説明

既設管の更生方法及び二重管構造物

【課題】本発明は、管路に不陸や蛇行が生じている既設管に対し、不陸や蛇行に追随することなく更生管を敷設することができる新規な既設管の更生方法及び二重管構造物を提供することを目的とする。
【解決手段】 長尺の帯状部材100を螺旋状に巻回すことによって更生管Sを形成し、この更生管Sを既設管Lの管路内に敷設する既設管Lの更生方法において、既設管Lの管路に生じた凹み箇所に支持部材1を配置し、支持部材1で更生管Sを支持しつつ、更生管Sを既設管Lの管路内に敷設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老朽化した下水管路、上水管路、農業用水路などの既設管を更生する既設管の更生方法及び二重管構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水管路、上水管路、農業用水路などの既設管が、老朽化によってひび割れたり、腐食したりした場合の対策の一つとして、既設管の管路内に更生管を敷設することによって既設管を更生する方法が実施されている(例えば、下記特許文献1及び2参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の更生方法は、既設管の内周面に沿って回転しながら、連続的に供給される帯状部材を螺旋状に巻き回して更生管を形成し、形成された更生管を残置しつつ、施工開始地点から施工終了地点に向かって移動することによって、既設管の管路に沿って更生管を敷設する自走式の製管機を用いた更生方法である。
【0004】
一方、特許文献2に記載の更生方法は、施工開始地点にて定点設置され、連続的に供給される帯状部材を螺旋状に巻き回して更生管を形成しつつ、形成された更生管を回転させながら施工終了地点に向かって順次挿入することによって、既設管の管路に沿って更生管を敷設する元押し式の製管機を用いた更生方法である。
【0005】
特許文献1及び2に記載の更生方法によれば、いずれも既設管内に存在する水を排除する水替え作業を行うことなく更生管を敷設することができることから、水替えのためのバイパス管の設置作業、及びバイパス管の設置作業に伴う地上での交通規制等が不要となる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−200547号公報
【特許文献2】特開平6−190922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで老朽化した既設管においては、地震、地盤沈下、侵食、或いは地上を通行する自動車の荷重を長年にわたって繰り返し受け続けることによって、管路に不陸や蛇行が生じている場合がある。管路に不陸や蛇行が存在すると水の速やかな流下が阻害され、又、砂や汚泥等が堆積していくことから管の流下能力が低下する。
【0008】
前記特許文献1及び2に記載の更生方法は、いずれも既設管の管路に沿って更生管を敷設するものであることから、これらの更生方法を管路に不陸や蛇行が生じている既設管に適用した場合、敷設された更生管は既設管の管路の不陸や蛇行に追随した形状となる。
【0009】
この点につき、既設管内に更生管を敷設する前に、既設管の管路に生じている不陸や蛇行の凹み箇所をモルタルで埋める手段も考えられる。しかしながらモルタルを使用するにあたっては既設管内に存在する水を排除する必要が生じるため、水替え作業を行うことなく更生管を敷設することができる前述の利点が生かされなくなる。
【0010】
本発明は、このような技術的課題を解決するために開発されたものであり、管路に不陸や蛇行が生じている既設管に対し、不陸や蛇行に追随することなく更生管を敷設することができる新規な既設管の更生方法及び二重管構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の既設管の更生方法は、長尺の帯状部材を螺旋状に巻回すことによって更生管を形成し、この更生管を既設管の管路内に敷設する既設管の更生方法において、既設管の管路に生じた凹み箇所に支持部材を配置し、支持部材で更生管を支持しつつ、更生管を既設管の管路内に敷設することを特徴とする(以下、本発明方法と称する。)。
【0012】
老朽化した既設管には、長年にわたる使用の間、地震、地盤沈下、侵食、或いは地上を通行する自動車の荷重を長年にわたって繰り返し受け続けることによって、当初には存在していなかった窪みや、管の連結部の不整合、或いは管の変形が生じ、管路に不必要な不陸や蛇行が生じることが往々にしてある。本発明方法において、「既設管の管路に生じた凹み箇所」とは、このような既設管の管路に生じている不必要な不陸や蛇行における後退部分を意味する。
【0013】
本発明方法によれば、このような既設管の管路に生じている不陸や蛇行における凹み箇所に支持部材を配置した上で更生管を形成することから、更生管は支持部材に支えられた状態で既設管の管路内に敷設される。これにより、既設管に生じている不陸や蛇行に追随することなく、既設管の管路内に更生管を敷設することができる。
【0014】
本発明方法において用いられる支持部材としては、更生管を支持しつつ、一定の形状を維持することができるものであれば、特に限定されるものではない。
【0015】
ここで、本発明方法において用いられる支持部材としては、凹み箇所の底面に接地させた状態で配置されて、橋脚として更生管を支持するもの(以下、橋脚式支持部材と称する。)と、凹み箇所に掛け渡した状態で配置されて、橋桁として更生管を支持するもの(以下、橋桁式支持部材と称する。)とに大きく分けられる。
【0016】
本発明方法において、支持部材として橋脚式支持部材を用いる場合にあっては、様々な高さ(支持位置)を有する橋脚式支持部材を複数準備し、凹み箇所の凹みの程度(後退の程度)に応じた高さを有する橋脚式支持部材を適宜選択することによって対応する。
【0017】
この際、橋脚式支持部材に対し、その高さを変更し得るスペーサーを介在させたり、橋脚部材に対し、その高さを変更し得るアジャスター機構を付与したりして、凹み箇所の凹みの程度に対応しても良い。
【0018】
又、支持部材として橋脚式支持部材を用いる場合にあっては、凹み箇所に複数の橋脚式支持部材を配置することによって、複数の支点で更生管を支持しても良い。
【0019】
ところで、既設管の管路に生じた凹み箇所の範囲は様々であり、例えば、侵食や管の変形等によって管路に生じる凹み箇所は局所的なものが多く、管の連結部の不整合等によって生じる凹みは、比較的広範囲にわたっているものが多い。
【0020】
本発明方法において、管路に局所的に生じている凹み箇所に支持部材を配置するにあたっては、前記橋脚式支持部材を用いることが好ましい。
【0021】
一方、管路に広範囲にわたって生じている凹み箇所に支持部材を配置するにあたっては、橋桁式支持部材を用いることが好ましい。
【0022】
支持部材として橋桁式支持部材を用いれば、管路に広範囲にわたって生じている凹み箇所に対しても、橋桁式支持部材を凹み箇所に掛け渡した状態で配置するだけで、容易に凹み箇所の凹みを是正することができる。
【0023】
橋桁式支持部材の具体例としては、凹み箇所に掛け渡した状態で配置し得る長さを有する板状部材や棒状部材、或いは複数の棒状部材が横架材を介して結合された梯子状部材などを挙げることができる。又、橋桁式支持部材には、その強度を向上すべく、凹み箇所の底面に接地し得る橋脚部が設けられていても良い。
【0024】
本発明の二重管構造物は、既設管の管路内に、長尺の帯状部材を螺旋状に巻回すことによって形成された更生管が敷設されてなる二重管構造物であって、この二重管構造物は、既設管の管路に生じた凹み箇所に配置された支持部材によって更生管が支持されてなることを特徴とする。
【0025】
即ち、本発明の二重管構造物は、前記本発明方法によって既設管を更生した後の結果物である。なお、本発明の二重管構造物においては、更生管の外壁と既設管の内壁との間に存する間隙には、モルタル等の裏込め剤が充填されていても良い。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、管路に不陸や蛇行が生じている既設管に対し、不陸や蛇行に追随することなく更生管を敷設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1(a)は、帯状部材の一例を示す斜視図であり、図1(b)は、帯状部材を接合した状態を示す断面図である。
【図2】図2(a)は、自走式の製管機で更生管を製管している状態を示す斜視図であり、図2(b)は、元押し式の製管機で更生管を製管している状態を示す断面図である。
【図3】図3は、従来法により、不陸又は蛇行が生じている既設管の管路に沿って更生管を敷設した状態を示す断面図である。
【図4】図4は、橋脚式支持部材の一例を示す斜視図である。
【図5】図5(a)は、既設管に橋脚式支持部材を配置した状態を示す断面図であり、図5(b)は、橋脚式支持部材を配置した上で更生管を製管している状態を示す断面図であり、図5(c)は、敷設された更生管が橋脚式支持部材によって支持されている状態を示す断面図である。
【図6】図6(a)は、橋脚式支持部材の他の一例を示す斜視図であり、図6(b)は、この橋脚式支持部材によって更生管を支持している状態を示す正面図である。
【図7】図7(a)は、橋脚式支持部材の更に他の一例を示す斜視図であり、図7(b)は、この支持部材によって更生管を支持している状態を示す断面図である。
【図8】図8は、橋桁式支持部材の一例を示す斜視図である。
【図9】図9(a)は、既設管に橋桁式支持部材を配置した状態を示す断面図であり、図9(b)は、橋桁式支持部材を配置した上で更生管を製管している状態を示す断面図であり、図9(c)は、敷設された更生管が橋桁式支持部材によって支持されている状態を示す断面図である。
【図10】図10(a)は、帯状部材の他の一例を示す断面図であり、図10(b)は、その接合状態を示す断面図である。
【図11】図11(a)は、帯状部材の更に他の一例を示す断面図であり、図11(b)は、その接合状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1(a)に帯状部材100の一例を示す。この帯状部材100は、ポリエチレン樹脂を押出成形したものである。この帯状部材100においては、長尺帯板状の基板101の裏面長さ方向に沿って、補強リブ102が複数条、直立した状態で設けられている。なお、補強リブ102には、金属製の補強部材104が埋設されている。又、基板101の一方の側縁部(以下、一側縁部という。)には、基板101の厚み分だけ裏面側に段落ちした段落ち部103が形成されている。
【0029】
図1(b)に示すように、段落ち部103は、帯状部材100を螺旋状に巻き回した際に、後続する帯状部材100における基板101の他方の側縁部(以下、他側縁部という。)を重ね合わせる部分である。製管時において、段落ち部103と他側縁部とを重ね合わせた状態で融着することによって、先行する帯状部材100の一側縁部と後続する帯状部材100の他側縁部とが接合される。
【0030】
図2(a)に示すように、この帯状部材100を自走式の製管機10にて螺旋状に巻き回して更生管Sを形成した場合、製管機10は、連続的に供給される帯状部材100を螺旋状に巻き回して更生管Sを形成し、形成された更生管Sを残置しつつ、施工開始地点から施工終了地点に向かって移動することによって、既設管Lの管路に沿って更生管Sを敷設する。
【0031】
一方、図2(b)に示すように、この帯状部材100を元押し式の製管機10にて螺旋状に巻き回して更生管Sを形成した場合、製管機10は、施工開始地点(発進側立坑L1)にて定点設置され、連続的に供給される帯状部材100を螺旋状に巻き回して更生管Sを形成しつつ、形成された更生管Sを回転させながら施工終了地点に向かって順次挿入することによって、既設管Lの管路に沿って更生管Sを敷設する。
【0032】
自走式の製管機10及び元押し式の製管機10は、いずれも更生管Sを既設管Lの管路に沿って敷設するものであることから、図3に示すように、既設管Lに不陸や蛇行が生じている場合、敷設された更生管Sは既設管Lの不陸や蛇行に追随した形状となる。
【0033】
−実施形態1(橋脚式支持部材を用いた既設管の更生方法)−
図4に、実施形態1において用いられる支持部材1を示す。この支持部材1は、既設管Lの管路に生じている不陸や蛇行における凹み箇所の底面に接地させた状態で配置されて、橋脚として更生管Sを支持する橋脚式支持部材である。
【0034】
実施形態1に用いられる支持部材1は、互いに向かい合う一対の支持部材本体2と、一対の支持部材本体2を一定の間隔をあけた状態で連結する2本の連結棒3とからなる。
【0035】
支持部材本体2は、正面視、環状体を扇状に切断した如きの形状(以下、扇面形状と称する。)を有し、円弧状の接地縁部21と円弧状の支持縁部22を有する。接地縁部21の曲率半径は、既設管Lの内周面の曲率半径と等しくなるように設定されている。一方、支持縁部22の曲率半径は、更生管Sの外周面の曲率半径と等しくなるように設定されている。又、支持部材本体2には、面方向に貫通する連結孔23が二箇所設けられている。この支持部材本体2は、例えば、スチール製の平板を、扇面形状に打ち抜き加工することによって形成することができる。
【0036】
連結棒3は、スチール製の丸棒からなる。一対の支持部材本体2にそれぞれ設けられた連結孔23に、連結棒3の両端を挿入固定することによって、一対の支持部材本体2は、互いに向かい合った状態で一定の間隔をあけて連結される。なお、一対の支持部材本体2の間隔は、帯状部材100に設けられたリブ102の間隔より狭くなるように設定されている。
【0037】
支持部材1における接地縁部21と支持縁部22との距離は、支持部材1の高さとなる。本実施形態においては、接地縁部21と支持縁部22との距離を異ならせた、様々な高さを有する支持部材1を複数準備し、既設管Lの管路に生じた凹み箇所の凹みの程度に応じて、高さの異なる複数の支持部材1から適当な高さを有するものを選択して用いる。
【0038】
図5(a)に、支持部材1を既設管Lの管路に生じた凹み箇所に配置した状態を示す。
【0039】
支持部材1は、既設管Lの管路に生じた凹み箇所において複数個、一定の間隔を空けて配置される。凹み箇所の凹みの程度が小さい箇所においては、接地縁部21と支持縁部22との距離が小さい支持部材1が配置され、凹み箇所の凹みの程度が大きい箇所においては、接地縁部21と支持縁部22との距離が大きい支持部材1が配置される。
【0040】
支持部材1における接地縁部21の曲率半径は、既設管Lの内周面の曲率半径と等しくなるように設定されているから、支持部材1は、既設管Lの内周面に沿って安定して設置される。なお、支持部材1は、既設管Lの内周面に対し、接着剤で接着したり、ボルトで締結したりすることによって、更生管Sの形成中、配置された位置からずれないように固定することが好ましい。
【0041】
支持部材1を既設管Lの管路に生じた凹み箇所に配置した後、本実施形態においては、元押し式の製管機10にて帯状部材100を螺旋状に巻き回し、もって更生管Sを形成した。
【0042】
図5(b)に示すように、回転しながら既設管L内に順次挿入されていく更生管Sは、既設管Lの管路に生じた凹み箇所に至り、凹み箇所に配置された支持部材1によって支持される。更生管Sの外周面と接触する支持縁部22の曲率半径は、更生管Sの外周面の曲率半径と等しくなるように設定されているから、既設管L内に挿入された更生管Sは、支持部材1によって安定して支持される。
【0043】
製管時における更生管Sは、支持部材1によって支持されることによって、既設管Lに生じている不陸や蛇行に追随することなく、直進性を維持したまま施工終了地点に向かって押し進められる。
【0044】
既設管L内に挿入された更生管Sの先端が施工終了地点に到達したら、製管機10による製管作業を停止する。図5(c)に示すように、更生管Sは、支持部材1によって支持された状態のまま、既設管Lの管路内に敷設される。これより、既設管Lに生じている不陸や蛇行に追随することなく、既設管L内に更生管Sが敷設された二重管構造物を構築することができる。
【0045】
最後に、更生管Sの外壁と既設管Lの内壁との間に存する間隙に、モルタル等の裏込め剤を充填し、更生管Sを固定する。
【0046】
ところで、本実施形態においては、図4に示す形状の支持部材1を用いて既設管を構成しているが、図4に示す支持部材1はあくまでも支持部材1の一例であり、支持部材1としては、更生管Sを支持しつつ、一定の形状を維持することができるものであれば、図4に示す形状のものに限られない。図6及び図7にその他の形状の支持部材1を例示する。
【0047】
図6(a)に示す支持部材1は、互いに向かい合う一対の支持部材本体2と、一対の支持部材本体2を一定の間隔をあけた状態で連結する2本の連結棒3とからなる。
【0048】
支持部材本体2は、既設管Lの内周面の曲率半径と等しくなるように湾曲された支持フレーム24の両端に支持円盤25をそれぞれ配した形状を有する。又、支持部材本体2には、面方向に貫通する連結孔23が二箇所設けられている。この支持部材本体2は、例えば、スチール製の平板を打ち抜き加工することによって形成することができる。
【0049】
連結棒3は、スチール製の丸棒からなる。一対の支持部材本体2にそれぞれ設けられた連結孔23に、連結棒3の両端を挿入固定することによって、一対の支持部材本体2は、互いに向かい合った状態で一定の間隔をあけて連結される。なお、一対の支持部材本体2の間隔は、帯状部材100に設けられたリブ102の間隔より狭くなるように設定されている。
【0050】
支持部材本体2における支持円盤25の直径は、支持部材1の高さとなる。従って、本実施形態において、図6(a)に示す支持部材1を用いる場合にあっては、支持円盤25の直径を異ならせた、様々な高さを有する支持部材1を複数準備し、既設管Lの管路に生じた凹み箇所の凹みの程度に応じて、高さの異なる複数の支持部材1から適当な高さを有するものを適宜選択する。
【0051】
図6(a)に示す支持部材1は、既設管Lの管路に生じている不陸や蛇行における凹み箇所の底面に支持フレーム24を接地させた状態で配置される。図6(b)に示すように、支持部材1は、支持フレーム24の両端に配された支持円盤25を更生管Sの外周面に接触させることによって更生管Sを支持する。
【0052】
支持円盤25と更生管Sの接触面積は比較的小さくなることから、回転しながら既設管L内に挿入される更生管Sの外周面と支持円盤25との間に生じる摩擦力は小さくなり、更生管Sの形成中、更生管Sの外周面は支持円盤25上を滑らかに滑る。
【0053】
なお、支持円盤25を支持フレーム24と別体とし、支持円盤25の中心を支持フレーム24の両端にて軸支することによって、支持円盤25を回転可能にすれば、より一層、更生管Sの外周面と支持円盤25との間に生じる摩擦力は小さくなる。
【0054】
一方、図7(a)に示す支持部材1は、一定の厚みを有するブロック体からなり、正面視、扇面形状を有する。ブロック体底面に存する曲面状の接地面26の曲率半径は、既設管Lの内周面の曲率半径と等しくなるように設定されており、ブロック体上面に存する曲面状の支持面27の曲率半径は、更生管Sの外周面の曲率半径と等しくなるように設定されている。
【0055】
支持面27には、その中心線に沿って溝部28が形成されている。この溝部28の幅寸法は、帯状部材100の裏面に設けられた補強リブ102の厚さ寸法より若干大きくなるように設定されている。又、この溝部28の深さ寸法は、補強リブ102の高さ寸法より若干大きくなるように設定されている。この支持部材1は、例えば、スチール製の鋼材を削り出し加工することによって形成することができる。
【0056】
支持部材1における接地面26と支持面27との距離は、支持部材1の高さとなる。従って、本実施形態において、図7(a)に示す支持部材1を用いる場合にあっては、接地面26と支持面27との距離を異ならせた、様々な高さを有する支持部材1を複数準備し、既設管Lの管路に生じた凹み箇所の凹みの程度に応じて、高さの異なる複数の支持部材1から適当な高さを有するものを選択して用いる。
【0057】
図7(a)に示す支持部材1は、既設管Lの管路に生じている不陸や蛇行における凹み箇所の底面に接地面26を接地させた状態で配置される。図7(b)に示すように、この支持部材1は、支持面27を更生管Sの外周面に接触させるとともに、溝部28にて補強リブ102を保持することによって更生管Sを支持する。これにより、更生管Sを安定して支持することができる。
【0058】
−実施形態2(橋桁式支持部材を用いた既設管の更生方法)−
図8に、実施形態2において用いられる支持部材1を示す。この支持部材1は、既設管Lの管路に生じている不陸や蛇行における凹み箇所に掛け渡した状態で配置されて、橋桁として更生管Sを支持する橋桁式支持部材である。
【0059】
実施形態2に用いられる支持部材1は、互いに平行関係にある一対の支持棒4と、一対の支持棒4を一定の間隔をあけた状態で連結する複数の横架材5とからなる。
【0060】
支持棒4は、スチール製の丸棒からなる棒状部材である。
【0061】
横架材5は、一定の曲率半径で湾曲された丸棒からなり、その曲率半径は、既設管Lの内周面の曲率半径と等しくなるように設定されている。一対の支持棒4を平行に並べた状体で、横架材5の両端を一対の支持棒4にそれぞれ溶接することによって、一対の支持棒4は、平行関係を維持したまま一定の間隔をあけて連結される。
【0062】
図9(a)に、支持部材1を既設管Lの管路に生じた凹み箇所に配置した状態を示す。
【0063】
支持部材1は、既設管Lの管路に生じた凹み箇所に掛け渡した状態で配置される。
【0064】
支持部材1における横架材5の曲率半径は、既設管Lの内周面の曲率半径と等しくなるように設定されているから、支持棒4に固定された複数の横架材5の内、少なくとも支持棒の両端付近に配された横架材5は、既設管Lの内周面に沿って接地する。これより、支持部材1は、安定して凹み箇所に配置される。なお、支持部材1は、既設管Lの内周面に対し、接着剤で接着したり、ボルトで締結したりすることによって、更生管Sの形成中、配置された位置からずれないように固定することが好ましい。
【0065】
支持部材1を既設管Lの管路に生じた凹み箇所に配置した後、本実施形態においては、元押し式の製管機10にて帯状部材100を螺旋状に巻き回し、もって更生管Sを形成した。
【0066】
図9(b)に示すように、回転しながら既設管L内に挿入された更生管Sは、既設管Lの管路に生じた凹み箇所に至り、凹み箇所に配置された支持部材1における支持棒4によって支持される。支持棒4は互いに平行関係にある一対の丸棒からなり、又、既設管Lの長さ方向に沿って配置されていることから、回転しながら既設管L内に挿入される更生管Sを外周面と支持縁部22との間に生じる摩擦力は小さくなり、更生管Sの形成中、更生管Sの外周面は支持棒4上を滑らかに滑る。
【0067】
製管時における更生管Sは、支持部材1によって支持されることによって、既設管Lに生じている不陸や蛇行に追随することなく、直進性を維持したまま施工終了地点に向かって押し進められる。
【0068】
既設管L内に挿入された更生管Sの先端が施工終了地点に到達したら、製管機10による製管作業を停止する。図9(c)に示すように、更生管Sは、支持部材1によって支持された状態のまま、既設管Lの管路内に敷設される。これより、既設管Lに生じている不陸や蛇行に追随することなく、既設管Lの管路内に更生管Sが敷設された二重管構造物を構築することができる。
【0069】
最後に、更生管Sの外壁と既設管Lの内壁との間に存する間隙に、モルタル等の裏込め剤を充填し、更生管Sを固定する。
【0070】
ところで、前記実施形態1及び実施形態2においては、いずれも図1に示す帯状部材100を用い、接着によって一側縁部と他側縁部を接合しているが、本発明方法は、図1に示す如きの帯状部材100のみが用いられるものではない。図10及び図11にその他の形状の帯状部材100を例示する。
【0071】
図10(a)に示す帯状部材100は、帯状部材100の一側縁部に雄型105を設ける一方で、他側縁部に雌型106を設けたものである。図10(b)に示すように、この帯状部材100は、一側縁部に設けた雄型105を他側縁部に設けた雌型106に嵌め込むことによって、一側縁部と他側縁部を接合するものである。
【0072】
一方、図11(a)に示す帯状部材100は、帯状部材100の一側縁部と他側縁部とに係合部107を設けたものである。図11(b)に示すように、この帯状部材100は、隣接させた係合部107に、別体の嵌合材108を嵌め込むことによって、一側縁部と他側縁部を接合するものである。
【0073】
又、前記実施形態1及び実施形態2においては、いずれも図2(b)に示す元押し式の製管機10を用いて更生管Sを製管しているが、本発明方法は、図2(a)に示す自走式の製管機10を用いて更生管Sを製管しても良い。
【符号の説明】
【0074】
1 支持部材
10 製管機
100 帯状部材
S 更生管
L 既設管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の帯状部材を螺旋状に巻回すことによって更生管を形成し、この更生管を既設管の管路内に敷設する既設管の更生方法において、
既設管の管路に生じた凹み箇所に支持部材を配置し、
支持部材で更生管を支持しつつ、更生管を既設管の管路内に敷設することを特徴とする既設管の更生方法。
【請求項2】
請求項1に記載の既設管の更生方法において、
支持部材として、凹み箇所の底面に接地させた状態で配置されて、橋脚として更生管を支持するものを用いる既設管の更生方法。
【請求項3】
請求項1に記載の既設管の更生方法において、
支持部材として、凹み箇所に掛け渡した状態で配置されて、橋桁として更生管を支持するものを用いる既設管の更生方法。
【請求項4】
既設管の管路内に、長尺の帯状部材を螺旋状に巻回すことによって形成された更生管が敷設されてなる二重管構造物であって、
この二重管構造物は、
既設管の管路に生じた凹み箇所に配置された支持部材によって更生管が支持されてなることを特徴とする二重管構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−91402(P2012−91402A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240675(P2010−240675)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】