説明

新規なピペリジン誘導体及びモノアミン神経伝達物質再取込み阻害剤としてのその使用

本発明は、モノアミン神経伝達物質再取込み阻害剤として有用な新規なピペリジン誘導体に関する。他の態様では、本発明は、治療方法におけるこれらの化合物の使用、及び本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノアミン神経伝達物質再取込み阻害剤として有用な新規なピペリジン誘導体に関する。
【0002】
他の態様では、本発明は、治療方法におけるこれらの化合物の使用、及び本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
セロトニン選択的再取込み阻害剤(SSRI)は現在、うつ病及びパニック障害を含むいくつかのCNS障害の治療に効能を発揮している。SSRIは一般に、効果的で耐容性が良好であり、且つ容易に投与できるものとして、精神科医やプライマリーケア医師によって認知されている。しかし、これらは、いくつかの望ましくない特徴を伴う。
【0004】
したがって、セロトニン再取込み活性とノルアドレナリン及びドーパミン再取込み活性との比などの、モノアミン神経伝達物質のセロトニン、ドーパミン及びノルアドレナリンの再取込みに対する活性に関して最適の薬理学的特性を有する化合物が依然強く必要とされている。
【0005】
特許文献のWO96/06609、WO97/38665、WO00/16778及びWO2003/049741は合わせて、化合物、[4−(3−トリフルオロメトキシベンジル)−ピペリジン−4−イル]−メタノール;4−メトキシメチル−4−(2−メチルベンジル)−ピペリジン;[4−(2−メチルベンジル)−ピペリジン−4−イル]−メタノール;4−メトキシメチル−4−(3−メチルベンジル)−ピペリジン及び(4−ベンジル−ピペリジン−4−イル)−メタノールを開示しているが、これらの化合物の製薬学的用途は開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、モノアミン神経伝達物質再取込み阻害剤としての活性を示す新規な化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その第1の態様では、本発明は、式Iの化合物、
【化1】


その立体異性体のいずれか若しくはその立体異性体の任意の混合物又は薬剤として許容されるその塩(式中、R、R及びRは以下の定義通りである)である。
【0008】
第2の態様では、本発明は、本発明の化合物、その立体異性体のいずれか若しくはその立体異性体の任意の混合物又は薬剤として許容されるその塩を治療有効量で、少なくとも1種の薬剤として許容される担体、賦形剤又は希釈剤とともに含む医薬組成物を提供する。
【0009】
他の態様では、本発明は、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質再取込みの阻害に応答する、ヒトを含む哺乳動物の疾患、障害又は状態を治療、予防又は緩和する医薬組成物を製造するための、本発明の化合物、その立体異性体のいずれか若しくはその立体異性体の任意の混合物又は薬剤として許容されるその塩の使用を提供する。
【0010】
さらに他の態様では、本発明は、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質再取込みの阻害に応答する、ヒトを含む動物の生体の疾患、障害又は状態の治療、予防又は緩和するための方法であって、それを必要とする動物の生体に本発明の化合物、その立体異性体のいずれか若しくはその立体異性体の任意の混合物又は薬剤として許容されるその塩を治療有効量で投与するステップを含む方法に関する。
【0011】
本発明の他の目的は、以下の詳細な説明及び実施例から当業者には明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ピペリジン誘導体
その第1の態様では、本発明は、式Iの化合物、
【化2】


その立体異性体のいずれか若しくはその立体異性体の任意の混合物又は薬剤として許容されるその塩
[式中、
Rは水素又はアルキルを表し、
上記アルキルはハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル及びアルキニルからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で任意選択で置換されており、
はアリール基を表し、
上記アリール基は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルコキシアルキル、シクロアルコキシアルキル、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル、アルキニル、−NR’R’’、−(C=O)NR’R’’又は−NR’(C=O)R’’(R’及びR’’は互いに独立に水素又はアルキルである)からなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で任意選択で置換されており、
は水素、アルキル又はアリール基を表し、
上記アルキル又はアリール基は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルコキシアルキル、シクロアルコキシアルキル、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル、アルキニル、−NR’R’’、−(C=O)NR’’’R’’’’又は−NR’’’(C=O)R’’’’(R’’’及びR’’’’は互いに独立に水素又はアルキルである)からなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で任意選択で置換されており、
但し、上記化合物は、
[4−(3−トリフルオロメトキシベンジル)−ピペリジン−4−イル]−メタノール;
4−メトキシメチル−4−(2−メチルベンジル)−ピペリジン;
[4−(2−メチルベンジル)−ピペリジン−4−イル]−メタノール;
4−メトキシメチル−4−(3−メチルベンジル)−ピペリジン;又は
(4−ベンジル−ピペリジン−4−イル)−メタノールではない]
を提供する。
【0013】
一実施形態では、Rは水素又はアルキルを表す。特別の実施形態では、Rは水素を表す。
【0014】
他の実施形態では、Rは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ及びアルコキシからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で任意選択で置換されているフェニル基を表す。
【0015】
特別の実施形態では、Rはフェニルを表す。他の実施形態では、Rは二置換のフェニル、例えば2,3−ジクロロフェニル又は3,4−ジクロロフェニルなどのジクロロフェニルを表す。
【0016】
他の実施形態では、Rは任意選択で置換されているナフチル基を表す。特別の実施形態では、Rはナフタレン−2−イルなどのナフチルを表す。
【0017】
さらに他の実施形態では、Rは水素又はアルキルを表す。特別の実施形態では、Rは水素を表す。他の実施形態では、Rはメチル又はエチルなどのアルキルを表す。
【0018】
他の実施形態では、Rは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ及びアルコキシからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で任意選択で置換されているフェニル基を表す。
【0019】
特別の実施形態では、Rはフェニルを表す。他の実施形態では、Rは二置換のフェニル、例えば2,3−ジクロロフェニル又は3,4−ジクロロフェニルなどのジクロロフェニルを表す。
【0020】
特別の実施形態では、本発明の化合物は、
4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−メトキシメチル−ピペリジン;
[4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペリジン−4−イル]−メタノール;
4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−エトキシメチル−ピペリジン;
4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−フェノキシメチル−ピペリジン;
4−(2,3−ジクロロ−ベンジル)−4−メトキシメチル−ピペリジン;
4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−(2,3−ジクロロ−フェノキシメチル)−ピペリジン;
4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−(3,4−ジクロロ−フェノキシメチル)−ピペリジン;
4−ベンジル−4−(3,4−ジクロロ−フェノキシメチル)−ピペリジン;
4−ベンジル−4−(2,3−ジクロロ−フェノキシメチル)−ピペリジン;
4−メトキシメチル−4−ナフタレン−2−イルメチル−ピペリジン;
又は薬剤として許容されるその塩である。
【0021】
上記実施形態の2つ以上のどんな組合せも本発明の範囲内であるものとする。
【0022】
置換基の定義
本発明の状況では、ハロはフルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを表す。
【0023】
本発明の状況では、アルキル基は一価の飽和、直鎖又は分鎖炭化水素鎖を表す。炭化水素鎖は、好ましくはペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル及びイソヘキシルを含む、1〜6個の炭素原子(C1〜6−アルキル)を含む。好ましい実施形態では、アルキルは、ブチル、イソブチル、第二ブチル、及び第三ブチルを含むC1〜4−アルキル基を表す。本発明の他の好ましい実施形態では、アルキルはC1〜3−アルキル基を表し、具体的にはこれは、メチル、エチル、プロピル又はイソプロピルである。
【0024】
本発明の状況では、アルケニル基は、ジエン、トリエン及びポリエンを含む、1つ又は複数の二重結合を含む炭素鎖を表す。好ましい実施形態では、本発明のアルケニル基は、少なくとも1つの二重結合を含む2〜6個の炭素原子(C2〜6−アルケニル)を含む。最も好ましい実施形態では、本発明のアルケニル基は、エテニル;1−若しくは2−プロペニル;1−、2−若しくは3−ブテニル、又は1,3−ブタジエニル;1−、2−、3−、4−若しくは5−ヘキセニル、1,3−ヘキサジエニル、又は1,3,5−ヘキサトリエニルである。
【0025】
本発明の状況では、アルキニル基はジイン、トリイン及びポリインを含む、1つ又は複数の三重結合を含む炭素鎖を表す。好ましい実施形態では、本発明のアルキニル基は少なくとも1つの三重結合を含む2〜6個の炭素原子(C2〜6−アルキニル)を含む。最も好ましい実施形態では、本発明のアルキニル基は、エチニル;1−、又は2−プロピニル;1−、2−若しくは3−ブチニル、又は1,3−ブタジイニル;1−、2−、3−、4−ペンチニル、又は1,3−ペンタジイニル;1−、2−、3−、4−若しくは5−ヘキシニル、1,3−ヘキサジイニル又は1,3,5−ヘキサトリイニルである。
【0026】
本発明の状況では、シクロアルキル基はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルを含む、好ましくは3〜7個の炭素原子(C3〜7−シクロアルキル)を含む環状アルキル基を表す。
【0027】
アルコキシは、アルキルが上記と同様であるO−アルキルである。
【0028】
シクロアルコキシは、シクロアルキルが上記と同様であるO−シクロアルキルを意味する。
【0029】
シクロアルキルアルキルは上記のようなシクロアルキル及び上記のようなアルキルを意味し、例えばシクロプロピルメチルを意味する。
【0030】
本発明の状況では、アリール基は、フェニル、ナフチル(1−ナフチル又は2−ナフチル)又はフルオレニルなどの炭素環式芳香族環系を表す。
【0031】
薬剤として許容される塩
本発明の化合物は、目的とする投与に適した任意の形態で提供することができる。適切な形態には、本発明の化合物の薬剤として(すなわち、生理学的に)許容される塩、及びプレドラッグすなわちプロドラッグの形態が含まれる。
【0032】
薬剤として許容される付加塩には、これらに限定されないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、アコニット酸塩、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、桂皮酸塩、クエン酸塩、エンボン酸塩、エナント酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、フタル酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等などの非毒性無機及び有機酸付加塩が含まれる。このような塩は、当業界でよく知られ且つ記載されている手順で形成させることができる。
【0033】
薬剤として許容されるとは見なされないシュウ酸などの他の酸は、本発明の化合物及び薬剤として許容されるその酸付加塩を得るための中間体として有用な塩の調製に有用である。
【0034】
本発明の化合物の薬剤として許容されるカチオン塩の例には、これらに限定されないが、アニオン基を含む本発明の化合物のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、リチウム、コリン、リシニウム及びアンモニウムの塩等が含まれる。そうしたカチオン塩は当業界でよく知られており、且つ記載されている手順で形成させることができる。
【0035】
本発明の状況では、N含有化合物の「オニウム塩」も薬剤として許容される塩と考えられる。好ましい「オニウム塩」には、アルキル−オニウム塩、シクロアルキルオニウム塩及びシクロアルキルアルキル−オニウム塩が含まれる。
【0036】
本発明の化合物のプレ又はプロドラッグの形態の例には、親化合物の1つ又は複数の反応性の基か又は誘導体化可能な基において改変された化合物を含む、本発明による物質の適切なプロドラッグの例が含まれる。特に関係のあるものは、カルボキシル基、ヒドロキシル基又はアミノ基において改変された化合物である。適切な誘導体の例はエステル又はアミドである。
【0037】
本発明の化合物は、水、エタノールなどの薬剤として許容される溶媒とともに、溶解性又は不溶性の形態で提供することができる。溶解性の形態には、一水和物、二水和物、半水和物、三水和物、四水和物などの水和した形態も含まれる。一般に本発明のためには、溶解性の形態は不溶性の形態と同等と考えられる。
【0038】
立体異性体
当業者は、本発明の化合物が、鏡像異性体、ジアステレオマー及びシス−トランス−異性体を含む、異なった立体異性体の形態で存在することができることを理解されよう。
【0039】
本発明は、そうしたすべての立体異性体、及びラセミ混合物を含むその任意の混合物を含む。
【0040】
ラセミ体は、既知の方法及び技術で光学対掌体に分割することができる。鏡像異性化合物(鏡像異性中間体を含む)を分離する1つの方法は、キラル酸の場合、光学的に活性なアミンを用い、酸で処理してジアステレオマーの分割された塩を放出させることによるものである。ラセミ化合物を光学対掌体に分割させる別の方法は、光学的に活性なマトリックスを用いてクロマトグラフィーにかける方法である。したがって、本発明のラセミ化合物は、例えば、D−又はL−(酒石酸、マンデル酸又はカンファースルホン酸)塩の分別晶出によって、その光学対掌体に分割することができる。
【0041】
本発明の化合物は、本発明の化合物を(+)又は(−)フェニルアラニン、(+)又は(−)フェニルグリシン(+)又は(−)カンファン酸から誘導されるものなどの光学的に活性な活性化カルボン酸と反応させてジアステレオマーアミドを生成させることによるか、或いは、本発明の化合物を光学的に活性なクロロホルメート等と反応させてジアステレオマーカルバメートを生成させることによって分割することもできる。
【0042】
光学異性体を分割させる他の方法は当業界で周知である。そうした方法には、Jaques J,Collet A,&Wilen Sによる「鏡像異性体、ラセミ化合物及び分割(Enantiomers,Racemates,and Resolutions)」、John Wiley and Sons,New York(1981年)に記載されているものなどが含まれる。
【0043】
光学的活性化合物は、光学的に活性な出発原料又は中間体からも調製することができる。
【0044】
標識化合物
本発明の化合物は、その標識された形態でも標識されていない形態でも使用することができる。本発明の状況では、標識化合物は、通常自然界で見られる原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子で置き換えられた1つ又は複数の原子を有する。標識は前記化合物の定量的検出を容易にすることができる。
【0045】
本発明の標識化合物は、様々な診断法において、またインビボでの受容体画像化のために、診断手段、放射性トレーサー又はモニター薬剤として有用である。
【0046】
本発明の標識異性体は、少なくとも1種又は複数の放射性核種を標識として含むことが好ましい。陽電子放射性核種はすべて使用に供される候補である。本発明の状況では、放射性核種は好ましくは、H(重水素)、H(三重水素)、11C、13C、14C、131I、125I、123I及び18Fから選択される。
【0047】
本発明の標識異性体を検出するための物理的方法は、ポジション放射断層撮影法(PET)、単一光子画像化コンピュータ断層撮影法(SPECT)、磁気共鳴分光法(MRS)、磁気共鳴映像法(MRI)及びコンピュータX線体軸断層撮影法(CAT)又はその組合せから選択することができる。
【0048】
調製方法
本発明の化合物は、化学合成のための通常の方法、例えば、実施例に記載されているものなどによって調製することができる。本出願で説明する方法のための出発原料は、周知であるか又は市販の化学品から通常の方法によって容易に調製することができる。
【0049】
本発明のある化合物は、通常の方法を用いて本発明の別の化合物に転換させることもできる。
【0050】
本明細書で述べる反応の最終生成物は、従来技術、例えば抽出、結晶化、蒸留、クロマトグラフィー等で単離することができる。
【0051】
生物活性
本発明の化合物は、例えばWO97/30997に記載されているものなどのシナプトソームでのモノアミン系のドーパミン、ノルアドレナリン及びセロトニンの再取込みを阻害するその能力を試験することができる。これらの試験で観察されるバランスのとれた活性を基にすると、本発明の化合物は、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質再取込みの阻害に応答する、ヒトを含む哺乳動物の疾患若しくは障害又は状態の治療、予防又は緩和のために有用であると思われる。
【0052】
特別の実施形態では、本発明の化合物は、気分障害、うつ病、非定型うつ病、疼痛に続くうつ病、大うつ病性障害、気分変調性障害、双極性障害、双極性障害I型、双極性障害II型、循環病、全身状態に起因する気分障害、物質誘発性気分障害、偽認知症、ガンザー症候群、強迫性障害、パニック障害、広場恐怖症を伴わないパニック障害、広場恐怖症を伴うパニック障害、パニック障害の履歴を伴わない広場恐怖症、パニック発作、記憶障害、記憶喪失、注意欠陥過活動性障害、肥満、不安神経症、全般性不安障害、摂食障害、パーキンソン病、パーキンソニズム、認知症、加齢による認知症、老年性認知症、アルツハイマー病、ダウン症候群、後天性免疫不全症候群認知症複合、加齢に伴う記憶機能障害、特定恐怖症、社会恐怖症、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、薬物依存症、薬物乱用、薬物乱用傾向、コカイン乱用、ニコチン中毒、たばこ乱用、飲酒癖、アルコール依存症、窃盗癖、中毒性物質使用の停止によって引き起こされる禁断症候群、疼痛、慢性疼痛、炎症性痛覚、神経因性疼痛、片頭痛、緊張性頭痛、慢性緊張性頭痛、うつ病に伴う疼痛、線維筋痛、関節炎、変形性関節症、関節リウマチ、背痛、癌性疼痛、過敏性腸症候群、過敏性腸症候群、術後痛、乳房切除後疼痛症候群(PMPS)、脳卒中後疼痛、薬物誘発性神経障害、糖尿病性神経障害、交感神経依存性疼痛、三叉神経痛、歯痛、筋膜痛、幻肢痛、過食症、月経前症候群、月経前不快気分、黄体期晩期症候群、心的外傷症候群、慢性疲労症候群、遷延性植物状態、尿失禁、緊張性尿失禁、急迫性尿失禁、夜尿、性的機能不全、早漏、勃起困難、勃起障害、早期女性オルガスム、下肢静止不能症候群、周期性四肢運動障害、摂食障害、神経性無食欲症、睡眠障害、広汎性発達障害、自閉症、アスペルガー障害、レット障害、小児期崩壊性障害、学習障害、運動能力障害、無言症、抜毛癖、ナルコレプシー、脳卒中後うつ病、脳卒中誘発性脳損傷、脳卒中誘発性神経損傷、ジルドラトゥレット症候群、耳鳴り、チック障害、身体醜形障害、反抗的行為障害又は脳卒中後能力障害の治療、予防又は緩和に有用であると思われる。好ましい実施形態では、この化合物は、うつ病の治療、予防又は緩和に有用であると思われる。
【0053】
有効薬剤成分(API)の適切な投与量は現状では、1日に約0.1〜約1000mg API、より好ましくは1日に約10〜約500mg API、最も好ましくは1日に約30〜約100mg APIの範囲内であると考えられるが、それは、正確な投与の方式、投与する形態、考えられる兆候、対象、特に関係する対象の体重、さらには担当の医師又は獣医の好み又は経験に依存する。
【0054】
本発明の好ましい化合物は、サブミクロモル及びミクロモルの範囲、すなわち1未満〜約100μMで生物活性を示す。
【0055】
医薬組成物
他の態様では、本発明は、本発明の化合物を治療有効量で含む新規な医薬組成物を提供する。
【0056】
治療で用いるために、本発明の化合物を、そのまま生の化合物の形態で投与することができるが、活性成分を任意選択で生理学的に許容される塩の形態で、1種又は複数の補助剤、賦形剤、担体、緩衝剤、希釈剤、及び/又は他の慣用的な助剤とともに医薬組成物中に導入することが好ましい。
【0057】
好ましい実施形態では、本発明は、本発明の化合物又は薬剤として許容されるその塩若しくは誘導体を、1種又は複数の薬剤として許容される担体、及び当業界で周知であり且つ用いられている任意選択の他の治療及び/又は予防成分とともに含む医薬組成物を提供する。その担体は、処方物の他の成分と適合しており且つそのレシピエントに対して有害でないという意味で「許容される」ものでなければならない。
【0058】
本発明の医薬組成物は、経口、経直腸、気管支、経鼻、肺、局所(頬側及び舌下を含む)、経皮、経膣又は非経口(皮膚、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、動脈内、脳内、眼内注射又は注入を含む)投与に適したもの、或いは、粉末及び液体エアロゾル投与を含む吸入又は吹送によって、又は持続放出システムによって投与するのに適した形態のものであってよい。持続放出システムの適切な例には本発明の化合物を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、そのマトリックスは成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態であってよい。
【0059】
したがって、本発明の化合物を、通常の補助剤、担体、又は希釈剤とともに、医薬組成物及びその単位投薬の形態の中に含ませることができる。そうした形態には、固体剤形、具体的には錠剤、充填カプセル剤、粉末及びペレットの形態、並びに液体剤形、具体的には水性又は非水性の液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、及びこれらを充填したカプセル剤(これらはすべて経口使用のため)、経直腸投与用の坐薬並びに非経口使用のための滅菌注射剤が含まれる。そうした医薬組成物及びその単位剤形は、他の活性化合物又は成分を含むか又はそれを含まないで、通常の割合で通常の構成成分を含むことができ、そうした単位剤形は、使用する所望の1日投与量範囲に対応する適切な有効量の任意の活性成分を含むことができる。
【0060】
本発明の化合物は、広い範囲の経口及び非経口剤形で投与することができる。当業者には、以下の剤形が、活性成分として、本発明の化合物か又は本発明の化合物の薬剤として許容される塩を含むことができることは明らかであろう。
【0061】
本発明の化合物から医薬組成物を調製するためには、薬剤として許容される担体は固体であっても液体であってもよい。固体製剤には、粉剤、錠剤、丸薬、カプセル剤、カシェ剤、坐薬及び分散性顆粒が含まれる。固体担体は希釈剤、香味剤、可溶化剤、滑剤、懸濁化剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、又はカプセル化材料としても作用できる1種又は複数の物質であってよい。
【0062】
粉剤では、担体は微粉化された活性成分との混合物である微粉化固体である。
【0063】
錠剤では、活性成分は、必要な結合能力を有する担体と適当な割合で混合され、所望の形状及びサイズに圧縮される。
【0064】
粉剤及び錠剤は5%又は10%〜約70%の活性化合物を含むことが好ましい。適切な担体は炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、でんぷん、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ワックス、ココアバター等である。「製剤」という用語は、活性化合物を、カプセル剤を提供する担体としてのカプセル化材料を用いて処方することを含むものとする。そのカプセル剤では、活性成分は(複数の担体を用いるか用いないで)担体で囲繞され、ひいてはそれと合体している。同様に、カシェ剤やトローチ剤も含まれる。錠剤、粉剤、カプセル剤、丸薬、カシェ剤及びトローチ剤は、経口投与に適した固体剤形で用いることができる。
【0065】
坐薬を調製するためには、脂肪酸グリセリド又はココアバターの混合物低融点ワックスをまず溶融し、攪拌しながら活性成分をその中に均一に分散させる。次いでその溶融した均一混合物を好都合なサイズの鋳型に注ぎ込み、冷却して固化させる。
【0066】
経膣投与に適した組成物は、活性成分に加えて当業界で適切であることが知られている担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、泡状物又は噴霧剤として提供することができる。
【0067】
液体製剤には、液剤、懸濁剤及び乳剤、例えば水又は水−プロピレングリコール液剤が含まれる。例えば、非経口の注入用液体製剤は水性ポリエチレングリコール溶液の液剤として処方することができる。
【0068】
したがって、本発明による化合物は非経口投与用(例えば、注入法、例えばボーラス注入法又は持続注入法によって)に処方することができ、アンプル、事前充填注射器、少容量注入液の単位用量の形態か、又は添加保存剤を含む複数用量容器で提供することができる。その組成物は、油性又は水性媒体中の懸濁剤、液剤、又は乳剤の形態としてそうした形態をとることができ、また、懸濁化剤、安定化剤/又は分散剤などの処方剤を含むことができる。或いは、活性成分は、使用前に適切な媒体、例えば滅菌した発熱物質非含有水で構成するために、滅菌固体の無菌単離法又は溶液から凍結乾燥法によって得られた粉末の形状であってよい。
【0069】
経口使用に適した水性液剤は、活性成分を水に溶解させ、所望の適切な着色剤、香味剤、安定化剤増粘剤を加えて調製することができる。
【0070】
経口使用に適した水性懸濁剤は、微粉化した活性成分を、天然ゴム若しくは合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、又は他のよく知られた懸濁化剤などの粘性材料を用いて水に分散させることによって作製することができる。
【0071】
使用の直前に経口投与用の液体製剤に転換させることを目的とした固体製剤も含まれる。そうした液状物には、液剤、懸濁剤及び乳剤が含まれる。活性成分に加えて、これらの製剤は、着色剤、香味剤、安定剤、緩衝剤、人工甘味料及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤等を含むことができる。
【0072】
表皮への局所投与のために、本発明の化合物を、軟膏、クリーム剤若しくはローション剤として又は経皮パッチとして処方することができる。軟膏及びクリーム剤は、例えば、適切な増粘剤及び/又はゲル化剤を加えた水性又は油性ベースで処方することができる。ローション剤は水性又は油性ベースで処方することができ、且つ一般に1種又は複数の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、又は着色剤を含むことになる。
【0073】
口内への局所投与に適した組成物には、香味ベース(通常スクロース及びアカシア又はトラガカント)中に活性薬剤を含むトローチ剤;ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシアなどの不活性ベース中に活性成分を含む芳香錠並びに適切な液状担体中に活性成分を含むうがい薬が含まれる。
【0074】
液剤又は懸濁剤は、従来の手段、例えば点滴器、ピペット又は噴霧器を用いて鼻腔に直接施用される。組成物は単一又は複数の用量形態で提供することができる。
【0075】
気道への投与は、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン若しくはジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切なガスなどの適切な噴射剤を有する加圧パックの形で活性成分が提供されるエアロゾル処方物によって行うこともできる。エアロゾルは、レシチンなどの界面活性剤を含むことも好都合である。薬物の用量は、計測式の弁を用いて制御することができる。
【0076】
或いは、活性成分を、乾燥粉末、例えばラクトース、でんぷん、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのでんぷん誘導体及びポリビニルピロリドン(PVP)などの適切なパウダーベース中の化合物の混合粉末の形態で提供することができる。粉末担体は、鼻腔内でゲルを形成することが好都合である。粉末組成物は、例えばゼラチンでできたカプセル若しくはカートリッジ、又は吸入器を用いてそこから粉剤を投与できるブリスター包装などの単位用量形態で提供することができる。
【0077】
経鼻投与組成物を含む気道へ投与するための組成物では、化合物は、例えば5ミクロン又はそれ以下のオーダーの小さい粒子径を有することになる。そうした粒子径は、例えば微粒子化によるなどの当業界で周知の手段によって得ることができる。
【0078】
望むなら、活性成分を持続放出させるようにした組成物を用いることができる。
【0079】
製剤は、好ましくは単位剤形のものである。そうした形態では、製剤は、適切な量の活性成分を含む単位用量にさらに分割される。単位剤形は、包装された製剤であってよく、その包装は、包装された錠剤、カプセル剤、及びバイアル又はアンプル中の粉剤などの離散量の製剤を含む。また、単位剤形は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、又はトローチ剤自体であってもよく、或いは、これらのいずれかを適切な数で包装した形態のものであってよい。
【0080】
好ましい組成物は、経口投与のためには錠剤又はカプセル剤にしたものであり、静脈内投与及び持続注入のためには液剤にしたものである。
【0081】
処方及び投与のための技術に関するさらなる詳細は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing Co.,Easton,PA)の最新版に見ることができる。
【0082】
治療有効用量は、症状又は状態を改善する活性成分の量を指す。治療効能及び毒性、例えばED50及びLD50は、細胞培養又は実験動物での標準的な薬理学的手法によって判定することができる。治療効果と毒性効果の用量比は治療指数であり、比LD50/ED50で表すことができる。高い治療指数を示す医薬組成物が好ましい。
【0083】
投与される用量はもちろん、治療を受ける個体の年齢、体重及び状態並びに投与経路、剤形及びレジメンに応じて注意深く調節されなければならず、その正確な投薬量はもちろん、実施する専門家によって決定されなければならない。
【0084】
実際の投薬量は、治療を受ける疾患の特徴及び重篤度に依存し、それは医師の裁量の範囲内であり、所望の治療効果が得られるように、本発明の具体的な環境への投薬量の用量設定をすることによってその投薬量を変更することができる。しかし現在は、個別用量当たり、約0.1〜約500mg、好ましくは約1〜約100mg、最も好ましくは約1〜約10mgの活性成分を含む医薬組成物が治療処置に適していると考えられる。
【0085】
活性成分は、1日当たり1用量又は複数用量で投与することができる。ある種の例では、0.1μg/kg i.v.(静脈内)及び1μg/kg p.o.(経口)しかない投薬量で満足すべき結果が得られる。投与範囲の上限は現在、約10mg/kg i.v.及び100mg/kg p.o.であると考えられる。好ましい範囲は約0.1μg/kg〜約10mg/kg/日i.v.及び約1μg/kg〜約100mg/kg/日p.o.である。
【0086】
治療方法
他の態様では、本発明は、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質再取込みに応答する、ヒトを含む動物の生体の疾患若しくは障害又は状態の治療、予防又は緩和のための方法であって、それを必要とするヒトを含む動物の生体に本発明の化合物を有効量で投与することを含む方法を提供する。
【0087】
適切な投与範囲は現状では、例によって正確な投与の方式、投与する形態、投与を方向づける兆候、関係する対象及び関係する対象の体重、さらには担当の医師又は獣医の好み又は経験に応じて、1日に0.1〜1000mg、1日に10〜500mg、特に1日に30〜100mgの範囲であると考えられる。
【実施例】
【0088】
以下の実施例を参照して本発明をさらに説明するが、これらは、特許請求する本発明の範囲を限定しようとするものではまったくない。
【0089】
一般手順:空気に対して敏感な試薬又は中間体が関連する反応はすべて、窒素雰囲気下、無水溶媒中で実施した。後処理工程で硫酸ナトリウムを乾燥剤として用い、減圧下で溶媒を蒸発させた。
【0090】
(実施例1)
【化3】


ピペリジン−1,4−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル4−エチルエステル(1)
ジ−tert−ブチルジカーボネート(5.25g、23.8ミリモル)をジオキサン/水(2:1、90mL)中のエチル4−ピペリジンカルボキシレート(2.5g、15.9ミリモル)及び炭酸カリウム(4.4g、31.8ミリモル)の溶液に加え、終夜攪拌した。ジオキサンを蒸発させ、水相を酢酸エチル(4×40mL)で抽出した。一緒にした有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、蒸発させてピペリジン−1,4−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル4−エチルエステル(4.76g)を粗生成物として得た。酢酸エチル−ヘプタンを溶離液としてフラッシュクロマトグラフィーにかけてピペリジン−1,4−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル4−エチルエステルを得た(3.99g、98%)。
【0091】
(実施例2)
【化4】


4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペリジン−1,4−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル4−エチルエステル(2a)
n−ブチルリチウム(ヘキサン、6.56mL中に1.6M、10.5ミリモル)を、無水テトラヒドロフラン(15mL)中のジイソプロピルアミン(1.37mL、9.76ミリモル)の冷却(−78℃)溶液に滴下した。反応混合物を0℃まで加温し、30分間攪拌し、−78℃に冷却した。無水テトラヒドロフラン(10mL)中のピペリジン−1,4−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル4−エチルエステル(1.93g、7.5ミリモル)の溶液を滴下した。反応混合物を−30℃で30分間攪拌し、−78℃に冷却した。無水テトラヒドロフラン(10mL)中の3,4−ジクロロベンジルブロミド(1.69mL、11.26ミリモル)の溶液を加え、反応混合物をこの温度で1.5時間攪拌し、室温に加温し、終夜攪拌した。
【0092】
反応混合物を5%クエン酸でクエンチし、水層を酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。一緒にした有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、蒸発させて粗生成物を得た。酢酸エチル−ヘプタンを溶離液としてフラッシュクロマトグラフィーにかけて4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペリジン−1,4−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル4−エチルエステル(1.05g、85%)を黄色油状物として得た。
【0093】
実施例2に従って、化合物2b〜2dを、表1に示す種々の求電子試薬を用いて調製した。
【化5】

【0094】
表1
【表1】

【0095】
(実施例3)
【化6】


4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−ヒドロキシメチル−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(3a)
リチウムアルミニウムヒドリド(ジエチルエーテル中に1M、2.28ml、2.28ミリモル)を、無水テトラヒドロフラン(30mL)中の4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペリジン−1,4−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル4−エチルエステル(950mg、2.28ミリモル)の氷冷溶液に滴下し、1時間攪拌した。反応液を、塩化アンモニウムで注意深くクエンチした。水層を酢酸エチル(3×20mL)で抽出した。一緒にした有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、蒸発させて粗生成物を得た。酢酸エチル−ヘプタンを溶離液としてフラッシュクロマトグラフィーにかけて、4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−ヒドロキシメチル−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(668mg、78%)を白色泡状物として得た。
【0096】
実施例3と同様にして、化合物3b〜3dを表2に示す出発原料から調製した。
【化7】

【0097】
表2
【表2】

【0098】
(実施例4)
【化8】


4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−メトキシメチル−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(4aa)
カリウム−tert−ブトキシド(44mg、0.39ミリモル)を、無水テトラヒドロフラン(10mL)中の4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−ヒドロキシメチル−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(140mg、0.29ミリモル)の氷冷溶液に加えた。反応混合物を室温で15分間攪拌し、0℃に冷却し、ヨウ化メチル(55.3μL、0.96ミリモル)を加え、続いて室温で30分間攪拌した。反応液を水でクエンチし、ブラインを加え、続いて酢酸エチル(4×30mL)で抽出した。一緒にした有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、蒸発させて粗生成物を得た。酢酸エチル−ヘプタンを溶離液としてフラッシュクロマトグラフィーにかけて4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−メトキシメチル−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(66mg、75%)を油状物として得た。
【0099】
実施例4に従って、化合物4ab、4ba及び4daを表3に示す出発原料から調製した。
【0100】
塩基として水素化ナトリウム、溶媒としてジメチルスルホキシドを用いて化合物4ac、4ad、4ae、4cd及び4ceを作製し、反応混合物を室温で終夜攪拌した。
【化9】

【0101】
表3
【表3】

【0102】
(実施例5)
【化10】


4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−メトキシメチル−ピペリジンフマル酸塩(5aa)
ジクロロメタン(10mL)中の4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−メトキシメチル−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(202mg、0.52ミリモル)の氷冷溶液に、ジクロロメタン(4mL)中のトリフルオロ酢酸(4mL)溶液を加えた。反応混合物を1時間攪拌し、水酸化ナトリウム水溶液(2N)でクエンチし、ジクロロメタン(4×30mL)で抽出した。一緒にした有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、蒸発させて4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−メトキシメチル−ピペリジン(145mg、97%)を無色油状物として得た。この油状物をメタノールに溶解し、メタノール(1mL)中のフマル酸(55.5mg、0.48ミリモル)を加え、この混合物を真空下で濃縮して4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−メトキシメチル−ピペリジンフマル酸塩(200mg)を白色固体として得た。Mp158.1〜162.2℃。
【0103】
実施例5に従って、表4のすべての化合物を表4に示す出発原料から調製した。
【化11】

【0104】
表4
【表4】

【0105】
[4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペリジン−4−イル]−メタノール(5a)
ジクロロメタン(3mL)中の4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−ヒドロキシメチル−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(55mg、0.15ミリモル)の氷冷溶液に、ジクロロメタン(1mL)中のトリフルオロ酢酸(1mL)の溶液を加えた。反応混合物を1時間攪拌し、真空下で濃縮した。酢酸エチル及びジエチルエーテルを用いて同時蒸発させて、トリフルオロ酢酸エステルと合わさった目的化合物の55mgの混合物を無色油状物として得た。この油状物を3Mの水酸化ナトリウムに溶解し、40〜45℃で2時間攪拌し、続いてジエチルエーテル(3×20mL)で抽出した。一緒にした有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、蒸発させて[4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペリジン−4−イル]−メタノール(28mg、70%)を茶色がかった固体として得た。Mp147.7〜148.7℃。
【0106】
方法Aに従って、4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−エトキシメチル−ピペリジンフマル酸塩(5ab)を、ヨウ化メチルの代わりにヨウ化エチルを用いて調製した。Mp147.4〜150.6℃。
4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−フェノキシメチル−ピペリジン(5ac)
Mp165〜167℃。
4−(2,3−ジクロロ−ベンジル)−4−メトキシメチル−ピペリジン(5ba)
Mp167〜168.4℃。
4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−(2,3−ジクロロ−フェノキシメチル)−ピペリジン(5ad)
Mp93.9〜94.6℃。
4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−(3,4−ジクロロ−フェノキシメチル)−ピペリジン(5ae)
Mp166.3〜168.9℃。
4−ベンジル−4−(3,4−ジクロロ−フェノキシメチル)−ピペリジン(5ce)
Mp77.7〜79.3℃。
4−ベンジル−4−(2,3−ジクロロ−フェノキシメチル)−ピペリジン(5cd)
Mp109.4〜110.8℃。
4−メトキシメチル−4−ナフタレン−2−イルメチル−ピペリジン(5da)
Mp139〜142℃。
【0107】
試験実施例
インビトロでの阻害活性
複数の化合物について、WO97/16451に記載されているシナプトソームにおける、モノアミン神経伝達物質ドーパミン(DA)ノルアドレナリン(NA)及びセロトニン(5−HT)の再取込みを阻害するその能力を試験した。
【0108】
試験値をIC50H−DA、H−NA又はH−5−HTの特異的結合を50%阻害する試験物質の濃度(μM))として示す。
【0109】
本発明の選ばれた化合物を試験して得られた試験結果を以下の表に示す。
【0110】
表1
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、
【化1】


その立体異性体のいずれか若しくはその立体異性体の任意の混合物又は薬剤として許容されるその塩
[式中、
Rは水素又はアルキルを表し、
前記アルキルはハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル及びアルキニルからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で任意選択で置換されており、
はアリール基を表し、
前記アリール基は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルコキシアルキル、シクロアルコキシアルキル、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル、アルキニル、−NR’R’’、−(C=O)NR’R’’又は−NR’(C=O)R’’(R’及びR’’は互いに独立に水素又はアルキルである)からなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で任意選択で置換されており、
は水素、アルキル又はアリール基を表し、
前記アルキル又はアリール基は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルコキシアルキル、シクロアルコキシアルキル、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル、アルキニル、−NR’R’’、−(C=O)NR’’’R’’’’又は−NR’’’(C=O)R’’’’(R’’’及びR’’’’は互いに独立に水素又はアルキルである)からなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で任意選択で置換されており、
但し、前記化合物は、
[4−(3−トリフルオロメトキシベンジル)−ピペリジン−4−イル]−メタノール、
4−メトキシメチル−4−(2−メチルベンジル)−ピペリジン、
[4−(2−メチルベンジル)−ピペリジン−4−イル]−メタノール、
4−メトキシメチル−4−(3−メチルベンジル)−ピペリジン又は
(4−ベンジル−ピペリジン−4−イル)−メタノールではない]。
【請求項2】
Rが水素又はアルキルを表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がフェニル基を表し、
前記フェニル基は、
ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ及びアルコキシ
からなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で任意選択で置換されている
請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
が任意選択で置換されているナフチル基を表す
請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項5】
が水素又はアルキルを表す
請求項1から4までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
がフェニル基を表し、
前記フェニル基は、
ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ及びアルコキシ
からなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で任意選択で置換されている
請求項1から4までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−メトキシメチル−ピペリジン;
[4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペリジン−4−イル]−メタノール;
4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−エトキシメチル−ピペリジン;
4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−フェノキシメチル−ピペリジン;
4−(2,3−ジクロロ−ベンジル)−4−メトキシメチル−ピペリジン;
4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−(2,3−ジクロロ−フェノキシメチル)−ピペリジン;
4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−(3,4−ジクロロ−フェノキシメチル)−ピペリジン;
4−ベンジル−4−(3,4−ジクロロ−フェノキシメチル)−ピペリジン;
4−ベンジル−4−(2,3−ジクロロ−フェノキシメチル)−ピペリジン;
4−メトキシメチル−4−ナフタレン−2−イルメチル−ピペリジン;
又は薬剤として許容されるその塩
である請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1〜7までのいずれか一項に記載の化合物、その立体異性体のいずれか若しくはその立体異性体の任意の混合物又は薬剤として許容されるその塩を治療有効量で、少なくとも1種の薬剤として許容される担体、賦形剤又は希釈剤とともに含む医薬組成物。
【請求項9】
医薬品の製造のための、請求項1〜7までのいずれか一項に記載の化合物、その立体異性体のいずれか若しくはその立体異性体の任意の混合物又は薬剤として許容されるその塩の使用。
【請求項10】
中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質再取込みの阻害に応答する、ヒトを含む哺乳動物の疾患若しくは障害又は状態を治療、予防又は緩和する医薬組成物を製造するための請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記疾患、障害又は状態が、気分障害、うつ病、非定型うつ病、疼痛に続くうつ病、大うつ病性障害、気分変調性障害、双極性障害、双極性障害I型、双極性障害II型、循環病、全身状態に起因する気分障害、物質誘発性気分障害、偽認知症、ガンザー症候群、強迫性障害、パニック障害、広場恐怖症を伴わないパニック障害、広場恐怖症を伴うパニック障害、パニック障害の履歴を伴わない広場恐怖症、パニック発作、記憶障害、記憶喪失、注意欠陥過活動性障害、肥満、不安神経症、全般性不安障害、摂食障害、パーキンソン病、パーキンソニズム、認知症、加齢による認知症、老年性認知症、アルツハイマー病、ダウン症候群、後天性免疫不全症候群認知症複合、加齢に伴う記憶機能障害、特定恐怖症、社会恐怖症、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、薬物依存症、薬物乱用、薬物乱用傾向、コカイン乱用、ニコチン中毒、たばこ乱用、飲酒癖、アルコール依存症、窃盗癖、中毒性物質使用の停止によって引き起こされる禁断症候群、疼痛、慢性疼痛、炎症性痛覚、神経因性疼痛、片頭痛、緊張性頭痛、慢性緊張性頭痛、うつ病に伴う疼痛、線維筋痛、関節炎、変形性関節症、関節リウマチ、背痛、癌性疼痛、過敏性腸症候群、過敏性腸症候群、術後痛、乳房切除後疼痛症候群(PMPS)、脳卒中後疼痛、薬物誘発性神経障害、糖尿病性神経障害、交感神経依存性疼痛、三叉神経痛、歯痛、筋膜痛、幻肢痛、過食症、月経前症候群、月経前不快気分、黄体期晩期症候群、心的外傷症候群、慢性疲労症候群、遷延性植物状態、尿失禁、緊張性尿失禁、急迫性尿失禁、夜尿、性的機能不全、早漏、勃起困難、勃起障害、早期女性オルガスム、下肢静止不能症候群、周期性四肢運動障害、摂食障害、神経性無食欲症、睡眠障害、広汎性発達障害、自閉症、アスペルガー障害、レット障害、小児期崩壊性障害、学習障害、運動能力障害、無言症、抜毛癖、ナルコレプシー、脳卒中後うつ病、脳卒中誘発性脳損傷、脳卒中誘発性神経損傷、ジルドラトゥレット症候群、耳鳴り、チック障害、身体醜形障害、反抗的行為障害又は脳卒中後能力障害である請求項10に記載の使用。
【請求項12】
中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質再取込みの阻害に応答する、ヒトを含む動物の生体の疾患若しくは障害又は状態を治療、予防又は緩和するための方法であって、それを必要とする動物の生体に請求項1〜7までのいずれか一項に記載の化合物、その立体異性体のいずれか若しくはその立体異性体の任意の混合物又は薬剤として許容されるその塩を治療有効量で投与するステップを含む方法。

【公表番号】特表2010−501624(P2010−501624A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526087(P2009−526087)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058951
【国際公開番号】WO2008/025777
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(505377201)ノイロサーチ アクティーゼルスカブ (135)
【Fターム(参考)】