説明

新規有機電界発光化合物およびこれを使用する有機電界発光素子

新規の有機電界発光化合物およびこれを含む有機電界発光素子が開示される。有機電界発光素子の正孔注入層もしくは正孔輸送層に含まれる場合に、開示された有機電界発光化合物はその素子の駆動電圧を低減させると共に、発光効率を向上させることができる。
【代表図】なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の有機電界発光化合物(organic electroluminescent compound)、およびこれを含む有機電界発光素子(organic electroluminescent device)に関する。本発明の有機電界発光化合物は有機電界発光素子の正孔輸送層もしくは正孔注入層に含まれうる。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ素子の中では、電界発光(EL)素子は、それが自己発光型ディスプレイ素子として広い視野角、優れたコントラストおよび速い応答速度を提供するという利点がある。1987年に、イーストマンコダック(Eastman Kodak)は、電界発光層を形成するための物質として、低分子量芳香族ジアミンとアルミニウム錯体を使用する有機EL素子を初めて開発した[Appl.Phys.Lett.51,913,1987]。
【0003】
有機EL素子においては、電子注入電極(カソード)および正孔注入電極(アノード)の間に形成される有機層に電荷が適用される場合には、電子および正孔は対になって、この電子−正孔対が消滅しながら光を発する。有機EL素子はそれがプラスチックのような可撓性の透明基体上に形成されることができ、プラズマディスプレイパネルもしくは無機ELディスプレイと比較して相対的に低い電圧(10V以下)で駆動可能であり、より少ない電力しか消費せず、かつ優れた色を提供するという点で有利である。
【0004】
有機EL素子に使用される有機材料は電界発光材料と電荷輸送材料とに分類されうる。電界発光材料は放射される色および発光効率に直接関連する。いくつかの要件には、固体状態での高い蛍光量子収率、高い電子および正孔移動度、真空蒸着中の分解に対する耐性、均一な膜を形成する能力、並びに安定性が挙げられる。
【0005】
正孔注入/輸送材料には、銅フタロシアニン(CuPc)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]−ビフェニル(NPB)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MEDATA)などが挙げられうる。正孔注入もしくは輸送層においてこれらの材料を使用する素子は効率および駆動寿命の点で問題がある。なぜなら、有機EL素子が高電流下で駆動される場合には、アノードと正孔注入層との間に熱応力が発生するからである。熱応力は素子の駆動寿命を有意に低減させる。さらに、正孔注入層に使用される有機材料が非常に高い正孔移動度を有するので、正孔−電子電荷バランスが失われる場合があり、量子収率(cd/A)が低減しうる。
【0006】
【化1】

【0007】
薄膜の良好な安定性を提供する非晶質化合物は有機EL素子の耐久性を向上させることが知られている。ガラス転移温度(T)は非結晶質の測定であり得る。
【0008】
MTDATAは76℃のガラス転移温度を有し、高い非結晶質を有するということができない。これら材料は、有機EL素子の耐久性および発光効率(これは、正孔注入/輸送特性によって決定される)を満足させない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.51,913,1987
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
よって、本発明の目的は、既存の正孔注入および正孔輸送材料と比較して優れた発光効率および素子駆動寿命を提供する有機電界発光化合物を提供することである。本発明の別の目的は、この新規の有機電界発光化合物を正孔注入層もしくは正孔輸送層に使用している有機電界発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的を達成するために、本発明は化学式1によって表される有機電界発光化合物、およびこれを含む有機電界発光素子を提供する。有機電界発光素子の正孔注入層もしくは正孔輸送層に含まれる場合には、本発明の有機電界発光化合物は発光効率を向上させうる一方で、同時にその素子の駆動電圧を低下させる。
【0012】
【化2】

【0013】
式中、環Aおよび環Bは独立して単環式もしくは多環式芳香環、単環式もしくは多環式ヘテロ芳香環、芳香環と縮合した5員もしくは6員のヘテロ芳香環、または5員もしくは6員のへテロ芳香環と縮合した単環式もしくは多環式芳香環を表すが、ただし、環Aおよび環Bが同時に単環式芳香環であって、かつ置換基RおよびRが独立して水素、(C1−C60)アルキル、(C1−C60)アルコキシもしくは(C6−C60)アリールである場合を除き;
は置換基を有するかもしくは有しない(C6−C60)アリーレン、置換基を有するかもしくは有しない(C3−C60)ヘテロアリーレン、置換基を有するかもしくは有しない(C3−C60)アルケニレン、または置換基を有するかもしくは有しない(C3−C60)アルキニレンを表し;
Arは置換基を有するかもしくは有しない(C1−C60)アルキル、置換基を有するかもしくは有しない(C6−C60)アリール、置換基を有するかもしくは有しない(C3−C60)ヘテロアリール、置換基を有するかもしくは有しないヘテロシクロアルキル、置換基を有するかもしくは有しない(C3−C60)シクロアルキル、置換基を有するかもしくは有しないアダマンチル、置換基を有するかもしくは有しない(C7−C60)ビシクロアルキル、置換基を有するかもしくは有しない(C3−C60)アルケニル、または置換基を有するかもしくは有しない(C3−C60)アルキニルを表し;
、R、R、R、R、RおよびRは独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換基を有するかもしくは有しない(C1−C60)アルキル、置換基を有するかもしくは有しない(C6−C60)アリール、置換基を有するかもしくは有しない(C3−C60)ヘテロアリール、置換基を有するかもしくは有さず、N、OおよびSから選択される1以上のヘテロ原子を含む5員もしくは6員のヘテロシクロアルキル、置換基を有するかもしくは有しない(C3−C60)シクロアルキル、置換基を有するかもしくは有しないトリ(C1−C60)アルキルシリル、置換基を有するかもしくは有しないジ(C1−C60)アルキル(C6−C60)アリールシリル、置換基を有するかもしくは有しないトリ(C6−C60)アリールシリル、置換基を有するかもしくは有しないアダマンチル、置換基を有するかもしくは有しない(C7−C60)ビシクロアルキル、シアノ、置換基を有するかもしくは有しない(C1−C60)アルキルオキシ、置換基を有するかもしくは有しない(C1−C60)アルキルチオ、置換基を有するかもしくは有しない(C6−C60)アリールオキシ、置換基を有するかもしくは有しない(C6−C60)アリールチオ、置換基を有するかもしくは有しない(C1−C60)アルコキシカルボニル、置換基を有するかもしくは有しない(C1−C60)アルキルカルボニル、置換基を有するかもしくは有しない(C6−C60)アリールカルボニル、置換基を有するかもしくは有しない(C6−C60)アリールオキシカルボニル、置換基を有するかもしくは有しない(C1−C60)アルコキシカルボニルオキシ、置換基を有するかもしくは有しない(C1−C60)アルキルカルボニルオキシ、置換基を有するかもしくは有しない(C6−C60)アリールカルボニルオキシ、置換基を有するかもしくは有しない(C6−C60)アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシル、ニトロまたはヒドロキシル、またはこれらのそれぞれは、縮合環を有するかもしくは有しない(C3−C60)アルキレンもしくは(C3−C60)アルケニレンを介して隣の置換基に結合して縮合環を形成していてよく;
、ArまたはR〜Rにおける置換されているもしくは置換されていない置換基は、水素、重水素、ハロゲン、(C1−C60)アルキル、(C6−C60)アリール、(C3−C60)ヘテロアリール、(C3−C60)シクロアルキル、シアノ、(C1−C60)アルキルオキシ、(C1−C60)アルキルチオ、(C6−C60)アリールオキシ、(C6−C60)アリールチオ、トリ(C1−C60)アルキルシリル、ジ(C1−C60)アルキル(C6−C60)アリールシリル、トリ(C6−C60)アリールシリル、NR3132、PR3334、BR3536、およびP(=O)R3738からなる群から選択される1種以上の置換基であるか、またはこれは縮合環を有するかもしくは有しない(C3−C60)アルキレンもしくは(C3−C60)アルケニレンを介して隣の置換基に結合して縮合環を形成していてよく;並びに
31〜R38は、独立して、(C1−C60)アルキル、(C3−C60)シクロアルキル、(C6−C60)アリールもしくは(C3−C60)ヘテロアリールを表すか、またはこのそれぞれは縮合環を有するかもしくは有しない(C3−C60)アルキレンもしくは(C3−C60)アルケニレンを介して隣の置換基に結合して縮合環を形成していてよく、並びに、R31〜R38のアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールは、水素、重水素、ハロゲン、(C1−C60)アルキル、ハロ(C1−C60)アルキル、(C6−C60)アリール、(C6−C60)アリール置換基を有するかもしくは有しない(C3−C60)ヘテロアリール、シアノ、カルボキシル、ニトロおよびヒドロキシルからなる群から選択される1種以上の置換基でさらに置換されていてよい。
【0014】
本発明においては、「アルキル」は、炭素および水素原子、またはこれらの組み合わせのみからなる線状もしくは分岐で飽和の第一級炭化水素基を含み、「アルキルオキシ」および「アルキルチオ」はそれぞれ−O−アルキルおよび−S−アルキルを意味し、ここでのアルキルは上で定義されるのと同じである。
【0015】
本発明においては、「アリール」は、芳香族炭化水素から1つの水素原子を除去することにより得られる有機基を意味し、4員〜7員、特に5員もしくは6員の、単環もしくは縮合環、例えば複数のアリールが化学結合で結合されているものが挙げられうる。具体的な例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントリル、インデニル、フルオレニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、ペリレニル、クリセニル、ナフタセニル、フルオランテニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本発明においては、「ヘテロアリール」は、芳香環骨格原子としての窒素(N)、酸素(O)、硫黄(S)、リン(P)およびケイ素(Si)から選択される1〜4個のヘテロ原子を含み、他の残りの芳香環骨格原子が炭素であるアリール基を意味する。ヘテロアリールは、5員もしくは6員の単環式ヘテロアリール、またはベンゼン環との縮合から得られる多環式ヘテロアリールであってよく、部分的に飽和されていてよい。さらに、ヘテロアリールには、化学結合によって結合されている1より多いヘテロアリールが挙げられる。ヘテロアリールには、環内のヘテロ原子が酸化されるかまたは四級化されて、例えば、N−オキシドまたは第四級塩などを形成することができる2価のアリール基が挙げられうる。具体的な例には、単環式ヘテロアリール、例えば、フリル、チオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、トリアジニル、テトラジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラザニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニルなど;多環式ヘテロアリール、例えば、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾフラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソインドリル、インドリル、インダゾリル、ベンゾチアジアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、カルバゾリル、フェナントリジニル、ベンゾジオキソリルなど;そのN−オキシド(例えば、ピリジルN−オキシド、キノリルN−オキシド)、その第四級塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本発明においては、「(C1−C60)アルキル」を含む置換基は1〜60個の炭素原子、具体的には1〜20個の炭素原子、より具体的には1〜10個の炭素原子を有することができる。「(C6−C60)アリール」を含む置換基は6〜60個の炭素原子、具体的には6〜20個の炭素原子、より具体的には6〜12個の炭素原子を有することができる。「(C3−C60)ヘテロアリール」を含む置換基は3〜60個の炭素原子、具体的には4〜20個の炭素原子、より具体的には4〜12個の炭素原子を有することができる。「(C3−C60)シクロアルキル」を含む置換基は3〜60個の炭素原子、具体的には3〜20個の炭素原子、より具体的には3〜7個の炭素原子を有することができる。「(C2−C60)アルケニルもしくはアルキニル」を含む置換基は2〜60個の炭素原子、具体的には2〜20個の炭素原子、より具体的には2〜10個の炭素原子を有することができる。
【0018】
本発明の有機電界発光化合物には、下記化学式2〜5で表される化合物が挙げられる:
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

式中、環A、環B、L、ArおよびR〜Rは化学式1において定義されるのと同じである。
【0019】
環Aおよび環Bは独立してベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピリジン、キノリン、イソキノリンもしくはキノキサリンであり得るが、これに限定されない。環Aおよび環Bが同時にベンゼンである場合には、環Aおよび環Bに置換されているRおよびRは独立して水素、(C1−C60)アルキル、(C1−C60)アルコキシもしくは(C6−C60)アリールではない。
【0020】
より具体的には、
【化7】

は、下記構造から選択される:
【化8】

式中、R、RおよびRは化学式1において定義されるのと同じである。
【0021】
より具体的には、
【化9】

は、下記構造から選択される:
【化10】

【0022】
およびR51は独立して、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシル、n−へプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、ベンジル、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フルオレニル、スピロビフルオレニル、フェナントリル、アントリル、フルオランテニル、トリフェニレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、ペリレニル、ピリジル、キノリル、イソキノリルもしくはトリアジニルであってよく、そしてこれらフェニル、ナフチル、ビフェニル、フルオレニル、スピロビフルオレニル、フェナントリル、アントリル、フルオランテニル、トリフェニレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、ペリレニル、ピリジル、キノリル、イソキノリルもしくはトリアジニルは重水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシル、n−へプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、デシル、フェニル、ナフチルもしくはピリジルでさらに置換されていてもよい。
【0023】
より具体的には、本発明の有機電界発光化合物は下記化合物によって例示されうるが、これらは本発明を限定するものではない:
【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【0024】
本発明の有機電界発光化合物はスキーム1によって製造されうる:
【化16】

式中、Ar、L、およびR〜Rは化学式1において定義されるのと同じである。
【0025】
本発明は、第1の電極;第2の電極;並びに、第1の電極と第2の電極との間に設けられた1以上の有機層;を含む有機電界発光素子であって、化学式1で表される有機電界発光化合物の1種以上を前記有機層が含む有機電界発光素子も提供する。この有機電界発光化合物は正孔注入層もしくは正孔輸送層において使用される。
【0026】
前記有機層は化学式1で表される有機電界発光化合物を含む1以上の層と、蛍光ホストおよび蛍光ドーパントもしくはリン光ホストおよびリン光ドーパントを含む1以上の層とを含むことができる。本発明の有機電界発光素子に使用される蛍光ホスト、蛍光ドーパント、リン光ホストおよびリン光ドーパントは特に限定されない。
【0027】
さらに、本発明の有機電界発光素子においては、有機層は第1族、第2族、第4周期および第5周期遷移金属、ランタニド金属並びにd−遷移元素の有機金属からなる群から選択される1種以上の金属または錯体をさらに含むことができ、この有機層は電界発光層および電荷発生層を同時に含むことができる。
【0028】
さらに、有機層は、白色光を発光する電界発光素子を提供するために、上述の有機電界発光化合物に加えて、同時に、青色、赤色、および緑色の光を発光する1以上の有機電界発光層を含むこともできる。青色、赤色もしくは緑色の光を発光する化合物は韓国特許出願公開第10−2008−0123276号、第10−2008−0107606号および第10−2008−0118428号に例示されるが、これらに限定されない。
【0029】
さらに、本発明の有機電界発光素子においては、電子輸送化合物と還元性ドーパントとの混合領域、または正孔輸送化合物と酸化性ドーパントとの混合領域が一対の電極の一方もしくは双方の電極の内側表面上に配置されうる。この場合、電子輸送化合物がアニオンに還元されるので、この混合領域から電界発光媒体への電子の注入および輸送はより容易になる。また、正孔輸送化合物はカチオンに酸化されるので、この混合領域から電界発光媒体への正孔の注入および輸送はより容易になる。酸化性ドーパントの好ましい例には、様々なルイス酸およびアクセプター化合物が挙げられる。還元性ドーパントの好ましい例には、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、希土類金属およびこれらの混合物が挙げられる。
【発明の効果】
【0030】
有機電界発光素子の正孔注入層もしくは正孔輸送層に組み込まれる場合には、本発明の有機電界発光化合物は、この素子の駆動電圧を低下させつつ、発光効率を向上させることができる。特に、カルバゾール誘導体を含む有機化合物は大きなトリプレットギャップを有する。これは既存の材料よりもより効率的にリン光素子における励起をブロックするので、これは素子の駆動寿命および発光効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下で、本発明の有機電界発光化合物、その製造方法、および素子の電界発光特性がいくつかの化合物について説明される。しかし、以下の実施形態は例示となるだけであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0032】
製造例
[製造例1]化合物4の製造
【化17】

【0033】
化合物Aの製造
2−ナフトール(20.0g、138.8mmol)、NaHSO(28.8g、277.4mmol)、蒸留水(160mL)および4−ブロモフェニルヒドラジン(31.2mL、166.4mmol)が120℃に加熱された。12時間後、蒸留水が添加され、生じた固体が減圧下で濾別された。このようにして得られた固体はHCl水溶液に添加され、100℃に加熱された。1時間後、ジクロロメタンでの抽出に続いて、生成物が蒸留水およびNaOH水溶液で洗浄された。カラム分離によって、化合物A(9.2g、31.0mmol、22.4%)が得られた。
【0034】
化合物Bの製造
化合物A(9.2g、31.0mmol)、Cu(2.0g、31.0mmol)、18−クラウン−6(0.4g、1.6mmol)、KCO(12.8g、93.2mmol)および1,2−ジクロロベンゼン(100mL)を混合し、還流下で180℃で12時間攪拌した。室温まで冷却し、減圧下で蒸留した後、生成物はジクロロメタンで抽出され蒸留水で洗浄された。MgSOで乾燥させ、減圧下で蒸留し、カラム分離によって化合物B(7.6g、20.4mmol、65.7%)が得られた。
【0035】
化合物Cの製造
テトラヒドロフラン(250mL)を添加した後で、化合物B(7.6g、20.4mmmol)は窒素の存在下で−78℃まで冷却された。n−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、12.2mL、30.6mmol)をゆっくりと添加した後で、温度を維持しつつこの混合物を1時間攪拌した。−78℃でB(i−pro)(8.8mL、40.8mmol)を添加した後で、この混合物はさらに1時間攪拌された。この反応の完了時に、1MのHClが0℃で添加された。蒸留水で洗浄し、次いで酢酸エチルで抽出した後で、有機層はMgSOで乾燥させられ、溶媒はロータリーエバポレータを用いて除かれた。カラムクロマトグラフィによる精製で、化合物C(5.9g、17.5mmol、86%)を得た。
【0036】
化合物Dの製造
4−ビフェニルアミン(35.0g、120.0mmol)、9,9’−ジメチル−2−ブロモフルオレン(24.0g、140.0mmol)、Pd(OAc)(862mg、3.84mmol)、P(t−Bu)(8.5mL、0.01mmol)およびCsCO(83.0g、250.0mmol)が、窒素の存在下で、トルエン(600mL)に溶解され、そして120℃で還流下で攪拌された。12時間後、反応の完了時に、蒸留水で洗浄し、次いで酢酸エチルで抽出した後で、有機層はMgSOで乾燥させられ、溶媒はロータリーエバポレータを用いて除かれた。カラムクロマトグラフィによる精製で、化合物D(40.0g、110.7mmol、86%)を得た。
【0037】
化合物Eの製造
化合物D(20.0g、55.3mmol)、1,4−ジブロモベンゼン(26.0g、110.0mmol)、Pd(dba)(1.0g、1.1mmol)、トリ−o−トルイホスフィン(1.0g、3.3mmol)およびNaOt−Bu(10.6g、110.0mmol)が窒素の存在下でトルエン(600mL)に溶解され、そして120℃で還流下で攪拌された。12時間後、反応の完了時に、蒸留水で洗浄し、次いで酢酸エチルで抽出した後で、有機層はMgSOで乾燥させられ、溶媒はロータリーエバポレータを用いて除かれた。カラムクロマトグラフィによる精製で、化合物E(17.0g、32.9mmol、60%)を得た。
【0038】
化合物4の製造
化合物E(10.0g、19.4mmol)、化合物C(7.8g、23.2mmol)、Pd(PPh(2.2g、1.9mmol)、KCO(2M、96mL、190mmol)、エタノール(96mL)、およびトルエン(180mL)が120℃で、還流下で攪拌された。12時間後、反応の完了時に、蒸留水で洗浄し、次いで酢酸エチルで抽出した後で、有機層はMgSOで乾燥させられ、溶媒はロータリーエバポレータを用いて除かれた。カラムクロマトグラフィによる精製で、化合物4(10.3g、14.1mmol、73%)を得た。
【0039】
製造例1におけるのと同様に、有機電界発光化合物である化合物1〜91が製造された。このようにして製造された有機電界発光化合物のH NMRおよびMS/FABデータが表1に示される。
【0040】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0041】
[実施例1]
本発明の有機電界発光化合物を使用したOLEDの製造
本発明の電界発光化合物を使用することによりOLED素子が製造された。
まず、OLED用ガラス基体(サムスン−コーニング)から調製された透明電極ITO膜(15Ω/□)を、トリクロロエチレン、アセトン、エタノールおよび蒸留水を順に使用した超音波洗浄にかけ、イソプロパノール中に貯蔵し、その後使用した。
次に、真空蒸着装置の基体ホルダにITO基体を取り付け、この真空蒸着装置のセル内に4,4’,4”−トリス(N,N−(2−ナフチル)−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)を入れ、このチャンバーの内側の圧力を10−6torrまで下げた。次いで、このセルに電流を適用して、2−TNATAを蒸発させて、ITO基体上に60nmの厚みを有する正孔注入層を形成した。
【0042】
次いで、真空蒸着装置の他のセルに化合物1を入れた後で、このセルに電流を適用して化合物1を蒸発させて、正孔注入層上に20nmの厚みを有する正孔輸送層を形成した。
【0043】
【化18】

【0044】
以下のようにして、正孔輸送層上に電界発光層が形成された。4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)がホスト材料として真空蒸着装置の一方のセルに入れられ、そして化合物Dが別のセルに入れられた。化合物Dを基準にして2〜5重量%で正孔輸送層上に30nmの厚さを有する電界発光層が形成されるようにこの2つのセルが加熱された。
【0045】
【化19】

【0046】
その後、正孔ブロッキング層としてビス(2−メチル−8−キノリナト)(p−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(BAlq)が電界発光層上に5nmの厚さで堆積された。次いで、電子輸送層としてトリス(8−ヒドロキシキノリン)−アルミニウム(III)(Alq)が20nmの厚みで堆積させられ、さらに電子注入層として、リチウムキノラート(Liq)が1〜2nmの厚みで堆積させられた。次いで、別の真空蒸着装置を使用して、150nmの厚みを有するAlカソードが形成されて、OLEDを製造した。
【0047】
【化20】

【0048】
OLED素子に使用された各OLED電界発光は10−6torrでの進行宇昇華によって精製された。
【0049】
[比較例1]
既存の電界発光材料を使用するOLED素子の電界発光特性
実施例1のと同じ方法で2−TNATAを使用して正孔注入層が形成された。次いで、真空蒸着装置の別のセル内にN,N’−ビス(α−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(NPB)を入れた後で、このセルに電流を適用することによってNPBが蒸発させられ、正孔注入層上に20nm厚さを有する正孔輸送層を形成した。
【0050】
【化21】

【0051】
残りの手順は実施例1におけるのと同じであった。
【0052】
実施例1および比較例1で製造されたOLED素子の発光効率が1,000cd/mで測定された。結果は表2に示される。
【0053】
【表5】

【0054】
本発明の化合物は既存の材料と比較して優れた性能を示すことが認められうる。
【0055】
[実施例2]
本発明の有機電界発光化合物を使用したOLED素子の製造
実施例1のと同様の方法で、ITO基体が真空蒸着装置の基体ホルダに取り付けられた。真空蒸着装置の一方のセルに化合物12を入れた後で、チャンバー内側の圧力を10−6torrまで低減させた。次いで、このセルに電流を適用することによって化合物12を蒸発させて、ITO基体上に60nmの厚みを有する正孔注入層を形成した。
次いで、N,N’−ビス(α−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(NPB)を真空蒸着装置の別のセルに入れた後で、このセルに電流を適用することによってNPBが蒸発させられ、正孔注入層上に20nm厚さを有する正孔輸送層を形成した。
本発明の電界発光化合物を使用することによるOLEDの製造
実施例1〜10のOLEDについてのと同じ手順に従うが、ホスト材料として本発明の化合物(例えば、化合物TA4−H4−H4)を使用し、かつ電界発光ドーパントとして以下の化学式で表される有機イリジウム錯体(Ir(ppy))を使用して、OLEDが製造された。
OLEDを製造するために使用されたそれぞれ材料は10−6torrでの真空昇華によって精製された後で電界発光材料として使用された。
【0056】
【化22】

【0057】
残りの手順は実施例1におけるのと同様であった。
【0058】
実施例2および比較例1において製造されたOLED素子の発光効率が1,000cd/mで測定された。結果は表3に示される。
【0059】
【表6】

【0060】
本発明の化合物は既存の材料と比較して優れた性能を示すことが認められうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1で表される有機電界発光化合物:
【化1】

式中、環Aおよび環Bは独立して単環式もしくは多環式芳香環、単環式もしくは多環式ヘテロ芳香環、芳香環と縮合した5員もしくは6員のヘテロ芳香環、または5員もしくは6員のへテロ芳香環と縮合した単環式もしくは多環式芳香環を表すが、ただし、環Aおよび環Bが同時に単環式芳香環であって、かつ置換基RおよびRが独立して水素、(C1−C60)アルキル、(C1−C60)アルコキシもしくは(C6−C60)アリールである場合を除き;
は置換基を有するかもしくは有しない(C6−C60)アリーレン、置換基を有するかもしくは有しない(C3−C60)ヘテロアリーレン、置換基を有するかもしくは有しない(C3−C60)アルケニレン、または置換基を有するかもしくは有しない(C3−C60)アルキニレンを表し;
Arは置換基を有するかもしくは有しない(C1−C60)アルキル、置換基を有するかもしくは有しない(C6−C60)アリール、置換基を有するかもしくは有しない(C3−C60)ヘテロアリール、置換基を有するかもしくは有しないヘテロシクロアルキル、置換基を有するかもしくは有しない(C3−C60)シクロアルキル、置換基を有するかもしくは有しないアダマンチル、置換基を有するかもしくは有しない(C7−C60)ビシクロアルキル、置換基を有するかもしくは有しない(C3−C60)アルケニル、または置換基を有するかもしくは有しない(C3−C60)アルキニルを表し;
、R、R、R、R、RおよびRは独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換基を有するかもしくは有しない(C1−C60)アルキル、置換基を有するかもしくは有しない(C6−C60)アリール、置換基を有するかもしくは有しない(C3−C60)ヘテロアリール、置換基を有するかもしくは有さず、N、OおよびSから選択される1以上のヘテロ原子を含む5員もしくは6員のヘテロシクロアルキル、置換基を有するかもしくは有しない(C3−C60)シクロアルキル、置換基を有するかもしくは有しないトリ(C1−C60)アルキルシリル、置換基を有するかもしくは有しないジ(C1−C60)アルキル(C6−C60)アリールシリル、置換基を有するかもしくは有しないトリ(C6−C60)アリールシリル、置換基を有するかもしくは有しないアダマンチル、置換基を有するかもしくは有しない(C7−C60)ビシクロアルキル、シアノ、置換基を有するかもしくは有しない(C1−C60)アルキルオキシ、置換基を有するかもしくは有しない(C1−C60)アルキルチオ、置換基を有するかもしくは有しない(C6−C60)アリールオキシ、置換基を有するかもしくは有しない(C6−C60)アリールチオ、置換基を有するかもしくは有しない(C1−C60)アルコキシカルボニル、置換基を有するかもしくは有しない(C1−C60)アルキルカルボニル、置換基を有するかもしくは有しない(C6−C60)アリールカルボニル、置換基を有するかもしくは有しない(C6−C60)アリールオキシカルボニル、置換基を有するかもしくは有しない(C1−C60)アルコキシカルボニルオキシ、置換基を有するかもしくは有しない(C1−C60)アルキルカルボニルオキシ、置換基を有するかもしくは有しない(C6−C60)アリールカルボニルオキシ、置換基を有するかもしくは有しない(C6−C60)アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシル、ニトロまたはヒドロキシル、またはこれらのそれぞれは、縮合環を有するかもしくは有しない(C3−C60)アルキレンもしくは(C3−C60)アルケニレンを介して隣の置換基に結合して縮合環を形成していてよく;
、ArまたはR〜Rにおける置換されているもしくは置換されていない置換基は、水素、重水素、ハロゲン、(C1−C60)アルキル、(C6−C60)アリール、(C3−C60)ヘテロアリール、(C3−C60)シクロアルキル、シアノ、(C1−C60)アルキルオキシ、(C1−C60)アルキルチオ、(C6−C60)アリールオキシ、(C6−C60)アリールチオ、トリ(C1−C60)アルキルシリル、ジ(C1−C60)アルキル(C6−C60)アリールシリル、トリ(C6−C60)アリールシリル、NR3132、PR3334、BR3536、およびP(=O)R3738からなる群から選択される1種以上の置換基であるか、またはこれは縮合環を有するかもしくは有しない(C3−C60)アルキレンもしくは(C3−C60)アルケニレンを介して隣の置換基に結合して縮合環を形成していてよく;並びに
31〜R38は、独立して、(C1−C60)アルキル、(C3−C60)シクロアルキル、(C6−C60)アリールもしくは(C3−C60)ヘテロアリールを表すか、またはこのそれぞれは縮合環を有するかもしくは有しない(C3−C60)アルキレンもしくは(C3−C60)アルケニレンを介して隣の置換基に結合して縮合環を形成していてよく、並びに、R31〜R38のアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールは、水素、重水素、ハロゲン、(C1−C60)アルキル、ハロ(C1−C60)アルキル、(C6−C60)アリール、(C6−C60)アリール置換基を有するかもしくは有しない(C3−C60)ヘテロアリール、シアノ、カルボキシル、ニトロおよびヒドロキシルからなる群から選択される1種以上の置換基でさらに置換されていてよい。
【請求項2】
化学式2〜5のいずれかによって表される、請求項1に記載の有機電界発光化合物:
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

式中、環A、環B、L、ArおよびR〜Rは請求項1において定義されるのと同じである。
【請求項3】
【化6】

が下記構造から選択される請求項2に記載の有機電界発光化合物:
【化7】

式中、R、RおよびRは請求項1において定義されるのと同じである。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機電界発光化合物を含む有機電界発光素子。
【請求項5】
有機電界発光化合物が正孔注入もしくは正孔輸送のための材料として使用される、請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
第1の電極;第2の電極;並びに、第1の電極と第2の電極との間に設けられた1以上の有機層;を含む有機電界発光素子であって、前記有機層が化学式1で表される有機電界発光化合物を含む1以上の層と、蛍光ホストおよび蛍光ドーパントまたはリン光ホストおよびリン光ドーパントを含む1以上の層とを含む、請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
有機層が、第1族、第2族、第4周期および第5周期遷移金属、ランタニド金属並びにd−遷移元素の有機金属からなる群から選択される1種以上の金属もしくは錯体をさらに含む、請求項6に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
有機層が電界発光層および電荷発生層を含む、請求項6に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
有機電界発光素子が白色光を発光する有機電界発光素子であり、有機層が青色、赤色および緑色の光を発光する1以上の有機電界発光層を同時に含む、請求項6に記載の有機電界発光素子。

【公表番号】特表2012−521414(P2012−521414A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501926(P2012−501926)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/KR2010/001691
【国際公開番号】WO2010/110553
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(509266480)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ・コリア・リミテッド (9)
【Fターム(参考)】