説明

新規な鎖状ホスファゼン化合物、鎖状ホスファゼン化合物を用いた感光性樹脂組成物及びその利用

【課題】 水系現像が可能で、良好なパターン形状が得られ、耐熱性、加水分解耐性、接着性等の諸物性と、感光性、難燃性、十分な機械強度、低そり及び柔軟性とを両立させることが可能であり、電子機器における電子部品の小型化、軽量化に十分に対応できる配線基板の製造に好適に用いることができる新規鎖状ホスファゼン化合物と、該ホスファゼン化合物を用いてなる感光性樹脂組成物と、その代表的な利用方法とを提供することにある。
【解決手段】 少なくとも、側鎖に、アリール基、炭素−炭素二重結合及びカルボキシル基を有する鎖状ホスファゼン化合物を用いることにより、上記課題を解決し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスファゼン化合物、及び感光性樹脂組成物並びにその利用に関するものである。より詳しくは、側鎖に、アリール基、炭素−炭素二重結合、カルボキシル基を有する鎖状ホスファゼン化合物を用いた感光性樹脂、並びにその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高機能化、高性能化、小型化、軽量化に伴い、これら電子機器に用いられる電子部品に対しても、さらなる小型化、軽量化、軽薄化が要求されている。そのため、プリント配線板上での半導体素子等の高密度実装や、配線の微細化、プリント配線板の多層化等を行うことにより、電子部品の小型化や軽量化、高機能化や高性能化を図っている。配線の微細化に対応するためには、配線を保護するためにより高い電気絶縁性を有する絶縁材料を必要としている。また、電子部品を実装する配線板に関しては、通常のリジッドプリント配線板に比べて可撓性のあるフレキシブルプリント配線板(FPC)が、従来にも増して注目され、需要も急激に増大している。また、樹脂はその優れた成形加工性、機械的特性、電気的特性や外観等の特徴から、電気製品や自動車等各種の製品の材料として使用されている。
【0003】
ところで、上記プリント配線板を作製する際には、種々の用途で感光性材料が用いられる。すなわち、プリント配線板の基板上へのパターン化された回路(パターン回路)の形成や、プリント配線板表面やパターン回路を保護するための保護層の形成、多層プリント配線板の層間絶縁層の形成等に、感光性材料が使用されている。このような用途に用いられる感光性材料としては、液状の感光性材料や、フィルム状の感光性材料がある。このうち、フィルム状の感光性材料は、液状の感光性材料に比べて、膜厚の均一性や作業性に優れているといった利点を備えている。そのため、パターン回路の形成に用いるパターン回路用レジストフィルム、上記保護層の形成に用いる感光性カバーレイフィルム、上記層間絶縁層の形成に用いる感光性ドライフィルムレジスト等、その用途に応じて、種々のフィルム状感光性材料が用いられている。
【0004】
例えば、FPCの表面には、導体面を保護する目的でカバーレイフィルムと呼ばれる高分子フィルムが貼り合わされている。このカバーレイフィルムをFPC の表面に接着する方法としては、所定の形状に加工され、片面に接着剤の付いたカバーレイフィルムをFPC の表面に重ね、位置合わせをした後、プレス等で熱圧着する方法が一般的である。しかしながら、ここで用いられる接着剤は、エポキシ系接着剤やアクリル系接着剤等が主流であり、これらの接着剤は、半田耐熱性が低い、高温時の接着強度が弱い、可撓性が乏しい等の理由により、カバーレイフィルムとして、例えばポリイミドフィルムを用いた場合に、その性能を充分に活かすことができなかった。
【0005】
また、従来のエポキシ系接着剤やアクリル系接着剤を使用して、カバーレイフィルムをFPCに貼り合わせる場合、貼り合わせる前のカバーレイフィルムに、FPCの回路の端子部や部品との接合部と一致する穴や窓を開ける加工をしておく必要があった。しかしながら、薄いカバーレイフィルムに穴等を開けるのは困難なばかりか、カバーレイフィルムの穴等と、FPCの回路の端子部や部品の接合部とを合わせる位置合わせは、ほとんど手作業で行う必要があるため、作業性および位置精度が悪く、またコストもかかるものであった。
【0006】
これらの作業性や位置精度を改善するために、感光性組成物を導体面に塗布して保護層を形成する方法の開発や、感光性カバーレイフィルム( 感光性ドライフィルムレジストをカバーレイフィルムとして用いたもの) の開発がなされ、作業性および位置精度は向上した。
【0007】
ところが、上記の感光性カバーレイフィルムには、アクリル系の樹脂が用いられているため、耐熱温度やフィルムの脆性が十分ではなく、また難燃性が全くないものであった。すなわち、上記感光性カバーレイフィルムや感光性ドライフィルムレジスト( 以下、両者を感光性ドライフィルムレジストと総称する) としては、現在アクリル系やエポキシ系の感光性ドライフィルムレジストが上市されているのみであり、硬化後のフィルムの耐熱性、耐薬品性、耐屈曲性および難燃性に劣るという問題がある。このように、樹脂は金属材料や無機材料に比べ燃焼しやすいという欠点があるため、難燃性の向上が課題とされている。
【0008】
難燃性を実現する一般的な方法として、ハロゲン含有の化合物を混合する方法がある。
例えば、臭素系難燃剤を含む感光性樹脂組成物を硬化して作製された感光性ドライフィルムレジストがある(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、上記特許文献1に記載されている感光性ドライフィルムレジストは、臭素系難燃剤を含んでおり、ハロゲンを含む難燃剤は環境に悪い影響を与える虞がある。また、ハロゲンを含む難燃剤は、環境への負荷が大きいことにより、非ハロゲン系( ハロゲンフリー)への取り組みが世界的な潮流となっている。このため、臭素系難燃剤に替えて、ハロゲンフリーの難燃剤の検討が進められている(例えば、特許文献2〜4参照。)。ハロゲンフリーの難燃剤としては、窒素系、リン系、無機系化合物や、リン酸エステル・赤燐・金属酸化物の水和物等が知られている。しかしながら、リン酸エステル・赤燐は加水分解して、リン酸を発生する可能性があり、電気信頼性の低下を発現する場合がある。金属酸化物は、光を散乱・吸収するため感光性樹脂として用いることが困難な場合がある。
【0009】
また、近年、シリコーン化合物を添加した樹脂を用いた難燃剤が検討されている(例えば、特許文献5参照。)。また、難燃剤としてホスファゼン化合物が検討されており、高い難燃性付与効果を発現することが知られている(例えば、特許文献6参照。)。中でも、樹脂に難燃性を付与するために、樹脂にホスファゼン系化合物を配合することが知られている(例えば、特許文献7参照。)。特許文献7にはポリカーボネート樹脂等にホスファゼン系化合物を配合した難燃性樹脂組成物が開示されている。ホスファゼン系化合物は、難燃性を向上させる効果に優れ、ハロゲンフリーの難燃剤であることから環境に与える負荷が少ないという利点を有している。
【0010】
さらに、従来、低温度かつ短時間で接着可能であり、耐熱性に優れたポリイミド系の樹脂材料が提案されている(例えば、特許文献8参照。)。また、上記FPCの製造等に好適に用いることのできるポリイミド系接着材料として、感光性を有するものも提案されている(例えば、特許文献9参照。)。柔軟性と耐熱性とを併せて有する積層体も開示されている(例えば、特許文献10参照。)。ところで、上記配線基板に用いられる樹脂材料には、難燃性も求められることは前述したが、難燃性を向上させた各種樹脂材料も種々提案されている(例えば、特許文献11。)。中でも、リン系の化合物を含む樹脂材料がより好ましく用いられる。これは、環境に負荷を与える物質の使用をできる限り避けるためである。
【0011】
しかしながら、ハロゲンフリーの難燃剤として窒素系、リン系、無機系化合物を用いた場合、一般に窒素系化合物は樹脂の硬化性への影響があり、リン系化合物は耐湿性低下などの影響があるため、実用が困難な状況である。したがって、電気絶縁性や耐加水分解性などが要求される感光性ドライフィルムレジストに使用できる難燃材料の選択の幅が限られている。
【0012】
また、シリコーン化合物を添加した樹脂を難燃剤として使用する場合であっても、難燃効果を発揮できる樹脂の種類が非常に限られている。さらにシリコーン化合物を単独で添加した難燃剤は、大きな難燃効果を持つものが極めて少なく、比較的効果が認められたものであっても厳しい難燃基準を満たすためにはシリコーン化合物を多量に添加する必要がある。その結果、樹脂の他の必要特性に悪影響が生じ、コスト的にも不利であるため実用的ではない。
【0013】
また、難燃剤としてホスファゼン化合物を使用する場合であっても、上記従来のホスファゼン系化合物が混合された樹脂をカバーレイフィルム等に用いた場合には、ホスファゼン系化合物が表面に析出( ブリードまたはジューシング) してしまい、樹脂の物性が低下してしまうという問題点を有している。例えば、従来から存在するプロポキシ化ホスファゼンなどは液状であるため、高温で処理を行った後に硬化させた感光性ドライフィルムレジストの接着性が大幅に低下するという問題がある。
【0014】
また、樹脂は、電気・電子部品に使用される樹脂製部品として用いられており、この樹脂製部品を実装するプリント配線板には、環境問題の観点から、鉛を含有しない半田(鉛フリー半田)が実用化されている。鉛フリー半田を使用した場合には、リフロー温度が上昇(250℃〜260℃)するため、樹脂製部品には十分な耐熱性が要求される。しかしながら、上記従来のホスファゼン系化合物を難燃剤として混合した樹脂を用いた場合には、かかる高温域においては、ホスファゼン系化合物が揮散・消失してしまうという問題点を有しており、一層優れた樹脂への残存性を有する難燃剤が求められている。
【0015】
ホスファゼン系化合物の揮散・消失を防ぐために、2重結合を導入した環状フォスファゼン化合物の報告がある(例えば特許文献12〜13参照。)。特許文献12では、ホスファゼン環にカルボキシル基と2重結合を導入し、感光性樹脂組成物として用いているがアリール基(フェニル基)を有していないため難燃性に劣る。また、特許文献13では、ホスファゼン環にフェニル基と2重結合を導入し、感光性樹脂組成物として用いているが、カルボニル基がないために、希アルカリ水溶液で現像することはできない。
【0016】
また、特許文献12及び13ともに、ホスファゼン環に直接2重結合基を導入しているため、架橋点間距離が近く、硬化した感光性樹脂組成物が硬く脆くなってしまったり、反りが大きくなってしまうという問題があった。
【0017】
特許文献12の請求項には、環状および鎖状ホスファゼン化合物に炭素−炭素2重結合とカルボキシル基を導入した樹脂の記載があるが、環状ホスファゼン化合物についての記載のみであり、本願で述べる鎖状ホスファゼンの利点についての記載はまったく無い。
【特許文献1】特開2001−335619(2001年12月4日公開)
【特許文献2】特開2002−235001(2002年8月23日公開)
【特許文献3】特開2001−19930(2001年1月23日公開)
【特許文献4】特開2001−49090(2001年2月20日公開)
【特許文献5】特開2001−40219(2001年2月13日公開)
【特許文献6】特開2001−40149(2001年2月13日公開)
【特許文献7】特開平11−181268(1999年7月6日公開)
【特許文献8】特開平7−242820(1995年9月19日公開)
【特許文献9】特開平6−27667(1994 年2月4日公開)
【特許文献10】特開平10−733(1998年1月6日公開)
【特許文献11】特開2001−335703(2001年12月4日公開)
【特許文献12】特開平6−100697(平成6年4月12日公開)
【特許文献13】特開2008−88217(平成20年4月17日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ハロゲン系難燃剤を用いることなく、水系現像が可能で、良好なパターン形状が得られ、耐熱性、加水分解耐性、接着性等の諸物性と、感光性、難燃性、十分な機械強度、低そり及び柔軟性とを両立させることが可能であり、電子機器における電子部品の小型化、軽量化に十分に対応できる配線基板の製造に好適に用いることができる新規鎖状ホスファゼン化合物と、該ホスファゼン化合物を用いてなる感光性樹脂組成物と、その代表的な利用方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、側鎖に、アリール基、炭素−炭素二重結合及びカルボキシル基を有する鎖状ホスファゼン化合物は、炭素−炭素二重結合を有することにより良好な感光能を示し、カルボキシル基を有することにより、アルカリ水溶液で現像が可能であることを見出した。加えて、FPC用の感光性カバーレイフィルムとして用いた場合、非常に柔軟で屈曲性にとむ絶縁膜付きプリント配線板を提供することができることも見出した。
【0020】
また、本発明の鎖状ホスファゼン化合物は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有することが望ましい。
【0021】
【化6】

(式中Aは下記のA1基、A2基及びA3基からなる群から選ばれた基を示し、少なくとも一つがA1基であり、少なくとも一つがA2基であり、少なくとも一つがA3基である。
A1基:炭素数6〜20のアリール基であって、該アリール基の少なくとも1つの水素が、炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基で置換されていてもよい。
A2基:下記の一般式(2)で示されるアクリロイルオキシアルキレン基又はメタクリロイルオキシアルキレン基。
【0022】
【化7】

(式中、R2は、水素原子又はメチル基を示し、R1は−(CH2m−、又は下記(群−1)から選ばれる基を示し、mは1〜8の整数を示す。)
【0023】
【化8】

A3基:下記一般式(3)で表される基。
(式中、R3は−(CH2p−又は一般式(4)で表される基を示し、pは1〜12の整数、rは0〜12の整数を示す。)
【0024】
【化9】

【0025】
【化10】

【0026】
本発明の感光性樹脂組成物は(A)鎖状ホスファゼン化合物と(B)光反応開始剤を含有することを特徴とする。
【0027】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)及び(B)成分に加えて、(C)2重結合を有する化合物を含有することにより良好な感光能を示す。
【0028】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)、(B)及び(C)成分に加えて、(D)イソシアネート系化合物(ブロックイソシアネート)を含有すれば、高い絶縁信頼性を示す傾向にあるため好ましい。
【0029】
本発明の感光性液状レジストは、前記感光性樹脂組成物に溶媒を加えてなるものである。
【0030】
本発明の感光性ドライフィルムレジストは、前記感光性樹脂組成物を基材表面に塗布した後、乾燥して得られたものである。
【0031】
本発明の絶縁膜は、前記感光性液状レジスト又は前記感光性ドライフィルムレジストを硬化させて得られるものである。
【0032】
本発明の絶縁膜付きプリント配線板は、前記絶縁膜をプリント配線板に被覆したものである。
【発明の効果】
【0033】
本願発明の鎖状ホスファゼン化合物は、良好な感光能を示し、アルカリ水溶液で現像が可能であり、難燃性の高い難燃剤である。また、少なくとも(A)成分である本願発明の鎖状ホスファゼン化合物と(B)光反応開始剤、(C)2重結合を有する化合物を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物は、ハロゲン系難燃剤を用いることなく難燃化でき、水系現像が可能で、良好なパターン形状が得られ、耐熱性、加水分解耐性、接着性等の諸物性と、感光性、十分な機械強度とを両立させることが可能であり、電子機器における電子部品の小型化、軽量化に十分に対応できる配線基板の製造に好適に用いることができる。加えて、FPC用の感光性カバーレイフィルムとして用いた場合、非常に柔軟で屈曲性にとむ絶縁膜付きプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下本願発明について詳細に説明する。
【0035】
<側鎖に、フェニル基、カルボキシル基及び炭素−炭素二重結合を有する鎖状ホスファゼン化合物>
本願発明の側鎖に、フェニル基、カルボキシル基及び炭素−炭素二重結合を有する鎖状ホスファゼン化合物について説明する。
【0036】
本発明において、主鎖とは、鎖状化合物の骨格のうち幹になる鎖のことを意味する。また、側鎖とは、鎖状化合物の主鎖から枝分かれしている鎖のことを意味する。本願発明の鎖状ホスファゼン化合物は、側鎖に、フェニル基、カルボキシル基及び炭素−炭素二重結合を有してさえいれば特に限定はされない。
【0037】
本願発明の鎖状ホスファゼン化合物は、環状ではなく鎖状ホスファゼン構造を有するため、骨格自体が柔軟性に富み、得られた感光性樹脂組成物(絶縁膜、プリント基板)も柔軟性に優れたものになる。また、ホスファゼン環に直接二重結合基を導入した場合、架橋点間距離が近く、硬化した感光性樹脂組成物が硬く脆くなってしまったり、反りが大きくなってしまうに比べ、本願発明のように鎖状ホスファゼンに二重結合基を導入した場合、二重結合基間の距離が長くなるため、硬化収縮を抑えることができ、反りを小さくすることができる。加えて、鎖状ホスファゼンにフェニル基を導入することにより難燃性が高く、カルボキシル基を導入することにより、希アルカリ水溶液で現像可能な感光性樹脂とすることができる。
【0038】
また、前記鎖状ホスファゼン化合物は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有することが望ましい。
【0039】
【化11】

(式中Aは下記のA1基、A2基及びA3基からなる群から選ばれた基を示し、少なくとも一つがA1基であり、少なくとも一つがA2基であり、少なくとも一つがA3基である。
A1基:炭素数6〜20のアリール基であって、該アリール基の少なくとも1つの水素が、炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基で置換されていてもよい。
A2基:下記の一般式(2)で示されるアクリロイルオキシアルキレン基又はメタクリロイルオキシアルキレン基。
【0040】
【化12】

(式中、R2は、水素原子又はメチル基を示し、R1は−(CH2m−、又は下記(群−1)から選ばれる基を示し、mは1〜8の整数を示す。)
【0041】
【化13】

A3基:下記一般式(3)で表される基。
(式中、R3は−(CH2p−又は一般式(4)で表される基を示し、pは1〜12の整数、rは0〜12の整数を示す。)
【0042】
【化14】

【0043】
【化15】

【0044】
<A1基>
本発明のA1基について説明する。A1基の炭素数6〜20のアリール基とは、特に限定はされないが、フェニル基・ナフチル基あるいは、フェニル基・ナフチル基の一部が炭素数1〜14のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい。ただし、置換された後の全A1基における炭素数が6〜20のアリール基のことである。
【0045】
このようなアリールオキシ基(一般式(1)中の−O−A基)としては、例えば、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、エチルメチルフェノキシ基、ジエチルフェノキシ基、n−プロピルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、イソプロピルメチルフェノキシ基、イソプロピルエチルフェノキシ基、ジイソプロピルフェノキシ基、n−ブチルフェノキシ基、sec−ブチルフェノキシ基、tert−ブチルフェノキシ基、n−ペンチルフェノキシ基、n−ヘキシルフェノキシ基、エテニルフェノキシ基、1−プロペニルフェノキシ基、イソプロペニルフェノキシ基、1−ブテニルフェノキシ基、sec−ブテニルフェノキシ基、1−ペンテニルフェノキシ基、1−ヘキセニルフェノキシ基、フェニルフェノキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基およびフェナントリルオキシ基等を挙げることができる。このうち、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、ジエチルフェノキシ基、1−プロペニルフェノキシ基、フェニルフェノキシ基およびナフチルオキシ基が好ましく、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基およびナフチルオキシ基が特に好ましい。
【0046】
<A2基>
本発明のA2基について説明する。A2基は、下記の一般式(2)で示されるアクリロイルオキシアルキレン基若しくはメタクリロイルオキシアルキレン基である。
【0047】
【化16】

(一般式(2)中、R2は、水素原子もしくはメチル基を、R1は−(CH2m
或いは下記(群−1)から選ばれる基を示し、mは1〜8の整数を示す。)
【0048】
【化17】

【0049】
A2基の具体例(一般式(1)中の−O−A基)としては、次のものを挙げることができる。アクリロイルオキシメチレンオキシ基、2−(アクリロイルオキシ)エチレンオキシ基、3−(アクリロイルオキシ)プロピレンオキシ基、1−メチル−2−(アクリロイルオキシ)エチレンオキシ基、1−アクリロイルオキシ−2−メチルエチレンオキシ基、3−(アクリロイルオキシ)シクロヘキシル基、4−(アクリロイルオキシ)シクロヘキシル基、3−(メタクリロイルオキシ)シクロヘキシル基、4−(メタクリロイルオキシ)シクロヘキシル基、4−(アクリロイルオキシ)ブチレンオキシ基、5−(アクリロイルオキシ)ペンタメチレンオキシ基、6−(アクリロイルオキシ)ヘキサメチレンオキシ基、メタクリロイルオキシメチレンオキシ基、2−(メタクリロイルオキシ)エチレンオキシ基、3−(メタクリロイルオキシ)プロピレンオキシ基、1−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチレンオキシ基、1−メタクリロイルオキシ−2−メチルエチレンオキシ基、4−(メタクリロイルオキシ)ブチレンオキシ基、5−(メタクリロイルオキシ)ペンタメチレンオキシ基、6−(メタクリロイルオキシ)ヘキサメチレンオキシ基等。このうち、2−(アクリロイルオキシ)エチレンオキシ基、4−(アクリロイルオキシ)ブチレンオキシ基、2−(メタクリロイルオキシ)エチレンオキシ基、4−(メタクリロイルオキシ)ブチレンオキシ基が好ましく、2−(アクリロイルオキシ)エチレンオキシ基、2−(メタクリロイルオキシ)エチレンオキシ基が特に好ましい。
【0050】
<A3基>
本発明のA3基について説明する。A3基は、下記一般式(3)で表される基である。(式中、R3は−(CH2p−或いは一般式(4)で表される基を示し、pは1〜12の整数、rは0〜12の整数を示す。)
【0051】
【化18】

【0052】
【化19】

(一般式(3)中、R3は−(CH2p−、一般式(4)で表される基を示し、pは1〜12の整数、rは0〜12の整数を示す。)
【0053】
具体的には、−CH2COOH,−CH2CH2COOH,−CH(CH3)COOH,−CH2C(CH32CH2COOH,−(CH23COOH,−(CH24COOH,
−CH(CH2CH3)COOH,−C(CH32COOH,−CCH3(CH2CH3)COOH,−CH2C(CH32COOH,−CCH3(CH2CH3)−CH2COOH,−(CH25COOH,−(CH26COOH,−(CH27COOH,−(CH28COOH,−(CH29COOH,−(CH210COOH,−(CH211COOH,−(CH212COOH,−C64COOH,−C64CH2COOH,−C66CH2CH2COOH、−C64CH(CH3)COOH、−C63(CH3)COOH、−C62(CH32COOH等をあげることができる。
【0054】
このうち特に−CH(CH3)COOH,−CH(CH2CH3)COOH,−C(CH32COOH,−CCH3(CH2CH3)COOH,−CH2C(CH32COOH,−CCH3(CH2CH3)−CH2COOH,−(CH25COOH,−C64COOH,−C66CH2CH2COOHが工業的に安価であるため好ましい。
【0055】
<鎖状ホスファゼン>
具体的に、鎖状ホスファゼン化合物について説明する。
まず最初に、一般式(5)で示される重合体(ポリジクロロホスファゼン)を合成する。
【0056】
【化20】

この一般式(5)の繰り返し単位を有する重合体(ポリジクロロホスファゼン)は、二塩化リン3量体(NPCl23を加熱により重合して得ることができる。
【0057】
一般式(5)の重合体(ポリジクロロホスファゼン)の製造法を限定するわけではないが例えば、次の各文献に記載の方法で合成することができる。
文献A:特開平5−201710
文献B:特開昭58−164619
文献C:特開昭60−71504
文献D:特開昭56−50103
【0058】
また、NH4ClとPCl5をクロロベンゼン中で反応させても一般式(5)の重合体(ポリジクロロホスファゼン)を合成することができる。
【0059】
最終合成物である一般式(1)の鎖状ホスファゼンの好ましい分子量範囲は、重量平均分子量で1000以上100万以下である。100万以上であればアルカリ水溶液への溶解性が低下し現像時間が長くなるため好ましくない。分子量が1000以下であれば、柔軟性が得られないため好ましくない。さらに好ましい範囲は重量平均分子量で3000以上20万以下、より好ましくは重量平均分子量で5000以上10万以下である。
【0060】
よって、同様の理由で中間物である一般式(5)の繰り返し単位を有する重合体(ポリジクロロホスファゼン)の好ましい分子量範囲も、重量平均分子量で1000以上100万以下である。さらに好ましい範囲は重量平均分子量で3000以上20万以下、より好ましくは重量平均分子量で5000以上10万以下である。
【0061】
次に、ポリジクロロホスファゼンの塩素をアリール基または、カルボキシル基を有する1価の有機基、あるいは炭素−炭素二重結合を有する1価の有機基に置換する方法について説明する。
【0062】
上記一般式(5)と反応させる化合物として、次の化合物B1、化合物B2及び化合物B3を用意する。
【0063】
<化合物B1>
本発明のA1基を形成するために用いられる化合物B1について説明する。具体的には、炭素数が6〜20のフェノール類である。このフェノール類は、炭素数が1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい。このようなフェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、ジメチルフェノール、エチルフェノール、エチルメチルフェノール、ジエチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、イソプロピルメチルフェノール、イソプロピルエチルフェノール、ジイソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、sec−ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、n−ペンチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、ビニルフェノール、1−プロペニルフェノール、2−プロペニルフェノール、イソプロペニルフェノール、1−ブテニルフェノール、sec−ブテニルフェノール、1−ペンテニルフェノール、1−ヘキセニルフェノール、フェニルフェノール、ナフトール、アントラノールおよびフェナントラノール等を挙げることができる。このうち、フェノール、クレゾール、ジメチルフェノール、ジエチルフェノール、2−プロペニルフェノール、フェニルフェノールおよびナフトールが好ましく、フェノール、クレゾール、ジメチルフェノールおよびナフトールが特に好ましい。
【0064】
<化合物B2>
本発明のA2基を形成するために用いられる化合物B2について説明する。具体的には、下記の一般式(6)で示されるヒドロキシルアルキレンアクリレート類、ヒドロキシルアルキレンメタクリレート類である。
【0065】
【化21】

(式中、R2は、水素原子もしくはメチル基を示し、R1は−(CH2m−又は下記(群−1)から選ばれる基を示し、mは1〜8の整数を示す。)
【0066】
【化22】

【0067】
このようなヒドロキシルアルキレンアクリレート類としては、例えば、ヒドロキシルメチレンアクリレート、2−ヒドロキシルエチレンアクリレート、3−ヒドロキシルプロピレンアクリレート、1−メチル−2−ヒドロキシルエチレンアクリレート、2−メチル−1−ヒドロキシルエチレンアクリレート、4−ヒドロキシルブチレンアクリレート、5−ヒドロキシルペンタメチレンアクリレート、6−ヒドロキシルヘキサメチレンアクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等を挙げることができる。また、ヒドロキシルアルキレンメタクリレート類としては、例えば、ヒドロキシルメチレンメタクリレート、2−ヒドロキシルエチレンメタクリレート、3−ヒドロキシルプロピレンメタクリレート、1−メチル−2−ヒドロキシルエチレンメタクリレート、2−メチル−1−ヒドロキシルエチレンメタクリレート、4−ヒドロキシルブチレンメタクリレート、5−ヒドロキシルペンタメチレンメタクリレート、6−ヒドロキシルヘキサメチレンメタクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレート等を挙げることができる。このうち、2−ヒドロキシルエチレンアクリレート、4−ヒドロキシルブチレンアクリレート、2−ヒドロキシルエチレンメタクリレート、4−ヒドロキシルブチレンメタクリレートが好ましく、2−ヒドロキシルエチレンアクリレート、2−ヒドロキシルエチレンメタクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートが特に好ましい。
【0068】
<化合物B3>
本発明のA3基を形成するために用いられる化合物B3について説明する。化合物B3は、下記一般式(7)で表される化合物である。
【0069】
【化23】

(式中、R3は−(CH2p−又は一般式(4)で表される基を示し、pは1〜12の整数、rは0〜12の整数を示す。)
【0070】
【化24】

【0071】
具体的には、HO−CH2COOH,HO−CH2CH2COOH,HO−CH(CH3)COOH,HO−CH2C(CH32CH2COOH,HO−(CH23COOH,HO−(CH24COOH,HO−CH(CH2CH3)COOH,HO−C(CH32COOH,HO−CCH3(CH2CH3)COOH,HO−CH2C(CH32COOH,HO−CCH3(CH2CH3)−CH2COOH,HO−(CH25COOH,HO−(CH26COOH,HO−(CH27COOH,HO−(CH28COOH,HO−(CH29COOH,HO−(CH210COOH,HO−(CH211COOH,HO−(CH212COOH,HO−C64COOH,HO−C64CH2COOH,HO−C66CH2CH2COOH、HO−C64CH(CH3)COOH、HO−C63(CH3)COOH、HO−C62(CH32COOH等をあげることができる。このうち特にHO−CH(CH3)COOH,HO−CH(CH2CH3)COOH,HO−C(CH32COOH,HO−CCH3(CH2CH3)COOH,HO−CH2C(CH32COOH,HO−CCH3(CH2CH3)−CH2COOH,HO−(CH25COOH,HO−C64COOH,HO−C66CH2CH2COOHが工業的に安価であるため好ましい。
【0072】
本発明の側鎖にアリール基、炭素−炭素二重結合及びカルボキシル基を有する鎖状ホスファゼン化合物の製造方法は、上述の一般式(5)の繰り返し単位を有する重合体(ポリジクロロホスファゼン)と上記の化合物B1〜B3とを用いて、次の一般式(1)で示される、本発明の鎖状ホスファゼン化合物を製造する。
【0073】
【化25】

(式中Aは下記のA1基、A2基及びA3基からなる群から選ばれた基を示し、少なくとも一つがA1基であり、少なくとも一つがA2基であり、少なくとも一つがA3基である。
A1基:炭素数6〜20のアリール基であって、該アリール基の少なくとも1つの水素が、炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基で置換されていてもよい。
A2基:下記の一般式(2)で示されるアクリロイルオキシアルキレン基又はメタクリロイルオキシアルキレン基。
【0074】
【化26】

(式中、R2は、水素原子又はメチル基を示し、R1は−(CH2m−、又は下記(群−1)から選ばれる基を示し、mは1〜8の整数を示す。
【0075】
【化27】

A3基:下記一般式(3)で表される基。
(式中、R3は−(CH2p−又は一般式(4)で表される基を示し、pは1〜12の整数、rは0〜12の整数を示す。)
【0076】
【化28】

【0077】
【化29】

【0078】
この工程では、製造する側鎖に、アリール基、炭素−炭素二重結合及びカルボキシル基を有する鎖状ホスファゼン化合物の構造によって、化合物B1〜B3を適宜選択して使用する。具体的には次の通りである。
【0079】
<側鎖に、アリール基、炭素−炭素二重結合及びカルボキシル基を有する鎖状ホスファゼン化合物の製造方法>
ポリジクロロホスファゼンに対し、化合物B1のうちの少なくとも一種とを反応させ、ポリジクロロホスファゼンの一部の活性ハロゲン原子を化合物B1に由来のA1基で置換し、残りの他の活性ハロゲン原子の全てを化合物B2に由来のA2基および化合物B3に由来のA3基で置換する。このための方法としては、次のいずれかの方法を採用することができる。
【0080】
<方法A>
ポリジクロロホスファゼンに対し、化合物B1と、化合物B2および化合物B3の混合物を、ハロゲン化水素を捕捉する塩基の存在下で反応させ、活性ハロゲン原子の全てを置換する。
【0081】
この方法による場合、上述の混合物の使用量は、ポリジクロロホスファゼンの活性ハロゲン原子の量の1.0〜2.0当量に設定するのが好ましく、1.05〜1.3当量に設定するのがより好ましい。当該使用量が1.0当量未満の場合は、活性ハロゲン原子の一部が残留し、目的とする反応性基含有環状ホスファゼン化合物からなる難燃剤が所要の効果を示さない可能性がある。一方、当該使用量が2.0当量を超える場合は、反応生成物の分離・精製が困難になるおそれがあり、また、不経済である。また、また、塩基の使用量は、ポリジクロロホスファゼンの活性ハロゲン原子の量の1.1〜2.1当量に設定するのが好ましく、1.1〜1.4当量に設定するのがより好ましい。当該使用量が1.1当量未満の場合は、活性ハロゲン原子の一部が残留し、目的とする反応性基含有環状ホスファゼン化合物からなる難燃剤が所要の効果を示さない可能性がある。一方、当該使用量が2.1当量を超える場合は、反応生成物の分離・精製が困難になるおそれがあり、また、不経済である。
【0082】
<方法B>
先ず、ポリジクロロホスファゼンに対して化合物B1のアルカリ金属塩を反応させ、ポリジクロロホスファゼンの活性ハロゲン原子の一部を化合物B1に由来のA1基により置換した部分置換体を得る(工程A)。次に、得られた部分置換体に対して化合物B2のアルカリ金属塩を反応させてポリジクロロホスファゼンの活性ハロゲン原子の一部をA1基及びA2基により置換した部分置換体を得る(工程B)。次に、得られた部分置換体と化合物B3とをハロゲン化水素を捕捉する塩基の存在下で反応させ、活性ハロゲン原子の全てを置換する(工程C)。この方法の工程A及び工程Bを同時に行ってもよいし、工程Bを行ってから工程Aを行ってもよい。
【0083】
<方法C>
先ず、ポリジクロロホスファゼンに対して化合物B1のアルカリ金属塩を反応させ、ポリジクロロホスファゼンの活性ハロゲン原子の一部を化合物B1に由来のA1基により置換した部分置換体を得る(工程A)。次に、得られた部分置換体と化合物B2をハロゲン化水素を捕捉する塩基の存在下で反応させ、活性ハロゲン原子の一部を置換する(工程B)。次に、得られた部分置換体と化合物B3とをハロゲン化水素を捕捉する塩基の存在下で反応させ、活性ハロゲン原子の全てを置換する(工程C)。この方法の工程B及び工程Cを同時に行ってもよいし、工程Cを行ってから工程Bを行ってもよい。
【0084】
上述の各方法において用いられるアルカリ金属塩は、通常、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩およびセシウム塩が好ましい。特に、リチウム塩およびナトリウム塩が好ましい。このようなアルカリ金属塩は、化合物B1〜B3と、金属リチウム、金属ナトリウム若しくは金属カリウム等との脱水素反応、または、化合物B1〜B3と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物との混合物からの脱水反応によって得ることができる。
【0085】
また、上述の各方法において用いられる塩基は、特に限定されるものではないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、ジイソプロピルアニリン、ピリジン、4,4−ジメチルアミノピリジン、4,4−ジエチルアミノピリジンおよび4−ジイソプロピルアミノピリジン等の脂肪族若しくは芳香族アミン類、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物等が好ましい。特に、トリエチルアミン、ピリジンおよび水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましい。
【0086】
上述のポリジクロロホスファゼンと化合物B1〜B3との反応は、上述のいずれの方法についても、無溶媒で実施することができ、また、溶媒を使用して実施することもできる。溶媒を使用する場合、溶媒の種類は、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されるものではないが、通常、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジエトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテルおよびジフェニルエーテル等のエーテル系、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、キシレン、エチルベンゼンおよびイソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系、クロロホルムおよび塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、ウンデカンおよびドデカン等の脂肪族炭化水素系、ピリジン等の複素環式芳香族炭化水素系、第三級アミン系並びにシアン化合物系等の有機溶媒を用いるのが好ましい。このうち、分子内にエーテル結合を有し、かつ、化合物B1〜B3およびそれらのアルカリ金属塩の溶解度が高いエーテル系の有機溶媒および水との分離が容易である芳香族炭化水素系の有機溶媒を用いるのが特に好ましい。
【0087】
上述のポリジクロロホスファゼンと化合物B1〜B3とを反応させる際の反応温度は、上述のいずれの方法によるか、或いは、反応生成物の熱安定性等を考慮して適宜設定することができる。但し、溶媒を用いて当該反応を実施する場合は、通常、0℃から溶媒の沸点までの温度範囲に反応温度を設定するのが好ましい。一方、無溶媒で当該反応を実施する場合、反応温度は、通常、40〜200℃の範囲に設定するのが好ましい。
【0088】
<感光性樹脂組成物>
次いで本発明の感光性樹脂組成物について説明する。本発明の感光性樹脂組成物の必須成分である(B)成分の光反応開始剤について説明する。
【0089】
<(B)光反応開始剤>
本願発明における(B)光反応開始剤とは、UVなどのエネルギーによって活性化し、感光性樹脂の反応を開始・促進させる化合物である。かかる(B)光重合開始剤としては、例えば、ミヒラ−ズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’,4’’−トリス(ジメチルアミノ)トリフェニルメタン、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ジイミダゾール、アセトフェノン、ベンゾイン、2−メチルベンゾイン、ベンゾインメチルエ−テル、ベンゾインエチルエ−テル、ベンゾインイソプロピルエ−テル、ベンゾインイソブチルエ−テル、2−t−ブチルアントラキノン、1,2−ベンゾ−9,10−アントラキノン、メチルアントラキノン、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジアセチルベンジル、ベンジルジメチルケタ−ル、ベンジルジエチルケタ−ル、2(2’−フリルエチリデン)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2[2’(5’’−メチルフリル)エチリデン]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2,6−ジ(p−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ジアジドカルコン、ジ(テトラアルキルアンモニウム)−4,4’−ジアジドスチルベン−2,2’−ジスルフォネ−ト、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−ケトン、ビス(n5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、1,2−オクタノンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、ヨード二ウム,(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート(1−)、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシオム)などが挙げられる。上記光重合開始剤は適宜選択することが望ましく、1種以上を混合させて用いることが望ましい。
【0090】
本願発明の感光性樹脂組成物における(A)成分、(B)成分は、(A)成分の固形分100重量部に対して、(B)成分が、0.1〜50重量部となるように配合されていることが好ましい。
【0091】
上記配合割合にすることで最終的に得られる硬化物や絶縁膜の諸特性(電気絶縁信頼性等)が向上するので好ましい。
【0092】
<(C)2重結合を有する化合物>
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)成分である鎖状ホスファゼン化合物及び(B)成分である光反応開始剤に加えて、(C)成分として2重結合を有する化合物を含むことが望ましい。(C)成分の2重結合を有する化合物について説明する。
【0093】
本願発明における(C)2重結合を有する化合物とは、光反応開始剤により化学結合が形成される樹脂である。その中でも分子内に不飽和二重結合を少なくとも1つ有する樹脂である。さらには、上記不飽和二重結合は、アクリル基(CH2=CH−基)、メタアクリロイル基(CH=C(CH3)−基)もしくはビニル基(−CH=CH−基)であることが好ましい。
【0094】
かかる(C)2重結合を有する化合物としては、例えばビスフェノールF EO変性(n=2〜50)ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性(n=2〜50)ジアクリレート、ビスフェノールS EO変性(n=2〜50)ジアクリレート、ビスフェノールF EO変性(n=2〜50)ジメタクリレート、ビスフェノールA EO変性(n=2〜50)ジメタクリレート、ビスフェノールS EO変性(n=2〜50)ジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、ラウリルアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、メトキシジプロピレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールアクリレート、1 − アクリロイルオキシプロピル−2−フタレート、イソステアリルアクリレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルアクリレート、ノニルフェノキシエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、1,6−メキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールメタクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、2,2−水添ビス[4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル]プロパン、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、エトキシ化トチメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トチメチロールプロパントリアクリレート、イソシアヌル酸トリ(エタンアクリレート)、ペンタスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、イソシアヌル酸トリアリル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアリルエーテル、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリアリル1,3,5−ベンゼンカルボキシレート、トリアリルアミン、トリアリルシトレート、トリアリルフォスフェート、アロバービタル、ジアリルアミン、ジアリルジメチルシラン、ジアリルジスルフィド、ジアリルエーテル、ザリルシアルレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、1,3−ジアリロキシ−2−プロパノール、ジアリルスルフィドジアリルマレエート、4,4’−イソプロピリデンジフェノールジメタクリレート、4,4’−イソプロピリデンジフェノールジアクリレート、等が好ましいが、これらに限定されない。特に、ジアクリレートあるいはメタアクリレートの一分子中に含まれるEO(エチレンオキサイド)の繰り返し単位が、2〜50の範囲のものが好ましく、さらに好ましくは2〜40である。EOの繰り返し単位が2〜50の範囲の物を使用することにより、感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液に代表される水系現像液への溶解性が向上し、現像時間が短縮される。更に、感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜中に応力が残りにくく、例えばプリント配線板の中でも、ポリイミド樹脂を基材とするフレキシブルプリント配線板上に積層した際に、プリント配線板のカールを抑えることができるなどの特徴を有する。
【0095】
特に、上記EO変性のジアクリレート或いは、ジメタクリレートと、アクリル基もしくは、メタクリル基を3以上有するアクリル樹脂を併用することが現像性を高める上で特に好ましく、例えばエトキシ化イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸EO変性トリメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリストールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、2,2,2−トリスアクリロイロキシメチルエチルコハク酸、2,2,2−トリスアクリロイロキシメチルエチルフタル酸、プロポキシ化ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、プロポキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、
下記一般式(8)
【0096】
【化30】

(式中、a+b=6、n=12である。)で表される化合物、
下記一般式(9)
【0097】
【化31】

(式中、a+b=4、n=4である。)で表される化合物、
下記式(10)
【0098】
【化32】

で表される化合物、
下記一般式(11)
【0099】
【化33】

(式中、m=1、a=2、b=4もしくは、m=1、a=3、b=3もしくは、m=1、a=6、b=0もしくは、m=2、a=6、b=0である。)で表される化合物、
下記一般式(12)
【0100】
【化34】

(式中、a+b+c=3.6である。)で表される化合物、
下記式(13)
【0101】
【化35】

で表される化合物、
下記一般式(14)
【0102】
【化36】

(式中、m・a=3、a+b=3、ここで「m・a」は、mとaとの積である。)で表される化合物等のアクリル樹脂が好適に用いられる。
【0103】
また、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、アクリル酸ダイマー、ペンタエスリトールトリ及びテトラアクリレート等の分子構造骨格中にヒドロキシル基、カルボニル基を有する物も好適に用いられる。
【0104】
この他、エポキシ変性のアクリル(メタクリル)樹脂や、ウレタン変性のアクリル(メタクリル)樹脂、ポリエステル変性のアクリル(メタクリル)樹脂等どのような感光性樹脂を用いてもよい。
【0105】
尚、2重結合を有する化合物としては、1種を使用することも可能であるが、2種以上を併用することが、光硬化後の硬化膜の耐熱性を向上させる上で好ましい。
本願発明の感光性樹脂組成物における(A)成分、(B)成分および(C)成分は、(A)成分と(B)成分を合計した固形分100重量部に対して、(C)成分が、1〜300重量部となるように配合されていることが好ましい。
【0106】
上記配合割合にすることで最終的に得られる硬化物や絶縁膜の諸特性(電気絶縁信頼性等)が向上するので好ましい。
【0107】
(C)成分の2重結合を有する化合物感光性樹脂が上記範囲よりも少ない場合には、感光性樹脂組成物を光硬化した後の硬化被膜の耐熱性が低下すると共に、露光・現像したときのコントラストが付きにくくなるので好ましくない場合がある。そのため、上記範囲内にすることで露光・現像時の解像度を最適な範囲にすることが可能となる。
【0108】
<(D)イソシアネート系化合物(ブロックイソシアネート)>
ブロックイソシアネートは、感光性樹脂組成物を塗布・乾燥・露光・現像の各工程には悪影響を与えず、加熱硬化処理を行う際に、ブロック剤が解離し生成するイソシアネート基と本発明の鎖状ホスファゼンのカルボキシル基と反応して親水基であるカルボキシル基を消費する。このことにより電気信頼性が向上することが期待できるため(D)成分のブロックイソシアネートを用いることが好ましい。
【0109】
(D)成分であるイソシアネート系化合物(ブロックイソシアネート)とは、イソシアネート基をオキシム類、ジケトン類、フェノール類、カプロラクタム類等のブロック剤で安定化したイソシアネート化合物のことを意味する。上記ブロックイソシアネート化合物とは、常温では不活性であり、加熱されることにより、オキシム類、ジケトン類、フェノール類、カプロラクタム類等のブロック剤が解離してイソシアネート基を再生する化合物であり、例えば、旭化成ケミカルズ株式会社製の商品名デュラネート17B−60PX、デュラネートTPA−B80E、デュラネートMF−B60X、デュラネートMF−K60X、デュラネートE402−B80T、三井化学ポリウレタン株式会社製の商品名タケネートB−830、タケネートB−815N、タケネートB−846N、タケネートB−882N、日本ポリウレタン工業株式会社製の商品名コロネートAP−M、コロネート2503、コロネート2507、コロネート2513、コロネート2515、ミリオネートMS−50等が挙げられる。特に本願発明に好適に用いられるブロックイソシアネート化合物は、ブロック剤の解離温度が160℃以下であるヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアヌレート型、ビウレット型、アダクト型等のブロックイソシアネート化合物、水添ジフェニルメタンジイソシアネート系、水添キシリレンジイソシアネート系ブロックイソシアネート化合物である。
【0110】
上記ブロックイソシアネート化合物を用いることで感光性樹脂組成物を硬化したときに得られる硬化被膜に高い基材との接着性を付与できるので好ましい。
【0111】
また、これらイソシアネート系化合物は単独で、或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0112】
上記ブロックイソシアネートの使用量は、上記(A)成分である部分イミド化されたウレタン結合を有するポリイミド前駆体及び(B)成分である感光性樹脂の総重量100重量部に対し、1〜100重量部の範囲内とすることが好ましく、1〜50重量部の範囲内とすることがより好ましく、1〜40重量部の範囲内とすることが特に好ましい。
【0113】
上記ブロックイソシアネートが、100重量部を超えると、後述するBステージ状態の感光性樹脂組成物にベタツキが見られたりする場合があるために好ましくない。
【0114】
<(E)その他の樹脂>
鎖状ホスファゼン以外に、被膜形成能を有する樹脂を添加することができる。
上記(E)成分のその他の樹脂としては、被膜形成能を有する樹脂であれば特に制限なく使用できる。例えば、(E−1)として(メタ)アクリル酸系共重合体、(E−2)として変性エポキシ樹脂、(E−3)としてポリアミド酸、(E−3)としてカルボン酸或いは水酸基を有するポリイミド等の樹脂を例示することができる。
【0115】
(E−1)の(メタ)アクリル酸系共重合体としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸、無水シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、クロトン酸、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有不飽和単量体と、スチレン、α−メチルスチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−フェニルマレイミド、ポリスチレンマクロモノマー及びポリメチルメタクリレートマクロモノマーの群から選ばれる少なくとも1種との共重合体であるアルカリ可溶性バインダー樹脂が例示できる。(メタ)アクリル酸系共重合体としては、(メタ)アクリル酸と、スチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートの群から選ばれる少なくとも1種との共重合体が特に好ましい。
【0116】
(E−2)の変性エポキシ樹脂とは、ジカルボン酸と2官能のエポキシ化合物と反応させて次いで酸無水物と反応させて得られる変性エポキシ樹脂のことを言う。
【0117】
2官能のエポキシとしては、ビスフェノールA ジグリシジルエーテル等のビスフェノールA 型エポキシ樹脂、ビスフェノールF ジグリシジルエーテル等のビスフェノールF 型エポキシ樹脂、ビスフェノールS ジグリシジルエーテル等のビスフェノールS 型エポキシ樹脂、ビフェノールジグリシジルエーテル等のビフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノールジグリシジルエーテル等のビキシレノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA ジグリシジルエーテル等の水添ビスフェノールA 型エポキシ樹脂、及び、それらの二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中で、耐熱性、耐薬品性に優れ、硬化により比較的収縮しないことからビスフェノールA 型エポキシ樹脂が好ましい。これらは1 種を単独で又は2 種以上を組み合わせて用いることができる。
【0118】
酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸などの二塩基性酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族多価カルボン酸無水物、その他これに付随する例えば5 − ( 2 , 5 − ジオキソテトラヒドロフリル) − 3 − メチル− 3 − シクロヘキセン− 1 , 2 − ジカルボン酸無水物のような多価カルボン酸無水物誘導体等が挙げられる。
【0119】
さらに、変性エポキシ樹脂に炭素−炭素2重結合を有するイソシアナート(例えば2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート)を付加させた樹脂も好ましく用いることができる。
【0120】
(E−3)のポリアミド酸とは、酸二無水物とジアミンを溶媒中で反応してえられるポリイミド前駆体のことを意味する。ポリアミド酸は、分子内にカルボン酸を有するためアルカリ現像液に可溶で、熱をかけることで容易に耐熱性の高いポリイミドに変換するため、感光性樹脂組成物として用いることが好ましい。
【0121】
(E−4)のカルボン酸或いは水酸基を有するポリイミドとは、水酸基或いはカルボキシル基を有するジアミンと酸二無水物を溶媒中で反応してえられるポリアミド酸を加熱してポリイミドに変換することにより得ることができる。カルボン酸或いは水酸基を有するポリイミドは、分子内にカルボン酸を有するためアルカリ現像液に可溶で、耐熱性が高いことより感光性樹脂組成物として用いることが好ましい。
【0122】
(E−1)から(E−4)以外にフェノールノボラックのエポキシ変性(メタ)アクリレート・カルボン酸付加物、クレゾールノボラックのエポキシ変性(メタ)アクリレート・カルボン酸付加物(例えば、日華化学社製、オプトコートHP−100)、ビスフェノールAジエポキシの(メタ)アクリル酸付加物、スチレン−マレイン酸共重合体及びそのハーフエステル化物等も(E)成分のその他の樹脂として使用可能である。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0123】
上記(E)成分のその他の樹脂の重量平均分子量(MW)は、1000〜500000の範囲が好ましい。より好ましくは、1000〜100000の範囲である。MWが1000未満では被膜形成能が不足し、500000を越えると他成分との混合性や現像性、基板密着性が低下する。
【0124】
上記(E)成分のその他の樹脂がアルカリ可溶性である場合、酸価は5〜250mgKOH/gの範囲が好ましく、20〜180mgKOH/gの範囲がより好ましい。
(E)成分の好ましい添加量としては、(A)成分である鎖状ホスファゼン化合物及び(B)成分である光反応開始剤の総重量100重量部に対し、1〜500重量部の範囲内とすることが好ましく、5〜400重量部の範囲内とすることがより好ましく、10〜300重量部の範囲内とすることが特に好ましい。(E)成分が上記範囲を超えると
相対的に(A)成分の量が減り、十分な難燃効果が得られない場合がある。
【0125】
<(F)難燃剤>
本願発明は、鎖状ホスファゼン中に含まれるリンによって難燃性を発現する。しかしながら、(A)成分以外の(C)成分あるいは難燃性の低いセカンドバインダーを多量に含んだ場合には、難燃性向上のため、一部難燃剤を添加することができる。「難燃剤」とは、プラスチック、木材、または繊維等の可燃性物質に、添加または反応させることにより、可燃性物質を燃えにくくする働きのある物質のことを意味する。上記難燃剤としては、特に限定されないが、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスフィンオキサイド、ホスフィン、リン−窒素二重結合をもつホスファゼン化合物のようなリン系難燃剤、芳香族環の含有率が高いシリコーン化合物等を挙げることができる。これら難燃剤のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本発明においてリン系難燃剤とは、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスフィンオキサイド、ホスフィン、ホスファゼン化合物のようにリンを含む化合物のことを指す。
【0126】
感光性樹脂組成物との相溶性、難燃性の観点から、縮合リン酸エステル、ホスファゼン化合物リン系難燃剤を用いることが好ましい。
【0127】
縮合リン酸エステルとしては、例えば、CR−733S(レゾシノ−ルジホスフェート)(大八化学製)、CR−741(大八化学製)、CR−747(大八化学製)、およびPX−200(大八化学製)などが挙げられ、ホスファゼン化合物としては、SPE−100(大塚化学製)、SPH−100(大塚化学製)などが挙げられる。
【0128】
上記難燃剤の使用量は、上記(A)成分である鎖状ホスファゼン化合物及び(B)成分である光反応開始剤の総重量100重量部に対し、1〜100重量部の範囲内とすることが好ましく、1〜50重量部の範囲内とすることがより好ましく、1〜40重量部の範囲内とすることが特に好ましい。
【0129】
100重量部を超えると、後述するBステージ状態の感光性樹脂組成物にベタツキが見られたりする場合があり、さらに硬化物の物性に悪影響を与える場合があるために好ましくない。
【0130】
<(G)その他の成分>
本発明の感光性樹脂組成物には、上記(A)〜(F)成分以外に、必要に応じて(G)成分としてその他の成分が含有されていてもよい。その他の成分としては、例えば、エポキシ樹脂、硬化促進剤及び/又は硬化剤、重合禁止剤、安定剤、酸化防止剤、密着付与剤を挙げることができる。
【0131】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂を用いることにより、作製される感光性ドライフィルムレジストに銅箔やポリイミドフィルム等に対する接着性を向上させることができる。
【0132】
上記エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、製品名エピコート828、834、1001、1002、1003、1004、1005、1007、1010、1100L(ジャパンエポキシレジン(株)製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、製品名ESCN−220L、220F、220H、220HH、180H65(ジャパンエポキシレジン(株)製)等のo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、製品名EPPN−502H(日本化薬(株)製)等のトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、製品名ESN−375等のナフタレンアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、製品名ESN−185(新日鐵化学(株))等のノボラック型エポキシ樹脂、製品名YX4000H等のビフェノール型エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0133】
また、上記の他、ビスフェノールAグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールFグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ノボラックグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、芳香族型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂等であってもよい。
【0134】
上記エポキシ樹脂は、1種または2種以上を組み合わせて用いればよい。なお、上記エポキシ樹脂は、(A)成分100重量部に対し、必要に応じて1〜100重量部の範囲内で用いることが好ましく、0〜50重量部の範囲内で用いることがより好ましく、1〜30重量部の範囲内で用いることが特に好ましい。上記エポキシ樹脂が(A)成分100重量部に対して30重量部を超えると耐屈曲性の低下を引き起こす可能性がある。
【0135】
(硬化促進剤及び/又は硬化剤)
感光性樹脂組成物の材料としてエポキシ樹脂を用いた場合、作製される感光性ドライフィルムレジストの硬化を効率良く行うために、感光性樹脂組成物に硬化促進剤及び/又は硬化剤を添加してもよい。このような硬化促進剤及び/又は硬化剤としては特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂の硬化を効率良く行うためには、イミダゾ−ル系化合物、酸無水物、第3級アミン類、ヒドラジン類、芳香族アミン類、フェノール類、トリフェニルホスフィン類、有機過酸化物などを挙げることができる。これらの硬化促進剤及び/又は硬化剤のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いればよい。
【0136】
上記硬化促進剤及び/又は硬化剤の使用量は、(A)成分100重量部に対し0.1〜20重量部の範囲内であることが好ましく、0.5〜20重量部の範囲内であることがより好ましく、0.5〜15重量部の範囲内であることが特に好ましい。上記硬化促進剤及び/又は硬化剤が(A)成分100重量部に対して0.1重量部未満であると、エポキシ樹脂の硬化が十分に行われず、逆に20重量部を超えると耐熱性の低下を引き起こす可能性がある。
【0137】
(重合禁止剤、安定剤、酸化防止剤)
本発明の感光性樹脂組成物には、(A)成分及び/または(B)成分の感光性樹脂に含有されるビニル基、アクリル基、メタクリル基等の光重合性・熱重合性官能基が、感光性樹脂組成物及び感光性ドライフィルムレジストの貯蔵中に架橋反応するのを防止するため、重合禁止剤、安定剤、酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマー添加剤を添加することが好ましい。
【0138】
重合禁止剤としては、重合禁止剤、重合抑制剤として一般的に用いられているものであれば特に限定されない。安定剤としては、熱安定剤、光安定剤として一般に知られているものであれば、特に限定されない。酸化防止剤としては、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤として一般的に用いられているものであれば特に限定されない。
【0139】
上記の重合禁止剤、安定剤、酸化防止剤は、それぞれ別個の化合物であるとは限らず、1つの化合物が重合禁止剤としても酸化防止剤としても用いられる場合もある。
【0140】
本発明における重合禁止剤、安定剤及び酸化防止剤からなる群より選ばれるポリマー添加剤としては、一般的に重合禁止剤、重合抑制剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤として用いられているものであれば特に限定されないが、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン(和光純薬(株)製、商品名DOHQ)、2,5−ビス(1,1−ジメチルブチル)ハイドロキノン(和光純薬(株)製、商品名DHHQ)等のハイドロキノン系化合物;p−ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン、t−ブチルベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン等のベンゾキノン化合物;ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製、商品名イルガノックス1010)、N,N‘−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド](同社製、商品名イルガノックス1098)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(同社製、商品名イルガノックス3114)、ヒドロキシフェノールベンゾトリアゾール(旭電化工業(株)製、商品名アデカAO−20)等のヒンダードフェノール系化合物;2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−;クレゾール(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製、商品名TINUVIN P)等のベンゾトリアゾ−ル系化合物;N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン(和光純薬(株)製、商品名Q−1300)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩(和光純薬(株)製、商品名Q−1301)等のニトロソアミン系化合物;フェノチアジン、ジチオベンゾイルスルフィド、ジベンジルテトラスルフィド等の有機硫黄化合物;ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピぺリジル)[{3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル}メチル]ブチルマロネ−ト(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製、商品名イルガノックス144)等のヒンダードアミン系化合物;p−ェニレンジアミン(通称パラミン)、N,N−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等の芳香族アミン;トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(同社製、商品名イルガノックス168)テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスフォネート(同社製、商品名イルガノックスP−EPQ)等のリン系化合物などが挙げられる。
【0141】
特に、ハイドロキノン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ニトロソアミン系化合物、芳香族アミンであることが好ましい。これらの化合物を用いることにより、光重合性・熱重合性官能基の架橋反応を防ぐことができるため、感光性樹脂組成物の貯蔵中にその感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液の粘度の上昇を抑えることができ、酸化防止効果もあるので樹脂の劣化を防ぐことができ、感光性樹脂組成物の長期耐熱性や耐加水分解性を向上させることができる。
【0142】
(密着付与剤)
ポリイミドフィルム、金属等の基材との密着性を向上させるために、公知のいわゆる密着付与剤を添加してもよい。このような密着促進剤は特に限定されないが、例えば、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、トリアゾール、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0143】
<(H)有機溶媒>
本願発明において、(A)〜(G)成分に加え、有機溶媒を混合することができる。(H)有機溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、メチルモノグライム(1,2-ジメトキシエタン)、メチルジグライム(ビス(2-メトキシエテル)エーテル)、メチルトリグライム(1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン)、メチルテトラグライム(ビス[2-(2-メトキシエトキシエチル)]エーテル)、エチルモノグライム(1,2-ジエトキシエタン)、エチルジグライム(ビス(2-エトキシエチル)エーテル)、ブチルジグライム(ビス(2-ブトキシエチル)エーテル)等の対称グリコールジエーテル類、γ―ブチロラクトン、メチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、n―プロピルアセテート、ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名、カルビトールアセテート、酢酸2-(2-ブトキシエトキシ)エチル))、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1,3―ブチレングリコールジアセテート等のアセテート類や、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、1,3―ジオキソラン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類等を挙げることができ、これらは単独であるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0144】
本願発明の感光性樹脂組成物における(H)成分は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分必要に応じて(F)成分及び(G)成分を合計した100重量部に対して、10〜400重量部、より好ましくは、20〜200重量部、特に好ましくは、40〜100重量部である。
【0145】
上記範囲内に(H)成分の量を調整することにより、感光性樹脂組成物の粘度や粘性をスクリーン印刷などの塗工に適切な範囲内に調整することができるので好ましい。
【0146】
(H)成分が上記範囲よりも少ない場合には、感光性樹脂組成物の粘度が非常に高くなり、塗工が困難となり、塗工時の泡の巻き込み、レベリング性に劣る場合がある。また、(H)成分が上記範囲よりも多い場合には、感光性樹脂組成物の粘度が非常に低くなってしまい、塗工が困難となり、回路の被覆性に劣る場合がある。
【0147】
本願発明の感光性樹脂組成物には、更に必要に応じて、消泡剤、レベリング剤、着色剤、密着性付与剤、重合禁止剤等の添加剤を用いることができる。これら添加剤としては、特に限定はされないが、例えば、消泡剤としては、シリコン系化合物、アクリル系化合物、レベリング剤としては、シリコン系化合物、アクリル系化合物、着色剤としては、フタロシアニン系化合物、アゾ系化合物、カーボンブラック、酸化チタン、密着性付与剤としては、シランカップリング剤、トリアゾール系化合物、テトラゾール系化合物、トリアジン系化合物、重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0148】
本願発明の感光性樹脂組成物は、前記各成分(A)〜(H)成分を均一に混合して得られる。均一に混合する方法としては、例えば3本ロール、ビーズミル装置等の一般的な混練装置を用いて混合すればよい。また、溶液の粘度が低い場合には、一般的な攪拌装置を用いて混合してもよい。
【0149】
本願発明の感光性樹脂組成物は、以下のようにしてパタ−ンを形成することができる。先ず上記の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、乾燥して有機溶媒を除去する。基板への塗布はスクリ−ン印刷、ローラーコーティング、カ−テンコーティング、スプレーコーティング、スピンナーを利用した回転塗布等により行うことができる。塗布膜(好ましくは厚み:5〜100μm)の乾燥は120℃以下、好ましくは40〜100℃で行う。乾燥後、乾燥塗布膜にネガ型のフォトマスクを置き、紫外線、可視光線、電子線などの活性光線を照射する。次いで、未露光部分をシャワー、パドル、浸漬または超音波等の各種方式を用い、現像液で洗い出すことによりパタ−ンを得ることができる。なお、現像装置の噴霧圧力や流速、現像液の温度によりパターンが露出するまでの時間が異なる為、適宜最適な装置条件を見出すことが好ましい。
【0150】
上記現像液としては、アルカリ水溶液を使用することが好ましく、この現像液には、メタノ−ル、エタノ−ル、n−プロパノ−ル、イソプロパノ−ル、N−メチル−2−ピロリドン等の水溶性有機溶媒が含有されていてもよい。上記のアルカリ性水溶液を与えるアルカリ性化合物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウムイオンの、水酸化物または炭酸塩や炭酸水素塩、アミン化合物などが挙げられ、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、N−メチルジエタノ−ルアミン、N−エチルジエタノ−ルアミン、N,N−ジメチルエタノ−ルアミン、トリエタノ−ルアミン、トリイソプロパノ−ルアミン、トリイソプロピルアミン等が挙げられ、水溶液が塩基性を呈するものであればこれ以外の化合物も使用することができる。
【0151】
本願発明の感光性樹脂組成物の現像工程に好適に用いることのできる、アルカリ性化合物の濃度は、好ましくは0.01〜10重量%、特に好ましくは、0.05〜5重量%とすることが好ましい。また、現像液の温度は感光性樹脂組成物の組成や、現像液の組成に依存しており、一般的には0℃以上80℃以下、より一般的には、20℃以上50℃以下で使用することが好ましい。
【0152】
上記現像工程によって形成したパタ−ンは、リンスして不用な現像液残分を除去する。リンス液としては、水、酸性水溶液などが挙げられる。
【0153】
次に、加熱硬化処理を行うことにより耐熱性及び柔軟性に富む硬化膜を得ることができる。硬化膜は配線厚み等を考慮して決定されるが、厚みが2〜50μm程度であることが好ましい。このときの最終硬化温度は配線等の酸化を防ぎ、配線と基材との密着性を低下させないことを目的として低温で加熱して硬化させることが望まれている。この時の加熱硬化温度は100℃以上250℃以下であることが好ましく、更に好ましくは120℃以上200℃以下であることが望ましく、特に好ましくは130℃以上190℃以下である。最終加熱温度が高くなると配線の酸化劣化が進む場合がある。
【0154】
本願発明の感光性樹脂組成物から形成した硬化膜からなるパタ−ンは、耐熱性、難燃性、電気的及び機械的性質に優れており、特に柔軟性に優れている。例えば、この発明の絶縁膜は、好適には厚さ2〜50μm程度の膜厚で光硬化後少なくとも10μmまでの解像性、特に10〜1000μm程度の解像性である。この為、本願発明の絶縁膜は高密度フレキシブル基板の絶縁材料として特に適しているのである。また更には、光硬化型の各種配線被覆保護剤、感光性の耐熱性接着剤、電線・ケーブル絶縁被膜等に用いられる。
【0155】
本発明の感光性樹脂組成物溶液をPET等の支持体フィルム上に均一に塗布した後、加熱および/または熱風吹き付けを行い、感光性樹脂組成物溶液を乾燥、すなわち、感光性樹脂組成物溶液の有機溶媒を除去し、感光性樹脂組成物がフィルム状となった感光性ドライフィルムレジストとすることもできる。本発明の感光性樹脂組成物より得られる感光性ドライフィルムレジストをプリント配線板に熱ラミネート処理などの熱圧着処理を行い、プリント配線板のパターン回路を埋め込んだ後、露光処理、現像、熱硬化処理を行うことにより良好な特性を示す、本発明の感光性樹脂よりなる絶縁膜をプリント配線板に被覆した絶縁膜付きプリント配線板を製造することもできる。感光性ドライフィルムレジストの製造方法について簡単に説明する。
【0156】
<感光性ドライフィルムレジストの製造方法>
本発明にかかる感光性樹脂組成物は、感光性樹脂組成物溶液を支持体フィルム上に塗布して、乾燥することにより、感光性ドライフィルムレジストとすることができ、FPC等の導体面を保護するカバーレイフィルムとして用いることができる。したがって、上記感光性樹脂組成物から得られる感光性ドライフィルムレジスト、および、該感光性ドライフィルムレジストを絶縁膜として被覆した絶縁膜付プリント配線板も本発明に含まれる。
【0157】
なお、本発明の感光性樹脂組成物の用途は、感光性ドライフィルムレジストに限られるものではなく、感光性樹脂組成物溶液を直接FPC等に塗布して乾燥し、カバーレイフィルムとして用いてもよい。さらに、カバーレイフィルム以外にも、リジッドのプリント基板用ソルダーレジスト、ビルドアップ用絶縁膜等の用途に用いることができる。
【0158】
以下本発明にかかる感光性ドライフィルムレジスト、および、プリント配線板について説明する。
【0159】
(感光性ドライフィルムレジスト)
本発明にかかる感光性ドライフィルムレジストは、本発明の感光性樹脂組成物を用いて得られる感光性ドライフィルムレジストであり、上記感光性樹脂組成物溶液を支持体フィルム上に均一に塗布および乾燥することにより作製される。具体的には、上記の感光性樹脂組成物溶液を支持体フィルム上に均一に塗布した後、加熱および/または熱風吹き付けを行う。これによって、感光性樹脂組成物溶液を乾燥、すなわち、感光性樹脂組成物溶液の有機溶媒を除去し、感光性樹脂組成物がフィルム状となった感光性ドライフィルムレジストを得ることができる。
【0160】
なお、本明細書において、感光性ドライフィルムレジストとは、上記感光性樹脂組成物がフィルム状となったその層のことを意味し、支持体フィルム等との積層体を意味するものではない。なお、本発明にかかる感光性ドライフィルムレジストは、支持体フィルム上に形成された状態で存在していてもよいし、後述する支持体フィルムと保護フィルムとの三層構造シートの中の1つの層として存在していてもよいし、FPC等に積層された状態で存在していてもよい。
【0161】
上記支持体フィルムの材料は、特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリイミドフィルム等、通常市販されている各種のフィルムを使用することができる。上記支持体フィルムのうち、ある程度の耐熱性を有し、比較的安価に手に入る点から、PETフィルムをより好適に用いることができる。また、支持体フィルムの感光性ドライフィルムレジストとの接合面については、密着性と剥離性とを向上させるために、表面処理されているものを用いてもよい。
【0162】
上記支持体フィルムの膜厚は10μm以上125μm以下であることが好ましく、15μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0163】
また、上記支持体フィルムに、上記感光性樹脂組成物溶液を塗布する方法は特に限定されるものではなく、リバースコート、グラビアコート、ダイコート、コンマコート、スプレーコート等の方法を好適に用いることができる。
【0164】
上記加熱および/または熱風吹き付けを行うことによって、感光性樹脂組成物溶液を乾燥する時の温度は特に限定されるものではなく、例えば、感光性樹脂組成物に含有される(メタ)アクリル化合物等の硬化性基が反応しない程度の温度であればよい。具体的には、50℃以上150℃以下であることが好ましく、60℃以上130℃以下であることがより好ましい。また、乾燥時間は、有機溶媒を除去することが可能な範囲内で、より短い時間とすることが好ましい。通常乾燥時間は、0.5分〜30分である。また、乾燥後の感光性樹脂組成物の膜厚、すなわち、感光性ドライフィルムレジストの膜厚は、5μm以上75μm以下であることが好ましく、10μm以上60μm以下であることがより好ましい。
【0165】
このようにして作製された感光性ドライフィルムレジストは、感光性樹脂組成物を半硬化状態(Bステージ)で保ったものである。それゆえ、熱ラミネート処理等の熱圧着処理を行う場合には、適度な流動性を持ち、プリント配線板のパターン回路の埋め込みを好適に行うことができる。また、パターン回路を埋め込んだ後、露光処理、熱圧着処理、または加熱キュアを行うことによって、完全に硬化させることができる。
【0166】
また、感光性樹脂組成物を支持体フィルムに塗布し、乾燥して作製した感光性ドライフィルムレジストの上には、さらに、保護フィルムを積層することが好ましい。これにより、空気中のゴミやチリが付着することを防ぎ、感光性ドライフィルムレジストの乾燥による品質の劣化を防ぐことができる。
【0167】
上記保護フィルムは、感光性ドライフィルムレジスト面に、ラミネートして積層することが好ましい。なお、ラミネート処理時の温度は、保護フィルムの熱膨張が起こらず、ラミネート処理後の保護フィルムにしわやカールが生じない温度であればよい。具体的には、上記ラミネート処理時の温度は、10℃〜50℃の温度であることが好ましい。また、上記保護フィルムは、使用時には剥離するため、保護フィルムと感光性ドライフィルムレジストとの接合面は、保管時には適度な密着性を有し、かつ剥離性に優れていることが好ましい。
【0168】
上記保護フィルムの材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンフィルム(PEフィルム)、ポリエチレンビニルアルコールフィルム(EVAフィルム)、「ポリエチレンとエチレンビニルアルコールの共重合体フィルム」(以下、「(PE+EVA)共重合体フィルム」ともいう)、「PEフィルムと(PE+EVA)共重合体フィルムとの貼り合わせ体」、もしくは「(PE+EVA)共重合体とポリエチレンとの同時押し出し製法によるフィルム」(片面がPEフィルム面であり、もう片面が(PE+EVA)共重合体フィルム面であるフィルムとなる)等を挙げることができる。
【0169】
上記PEフィルムは安価であり、表面の滑り性に優れているという長所がある。また、(PE+EVA)共重合体フィルムは、感光性ドライフィルムレジストへの適度な密着性と剥離性とを備えている。このような保護フィルムを用いることにより、保護フィルム、感光性ドライフィルムレジスト、および支持体フィルムの3層を有する三層構造シートをロール状に巻き取った場合に、その表面の滑り性を向上することができる。
【0170】
(プリント配線板)
本発明にかかるプリント配線板は、上記感光性ドライフィルムレジストを絶縁保護層として形成してなるプリント配線板である。プリント配線板として、パターン回路が形成されてなるCCL(以下、「回路付きCCL」ともいう。)を用いる場合を例に挙げて説明するが、多層のプリント配線板を形成する場合にも、同様の手法により層間絶縁層を形成することができる。
【0171】
例えば、保護フィルム、感光性ドライフィルムレジスト、および支持体フィルムを有してなる三層構造シートから、保護フィルムを剥離する。以下では、保護フィルムが剥離されたものを「支持体フィルム付き感光性ドライフィルムレジスト」と記載する。そして、感光性ドライフィルムレジストと、回路付きCCLの回路部分とが対向するように、当該回路付きCCLを、支持体フィルム付き感光性ドライフィルムレジストにて覆い、熱圧着によって貼り合わせる。この熱圧着によって貼り合わせる方法は、特に限定されるものではなく、熱プレス処理、ラミネート処理(熱ラミネート処理)、熱ロールラミネート処理、または真空ラミネート処理等によって行えばよい。
【0172】
上記貼り合わせを、熱ラミネート処理、熱ロールラミネート処理(以下、「ラミネート処理」ともいう)によって行う場合、処理温度は、ラミネート処理が可能である下限の温度(以下、「圧着可能温度」ともいう)以上であればよい。また、上記処理温度の上限は、ラミネート処理時に、感光性ドライフィルムレジストに含まれる感光性反応基の架橋反応が起こる温度より低い温度であればよい。一方、処理温度の下限は、感光性ドライフィルムレジストが好適な流動性をもち、パターン回路を好適に埋め込むことができる温度であればよい。
【0173】
具体的には、上記処理温度は、50〜150℃の範囲内であることが好ましく、60〜120℃の範囲内であることがより好ましく、80〜120℃の範囲内であることがより好ましい。上記処理温度が、上記範囲内にあるとき、銅回路付きCCLの銅回路、または当該銅回路付きCCLのベースフィルムとの高い接着性を実現することができる。
【0174】
また、ラミネート処理をはじめとする熱圧着処理においては、圧力を加えることが好ましい。かかる圧力は、100Pa・m以上1000000Pa・m以下であることが好ましく、1000Pa・m以上100000Pa・m以下であることがより好ましい。加える圧力が上記範囲内であることにより、感光性ドライフィルムがはみ出すことなく、好適に密着させることができる。
【0175】
上記の熱圧着処理によって、回路付きCCL上に感光性ドライフィルムレジストが積層され、さらに支持体フィルムが積層された積層体が得られる。次いで、この積層体について、パターン露光および現像を行う。パターン露光および現像に際しては、上記積層体の支持体フィルム上に、フォトマスクパターンを配置し、該フォトマスクを介して露光処理を行う。その後、支持体フィルムを剥離して現像処理を行うことにより、フォトマスクパターンに応じた穴(ビア)が形成される。
【0176】
なお、上記支持体フィルムは、上述したように露光処理後に剥離してもよいし、回路付きCCL上に支持体フィルム付き感光性ドライフィルムレジストが貼り合わせられた後に、すなわち、露光処理を行う前に、剥離してもよい。感光性ドライフィルムレジストを保護する点からは、露光処理が完了した後に剥離することが好ましい。
【0177】
ここで露光に用いる光源としては、300〜430nmの光を有効に放射する光源が好ましい。この理由は、感光性ドライフィルムレジストに含有される光反応開始剤が、通常450nm以下の光を吸収して機能するためである。
【0178】
また、上記現像処理に用いる現像液としては、塩基性化合物が溶解した塩基性溶液を用いればよい。塩基性化合物を溶解させる溶媒は、特に限定されるものではなく、上記塩基性化合物を溶解することができる溶媒であればよい。その中でも、環境問題等の観点から、水を使用することが特に好ましい。
【0179】
上記塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、および炭酸水素ナトリウムなどの、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩や、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アミン化合物等を挙げることができる。上記塩基性化合物は、1種を用いてもよいし、2種以上の化合物を用いてもよい。
【0180】
上記塩基性溶液に含有される塩基性化合物の濃度は、0.1〜10重量%の範囲内であることが好ましく、感光性ドライフィルムレジストの耐アルカリ性の点から、0.1〜5重量%の範囲内とすることがより好ましい。
【0181】
なお、現像処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、塩基性溶液中に現像サンプルを入れて攪拌する方法、および現像液をスプレー状にして現像サンプルに噴射する方法等が挙げられる。
【0182】
また、上記塩基性溶液の液温は、10℃以上50℃以下であることが好ましく、25℃以上45℃以下であることがより好ましい。
【0183】
本発明においては、特に、液温を40℃に調整した1重量%濃度の炭酸ナトリウム水溶液を現像液に用い、スプレー現像機を用いて行う現像処理を好適に用いることができる。ここでいう「スプレー現像機」は、特に限定されるものではなく、現像液をスプレー状にしてサンプルに噴射する装置であればよい。
【0184】
感光性ドライフィルムレジストのパターンが描けるまでの現像時間は、パターンが描ける時間であればよい。例えば、180秒以下の時間で現像できることが好ましく、90秒以下の時間で現像できることがより好ましく、60秒以下の時間で現像できることが特に好ましい。現像時間が180秒を超えると生産性が劣る傾向がある。
【0185】
ここで、現像時間の目安として、Bステージ(半硬化状態)の感光性ドライフィルムレジストの溶解時間を測定する方法がある。具体的には、感光性ドライフィルムレジストを銅箔光沢面に貼り合わせたサンプルを、未露光の状態で、1重量%濃度の炭酸ナトリウム水溶液(液温40℃)を現像液として、スプレー圧0.85MPaで、スプレー現像処理を行うという方法である。このスプレー現像処理により、感光性ドライフィルムレジストが180秒以下の時間で溶解して除去されることが好ましい。感光性ドライフィルムレジストが溶解除去されるまでの時間が180秒を超えると、作業性が低下する傾向がある。
【0186】
上記のように、露光・現像処理が施された後、感光性ドライフィルムレジストに対して、加熱キュアを行うことにより、感光性ドライフィルムレジストが完全に硬化する。これにより、硬化した感光性ドライフィルムレジストは、プリント配線板の絶縁保護膜となる。加熱キュアを行うときの、温度、すなわちイミド化温度は120℃以上200℃以下であることが好ましく、140℃以上180℃以下であることがより好ましい。また、多層のプリント配線板を形成する場合には、プリント配線板の保護層を層間絶縁層とする。そして、該層間絶縁層上に、さらにスパッタリングや鍍金、もしくは銅箔との貼り合わせ等を行った後、パターン回路を形成し、上記のように感光性ドライフィルムレジストをラミネートすればよい。これにより、多層のプリント配線板を作製することができる。
【0187】
なお、本実施の形態では、感光性ドライフィルムレジストを、プリント配線板の絶縁保護材料または層間絶縁材料として用いる場合について説明したが、本発明は以上説示した各構成に限定されるものではなく、開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0188】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0189】
なお、実施例および比較例における分子量、クロスカットピール、半田耐熱性、感光能、耐マイグレーション性、反り、難燃性、ブリード及び屈曲性の評価法は次の通りである。
【0190】
〔分子量測定法〕
分子量は、高速GPC(東ソー社製、商品名HLC−8220GPC)を用いて測定した。測定条件は、DMF(0.036M LiBr,0.019Mリン酸含む)を展開溶媒とし、カラムとしてShodex製、商品名:KD−805−M 2本を用い、カラム温度を40℃とし、検出器としてPI(PEO標準)を用い、流量を0.6ml/minとした。
【0191】
〔クロスカットピール〕
感光性樹脂組成物をジメチルフォルムアミドに溶解して感光性樹脂溶液としたものをPETフィルム(厚み25μm)上に、乾燥後の厚みが25μmになるように塗布し、乾燥して有機溶剤を除去し、感光性ドライフィルムレジストとした。(乾燥条件は、100℃で10分である。)ポリイミドフィルム アピカル25NPI(カネカ製)と感光性ドライフィルムレジストとをあわせ110℃、20000Pa・mの条件でラミネートした。続いて400nmの光を300mJ/cm2だけ露光し、その後PETフィルムを剥離して180℃で2時間加熱し積層体を得た。この積層体について、IPC TM650 2.4.28.1のクロスカットピールの試験に準じて接着性の評価を行い、結果として100個中に残っている個数を記載した。(すべて残っていれば100個と記載。)
【0192】
〔半田耐熱性〕
クロスカットピールの測定項と同様に作成した感光性ドライフィルムレジストを電解銅箔(三井金属製3EC−VLP 1オンス)の輝面にあわせ100℃、20000Pa・mの条件でラミネートした。続いて400nmの光を300mJ/cm2だけ露光し、その後PETフィルムを剥離して180℃で2時間加熱し積層体を得た。この積層体を40℃95%RH 24時間調湿後、270℃の半田浴に10秒間浸漬し、表面の膨れおよび変色の有無を観察した。膨れおよび変色のなかければ○、変化があれば×とした。
【0193】
〔感光能〕
クロスカットピールの測定項と同様に作成した感光性ドライフィルムレジストを電解銅箔(三井金属製3EC−VLP 1オンス)の輝面に積層し、遮光しながら100℃、20000Pa・mでラミネート加工し積層体とした。積層体の上にマスクパターンをのせ、400nmの光を300mJ/cm2だけ露光し、1重量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温35℃)で現像した。フォトマスクパターンは、500μmφ、200μmφ、100μmφの微細な穴およびライン/スペースが500μm/500μm、200μm/200μm、100μm/100μmのラインを描いたものである。現像によって形成したパターンは、次いで蒸留水により洗浄して、現像液を除去した。100μmφの微細な穴および100μm/100μmのライン/スペースが描けていれば○、現像によって形成したパターンは、次いで蒸留水により洗浄して、現像液を除去した。500μmφの微細な穴および500μm/500μmのライン/スペースまでが描けていれば△、描けていなければ×とした。
【0194】
〔耐マイグレーション性〕
新日鐵化学製フレキシブル銅貼積層板(ポリイミド系の樹脂の片面に銅箔を形成している片面銅貼積層板:SC18−25−00FR)に、ライン/スペース=100/100μmの櫛型パターンを形成した。この櫛型パターンの上に、クロスカットピールの測定項と同様に作成した感光性ドライフィルムレジストを重ね合わせ、条件100℃、20000Pa・mでラミネートした。続いて400nmの光を400mJ/cm2だけ露光し、その後、PETフィルムを剥離して180℃で2時間加熱して積層体を得た。85℃、85%RHの環境試験機中で、得られた積層体の被覆した櫛型パターンの両端子に60Vの直流電圧を印加し、抵抗値の変化やマイグレーションの有無を観察した。
○:試験開始後、1000時間で10の8乗以上の抵抗値を示し、マイグレーション、デンドライトなどの発生が無いもの
×:試験開始後、1000時間でマイグレーション、デンドライトなどの発生があるもの
【0195】
〔反り〕
ポリイミドフィルム アピカル25NPI(カネカ製)にクロスカットピールの測定項と同様に作成した感光性ドライフィルムレジストをあわせ110℃、20000Pa・mの条件でラミネートした。続いて、400nmの光を300mJ/cm2だけ露光し、その後PETフィルムを剥離して180℃で2時間加熱し積層体を得た。この積層体を5cm各にカットして5cm×5cmの試験サンプルとした。試験サンプルを23℃65%RHの環境下に24時間放置後、感光性ドライフィルムレジスト面を上にして平らな台の上におき、台からそりあがった部分の最大高さを定規で測定し反り(mm)とした。反りが5mm以下を合格ラインとした。
【0196】
〔難燃性〕
ポリイミドフィルム アピカル25NPI(カネカ製)の両面にに感光能の測定の項目と同様に作成した感光性ドライフィルムレジストを重ねあわせ110℃、20000Pa・mの条件でラミネートした。続いて両面に400nmの光を300mJ/cm2ずつ露光し、PETフィルムを剥離して180℃で2時間加熱し積層体を得た。この積層体についてUL94薄手材料垂直燃焼試験(VTM−0)にしたがって試験を行った。VTM−0相当を○、非相当を×とした。
【0197】
〔ブリード〕
上記<反り>の項目と同様の方法で、作製した5cm×5cmの試験サンプルを85℃85%Rhの環境試験機の中に250時間放置し、取り出しサンプル表面を目視で難燃剤等の表面への析出の有無を観察した。析出が観察されれば×、観察されなければ○とした。
【0198】
〔屈曲性〕
上記<クロスカットピール>の項目と同様の方法で、25μm厚みのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製アピカル25NPI)表面に感光性樹脂組成物の硬化膜積層フィルムを作製した。硬化膜積層フィルムを30mm×10mmの短冊に切り出して、15mmのところで180°に10回折り曲げて塗膜を目視で確認してクラックの確認を行った。
○:硬化膜にクラックが無いもの
△:硬化膜に若干クラックがあるもの
×:硬化膜にクラックがあるもの
【0199】
〔実施例1〕
<鎖状クロロホスファゼン化合物の合成>
ヘキサクロロシクロホスファゼン115.89g(NPCl2単位換算で1モル:東京化成工業製)、2−ベンゾチアゾリルジエチルジチオカルバメート2g(東京化成工業製)、o−ジクロロベンゼン100gを反応容器にとり、窒素気流下190度で24時間攪拌を行った。
【0200】
反応終了後、反応溶液をn−ヘプタン500mlに投入し、うわ水液を捨て、析出物をn−ヘプタンで洗浄した。析出物を真空乾燥して、58gの鎖状クロロホスファゼン化合物を得た。この鎖状クロロホスファゼンの一部をアニリン中にとり、窒素中で80℃24時間反応した。反応液を水で洗浄、乾燥してGPCにて分子量測定したところ、重量平均分子量55000、数平均分子量16000であった。
【0201】
<鎖状ホスファゼン化合物の合成>
撹拌機、温度計、還流冷却管、水分離用受器および窒素導入管を備えた2リットルのフラスコ中に48%NaOH水溶液41.7g(0.50mol)、トルエン350mlおよびフェノール47.1g(0.50mol)を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌加熱し、共沸脱水(回収水 約61ml)を行い、フラスコ内の水分を除去しフェノールのNa塩を調製した。このスラリー溶液を30℃に冷却し、テトラヒドロフラン(THF)1250mlを仕込み、均一溶液とした。
【0202】
次に、撹拌機、温度計、還流冷却管および窒素導入管を備えた2リットルのフラスコ中に上記鎖状クロロホスファゼン46.36g(NPCl2単位換算で0.4モル)とトルエン300mlを仕込み、上記フェノールのNa塩溶液を撹拌下5℃で5時間かけて滴下し、25℃で3時間撹拌し、反応した。反応溶液をろ別し、撹拌機、温度計および還流冷却管を備えた2リットルのフラスコ中に移した。そのフラスコにピリジン158.2g(2.0mol)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.04gおよび上記反応液を仕込み、撹拌下25℃以下でメタクリル酸2−ヒドロキシエチル13.01
g(0.10mol)滴下し、55℃で24時間撹拌し、反応した。次いでヒドロキシフェニルプロピオン酸66.47g(0.40mmol)をTHFに溶かして滴下した。その後60度で30時間反応させた。
【0203】
反応終了後、トルエン800mlと水150mlを加え内容物を溶解させた後、分液ロートにて有機層の分液を行った。この有機層を5%HCl水溶液で2回洗浄し、更に水での洗浄を3回行い、この有機層をろ過した後、トルエンを留去した。
茶色の固体99.0g(収率87%:鎖状ホスファゼン化合物)を得た。この鎖状ホスファゼンの酸値は100.2mg/KOH、Pの含有量は11.2%であり、重量平均分子量60000、数平均分子量20000であった。
【0204】
〔実施例2〕
2−ベンゾチアゾリルジエチルジチオカルバメートかわりに、4−(2−ゼンゾチアゾリルジチオ)モルホリン2g(東京化成工業製)を用いたほかは実施例1と同様にして合成し、56gの鎖状クロロホスファゼン化合物を得た。この鎖状クロロホスファゼンの一部をアニリン中にとり、窒素中で80℃24時間反応した。反応液を水で洗浄、乾燥してGPCにて分子量測定したところ、重量平均分子量22000、数平均分子量6500であった。
【0205】
<鎖状ホスファゼン化合物の合成>
撹拌機、温度計、還流冷却管、水分離用受器および窒素導入管を備えた2リットルのフラスコ中に48%NaOH水溶液46.7g(0.56mol)、トルエン350mlおよびフェノール52.7g(0.56mol)を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌加熱し、共沸脱水(回収水 約61ml)を行い、フラスコ内の水分を除去しフェノールのNa塩を調製した。このスラリー溶液を30℃に冷却し、テトラヒドロフラン(THF)750mlを仕込み、均一溶液とした。
【0206】
次に、撹拌機、温度計、還流冷却管および窒素導入管を備えた2リットルのフラスコ中に上記で合成した鎖状クロロホスファゼン46.36g(NPCl2単位換算で0.4モル)とトルエン300mlを仕込み、上記フェノールのNa塩溶液を撹拌下5℃で5時間かけて滴下し、25℃で3時間撹拌し、反応した。反応溶液をろ別し、撹拌機、温度計および還流冷却管を備えた2リットルのフラスコ中に移した。そのフラスコにピリジン158.2g(2.0mol)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.04gおよび上記反応液を仕込み、撹拌下25℃以下でメタクリル酸2−ヒドロキシエチル10.41g(0.08mol)滴下し、55℃で24時間撹拌し、反応した。次いで3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオン酸35.43g(0.3モル:東京化成工業製)をTHFに溶かして滴下した。その後60度で30時間反応させた。 反応終了後、トルエン800mlと水150mlを加え内容物を溶解させた後、分液ロートにて有機層の分液を行った。この有機層を5%HCl水溶液で2回洗浄し、更に水での洗浄を3回行い、この有機層をろ過した後、トルエンを留去した。
茶色の固体89.2g(収率90%:鎖状ホスファゼン化合物)を得た。この鎖状ホスファゼンの酸値は89.8mg/KOH、Pの含有量は12.5%であり、分子量は重量平均分子量28000、数平均分子量6600であった。
【0207】
〔実施例3〕
実施例1の鎖状ホスファゼン化合物を(A)成分として、感光性樹脂組成物を調合し、感光性樹脂組成物とした。調合割合は、表1記載の通りである。その感光性樹脂組成物の評価結果を表3に記載した。
【0208】
〔実施例4〕
実施例2の鎖状ホスファゼン化合物を(A)成分として、感光性樹脂組成物を調合し、感光性樹脂組成物とした。調合割合は、表1記載の通りである。その感光性樹脂添え異物の評価結果を表3に記載した。
【0209】
〔実施例5〕
メタクリル酸、メタクリル酸メチル及びアクリル酸メチルを20:45:35の質量割合で共重合させた共重合体(重量平均分子量70,000、酸価117mg/g)を(E)成分として用いた。表1記載の割合で感光性樹脂組成物の調合し、その感光性樹脂組成物の評価結果は表3に記載する。
【0210】
〔実施例6〕
実施例5で合成したメタクリル酸、メタクリル酸メチル及びアクリル酸メチルの共重合体(重量平均分子量70,000、酸価117mg/g)を(E)成分として用いた。また、旭化成ケミカルズ株式会社製のブロックイソシアネート 商品名デュラネート TPA−B80E 固形分濃度80% 酢酸エチル溶液を(D)成分として用いた。表1記載の割合で感光性樹脂組成物の調合し、その感光性樹脂組成物の評価結果は表3に記載する。
【0211】
〔実施例7〕
(E)成分として以下の変性エポキシ樹脂として用い、表1記載の割合で感光性樹脂組成物の調合し、その感光性樹脂組成物の評価結果は表3に記載する。
【0212】
攪拌機、還流冷却器、不活性ガス導入口及び温度計を備えたフラスコに、ポリテトラメチレンエーテルグリコール( 平均分子量1,000);1,000g、セバシン酸;405gを仕込み、2時間かけて200℃に昇温しさらに3時間反応させた後冷却し、酸価81.9、分子量1,370のポリテトラメチレンエーテルグリコールの両末端にカルボキシル基を導入したポリテトラメチレンエーテルグリコールの両末端カルボン酸物を得た。
【0213】
攪拌機、還流冷却器、不活性ガス導入口及び温度計を備えたフラスコにγ−ブチロラクトン;100g、NMP;50gを仕込み、さらに上記ポリテトラメチレンエーテルグリコールの両末端カルボン酸物;55.6g、アジピン酸;6.1g、セバシン酸;8.3g、イソフタル酸;13.7g、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI);13.8g、コロネートT80(トリレンジイソシアネート;TDI;日本ポリウレタン工業社製);14.4gを仕込み、200℃に昇温し、4時間保温後冷却し、加熱残分40重量%、酸価(固形分)83.5のポリアミド樹脂を得た。さらにビスフェノールA 型エポキシ樹脂エピコート1001(ジャパンエポキシレジン製)141.5gを仕込み、140℃で2時間保温後ジメチルホルムアミド(DMF)を加え加熱残分40重量%にした。120℃ でアクリル酸; 10.7gを加え3時間保温後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA);90.6gを添加し1時間保温した。さらにグリシドール;58.4gを加え2時間保温後、THPA;240gを加え2時間保温した。次いでDMFで希釈し加熱残分55重量%、酸価(固形分)145mg/KOHの変性エポキシ樹脂を得た。
【0214】
〔実施例8〕
下記記載の可溶性ポリイミドを(E)成分として用いた。表1記載の割合で感光性樹脂組成物の調合し、その感光性樹脂組成物の評価結果は表3に記載する。
【0215】
<可溶性ポリイミド樹脂の合成>
撹拌機、温度計、還流冷却管および窒素導入管を備えた3リットルのガラス製フラスコ中に、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン277.7g(0.95mol)、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル10.7g(0.05mol)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)700mlを仕込み、窒素雰囲気下で撹拌溶解した。次に、フラスコ内の溶液を、窒素雰囲気下で撹拌し、4、4’−(4、4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸無水物(IPBP)のDMF溶液[IPBP520.5g(1.00mol)、DMF1,100ml]を5〜10℃で2時間かけて滴下し、さらに室温で3時間撹拌してポリアミド酸溶液を得た。得られたポリアミド酸溶液2,500gをフッ素樹脂(PTFE)でコートしたトレイに移し、真空オーブンで減圧加熱(条件:200℃、5.7hPa以下、6時間)することによって、可溶性ポリイミド樹脂750gを得た。
【0216】
〔実施例9〕
下記で合成したポリアミド酸を(E)成分として用いた。表1記載の割合で感光性樹脂組成物の調合し、その感光性樹脂組成物の評価結果は表3に記載する。
【0217】
攪拌機を設置した2000mlのセパラブルフラスコに、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物 31.02g(100mmol)、ジメチルホルムアミド 102.7gをとり、信越化学製ポリシロキサンジアミンX−22−9409S 59.68g(40mmol:分子量1492)をジメチルホルムアミド 59.68gに溶解して加え室温で1時間撹拌を行った。ついで、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン 17.54g(60mmol)を加え、3時間撹拌を続け、ポリアミド酸を得た。このポリアミド酸の重量平均分子量は80000であった。
【0218】
〔比較例1〕
<カルボキシル基と2重結合を有する環状ホスファゼンの合成>
3リットルのフラスコにヘキサクロロシクロホスファゼン115.89g(NPCl2単位換算で1モル:東京化成工業製)を入れ、脱水したベンゼン500gに溶解した。この中にピリジン500gとヒドロキノン0.3gを加えた。別に2ーヒドロキシエチルメタクリレート130gを200gのベンゼンに溶解し、この溶液を上記のフラスコ中に滴下し、80℃30時間反応させた。さらに、別にオキシ酢酸76gを100gのベンゼンに溶解し、この溶液を上記のフラスコ中に滴下し、さらに80℃30時間反応させた。反応後、濾過してピリジン・塩酸塩を除いた後、濾液を水洗し、ボウ硝で乾燥してから減圧蒸留により溶剤を除去して、粘調な反応生成物245gを得た。これらの酸価は226mgKOH/gであった。生成物は酸値より、[N=P(OCH2COOH)0.84{OCH2CH2OCOC(CH3)=CH21.163
比較例1で合成した環状ホスファゼンを用い、(A)成分を用いなかった他は実施例1と同じ条件で感光性樹脂組成物を調合した。調合割合を表2に、その感光性樹脂組成物の評価結果は表4に記載した。
【0219】
表4に記載したとおり、環状ホスファゼンを用いたために反りが大きく、屈曲性に劣っている。また、その他の特性も劣っている。
【0220】
〔比較例2〕
<フェニル基と2重結合を有する環状ホスファゼンの合成>
撹拌機、温度計、還流冷却管、水分離用受器および窒素導入管を備えた2リットルのフ
ラスコ中に48%NaOH水溶液83.3g(1.00mol)、トルエン650mlおよびフェノール98.8g(1.05mol)を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌加熱し、共沸脱水(回収水 約61ml)を行い、フラスコ内の水分を除去しフェノールのNa塩を調製した。このスラリー溶液を30℃に冷却し、テトラヒドロフラン(THF)250mlを仕込み、均一溶液とした。
【0221】
次に、撹拌機、温度計、還流冷却管および窒素導入管を備えた2リットルのフラスコ中にヘキサクロロシクロトリホスファゼンのトルエン溶液〔ヘキサクロロシクロトリホスファゼン115.87g(NPCl2単位換算で.1モル)、トルエン650ml〕を仕込み、上記フェノールのNa塩溶液を撹拌下5℃で5時間かけて滴下し、25℃で3時間撹拌し、反応した。反応終了後、反応液を約1,000mlまで濃縮した後、水500mlを加え内容物を溶解させた後、分液ロートにて有機層を分液した。更にこの有機層を水で洗浄した後、トルエンを留去した。
【0222】
次に、撹拌機、温度計および還流冷却管を備えた2リットルのフラスコ中にピリジン223.9g(2.83mol)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.04gおよび上記反応液を仕込み、撹拌下25℃以下でメタクリル酸2−ヒドロキシエチル221.2g(1.70mol)滴下し、55℃で18時間撹拌し、反応した。反応終了後、トルエン800mlと水150mlを加え内容物を溶解させた後、分液ロートにて有機層の分液を行った。この有機層を18%HCl水溶液で2回洗浄し、次に5%炭酸ナトリウム水溶液で中和し、更に水での洗浄を2回行い、この有機層をろ過した後、トルエンを留去した。その後ヘキサンで2回洗浄した後、ヘキサンを留去し、淡黄色の液体236.2g(収率89%)を得た。生成物は、[N=P(OC651{OCH2CH2OCOC(CH3)=CH213であり、P含有量は11.4%であった。
【0223】
比較例2で合成した環状ホスファゼンを用い、(A)成分を用いなかった他は実施例1と同じ条件で感光性樹脂組成物を調合した。調合割合を表2に、その感光性樹脂組成物の評価結果は表4に記載した。
【0224】
表4に記載したとおり、環状ホスファゼンを用いたために反りが大きく、屈曲性に劣っている。また、その他の特性も劣っている。
【0225】
〔比較例3〜7〕
表2の調合割合で感光性樹脂組成物を調合し、その感光性樹脂組成物の評価結果は表4に記載した。
【0226】
表4に記載したとおり、本発明の鎖状ホスファゼンを用いなければ、反りが大きくなる傾向と、屈曲性に劣る傾向を示す。また、その他の特性も劣っている。
【0227】
【表1】

【0228】
<1>チバ・スペシャルティーケミカルズ社製 光重合開始剤の製品名 イルガキュア819
<2>ダイセルサイテック株式会社製 ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレートの製品名 EB150
<3>日立化成工業株式会社製 ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレートの製品名 FA321M
<4>旭化成ケミカルズ株式会社製のブロックイソシアネート 商品名デュラネート
TPA−B80E 固形分濃度80% 酢酸エチル溶液
【0229】
【表2】

【0230】
<1>チバ・スペシャルティーケミカルズ社製 光重合開始剤の製品名 イルガキュア819
<2>ダイセルサイテック株式会社製 ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレートの製品名 EB150
<3>日立化成工業株式会社製 ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレートの製品名 FA321M
<4>旭化成ケミカルズ株式会社製のブロックイソシアネート 商品名デュラネート
TPA−B80E 固形分濃度80% 酢酸エチル溶液
<5>大八化学工業製 製品名PX−200(芳香族縮合リン酸エステル)
<6>ナバルテック社製 難燃剤(水酸化アルミ)の製品名 平均粒子径:1.1μm
<7>大塚化学製 製品名SPB−100(環状ホスフェゼン化合物)
【0231】
【表3】

【0232】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖に、アリール基、炭素−炭素二重結合及びカルボキシル基を有する鎖状ホスファゼン化合物。
【請求項2】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する請求項1記載の鎖状ホスファゼン化合物。
【化1】

(式中Aは下記のA1基、A2基及びA3基からなる群から選ばれた基を示し、少なくとも一つがA1基であり、少なくとも一つがA2基であり、少なくとも一つがA3基である。
A1基:炭素数6〜20のアリール基であって、該アリール基の少なくとも1つの水素が、炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基で置換されていてもよい。
A2基:下記の一般式(2)で示されるアクリロイルオキシアルキレン基又はメタクリロイルオキシアルキレン基。
【化2】

(式中、R2は、水素原子又はメチル基を示し、R1は−(CH2m−、又は下記(群−1)から選ばれる基を示し、mは1〜8の整数を示す。)
【化3】

A3基:下記一般式(3)で表される基。
(式中、R3は−(CH2p−又は一般式(4)で表される基を示し、pは1〜12の整数、rは0〜12の整数を示す。)
【化4】

【化5】

【請求項3】
請求項1または2記載の(A)鎖状ホスファゼン化合物と(B)光反応開始剤を必須成分とすることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3記載の(A)及び(B)成分に加えて、(C)2重結合を有する化合物を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4記載の(A)、(B)及び(C)成分に加えて、(D)イソシアネート系化合物(ブロックイソシアネート)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項6】
少なくとも請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物に溶媒を加えてなる感光性液状レジスト。
【請求項7】
少なくとも請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基材表面に塗布した後、乾燥して得られた感光性ドライフィルムレジスト。
【請求項8】
請求項6記載の感光性液状レジスト又は請求項7記載の感光性ドライフィルムレジストを硬化させて得られる絶縁膜。
【請求項9】
請求項8記載の絶縁膜をプリント配線板に被覆した絶縁膜付きプリント配線板。

【公開番号】特開2010−53214(P2010−53214A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218023(P2008−218023)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】