合体の少なくとも一部が溶解する高圧イオン重合などが好ましく用いられる。また、バッチ重合、セミバッチ重合、連続重合のいずれの形式でもよい。
未反応モノマーや媒体は、生成共重合体から分離し、リサイクルして使用してもよい。リサイクルの際、これらのモノマーや媒体は、精製して再使用してもよいし、精製せずに再使用してもよい。生成共重合体と未反応モノマー及び媒体との分離には、従来の公知の方法が使用できる。例えば、濾過、遠心分離、溶媒抽出、貧溶媒を使用した再沈などの方法が使用できる。
共重合温度、共重合圧力及び共重合時間に特に制限はないが、通常は、以下の範囲から生産性やプロセスの能力を考慮して、最適な設定を行うことができる。
即ち、共重合温度は、通常−20℃から290℃、好ましくは0℃から250℃、共重合圧力は、0.1MPaから100MPa、好ましくは、0.3MPaから90MPa、共重合時間は、0.1分から10時間、好ましくは、0.5分から7時間、更に好ましくは1分から6時間の範囲から選ぶことができる。
本発明において、共重合は、一般に不活性ガス雰囲気下で行われる。例えば、窒素、アルゴン雰囲気が使用でき、窒素雰囲気が好ましく使用される。なお、少量の酸素や空気の混入があってもよい。
【0076】
共重合反応器への触媒とモノマーの供給に関しても特に制限はなく、目的に応じてさまざまな供給法をとることができる。例えばバッチ重合の場合、予め所定量のモノマーを共重合反応器に供給しておき、そこに触媒を供給する手法をとることが可能である。この場合、追加のモノマーや追加の触媒を共重合反応器に供給してもよい。また、連続重合の場合、所定量のモノマーと触媒を共重合反応器に連続的に、又は間歇的に供給し、共重合反応を連続的に行う手法をとることができる。
共重合体の組成の制御に関しては、複数のモノマーを反応器に供給し、その供給比率を変えることによって制御する方法を一般に用いることができる。その他、触媒の構造の違いによるモノマー反応性比の違いを利用して共重合組成を制御する方法や、モノマー反応性比の重合温度依存性を利用して共重合組成を制御する方法が挙げられる。
【0077】
共重合体の分子量制御には、従来公知の方法を使用することができる。即ち、重合温度を制御して分子量を制御する方法、モノマー濃度を制御して分子量を制御する方法、連鎖移動剤を使用して分子量を制御する方法、遷移金属錯体中の配位子構造の制御により分子量を制御するなどが挙げられる。
連鎖移動剤を使用する場合には、従来公知の連鎖移動剤を用いることができる。例えば、水素、メタルアルキルなどを使用することができる。また、(b)又は(c)成分自身が一種の連鎖移動剤となる場合には、(b)又は(c)成分の濃度や、(a)成分に対する比率を制御することによっても分子量調節が可能である。
遷移金属錯体中の配位子構造を制御して分子量調節を行う場合には、金属Mのまわりに嵩高い置換基を配置したり、金属Mにアリール基やヘテロ原子含有置換基などの電子供与性基が相互作用可能となるように配置したり、前記したR18〜R19中にヘテロ原子を導入することにより、一般に分子量が向上する傾向を利用することができる。
【実施例】
【0078】
以下において、本発明を実施例によって具体的に説明し、本発明の構成の合理性と有意性及び従来技術に対する卓越性を実証する。なお、実施例で用いた配位子構造を化6に示した。
【0079】
【化6】

【0080】
1.評価方法
(1)分子量及び分子量分布(Mw、Mn、Q値)
(測定条件)使用機種:ウォーターズ社製150C 検出器:FOXBORO社製MIRAN1A・IR検出器(測定波長:3.42μm) 測定温度:140℃ 溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB) カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本) 流速:1.0mL/分 注入量:0.2mL
(試料の調製)試料はODCB(0.5mg/mLのBHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)を含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させた。
(分子量の算出)標準ポリスチレン法により行い、保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行った。
使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー社製の銘柄であり、F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000、である。
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成した。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いた。分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いた。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
【0081】
(2)融点(Tm)
セイコーインスツルメンツ社製DSC6200示差走査熱量測定装置を使用して、シート状にしたサンプル片を5mgアルミパンに詰め、室温から一旦200℃まで昇温速度100℃/分で昇温し、5分間保持した後に、10℃/分で20℃まで降温して結晶化させた後に、10℃/分で200℃まで昇温することにより融解曲線を得た。
融解曲線を得るために行った最後の昇温段階における主吸熱ピークのピークトップ温度を融点Tmとし、該ピークのピーク面積をΔHmとした。
【0082】
(3)コモノマー含量
コモノマー含量の定量は、約0.5mmのプレス板を作製し、島津製作所FTIR−8300型を用いて、赤外吸収スペクトルにより行った。
コモノマー含量は、3450cm−1付近のカルボニル基の倍音吸収と、4250cm−1付近のオレフィン吸収の赤外吸収強度比をもとに算出した。なお、算出に当たっては、13C・NMR測定により作成した検量線を使用した。
【0083】
2.配位子合成
下記合成例で得られた配位子を用いた。なお、以下の合成例で特に断りのない限り、操作は精製窒素雰囲気下で行い、溶媒は脱水・脱酸素したものを用いた。
(合成例1)配位子(I)の合成
1−ヨード−2−ブロモ−ベンゼン(10.0g,35.3mmol)の無水テトラヒドロフラン(200mL)溶液に、イソプロピルマグネシウムクロライドのテトラヒドロフラン溶液(2.0M,17.6mL,35.3mmol)を−30℃で滴下し、そのままの温度で2時間撹拌した。反応液を−78℃まで冷却し、三塩化リン(3.0mL,35.3mmol)を加え、−78℃で2時間撹拌した(反応液A)。
1−ブロモ−2−イソプロピル−ベンゼン(17.6g,88.7mmol)の無水ジエチルエーテル(200mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,35.5mL,88.7mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温で2時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液Aに−30℃で滴下し、室温で一晩撹拌した。溶媒を留去した後、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、(2−ブロモフェニル)[ジ(2−イソプロピルフェニル)]ホスフィンの白色粉末を1.5g得た(収率10%)。
【0084】
(2−ブロモフェニル)[ジ(2−イソプロピルフェニル)]ホスフィン(0.5g,1.1mmol)の無水テトラヒドロフラン(10mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,0.7mL,1.7mmol)を−78℃で滴下し、そのままの温度で1時間撹拌した。この反応液に、フェニルホスフィン酸ジクロライド(0.3
6mL,2.6mmol)の無水テトラヒドロフラン(20mL)溶液を−78℃で加え、室温で一晩撹拌した。水を加え、酢酸エチルで抽出し(100mL×3)、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒を留去した。フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=100/1)により精製し、白色の粉末を0.4g得た。酢酸エチルで再結晶化することにより、白色の目的物を0.1g得た(収率17%)。
1H NMR (CDCl3, ppm/d): 8.57 (br, 1 H), 8.12 (m, 1 H), 7.66 (dd, J = 7.2, 13.6 Hz, 2 H), 7.36 (m, 3 H), 7.3-7.2 (m, 6 H), 6.99 (m, 3 H), 6.65 (br, 2 H), 3.09 (br, 2 H), 0.90 (d, J = 8.0 Hz, 12 H). 31P NMR (CDCl3, ppm/d): 33.0 (d, J = 10.7 Hz), -30.9 (d, J = 11.7 Hz).
【0085】
3.重合
3−1.(実施例1:エチレン重合)
充分に窒素置換した30mLフラスコに、パラジウムビスジベンジリデンアセトンとホスフィンホスフィナート配位子をそれぞれ25μmol秤量し、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを超音波振動機にて10分間処理することで、触媒スラリーを調製した。次に、内容積1Lの誘導撹拌式ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン(700mL)を精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した。先に調製した触媒溶液を添加し、室温下、エチレン圧を3MPaとして重合を開始した。反応中は温度を80℃に保ち、エチレンの分圧が3MPaに保持されるように連続的にエチレンを供給した。
重合終了後、エチレンをパージ、オートクレーブを室温まで冷却し、得られたポリマーを、エタノール(1L)を用いて再沈させ、沈殿したポリマーを濾過した。更に、得られた固形ポリマーをエタノール(1L)に分散させ、ここに1N−塩酸(20ml)を加えて60分撹拌し、ポリマーを濾過した。得られた固形ポリマーをエタノールで洗浄し、60℃で3時間減圧乾燥することで、最終的にポリマーを回収した。0.3g、Mw:25,000、Mw/Mn:2.16、Tm:132.6℃。
【0086】
3−2.(実施例2:エチレン/メタクリレート共重合)
充分に窒素置換した30mLフラスコに、パラジウムビスジベンジリデンアセトンとホスフィンホスフィナート配位子をそれぞれ100μmol秤量し、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを超音波振動機にて10分間処理することで、触媒スラリーを調製した。次に、内容積1Lの誘導撹拌式ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン(617mL)、メチルアクリレート(72mL、重合時の濃度が1mol/Lになるように調整)を精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した。先に調製した触媒溶液を添加し、室温下、エチレン圧を3MPaとして重合を開始した。反応中は温度を80℃に保ち、エチレンの分圧が3MPaに保持されるように連続的にエチレンを供給した。
重合終了後、エチレンをパージ、オートクレーブを室温まで冷却し、得られたポリマーを、エタノール(1L)を用いて再沈させ、沈殿したポリマーを濾過した。更に、得られた固形ポリマーをエタノール(1L)に分散させ、ここに1N−塩酸(20ml)を加えて60分撹拌し、ポリマーを濾過した。得られた固形ポリマーをエタノールで洗浄し、60℃で3時間減圧乾燥することで、最終的にポリマーを回収した。1.0g、Mw:4,100、Mw/Mn:1.9、Tm:120.0℃。
【0087】
以上の実施例により、本発明のホスフィンホスフィナート系の重合触媒の採用によって、従来では製造が困難であった、α−オレフィンと(メタ)アクリル酸又はエステルの共重合体を、工業的に得ることができることが明らかにされている。
したがって、本発明の構成の合理性と有意性、及び従来技術に対する卓越性が明示されている。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明に係る重合触媒を用いることにより、α−オレフィンと(メタ)アクリル酸又はエステルの共重合体を、工業的に得ることができる。
得られた共重合体は機械的・熱的物性に優れ、有用な成形体として応用可能である。具体的には、塗装性、印刷性、帯電防止性、無機フィラー分散性、他樹脂との接着性、他樹脂との相溶化能などの良好な性質を利用して、本発明の共重合体は、様々な用途、例えば、フィルム、シート、接着性樹脂、バインダー、相溶化剤などとして応用可能である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物。
【化1】


(一般式(1)中、Yは、リン又は砒素であり、Zは、−P(R15)(O)(OH)である。
〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、アリーロキシ基で置換された炭素数7〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基からなる群より選ばれた置換基を示す。R、Rの少なくとも一つ、又は、R、Rの少なくとも一つは、水素原子以外に置換されている。
〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、 又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基からなる群より選ばれた置換基を示す。
15は、炭素素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、アリーロキシ基で置換された炭素数7〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基からなる群より選ばれた置換基を示す。)
【請求項2】
請求項1に記載の化合物と、8〜10族の遷移金属化合物とを反応させて得られるα−オレフィン重合触媒。
【請求項3】
下記一般式(2)で表されることを特徴とする金属錯体。
【化2】


(一般式(2)中、Yは、リン又は砒素であり、Zは、−P(R15)(O)O−である。
〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、アリーロキシ基で置換された炭素数7〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基からなる群より選ばれた置換基を示す。R、Rの少なくとも一つ、又は、R、Rの少なくとも一つは、水素原子以外に置換されている。
〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基からなる群より選ばれた置換基を示す。
15は、炭素素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、アリーロキシ基で置換された炭素数7〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基からなる群より選ばれた置換基を示す。
Mは、8〜10族の遷移金属からなる群より選択された金属原子を示し、Aは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、アリーロキシ基で置換された炭素数7〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基からなる群より選ばれた置換基を示す。
Bは、Mに配位した任意のリガンドを示す。また、AとBは互いに結合して環を形成していてもよい。)
【請求項4】
請求項3に記載の金属錯体を含むα−オレフィン重合触媒。
【請求項5】
更に微粒子担体を含む、請求項2又は4に記載のα−オレフィン重合触媒。
【請求項6】
請求項2,4,5のいずれかに記載のα−オレフィン重合触媒の存在下に、α−オレフィンと、(メタ)アクリル酸又はエステルを共重合することを特徴とする、α−オレフィン・(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法。


【公開番号】特開2011−137120(P2011−137120A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299312(P2009−299312)
【出願日】平成21年12月31日(2009.12.31)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】