日射利用システム
【課題】省エネルギと快適性を両立させた日射利用システムを提供する。
【解決手段】日射利用システムは、建物の窓から内部の制御対象エリアに入射する光線の透過度を調整可能なブラインド20と、建物の位置情報および時刻情報に基づいて太陽位置を算出する太陽位置算出部4と、太陽位置と目標透過度とを関係付けた制御ルールを記憶する制御ルール記憶部7と、太陽位置算出部4が求めた太陽位置をもとに制御ルールを参照して目標透過度を求め、ブラインド20の透過度が目標透過度に一致するようブラインド20を制御する透過度制御部9と、制御対象エリア内に存在する利用者が使用する個人端末61から制御対象エリア内の明るさ環境に対する要望を取得する要望取得部5と、要望取得部5が取得した要望をもとに制御ルールの太陽位置に対する目標透過度を修正し、修正後の制御ルールを制御ルール記憶部7に更新登録させる目標透過度修正部6を備える。
【解決手段】日射利用システムは、建物の窓から内部の制御対象エリアに入射する光線の透過度を調整可能なブラインド20と、建物の位置情報および時刻情報に基づいて太陽位置を算出する太陽位置算出部4と、太陽位置と目標透過度とを関係付けた制御ルールを記憶する制御ルール記憶部7と、太陽位置算出部4が求めた太陽位置をもとに制御ルールを参照して目標透過度を求め、ブラインド20の透過度が目標透過度に一致するようブラインド20を制御する透過度制御部9と、制御対象エリア内に存在する利用者が使用する個人端末61から制御対象エリア内の明るさ環境に対する要望を取得する要望取得部5と、要望取得部5が取得した要望をもとに制御ルールの太陽位置に対する目標透過度を修正し、修正後の制御ルールを制御ルール記憶部7に更新登録させる目標透過度修正部6を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昼光を屋内に取り入れて照明にかかる電力を低減する日射利用システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、温暖化の影響を受けて省エネルギに対する社会的要求が高まっている。特に、昼光(日光)の導入を利用して照明にかかる電力を低減することは、自然エネルギの活用用途として期待が高く、また昼光を建物開口部である窓から執務室内へ導入する場合、窓本来の機能である利用者の外部環境とのつながりを促すことから執務者の開放感や快適性の面からも有効と考えられる。その一方で、昼光を執務室内に導入する場合、執務者の作業面に昼光が直接入射したり、ディスプレイ装置やテレビジョン装置に昼光が映り込むと、執務者が眩しさを感じて、快適性が悪化するという問題もあった。
【0003】
ところで、省エネルギと快適性を両立させるための制御方式として、執務者の要望や感覚を利用して空調装置を制御する制御方式が従来提案されており(例えば特許文献1参照)、この制御方式を利用し、透過度が可変の遮光部(所謂ブラインド装置)を制御することで、昼光の透過度を変化させ、執務者に眩しさを感じさせないように、昼光を屋内に取り入れることで省エネルギと快適性の両立を図ることが検討されている。
【特許文献1】特開2004−205202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に開示されている制御方式は、現在の室内温度に対する執務者の「暑い」、「寒い」といった要望に基づいて、空調装置の動作を制御する方式であり、このような制御方式は、屋外環境の影響が非常に小さく、ダイナミックに変動する外光に比べ、比較的緩やかに変動する屋内温度が支配的な系であることが前提となっている。
【0005】
このため、時々刻々と変動する昼光を屋内に取り入れて、照明にかかる電力を低減した日射利用システムの場合、例えば図11に示すように14:00〜16:00までの期間Taに比べて、16:00〜18:00までの期間Tbでは屋外照度が急激に低下しているため、屋外が比較的明るい期間Taでの執務者の要望に基づいて、屋外が比較的暗い期間Tbに遮光装置による昼光の透過度を制御すると、遮蔽装置により外光が必要以上に遮蔽されて、屋内に昼光を十分取り入れることができず、省エネルギの効果が十分得られない可能性があった。すなわち日射利用システムの場合は、現在の屋外環境から将来の屋外環境が短時間でダイナミックに変動する可能性が高いため、上記特許文献1の制御方式では昼光の変動に適応できず、屋内の照度を快適な照度に維持することができない可能性があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、省エネルギと快適性を両立させた日射利用システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、建物の開口部を通って建物内部の制御対象エリアに入射する光線の透過度を調整可能な遮蔽部と、現在の時刻情報を取得する時刻取得部と、建物の位置情報を記憶する建物情報データベースと、建物情報データベースから読み込んだ建物情報および時刻取得部により取得された時刻情報に基づいて太陽位置を算出する太陽位置算出部と、太陽位置と目標透過度とを関係付けた制御ルールを記憶する制御ルール記憶部と、太陽位置算出部が求めた太陽位置をもとに制御ルール記憶部に記憶された制御ルールを参照して目標透過度を求め、遮蔽部の透過度が目標透過度に一致するよう遮蔽部を制御する透過度制御部と、制御対象エリアに存在する利用者から制御対象エリアの明るさ環境に対する要望情報を取得する要望取得部と、要望取得部が取得した要望情報に基づいて、制御ルール記憶部に記憶された制御ルールの太陽位置に対する目標透過度を修正し、修正後の制御ルールを制御ルール記憶部に登録する制御ルール修正部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、屋外の照度を取得する屋外照度取得部を備え、制御ルール記憶部に、太陽位置と屋外照度とを目標透過度に関係付けた制御ルールを記憶させるとともに、透過度制御部が、太陽位置算出部の求めた太陽位置と屋外照度取得部により取得された屋外照度とをもとに、制御ルールを参照して目標透過度を求めることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、制御ルール修正部は、制御ルール記憶部に記憶された制御ルールにおいて、屋外照度と目標透過度との相関関係が、屋外照度が明るくなるにつれて目標透過度が低下するという標準パターンから外れると、標準パターンに合うように制御ルールの目標透過度を修正することを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項2の発明において、制御ルール修正部は、太陽位置又は屋外照度のうち少なくとも何れか一方をパラメータとして用い、所定期間内に要望取得部が取得した要望情報のうち、所定範囲のパラメータにおける要望数の全要望数に対する割合が所定のしきい値を超えると、所定範囲のパラメータに対応する制御ルールを追加作成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、制御ルール記憶部には、太陽位置と目標透過度とを関係付けた制御ルールが記憶されており、透過度制御部では、太陽位置算出部が求めた太陽位置をもとに制御ルール記憶部に記憶された制御ルールを参照して目標透過度を求め、遮蔽部の透過度が目標透過度に一致するよう遮蔽部を制御しているので、太陽が移動することによって昼光量がダイナミックに変動する場合でも、太陽位置に合わせて透過度を変化させることによって、省エネルギを図ることができる。しかも、制御ルール修正部では、制御対象エリアに存在する利用者が申告した要望情報をもとに、制御ルールの目標透過度を修正し、修正後の制御ルールを制御ルール記憶部に登録させているので、制御対象エリア内の利用者が明るさ環境について感じた要望を制御ルールに反映させることができ、快適性を向上させることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、太陽位置と屋外照度とを目標透過度に関係付けた制御ルールを用い、屋外の明るさに合わせて遮蔽部の透光度を制御しているので、天候などの影響で屋外照度が変化する場合でも、屋外照度に合わせて遮蔽部による透光度をよりきめ細かく制御することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、制御ルール記憶部に記憶された制御ルールにおいて、屋外照度と目標透過度との相関関係が標準パターンから外れると、制御ルール修正部が、標準パターンに合うように制御ルールの目標透過度を修正しているので、制御対象エリア内の利用者に与える違和感を低減することができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、太陽位置或いは屋外照度の少なくとも何れか一方からなるパラメータについて、所定範囲で要望情報が集中している場合には、この所定範囲のパラメータに対応する制御ルールを追加作成しているので、制御対象エリア内に存在する利用者の多くが申告した要望に対し、制御ルールを追加作成することで、その要望に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を図1〜図10に基づいて説明する。図2(a)(b)は本実施形態の日射利用システムによる制御対象エリアの説明図である。この日射利用システムの制御対象エリア51は例えば事業所の執務室であり、制御対象エリア51を囲む建物50の壁52には窓53が開口し、窓53には電動制御型のベネシャンブラインド(以下ブラインドという)20が装着されている。遮蔽部たるブラインド20は開き角度(開閉度)が可変のスラット21を複数備えており、後述する制御装置1からの制御信号に応じて、ブラインド20がスラット21の開き角度(開閉度)を制御することにより、窓53から制御対象エリア51に入射する昼光の透過度(すなわち昼光の光量)を制御するようになっている。
【0016】
また制御対象エリア51内には、制御対象エリア51内に存在する利用者の机60が複数並べられている。それぞれの机60は、特定の利用者によって使用されるようになっており、各机60にはパーソナルコンピュータ(PC)からなる個人端末61が配置されている。ここにおいて、各個人端末61は、イーサネット(登録商標)のような通信ネットワーク62を介して制御装置1との間で通信が行えるようになっており、制御装置1は通信ネットワーク62を介して各個人端末61から照明環境に関する要望を取得する。尚、本実施形態では制御対象エリア51内で定常的に執務する利用者は12人とする。
【0017】
制御装置1は、図1に示すように時刻取得部2と、建物情報データベース(DB)3と、太陽位置算出部4と、要望取得部5と、目標透過度修正部6と、制御ルール記憶部7と、テーブル修正部8と、透過度制御部9とを主要な構成として備えている。ここにおいて、制御装置1は例えばコンピュータを用いて実現され、太陽位置算出部4、要望取得部5、目標透過度修正部6、テーブル修正部8は、コンピュータに組み込まれたプログラムを演算装置が実行することによって実現される。また目標透過度修正部6とテーブル修正部8とで制御ルール修正部が構成される。
【0018】
時刻取得部2は現在の時刻情報を取得して、太陽位置算出部4に出力する。
【0019】
建物情報DB3には、制御対象エリア51を有する建物50の位置情報や、制御対象エリア51やその窓53の向きなどの情報や、建物50の周囲にある建築物の情報などが予め登録されている。
【0020】
太陽位置算出部4は、時刻取得部2から入力された時刻情報と、建物情報DB3から読み込んだ位置情報をもとに太陽の位置情報を算出するとともに、制御対象エリア51やその窓53の向きと太陽の位置情報とから建物50に対する仮想的な太陽高度(以下、見かけ高度という)を太陽位置として算出する。
【0021】
制御ルール記憶部7には、太陽位置(見かけ高度)と、屋外照度と、ブラインド20による目標透過度とを相互に関連付けた制御ルールが登録されている。表1は制御ルールの一例を示し、太陽の見かけ高度h(deg)が−5≦h<5、5≦h<45、45≦hの各範囲について、昼光照度L(Lux)がL≦10000、10000≦L<35000、35000≦Lの時の目標透過度(%)がそれぞれ規定されている。尚、各々の制御ルールには1番から9番までの識別番号(ルールNo)が割り付けられている。
【0022】
【表1】
【0023】
透過度制御部9は、太陽位置算出部4が算出した太陽位置と、屋外照度取得部11により取得された屋外照度とをもとに、制御ルール記憶部7に記憶された制御ルールを参照して目標透過度を求め、ブラインド20による透過度が目標透過度に一致するようブラインド20に制御信号を出力する。このとき、ブラインド20では、透過度制御部9から入力された制御信号をもとにスラット21の開き角度を制御することによって、透過度を目標透過度に制御している。なお屋外照度取得部11は、建物50の屋上の東西南北の各方位に対して設置された照度計を備え、所定の検出タイミングがくると、それぞれの照度計で各方位の照度データを所定の制御周期(例えば1分間)が経過するまで収集した後、この制御周期における照度データの最大値を検出データとして出力する。図3は制御周期T1における照度データの検出結果を示しており、制御周期T1内で照度データの最大値(最も明るい値)Lmaxを検出データとして出力している。これは、最も明るい時の照度データをもとにブラインド20の透過度を決定することで、昼光による眩しさ感を利用者が感じることのないように配慮したためである。
【0024】
要望取得部5は、各個人端末61から利用者の日射利用に対する要望を取得し、各利用者の要望を集計した結果を目標透過度修正部6に出力する。
【0025】
利用者がブラインドの開閉に関する要望を送信したい場合、各利用者が自分の個人端末61を操作して、個人端末61に組み込まれた要望送信用のソフトウェアを実行すると、個人端末61のディスプレイ装置63には図4に示す要望申告画面が表示される。この要望申告画面には、ブラインドの開閉に関する要望として「今すぐ閉めたい」「閉めたい」「開けたい」という3つの選択肢をそれぞれ選択するための選択ボタンB1〜B3と、選択結果を制御装置1側に送信させるための送信ボタンB4とが表示されており、個人端末61の入力装置(キーボードやマウス)を利用者が操作して、所望の要望に対応する選択ボタンB1,B2,B3を選択した後、送信ボタンB4を選択すると、個人端末61に割り当てられたIPアドレスと選択ボタンB1〜B3の選択結果とが通信ネットワーク62を介して制御装置1に送信される。
【0026】
制御装置1の要望取得部5には、各個人端末61のIPアドレスに対応付けて各個人端末61を使用する利用者の名前が予め登録されており、要望取得部5が、個人端末61から送信されたデータ(IPアドレスおよび要望の内容を含む)を受信すると、送信元の個人端末61のIPアドレスから要望を発した利用者の名前を求め、要望データの送信日および要望の内容(開又は閉)と共に図示しないメモリに所定期間(例えば3日間)記憶させる。下記の表2は要望データのスタック状況の一例を示し、過去3日間に要望データが送信された制御ルールの識別番号(ルールNo)と、要望データを送信した利用者の名前と、要望の内容とが記憶されている
【0027】
【表2】
【0028】
また要望取得部5では、メモリに登録された要望データの集計処理を行っており、各々の制御ルールについて開、閉それぞれの要望数を集計する。
【0029】
ここで、個人端末61から要望取得部5に「今すぐ閉めたい」という要望が入力された場合、要望取得部5では、緊急を要する要望であると判断して、利用者1人の意見だけで透過度制御部9に一時遮蔽指令を出力し、「閉」の要望が1票あったとカウントする。なお透過度制御部9は、要望取得部5からの一時遮蔽指令を受け取ると、所定時間(例えば30分間)だけブラインド20を強制的に遮蔽(透過度0%)させ、所定時間の経過後に通常制御に復帰する。また個人端末61から要望取得部5に「閉めたい」という要望が入力された場合、要望取得部5では「閉」の要望が1票あったとカウントし、個人端末61から要望取得部5に「開けたい」という要望が入力された場合、要望取得部5では「開」の要望が1票あったとカウントする。尚、上記の所定期間(例えば3日間)内に同じ利用者から同じ制御ルールに対して同じ要望が複数入力された場合、複数の要望が入力されたとはカウントせず、1票の要望があったとカウントする。表2の例では、ルールNo1の制御ルールに対して利用者Aから9月9日と9月10日に同じ要望(閉)が入力されているが、これらの要望は1票としてカウントされる。
【0030】
要望取得部5では、各個人端末61から要望が入力される毎に、各々の制御ルールに対する要望を集計しており、集計結果を目標透過度修正部6に出力する。尚、要望取得部5が「開」又は「閉」の要望を集計した結果は表3に示す通りであり、ルールNo1の制御ルールに対しては「閉」の要望が2票、ルールNo2の制御ルールに対しては「閉」の要望が1票、ルールNo3の制御ルールに対しては「開」の要望が2票となっている。
【0031】
【表3】
【0032】
目標透過度修正部6は、要望取得部5から要望の集計結果が入力されると、この集計結果に合意形成ロジックを適用し、制御ルールにおいて太陽位置に対する目標透過度を修正する必要があるか否かを判定し、修正が必要と判定された場合は、目標透過度を修正した制御ルールを制御ルール記憶部7に更新登録する。
【0033】
図5は合意形成ロジックを説明するための説明図であり、「開」の要望率OPをx軸、「閉」の要望率CLをy軸とする二次元直交座標系に判定基準の領域An(n=1,2,3)を設け、2種類の要望率OP,CLをそれぞれx座標及びy座標とする点をプロットすることで条件に適合する領域Anを決定する。なお、個人端末61の総数をN(本実施形態では10)、「開」の要望の申告数をno、「閉」の要望の申告数をncとすると、「開」の要望率OP(%)はOP=no/N×100、「閉」の要望率CL(%)はCL=nc/N×100と表される。
【0034】
目標透過度修正部6による合意形成ロジックでは、大まかに説明すると、開の要望率OPに対して閉の要望率CLの比率が高い領域A1では、透過度を下げる方向(つまりスラット21を閉じる方向)に目標透過度を変更し、また閉の要望率CLに対して開の要望率OPの比率が高い領域A3では、透過度を上げる方向(つまりスラット21を開く方向)に目標透過度を変更し、2種類の要望率OP,CLの比率が1に近い領域(つまり「開」の要望と「閉」の要望が略同数の領域)A2では目標透過度を変更しないように判定を行う。すなわち、本実施形態では、図5に示すように「閉」の要望率OPが100%の点P1と「開」の要望率CLが100%の点P2とを結んだ直線イ、「開」の要望率OPが35%且つ「閉」の要望率CLが65%の点P3と原点Oとを結んだ直線ロ、「閉」の要望率CLが10%の直線ハ、並びにy軸で囲まれた領域を、目標透過度を下げる方向に変更する領域A1としてある。また直線イ、「開」の要望率OPが65%且つ「閉」の要望率CLが35%の点P4と原点Oとを結んだ直線ニ、直線ロ、直線ハ、「開」の要望率OPが10%の直線ホ、並びにx軸及びy軸に囲まれた領域を、目標透過度を変更しない領域A2としてある。さらに直線イ、直線ニ、直線ホ、並びにx軸で囲まれた領域を、目標透過度を下げる方向に変更する領域A3としている。
【0035】
而して、目標透過度修正部6では、要望取得部5から入力された「開」及び「閉」の要望の集計結果をもとに、個々の制御ルール毎に「開」及び「閉」の要望率OP,CLを求めて、2種類の要望率OP,CLをそれぞれx座標及びy座標とする点をプロットし、プロットした点が領域A1に属すれば、当該制御ルールの目標透過度を所定の変更量ΔT(例えば20%)だけ下げ、プロットした点が領域A3に属すれば、当該制御ルールの目標透過度を所定の変更量ΔTだけ上げ、プロットした点が領域A2に属すれば、当該制御ルールの目標透過度を変更しないというように、各制御ルールにおける目標透過度を決定する。そして、目標透過度が変更された場合、目標透過度修正部6は修正後の制御ルールを制御ルール記憶部7に更新登録する。なお目標透過度修正部6が、要望の集計結果に基づいて制御ルールを更新した場合、要望取得部5に対してリセット命令を出力しており、要望取得部5では、目標透過度が修正された制御ルールに対する要望をゼロにリセットした後、集計処理を再開する。例えば表2の集計結果では、No1の制御ルールに対しては「閉」の要望率CLが17%、「開」の要望率OPが0%の点は領域A1内に存在するので、目標透過度修正部6はNo1の制御ルールにおける目標透過度を100%から所定の変更量ΔT(例えば20%)だけ下げて、80%に変更するとともに、No1の要望数を0にリセットする(表4参照)。またNo2の制御ルールに対しては「閉」の要望率CLが8%、「開」の要望率OPが0%の点は領域A2内に存在するので、目標透過度修正部6はNo2の制御ルールにおける目標透過度を修正せず、No2の要望数もそのままの値とする。また更にNo3の制御ルールに対しては「閉」の要望率CLが0%、「開」の要望率OPが17%の点は領域A3内に存在するので、目標透過度修正部6はNo3の制御ルールにおける目標透過度を0%から所定の変更量ΔT(例えば20%)だけ上げて、20%に変更するとともに、No3の要望数を0にリセットする。
【0036】
【表4】
【0037】
このように、目標透過度修正部6は、要望取得部5から入力された要望の集計結果をもとに、制御ルールにおける目標透過度の修正が必要か否かを判定し、修正が必要な場合は、制御ルールにおける目標透過度を変更した後、修正済みの制御ルールを制御ルール記憶部7に更新登録するのであるが、テーブル修正部8では、屋外照度と目標透過度との相関関係が、屋外照度が明るくなるにつれて目標透過度が低下するという標準パターンから外れた制御ルールが存在すると、上記の標準パターンに合うように制御ルールの目標透過度を修正する。また晴天の場合には制御対象エリア51内に直射光が入射しないように配慮する必要があるが、太陽の見かけ高度が低いほど目標透過度を低下させるという標準パターンから外れた制御ルールが存在すると、テーブル修正部8では上記の標準パターンに合うように制御ルールの目標透過度を修正する。すなわちテーブル修正部8では、制御ルール記憶部7に記憶された制御ルールにおいて物理的に矛盾したり、快適性に反するような制御ルールが構築された場合、その制御ルールを修正する。
【0038】
例えば本システムが稼働して間もない時期では、制御ルール記憶部7に登録された複数の制御ルールについて、出現頻度にばらつきが存在する。ここで、6月には屋外照度が35kLux未満となる時間が350時間程度であるのに対して、屋外照度が35kLux以上となる時間は50時間であるので、屋外照度が35kLUX以上の場合に適用される制御ルールについては十分な申告データを収集することができず少数の意見や要望によって合意形成ロジックの結果が左右される可能性がある。そのため合意形成ロジックで決定された制御ルールが少数の意見や要望で左右されてしまい、上記の標準パターンから外れ、物理的にも矛盾する場合が考えられる。すなわち制御ルールの出現頻度のばらつきや、偶発的な要望の申告によって、「屋外照度が明るいほど目標透過度を低下させる」という標準パターンから外れ、図6(a)に示すように、屋外照度L(Lux)が10000≦L<35000の範囲では目標透過度が30%であるのに対して、屋外照度L(Lux)が35000≦Lの範囲では目標透過度が60%と大きくなってしまう場合も起こりえる。ここで、テーブル修正部8では、眩しさ感を抑えるためには屋外照度Lが明るいほど目標透過度を低くするべきと判断し、図6(b)に示すように屋外照度L(Lux)が35000≦Lの範囲で目標透過度を60%から30%に低下させており、屋外照度Lが10000≦Lの範囲では目標透過度を30%に維持することで、標準パターンから外れた制御ルールを修正することができる。
【0039】
また図7(a)に示すように、太陽の見かけ高度が10度付近では目標透過度が100%、見かけ高度が30度付近では目標透過度が40%、見かけ高度が60度付近では目標透過度が60%となるように制御ルールが設定されている場合、見かけ高度が10度付近では、太陽高度が低いにも関わらず目標透過度が100%となっているため、屋内に直射光が入射する可能性がある。そこで、テーブル修正部8では、見かけ高度が10度付近での目標透過度を低下させ且つ見かけ高度に対する目標透過度の変化傾向が連続的となるように(つまり目標透過度の変化曲線イに沿うように)、見かけ高度が10度付近での目標透過度を10%に変更しているので(図7(b)参照)、直射光の入射を防ぐとともに、スラット21の動作の連続性を保ちつつ、その透過度を段階的に変化させることができる。
【0040】
上述のように本システムでは、所定期間に申告された要望の集計結果をもとに制御ルールの目標透過度を修正しているのであるが、建物50の立地やその周辺の建築物など固有の条件によって、特定の太陽高度で室内に昼光が入射してくる場合があり、例えば図9に示すように太陽の見かけ高度が30度付近になると、路面55で反射した光が窓53から室内に入射するという問題があるので、比較的長い期間(例えば1ヶ月〜2ヶ月)で制御ルール自体を見直す必要がある。そこで、本システムでは、要望取得部5が、比較的長い期間(例えば1ヶ月〜2ヶ月)内で「開」又は「閉」の要望数を集計し、要望を取得した時の太陽の見かけ高度及び屋外照度をもとに、太陽の見かけ高度を10度刻み、屋外照度を10kLux刻みとして、要望データの空間分布を構築して、多くの要望が集中している領域を求めている。図8は要望取得部5によって求められた要望データの空間分布を示しており、太陽の見かけ高度が30度〜40度で、且つ、屋外照度が20kLux〜40kLuxの領域(図8中のハッチングを施した領域)では要望データの数が、他の領域に比べて局所的に多くなっている。
【0041】
テーブル修正部8では、要望取得部5によって求められた要望データの空間分布をもとに、制御ルールの追加が必要か否かを判定しており、所定範囲の見かけ高度或いは所定範囲の屋外照度における要望数の、全領域の要望数に対する割合が所定のしきい値よりも高い場合、所定範囲の見かけ高度或いは所定範囲の屋外照度においては、建物固有の原因などでブラインド20の透過度が、利用者の要望を満たしていないと判断する。そして、テーブル修正部8では、要望数が局所的に増加している見かけ高度の角度範囲或いは屋外照度の照度範囲に対応した制御ルールを追加しており、利用者の要望に応じて快適性を高めた制御ルールを実現することができる。例えば図8に示す空間分布の結果から、テーブル修正部5は太陽の見かけ高度が30度〜40度で、且つ、屋外照度が20kLux〜40kLuxの領域において要望数が局所的に増加していると判断し、修正前は見かけ高度h(deg)を−5≦h<5、5≦h<45、45≦hの3段階に区切って制御ルールを作成していたものを、表5に示すように5≦h<45の角度範囲を、5≦h<30の範囲と、30≦h<45の範囲とに細分化した制御ルールを作成することで、見かけ高度が30度〜40度の範囲で利用者から申告された要望を満足できるような制御を行うことができる。
【0042】
以上をまとめると本システムの制御フローは図10に示す通りであり、この制御フローにしたがって本システムの動作説明を行う。
【0043】
制御装置1が動作を開始すると、所定の制御周期が経過する毎に、太陽位置算出部4が、時刻取得部2から現在の時刻情報を取得し(図10のS1)、建物情報DB3から取り込んだ建物情報と時刻情報とを用いて太陽の位置情報(見かけ高度)を算出した後、算出結果を透過度制御部9に出力する(S2)。一方、透過度制御部9では、屋外照度取得部11から屋外照度の測定データを取得し、屋外照度の測定データと太陽の見かけ高度とをもとに、制御ルール記憶部7に記憶された制御ルールを参照して目標透過度を求めており(S4)、スラット21の開き角度を決定して、ブラインド20の開閉角度を制御する(S5)。制御装置1では、所定の制御周期が経過する毎にステップS1〜S5の処理を繰り返し実行することで、太陽の見かけ高度及び屋外照度に応じてスラット21の開き角度を調整し、窓53から屋内の制御対象エリア51に昼光を導入し、照明にかかる電力を低減している。
【0044】
また制御装置1では、個人端末61から要望データが入力されると、以下に示す要望処理フローを実行する。要望処理フローでは、要望取得部5が何れかの個人端末61から要望を取得すると、要望の内容が「今すぐ閉めたい」というものか否かを判断する(S6)。ここで、要望の内容が「今すぐ閉めたい」であれば、要望取得部5は透過度制御部9に一時遮蔽指令を出力した後(S7)、「閉」の要望が1票あったものとして、要望の内容を要望データDBに登録し、要望データの集計処理を行う(S8)。また要望の内容が「今すぐ閉めたい」ではなく、「開けたい」或いは「閉めたい」であれば、要望取得部5は、「開」又は「閉」の要望が1票あったものとして、要望の内容を要望データDBに登録し、要望データの集計処理を行う(S8)。尚、透過度制御部9に一時遮蔽指令が入力された場合、透過度制御部9は、所定時間(例えば30分間)だけブラインド20を強制的に遮蔽(透過度0%)させ、所定時間の経過後に通常制御に復帰する。
【0045】
要望取得部5によるS8の集計処理が終了すると、目標透過度修正部6が要望データの集計結果をもとに合意形成ロジックを適用し、「開」又は「閉」の要望が申告された制御ルールにおいて太陽位置に対する目標透過度を修正する必要があるか否かを判定し(S9)、修正が必要と判定された場合は、制御ルールにおいて目標透過度を修正した後、修正後の制御ルールを制御ルール記憶部7に更新登録し(S10)、修正が不要と判定された場合は要望処理フローを終了する。
【0046】
以上説明したように本システムでは、制御ルール記憶部7に、太陽位置(太陽の見かけ高度)と屋外照度とを目標透過度に関係付けた制御ルールを記憶させており、透過度制御部9では、太陽位置算出部4が求めた太陽位置と屋外照度取得部11が取得した屋外照度をもとに、制御ルール記憶部7に記憶された制御ルールを参照して目標透過度を求め、ブラインド20の透過度が目標透過度に一致するようブラインド20を制御しているので、太陽が移動することによって昼光量がダイナミックに変動する場合でも、太陽位置に合わせて透過度を変化させることで、省エネルギを図ることができる。しかも、制御ルール修正部としての目標透過度修正部6は、制御対象エリア51に存在する利用者が申告した要望情報をもとに、制御ルールの目標透過度を修正し、修正後の制御ルールを制御ルール記憶部7に登録させているので、制御対象エリア内の利用者が明るさ環境について感じた要望を制御ルールに反映させることができ、快適性を向上させることができる。また本システムでは、太陽位置と屋外照度とを目標透過度に関係付けた制御ルールを用い、屋外の明るさに合わせてブラインド20の透光度を制御しているので、天候などの影響で屋外照度が変化する場合でも、屋外照度に合わせてブラインド20による透光度をよりきめ細かく制御することが可能であるが、太陽位置を目標透過度に関係付けた制御ルールを用い、現在時刻から求めた太陽位置をもとに目標透過度を決定してもよい。
【0047】
また本システムでは、制御ルール記憶部7に記憶された制御ルールにおいて、屋外照度と目標透過度との相関関係が標準パターンから外れると、制御ルール修正部たるテーブル修正部8が、標準パターンに合うように制御ルールの目標透過度を修正しているので、制御対象エリア51内の利用者に与える違和感を低減できる。
【0048】
さらに制御ルール修正部としてのテーブル修正部8では、所定期間内に要望取得部5が取得した要望情報のうち、所定範囲の太陽位置で要望情報が集中している場合には、この所定範囲の太陽位置に対応する制御ルールを追加作成しているので、制御対象エリア51内に存在する利用者の多くが申告した要望に対し、制御ルールを追加作成することで、その要望に対応することができる。尚、テーブル修正部8では、太陽位置又は屋外照度のうち少なくとも何れか一方をパラメータとして用い、所定期間内に要望取得部5が取得した要望情報のうち、所定範囲のパラメータにおける要望数の全要望数に対する割合が所定のしきい値を超えると、所定範囲のパラメータに対応する制御ルールを追加作成してもよく、要望が集中している範囲のパラメータについて制御ルールを追加することで、よりきめ細かい制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態の日射利用システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】同上を適用する制御対象エリアを示し、(a)は制御対象エリアの平面図、(b)は制御対象エリアの側断面図である。
【図3】同上の屋外照度取得部によって取得される照度データの説明図である。
【図4】同上の個人端末に表示される画面の例図である。
【図5】同上の合意形成ロジックを説明するための説明図である。
【図6】(a)(b)は同上の制御ルールの修正方法を説明する説明図である。
【図7】(a)(b)は同上の制御ルールの修正方法を説明する説明図である。
【図8】同上の要望データの空間分布を示す説明図である。
【図9】同上を適用する制御対象エリアに入射する昼光の説明図である。
【図10】同上の動作を説明するフローチャートである。
【図11】従来の日射利用システムによる制御方式の説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 制御装置
2 時刻取得部
3 建物情報DB
4 太陽位置算出部
5 要望取得部
6 目標透過度修正部(制御ルール修正部)
7 制御ルール記憶部
8 テーブル制御部(制御ルール修正部)
9 透過度制御部
11 屋外照度取得部
20 ブラインド(遮蔽部)
50 建物
51 制御対象エリア
53 窓(開口部)
61 個人端末
【技術分野】
【0001】
本発明は、昼光を屋内に取り入れて照明にかかる電力を低減する日射利用システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、温暖化の影響を受けて省エネルギに対する社会的要求が高まっている。特に、昼光(日光)の導入を利用して照明にかかる電力を低減することは、自然エネルギの活用用途として期待が高く、また昼光を建物開口部である窓から執務室内へ導入する場合、窓本来の機能である利用者の外部環境とのつながりを促すことから執務者の開放感や快適性の面からも有効と考えられる。その一方で、昼光を執務室内に導入する場合、執務者の作業面に昼光が直接入射したり、ディスプレイ装置やテレビジョン装置に昼光が映り込むと、執務者が眩しさを感じて、快適性が悪化するという問題もあった。
【0003】
ところで、省エネルギと快適性を両立させるための制御方式として、執務者の要望や感覚を利用して空調装置を制御する制御方式が従来提案されており(例えば特許文献1参照)、この制御方式を利用し、透過度が可変の遮光部(所謂ブラインド装置)を制御することで、昼光の透過度を変化させ、執務者に眩しさを感じさせないように、昼光を屋内に取り入れることで省エネルギと快適性の両立を図ることが検討されている。
【特許文献1】特開2004−205202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に開示されている制御方式は、現在の室内温度に対する執務者の「暑い」、「寒い」といった要望に基づいて、空調装置の動作を制御する方式であり、このような制御方式は、屋外環境の影響が非常に小さく、ダイナミックに変動する外光に比べ、比較的緩やかに変動する屋内温度が支配的な系であることが前提となっている。
【0005】
このため、時々刻々と変動する昼光を屋内に取り入れて、照明にかかる電力を低減した日射利用システムの場合、例えば図11に示すように14:00〜16:00までの期間Taに比べて、16:00〜18:00までの期間Tbでは屋外照度が急激に低下しているため、屋外が比較的明るい期間Taでの執務者の要望に基づいて、屋外が比較的暗い期間Tbに遮光装置による昼光の透過度を制御すると、遮蔽装置により外光が必要以上に遮蔽されて、屋内に昼光を十分取り入れることができず、省エネルギの効果が十分得られない可能性があった。すなわち日射利用システムの場合は、現在の屋外環境から将来の屋外環境が短時間でダイナミックに変動する可能性が高いため、上記特許文献1の制御方式では昼光の変動に適応できず、屋内の照度を快適な照度に維持することができない可能性があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、省エネルギと快適性を両立させた日射利用システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、建物の開口部を通って建物内部の制御対象エリアに入射する光線の透過度を調整可能な遮蔽部と、現在の時刻情報を取得する時刻取得部と、建物の位置情報を記憶する建物情報データベースと、建物情報データベースから読み込んだ建物情報および時刻取得部により取得された時刻情報に基づいて太陽位置を算出する太陽位置算出部と、太陽位置と目標透過度とを関係付けた制御ルールを記憶する制御ルール記憶部と、太陽位置算出部が求めた太陽位置をもとに制御ルール記憶部に記憶された制御ルールを参照して目標透過度を求め、遮蔽部の透過度が目標透過度に一致するよう遮蔽部を制御する透過度制御部と、制御対象エリアに存在する利用者から制御対象エリアの明るさ環境に対する要望情報を取得する要望取得部と、要望取得部が取得した要望情報に基づいて、制御ルール記憶部に記憶された制御ルールの太陽位置に対する目標透過度を修正し、修正後の制御ルールを制御ルール記憶部に登録する制御ルール修正部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、屋外の照度を取得する屋外照度取得部を備え、制御ルール記憶部に、太陽位置と屋外照度とを目標透過度に関係付けた制御ルールを記憶させるとともに、透過度制御部が、太陽位置算出部の求めた太陽位置と屋外照度取得部により取得された屋外照度とをもとに、制御ルールを参照して目標透過度を求めることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、制御ルール修正部は、制御ルール記憶部に記憶された制御ルールにおいて、屋外照度と目標透過度との相関関係が、屋外照度が明るくなるにつれて目標透過度が低下するという標準パターンから外れると、標準パターンに合うように制御ルールの目標透過度を修正することを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項2の発明において、制御ルール修正部は、太陽位置又は屋外照度のうち少なくとも何れか一方をパラメータとして用い、所定期間内に要望取得部が取得した要望情報のうち、所定範囲のパラメータにおける要望数の全要望数に対する割合が所定のしきい値を超えると、所定範囲のパラメータに対応する制御ルールを追加作成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、制御ルール記憶部には、太陽位置と目標透過度とを関係付けた制御ルールが記憶されており、透過度制御部では、太陽位置算出部が求めた太陽位置をもとに制御ルール記憶部に記憶された制御ルールを参照して目標透過度を求め、遮蔽部の透過度が目標透過度に一致するよう遮蔽部を制御しているので、太陽が移動することによって昼光量がダイナミックに変動する場合でも、太陽位置に合わせて透過度を変化させることによって、省エネルギを図ることができる。しかも、制御ルール修正部では、制御対象エリアに存在する利用者が申告した要望情報をもとに、制御ルールの目標透過度を修正し、修正後の制御ルールを制御ルール記憶部に登録させているので、制御対象エリア内の利用者が明るさ環境について感じた要望を制御ルールに反映させることができ、快適性を向上させることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、太陽位置と屋外照度とを目標透過度に関係付けた制御ルールを用い、屋外の明るさに合わせて遮蔽部の透光度を制御しているので、天候などの影響で屋外照度が変化する場合でも、屋外照度に合わせて遮蔽部による透光度をよりきめ細かく制御することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、制御ルール記憶部に記憶された制御ルールにおいて、屋外照度と目標透過度との相関関係が標準パターンから外れると、制御ルール修正部が、標準パターンに合うように制御ルールの目標透過度を修正しているので、制御対象エリア内の利用者に与える違和感を低減することができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、太陽位置或いは屋外照度の少なくとも何れか一方からなるパラメータについて、所定範囲で要望情報が集中している場合には、この所定範囲のパラメータに対応する制御ルールを追加作成しているので、制御対象エリア内に存在する利用者の多くが申告した要望に対し、制御ルールを追加作成することで、その要望に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を図1〜図10に基づいて説明する。図2(a)(b)は本実施形態の日射利用システムによる制御対象エリアの説明図である。この日射利用システムの制御対象エリア51は例えば事業所の執務室であり、制御対象エリア51を囲む建物50の壁52には窓53が開口し、窓53には電動制御型のベネシャンブラインド(以下ブラインドという)20が装着されている。遮蔽部たるブラインド20は開き角度(開閉度)が可変のスラット21を複数備えており、後述する制御装置1からの制御信号に応じて、ブラインド20がスラット21の開き角度(開閉度)を制御することにより、窓53から制御対象エリア51に入射する昼光の透過度(すなわち昼光の光量)を制御するようになっている。
【0016】
また制御対象エリア51内には、制御対象エリア51内に存在する利用者の机60が複数並べられている。それぞれの机60は、特定の利用者によって使用されるようになっており、各机60にはパーソナルコンピュータ(PC)からなる個人端末61が配置されている。ここにおいて、各個人端末61は、イーサネット(登録商標)のような通信ネットワーク62を介して制御装置1との間で通信が行えるようになっており、制御装置1は通信ネットワーク62を介して各個人端末61から照明環境に関する要望を取得する。尚、本実施形態では制御対象エリア51内で定常的に執務する利用者は12人とする。
【0017】
制御装置1は、図1に示すように時刻取得部2と、建物情報データベース(DB)3と、太陽位置算出部4と、要望取得部5と、目標透過度修正部6と、制御ルール記憶部7と、テーブル修正部8と、透過度制御部9とを主要な構成として備えている。ここにおいて、制御装置1は例えばコンピュータを用いて実現され、太陽位置算出部4、要望取得部5、目標透過度修正部6、テーブル修正部8は、コンピュータに組み込まれたプログラムを演算装置が実行することによって実現される。また目標透過度修正部6とテーブル修正部8とで制御ルール修正部が構成される。
【0018】
時刻取得部2は現在の時刻情報を取得して、太陽位置算出部4に出力する。
【0019】
建物情報DB3には、制御対象エリア51を有する建物50の位置情報や、制御対象エリア51やその窓53の向きなどの情報や、建物50の周囲にある建築物の情報などが予め登録されている。
【0020】
太陽位置算出部4は、時刻取得部2から入力された時刻情報と、建物情報DB3から読み込んだ位置情報をもとに太陽の位置情報を算出するとともに、制御対象エリア51やその窓53の向きと太陽の位置情報とから建物50に対する仮想的な太陽高度(以下、見かけ高度という)を太陽位置として算出する。
【0021】
制御ルール記憶部7には、太陽位置(見かけ高度)と、屋外照度と、ブラインド20による目標透過度とを相互に関連付けた制御ルールが登録されている。表1は制御ルールの一例を示し、太陽の見かけ高度h(deg)が−5≦h<5、5≦h<45、45≦hの各範囲について、昼光照度L(Lux)がL≦10000、10000≦L<35000、35000≦Lの時の目標透過度(%)がそれぞれ規定されている。尚、各々の制御ルールには1番から9番までの識別番号(ルールNo)が割り付けられている。
【0022】
【表1】
【0023】
透過度制御部9は、太陽位置算出部4が算出した太陽位置と、屋外照度取得部11により取得された屋外照度とをもとに、制御ルール記憶部7に記憶された制御ルールを参照して目標透過度を求め、ブラインド20による透過度が目標透過度に一致するようブラインド20に制御信号を出力する。このとき、ブラインド20では、透過度制御部9から入力された制御信号をもとにスラット21の開き角度を制御することによって、透過度を目標透過度に制御している。なお屋外照度取得部11は、建物50の屋上の東西南北の各方位に対して設置された照度計を備え、所定の検出タイミングがくると、それぞれの照度計で各方位の照度データを所定の制御周期(例えば1分間)が経過するまで収集した後、この制御周期における照度データの最大値を検出データとして出力する。図3は制御周期T1における照度データの検出結果を示しており、制御周期T1内で照度データの最大値(最も明るい値)Lmaxを検出データとして出力している。これは、最も明るい時の照度データをもとにブラインド20の透過度を決定することで、昼光による眩しさ感を利用者が感じることのないように配慮したためである。
【0024】
要望取得部5は、各個人端末61から利用者の日射利用に対する要望を取得し、各利用者の要望を集計した結果を目標透過度修正部6に出力する。
【0025】
利用者がブラインドの開閉に関する要望を送信したい場合、各利用者が自分の個人端末61を操作して、個人端末61に組み込まれた要望送信用のソフトウェアを実行すると、個人端末61のディスプレイ装置63には図4に示す要望申告画面が表示される。この要望申告画面には、ブラインドの開閉に関する要望として「今すぐ閉めたい」「閉めたい」「開けたい」という3つの選択肢をそれぞれ選択するための選択ボタンB1〜B3と、選択結果を制御装置1側に送信させるための送信ボタンB4とが表示されており、個人端末61の入力装置(キーボードやマウス)を利用者が操作して、所望の要望に対応する選択ボタンB1,B2,B3を選択した後、送信ボタンB4を選択すると、個人端末61に割り当てられたIPアドレスと選択ボタンB1〜B3の選択結果とが通信ネットワーク62を介して制御装置1に送信される。
【0026】
制御装置1の要望取得部5には、各個人端末61のIPアドレスに対応付けて各個人端末61を使用する利用者の名前が予め登録されており、要望取得部5が、個人端末61から送信されたデータ(IPアドレスおよび要望の内容を含む)を受信すると、送信元の個人端末61のIPアドレスから要望を発した利用者の名前を求め、要望データの送信日および要望の内容(開又は閉)と共に図示しないメモリに所定期間(例えば3日間)記憶させる。下記の表2は要望データのスタック状況の一例を示し、過去3日間に要望データが送信された制御ルールの識別番号(ルールNo)と、要望データを送信した利用者の名前と、要望の内容とが記憶されている
【0027】
【表2】
【0028】
また要望取得部5では、メモリに登録された要望データの集計処理を行っており、各々の制御ルールについて開、閉それぞれの要望数を集計する。
【0029】
ここで、個人端末61から要望取得部5に「今すぐ閉めたい」という要望が入力された場合、要望取得部5では、緊急を要する要望であると判断して、利用者1人の意見だけで透過度制御部9に一時遮蔽指令を出力し、「閉」の要望が1票あったとカウントする。なお透過度制御部9は、要望取得部5からの一時遮蔽指令を受け取ると、所定時間(例えば30分間)だけブラインド20を強制的に遮蔽(透過度0%)させ、所定時間の経過後に通常制御に復帰する。また個人端末61から要望取得部5に「閉めたい」という要望が入力された場合、要望取得部5では「閉」の要望が1票あったとカウントし、個人端末61から要望取得部5に「開けたい」という要望が入力された場合、要望取得部5では「開」の要望が1票あったとカウントする。尚、上記の所定期間(例えば3日間)内に同じ利用者から同じ制御ルールに対して同じ要望が複数入力された場合、複数の要望が入力されたとはカウントせず、1票の要望があったとカウントする。表2の例では、ルールNo1の制御ルールに対して利用者Aから9月9日と9月10日に同じ要望(閉)が入力されているが、これらの要望は1票としてカウントされる。
【0030】
要望取得部5では、各個人端末61から要望が入力される毎に、各々の制御ルールに対する要望を集計しており、集計結果を目標透過度修正部6に出力する。尚、要望取得部5が「開」又は「閉」の要望を集計した結果は表3に示す通りであり、ルールNo1の制御ルールに対しては「閉」の要望が2票、ルールNo2の制御ルールに対しては「閉」の要望が1票、ルールNo3の制御ルールに対しては「開」の要望が2票となっている。
【0031】
【表3】
【0032】
目標透過度修正部6は、要望取得部5から要望の集計結果が入力されると、この集計結果に合意形成ロジックを適用し、制御ルールにおいて太陽位置に対する目標透過度を修正する必要があるか否かを判定し、修正が必要と判定された場合は、目標透過度を修正した制御ルールを制御ルール記憶部7に更新登録する。
【0033】
図5は合意形成ロジックを説明するための説明図であり、「開」の要望率OPをx軸、「閉」の要望率CLをy軸とする二次元直交座標系に判定基準の領域An(n=1,2,3)を設け、2種類の要望率OP,CLをそれぞれx座標及びy座標とする点をプロットすることで条件に適合する領域Anを決定する。なお、個人端末61の総数をN(本実施形態では10)、「開」の要望の申告数をno、「閉」の要望の申告数をncとすると、「開」の要望率OP(%)はOP=no/N×100、「閉」の要望率CL(%)はCL=nc/N×100と表される。
【0034】
目標透過度修正部6による合意形成ロジックでは、大まかに説明すると、開の要望率OPに対して閉の要望率CLの比率が高い領域A1では、透過度を下げる方向(つまりスラット21を閉じる方向)に目標透過度を変更し、また閉の要望率CLに対して開の要望率OPの比率が高い領域A3では、透過度を上げる方向(つまりスラット21を開く方向)に目標透過度を変更し、2種類の要望率OP,CLの比率が1に近い領域(つまり「開」の要望と「閉」の要望が略同数の領域)A2では目標透過度を変更しないように判定を行う。すなわち、本実施形態では、図5に示すように「閉」の要望率OPが100%の点P1と「開」の要望率CLが100%の点P2とを結んだ直線イ、「開」の要望率OPが35%且つ「閉」の要望率CLが65%の点P3と原点Oとを結んだ直線ロ、「閉」の要望率CLが10%の直線ハ、並びにy軸で囲まれた領域を、目標透過度を下げる方向に変更する領域A1としてある。また直線イ、「開」の要望率OPが65%且つ「閉」の要望率CLが35%の点P4と原点Oとを結んだ直線ニ、直線ロ、直線ハ、「開」の要望率OPが10%の直線ホ、並びにx軸及びy軸に囲まれた領域を、目標透過度を変更しない領域A2としてある。さらに直線イ、直線ニ、直線ホ、並びにx軸で囲まれた領域を、目標透過度を下げる方向に変更する領域A3としている。
【0035】
而して、目標透過度修正部6では、要望取得部5から入力された「開」及び「閉」の要望の集計結果をもとに、個々の制御ルール毎に「開」及び「閉」の要望率OP,CLを求めて、2種類の要望率OP,CLをそれぞれx座標及びy座標とする点をプロットし、プロットした点が領域A1に属すれば、当該制御ルールの目標透過度を所定の変更量ΔT(例えば20%)だけ下げ、プロットした点が領域A3に属すれば、当該制御ルールの目標透過度を所定の変更量ΔTだけ上げ、プロットした点が領域A2に属すれば、当該制御ルールの目標透過度を変更しないというように、各制御ルールにおける目標透過度を決定する。そして、目標透過度が変更された場合、目標透過度修正部6は修正後の制御ルールを制御ルール記憶部7に更新登録する。なお目標透過度修正部6が、要望の集計結果に基づいて制御ルールを更新した場合、要望取得部5に対してリセット命令を出力しており、要望取得部5では、目標透過度が修正された制御ルールに対する要望をゼロにリセットした後、集計処理を再開する。例えば表2の集計結果では、No1の制御ルールに対しては「閉」の要望率CLが17%、「開」の要望率OPが0%の点は領域A1内に存在するので、目標透過度修正部6はNo1の制御ルールにおける目標透過度を100%から所定の変更量ΔT(例えば20%)だけ下げて、80%に変更するとともに、No1の要望数を0にリセットする(表4参照)。またNo2の制御ルールに対しては「閉」の要望率CLが8%、「開」の要望率OPが0%の点は領域A2内に存在するので、目標透過度修正部6はNo2の制御ルールにおける目標透過度を修正せず、No2の要望数もそのままの値とする。また更にNo3の制御ルールに対しては「閉」の要望率CLが0%、「開」の要望率OPが17%の点は領域A3内に存在するので、目標透過度修正部6はNo3の制御ルールにおける目標透過度を0%から所定の変更量ΔT(例えば20%)だけ上げて、20%に変更するとともに、No3の要望数を0にリセットする。
【0036】
【表4】
【0037】
このように、目標透過度修正部6は、要望取得部5から入力された要望の集計結果をもとに、制御ルールにおける目標透過度の修正が必要か否かを判定し、修正が必要な場合は、制御ルールにおける目標透過度を変更した後、修正済みの制御ルールを制御ルール記憶部7に更新登録するのであるが、テーブル修正部8では、屋外照度と目標透過度との相関関係が、屋外照度が明るくなるにつれて目標透過度が低下するという標準パターンから外れた制御ルールが存在すると、上記の標準パターンに合うように制御ルールの目標透過度を修正する。また晴天の場合には制御対象エリア51内に直射光が入射しないように配慮する必要があるが、太陽の見かけ高度が低いほど目標透過度を低下させるという標準パターンから外れた制御ルールが存在すると、テーブル修正部8では上記の標準パターンに合うように制御ルールの目標透過度を修正する。すなわちテーブル修正部8では、制御ルール記憶部7に記憶された制御ルールにおいて物理的に矛盾したり、快適性に反するような制御ルールが構築された場合、その制御ルールを修正する。
【0038】
例えば本システムが稼働して間もない時期では、制御ルール記憶部7に登録された複数の制御ルールについて、出現頻度にばらつきが存在する。ここで、6月には屋外照度が35kLux未満となる時間が350時間程度であるのに対して、屋外照度が35kLux以上となる時間は50時間であるので、屋外照度が35kLUX以上の場合に適用される制御ルールについては十分な申告データを収集することができず少数の意見や要望によって合意形成ロジックの結果が左右される可能性がある。そのため合意形成ロジックで決定された制御ルールが少数の意見や要望で左右されてしまい、上記の標準パターンから外れ、物理的にも矛盾する場合が考えられる。すなわち制御ルールの出現頻度のばらつきや、偶発的な要望の申告によって、「屋外照度が明るいほど目標透過度を低下させる」という標準パターンから外れ、図6(a)に示すように、屋外照度L(Lux)が10000≦L<35000の範囲では目標透過度が30%であるのに対して、屋外照度L(Lux)が35000≦Lの範囲では目標透過度が60%と大きくなってしまう場合も起こりえる。ここで、テーブル修正部8では、眩しさ感を抑えるためには屋外照度Lが明るいほど目標透過度を低くするべきと判断し、図6(b)に示すように屋外照度L(Lux)が35000≦Lの範囲で目標透過度を60%から30%に低下させており、屋外照度Lが10000≦Lの範囲では目標透過度を30%に維持することで、標準パターンから外れた制御ルールを修正することができる。
【0039】
また図7(a)に示すように、太陽の見かけ高度が10度付近では目標透過度が100%、見かけ高度が30度付近では目標透過度が40%、見かけ高度が60度付近では目標透過度が60%となるように制御ルールが設定されている場合、見かけ高度が10度付近では、太陽高度が低いにも関わらず目標透過度が100%となっているため、屋内に直射光が入射する可能性がある。そこで、テーブル修正部8では、見かけ高度が10度付近での目標透過度を低下させ且つ見かけ高度に対する目標透過度の変化傾向が連続的となるように(つまり目標透過度の変化曲線イに沿うように)、見かけ高度が10度付近での目標透過度を10%に変更しているので(図7(b)参照)、直射光の入射を防ぐとともに、スラット21の動作の連続性を保ちつつ、その透過度を段階的に変化させることができる。
【0040】
上述のように本システムでは、所定期間に申告された要望の集計結果をもとに制御ルールの目標透過度を修正しているのであるが、建物50の立地やその周辺の建築物など固有の条件によって、特定の太陽高度で室内に昼光が入射してくる場合があり、例えば図9に示すように太陽の見かけ高度が30度付近になると、路面55で反射した光が窓53から室内に入射するという問題があるので、比較的長い期間(例えば1ヶ月〜2ヶ月)で制御ルール自体を見直す必要がある。そこで、本システムでは、要望取得部5が、比較的長い期間(例えば1ヶ月〜2ヶ月)内で「開」又は「閉」の要望数を集計し、要望を取得した時の太陽の見かけ高度及び屋外照度をもとに、太陽の見かけ高度を10度刻み、屋外照度を10kLux刻みとして、要望データの空間分布を構築して、多くの要望が集中している領域を求めている。図8は要望取得部5によって求められた要望データの空間分布を示しており、太陽の見かけ高度が30度〜40度で、且つ、屋外照度が20kLux〜40kLuxの領域(図8中のハッチングを施した領域)では要望データの数が、他の領域に比べて局所的に多くなっている。
【0041】
テーブル修正部8では、要望取得部5によって求められた要望データの空間分布をもとに、制御ルールの追加が必要か否かを判定しており、所定範囲の見かけ高度或いは所定範囲の屋外照度における要望数の、全領域の要望数に対する割合が所定のしきい値よりも高い場合、所定範囲の見かけ高度或いは所定範囲の屋外照度においては、建物固有の原因などでブラインド20の透過度が、利用者の要望を満たしていないと判断する。そして、テーブル修正部8では、要望数が局所的に増加している見かけ高度の角度範囲或いは屋外照度の照度範囲に対応した制御ルールを追加しており、利用者の要望に応じて快適性を高めた制御ルールを実現することができる。例えば図8に示す空間分布の結果から、テーブル修正部5は太陽の見かけ高度が30度〜40度で、且つ、屋外照度が20kLux〜40kLuxの領域において要望数が局所的に増加していると判断し、修正前は見かけ高度h(deg)を−5≦h<5、5≦h<45、45≦hの3段階に区切って制御ルールを作成していたものを、表5に示すように5≦h<45の角度範囲を、5≦h<30の範囲と、30≦h<45の範囲とに細分化した制御ルールを作成することで、見かけ高度が30度〜40度の範囲で利用者から申告された要望を満足できるような制御を行うことができる。
【0042】
以上をまとめると本システムの制御フローは図10に示す通りであり、この制御フローにしたがって本システムの動作説明を行う。
【0043】
制御装置1が動作を開始すると、所定の制御周期が経過する毎に、太陽位置算出部4が、時刻取得部2から現在の時刻情報を取得し(図10のS1)、建物情報DB3から取り込んだ建物情報と時刻情報とを用いて太陽の位置情報(見かけ高度)を算出した後、算出結果を透過度制御部9に出力する(S2)。一方、透過度制御部9では、屋外照度取得部11から屋外照度の測定データを取得し、屋外照度の測定データと太陽の見かけ高度とをもとに、制御ルール記憶部7に記憶された制御ルールを参照して目標透過度を求めており(S4)、スラット21の開き角度を決定して、ブラインド20の開閉角度を制御する(S5)。制御装置1では、所定の制御周期が経過する毎にステップS1〜S5の処理を繰り返し実行することで、太陽の見かけ高度及び屋外照度に応じてスラット21の開き角度を調整し、窓53から屋内の制御対象エリア51に昼光を導入し、照明にかかる電力を低減している。
【0044】
また制御装置1では、個人端末61から要望データが入力されると、以下に示す要望処理フローを実行する。要望処理フローでは、要望取得部5が何れかの個人端末61から要望を取得すると、要望の内容が「今すぐ閉めたい」というものか否かを判断する(S6)。ここで、要望の内容が「今すぐ閉めたい」であれば、要望取得部5は透過度制御部9に一時遮蔽指令を出力した後(S7)、「閉」の要望が1票あったものとして、要望の内容を要望データDBに登録し、要望データの集計処理を行う(S8)。また要望の内容が「今すぐ閉めたい」ではなく、「開けたい」或いは「閉めたい」であれば、要望取得部5は、「開」又は「閉」の要望が1票あったものとして、要望の内容を要望データDBに登録し、要望データの集計処理を行う(S8)。尚、透過度制御部9に一時遮蔽指令が入力された場合、透過度制御部9は、所定時間(例えば30分間)だけブラインド20を強制的に遮蔽(透過度0%)させ、所定時間の経過後に通常制御に復帰する。
【0045】
要望取得部5によるS8の集計処理が終了すると、目標透過度修正部6が要望データの集計結果をもとに合意形成ロジックを適用し、「開」又は「閉」の要望が申告された制御ルールにおいて太陽位置に対する目標透過度を修正する必要があるか否かを判定し(S9)、修正が必要と判定された場合は、制御ルールにおいて目標透過度を修正した後、修正後の制御ルールを制御ルール記憶部7に更新登録し(S10)、修正が不要と判定された場合は要望処理フローを終了する。
【0046】
以上説明したように本システムでは、制御ルール記憶部7に、太陽位置(太陽の見かけ高度)と屋外照度とを目標透過度に関係付けた制御ルールを記憶させており、透過度制御部9では、太陽位置算出部4が求めた太陽位置と屋外照度取得部11が取得した屋外照度をもとに、制御ルール記憶部7に記憶された制御ルールを参照して目標透過度を求め、ブラインド20の透過度が目標透過度に一致するようブラインド20を制御しているので、太陽が移動することによって昼光量がダイナミックに変動する場合でも、太陽位置に合わせて透過度を変化させることで、省エネルギを図ることができる。しかも、制御ルール修正部としての目標透過度修正部6は、制御対象エリア51に存在する利用者が申告した要望情報をもとに、制御ルールの目標透過度を修正し、修正後の制御ルールを制御ルール記憶部7に登録させているので、制御対象エリア内の利用者が明るさ環境について感じた要望を制御ルールに反映させることができ、快適性を向上させることができる。また本システムでは、太陽位置と屋外照度とを目標透過度に関係付けた制御ルールを用い、屋外の明るさに合わせてブラインド20の透光度を制御しているので、天候などの影響で屋外照度が変化する場合でも、屋外照度に合わせてブラインド20による透光度をよりきめ細かく制御することが可能であるが、太陽位置を目標透過度に関係付けた制御ルールを用い、現在時刻から求めた太陽位置をもとに目標透過度を決定してもよい。
【0047】
また本システムでは、制御ルール記憶部7に記憶された制御ルールにおいて、屋外照度と目標透過度との相関関係が標準パターンから外れると、制御ルール修正部たるテーブル修正部8が、標準パターンに合うように制御ルールの目標透過度を修正しているので、制御対象エリア51内の利用者に与える違和感を低減できる。
【0048】
さらに制御ルール修正部としてのテーブル修正部8では、所定期間内に要望取得部5が取得した要望情報のうち、所定範囲の太陽位置で要望情報が集中している場合には、この所定範囲の太陽位置に対応する制御ルールを追加作成しているので、制御対象エリア51内に存在する利用者の多くが申告した要望に対し、制御ルールを追加作成することで、その要望に対応することができる。尚、テーブル修正部8では、太陽位置又は屋外照度のうち少なくとも何れか一方をパラメータとして用い、所定期間内に要望取得部5が取得した要望情報のうち、所定範囲のパラメータにおける要望数の全要望数に対する割合が所定のしきい値を超えると、所定範囲のパラメータに対応する制御ルールを追加作成してもよく、要望が集中している範囲のパラメータについて制御ルールを追加することで、よりきめ細かい制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態の日射利用システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】同上を適用する制御対象エリアを示し、(a)は制御対象エリアの平面図、(b)は制御対象エリアの側断面図である。
【図3】同上の屋外照度取得部によって取得される照度データの説明図である。
【図4】同上の個人端末に表示される画面の例図である。
【図5】同上の合意形成ロジックを説明するための説明図である。
【図6】(a)(b)は同上の制御ルールの修正方法を説明する説明図である。
【図7】(a)(b)は同上の制御ルールの修正方法を説明する説明図である。
【図8】同上の要望データの空間分布を示す説明図である。
【図9】同上を適用する制御対象エリアに入射する昼光の説明図である。
【図10】同上の動作を説明するフローチャートである。
【図11】従来の日射利用システムによる制御方式の説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 制御装置
2 時刻取得部
3 建物情報DB
4 太陽位置算出部
5 要望取得部
6 目標透過度修正部(制御ルール修正部)
7 制御ルール記憶部
8 テーブル制御部(制御ルール修正部)
9 透過度制御部
11 屋外照度取得部
20 ブラインド(遮蔽部)
50 建物
51 制御対象エリア
53 窓(開口部)
61 個人端末
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口部を通って建物内部の制御対象エリアに入射する光線の透過度を調整可能な遮蔽部と、現在の時刻情報を取得する時刻取得部と、建物の位置情報を記憶する建物情報データベースと、建物情報データベースから読み込んだ建物情報および時刻取得部により取得された時刻情報に基づいて太陽位置を算出する太陽位置算出部と、太陽位置と目標透過度とを関係付けた制御ルールを記憶する制御ルール記憶部と、太陽位置算出部が求めた太陽位置をもとに制御ルール記憶部に記憶された制御ルールを参照して目標透過度を求め、遮蔽部の透過度が目標透過度に一致するよう前記遮蔽部を制御する透過度制御部と、前記制御対象エリアに存在する利用者から前記制御対象エリアの明るさ環境に対する要望情報を取得する要望取得部と、要望取得部が取得した要望情報に基づいて、制御ルール記憶部に記憶された制御ルールの太陽位置に対する目標透過度を修正し、修正後の制御ルールを制御ルール記憶部に登録する制御ルール修正部とを備えたことを特徴とする日射利用システム。
【請求項2】
屋外の照度を取得する屋外照度取得部を備え、前記制御ルール記憶部に、太陽位置と屋外照度とを目標透過度に関係付けた制御ルールを記憶させるとともに、前記透過度制御部が、前記太陽位置算出部の求めた太陽位置と屋外照度取得部により取得された屋外照度とをもとに、前記制御ルールを参照して目標透過度を求めることを特徴とする請求項1記載の日射利用システム。
【請求項3】
前記制御ルール修正部は、前記制御ルール記憶部に記憶された制御ルールにおいて、屋外照度と目標透過度との相関関係が、屋外照度が明るくなるにつれて目標透過度が低下するという標準パターンから外れると、前記標準パターンに合うように制御ルールの目標透過度を修正することを特徴とする請求項2記載の日射利用システム。
【請求項4】
前記制御ルール修正部は、太陽位置又は屋外照度のうち少なくとも何れか一方をパラメータとして用い、所定期間内に前記要望取得部が取得した要望情報のうち、所定範囲の前記パラメータにおける要望数の全要望数に対する割合が所定のしきい値を超えると、前記所定範囲のパラメータに対応する制御ルールを追加作成することを特徴とする請求項2記載の日射利用システム。
【請求項1】
建物の開口部を通って建物内部の制御対象エリアに入射する光線の透過度を調整可能な遮蔽部と、現在の時刻情報を取得する時刻取得部と、建物の位置情報を記憶する建物情報データベースと、建物情報データベースから読み込んだ建物情報および時刻取得部により取得された時刻情報に基づいて太陽位置を算出する太陽位置算出部と、太陽位置と目標透過度とを関係付けた制御ルールを記憶する制御ルール記憶部と、太陽位置算出部が求めた太陽位置をもとに制御ルール記憶部に記憶された制御ルールを参照して目標透過度を求め、遮蔽部の透過度が目標透過度に一致するよう前記遮蔽部を制御する透過度制御部と、前記制御対象エリアに存在する利用者から前記制御対象エリアの明るさ環境に対する要望情報を取得する要望取得部と、要望取得部が取得した要望情報に基づいて、制御ルール記憶部に記憶された制御ルールの太陽位置に対する目標透過度を修正し、修正後の制御ルールを制御ルール記憶部に登録する制御ルール修正部とを備えたことを特徴とする日射利用システム。
【請求項2】
屋外の照度を取得する屋外照度取得部を備え、前記制御ルール記憶部に、太陽位置と屋外照度とを目標透過度に関係付けた制御ルールを記憶させるとともに、前記透過度制御部が、前記太陽位置算出部の求めた太陽位置と屋外照度取得部により取得された屋外照度とをもとに、前記制御ルールを参照して目標透過度を求めることを特徴とする請求項1記載の日射利用システム。
【請求項3】
前記制御ルール修正部は、前記制御ルール記憶部に記憶された制御ルールにおいて、屋外照度と目標透過度との相関関係が、屋外照度が明るくなるにつれて目標透過度が低下するという標準パターンから外れると、前記標準パターンに合うように制御ルールの目標透過度を修正することを特徴とする請求項2記載の日射利用システム。
【請求項4】
前記制御ルール修正部は、太陽位置又は屋外照度のうち少なくとも何れか一方をパラメータとして用い、所定期間内に前記要望取得部が取得した要望情報のうち、所定範囲の前記パラメータにおける要望数の全要望数に対する割合が所定のしきい値を超えると、前記所定範囲のパラメータに対応する制御ルールを追加作成することを特徴とする請求項2記載の日射利用システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−108651(P2010−108651A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277404(P2008−277404)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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