説明

方位角計測装置及び方位角計測方法

本発明は、方位角の測定で取得したデータから算出されるオフセットの更新を実現するための方位角計測装置及びその方法を提供する。3軸磁気センサ(10)により測定された地磁気出力は、増幅部(13)で増幅されてA/D変換部(14)に入力される。チョッパ部(11)は、X軸磁気センサ(2)とY軸磁気センサ(3)とZ軸磁気センサ(4)を駆動する端子を切り替えるためのもので、駆動電源部(12)から出力された駆動電圧をX軸磁気センサ(2)とY軸磁気センサ(3)とZ軸磁気センサ(4)に印加する。増幅器(13)で増幅された出力増幅値がA/D変換部(14)でアナログ信号からデジタル信号に変換された後、感度・オフセット補正計算部(16)に入力される。この感度・オフセット補正計算部(16)の出力データは、方位角計算部(20)に入力され、その方位角情報が出力される。信頼性情報計算部(19)からは信頼性情報が出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方位角計測装置及び方位角計測方法に関し、より詳細には、方位角の測定のために取得した磁気データ群から、状況に応じて迅速にまたは高精度のオフセットを算出するための方位角計測装置及び方位角計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地磁気を検出して方位角を算出する方位角計測装置においては、地磁気(定常磁界)と方位角計測装置に固定された磁石などによって発生する地磁気以外の磁界を区別することが重要である。地磁気以外の磁界は、磁気測定データ群から適切な手段を用いてオフセット(基準点)として算出される。磁気測定値からこのオフセットを差し引くことによって地磁気を求めることが出来る。
【0003】
このオフセットは、方位角計測装置に付随した磁性体(例えば、メモリカード)の装着及び取り外し等で大きく変化する。あるいは、方位角計測装置の使用者が、オフセットの計算値を不適切であると判断し、意図的に再計算を求める場合もある。
【0004】
従来の方位角計測装置として、特許文献1に記載の方位角計測装置が提案されている。この方角計測装置は、ホール素子を用いて検出された地磁気に基づいて方位を計測する。補正値記憶部には、X軸ホール素子及びY軸ホール素子の基準値が記憶される。補正計算部は、この基準値を用いることにより、X軸ホール素子及びY軸ホール素子の出力増幅値を補正し、地磁気の各軸成分に比例した値だけを取り出している。
【0005】
また、特許文献2に記載の方位角計測装置は、地磁気センサの入力軸の方向と、姿勢検出装置の基準軸の方向との間の取り付け角誤差を補正して、高精度の方位角計測装置を提供するものである。地磁気データに対して取付け角誤差補正を行い、補正された地磁気データを演算する取付け角補正演算部と、姿勢データを用いて地磁気データを座標変換し、地磁気データを出力する座標変換回路と、地磁気データに基づいて方位角を計算する方位角計算回路とを備えている。
【0006】
さらに、特許文献3に記載の方位角計測装置は、地磁気センサによる方位角計測装置である。地磁気の水平成分を、互いに直交する磁気検出コイルにより2成分の電圧出力信号に分けて検出する。その電圧出力信号を、信号校正演算手段を備えたマイクロコンピュータに入力して、地磁気の磁北に対する方位角データを演算する。そして、マイクロコンピュータからの各方位角データに対応する補正値を演算して各方位角データを加算する補正処理手段を設けている。
また、上述した文献以外にも、特許文献4、特許文献5、特許文献6に記載された方位角計測装置が知られている。
【0007】
先願である特許文献7のものは、方位角計測装置における磁気センサのオフセットを補正するもので、携帯電話の向きを任意に変化させるだけで、磁気センサの各軸出力に対するオフセット情報を算出することができる。そして、オフセットのキャリブレーション作業を容易化して、オフセットのキャリブレーションを行う際の利用者の負担を軽減するようにしている。
【0008】
この出願では、推定された基準点のバラツキを算出し、所定値以上である場合は推定された基準点を破棄している。この所定値(以下判定値)を大きく設定すると、誤差の大きなオフセットが算出される恐れがあるが、オフセットは更新され易くなるので、オフセットが大きく変化した場合でもすぐに修正される。
【0009】
反対に判定値が小さい場合は、オフセットが更新され難くなるので、既に誤差の小さいオフセットが計算されている場合、それよりも誤差の大きなオフセット推定値を破棄して精度を高く保つことが出来る。しかし、オフセットが大きく変化した場合には、正しいオフセットが採用されるまでに時間がかかってしまう。このような理由から常に一つの判定値を用いて基準点の採用、破棄を決定すると、方位角計測装置に求められる応答速度や精度など複数の仕様を同時に満足することが困難である。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、方位角の測定のために取得した磁気データ群から、状況に応じて迅速にまたは高精度のオフセットを算出するための方位角計測装置及び方位角計測方法を提供することにある。
【0011】
【特許文献1】特開2003−065791号公報
【特許文献2】特開2003−042766号公報
【特許文献3】特開平10−132568号公報
【特許文献4】特開昭61−147104号公報
【特許文献5】特開昭62−255814号公報
【特許文献6】特開平8−105745号公報
【特許文献7】特開2003−035010号公報
【発明の開示】
【0012】
本発明の方位角計測装置は、地磁気を検出する2軸または3軸の地磁気検出手段と、前記2軸の検出方向が所定の平面上にあるよう保ちながら前記地磁気検出手段の向きが変化した時の2軸の出力データ、または前記地磁気検出手段の向きが3次元空間において変化した時の3軸の出力データを複数回取得する出力データ取得手段と、所定の測定のパラメータに基づいて、前記2軸または3軸の出力データを選択し、前記選択された2軸の出力データを成分とする2次元座標上、または前記選択された3軸の出力データを成分とする3次元座標上に基準点を定め、前記選択された2軸または3軸の出力データ群から基準点までの距離のバラツキが最小になるように、基準点の座標を統計的手法によって推定する基準点推定手段と、前記基準点推定手段によって推定された複数の基準点を基に前記地磁気検出手段の出力データに対するオフセット情報を算出するオフセット情報算出手段と、前記出力データ及び前記オフセット情報から方位角を算出する方位角算出手段と、前記2軸もしくは3軸の出力データ群および前記複数の基準点の少なくとも一方に基づき、所定のオフセット情報の信頼性情報を算出するための算出パラメータに従って、前記オフセット情報の信頼性情報を算出する信頼性情報算出手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
そして、前記オフセット情報算出手段は、前記信頼性情報を判定閾値と比較して、方位角の算出に用いるオフセット情報として採用するか否かを判断することが好ましい。
【0014】
さらに、前記オフセット情報があらかじめ定められた回数採用されるのに伴って、前記判定閾値をより厳しく変化させることが、より好ましい。
【0015】
また、本発明の方位角計測装置は、方位角計測装置内外の磁気環境が変化したことを検出する検出部と、を更に備え、前記検出部が、前記磁気環境が変化したことを検出した場合は、前記判定閾値を緩めることが好ましい。
【0016】
前記検出部は、前記出力データ取得手段によって取得されたデータが所定の範囲を超えた場合に、磁気環境が変化したことを検出することができる。
【0017】
本発明の方位角計測装置は、さらに、方位角計測装置の環境の変化もしくは操作者の操作を検出する事象検出手段を備え、その事象が発生した場合には、前記判定閾値を変化させることが好ましい。前記環境の変化は、例えば、温度変化である。
【0018】
本発明の方位角計測装置は、前記判定閾値を変化させるとともに、前記測定のパラメータおよび前記算出パラメータの少なくとも何れか一方を変化させることが好ましい。
【0019】
ここで、前記オフセット情報の信頼性情報は、複数の基準点のバラツキから算出される情報、前記2軸または3軸の出力データ群を構成するデータのバラツキから算出される情報、前記出力データ取得手段によって得られた2軸または3軸の出力データから基準点までの距離を含む。
【0020】
さらに、前記測定のパラメータは、測定間隔や、前記基準点推定手段が基準点の座標を推定するためのデータの個数を含む。
【0021】
また、前記測定のパラメータは、データの変化量を含み、前記変化量は、前記出力データ取得手段が取得した出力データと、前記基準点推定手段が選択したデータとの差分であり、前記基準点推定手段は、前記変化量が予め定められた値以上であるデータを選択することができる。
【0022】
また、前記算出パラメータは、前記基準点のバラツキを算出するための基準点の個数を含む。
【0023】
本発明の方位角計測装置は、前記判定閾値、前記測定のパラメータ、および前記算出パラメータのうち少なくとも何れか一つを外部に出力する出力手段を備えることができる。
【0024】
さらに、本発明の方位角計測装置は、前記地磁気検出手段は3軸の出力データを取得するものであり、さらに、方位角計測装置の姿勢角に関する情報取得手段と、前記出力データ、前記オフセット情報および姿勢角に関する情報とから地磁気伏角情報を算出する伏角情報算出手段と、前記方位角算出手段は、前記出力データ、前記オフセット情報および前記姿勢角に関する情報とから装置の方位角を算出するものであり、前記伏角情報の値から、算出される方位角の信頼度の指標を算出することが好ましい。
【0025】
本発明の方位角計測方法は、地磁気を検出する2軸または3軸の地磁気検出手段を用いて、前記2軸の検出方向が所定の平面上にあるよう保ちながら前記地磁気検出手段の向きが変化した時の2軸の出力データ、または前記地磁気検出手段の向きが3次元空間において変化した時の3軸の出力データを複数回取得するステップ、所定の測定のパラメータに基づいて、前記2軸または3軸の出力データを選択するステップ、前記選択された2軸の出力データを成分とする2次元座標上、または前記選択された3軸の出力データを成分とする3次元座標上に基準点を定め、前記選択された2軸または3軸の出力データ群から基準点までの距離のバラツキが最小になるように、基準点の座標を統計的手法によって推定するステップ、前記推定された複数の基準点を基に前記地磁気検出手段の出力データに対するオフセット情報を算出するステップ、前記出力データ及び前記オフセット情報から方位角を算出するステップ、前記2軸もしくは3軸の出力データ群および前記複数の基準点の少なくとも一方に基づき、所定のオフセット情報の信頼性情報を算出するための算出パラメータに従って、前記オフセット情報の信頼性情報を算出するステップ、を含むことを特徴とする。
【0026】
そして、前記オフセット情報を算出するステップは、前記信頼性情報を判定閾値と比較して、方位角の算出に用いるオフセット情報として採用するか否かを判断する。
【0027】
前記オフセット情報があらかじめ定められた回数採用されるのに伴って、前記判定閾値をより厳しく変化させることがより好ましい。
【0028】
また、本発明の方位角計測方法は、方位角計測装置の内外の磁気環境が変化したことを検出する検出ステップと、前記磁気環境が変化したことを検出した場合は、前記判定閾値を緩めるステップ、とを更に備えることが好ましい。
【0029】
さらに、本発明の方位角計測方法は、方位角計測装置の環境の変化もしくは操作者の操作を検出するステップと、その事象が発生した場合には、前記判定閾値を変化させるステップをさらに含むことが好ましい。
【0030】
このとき、前記判定閾値を変化させるとともに、前記測定のパラメータおよび前記算出パラメータの少なくとも何れか一方を変化させることが好ましい。
【0031】
さらに、本発明の方位角計測方法は、前記判定閾値、前記測定のパラメータ、および前記算出パラメータのうち少なくとも何れか一つを外部に出力するステップをさらに備えることが好ましい。
【0032】
さらに、本発明の方位角計測方法は、前記地磁気検出手段は3軸の出力データを取得するものであり、さらに、方位角計測装置の姿勢角に関する情報を取得するステップと、前記出力データ、前記オフセット情報および姿勢角に関する情報とから地磁気伏角情報を算出するステップと、を有し、前記方位角を算出するステップは、前記出力データ、前記オフセット情報および前記姿勢角に関する情報とから装置の方位角を算出するものであり、前記伏角情報の値から、算出される方位角の信頼度の指標を算出するステップを有することが好ましい。
【0033】
本発明の方位角計測装置または方位角計測方法によれば、信頼性情報算出手段で算出された信頼性情報に基づき、オフセット情報を算出する際の判定閾値を漸次厳しくしていくことが可能であり、システム立ち上げ時など、システムの速やかな応答が求められるときは、最初前述の判定値を大きめ(緩め)に設定し、漸次判定値を小さく(きつく)していくことによって、計算精度を高めていくことが出来る。同時にオフセットを計算するための磁気データ群を構成するデータの個数やデータ変化量の最小値を変化させることによっても、システムの応答性や測定精度などを状況にあわせて変化させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明に係る3軸の磁気センサを有する方位角計測装置の一実施例を説明するための構成図である。
【図2】図2は、本発明に係る3軸の磁気センサを有する方位角計測装置の一実施例を説明するためのブロック図である。
【図3】図3は、磁気測定データ群を構成するデータのバラツキと基準点のバラツキを示す図である。
【図4】図4は、着磁状態の変化と地磁気の大きさ及び地磁気の大きさの分類を示す図ある。
【図5】図5は、オフセット計算ポイント数と計算精度を示す図である。
【図6】図6は、オフセット更新テーブルを示す図である。
【図7】図7は、オフセット更新を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図8】図8は、方位角計測装置が水平に置かれたときの測定出力データ分布を示す図である。
【図9】図9は、本発明に係る3軸の磁気センサを有する方位角計測装置の他の実施例を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【0036】
図1は、本発明に係る3軸の磁気センサを有する方位角計測装置の一実施例を説明するための構成図である。図中符号1は方位角計測装置、2はX軸磁気センサ、3はY軸磁気センサ、4はZ軸磁気センサを示している。図1に示すように、この方位角計測装置1には、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の地磁気を測定するために、それぞれの方向に感受面を向けたX軸磁気センサ2とY軸磁気センサ3とZ軸磁気センサ4とが互いに直交するように配置されている。X軸磁気センサ2からはその出力Mx、Y軸磁気センサ3からはその出力My、Z軸磁気センサ4からはその出力Mzが得られるように構成されている。なお、磁気センサとしては、ホール素子など磁気を測定できるものなら何でも良い。
【0037】
図2は、本発明に係る3軸の磁気センサを有する方位角計測装置の一実施例を説明するためのブロック図である。図中符号10は3軸磁気センサ(地磁気検出手段)、11はチョッパ部、12は駆動電源部、13は増幅部、14はA/D変換部、15はデータ取得部、16は感度・オフセット補正計算部、17は特定事象検知部、18は閾値・パラメータ設定部、19は信頼性情報計算部、20は方位角計算部を示している。なお、図1と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付してある。
【0038】
3軸磁気センサ10であるX軸磁気センサ2とY軸磁気センサ3とZ軸磁気センサ4により測定された地磁気出力は、駆動電源部12で駆動されるチョッパ部11を介し、増幅部13で増幅されてA/D変換部14に入力される。ここで、X軸磁気センサ2とY軸磁気センサ3とZ軸磁気センサ4は、地磁気を検出するためのもので、例えば、InSbやInAs、GaAsなどの化合物半導体系のホール素子であることが好ましい。
【0039】
チョッパ部11は、X軸磁気センサ2とY軸磁気センサ3とZ軸磁気センサ4を駆動する端子を切り替えるためのもので、駆動電源部12から出力された駆動電圧をX軸磁気センサ2とY軸磁気センサ3とZ軸磁気センサ4に印加する。このチョッパ部11は、例えば、90°チョッパ駆動や360°チョッパ駆動などを用いることができる。360°チョッパ駆動では、X軸磁気センサ2とY軸磁気センサ3とZ軸磁気センサ4の出力に含まれるホール素子自身のオフセット項だけでなく、後段のアンプ自身による電気的なオフセット項もキャンセルすることができる。
【0040】
X軸磁気センサ2とY軸磁気センサ3とZ軸磁気センサ4から出力された信号は、増幅器13で増幅され、ここで増幅された出力増幅値がA/D変換部14でアナログ信号からデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換された後、変換されたデータを取得・蓄積し、必要に応じて出力するデータ取得部15を介して感度・オフセット補正計算部16に入力される。この感度・オフセット補正計算部16は、データ取得部15からの磁気測定データ群に基づいて、X、Y、Z軸磁気センサ2、3、4のオフセット及び感度補正係数を算出し、算出されたオフセット及び感度補正係数に基づいて、X、Y、Z軸磁気測定データを補正する。この出力データは、方位角計算部16に入力され、その方位角情報が出力される。方位角演算の方法は、出願人の先願であるPCT出願公開WO2004/003476号に示されている方法を用いることができる。
【0041】
上述した感度・オフセット補正計算部16は、データ取得部15からの取得データに基づいて、データ測定条件に従って取得データを選択するとともに、選択されたデータ群に基づいて磁気センサの感度補正係数、基準点、磁気データが分布する球の半径、オフセット、地磁気の大きさ(取得データの基準点からの距離)を算出する。また、算出した感度補正係数及びオフセットに基づいて磁気測定データを補正する。
【0042】
一方、特定事象部17からの信号は、閾値・パラメータ設定部18に入力される。この閾値・パラメータ設定部18は、第1、第2、第3の信頼性情報のいずれか、またはその組み合わせから判定閾値、データ測定パラメータ、オフセット算出パラメータを設定するものである。この閾値・パラメータ設定部18の出力は、感度・オフセット補正計算部16及び信頼性情報計算部19に入力される。この信頼性情報計算部19は、直近の所定数の取得データ、及び/又は直近の所定数のオフセットから第1、第2の信頼性情報を計算するとともに、データ測定パラメータ、オフセット測定算出パラメータから第3の信頼性情報を算出するものである。この信頼性情報計算部19から信頼性情報が出力される。
【0043】
この信頼性情報は、さらに感度・オフセット補正計算部16へ出力される。感度・オフセット補正計算部16は、閾値・パラメータ設定部18からの入力される閾値と信頼性情報計算部19からの信頼性情報とを比較して、算出されたオフセットを採用するか否かを判断し、採用したオフセットを方位角計算部20に出力する。
【0044】
地磁気(定常磁界)以外の磁気成分は、方位角計測装置が取得したN(≧4)個以上の磁気データ群を球面に当てはめ、球の中心座標(オフセット、基準点)を求めることによって得られる(PCT出願公開WO2004/003476号参照)。同時に求められる球の半径は、地磁気の大きさを表している。ここで、磁気データとは、磁気センサが一回の測定で取得した2軸または3軸の測定値であり、磁気データ群とは磁気センサが複数回の測定で取得した2軸または3軸の測定値の集合である。
【0045】
図3は、磁気測定データ群を構成するデータのバラツキと基準点のバラツキを示す図である。
基準点は、測定磁気データ群を構成するデータの分布により大きな誤差を含む場合がある。電源立ち上げ時や、周囲の着磁状態が大きく変わったときのように、測定データ群が無いあるいは今までのデータ群が無効である時に、オフセット更新の判定値を小さく(厳しく)しすぎると、正しい値が算出されるまでに時間がかかってしまう場合があるので、最初は判定値を大きく(緩く)設定するべきである。磁気測定データ群を構成するデータが球面上を適当に分布し、算出される基準点の変動幅が小さくなったことを確認後、漸次判定値を小さく(厳しく)すれば、算出されるオフセットの精度を高めていくことが出来る。バラツキは、データ分布を表現できる指標を用いればよく、例えば、磁気データ群の各軸の最大値と最小値の差、あるいは、各軸の測定値の標準偏差、等を用いることができる。
【0046】
図4は、着磁状態の変化と地磁気の大きさ及び地磁気の大きさの分類を示す図である。
周辺の着磁状態が大きく変化した場合、それまで使用していた中心座標を元に地磁気ベクトルの大きさを計算するとその値は球面の半径と大きく異なる値となる。この場合は、取得された磁気データ群を破棄し、新たに取得し直したデータ群で中心座標と半径を再計算する必要がある(あるいは、それまでに取得してあった磁気データ群を用いて中心座標を計算していくことによって、中心座標を滑らかに更新して行っても良い)。
【0047】
着磁状態の変化を知る手段として、上述したように、基準点から計算される磁気データの距離と、採用されている球の半径を比較しても良いし、基準点から計算される磁気データの距離と、予想される地磁気の大きさ(日本では45から50マイクロテスラ(μT))を比較してもよい。
【0048】
着磁状態の変化が起こったときは、オフセットが大幅に変化し採用されているオフセットが利用できないことが多い。この場合、着磁状態の変化が起こる直前の高精度のオフセットを求めるための判定値を緩め、より速くオフセットを求められる判定値にすれば、オフセットの変化に素早く対応できる。判定値を初期値に戻すことが効果的な場合も多い。
【0049】
着磁状態が変化したことを知る手段として、地磁気の大きさを計算する(地磁気の絶対値、半径との比)以外に、俯角(伏角)(図8)、A/D値の範囲、基準点のバラツキの範囲、直前に計算された基準点との差分、着磁状態の変化を引き起こす既知のイベント等でも判断できる。ただし、基準点のバラツキの範囲や基準点の差分は、着磁状態が変わる前後の磁気データを含むデータ群から推定される基準点を用いて計算されるため、検出感度が低くなってしまう。着磁状態の変化を引き起こす既知の事象が存在するときは事象を検知する手段を設け、事象検知信号によって、着磁状態の変化を知ることができる。
【0050】
例えば、折りたたみ式の携帯電話に方位角計測装置が内蔵されている場合、携帯電話を折りたたむことによって着磁状態が変化する。また、最近の携帯電話では画像データや音楽データを蓄積するための外部メモリカードを用いることができるものもあり、メモリカードの出し入れによっても着磁状態が変化する場合がある。使用者の判断で着磁状態の変化を方位角計測装置に知らせるようなボタンを設けても良い。また、磁気検出器がホール素子のような温度特性を持つ場合、温度の変化を検出してある一定値以上の場合に、オフセットを再計算してもよい。
【0051】
図5は、オフセット計算ポイント数と計算精度を示す図である。
判定値を変化させると同時に、基準点を計算する磁気データ群を構成するデータの個数を変化させると、より応答速度と計算精度を制御できるようになる。電源立ち上げ時は、磁気データ群を構成するデータの個数を小さくし、計算精度は粗くても応答性を良くしておいて、漸次判定値を小さくするとともに磁気データ群を構成するデータの個数を大きくしていくことによって計算精度を高めていく。
【0052】
このように、判定値の更新とともに、データ測定条件やオフセット算出条件であるパラメータも変化させることによって、方位角計測装置を環境の変化に合わせて制御出来るようになる。パラメータとしては、基準点を計算する磁気データ群を構成するデータの個数の他に、連続する磁気データの最小変化量、磁気データ測定時間間隔、基準点のバラツキを算出するための基準点の個数、磁気データ判定時間(所定数A、所定数B)、磁気センサ増幅器の増幅率などがある。
【0053】
方位角計測装置の位置が、2次元または3次元空間上であまり変化をしなかった場合、磁気センサから出力される磁気測定データもあまり変化がない。変化の少ない磁気データを集めたデータ群から基準点を算出しても、データのゆらぎやノイズの影響が大きくなり、基準点が正確でない場合がある。従って、磁気センサから出力されるデータに対して、先に選択し、採用してあるデータからの変化量を評価し、所定の値以上変化しているデータのみを採用してデータ群として構成することが、オフセットの精度を高めるためには重要である。しかし、変化量の閾値を高くしてしまうと、方位角計測装置が大きく動いたときにデータが採用されるために、オフセットが算出されるまでに時間がかかってしまう。すなわち、オフセットの信頼度は低くてもよいが、迅速にオフセットを求めたいときにはデータ変化量の小さいデータも採用することとし、オフセットの算出の時間がかかってもよいが、信頼度を高くしたいときはデータ変化量の大きいデータのみを採用するというように設定する。
【0054】
磁気データの測定時間間隔は、方位角計測装置の電力消費にかかわるので出来るだけ長く設定するが、迅速にオフセットを算出したいときには測定時間間隔を短くし、短時間の間に必要なデータを取得することが出来る。
【0055】
オフセットの信頼度を判定するために、推定された複数の基準点のバラツキを評価する。評価する基準点の数は出来るだけ多いことが望まれるが、電源立ち上げ時や、周囲の着磁状態が大きく変わったときのように、測定データ群が無いあるいは今までのデータ群が無効であるときなどに、迅速にオフセットを算出するためには、評価する基準点の数を少なくすることが必要である。
【0056】
突発的に着磁状態が変化しすぐ元に戻る場合(例えば、方位角計測装置に誤って磁石を近づける等)、中心座標をすぐに破棄するのは早計である。ある一定時間以内で地磁気等の大きさが許容値に戻れば、オフセットを破棄する必要はない(所定数A)。
【0057】
ある判定値において一定回数以上オフセットが算出されるのを待ってから、判定値を厳しくする方法がある(所定数B)。判定値が緩い場合のオフセットの値は信頼度が低いので、複数回のオフセットを平均するなどの方法により、間違ったオフセットを採用するのを防ぐことが出来る。
【0058】
図7は、オフセット更新を説明するためのフローチャートを示す図である。
なお、図中のパラメータJMは地磁気判定値、JOはオフセット判定値、k,lは判定値未変更回数を示している。
【0059】
以下、図7に示した更新フローチャートについて説明する。
まず、システムを立ち上げ(S1)、パラメータの初期値を設定する(S2)。次に、磁気データを取得し(S3)、地磁気が正常であるか、異常であるかを判断する(第2の信頼性情報)(S4)。異常である場合には、所定数A(k)を判断し(S5)、一定期間以上であればパラメータを緩める(S6)。一定期間以下であれば、後述する方位角計算に移る(S13)。
【0060】
地磁気が正常である場合には、基準点計算を行い(S7)、基準点にバラツキがあるかどうか判断する(第1の信頼性情報)(S8)。このバラツキが異常範囲であれば、基準点を不採用とし(S9)、正常範囲であれば、基準点をオフセットとして採用する(S10)。次に、所定数B(l)を判断し(S11)、一定期間以上であればパラメータを厳しくして(第1から第3の信頼性情報)(S12)、方位角計算を行い(S13)、一定期間以下であれば、そのまま方位角計算を行い(S13)、上述したステップ3に戻る。
【0061】
地磁気の大きさは、オフセットの信頼度の指標として用いることができる。オフセットを算出する際に、磁気データが分布する球の半径が算出されるが、その球の半径が通常想定される地磁気の大きさ(日本では45から50マイクロテスラ)から設定される判定値の範囲外であった場合は、オフセットの値の信頼度は低いとして、オフセットを不採用とすることができる。
【0062】
判定値とデータ測定条件やオフセット算出条件であるパラメータは、図6に示すように、予めテーブルとして用意しておいてもよいし、地磁気の大きさや基準点のバラツキの値から、数式で算出されるようにしても良い。また、テーブルが用意されている場合は、更新順序は一つずつ状態を更新しても良いし、いくつかの状態を飛ばした状態に更新しても良い。
【0063】
例えば、判定値を狭めていく際は、判定値とパラメータを1ステップずつ狭めていくことが妥当であり、また、算出された地磁気の大きさが異常に大きいなど信頼度が低いと判断される場合は、判定値とパラメータを一度に初期値まで緩め、再びオフセットの算出を行うことが妥当である。時と場合によって判定値とパラメータを複数ステップ分狭めていくこともよい。
【0064】
方位角計測装置が、その時々に使用している判定値(第1の信頼性、第2の信頼性)と第3の信頼性情報たる測定パラメータ(データ測定条件、オフセット情報算出条件)を出力できれば、方位角計測装置の使用者あるいは使用装置が出力される方位角の精度及び信頼度を知ることができる。例えば、図6のテーブルに示すように、信頼性を表現する4つの状態が存在する場合、その状態を数字や色で方位角計測装置の表示部に表示することによって使用者が方位角計測装置の示す方位角の精度及び信頼度を容易に知ることができる。
【0065】
あるいは、方位角計測装置の出力を使用している他のシステムが方位角の精度や信頼度を知ることができ、上位アプリケーションにおいても方位角の精度や信頼度に応じてアプリケーションを操作できる。
【0066】
具体的には、方位角情報に応じて地図表示を回転させるアプリケーションにおいて、算出された方位角の信頼度が低い場合は、方位角の表示を更新しないとか、地図の回転を行わないなどの対応をとることで、間違った方位情報を使用者に与える確率を下げることができ、使用者の混乱を防ぐことができる。
【0067】
地磁気の大きさ以外に、例えば、伏角をモニタすることによって、図8に示すように、周辺の着磁状態の変化を知ることができる。さらに、伏角をモニタする機能があれば、方位角計測装置が使用者に規定の姿勢(例えば、水平)を要求したときに、得られた出力データから計算される伏角が正常範囲内(日本では概ね45°)か否かで、方位角計測装置が規定の姿勢であるか否かを判断することができる。
【0068】
方位角を計測する場合に、方位角計測装置の傾斜角を計測する機能がなく、方位角計測装置を水平方向に保持しないと測定精度が悪化する方位角計測装置の場合、上述した手段により方位角計測装置が水平であるかどうかを判別してデータの信頼度を判断する。または、使用者に水平に方位角計測装置を置くように指示するなどの使い方ができる。
【0069】
ここで、第1の信頼性情報とは、基準点のバラツキの範囲、測定データ群を構成するデータのバラツキ(2次元または3次元空間上のバラツキ)の範囲、出力データから基準点までの距離である。また、所定数Aは、基準点のバラツキ、測定データ群を構成するデータのバラツキを複数回または一定時間計測し、その傾向を持って判断するときの回数または時間長である。また、第2の信頼性情報とは、採用されている基準点と最新の測定データから算出される地磁気ベクトルの大きさ、伏角、A/D値である。また、所定数Bは、地磁気ベクトルの大きさ、伏角、A/D値、直近の基準点のバラツキを複数回または一定時間計測し、その傾向を持って判断するときの回数または時間長である。さらに、データ測定条件、オフセット情報算出条件(すなわちパラメータ)とは、基準点を計算するための磁気データ群を構成するデータの個数、連続する出力データの最小変化量、出力データ測定時間間隔、基準点のバラツキを算出するための基準点の個数、上述の所定数A、所定数Bである。
【0070】
図9は、本発明に係る3軸の磁気センサを有する方位角計測装置の他の実施例を説明するためのブロック図で、図中符号21は磁気環境変化検出部で、その他、図2と同じ機能を有する構成要素については同一の符号を付してある。
【0071】
磁気環境変化検出部21は、データ取得部15に接続されているとともに、感度・オフセット補正計算部16と閾値・パラメータ設定部18と信頼性情報計算部19とにそれぞれ接続されていて、データ取得部15によって取得されたデータが所定の範囲を超えた場合に着磁状態が変化したことを検出するものである。閾値・パラメータ設定部18は、磁気環境変化検出部21が磁気環境が変化したことを検出した場合には、閾値・パラメータ設定部18の判定閾値を緩めるように構成されている。
【0072】
このように構成することで、磁気環境変化検出部により、データ取得部によって取得されたデータが所定の範囲を超えた場合に、着磁状態が変化したことを検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、方位角計測装置及び方位角計測方法に関し、より詳細には、方位角の測定のために取得した磁気データ群から、状況に応じて迅速にまたは高精度のオフセットを算出するための方位角計測装置及び方位角計測方法に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地磁気を検出する2軸または3軸の地磁気検出手段と、
前記2軸の検出方向が所定の平面上にあるよう保ちながら前記地磁気検出手段の向きが変化した時の2軸の出力データ、または前記地磁気検出手段の向きが3次元空間において変化した時の3軸の出力データを所定回数以上繰り返して取得する出力データ取得手段と、
前記2軸の出力データを成分とする2次元座標上、または前記3軸の出力データを成分とする3次元座標上に基準点を定め、前記出力データ取得手段によって得られた2軸または3軸の出力データ群から基準点までの距離のバラツキが最小になるように、基準点の座標を統計的手法によって推定する基準点推定手段と、
該基準点推定手段による前記基準点の座標に基づいて、前記地磁気検出手段の出力データに対するオフセット情報を算出するオフセット情報算出手段と、
該オフセット情報算出手段により算出されたオフセット情報の信頼性に関する第1の信頼性情報算出手段とを備え、
該第1の信頼性情報算出手段で算出された直近の第1の所定数の第1の信頼性情報に基づき、前記オフセット情報を算出する際の判定閾値を漸次厳しくしていくことを特徴とする方位角計測装置。
【請求項2】
最新に取得された出力データからオフセット情報の信頼性に関する第2の信頼性情報算出手段を備え、該第2の信頼性情報算出手段で算出された直近の第2の所定数の第1または第2の信頼性情報に基づき、信頼性が悪化した場合には前記オフセット情報を算出する際の判定閾値を緩めることを特徴とする請求項1に記載の方位角計測装置。
【請求項3】
前記オフセット情報を算出する際の判定閾値を変化させるとともに、データ測定条件および/またはオフセット情報算出条件も変化させることを特徴とする請求項1記載の方位角計測装置。
【請求項4】
前記第1の信頼性情報が、直近の基準点のバラツキから算出されることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の方位角計測装置。
【請求項5】
前記第1の信頼性情報が、直近の前記2軸または3軸の出力データ群のデータのバラツキから算出されることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の方位角計測装置。
【請求項6】
前記第2の信頼性情報が、前記出力データ取得手段によって得られた2軸または3軸の出力データから基準点までの距離であることを特徴とする請求項2又は3に記載の方位角計測装置。
【請求項7】
前記第2の信頼性情報が、前記出力データ取得手段によって得られた3軸の出力データから算出される伏角情報から算出されることを特徴とする請求項2又は3に記載の方位角計測装置。
【請求項8】
前記データ測定条件値および/または前記オフセット情報算出条件に測定時間間隔を含むことを特徴とする請求項3に記載の方位角計測装置。
【請求項9】
前記データ測定条件値および/または前記オフセット情報算出条件にオフセット情報算出のためのデータ個数を含むことを特徴とする請求項3に記載の方位角計測装置。
【請求項10】
前記データ測定条件値および/または前記オフセット情報算出条件に前記第1及び/又は第2の所定数を含むことを特徴とする請求項3に記載の方位角計測装置。
【請求項11】
前記第1および第2の信頼性情報を外部に出力する第1及び第2の外部出力手段を備えたことを特徴とする請求項1,2又は3に記載の方位角計測装置。
【請求項12】
前記データ測定条件値および/または前記オフセット情報算出条件とから、第3の信頼性情報を算出する第3の信頼性情報算出手段を備え、該第3の信頼性情報算出手段からの前記第3の信頼性情報を外部に出力する第3の外部出力手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載の方位角計測装置。
【請求項13】
特定の事象を検出する手段を備え、その事象が発生した場合には、オフセット情報を算出する際の判定閾値を変化させることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の方位角計測装置。
【請求項14】
前記特定の事象が操作者による特定の操作であることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の方位角計測装置。
【請求項15】
地磁気を検出する3軸の地磁気検出手段と、
該地磁気検出手段の向きが3次元空間において変化した時の3軸の出力データを所定回数以上繰り返して取得する出力データ取得手段と、
前記前記3軸の出力データを成分とする3次元座標上に基準点を定め、前記出力データ取得手段によって得られた3軸の出力データ群から基準点の座標を推定する基準点推定手段と、
該基準点推定手段による前記基準点の座標に基づいて、前記地磁気検出手段の出力データに対するオフセット情報を算出するオフセット情報算出手段と、
前記出力データ取得手段により最新に取得された出力データからオフセット情報の信頼性に関する第2の信頼性情報算出手段とを備え、
該第2の信頼性情報算出手段で算出された第2の信頼性情報が、方位角計測装置が水平に保持されている前提で期待される地磁気伏角情報と、前記出力データ取得手段により最新に取得された出力データから算出される伏角情報とから算出されることを特徴とする方位角計測装置。
【請求項16】
地磁気を検出する2軸または3軸の地磁気検出手段と、
前記2軸の検出方向が所定の平面上にあるよう保ちながら前記地磁気検出手段の向きが変化した時の2軸の出力データ、または前記地磁気検出手段の向きが3次元空間において変化した時の3軸の出力データを複数回取得する出力データ取得手段と、
所定の測定のパラメータに基づいて、前記2軸または3軸の出力データを選択し、前記選択された2軸の出力データを成分とする2次元座標上、または前記選択された3軸の出力データを成分とする3次元座標上に基準点を定め、前記選択された2軸または3軸の出力データ群から基準点までの距離のバラツキが最小になるように、基準点の座標を統計的手法によって推定する基準点推定手段と、
前記基準点推定手段によって推定された複数の基準点を基に前記地磁気検出手段の出力データに対するオフセット情報を算出するオフセット情報算出手段と、
前記出力データ及び前記オフセット情報から方位角を算出する方位角算出手段と、
前記2軸もしくは3軸の出力データ群および前記複数の基準点の少なくとも一方に基づき、所定のオフセット情報の信頼性情報を算出するための算出パラメータに従って、前記オフセット情報の信頼性情報を算出する信頼性情報算出手段と
を備えることを特徴とする方位角計測装置。
【請求項17】
前記オフセット情報算出手段は、前記信頼性情報を判定閾値と比較して、前記方位角算出手段が方位角の算出に用いるオフセット情報として採用するか否かを判断することを特徴とする請求項16に記載の方位角計測装置。
【請求項18】
前記オフセット情報があらかじめ定められた回数採用されるのに伴って、前記判定閾値をより厳しく変化させることを特徴とする請求項17に記載の方位角計測装置。
【請求項19】
方位角計測装置内外の磁気環境と、該磁気環境が変化したことを検出する検出部とを更に備え、
前記検出部が、前記磁気環境が変化したことを検出した場合は、前記判定閾値を緩めることを特徴とする請求項17に記載の方位角計測装置。
【請求項20】
前記検出部は、前記出力データ取得手段によって取得されたデータが所定の範囲を超えた場合に磁気環境が変化したことを検出することを特徴とする請求項19に記載の方位角計測装置。
【請求項21】
方位角計測装置の環境の変化もしくは操作者の操作を検出する事象検出手段を備え、その事象が発生した場合には、前記判定閾値を変化させることを特徴とする請求項17に記載の方位角計測装置。
【請求項22】
前記環境の変化は、温度変化であることを特徴とする請求項21に記載の方位角計測装置。
【請求項23】
前記判定閾値を変化させるとともに、前記測定のパラメータおよび前記算出パラメータの少なくとも何れか一方を変化させることを特徴とする請求項18乃至22のいずれかに記載の方位角計測装置。
【請求項24】
前記オフセット情報の信頼性情報は、複数の基準点のバラツキから算出される情報を含む請求項16乃至23のいずれかに記載の方位角計測装置。
【請求項25】
前記オフセット情報の信頼性情報は、前記2軸または3軸の出力データ群を構成するデータのバラツキから算出される情報を含むことを特徴とする請求項16乃至23のいずれかに記載の方位角計測装置。
【請求項26】
前記オフセット情報の信頼性情報は、前記出力データ取得手段によって得られた2軸または3軸の出力データから基準点までの距離を含むことを特徴とする請求項16乃至23のいずれかに記載の方位角計測装置。
【請求項27】
前記測定のパラメータは、測定間隔を含むことを特徴とする請求項16乃至23のいずれかに記載の方位角計測装置。
【請求項28】
前記測定のパラメータは、データの変化量を含み、前記変化量は、前記出力データ取得手段が取得した出力データと、前記基準点推定手段が選択したデータとの差分であり、前記基準点推定手段は、前記変化量が予め定められた値以上であるデータを選択することを特徴とする請求項16乃至23のいずれかに記載の方位角計測装置。
【請求項29】
前記測定のパラメータは、前記基準点推定手段が基準点の座標を推定するためのデータの個数を含むことを特徴とする請求項16乃至23のいずれかに記載の方位角計測装置。
【請求項30】
前記算出パラメータは、前記基準点のバラツキを算出するための基準点の個数を含むことを特徴とする請求項16乃至23のいずれかに記載の方位角計測装置。
【請求項31】
前記判定閾値、前記測定のパラメータ、および前記算出パラメータのうち少なくとも何れか一つを外部に出力する出力手段を備えたことを特徴とする請求項16乃至30のいずれかに記載の方位角計測装置。
【請求項32】
前記地磁気検出手段は3軸の出力データを取得するものであり、
さらに、方位角計測装置の姿勢角に関する情報取得手段と、
前記出力データ、前記オフセット情報および姿勢角に関する情報とから地磁気伏角情報を算出する伏角情報算出手段と、
前記方位角算出手段は、前記出力データ、前記オフセット情報および前記姿勢角に関する情報とから装置の方位角を算出するものであり、
前記伏角情報の値から、算出される方位角の信頼度の指標が算出されることを特徴とする請求項16乃至31のいずれかに記載の方位角計測装置。
【請求項33】
地磁気を検出する2軸または3軸の地磁気検出手段を用いて、前記2軸の検出方向が所定の平面上にあるよう保ちながら前記地磁気検出手段の向きが変化した時の2軸の出力データまたは前記地磁気検出手段の向きが3次元空間において変化した時の3軸の出力データを複数回取得するステップと、
所定の測定のパラメータに基づいて、前記2軸または3軸の出力データを選択するステップと、
前記選択された2軸の出力データを成分とする2次元座標上、または前記選択された3軸の出力データを成分とする3次元座標上に基準点を定め、前記選択された2軸または3軸の出力データ群から基準点までの距離のバラツキが最小になるように、基準点の座標を統計的手法によって推定するステップと、
前記推定された複数の基準点を基に前記地磁気検出手段の出力データに対するオフセット情報を算出するステップと、
前記出力データ及び前記オフセット情報から方位角を算出するステップと、
前記2軸もしくは3軸の出力データ群および前記複数の基準点の少なくとも一方に基づき、所定のオフセット情報の信頼性情報を算出するための算出パラメータに従って、前記オフセット情報の信頼性情報を算出するステップと
を含むことを特徴とする方位角計測方法。
【請求項34】
前記オフセット情報を算出するステップは、前記信頼性情報を判定閾値と比較して、方位角の算出に用いるオフセット情報として採用するか否かを判断することを特徴とする請求項33に記載の方位角計測方法。
【請求項35】
前記オフセット情報があらかじめ定められた回数採用されるのに伴って、前記判定閾値をより厳しく変化させることを特徴とする請求項34に記載の方位角計測方法。
【請求項36】
方位角計測装置の内外の磁気環境が変化したことを検出する検出ステップと、
前記磁気環境が変化したことを検出した場合は、前記判定閾値を緩めるステップと
を更に備えることを特徴とする請求項34に記載の方位角計測方法。
【請求項37】
前記検出ステップは、取得されたデータが所定の範囲を超えた場合に磁気環境が変化したことを検出することを特徴とする請求項36に記載の方位角計測方法。
【請求項38】
方位角計測装置の環境の変化もしくは操作者の操作を検出するステップと、その事象が発生した場合には、前記判定閾値を変化させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項34に記載の方位角計測方法。
【請求項39】
前記環境の変化は、温度変化であることを特徴とする請求項38に記載の方位角計測方法。
【請求項40】
前記判定閾値を変化させるとともに、前記測定のパラメータおよび前記算出パラメータの少なくとも何れか一方を変化させることを特徴とする請求項35乃至39のいずれかに記載の方位角計測方法。
【請求項41】
前記オフセット情報の信頼性情報は、複数の基準点のバラツキから算出される情報を含むことを特徴とする請求項33乃至40のいずれかに記載の方位角計測方法。
【請求項42】
前記オフセット情報の信頼性情報は、前記2軸または3軸の出力データ群を構成するデータのバラツキから算出される情報を含むことを特徴とする請求項33乃至40のいずれかに記載の方位角計測方法。
【請求項43】
前記オフセット情報の信頼性情報は、前記出力データ取得手段によって得られた2軸または3軸の出力データから基準点までの距離を含むことを特徴とする請求項33乃至40のいずれかに記載の方位角計測方法。
【請求項44】
前記測定のパラメータは、測定間隔を含むことを特徴とする請求項33乃至40のいずれかに記載の方位角計測方法。
【請求項45】
前記測定のパラメータは、地磁気検出手段からの出力データと選択ステップで選択されたデータの差分からなるデータの変化量を含み、前記変化量が予め定められた値以上であるデータを選択することを特徴とする請求項33乃至40のいずれかに記載の方位角計測方法。
【請求項46】
前記測定のパラメータは、基準点の座標を推定するためのデータの個数を含むことを特徴とする請求項33乃至40のいずれかに記載の方位角計測方法。
【請求項47】
前記算出パラメータは、前記基準点のバラツキを算出するための基準点の個数を含むことを特徴とする請求項33乃至40のいずれかに記載の方位角計測方法。
【請求項48】
前記判定閾値、前記測定のパラメータ、および前記算出パラメータのうち少なくとも何れか一つを外部に出力するステップをさらに備えたことを特徴とする請求項33乃至47のいずれかに記載の方位角計測方法。
【請求項49】
前記地磁気検出手段は3軸の出力データを取得するものであり、
さらに、方位角計測装置の姿勢角に関する情報を取得するステップと、
前記出力データ、前記オフセット情報および姿勢角に関する情報とから地磁気伏角情報を算出するステップとを有し、
前記方位角を算出するステップは、前記出力データ、前記オフセット情報および前記姿勢角に関する情報とから装置の方位角を算出するものであり、
前記伏角情報の値から、算出される方位角の信頼度の指標を算出するステップを有することを特徴とする請求項33乃至48のいずれかに記載の方位角計測方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【国際公開番号】WO2005/003683
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【発行日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511350(P2005−511350)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009324
【国際出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】