説明

旋回カメラ制御システム及び旋回カメラ制御方法

【課題】旋回カメラ装置を利用する場合に、その旋回カメラ装置を制御するシステムを容易に構築できる旋回カメラ制御システムを提供する。
【解決手段】制御装置90の表示手段91は、旋回カメラ装置80が撮影した映像を表示する画面を有する。移動位置検知手段92は、画面の中心に移動させる映像上の位置として指定された画面上の絶対位置を検知する。絶対位置送信手段93は、絶対位置を旋回カメラ装置80に送信する。旋回カメラ装置80の撮影方向検出手段81は、撮影している撮影方向を検出する。移動量算出手段92は、制御装置90から受信した絶対位置及び撮影方向に基づいて、画面上で指定された位置の映像を表示手段91の画面の中心にまで移動させるための撮影方向の変化量を算出する。駆動手段83は、算出した変化量に基づいて撮影方向を旋回させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視システムなどに用いられる旋回カメラ装置を制御する旋回カメラ制御システム、旋回カメラ制御方法、及び、これらに適用される旋回カメラ装置、カメラ旋回方法及びカメラ旋回プログラム関する。
【背景技術】
【0002】
旋回カメラ装置に対して、モニタ画角内の重点的に見たい被写体を画面中心に移動させる操作が行われることがある。旋回カメラを上下方向もしくは斜め方向に旋回する操作、及び、その操作の微調整を手動で行う場合、複数回の操作が必要になる。そこで、このような煩雑さを回避するための方法が各種知られている。
【0003】
パーソナルコンピュータ(以下、パソコンと記す。)を使用した一般的な旋回カメラ制御システムでは、パーソナルコンピュータモニタ(以下、パソコンモニタと記す。)画面上に映し出された被写体を画面中心に移動させる場合、まず、パソコン側にて、旋回カメラ装置から取得した現在位置座標データをもとに画角を計算する。さらに、パソコン側にて、被写体を画面中心に移動させるために必要なモータの移動量を算出し、その移動量と制御命令とをパソコン側から旋回カメラ装置に送信する。
【0004】
また、特許文献1には、カメラ操作の煩雑さを解消するカメラ制御装置が記載されている。特許文献1に記載されたカメラ制御装置では、使用者がモニタに表示される撮影画面内で中心にしたい位置を指定すると、コンピュータ側のCPUが指定位置と中心位置との差を算出し、算出結果及び移動命令をカメラの制御回路に転送する、カメラの制御回路は、これらの情報を受信して実際の移動量を算出し、カメラの撮影光軸を指定の方向に向ける。
【0005】
特許文献2には、被写体をモニタ画面の中央位置に表示する監視カメラシステムが記載されている。特許文献2に記載された監視カメラシステムは、少なくとも二台の監視カメラの向きを連動させて制御することで、動きの速い被写体や広範囲を移動する被写体をモニタ画面の中央位置に表示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3431953号公報(段落0008−0011,0013−0017、図1)
【特許文献2】特開2008−85607号公報(段落0010−0013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的な旋回カメラ制御システムでは、まず、ユーザがパソコンモニタ画面上の見たい監視ポイントをマウスでクリックすると、パソコン側から旋回カメラ装置へ、水平座標位置、垂直座標位置及びズームレンズのズーム位置の問い合わせが行われる。問い合わせが行われると、旋回カメラ装置は、問い合わせ結果をパソコン側に送信する。パソコン側では、問い合わせ結果を受信すると、パソコンモニタ画面の座標位置とズームレンズ及び撮像素子の光学寸法をもとに画角計算を行う。さらに、パソコン側では、被写体を画面中心に移動させるために必要なモータの移動量を算出し、その移動量(座標データ)と制御命令とをパソコン側から旋回カメラ装置に再送信する。
【0008】
図6は、一般的な旋回カメラ制御システムの動作を示すフローチャートである。まず、旋回カメラ装置は、旋回カメラを制御するコマンドをパソコンから受信したか否かを判断する(ステップF2)。パソコンからコマンドを受信していないと判断した場合(ステップF2におけるNo)、旋回カメラ装置は、処理を終了する。
【0009】
一方、パソコンからコマンドを受信したと判断した場合、(ステップF2におけるYes)、旋回カメラ装置は、現在の水平位置を検出し(ステップF3)、さらに、現在の垂直位置を検出する(ステップF4)。また、旋回カメラ装置は、レンズのズーム位置を検出する(ステップF5)。
【0010】
旋回カメラ装置は、検出した水平位置、垂直位置及びレンズのズーム位置などの座標データをパソコンへ返信する(ステップF6)。パソコンでは、送信される映像が撮像素子の光学データに変換され(ステップF7)、画角計算が行われる(ステップF8)。そして、パソコンでは、画角計算結果に基づいて、モータの相対的な必要移動量が算出される(ステップF9)。そして、算出された結果は、旋回カメラ装置へ送信される(ステップF10)。最後に、旋回カメラ装置は、受信した必要移動量に応じてモータ制御する(ステップF11)ことで、旋回カメラ装置を旋回させる。
【0011】
このように、一般的な旋回カメラ制御システムでは、パソコンと旋回カメラ装置間の通信授受回数が多くなってしまい、旋回開始までのレスポンスが悪くなってしまうという課題があった。
【0012】
このような課題を解決するため、特許文献1に記載されたカメラ制御装置では、コンピュータ側で計算した画面上の指定位置と中心位置との距離をカメラ側に送信し、それ以外の計算をカメラ側で行うことで、カメラが旋回開始を行うまでのレスポンスを短くしている。
【0013】
しかし、特許文献1に記載されたカメラ制御装置を利用する場合、カメラとコンピュータそれぞれにカメラの旋回動作を制御する機能を実装しなければならないという課題がある。具体的には、コンピュータ側には、算出した距離に応じた旋回指示命令を行う機能を実装する必要があり、カメラ側には、旋回指示命令に応じてカメラを旋回させる機能を実装する必要がある。そのため、特許文献1に記載されたカメラ制御装置を用いた場合、旋回カメラを制御するシステムの構築が複雑化してしまうという課題がある。
【0014】
そこで、本発明は、旋回カメラ装置を利用する場合に、その旋回カメラ装置を制御するシステムを容易に構築できる旋回カメラ制御システム、旋回カメラ制御方法、及び、これらに適用される旋回カメラ装置、カメラ旋回方法及びカメラ旋回プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による旋回カメラ制御システムは、撮影方向を旋回させて映像を撮影する旋回カメラ装置と、旋回カメラ装置の撮影方向を旋回させる制御を行う制御装置とを備え、
制御装置が、旋回カメラ装置が撮影した映像を表示する画面を有する表示手段と、画面の中心に移動させる映像上の位置として指定された画面上の絶対位置を検知する移動位置検知手段と、絶対位置を旋回カメラ装置に送信する絶対位置送信手段とを備え、旋回カメラ装置が、撮影している撮影方向を検出する撮影方向検出手段と、制御装置から受信した絶対位置及び撮影方向に基づいて、画面上で指定された位置の映像を表示手段の画面の中心にまで移動させるための撮影方向の変化量を算出する変化量算出手段と、算出した変化量に基づいて撮影方向を旋回させる駆動手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明による旋回カメラ装置は、撮影している撮影方向を検出する撮影方向検出手段と、撮影した映像を表示する画面を有する表示手段を備えた制御装置から受信した、その表示手段の画面の中心に移動させる映像上の位置として指定されたその画面上の絶対位置、及び、撮影方向に基づいて、画面上で指定された位置の映像を画面の中心にまで移動させるための撮影方向の変化量を算出する変化量算出手段と、算出した変化量に基づいて撮影方向を旋回させる駆動手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明による旋回カメラ制御方法は、旋回カメラ装置の撮影方向を旋回させる制御を行う制御装置が、旋回カメラ装置が撮影した映像を表示する画面を有する表示手段においてその画面の中心に移動させる映像上の位置として指定されたその画面上の絶対位置を検知し、制御装置が、絶対位置を旋回カメラ装置に送信し、旋回カメラ装置が、撮影している撮影方向を検出し、旋回カメラ装置が、制御装置から受信した絶対位置及び撮影方向に基づいて、画面上で指定された位置の映像を画面の中心にまで移動させるための撮影方向の変化量を算出し、算出した変化量に基づいて撮影方向を旋回させることを特徴とする。
【0018】
本発明によるカメラ旋回方法は、撮影している撮影方向を検出し、撮影した映像を表示する画面を有する表示手段を備えた制御装置から受信した、その表示手段の画面の中心に移動させる映像上の位置として指定されたその画面上の絶対位置、及び、撮影方向に基づいて、画面上で指定された位置の映像を画面の中心にまで移動させるための撮影方向の変化量を算出し、算出した変化量に基づいて撮影方向を旋回させることを特徴とする。
【0019】
本発明によるカメラ旋回プログラムは、コンピュータに、撮影している撮影方向を検出する撮影方向検出処理、撮影した映像を表示する画面を有する表示手段を備えた制御装置から受信した、その表示手段の画面の中心に移動させる映像上の位置として指定されたその画面上の絶対位置、及び、撮影方向に基づいて、画面上で指定された位置の映像を画面の中心にまで移動させるための撮影方向の変化量を算出する変化量算出処理、および、算出した変化量に基づいて撮影方向を旋回させる駆動処理を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、旋回カメラ装置を利用する場合に、その旋回カメラ装置を制御するシステムを容易に構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による旋回カメラ制御システムの一実施形態を示すブロック図である。
【図2】被写体を移動させる処理の例を示す説明図である。
【図3】旋回カメラ装置の動作の例を示すフローチャートである。
【図4】本発明による旋回カメラ制御システムの最小構成の例を示すブロック図である。
【図5】本発明による旋回カメラ装置の最小構成の例を示すブロック図である。
【図6】一般的な旋回カメラ制御システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明による旋回カメラ制御システムの一実施形態を示すブロック図である。本発明における旋回カメラ制御システムは、パーソナルコンピュータ(以下、パソコンと記す。)13と、旋回カメラ装置20とを備えている。
【0024】
パソコン13は、旋回カメラ装置20の撮影方向を旋回させる制御を行う。パソコン13には、パソコンモニタ12と、マウス14とが接続されている。パソコンモニタ12は、旋回カメラ装置20が撮影した映像を受信して、その映像を画面15上に表示する。マウス14は、表示された被写体を移動させる位置を指定するための装置である。例えば、マウス14は、パソコンモニタ12における画面15上の絶対位置を指定するために用いられる。以下、パソコンモニタ12の画面15上の絶対位置を、パソコンモニタ12上の絶対位置と記すこともある。マウス14により指定された絶対位置の情報は、旋回カメラ装置20に送信される。
【0025】
なお、以下の説明では、画面15上の絶対位置を指定する装置としてマウスを用いる場合について説明する。ただし、画面15上の絶対位置を指定する装置は、マウスに限定されず、画面15上の位置を指定できる他のポインティングデバイスであってもよい。
【0026】
例えば、パソコン13が備える制御部(図示せず)が、画面15の中心に移動させる映像上の位置として指定された画面15上の絶対位置を検知する。映像上の位置は、例えば、マウス14を用いてユーザにより指定される。そして、制御部(図示せず)は、検知した絶対位置を旋回カメラ装置20に送信する。なお、パソコンモニタ12上の絶対位置は、画面15の範囲に応じて予め設定される。
【0027】
以下の説明では、パソコン13が備える制御部(図示せず)が、マウス14によって指定された絶対位置を旋回カメラ装置20に送信する場合について説明する。なお、パソコン13は、指定された表示映像の絶対位置を旋回カメラ装置20に送信出来ればよい。すなわち、パソコン13は、旋回カメラ装置20から送信された映像を表示するパソコンモニタ12などの表示装置と、ユーザがマウス14などを用いて指定する被写体の絶対位置を検知する手段と、検知した絶対位置を旋回カメラ装置20に送信する手段を備えていればよい。したがって、例えば、パソコン13がタッチパネル機能を備えている場合、パソコン13が備える制御部(図示せず)は、そのタッチパネル機能により検知した絶対位置を旋回カメラ装置20に送信してもよい。
【0028】
なお、上記制御部(図示せず)は、プログラムに従って動作するコンピュータのCPUによって実現される。例えば、プログラムは、パソコン13の記憶部(図示せず)に記憶され、CPUは、そのプログラムを読み込み、プログラムに従って、制御部(図示せず)として動作する。
【0029】
旋回カメラ装置20は、ズームレンズ1と、テレビジョンカメラ2と、CPU3と、水平モータドライバ4と、水平モータ5と、水平ギア6と、水平位置検出エンコーダ7と、垂直モータドライバ8と、垂直モータ9と、垂直ギア10と、垂直位置検出エンコーダ11とを備えている。
【0030】
ズームレンズ1は、撮影に用いられるレンズである。テレビジョンカメラ2は、ズームレンズ1を介して被写体を撮影し、映像情報をパソコン13に転送する。CPU3は、旋回カメラ装置20における各制御を司る制御装置である。具体的には、CPU3は、テレビジョンカメラ2が送信した映像を表示した画面15上の絶対位置をパソコン13から受信すると、その絶対位置と画面15上の中心位置との距離を算出することにより、旋回カメラ装置20を旋回させる変化量を決定する。
【0031】
距離を算出する方法として、例えば、旋回カメラ装置20の記憶部(図示せず)に、テレビジョンカメラ2が送信する映像の範囲と、その範囲に対応するパソコンモニタ12上の絶対位置とを対応付けて記憶しておき、CPU3は、その対応付けに応じてカメラを旋回させる変化量を決定してもよい。このようにすることで、CPU3は、パソコン13から絶対位置を受信するだけで、旋回カメラ装置20を移動させる変化量を計算することができる。なお、変化量の算出方法は広く知られているため、詳細な説明は省略する。
【0032】
水平モータドライバ4は、水平旋回駆動用のドライバであり、CPU3の指示に応じて水平モータ5及び水平ギア6を算出された変化量に基づいて駆動させる。水平位置検出エンコーダ7は、旋回カメラ装置20の水平方向の位置を検出する。また、垂直モータドライバ8は、垂直旋回駆動用のドライバであり、CPU3の指示に応じて垂直モータ9及び垂直ギア10を算出された変化量に基づいて駆動させる。垂直位置検出エンコーダ11は、旋回カメラ装置20の垂直方向の位置を検出する。このように、旋回カメラ装置20は、自身が撮影する方向を水平位置検出エンコーダ7や垂直位置検出エンコーダ11により撮影する方向を検出する。
【0033】
なお、CPU3は、例えば、旋回カメラ装置20の記憶部(図示せず)に記憶されたプログラム(旋回制御プログラム)を読み込み、そのプログラムに従って動作する。
【0034】
図2は、パソコンモニタ12上に表示された被写体を移動させる処理の例を示す説明図である。図2に示す例では、パソコンモニタ12上の画面15が横32×縦24の小エリアに分割されていることを示す。以下の説明では、画面15上の絶対位置を、画面15を分割した小エリアの絶対座標で表わす場合について説明する。なお、画面15上の絶対位置は、画面を分割した小エリアを示す絶対座標に限定されない。
【0035】
例えば、ユーザが、画面15上の位置Aに表示された被写体16をマウス14でクリックすると、パソコン13が備える制御部(図示せず)は、位置Aに該当する絶対座標(縦3,横3)をパソコン13から旋回カメラ装置20(より詳しくは、CPU3)に送信する。
【0036】
なお、旋回カメラ装置20が絶対座標を受信すると、CPU3は、水平モータ5及び垂直モータ9の位置を、水平位置検出エンコーダ7及び垂直位置検出エンコーダ11に検知させる。また、CPU3は、検知させた水平位置及び垂直位置に加え、ズームレンズ1のズーム位置および撮像素子の光学寸法をもとに画角計算を行い、マウスクリックされた絶対座標(縦3,横3)を画面中心の絶対座標(縦12,横16)へ移動させるのに必要な旋回量を瞬時に計算する。そして、CPU3は、水平モータドライバ4及び垂直モータドライバ8へ計算した旋回量を送信する。水平モータドライバ4及び垂直モータドライバ8は、受信した旋回量に基づいて、水平モータ5及び垂直モータ9を駆動させることにより、被写体16を画面中心に移動させる。このようにして、CPU3は、絶対位置及び撮影方向に基づいて変化量を算出する。
【0037】
次に、動作について説明する。図3は、旋回カメラ装置20の動作の例を示すフローチャートである。
【0038】
まず、旋回カメラ装置20のCPU3は、パソコン13から画面15上の絶対位置(例えば、図2における被写体16の絶対位置座標A)を受信したか否かを判断する(ステップS2)。例えば、CPU3は、パソコン13から指定された絶対位置を含む移動指示コマンドを受信したか否かを判断する。パソコン13からのコマンド(絶対位置)を受信していないと判断した場合(ステップS2におけるNo)、CPU3は、処理を終了する。
【0039】
一方、パソコン13からのコマンド(絶対位置)を受信したと判断した場合、(ステップS2におけるYes)、CPU3は、水平位置検出エンコーダ7に現在の水平位置を検出させ(ステップS3)、垂直位置検出エンコーダ11に現在の垂直位置を検出させる(ステップS4)。また、CPU3は、レンズのズーム位置を検出する(ステップS5)。
【0040】
CPU3は、テレビジョンカメラ2が撮影したデータを撮像素子の光学データに変換する(ステップS6)。そして、CPU3は、水平位置、垂直位置及びレンズのズーム位置に基づいて画角計算を行う(ステップS7)。
【0041】
CPU3は、受信した絶対位置及び画角計算結果に基づいて、水平モータ5及び垂直モータ9の相対的な必要移動量(変化量)を算出する(ステップS8)。そして、CPU3は、算出した変化量に基づいて、水平モータドライバ4及び垂直モータドライバ8に対し、垂直モータ9及び垂直ギア10を駆動させて、水平モータ5及び垂直モータ9を画面中心(例えば、図2における絶対位置座標B)へと移動させる旋回制御をおこなう。
【0042】
このように、CPU3がパソコン13から送信された絶対座標に基づいて必要移動量(変化量)を算出するため、パソコン13側では、画面の中央に遷移させる絶対位置を旋回カメラ装置20に送信すればよい。例えば、旋回カメラ装置20を制御するアプリケーションソフトをパソコン13側に実装する場合、そのアプリケーションソフトは、マウスクリックされた位置の絶対位置を旋回カメラ装置20に送信する機能を備えていればよい。すなわち、パソコン側で画角計算などを行う必要がないため、システムを簡素化できる。
【0043】
また、図5に示す一般的な旋回カメラ制御システムでは、パソコンと旋回カメラ装置との間の通信回数は、3回(図5におけるステップF2の前、ステップF5とステップF6の間、及び、ステップF10とステップF11の間の計3回)必要だった。一方、本実施形態によれば、パソコン13と旋回カメラ装置20との間で必要な通信回数は、1回(ステップS2の前)である。このように、一般的な旋回カメラ制御システムと比べて、本実施形態では、モータが旋回開始するまでの時間を短縮することでレスポンスを向上させている。
【0044】
なお、本実施形態では、パソコン13がマウス14でクリックされた被写体の絶対位置を旋回カメラ装置20に送信し、CPU3が被写体を画面中心に移動させる方法について説明した。ただし、CPU3が被写体を移動させる位置は、画面中心に限定されない。
【0045】
例えば、ユーザがマウス14を絶対座標Aから画面の任意の絶対座標Cまでドラッグさせた場合に、パソコン13の制御部(図示せず)が、移動開始位置として絶対座標A、移動終了位置として絶対座標C(すなわち、移動開始位置と移動終了位置の2点)を旋回カメラ装置20に送信してもよい。この場合、CPU3は、絶対座標Aと絶対座標Cとの距離を算出することにより、旋回カメラ装置20を旋回させる変化量を決定してもよい。変化量の算出方法は、中心位置までの変化量を算出する方法と同様である。このようにすることで、パソコン13は、任意の位置に旋回カメラ装置20の撮影位置を旋回させる制御を行うことができる。
【0046】
以上のように、本実施形態によれば、パソコン13の制御部(図示せず)が、旋回カメラ装置20が撮影した映像を表示する画面15を有するパソコンモニタ12において、その画面15の中心に移動させる映像上の位置として指定された画面15上の絶対位置を検知する。そして、パソコン13の制御部(図示せず)が、検知した絶対位置を旋回カメラ装置20に送信する。
【0047】
一方、水平位置検出エンコーダ7や垂直位置検出エンコーダ11は、旋回カメラ装置20が撮影している撮影方向を検出する。そして、CPU3は、パソコン13から受信した絶対位置、および、撮影方向に基づいて、画面15上で指定された位置の映像をパソコンモニタ12(画面15)の中心にまで移動させるために必要な旋回量を算出する。
【0048】
このような構成をとるため、旋回カメラ装置を利用する場合に、その旋回カメラ装置を制御するシステムを容易に構築できる
【0049】
具体的には、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。第1の効果は、パソコンのアプリケーションソフトを含め、構築するシステムを簡素化できるということである。一般的な旋回制御システムでは、パソコン側で変化量を算出し、カメラ側で制御に関する計算処理を行うため、システムが複雑であった。しかし、本実施形態では、計算処理を行う機能を集約させることで、システム構築を簡易化している。
【0050】
第2の効果は、旋回カメラ装置の旋回レスポンスが早くなるということである。一般的な旋回制御システムでは、旋回カメラ装置から各種位置データをパソコン側へ取り込んで画角計算したのち、再度旋回カメラ装置へ必要な移動量の命令を送るという手順を踏んでいた。そのため、どうしても旋回開始するまでの時間が長くなりレスポンスが悪くなっていた。しかし、本実施形態では、旋回カメラ側に計算作業などを受け持たせることにより、通信授受回数を少なくすることで、旋回レスポンスを早くしている。
【0051】
第3の効果は、通信制御ラインの負荷を軽減できるため、旋回カメラ装置とシステムとの間の命令の送信や、旋回処理の実行指示が行いやすくなるということである。上述の通り、一般的な旋回制御システムでは、1回の操作につき通信の授受回数が多くなるため、通信制御ラインの負荷が高かった。しかし、本実施形態によれば、1回の操作につき通信の授受回数は1回で済むため、通信制御ラインの負荷を軽減できる。すなわち、旋回カメラ装置とシステムとの間の命令の送信や実行指示が行いやすくなる。
【0052】
次に、本発明による旋回カメラ制御システムの最小構成の例を説明する。図4は、本発明による旋回カメラ制御システムの最小構成の例を示すブロック図である。本発明による旋回カメラ制御システムは、撮影方向を旋回させて映像を撮影する旋回カメラ装置80と、旋回カメラ装置80の撮影方向を旋回させる制御を行う制御装置90とを備えている。
【0053】
制御装置90は、旋回カメラ装置80が撮影した映像を表示する画面(例えば、画面15)を有する表示手段91(例えば、パソコンモニタ12)と、画面の中心に移動させる映像上の位置として指定された画面上の絶対位置(例えば、絶対座標)を検知する移動位置検知手段92(例えば、パソコン13の制御部(図示せず))と、絶対位置を旋回カメラ装置80に送信する絶対位置送信手段93(例えば、パソコン13の制御部(図示せず))とを備えている。
【0054】
旋回カメラ装置80は、撮影している撮影方向を検出する撮影方向検出手段81(例えば、水平位置検出エンコーダ7、垂直位置検出エンコーダ11)と、制御装置90から受信した絶対位置及び撮影方向に基づいて、画面上で指定された位置の映像を表示手段91の画面の中心にまで移動させるための撮影方向の変化量(例えば、旋回量)を算出する変化量算出手段92(例えば、CPU3)と、算出した変化量に基づいて撮影方向を旋回させる駆動手段83(例えば、水平モータドライバ4、水平モータ5、水平ギア6、垂直モータドライバ8、垂直モータ9及び垂直ギア10)を備えている。
【0055】
そのような構成により、旋回カメラ装置を利用する場合に、その旋回カメラ装置を制御するシステムを容易に構築できる。
【0056】
次に、本発明による旋回カメラ装置の最小構成の例を説明する。図5は、本発明による旋回カメラ装置の最小構成の例を示すブロック図である。本発明による旋回カメラ装置は、撮影している撮影方向を検出する撮影方向検出手段71(例えば、水平位置検出エンコーダ7、垂直位置検出エンコーダ11)と、撮影した映像を表示する画面(例えば、画面15)を有する表示手段(例えば、パソコンモニタ12)を備えた制御装置(例えば、パソコン13)から受信した、その表示手段の画面の中心に移動させる映像上の位置として指定されたその画面上の絶対位置(例えば、絶対座標)、及び、撮影方向に基づいて、画面上で指定された位置の映像を表示手段の画面の中心にまで移動させるための撮影方向の変化量(例えば、旋回量)を算出する変化量算出手段72(例えば、CPU3)と、算出した変化量に基づいて撮影方向を旋回させる駆動手段73(例えば、水平モータドライバ4、水平モータ5、水平ギア6、垂直モータドライバ8、垂直モータ9及び垂直ギア10)を備えている。
【0057】
そのような構成によっても、旋回カメラ装置を利用する場合に、その旋回カメラ装置を制御するシステムを容易に構築できる。
【0058】
なお、少なくとも以下に示すような旋回カメラ制御システム及び旋回カメラ装置も、上記に示すいずれかの実施形態に開示されている。
【0059】
(1)撮影方向を旋回させて映像を撮影する旋回カメラ装置と、旋回カメラ装置の撮影方向を旋回させる制御を行う制御装置とを備え、制御装置が、旋回カメラ装置が撮影した映像を表示する画面(例えば、画面15)を有する表示手段(例えば、パソコンモニタ12)と、画面の中心に移動させる映像上の位置として指定された画面上の絶対位置(例えば、絶対座標)を検知する移動位置検知手段(例えば、パソコン13の制御部(図示せず))と、絶対位置を旋回カメラ装置に送信する絶対位置送信手段(例えば、パソコン13の制御部(図示せず))とを備え、旋回カメラ装置が、撮影している撮影方向を検出する撮影方向検出手段(例えば、水平位置検出エンコーダ7、垂直位置検出エンコーダ11)と、制御装置から受信した絶対位置及び撮影方向に基づいて、画面上で指定された位置の映像を表示手段の画面の中心にまで移動させるための撮影方向の変化量(例えば、旋回量)を算出する変化量算出手段(例えば、CPU3)と、算出した変化量に基づいて撮影方向を旋回させる駆動手段(例えば、水平モータドライバ4、水平モータ5、水平ギア6、垂直モータドライバ8、垂直モータ9及び垂直ギア10)を備えた旋回カメラ制御システム。
【0060】
(2)制御装置の移動位置検知手段が、表示手段に表示された映像上の移動開始位置及び移動終了位置として指定されたその表示手段の画面における2つの絶対位置(例えば、マウス14がドラッグした開始位置と終了位置)を検知し、制御装置の絶対位置送信手段が、2つの絶対位置を旋回カメラ装置に送信し、旋回カメラ装置の変化量算出手段が、制御装置から受信した2つの絶対位置、及び撮影方向検出手段が検出した撮影方向に基づいて、移動開始位置の映像を移動終了位置にまで移動させるための撮影方向の変化量を算出する旋回カメラ制御システム。
【0061】
(3)撮影している撮影方向を検出する撮影方向検出手段(例えば、水平位置検出エンコーダ7、垂直位置検出エンコーダ11)と、撮影した映像を表示する画面(例えば、画面15)を有する表示手段(例えば、パソコンモニタ12)を備えた制御装置(例えば、パソコン13)から受信した、その表示手段の画面の中心に移動させる映像上の位置として指定されたその画面上の絶対位置(例えば、絶対座標)、及び、撮影方向に基づいて、画面上で指定された位置の映像を画面の中心にまで移動させるための撮影方向の変化量(例えば、旋回量)を算出する変化量算出手段(例えば、CPU3)と、算出した変化量に基づいて撮影方向を旋回させる駆動手段(例えば、水平モータドライバ4、水平モータ5、水平ギア6、垂直モータドライバ8、垂直モータ9及び垂直ギア10)とを備えた旋回カメラ装置。
【0062】
(4)変化量算出手段が、映像上の移動開始位置及び移動終了位置として指定された表示手段の画面における2つの絶対位置、及び撮影方向検出手段が検出した撮影方向に基づいて、移動開始位置の映像を移動終了位置にまで移動させるための撮影方向の変化量を算出する旋回カメラ装置。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、監視システムなどに用いられる旋回カメラ装置を制御する旋回カメラ制御システムに好適に適用される。また、例えば、モニタ画角範囲内の移動レスポンス向上させる旋回カメラ装置に適用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 ズームレンズ
2 テレビジョンカメラ
3 CPU
4 水平モータドライバ
5 水平モータ
6 水平ギア
7 水平位置検出エンコーダ
8 垂直モータドライバ
9 垂直モータ
10 垂直ギア
11 垂直位置検出エンコーダ
12 パソコンモニタ
13 パソコン
14 マウス
15 画面
16 被写体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影方向を旋回させて映像を撮影する旋回カメラ装置と、
前記旋回カメラ装置の撮影方向を旋回させる制御を行う制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記旋回カメラ装置が撮影した映像を表示する画面を有する表示手段と、
前記画面の中心に移動させる映像上の位置として指定された前記画面上の絶対位置を検知する移動位置検知手段と、
前記絶対位置を前記旋回カメラ装置に送信する絶対位置送信手段とを備え、
前記旋回カメラ装置は、
撮影している撮影方向を検出する撮影方向検出手段と、
前記制御装置から受信した絶対位置及び前記撮影方向に基づいて、前記画面上で指定された位置の映像を前記表示手段の前記画面の中心にまで移動させるための撮影方向の変化量を算出する変化量算出手段と、
算出した変化量に基づいて撮影方向を旋回させる駆動手段とを備えた
ことを特徴とする旋回カメラ制御システム。
【請求項2】
制御装置の移動位置検知手段は、表示手段に表示された映像上の移動開始位置及び移動終了位置として指定された当該表示手段の画面における2つの絶対位置を検知し、
制御装置の絶対位置送信手段は、前記2つの絶対位置を旋回カメラ装置に送信し、
旋回カメラ装置の変化量算出手段は、制御装置から受信した2つの絶対位置、及び撮影方向検出手段が検出した撮影方向に基づいて、前記移動開始位置の映像を前記移動終了位置にまで移動させるための撮影方向の変化量を算出する
請求項1に記載の旋回カメラ制御システム。
【請求項3】
撮影している撮影方向を検出する撮影方向検出手段と、
撮影した映像を表示する画面を有する表示手段を備えた制御装置から受信した、当該表示手段の画面の中心に移動させる映像上の位置として指定された当該画面上の絶対位置、及び、前記撮影方向に基づいて、前記画面上で指定された位置の映像を前記画面の中心にまで移動させるための撮影方向の変化量を算出する変化量算出手段と、
算出した変化量に基づいて撮影方向を旋回させる駆動手段とを備えた
ことを特徴とする旋回カメラ装置。
【請求項4】
変化量算出手段は、映像上の移動開始位置及び移動終了位置として指定された表示手段の画面における2つの絶対位置、及び撮影方向検出手段が検出した撮影方向に基づいて、前記移動開始位置の映像を前記移動終了位置にまで移動させるための撮影方向の変化量を算出する
請求項3に記載の旋回カメラ装置。
【請求項5】
旋回カメラ装置の撮影方向を旋回させる制御を行う制御装置が、前記旋回カメラ装置が撮影した映像を表示する画面を有する表示手段において当該画面の中心に移動させる映像上の位置として指定された当該画面上の絶対位置を検知し、
前記制御装置が、前記絶対位置を前記旋回カメラ装置に送信し、
前記旋回カメラ装置が、撮影している撮影方向を検出し、
前記旋回カメラ装置が、前記制御装置から受信した絶対位置及び前記撮影方向に基づいて、前記画面上で指定された位置の映像を前記画面の中心にまで移動させるための撮影方向の変化量を算出し、
算出した変化量に基づいて撮影方向を旋回させる
ことを特徴とする旋回カメラ制御方法。
【請求項6】
制御装置が、表示手段に表示された映像上の移動開始位置及び移動終了位置として指定された当該表示手段の画面における2つの絶対位置を検知し、
制御装置が、前記2つの絶対位置を旋回カメラ装置に送信し、
旋回カメラ装置が、制御装置から受信した2つの絶対位置、及び検出した撮影方向に基づいて、前記移動開始位置の映像を前記移動終了位置にまで移動させるための撮影方向の変化量を算出する
請求項5に記載の旋回カメラ制御方法。
【請求項7】
撮影している撮影方向を検出し、
撮影した映像を表示する画面を有する表示手段を備えた制御装置から受信した、当該表示手段の画面の中心に移動させる映像上の位置として指定された当該画面上の絶対位置、及び、前記撮影方向に基づいて、前記画面上で指定された位置の映像を前記画面の中心にまで移動させるための撮影方向の変化量を算出し、
算出した変化量に基づいて撮影方向を旋回させる
ことを特徴とするカメラ旋回方法。
【請求項8】
映像上の移動開始位置及び移動終了位置として指定された表示手段の画面における2つの絶対位置、及び検出した撮影方向に基づいて、前記移動開始位置の映像を前記移動終了位置にまで移動させるための撮影方向の変化量を算出する
請求項7に記載のカメラ旋回方法。
【請求項9】
コンピュータに、
撮影している撮影方向を検出する撮影方向検出処理、
撮影した映像を表示する画面を有する表示手段を備えた制御装置から受信した、当該表示手段の画面の中心に移動させる映像上の位置として指定された当該画面上の絶対位置、及び、前記撮影方向に基づいて、前記画面上で指定された位置の映像を前記画面の中心にまで移動させるための撮影方向の変化量を算出する変化量算出処理、および、
算出した変化量に基づいて撮影方向を旋回させる駆動処理
を実行させるためのカメラ旋回プログラム。
【請求項10】
コンピュータに、
変化量算出処理で、映像上の移動開始位置及び移動終了位置として指定された表示手段の画面における2つの絶対位置、及び検出した撮影方向に基づいて、前記移動開始位置の映像を前記移動終了位置にまで移動させるための撮影方向の変化量を算出させる
請求項9に記載のカメラ旋回プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−160200(P2011−160200A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20320(P2010−20320)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】