説明

易接着ポリエステルフィルムおよびその製造方法

【課題】紫外線感光性樹脂との組み合わせでフレキソ印刷用樹脂版とした際に、優れたヒートシール性と耐溶剤性を示すとともに、紫外線露光時にハレーションを防止することのできる易接着ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、アクリル系樹脂(A)、ポリエステル系樹脂(B)、硬化剤(C)、およびクマリンスルフォネート化合物(D)を含有する易接着層を有する易接着ポリエステルフィルムであって、クマリンスルフォネート化合物(D)の含有量が、アクリル系樹脂(A)とポリエステル系樹脂(B)との合計の固形分100質量部あたり0.2質量部以上10質量部以下である易接着ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシール性と耐溶剤性を兼ね備えた易接着ポリエステルフィルムに関するものであり、さらに詳しくは、感光性樹脂と貼り合せて印刷用樹脂版として使用する際に、紫外線の露光時にハレーションを防止することができ、且つフレキソ印刷用感光性樹脂を貼り合せた場合に、バック露光によるステージ形成の管理が容易である易接着フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)フィルムに代表される二軸延伸ポリエステルフィルムは透明性、寸法安定性、機械的性質、電気的性質、耐薬品性等の性能に優れているため、磁気テ−プ、包装材料、電気絶縁材料、情報記録材料、各種工程紙などの幅広い分野に利用されている。ポリエステルフィルムは上記のような優れた特性を有しているが高度に結晶配向しているため、フィルム表面は各種塗料等に対する接着性が乏しく、実際に各種工程で使用される場合にはポリエステルフィルム表面に何らかの易接着処理を施す必要がある場合が多い。
【0003】
ポリエステルフィルムに易接着性を付与する方法としては、たとえば、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等が挙げられるが、これらの方法では経時的に易接着性が低下するという欠点がある。このような欠点を改良する方法として、フィルム表面を化学的に処理する方法があるが、薬品の毒性や蒸気の揮散による環境汚染等が指摘されている。また、有機溶剤系の塗工剤をフィルム表面に塗布することにより易接着性を付与する方法があるが、溶剤の揮散による安全上および環境汚染等の問題が指摘され、塵埃の付着により塗膜表面の欠陥が発生しやすいという不具合が発生することがある。そこで、クリ−ンな環境の中で塵埃の付着も少なく、また爆発の恐れや環境汚染もなく、経済性、安全性の点でも有利なアクリル系、ポリウレタン系、共重合ポリエステル樹脂、もしくは架橋性の硬化剤からなる水系塗工剤を用いる方法が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
【0004】
また、近年コストダウン並びに工程省略化のため、ラミネート工程中で接着剤を塗布するのではなく、上記易接着フィルムやヒートシール性を有する塗剤を塗ったフィルムを用い、工程中で熱ラミネートする技術分野が増えている(例えば特許文献3参照)。
【0005】
一方、感光性樹脂版や鋼板に貼り合せるフィルムの場合は、熱ラミネート後の洗浄工程でクロロホルム、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系の有機溶剤が使用され、さらにその後レトルト工程等の過酷な後工程を経るため、基材であるポリエステルフィルムと易接着層、感光性樹脂間には、前記有機溶剤への耐性や、熱ラミネートによる密着性の維持が求められる。このような使用に耐えうる易接着性フィルムが提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−309190号公報
【特許文献2】特開平6−293839号公報
【特許文献3】特開2000−044917号公報
【特許文献4】特開2004−331873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シールラベルや軟包装材などの印刷に使用されるフレキソ印刷用の樹脂版は、その多くが紫外線感光性樹脂であるが、従来は、樹脂版の厚みが3mm程度のものが主流であったのに対し、最近ではさらに薄いタイプの版が使用されている。しかし、樹脂版の厚みが約1.7mmより薄い場合、感光性樹脂内及び/又は感光性樹脂と基材フィルムの易接着層との界面などで紫外線が干渉してハレーションを起こしやすく、白抜きの深度が浅くなり再現性が低下する。
【0008】
また、フレキソ印刷感光性樹脂版は、レリーフの安定性と高さを確保する目的で、バック露光(支持体側からの全面露光)を行い非画像部に硬化層(ステージ)を形成するが、厚みの薄い版の場合、ステージはあまり厚く成らないように制御しなくてはならない。しかし、実際には露光機の照度分布のばらつきやランプ点灯直後の不安定なランプ照度のために、比較的短い露光時間(小さい露光量)で行なわれるバック露光に対して、精度よく照射することが困難で、毎回一定のステージ厚みを得ることが困難であった。
【0009】
このような問題に対して、基材フィルムあるいは易接着層に紫外線吸収剤や染料・顔料を添加すれば、基材フィルムと易接着層、易接着層と感光層界面でのハレーションを低減し、さらに基材フィルム側からの紫外線透過光が減衰されるので、非画像部の硬化層(ステージ)の厚みの制御が容易になり、レリーフの安定再現が可能となる。
【0010】
しかしながら、基材フィルムへの吸収剤類の添加は、ハレーション対策効果は不十分、易接着層への添加は、易接着層中の紫外線吸収材類が経時的に感光性樹脂層に移行し、期待したハレーション防止効果が得られない場合がある。
【0011】
また、紫外線吸収剤を易接着層に含有させる方法としては、一般に広く知られているベンゾフェノンやクマリンスルフォネート系以外のクマリン系紫外線吸収剤などは紫外線吸収能は高いが、水系の易接着塗剤とは相溶性に欠け、塗剤としては不安定であるという不具合があった。
【0012】
本発明は、上記のような状況に鑑み、紫外線感光性樹脂との組み合わせでフレキソ印刷用樹脂版とした際に、優れたヒートシール性と耐溶剤性を示すとともに、紫外線露光時にハレーションを防止することができ、且つバック露光によるステージ形成の管理が容易である易接着ポリエステルフィルムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ポリエステルフィルム上に特定の成分からなる易接着層を設けることで、上記問題を著しく改善できることを見い出し、本発明に到達した。
【0014】
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、アクリル系樹脂(A)、ポリエステル系樹脂(B)、硬化剤(C)、およびクマリンスルフォネート化合物(D)を含有する易接着層を有する易接着ポリエステルフィルムであって、クマリンスルフォネート化合物(D)の含有量が、アクリル系樹脂(A)とポリエステル系樹脂(B)との合計の固形分100質量部あたり0.2質量部以上10質量部以下である易接着ポリエステルフィルムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の易接着ポリエステルフィルムは、優れた易接着性、耐溶剤性を有しかつ密着性の長期安定性に優れているため、感光性材料、食品包装用途、グラフィック用途などに好適に用いることができる。特に、紫外線露光時にハレーションを防止することのできるため、紫外線感光性樹脂との組み合わせでフレキソ印刷用樹脂版としての使用に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明において用いられるポリエステルフィルムの原料ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)等が挙げられ、これらから選ばれる1種あるいは2種以上をブレンドしたものでもよい。なかでもポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。前記のポリエステルには、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の他のジカルボン酸成分や、1,4−ブタンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、ビスフェノールA等の他のグリコール成分が共重合されてもよく、これらの共重合成分は2種類以上併用されてもよい。
【0018】
ポリエステルフィルムの製造方法は、特に限定されないが、たとえば、PETやPBT等の原料ポリマーを溶融押出後急冷固化して得られた未延伸フィルムを、縦方向及び横方向に順に延伸した逐次二軸延伸もしくは縦横同時に延伸する同時二軸延伸を行った後、熱固定および弛緩処理を施すことによって得ることができる。
【0019】
本発明において、易接着層にはヒートシール性を付与するために、アクリル系樹脂(A)を含有することが必要である。
【0020】
アクリル系樹脂(A)を構成する成分としては、たとえば、アルキルアクリレート(アルキル基としてはメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル等)、アルキルメタクリレートや、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシル基含有化合物、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド等のアミド基含有化合物、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有化合物、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有化合物、およびそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)が挙げられる。また、上記のアクリル系成分は、単独で使用することもできるが、2種類以上の化合物を用いることもできる。また、本発明におけるアクリル系樹脂(A)として、アクリルウレタン樹脂を用いてもよい。
【0021】
本発明において、易接着層には密着性と耐溶剤性を付与するためにポリエステル系樹脂(B)が必要である。
【0022】
ポリエステル系樹脂(B)は、多塩基酸と多価アルコールとから構成される。多塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸を挙げることができ、必要に応じて耐水性を損なわない範囲で少量の5−ナトリウムスルホイソフタル酸や5−ヒドロキシイソフタル酸を用いることができる。また、多塩基酸として、シュウ酸、(無水)コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、水添ダイマー酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フマル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)シトラコン酸、ダイマー酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸(無水物)、テトラヒドロフタル酸(無水物)等の脂環族ジカルボン酸を挙げることができる。
【0023】
一方、多価アルコール成分については、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
【0024】
易接着層におけるポリエステル系樹脂(B)の固形分比率は、アクリル系樹脂(A)100質量部に対して、/ポリエステル系樹脂(B)が10〜6000の範囲が好ましく、より好ましくは100〜5000である。ポリエステル系樹脂(B)が10質量部未満であると、耐溶剤性が不十分となることがあり、また5000質量部を超えると混合物の粘度が上昇し、易接着層のホットメルト性が損なわれることがある。
【0025】
易接着層には、さらなるヒートシール性または密着性の向上を目的として、ポリアミド系樹脂、エラストマー、ポリ酢酸ビニル鹸化物、ポリウレタンのいずれか1種以上が含まれていてもよい。
【0026】
ポリアミド系樹脂は、ジカルボン酸とジアミンの重縮合反応により生成される。前記ジカルボン酸としては、特に制限されるものではないが、例えば、炭素原子数2〜22の酸が挙げられ、具体的には、例えば、シュウ酸、マロン酸、(無水)コハク酸、(無水)マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、ビメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,3−または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも特に、セバシン酸が好ましい。なお、ジカルボン酸は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。必要に応じ、前記酸成分由来の構成単位としてモノカルボン酸由来の構成単位を含むことが好ましい。これにより、ポリアミド系樹脂の溶融粘度を調整することができる。
【0027】
前記モノカルボン酸としては、例えば、炭素原子数1〜26の酸が挙げられ、具体的には、例えば、プロピオン酸、酢酸、カプリル酸(オクタン酸)、ステアリン酸、オレイン酸、ロジン(樹脂酸)、安息香酸、ナフトエ酸等が挙げられる。なお、モノカルボン酸は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0028】
前記ジアミン類としては、例えば、炭素原子数2〜20の脂肪族、脂環式、芳香族などの各種ジアミン類が挙げられ、具体的には、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、メンタンジアミン、イソホロンジアミン、テトラエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p−またはm−キシレンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、2,2−ビス−(4−シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、1,2−、1,3−または1,4−シクロヘキサンジアミン、1,4−ビス−(2’−アミノエチル)ベンゼン、N−エチルアミノピペラジン等が挙げられる。これらの中でも特に、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンが好ましい。なお、ジアミン類は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
エラストマーは特に限定されないが、ブタジエンやイソプレンのようなジエン化合物を含むSBS(スチレン−ブタジエン−スチレンブロック重合体)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロック重合体)、SEBS(スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック重合体)、SEPS(スチレン−エチレンプロピレン−スチレンブロック重合体)、SIBS(スチレン−イソブチレン−スチレンブロック重合体)の様なブロック共重合体が挙げられる。これらのエラストマーはアクリロニトリルやマレイン酸、アクリルアミド等の不飽和化合物を共重合してもよい。また、二重結合の部分をアクリル酸やマレイン酸などでグラフト重合してもよい。なお基材フィルムとの密着性及び水溶性もしくは水分散性高分子(B)との相溶性の点で、カルボキシル基や水酸基のような極性基を持つことが望ましい。上記のような極性基を持つことにより基材フィルムとの密着性が向上するほか、硬化剤(C)の添加により耐溶剤性も向上させることができる。
【0030】
ポリ酢酸ビニル鹸化物は特に限定されない。ポリ酢酸ビニル鹸化物に用いられるポリ酢酸ビニルは、未変性体であっても変性体であってもよい。ポリ酢酸ビニル鹸化物の鹸化度は特に特定されないが、好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上である。鹸化度が60%未満では基材との密着性や耐溶剤性が低下するので好ましくない。変性ポリ酢酸ビニル樹脂としては、例えばクロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸などのモノカルボン酸及び該モノカルボン酸のエステル、塩、無水物、アミドもしくはニトリル類;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのジカルボン酸及びその塩;またはマレイン酸モノメチルもしくはイタコン酸モノメチル等の該ジカルボン酸のモノアルキルエステル類;炭素数2〜30のα−オレフィン類;アルキルビニルエーテル類;ビニルピロリドン類などにより変性されたものが挙げられる。また、ポリ酢酸ビニル鹸化物や変性ポリ酢酸ビニル鹸化物を、部分的にウレタン化、アセタール化、エーテル化、グラフト化もしくはリン酸エステル化などの反応により変性もしくはさらに変性させた変性樹脂を用いてもよい。これらのポリ酢酸ビニル鹸化物は、一種のみが用いられてもよく、二種以上併用されてもよい。
【0031】
ポリウレタンはポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物の重付加により得られる。ポリヒドロキシ化合物としては、たとえばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリテトラメチレンセバケート、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、グリセリン等を挙げることができる。
【0032】
ポリウレタン原料のポリイソシアネート化合物としては、たとえば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールエタンの付加物等を挙げることができる。
【0033】
本発明においては、基材フィルムとの密着性ならび耐溶剤性を改善するため、硬化剤(C)の添加が必要である。硬化剤としては、エポキシ化合物、メラミン化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、金属錯塩、ヒドラジン化合物等が挙げられるが、密着性・ポットライフの点でエポキシ化合物、メラミン化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物が好ましく、オキサゾリン化合物が最も好ましい。これらの化合物はポットライフ等のコート安定性を阻害しなければ混合して用いてもよい。
【0034】
硬化剤(C)の添加量は、アクリル系樹脂(A)とポリエステル系樹脂(B)との合計の固形分100質量部に対して2質量部以上40質量部以下とすることが好ましく、2質量部以上5質量部以下とすることがより好ましい。2質量部未満では耐溶剤性が不十分となることがあり、また40質量部を超えると混合物の粘度が上昇し、易接着層のホットメルト性が損なわれることがある。
【0035】
硬化剤(C)として使用されるエポキシ化合物としては、具体的にはポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物等を用いることができ、ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等を用いることができる。また2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのようなエポキシ基を含有するシランカップリング剤を用いてもよい。
【0036】
硬化剤(C)として使用されるメラミン化合物は、例えば官能基としてイミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基等のアルコキシメチル基を1分子中に有するものであり、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂等が挙げられる。その中でもメチロール化メラミン樹脂が最も好ましい。更に、メラミン系樹脂の熱硬化を促進するため、例えばp−トルエンスルホン酸等の酸性触媒を用いることが好ましい。通常、メラミン樹脂成分100質量部に対し、2〜30質量部が好適である。
【0037】
硬化剤(C)として使用されるイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、1,6−ジイソシアネートヘキサン、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールの付加物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ポリオール変性ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3´−ビトリレン−4,4´ジイソシアネート、3,3´ジメチルジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート等を用いることができる。また、これらのイソシアネート基を重亜硫酸塩類及びスルホン酸基を含有したフェノール類、アルコール類、ラクタム類、オキシム類及び活性メチレン化合物類等でブロックしたブロックイソシアネート化合物を用いてもよい。
【0038】
硬化剤(C)として使用されるオキサゾリン化合物としては、オキサゾリン基を含有する重合体が挙げられる。このような重合体は、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等のア(メタ)クリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N、N−ジアルキルアクリルアミド、N、N−ジアルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα、β−不飽和モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、等のα、β−不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
【0039】
本発明の易接着ポリエステルフィルムにおいては、易接着層にクマリンスルフォネート化合物(D)を含有していることが必要である。クマリンスルフォネート化合物(D)により、紫外線感光性樹脂に接着させた後の紫外線露光工程においてハレーションを抑制することができる。クマリンスルフォネート化合物(D)はクマリン系紫外線吸収剤の一種であり、次に示すクマリンを基本的な骨格として有し、クマリン骨格に由来して紫外線を吸収する性質を有する。
【0040】
【化1】

【0041】
クマリンスルフォネート化合物(D)は紫外線A波カット性能を有し、かつポリエステル系樹脂(B)との親和性に優れている。また、クマリンスルフォネート化合物(D)は紫外線感光性樹脂を形成する感光性樹脂組成物とも親和性がよい。本発明においてクマリンスルフォネート化合物(D)以外の紫外線吸収剤を使用するとポリエステル系樹脂(B)との親和性が良好でなく、塗布後に易接着層が基材ポリエステルフィルムから剥がれたり、感光性樹脂と貼り合せたあとに剥がれたりすることがある。さらに、クマリンスルフォネート化合物(D)以外のクマリン化合物を用いると、基材ポリエステルフィルムとの密着性が経時的に低下する傾向があり好ましくない。クマリンスルフォネート化合物(D)はポリエステル系樹脂(B)やフレキソ印刷用の感光性樹脂との親和性に優れており、易接着フィルムと感光性樹脂との密着性に影響を及ぼさない。
【0042】
クマリンスルフォネート化合物(D)の含有量は、アクリル系樹脂(A)とポリエステル系樹脂(B)との合計の固形分100質量部あたり0.2質量部以上10質量部以下である必要があり、経時的にハレーション防止性能を維持するうえで、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは、1〜7質量部である。0.2質量部未満であると紫外線露光時に感光性樹脂内部及び又は感光性樹脂と易接着層との界面でハレーション(干渉)が発生しやすく、印刷がピンボケ状態となってしまう可能性がある。クマリンスルフォネート化合物(D)が10質量部を超えると塗布後に易接着層が基材ポリエステルフィルムから剥がれたり、感光性樹脂と貼り合せたあとに剥がれたりすることがある。
【0043】
本発明において、易接着層は、アクリル系樹脂(A)、ポリエステル系樹脂(B)、硬化剤(C)、及びクマリンスルフォネート化合物(D)からなる塗剤を塗布して形成することが好ましい。塗剤としては、環境上、水系塗剤を用いることが好ましい。水系塗剤は、その固形分濃度が10〜50質量%であることが、ポリエステルフィルムに塗工する上で好ましい。
【0044】
塗剤は、(A)〜(D)の各成分を混合することにより調製されるが、必要に応じて(A)〜(D)のいずれかの成分を含んだ液状原料を用いてもよい。液状原料としては、水溶液もしくは水分散体が挙げられる。
【0045】
本発明の易接着ポリエステルフィルムの易接着層は基材であるポリエステルフィルムとの密着性に優れるものであるが、前もってポリエステル表面にアンカー剤などのコートを行った後に本発明の易接着層をコートしてもよい。アンカー剤としては、たとえばポリエステル系、ウレタン系、アクリル系などのフィルムの加工で広く一般に用いられている材料を使用することができる。
【0046】
本発明の易接着ポリエステルフィルムの易接着層は、その厚みが0.1〜20μmであることが好ましい。易接着層の厚みが0.1μm未満であると、熱をかけた時に密着性が発現しないことがあり、20μmを超える塗工を行った場合、塗工膜の乾燥が不十分となり、巻き取りを行った後に引き出せない不具合(ブロッキング)をおこす可能性がある。経済的な理由から、易接着層の厚みは8μm以下であることがより好ましい。
【0047】
本発明の易接着ポリエステルフィルムは、易接着層が上記(A)〜(D)成分の混合物から形成されたものであるので、耐溶剤性に優れている。すなわち、感光性樹脂版などを熱ラミネートした後に溶剤に浸漬しても基材ポリエステルフィルムとの密着性が低下することがなく、具体的には、100℃で30分間熱処理後、20℃の1,1,1−トリクロロエタンに5分に浸漬しても、易接着層は基材フィルムから剥離することがない。
【0048】
本発明の易接着ポリエステルフィルムの製造方法としては、たとえば、ベースのポリエステルフィルムに所定の厚みとなるように塗剤を塗布する方法、あるいは、二軸延伸ポリエステルフィルムを製造する工程中で塗布する、いわゆる、インラインコート法が挙げられる。インラインコート法として、延伸前のポリエステルシートに塗剤を塗布したあと、少なくとも一方向に延伸する方法は、フィルムの幅方向の収縮率を制御しやすい方法である。
【0049】
フィルムに塗剤を塗布する方法としては、公知の塗工法が適用でき、たとえば、グラビアロール法、スプレー法、ロールコーター法等を用いて塗布することができるが、塗布厚みを調節する上でグラビアロール法が適している。また、塗布後の塗剤の乾燥は、110〜140℃、30〜60秒の条件で実施することが好ましい。なおベースのポリエステルフィルムは、易接着層との接着性を向上させるために、あらかじめコロナ処理等の物理的処理や化学的処理が施されていることが望ましい。
【0050】
本発明の易接着ポリエステルフィルムは、優れた易接着性、耐溶剤性を有しかつ密着性の長期安定性に優れているため、感光性材料、食品包装用途、グラフィック用途などに好適に用いることができる。特に、紫外線露光時にハレーションを抑制することができるため、紫外線感光性樹脂との組み合わせでフレキソ印刷用樹脂版としての使用に適している。
【0051】
フレキソ印刷用樹脂版の感光性樹脂層としては、熱可塑性エラストマー、光重合性不飽和単量体及び光重合開始剤、色素、顔料などからなる感光性樹脂組成物が例示される。前記熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体などのモノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンからなる化合物が用いられる。また、光重合性不飽和単量体としてはアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、エポキシアクリレート、ビニルエーテル、ウレタンアクリレート、ポリブタジエン、ポリエステルアクリレート、ポリイソプレン、マレイミド誘導体、フマール酸エステルなどが用いられている。光重合開始剤としては芳香族ケトン類、ベンゾインエーテル類などのラジカル重合開始剤、たとえばベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、α−メチルロールベンゾインメチルエーテル、α−メトキシベンゾインメチルエーテル、2,2−ジエトキシフェニルアセトフェノン等が用いられる。さらに感光性樹脂組成物の要求特性に応じて色素、顔料、などの着色添加剤、熱重合禁止剤を使用することもできる。上記化合物はすべて一種もしくは二種以上の組み合わせで使用されている。
【実施例】
【0052】
以下実施例により、本発明をさらに説明するが、これに限定されるものではない。なお、実施例に用いた評価方法は、次のとおりである。
【0053】
(1)易接着層の厚み
基材フィルムのコート部と非コート部をそれぞれハイデンハイン社製厚み計で測定し、その差をコート層の厚みとした。
【0054】
(2)フィルムの易接着層と基材PETフィルムとの密着性:
ポリエステルフィルムの易接着層にセロハンテープ(ニチバン社製、エルパックLP−24)を圧着・貼付した後、180°方向に勢いよく引き剥がし(正セロハンテープ剥離)、完全なはがれが認められれば1、全くはがれが認められなければ10とし、状態によってこの間の評価を目視で1〜10の10段階で評価し、7以上が良好と判断した。
【0055】
(3)易接着フィルムの易接着層の耐溶剤性:
本願発明の易接着ポリエステルフィルムの易接着層の面を、1,1,1−トリクロロエタンを含ませた脱脂綿で10回擦り易接着層が完全に欠落すれば1、全く欠落しなければ10とし、状態によってこの間の評価を目視で1〜10の10段階で評価し、7以上が良好と判断した。
【0056】
(4)感光性樹脂版貼り合わせ後の易接着フィルムの易接着層と感光性樹脂との密着性:
東京応化工業社製の感光性樹脂版「エラスロン−N114RB」の感光性樹脂を100℃、30分加熱後、本願発明の易接着ポリエステルフィルムにローラーで貼り合わせた後、PHILIPS社製のUVランプ「TL100W/10R」で硬化させたサンプルについて、易接着ポリエステルフィルムの易接着層と感光性樹脂との間で完全に剥がれたものを1、全く剥がれなかったものを10とし、状態によってこの間の評価を目視で1〜10の10段階で評価し、7以上が良好と判断した。
【0057】
(5)ハレーション防止性能:
東京応化工業社製の感光性樹脂版「エラスロン−N114RB」の感光性樹脂を100℃、30分加熱後、本願発明の易接着ポリエステルフィルムにローラーで貼り合わせた後、ネガフィルムを感光性樹脂版の上に載せ、UVランプ(PHILIPS社製TL100W/10R)で硬化させ、ネガフィルムを取り除いた後のサンプルを現像液(東京応化工業株式会社製、FDO−S2)で洗浄し、未硬化部分の感光性樹脂を洗い流した。このサンプルを目視確認し、ピントの状況を10段階(良好:10〜少しピンボケ:5〜かなりピンボケ:1)で評価し、7以上が良好と判断した。
【0058】
(6)感光性樹脂版貼り合わせ30日後の易接着フィルムの易接着層と感光性樹脂との密着性:
東京応化工業社製の感光性樹脂版「エラスロン−N114RB」の感光性樹脂を100℃、30分加熱後、本願発明の易接着ポリエステルフィルムにローラーで貼り合わせた後、PHILIPS社製のUVランプ「TL100W/10R」で硬化させたサンプルについて、40℃×30日経過後に易接着ポリエステルフィルムの易接着層と感光性樹脂との間で完全に剥がれたものを1、全く剥がれなかったものを10とし、状態によってこの間の評価を目視で1〜10の10段階で評価し、7以上が良好と判断した。
【0059】
実施例、比較例で使用した易接着層の原料化合物は下記のとおりである。
【0060】
(A)アクリル系樹脂原料:
アクリル系樹脂(ムサシノケミカル社製 HM−130、固形分濃度50質量%)
アクリルエマルジョン(アビシア社製 A1094、固形分濃度45質量%)
【0061】
(B)ポリエステル系樹脂原料:
ポリエステルエマルジョン(ユニチカ社製 KA1449、固形分濃度30質量%)
ポリエステルエマルジョン(ユニチカ社製 KA5034、固形分濃度32質量%)
ポリエステルエマルジョン(ユニチカ社製 KZA0134、固形分濃度32質量%)
【0062】
その他の樹脂原料:
ウレタンエマルジョン(大日本インキ工業社製 ハイドランAP−20、固形分濃度30
質量%)
ウレタンエマルジョン(大日本インキ工業社製 AP−30F、固形分濃度20質量%)
【0063】
(C)硬化剤:
オキサゾリン化合物(日本触媒社製 WS−500、固形分濃度40質量%)
【0064】
(D)クマリンスルフォネート化合物
クマリンスルフォネート(ハッコールケミカル社製SHIGENOX M−67)
【0065】
(D’)クマリンスルフォネート以外の紫外線吸収剤:
(1)2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(チバスペシャリティケミカルズ社製ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤TINUVIN PS)
(2)ベンゾフェノン(住友化学社製スミソーブ130)
(3)アミノクマリン(ハッコールケミカル社製)
【0066】
実施例1
アクリル系樹脂(A)原料としてムサシノケミカル社製 HM−130を4質量部、ポリエステル系樹脂(B)原料としてユニチカ社製 KZA0134を、硬化剤(C)として日本触媒社製WS−500、紫外線吸収剤としてクマリンスルフォネート化合物(ハッコールケミカル社製SHIGENOX M−67)、および蒸留水を混合して塗剤とし、コート・乾燥後に固形分比率が表1になるように調製した上で二軸延伸ポリエステルフィルム(ユニチカ社製エンブレットSA−125)のコロナ処理面に、マイヤーバー法により塗布し、140℃で9秒間乾燥して易接着ポリエステルフィルムを得た。
【0067】
実施例2〜13、比較例1〜11:
表1に示す組成となるように原料を混合して塗剤を調製し、実施例1と同様にして、易接着ポリエステルフィルムを得た。
【0068】
【表1】

【0069】
実施例1〜11および比較例1〜12で得られたフィルムの易接着層の構成と評価結果を表2に示す。
【0070】
実施例1〜11は密着性、耐溶剤性、ハレーション防止性、感光性樹脂版貼り合わせ後30日経過時の易接着フィルムの易接着層と感光性樹脂との密着性とこのときのハレーション防止性をすべて満足していたが、比較例1〜12ではこれらの性能をすべて満足させることはできなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、アクリル系樹脂(A)、ポリエステル系樹脂(B)、硬化剤(C)、およびクマリンスルフォネート化合物(D)を含有する易接着層を有する易接着ポリエステルフィルムであって、クマリンスルフォネート化合物(D)の含有量が、アクリル系樹脂(A)とポリエステル系樹脂(B)との合計の固形分100質量部あたり0.2質量部以上10質量部以下である易接着ポリエステルフィルム。
【請求項2】
硬化剤(C)が、エポキシ化合物、メラミン化合物、イソシアネート化合物、およびオキサゾリン化合物からなる群から選ばれる一種以上を含むことを特徴とする請求項1記載の易接着ポリエステルフィルム。
【請求項3】
易接着層の厚みが0.1〜20μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の易接着ポリエステル性フィルム。
【請求項4】
アクリル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、硬化剤(C)、およびクマリンスルフォネート化合物(D)を含有する水性塗布剤を延伸前のポリエステルシートに塗布したあと、少なくとも一方向に延伸することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の易接着ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の易接着ポリエステルフィルムの易接着層面上に感光性樹脂層を積層してなる印刷用樹脂版。
【請求項6】
感光性樹脂が紫外線感光性樹脂である請求項6記載の印刷用樹脂版。
【請求項7】
フレキソ印刷用である請求項6または7記載の印刷用樹脂版。

【公開番号】特開2010−76439(P2010−76439A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196831(P2009−196831)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】