新規スルホン酸塩及びその誘導体、光酸発生剤並びにこれを用いたレジスト材料及びパターン形成方法
【課題】レジスト溶剤及び樹脂に対する溶解性(相溶性)が十分高く、保存安定性が良好であり、PED安定性があり、焦点深度がより広く、感度が良好であり、特に解像性とパターンプロファイル形状に優れた化学増幅型レジスト材料を与える化学増幅型レジスト材料用として有効な新規スルホン酸塩と光酸発生剤及びこれを用いたレジスト材料、フォトマスクブランク、並びにパターン形成方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(2)で示されるスルホン酸塩。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3-M+ (2)
(式中、R1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。M+はカチオンを示す。)
【解決手段】下記一般式(2)で示されるスルホン酸塩。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3-M+ (2)
(式中、R1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。M+はカチオンを示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト材料の光酸発生剤等として好適に用いられる新規スルホン酸塩及びその誘導体、光酸発生剤、これを用いたレジスト材料、及びパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、次世代の微細加工技術として遠紫外線リソグラフィーが有望視されている。
近年、遠紫外線の光源として高輝度なKrFエキシマレーザー、更に波長の短いArFエキシマレーザーを利用する技術が注目されており、更に投影レンズとウエハーの間に水、エチレングリコール、グリセリン等の空気より屈折率の高い液体を挿入することによって、投影レンズの開口数(NA)を1.0以上に設計でき、高解像度を達成することができるArF液浸リソグラフィーも急浮上してきた(例えば、非特許文献1参照)。露光光の短波長化とレジスト材料の高解像度化で、より微細な加工技術が要望されている。
このような観点から、近年開発された酸を触媒とした化学増幅型レジスト材料は、感度、解像度、ドライエッチング耐性が高く、優れた特徴を有するもので、遠紫外線リソグラフィーに特に有望なレジスト材料である。この化学増幅型レジスト材料には、露光部が除去され未露光部が残るポジ型と露光部が残り未露光部が除去されるネガ型がある。
【0003】
アルカリ現像液を用いる化学増幅ポジ型レジスト材料では、アルカリ可溶性のフェノールあるいはカルボン酸の一部もしくは全部を酸に不安定な保護基(酸不安定基)で保護した樹脂及び/又は化合物を露光により生じた酸で触媒的に分解し、露光部にフェノールあるいはカルボン酸を生じさせて露光部をアルカリ現像液で除去する。また、同ネガ型レジスト材料では、アルカリ可溶性のフェノールあるいはカルボン酸を有する樹脂及び/又は化合物と酸で上記樹脂あるいは化合物を結合(架橋)することができる化合物(酸架橋剤)を露光により生じた酸で架橋させて露光部をアルカリ現像液に不溶化し、未露光部をアルカリ現像液で除去するものである。
【0004】
上記化学増幅ポジ型レジスト材料は、ベースとなる酸不安定基を有する樹脂と放射線照射により酸を発生する化合物(以下、光酸発生剤と略する)を溶剤に溶解したレジスト溶液を調製し、基板上に種々の方法で塗布し、必要により加熱し、溶媒を除去してレジスト膜を形成する。次いで、放射線照射、例えば遠紫外線を光源としてこのレジスト膜に所定のマスクパターンを通じて露光を行う。更に必要に応じて酸による触媒反応を進めるために露光後の焼成(PEB:post exposure bake)を行い、アルカリ水溶液による現像を行い、露光部のレジスト膜を除去することでポジ型のパターンプロファイルを得る。種々の方法で基板をエッチングした後、残存するレジスト膜を剥離液による溶解やアッシングにより除去して基板上にパターンプロファイルを作製する。
【0005】
KrFエキシマレーザー用の化学増幅ポジ型レジスト材料には、フェノール系の樹脂、例えばポリヒドロキシスチレンのフェノール性水酸基の水素原子の一部あるいは全部を酸に不安定な保護基で保護した樹脂が用いられており、光酸発生剤にはヨードニウム塩やスルホニウム塩、ビススルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシジカルボキシイミド化合物、O−アレーンスルホニルオキシム化合物等が用いられてきた。更に、必要に応じて分子量3,000以下のカルボン酸及び/又はフェノール誘導体等のカルボン酸及び/又はフェノール性水酸基の水素原子の一部あるいは全部を酸不安定基で保護した溶解阻止/促進化合物、溶解特性向上のためのカルボン酸化合物、コントラスト向上のための塩基性化合物、塗布性向上のための界面活性剤等が添加される。
ここで10−カンファースルホン酸や2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホン酸を発生する光酸発生剤は、スルホニウム塩やヨードニウム塩系のみならず、O−アレーンスルホニルオキシム化合物においても拡散性を抑え、高解像性レジストの材料として非常に有用である(特許文献1〜4)。これらの光酸発生剤はバルキーな構造を有しているために酸拡散を適度に抑えており、良好なレジスト性能が発現するものと考えられる。
【0006】
しかしながら、要求されるパターンサイズの微細化に伴い、これらの光酸発生剤を用いた場合でも解像性が低い、環境に対する安定性が低い等の問題が生じてきた。この場合、解像性に関しては、用いる樹脂の酸不安定基をより酸に対して切れ易くすることや塩基性添加物、プロセス条件で改善しつつある。
【0007】
環境安定性は大きく分けて2種類ある。一つはレジスト膜上の空気中の塩基や、レジスト膜下の基板上の塩基で露光により発生した酸が失活する問題であり、これは酸強度の高い酸を発生する光酸発生剤を用いたときによく見られる現象である。また、もう一つの環境安定性の問題は、露光と露光後の焼成(PEB:post exposure bake)が長引く場合(PED:post exposure delay)にはレジスト膜中を発生酸が拡散して、酸不安定基が切れにくい場合には酸が失活し、酸不安定基が切れ易い場合には酸分解反応が進行し、パターンプロファイルが変動する場合が多い。例えばアセタールを中心とした酸不安定基を有する化学増幅ポジ型レジスト材料の場合には、未露光部の線幅が細くなる場合が多い。
【0008】
更に特許文献5では、非酸不安定基含有モノマーとの組み合わせにおいてアニオンバウンドPAGポリマーが開示されているが、非酸不安定基含有モノマーによりPAGとしての効果が弱まっており、解像性等は十分でない。
【0009】
上記のように、より高解像性を求めるためには、樹脂により切れ易い酸不安定基を導入し、光酸発生剤として比較的弱い酸を使用することが必要であるが、より切れ易く設計された酸不安定基は保存安定性に問題がある。しかし保存安定性に優れ、適度に切れ易い酸不安定基を導入した場合、光酸発生剤として上記に挙げた10−カンファースルホン酸や2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホン酸を生ずるような弱酸では、より微細化されたパターン形成においては解像性が不十分である。また、α−フルオロアルカンスルホン酸のような酸強度の高い酸を発生する光酸発生剤を使用すれば環境安定性に問題が生じる。そこで、光酸発生剤としては適度な酸強度を有する酸を発生することが望まれる。
【0010】
また、特に0.1μm以下の超微細加工技術として注目される電子線リソグラフィーにおいては、マスクパターン形成方法としても不可欠となっている。
しかし、電子線での描画は従来の一括露光に比べ時間がかかるため、スループットを上げるにはより高感度化が求められ、また描画中、描画後の真空中での経時安定性も重要な性能の一つとして求められる。また、シリコンウエハー上被覆膜(SiO2、TiN、Si3N3等)やマスクブランクス上の酸化クロムなど、基板によっては現像後のレジスト形状に影響(裾引き形状)を与えるものもあり、高解像性やエッチング後の形状を保つためには基板の種類に依存せずレジストのパターンプロファイルを矩形に保つことも重要な性能の一つとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平5−222257号公報
【特許文献2】特開平10−39500号公報
【特許文献3】特開2004−133393号公報
【特許文献4】特開平9−323970号公報
【特許文献5】特許第3613491号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】:Journal of photopolymer Science and Technology Vol.17, No.4, p587(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
レジスト材料の光酸発生剤としては、レジスト溶剤及び樹脂に対する溶解性(相溶性)が十分高いこと、保存安定性が良好であること、特にパターンプロファイル形状が良好であること、PED安定性、高解像性、より広い焦点深度、感度が良好であることが求められるが、従来の光酸発生剤ではこれらを満たしていない。
特にフォトマスクブランクスを加工する際には、マスクブランクス上でのパターンプロファイル形状の悪化は、最近において集積回路のパターンの微細化に伴いパターン倒れの原因ともなり、深刻な問題となっている。
【0014】
即ち、本発明の目的は、上記の種々問題を解決しつつ、特に解像性とパターンプロファイル形状に優れた化学増幅型レジスト材料を与える化学増幅型レジスト材料用として有効な新規スルホン酸塩と光酸発生剤及びこれを用いたレジスト材料、フォトマスクブランク、並びにパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、下記一般式(1)で示されるスルホン酸塩を提供する。
HO−C(CF3)2−CH2SO3-M+ (1)
(式中、M+はカチオンを示す。)
【0016】
上記一般式(1)で示されるスルホン酸塩は新規なスルホン酸塩であり、そして、上記一般式(1)で示されるこのようなスルホン酸塩であれば、光酸発生剤として有用な、後述する一般式(2)のスルホン酸塩を合成するための中間原料として用いることができる。
【0017】
また、本発明のスルホン酸塩は前記一般式(1)中のM+がリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ヨードニウムイオン及びスルホニウムイオンのいずれかであることが好ましい。
【0018】
このように、前記スルホン酸塩としてリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩のいずれかを用いれば、合成も簡便となり、上記一般式(1)で示される中間原料としてのスルホン酸塩の単離も容易となる。また、スルホニウム塩やヨードニウム塩であれば、アシル化することにより、たとえば光酸発生剤として有用な後述する一般式(3)または(4)で示されるスルホン酸スルホニウム塩や一般式(5)で示されるスルホン酸ヨードニウム塩を容易に得ることができる。ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩はカチオン交換を行うことにより、スルホニウム塩やヨードニウム塩の合成中間体として使用できる。
【0019】
前記スルホン酸塩は、2,2−ビストリフルオロメチルオキシランを硫黄化合物と水中で反応させることにより製造することができる。
【0020】
このように、後述する一般式(2)のスルホン酸塩の出発原料として2,2−ビストリフルオロメチルオキシランを用い、これを硫黄化合物と水中で反応させることにより、安価な原料かつ簡便な操作から中間原料となる上記一般式(1)で示されるスルホン酸塩を合成することができる。さらに溶媒として使用しているのが水であることから、環境的にも非常に優れているといえる。
【0021】
本発明は上記新規中間原料から合成できるスルホン酸塩として、下記一般式(2)で示されるスルホン酸塩を提供する。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3-M+ (2)
(式中、R1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。M+はカチオンを示す。)
【0022】
上記一般式(2)で示されるこのような本発明のスルホン酸塩は、分子内にエステル部位を有しているため、嵩の低いアシル基から嵩の高いアシル基等の導入が容易であり、分子設計の幅を大きくもつことができる。また、スルホ基のβ位に電子吸引性基であるトリフルオロメチル基を有しており、これに由来してその酸強度はα−フルオロスルホン酸より弱く、アルカンスルホン酸やアレーンスルホン酸よりも強くなるため、たとえば酸発生剤として用いればKrFリソグラフィーや電子線リソグラフィーにおいて、解像性に優れると共に環境安定性も満足することができるものとなる。
【0023】
また、本発明のスルホン酸塩は上記一般式(2)中のM+がリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ヨードニウムイオン及びスルホニウムイオンのいずれかであることが好ましい。
【0024】
上記一般式(2)中のM+がリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ヨードニウムイオン及びスルホニウムイオンのいずれかであれば、前述のように中間原料の合成が容易となり、所望の上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩も同様に容易に得ることができる。特に、スルホニウム塩やヨードニウム塩であれば、光酸発生剤として用いることができ、アンモニウム塩であれば、熱酸発生剤として用いることができる。
【0025】
上記一般式(2)で示される本発明のスルホン酸塩の具体例としては、下記一般式(3)または下記一般式(4)で示されるようなスルホン酸スルホニウム塩が挙げられる。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- R2R3R4S+ (3)
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- (R5(O)n)mPh’S+Ph2 (4)
(式中、R1は前記と同様である。R2、R3及びR4は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR2、R3及びR4のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。R5は置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0又は1を示す。Phはフェニル基を示す。Ph’はフェニル基の水素原子m個をR5(O)n−基に置換した基を示す。)
【0026】
このような上記一般式(3)または(4)で示されるスルホン酸スルホニウム塩であれば、紫外線、遠紫外線、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、シンクロトロン放射線等の高エネルギー線に感応して、後述する一般式(6)のスルホン酸を発生するので、たとえば有用な光酸発生剤として利用することができる。
【0027】
また、上記一般式(2)で示される本発明のスルホン酸塩の具体例として、下記一般式(5)で示されるスルホン酸ヨードニウム塩を挙げることもできる。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- ((R5(O)n)mPh’)2I+ (5)
(式中、R1は前記と同様である。R5は置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0又は1を示す。Ph’はフェニル基の水素原子m個をR5(O)n−基に置換した基を示す。)
【0028】
上記一般式(5)で示されるこのようなスルホン酸ヨードニウム塩においても、紫外線、遠紫外線、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、シンクロトロン放射線等の高エネルギー線に感応して、後述する一般式(6)のスルホン酸を発生するので、有用な光酸発生剤として利用することができる。
【0029】
本発明の光酸発生剤は、高エネルギー線に感応し、下記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生する化学増幅型レジスト材料用である。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- H+ (6)
(式中、R1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。)
【0030】
このように、光酸発生剤が、高エネルギー線に感応し、上記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生するものであれば、デバイス作製工程での塗布、露光前焼成、露光、露光後焼成、現像の工程において、適度な酸強度を有するため、特に解像性とパターンプロファイル形状に優れた化学増幅レジスト材料用として使用することができる。
【0031】
さらに、前記光酸発生剤が、上記一般式(3)〜(5)で示されるいずれか1つのスルホン酸塩からなることが好ましい。
【0032】
このように、本発明の上記一般式(3)〜(5)で示されるスルホン酸塩は、上記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生することができ、これを光酸発生剤とすれば、スルホ基のβ位に電子吸引性基であるトリフルオロメチル基を有しているので、α−フルオロスルホン酸よりも弱く、アルカンスルホン酸やアレーンスルホン酸よりも強い酸強度を得ることができ、特に、KrFリソグラフィーや電子線リソグラフィーにおいて、解像性に優れると共に環境安定性も満足することができるものとなる。
【0033】
本発明のレジスト材料は、ベース樹脂、酸発生剤及び有機溶剤を含有してなるものであり、前記酸発生剤として、上記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生するものを使用し、具体的には光酸発生剤として、上記一般式(3)〜(5)で示されるいずれか1つのスルホン酸塩からなる光酸発生剤を用いることができる。
【0034】
高エネルギー線照射により上記一般式(6)のスルホン酸を発生するこれらの光酸発生剤を用いたレジスト材料は、焦点余裕度に優れ、PEDが長時間にわたる場合にも線幅変動や形状劣化が少なく、現像後のパターンプロファイル形状に優れ、また、微細加工に適した高解像性を有する。
【0035】
本発明では、前記レジスト材料に含有されたベース樹脂が現像液に不溶あるいは難溶であって、酸によって現像液に可溶となる化学増幅ポジ型レジスト材料であることが好ましい。
【0036】
このように、前記レジスト材料のベース樹脂として、ポジ型のものを用いれば、高い解像性を得ることができ、さらに、本発明の酸発生剤を用いて化学増幅型とすることで、感度、ドライエッチング耐性も高くなり、特に遠紫外線リソグラフィーに有望なレジスト材料とすることができる。
【0037】
また、前記化学増幅型ポジ型レジスト材料に、更に塩基性化合物を添加することが好ましい。
【0038】
このように、本発明のレジスト材料に塩基性化合物を添加することにより、酸発生剤より発生する酸などがレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができ、レジスト感度の調整が容易となることに加え、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制することができ、さらに、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を一層向上することができる。
【0039】
また、本発明は、少なくとも、前記レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介して、高エネルギー線を用いてパターン露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0040】
このように、本発明のレジスト材料は、パターン形成方法に用いることができる。もちろん、エッチング工程、レジスト除去工程、洗浄工程等のその他の各種工程が行われても良いことは言うまでもない。
【0041】
さらに、本発明は、前記レジスト材料がクロム化合物膜上に形成されてなることを特徴とするフォトマスクブランクを提供する。
【0042】
このように、フォトマスクを製造する場合、クロム系材料を最表面の材料として持つフォトマスクブランクの加工に本発明のレジスト材料を用いると、レジストパターンが基板依存性の影響を受けにくいため、本発明のパターン形成方法を有利に適用でき、高解像性、経時安定性が得られるため、信頼性の高いフォトマスクの製造を行うことができるフォトマスクブランクとなる。
【発明の効果】
【0043】
以上説明したように、本発明によれば、上記一般式(1)で示されるスルホン酸塩を中間原料として、上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩を合成することができ、この上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩が分子内にエステル部位を有しているため、嵩の低いアシル基から嵩の高いアシル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、アントライル基等の導入が容易であり、光酸発生剤としての分子設計の幅を大きく持つことができる。そして、このような上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩、具体的には上記一般式(3)〜(5)で示されるスルホン酸塩を光酸発生剤として用いれば、上記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生し、デバイス作製工程での塗布、露光前焼成、露光、露光後焼成、現像の工程において適度な酸強度を有するため、特に解像性とパターンプロファイル形状に優れた化学増幅レジスト材料用として使用できる。また、特にKrFエキシマレーザーや電子線照射用レジスト材料において適度な酸強度を有する。更には、高エネルギー線照射により上記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生する前記光酸発生剤を用いた化学増幅型レジスト材料は、焦点余裕度に優れ、PEDが長時間にわたる場合にも線幅変動、形状劣化が少なく、現像後のパターンプロファイル形状に優れ、また微細加工に適した高解像性を有する。更に、本発明の光酸発生剤はスルホ基のβ位に電子求引性基であるトリフルオロメチル基を有しており、これに由来してその酸強度はα−フルオロスルホン酸より弱く、アルカンスルホン酸やアレーンスルホン酸よりも強い。したがって、本発明の光酸発生剤を用いれば、KrFリソグラフィーや電子線リソグラフィーにおいて、解像性に優れると共に環境安定性も満足することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】合成例1−9のPAG−1の1H−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図2】合成例1−9のPAG−1の19F−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図3】合成例1−10のPAG−2の1H−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図4】合成例1−10のPAG−2の19F−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図5】合成例1−11のPAG−3の1H−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図6】合成例1−11のPAG−3の19F−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図7】合成例1−12のPAG−4の1H−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図8】合成例1−12のPAG−4の19F−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図9】合成例1−13のPAG−5の1H−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図10】合成例1−13のPAG−5の19F−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図11】合成例1−14のPAG−6の1H−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図12】合成例1−14のPAG−6の19F−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明についてより具体的に説明する。
前述のように、レジスト材料の光酸発生剤としては、レジスト溶剤及び樹脂に対する溶解性(相溶性)が十分高いこと、保存安定性が良好であること、特にパターンプロファイル形状が良好であること、PED安定性、高解像性、より広い焦点深度、感度が良好であることが求められるが、従来の光酸発生剤ではこれらを全ては満たしていない。特にフォトマスクブランクスを加工する際には、マスクブランクス上でのパターンプロファイル形状の悪化は、最近において集積回路のパターンの微細化に伴いパターン倒れの原因ともなり、深刻な問題となっている。
【0046】
本発明者らは、上記の種々問題を解決しつつ、特に解像性とパターンプロファイル形状に優れた化学増幅型レジスト材料を与える化学増幅型レジスト材料用として有効な新規スルホン酸塩と光酸発生剤及びこれを用いたレジスト材料、フォトマスクブランク、並びにパターン形成方法を提供するという目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、工業的に入手可能な2,2−ビストリフルオロメチルオキシランを出発原料とし、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の硫黄化合物との反応により、2−ヒドロキシ−2,2−ビストリフルオロメチルエタンスルホン酸塩が得られ、このスルホン酸塩を中間原料として合成されたスルホン酸スルホニウム塩、スルホン酸ヨードニウム塩に代表される化合物を酸発生剤として用いたレジスト材料がPED安定性、パターン形状、解像性、感度といった諸特性に優れ、レジスト材料として精密な微細加工に極めて有効であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0047】
すなわち、本発明の光酸発生剤として有用な一般式(2)で示されるスルホン酸塩の中間原料となるスルホン酸塩として、下記一般式(1)が示される。
HO−C(CF3)2−CH2SO3-M+ (1)
(式中、M+はカチオンを示す。)
【0048】
ここでM+としては、安定なスルホン酸塩として存在できるものであれば特に制限されるものではないが、合成の簡便さ、スルホン酸塩の単離のしやすさからリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ヨードニウムイオン、スルホニウムイオンが好ましく用いられる。
【0049】
M+がアンモニウムイオン、スルホニウムイオン及びヨードニウムイオンのいずれかである場合、下記一般式(7)によって示される。
(R6)m’A’+ (7)
(式中、A’は窒素原子、硫黄原子及びヨウ素原子のいずれかを示す。R6は相互に独立に水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR6のいずれか2つ以上が相互に結合して式中のA’と共に環を形成してもよい。但し、A’が硫黄原子、ヨウ素原子の場合にはR6は水素原子を示さない。m’はA’が窒素原子の場合には4、A’が硫黄原子の場合には3、A’がヨウ素原子の場合には2を示す。)
【0050】
R6における置換基としては、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、カルボニル基等が挙げられ、R6としては具体的には下記のものが挙げられる。
アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロぺニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。オキソアルキル基としては、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基、2−オキソプロピル基、2−オキソエチル基、2−シクロペンチル−2−オキソエチル基、2−シクロヘキシル−2−オキソエチル基、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−オキソエチル基等を挙げることができる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、チエニル基等や、4−ヒドロキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−tert−ブトキシフェニル基、m−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基、ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としてはベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等が挙げられる。アリールオキソアルキル基としては、2−フェニル−2−オキソエチル基、2−(1−ナフチル)−2−オキソエチル基、2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル基等の2−アリール−2−オキソエチル基等が挙げられる。
【0051】
A’が窒素原子であり、R6のいずれか2つ以上が相互に結合して窒素原子と共に環状構造を形成する場合には、ピペリジン、モルホリン、ピリジン、キノリン、アクリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール等の構造等が挙げられ、その窒素原子上がプロトン化されていてもアルキル化されていてもよい。更には置換基としてアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等の重合可能な置換基を有するアリール基が挙げられ、具体的には4−(アクリロイルオキシ)フェニル基、4−(メタクリロイルオキシ)フェニル基、4−ビニルオキシフェニル基、4−ビニルフェニル基等が挙げられる。また、A’が硫黄原子であり、R6のいずれか2つが相互に結合して硫黄原子と共に環状構造を形成する場合には、テトラヒドロチオフェン、1,4−チオキサン、ジベンゾチオフェン、フェノキサチイン等の構造が挙げられる。
【0052】
より具体的な(R6)m’A’+の例として、A’が窒素原子の場合には、アンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリオクチルアンモニウム、アニリニウム、2,6−ジメチルアニリニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリプロピルアンモニウム、N−ベンジル−N,N−ジメチルアニリニウム、N−(p−メトキシ)ベンジル−N,N−ジメチルアニリニウム等が挙げられ、A’が硫黄原子の場合には、トリフェニルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4―ヒドロキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(4−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、(3−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ジフェニル(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ビス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、2−ナフチルジフェニルスルホニウム、ジメチル−2−ナフチルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、4−メトキシフェニルジメチルスルホニウム、トリメチルスルホニウム、2−オキソシクロヘキシルシクロヘキシルメチルスルホニウム、トリナフチルスルホニウム、トリベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウム、ジメチルフェニルスルホニウム、2−オキソ−2−フェニルエチルチアシクロペンタニウム、ジフェニル2−チエニルスルホニウム、4−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、2−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、4−メトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、2−メトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、4−メチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−エチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−ヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−オクチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−エトキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−シクロヘキシルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−ヘキシルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−オクチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−ドデシルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−トリフルオロメチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−トリフルオロメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、10−フェニルフェノキサチイニウム等が挙げられる。より好ましくはトリフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウム、ジメチルフェニルスルホニウム、2−オキソ−2−フェニルエチルチアシクロペンタニウム、10−フェニルフェノキサチイニウム等が挙げられ、A’がヨウ素原子の場合には、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−エチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−(1,1−ジメチルプロピル)フェニル)ヨードニウム、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム、4−tert−ブトキシフェニルフェニルヨードニウム、4−アクリロイルオキシフェニルフェニルヨードニウム、4−メタクリロイルオキシフェニルフェニルヨードニウム等が挙げられる。
【0053】
次に、上記一般式(1)で示される本発明の中間原料としてのスルホン酸塩における合成法について述べる。
【0054】
2,2−ビストリフルオロメチルオキシランを出発原料とし、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩等の硫黄化合物と水中で反応させることにより、中間原料である上記一般式(1)で示されるスルホン酸塩を簡便に合成することができる。反応温度は0℃〜50℃、好ましくは20℃〜50℃である。また、2,2−ビストリフルオロメチルオキシランと反応させる塩としては、亜硫酸水素ナトリウムが安価で取り扱いやすく好ましい。
【0055】
前述した手法により、安価な原料かつ簡便な操作から、上記一般式(1)で示される本発明の中間原料としてのスルホン酸塩が製造できる。さらに溶媒として使用しているのが水であることから、環境的にも非常に優れているといえる。
【0056】
上記一般式(1)で示される本発明の中間原料としてのスルホン酸塩について、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等は、有用な合成中間体となり得る。すなわち、後述するカチオン交換及びアシル化の手法により、本発明の一般式(3)または(4)で示されるスルホン酸スルホニウム塩や本発明の一般式(5)で示されるスルホン酸ヨードニウム塩へと容易に変換され、これらは光酸発生剤として活用される。更に、アンモニウム塩は熱酸発生剤前駆体としても使用でき、総じて上記一般式(1)で示される本発明の中間原料としてのスルホン酸塩の利用価値は極めて高いといえる。
【0057】
本発明では、中間原料である上記一般式(1)で示されるスルホン酸塩をアシル化することにより、光酸発生剤として有用な所望の下記一般式(2)で示されるスルホン酸塩を合成することができる。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3-M+ (2)
(式中、R1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。M+は上記と同様である)
【0058】
アシル化反応としては、公知のエステルの製造方法、例えば、アシル化剤との反応、カルボン酸との反応が適用できるが、アシル化剤との反応が特に好ましい。アシル化剤を用いる反応では、好ましくは塩化メチレン、クロロフォルム、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、へキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、アセトニトリルなどのニトリル類、アセトン、2−ブタノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸n−ブチルなどのエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどの非プロトン性極性溶媒類から選択して単独あるいは2種類以上を混合しての溶媒中、上記一般式(1)で示されるスルホン酸塩と、カルボン酸クロリドあるいはカルボン酸無水物、カルボン酸トリフルオロ酢酸混合オニウム酸無水物、カルボン酸ピバリン酸混合酸無水物等のアシル化剤と、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基類を順次又は同時に加えて反応させる。酸無水物等のアシル化剤を用いる反応では塩基の代わりに塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸等の無機酸類、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸類から選ばれる酸触媒下に反応を行うこともできる。アシル化反応温度は用いるアシル化剤の種類や反応条件により適切な反応温度を選択できるが、一般的には−50℃から溶媒の沸点程度が好ましく、−20℃から室温程度が更に好ましい。アシル化剤の使用量は、構造に依存するが、アルコール化合物1モルに対し1〜40モル、好ましくは1〜5モルの範囲である。カルボン酸との反応は、対応するカルボン酸とスルホン酸塩からの脱水反応であり、酸触媒下に行うのが一般的である。カルボン酸の使用量は、構造に依存するが、アルコール化合物1モルに対し1〜40モル、好ましくは1〜5モルの範囲である。酸触媒の例として、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸等の無機酸類、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸類を例示でき、これらは単独又は混合して用いられる。酸触媒の使用量は、アルコール化合物1モルに対し0.001〜1モル、好ましくは0.01〜0.05モルの触媒量である。溶媒としては、上記エステル化剤との反応に挙げたものと同様のものを例示できるが、一般的には−50℃から溶媒の沸点程度が好ましい。へキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類を含む溶媒を用いて、生じる水を共沸により系外に除去しながら反応を進行させるのもよい。この場合、常圧で溶媒の沸点で還流しながら水を留去してもよいが、減圧下に沸点より低い温度で水の留去を行ってもよい。
【0059】
上記一般式(1)で示される中間原料のスルホン酸塩から上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩を得る工程において、反応溶媒への溶解性の観点から、M+がアンモニウムイオン、スルホニウムイオン及びヨードニウムイオンのいずれかであることが特に好ましい。M+がスルホニウムイオンやヨードニウムイオンである場合、その後の光酸発生剤として利用できる。また、M+がアンモニウムイオンである場合は、熱酸発生剤として使用できる。
【0060】
上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩は、アシル化剤を選択することにより分子設計の幅を大きく持たせることができるため、種々の条件に適応した熱酸発生剤あるいは光酸発生剤を調製することが可能であり、その利用価値は極めて高いといえる。
【0061】
ここで、上記一般式(2)におけるR1としては、具体的には下記のものが挙げられる。
アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、1−アダマンチル基、1−アダマンチルメチル基、ステロイド構造含有基等が挙げられる。オキソアルキル基としては、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基、4−オキソシクロヘキシル基、2−オキソプロピル基、2−オキソエチル基、2−シクロペンチル−2−オキソエチル基、2−シクロヘキシル−2−オキソエチル基、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−オキソエチル基、4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−5−オン−9−イル基、4−オキソ−1−アダマンチル基等を挙げることができる。アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントラニル基、チエニル基等や、4−ヒドロキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−tert−ブトキシフェニル基、3−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基、ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としてはベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等が挙げられる。アリールオキソアルキル基としては、2−フェニル−2−オキソエチル基、2−(1−ナフチル)−2−オキソエチル基、2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル基等の2−アリール−2−オキソエチル基等が挙げられる。その他、ビニル基、イソプロペニル基等が挙げられる。
【0062】
R1の中で特に好ましく用いられるものとして、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、1−アダマンチルメチル基、4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−5−オン−9−イル基、4−オキソ−1−アダマンチル基、ステロイド構造含有基、フェニル基、1−ナフチル基、イソプロペニル基等が挙げられる。
【0063】
上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩の具体例としては、下記一般式(3)で示されるスルホン酸スルホニウム塩を挙げることができる。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- R2R3R4S+ (3)
(式中、R1は上記と同様である。R2、R3及びR4は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR2、R3及びR4のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。)
【0064】
上記一般式(3)中のR2、R3及びR4として、具体的には以下のものが挙げられる。
アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。オキソアルキル基としては、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基、2−オキソプロピル基、2−オキソエチル基、2−シクロペンチル−2−オキソエチル基、2−シクロヘキシル−2−オキソエチル基、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−オキソエチル基等を挙げることができる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、チエニル基等や、4−ヒドロキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−tert−ブトキシフェニル基、3−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基、ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としてはベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等が挙げられる。アリールオキソアルキル基としては、2−フェニル−2−オキソエチル基、2−(1−ナフチル)−2−オキソエチル基、2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル基等の2−アリール−2−オキソエチル基等が挙げられる。また、R2、R3及びR4のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して硫黄原子を介して環状構造を形成する場合には、これらの環状構造を形成する基としては、1,4−ブチレン、3−オキサ−1,5−ペンチレン等の二価の有機基が挙げられる。更には置換基としてアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等の重合可能な置換基を有するアリール基が挙げられ、具体的には4−アクリロイルオキシフェニル基、4−メタクリロイルオキシフェニル基、4−アクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル基、4−メタクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル基、4−ビニルオキシフェニル基、4−ビニルフェニル基等が挙げられる。
【0065】
また、具体的にスルホニウムカチオンを示すと、トリフェニルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−ヒドロキシフェニル)スルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(4−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、3−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(3−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、3,4−ジ−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(3,4−ジ−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4−ジ−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ジフェニル(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウム、4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ビス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、2−ナフチルジフェニルスルホニウム、(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−n−ヘキシルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、ジメチル(2−ナフチル)スルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、4−メトキシフェニルジメチルスルホニウム、トリメチルスルホニウム、2−オキソシクロヘキシルシクロヘキシルメチルスルホニウム、トリナフチルスルホニウム、トリベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウム、ジメチルフェニルスルホニウム、2−オキソ−2−フェニルエチルチアシクロペンタニウム、ジフェニル2−チエニルスルホニウム、4−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、2−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、4−メトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、2−メトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム等が挙げられる。より好ましくはトリフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム、4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム等が挙げられる。更には4−メタクリロイルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−アクリロイルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−メタクリロイルオキシフェニルジメチルスルホニウム、4−アクリロイルオキシフェニルジメチルスルホニウム、(4−メタクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−アクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム等が挙げられる。これら重合可能なスルホニウムカチオンに関しては特開平4−230645号公報、特開2005−84365号公報等を参考にすることができ、これら重合可能なスルホニウム塩は後述する高分子量体の構成成分のモノマーとして用いることができる。
【0066】
この場合、上記一般式(3)で示されるスルホン酸スルホニウム塩として、さらに具体的には、下記一般式(4)で示されるスルホン酸スルホニウム塩が挙げられる。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- (R5(O)n)mPh’S+Ph2 (4)
(式中、R1上記と同様である。R5は置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0又は1を示す。Phはフェニル基を示す。Ph’はフェニル基の水素原子m個をR5(O)n−基に置換した基を示す。)
【0067】
上記一般式(4)中、R5−(O)n−基の置換位置は特に限定されるものではないが、フェニル基の4位あるいは3位が好ましい。より好ましくは4位である。R5としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、sec−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、更にn=1の場合にアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基が挙げられる。mは1〜5の整数であり、好ましくは1である。nは0又は1である。
【0068】
この場合、具体的なスルホニウムカチオンとしては、4−メチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−エチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−ヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−オクチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−エトキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−シクロヘキシルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−ヘキシルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−オクチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−ドデシルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−トリフルオロメチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−トリフルオロメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−メタクリロイルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−アクリロイルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、(4−n−ヘキシルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム)、(4−メタクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−アクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0069】
上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩の具体例として、下記一般式(5)で示されるスルホン酸ヨードニウム塩も挙げることができる。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- ((R5(O)n)mPh’)2I+ (5)
(式中、R1は前記と同様である。R5は置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0又は1を示す。Ph’はフェニル基の水素原子m個をR5(O)n−基に置換した基を示す。)
【0070】
上記一般式(5)中、R5−(O)n−基の置換位置は特に限定されるものではないが、フェニル基の4位あるいは3位が好ましい。より好ましくは4位である。R5としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、sec−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、更にn=1の場合にアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基が挙げられる。mは1〜5の整数であり、好ましくは1である。nは0又は1である。
【0071】
具体的なヨードニウムカチオンとして、例えばジフェニルヨードニウム、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−(1,1−ジメチルエチル)フェニル)ヨードニウム、ビス(4−(1,1−ジメチルプロピル)フェニル)ヨードニウム、(4−(1,1−ジメチルエトキシ)フェニル)フェニルヨードニウムなどが挙げられる。
【0072】
これら上記一般式(3)または(4)で示されるスルホン酸スルホニウム塩や上記一般式(5)で示されるスルホン酸ヨードニウム塩は、本発明の一般式(6)で示されるスルホン酸を発生する光酸発生剤としてレジスト材料用に使用することができ、このレジスト材料をパターン形成に適用することが可能である。
なお、後述する手法により、上記一般式(1)で示される本発明の中間原料としてのスルホン酸塩から、本発明の光酸発生剤となる上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩の中間体として有用なアンモニウム塩なども合成することができ、例えばアンモニウム塩として、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、N,N−ジメチルアニリニウムなどの3級アンモニウム塩や、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0073】
ここで、上記一般式(2)で示される本発明のスルホン酸塩の合成方法の一例として、上記一般式(3)で示されるスルホン酸スルホニウム塩の合成方法の一例について述べる。
まず、前述したように2,2−ビストリフルオロメチルオキシランと亜硫酸塩、亜硫酸水素塩等の硫黄化合物との反応から、中間原料の上記一般式(1)で示されるスルホン酸塩を合成する。ここでは反応試剤となる硫黄化合物として、安価で取り扱いやすく好ましいため亜硫酸水素ナトリウムを用いてスルホン酸ナトリウムを合成したが、これに限定されるものではない。
【0074】
次に、得られたスルホン酸ナトリウムに対して、スルホニウムハライド等のスルホニウム塩とイオン交換を行うことにより、上記一般式(1)のM+がスルホニウム塩である化合物を合成することができる。なお、イオン交換反応は特開2007−145797号公報などに詳しく述べられているが、例えばスルホニウムハライドの混合物をジクロロメタン−水の2層系で反応させ、水層を除去し、有機層を濃縮することで目的物となるスルホニウム塩を合成・回収することができる。また、スルホン酸塩は一度単離してからイオン交換反応を行ってもよいし、粗製物のままでも構わない。
【0075】
続いて、得られたスルホン酸スルホニウム塩をアシル化することで、所望の一般式(3)で示されるスルホン酸スルホニウム塩を得ることができる。アシル化の方法については、前述の通りである。
【0076】
以上の工程を下記スキームに示す。
【化1】
(式中、R1、R2、R3、R4は上記と同様である。X−はI−、Br−、Cl−、MeOSO3−、等のアニオンを示す)
【0077】
上述したように、本発明の中間原料である上記一般式(1)で示されるスルホン酸塩や光酸発生剤として有用な所望の上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩は複雑な工程や高価な原料を含むことなく合成することが可能である。
また、他のスルホニウムハライドやヨードニウムハライドを用いて、同様の手法により、トリフェニルスルホニウム以外のスルホン酸スルホニウム塩や、スルホン酸ヨードニウム塩等も合成することができる。
【0078】
カチオン交換の際に用いられるスルホニウムハライド等のスルホニウム塩やヨードニウムハライド等のヨードニウム塩は、The Chemistry of sulfonium group Part 1 John−Wiley & Sons (1981)、Advanced Photochemistry, vol.17 John−Wiley & Sons (1992)、J.Org.Chem.,1988.53.5571−5573あるいは特開平8−311018号公報、特開平9−15848号公報、特開2001−122850号公報、特開平7−25846号公報、特開2001−181221号公報、特開2002−193887号公報、特開2002−193925号公報等を参考に合成することができる。また、重合可能な置換基としてアクリロイルオキシ基あるいはメタクリロイルオキシ基を有するオニウムカチオンは、特開平4−230645号公報、特開2005−84365号公報等に記載の方法で、既存のヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウムハライドを、塩基性条件下でアクリロイルクロリドあるいはメタクリロイルクロリドと反応させることで合成できる。
【0079】
本発明の光酸発生剤は、上記一般式(1)で示されるスルホン酸塩を中間原料として合成された上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩、具体的には上記一般式(3)または(4)で示されるスルホン酸スルホニウム塩や上記一般式(5)で示されるスルホン酸ヨードニウム塩に代表される化合物であり、これらは紫外線、遠紫外線、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、又はシンクロトロン放射線照射等の高エネルギー線に感応し、下記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生するもので、化学増幅型レジスト材料用の光酸発生剤として用いられるものである。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- H+ (6)
(式中、R1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。)
【0080】
上記一般式(6)におけるR1は、上記一般式(2)におけるR1の説明と同じであるが、具体的なスルホン酸を下記に示す。ただし、本発明の光酸発生剤はこれらに限定されない。
【化2】
【0081】
【化3】
【0082】
R1の中で特に好ましく用いられるものとして、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、1−アダマンチルメチル基、4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−5−オン−9−イル基、4−オキソ−1−アダマンチル基、ステロイド構造含有基、フェニル基、1−ナフチル基等が挙げられる。
【0083】
例えば、R1がシクロアルキル基を有している場合、鎖状のものと比較して酸拡散を抑制し、解像性や露光余裕度等を向上することができる。特に好ましくはR1がアダマンチル基の場合であり、その剛直かつ適度な分子サイズを有する構造に起因して、適度な酸拡散制御能を有し、これを含んだレジスト材料は結果として現像後に高い溶解コントラスト及び良好なパターンプロファイルを示す。
【0084】
また、R1がベンゼン環やナフタレン環のように芳香環を有している場合、脂環式炭化水素のようにバルキーな構造から酸拡散を制御できるだけでなく、光の吸収により透過率や酸発生効率を調整することができる。更にKrFや電子線リソグラフィーのようにポリヒドロキシスチレンのような芳香環をベースとするポリマーマトリックス中においては、本発明の中で芳香環を有する光酸発生剤はポリマーと親和性を有し、均一に分散し易いと考えられる。酸が均一に分散することで現像後に矩形なパターン形状を得ることができる。
【0085】
更に、レジスト材料のベースポリマーに含まれる酸不安定基において、その割合が多かったり、あるいはそれが酸拡散を助長するような構造(例えば保護基が非脂環式であったり剛直な構造でない場合など)である場合は、R1にステロイド構造を有する光酸発生剤を使用することで高い溶解コントラストを得ることができる。これは、極めて分子サイズの大きいステロイド構造による、高い酸拡散抑制能に起因する。特にデヒドロコール酸誘導体等は、原料の入手、精製の容易さ等の点から好ましい。
【0086】
また、R1が更にカルボニル基や水酸基、あるいはカルボン酸のような極性基を有している場合、優れた露光余裕度及び焦点深度を示す。これは、レジスト材料のベース樹脂中に多く含まれる極性ユニットと親和性を持ち、結果としてPAGがポリマーマトリックス中に均一に分散することに起因すると考えられる。特にR1がノルボルナンラクトン構造を有する場合は、剛直な骨格と極性基を有しているという両方の効果から、高い拡散抑制能と均一分散性を示していると考えられ、良好なパターンプロファイルを示す。
【0087】
また、(メタ)アクリル酸系樹脂を用いたArFリソグラフィーにおいて、通常はα,α’−ジフルオロスルホン酸のような強酸を発生する光酸発生剤を使用しているが、樹脂に含まれる酸不安定基としてかなり不安定な三級エステルやアセタール基等を用いた場合では、脱保護反応が過剰に進行してしまい、コントラストがとれないことがある。そこで、このような場合に本発明の光酸発生剤を使用することができる。上述した反応性の大きい保護基は、本発明の光酸発生剤の酸強度でも十分に脱保護反応を行うことができ、しかもα,α’−ジフルオロスルホン酸ほどの酸強度はないことから脱保護反応が過剰に進行してしまうこともない。
【0088】
上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩、具体的には上記一般式(3)〜(5)で示されるスルホン酸塩からなる、本発明の光酸発生剤における大きな特徴の一つとして挙げられるのは、R1で示される構造を前述したアシル化の手法により、容易に種々変更できることである。即ち構造改変の自由度が高く、アシル基の改変により諸特性の調整が容易に可能となる。従って露光条件、ポリマーの種類や組成等に合わせてその時に最適なR1の構造を有する光酸発生剤を選択することができる。特にR1が脂環式炭化水素や芳香環のようなバルキーな構造を有している場合、発生酸の拡散を適度に抑制するため、疎密依存性の小さい良好なパターン形状を得ることができる。
【0089】
更に、上記一般式(2)、具体的には上記一般式(3)〜(5)で示されるようなスルホン酸塩を用いた本発明の光酸発生剤は、スルホ基のβ位に電子求引性基であるトリフルオロメチル基を有しており、これに由来してその酸強度はα−フルオロスルホン酸より弱く、アルカンスルホン酸やアレーンスルホン酸よりも強い。したがって、KrFリソグラフィーや電子線リソグラフィーにおいて、解像性に優れると共に環境安定性も満足することができる。加えて前述したように、R1がバルキーな構造を有している場合、発生酸の拡散を適度に抑制するため、疎密依存性の小さい良好なパターン形状を得ることができる。すなわち、本発明の光酸発生剤を用いたレジスト材料は、高解像性と適度な拡散制御を両立した優れたレジスト性能を示す。また、前述したようにArFリソグラフィーにおいても、本発明の光酸発生剤をα−フルオロスルホン酸のような強酸を発生する光酸発生剤と組み合わせることで良好なパターン形状を得ることができる。
【0090】
本発明では、上記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生する、上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩、具体的には、上記一般式(3)〜(5)で示されるスルホン酸塩を用いた光酸発生剤を提供する。さらに、上記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生する前記光酸発生剤を含有するレジスト材料、即ち、紫外線、遠紫外線、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、シンクロトロン放射線などの放射線に感応し上記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生する前記光酸発生剤を含有する、集積回路を作製するための化学増幅型レジスト材料を提供する。これらレジスト材料はポジ型又はネガ型として用いることができる。解像性などの点から、中でもポジ型レジスト材料がより好ましく用いられる。
【0091】
この場合、ポジ型レジスト材料としては、上記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生する上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩、具体的には上記一般式(3)又は(4)で示されるスルホン酸スルホニウム塩、もしくは、上記一般式(5)で示されるスルホン酸ヨードニウム塩からなる光酸発生剤(以下、これらを総称して本発明に係る光酸発生剤という)に加え、
(A)酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化するベース樹脂、
(B)有機溶剤
必要により、更に
(C)本発明に係る光酸発生剤以外の酸発生剤、
(D)クエンチャー、
(E)界面活性剤
を含有するものが好ましい。
【0092】
また、ネガ型レジスト材料としては、本発明に係る光酸発生剤に加え、
(A’)アルカリ現像液に可溶なベース樹脂、
(B)有機溶剤、
必要により、更に
(C)本発明に係る光酸発生剤以外の酸発生剤、
(D)クエンチャー、
(E)界面活性剤
(F)酸によって架橋する架橋剤
を含有するものが好ましい。
【0093】
以下、各成分につき詳細に説明する。
まず、本発明に係る光酸発生剤は、上記(A)成分又は(A’)成分100質量部に対し0.1〜10質量部、特に0.1〜5質量部の割合で配合することが好ましい。
【0094】
(A)成分の酸の作用でアルカリ現像液に対する溶解性が変化する樹脂としては、特に制限されないが、化学増幅ポジ型レジスト材料の場合は、下記一般式(11)〜(15)で示される繰り返し単位のいずれか1種以上を含有することができる。
【0095】
【化4】
(式中、R11は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R7及びR8はそれぞれ独立に水素原子又は水酸基を示す。Xは酸不安定基を示す。Yはラクトン構造を有する置換基を示す。Zは水素原子、炭素数1〜15のフルオロアルキル基、又は炭素数1〜15のフルオロアルコール含有置換基を示す。Nは0〜2の整数を示す。R9は水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を示す。Bは単結合あるいは酸素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10の二価の有機基を示す。aは0〜3の整数、bは1〜3の整数を示す。)
【0096】
上記一般式(11)で示される繰り返し単位を含有する重合体は、酸の作用で分解してカルボン酸を発生し、アルカリ可溶性となる重合体を与える。
酸不安定基Xとしては、種々用いることができるが、具体的には下記一般式(L1)〜(L4)及び(L2−2)で示される基、炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等を挙げることができる。
【0097】
【化5】
【0098】
ここで、破線は結合手を示す(以下、同様)。
また、式(L1)において、RL01、RL02は水素原子又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基等が例示できる。RL03は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい一価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができ、具体的には下記の置換アルキル基等が例示できる。
【0099】
【化6】
【0100】
RL01とRL02、RL01とRL03、RL02とRL03とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子や酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には環の形成に関与するRL01、RL02、RL03はそれぞれ炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。
【0101】
式(L2)において、RL04は炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記一般式(L1)で示される基を示し、三級アルキル基としては、具体的にはtert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、2−シクロペンチルプロパン−2−イル基、2−シクロヘキシルプロパン−2−イル基、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)プロパン−2−イル基、2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基等が例示でき、トリアルキルシリル基としては、具体的にはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が例示でき、オキソアルキル基としては、具体的には3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が例示できる。yは0〜6の整数である。
【0102】
式(L2−2)において、
【化7】
は下記の基であり、RL04は上記と同意である。
【0103】
【化8】
(式中、破線は結合手を示す。Wは酸素原子あるいはCH2を示し、Mは1〜3の整数である。)
【0104】
式(L3)において、RL05は炭素数1〜8の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、置換されていてもよいアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示でき、置換されていてもよいアリール基としては、具体的にはフェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基等が例示できる。m’’は0又は1、n’’は0、1、2、3のいずれかであり、2m’’+n’’=2又は3を満足する数である。
【0105】
式(L4)において、RL06は炭素数1〜8の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL05と同様のもの等が例示できる。RL07〜RL16はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15の一価の炭化水素基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示できる。RL07〜RL16はそれらの2個が互いに結合してそれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく(例えば、RL07とRL08、RL07とRL09、RL08とRL10、RL09とRL10、RL11とRL12、RL13とRL14等)、その場合にはその結合に関与するものは炭素数1〜15の二価の炭化水素基を示し、具体的には上記一価の炭化水素基で例示したものから水素原子を1個除いたもの等が例示できる。また、RL07〜RL16は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい(例えば、RL07とRL09、RL09とRL15、RL13とRL15等)。
【0106】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち直鎖状又は分岐状のものとしては、具体的には下記の基が例示できる。
【化9】
【0107】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち環状のものとしては、具体的にはテトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が例示できる。
【0108】
上記式(L2)の酸不安定基としては、具体的にはtert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が例示できる。
【0109】
上記式(L2−2)の酸不安定基としては、具体的には、
9−(tert−ブチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(tert−アミルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(1−ブチルシクロペンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(1−エチルシクロヘキシルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(1−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(2−メチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(2−エチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
2−(9−(tert−ブチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(tert−アミルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(1−ブチルシクロペンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(1−エチルシクロヘキシルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(1−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(2−メチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(2−エチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
4−(9−(tert−ブチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(tert−アミルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(1−ブチルシクロペンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(1−エチルシクロヘキシルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(1−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(2−メチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(2−エチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基
等が例示できる。
【0110】
上記式(L3)の酸不安定基としては、具体的には1−メチルシクロペンチル、1−エチルシクロペンチル、1−n−プロピルシクロペンチル、1−イソプロピルシクロペンチル、1−n−ブチルシクロペンチル、1−sec−ブチルシクロペンチル、1−シクロヘキシルシクロペンチル、1−(4−メトキシ−n−ブチル)シクロペンチル、1−メチルシクロヘキシル、1−エチルシクロヘキシル、3−メチル−1−シクロペンテン−3−イル、3−エチル−1−シクロペンテン−3−イル、3−メチル−1−シクロヘキセン−3−イル、3−エチル−1−シクロヘキセン−3−イル等が例示できる。
【0111】
上記式(L4)の酸不安定基としては、下記式(L4−1)〜(L4−4)で示される基が特に好ましい。
【化10】
【0112】
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)中、破線は結合位置及び結合方向を示す。RL41はそれぞれ独立に炭素数1〜8の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL05と同様のもの等が例示できる。
【0113】
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)は、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るが、前記一般式(L4−1)〜(L4−4)は、これらの立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0114】
例えば、前記一般式(L4−3)は下記一般式(L4−3−1)、(L4−3−2)で示される基から選ばれる1種又は2種の混合物を代表して表すものとする。
【化11】
(式中、RL41は上記と同様である。)
【0115】
また、上記一般式(L4−4)は下記一般式(L4−4−1)〜(L4−4−4)で示される基から選ばれる1種又は2種以上の混合物を代表して表すものとする。
【化12】
(式中、RL41は上記と同様である。)
【0116】
上記一般式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)及び(L4−4−1)〜(L4−4−4)は、それらのエナンチオ異性体及びエナンチオ異性体混合物をも代表して示すものとする。
【0117】
なお、(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)及び(L4−4−1)〜(L4−4−4)の結合方向がそれぞれビシクロ[2.2.1]ヘプタン環に対してexo側であることによって、酸触媒脱離反応における高反応性が実現される(特開2000−336121号公報参照)。これらビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格を有する3級exo−アルキル基を置換基とする単量体の製造において、下記一般式(L4−1−endo)〜(L4−4−endo)で示されるendo−アルキル基で置換された単量体を含む場合があるが、良好な反応性の実現のためにはexo比率が50モル%以上であることが好ましく、exo比率が80モル%以上であることが更に好ましい。
【化13】
(式中、RL41は上記と同様である。)
【0118】
上記式(L4)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化14】
【0119】
また、炭素数4〜20の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基としては、具体的にはRL04で挙げたものと同様のもの等が例示できる。
【0120】
前記一般式(11)で表される繰り返し単位として具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。(メタ)アクリル酸エステルのみを示しているが上記式(L−2)又は(L−2−2)で示される二価の連結基を介したものを用いてもよい。
【0121】
【化15】
【0122】
【化16】
【0123】
【化17】
【0124】
【化18】
【0125】
【化19】
【0126】
【化20】
【0127】
前記一般式(12)で表される繰り返し単位として具体的には以下のものである。
【化21】
【0128】
前記一般式(13)で表される繰り返し単位として具体的には以下のものである。なお、酸不安定基を有する繰り返し単位も存在する。具体的には上記酸不安定基として説明した式(L2−2)と重複するが、ラクトン単位として使用してもよいし、酸不安定基を有する単位として用いてもよい。
【化22】
【0129】
【化23】
【0130】
【化24】
【0131】
また、下記一般式(5L−1)のものも好適に用いることができる。
【化25】
【0132】
ここで、上記一般式(5L−1)中のR111は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。より好ましくはメチル基である。R5’は水素原子又はCO2R5’’を示す。R5’’は水素原子、ハロゲン原子又は酸素原子を有していてもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。W’はCH2、O又はSを示す。M’は1〜3の整数である。
【0133】
R5’’として具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、2−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、2−メチルアダマンタン−2−イル基、2−エチルアダマンタン−2−イル基、8−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、8−エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、4−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル基、4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、及び下記の基等が例示できる。
【0134】
【化26】
(ここで、破線は結合手を示す。)
【0135】
この中でR5’’として好ましくはメチル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、2−メチルアダマンタン−2−イル基、2−エチルアダマンタン−2−イル基、8−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、8−エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル基等が挙げられる。W’として好ましくはCH2が挙げられる。
【0136】
上記一般式(5L−1)で示される繰り返し単位を構成するためのモノマーとして、具体的には下記のものを例示できる。
【0137】
【化27】
(式中、R111は上記と同様である。)
【0138】
【化28】
(式中、R111は上記と同様である。)
【0139】
【化29】
(式中、R111は上記と同様である。)
【0140】
なお、上記一般式(5L−1)で示される繰り返し単位を構成するためのモノマー類でM’=1の化合物に関しては特開2008−031298号公報に詳しい。また、M’=3の化合物に関してはM’=1の化合物における原料のクロロアセチルクロリドをクロロ酪酸クロリドとすることで同様に合成ができる。
【0141】
前記一般式(14)で表される繰り返し単位として具体的には以下のものである。
【化30】
【0142】
【化31】
【0143】
前記一般式(15)で表される繰り返し単位として具体的には以下のものである。
【化32】
【0144】
本発明のレジスト材料でベース樹脂として用いられる高分子化合物は、上記以外の炭素−炭素二重結合を含有する単量体から得られる繰り返し単位、例えば、メタクリル酸メチル、クロトン酸メチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル等の置換アクリル酸エステル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデセン誘導体などの環状オレフィン類、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物、その他の単量体から得られる繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0145】
なお、本発明のレジスト材料のベース樹脂として用いる上記高分子化合物は、ArFあるいはEUVリソグラフィー露光のリソグラフィー用途として好ましいが、KrFリソグラフィー、電子線リソグラフィーなどにも適用可能である。
【0146】
本発明のレジスト材料をKrF、電子線リソグラフィー用途として使用する場合、好ましいベース樹脂としては、下記一般式(21)〜(25)で表わされる繰り返し単位のいずれか1種以上を含有することができ、更に上述した一般式(11)〜(15)で示される繰り返し単位のいずれか1種以上を含有していてもよい。
【化33】
(式中、R11、Xは上記と同様である。Gは酸素原子又はカルボニルオキシ基(−C(=O)O−)を示す。)
【0147】
上記一般式(21)で示される繰り返し単位を含有する重合体は、酸の作用で分解してフェノール性水酸基及び/又はカルボン酸を発生し、アルカリ可溶性となる重合体を与える。酸不安定基Xとしては、種々用いることができるが、具体的には上述した一般式(L1)〜(L4)で示される基、炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等を挙げることができる。
【0148】
前記一般式(21)で表される繰り返し単位として具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。
【化34】
【0149】
上記一般式(24)で示されるヒドロキシビニルナフタレンの置換位置は任意であるが、6−ヒドロキシ−2−ビニルナフタレン、4−ヒドロキシ−1−ビニルナフタレンなどが挙げられ、中でも6−ヒドロキシ−2−ビニルナフタレンが好ましく用いられる。
【0150】
更に、上記一般式(21)〜(25)で示される繰り返し単位のいずれか1種に加えて上記一般式(11)〜(15)で示される繰り返し単位の中で、特に上記一般式(11)で示される繰り返し単位を含有するものを好ましく用いることができる。
【0151】
上記一般式(21)〜(25)で表される繰り返し単位のいずれか1種以上を含有する高分子化合物には、上記以外の炭素−炭素二重結合を含有する単量体から得られる繰り返し単位、例えば、メタクリル酸メチル、クロトン酸メチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル等の置換アクリル酸エステル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデセン誘導体、ノルボルナジエン類などの環状オレフィン類、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物、スチレン、アセナフチレン、ビニルナフタレン、その他の単量体から得られる繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0152】
なお、本発明のレジスト材料でベース樹脂として用いる高分子化合物の重量平均分子量は、1,000〜500,000、好ましくは3,000〜100,000である。この範囲を外れると、エッチング耐性が極端に低下したり、露光前後の溶解速度差が確保できなくなって解像性が低下したりすることがある。分子量の測定方法はポリスチレン換算でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)が挙げられる。
【0153】
本発明のレジスト材料でベース樹脂として用いる高分子化合物において、各単量体から得られる各繰り返し単位の好ましい含有割合は、例えば以下に示す範囲(モル%)とすることができるが、これに限定されるものではない。
【0154】
(I)上記式(11)〜(15)、及び/又は(21)〜(25)で示される構成単位の1種又は2種以上を0モル%を超え100モル%以下、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%含有し、必要に応じ、
(II)その他の単量体に基づく構成単位の1種又は2種以上を0〜100モル%未満、好ましくは0〜30モル%、より好ましくは0〜20モル%含有することができる。
【0155】
なお、本発明のポジ型の化学増幅型レジスト材料のベース樹脂として用いる高分子化合物は、上記式(11)又は式(21)の繰り返し単位を有するものが特に好ましい。更に好ましくは式(11)かつ式(12)かつ式(13)、又は式(21)かつ式(22)の繰り返し単位を有し、更に式(23)又は式(25)の繰り返し単位を有する高分子化合物である。
【0156】
本発明のレジスト材料のベース樹脂として用いる高分子化合物の製造は、重合性二重結合を含有する化合物を第2以降の単量体に用いた共重合反応により行う。
本発明のレジスト材料のベース樹脂として用いる高分子化合物を製造する共重合反応は種々例示することができるが、好ましくはラジカル重合、アニオン重合又は配位重合である。
【0157】
ラジカル重合反応の反応条件は、(ア)溶剤としてベンゼン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エタノール等のアルコール類、又はメチルイソブチルケトン等のケトン類を用い、(イ)重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、又は過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物を用い、(ウ)反応温度を0〜100℃程度に保ち、(エ)反応時間を0.5〜50時間程度とするのが好ましいが、この範囲を外れる場合を排除するものではない。
【0158】
アニオン重合反応の反応条件は、(ア)溶剤としてベンゼン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、又は液体アンモニアを用い、(イ)重合開始剤としてナトリウム、カリウム等の金属、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム等のアルキル金属、ケチル、又はグリニャール反応剤を用い、(ウ)反応温度を−78〜0℃程度に保ち、(エ)反応時間を0.5〜50時間程度とし、(オ)停止剤としてメタノール等のプロトン供与性化合物、ヨウ化メチル等のハロゲン化物、その他求電子性物質を用いるのが好ましいが、この範囲を外れる場合を排除するものではない。
【0159】
配位重合の反応条件は、(ア)溶剤としてn−ヘプタン、トルエン等の炭化水素類を用い、(イ)触媒としてチタン等の遷移金属とアルキルアルミニウムからなるチーグラー−ナッタ触媒、クロム及びニッケル化合物を金属酸化物に担持したフィリップス触媒、タングステン及びレニウム混合触媒に代表されるオレフィン−メタセシス混合触媒等を用い、(ウ)反応温度を0〜100℃程度に保ち、(エ)反応時間を0.5〜50時間程度とするのが好ましいが、この範囲を外れる場合を排除するものではない。
【0160】
また、上記重合方法により製造した高分子化合物の酸不安定基の一部あるいは全部を脱保護し、後述するネガ型材料に用いることができる。更には酸不安定基を脱保護した高分子化合物に再び酸不安定基を導入し、重合時に導入した酸不安定基とは異なる置換基を導入することもできる。
【0161】
例えば4−エトキシエトキシスチレン及びその他の重合性化合物をラジカル重合により高分子化合物とし、次いで酢酸、ピリジニウムトシレートなどによりエトキシエトキシ基を外し、ポリヒドロキシスチレンとのコポリマーとすることができる。これはネガ型レジスト材料のベース樹脂として用いることができる。また、上記コポリマーのヒドロキシスチレン単位をジtert−ブチルジカーボネート、クロロ酢酸tert−ブチル、種々ビニルエーテルなどと反応させることにより重合時の酸不安定基(エトキシエトキシ基)とは異なる酸不安定基を導入することができる。
【0162】
また、上述した高分子化合物以外に、必要に応じて他の、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増加する樹脂を加えてもよい。例としては、i)ポリ(メタ)アクリル酸誘導体、ii)ノルボルネン誘導体−無水マレイン酸の共重合体、iii)開環メタセシス重合体の水素添加物、iv)ビニルエーテル−無水マレイン酸−(メタ)アクリル酸誘導体の共重合体、v)ポリヒドロキシスチレン誘導体などを挙げることができるが、これに限定されない。
【0163】
i)のポリ(メタ)アクリル酸誘導体は上記一般式(11)〜(15)などの組み合わせによる高分子化合物であり、v)のポリヒドロキシスチレン誘導体は上記一般式(21)〜(25)の組み合わせ、及び(11)〜(15)、(21)〜(25)の組み合わせによる高分子化合物である。これら高分子化合物の酸不安定基にかかわる単位、例えば上記一般式(11)及び/又は(21)の1種又は2種以上の単量体単位の含有割合は0モル%を超え80モル%以下である。好ましくは1〜50モル%、より好ましくは10〜40モル%である。これら高分子化合物の酸不安定基以外にかかわる単位、例えば上記一般式(12)〜(15)及び/又は(22)〜(25)の1種又は2種以上の単量体単位は0モル%以上100モル%未満であるが、含有する場合は20モル%以上100モル%未満が好ましく、より好ましくは50〜99モル%、特に好ましくは60〜90モル%である。
【0164】
このうち、開環メタセシス重合体の水素添加物の合成法は特開2003−66612号公報の実施例に具体的な記載がある。また、具体例としては以下の繰り返し単位を有するものを挙げることができるが、これに限定されない。
【0165】
【化35】
【0166】
【化36】
【0167】
本発明のレジスト材料のベース樹脂として用いることができる上記高分子化合物と別の高分子化合物との配合比率は、100:0〜10:90、特に100:0〜20:80の質量比の範囲内にあることが好ましい。本発明のレジスト材料のベース樹脂として用いられる上記高分子化合物の配合比がこれより少ないと、レジスト材料として好ましい性能が得られないことがある。上記の配合比率を適宜変えることにより、レジスト材料の性能を調整することができる。
なお、上記高分子化合物は1種に限らず2種以上を添加することができる。複数種の高分子化合物を用いることにより、レジスト材料の性能を調整することができる。
【0168】
本発明で使用される(B)成分の有機溶剤としては、ベース樹脂、酸発生剤、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれでもよい。有機溶剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0144]〜[0145]に記載されている。
【0169】
本発明の光酸発生剤の他に、必要に応じて(C)成分の本発明に係る光酸発生剤以外の酸発生剤を合わせて添加してもかまわない。(C)成分の光酸発生剤は、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでもかまわない。好適な光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等がある。これらは単独あるいは2種以上混合して用いることができる。これらは特開2008−133448号公報などに詳しい。
【0170】
本発明の光酸発生剤の他に(C)成分の酸発生剤を合わせて添加する場合、ArFリソグラフィー用途において特に好ましく用いられるのは下記一般式(C)−1で示される酸発生剤である。
【化37】
【0171】
ここで、式中、R405、R406、R407はそれぞれ独立に水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基、特にアルキル基又はアルコキシ基を示し、ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基として具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、エチルシクロペンチル基、ブチルシクロペンチル基、エチルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、アダマンチル基、エチルアダマンチル基、ブチルアダマンチル基、及びこれらの基の任意の炭素−炭素結合間に−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−等のヘテロ原子団が挿入された基や、任意の水素原子が−OH、−NH2、−CHO、−CO2H等の官能基に置換された基を例示することができる。R408はヘテロ原子を含んでもよい炭素数7〜30の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示し、具体的には以下のものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0172】
【化38】
【0173】
(C)−1としては、具体的には以下のものが例示できる。
【化39】
【0174】
【化40】
【0175】
なお、光酸発生剤を2種以上混合して用い、一方の光酸発生剤がいわゆる弱酸を発生するオニウム塩である場合、酸拡散制御の機能を持たせることもできる。即ち、前述のフッ素置換されたスルホン酸のような強酸を発生するオニウム塩と、フッ素置換されていないスルホン酸や、カルボン酸のような弱酸を発生するオニウム塩を混合して用いた場合、高エネルギー線照射により光酸発生剤から生じた強酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると塩交換により弱酸を放出し強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため見かけ上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。
ここで強酸を発生する光酸発生剤がオニウム塩である場合には上記のように高エネルギー線照射により生じた強酸が弱酸に交換することはできるが、高エネルギー線照射により生じた弱酸は未反応の強酸を発生するオニウム塩と衝突して塩交換を行うことはできない。これらはオニウムカチオンがより強酸のアニオンとイオン対を形成し易いという現象に起因する。
【0176】
本発明の光酸発生剤を例えば上記一般式(C−1)で示されるようなα,α’−ジフルオロスルホン酸発生剤と混合して用いた場合、本発明の光酸発生剤の酸強度はそれよりも弱い。従って、前述の理由からこの場合本発明の光酸発生剤は見かけ上クエンチャーとして働き、結果として酸拡散の制御を行うことができる。
【0177】
本発明の化学増幅型レジスト材料における(C)成分として添加する、本発明に係る光酸発生剤以外の光酸発生剤の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲であればいずれでもよいが、レジスト材料中のベース樹脂100質量部に対し、本発明に係る光酸発生剤と上記(C)成分の光酸発生剤との総添加量が0.1〜10質量部、特に0.1〜5質量部であることが好ましい。(C)成分の光酸発生剤の割合が多すぎる場合には、解像性の劣化や、現像/レジスト剥離時の異物の問題が起きる可能性がある。上記(C)成分の光酸発生剤は、1種でも2種以上混合して用いることもできる。更に、露光波長における透過率が低い光酸発生剤を用い、その添加量でレジスト膜中の透過率を制御することもできる。
【0178】
また、本発明のレジスト材料に、酸により分解し酸を発生する化合物(酸増殖化合物)を添加してもよい。これらの化合物については、J.Photopolym.Sci.and Tech.,8.43−44,45−46(1995)、J.Photopolym.Sci.and Tech.,9.29−30(1996)において記載されている。
【0179】
酸増殖化合物の例としては、tert−ブチル−2−メチル−2−トシロキシメチルアセトアセテート、2−フェニル−2−(2−トシロキシエチル)−1,3−ジオキソラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。公知の光酸発生剤の中で安定性、特に熱安定性に劣る化合物は酸増殖化合物的な性質を示す場合が多い。
【0180】
本発明のレジスト材料における酸増殖化合物の添加量としては、レジスト材料中のベース樹脂100質量部に対し2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。添加量が多すぎる場合は拡散の制御が難しく、解像性の劣化、パターン形状の劣化が起こる可能性がある。
【0181】
更に、本発明のレジスト材料には、(D)成分のクエンチャーを1種又は2種以上配合することができる。
【0182】
クエンチャーとは、本技術分野において広く一般的に用いられる用語であり、酸発生剤より発生する酸などがレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができる化合物を言う。クエンチャーの配合により、レジスト感度の調整が容易となることに加え、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制したり、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を向上することができる。
【0183】
このようなクエンチャーとしては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類、アンモニウム塩類等が好適に用いられる。
【0184】
クエンチャーの具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0146]〜[0163]に記載されている。
【0185】
特に好ましく用いられるクエンチャーは第三級アミンであり、具体的にはトリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、トリス(2−メトキシエトキシエチル)アミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリス(2−メトキシメトキシエチル)アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシメトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシプロポキシ)エチル}アミン、トリス[2−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル]アミン、4,7,13,16,21,24−ヘキサオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.8.8]ヘキサコサン、4,7,13,18−テトラオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.5.5]エイコサン、1,4,10,13−テトラオキサ−7,16−ジアザビシクロオクタデカン、1−アザ−12−クラウン−4、1−アザ−15−クラウン−5、1−アザ−18−クラウン−6、トリス(2−ホルミルオキシエチル)アミン、トリス(2−アセトキシエチル)アミン、トリス(2−プロピオニルオキシエチル)アミン、トリス(2−ブチリルオキシエチル)アミン、トリス(2−イソブチリルオキシエチル)アミン、トリス(2−バレリルオキシエチル)アミン、トリス(2−ピバロイルオキシエチル)アミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(アセトキシアセトキシ)エチルアミン、トリス(2−メトキシカルボニルオキシエチル)アミン、トリス(2−tert−ブトキシカルボニルオキシエチル)アミン、トリス[2−(2−オキソプロポキシ)エチル]アミン、トリス[2−(メトキシカルボニルメチル)オキシエチル]アミン、トリス[2−(tert−ブトキシカルボニルメチルオキシ)エチル]アミン、トリス[2−(シクロヘキシルオキシカルボニルメチルオキシ)エチル]アミン、トリス(2−メトキシカルボニルエチル)アミン、トリス(2−エトキシカルボニルエチル)アミン、トリス(2−ベンゾイルオキシエチル)アミン、トリス[2−(4−メトキシベンゾイルオキシ)エチル]アミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(エトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(エトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−アセトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−[(メトキシカルボニル)メトキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−[(メトキシカルボニル)メトキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−オキソプロポキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−オキソプロポキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−[(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)オキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−[(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)オキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(4−ヒドロキシブトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ホルミルオキシエチル)2−(4−ホルミルオキシブトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ホルミルオキシエチル)2−(2−ホルミルオキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−メトキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−アセトキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ビス[2−(エトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−アセトキシエチル)ビス[2−(エトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(3−ヒドロキシ−1−プロピル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(3−アセトキシ−1−プロピル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−メトキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−ブチルビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−ブチルビス[2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチル]アミン、N−メチルビス(2−アセトキシエチル)アミン、N−エチルビス(2−アセトキシエチル)アミン、N−メチルビス(2−ピバロイルオキシエチル)アミン、N−エチルビス[2−(メトキシカルボニルオキシ)エチル]アミン、N−エチルビス[2−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)エチル]アミン、トリス(メトキシカルボニルメチル)アミン、トリス(エトキシカルボニルメチル)アミン、N−ブチルビス(メトキシカルボニルメチル)アミン、N−ヘキシルビス(メトキシカルボニルメチル)アミン、β−(ジエチルアミノ)−δ−バレロラクトンが例示される。
【0186】
更に、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]ピロリジン、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]ピペリジン、4−[2−(メトキシメトキシ)エチル]モルホリン、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]イミダゾール、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]ベンズイミダゾール、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]−2−フェニルベンズイミダゾール、1−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]ピロリジン、1−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]ピペリジン、4−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]モルホリン、1−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]イミダゾール、1−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]ベンズイミダゾール、1−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]−2−フェニルベンズイミダゾール、1−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ピロリジン、1−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ピペリジン、4−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]モルホリン、1−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]イミダゾール、1−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ベンズイミダゾール、1−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]−2−フェニルベンズイミダゾール、1−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ピロリジン、1−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ピペリジン、4−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]モルホリン、1−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]イミダゾール、1−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ベンズイミダゾール、1−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]−2−フェニルベンズイミダゾール、1−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]ピロリジン、1−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]ピペリジン、4−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]モルホリン、1−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]イミダゾール、1−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]ベンズイミダゾール、1−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]−2−フェニルベンズイミダゾール、4−[2−{2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル]モルホリン、酢酸2−(1−ピロリジニル)エチル、酢酸2−ピペリジノエチル、酢酸2−モルホリノエチル、酢酸2−(1−イミダゾリル)エチル、酢酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、酢酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、モルホリノ酢酸2−メトキシエチル、2−メトキシ酢酸2−(1−ピロリジニル)エチル、2−メトキシ酢酸2−ピペリジノエチル、2−メトキシ酢酸2−モルホリノエチル、2−メトキシ酢酸2−(1−イミダゾリル)エチル、2−メトキシ酢酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−メトキシ酢酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−(1−ピロリジニル)エチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−ピペリジノエチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−モルホリノエチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−(1−イミダゾリル)エチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−(1−ピロリジニル)エチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−ピペリジノエチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−モルホリノエチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−(1−イミダゾリル)エチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、酪酸2−モルホリノエチル、ヘキサン酸2−モルホリノエチル、オクタン酸2−モルホリノエチル、デカン酸2−モルホリノエチル、ラウリン酸2−モルホリノエチル、ミリスチン酸2−モルホリノエチル、パルミチン酸2−モルホリノエチル、ステアリン酸2−モルホリノエチル、ベヘン酸2−モルホリノエチル、コール酸2−モルホリノエチル、トリス(O−アセチル)コール酸2−モルホリノエチル、トリス(O−ホルミル)コール酸2−モルホリノエチル、デヒドロコール酸2−モルホリノエチル、シクロペンタンカルボン酸2−モルホリノエチル、シクロヘキサンカルボン酸2−モルホリノエチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−(1−ピロリジニル)エチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−ピペリジノエチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−モルホリノエチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−(1−イミダゾリル)エチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、アダマンタンカルボン酸2−モルホリノエチル、ギ酸2−(1−ピロリジニル)エチル、プロピオン酸2−ピペリジノエチル、アセトキシ酢酸2−モルホリノエチル、メトキシ酢酸2−(1−ピロリジニル)エチル、安息香酸2−(1−ピロリジニル)エチル、安息香酸2−ピペリジノエチル、安息香酸2−モルホリノエチル、安息香酸2−(1−イミダゾリル)エチル、安息香酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、安息香酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、4−メトキシ安息香酸2−(1−ピロリジニル)エチル、4−メトキシ安息香酸2−ピペリジノエチル、4−メトキシ安息香酸2−モルホリノエチル、4−メトキシ安息香酸2−(1−イミダゾリル)エチル、4−メトキシ安息香酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、4−メトキシ安息香酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、4−フェニル安息香酸2−(1−ピロリジニル)エチル、4−フェニル安息香酸2−ピペリジノエチル、4−フェニル安息香酸2−モルホリノエチル、4−フェニル安息香酸2−(1−イミダゾリル)エチル、4−フェニル安息香酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、4−フェニル安息香酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、1−ナフタレンカルボン酸2−(1−ピロリジニル)エチル、1−ナフタレンカルボン酸2−ピペリジノエチル、1−ナフタレンカルボン酸2−モルホリノエチル、1−ナフタレンカルボン酸2−(1−イミダゾリル)エチル、1−ナフタレンカルボン酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、1−ナフタレンカルボン酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−ナフタレンカルボン酸2−(1−ピロリジニル)エチル、2−ナフタレンカルボン酸2−ピペリジノエチル、2−ナフタレンカルボン酸2−モルホリノエチル、2−ナフタレンカルボン酸2−(1−イミダゾリル)エチル、2−ナフタレンカルボン酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−ナフタレンカルボン酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、4−[2−(メトキシカルボニルオキシ)エチル]モルホリン、1−[2−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)エチル]ピペリジン、4−[2−(2−メトキシエトキシカルボニルオキシ)エチル]モルホリン、3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸メチル、3−ピペリジノプロピオン酸メチル、3−モルホリノプロピオン酸メチル、3−(チオモルホリノ)プロピオン酸メチル、2−メチル−3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸メチル、3−モルホリノプロピオン酸エチル、3−ピペリジノプロピオン酸メトキシカルボニルメチル、3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸2−ヒドロキシエチル、3−モルホリノプロピオン酸2−アセトキシエチル、3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル、3−モルホリノプロピオン酸テトラヒドロフルフリル、3−ピペリジノプロピオン酸グリシジル、3−モルホリノプロピオン酸2−メトキシエチル、3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、3−モルホリノプロピオン酸ブチル、3−ピペリジノプロピオン酸シクロヘキシル、α−(1−ピロリジニル)メチル−γ−ブチロラクトン、β−ピペリジノ−γ−ブチロラクトン、β−モルホリノ−δ−バレロラクトン、1−ピロリジニル酢酸メチル、ピペリジノ酢酸メチル、モルホリノ酢酸メチル、チオモルホリノ酢酸メチル、1−ピロリジニル酢酸エチルなどが例示される。
【0187】
なお、クエンチャーの配合量は、全ベース樹脂100質量部に対して0.001〜5質量部、特に0.01〜3質量部が好適である。配合量が0.001質量部より少ないと配合効果がなく、5質量部を超えると感度が低下しすぎる場合がある。
【0188】
本発明のレジスト材料には、上記成分以外に任意成分として塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤(E)を添加することができる。なお、任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0189】
界面活性剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0165]〜[0166]に記載されている。また、下記構造式(surf−1)の部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤も好ましく用いられる。
【化41】
【0190】
ここで、R、Rf、A、B、C、m’、n’は、上述の界面活性剤以外の記載に拘わらず、上記式(surf−1)のみに適用される。Rは2〜4価の炭素数2〜5の脂肪族基を示し、具体的には2価のものとしてエチレン、1,4−ブチレン、1,2−プロピレン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン、1,5−ペンチレンが挙げられ、3又は4価のものとしては、下記のものが挙げられる。
【0191】
【化42】
(式中、破線は結合手を示し、それぞれグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールから派生した部分構造である。)
これらの中で好ましく用いられるのは、1,4−ブチレン又は2,2−ジメチル−1,3−プロピレンである。
【0192】
Rfはトリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基を示し、好ましくはトリフルオロメチル基である。m’は0〜3の整数、n’は1〜4の整数であり、m’とn’の和はRの価数を示し2〜4の整数である。Aは1、Bは2〜25の整数、Cは0〜10の整数を示す。好ましくはBは4〜20の整数を示し、Cは0又は1である。また、上記構造の各構成単位はその並びを規定したものではなくブロック的でもランダム的に結合してもよい。部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤の製造に関しては米国特許第5,650,483号明細書などに詳しい。
【0193】
上記界面活性剤の中でもFC−4430,サーフロンS−381,サーフィノールE1004,KH−20,KH−30、及び上記構造式(surf−1)にて示したオキセタン開環重合物が好適である。これらは単独あるいは2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0194】
本発明の化学増幅型レジスト材料中の界面活性剤の添加量としては、レジスト材料中のベース樹脂100質量部に対し2質量部以下、好ましくは1質量部以下であり、配合する場合は0.01質量部以上とすることが好ましい。
【0195】
本発明のレジスト材料には、水を用いた液浸露光において特にはレジスト保護膜を用いない場合、スピンコート後のレジスト表面に配向することによって水のしみ込みやリーチングを低減させる機能を有する界面活性剤を添加することができる。この界面活性剤は高分子型の界面活性剤であり、水に溶解せずアルカリ現像液に溶解する性質であり、特に撥水性が高く滑水性を向上させるものが好ましい。このような高分子型の界面活性剤は下記に示すことができる。
【0196】
【化43】
(式中、R114はそれぞれ同一でも異なってもよく、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基、R115はそれぞれ同一でも異なってもよく、水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はフッ素化アルキル基を示し、同一単量体内のR115はそれぞれ結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、合計して炭素数2〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基又はフッ素化アルキレン基を示す。R116はフッ素原子又は水素原子、又はR117と結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数の和が3〜10の非芳香環を形成してもよい。R117は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基で、1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。R118は1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基で、R117とR118が結合してこれらが結合する炭素原子と共に非芳香環を形成していてもよく、その場合、R117、R118及びこれらが結合する炭素原子とで炭素数の総和が2〜12の三価の有機基を表す。R119は単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基、R120は同一でも異なってもよく、単結合、−O−、又は−CR114R114−である。R121は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、同一単量体内のR115と結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜6の非芳香環を形成してもよい。R122は1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、又は1,4−ブチレン基を示し、Rfは炭素数3〜6の直鎖状のパーフルオロアルキル基、又は3H−パーフルオロプロピル基、4H−パーフルオロブチル基、5H−パーフルオロペンチル基、又は6H−パーフルオロヘキシル基を示す。X2はそれぞれ同一でも異なってもよく、−C(=O)−O−、−O−、又は−C(=O)−R123−C(=O)−O−であり、R123は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基である。また、0≦(a’−1)<1、0≦(a’−2)<1、0≦(a’−3)<1、0<(a’−1)+(a’−2)+(a’−3)<1、0≦b’<1、0≦c’<1であり、0<(a’−1)+(a’−2)+(a’−3)+b’+c’≦1である。)
【0197】
上記高分子型の界面活性剤の添加量は、レジスト材料のベース樹脂100質量部に対して0.001〜20質量部、好ましくは0.01〜10質量部の範囲である。これらは特開2007−297590号公報に詳しい。
【0198】
本発明のレジスト材料を化学増幅ネガ型レジスト材料に用いる場合には、酸架橋剤により架橋構造可能な置換基を有する繰り返し単位を有することが必要である。より具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシスチレン(置換位置は任意である)、ヒドロキシビニルナフタレン(置換位置は任意である)に由来する繰り返し単位などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0199】
また、上記高分子化合物以外にもアルカリ可溶性樹脂を添加してもよい。
例えば、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、ポリ(m−ヒドロキシスチレン)、ポリ(4−ヒドロキシ−2−メチルスチレン)、ポリ(4−ヒドロキシ−3−メチルスチレン)、ポリ(α−メチル−p−ヒドロキシスチレン)、部分水素加ポリ(p−ヒドロキシスチレン)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−α−メチル−p−ヒドロキシスチレン)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−α−メチルスチレン)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−スチレン)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−m−ヒドロキシスチレン)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−スチレン)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−アクリル酸)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−メタクリル酸)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−メチルアクリレート)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−アクリル酸−メチルメタクリレート)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−メチルアクリレート)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−メタクリル酸−メチルメタクリレート)コポリマー、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリ(アクリル酸−メチルアクリレート)コポリマー、ポリ(メタクリル酸−メチルメタクリレート)コポリマー、ポリ(アクリル酸−マレイミド)コポリマー、ポリ(メタクリル酸−マレイミド)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−アクリル酸−マレイミド)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−メタクリル酸−マレイミド)コポリマー等が挙げられるがこれらの組み合わせに限定されるものではない。
【0200】
上記高分子化合物とそれ以外のアルカリ可溶性樹脂との配合比率は、100:0〜10:90、特に100:0〜20:80の質量比の範囲内にあることが好ましい。上記高分子化合物の配合比がこれより少ないと、レジスト材料として好ましい性能が得られないことがある。上記の配合比率を適宜変えることにより、レジスト材料の性能を調整することができる。
【0201】
なお、上記アルカリ可溶性樹脂は1種に限らず2種以上を添加することができる。複数種の高分子化合物を用いることにより、レジスト材料の性能を調整することができる。
【0202】
また、(F)成分の酸の作用により架橋構造を形成する酸架橋剤としては、分子内に2個以上のヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、エポキシ基又はビニルエーテル基を有する化合物が挙げられ、置換グリコウリル誘導体、尿素誘導体、ヘキサ(メトキシメチル)メラミン等が本発明の化学増幅ネガ型レジスト材料の酸架橋剤として好適に用いられる。例えばN,N,N’,N’−テトラメトキシメチル尿素とヘキサメトキシメチルメラミン、テトラヒドロキシメチル置換グリコールウリル類及びテトラメトキシメチルグリコールウリルのようなテトラアルコキシメチル置換グリコールウリル類、置換及び未置換ビス−ヒドロキシメチルフェノール類、ビスフェノールA等のフェノール性化合物とエピクロロヒドリン等の縮合物が挙げられる。特に好適な架橋剤は、1,3,5,7−テトラメトキシメチルグリコールウリルなどの1,3,5,7−テトラアルコキシメチルグリコールウリル又は1,3,5,7−テトラヒドロキシメチルグリコールウリル、2,6−ジヒドロキシメチル−p−クレゾール、2,6−ジヒドロキシメチルフェノール、2,2’,6,6’−テトラヒドロキシメチル−ビスフェノールA及び1,4−ビス−[2−(2−ヒドロキシプロピル)]−ベンゼン、N,N,N’,N’−テトラメトキシメチル尿素とヘキサメトキシメチルメラミン等が挙げられる。
【0203】
本発明の化学増幅型レジスト材料中の(F)成分の酸架橋剤の添加量は任意であるが、レジスト材料中のベース樹脂100質量部に対し1〜20質量部、好ましくは5〜15質量部である。これら架橋剤は単独でも2種以上を併用してもよい。
【0204】
本発明のレジスト材料の基本的構成成分は、上記の高分子化合物(ベース樹脂)、酸発生剤及び有機溶剤であり、必要に応じてクエンチャーを加えることができる。さらに、上記成分以外に任意成分として必要に応じて界面活性剤、架橋剤、更に溶解阻止剤、酸性化合物、安定剤、色素などの他の成分を添加してもよい。なお、これら任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0205】
本発明のレジスト材料を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができ、例えば、集積回路製造用の基板(Si,SiO2,SiN,SiON,TiN,WSi,BPSG,SOG,有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr,CrO,CrON,MoSi等)にスピンコーティング等の手法で膜厚が0.05〜2.0μmとなるように塗布し、これをホットプレート上で60〜150℃、1〜20分間、好ましくは80〜140℃、1〜10分間プリベークする。次いで目的のパターンを形成するためのマスクを上記のレジスト膜上にかざし、遠紫外線、エキシマレーザー、X線等の高エネルギー線又は電子線を照射する。あるいは、パターン形成のためのマスクを介さずに電子線を直接描画する。露光量は、光露光であれば1〜200mJ/cm2、好ましくは10〜100mJ/cm2程度、また電子線露光であれば、0.1〜20μC/cm2程度、好ましくは3〜10μC/cm2程度となるように露光することが好ましい。露光は通常の露光法の他、場合によってはマスクとレジストの間を液浸するImmersion法を用いることも可能である。その場合には水に不溶な保護膜を用いることも可能である。次いで、ホットプレート上で、60〜150℃、1〜20分間、好ましくは80〜140℃、1〜10分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。なお、本発明のレジスト材料は、特に高エネルギー線の中でも190〜250nmの遠紫外線又はエキシマレーザー、X線及び電子線による微細パターニングに最適である。
【0206】
上述した水に不溶な保護膜はレジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために用いられ、大きく分けて2種類ある。1種類はレジスト膜を溶解しない有機溶剤によってアルカリ現像前に剥離が必要な有機溶剤剥離型ともう1種はアルカリ現像液に可溶でレジスト膜可溶部の除去と共に保護膜を除去するアルカリ可溶型である。
後者は特に水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶媒に溶解させた材料が好ましい。
上述した水に不溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤を炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶媒に溶解させた材料とすることもできる。
また、パターン形成方法の手段として、フォトレジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによって膜表面からの酸発生剤などの抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
【0207】
フォトマスクブランクス上で上述のレジストパターン形成を実施し、フォトマスクを製造する場合、特にクロム系材料を最表面の材料として持つフォトマスクブランクスの加工に用いると、レジストパターンが基板依存性の影響を受けにくいため、本発明のパターン形成方法を有利に適用できる。また、モリブデン−珪素化合物をはじめとする珪素に酸素や窒素を含有する材料の上でレジストパターンの形成を行った場合にも、高解像性、経時安定性が得られるため、信頼性の高いフォトマスクの製造を行うことができる。
【0208】
上述のレジストパターンをエッチングマスクとしたフォトマスクブランクスの加工は公知のいずれの方法を用いてもよいが、最表面がクロム系化合物の場合には酸素を含有する塩素系ドライエッチングを用い、最表面が遷移金属−珪素化合物の場合にはフッ素系ドライエッチングを用いることが一般的である。
【実施例】
【0209】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0210】
[合成例1−1]トリフェニルスルホニウムクロリドの合成
ジフェニルスルホキシド40g(0.2モル)をジクロロメタン400gに溶解させ、氷冷下撹拌した。トリメチルシリルクロリド65g(0.6モル)を、20℃を超えない温度で滴下し、更にこの温度で30分間熟成を行った。次いで、金属マグネシウム14.6g(0.6モル)とクロロベンゼン67.5g(0.6モル)、テトラヒドロフラン(THF)168gから別途調製したGrignard試薬を、20℃を超えない温度で滴下した。反応の熟成を1時間行った後、20℃を超えない温度で水50gを加えて反応を停止し、更に水150gと12規定塩酸10gとジエチルエーテル200gを加えた。
水層を分取し、ジエチルエーテル100gで洗浄し、トリフェニルスルホニウムクロリド水溶液を得た。これは、これ以上の単離操作をせず、水溶液のまま次の反応に用いた。
【0211】
[合成例1−2]4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム臭化物の合成
合成例1−1のクロロベンゼンの代わりに4−tert−ブチルブロモベンゼンを用い、抽出の際に水の量を増やす以外は合成例1−1と同様にして目的物を得た。
【0212】
[合成例1−3]4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム塩化物の合成
合成例1−1のクロロベンゼンの代わりに4−tert−ブトキシクロロベンゼンを、溶剤にトリエチルアミンを5質量%含むジクロロメタン溶剤を用い、抽出の際に水の量を増やす以外は合成例1−1と同様にして目的物を得た。
【0213】
[合成例1−4]トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム塩化物の合成
合成例1−1のジフェニルスルホキシドの代わりにビス(4−メチルフェニル)スルホキシドを用い、クロロベンゼンの代わりに4−クロロトルエンを用い、抽出の際に水の量を増やす以外は合成例1−1と同様にして目的物を得た。
【0214】
[合成例1−5]トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム臭化物の合成
合成例1−1のジフェニルスルホキシドの代わりにビス(4−tert−ブチルフェニル)スルホキシドを、クロロベンゼンの代わりに4−tert−ブチルブロモベンゼンを用い、抽出の際に水の量を増やす以外は合成例1−1と同様にして目的物を得た。
【0215】
[合成例1−6]ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムハイドロジェンスルフェートの合成
tert−ブチルベンゼン84g(0.5モル)、ヨウ素酸カリウム53g(0.25モル)、無水酢酸50gの混合物を氷冷下撹拌し、無水酢酸35gと濃硫酸95gの混合物を、30℃を超えない温度で滴下した。次いで室温で3時間熟成を行い、再度氷冷して水250gを滴下し、反応を停止した。この反応液を、ジクロロメタン400gを用いて抽出し、有機層に亜硫酸水素ナトリウム6gを加えて脱色した。更にこの有機層を水250gで洗浄することを3回繰り返した。洗浄した有機層を減圧濃縮することで、目的の粗生成物を得た。これ以上の精製はせず、このまま次の反応に用いた。
【0216】
[合成例1−7]ジメチルフェニルスルホニウム硫酸塩の合成
チオアニソール6.2g(0.05モル)とジメチル硫酸6.9g(0.055モル)を室温で12時間撹拌した。反応液に水100gとジエチルエーテル50mlを加えて水層を分取し、目的のジメチルフェニルスルホニウム硫酸塩水溶液を得た。
【0217】
[合成例1−8]フェナシルテトラヒドロチオフェニウムブロミドの合成
フェナシルブロミド88.2g(0.44モル)、テトラヒドロチオフェン39.1g(0.44モル)をニトロメタン220gに溶解し、室温で4時間撹拌を行った。反応液に水800gとジエチルエーテル400gを加え、分離した水層を分取し、目的のフェナシルテトラヒドロチオフェニウムブロミド水溶液を得た。
【0218】
[合成例1−9]トリフェニルスルホニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートの合成[PAG−1]
【化44】
【0219】
2,2−ビストリフルオロメチルオキシラン18.0g(0.10モル)、亜硫酸水素ナトリウム10.4g(0.10モル)、水19.3g、25%苛性ソーダ0.62gの混合溶液を40℃で10時間撹拌し、3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホン酸ナトリウムを調製した。得られたスルホン酸ナトリウムは単離せずに次反応に使用した。3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホン酸ナトリウム調製後、合成例1−1の手法で調製したトリフェニルスルホニウムクロリドの水溶液290g(0.10モル)、塩化メチレン500gを加え、室温で4時間撹拌した。撹拌後有機層を分取し、これを水洗し、有機層を減圧濃縮後、濃縮液にメチルイソブチルケトンを加えて再び減圧濃縮することで残存する水を留去した。得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行い、得られた結晶を回収、その後乾燥させることで目的物であるトリフェニルスルホニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートを得た[白色結晶40.8g(収率78%)]。得られた目的物の構造を下記に示す。
【化45】
【0220】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR、19F−NMR/DMSO−d6)の結果をそれぞれ図1、図2に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、水)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
3060、1476、1448、1329、1253、1227、1191、1145、1029、1011、968、780、760、749、685、497cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+263((C6H5)3S+相当)
NEGATIVE M-261(HO−C(CF3)2−CH2SO3-相当)
【0221】
トリフェニルスルホニウムクロリドの代わりに、合成例1−2〜1−8で調製されたオニウム塩を使用し、それ以外は合成例1−9と同様の操作を行うことで、PAG−1のカチオン種がそれぞれ4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ジメチルフェニルスルホニウム、フェナシルテトラヒドロチオフェニウムのいずれかに変わった化合物を合成することができる。
【0222】
[合成例1−10]トリフェニルスルホニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートの合成[PAG−2]
【0223】
合成例1−9で調製したトリフェニルスルホニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネート5.2g(10ミリモル)、トリエチルアミン1.1g(11ミリモル)、4−ジメチルアミノピリジン0.24g(2ミリモル)、塩化メチレン21gの混合溶液にアダマンタン−1−カルボニルクロライドの40wt%塩化メチレン溶液5.5g(11ミリモル)を加え、室温で2時間撹拌し、その後5%塩酸12gを加えて反応を停止した。有機層を分取し水洗を行い、有機層を減圧濃縮後、濃縮液にメチルイソブチルケトンを加えて再び減圧濃縮することで残存する水を留去した。得られた残渣をジイソプロピルエーテルで洗浄し、その後乾燥させることで目的物であるトリフェニルスルホニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートを得た[油状物2.7g(収率39%)]。得られた目的物の構造を下記に示す。
【化46】
【0224】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR、19F−NMR/DMSO−d6)の結果をそれぞれ図3、図4に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、水)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
3443、2908、2853、1760、1477、1448、1330、1297、1253、1239、1220、1197、1127、1062、1041、1018、969、750、684、616、595、517、501cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+263((C6H5)3S+相当)
NEGATIVE M-423((C10H15COO)−C(CF3)2−CH2SO3-相当)
【0225】
出発原料であるトリフェニルスルホニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートのカチオン種を変更すれば、他は同様の手法でトリフェニルスルホニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートのカチオン種が変わった化合物を合成することができる。
【0226】
[合成例1−11]トリフェニルスルホニウム 2−(2,2−ジメチルプロピオニルオキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートの合成[PAG−3]
【0227】
合成例1−9で調製したトリフェニルスルホニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネート2.6g(5ミリモル)、トリエチルアミン0.63g(6ミリモル)、4−ジメチルアミノピリジン0.12g(1ミリモル)、塩化メチレン15gの混合溶液にピバロイルクロライド0.72g(6ミリモル)を加え、室温で8時間撹拌し、その後5%塩酸11gを加えて反応を停止した。有機層を分取し水洗を行い、有機層を減圧濃縮後、濃縮液にメチルイソブチルケトンと塩化メチレンの混合溶液を加えて再び減圧濃縮することで残存する水を留去した。得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行い、その後結晶を回収、乾燥させることで目的物であるトリフェニルスルホニウム 2−(2,2−ジメチルプロピオニルオキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートを得た[白色結晶1.8g(収率58%)]。得られた目的物の構造を下記に示す。
【化47】
【0228】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR、19F−NMR/DMSO−d6)の結果をそれぞれ図5、図6に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の水が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
3059、2970、1758、1477、1446、1330、1245、1217、1200、1131、1115、1042、1025、971、764、748、682、620、598、505cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+263((C6H5)3S+相当)
NEGATIVE M-345((C4H9COO)−C(CF3)2−CH2SO3-相当)
【0229】
出発原料であるトリフェニルスルホニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートのカチオン種を変更すれば、他は同様の手法でトリフェニルスルホニウム 2−(2,2−ジメチルプロピオニルオキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートのカチオン種が変わった化合物を合成することができる。
【0230】
[合成例1−12]トリフェニルスルホニウム 2−(2−アダマンタン−1−イル−アセトキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートの合成[PAG−4]
【0231】
合成例1−9で調製したトリフェニルスルホニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネート2.6g(5ミリモル)、1−アダマンタン酢酸クロライド1.3g(6ミリモル)、塩化メチレン15gの混合溶液に、トリエチルアミン0.63g(6ミリモル)、4−ジメチルアミノピリジン0.12g(1ミリモル)、塩化メチレン5gの混合溶液を加え、室温で5日間撹拌し、その後5%塩酸7gを加えて反応を停止した。有機層を分取し水洗を行い、有機層を減圧濃縮後、濃縮液にメチルイソブチルケトンを加えて再び減圧濃縮することで残存する水を留去した。得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行い、その後結晶を回収、乾燥させることで目的物であるトリフェニルスルホニウム 2−(2−アダマンタン−1−イル−アセトキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートを得た[白色結晶1.7g(収率48%)]。得られた目的物の構造を下記に示す。
【化48】
【0232】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR、19F−NMR/DMSO−d6)の結果をそれぞれ図7、図8に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶媒(ジイソプロピルエーテル、水)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
3441、2905、2850、1767、1448、1329、1256、1239、1214、1200、1121、1097、1043、970、750、682、601、512、503cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSOTIVE M+263((C6H5)3S+相当)
NEGATIVE M-437((C11H17COO)−C(CF3)2−CH2SO3-相当)
【0233】
出発原料であるトリフェニルスルホニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートのカチオン種を変更すれば、他は同様の手法でトリフェニルスルホニウム 2−(2−アダマンタン−1−イル−アセトキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートのカチオン種が変わった化合物を合成することができる。
【0234】
また、この他にも、本発明により得られる酸発生剤として、例えば下記[合成例1−13]、[合成例1−14]に示すものが挙げられる。
[合成例1−13]ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートの合成[PAG−5]
【0235】
合成例1−6で調製したビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムハイドロジェンサルフェート(0.02モル相当)と、合成例1−9で調製した3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホン酸ナトリウムの水溶液(0.024モル相当)と塩化メチレン70gを加え、室温で1時間撹拌した。撹拌後有機層を分取し水洗した後、有機層を減圧濃縮した。残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行い、得られた結晶を回収しその後乾燥させることで目的物であるビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートを得た[白色結晶9.4g(収率72%]。得られた目的物の構造を下記に示す。
【化49】
【0236】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR、19F−NMR/DMSO−d6)の結果をそれぞれ図9、図10に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の水が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(D−ATR);cm−1)
2967、1481、1396、1329、1261、1219、1188、1147、1106、1037、1027、1012、994、964、818、601cm−1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+393((C20H26)2I+相当)
NEGATIVE M−261(HO−C(CF3)2−CH2SO3−相当)
【0237】
[合成例1−14]ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム 2−(2,2−ジメチルプロピオニルオキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートの合成[PAG−6]
【0238】
合成例1−13で調製したビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネート6.5g(0.010モル)、トリエチルアミン2.2g(0.022モル)、4−ジメチルアミノピリジン0.2g(0.002モル)、塩化メチレン25gの混合溶液にピバロイルクロライド2.4g(0.020モル)を加え、室温で8時間撹拌し、その後5%塩酸22gを加えて反応を停止した。有機層を分取し水洗を行い、有機層を減圧濃縮後、濃縮液にメチルイソブチルケトンを加えて再び減圧濃縮することで残存する水を留去した。得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行い、その後結晶を回収、乾燥させることで目的物であるビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートを得た[白色結晶1.8g(収率23%)]。得られた目的物の構造を下記に示す。
【化50】
【0239】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR、19F−NMR/DMSO−d6)の結果をそれぞれ図11、図12に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の水、ピバリン酸が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(D−ATR);cm−1)
2968、1765、1721、1482、1397、1329、1238、1200、1156、1147、1131、1113、1033、1024、994、972、827、618、596、584cm−1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+393((C20H26)2I+相当)
NEGATIVE M−345((C4H9COO)−C(CF3)2−CH2SO3−相当)
【0240】
本発明のレジスト材料のベース樹脂として用いられる高分子化合物を以下に示す処方で合成した。
[合成例2−1]ポリマー1の合成
窒素雰囲気下、アセトキシスチレン114gとインデン11.7gとエトキシエトキシスチレン38.5gと2,2’−アゾビスイソブチロニトリル8.2gをトルエン550gに溶解させ、溶液を調製した。その溶液を窒素雰囲気下50℃で50時間撹拌し、室温まで冷却した後、重合液にメタノール475gと水75gを加え、分離した溶液の下層を分取し、減圧濃縮を行った。得られた濃縮液はそのまま次工程の加水分解反応に用いることとした。
【0241】
【化51】
【0242】
[合成例2−2〜11]ポリマー2〜11の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、合成例2−1と同様の手順により、ポリマー2〜11を合成した。
【0243】
[合成例2−12]ポリマー12の合成
上述のようにして調製したポリマー1を含む濃縮液に対して、テトラヒドロフラン290g、メタノール260g、トリエチルアミン90g、水18gを加え、60℃で40時間撹拌し、その後反応液を濃縮した。濃縮液にメタノール290g、アセトン60g、ヘキサン470gを加え、分離した溶液の下層を分取し、減圧濃縮を行った。濃縮液に酢酸エチル550gを加え、これを15%酢酸水溶液、次いで25%ピリジン水溶液、更に水で洗浄し、その後減圧濃縮を行った。濃縮液にアセトン300gを加えた後、これを水2リットルの中に滴下し、ポリマーを晶出させ、晶出したポリマーを濾過した後、40℃で20時間真空乾燥して、下記ポリマー12で示される白色粉末固体状の高分子化合物が得られた。収量は106g、収率は65%であった。なお、Mwはポリスチレン換算でのGPCを用いて測定した重量平均分子量を表す。
【0244】
【化52】
【0245】
[合成例2−13〜22]ポリマー13〜22の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、合成例2−12と同様の手順により、ポリマー13〜22を合成した(表1参照)。
【0246】
[合成例2−23]ポリマー23の合成
上述の方法で合成したポリマー21、即ちヒドロキシスチレン:インデン=0.90モル:0.10モルの共重合体50gに対して、テトラヒドロフラン500gとトリエチルアミン26gを加えた。この混合溶液に1−クロロ−1−メトキシ−2−メチルプロパン7.8gを滴下し、室温で2時間撹拌した。撹拌後水150gを加え有機層を分取し、減圧濃縮を行い、得られた濃縮液に酢酸エチル270gを加え、これを15%酢酸水溶液、次いで25%ピリジン水溶液、更に水で洗浄し、その後減圧濃縮を行った。濃縮液にアセトン150gを加えた後、これを水2リットルの中に滴下し、ポリマーを晶出させ、晶出したポリマーを濾過した後、40℃で20時間真空乾燥して、下記ポリマー23で示される白色粉末固体状の高分子化合物が得られた。収量は45g、収率は87%であった。なお、Mwはポリスチレン換算でのGPCを用いて測定した重量平均分子量を表す。
【0247】
【化53】
【0248】
[合成例2−24〜26]ポリマー24〜26の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、合成例2−23と同様の手順により、ポリマー24〜26を合成した(表1参照)。
【0249】
合成例2−12〜26におけるポリヒドロキシスチレン誘導体の脱保護と保護に関しては特開2004−115630号公報、特開2005−8766号公報などに詳しい。
【0250】
[合成例2−27]ポリマー27の合成
窒素雰囲気下、メタクリル酸=3−ヒドロキシ−1−アダマンチル5.9gとメタクリル酸=アダマンタン−2−イルオキシメチル7.5gとメタクリル酸=4,8−ジオキサトリシクロ[4.2.1.03.7]ノナン−5−オン−2−イル10.1gと2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.9gをメチルエチルケトン54.2gに溶解させ、溶液を調製した。その溶液を窒素雰囲気下80℃で撹拌したメチルエチルケトン27.1gに4時間かけて滴下した。滴下終了後80℃を保ったまま2時間撹拌し、室温まで冷却した後、重合液を250gのヘキサンに滴下した。析出した固形物を濾別し、メチルエチルケトン27gとヘキサン117gの混合溶媒で二回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して、下記ポリマー27で示される白色粉末固体状の高分子化合物が得られた。収量は21.6g、収率は92%であった。なお、Mwはポリスチレン換算でのGPCを用いて測定した重量平均分子量を表す。
【0251】
【化54】
【0252】
[合成例2−28〜30]ポリマー28〜30の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、合成例2−27と同様の手順により、ポリマー28〜30を合成した(表1参照)。
【0253】
製造した樹脂を下記表1に示す。なお、表1において、導入比はモル比を示す。また表1中、各単位の構造を下記表2及び表3に示す。
【0254】
【表1】
【0255】
【表2】
【0256】
【表3】
【0257】
[レジスト材料の調製]
[実施例1−1〜19、比較例1−1〜6]
上記で製造した樹脂[ポリマー12〜20、ポリマー23〜30](実施例)及び樹脂[ポリマー20、25、27、29](比較例)をベース樹脂として用い、酸発生剤、添加剤(塩基あるいは架橋剤)、及び溶剤を下記表4に示す組成で添加し、混合溶解後にそれらをテフロン(登録商標)製フィルター(孔径0.2μm)で濾過し、レジスト材料(R−01〜19)及び比較例用のレジスト材料(R−20〜25)を得た。なお、溶剤はすべて、界面活性剤として後述のオムノバ社製界面活性剤(界面活性剤−1)を0.01質量%含むものを用いた。
【0258】
【表4】
【0259】
表4中、略号で示した酸発生剤、添加剤(塩基あるいは架橋剤)及び溶剤は、それぞれ下記の通りである。
PAG−2〜4:上記合成例で得られた酸発生剤。
PAG−I :トリフェニルスルホニウム カンファースルホネート
PAG−II :トリフェニルスルホニウム 2,4,6−トリイソプロピルベンゼン
スルホネート
PAG−III:トリフェニルスルホニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオ
キシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホ
ネート(特開2007−145797号公報記載化合物)
Base−1 :トリ(2−メトキシメトキシエチル)アミン
Base−2 :ラウリン酸2−モルホリノエチル
TMGU :1,3,4,6−テトラメトキシメチルグリコールウリル
PGMEA :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
CyHO :シクロヘキサノン
EL :乳酸エチル
界面活性剤−1:3−メチル−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシメチル)オキ
セタン・テトラヒドロフラン・2,2−ジメチル−1,3−プロパン
ジオール共重合物(オムノバ社製)
【0260】
[解像性、焦点深度及びパターン形状の評価:KrF露光]
[実施例2−1〜14、比較例2−1〜4]
本発明のレジスト材料(R−01〜08、R−10〜15)、及び比較用のレジスト材料(R−20〜23)を、酸化シリコン0.02μmを積層した8インチシリコンウエハー上へスピンコーティングし、0.33μmに塗布した。塗布及び下記のベーク、現像操作には東京エレクトロン(株)製、コーターデベロッパークリーントラック アクト8を用いた。
次いで、このシリコンウエハーを110℃のホットプレート上で90秒間ベークした。更に、エキシマレーザースキャナー((株)ニコン製、NSR−S203B NA=0.68)を用いて露光(通常照明)し、110℃で90秒間ベーク(PEB:post exposure bake)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で現像を行うと、ポジ型のパターン(実施例2−1〜14、比較例2−1〜4)を得ることができた。
【0261】
0.18μmのラインアンドスペースのトップとボトムを1:1で解像する露光量を最適露光量(感度:Eop)として、この露光量における分離しているラインアンドスペースの最小線幅を評価レジストの解像度とし、解像したレジストパターンの形状は、走査型電子顕微鏡を用いてレジスト断面を観察した。また、同じ露光量のラインアンドスペース1:10の孤立線の線幅を測長して、グループ線の線幅から孤立線の線幅を引いた値を、孤立パターンと密集パターンの寸法差(I/Gバイアス)とした。また、焦点をずらした場合にレジストパターン形状が矩形性を保ちつつ、かつレジストパターンの膜厚が(焦点が合っている場合に比べて)8割を保っているものを有効として焦点深度(Depth of Focus)を測定した。上記の結果を下記表5に示す。
【0262】
【表5】
【0263】
表5中の実施例の結果より、本発明の酸発生剤が添加されたレジスト材料が、KrFエキシマレーザー露光において、解像性能に優れると同時に、焦点深度に優れ、またI/Gバイアスも小さく、パターン形状も良好であることが確認された。
【0264】
[解像性の評価:EB露光]
[実施例3−1〜14、比較例3−1〜4]
本発明のレジスト材料(R−01〜08、R−10〜15)、及び比較用のレジスト材料(R−20〜23)を、フォトマスクブランクスモデルとして表面にCrを積層したシリコンウエハー上へスピンコーティングし、厚さ0.15μmに塗布した。
次いでこのシリコンウエハーを110℃のホットプレートで4分間ベークした。更に、電子線露光装置((株)日立ハイテクノロジーズ製、HL−800D 加速電圧50keV)を用いて露光し、110℃で4分間ベーク(PEB:post exposure bake)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で現像を行うと、ポジ型のパターンを得ることができた。
【0265】
得られたレジストパターンを次のように評価した。0.20μmのラインアンドスペースのトップとボトムを1:1で解像する露光量を最適露光量(感度:Eop)として、この露光量における分離しているラインアンドスペースの最小線幅を評価レジストの解像度とした。また、解像したレジストパターンの形状は、走査型電子顕微鏡を用いてレジスト断面を観察した。真空中のPED(Post Exposure Delay)を評価するには、電子線露光装置により露光した後、24時間真空に引かれた装置内に放置し、その後にPEB及び現像を行った。得られた0.20μmのラインアンドスペースのEopにおける線幅を、露光後すぐにベークした時の線幅と比較し、その差を[nm]表示した。
【0266】
【表6】
【0267】
表6中の結果から、本発明のレジスト材料が、EB露光において、Cr膜上であるにも拘わらず解像性能に優れ、またPEDが長時間にわたる場合にも線幅変動、形状劣化が少なく、パターン形状も良好で、従ってクロム化合物膜が形成されたマスクブランクスに有利に適用され得ることが確認された。
【0268】
[解像性、露光余裕度及びラインウィズスラフネス(LWR)の評価:ArF露光]
[実施例4−1〜4、比較例4−1〜2]
シリコン基板上に反射防止膜溶液(日産化学工業(株)製、ARC−29A)を塗布し、200℃で60秒間ベークして作製した反射防止膜(78nm膜厚)基板上に、本発明のレジスト材料(R−16〜19)及び比較用のレジスト材料(R−24、25)をスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、100nm膜厚のレジスト膜を作製した。これをArFエキシマレーザースキャナー((株)ニコン製、NSR−S307E、NA=0.85、4/5輪帯照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)を用いて露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB:post exposure bake)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で60秒間現像を行った。
【0269】
レジストの評価は、80nmのグループのラインアンドスペースを1:1で解像する露光量を最適露光量(Eop、mJ/cm2)として、この露光量における分離しているラインアンドスペースの最小線幅(nm)を評価レジストの解像度とした。露光余裕度の評価は、上記最適露光量を変化させた際にパターンサイズが80nm±10%を許容する露光量幅を求め、この値を最適露光量で割って百分率表示した。値が大きいほど露光量変化による性能変化が小さく、露光余裕度が良好である。また、(株)日立ハイテクノロジーズ製、測長SEM(S−9380)を用いて、80nmラインアンドスペースのラインウィズスラフネス(LWR)を測定した。結果を下記表7に示す。
【0270】
【表7】
【0271】
表7中の実施例の結果より、本発明のレジスト材料が、ArFエキシマレーザー露光においても、解像性能に優れると同時に、露光余裕度に優れ、またラインウィズスラフネスも小さい値であることが確認された。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト材料の光酸発生剤等として好適に用いられる新規スルホン酸塩及びその誘導体、光酸発生剤、これを用いたレジスト材料、及びパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、次世代の微細加工技術として遠紫外線リソグラフィーが有望視されている。
近年、遠紫外線の光源として高輝度なKrFエキシマレーザー、更に波長の短いArFエキシマレーザーを利用する技術が注目されており、更に投影レンズとウエハーの間に水、エチレングリコール、グリセリン等の空気より屈折率の高い液体を挿入することによって、投影レンズの開口数(NA)を1.0以上に設計でき、高解像度を達成することができるArF液浸リソグラフィーも急浮上してきた(例えば、非特許文献1参照)。露光光の短波長化とレジスト材料の高解像度化で、より微細な加工技術が要望されている。
このような観点から、近年開発された酸を触媒とした化学増幅型レジスト材料は、感度、解像度、ドライエッチング耐性が高く、優れた特徴を有するもので、遠紫外線リソグラフィーに特に有望なレジスト材料である。この化学増幅型レジスト材料には、露光部が除去され未露光部が残るポジ型と露光部が残り未露光部が除去されるネガ型がある。
【0003】
アルカリ現像液を用いる化学増幅ポジ型レジスト材料では、アルカリ可溶性のフェノールあるいはカルボン酸の一部もしくは全部を酸に不安定な保護基(酸不安定基)で保護した樹脂及び/又は化合物を露光により生じた酸で触媒的に分解し、露光部にフェノールあるいはカルボン酸を生じさせて露光部をアルカリ現像液で除去する。また、同ネガ型レジスト材料では、アルカリ可溶性のフェノールあるいはカルボン酸を有する樹脂及び/又は化合物と酸で上記樹脂あるいは化合物を結合(架橋)することができる化合物(酸架橋剤)を露光により生じた酸で架橋させて露光部をアルカリ現像液に不溶化し、未露光部をアルカリ現像液で除去するものである。
【0004】
上記化学増幅ポジ型レジスト材料は、ベースとなる酸不安定基を有する樹脂と放射線照射により酸を発生する化合物(以下、光酸発生剤と略する)を溶剤に溶解したレジスト溶液を調製し、基板上に種々の方法で塗布し、必要により加熱し、溶媒を除去してレジスト膜を形成する。次いで、放射線照射、例えば遠紫外線を光源としてこのレジスト膜に所定のマスクパターンを通じて露光を行う。更に必要に応じて酸による触媒反応を進めるために露光後の焼成(PEB:post exposure bake)を行い、アルカリ水溶液による現像を行い、露光部のレジスト膜を除去することでポジ型のパターンプロファイルを得る。種々の方法で基板をエッチングした後、残存するレジスト膜を剥離液による溶解やアッシングにより除去して基板上にパターンプロファイルを作製する。
【0005】
KrFエキシマレーザー用の化学増幅ポジ型レジスト材料には、フェノール系の樹脂、例えばポリヒドロキシスチレンのフェノール性水酸基の水素原子の一部あるいは全部を酸に不安定な保護基で保護した樹脂が用いられており、光酸発生剤にはヨードニウム塩やスルホニウム塩、ビススルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシジカルボキシイミド化合物、O−アレーンスルホニルオキシム化合物等が用いられてきた。更に、必要に応じて分子量3,000以下のカルボン酸及び/又はフェノール誘導体等のカルボン酸及び/又はフェノール性水酸基の水素原子の一部あるいは全部を酸不安定基で保護した溶解阻止/促進化合物、溶解特性向上のためのカルボン酸化合物、コントラスト向上のための塩基性化合物、塗布性向上のための界面活性剤等が添加される。
ここで10−カンファースルホン酸や2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホン酸を発生する光酸発生剤は、スルホニウム塩やヨードニウム塩系のみならず、O−アレーンスルホニルオキシム化合物においても拡散性を抑え、高解像性レジストの材料として非常に有用である(特許文献1〜4)。これらの光酸発生剤はバルキーな構造を有しているために酸拡散を適度に抑えており、良好なレジスト性能が発現するものと考えられる。
【0006】
しかしながら、要求されるパターンサイズの微細化に伴い、これらの光酸発生剤を用いた場合でも解像性が低い、環境に対する安定性が低い等の問題が生じてきた。この場合、解像性に関しては、用いる樹脂の酸不安定基をより酸に対して切れ易くすることや塩基性添加物、プロセス条件で改善しつつある。
【0007】
環境安定性は大きく分けて2種類ある。一つはレジスト膜上の空気中の塩基や、レジスト膜下の基板上の塩基で露光により発生した酸が失活する問題であり、これは酸強度の高い酸を発生する光酸発生剤を用いたときによく見られる現象である。また、もう一つの環境安定性の問題は、露光と露光後の焼成(PEB:post exposure bake)が長引く場合(PED:post exposure delay)にはレジスト膜中を発生酸が拡散して、酸不安定基が切れにくい場合には酸が失活し、酸不安定基が切れ易い場合には酸分解反応が進行し、パターンプロファイルが変動する場合が多い。例えばアセタールを中心とした酸不安定基を有する化学増幅ポジ型レジスト材料の場合には、未露光部の線幅が細くなる場合が多い。
【0008】
更に特許文献5では、非酸不安定基含有モノマーとの組み合わせにおいてアニオンバウンドPAGポリマーが開示されているが、非酸不安定基含有モノマーによりPAGとしての効果が弱まっており、解像性等は十分でない。
【0009】
上記のように、より高解像性を求めるためには、樹脂により切れ易い酸不安定基を導入し、光酸発生剤として比較的弱い酸を使用することが必要であるが、より切れ易く設計された酸不安定基は保存安定性に問題がある。しかし保存安定性に優れ、適度に切れ易い酸不安定基を導入した場合、光酸発生剤として上記に挙げた10−カンファースルホン酸や2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホン酸を生ずるような弱酸では、より微細化されたパターン形成においては解像性が不十分である。また、α−フルオロアルカンスルホン酸のような酸強度の高い酸を発生する光酸発生剤を使用すれば環境安定性に問題が生じる。そこで、光酸発生剤としては適度な酸強度を有する酸を発生することが望まれる。
【0010】
また、特に0.1μm以下の超微細加工技術として注目される電子線リソグラフィーにおいては、マスクパターン形成方法としても不可欠となっている。
しかし、電子線での描画は従来の一括露光に比べ時間がかかるため、スループットを上げるにはより高感度化が求められ、また描画中、描画後の真空中での経時安定性も重要な性能の一つとして求められる。また、シリコンウエハー上被覆膜(SiO2、TiN、Si3N3等)やマスクブランクス上の酸化クロムなど、基板によっては現像後のレジスト形状に影響(裾引き形状)を与えるものもあり、高解像性やエッチング後の形状を保つためには基板の種類に依存せずレジストのパターンプロファイルを矩形に保つことも重要な性能の一つとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平5−222257号公報
【特許文献2】特開平10−39500号公報
【特許文献3】特開2004−133393号公報
【特許文献4】特開平9−323970号公報
【特許文献5】特許第3613491号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】:Journal of photopolymer Science and Technology Vol.17, No.4, p587(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
レジスト材料の光酸発生剤としては、レジスト溶剤及び樹脂に対する溶解性(相溶性)が十分高いこと、保存安定性が良好であること、特にパターンプロファイル形状が良好であること、PED安定性、高解像性、より広い焦点深度、感度が良好であることが求められるが、従来の光酸発生剤ではこれらを満たしていない。
特にフォトマスクブランクスを加工する際には、マスクブランクス上でのパターンプロファイル形状の悪化は、最近において集積回路のパターンの微細化に伴いパターン倒れの原因ともなり、深刻な問題となっている。
【0014】
即ち、本発明の目的は、上記の種々問題を解決しつつ、特に解像性とパターンプロファイル形状に優れた化学増幅型レジスト材料を与える化学増幅型レジスト材料用として有効な新規スルホン酸塩と光酸発生剤及びこれを用いたレジスト材料、フォトマスクブランク、並びにパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、下記一般式(1)で示されるスルホン酸塩を提供する。
HO−C(CF3)2−CH2SO3-M+ (1)
(式中、M+はカチオンを示す。)
【0016】
上記一般式(1)で示されるスルホン酸塩は新規なスルホン酸塩であり、そして、上記一般式(1)で示されるこのようなスルホン酸塩であれば、光酸発生剤として有用な、後述する一般式(2)のスルホン酸塩を合成するための中間原料として用いることができる。
【0017】
また、本発明のスルホン酸塩は前記一般式(1)中のM+がリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ヨードニウムイオン及びスルホニウムイオンのいずれかであることが好ましい。
【0018】
このように、前記スルホン酸塩としてリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩のいずれかを用いれば、合成も簡便となり、上記一般式(1)で示される中間原料としてのスルホン酸塩の単離も容易となる。また、スルホニウム塩やヨードニウム塩であれば、アシル化することにより、たとえば光酸発生剤として有用な後述する一般式(3)または(4)で示されるスルホン酸スルホニウム塩や一般式(5)で示されるスルホン酸ヨードニウム塩を容易に得ることができる。ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩はカチオン交換を行うことにより、スルホニウム塩やヨードニウム塩の合成中間体として使用できる。
【0019】
前記スルホン酸塩は、2,2−ビストリフルオロメチルオキシランを硫黄化合物と水中で反応させることにより製造することができる。
【0020】
このように、後述する一般式(2)のスルホン酸塩の出発原料として2,2−ビストリフルオロメチルオキシランを用い、これを硫黄化合物と水中で反応させることにより、安価な原料かつ簡便な操作から中間原料となる上記一般式(1)で示されるスルホン酸塩を合成することができる。さらに溶媒として使用しているのが水であることから、環境的にも非常に優れているといえる。
【0021】
本発明は上記新規中間原料から合成できるスルホン酸塩として、下記一般式(2)で示されるスルホン酸塩を提供する。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3-M+ (2)
(式中、R1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。M+はカチオンを示す。)
【0022】
上記一般式(2)で示されるこのような本発明のスルホン酸塩は、分子内にエステル部位を有しているため、嵩の低いアシル基から嵩の高いアシル基等の導入が容易であり、分子設計の幅を大きくもつことができる。また、スルホ基のβ位に電子吸引性基であるトリフルオロメチル基を有しており、これに由来してその酸強度はα−フルオロスルホン酸より弱く、アルカンスルホン酸やアレーンスルホン酸よりも強くなるため、たとえば酸発生剤として用いればKrFリソグラフィーや電子線リソグラフィーにおいて、解像性に優れると共に環境安定性も満足することができるものとなる。
【0023】
また、本発明のスルホン酸塩は上記一般式(2)中のM+がリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ヨードニウムイオン及びスルホニウムイオンのいずれかであることが好ましい。
【0024】
上記一般式(2)中のM+がリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ヨードニウムイオン及びスルホニウムイオンのいずれかであれば、前述のように中間原料の合成が容易となり、所望の上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩も同様に容易に得ることができる。特に、スルホニウム塩やヨードニウム塩であれば、光酸発生剤として用いることができ、アンモニウム塩であれば、熱酸発生剤として用いることができる。
【0025】
上記一般式(2)で示される本発明のスルホン酸塩の具体例としては、下記一般式(3)または下記一般式(4)で示されるようなスルホン酸スルホニウム塩が挙げられる。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- R2R3R4S+ (3)
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- (R5(O)n)mPh’S+Ph2 (4)
(式中、R1は前記と同様である。R2、R3及びR4は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR2、R3及びR4のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。R5は置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0又は1を示す。Phはフェニル基を示す。Ph’はフェニル基の水素原子m個をR5(O)n−基に置換した基を示す。)
【0026】
このような上記一般式(3)または(4)で示されるスルホン酸スルホニウム塩であれば、紫外線、遠紫外線、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、シンクロトロン放射線等の高エネルギー線に感応して、後述する一般式(6)のスルホン酸を発生するので、たとえば有用な光酸発生剤として利用することができる。
【0027】
また、上記一般式(2)で示される本発明のスルホン酸塩の具体例として、下記一般式(5)で示されるスルホン酸ヨードニウム塩を挙げることもできる。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- ((R5(O)n)mPh’)2I+ (5)
(式中、R1は前記と同様である。R5は置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0又は1を示す。Ph’はフェニル基の水素原子m個をR5(O)n−基に置換した基を示す。)
【0028】
上記一般式(5)で示されるこのようなスルホン酸ヨードニウム塩においても、紫外線、遠紫外線、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、シンクロトロン放射線等の高エネルギー線に感応して、後述する一般式(6)のスルホン酸を発生するので、有用な光酸発生剤として利用することができる。
【0029】
本発明の光酸発生剤は、高エネルギー線に感応し、下記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生する化学増幅型レジスト材料用である。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- H+ (6)
(式中、R1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。)
【0030】
このように、光酸発生剤が、高エネルギー線に感応し、上記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生するものであれば、デバイス作製工程での塗布、露光前焼成、露光、露光後焼成、現像の工程において、適度な酸強度を有するため、特に解像性とパターンプロファイル形状に優れた化学増幅レジスト材料用として使用することができる。
【0031】
さらに、前記光酸発生剤が、上記一般式(3)〜(5)で示されるいずれか1つのスルホン酸塩からなることが好ましい。
【0032】
このように、本発明の上記一般式(3)〜(5)で示されるスルホン酸塩は、上記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生することができ、これを光酸発生剤とすれば、スルホ基のβ位に電子吸引性基であるトリフルオロメチル基を有しているので、α−フルオロスルホン酸よりも弱く、アルカンスルホン酸やアレーンスルホン酸よりも強い酸強度を得ることができ、特に、KrFリソグラフィーや電子線リソグラフィーにおいて、解像性に優れると共に環境安定性も満足することができるものとなる。
【0033】
本発明のレジスト材料は、ベース樹脂、酸発生剤及び有機溶剤を含有してなるものであり、前記酸発生剤として、上記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生するものを使用し、具体的には光酸発生剤として、上記一般式(3)〜(5)で示されるいずれか1つのスルホン酸塩からなる光酸発生剤を用いることができる。
【0034】
高エネルギー線照射により上記一般式(6)のスルホン酸を発生するこれらの光酸発生剤を用いたレジスト材料は、焦点余裕度に優れ、PEDが長時間にわたる場合にも線幅変動や形状劣化が少なく、現像後のパターンプロファイル形状に優れ、また、微細加工に適した高解像性を有する。
【0035】
本発明では、前記レジスト材料に含有されたベース樹脂が現像液に不溶あるいは難溶であって、酸によって現像液に可溶となる化学増幅ポジ型レジスト材料であることが好ましい。
【0036】
このように、前記レジスト材料のベース樹脂として、ポジ型のものを用いれば、高い解像性を得ることができ、さらに、本発明の酸発生剤を用いて化学増幅型とすることで、感度、ドライエッチング耐性も高くなり、特に遠紫外線リソグラフィーに有望なレジスト材料とすることができる。
【0037】
また、前記化学増幅型ポジ型レジスト材料に、更に塩基性化合物を添加することが好ましい。
【0038】
このように、本発明のレジスト材料に塩基性化合物を添加することにより、酸発生剤より発生する酸などがレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができ、レジスト感度の調整が容易となることに加え、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制することができ、さらに、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を一層向上することができる。
【0039】
また、本発明は、少なくとも、前記レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介して、高エネルギー線を用いてパターン露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0040】
このように、本発明のレジスト材料は、パターン形成方法に用いることができる。もちろん、エッチング工程、レジスト除去工程、洗浄工程等のその他の各種工程が行われても良いことは言うまでもない。
【0041】
さらに、本発明は、前記レジスト材料がクロム化合物膜上に形成されてなることを特徴とするフォトマスクブランクを提供する。
【0042】
このように、フォトマスクを製造する場合、クロム系材料を最表面の材料として持つフォトマスクブランクの加工に本発明のレジスト材料を用いると、レジストパターンが基板依存性の影響を受けにくいため、本発明のパターン形成方法を有利に適用でき、高解像性、経時安定性が得られるため、信頼性の高いフォトマスクの製造を行うことができるフォトマスクブランクとなる。
【発明の効果】
【0043】
以上説明したように、本発明によれば、上記一般式(1)で示されるスルホン酸塩を中間原料として、上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩を合成することができ、この上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩が分子内にエステル部位を有しているため、嵩の低いアシル基から嵩の高いアシル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、アントライル基等の導入が容易であり、光酸発生剤としての分子設計の幅を大きく持つことができる。そして、このような上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩、具体的には上記一般式(3)〜(5)で示されるスルホン酸塩を光酸発生剤として用いれば、上記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生し、デバイス作製工程での塗布、露光前焼成、露光、露光後焼成、現像の工程において適度な酸強度を有するため、特に解像性とパターンプロファイル形状に優れた化学増幅レジスト材料用として使用できる。また、特にKrFエキシマレーザーや電子線照射用レジスト材料において適度な酸強度を有する。更には、高エネルギー線照射により上記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生する前記光酸発生剤を用いた化学増幅型レジスト材料は、焦点余裕度に優れ、PEDが長時間にわたる場合にも線幅変動、形状劣化が少なく、現像後のパターンプロファイル形状に優れ、また微細加工に適した高解像性を有する。更に、本発明の光酸発生剤はスルホ基のβ位に電子求引性基であるトリフルオロメチル基を有しており、これに由来してその酸強度はα−フルオロスルホン酸より弱く、アルカンスルホン酸やアレーンスルホン酸よりも強い。したがって、本発明の光酸発生剤を用いれば、KrFリソグラフィーや電子線リソグラフィーにおいて、解像性に優れると共に環境安定性も満足することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】合成例1−9のPAG−1の1H−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図2】合成例1−9のPAG−1の19F−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図3】合成例1−10のPAG−2の1H−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図4】合成例1−10のPAG−2の19F−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図5】合成例1−11のPAG−3の1H−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図6】合成例1−11のPAG−3の19F−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図7】合成例1−12のPAG−4の1H−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図8】合成例1−12のPAG−4の19F−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図9】合成例1−13のPAG−5の1H−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図10】合成例1−13のPAG−5の19F−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図11】合成例1−14のPAG−6の1H−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図12】合成例1−14のPAG−6の19F−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明についてより具体的に説明する。
前述のように、レジスト材料の光酸発生剤としては、レジスト溶剤及び樹脂に対する溶解性(相溶性)が十分高いこと、保存安定性が良好であること、特にパターンプロファイル形状が良好であること、PED安定性、高解像性、より広い焦点深度、感度が良好であることが求められるが、従来の光酸発生剤ではこれらを全ては満たしていない。特にフォトマスクブランクスを加工する際には、マスクブランクス上でのパターンプロファイル形状の悪化は、最近において集積回路のパターンの微細化に伴いパターン倒れの原因ともなり、深刻な問題となっている。
【0046】
本発明者らは、上記の種々問題を解決しつつ、特に解像性とパターンプロファイル形状に優れた化学増幅型レジスト材料を与える化学増幅型レジスト材料用として有効な新規スルホン酸塩と光酸発生剤及びこれを用いたレジスト材料、フォトマスクブランク、並びにパターン形成方法を提供するという目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、工業的に入手可能な2,2−ビストリフルオロメチルオキシランを出発原料とし、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の硫黄化合物との反応により、2−ヒドロキシ−2,2−ビストリフルオロメチルエタンスルホン酸塩が得られ、このスルホン酸塩を中間原料として合成されたスルホン酸スルホニウム塩、スルホン酸ヨードニウム塩に代表される化合物を酸発生剤として用いたレジスト材料がPED安定性、パターン形状、解像性、感度といった諸特性に優れ、レジスト材料として精密な微細加工に極めて有効であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0047】
すなわち、本発明の光酸発生剤として有用な一般式(2)で示されるスルホン酸塩の中間原料となるスルホン酸塩として、下記一般式(1)が示される。
HO−C(CF3)2−CH2SO3-M+ (1)
(式中、M+はカチオンを示す。)
【0048】
ここでM+としては、安定なスルホン酸塩として存在できるものであれば特に制限されるものではないが、合成の簡便さ、スルホン酸塩の単離のしやすさからリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ヨードニウムイオン、スルホニウムイオンが好ましく用いられる。
【0049】
M+がアンモニウムイオン、スルホニウムイオン及びヨードニウムイオンのいずれかである場合、下記一般式(7)によって示される。
(R6)m’A’+ (7)
(式中、A’は窒素原子、硫黄原子及びヨウ素原子のいずれかを示す。R6は相互に独立に水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR6のいずれか2つ以上が相互に結合して式中のA’と共に環を形成してもよい。但し、A’が硫黄原子、ヨウ素原子の場合にはR6は水素原子を示さない。m’はA’が窒素原子の場合には4、A’が硫黄原子の場合には3、A’がヨウ素原子の場合には2を示す。)
【0050】
R6における置換基としては、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、カルボニル基等が挙げられ、R6としては具体的には下記のものが挙げられる。
アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロぺニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。オキソアルキル基としては、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基、2−オキソプロピル基、2−オキソエチル基、2−シクロペンチル−2−オキソエチル基、2−シクロヘキシル−2−オキソエチル基、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−オキソエチル基等を挙げることができる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、チエニル基等や、4−ヒドロキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−tert−ブトキシフェニル基、m−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基、ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としてはベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等が挙げられる。アリールオキソアルキル基としては、2−フェニル−2−オキソエチル基、2−(1−ナフチル)−2−オキソエチル基、2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル基等の2−アリール−2−オキソエチル基等が挙げられる。
【0051】
A’が窒素原子であり、R6のいずれか2つ以上が相互に結合して窒素原子と共に環状構造を形成する場合には、ピペリジン、モルホリン、ピリジン、キノリン、アクリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール等の構造等が挙げられ、その窒素原子上がプロトン化されていてもアルキル化されていてもよい。更には置換基としてアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等の重合可能な置換基を有するアリール基が挙げられ、具体的には4−(アクリロイルオキシ)フェニル基、4−(メタクリロイルオキシ)フェニル基、4−ビニルオキシフェニル基、4−ビニルフェニル基等が挙げられる。また、A’が硫黄原子であり、R6のいずれか2つが相互に結合して硫黄原子と共に環状構造を形成する場合には、テトラヒドロチオフェン、1,4−チオキサン、ジベンゾチオフェン、フェノキサチイン等の構造が挙げられる。
【0052】
より具体的な(R6)m’A’+の例として、A’が窒素原子の場合には、アンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリオクチルアンモニウム、アニリニウム、2,6−ジメチルアニリニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリプロピルアンモニウム、N−ベンジル−N,N−ジメチルアニリニウム、N−(p−メトキシ)ベンジル−N,N−ジメチルアニリニウム等が挙げられ、A’が硫黄原子の場合には、トリフェニルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4―ヒドロキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(4−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、(3−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ジフェニル(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ビス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、2−ナフチルジフェニルスルホニウム、ジメチル−2−ナフチルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、4−メトキシフェニルジメチルスルホニウム、トリメチルスルホニウム、2−オキソシクロヘキシルシクロヘキシルメチルスルホニウム、トリナフチルスルホニウム、トリベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウム、ジメチルフェニルスルホニウム、2−オキソ−2−フェニルエチルチアシクロペンタニウム、ジフェニル2−チエニルスルホニウム、4−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、2−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、4−メトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、2−メトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、4−メチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−エチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−ヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−オクチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−エトキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−シクロヘキシルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−ヘキシルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−オクチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−ドデシルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−トリフルオロメチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−トリフルオロメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、10−フェニルフェノキサチイニウム等が挙げられる。より好ましくはトリフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウム、ジメチルフェニルスルホニウム、2−オキソ−2−フェニルエチルチアシクロペンタニウム、10−フェニルフェノキサチイニウム等が挙げられ、A’がヨウ素原子の場合には、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−エチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−(1,1−ジメチルプロピル)フェニル)ヨードニウム、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム、4−tert−ブトキシフェニルフェニルヨードニウム、4−アクリロイルオキシフェニルフェニルヨードニウム、4−メタクリロイルオキシフェニルフェニルヨードニウム等が挙げられる。
【0053】
次に、上記一般式(1)で示される本発明の中間原料としてのスルホン酸塩における合成法について述べる。
【0054】
2,2−ビストリフルオロメチルオキシランを出発原料とし、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩等の硫黄化合物と水中で反応させることにより、中間原料である上記一般式(1)で示されるスルホン酸塩を簡便に合成することができる。反応温度は0℃〜50℃、好ましくは20℃〜50℃である。また、2,2−ビストリフルオロメチルオキシランと反応させる塩としては、亜硫酸水素ナトリウムが安価で取り扱いやすく好ましい。
【0055】
前述した手法により、安価な原料かつ簡便な操作から、上記一般式(1)で示される本発明の中間原料としてのスルホン酸塩が製造できる。さらに溶媒として使用しているのが水であることから、環境的にも非常に優れているといえる。
【0056】
上記一般式(1)で示される本発明の中間原料としてのスルホン酸塩について、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等は、有用な合成中間体となり得る。すなわち、後述するカチオン交換及びアシル化の手法により、本発明の一般式(3)または(4)で示されるスルホン酸スルホニウム塩や本発明の一般式(5)で示されるスルホン酸ヨードニウム塩へと容易に変換され、これらは光酸発生剤として活用される。更に、アンモニウム塩は熱酸発生剤前駆体としても使用でき、総じて上記一般式(1)で示される本発明の中間原料としてのスルホン酸塩の利用価値は極めて高いといえる。
【0057】
本発明では、中間原料である上記一般式(1)で示されるスルホン酸塩をアシル化することにより、光酸発生剤として有用な所望の下記一般式(2)で示されるスルホン酸塩を合成することができる。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3-M+ (2)
(式中、R1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。M+は上記と同様である)
【0058】
アシル化反応としては、公知のエステルの製造方法、例えば、アシル化剤との反応、カルボン酸との反応が適用できるが、アシル化剤との反応が特に好ましい。アシル化剤を用いる反応では、好ましくは塩化メチレン、クロロフォルム、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、へキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、アセトニトリルなどのニトリル類、アセトン、2−ブタノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸n−ブチルなどのエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどの非プロトン性極性溶媒類から選択して単独あるいは2種類以上を混合しての溶媒中、上記一般式(1)で示されるスルホン酸塩と、カルボン酸クロリドあるいはカルボン酸無水物、カルボン酸トリフルオロ酢酸混合オニウム酸無水物、カルボン酸ピバリン酸混合酸無水物等のアシル化剤と、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基類を順次又は同時に加えて反応させる。酸無水物等のアシル化剤を用いる反応では塩基の代わりに塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸等の無機酸類、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸類から選ばれる酸触媒下に反応を行うこともできる。アシル化反応温度は用いるアシル化剤の種類や反応条件により適切な反応温度を選択できるが、一般的には−50℃から溶媒の沸点程度が好ましく、−20℃から室温程度が更に好ましい。アシル化剤の使用量は、構造に依存するが、アルコール化合物1モルに対し1〜40モル、好ましくは1〜5モルの範囲である。カルボン酸との反応は、対応するカルボン酸とスルホン酸塩からの脱水反応であり、酸触媒下に行うのが一般的である。カルボン酸の使用量は、構造に依存するが、アルコール化合物1モルに対し1〜40モル、好ましくは1〜5モルの範囲である。酸触媒の例として、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸等の無機酸類、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸類を例示でき、これらは単独又は混合して用いられる。酸触媒の使用量は、アルコール化合物1モルに対し0.001〜1モル、好ましくは0.01〜0.05モルの触媒量である。溶媒としては、上記エステル化剤との反応に挙げたものと同様のものを例示できるが、一般的には−50℃から溶媒の沸点程度が好ましい。へキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類を含む溶媒を用いて、生じる水を共沸により系外に除去しながら反応を進行させるのもよい。この場合、常圧で溶媒の沸点で還流しながら水を留去してもよいが、減圧下に沸点より低い温度で水の留去を行ってもよい。
【0059】
上記一般式(1)で示される中間原料のスルホン酸塩から上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩を得る工程において、反応溶媒への溶解性の観点から、M+がアンモニウムイオン、スルホニウムイオン及びヨードニウムイオンのいずれかであることが特に好ましい。M+がスルホニウムイオンやヨードニウムイオンである場合、その後の光酸発生剤として利用できる。また、M+がアンモニウムイオンである場合は、熱酸発生剤として使用できる。
【0060】
上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩は、アシル化剤を選択することにより分子設計の幅を大きく持たせることができるため、種々の条件に適応した熱酸発生剤あるいは光酸発生剤を調製することが可能であり、その利用価値は極めて高いといえる。
【0061】
ここで、上記一般式(2)におけるR1としては、具体的には下記のものが挙げられる。
アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、1−アダマンチル基、1−アダマンチルメチル基、ステロイド構造含有基等が挙げられる。オキソアルキル基としては、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基、4−オキソシクロヘキシル基、2−オキソプロピル基、2−オキソエチル基、2−シクロペンチル−2−オキソエチル基、2−シクロヘキシル−2−オキソエチル基、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−オキソエチル基、4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−5−オン−9−イル基、4−オキソ−1−アダマンチル基等を挙げることができる。アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントラニル基、チエニル基等や、4−ヒドロキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−tert−ブトキシフェニル基、3−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基、ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としてはベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等が挙げられる。アリールオキソアルキル基としては、2−フェニル−2−オキソエチル基、2−(1−ナフチル)−2−オキソエチル基、2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル基等の2−アリール−2−オキソエチル基等が挙げられる。その他、ビニル基、イソプロペニル基等が挙げられる。
【0062】
R1の中で特に好ましく用いられるものとして、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、1−アダマンチルメチル基、4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−5−オン−9−イル基、4−オキソ−1−アダマンチル基、ステロイド構造含有基、フェニル基、1−ナフチル基、イソプロペニル基等が挙げられる。
【0063】
上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩の具体例としては、下記一般式(3)で示されるスルホン酸スルホニウム塩を挙げることができる。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- R2R3R4S+ (3)
(式中、R1は上記と同様である。R2、R3及びR4は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR2、R3及びR4のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。)
【0064】
上記一般式(3)中のR2、R3及びR4として、具体的には以下のものが挙げられる。
アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。オキソアルキル基としては、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基、2−オキソプロピル基、2−オキソエチル基、2−シクロペンチル−2−オキソエチル基、2−シクロヘキシル−2−オキソエチル基、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−オキソエチル基等を挙げることができる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、チエニル基等や、4−ヒドロキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−tert−ブトキシフェニル基、3−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基、ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としてはベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等が挙げられる。アリールオキソアルキル基としては、2−フェニル−2−オキソエチル基、2−(1−ナフチル)−2−オキソエチル基、2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル基等の2−アリール−2−オキソエチル基等が挙げられる。また、R2、R3及びR4のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して硫黄原子を介して環状構造を形成する場合には、これらの環状構造を形成する基としては、1,4−ブチレン、3−オキサ−1,5−ペンチレン等の二価の有機基が挙げられる。更には置換基としてアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等の重合可能な置換基を有するアリール基が挙げられ、具体的には4−アクリロイルオキシフェニル基、4−メタクリロイルオキシフェニル基、4−アクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル基、4−メタクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル基、4−ビニルオキシフェニル基、4−ビニルフェニル基等が挙げられる。
【0065】
また、具体的にスルホニウムカチオンを示すと、トリフェニルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−ヒドロキシフェニル)スルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(4−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、3−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(3−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、3,4−ジ−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(3,4−ジ−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4−ジ−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ジフェニル(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウム、4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ビス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、2−ナフチルジフェニルスルホニウム、(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−n−ヘキシルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、ジメチル(2−ナフチル)スルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、4−メトキシフェニルジメチルスルホニウム、トリメチルスルホニウム、2−オキソシクロヘキシルシクロヘキシルメチルスルホニウム、トリナフチルスルホニウム、トリベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウム、ジメチルフェニルスルホニウム、2−オキソ−2−フェニルエチルチアシクロペンタニウム、ジフェニル2−チエニルスルホニウム、4−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、2−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、4−メトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、2−メトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム等が挙げられる。より好ましくはトリフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム、4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム等が挙げられる。更には4−メタクリロイルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−アクリロイルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−メタクリロイルオキシフェニルジメチルスルホニウム、4−アクリロイルオキシフェニルジメチルスルホニウム、(4−メタクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−アクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム等が挙げられる。これら重合可能なスルホニウムカチオンに関しては特開平4−230645号公報、特開2005−84365号公報等を参考にすることができ、これら重合可能なスルホニウム塩は後述する高分子量体の構成成分のモノマーとして用いることができる。
【0066】
この場合、上記一般式(3)で示されるスルホン酸スルホニウム塩として、さらに具体的には、下記一般式(4)で示されるスルホン酸スルホニウム塩が挙げられる。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- (R5(O)n)mPh’S+Ph2 (4)
(式中、R1上記と同様である。R5は置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0又は1を示す。Phはフェニル基を示す。Ph’はフェニル基の水素原子m個をR5(O)n−基に置換した基を示す。)
【0067】
上記一般式(4)中、R5−(O)n−基の置換位置は特に限定されるものではないが、フェニル基の4位あるいは3位が好ましい。より好ましくは4位である。R5としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、sec−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、更にn=1の場合にアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基が挙げられる。mは1〜5の整数であり、好ましくは1である。nは0又は1である。
【0068】
この場合、具体的なスルホニウムカチオンとしては、4−メチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−エチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−ヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−オクチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−エトキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−シクロヘキシルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−ヘキシルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−オクチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−ドデシルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−トリフルオロメチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−トリフルオロメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−メタクリロイルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−アクリロイルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、(4−n−ヘキシルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム)、(4−メタクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−アクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0069】
上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩の具体例として、下記一般式(5)で示されるスルホン酸ヨードニウム塩も挙げることができる。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- ((R5(O)n)mPh’)2I+ (5)
(式中、R1は前記と同様である。R5は置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0又は1を示す。Ph’はフェニル基の水素原子m個をR5(O)n−基に置換した基を示す。)
【0070】
上記一般式(5)中、R5−(O)n−基の置換位置は特に限定されるものではないが、フェニル基の4位あるいは3位が好ましい。より好ましくは4位である。R5としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、sec−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、更にn=1の場合にアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基が挙げられる。mは1〜5の整数であり、好ましくは1である。nは0又は1である。
【0071】
具体的なヨードニウムカチオンとして、例えばジフェニルヨードニウム、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−(1,1−ジメチルエチル)フェニル)ヨードニウム、ビス(4−(1,1−ジメチルプロピル)フェニル)ヨードニウム、(4−(1,1−ジメチルエトキシ)フェニル)フェニルヨードニウムなどが挙げられる。
【0072】
これら上記一般式(3)または(4)で示されるスルホン酸スルホニウム塩や上記一般式(5)で示されるスルホン酸ヨードニウム塩は、本発明の一般式(6)で示されるスルホン酸を発生する光酸発生剤としてレジスト材料用に使用することができ、このレジスト材料をパターン形成に適用することが可能である。
なお、後述する手法により、上記一般式(1)で示される本発明の中間原料としてのスルホン酸塩から、本発明の光酸発生剤となる上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩の中間体として有用なアンモニウム塩なども合成することができ、例えばアンモニウム塩として、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、N,N−ジメチルアニリニウムなどの3級アンモニウム塩や、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0073】
ここで、上記一般式(2)で示される本発明のスルホン酸塩の合成方法の一例として、上記一般式(3)で示されるスルホン酸スルホニウム塩の合成方法の一例について述べる。
まず、前述したように2,2−ビストリフルオロメチルオキシランと亜硫酸塩、亜硫酸水素塩等の硫黄化合物との反応から、中間原料の上記一般式(1)で示されるスルホン酸塩を合成する。ここでは反応試剤となる硫黄化合物として、安価で取り扱いやすく好ましいため亜硫酸水素ナトリウムを用いてスルホン酸ナトリウムを合成したが、これに限定されるものではない。
【0074】
次に、得られたスルホン酸ナトリウムに対して、スルホニウムハライド等のスルホニウム塩とイオン交換を行うことにより、上記一般式(1)のM+がスルホニウム塩である化合物を合成することができる。なお、イオン交換反応は特開2007−145797号公報などに詳しく述べられているが、例えばスルホニウムハライドの混合物をジクロロメタン−水の2層系で反応させ、水層を除去し、有機層を濃縮することで目的物となるスルホニウム塩を合成・回収することができる。また、スルホン酸塩は一度単離してからイオン交換反応を行ってもよいし、粗製物のままでも構わない。
【0075】
続いて、得られたスルホン酸スルホニウム塩をアシル化することで、所望の一般式(3)で示されるスルホン酸スルホニウム塩を得ることができる。アシル化の方法については、前述の通りである。
【0076】
以上の工程を下記スキームに示す。
【化1】
(式中、R1、R2、R3、R4は上記と同様である。X−はI−、Br−、Cl−、MeOSO3−、等のアニオンを示す)
【0077】
上述したように、本発明の中間原料である上記一般式(1)で示されるスルホン酸塩や光酸発生剤として有用な所望の上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩は複雑な工程や高価な原料を含むことなく合成することが可能である。
また、他のスルホニウムハライドやヨードニウムハライドを用いて、同様の手法により、トリフェニルスルホニウム以外のスルホン酸スルホニウム塩や、スルホン酸ヨードニウム塩等も合成することができる。
【0078】
カチオン交換の際に用いられるスルホニウムハライド等のスルホニウム塩やヨードニウムハライド等のヨードニウム塩は、The Chemistry of sulfonium group Part 1 John−Wiley & Sons (1981)、Advanced Photochemistry, vol.17 John−Wiley & Sons (1992)、J.Org.Chem.,1988.53.5571−5573あるいは特開平8−311018号公報、特開平9−15848号公報、特開2001−122850号公報、特開平7−25846号公報、特開2001−181221号公報、特開2002−193887号公報、特開2002−193925号公報等を参考に合成することができる。また、重合可能な置換基としてアクリロイルオキシ基あるいはメタクリロイルオキシ基を有するオニウムカチオンは、特開平4−230645号公報、特開2005−84365号公報等に記載の方法で、既存のヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウムハライドを、塩基性条件下でアクリロイルクロリドあるいはメタクリロイルクロリドと反応させることで合成できる。
【0079】
本発明の光酸発生剤は、上記一般式(1)で示されるスルホン酸塩を中間原料として合成された上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩、具体的には上記一般式(3)または(4)で示されるスルホン酸スルホニウム塩や上記一般式(5)で示されるスルホン酸ヨードニウム塩に代表される化合物であり、これらは紫外線、遠紫外線、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、又はシンクロトロン放射線照射等の高エネルギー線に感応し、下記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生するもので、化学増幅型レジスト材料用の光酸発生剤として用いられるものである。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- H+ (6)
(式中、R1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。)
【0080】
上記一般式(6)におけるR1は、上記一般式(2)におけるR1の説明と同じであるが、具体的なスルホン酸を下記に示す。ただし、本発明の光酸発生剤はこれらに限定されない。
【化2】
【0081】
【化3】
【0082】
R1の中で特に好ましく用いられるものとして、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、1−アダマンチルメチル基、4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−5−オン−9−イル基、4−オキソ−1−アダマンチル基、ステロイド構造含有基、フェニル基、1−ナフチル基等が挙げられる。
【0083】
例えば、R1がシクロアルキル基を有している場合、鎖状のものと比較して酸拡散を抑制し、解像性や露光余裕度等を向上することができる。特に好ましくはR1がアダマンチル基の場合であり、その剛直かつ適度な分子サイズを有する構造に起因して、適度な酸拡散制御能を有し、これを含んだレジスト材料は結果として現像後に高い溶解コントラスト及び良好なパターンプロファイルを示す。
【0084】
また、R1がベンゼン環やナフタレン環のように芳香環を有している場合、脂環式炭化水素のようにバルキーな構造から酸拡散を制御できるだけでなく、光の吸収により透過率や酸発生効率を調整することができる。更にKrFや電子線リソグラフィーのようにポリヒドロキシスチレンのような芳香環をベースとするポリマーマトリックス中においては、本発明の中で芳香環を有する光酸発生剤はポリマーと親和性を有し、均一に分散し易いと考えられる。酸が均一に分散することで現像後に矩形なパターン形状を得ることができる。
【0085】
更に、レジスト材料のベースポリマーに含まれる酸不安定基において、その割合が多かったり、あるいはそれが酸拡散を助長するような構造(例えば保護基が非脂環式であったり剛直な構造でない場合など)である場合は、R1にステロイド構造を有する光酸発生剤を使用することで高い溶解コントラストを得ることができる。これは、極めて分子サイズの大きいステロイド構造による、高い酸拡散抑制能に起因する。特にデヒドロコール酸誘導体等は、原料の入手、精製の容易さ等の点から好ましい。
【0086】
また、R1が更にカルボニル基や水酸基、あるいはカルボン酸のような極性基を有している場合、優れた露光余裕度及び焦点深度を示す。これは、レジスト材料のベース樹脂中に多く含まれる極性ユニットと親和性を持ち、結果としてPAGがポリマーマトリックス中に均一に分散することに起因すると考えられる。特にR1がノルボルナンラクトン構造を有する場合は、剛直な骨格と極性基を有しているという両方の効果から、高い拡散抑制能と均一分散性を示していると考えられ、良好なパターンプロファイルを示す。
【0087】
また、(メタ)アクリル酸系樹脂を用いたArFリソグラフィーにおいて、通常はα,α’−ジフルオロスルホン酸のような強酸を発生する光酸発生剤を使用しているが、樹脂に含まれる酸不安定基としてかなり不安定な三級エステルやアセタール基等を用いた場合では、脱保護反応が過剰に進行してしまい、コントラストがとれないことがある。そこで、このような場合に本発明の光酸発生剤を使用することができる。上述した反応性の大きい保護基は、本発明の光酸発生剤の酸強度でも十分に脱保護反応を行うことができ、しかもα,α’−ジフルオロスルホン酸ほどの酸強度はないことから脱保護反応が過剰に進行してしまうこともない。
【0088】
上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩、具体的には上記一般式(3)〜(5)で示されるスルホン酸塩からなる、本発明の光酸発生剤における大きな特徴の一つとして挙げられるのは、R1で示される構造を前述したアシル化の手法により、容易に種々変更できることである。即ち構造改変の自由度が高く、アシル基の改変により諸特性の調整が容易に可能となる。従って露光条件、ポリマーの種類や組成等に合わせてその時に最適なR1の構造を有する光酸発生剤を選択することができる。特にR1が脂環式炭化水素や芳香環のようなバルキーな構造を有している場合、発生酸の拡散を適度に抑制するため、疎密依存性の小さい良好なパターン形状を得ることができる。
【0089】
更に、上記一般式(2)、具体的には上記一般式(3)〜(5)で示されるようなスルホン酸塩を用いた本発明の光酸発生剤は、スルホ基のβ位に電子求引性基であるトリフルオロメチル基を有しており、これに由来してその酸強度はα−フルオロスルホン酸より弱く、アルカンスルホン酸やアレーンスルホン酸よりも強い。したがって、KrFリソグラフィーや電子線リソグラフィーにおいて、解像性に優れると共に環境安定性も満足することができる。加えて前述したように、R1がバルキーな構造を有している場合、発生酸の拡散を適度に抑制するため、疎密依存性の小さい良好なパターン形状を得ることができる。すなわち、本発明の光酸発生剤を用いたレジスト材料は、高解像性と適度な拡散制御を両立した優れたレジスト性能を示す。また、前述したようにArFリソグラフィーにおいても、本発明の光酸発生剤をα−フルオロスルホン酸のような強酸を発生する光酸発生剤と組み合わせることで良好なパターン形状を得ることができる。
【0090】
本発明では、上記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生する、上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩、具体的には、上記一般式(3)〜(5)で示されるスルホン酸塩を用いた光酸発生剤を提供する。さらに、上記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生する前記光酸発生剤を含有するレジスト材料、即ち、紫外線、遠紫外線、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、シンクロトロン放射線などの放射線に感応し上記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生する前記光酸発生剤を含有する、集積回路を作製するための化学増幅型レジスト材料を提供する。これらレジスト材料はポジ型又はネガ型として用いることができる。解像性などの点から、中でもポジ型レジスト材料がより好ましく用いられる。
【0091】
この場合、ポジ型レジスト材料としては、上記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生する上記一般式(2)で示されるスルホン酸塩、具体的には上記一般式(3)又は(4)で示されるスルホン酸スルホニウム塩、もしくは、上記一般式(5)で示されるスルホン酸ヨードニウム塩からなる光酸発生剤(以下、これらを総称して本発明に係る光酸発生剤という)に加え、
(A)酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化するベース樹脂、
(B)有機溶剤
必要により、更に
(C)本発明に係る光酸発生剤以外の酸発生剤、
(D)クエンチャー、
(E)界面活性剤
を含有するものが好ましい。
【0092】
また、ネガ型レジスト材料としては、本発明に係る光酸発生剤に加え、
(A’)アルカリ現像液に可溶なベース樹脂、
(B)有機溶剤、
必要により、更に
(C)本発明に係る光酸発生剤以外の酸発生剤、
(D)クエンチャー、
(E)界面活性剤
(F)酸によって架橋する架橋剤
を含有するものが好ましい。
【0093】
以下、各成分につき詳細に説明する。
まず、本発明に係る光酸発生剤は、上記(A)成分又は(A’)成分100質量部に対し0.1〜10質量部、特に0.1〜5質量部の割合で配合することが好ましい。
【0094】
(A)成分の酸の作用でアルカリ現像液に対する溶解性が変化する樹脂としては、特に制限されないが、化学増幅ポジ型レジスト材料の場合は、下記一般式(11)〜(15)で示される繰り返し単位のいずれか1種以上を含有することができる。
【0095】
【化4】
(式中、R11は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R7及びR8はそれぞれ独立に水素原子又は水酸基を示す。Xは酸不安定基を示す。Yはラクトン構造を有する置換基を示す。Zは水素原子、炭素数1〜15のフルオロアルキル基、又は炭素数1〜15のフルオロアルコール含有置換基を示す。Nは0〜2の整数を示す。R9は水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を示す。Bは単結合あるいは酸素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10の二価の有機基を示す。aは0〜3の整数、bは1〜3の整数を示す。)
【0096】
上記一般式(11)で示される繰り返し単位を含有する重合体は、酸の作用で分解してカルボン酸を発生し、アルカリ可溶性となる重合体を与える。
酸不安定基Xとしては、種々用いることができるが、具体的には下記一般式(L1)〜(L4)及び(L2−2)で示される基、炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等を挙げることができる。
【0097】
【化5】
【0098】
ここで、破線は結合手を示す(以下、同様)。
また、式(L1)において、RL01、RL02は水素原子又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基等が例示できる。RL03は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい一価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができ、具体的には下記の置換アルキル基等が例示できる。
【0099】
【化6】
【0100】
RL01とRL02、RL01とRL03、RL02とRL03とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子や酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には環の形成に関与するRL01、RL02、RL03はそれぞれ炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。
【0101】
式(L2)において、RL04は炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記一般式(L1)で示される基を示し、三級アルキル基としては、具体的にはtert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、2−シクロペンチルプロパン−2−イル基、2−シクロヘキシルプロパン−2−イル基、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)プロパン−2−イル基、2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基等が例示でき、トリアルキルシリル基としては、具体的にはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が例示でき、オキソアルキル基としては、具体的には3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が例示できる。yは0〜6の整数である。
【0102】
式(L2−2)において、
【化7】
は下記の基であり、RL04は上記と同意である。
【0103】
【化8】
(式中、破線は結合手を示す。Wは酸素原子あるいはCH2を示し、Mは1〜3の整数である。)
【0104】
式(L3)において、RL05は炭素数1〜8の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、置換されていてもよいアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示でき、置換されていてもよいアリール基としては、具体的にはフェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基等が例示できる。m’’は0又は1、n’’は0、1、2、3のいずれかであり、2m’’+n’’=2又は3を満足する数である。
【0105】
式(L4)において、RL06は炭素数1〜8の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL05と同様のもの等が例示できる。RL07〜RL16はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15の一価の炭化水素基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示できる。RL07〜RL16はそれらの2個が互いに結合してそれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく(例えば、RL07とRL08、RL07とRL09、RL08とRL10、RL09とRL10、RL11とRL12、RL13とRL14等)、その場合にはその結合に関与するものは炭素数1〜15の二価の炭化水素基を示し、具体的には上記一価の炭化水素基で例示したものから水素原子を1個除いたもの等が例示できる。また、RL07〜RL16は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい(例えば、RL07とRL09、RL09とRL15、RL13とRL15等)。
【0106】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち直鎖状又は分岐状のものとしては、具体的には下記の基が例示できる。
【化9】
【0107】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち環状のものとしては、具体的にはテトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が例示できる。
【0108】
上記式(L2)の酸不安定基としては、具体的にはtert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が例示できる。
【0109】
上記式(L2−2)の酸不安定基としては、具体的には、
9−(tert−ブチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(tert−アミルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(1−ブチルシクロペンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(1−エチルシクロヘキシルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(1−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(2−メチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(2−エチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
2−(9−(tert−ブチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(tert−アミルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(1−ブチルシクロペンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(1−エチルシクロヘキシルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(1−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(2−メチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(2−エチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
4−(9−(tert−ブチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(tert−アミルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(1−ブチルシクロペンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(1−エチルシクロヘキシルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(1−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(2−メチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(2−エチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基
等が例示できる。
【0110】
上記式(L3)の酸不安定基としては、具体的には1−メチルシクロペンチル、1−エチルシクロペンチル、1−n−プロピルシクロペンチル、1−イソプロピルシクロペンチル、1−n−ブチルシクロペンチル、1−sec−ブチルシクロペンチル、1−シクロヘキシルシクロペンチル、1−(4−メトキシ−n−ブチル)シクロペンチル、1−メチルシクロヘキシル、1−エチルシクロヘキシル、3−メチル−1−シクロペンテン−3−イル、3−エチル−1−シクロペンテン−3−イル、3−メチル−1−シクロヘキセン−3−イル、3−エチル−1−シクロヘキセン−3−イル等が例示できる。
【0111】
上記式(L4)の酸不安定基としては、下記式(L4−1)〜(L4−4)で示される基が特に好ましい。
【化10】
【0112】
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)中、破線は結合位置及び結合方向を示す。RL41はそれぞれ独立に炭素数1〜8の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL05と同様のもの等が例示できる。
【0113】
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)は、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るが、前記一般式(L4−1)〜(L4−4)は、これらの立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0114】
例えば、前記一般式(L4−3)は下記一般式(L4−3−1)、(L4−3−2)で示される基から選ばれる1種又は2種の混合物を代表して表すものとする。
【化11】
(式中、RL41は上記と同様である。)
【0115】
また、上記一般式(L4−4)は下記一般式(L4−4−1)〜(L4−4−4)で示される基から選ばれる1種又は2種以上の混合物を代表して表すものとする。
【化12】
(式中、RL41は上記と同様である。)
【0116】
上記一般式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)及び(L4−4−1)〜(L4−4−4)は、それらのエナンチオ異性体及びエナンチオ異性体混合物をも代表して示すものとする。
【0117】
なお、(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)及び(L4−4−1)〜(L4−4−4)の結合方向がそれぞれビシクロ[2.2.1]ヘプタン環に対してexo側であることによって、酸触媒脱離反応における高反応性が実現される(特開2000−336121号公報参照)。これらビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格を有する3級exo−アルキル基を置換基とする単量体の製造において、下記一般式(L4−1−endo)〜(L4−4−endo)で示されるendo−アルキル基で置換された単量体を含む場合があるが、良好な反応性の実現のためにはexo比率が50モル%以上であることが好ましく、exo比率が80モル%以上であることが更に好ましい。
【化13】
(式中、RL41は上記と同様である。)
【0118】
上記式(L4)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化14】
【0119】
また、炭素数4〜20の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基としては、具体的にはRL04で挙げたものと同様のもの等が例示できる。
【0120】
前記一般式(11)で表される繰り返し単位として具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。(メタ)アクリル酸エステルのみを示しているが上記式(L−2)又は(L−2−2)で示される二価の連結基を介したものを用いてもよい。
【0121】
【化15】
【0122】
【化16】
【0123】
【化17】
【0124】
【化18】
【0125】
【化19】
【0126】
【化20】
【0127】
前記一般式(12)で表される繰り返し単位として具体的には以下のものである。
【化21】
【0128】
前記一般式(13)で表される繰り返し単位として具体的には以下のものである。なお、酸不安定基を有する繰り返し単位も存在する。具体的には上記酸不安定基として説明した式(L2−2)と重複するが、ラクトン単位として使用してもよいし、酸不安定基を有する単位として用いてもよい。
【化22】
【0129】
【化23】
【0130】
【化24】
【0131】
また、下記一般式(5L−1)のものも好適に用いることができる。
【化25】
【0132】
ここで、上記一般式(5L−1)中のR111は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。より好ましくはメチル基である。R5’は水素原子又はCO2R5’’を示す。R5’’は水素原子、ハロゲン原子又は酸素原子を有していてもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。W’はCH2、O又はSを示す。M’は1〜3の整数である。
【0133】
R5’’として具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、2−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、2−メチルアダマンタン−2−イル基、2−エチルアダマンタン−2−イル基、8−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、8−エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、4−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル基、4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、及び下記の基等が例示できる。
【0134】
【化26】
(ここで、破線は結合手を示す。)
【0135】
この中でR5’’として好ましくはメチル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、2−メチルアダマンタン−2−イル基、2−エチルアダマンタン−2−イル基、8−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、8−エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル基等が挙げられる。W’として好ましくはCH2が挙げられる。
【0136】
上記一般式(5L−1)で示される繰り返し単位を構成するためのモノマーとして、具体的には下記のものを例示できる。
【0137】
【化27】
(式中、R111は上記と同様である。)
【0138】
【化28】
(式中、R111は上記と同様である。)
【0139】
【化29】
(式中、R111は上記と同様である。)
【0140】
なお、上記一般式(5L−1)で示される繰り返し単位を構成するためのモノマー類でM’=1の化合物に関しては特開2008−031298号公報に詳しい。また、M’=3の化合物に関してはM’=1の化合物における原料のクロロアセチルクロリドをクロロ酪酸クロリドとすることで同様に合成ができる。
【0141】
前記一般式(14)で表される繰り返し単位として具体的には以下のものである。
【化30】
【0142】
【化31】
【0143】
前記一般式(15)で表される繰り返し単位として具体的には以下のものである。
【化32】
【0144】
本発明のレジスト材料でベース樹脂として用いられる高分子化合物は、上記以外の炭素−炭素二重結合を含有する単量体から得られる繰り返し単位、例えば、メタクリル酸メチル、クロトン酸メチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル等の置換アクリル酸エステル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデセン誘導体などの環状オレフィン類、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物、その他の単量体から得られる繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0145】
なお、本発明のレジスト材料のベース樹脂として用いる上記高分子化合物は、ArFあるいはEUVリソグラフィー露光のリソグラフィー用途として好ましいが、KrFリソグラフィー、電子線リソグラフィーなどにも適用可能である。
【0146】
本発明のレジスト材料をKrF、電子線リソグラフィー用途として使用する場合、好ましいベース樹脂としては、下記一般式(21)〜(25)で表わされる繰り返し単位のいずれか1種以上を含有することができ、更に上述した一般式(11)〜(15)で示される繰り返し単位のいずれか1種以上を含有していてもよい。
【化33】
(式中、R11、Xは上記と同様である。Gは酸素原子又はカルボニルオキシ基(−C(=O)O−)を示す。)
【0147】
上記一般式(21)で示される繰り返し単位を含有する重合体は、酸の作用で分解してフェノール性水酸基及び/又はカルボン酸を発生し、アルカリ可溶性となる重合体を与える。酸不安定基Xとしては、種々用いることができるが、具体的には上述した一般式(L1)〜(L4)で示される基、炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等を挙げることができる。
【0148】
前記一般式(21)で表される繰り返し単位として具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。
【化34】
【0149】
上記一般式(24)で示されるヒドロキシビニルナフタレンの置換位置は任意であるが、6−ヒドロキシ−2−ビニルナフタレン、4−ヒドロキシ−1−ビニルナフタレンなどが挙げられ、中でも6−ヒドロキシ−2−ビニルナフタレンが好ましく用いられる。
【0150】
更に、上記一般式(21)〜(25)で示される繰り返し単位のいずれか1種に加えて上記一般式(11)〜(15)で示される繰り返し単位の中で、特に上記一般式(11)で示される繰り返し単位を含有するものを好ましく用いることができる。
【0151】
上記一般式(21)〜(25)で表される繰り返し単位のいずれか1種以上を含有する高分子化合物には、上記以外の炭素−炭素二重結合を含有する単量体から得られる繰り返し単位、例えば、メタクリル酸メチル、クロトン酸メチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル等の置換アクリル酸エステル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデセン誘導体、ノルボルナジエン類などの環状オレフィン類、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物、スチレン、アセナフチレン、ビニルナフタレン、その他の単量体から得られる繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0152】
なお、本発明のレジスト材料でベース樹脂として用いる高分子化合物の重量平均分子量は、1,000〜500,000、好ましくは3,000〜100,000である。この範囲を外れると、エッチング耐性が極端に低下したり、露光前後の溶解速度差が確保できなくなって解像性が低下したりすることがある。分子量の測定方法はポリスチレン換算でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)が挙げられる。
【0153】
本発明のレジスト材料でベース樹脂として用いる高分子化合物において、各単量体から得られる各繰り返し単位の好ましい含有割合は、例えば以下に示す範囲(モル%)とすることができるが、これに限定されるものではない。
【0154】
(I)上記式(11)〜(15)、及び/又は(21)〜(25)で示される構成単位の1種又は2種以上を0モル%を超え100モル%以下、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%含有し、必要に応じ、
(II)その他の単量体に基づく構成単位の1種又は2種以上を0〜100モル%未満、好ましくは0〜30モル%、より好ましくは0〜20モル%含有することができる。
【0155】
なお、本発明のポジ型の化学増幅型レジスト材料のベース樹脂として用いる高分子化合物は、上記式(11)又は式(21)の繰り返し単位を有するものが特に好ましい。更に好ましくは式(11)かつ式(12)かつ式(13)、又は式(21)かつ式(22)の繰り返し単位を有し、更に式(23)又は式(25)の繰り返し単位を有する高分子化合物である。
【0156】
本発明のレジスト材料のベース樹脂として用いる高分子化合物の製造は、重合性二重結合を含有する化合物を第2以降の単量体に用いた共重合反応により行う。
本発明のレジスト材料のベース樹脂として用いる高分子化合物を製造する共重合反応は種々例示することができるが、好ましくはラジカル重合、アニオン重合又は配位重合である。
【0157】
ラジカル重合反応の反応条件は、(ア)溶剤としてベンゼン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エタノール等のアルコール類、又はメチルイソブチルケトン等のケトン類を用い、(イ)重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、又は過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物を用い、(ウ)反応温度を0〜100℃程度に保ち、(エ)反応時間を0.5〜50時間程度とするのが好ましいが、この範囲を外れる場合を排除するものではない。
【0158】
アニオン重合反応の反応条件は、(ア)溶剤としてベンゼン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、又は液体アンモニアを用い、(イ)重合開始剤としてナトリウム、カリウム等の金属、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム等のアルキル金属、ケチル、又はグリニャール反応剤を用い、(ウ)反応温度を−78〜0℃程度に保ち、(エ)反応時間を0.5〜50時間程度とし、(オ)停止剤としてメタノール等のプロトン供与性化合物、ヨウ化メチル等のハロゲン化物、その他求電子性物質を用いるのが好ましいが、この範囲を外れる場合を排除するものではない。
【0159】
配位重合の反応条件は、(ア)溶剤としてn−ヘプタン、トルエン等の炭化水素類を用い、(イ)触媒としてチタン等の遷移金属とアルキルアルミニウムからなるチーグラー−ナッタ触媒、クロム及びニッケル化合物を金属酸化物に担持したフィリップス触媒、タングステン及びレニウム混合触媒に代表されるオレフィン−メタセシス混合触媒等を用い、(ウ)反応温度を0〜100℃程度に保ち、(エ)反応時間を0.5〜50時間程度とするのが好ましいが、この範囲を外れる場合を排除するものではない。
【0160】
また、上記重合方法により製造した高分子化合物の酸不安定基の一部あるいは全部を脱保護し、後述するネガ型材料に用いることができる。更には酸不安定基を脱保護した高分子化合物に再び酸不安定基を導入し、重合時に導入した酸不安定基とは異なる置換基を導入することもできる。
【0161】
例えば4−エトキシエトキシスチレン及びその他の重合性化合物をラジカル重合により高分子化合物とし、次いで酢酸、ピリジニウムトシレートなどによりエトキシエトキシ基を外し、ポリヒドロキシスチレンとのコポリマーとすることができる。これはネガ型レジスト材料のベース樹脂として用いることができる。また、上記コポリマーのヒドロキシスチレン単位をジtert−ブチルジカーボネート、クロロ酢酸tert−ブチル、種々ビニルエーテルなどと反応させることにより重合時の酸不安定基(エトキシエトキシ基)とは異なる酸不安定基を導入することができる。
【0162】
また、上述した高分子化合物以外に、必要に応じて他の、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増加する樹脂を加えてもよい。例としては、i)ポリ(メタ)アクリル酸誘導体、ii)ノルボルネン誘導体−無水マレイン酸の共重合体、iii)開環メタセシス重合体の水素添加物、iv)ビニルエーテル−無水マレイン酸−(メタ)アクリル酸誘導体の共重合体、v)ポリヒドロキシスチレン誘導体などを挙げることができるが、これに限定されない。
【0163】
i)のポリ(メタ)アクリル酸誘導体は上記一般式(11)〜(15)などの組み合わせによる高分子化合物であり、v)のポリヒドロキシスチレン誘導体は上記一般式(21)〜(25)の組み合わせ、及び(11)〜(15)、(21)〜(25)の組み合わせによる高分子化合物である。これら高分子化合物の酸不安定基にかかわる単位、例えば上記一般式(11)及び/又は(21)の1種又は2種以上の単量体単位の含有割合は0モル%を超え80モル%以下である。好ましくは1〜50モル%、より好ましくは10〜40モル%である。これら高分子化合物の酸不安定基以外にかかわる単位、例えば上記一般式(12)〜(15)及び/又は(22)〜(25)の1種又は2種以上の単量体単位は0モル%以上100モル%未満であるが、含有する場合は20モル%以上100モル%未満が好ましく、より好ましくは50〜99モル%、特に好ましくは60〜90モル%である。
【0164】
このうち、開環メタセシス重合体の水素添加物の合成法は特開2003−66612号公報の実施例に具体的な記載がある。また、具体例としては以下の繰り返し単位を有するものを挙げることができるが、これに限定されない。
【0165】
【化35】
【0166】
【化36】
【0167】
本発明のレジスト材料のベース樹脂として用いることができる上記高分子化合物と別の高分子化合物との配合比率は、100:0〜10:90、特に100:0〜20:80の質量比の範囲内にあることが好ましい。本発明のレジスト材料のベース樹脂として用いられる上記高分子化合物の配合比がこれより少ないと、レジスト材料として好ましい性能が得られないことがある。上記の配合比率を適宜変えることにより、レジスト材料の性能を調整することができる。
なお、上記高分子化合物は1種に限らず2種以上を添加することができる。複数種の高分子化合物を用いることにより、レジスト材料の性能を調整することができる。
【0168】
本発明で使用される(B)成分の有機溶剤としては、ベース樹脂、酸発生剤、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれでもよい。有機溶剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0144]〜[0145]に記載されている。
【0169】
本発明の光酸発生剤の他に、必要に応じて(C)成分の本発明に係る光酸発生剤以外の酸発生剤を合わせて添加してもかまわない。(C)成分の光酸発生剤は、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでもかまわない。好適な光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等がある。これらは単独あるいは2種以上混合して用いることができる。これらは特開2008−133448号公報などに詳しい。
【0170】
本発明の光酸発生剤の他に(C)成分の酸発生剤を合わせて添加する場合、ArFリソグラフィー用途において特に好ましく用いられるのは下記一般式(C)−1で示される酸発生剤である。
【化37】
【0171】
ここで、式中、R405、R406、R407はそれぞれ独立に水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基、特にアルキル基又はアルコキシ基を示し、ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基として具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、エチルシクロペンチル基、ブチルシクロペンチル基、エチルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、アダマンチル基、エチルアダマンチル基、ブチルアダマンチル基、及びこれらの基の任意の炭素−炭素結合間に−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−等のヘテロ原子団が挿入された基や、任意の水素原子が−OH、−NH2、−CHO、−CO2H等の官能基に置換された基を例示することができる。R408はヘテロ原子を含んでもよい炭素数7〜30の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示し、具体的には以下のものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0172】
【化38】
【0173】
(C)−1としては、具体的には以下のものが例示できる。
【化39】
【0174】
【化40】
【0175】
なお、光酸発生剤を2種以上混合して用い、一方の光酸発生剤がいわゆる弱酸を発生するオニウム塩である場合、酸拡散制御の機能を持たせることもできる。即ち、前述のフッ素置換されたスルホン酸のような強酸を発生するオニウム塩と、フッ素置換されていないスルホン酸や、カルボン酸のような弱酸を発生するオニウム塩を混合して用いた場合、高エネルギー線照射により光酸発生剤から生じた強酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると塩交換により弱酸を放出し強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため見かけ上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。
ここで強酸を発生する光酸発生剤がオニウム塩である場合には上記のように高エネルギー線照射により生じた強酸が弱酸に交換することはできるが、高エネルギー線照射により生じた弱酸は未反応の強酸を発生するオニウム塩と衝突して塩交換を行うことはできない。これらはオニウムカチオンがより強酸のアニオンとイオン対を形成し易いという現象に起因する。
【0176】
本発明の光酸発生剤を例えば上記一般式(C−1)で示されるようなα,α’−ジフルオロスルホン酸発生剤と混合して用いた場合、本発明の光酸発生剤の酸強度はそれよりも弱い。従って、前述の理由からこの場合本発明の光酸発生剤は見かけ上クエンチャーとして働き、結果として酸拡散の制御を行うことができる。
【0177】
本発明の化学増幅型レジスト材料における(C)成分として添加する、本発明に係る光酸発生剤以外の光酸発生剤の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲であればいずれでもよいが、レジスト材料中のベース樹脂100質量部に対し、本発明に係る光酸発生剤と上記(C)成分の光酸発生剤との総添加量が0.1〜10質量部、特に0.1〜5質量部であることが好ましい。(C)成分の光酸発生剤の割合が多すぎる場合には、解像性の劣化や、現像/レジスト剥離時の異物の問題が起きる可能性がある。上記(C)成分の光酸発生剤は、1種でも2種以上混合して用いることもできる。更に、露光波長における透過率が低い光酸発生剤を用い、その添加量でレジスト膜中の透過率を制御することもできる。
【0178】
また、本発明のレジスト材料に、酸により分解し酸を発生する化合物(酸増殖化合物)を添加してもよい。これらの化合物については、J.Photopolym.Sci.and Tech.,8.43−44,45−46(1995)、J.Photopolym.Sci.and Tech.,9.29−30(1996)において記載されている。
【0179】
酸増殖化合物の例としては、tert−ブチル−2−メチル−2−トシロキシメチルアセトアセテート、2−フェニル−2−(2−トシロキシエチル)−1,3−ジオキソラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。公知の光酸発生剤の中で安定性、特に熱安定性に劣る化合物は酸増殖化合物的な性質を示す場合が多い。
【0180】
本発明のレジスト材料における酸増殖化合物の添加量としては、レジスト材料中のベース樹脂100質量部に対し2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。添加量が多すぎる場合は拡散の制御が難しく、解像性の劣化、パターン形状の劣化が起こる可能性がある。
【0181】
更に、本発明のレジスト材料には、(D)成分のクエンチャーを1種又は2種以上配合することができる。
【0182】
クエンチャーとは、本技術分野において広く一般的に用いられる用語であり、酸発生剤より発生する酸などがレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができる化合物を言う。クエンチャーの配合により、レジスト感度の調整が容易となることに加え、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制したり、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を向上することができる。
【0183】
このようなクエンチャーとしては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類、アンモニウム塩類等が好適に用いられる。
【0184】
クエンチャーの具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0146]〜[0163]に記載されている。
【0185】
特に好ましく用いられるクエンチャーは第三級アミンであり、具体的にはトリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、トリス(2−メトキシエトキシエチル)アミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリス(2−メトキシメトキシエチル)アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシメトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシプロポキシ)エチル}アミン、トリス[2−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル]アミン、4,7,13,16,21,24−ヘキサオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.8.8]ヘキサコサン、4,7,13,18−テトラオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.5.5]エイコサン、1,4,10,13−テトラオキサ−7,16−ジアザビシクロオクタデカン、1−アザ−12−クラウン−4、1−アザ−15−クラウン−5、1−アザ−18−クラウン−6、トリス(2−ホルミルオキシエチル)アミン、トリス(2−アセトキシエチル)アミン、トリス(2−プロピオニルオキシエチル)アミン、トリス(2−ブチリルオキシエチル)アミン、トリス(2−イソブチリルオキシエチル)アミン、トリス(2−バレリルオキシエチル)アミン、トリス(2−ピバロイルオキシエチル)アミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(アセトキシアセトキシ)エチルアミン、トリス(2−メトキシカルボニルオキシエチル)アミン、トリス(2−tert−ブトキシカルボニルオキシエチル)アミン、トリス[2−(2−オキソプロポキシ)エチル]アミン、トリス[2−(メトキシカルボニルメチル)オキシエチル]アミン、トリス[2−(tert−ブトキシカルボニルメチルオキシ)エチル]アミン、トリス[2−(シクロヘキシルオキシカルボニルメチルオキシ)エチル]アミン、トリス(2−メトキシカルボニルエチル)アミン、トリス(2−エトキシカルボニルエチル)アミン、トリス(2−ベンゾイルオキシエチル)アミン、トリス[2−(4−メトキシベンゾイルオキシ)エチル]アミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(エトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(エトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−アセトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−[(メトキシカルボニル)メトキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−[(メトキシカルボニル)メトキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−オキソプロポキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−オキソプロポキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−[(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)オキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−[(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)オキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(4−ヒドロキシブトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ホルミルオキシエチル)2−(4−ホルミルオキシブトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ホルミルオキシエチル)2−(2−ホルミルオキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−メトキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−アセトキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ビス[2−(エトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−アセトキシエチル)ビス[2−(エトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(3−ヒドロキシ−1−プロピル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(3−アセトキシ−1−プロピル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−メトキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−ブチルビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−ブチルビス[2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチル]アミン、N−メチルビス(2−アセトキシエチル)アミン、N−エチルビス(2−アセトキシエチル)アミン、N−メチルビス(2−ピバロイルオキシエチル)アミン、N−エチルビス[2−(メトキシカルボニルオキシ)エチル]アミン、N−エチルビス[2−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)エチル]アミン、トリス(メトキシカルボニルメチル)アミン、トリス(エトキシカルボニルメチル)アミン、N−ブチルビス(メトキシカルボニルメチル)アミン、N−ヘキシルビス(メトキシカルボニルメチル)アミン、β−(ジエチルアミノ)−δ−バレロラクトンが例示される。
【0186】
更に、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]ピロリジン、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]ピペリジン、4−[2−(メトキシメトキシ)エチル]モルホリン、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]イミダゾール、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]ベンズイミダゾール、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]−2−フェニルベンズイミダゾール、1−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]ピロリジン、1−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]ピペリジン、4−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]モルホリン、1−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]イミダゾール、1−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]ベンズイミダゾール、1−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]−2−フェニルベンズイミダゾール、1−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ピロリジン、1−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ピペリジン、4−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]モルホリン、1−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]イミダゾール、1−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ベンズイミダゾール、1−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]−2−フェニルベンズイミダゾール、1−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ピロリジン、1−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ピペリジン、4−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]モルホリン、1−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]イミダゾール、1−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ベンズイミダゾール、1−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]−2−フェニルベンズイミダゾール、1−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]ピロリジン、1−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]ピペリジン、4−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]モルホリン、1−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]イミダゾール、1−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]ベンズイミダゾール、1−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]−2−フェニルベンズイミダゾール、4−[2−{2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル]モルホリン、酢酸2−(1−ピロリジニル)エチル、酢酸2−ピペリジノエチル、酢酸2−モルホリノエチル、酢酸2−(1−イミダゾリル)エチル、酢酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、酢酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、モルホリノ酢酸2−メトキシエチル、2−メトキシ酢酸2−(1−ピロリジニル)エチル、2−メトキシ酢酸2−ピペリジノエチル、2−メトキシ酢酸2−モルホリノエチル、2−メトキシ酢酸2−(1−イミダゾリル)エチル、2−メトキシ酢酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−メトキシ酢酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−(1−ピロリジニル)エチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−ピペリジノエチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−モルホリノエチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−(1−イミダゾリル)エチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−(1−ピロリジニル)エチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−ピペリジノエチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−モルホリノエチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−(1−イミダゾリル)エチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、酪酸2−モルホリノエチル、ヘキサン酸2−モルホリノエチル、オクタン酸2−モルホリノエチル、デカン酸2−モルホリノエチル、ラウリン酸2−モルホリノエチル、ミリスチン酸2−モルホリノエチル、パルミチン酸2−モルホリノエチル、ステアリン酸2−モルホリノエチル、ベヘン酸2−モルホリノエチル、コール酸2−モルホリノエチル、トリス(O−アセチル)コール酸2−モルホリノエチル、トリス(O−ホルミル)コール酸2−モルホリノエチル、デヒドロコール酸2−モルホリノエチル、シクロペンタンカルボン酸2−モルホリノエチル、シクロヘキサンカルボン酸2−モルホリノエチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−(1−ピロリジニル)エチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−ピペリジノエチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−モルホリノエチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−(1−イミダゾリル)エチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、アダマンタンカルボン酸2−モルホリノエチル、ギ酸2−(1−ピロリジニル)エチル、プロピオン酸2−ピペリジノエチル、アセトキシ酢酸2−モルホリノエチル、メトキシ酢酸2−(1−ピロリジニル)エチル、安息香酸2−(1−ピロリジニル)エチル、安息香酸2−ピペリジノエチル、安息香酸2−モルホリノエチル、安息香酸2−(1−イミダゾリル)エチル、安息香酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、安息香酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、4−メトキシ安息香酸2−(1−ピロリジニル)エチル、4−メトキシ安息香酸2−ピペリジノエチル、4−メトキシ安息香酸2−モルホリノエチル、4−メトキシ安息香酸2−(1−イミダゾリル)エチル、4−メトキシ安息香酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、4−メトキシ安息香酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、4−フェニル安息香酸2−(1−ピロリジニル)エチル、4−フェニル安息香酸2−ピペリジノエチル、4−フェニル安息香酸2−モルホリノエチル、4−フェニル安息香酸2−(1−イミダゾリル)エチル、4−フェニル安息香酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、4−フェニル安息香酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、1−ナフタレンカルボン酸2−(1−ピロリジニル)エチル、1−ナフタレンカルボン酸2−ピペリジノエチル、1−ナフタレンカルボン酸2−モルホリノエチル、1−ナフタレンカルボン酸2−(1−イミダゾリル)エチル、1−ナフタレンカルボン酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、1−ナフタレンカルボン酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−ナフタレンカルボン酸2−(1−ピロリジニル)エチル、2−ナフタレンカルボン酸2−ピペリジノエチル、2−ナフタレンカルボン酸2−モルホリノエチル、2−ナフタレンカルボン酸2−(1−イミダゾリル)エチル、2−ナフタレンカルボン酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−ナフタレンカルボン酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、4−[2−(メトキシカルボニルオキシ)エチル]モルホリン、1−[2−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)エチル]ピペリジン、4−[2−(2−メトキシエトキシカルボニルオキシ)エチル]モルホリン、3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸メチル、3−ピペリジノプロピオン酸メチル、3−モルホリノプロピオン酸メチル、3−(チオモルホリノ)プロピオン酸メチル、2−メチル−3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸メチル、3−モルホリノプロピオン酸エチル、3−ピペリジノプロピオン酸メトキシカルボニルメチル、3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸2−ヒドロキシエチル、3−モルホリノプロピオン酸2−アセトキシエチル、3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル、3−モルホリノプロピオン酸テトラヒドロフルフリル、3−ピペリジノプロピオン酸グリシジル、3−モルホリノプロピオン酸2−メトキシエチル、3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、3−モルホリノプロピオン酸ブチル、3−ピペリジノプロピオン酸シクロヘキシル、α−(1−ピロリジニル)メチル−γ−ブチロラクトン、β−ピペリジノ−γ−ブチロラクトン、β−モルホリノ−δ−バレロラクトン、1−ピロリジニル酢酸メチル、ピペリジノ酢酸メチル、モルホリノ酢酸メチル、チオモルホリノ酢酸メチル、1−ピロリジニル酢酸エチルなどが例示される。
【0187】
なお、クエンチャーの配合量は、全ベース樹脂100質量部に対して0.001〜5質量部、特に0.01〜3質量部が好適である。配合量が0.001質量部より少ないと配合効果がなく、5質量部を超えると感度が低下しすぎる場合がある。
【0188】
本発明のレジスト材料には、上記成分以外に任意成分として塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤(E)を添加することができる。なお、任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0189】
界面活性剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0165]〜[0166]に記載されている。また、下記構造式(surf−1)の部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤も好ましく用いられる。
【化41】
【0190】
ここで、R、Rf、A、B、C、m’、n’は、上述の界面活性剤以外の記載に拘わらず、上記式(surf−1)のみに適用される。Rは2〜4価の炭素数2〜5の脂肪族基を示し、具体的には2価のものとしてエチレン、1,4−ブチレン、1,2−プロピレン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン、1,5−ペンチレンが挙げられ、3又は4価のものとしては、下記のものが挙げられる。
【0191】
【化42】
(式中、破線は結合手を示し、それぞれグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールから派生した部分構造である。)
これらの中で好ましく用いられるのは、1,4−ブチレン又は2,2−ジメチル−1,3−プロピレンである。
【0192】
Rfはトリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基を示し、好ましくはトリフルオロメチル基である。m’は0〜3の整数、n’は1〜4の整数であり、m’とn’の和はRの価数を示し2〜4の整数である。Aは1、Bは2〜25の整数、Cは0〜10の整数を示す。好ましくはBは4〜20の整数を示し、Cは0又は1である。また、上記構造の各構成単位はその並びを規定したものではなくブロック的でもランダム的に結合してもよい。部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤の製造に関しては米国特許第5,650,483号明細書などに詳しい。
【0193】
上記界面活性剤の中でもFC−4430,サーフロンS−381,サーフィノールE1004,KH−20,KH−30、及び上記構造式(surf−1)にて示したオキセタン開環重合物が好適である。これらは単独あるいは2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0194】
本発明の化学増幅型レジスト材料中の界面活性剤の添加量としては、レジスト材料中のベース樹脂100質量部に対し2質量部以下、好ましくは1質量部以下であり、配合する場合は0.01質量部以上とすることが好ましい。
【0195】
本発明のレジスト材料には、水を用いた液浸露光において特にはレジスト保護膜を用いない場合、スピンコート後のレジスト表面に配向することによって水のしみ込みやリーチングを低減させる機能を有する界面活性剤を添加することができる。この界面活性剤は高分子型の界面活性剤であり、水に溶解せずアルカリ現像液に溶解する性質であり、特に撥水性が高く滑水性を向上させるものが好ましい。このような高分子型の界面活性剤は下記に示すことができる。
【0196】
【化43】
(式中、R114はそれぞれ同一でも異なってもよく、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基、R115はそれぞれ同一でも異なってもよく、水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はフッ素化アルキル基を示し、同一単量体内のR115はそれぞれ結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、合計して炭素数2〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基又はフッ素化アルキレン基を示す。R116はフッ素原子又は水素原子、又はR117と結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数の和が3〜10の非芳香環を形成してもよい。R117は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基で、1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。R118は1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基で、R117とR118が結合してこれらが結合する炭素原子と共に非芳香環を形成していてもよく、その場合、R117、R118及びこれらが結合する炭素原子とで炭素数の総和が2〜12の三価の有機基を表す。R119は単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基、R120は同一でも異なってもよく、単結合、−O−、又は−CR114R114−である。R121は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、同一単量体内のR115と結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜6の非芳香環を形成してもよい。R122は1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、又は1,4−ブチレン基を示し、Rfは炭素数3〜6の直鎖状のパーフルオロアルキル基、又は3H−パーフルオロプロピル基、4H−パーフルオロブチル基、5H−パーフルオロペンチル基、又は6H−パーフルオロヘキシル基を示す。X2はそれぞれ同一でも異なってもよく、−C(=O)−O−、−O−、又は−C(=O)−R123−C(=O)−O−であり、R123は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基である。また、0≦(a’−1)<1、0≦(a’−2)<1、0≦(a’−3)<1、0<(a’−1)+(a’−2)+(a’−3)<1、0≦b’<1、0≦c’<1であり、0<(a’−1)+(a’−2)+(a’−3)+b’+c’≦1である。)
【0197】
上記高分子型の界面活性剤の添加量は、レジスト材料のベース樹脂100質量部に対して0.001〜20質量部、好ましくは0.01〜10質量部の範囲である。これらは特開2007−297590号公報に詳しい。
【0198】
本発明のレジスト材料を化学増幅ネガ型レジスト材料に用いる場合には、酸架橋剤により架橋構造可能な置換基を有する繰り返し単位を有することが必要である。より具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシスチレン(置換位置は任意である)、ヒドロキシビニルナフタレン(置換位置は任意である)に由来する繰り返し単位などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0199】
また、上記高分子化合物以外にもアルカリ可溶性樹脂を添加してもよい。
例えば、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、ポリ(m−ヒドロキシスチレン)、ポリ(4−ヒドロキシ−2−メチルスチレン)、ポリ(4−ヒドロキシ−3−メチルスチレン)、ポリ(α−メチル−p−ヒドロキシスチレン)、部分水素加ポリ(p−ヒドロキシスチレン)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−α−メチル−p−ヒドロキシスチレン)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−α−メチルスチレン)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−スチレン)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−m−ヒドロキシスチレン)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−スチレン)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−アクリル酸)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−メタクリル酸)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−メチルアクリレート)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−アクリル酸−メチルメタクリレート)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−メチルアクリレート)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−メタクリル酸−メチルメタクリレート)コポリマー、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリ(アクリル酸−メチルアクリレート)コポリマー、ポリ(メタクリル酸−メチルメタクリレート)コポリマー、ポリ(アクリル酸−マレイミド)コポリマー、ポリ(メタクリル酸−マレイミド)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−アクリル酸−マレイミド)コポリマー、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−メタクリル酸−マレイミド)コポリマー等が挙げられるがこれらの組み合わせに限定されるものではない。
【0200】
上記高分子化合物とそれ以外のアルカリ可溶性樹脂との配合比率は、100:0〜10:90、特に100:0〜20:80の質量比の範囲内にあることが好ましい。上記高分子化合物の配合比がこれより少ないと、レジスト材料として好ましい性能が得られないことがある。上記の配合比率を適宜変えることにより、レジスト材料の性能を調整することができる。
【0201】
なお、上記アルカリ可溶性樹脂は1種に限らず2種以上を添加することができる。複数種の高分子化合物を用いることにより、レジスト材料の性能を調整することができる。
【0202】
また、(F)成分の酸の作用により架橋構造を形成する酸架橋剤としては、分子内に2個以上のヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、エポキシ基又はビニルエーテル基を有する化合物が挙げられ、置換グリコウリル誘導体、尿素誘導体、ヘキサ(メトキシメチル)メラミン等が本発明の化学増幅ネガ型レジスト材料の酸架橋剤として好適に用いられる。例えばN,N,N’,N’−テトラメトキシメチル尿素とヘキサメトキシメチルメラミン、テトラヒドロキシメチル置換グリコールウリル類及びテトラメトキシメチルグリコールウリルのようなテトラアルコキシメチル置換グリコールウリル類、置換及び未置換ビス−ヒドロキシメチルフェノール類、ビスフェノールA等のフェノール性化合物とエピクロロヒドリン等の縮合物が挙げられる。特に好適な架橋剤は、1,3,5,7−テトラメトキシメチルグリコールウリルなどの1,3,5,7−テトラアルコキシメチルグリコールウリル又は1,3,5,7−テトラヒドロキシメチルグリコールウリル、2,6−ジヒドロキシメチル−p−クレゾール、2,6−ジヒドロキシメチルフェノール、2,2’,6,6’−テトラヒドロキシメチル−ビスフェノールA及び1,4−ビス−[2−(2−ヒドロキシプロピル)]−ベンゼン、N,N,N’,N’−テトラメトキシメチル尿素とヘキサメトキシメチルメラミン等が挙げられる。
【0203】
本発明の化学増幅型レジスト材料中の(F)成分の酸架橋剤の添加量は任意であるが、レジスト材料中のベース樹脂100質量部に対し1〜20質量部、好ましくは5〜15質量部である。これら架橋剤は単独でも2種以上を併用してもよい。
【0204】
本発明のレジスト材料の基本的構成成分は、上記の高分子化合物(ベース樹脂)、酸発生剤及び有機溶剤であり、必要に応じてクエンチャーを加えることができる。さらに、上記成分以外に任意成分として必要に応じて界面活性剤、架橋剤、更に溶解阻止剤、酸性化合物、安定剤、色素などの他の成分を添加してもよい。なお、これら任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0205】
本発明のレジスト材料を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができ、例えば、集積回路製造用の基板(Si,SiO2,SiN,SiON,TiN,WSi,BPSG,SOG,有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr,CrO,CrON,MoSi等)にスピンコーティング等の手法で膜厚が0.05〜2.0μmとなるように塗布し、これをホットプレート上で60〜150℃、1〜20分間、好ましくは80〜140℃、1〜10分間プリベークする。次いで目的のパターンを形成するためのマスクを上記のレジスト膜上にかざし、遠紫外線、エキシマレーザー、X線等の高エネルギー線又は電子線を照射する。あるいは、パターン形成のためのマスクを介さずに電子線を直接描画する。露光量は、光露光であれば1〜200mJ/cm2、好ましくは10〜100mJ/cm2程度、また電子線露光であれば、0.1〜20μC/cm2程度、好ましくは3〜10μC/cm2程度となるように露光することが好ましい。露光は通常の露光法の他、場合によってはマスクとレジストの間を液浸するImmersion法を用いることも可能である。その場合には水に不溶な保護膜を用いることも可能である。次いで、ホットプレート上で、60〜150℃、1〜20分間、好ましくは80〜140℃、1〜10分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。なお、本発明のレジスト材料は、特に高エネルギー線の中でも190〜250nmの遠紫外線又はエキシマレーザー、X線及び電子線による微細パターニングに最適である。
【0206】
上述した水に不溶な保護膜はレジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために用いられ、大きく分けて2種類ある。1種類はレジスト膜を溶解しない有機溶剤によってアルカリ現像前に剥離が必要な有機溶剤剥離型ともう1種はアルカリ現像液に可溶でレジスト膜可溶部の除去と共に保護膜を除去するアルカリ可溶型である。
後者は特に水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶媒に溶解させた材料が好ましい。
上述した水に不溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤を炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶媒に溶解させた材料とすることもできる。
また、パターン形成方法の手段として、フォトレジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによって膜表面からの酸発生剤などの抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
【0207】
フォトマスクブランクス上で上述のレジストパターン形成を実施し、フォトマスクを製造する場合、特にクロム系材料を最表面の材料として持つフォトマスクブランクスの加工に用いると、レジストパターンが基板依存性の影響を受けにくいため、本発明のパターン形成方法を有利に適用できる。また、モリブデン−珪素化合物をはじめとする珪素に酸素や窒素を含有する材料の上でレジストパターンの形成を行った場合にも、高解像性、経時安定性が得られるため、信頼性の高いフォトマスクの製造を行うことができる。
【0208】
上述のレジストパターンをエッチングマスクとしたフォトマスクブランクスの加工は公知のいずれの方法を用いてもよいが、最表面がクロム系化合物の場合には酸素を含有する塩素系ドライエッチングを用い、最表面が遷移金属−珪素化合物の場合にはフッ素系ドライエッチングを用いることが一般的である。
【実施例】
【0209】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0210】
[合成例1−1]トリフェニルスルホニウムクロリドの合成
ジフェニルスルホキシド40g(0.2モル)をジクロロメタン400gに溶解させ、氷冷下撹拌した。トリメチルシリルクロリド65g(0.6モル)を、20℃を超えない温度で滴下し、更にこの温度で30分間熟成を行った。次いで、金属マグネシウム14.6g(0.6モル)とクロロベンゼン67.5g(0.6モル)、テトラヒドロフラン(THF)168gから別途調製したGrignard試薬を、20℃を超えない温度で滴下した。反応の熟成を1時間行った後、20℃を超えない温度で水50gを加えて反応を停止し、更に水150gと12規定塩酸10gとジエチルエーテル200gを加えた。
水層を分取し、ジエチルエーテル100gで洗浄し、トリフェニルスルホニウムクロリド水溶液を得た。これは、これ以上の単離操作をせず、水溶液のまま次の反応に用いた。
【0211】
[合成例1−2]4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム臭化物の合成
合成例1−1のクロロベンゼンの代わりに4−tert−ブチルブロモベンゼンを用い、抽出の際に水の量を増やす以外は合成例1−1と同様にして目的物を得た。
【0212】
[合成例1−3]4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム塩化物の合成
合成例1−1のクロロベンゼンの代わりに4−tert−ブトキシクロロベンゼンを、溶剤にトリエチルアミンを5質量%含むジクロロメタン溶剤を用い、抽出の際に水の量を増やす以外は合成例1−1と同様にして目的物を得た。
【0213】
[合成例1−4]トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム塩化物の合成
合成例1−1のジフェニルスルホキシドの代わりにビス(4−メチルフェニル)スルホキシドを用い、クロロベンゼンの代わりに4−クロロトルエンを用い、抽出の際に水の量を増やす以外は合成例1−1と同様にして目的物を得た。
【0214】
[合成例1−5]トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム臭化物の合成
合成例1−1のジフェニルスルホキシドの代わりにビス(4−tert−ブチルフェニル)スルホキシドを、クロロベンゼンの代わりに4−tert−ブチルブロモベンゼンを用い、抽出の際に水の量を増やす以外は合成例1−1と同様にして目的物を得た。
【0215】
[合成例1−6]ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムハイドロジェンスルフェートの合成
tert−ブチルベンゼン84g(0.5モル)、ヨウ素酸カリウム53g(0.25モル)、無水酢酸50gの混合物を氷冷下撹拌し、無水酢酸35gと濃硫酸95gの混合物を、30℃を超えない温度で滴下した。次いで室温で3時間熟成を行い、再度氷冷して水250gを滴下し、反応を停止した。この反応液を、ジクロロメタン400gを用いて抽出し、有機層に亜硫酸水素ナトリウム6gを加えて脱色した。更にこの有機層を水250gで洗浄することを3回繰り返した。洗浄した有機層を減圧濃縮することで、目的の粗生成物を得た。これ以上の精製はせず、このまま次の反応に用いた。
【0216】
[合成例1−7]ジメチルフェニルスルホニウム硫酸塩の合成
チオアニソール6.2g(0.05モル)とジメチル硫酸6.9g(0.055モル)を室温で12時間撹拌した。反応液に水100gとジエチルエーテル50mlを加えて水層を分取し、目的のジメチルフェニルスルホニウム硫酸塩水溶液を得た。
【0217】
[合成例1−8]フェナシルテトラヒドロチオフェニウムブロミドの合成
フェナシルブロミド88.2g(0.44モル)、テトラヒドロチオフェン39.1g(0.44モル)をニトロメタン220gに溶解し、室温で4時間撹拌を行った。反応液に水800gとジエチルエーテル400gを加え、分離した水層を分取し、目的のフェナシルテトラヒドロチオフェニウムブロミド水溶液を得た。
【0218】
[合成例1−9]トリフェニルスルホニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートの合成[PAG−1]
【化44】
【0219】
2,2−ビストリフルオロメチルオキシラン18.0g(0.10モル)、亜硫酸水素ナトリウム10.4g(0.10モル)、水19.3g、25%苛性ソーダ0.62gの混合溶液を40℃で10時間撹拌し、3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホン酸ナトリウムを調製した。得られたスルホン酸ナトリウムは単離せずに次反応に使用した。3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホン酸ナトリウム調製後、合成例1−1の手法で調製したトリフェニルスルホニウムクロリドの水溶液290g(0.10モル)、塩化メチレン500gを加え、室温で4時間撹拌した。撹拌後有機層を分取し、これを水洗し、有機層を減圧濃縮後、濃縮液にメチルイソブチルケトンを加えて再び減圧濃縮することで残存する水を留去した。得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行い、得られた結晶を回収、その後乾燥させることで目的物であるトリフェニルスルホニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートを得た[白色結晶40.8g(収率78%)]。得られた目的物の構造を下記に示す。
【化45】
【0220】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR、19F−NMR/DMSO−d6)の結果をそれぞれ図1、図2に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、水)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
3060、1476、1448、1329、1253、1227、1191、1145、1029、1011、968、780、760、749、685、497cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+263((C6H5)3S+相当)
NEGATIVE M-261(HO−C(CF3)2−CH2SO3-相当)
【0221】
トリフェニルスルホニウムクロリドの代わりに、合成例1−2〜1−8で調製されたオニウム塩を使用し、それ以外は合成例1−9と同様の操作を行うことで、PAG−1のカチオン種がそれぞれ4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ジメチルフェニルスルホニウム、フェナシルテトラヒドロチオフェニウムのいずれかに変わった化合物を合成することができる。
【0222】
[合成例1−10]トリフェニルスルホニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートの合成[PAG−2]
【0223】
合成例1−9で調製したトリフェニルスルホニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネート5.2g(10ミリモル)、トリエチルアミン1.1g(11ミリモル)、4−ジメチルアミノピリジン0.24g(2ミリモル)、塩化メチレン21gの混合溶液にアダマンタン−1−カルボニルクロライドの40wt%塩化メチレン溶液5.5g(11ミリモル)を加え、室温で2時間撹拌し、その後5%塩酸12gを加えて反応を停止した。有機層を分取し水洗を行い、有機層を減圧濃縮後、濃縮液にメチルイソブチルケトンを加えて再び減圧濃縮することで残存する水を留去した。得られた残渣をジイソプロピルエーテルで洗浄し、その後乾燥させることで目的物であるトリフェニルスルホニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートを得た[油状物2.7g(収率39%)]。得られた目的物の構造を下記に示す。
【化46】
【0224】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR、19F−NMR/DMSO−d6)の結果をそれぞれ図3、図4に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、水)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
3443、2908、2853、1760、1477、1448、1330、1297、1253、1239、1220、1197、1127、1062、1041、1018、969、750、684、616、595、517、501cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+263((C6H5)3S+相当)
NEGATIVE M-423((C10H15COO)−C(CF3)2−CH2SO3-相当)
【0225】
出発原料であるトリフェニルスルホニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートのカチオン種を変更すれば、他は同様の手法でトリフェニルスルホニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートのカチオン種が変わった化合物を合成することができる。
【0226】
[合成例1−11]トリフェニルスルホニウム 2−(2,2−ジメチルプロピオニルオキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートの合成[PAG−3]
【0227】
合成例1−9で調製したトリフェニルスルホニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネート2.6g(5ミリモル)、トリエチルアミン0.63g(6ミリモル)、4−ジメチルアミノピリジン0.12g(1ミリモル)、塩化メチレン15gの混合溶液にピバロイルクロライド0.72g(6ミリモル)を加え、室温で8時間撹拌し、その後5%塩酸11gを加えて反応を停止した。有機層を分取し水洗を行い、有機層を減圧濃縮後、濃縮液にメチルイソブチルケトンと塩化メチレンの混合溶液を加えて再び減圧濃縮することで残存する水を留去した。得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行い、その後結晶を回収、乾燥させることで目的物であるトリフェニルスルホニウム 2−(2,2−ジメチルプロピオニルオキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートを得た[白色結晶1.8g(収率58%)]。得られた目的物の構造を下記に示す。
【化47】
【0228】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR、19F−NMR/DMSO−d6)の結果をそれぞれ図5、図6に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の水が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
3059、2970、1758、1477、1446、1330、1245、1217、1200、1131、1115、1042、1025、971、764、748、682、620、598、505cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+263((C6H5)3S+相当)
NEGATIVE M-345((C4H9COO)−C(CF3)2−CH2SO3-相当)
【0229】
出発原料であるトリフェニルスルホニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートのカチオン種を変更すれば、他は同様の手法でトリフェニルスルホニウム 2−(2,2−ジメチルプロピオニルオキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートのカチオン種が変わった化合物を合成することができる。
【0230】
[合成例1−12]トリフェニルスルホニウム 2−(2−アダマンタン−1−イル−アセトキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートの合成[PAG−4]
【0231】
合成例1−9で調製したトリフェニルスルホニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネート2.6g(5ミリモル)、1−アダマンタン酢酸クロライド1.3g(6ミリモル)、塩化メチレン15gの混合溶液に、トリエチルアミン0.63g(6ミリモル)、4−ジメチルアミノピリジン0.12g(1ミリモル)、塩化メチレン5gの混合溶液を加え、室温で5日間撹拌し、その後5%塩酸7gを加えて反応を停止した。有機層を分取し水洗を行い、有機層を減圧濃縮後、濃縮液にメチルイソブチルケトンを加えて再び減圧濃縮することで残存する水を留去した。得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行い、その後結晶を回収、乾燥させることで目的物であるトリフェニルスルホニウム 2−(2−アダマンタン−1−イル−アセトキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートを得た[白色結晶1.7g(収率48%)]。得られた目的物の構造を下記に示す。
【化48】
【0232】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR、19F−NMR/DMSO−d6)の結果をそれぞれ図7、図8に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶媒(ジイソプロピルエーテル、水)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
3441、2905、2850、1767、1448、1329、1256、1239、1214、1200、1121、1097、1043、970、750、682、601、512、503cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSOTIVE M+263((C6H5)3S+相当)
NEGATIVE M-437((C11H17COO)−C(CF3)2−CH2SO3-相当)
【0233】
出発原料であるトリフェニルスルホニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートのカチオン種を変更すれば、他は同様の手法でトリフェニルスルホニウム 2−(2−アダマンタン−1−イル−アセトキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートのカチオン種が変わった化合物を合成することができる。
【0234】
また、この他にも、本発明により得られる酸発生剤として、例えば下記[合成例1−13]、[合成例1−14]に示すものが挙げられる。
[合成例1−13]ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートの合成[PAG−5]
【0235】
合成例1−6で調製したビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムハイドロジェンサルフェート(0.02モル相当)と、合成例1−9で調製した3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホン酸ナトリウムの水溶液(0.024モル相当)と塩化メチレン70gを加え、室温で1時間撹拌した。撹拌後有機層を分取し水洗した後、有機層を減圧濃縮した。残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行い、得られた結晶を回収しその後乾燥させることで目的物であるビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートを得た[白色結晶9.4g(収率72%]。得られた目的物の構造を下記に示す。
【化49】
【0236】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR、19F−NMR/DMSO−d6)の結果をそれぞれ図9、図10に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の水が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(D−ATR);cm−1)
2967、1481、1396、1329、1261、1219、1188、1147、1106、1037、1027、1012、994、964、818、601cm−1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+393((C20H26)2I+相当)
NEGATIVE M−261(HO−C(CF3)2−CH2SO3−相当)
【0237】
[合成例1−14]ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム 2−(2,2−ジメチルプロピオニルオキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートの合成[PAG−6]
【0238】
合成例1−13で調製したビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネート6.5g(0.010モル)、トリエチルアミン2.2g(0.022モル)、4−ジメチルアミノピリジン0.2g(0.002モル)、塩化メチレン25gの混合溶液にピバロイルクロライド2.4g(0.020モル)を加え、室温で8時間撹拌し、その後5%塩酸22gを加えて反応を停止した。有機層を分取し水洗を行い、有機層を減圧濃縮後、濃縮液にメチルイソブチルケトンを加えて再び減圧濃縮することで残存する水を留去した。得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行い、その後結晶を回収、乾燥させることで目的物であるビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム 3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネートを得た[白色結晶1.8g(収率23%)]。得られた目的物の構造を下記に示す。
【化50】
【0239】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR、19F−NMR/DMSO−d6)の結果をそれぞれ図11、図12に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の水、ピバリン酸が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(D−ATR);cm−1)
2968、1765、1721、1482、1397、1329、1238、1200、1156、1147、1131、1113、1033、1024、994、972、827、618、596、584cm−1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+393((C20H26)2I+相当)
NEGATIVE M−345((C4H9COO)−C(CF3)2−CH2SO3−相当)
【0240】
本発明のレジスト材料のベース樹脂として用いられる高分子化合物を以下に示す処方で合成した。
[合成例2−1]ポリマー1の合成
窒素雰囲気下、アセトキシスチレン114gとインデン11.7gとエトキシエトキシスチレン38.5gと2,2’−アゾビスイソブチロニトリル8.2gをトルエン550gに溶解させ、溶液を調製した。その溶液を窒素雰囲気下50℃で50時間撹拌し、室温まで冷却した後、重合液にメタノール475gと水75gを加え、分離した溶液の下層を分取し、減圧濃縮を行った。得られた濃縮液はそのまま次工程の加水分解反応に用いることとした。
【0241】
【化51】
【0242】
[合成例2−2〜11]ポリマー2〜11の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、合成例2−1と同様の手順により、ポリマー2〜11を合成した。
【0243】
[合成例2−12]ポリマー12の合成
上述のようにして調製したポリマー1を含む濃縮液に対して、テトラヒドロフラン290g、メタノール260g、トリエチルアミン90g、水18gを加え、60℃で40時間撹拌し、その後反応液を濃縮した。濃縮液にメタノール290g、アセトン60g、ヘキサン470gを加え、分離した溶液の下層を分取し、減圧濃縮を行った。濃縮液に酢酸エチル550gを加え、これを15%酢酸水溶液、次いで25%ピリジン水溶液、更に水で洗浄し、その後減圧濃縮を行った。濃縮液にアセトン300gを加えた後、これを水2リットルの中に滴下し、ポリマーを晶出させ、晶出したポリマーを濾過した後、40℃で20時間真空乾燥して、下記ポリマー12で示される白色粉末固体状の高分子化合物が得られた。収量は106g、収率は65%であった。なお、Mwはポリスチレン換算でのGPCを用いて測定した重量平均分子量を表す。
【0244】
【化52】
【0245】
[合成例2−13〜22]ポリマー13〜22の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、合成例2−12と同様の手順により、ポリマー13〜22を合成した(表1参照)。
【0246】
[合成例2−23]ポリマー23の合成
上述の方法で合成したポリマー21、即ちヒドロキシスチレン:インデン=0.90モル:0.10モルの共重合体50gに対して、テトラヒドロフラン500gとトリエチルアミン26gを加えた。この混合溶液に1−クロロ−1−メトキシ−2−メチルプロパン7.8gを滴下し、室温で2時間撹拌した。撹拌後水150gを加え有機層を分取し、減圧濃縮を行い、得られた濃縮液に酢酸エチル270gを加え、これを15%酢酸水溶液、次いで25%ピリジン水溶液、更に水で洗浄し、その後減圧濃縮を行った。濃縮液にアセトン150gを加えた後、これを水2リットルの中に滴下し、ポリマーを晶出させ、晶出したポリマーを濾過した後、40℃で20時間真空乾燥して、下記ポリマー23で示される白色粉末固体状の高分子化合物が得られた。収量は45g、収率は87%であった。なお、Mwはポリスチレン換算でのGPCを用いて測定した重量平均分子量を表す。
【0247】
【化53】
【0248】
[合成例2−24〜26]ポリマー24〜26の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、合成例2−23と同様の手順により、ポリマー24〜26を合成した(表1参照)。
【0249】
合成例2−12〜26におけるポリヒドロキシスチレン誘導体の脱保護と保護に関しては特開2004−115630号公報、特開2005−8766号公報などに詳しい。
【0250】
[合成例2−27]ポリマー27の合成
窒素雰囲気下、メタクリル酸=3−ヒドロキシ−1−アダマンチル5.9gとメタクリル酸=アダマンタン−2−イルオキシメチル7.5gとメタクリル酸=4,8−ジオキサトリシクロ[4.2.1.03.7]ノナン−5−オン−2−イル10.1gと2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.9gをメチルエチルケトン54.2gに溶解させ、溶液を調製した。その溶液を窒素雰囲気下80℃で撹拌したメチルエチルケトン27.1gに4時間かけて滴下した。滴下終了後80℃を保ったまま2時間撹拌し、室温まで冷却した後、重合液を250gのヘキサンに滴下した。析出した固形物を濾別し、メチルエチルケトン27gとヘキサン117gの混合溶媒で二回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して、下記ポリマー27で示される白色粉末固体状の高分子化合物が得られた。収量は21.6g、収率は92%であった。なお、Mwはポリスチレン換算でのGPCを用いて測定した重量平均分子量を表す。
【0251】
【化54】
【0252】
[合成例2−28〜30]ポリマー28〜30の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、合成例2−27と同様の手順により、ポリマー28〜30を合成した(表1参照)。
【0253】
製造した樹脂を下記表1に示す。なお、表1において、導入比はモル比を示す。また表1中、各単位の構造を下記表2及び表3に示す。
【0254】
【表1】
【0255】
【表2】
【0256】
【表3】
【0257】
[レジスト材料の調製]
[実施例1−1〜19、比較例1−1〜6]
上記で製造した樹脂[ポリマー12〜20、ポリマー23〜30](実施例)及び樹脂[ポリマー20、25、27、29](比較例)をベース樹脂として用い、酸発生剤、添加剤(塩基あるいは架橋剤)、及び溶剤を下記表4に示す組成で添加し、混合溶解後にそれらをテフロン(登録商標)製フィルター(孔径0.2μm)で濾過し、レジスト材料(R−01〜19)及び比較例用のレジスト材料(R−20〜25)を得た。なお、溶剤はすべて、界面活性剤として後述のオムノバ社製界面活性剤(界面活性剤−1)を0.01質量%含むものを用いた。
【0258】
【表4】
【0259】
表4中、略号で示した酸発生剤、添加剤(塩基あるいは架橋剤)及び溶剤は、それぞれ下記の通りである。
PAG−2〜4:上記合成例で得られた酸発生剤。
PAG−I :トリフェニルスルホニウム カンファースルホネート
PAG−II :トリフェニルスルホニウム 2,4,6−トリイソプロピルベンゼン
スルホネート
PAG−III:トリフェニルスルホニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオ
キシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホ
ネート(特開2007−145797号公報記載化合物)
Base−1 :トリ(2−メトキシメトキシエチル)アミン
Base−2 :ラウリン酸2−モルホリノエチル
TMGU :1,3,4,6−テトラメトキシメチルグリコールウリル
PGMEA :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
CyHO :シクロヘキサノン
EL :乳酸エチル
界面活性剤−1:3−メチル−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシメチル)オキ
セタン・テトラヒドロフラン・2,2−ジメチル−1,3−プロパン
ジオール共重合物(オムノバ社製)
【0260】
[解像性、焦点深度及びパターン形状の評価:KrF露光]
[実施例2−1〜14、比較例2−1〜4]
本発明のレジスト材料(R−01〜08、R−10〜15)、及び比較用のレジスト材料(R−20〜23)を、酸化シリコン0.02μmを積層した8インチシリコンウエハー上へスピンコーティングし、0.33μmに塗布した。塗布及び下記のベーク、現像操作には東京エレクトロン(株)製、コーターデベロッパークリーントラック アクト8を用いた。
次いで、このシリコンウエハーを110℃のホットプレート上で90秒間ベークした。更に、エキシマレーザースキャナー((株)ニコン製、NSR−S203B NA=0.68)を用いて露光(通常照明)し、110℃で90秒間ベーク(PEB:post exposure bake)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で現像を行うと、ポジ型のパターン(実施例2−1〜14、比較例2−1〜4)を得ることができた。
【0261】
0.18μmのラインアンドスペースのトップとボトムを1:1で解像する露光量を最適露光量(感度:Eop)として、この露光量における分離しているラインアンドスペースの最小線幅を評価レジストの解像度とし、解像したレジストパターンの形状は、走査型電子顕微鏡を用いてレジスト断面を観察した。また、同じ露光量のラインアンドスペース1:10の孤立線の線幅を測長して、グループ線の線幅から孤立線の線幅を引いた値を、孤立パターンと密集パターンの寸法差(I/Gバイアス)とした。また、焦点をずらした場合にレジストパターン形状が矩形性を保ちつつ、かつレジストパターンの膜厚が(焦点が合っている場合に比べて)8割を保っているものを有効として焦点深度(Depth of Focus)を測定した。上記の結果を下記表5に示す。
【0262】
【表5】
【0263】
表5中の実施例の結果より、本発明の酸発生剤が添加されたレジスト材料が、KrFエキシマレーザー露光において、解像性能に優れると同時に、焦点深度に優れ、またI/Gバイアスも小さく、パターン形状も良好であることが確認された。
【0264】
[解像性の評価:EB露光]
[実施例3−1〜14、比較例3−1〜4]
本発明のレジスト材料(R−01〜08、R−10〜15)、及び比較用のレジスト材料(R−20〜23)を、フォトマスクブランクスモデルとして表面にCrを積層したシリコンウエハー上へスピンコーティングし、厚さ0.15μmに塗布した。
次いでこのシリコンウエハーを110℃のホットプレートで4分間ベークした。更に、電子線露光装置((株)日立ハイテクノロジーズ製、HL−800D 加速電圧50keV)を用いて露光し、110℃で4分間ベーク(PEB:post exposure bake)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で現像を行うと、ポジ型のパターンを得ることができた。
【0265】
得られたレジストパターンを次のように評価した。0.20μmのラインアンドスペースのトップとボトムを1:1で解像する露光量を最適露光量(感度:Eop)として、この露光量における分離しているラインアンドスペースの最小線幅を評価レジストの解像度とした。また、解像したレジストパターンの形状は、走査型電子顕微鏡を用いてレジスト断面を観察した。真空中のPED(Post Exposure Delay)を評価するには、電子線露光装置により露光した後、24時間真空に引かれた装置内に放置し、その後にPEB及び現像を行った。得られた0.20μmのラインアンドスペースのEopにおける線幅を、露光後すぐにベークした時の線幅と比較し、その差を[nm]表示した。
【0266】
【表6】
【0267】
表6中の結果から、本発明のレジスト材料が、EB露光において、Cr膜上であるにも拘わらず解像性能に優れ、またPEDが長時間にわたる場合にも線幅変動、形状劣化が少なく、パターン形状も良好で、従ってクロム化合物膜が形成されたマスクブランクスに有利に適用され得ることが確認された。
【0268】
[解像性、露光余裕度及びラインウィズスラフネス(LWR)の評価:ArF露光]
[実施例4−1〜4、比較例4−1〜2]
シリコン基板上に反射防止膜溶液(日産化学工業(株)製、ARC−29A)を塗布し、200℃で60秒間ベークして作製した反射防止膜(78nm膜厚)基板上に、本発明のレジスト材料(R−16〜19)及び比較用のレジスト材料(R−24、25)をスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、100nm膜厚のレジスト膜を作製した。これをArFエキシマレーザースキャナー((株)ニコン製、NSR−S307E、NA=0.85、4/5輪帯照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)を用いて露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB:post exposure bake)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で60秒間現像を行った。
【0269】
レジストの評価は、80nmのグループのラインアンドスペースを1:1で解像する露光量を最適露光量(Eop、mJ/cm2)として、この露光量における分離しているラインアンドスペースの最小線幅(nm)を評価レジストの解像度とした。露光余裕度の評価は、上記最適露光量を変化させた際にパターンサイズが80nm±10%を許容する露光量幅を求め、この値を最適露光量で割って百分率表示した。値が大きいほど露光量変化による性能変化が小さく、露光余裕度が良好である。また、(株)日立ハイテクノロジーズ製、測長SEM(S−9380)を用いて、80nmラインアンドスペースのラインウィズスラフネス(LWR)を測定した。結果を下記表7に示す。
【0270】
【表7】
【0271】
表7中の実施例の結果より、本発明のレジスト材料が、ArFエキシマレーザー露光においても、解像性能に優れると同時に、露光余裕度に優れ、またラインウィズスラフネスも小さい値であることが確認された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるスルホン酸塩。
HO−C(CF3)2−CH2SO3-M+ (1)
(式中、M+はカチオンを示す。)
【請求項2】
前記M+がリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ヨードニウムイオン及びスルホニウムイオンのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のスルホン酸塩。
【請求項3】
2,2−ビストリフルオロメチルオキシランを硫黄化合物と水中で反応させることにより請求項1に記載のスルホン酸塩を製造する方法。
【請求項4】
下記一般式(2)で示されるスルホン酸塩。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3-M+ (2)
(式中、R1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。M+はカチオンを示す。)
【請求項5】
前記M+がリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ヨードニウムイオン及びスルホニウムイオンのいずれかであることを特徴とする請求項4に記載のスルホン酸塩。
【請求項6】
前記スルホン酸塩が下記一般式(3)で示されるスルホン酸スルホニウム塩であることを特徴とする請求項4に記載のスルホン酸塩。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- R2R3R4S+ (3)
(式中、R1は前記と同様である。R2、R3及びR4は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR2、R3及びR4のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。)
【請求項7】
前記スルホン酸スルホニウム塩が下記一般式(4)で示されるものであることを特徴とする請求項6に記載のスルホン酸塩。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- (R5(O)n)mPh’S+Ph2 (4)
(式中、R1は前記と同様である。R5は置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0又は1を示す。Phはフェニル基を示す。Ph’はフェニル基の水素原子m個をR5(O)n−基に置換した基を示す。)
【請求項8】
前記スルホン酸塩が下記一般式(5)で示されるスルホン酸ヨードニウム塩であることを特徴とする請求項4に記載のスルホン酸塩。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- ((R5(O)n)mPh’)2I+ (5)
(式中、R1は前記と同様である。R5は置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0又は1を示す。Ph’はフェニル基の水素原子m個をR5(O)n−基に置換した基を示す。)
【請求項9】
高エネルギー線に感応し、下記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生する化学増幅型レジスト材料用の光酸発生剤。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- H+ (6)
(式中、R1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。)
【請求項10】
前記光酸発生剤が請求項6乃至請求項8の一般式(3)から(5)で示されるいずれか1つのスルホン酸塩からなることを特徴とする請求項9に記載の光酸発生剤。
【請求項11】
ベース樹脂、酸発生剤及び有機溶剤を含有してなるレジスト材料において、前記酸発生剤が、請求項9又は請求項10に記載の光酸発生剤であることを特徴とするレジスト材料。
【請求項12】
前記レジスト材料に含有されたベース樹脂が現像液に不溶あるいは難溶であって、酸によって現像液に可溶となる化学増幅ポジ型レジスト材料であることを特徴とする請求項11に記載のレジスト材料。
【請求項13】
更に、塩基性化合物を添加してなることを特徴とする請求項11または請求項12に記載のレジスト材料。
【請求項14】
少なくとも、請求項11乃至請求項13のいずれか1項に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介して、高エネルギー線を用いてパターン露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項15】
請求項11乃至請求項13のいずれか1項に記載のレジスト材料がクロム化合物膜上に形成されてなることを特徴とするフォトマスクブランク。
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるスルホン酸塩。
HO−C(CF3)2−CH2SO3-M+ (1)
(式中、M+はカチオンを示す。)
【請求項2】
前記M+がリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ヨードニウムイオン及びスルホニウムイオンのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のスルホン酸塩。
【請求項3】
2,2−ビストリフルオロメチルオキシランを硫黄化合物と水中で反応させることにより請求項1に記載のスルホン酸塩を製造する方法。
【請求項4】
下記一般式(2)で示されるスルホン酸塩。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3-M+ (2)
(式中、R1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。M+はカチオンを示す。)
【請求項5】
前記M+がリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ヨードニウムイオン及びスルホニウムイオンのいずれかであることを特徴とする請求項4に記載のスルホン酸塩。
【請求項6】
前記スルホン酸塩が下記一般式(3)で示されるスルホン酸スルホニウム塩であることを特徴とする請求項4に記載のスルホン酸塩。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- R2R3R4S+ (3)
(式中、R1は前記と同様である。R2、R3及びR4は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR2、R3及びR4のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。)
【請求項7】
前記スルホン酸スルホニウム塩が下記一般式(4)で示されるものであることを特徴とする請求項6に記載のスルホン酸塩。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- (R5(O)n)mPh’S+Ph2 (4)
(式中、R1は前記と同様である。R5は置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0又は1を示す。Phはフェニル基を示す。Ph’はフェニル基の水素原子m個をR5(O)n−基に置換した基を示す。)
【請求項8】
前記スルホン酸塩が下記一般式(5)で示されるスルホン酸ヨードニウム塩であることを特徴とする請求項4に記載のスルホン酸塩。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- ((R5(O)n)mPh’)2I+ (5)
(式中、R1は前記と同様である。R5は置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0又は1を示す。Ph’はフェニル基の水素原子m個をR5(O)n−基に置換した基を示す。)
【請求項9】
高エネルギー線に感応し、下記一般式(6)で示されるスルホン酸を発生する化学増幅型レジスト材料用の光酸発生剤。
R1−COOC(CF3)2−CH2SO3- H+ (6)
(式中、R1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。)
【請求項10】
前記光酸発生剤が請求項6乃至請求項8の一般式(3)から(5)で示されるいずれか1つのスルホン酸塩からなることを特徴とする請求項9に記載の光酸発生剤。
【請求項11】
ベース樹脂、酸発生剤及び有機溶剤を含有してなるレジスト材料において、前記酸発生剤が、請求項9又は請求項10に記載の光酸発生剤であることを特徴とするレジスト材料。
【請求項12】
前記レジスト材料に含有されたベース樹脂が現像液に不溶あるいは難溶であって、酸によって現像液に可溶となる化学増幅ポジ型レジスト材料であることを特徴とする請求項11に記載のレジスト材料。
【請求項13】
更に、塩基性化合物を添加してなることを特徴とする請求項11または請求項12に記載のレジスト材料。
【請求項14】
少なくとも、請求項11乃至請求項13のいずれか1項に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介して、高エネルギー線を用いてパターン露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項15】
請求項11乃至請求項13のいずれか1項に記載のレジスト材料がクロム化合物膜上に形成されてなることを特徴とするフォトマスクブランク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−215608(P2010−215608A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262560(P2009−262560)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】
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