説明

易接着ポリエステルフィルム

【課題】
高温湿熱下での接着性や印字・印刷適性に優れるだけでなく、従来にない薄膜での隠蔽性を有するICカードなどのカード類の外装材として好適な易接着白色フィルムを提供すること
【解決手段】
本発明の易接着ポリエステルフィルムは、基材ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、変性ポリエステル樹脂からなる高分子結着剤及び架橋結合剤を含む受容層が付与され、該基材ポリエステルフィルムが空隙を有する層を少なくとも1層含み、該基材ポリエステルフィルムのクッション率が15%以上40%以下のものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字・印刷・接着等の後加工が可能な易接着基材に関する。さらに詳しくは高湿熱易接着性、UV印刷適性、転写印字適性、隠蔽性等に優れるとともに、クッション性にも優れる易接着ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
印字・印刷用受容体として従来より紙支持体が支配的であったが、近年ポリエステルフィルムやポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルムが支持体として多く使用され始めている。特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代表される二軸延伸ポリエステルフィルムは透明性、寸法安定性、機械的性質、電気的性質、耐薬品性等の性能に優れているため、磁気テープ、包装材料、電気絶縁材料、各種工程紙等の幅広い分野に利用されている。ポリエステルは上記のような優れた特性を有してはいるが、フィルム表面は高度に結晶配向しているため、各種塗料などに対する接着性に乏しく、フィルム表面に易接着処理を行う場合が多い。ポリエステルフィルムに易接着処理を付与する方法としては、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等が上げられる(例えば特許文献1)が、これらの方法では経時的にその性能が低下する欠点がある。水系塗剤を付与することにより易接着性を付与する方法がある(例えば特許文献2)が、高温湿熱下での接着性、印字・印刷適性や寸法安定性、耐水性、機械的強度等は不十分である。
【0003】
また、二軸延伸PETフィルムは弾性率が大きく容易に変形しないため、ICカードまたはICタグの内部構造(ICチップや回路など)から生じる凹凸を吸収することができず、ICチップや回路の形状がICカードの表面に浮き出るという問題があった(例えば特許文献3)。このような凹凸がICカードの表面に存在すると摩擦により印刷面がかすれたり、なにかに引っかかって表層が剥がれたりするなど機能を損なう場合だけではなく、外観も好ましくない。
【特許文献1】特公昭58−25331号公報
【特許文献2】特開2000−229394号公報([0007]〜[0032]段落)
【特許文献3】特開2002−331633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は上記した問題点を解決することにある。すなわち、本発明の目的は高温高湿熱下での接着性や印字・印刷性に優れるだけでなく、ICタグの内部構造(ICチップや回路など)から生じる凹凸を吸収する事のできる易接着ポリエステルフィルムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題は、基材ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、変性ポリエステル樹脂からなる高分子結着剤及び架橋結合材を含む受容層が付与され、該基材ポリエステルフィルムが空隙を有する層を少なくとも1層含むものであることを特徴とする易接着ポリエステルフィルムによって達成することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の易接着ポリエステルフィルムによれば、高温高湿熱下での接着性や印字・印刷適性に優れるだけでなく、優れたクッション性を有していることからICチップ等の凹凸を良く吸収するため、ICカードなどのカード類の外装材として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の易接着ポリエステルフィルムは、基材ポリエステルフィルムの少なくとも片面に変性ポリエステルフィルムからなる高分子結着剤及び架橋結合材を含む受容層が付与され、該基材ポリエステルフィルムが空隙を有する層を少なくとも1層含むものであることを特徴とするものである。
【0008】
本発明にかかる基材ポリエステルフィルムは、ポリエステルからなるフィルムあればよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートからなるフィルムを使用することができる。それらは、他の各種フィルムの中でも寸法安定性、機械的性質、熱的性質等に優れているため好ましく用いられる。
【0009】
また、本発明にかかる基材ポリエステルフィルムは内部に空隙を有しているため、ICタグ等から生じる凹凸を吸収できる。凹凸を吸収することにより、摩耗による部分的なかすれや剥がれが軽減できるだけではなく、外観も美麗なカードを作製する事ができる。基材ポリエステルフィルムには少なくとも空隙を有する層が1層含まれていればよく、具体的な層構成としては、空隙を有する層の単層構成、空隙を有する層の片面に空隙を有さない層を積層した2層構成、または空隙を有する層の両面に空隙を有さない層を積層した3層構成等が考えられる。特に、空隙を有する層の両面に空隙を有さない層を積層した3層構成をとると、生産性が上がるだけでなく機械特性も優れるため好ましい。
【0010】
本発明にかかる基材ポリエステルフィルムは少なくとも1軸に延伸された基材であることが好ましい。本発明にかかる基材ポリエステルフィルムは無延伸でもよい。しかしながら、1軸以上に延伸されていると、機会特性に優れる耐屈曲性や寸法精度、弾性回復率を持つために折れ皺が入りにくくなると共に、厚み方向の気泡径が数μm以下になるために光を効果的に散乱し、隠蔽性に優れる。そのため1軸以上に延伸することが好ましい。
【0011】
より好ましくは2軸に延伸されていることが好ましい。このように延伸されたポリエステルフィルムは機械特性に優れる耐屈曲性や、弾性回復率を持つために折れ皺が入りにくくなると共に、厚み方向の気泡径が数μm以下になるために光を効果的に散乱し、隠蔽性に優れたポリエステルフィルムとなる。
【0012】
本発明にかかる基材ポリエステルフィルムは、比重が0.1g/cm以上1.3g/cm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.15g/cm以上1.0g/cm以下である。さらに好ましくは、0.2g/cm以上0.8g/cm以下である。比重が0.1g/cmより低い場合には、気泡径が大きくなりすぎるため、度や機械強度が不十分になったり、折れ皺が入りやすくなることがある。また、比重が1.3g/cmより高い場合には、逆に気泡径が小さくなりすぎるため、白色度やクッション性が不十分となることがある。
【0013】
本発明にかかる基材ポリエステルフィルムは、クッション率が15%以上40%以下であることが好ましい。より好ましくは15%以上38%以下である。さらに好ましくは、20%以上35%以下である。クッション率が15%より低い場合には、クッション性が不十分のため、ICタグの内部構造(ICチップや回路など)から生じる凹凸を吸収できなくなる場合がある。また、クッション率が40%より大きい場合には、折れ皺が入りやすくなったり、基材の強度が不十分となり、カードに必要な堅牢度が得られなかったり、カード表面にボールペンなどの筆記用具で字句を記入した際に部分的な窪みを生じたりすることがある。
【0014】
本発明の易接着ポリエステルフィルムはICカードの外装材に好適に使用するために、基材ポリエステルフィルムの光学濃度が1.0〜2.0であることが好ましい。光学濃度は1.1〜1.8であれば好ましく、1.2〜1.7であれば特に好ましい。光学濃度が1.0以下では隠蔽性に劣り、2.0を超えると空隙の生成が多くなりすぎて、比重が低くなり過ぎ、皺が発生しやすくなる場合がある。
【0015】
本発明の易接着ポリエステルフィルムは、このような基材ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、変性ポリエステル樹脂からなる高分子結着剤および架橋結合剤を含む受容層を設けてなるポリエステルフィルムである。受容層とは、接着剤や各種塗料の密着性に乏しいフィルム表面に易接着性を持たせるために形成されるものである。有期溶媒系塗料を塗工することにより、高温高湿下での接着性の優れた受容層を得ることができる。
【0016】
本発明にかかる受容層は、変性ポリエステル樹脂からなる高分子結着剤を主剤として、これに架橋結合剤を含有して構成されたものである。この受容層が基材ポリエステルフィルム表面に塗設され、本発明に係る易接着ポリエステルフィルムとされるものである。かかる受容層の塗設は、基材ポリエステルフィルムを製膜した後にコーテイングされるが、達成する手段としてオフラインコーティングまたはインラインコーティングが選択される。
【0017】
かかる高分子結着剤は、極性基含有ポリエステル樹脂や不飽和結合を有する化合物をグラフト化させた共重合ポリエステル樹脂などの変性ポリエステル樹脂からなるものである。
【0018】
本発明においては、かかる高分子結着剤に架橋結合剤を含有させて受容層を構成するものである。
【0019】
かかる架橋結合剤は、前記変性ポリエステル樹脂に存在する官能基、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、グリシジル基、アミド基等と熱架橋反応して、最終的には三次元網状構造を有する易接着層とするための架橋剤である。かかる架橋結合剤としては、イソシアネート系化合物、メラミン系化合物、尿素系化合物およびエポキシ系化合物から選ばれた少なくとも1種を用いるのが、架橋効果が大きくて好ましい。
【0020】
これらの架橋結合剤は単独か、場合によっては2種以上併用してもよい。かかる架橋結合剤の配合比率は、高分子結着剤に対して固形分質量比で好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは3〜10質量%の範囲がよい。
【0021】
また、受容層の厚みとしては、0.1μm以上2μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以上1μm以下である。0.1μm未満では、該受容層を含むポリエステルフィルムと後工程でのインキの密着性に劣ることがある。2μmを超えるとブロッキングが起こることがある。
【0022】
本発明の易接着ポリエステルフィルムは、基材ポリエステルフィルムの両面に受容層を設け、さらに一方の受容層の表面に表面硬化層を設けることも好ましい。表面硬化層を設けることで、耐摩耗性も付与することができる。かかる表面硬化層は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体の少なくとも一種と、エチレン飽和2重結合を有する単量体の少なくとも一種とを混合した単量体混合物を構成成分として含む。
本発明でいう(メタ)アクリロイルオキシ基(ここで(メタ)アクリロイルオキシ基とは、
アクリロイルオキシ基及びメタアクリロイルオキシ基とを略して表示したものである)の具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0023】
これらの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体は、1種または2種以上を混合して使用してもよい。これらの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体の使用割合は、表面効果層の主構成成分である単量体混合物の総量に対して20〜90重量%であることが好ましい。より好ましくは30〜80重量%であり、さらに好ましくは30〜70重量%である。上記単量体の使用割合が20重量%未満の場合には、充分な耐摩耗性を有する硬化被膜が得られず、またその量が90重量%を超える場合は、重合による収縮が大きく、硬化被膜に歪が残ったり、被膜の可撓性が低下したり、硬化被膜側に大きくカールしてしまうことがある。
【0024】
本発明でいうエチレン不飽和二重結合を有する単量体としては、ラジカル重合性のある通常の単量体ならば特に限定されずに使用することができる。
【0025】
エチレン不飽和二重結合を有する単量体の使用割合は、表面効果層の主構成成分である単量体混合物の総量に対して10〜80重量%が好ましく、より好ましくは20〜70重量%である。上記単量体の使用割合が80重量%を超える場合には、十分な耐摩耗性を有する硬化被膜が得られにくくなることがある。また、その使用割合が10重量%未満の場合には、被膜の可撓性が低下したり、基材ポリエステルフィルム上に設けた受容層との密着性が低下したりすることがある。
【0026】
表面硬化層の塗布手段としては、刷毛塗り、浸漬塗り、ナイフ塗り、ロール塗り、スプレー塗り、流し塗り、回転塗り(スピンナー、ホエラーなど)などの通常行われている塗布方法が容易に適用可能である。各々の方式には特徴があり、表面硬度化フィルムの要求特性、使用用途などにより、塗布方法を適宜選択する。
【0027】
また、塗工時の作業性の向上、塗工膜厚のコントロールを目的として、本発明の目的を損なわない範囲で有機溶剤を配合することができる。
表面硬化層の厚さとしては用途に応じて適宜選択されるが、通常0.5μm〜10μm、好ましくは1μm〜5μmである。表面硬度化層の厚さが0.5μm未満の場合には、表面硬度が不十分で傷が付きやすく、10μmを超える場合には、硬化膜が脆くなりやすくなることがある。
【0028】
上記した本発明の易接着ポリエステルフィルムは、優れたクッション率と易接着性(印刷・印字性)に優れていることから、樹脂層からなるシート状カードの両面に、受容層とシート状カードが面するように接着してカードとして好ましく用いることができる。なかでも2枚の樹脂層の間にIC及びICアンテナを挟み込んだICカードの両面に用いるとチップや回路の凹凸を吸収するため、特に好ましい。また、本発明の易接着ポリエステルフィルムは、2枚の易接着ポリエステルフィルムで、ICおよびICアンテナを、それぞれの受容層が面するように挟み込んだICカードにも、チップや回路の凹凸を吸収するため好ましく用いることができる。なお、表面硬化層を設けた易接着ポリエステルフィルムの場合には、表面硬化層が設けられていない側の受容層が、シート状カード、ICカード、又はIC・ICアンテナに面するようにする。
【実施例】
【0029】
以下に、本発明の易接着ポリエステルフィルムを実施例により具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。まず、特性評価方法について説明する。
【0030】
(1)受容層と基材フィルムとの密着性
23℃×65%RHの雰囲気下において、易接着ポリエステルフィルムの受容層側に1mm幅で縦横に切れ目を入れて100個の升目を作り、その上にニチバン製No.405、幅18mmのセロハン粘着テープを手で強く圧着し、30秒放置する。その後、該セロハン粘着テープを、45°方向へ急速に剥がし受容層の塗膜剥がれ発生の有無を目視確認する。塗膜の剥がれが全くないものを極めて良好として「◎」、塗膜の剥がれが若干見られるが、使用上問題ない程度のものを「○」、塗膜の剥がれ発生が多く実用上問題があるものを「×」とする。
【0031】
(2)受容層と表面硬化層との密着性
易接着ポリエステルフィルム受容層上に表面硬化層を形成し、23℃×65%RHの雰囲気下において、易接着ポリエステルフィルムの表面硬化層側に1mm幅で縦横に切れ目を入れて100個の升目を作り、その上にニチバン製No.405、幅18mmのセロハン粘着テープを手で強く圧着し、30秒放置する。その後、該セロハン粘着テープを、45°方向へ急速に剥がし表面硬化層の塗膜剥がれ発生の有無を目視確認する。塗膜の剥がれが全くないものを極めて良好として「◎」、塗膜の剥がれが若干見られるが、使用上問題ない程度のものを「○」、塗膜の剥がれ発生が多く実用上問題があるものを「×」とする。
【0032】
(3)受容層と基材フィルムとの耐湿密着性
易接着ポリエステルフィルムを60℃×90%RHの雰囲気下に3日間放置する。その後、該基材の受容層側に、1mm幅で縦横に切れ目を入れて100個の升目を作り、その上にニチバン製No.405、幅18mmのセロハン粘着テープを手で強く圧着し、30秒放置する。その後、該セロハン粘着テープを、45°方向へ急速に剥がし受容層の塗膜剥がれ発生の有無を目視確認する。塗膜の剥がれが全くないものを極めて良好として「◎」、塗膜の剥がれが若干見られるが、使用上問題ない程度のものを「○」、塗膜の剥がれ発生が多く実用上問題があるものを「×」とする。
【0033】
(4)受容層と表面硬化層との耐湿密着性
易接着ポリエステルフィルム受容層上に表面硬化層を形成し、60℃×90%RHの雰囲気下に3日間放置する。その後、該基材の表面硬化層側に、1mm幅で縦横に切れ目を入れて100個の升目を作り、その上にニチバン製No.405、幅18mmのセロハン粘着テープを手で強く圧着し、30秒放置する。その後、該セロハン粘着テープを、45°方向へ急速に剥がし表面硬化層の塗膜剥がれ発生の有無を目視確認する。塗膜の剥がれが全くないものを極めて良好として「◎」、塗膜の剥がれが若干見られるが、使用上問題ない程度のものを「○」、塗膜の剥がれ発生が多く実用上問題があるものを「×」とする。
【0034】
(5)受容層と接着剤との密着性
23℃×65%RHの雰囲気下において、易接着ポリエステルフィルムの受容層側に、ポリエステル系接着剤を10μm塗布し、120℃×1分乾燥させて接着剤被膜を製膜した。次に、23℃×65%RHの雰囲気下において、この被膜面に1mm幅で縦横に切れ目を入れて100個の升目を作り、その上にニチバン製NO.405、幅18mmのセロハン粘着テープを手で強く圧着し、30秒放置する。その後、該セロハン粘着テープを、45°方向へ急速に剥がし、剥離状況から易接着フィルムと接着剤との密着性を評価する。塗膜の剥がれが全くないものを極めて良好として「◎」、塗膜の剥がれが若干見られるが、使用上問題ない程度のものを「○」、塗膜の剥がれ発生が多く実用上問題があるものを「×」とする。
【0035】
(6)基材フィルムの比重
基材フィルムを30mm×40mmの大きさに切取り試料とし、電子比重計(ミラージュ貿易(株)製 SD―120L)を用いて、室温23℃相対湿度65%の雰囲気下にて測定を行う。測定は3回行い平均値をそのフィルムの比重とする。
【0036】
(7)基材フィルムのクッション性
三豊製作所(株)ダイヤルゲージNo.2109−10に標準測定子900030を用い、更にダイヤルゲージスタンドNo.7001DGS−Mを用いてダイヤルゲージ押さえ部分荷重50gと500gとをかけたときのそれぞれの基材フィルム厚さd50、d500から次式により求める。
・クッション率=(d50−d500)/d50×100。
【0037】
(8)基材フィルムの光学濃度
基材フィルムを光学濃度計(Macbeth TR−927)にて基材フィルムの光学濃度を測定する。光学濃度が1.0〜2.0のものを「◎」、0.6〜0.9のものを「○」、それに満たないものを「×」とする。
【0038】
(9)耐摩耗性
易接着ポリエステルフィルム受容層上に表面硬化層を形成し、スチールウール♯0000で表面硬化層表面を摩擦する。傷の付き具合を目視にて評価し、強く摩擦してもほとんど傷がつかないものを「○」、弱い摩擦でも傷が付くものを「×」とする。
【0039】
(10)ICカードの外観
ICチップ(厚み0.21mm)と銅線(直径0.12mm)により仮想的な平面コイル状アンテナ(80mm×48mm)を作製し、該アンテナの裏面にポリエステル樹脂系接着剤を塗布し、厚み50μmの「東レ(株)社製 “ルミラー”T60」に圧着し、アンテナシートを得る。
該シートの両面に易接着フィルムを、受容層がアンテナシートに面するように熱圧着し、ICカードを得る。目視で確認し、凹凸および該アンテナが全く見られないものを「○」、凹凸が発生または、該アンテナが透けて見え、使用上問題のあるものを「×」とする。
【0040】
(11)印字・印刷適性
易接着ポリエステルフィルムを両面テープを用いて台紙に、基材フィルム側が台紙に面するように貼り付けて固定した後、カラーインキジェットプリンタ(EPSON社:PM-800C)を用いて、受容層に印刷し、乾燥させた後印刷適性を観察する。評価は目視で行い、印刷良好なものを「○」印刷抜け等が多く見られ実用不可能なものを「×」とする。
【0041】
(実施例1)
厚み250μm、空隙を有する中間層とその両面に空隙を有しない表面層からなる積層体の二軸配向ポリエステルフィルム「東レ(株)社製“ルミラー”E6SL」を基材フィルムとし、該基材フィルムの片面に、日本化工塗料(株)製の変性ポリエステル高分子結着剤TR−5改3(固形分質量比20質量%)を、下記の組成Aにてグラビアロール(#200,斜線タイプ)を用いて塗工し、130℃のオーブンにて20秒乾燥、熱硬化させて厚み0.5μmの受容層を設けて易接着ポリエステルフィルムを得た。さらに、得られた易接着ポリエステルフィルムを50℃で3日間エージング処理を施した。
評価結果を表1に示したが、受容層と基材フィルムとの密着性、受容層と基材フィルムとの耐湿密着性、受容層と接着剤との密着性、比重、クッション率、光学濃度、ICカード外観、印字・印刷適性のいずれも極めて良好であった。
・組成A
TR−5改3 : 100質量部
TD硬化剤 : 1.7質量部
トルエン : 40質量部
メチルエチルケトン : 10質量部。
【0042】
(実施例2)
基材フィルムを厚み188μm、空隙を有する中間層とその両面に空隙を有しない表面層からなる積層体の「東レ(株)社製“ルミラー”E60L」にする以外は実施例1と同様の方法にて易接着ポリエステルフィルムを得た。さらに、得られた易接着ポリエステルフィルムを50℃で3日間エージング処理を施した。
評価結果を表1に示したが、受容層と基材フィルムとの密着性、受容層と基材フィルムとの耐湿密着性、受容層と接着剤との密着性、比重、クッション率、光学濃度、ICカード外観、印字・印刷適性のいずれも極めて良好であった。
【0043】
(実施例3)
基材フィルムを厚み188μm、空隙を含む層と含まない層の2層構造を持つ帝人(株)社製188UXZ1にする以外は実施例1と同様の方法にて易接着ポリエステルフィルムを得た。さらに、得られた易接着ポリエステルフィルムを50℃で3日間エージング処理を施した。評価結果を表1に示したが、受容層と基材フィルムとの密着性、受容層と基材フィルムとの耐湿密着性、受容層と接着剤との密着性、比重、クッション率、光学濃度、ICカード外観、印字・印刷適性のいずれも極めて良好であった。
【0044】
(実施例4)
実施例1の易接着フィルムにおいて、受容層が設けられていない基材フィルム面にさらに同じ受容層を設けた。一方の受容層の表面に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート70重量部、N−ビニルピロリドン30重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン4重量部を混合攪拌して得られた組成物を、バーコーターを用いて硬化後の膜厚が3μmとなるように均一に塗布した。これを、塗布面より9cmの高さにセットした80W/cmの照射強度を有する高圧水銀灯で、紫外線を15秒照射し、硬化させ、易接着ポリエステルフィルム上に表面硬化層を形成した。
評価結果を表1に示したが、受容層と基材フィルムとの密着性、受容層と基材フィルムとの耐湿密着性、受容層と接着剤との密着性、受容層と表面硬化層との密着性、受容層と表面硬化層との耐湿密着性、比重、クッション率、光学濃度、ICカード外観、耐摩耗性のいずれも極めて良好であった。
【0045】
(実施例5)
実施例2の易接着フィルムにおいて、受容層が設けられていない基材フィルム面にさらに同じ受容層を設けた。一方の受容層の表面に、実施例4と同様の方法にて表面硬化層を得た。評価結果を表1に示したが、受容層と基材フィルムとの密着性、受容層と基材フィルムとの耐湿密着性、受容層と接着剤との密着性、受容層と表面硬化層との密着性、受容層と表面硬化層との耐湿密着性、比重、クッション率、光学濃度、ICカード外観、耐摩耗性のいずれも極めて良好であった。
【0046】
(実施例6)
実施例3の易接着フィルムにおいて、受容層が設けられていない基材フィルム面にさらに同じ受容層を設けた。一方の受容層の表面に、実施例4と同様の方法にて表面硬化層を得た。評価結果を表1に示したが、受容層と基材フィルムとの密着性、受容層と基材フィルムとの耐湿密着性、受容層と接着剤との密着性、受容層と表面硬化層との密着性、受容層と表面硬化層との耐湿密着性、比重、クッション率、光学濃度、ICカード外観、耐摩耗性のいずれも極めて良好であった。
【0047】
(比較例1)
基材フィルムを厚み50μm、空隙を有さない積層体の「東レ(株)社製“ルミラー”E42」にする以外は実施例1と同様の方法にて易接着ポリエステルフィルムを得た。さらに、得られた易接着ポリエステルフィルムを50℃で3日間エージング処理を施した。
評価結果を表1に示したが、受容層と基材フィルムとの密着性、受容層と基材フィルムとの耐湿密着性、受容層と接着剤との密着性、比重、印字・印刷適性のいずれも良好であったが、光学濃度は実用に問題は無いが、若干劣り、クッション性及び、ICカード外観は実用上問題のあるものであった。
【0048】
(比較例2)
基材フィルムを厚み75μm、空隙を有さない単層体の「東レ(株)社製“ルミラー”E20」にする以外は実施例1と同様の方法にて易接着ポリエステルフィルムを得た。さらに、得られた易接着ポリエステルフィルムを50℃で3日間エージング処理を施した。
評価結果を表1に示したが、受容層と基材フィルムとの密着性、受容層と基材フィルムとの耐湿密着性、受容層と接着剤との密着性、比重、光学濃度、印字・印刷適性のいずれも良好であったが、クッション性及びICカード外観は実用上問題のあるものであった。
【0049】
(比較例3)
基材フィルムを厚み50μm、空隙を有する中間層とその両面に空隙を有しない表面層からなる積層体の発泡PPフィルムにする以外は実施例1と同様の方法にて易接着基材を得た。さらに、得られた易接着ポリプロピレンフィルムを50℃で3日間エージング処理を施した。
評価結果を表1に示したが、受容層と基材フィルムとの密着性及び受容層と基材フィルムとの耐湿密着性、受容層と接着剤との密着性、比重、光学濃度、印字・印刷適性は良好であった。しかし、クッション性、ICカードの外観のいずれも実用上問題があるものであった。
【0050】
(比較例4)
基材フィルムを厚み225μm、空隙を含む層の単層構造を持つSKC社製SY64にする以外は実施例1と同様の方法にて易接着ポリエステルフィルムを得た。さらに、得られた易接着ポリエステルフィルムを50℃で3日間エージング処理を施した。評価結果を表1に示したが、受容層と基材フィルムとの密着性、受容層と基材フィルムとの耐湿密着性、受容層と接着剤との密着性、比重、光学濃度、印字・印刷適性のいずれも良好であったが、クッション率及びICカード外観は実用上問題のあるものであった。
【0051】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の易接着ポリエステルフィルムにおいては、基材に塗布する易接着層を特定のものから構成することにより、高温高湿下での基材との密着性、後加工での塗料との密着性、接着剤との接着性等がともに向上でき、かつ、透明性や光沢性に優れた易接着層を有する易接着ポリエステルフィルムを得ることができるため、たとえばICカード、電子材料、グラフィック材料などに好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、変性ポリエステル樹脂からなる高分子結着剤及び架橋結合剤を含む受容層が付与され、該基材ポリエステルフィルムが空隙を有する層を少なくとも1層含み、該基材ポリエステルフィルムのクッション率が15%以上40%以下である易接着ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記基材ポリエステルフィルムの比重が、0.1g/cm以上1.3g/cm以下である請求項1に記載の易接着ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記基材ポリエステルフィルムの光学濃度が、0.6以上2.0以下である請求項1または2に記載の易接着ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記基材ポリエステルフィルムが、空隙を有する中間層と、その両面に積層された空隙を有しない表面層とで構成された積層体である請求項1〜3のいずれかに記載の易接着ポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記基材ポリエステルフィルムの両面に受容層が設けられ、一方の受容層の表面に表面硬化層が設けられ、該硬化層が、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体の少なくとも一種と、エチレン不飽和2重結合を有する単量体の少なくとも一種とを混合した単量体混合物を構成成分として含む請求項1〜5のいずれかに記載の易接着ポリエステルフィルム。
【請求項6】
ICおよび該ICに接続されたアンテナを、請求項1〜5のいずれかに記載の易接着ポリエステルフィルムの2枚で、それぞれの受容層が面するように挟み込んでなるICカード。
【請求項7】
樹脂層からなるシート状カードの両表面に請求項1〜5のいずれかに記載の易接着ポリエステルフィルムを、前記受容層とシート状カードが面するように接着してなるカード。
【請求項8】
請求項7に記載のカードにおいて、前記樹脂層が2層あり、ICおよび該ICに接続されたアンテナを2つの樹脂層で挟み込んでなるICカード。

【公開番号】特開2009−184341(P2009−184341A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142164(P2008−142164)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】