説明

易分離性口栓付き液体容器

【課題】ガスバリア層に耐熱性を付与し、水分蒸散という包装内側からのバリアの観点から、経時でのガスバリア性の劣化・デラミの発生などを防ぎ、かつ、軟包装体でありながら口栓付内容物取り出し口及び紙製外装を設けることによって容器利便性を付与し、なおかつ、易分離して環境にも優しい、液体容器用積層体を提供すること
【解決手段】透明プラスチックフィルムの少なくとも片面に、前処理層、無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層、ガスバリア性被膜層を順次設けたバリアフィルムを、ポリアミド系フィルム、熱融着可能なポリオレフィン系フィルムと貼り合せた積層体からなる容器であって、開口部にリクローズ機能付内容物取り出し具が熱融着されている易分離性口栓付き液体容器

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や医薬品等の液体または流動体など飲料包装分野に用いられる容器に関し、特にガスバリア性を必要とし、容易に持ち運び・廃棄可能である液体容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品等の液体または流動体など液体を充填包装する容器において、内容物の保護・持ち運び(流通)・摂取そして容器の廃棄などの問題が発生する。現在は、紙カップ、ペットボトル、アルミ・スチールなどの金属缶、ガラスビン等が多く用いられているが、特に、店舗からのテイクアウトや屋外での携帯・飲食の際には、内容物の品質保護・容器の使用場所・容器の廃棄に制限がある。
昨今の省資源・省エネルギー・リサイクルなどの世間の動向を受け、包装容器に対する要求品質も厳しくなってきている。ガスバリア性付与による内容物保護はもとより、容器としての利便性や使用後ゴミとしての分別廃棄し易さの観点からも様々な要求があり、それらを同時に満たすような包装容器が期待されている。
【特許文献1】特開2002−347838号公報
【特許文献2】特開2003−292024号公報
【特許文献3】特許第3713964号公報
【特許文献4】特開平5−319454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
液体容器における内容物の品質保護の点では、ガスバリア性の高い無機酸化物蒸着が、紙カップやペットボトルに応用されているが、このようなガスバリア性の高い無機酸化物を蒸着したポリエチレンフィルムであっても、ガスバリア層が熱により弱くなったり、包装内側からの液体のアタックによってガスバリア性が劣化することが確認されている。
【0004】
利便性付与の点でも、さまざまな構成や意匠上の工夫がなされているが、ペットボトルやアルミ缶では包装体としての必要物性や廃棄の問題がある。省エネルギー・リサイクルの点では、アルミ・スチールなどの金属缶は生産・廃棄に不利である。
【0005】
そこで、ガスバリア層に耐熱性を付与し、水分蒸散という包装内側からのバリアの観点から、経時でのガスバリア性の劣化・デラミの発生などを防ぎ、かつ、軟包装体でありながら口栓付内容物取り出し口及び紙製外装を設けることによって容器利便性を付与し、なおかつ、易分離して環境にも優しい、液体容器用積層体を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、透明プラスチックフィルムの少なくとも片面に、前処理層、無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層、ガスバリア性被膜層を順次設けたバリアフィルムを、ポリアミド系フィルム、熱融着可能なポリオレフィン系フィルムと貼り合せた積層体からなる容器であって、開口部にねじ蓋等のリクローズ機能付内容物取り出し具が熱融着されていることを特徴とする易分離性口栓付き液体容器である。
請求項2の発明は、前記液体容器が、紙を主体とする外側容器に収納された内側容器であることを特徴とする請求項1に記載の易分離性口栓付き液体容器である。
請求項3の発明は、前記外側容器と内側容器が接着剤により部分的に接着され、容易に分別廃棄可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の易分離性口栓付き液体容器である。
請求項4の発明は、前記前処理層が、プラズマを利用した処理層であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の易分離性口栓付き液体容器である。
請求項5の発明は、前記無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層の酸化アルミニウムの成分比率(AL/O)がエネルギー分散型蛍光X線分析装置で分析して、30〜50であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の易分離性口栓付き液体容器である。請求項6の発明は、前記ガスバリア性被膜層がSi(OR14およびR2Si(OR33(OR1、OR3は加水分解性基、R2は有機官能基)で表されるケイ素化合物あるいはその加水分解物と、水酸基を有する水溶性高分子を混合した溶液を塗布し加熱乾燥してなることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の易分離性口栓付き液体容器である。
請求項7の発明は、前記R2Si(OR33の有機官能基(R2)が、ビニル、エポキシ、メタクリロキシ、ウレイド、イソシアネートのいずれかの非水性官能基を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の易分離性口栓付き液体容器である。
請求項8の発明は、前記R2Si(OR33の有機官能基(R2)が、イソシアネート基が重合したイソシアヌレートであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の易分離性口栓付き液体容器である。
【発明の効果】
【0007】
以上に述べたように本発明によれば、ガスバリア性が高く、また、耐熱性・耐水性を付与することによってガスバリア性の劣化を防ぎ、かつ、容器利便性を付与し、なおかつ、易分離して環境にも優しい、液体容器を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を、図面を用いて更に詳細に説明する。図1は本発明の易分離性口栓付き液体容器を構成する積層体の部分断面図である。図2は本発明の易分離性口栓付き液体容器の口栓近辺の部分断面図である。図3は本発明の易分離性口栓付き液体容器の斜視図である。図1における基材1は透明プラスチック材料からなるフィルムであり、その少なくとも片面にプラズマを利用した前処理を施す。そして、その面もしくは両面に無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層2、ガスバリア性被膜層3が順次積層されている。
【0009】
上述した基材1は透明プラスチック材料であり、蒸着薄膜層の透明性を生かすために透明なフィルムが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ乳酸フィルムなどの生分解性プラスチックフィルム等が用いられ、延伸、未延伸のどちらでも良く、また機械的強度や寸法安定性を有するものが良い。特に耐熱性等の面から二軸方向に延伸されたポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。またこの基材1に、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などが使用されていても良く、薄膜との密着性を良くするために、前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理を施しておいても良く、さらに薬品処理、溶剤処理などを施しても構わない。
【0010】
基材1の厚さは1μm以上であることが必要だが、包装材料としての適性、他の層を積層する場合も在ること、無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層2やガスバリア性被膜層3を形成する場合の加工性を考慮すると、実用的には5〜200μmの範囲が望ましい。
【0011】
また、量産性を考慮すれば、連続加工の出来るような長尺フィルムとすることが望ましい。
【0012】
一般的に包装材料の用途では、基材1をポリエステルフィルムとすることが多い。
ポリエステルを構成するジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、ナフタレンカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキシンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、シュウ酸、琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸などのオキシカルボン酸などが挙げられる。
ポリエステルを構成するアルコール成分としては、エチレングリコール、プロパンジオール、1,4ブタンジオール、1,6ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4シクロヘキサンジメタノール等のポリオキシアルキレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族グリコールおよびそれらの誘導体などが挙げられる。
これらのポリエステルの中で、2軸延伸特性などの製膜性、湿度特性、耐熱性、耐薬品性、低コスト性などの観点から、ポリエチレンテレフタレートを主体としたものが好ましい。さらに、ポリエチレンテレフタレートの優れた諸物性を保てる範囲内で、他のアルコール成分を重合段階で主鎖に取り込むように制御し共重合させることにより、分子鎖内に回転障害の小さいセグメント(ソフトセグメント)が形成され、外部からの衝撃や折り曲げによる力を分子鎖内のソフトセグメントにより吸収し、耐衝撃性、屈曲性に優れたものとすることが出来る。具体的には、本発明のポリエステルのカルボン酸成分およびアルコール成分の各々の50モル%以上がテレフタル酸、エチレングリコール、およびそれらの誘導体である共重合ポリエステルが好ましく用いられる。
【0013】
前記基材1と無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層2との密着性を向上するために、表面にプラズマを利用した前処理を施す。この処理を行うことで、発生したラジカルやイオンを利用して基材1の表面に官能基を持たせるなどの化学的効果と、表面をイオンエッチングして不純物等を飛散させたり、平滑化するといった物理的効果の2つの効果を同時に得ることが可能である。このような表面処理を行うことにより、次に行う蒸着工程において無機酸化物の緻密な薄膜を形成させることができる。その結果、基材1と無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層2との密着性を強化させることができ、ガスバリア性や防湿性の向上や蒸着薄膜層のクラック発生防止にもつながるものである。
【0014】
このプラズマを利用した前処理を施す手段としては特に制限はないが、無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層2を設ける際に、巻き取り式のインライン装置で連続的に行う方法が効率から見て一般的である。
【0015】
無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層2は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化錫、酸化マグネシウム、或いはそれらの混合物などの無機酸化物の蒸着膜からなり、透明性を有しかつ酸素、水蒸気等のガスバリア性を有するものであればよい。
その中でも、特に酸化アルミニウム及び酸化珪素、酸化マグネシウムが酸素透過率及び水蒸気透過率に優れるので好ましく、積層体の無色透明性を効果的に発揮させるには酸化アルミニウムが最も好ましい。
酸化アルミニウムからなる透明蒸着薄膜層2中の元素であるアルミニウムと酸素の成分比率の一例をエネルギー分散型蛍光X線分析装置で分析したところ、AL/O=34.8であった。この成分比率を変化させてバリア性との関係を評価したところ、AL/Oが30〜50の範囲であることが、ガスバリア性の向上、特に水蒸気バリア性の向上に効果的であることが判明した。AL/Oが30より下であると、透明性は高いがガスバリア性向上にはつながらず、50より上であると、バリア性は高いがアルミ質の膜となり透明性が低くなる。
エネルギー分散型蛍光X線分析装置とは、サンプルにX線を照射し、元素によって異なる
反射光(蛍光X線)を半導体検出器に取り入れエネルギー分析を行う装置である。アルミニウム原子と酸素原子でエネルギーが異なるため定性分析/定量分析として、サンプル内のアルミニウムと酸素の比率を割り出すことが出来る。
【0016】
無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層2の厚さは、用いられる無機化合物の種類・構成により最適範囲は変動するが、一般的には5〜300nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。ただし膜厚が5nm未満であると均一な膜が得られないことや膜厚が十分ではないことから、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また膜厚が300nmを越える場合は薄膜にフレキシビリティを保持させることができず、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じるおそれがある。好ましくは、5〜100nmの範囲内である。
【0017】
無機酸化物からなる蒸着薄膜層2を、プラズマを利用した前処理後に形成する方法としては種々在り、通常の真空蒸着法により形成することができるが、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを用いることもできる。但し生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。
真空蒸着法による真空蒸着装置の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式等が好ましく、薄膜と基材の密着成及び薄膜の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いることも可能である。また、蒸着膜の透明性を上げるために蒸着の際、酸素ガスなどを吹き込んだりする反応蒸着を行っても一向に構わない。
【0018】
ガスの導入に関しては、真空度(装置の排気能力)に関係してくる。蒸着の反応ガスとしてO2を選択した場合の導入量に関しては、蒸着膜がガスバリア性を発現する範囲内になるように、装置内の真空度(装置の排気能力)を調節することが必要である。
【0019】
ガスバリア性被膜層3は、金属箔並の高度なガスバリア性を付与するために、また蒸着薄膜層を物理的に保護するために、無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層2上に設けられるものである。
そのために、前記ガスバリア性被膜層3は、Si(OR14およびR2Si(OR33(R1、R3はCH3,C25,C24OCH3等の加水分解性基、R2は有機官能基)で表されるケイ素化合物あるいはその加水分解物と、水酸基を有する水溶性高分子を混合した溶液を塗布し加熱乾燥してなるガスバリア性被膜層である必要がある。ガスバリア性被膜層を塗工するコーティング液に含まれる各成分について以下に記述する。
【0020】
ガスバリア性被膜層のコーティング液成分のR2Si(OR33は、R3はCH3,C25,C24OCH3等の加水分解性基、R2は有機官能基であり、一般的にはシランカップリング剤として有機被膜層と無機被膜層との密着性を向上させるために使用されている。本発明でも無機酸化物被膜層とガスバリア性被膜層との密着性向上のために必要である。なかでも有機官能基(R2)がビニル基、エポキシ基、ウレイド機、イソシアネート基等の非水性官能基を有するものは、非水性であるため熱水に対する耐性が高く、さらにイソシアネート基が重合したイソシアヌレートは、本発明のガスバリア性被膜液中での取り扱いが容易で、コーティング液のゲル化も遅く、シランカップリング剤を添加することによるバリア低下も起こらずに、密着性を向上することができるため特に好ましい。
【0021】
上述した加水分解性基とは、酸性、塩基性もしくは中性の条件で、水と反応させることにより、ヒドロキシル基に変換することが可能な基を表し、たとえば、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、イソシアネート基、ヒドロキシル基などを挙げることができるが、塗布液安定性等の観点から、アルコキシ基が好ましい。ここで
、アルコキシキ基としては、好ましくは炭素数1〜5の低級アルコキシ基であり、これらのアルコキシ基は鎖状でも、分岐していてもよく、さらに水素原子がフッ素原子などに置換されていてもよい。最も好ましいのはメトキシ基およびエトキシ基である。
【0022】
またイソシアヌレートとは、3つのイソシアネート基が重合し環状になったものをいう。本発明で用いられるイソシアヌレートは、イソシアネート基含有シランが3つ環状に重合したものである。
【0023】
ガスバリア性被膜層に用いられる水酸基を有する水溶性高分子とは、ポリビニルアルコール、でんぷん、セルロース類を指す。特にポリビニルアルコール(以下PVA)を本発明のコーティング剤に用いた場合にガスバリア性が最も優れるという結果を得た。ここで言うPVAとは、一般にポリ酢酸ビニルをケン化して得られるもので、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分ケン化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全ケン化PVAまでを含み、特に限定されるものではない。
【0024】
ガスバリア性被膜層溶液の混合順序は、加水分解したSi(OR14と水酸基をもつ水溶性高分子、R2Si(OR33をどの順番で混合しても効果は発現する。特にSi(OR14とR2Si(OR33を別々に加水分解してから水溶性高分子に添加する方法はSiO2の微分散およびSi(OR14の加水分解効率を考慮すると望ましい。
【0025】
該ガスバリア性被膜のコーティング溶液へ、インキ、接着剤との密着性、濡れ性、収縮によるクラック発生防止を考慮して、イソシアネート化合物、コロイダルシリカやスメクタイトなどの粘土鉱物、安定化剤、着色剤、粘度調整剤などの公知の添加剤などを、ガスバリア性や耐水性を阻害しない範囲で添加する事ができる。
【0026】
乾燥後の厚みは特に限定しないが、厚みが50μm以上を越えるとクラックが生じやすくなる可能性があるため、0.01〜50μmとすることが望ましい。
【0027】
ガスバリア性被膜層形成方法としては、通常のコーティング方法を用いることができる。例えばディッピング法、ロールコート、グラビアコート、リバースグラビアコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等を用いることができる。これらの塗工方式を用いて蒸着層の上もしくは基材の上に塗布する。
【0028】
乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射などガスバリア性被膜層に熱をかけて、水分子をとばす方法であればこれらのいずれでも、またこれらを2つ以上組み合わせてもかまわない。
【0029】
本発明のガスバリア性被膜層表面にかかる熱が200℃以上の高温であると、バリアはさらに向上し、また耐湿性、耐水性も向上する。200℃以上の加熱処理を行うことにより、液体内容物および高温環境下保存にもガスバリア性被膜層が劣化することなく高いバリア性および密着性を維持する事ができる。これは、高温処理により、ガスバリア性被膜層中に含まれる加水分解金属アルコキシドの縮合が進むこと、水溶性高分子の脱水が十分に行われるためである。
【0030】
200℃以上の高温加熱処理方法としては、一般的な熱風乾燥法、熱ロール乾燥法を用いることが出来る。また、ガスバリア性被膜表面を数千度の炎で加熱処理するフレーム処理法でも同様の効果がある。フィルム延伸時に液を塗工する延伸塗工法でも、延伸フィルムの熱固定温度が200℃以上であれば効果がある。
【0031】
図1の基材1と透明蒸着薄膜層2及びガスバリア性被膜3のみの構成では、後加工適性及び機械的強度の点で不十分である。容器としての構成は、フィルムを袋状にするためや内容物取り出し具の熱融着・外装となる紙容器との貼り合わせなどの理由により、シーラントフィルムに挟み込まれた構成となるが、本発明の液体容器用積層体1枚では屈曲性や耐衝撃性・腰強度の面で性能不足になる。そこで物理的・機械的な強度を付与するために、屈曲性に富むと言われるポリアミドフィルム4などと貼り合わせると良い。ポリアミドフィルムの厚みは限定されないが、包装材料として適切となるように設定する。10〜150μmが一般的である。貼り合せ面は、どちら側でも構わない。
【0032】
つぎにポリアミドフィルムとのラミネートフィルムを、シーラントフィルム5を用いて2枚で挟み込む状態で貼り合せる。シーラントフィルムとしては、内容物取り出し具及び外装との接着や内袋としての接着を考慮し、一般的に直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が用いられる。
【0033】
容器としては図2に示すように、リクローズ機能付内容物取り出し具は、ねじ部6を設けた口栓7及び容器開口部8、容器開口部8と一体でありシーラントフィルム5と熱融着される胴部9、胴部9から容器下方に伸びる導管部10の3つの部分に大きく分けることが出来る。内容物取り出し具に使用する材質に特に制限はないが、ゴムやエラストマー、またはEVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどのガスバリア性樹脂を用いることが出来る。材質は部分によって異なっていても単一素材であっても良い。
【0034】
このような構成の内容物取り出し具が熱融着される液体容器用の積層体は、二方シール袋、三方シール袋、四方シール袋、ガゼット袋、スタンディングパウチ等の種々の形態の袋状の容器に製袋される。容器の大きさや形状は特に限定されないが、液体容器としての物理的強度や持ち運びなど、また、後述する容器外側部と接着することを考慮したほうが良い。
【0035】
本発明を構成する前記液体容器用積層体が製袋されることによってなる液体容器は、外側容器と内側容器の2重構造の内側容器として使用され、外側容器と内側容器は容易に分離できるようになっている。外側容器があることにより、内側容器全体の形状保持・外的衝撃に対する補強及び液体容器全体の自立性などが付与される効果がある。
【0036】
上記の外側容器は紙を主体とし、最外ポリエチレン層11、紙層12、最内ポリエチレン層13から構成されている。また、外側容器の最外層は他にもポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂の使用が可能であり、さらに最内層もまた、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂の他、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂等の単体、もしくはこれらの樹脂を組み合わせたものも使用可能である。中間層の紙の種類はコートボール等の様々な種類が使用可能である。
【0037】
外側容器と内側容器を接着する方法及び接着剤の種類には特に制限はないが、使用後に廃棄しやすくするため易分離できる接着剤の選択・塗布方法・塗布箇所などを採用することが必要である。
【0038】
本発明の易分離性口栓付き液体容器の一実施形態を図を参照しながら具体的な実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0039】
基材1として、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。このPETフィルムの片面に、プラズマ処理器を用いて前処理を施した。こ
の時、電極には高周波電源を用い、アルゴン/酸素混合ガス雰囲気下で行った。続いて、インラインにて、前処理層の上に、電子線加熱方式による真空蒸着装置によって、厚み15nmの酸化アルミニウムからなる透明蒸着薄膜層を積層した。蒸着の際には、酸素ガスを導入した。該透明蒸着薄膜層の成分をエネルギー分散型蛍光X線分析装置(日本電子製)で分析したところ、AL/O=34.8であった。
【0040】
次いで下記組成(1)からなるコーティング剤をグラビアコート法により塗布し、その後120℃ 2分間乾燥させ厚さ0.5μmのガスバリア性被膜層3を形成し、透明積層体aを得た。 以上のようにして得られた透明積層体aを、厚さ15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(ONy)4とドライラミネートを行った。ラミネート面に制限は特にないが、今回の実験では、ガスバリア性被膜層のコート面に貼り合わせた。
【0041】
その後、これらを厚さ60μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム5の2枚の間に挟み込むようにして、ドライラミネートを行い、積層体Aを得た。
【実施例2】
【0042】
ガスバリア性被膜層3を形成するコーティング剤として下記組成(2)からなるコーティング剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして、透明積層体b及び積層体Bを得た。
【実施例3】
【0043】
ガスバリア性被膜層3を形成するコーティング剤として下記組成(3)からなるコーティング剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして、透明積層体c及び積層体Cを得た。
【実施例4】
【0044】
ガスバリア性被膜層3を形成するコーティング剤として下記組成(4)からなるコーティング剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして、透明積層体d及び積層体Dを得た。
<ガスバリア性被膜コーティング液の調整>
(A)テトラエトキシシラン(Si(OC254:以下TEOSとする)20gとメタノール10gに塩酸(0.1N)70gを加え、30分間攪拌し加水分解させた加水分解溶液。
(B)ポリビニルアルコールの5%、水/メタノール=95/5水溶液。
(C)1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートを水/IPA=1/1溶液で調整した加水分解溶液。
(D)β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランとイソプロピルアルコール(IPA溶液)に塩酸(1N)を徐々に加え、30分間攪拌し、加水分解させた後、水/IPA=1/1溶液で加水分解を行い調整した加水分解溶液。
(E)γ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシランとIPA溶液に塩酸(1N)を徐々に加え、30分間攪拌し、加水分解させた後、水/IPA=1/1溶液で加水分解を行い調整した加水分解溶液。
(F)ビニルトリメトキシシランとIPA溶液に塩酸(1N)を徐々に加え、30分間攪拌し、加水分解させた後、水/IPA=1/1溶液で加水分解を行い調整した加水分解溶液。
[ガスバリア性コーティング剤の組成]
(1)A液、B液、C液をA/B/C=70/20/10(重量%)の割合で混合し、ガスバリア性コーティング液を得た。
(2)A液、B液、D液をA/B/D=70/20/10(重量%)の割合で混合し、ガスバリア性コーティング液を得た。
(3)A液、B液、E液をA/B/E=70/20/10(重量%)の割合で混合し、ガスバリア性コーティング液を得た。
(4)A液、B液、F液をA/B/F=70/20/10(重量%)の割合で混合し、ガ
スバリア性コーティング液を得た。
<比較例1>
実施例1の透明積層体において、プラズマによる前処理を行わなかったこと以外は、同様にして、透明積層体e及び積層体Eを得た。
<比較例2>
実施例1の透明積層体において、ガスバリア性被膜層を設けなかったこと以外は同様にして、透明積層体f及び積層体Fを得た。
<比較例3>
実施例1の透明積層体において、酸化アルミニウム蒸着薄膜層2の組成比をAL/O=25としたこと以外は同様にして、透明積層体g及び積層体Gを得た。
<比較例4>
実施例1の透明積層体において、酸化アルミニウム蒸着薄膜層2の組成比をAL/O=55としたこと以外は同様にして、透明積層体h及び積層体Hを得た。
<比較例5>
実施例1の透明積層体において、酸化アルミニウム蒸着薄膜層2の代わりに7μmのアルミニウム箔を用いたこと以外は同様にして、透明積層体i及び積層体Iを得た。
〈評価1〉
本発明の透明積層体a〜iにて、酸素透過率(cm3/m2・day・atm)及び水蒸気透過率(g/m2・day)を測定した。測定結果を表1に示す。
〈評価2〉
実施例及び比較例の内容物適性評価として、積層体A〜Iにおいて、10cm四方のパウチを作り、内容物として水道水約20gを充填した。このパウチを40℃‐20%RH及び60℃−Freeの環境下に保存し、期間換算した重量減少率を測定した。その状況により良否を判定した [(減少率少)◎ > ○ > △ > ×(減少率大)]。比較結果を表1に示す。
【0045】
また、実施例及び比較例で得た積層体A〜Iに、高密度ポリエチレンで成型された内容物取り出し具(図2及び図3の6〜10)を熱融着した。
その後これら液体容器を、図4に断面を示した、最外ポリエチレン層11となる厚さ60μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムと最内ポリエチレン層13となる厚さ60μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムに挟まれた、コートボール紙よりなる紙層12から製函された外装体内に接着した。
〈評価3〉
この内容物取り出し具付積層体A〜Iを用いて得た液体容器の加工適性を比較するために、その状況により良否を判定した [(加工易)◎ > ○ > △ > ×(加工難)]。比較結果を表1に示す。
〈評価4〉
積層体A〜Iを用いて得た液体容器の環境適性を比較するために、その状況により良否を判定した [(適)◎ > ○ > △ > ×(不適)]。比較結果を表1に示す。
〈評価5〉
この内容物取り出し具付積層体A〜Iを用いて得た液体容器の利便性を比較するために、「容器の持ちやすさ」「容器の運びやすさ」「飲みやすさ」「内容物の風味」「容器の廃棄しやすさ」などの観点で、官能評価を行った。比較結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

以上の結果より、本発明により、高度なガスバリア性を有しながらも水保存による内容物の経時での重量減少を抑え、なおかつ、液体容器として要求されるその他物性もバランス良く備えている易分離性口栓付き液体容器を得ることが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の易分離性口栓付き液体容器を構成する積層体の部分断面図である。
【図2】本発明の易分離性口栓付き液体容器の口栓近辺の部分断面図である。
【図3】本発明の易分離性口栓付き液体容器の構成例の斜視図である。
【図4】本発明の易分離性口栓付き液体容器と組合せて用いる外箱の部分断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1…基材
2…無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層
3…ガスバリア性被覆層
4…ポリアミド層
5…シ−ラントフィルム
6…ねじ部
7…口栓
8…容器開口部
9…胴部
10…導管部
11…最外ポリエチレン層
12…紙層
13…最内ポリエチレン層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明プラスチックフィルムの少なくとも片面に、前処理層、無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層、ガスバリア性被膜層を順次設けたバリアフィルムを、ポリアミド系フィルム、熱融着可能なポリオレフィン系フィルムと貼り合せた積層体からなる容器であって、開口部にリクローズ機能付内容物取り出し具が熱融着されていることを特徴とする易分離性口栓付き液体容器。
【請求項2】
前記液体容器が、紙を主体とする外側容器に収納された内側容器であることを特徴とする請求項1に記載の易分離性口栓付き液体容器。
【請求項3】
前記外側容器と内側容器が接着剤により部分的に接着され、容易に分別廃棄可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の易分離性口栓付き液体容器。
【請求項4】
前記前処理層が、プラズマを利用した処理層であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の易分離性口栓付き液体容器。
【請求項5】
前記無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層の酸化アルミニウムの成分比率(AL/O)がエネルギー分散型蛍光X線分析装置で分析して、30〜50であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の易分離性口栓付き液体容器。
【請求項6】
前記ガスバリア性被膜層がSi(OR14およびR2Si(OR33(OR1、OR3は加水分解性基、R2は有機官能基)で表されるケイ素化合物あるいはその加水分解物と、水酸基を有する水溶性高分子を混合した溶液を塗布し加熱乾燥してなることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の易分離性口栓付き液体容器。
【請求項7】
前記R2Si(OR33の有機官能基(R2)が、ビニル、エポキシ、メタクリロキシ、ウレイド、イソシアネートのいずれかの非水性官能基を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の易分離性口栓付き液体容器。
【請求項8】
前記R2Si(OR33の有機官能基(R2)が、イソシアネート基が重合したイソシアヌレートであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の易分離性口栓付き液体容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−190739(P2009−190739A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30120(P2008−30120)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】