説明

新規なビスホスフィン配位子

【課題】簡便に合成することができ、かつ不斉触媒活性に優れた遷移金属錯体を与える光学活性ホスフィン配位子を提供する。
【解決手段】下記の一般式(I):


〔R1は水素原子又はアルキル基を示し、R2はヒドロキシアルキル基又はトリアリールメチルオキシアルキル基を示し;Ar1〜Ar4はアリール基(該アリール基は1〜5個の同一又は異なる置換基を有していてもよい)を示し、*1〜*4は不斉炭素を示し、*1と*2とがシスであり、*3と*4とがシスであり、かつ*2と*3とがトランスである〕で表される化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロペンタン骨格を持つ新規なビスホスフィン配位子及び該配位子と遷移金属とを含む新規な触媒、並びに該触媒の利用に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬や農薬などの有効成分として光学活性化合物を利用する薬剤が多数知られている。光学活性化合物の製造方法としていくつかの方法が知られているが、なかでも触媒的不斉合成技術は非常に強力な手段の一つである。触媒的不斉合成に際して、光学活性ホスフィンなどを配位子とする遷移金属錯体は触媒活性及び立体選択性に優れていることから工業的な製造プロセスにも応用されている(CATALYTIC ASYMMETRIC SYNTHESIS, Ed., Iwao Ojima, Wiley-VCH, 2000)。
【0003】
不斉触媒を形成可能な光学活性配位子としてはホスフィン配位子及びホスホラン配位子が知られている。ホスフィン配位子としては、例えばBPPM、BINAP、及びDIOPなどが知られており、ホスホラン配位子としてはDuPHOS及びBPEなどが知られている。BINAPを除くホスフィン配位子の多くは、アセトアミドアクリル酸類の不斉水素化に利用できるが、その他の基質に対する適応範囲は比較的狭いものが多い。また、合成ルートが長く、両鏡像体が簡単には得られないなど、工業的応用に際して問題がある。一方、ホスホラン配位子は従来のホスフィン配位子にはない特徴を有しており、優れた不斉水素化触媒であると報告されているが(WO93/01199(DuPHOS)及びWO91/17998(BPE)、ホスホラン環を形成するために高価な光学活性1,3-又は1,4-ジオールが必要となるほか、Et-DuPHOS、Et-BPE、及びMe-BPEなどは油状物であることから酸化され易く取り扱いにくいなどの問題を有している。
【化1】

(式中、Meはメチル基、Etはエチル基を示す。)
【0004】
シクロペンタン骨格を持ち、6員環キレートを形成するホスフィン配位子PPCPは立体がSkew型に固定されており、立体選択性に優れていることが阿知波らによって報告されている。(Synlett, 49, 1991) しかしながら、ベータケトエステル化合物をBINAP-Ruにより不斉還元し、さらにエステルをヒドリド還元する合成ルートではシクロペンタン骨格を修飾することは困難であり、基質に応じて適宜の配位子を設計して使用することは容易ではない。
【0005】
特開2005-336181公報にもシクロペンタン骨格を持つ触媒が開示されているが、本発明に特徴的な不斉水素化反応について記されていない。
【非特許文献1】Synlett, 49, 1991
【特許文献1】国際公開WO93/01199
【特許文献2】国際公開WO91/17998
【特許文献2】特開2005-336181公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、簡便に合成することができ、かつ不斉触媒活性に優れた遷移金属錯体を与える光学活性ホスフィン配位子を提供することにある。また、基質に応じて適宜の置換基を選択して容易に製造することができるような化学構造を有し、かつ鏡像異性体の一方又は両方を容易に製造可能な光学活性配位子を提供することも本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記一般式(I)で表される化合物が簡便に合成可能であり、かつ不斉触媒活性に優れた遷移金属錯体を提供するための配位子として極めて優れた性質を有していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明により、下記の一般式(I):
【化2】

〔式中、R1は水素原子又はアルキル基を示し、R2はヒドロキシアルキル基又はトリアリールメチルオキシアルキル基を示すが、R1及びR2が結合して-C(R3)(R4)-(R3及びR4はぞれぞれ独立に水素原子、アルキル基、又は水酸基を示すが、R3及びR4が結合してオキソ基を示してもよい)又は-C(R5)(R6)-O-C(R7)(R8)-(R5、R6、R7、及びR8はぞれぞれ独立に水素原子、アルキル基、又は水酸基を示すが、R5及びR6が結合してオキソ基を示してもよく、並びに/あるいはR7及びR8が結合してオキソ基を示してもよい)を示し;Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4はそれぞれ独立にアリール基(該アリール基は1〜5個の同一又は異なる置換基を有していてもよい)を示し、*1、*2、*3、及び*4は不斉炭素を示し、それぞれの相対立体配置は*1と*2とがシスであり、*3と*4とがシスであり、かつ*2と*3とがトランスである〕で表される化合物が提供される。
【0009】
上記発明の好ましい態様によれば、Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4がそれぞれ独立にフェニル基(該フェニル基は1〜5個の同一又は異なる置換基を有していてもよい)である上記の化合物;Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4がそれぞれ独立に3,5-ジアルキル-4-アルコキシフェニル基である上記の化合物;Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4がそれぞれ独立に3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基である上記の化合物が提供される。
【0010】
さらに好ましい態様によれば、R1が水素原子であり、R2がヒドロキシアルキル基、好ましくはヒドロキシメチル基である上記の化合物;R1が水素原子又はアルキル基、好ましくは水素原子又はメチル基であり、R2がトリフェニルメチルオキシアルキル基、好ましくはトリフェニルメチルオキシメチル基である上記の化合物;R1及びR2が結合して-C(R3)(R4)-(R3及びR4はともに水素原子であるか、又はR3及びR4が結合してオキソ基を示す)を示す上記の化合物;R1及びR2が結合して-C(R5)(R6)-O-C(R7)(R8)-(R5及びR6はそれぞれ独立にアルキル基、好ましくはともにメチル基を示し、R7及びR8はともに水素原子である)を示す上記の化合物が提供される。
【0011】
別の観点からは、上記一般式(I)で表される化合物と遷移金属、好ましくはロジウム、ルテニウム、イリジウム、及びパラジウムからなる群から選ばれる遷移金属とからなる遷移金属錯体、及び該遷移金属錯体を含む不斉触媒が提供される。この不斉触媒は、オレフィン、イミン、又はケトンなどの二重結合の触媒的不斉水素化反応、及びエノンへの不斉1,4-付加反応の触媒として用いることができる。
また、さらに別の観点からは、上記一般式(I)で表される化合物の2個のリン原子上にそれぞれボランが付加したホスフィンボラン化合物、及び該ホスフィンボラン化合物を塩基で処理する工程を含む上記一般式(I)で表される化合物の製造方法も本発明により提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明により提供される一般式(I)で表される化合物は簡便に合成することができ、かつ不斉触媒活性に優れた遷移金属錯体を与える光学活性ホスフィン配位子として有用である。この光学活性ホスフィン配位子と遷移金属とを含む遷移金属錯体は二重結合の触媒的不斉水素化反応の触媒として有用である。特にN-保護アミノ酸やアルキルコハク酸を不斉水素化反応により製造するための不斉還元触媒として極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
アルキル基としては、例えば炭素数1〜20個、好ましくは1〜12個、さらに好ましくは1〜6個程度の直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組合せからなるアルキル基を用いることができる。より具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基、又はシクロヘキシル基などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。アルキル部分を有する他の置換基(ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基など)におけるアルキル部分についても同様である。アルキル基又は上記アルキル部分は置換基を有していてもよい。
【0014】
アリール基としては、単環式又は多環式の芳香族炭化水素を用いることができ、例えば、フェニル基やナフチル基等が挙げられる。アリール部分を有する他の置換基(例えばトリアリールメチルオキシアルキル基など)におけるアリール部分についても同様である。アリール基又は上記のアリール部分は置換基を有していてもよい。上記のアルキル基又はアルキル部分、あるいは上記のアリール基又はアリール部分は置換基を有していてもよい。置換基の種類、個数、及び置換位置は特に限定されないが、例えば、水酸基、アルキル基、アルコキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、アリール基、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0015】
R1は水素原子又はアルキル基を示す。R1としては水素原子又は炭素数1〜6個のアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素数1〜3個のアルキル基がより好ましく、水素原子又はメチル基がさらに好ましい。
R2はヒドロキシアルキル基又はトリアリールメチルオキシアルキル基を示す。R2が示すヒドロキシアルキル基に存在する水酸基の個数は特に限定されないが、例えば1個又は2個程度が好ましく、特に好ましくは1個である。R2が示すヒドロキシアルキル基としては、炭素数1〜6個のモノヒドロキシアルキル基が好ましく、炭素数1〜3個のモノヒドロキシアルキル基がより好ましく、ヒドロキシメチル基が特に好ましい。R2が示すトリアリールメチルオキシアルキル基としては、トリフェニルメチルオキシ基で置換された炭素数1〜6個のアルキル基が好ましく、トリフェニルメチルオキシ基で置換された炭素数1〜3個のアルキル基がより好ましく、トリフェニルメチルオキシメチル基が特に好ましい。
【0016】
R1及びR2は結合して-C(R3)(R4)-又は-C(R5)(R6)-O-C(R7)(R8)-で表される基となってもよい(-C(R5)(R6)-O-C(R7)(R8)-で表される基の左端はR1が結合する酸素原子に直接結合する)。この場合、それぞれ環構成酸素原子を1個含む5員環及び7員環が形成される。R3及びR4はぞれぞれ独立に水素原子、アルキル基、又は水酸基を示すが、R3及びR4が結合してオキソ基を示してもよい。R3及びR4が示すアルキル基としては、炭素数1〜6個のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3個のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。R3及びR4がともに水素原子であることが好ましい。また、R3及びR4が結合してオキソ基を示す場合も好ましい。
【0017】
R5、R6、R7、及びR8はぞれぞれ独立に水素原子、アルキル基、又は水酸基を示す。R5及びR6が結合してオキソ基を示してもよく、並びに/あるいはR7及びR8が結合してオキソ基を示してもよい。R5、R6、R7、及びR8が示すアルキル基としては、炭素数1〜6個のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3個のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。R5及びR6がともに同一又は異なる炭素数1〜6個のアルキル基であることが好ましく、R5及びR6がともに同一又は異なる炭素数1〜3個のアルキル基であることがより好ましく、R5及びR6がともにメチル基であることがさらに好ましい。R5及びR6がともに同一又は異なるアルキル基である場合には、R7及びR8がともに水素原子であることが好ましい。R5及びR6がともに同一又は異なる炭素数1〜6個のアルキル基、好ましくは同一又は異なる炭素数1〜3個のアルキル基、さらに好ましくはメチル基であり、かつR7及びR8はともに水素原子であることが特に好ましい。
【0018】
上記一般式(I)において、R1が水素原子であり、かつR2がヒドロキシアルキル基、好ましくはヒドロキシメチル基である場合;R1が水素原子又はアルキル基、好ましくは水素原子又はメチル基であり、R2がトリフェニルメチルオキシアルキル基、好ましくはトリフェニルメチルオキシメチル基である場合;R1及びR2が結合して-C(R3)(R4)-(R3及びR4はともに水素原子であるか、又はR3及びR4が結合してオキソ基を示す)である場合;R1及びR2が結合して-C(R5)(R6)-O-C(R7)(R8)-(R5及びR6はそれぞれ独立にアルキル基、好ましくはともにメチル基を示し、R7及びR8はともに水素原子である)である場合が特に好ましい。
【0019】
Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4はそれぞれ独立にアリール基を示し、好ましくはフェニル基を示す。Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4が示すアリール基は1〜5個の同一又は異なる置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基又はアルコキシ基が好ましいが、これらに限定されることはない。例えば、Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4が示すアリール基、好ましくはフェニル基は、炭素数1〜6個のアルキル基、好ましくは炭素数1〜3個のアルキル基、より好ましくメチル基を1〜3個有し、かつ炭素数1〜6個のアルコキシ基、好ましくは炭素数1〜3個のアルコキシ基、より好ましくメトキシ基を1個有することが好ましい。Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4が示すアリール基として、例えば、フェニル基又は3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基などが特に好ましい。
【0020】
上記一般式(I)で表される化合物において、*1、*2、*3、及び*4は不斉炭素を示すが、それぞれの相対立体配置は*1と*2とがシスであり、*3と*4とがシスであり、かつ*2と*3とがトランスである。上記一般式(I)で表される化合物は光学活性体として提供されることが好ましい。
【0021】
上記一般式(I)で表される化合物の具体例を下記に示すが、本発明の化合物はこれらに限定されることはない。式中、Phはフェニル基、Meはメチル基、Arは3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基を示す。
【化3】

【0022】
本発明により、一般式(I)で表される化合物の2個のリン原子上にそれぞれボランが付加した化合物が提供される。このボラン化合物は、一般式(I)で表される化合物の製造用中間体として有用である。より具体的には、上記に示した一般式(I)で表される好ましい化合物に対応するボラン化合物として、下記の化合物が提供されるが、該ボラン化合物は下記に示す具体的化合物に限定されることはない。
【化4】

【0023】
上記一般式(I)で表される化合物の製造方法は特に限定されないが、上記に好ましい化合物として示した化合物は、例えば、以下に示す方法により製造することができる。これらの方法の詳細は実施例に説明されているので、下記の一般的説明及び実施例を参酌することにより、当業者は一般式(I)に包含される任意の化合物を製造できることを容易に理解することができる。下記スキーム中、Tsはパラトルエンスルホニル基、Phはフェニル基、Meはメチル基、Etはエチル基、n-Buはn-ブチル基、DABCOは1,4-ジアゾビシクロ[2,2,2]オクタン、THFはテトラヒドロフラン、DMFはジメチルホルムアミドを示し、反応工程中に挙げた試薬や溶媒は典型例を示す。
【化5】

【0024】
【化6】

【0025】
出発物質である上記化合物(1)はコーリーラクトンとよばれ、天然型プロスタグランジン合成の中間体として汎用されており、例えばJ. Am. Chem. Soc., 91(20), pp.5675-5677, 1969に記載された方法に従って製造できる。
【0026】
スルホン酸エステル化(例えば上記化合物(1)から(2)への変換)は、スルホン酸ハライドやスルホン酸無水物などを用いることができる。例えば、メタンスルホン酸クロライド、エタンスルホン酸クロライド、トリクロロメタンスルホン酸クロライド、ベンゼンスルホン酸クロライド、2-ニトロベンゼンスルホン酸クロライド、カンファースルホン酸クロライド、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、メタンスルホン酸無水物、p-トルエンスルホン酸無水物などが挙げられる。スルホン酸エステル化は塩基性化合物の存在下でスルホン酸エステル化剤で処理することにより行なうことができるが、塩基性化合物としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの無機塩基性化合物、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどを用いることができる。
【0027】
スルホン酸エステル化における溶媒としては、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、アニソール、クロロベンゼンなどの芳香族系の溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル類、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素などのハロゲン系溶媒、N,N-ジメチルホルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどのアミド類又は必要に応じてそれらを任意の割合で混合した溶媒が挙げられるが、これらに限定されることはない。溶媒の使用量は基質化合物に対して0.1倍容〜1000倍容、好ましくは1倍容〜100倍容である。反応温度は通常−20℃〜100℃であり、反応時間は、溶媒・温度・濃度などにより異なるが、反応基質が消費される時間を目安とし、通常は30分から24時間である。
【0028】
ホスフィノ化(例えば上記化合物(2)から(3)への変換)は、例えばジフェニルホスフィンボランのアニオンを作用させることにより行なうことができる。ジフェニルホスフィンボランのアニオンは、ジフェニルホスフィンボランと任意のアルカリ金属又はアルカリ金属化合物などのアニオン化剤とを反応させることによって得られる。アニオン化剤としては、例えばナトリウム金属、カリウム金属などのアルカリ金属単体やメチルリチウム、フェニルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウムなどの溶液又は水素化ナトリウム分散体、tert-ブトキシカリウムなどが挙げられる。溶媒としては、例えば、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、アニソールなどの芳香族系の溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル類、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素などのハロゲン系溶媒、N,N-ジメチルホルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどのアミド類又は必要に応じてそれらを任意の割合で混合した溶媒が挙げられるが、これらに限定されることはない。溶媒の使用量は基質に対して0.1倍容〜1000倍容、好ましくは1倍容〜100倍容である。反応温度は通常−100℃〜100℃であり、反応時間は、溶媒・温度・濃度などにより異なるが、反応基質が消費される時間を目安とし、通常は1時間から24時間である。
【0029】
脱ボラン化反応(例えば上記化合物(3)からCLPL-Sへの変換)は、ホスフィノ化により得られたボラン化合物にアミンなどの塩基化合物を作用させることにより行なうことができる。塩基化合物としては、例えば種々の有機アミンを用いることができ、より具体的には、例えばジエチルアミン、モルフォリン、ピロリジン、ピペリジン、トリエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどを挙げることができる。脱ボラン化反応は無溶媒でも行なうことができるが、溶媒を用いてもよい。溶媒としては、例えばヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、アニソール、クロロベンゼンなどの芳香族系の溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル類、N,N-ジメチルホルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどのアミド類又は必要に応じてそれらを任意の割合で混合した溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は基質に対して0.1倍容〜1000倍容、好ましくは1倍容〜100倍容である。反応温度は通常−20℃〜150℃であり、反応時間は、溶媒・温度・濃度などにより異なるが、反応基質が消費される時間を目安とし、通常は10分から24時間である。
【0030】
ラクトン環の開環(例えば上記化合物(3)から化合物(4)への変換)はヒドリド化合物を用いた還元により行なうことができる。ヒドリド化合物としては、例えば水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、ビスメトキシエトキシジヒドロアルミン酸ナトリウム−トルエン溶液などが挙げられる。還元反応において用いられる溶媒は特に限定されないが、例えば、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、アニソール、クロロベンゼンなどの芳香族系の溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル類又は必要に応じてそれらを任意の割合で混合した溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は基質に対して0.1倍容〜1000倍容、好ましくは1倍容〜100倍容である。反応温度は通常−100℃〜100℃であり、反応時間は、溶媒・温度・濃度などにより異なるが、反応基質が消費される時間を目安とし、通常は1時間から24時間である。
【0031】
エーテル化(例えば上記化合物(6)から化合物(7)への変換)は一般的に知られるエーテル化の種々の方法により行なうことができる。例えば、ハロゲン化アルキル、硫酸アルキルエステル、若しくはスルホン酸アルキルエステルなどのアルキル化剤、ハロゲン化アラルキル、硫酸アラルキルエステル、若しくはスルホン酸アラルキルエステルなどのアラルキル化剤、又はハロゲン化アリールなどのアリール化剤と塩基性化合物を使用する方法が挙げられるがこれらに限定されることはない。ハロゲン化アルキル、硫酸アルキルエステル、スルホン酸アルキルエステルなどのアルキル化剤としては、例えばヨードメタン、臭化エチル、臭化イソプロピル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、p-トルエンスルホン酸メチル、トリフルオロメタンスルホン酸メチルなどが挙げられる。ハロゲン化アラルキル、硫酸アラルキルエステル、スルホン酸アラルキルエステルとしては、例えば臭化ベンジル、塩化トリフェニルメタン、ジベンジル硫酸、メタンスルホン酸ベンジルなどが挙げられる。ハロゲン化アリールなどのアリール化剤としては、例えばヨードベンゼン、ブロモトルエン、ヨウ化ナフタレンなどが挙げられる。塩基性化合物としては、例えばアルカリ金属化合物や有機塩基などを用いることができる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水素化ナトリウム、tert-ブトキシカリウム、トリエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどが挙げられるが、これらに限定されることはない。アリール化の場合には、上記塩基性化合物のほか、ヨウ化銅(1)や臭化銅(1)などの遷移金属化合物を触媒として用いることもできる。
【0032】
エーテル化における溶媒としては、例えばヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、アニソール、クロロベンゼンなどの芳香族系の溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル類、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素などのハロゲン系溶媒、N,N-ジメチルホルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどのアミド類又は必要に応じてそれらを任意の割合で混合した溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は基質に対して0.1倍容〜1000倍容、好ましくは1倍容〜100倍容である。反応温度は通常−20℃〜150℃であり、反応時間は、溶媒・温度・濃度などにより異なるが、反応基質が消費される時間を目安とし、通常は30分から24時間である。
【0033】
オキセパン環化反応(例えば上記化合物(4)から化合物(8)への変換)はジオール化合物を酸性条件下でケトン又はアルデヒド又はそれらの誘導体と反応させることにより行なうことができる。ケトン又はケトン誘導体としては、例えばアセトン、2-ブタノン、3-ペンタノン、シクロヘキサノン、2,2-ジメトキシプロパン、2,2-ジエトキシプロパン、2,2-ジメチル-1,3-オキソランなどが挙げられる。アルデヒド又はアルデヒド誘導体としては、例えばホルムアルデヒド、イソプロピルアルデヒド、ベンズアルデヒド、1,1-ジメトキシエタン、1,1-ジメトキシ-2-メチルエタンなどが挙げられる。酸は特に限定されず、塩酸、硫酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、強酸性イオン交換樹脂などが挙げられる。反応剤が溶媒を兼ねる場合もあるが、溶媒を用いて反応を行なってもよい。例えば、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、アニソール、クロロベンゼンなどの芳香族系の溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル類、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素などのハロゲン系溶媒、N,N-ジメチルホルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどのアミド類又は必要に応じてそれらを任意の割合で混合した溶媒などを用いることができる。溶媒の使用量は基質に対して0.1倍容〜1000倍容、好ましくは1倍容〜100倍容である。反応温度は通常−20℃〜150℃である。
【0034】
スルホン酸化合物を用いたジオール化合物の閉環反応(例えば上記化合物(4)から化合物(5)への変換)は塩基性化合物の存在下で行なうことができる。スルホン酸化合物としては、スルホン酸ハライドやスルホン酸無水物などを用いることができる。例えば、メタンスルホン酸クロライド、エタンスルホン酸クロライド、トリクロロメタンスルホン酸クロライド、p-トルエンスルホン酸クロライド、ベンゼンスルホン酸クロライド、2-ニトロベンゼンスルホン酸クロライド、カンファースルホン酸クロライド、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、メタンスルホン酸無水物、p-トルエンスルホン酸無水物などが挙げられる。塩基性化合物としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの無機塩基性化合物、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどを挙げることができる。溶媒としては、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、アニソール、クロロベンゼンなどの芳香族系の溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル類、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素などのハロゲン系溶媒、N,N-ジメチルホルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどのアミド類又は必要に応じてそれらを任意の割合で混合した溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は基質に対して0.1倍容〜1000倍容、好ましくは1倍容〜100倍容である。反応温度は通常−20℃〜100℃であり、反応時間は、溶媒・温度・濃度などにより異なるが、反応基質が消費される時間を目安とし、通常は30分から24時間である。
【0035】
本発明により提供される上記一般式(I)で表される化合物は遷移金属錯体の配位子として有用である。本発明により提供される遷移金属錯体に含まれる遷移金属としては、第4〜第5周期の遷移金属、好ましくはロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、及びパラジウム(Pd)を用いることができる。上記遷移金属錯体は、遷移金属と上記一般式(I)で表される化合物とを反応又は混合することによって得ることができる。上記の錯体は、遷移金属原子と上記一般式(I)で表される化合物分子とが1:1〜1:5の範囲の錯体であり、より好ましくは1:1の錯化合物である。この遷移金属錯体は、下記の説明するように触媒的不斉水素化反応用の触媒として用いることができるが、触媒としての使用は単離された錯体、又は反応系において遷移金属錯体を調製した後の溶液又はスラリーのいずれであってもよい。
【0036】
遷移金属としてロジウムを用いる場合、錯体の製造及び単離に関して日本化学会編「第4版 実験化学講座」、第18巻、有機金属錯体1991年、丸善339-344頁に記載の方法を参照することができる。ロジウム錯体の製造には、例えば以下のロジウム化合物を用いることができる(式中、Lは一般式(I)で表される化合物を示し、codは1,5-シクロオクタジエン、nbdはノルボルナジエンを示す)。[Rh(cod)(L)]BF4、[Rh(cod)(L)]ClO4、[Rh(cod)(L)]PF6、[Rh(cod)(L)]OSO2CF3、[Rh(nbd)(L)]BF4、[Rh(nbd)(L)]ClO4、[Rh(nbd)(L)]PF6、[Rh(nbd)(L)]OSO2CF3 また、ロジウム錯体を単離せずに用いる場合、ロジウム化合物と一般式(I)で表される化合物を適当な溶媒中で溶解して反応させ、反応液をそのまま用いるか、あるいは適宜の手段で濃縮して用いることができる。その場合に使用するロジウム化合物として、例えば以下の化合物を挙げることができる(式中、cod及びnbdは上記と同義であり、acacはアセチルアセトナートを示す)。[Rh(cod)2]BF4、 [Rh(cod)2]ClO4、[Rh(cod)2]PF6、[Rh(cod)2]OSO2CF3、[Rh(nbd)2]BF4、[Rh(nbd)2]ClO4、[Rh(nbd)2]PF6、[Rh(nbd)2]OSO2CF3、[RhCl(cod)]2、[RhCl(nbd)]2、[Rh(acac)(cod)]
【0037】
溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、2-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、アニソール、クロロベンゼンなどの芳香族系の溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル類、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素などのハロゲン系溶媒、酢酸エチル、ギ酸メチルなどのエステル類、N,N-ジメチルホルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどのアミド類又は必要に応じてそれらを任意の割合で混合した溶媒を挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0038】
遷移金属としてルテニウムを用いる場合、錯体の製造及び単離に関してM. Kitamura, Org. Synth., 71, pp.1-13, 1993に記載された方法を参照することができ、上記文献に記載されたように一般式(I)で表される化合物と[Ru(cod)Cl2]nとをジメチルホルムアミド(DMF)中で加熱する方法などを採用することができる。
遷移金属としてパラジウムを用いる場合、錯体の製造及び単離に関して佐藤史衛編「合成化学者のための実験有機金属化学」、1992年講談社195-196頁に記載された方法を参照することができ、上記文献に記載されたようにベンゼン中で一般式(I)で表される化合物と[PdCl2(MeCN)2]とを混合することによって錯体を調製することができる。
【0039】
遷移金属としてイリジウムを用いる場合、錯体の製造及び単離に関して日本化学会編「第4版 実験化学講座」、第18巻、有機金属錯体1991年、丸善363頁に記載の方法を参照することができる。イリジム錯体の製造には、例えば以下のイリジウム化合物を用いることができる(L、cod、及びnbdは上記と同義である)。[Ir(cod)(L)]BF4、[Ir(cod)(L)]ClO4、[Ir(cod)(L)]PF6、[Ir(cod)(L)]OSO2CF3、[Ir(nbd)(L)]BF4、[Ir(nbd)(L)]ClO4、[Ir(nbd)(L)]PF6、及び[Ir (nbd)(L)]OSO2CF3 また、イリジウム錯体を単離せずに用いる場合、イリジウム化合物と一般式(I)で表される化合物とを適当な溶媒中で溶解して反応させ、反応液をそのまま用いるか、あるいは適宜の手段で濃縮して用いることができる。その場合に使用するイリジウム化合物として、例えば以下の化合物を挙げることができる(式中、cod、nbd、及びacacは上記と同義である)。[Ir(cod)2]BF4、[Ir(cod)2]ClO4、[Ir (cod)2]PF6、[Ir(cod)2]OSO2CF3、[Ir(nbd)2]BF4、[Ir(nbd)2]ClO4、[Ir(nbd)2]PF6、[Ir(nbd)2]OSO2CF3、[Ir Cl(cod)]2、[IrCl(nbd)]2、[Ir(acac)(cod)] 溶媒としては上記のロジウムの場合と同様の溶媒を用いることができる。
【0040】
遷移金属原子及び配位子である上記一般式(I)で表される化合物からなる上記の遷移金属錯体は、例えば、触媒的不斉水素化反応の触媒として有用である。触媒的不斉水素化反応により還元可能な結合としては、例えば、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、炭素-窒素二重結合、及び炭素-酸素二重結合などが挙げられる。これらのうち、オレフィン(C=C)、イミン(C=N)、及びケトン(C=O)の還元を好ましい反応として挙げることができる。本発明の遷移金属錯体を含む不斉触媒を用いて触媒的不斉水素化反応を行なうことにより立体選択的に不飽和結合を還元することができ、光学純度の高い光学異性体を容易に製造することができる。例えば、本発明の触媒を用いてアルキリデンコハク酸誘導体を不斉水素化することにより光学純度の高いアルキルコハク酸誘導体を容易に製造することができ、あるいは本発明の触媒を用いてN-保護アミノアクリル酸誘導体を不斉水素化することにより光学純度の高い保護アミノ酸誘導体を容易に製造することができる。
【0041】
不飽和結合を含む基質と触媒としての錯体とのモル比(S/C)は、例えば100から100,000程度である。触媒的不斉水素化は、例えば−20℃〜200℃程度の反応温度で行うことができ、好ましくは0℃〜80℃で行なうことができる。水素圧は、例えば0.01MPa〜25MPa程度であり、好ましくは0.1MPa〜10MPaである。反応溶媒は、基質の安定性や反応性などの観点から適宜選択することができるが、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、アニソール、クロロベンゼンなどの芳香族系の溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル類、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素などのハロゲン系溶媒、酢酸エチル、ギ酸メチルなどのエステル類、N,N-ジメチルホルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどのアミド類又は必要に応じてそれらを任意の割合で混合した溶媒などを用いることができる。
【0042】
本発明の触媒を用いた不斉反応の具体例を下記に示すが、これらに限定されることはない(式中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Acはアセチル基、Rはアルキル基などのカルボン酸の保護基、*は不斉炭素を示す)。
【化7】

【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例により限定されることはない。下記の実施例中、化合物の略号(CLPL-Sなど)及び化合物の番号は上記の好ましい化合物における標記と同一である。
例1:(3aR,4S,5R,6aS)-5-p-トルエンスルホキシ-4-[(p-トルエンスルホキシ)メチル]ヘキサヒドロシクロペンタ[b]フラン-2-オン(化合物2)の製造
滴下ロートを取り付けた200 mL三つ口フラスコに塩化p-トルエンスルホニル(37.0g , 190mmol)、ピリジン60 mLを加え、氷浴にて冷却した。(3aR,4S,5R,6aS)-5-ヒドロキシ-4-ヒドロキシメチルヘキサヒドロシクロペンタ[b]フラン-2-オン(化合物1、8.6 g, 50 mmol)のピリジン40 mL溶液を滴下し、30分間撹拌したのち室温まで昇温し、さらに2.5時間撹拌した。再び氷浴にて冷却し、氷水50 mLをゆっくりと加えた。室温にて10分間撹拌後、酢酸エチル80 mLを加えて反応液を分液し、更に水層を酢酸エチル30 mLで2回抽出した。有機層を合わせて希塩酸50 mLで5回、飽和食塩水40 mLで1回の順に洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を濾去後、エバポレーターで濃縮した。残渣にメタノール150 mL加えて30分間70℃で加熱撹拌後、5〜10℃で冷却晶出して析出した固体を濾取した。デシケーターで乾燥し、(3aR,4S,5R,6aS)-5-p-トルエンスルホキシ-4-[(p-トルエンスルホキシ)メチル]ヘキサヒドロシクロペンタ[b]フラン-2-オン(化合物2)を白色結晶で得た。(17.5 g, 収率73%)
1HNMR(CDCl3、300MHz):δ 7.77-7.72(m,4H), 7.40-7.33(m,4H), 4.87-4.76(m,2H), 4.04-3.94(m,2H), 2.81-2.73(m,2H), 2.48(s,3H), 2.46(s,3H), 2.44-2.26(m,3H), 2.26-2.04(m,1H)
m.p.41〜43℃
[α]D20=−57.70(c=1.02,トルエン)
【0044】
例2:(3aR,4S,5S,6aS)-(5-ジフェニルホスファニル-4-[(ジフェニルホスファニル)メチル]ヘキサヒドロシクロペンタ[b]フラン-2-オン-ボラン錯体(化合物3)の製造
滴下ロート、三方コックを取り付けた200 mL3つ口フラスコに、ジフェニルホスフィン−ボラン錯体(7.9 g, 39.5 mmol)、脱水THF 45 mL を加え、-15℃に冷却し、1.56 mol/L n-ブチルリチウムヘキサン溶液(25.3 mL, 39.5 mmol)を ゆっくりと滴下した。10分間撹拌後、(3aR,4S,5R,6aS)-5-p-トルエンスルホキシ-4-[(p-トルエンスルホキシ)メチル]ヘキサヒドロシクロペンタ[b]フラン-2-オン(化合物2、7.3 g, 15.2 mmol)のテトラヒドロフラン20 mL溶液を滴下し、室温で16時間撹拌した。ジエチルエーテル40 mL及び飽和食塩水20 mLを加えて分液し、水層をジエチルエーテル20 mLで2回抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水10 mLで2回洗浄した。無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、乾燥剤を濾去後、エバポレーターで濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=10:1)で精製して、(3aR,4S,5S,6aS)- (5-ジフェニルホスファニル-4-[(ジフェニルホスファニル)メチル]ヘキサヒドロシクロペンタ[b]フラン-2-オン-ボラン錯体(化合物3)を得た (4.41 g、収率 54 %)。
1HNMR(CDCl3、300MHz):δ7.79-7.13(m,20H),5.04-5.00(t,J=5.1Hz,1H), 3.28-3.11(m,2H), 2.90-2.77(m,2H), 2.56-2.38(m,1H), 2.35-2.02(m,4H), 1.08(brs,6H)
[α]D20=−40.94(c=1.00,トルエン)
【0045】
例3:(3aR,4S,5S,6aS) -4-ジフェニルホスファニル-3-[(ジフェニルホスファニル)メチル]-2-(2-ヒドロキシエチル)シクロペンタノール-ボラン錯体(化合物4)の製造
温度計、三方コックを取り付けた50 mL3つ口フラスコに、水素化ホウ素リチウム(0.20 g, 9.3 mmol)を加え、脱水テトラヒドロフラン10 mLを加え、氷浴にて冷却した。(3aR,4S,5S,6aS)-5-ジフェニルホスファニル-4-[(ジフェニルホスファニル)メチル]ヘキサヒドロシクロペンタ[b]フラン-2-オン-ボラン錯体(化合物3、2.5 g, 4.7 mmol)の脱水テトラヒドロフラン 15 mL溶液を滴下し、室温で16時間撹拌した。冷却し、トルエン15 mL及び希塩酸 10 mLを加えて15分間撹拌した。分液し、水層をトルエン5 mLで3回抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水5 mLで3回洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を濾去後、エバポレーターで濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=1:1)で精製し、(3aR,4S,5S,6aS)−4−ジフェニルホスファニル-3-[(ジフェニルホスファニル)メチル]-2-(2-ヒドロキシエチル)シクロペンタノール−ボラン錯体(化合物4)を得た (2.2 g, 収率 86 %)。
1HNMR(CDCl3、300MHz):δ7.89-7.11(m,20H), 4.27(s,1H), 3.59-3.46(m,2H), 3.2-3.22(m,1H), 2.64(t,J=13.8Hz,1H), 2.41-2.26(m,3H), 2.05(brs,1H), 1.81(m,1H), 1.68-1.57(m,1H), 1.45-1.41(m,1H), 1.03(brs,6H)
[α]D20=+17.94(c=1.01,トルエン)
【0046】
例4:(3aS,4R,5R,6aR)-5-ジフェニルホスファニル-4-[(ジフェニルホスファニル)メチル]ヘキサヒドロシクロペンタ[b]フラン-ボラン錯体(化合物5)の製造
三方コックを取り付けた25 mL3つ口フラスコに、ピリジン(0.17 mL, 2.06 mmol)、ジクロロメタン4 mLを加え、冷却した。フラスコにp-トルエンスルホン酸無水物(336 mg, 1.03 mmol)、(3aS,4R,5R,6aR)-4-ジフェニルホスファニル-3-[(ジフェニルホスファニル)メチル]-2-(2-ヒドロキシエチル)シクロペンタノール-ボラン錯体(化合物4の対掌体)のジクロロメタン2 mL溶液を加え4時間撹拌した。室温で14時間撹拌した後冷却し、水5 mLを加えて30分間撹拌した。反応液を分液漏斗に移しトルエン5 mLで3回抽出した。有機層を合わせて希塩酸 5mLで5回洗浄後、飽和食塩水5mLで洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を濾去後、エバポレーターで濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=12:1)で精製して、(3aS,4R,5R,6aR)-5-ジフェニルホスファニル-4-[(ジフェニルホスファニル)メチル]ヘキサヒドロシクロペンタ[b]フラン−ボラン錯体(化合物5)を得た (140 mg, 収率 65 %)。
1HNMR(CDCl3、300MHz):δ7.77-7.10(m,20H), 4.39-4.32(m,1H), 3.87-3.80(m,1H), 3.39-3.31(m,1H), 3.29-3.18(m,1H), 3.02-2.92(m,2H), 2.39-2.05(m,4H), 1.86(dd,J=5.4,15.0Hz,1H), 1.50-1.37(m,1H), 1.20(brs,6H)
[α]D20=+32.15(c=1.03,トルエン)
【0047】
例5:(3aR,4S,5S,6aS) -4-ジフェニルホスファニル-3-[(ジフェニルホスファニル)メチル]-2-(2-トリフェニルメチルオキシエチル)シクロペンタノール-ボラン錯体(化合物6)の製造
25 mLナス型フラスコに(3aR,4S,5S,6aS)-4-ジフェニルホスファニル-3-[(ジフェニルホスファニル)メチル]-2-(2-ヒドロキシエチル)シクロペンタノール-ボラン錯体(化合物4、0.54 g, 1.0 mmol)とジクロロメタン5 mL、トリエチルアミン(0.18 mL, 1.3mmol)を加えて冷却しながら撹拌溶解した。塩化トリフェニルメタン(0.42 g, 1.5 mol)のジクロロメタン 2mL溶液を滴下した。室温で16時間撹拌した後冷却し、トルエン20 mL及び水10 mLを加えた。反応液を分液漏斗に移し分液し、水層をトルエン5 mLで3回抽出後、有機層を合わせて飽和食塩水5 mLで3回洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を濾去後、エバポレーターで濃縮して(3aR,4S,5S,6aS)-4-ジフェニルホスファニル-3-[(ジフェニルホスファニル)メチル]-2-(2-トリフェニルメチルオキシエチル)シクロペンタノール−ボラン錯体(化合物6)を得た(0.9 g)。この化合物は精製することなく次の工程に使用した。
1HNMR(CDCl3、300MHz):δ7.89-7.06(m, 35H), 4.18(brs,1H), 3.61-3.47(m,1H), 3.41(brs,1H), 3.11-3.08(m,1H), 2.57-2.19(m,4H), 1.89-1.39(m,4H), 0.94(brs,6H)
[α]D20=−4.96(c=0.99,トルエン)
【0048】
例6:(3aR,4S,5S,6aS) -4-ジフェニルホスファニル-3-[(ジフェニルホスファニル)メチル]-2-(2-トリフェニルメチルオキシエチル)-1-メトキシシクロペンタン-ボラン錯体(化合物7)の製造
25 mLナス型フラスコに水素化ナトリウム(30.9 mg, 0.77 mmol)とジメチルホルムアミド2 mLを加え、氷浴にて冷却した。(3aR,4S,5S,6aS)−4−ジフェニルホスファニル−3−[(ジフェニルホスファニル)メチル]-2-(2-トリフェニルメチルオキシエチル)シクロペンタノール−ボラン錯体(化合物6、0.52 g, 0.55 mmol)のジメチルホルムアミド4 mL溶液を滴下し、室温で30分間撹拌後、続いてヨウ化メチル(0.17 mL, 1.3 mmol)を滴下した。一晩撹拌後冷却し、トルエン10 mL及び水 3 mLを加えた。反応液を分液漏斗に移し分液し、水層をトルエン3 mLで2回抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水5 mLで2回洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を濾去後、エバポレーターで濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、(3aR,4S,5S,6aS) - 4-ジフェニルホスファニル-3-[(ジフェニルホスファニル)メチル]-2-(2-トリチルオキシエチル)−1−メトキシシクロペンタン-ボラン錯体(化合物7)を得た (0.19 g, (3aR,4S,5S,6aS) -3,4-ジフェニルホスファニル-3-[(ジフェニルホスファニル)メチル]-2-(2-ヒドロキシエチル)シクロペンタノール−ボラン錯体から収率 43 %)
1HNMR(CDCl3、300MHz):δ7.84-7.07(m,35H), 3.49-3.32(m,2H), 2.87-2.74(m,1H), 2.82(s,3H), 2.67-2.29(m,4H), 2.23-2.09(m,1H), 1.95-1.88(m,1H), 1.71-1.54(m,2H), 1.46-1.31(m,1H), 1.05(brs,6H)
[α]D20=+30.16(c=1.14,トルエン)
【0049】
例7:(5aR,6S,7S,8aS)-7-ジフェニルホスファニル-6-[(ジフェニルホスファニル)メチル]-2,2-ジメチルヘキサヒドロシクロペンタ[d][1,3]ジオキセピン-ボラン錯体(化合物8)の製造
30 mL二口フラスコに、(3aR,4S,5S,6aS) -4-ジフェニルホスファニル-3-[(ジフェニルホスファニル)メチル]-2-(2-ヒドロキシエチル)シクロペンタノール−ボラン錯体(化合物4、0.54 g, 1.0 mmol)、2,2-ジメトキシプロパン10 mL、及びp-トルエンスルホン酸一水和物約10 mgを加え、50℃で3時間撹拌した。室温まで冷却し、溶媒をエバポレーターで濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、(5aR,6S,7S,8aS)-7-ジフェニルホスファニル-6-[(ジフェニルホスファニル)メチル]-2,2-ジメチルヘキサヒドロシクロペンタ[d][1,3]ジオキセピン−ボラン錯体(化合物8)を得た(0.27 g,収率47 %)。
1HNMR(CDCl3、300MHz):δ7.89-7.13(m,20H), 4.42(t,J=6.2Hz,1H), 3.74-3.66(m,1H), 3.37-3.23(m,2H), 2.50-2.21(m,5H), 1.96-1.70(m,2H), 1.46-1.34(m,1H), 1.28(s,3H), 1.19(s,3H)
[α]D20=−2.32(c=1.01,トルエン)
【0050】
例8:(3aR,4S,5S,6aS)-5-ジ (4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニル)ホスファニル]-4-[(ジ (4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニル)ホスファニル)メチル]ヘキサヒドロシクロペンタ[b]フラン-2-オン-ボラン錯体(化合物9)の製造
30 mL二口フラスコに、ジ(4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン-ボラン錯体(0.52 g, 1.7 mmol)、脱水THF 4 mL を加え、-15℃に冷却し、1.54 mol/L n-ブチルリチウムヘキサン溶液(1.1 mL, 1.7 mmol)を ゆっくりと滴下した。10分間撹拌後、(3aR,4S,5R,6aS)-5-p-トルエンスルホキシ-4-[(p-トルエンスルホキシ)メチル]ヘキサヒドロシクロペンタ[b]フラン-2-オン(化合物2、0.33 g, 0.7 mmol)のテトラヒドロフラン4 mL溶液を滴下し、室温で16時間撹拌した。ジエチルエーテル40 mL及び飽和食塩水20 mLを加えて分液し、水層をジエチルエーテル20 mLで2回抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水10 mLで2回洗浄した。無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、乾燥剤を濾去後、エバポレーターで濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=10:1)で精製して、(3aR,4S,5S,6aS) -5-ジ (4−メトキシ-3,5-ジメチルフェニル)ホスファニル]-4-[(ジ (4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニル)ホスファニル)メチル]ヘキサヒドロシクロペンタ[b]フラン-2-オン-ボラン錯体(化合物9)を得た (0.10 g、収率 19 %)。
1HNMR(CDCl3、300MHz):δ7.37-7.23(m,6H), 7.00(d,J=10.5Hz,2H), 4.94(t,J=5.9Hz,1H), 3.73(s,3H), 3.71(s,3H), 3.69(s,3H), 3.68(s,3H), 3.15-3.02(m,1H), 2.92-2.88(m,1H), 2.71-2.04(m,7H), 2.29(s,6H),2.25(s,6H), 2.22(s,6H), 2.17(s,6H), 1.15(brs,6H)
[α]D20=−38.66(c=1.03,トルエン)
【0051】
例9:(3aR,4S,5S,6aS)-(5-ジフェニルホスファニル-4-[(ジフェニルホスファニル)メチル]ヘキサヒドロシクロペンタ[b]フラン-2-オン(CLPL-S)の製造
25 mLナス型フラスコに(3aR,4S,5S,6aS)-(5-ジフェニルホスファニル-4-[(ジフェニルホスファニル)メチル]ヘキサヒドロシクロペンタ[b]フラン-2-オン-ボラン錯体(化合物3、1.0 mmol)、1,4-ジアゾビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO, 0.25 g, 2.2 mmol)を加え、窒素置換した。酸素を除去したトルエン10 mLを加え、40℃で3時間撹拌した。溶媒をエバポレーターで濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル=20/1〜4/1)で精製して、(3aR,4S,5S,6aS) -(5-ジフェニルホスファニル-4-[(ジフェニルホスファニル)メチル]ヘキサヒドロシクロペンタ[b]フラン-2-オン(CLPL-S)を得た(収率85%)。
1HNMR(CDCl3、300MHz):δ7.45-7.01(m,20H), 5.07(t,J=5.7Hz,1H), 3.35(brs,1H), 3.03-2.94(m,1H), 2.89(dd,J=10.6,18.7Hz,1H), 2.72-2.66(m,1H), 2.23(dd,J=3,2,18.8Hz,1H), 2.15-2.01(m,1H), 1.97-1.79(m,3H)
[α]D20=−139.57(c=1.01,トルエン)
【0052】
例10:(3aR,4S,5S,6aS)-4−ジフェニルホスファニル-3-[(ジフェニルホスファニル)メチル]-2-(2-ヒドロキシエチル)シクロペンタノール(CLPDO−S)の製造
例9と同様にして(3aR,4S,5S,6aS)-4-ジフェニルホスファニル-3-[(ジフェニルホスファニル)メチル]-2-(2-ヒドロキシエチル)シクロペンタノール−ボラン錯体(化合物4)より収率84%で目的化合物を得た。
1HNMR(CDCl3、300MHz):δ7.59-7.53(m,2H), 7.46-7.08(m,16H), 7.02-6.97(m,2H), 4.35(t,J=4.8Hz,1H), 3.80-3.74(m,1H), 3.67-3.60(m,1H), 3.33-3.23(m,1H), 2.69-2.63(m,1H), 2.30-2.21(m,1H), 2.05-1.76(m,5H), 2.00(brs,2H), 1.62(dd,J=6.0,12.0Hz,1H)
[α]D20=−74.45(c=1.00,トルエン)
【0053】
例11:(3aR,4S,5S,6aS)-4-ジフェニルホスファニル-3-[(ジフェニルホスファニル)メチル]−2−(2−トリフェニルメチルオキシエチル)シクロペンタノール(CLPTO-S)の製造
例9と同様にして(3aR,4S,5S,6aS)-4-ジフェニルホスファニル-3-[(ジフェニルホスファニル)メチル]-2-(2-トリフェニルメチルオキシエチル)シクロペンタノール-ボラン錯体(化合物6)より収率87%で目的化合物を得た。
1HNMR(CDCl3、300MHz):δ7.58-7.52(m,2H), 7.43-7.06(m,41H), 6.97-6.92(m,2H), 4.19(brs,1H), 3.45-3.40(m,1H), 3.35-3.28(m,2H), 3.05-3.00(m,1H), 2.61(dd,J=5.3,10.4Hz,1H), 2.09-1.80(m,6H), 1.63(dd,J=6.2,13.1Hz,1H)
[α]D20=−45.41(c=1.02,トルエン)
【0054】
例12:(3aR,4S,5S,6aS)-4-ジフェニルホスファニル-3-[(ジフェニルホスファニル)メチル]-2-(2-トリフェニルメチルオキシエチル)-1-メトキシシクロペンタン(CLPTM−S)の製造
例9と同様にして(3aR,4S,5S,6aS)-4-ジフェニルホスファニル-3-[(ジフェニルホスファニル)メチル]-2-(2-トリチルオキシエチル)-1-メトキシシクロペンタン-ボラン錯体(化合物7)より収率87%で目的化合物を得た。
1HNMR(CDCl3、300MHz):δ7.47-6.98(m,35H), 3.50(brs,1H), 3.12(m,2H), 2.90(s,3H), 2.90(m,1H), 2.60-2.57(m,1H), 2.35(m,1H), 1.99-1.54(m,6H)
[α]D20=−16.31(c=0.98,トルエン)
【0055】
例13:(3aS,4R,5R,6aR)-5-ジフェニルホスファニル-4-[(ジフェニルホスファニル)メチル]ヘキサヒドロシクロペンタ[b]フラン(CLPF−R)の製造
例9と同様にして(3aS,4R,5R,6aR)-5-ジフェニルホスファニル-4-[(ジフェニルホスファニル)メチル]ヘキサヒドロシクロペンタ[b]フラン-ボラン錯体(化合物5)より収率100%で目的化合物を得た。
1HNMR(CDCl3、300MHz):δ7.47-7.06(m,20H), 4.45(t,J=6.2Hz,1H), 3.90-3.84(m,1H), 3.53-3.45(m,1H), 3.16-2.98(m,2H), 2.72-2.66(m,1H), 2.23-2.14(m,1H), 2.04-1.72(m,4H), 1.53-1.42(m,1H)
[α]D20=+117.83(c=1.00,トルエン)
【0056】
例14: (3aR,4S,5S,6aS)-7-ジフェニルホスファニル-6-[(ジフェニルホスファニル)メチル]-2,2-ジメチルヘキサヒドロシクロペンタ[d][1,3]ジオキセピン(CLPOX-S)の製造
例9と同様にして(3aR,4S,5S,6aS)-7-ジフェニルホスファニル-6-[(ジフェニルホスファニル)メチル]-2,2-ジメチルヘキサヒドロシクロペンタ[d][1,3]ジオキセピン-ボラン錯体(化合物8)より収率79%で目的化合物を得た。
1HNMR(CDCl3、300MHz):δ7.37-7.13(m,6H), 7.00(d,J=10.5Hz,2H), 4.94(t,J=5.9Hz,1H), 3.73(s,3H), 3.71(s,3H), 3.69(s,3H), 3.68(s,3H), 3.15-3.02(m,1H), 2.92-2.88(m,1H), 2.71-2.04(m,7H), 2.29(s,3H), 2.25(s,3H), 2.22(s,3H), 2.17(s,3H), 1.15(brs,6H)
[α]D20=−79.72(c=1.20,トルエン)
【0057】
例15: (3aR,4S,5S,6aS) -5-ジ (4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニル)ホスファニル]-4-[(ジ (4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニル)ホスファニル)メチル]ヘキサヒドロシクロペンタ[b]フラン-2-オン-ボラン(CLMPL−S)の製造
例9と同様にして(3aR,4S,5S,6aS) -5-ジ (4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニル)ホスファニル]-4-[(ジ (4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニル)ホスファニル)メチル]ヘキサヒドロシクロペンタ[b]フラン-2-オン-ボラン錯体(化合物9)より収率76%で目的化合物を得た。
1HNMR(CDCl3、300MHz):δ7.08-6.94(m,6H), 6.82(d,J=7.8Hz,2H), 4.99(t,J=6.0Hz,1H), 3.70(s,3H), 3.69(s,3H), 3.68(s,3H), 3.67(s,3H), 3.31(brs,1H), 2.91-2.81(m,2H), 2.67-2.63(m,1H), 2.44-1.68(m,3H), 2.24(s,6H), 2.21(s,12H), 2.07(s,6H)
[α]D20=−104.76(c=1.03,トルエン)
【0058】
例16:[Rh(CLPL−S)(COD)]BF4の製造(COD=1,5-シクロオクタジエン)
10 mLナス型フラスコに[RhCl(COD)]2 (0.12 g,0.23 mmol)、テトラフルオロホウ酸銀 (0.1g, 0.49 mmol)を加え、フラスコ内を窒素置換した。アセトン1 mLを加えて15分間撹拌後、CLPL-S(0.47 mmol)のアセトン3 mL溶液を加えて30分間撹拌した。析出してきた固体を濾取した後、ろ液を残分が1 mL程度になるまで減圧留去した。残分に脱水ジエチルエーテル30 mLを加えて結晶化させ、析出した固体を濾取、乾燥して、橙色の固体として金属錯体を得た。収率 99%。
31PNMR (160 MHz, acetone-d6): δ 26.5(dd, 46.9, 143.9Hz), 20.2(dd, 46.9, 145.5Hz)
【0059】
例17:[Rh(CLPDO-S)(COD)]BF4の製造
CLPL-Sの代わりにCLPDを用いる以外は例16と同様にして目的化合物を得た。収率 93%。31PNMR (160 MHz, acetone-d6): δ 30.5(dd, 46.7, 141.5Hz), 20.1(dd, 46.7, 142.8Hz)
例18:[Rh(CLPTO-S)(COD)]BF4の製造
CLPL-Sの代わりにCLPTO−Sを用いる以外は例16と同様にして目的化合物を得た。収率 76%。
31PNMR (160 MHz, acetone-d6): δ 30.6(dd, 46.9, 142.3Hz), 20.2(dd, 46.9, 143.9Hz)
例19:[Rh(CLPTM-S)(COD)]BF4の製造
CLPL-Sの代わりにCLPTM-Sを用いる以外は例16と同様にして目的化合物を得た。収率 67%。
31PNMR (160 MHz, acetone-d6): δ 31.0(ddd, 22.0, 46.7, 142.9Hz), 20.3(ddd, 23.3, 46.7, 142.8Hz)
例20:[Rh(CLPOX-S)(COD)]BF4の製造
CLPL-Sの代わりにCLPOX-Sを用いる以外は例16と同様にして目的化合物を得た。収率 82%。
31PNMR (160 MHz, acetone-d6): δ 30.6(dd, 45.9, 141.5Hz), 20.2(dd, 46.0, 142.8Hz)
例21:[Rh(CLPF-R)(COD)]BF4の製造
CLPL-Sの代わりにCLPF-Rを用いる以外は例16と同様にして目的化合物を得た。収率 89%。
31PNMR (160 MHz, acetone-d6): δ 26.3(dd, 46.6, 142.8Hz), 19.9(dd, 45.4, 144.2Hz)
例22:[Rh(CLMPL-S)(COD)]BF4の製造
CLPL-Sの代わりにCLMPL-Sを用いる以外は例16と同様にして目的化合物を得た。収率 72%。
【0060】
例23:ロジウム金属錯体触媒を用いた光学活性N−アセチルフェニルアラニンの製造
【化8】

25 mLナス型フラスコを窒素置換し、これに酸素を除いたメタノール3mL及びトリエチルアミン (20.9μL, 0.15 mmol)を加え反応溶媒とした。オートクレーブ用のパイレックス(登録商標)試験管にα−アセトアミド桂皮酸(0.20 g, 0.98 mmol)、[Rh(CLPL-S)(COD)]BF4 (3.95 mg, 0.0049 mmol)を量り、撹拌子と共に50 mLオートクレーブに入れて、オートクレーブ内を窒素置換した。反応溶媒2 mLを加え、オートクレーブ内を十分に水素置換した後、2MPaの水素で加圧し、40℃で22時間撹拌した。22時間後、オートクレーブを常圧に戻し、反応液をエバポレーターで濃縮した。濃縮残渣は、2M-水酸化ナトリウム水溶液5 mLを加えて溶解し、酢酸エチル5 mLで洗浄した。水層を分取し、希塩酸をpH<2となるまで加え、生じた油状物を酢酸エチル10 mLで抽出した。エバポレーターで濃縮し、(R)-N-アセチルフェニルアラニンを定量的に得た。
1HNMR(300 MHz, CD3OD):δ7.25-7.12(m,5H), 4.58(dd,J=4.8,8.9Hz,1H), 3.15(dd,J=5.1,13.8Hz,1H), 2.89(dd,J=9.0,13.8Hz,1H), 1.89(s,3H)
【0061】
得られた(R)-N-アセチルフェニルアラニンを2 mgを0.5 mLのメタノールと0.5mLのジクロロメタンに溶解し、トリメチルシリルジアゾメタンの10% n-ヘキサン溶液を、溶液が黄色く着色するまで加え、メチルエステル体とした。溶媒をエバポレーターで濃縮し、残渣をn-ヘキサン:2-プロパノール=9:1溶液1 mLに溶解した。この溶液を以下の条件のHPLCにて分析したところ(R)体95%eeであった。
分析条件:ダイセル化学工業社製Chiralcel−OD, 移動相 n-ヘキサン/2-プロパノール=9/1, 流速1.0 mL/min.,検出器波長220 nm,カラム温度40℃、2μL注入:R.T. R体8.4min., S体9.8min.
【0062】
例24〜28:ロジウム金属錯体触媒を用いた光学活性N−アセチルフェニルアラニンの製造
金属錯体触媒以外は例23と同様にして目的化合物の合成を行った。
【表1】

【0063】
例29〜30:ロジウム金属錯体触媒を用いた光学活性N−アセチルフェニルアラニンの製造
50 mLオートクレーブ用のパイレックス(登録商標)試験管にα−アセトアミド桂皮酸(0.20 g, 0.98 mmol)、[RhCl(COD)]2(1.2 mg,0.0025 mmol)、配位子(0.005 mmol)を量り取り、撹拌子を入れた。この試験管を50 mLオートクレーブにセットし、オートクレーブ内を3度窒素置換した。これに脱気処理したメタノール2 mLを加え、オートクレーブ内十分に水素置換した後0.8 MPaの水素で加圧し、40℃で22時間撹拌した。反応後の後処理は、例23と同様に行った。
【表2】

【0064】
例31〜36:ロジウム金属錯体触媒を用いた光学活性3-メトキシカルボニル-4-シクロヘキシル酪酸の製造
【化9】

オートクレーブ用のパイレックス(登録商標)試験管に2-シクロヘキシルメチリデンコハク酸 1-メチルエステル(0.22 g, 1.0 mmol)、金属錯体触媒(0.005 mmol)を量り、撹拌子と共に50mLオートクレーブに入れて、オートクレーブ内を窒素置換した。酸素を除いたメタノール2mLを加え、オートクレーブ内を十分に水素置換した後、0.5MPaの水素で加圧し、45℃で18時間撹拌した。18時間後、オートクレーブを常圧に戻し、反応液をエバポレーターで濃縮した。濃縮残渣は、2M-水酸化ナトリウム水溶液5mLを加えて溶解し、酢酸エチル5 mLで洗浄した。水層を分取し、希塩酸をpH<2となるまで加え、生じた油状物を酢酸エチル10 mLで抽出した。エバポレーターで濃縮し、光学活性シクロヘキシルメチルコハク酸 1-メチルエステルを定量的に得た。
1HNMR(300 MHz,CDCl3):δ3.70(s,3H), 2.97-2.87(m,1H), 2.73(dd,J=9.5,16.8Hz,1H), 2.47(dd,J=4.8,16.8Hz,1H), 1.79-1.53(m,6H), 1.44-1.07(m,5H), 0.95-0.82(m,2H)
【0065】
得られた光学活性3-メトキシカルボニル-4-シクロヘキシル酪酸を9.5 mgを5 mLのベンゼンに溶解し、トリフルオロ酢酸無水物27μLを加え、40℃で1時間撹拌した。反応液に、フェノールの213 mMベンゼン溶液を0.88 mL加え、更に20分撹拌した。分液漏斗に移し、2M-水酸化ナトリウム水溶液5 mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾去後、エバポレーターで濃縮し、残渣をn-ヘキサン:2-プロパノール=99:1溶液1mLに溶解した。
分析条件:ダイセル化学工業社製Chiralcel−OD,移動相 n-ヘキサン/2-プロパノール=99/1, 流速1.0 mL/min.,検出器波長254 nm,カラム温度40℃、2μL注入:R.T. S体11.9min., R体29.2min.
【0066】
【表3】

【0067】
例37〜38:ロジウム金属錯体触媒を用いた光学活性3-メトキシカルボニル-5-メチルカプロン酸の製造
【化10】

基質としてイソブチリデンコハク酸 1-メチルエステルを用いる以外は、例31〜36と同様に行った。
3-メトキシカルボニル-5-メチルカプロン酸
1HNMR(300 MHz,CDCl3):δ3.66(s,3H), 2.90-2.81(m,1H), 2.60(dd,J=9.3,16.8Hz,1H), 2.47(dd,J=5.3,16.8Hz,1H), 1.62-1.48(m,2H), 1.36-1.26(m,1H), 0.91(dd,J=6.6,11.1Hz,6H)
【0068】
得られた光学活性3-メトキシカルボニル-5-メチルカプロン酸10 mgを0.5 mLのメタノールと0.5 mLのジクロロメタンに溶解し、トリメチルシリルジアゾメタンの10% n-ヘキサン溶液を、溶液が黄色く着色するまで加え、メチルエステル体とした。溶媒をエバポレーターで濃縮し、残渣をn-ヘキサン:2-プロパノール=99.5:0.5溶液1 mLに溶解した。この溶液を以下の条件のHPLCにて分析した。
分析条件:ダイセル化学工業社製Chiralcel−OD,移動相 n-ヘキサン/2-プロパノール=99.5/0.5, 流速1.0 mL/min.,検出器波長220 nm,カラム温度40℃、2μL注入:R.T. S体8.9min.,R体21.0min.
【表4】

【0069】
例39〜42:ロジウム金属錯体触媒を用いた光学活性3−メトキシカルボニル−5−フェニル吉草酸の製造
【化11】

基質としてシンナミリデンコハク酸 1-メチルエステルを用いる以外は例21〜26と同様に行った。
3-メトキシカルボニル-5-フェニル吉草酸
1HNMR(300 MHz,CDCl3):δ7.30-7.14(m,5H), 3.72(s,3H), 2.88-2.82(m,1H), 2.76(dd,J=9.3,16.5Hz,1H), 2.61(t,7.1Hz,2H), 2.46(dd,J=4.5,16.5Hz,1H), 1.73-1.54(m,4H)
【0070】
得られた光学活性3-メトキシカルボニル-5-フェニル吉草酸2 mgを0.5 mLのメタノールと0.5 mLのジクロロメタンに溶解し、トリメチルシリルジアゾメタンの10% n-ヘキサン溶液を、溶液が黄色く着色するまで加え、メチルエステル体とした。溶媒をエバポレーターで濃縮し、残渣をn-ヘキサン:2-プロパノール=95:5溶液1 mLに溶解した。この溶液を以下の条件のHPLCにて分析した。
分析条件:ダイセル化学工業社製Chiralcel−OD,移動相 n-ヘキサン/2-プロパノール=95/5, 流速1.0 mL/min., 検出器波長220nm,カラム温度40℃、2μL注入:R.T. S体6.8min., R体9.0min.
【表5】

【0071】
例43〜45:ロジウム金属錯体触媒を用いた光学活性3−フェニルシクロヘキサノンの製造
【化12】

25 mL三口フラスコにRh(acac)(cod)(6.8 mg, 21.8μmol)、PhB(OH)2(445 mg, 3.65 mmol)を加え、系内をアルゴン置換した。ここに配位子(21.8μmol)を含む無水ジオキサン溶液3.6mL及び2-シクロヘキセノン(0.073 mL, 0.73 mmol)を加えた。混合物を室温で15分間撹拌し、水(0.18 mL)を添加した。反応混合物を100℃で3時間撹拌した後、水9 mLを加え、ジエチルエーテル9 mLで2回抽出した。有機層を合わせて飽和塩化ナトリウム溶液9 mLで洗浄し、エバポレーターで濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=2:1)で処理して、無色オイル状の3-フェニルシクロヘキサンを得た。
得られた光学活性3-フェニルシクロヘキサノン2 mgをn-ヘプタン:2-プロパノール=99:2溶液1 mLに溶解した。この溶液を以下の条件のHPLCにて分析した。
分析条件:ダイセル化学工業社製Chiralcel−ODH,移動相n-ヘプタン:2-プロパノール=99:2, 流速1.0 mL/min.,検出器波長215 nm,カラム温度40℃、2μL注入:R.T. S体36.7min., R体39.6min.
【表6】

【0072】
例46〜48:ロジウム金属錯体触媒を用いた光学活性2−ベンジルアミノ−1−(4−フルオロフェニル)エタノ−ルの製造
【化13】

25 mLナス型フラスコに配位子(0.050mmol)、[RhCl(COD)]2(11.2mg,0.227mmol)を量り取り、アルゴン置換した。脱気メタノール20 mL、トリエチルアミン(0.13mL,0.91mmol)を加えて溶解し、触媒溶液とした。これとは別に、オートクレーブ用のパイレックス(登録商標)試験管に2-ベンジルアミノ-1-(4-フルオロフェニル)エタノン塩酸塩(254 mg,0.908 mmol)を量り取り、撹拌子と共にの試験管を50 mLオートクレーブにセットし、オートクレーブ内を5度窒素置換した。これに調製済みの触媒溶液2 mL(触媒0.00454 mmolに相当)を加え、オートクレーブ内を十分に水素置換した後、1.5 MPaの水素で加圧し、50℃で22時間反応した。反応液を溶媒留去し、残渣を水20 mLとトルエン10 mLで溶解しながら分液漏斗に移し、水層を分取した。水層を、2M-水酸化ナトリウム水溶液でpH>11とし、生じた油状物を酢酸エチル10 mLで抽出した。エバポレーターで濃縮し、光学活性2−ベンジルアミノ−1-(4-フルオロフェニル)エタノ−ルを定量的に得た。
1HNMR(300 MHz,CD3OD):δ7.53-7.40(m,7H), 7.14-7.07(m,2H), 4.98(dd,3.3,10.2Hz,1H), 4.27(s,3H), 3.22-3.03(m,2H)
【0073】
得られた光学活性2-ベンジルアミノ-1-(4-フルオロフェニル)エタノ−ルを2 mg量り取り、n-ヘキサン:2-プロパノール:ジエチルアミン=98:2:0.1 1mLに溶解し、以下の条件でHPLC測定した。
分析条件:ダイセル化学工業社製CHIRALPAK AS-H, n-ヘキサン:2-プロパノール:ジエチルアミン=98:2:0.1、流速1.0 mL/min., 検出器波長265 nm, カラム温度35℃、2μL注入:R.T. S体21.1min.,R体25.3min.
【表7】

【0074】
例49〜62:ロジウム金属錯体触媒を用いたβ−アセトアミドアラニンエステル類の製造
【化14】

オートクレーブ用のパイレックス(登録商標)試験管に還元基質(1.0 mmol)、金属錯体(0.005 mmol)を量り取り、撹拌子と共に50 mLオートクレーブにセットし、オートクレーブ内を窒素置換した。メタノール2 mLを加え、オートクレーブ内を十分に水素置換した後,2 MPaの水素で加圧し、45℃で17時間反応した。反応後、反応液に活性炭0.02 gを加えて30分撹拌し、活性炭を除去してからエバポレーターで濃縮してβ-アセトアミドアラニンエステル類を定量的に得た。
【0075】
得られた(β-アセトアミドアラニンエステル類2 mgを1 mLのメタノールに溶解し、以下の条件のGC或いはHPLCにて分析した。
3-アセチルアミノブタン酸エチルエステル(R=Me, R'=Et)
分析条件:SPELCO社製 column β-DEX 325、カラム温度140℃、注入温度 220℃、検出器温度300℃、移動相 ヘリウム50kPa、スプリット比50:1、FID検出器、5μL注入 R.T. S体25.5min., R体26.4min.
1HNMR(300 MHz,CDCl3):δ6.15(brs,1H), 4.39-4.31(m,1H), 4.21(q,7.2Hz,2H), 2.52(dd,2.8,5.3Hz,2H), 1.96(s,3H), 1.27(t,J=7.2Hz,3H), 1.23(d,J=6.6Hz,3H)
【0076】
3-アセチルアミノペンタン酸メチルエステル(R=Et, R'=Me)
分析条件:SPELCO社製 column β-DEX 325、カラム温度120℃、注入温度 220℃、検出器温度300℃、移動相 ヘリウム50kPa、スプリット比50:1、FID検出器、5μL注入R.T. S体54.4min., R体56.0min.
1HNMR(300 MHz,CDCl3):δ6.09(brs,1H), 4.19-4.12(m,1H), 3.69(s,3H), 2.54(dd,J=3.8,5.0Hz,2H), 1.99(s,3H), 1.62-1.51(m,2H), 0.92(t,J=7.5Hz,3H)
【0077】
3-アセチルアミノヘキサン酸エチルエステル(R=n-Pr, R'=Et)
分析条件:ダイセル化学工業社製Chiralcel OC, n-ヘキサン/2-プロパノール=9/1, 0.5 mL/min., 210 nm,30℃):R.T. S体25.4min., R体30.0min.
1HNMR(300 MHz,CDCl3):δ6.09(d,J=7.8Hz,1H), 4.30-4.19(m,1H), 4.15(q,J=7.2Hz,2H), 2.52(ddd,J=5.1,15.8,23.5Hz,2H), 1.97(s,3H), 1.61-1.29(m,4H), 1.25(t,J=6.8Hz,3H), 0.91(t,J=7.4Hz,3H)
【0078】
3-アセチルアミノ−3−フェニルプロパン酸エチルエステル(R=Ph, R'=Et)
分析条件:ダイセル化学工業社製Chiralcel OD, n-ヘキサン/2-プロパノール=95/5, 1.0 mL/min., 220 nm,40℃):R.T. R体22.5min., S体26.0min.
1HNMR(300 MHz,CDCl3):δ7.36-7.23(m,5H), 6.62(d,J=7.8Hz,1H), 5.46-5.40(m,1H), 4.06(q,J=7.8Hz,2H), 2.96-2.78(m,2H), 2.03(s,3H), 1.16(t,J=7.2Hz,3H)
【0079】
【表8】

【0080】
例63:[Ir(COD)(CLPDO−S)]BF4の製造
イリジウム金属錯体製造は例16と同様に行った。10 mLナス型フラスコに[IrCl(COD)]2 (86.7 mg,0.13 mmol)、テトラフルオロホウ酸銀 (52.7 mg,0.26 mmol)を加え、フラスコ内を窒素置換した。脱気処理済みのエタノール2 mLを加えて10分間撹拌した後ろ過し、残渣をエタノール2 mLで洗浄した。濾液と洗液を合わせ、窒素雰囲気下でCLPDO−S (0.13 g, 0.26 mmol)の入った25 mLナス型フラスコに加え、10分間撹拌した。反応液を残分が1 mL程度になるまで減圧留去し、残分にジエチルエーテル20 mLを加えて析出した固体を濾取乾燥して、赤橙色の固体である表題化合物を得た (0.22 g、収率94%)。
【0081】
例64〜66:ロジウム及びイリジウム金属錯体触媒を用いたN-ベンジル-1-フェニルエチルアミンの製造
【化15】

オートクレーブ用のパイレックス(登録商標)試験管にN-ベンジル-1-フェニルエタンイミン(0.11g, 0.5mmol)、金属錯体(0.005 mmol)を量り取り、撹拌子と共に50 mLオートクレーブにセットし、オートクレーブ内を窒素置換した。メタノール2 mL、Et3N(14μL, 0.1 mmol)を加え、オートクレーブ内を十分に水素置換した後、5.0 MPaの水素で加圧し、40℃で24時間反応した。反応後、反応液に活性炭0.02 gを加えて30分撹拌し、活性炭を除去してからエバポレーターで濃縮して光学活性N−ベンジル−1−フェニルエチルアミンを定量的に得た。
1HNMR(300 MHz, CDCl3):δ7.35-7.21(m,10H), 3.81(q,6.6Hz,1H), 3.63(dd,J=7.2,21.9Hz,2H), 1.37(d,J=6.6Hz,3H)
【0082】
得られたN-ベンジル-1-フェニルエチルアミンは、以下の条件のHPLCにて分析した。
分析条件:ダイセル化学工業社製Chiralcel−OJ,移動相 n-ヘキサン:2-プロパノール:ジエチルアミン=200:1:0.1, 流速0.7 mL/min.,検出器波長220 nm,カラム温度40℃、2μL注入:R.T. S体13.5min., R体14.9min.
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I):
【化1】

〔式中、R1は水素原子又はアルキル基を示し、R2はヒドロキシアルキル基又はトリアリールメチルオキシアルキル基を示すが、R1及びR2が結合して-C(R3)(R4)-(R3及びR4はぞれぞれ独立に水素原子、アルキル基、又は水酸基を示すが、R3及びR4が結合してオキソ基を示してもよい)又は-C(R5)(R6)-O-C(R7)(R8)-(R5、R6、R7、及びR8はぞれぞれ独立に水素原子、アルキル基、又は水酸基を示すが、R5及びR6が結合してオキソ基を示してもよく、並びに/あるいはR7及びR8が結合してオキソ基を示してもよい)を示し;Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4はそれぞれ独立にアリール基(該アリール基は1〜5個の同一又は異なる置換基を有していてもよい)を示し、*1、*2、*3、及び*4は不斉炭素を示し、それぞれの相対立体配置は*1と*2とがシスであり、*3と*4とがシスであり、かつ*2と*3とがトランスである〕で表される化合物。
【請求項2】
Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4がそれぞれ独立にフェニル基(該フェニル基は1〜5個の同一又は異なる置換基を有していてもよい)である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4がそれぞれ独立にフェニル基又は3,5-ジアルキル-4-アルコキシフェニル基である請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R1が水素原子であり、R2がヒドロキシアルキル基である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
R1が水素原子又はアルキル基、R2がR2がトリフェニルメチルオキシアルキル基である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
R1及びR2が結合して-C(R3)(R4)-(R3及びR4はともに水素原子であるか、又はR3及びR4が結合してオキソ基を示す)を示す請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
R1及びR2が結合して-C(R5)(R6)-O-C(R7)(R8)-(R5及びR6はそれぞれ独立にアルキル基を示し、R7及びR8はともに水素原子である)を示す請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の化合物と遷移金属とからなる遷移金属錯体。
【請求項9】
遷移金属がロジウム、ルテニウム、イリジウム、及びパラジウムからなる群から選ばれる請求項8に記載の遷移金属錯体。
【請求項10】
請求項9に記載の遷移金属錯体を含む不斉反応用の触媒。
【請求項11】
オレフィン、イミン、又はケトンの不斉水素化反応、及びエノンへの不斉1,4-付加反応に用いる請求項10に記載の触媒。
【請求項12】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の化合物の2個のリン原子上にそれぞれボランが付加したホスフィンボラン化合物。
【請求項13】
請求項12に記載のホスフィンボラン化合物を塩基で処理する工程を含む請求項1ないし7のいずれか1項に記載の化合物の製造方法。

【公開番号】特開2008−266314(P2008−266314A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76958(P2008−76958)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(390010205)第一ファインケミカル株式会社 (23)
【Fターム(参考)】