説明

映像信号処理回路、表示装置、液晶表示装置、投射型表示装置及び映像信号処理方法

【課題】マトリクス駆動方式の表示装置における横電界に起因した画質不良に対し、現象発生画素にのみ補正電圧を印加して画質不良を改善する。
【解決手段】まず表示パネル上の隣接する2画素に入力される映像信号の電位差(駆動電圧の差分)を検出する。そして、隣接する2画素に対する駆動電圧に電圧差がある場合、2画素間の駆動電圧の差分に基づいて補正の対象となる画素(補正対象画素)を選択する。次に、2画素間の駆動電圧の差分及び補正対象画素に対応する入力映像信号に基づいて、補正対象画素に対する駆動電圧の補正量を算出する。そして、その補正量から補正対象画素に供給する駆動電圧の値を補正する。このように、隣接する2画素に対する駆動電圧の電圧差を求め、その電圧差に基づいて補正対象画素に供給する駆動電圧を算出し、横電界によって輝度変化を生じる補正対象画素に対してのみ駆動電圧の値を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶表示装置など、マトリクス駆動方式の表示パネルに発生する横電界に起因した画質不良を改善するのに好適な映像信号処理回路、表示装置、液晶表示装置、投射型表示装置及び映像信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マトリクス駆動方式の表示装置において各画素に供給される映像信号の電位差が生じる信号境界部分、(つまり隣接する2つの画素の電極間)にいわゆる横電界が発生する。この横電界により、各画素の電極に掛かる電界が乱れ、その乱れが影響することにより画質不良が発生する。この画質不良現象の特徴として、当該画素に対する映像信号の駆動電圧と隣接画素に対する映像信号の駆動電圧との電圧差により画質不良発生箇所、濃淡が異なる。図1A,B,Cに画質不良現象が発生した表示画像の例を示す。
【0003】
図1Aでは、例えば7(縦)×7(横)画素の表示装置における、入力映像信号に基づく表示画像1と画質不良が発生した場合の表示画像1Aの例を示している。入力映像信号に基づく表示画像1は中央部分の3×5画素の輝度が黒レベル、その周辺画素の輝度がグレーレベルである。これに対し、画質不良が発生した場合の表示画像1Aは、中央部分の3×5画素の左側に隣接する画素2a〜2cと下側に隣接する画素2d〜2hに、白が滲んだような表示パターンとなっている。
【0004】
図1Bでは、例えば7(縦)×7(横)画素の表示装置における、入力映像信号に基づく表示画像11と画質不良が発生した場合の表示画像11Aの例を示している。入力映像信号に基づく表示画像11は中央部分の3×5画素の輝度が黒レベル、その周辺画素の輝度が白レベルである。これに対し、画質不良が発生した場合の表示画像11Aは、中央部分の3×5画素の上側に隣接する画素12a〜12eと右側に隣接する画素12f〜12hに、黒が滲んだような表示パターンとなっている。
【0005】
図1Cでは、例えば7(縦)×7(横)画素の表示装置における、入力映像信号に基づく表示画像21と画質不良が発生した場合の表示画像21Aの例を示している。入力映像信号に基づく表示画像21は中央部分の3×5画素の輝度がグレーレベル、その周辺画素の輝度が白レベルである。これに対し、画質不良が発生した場合の表示画像21Aは、中央部分の3×5画素のうち白レベルの画素と隣接する上側及び右側の画素22a〜22gに、黒が混じったような表示パターンとなっている。
【0006】
図2は、液晶表示装置の場合における画質不良現象の発生原理を示した図である。図2左は隣接する画素31,32の顕微鏡写真、図2右は画素31,32の液晶配向を示す模式図を表している。画素31,32との間に横電界33が発生しており、それにより画素31及びその右側に隣接する画素32において、液晶分子34a,35aのように左側に傾斜していた配向が液晶分子34b,35bのように乱れる。そして、画素31と画素32との境界付近に存在する液晶分子34c,35cは、それぞれ横電界33に垂直に配向してしまう。この液晶分子34c及び液晶分子35cのように、画素31及び画素32にそれぞれ偏光板軸と平行又は垂直な方向の配向部位が発生して透過率が変化し、それぞれに黒線36,37が発生する。このように、液晶表示装置においては横電界により液晶分子の配向方位が回転し、その配向方位の乱れが影響してドメイン起因の画質不良が発生する。なお、1画素が例えば3つの原色のR(赤),G(緑),B(青)のサブ画素から構成されている場合、各原色のサブ画素間に横電界が発生する。
【0007】
ここで、液晶表示装置の概略構成について、図3A,Bを参照して説明する。図3Aは液晶表示装置の分解斜視図であり、図3Bは図3Aの要部拡大図である。図3A,Bに示すように、液晶表示装置40は、液晶層41と、その液晶層41を挟んで対向する対向する上面ガラス基板42及び下面ガラス基板44と、さらに上面ガラス基板42と下面ガラス基板44を挟んで対向する偏光板46及び偏光板47を備える。
【0008】
上面ガラス基板42には、図3A,Bに示すように、画素パターン全体に共通した対向電極が形成された透明導電膜43が成膜される。また下面ガラス基板44には、図3A,Bに示すように、画素電極(画素パターン)48,48n+1と、この画素電極(画素パターン)を駆動するための画素に対応したスイッチ素子である薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)49,49n+1が形成される。さらに下面ガラス基板44には、薄膜トランジスタ49,49n+1のゲート入力となるX電極(走査線)X,Xn+1、及び、ソース入力となるY電極(信号線)Y,Yn+1のパターンが形成される。また、偏光板46,47は、それぞれの偏光板軸46a,47aが互いに直交するように配置される。
【0009】
このような構造で、液晶層41のうち画素電極と対向電極の電極間に挟まれた領域の液晶分子41a,41bのみが、画素電極と対向電極間の電界の影響を受けて配列を変え、1画素分の液晶シャッターとして機能する。横電界とは、隣接する2画素に供給される映像信号の電位差によって、隣接する2画素のY電極間もしくは画素電極間に発生する。
【0010】
ところで、液晶表示装置には、完全垂直配向型とチルト配向型がある。完全垂直配向型はいわゆるVA(VA:Vertical Alignment)型と呼ばれ、図示しない配向膜により、画素に対応する電極に電圧を印加しない状態で液晶層の液晶分子を基板に垂直になるように配向するものである。つまり、基板に対する液晶分子41a,41bの傾斜角θが90度である。この状態において画素に対応する電極に電圧を印加すると、液晶分子の倒れる方向(配向方位)が自由であるので配向方位が揃わない。
【0011】
一方、チルト配向型は、図示しない配向膜により、画素に対応する電極に電圧を印加しない状態で液晶層の液晶分子を基板法線方向に対し傾くように配向し、電圧を印加した状態では基板に対しほぼ水平な配向方位となるようにするものである。つまり、図3Bに示すように、基板に対する液晶分子41a,41bの傾斜角(プレチルト角度)θが、θ<90°である。プレチルト角度がついている場合、液晶表示装置40を正面(基板法線方向)から見ると所定の方向に傾いている。この状態において画素に対応する電極に電圧を印加すると、図2に示した液晶分子34a,35aのように倒れる方向(配向方位)がプレチルトによって決まる。液晶分子の配向方位が一方向に決まるので、画素内の透過光が均一となり良好な表示が行える。
【0012】
このようなプレチルトを持つ液晶表示装置の場合、画質不良現象の発生方向は液晶配向の蒸着方向にも依存する。図4A,B,Cに、VA型かつ右蒸着の液晶表示装置における入力映像信号による表示画像と画質不良発生時の表示画像の例を示す。
【0013】
図4Aにおいては、例えば入力映像信号に基づく1ライン(7画素)の表示画像51と画質不良が発生した場合の表示画像51Aの例を示している。入力映像信号に基づく表示画像51は中央部分の3画素の輝度が黒レベル、その周辺画素の輝度がグレーレベルである。これに対し、画質不良が発生した場合の表示画像51Aは、中央部分の3画素の左側に隣接する画素51aに、白が滲んだような表示パターンとなっている。
【0014】
図4Bにおいては、例えば入力映像信号に基づく1ライン(7画素)の表示画像52と画質不良が発生した場合の表示画像52Aの例を示している。入力映像信号に基づく表示画像52は中央部分の3画素の輝度が黒レベル、その周辺画素の輝度が白レベルである。これに対し、画質不良が発生した場合の表示画像52Aは中央部分の3画素の右側に隣接する画素52aに、黒が滲んだような表示パターンとなっている。
【0015】
図4Cにおいては、例えば入力映像信号に基づく1ライン(7画素)の表示画像53と画質不良が発生した場合の表示画像53Aの例を示している。入力映像信号に基づく表示画像53は中央部分の3画素の輝度がグレーレベル、その周辺画素の輝度が白レベルである。これに対し、画質不良が発生した場合の表示画像53Aは中央部分の3画素のうち右側の白レベルの画素と隣接する画素53aに、黒が滲んだような表示パターンとなっている。
【0016】
これとは反対に液晶配向が左蒸着の液晶表示装置である場合、画質不良現象が、右蒸着の液晶表示装置の場合を例とした図4と反対方向に発生する。例えば、図4Aの入力映像信号に基づく表示画像51を例にとると、左蒸着の場合、画質不良が発生した場合の表示画像は、中央部分の3画素の右側に隣接する画素51bに、白が滲んだような表示パターンとなって現れる。このように、画質不良現象として発生の原因は同じであるが、見え方がそれぞれ異なる。
【0017】
また、液晶表示装置には、画素電極への印加電圧によって液晶層の透過率が変化するV−T(Voltage-Transmittance)特性が存在する。カラー液晶表示装置の場合、V−T特性はR(赤),G(緑),B(青)それぞれで異なるため、画質不良現象の濃淡もRGBで異なる。
【0018】
上述した液晶表示装置はVA型であるが、横電界の影響はTN(Twisted Nematic)型の液晶表示装置でも発生する。ただし、両者ではノーマリー・ホワイト(NW)とノーマリー・ブラック(NB)の違いから見え方が異なる。図5A,Bに、液晶表示装置の違いによる表示パターンの見え方の違いを示す。
【0019】
図5Aは、TN型の液晶表示装置(NW)において、画質不良が発生した場合の7(縦)×7(横)画素の表示画像61の例である。本来の入力映像信号に基づく表示画像は、中央部分の3×5画素の輝度が黒レベル、その周辺画素の輝度が白レベルである。これに対し、画質不良が発生した場合の表示画像61は、中央部分の3×5画素のうち白レベルの画素と隣接する上側及び右側の黒レベルの画素61a〜61gに、白が滲んだような表示パターンとなっている。
【0020】
一方、図5Bは、VA型の液晶表示装置(NB)において、画質不良が発生した場合の7(縦)×7(横)画素の表示画像62の例である。入力映像信号が図5Aの場合と同様のとき、画質不良が発生した場合の表示画像62は、中央部分の3×5画素の上側に隣接する画素62a〜62eと右側に隣接する画素62f〜62hに、黒が滲んだような表示パターンとなる。
【0021】
以上、横電界の影響による画質不良現象について液晶表示装置を例に説明したが、横電界の影響による画質不良現象の発生は液晶表示装置に限られない。すなわち、同様の画質不良現象は、表示パネルに画素をマトリクス状に配置し、対象画素に対し走査線と信号線に電圧を印加して対象画素を表示(発光)させる方式の表示装置においても発生する。例えば有機EL(Electroluminescence)表示装置においては、横電界により有機EL素子の画素内の電子及び正孔の動きに乱れが生じ、画質不良が発生する。またプラズマ表示装置においては、横電界により画素内のプラズマの生成に影響が生じて画質不良が発生する。
【0022】
ところで、以前より、マトリクス駆動方式の表示装置において、各画素に供給される映像信号の電位差に起因して2画素間に発生する横電界の影響による画質不良の改善が行われている。例えば、特許文献1には、映像信号のフレーム周期に同期してフレーム周期より短い周期で走査線を走査し、かつ、信号線にパルス幅変調された信号を印加する技術が開示されている。これにより、フリッカが生じることなくディスクリネーションも生じない、フレーム反転駆動による液晶駆動を可能としている。
【特許文献1】特開2001−59957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかし、特許文献1に記載のものは、同一フレーム期間に隣接する2画素間に電圧差の生じる映像信号が印加される際、各画素(各ライン)間において横電界の影響で液晶配向が所望の配向からずれる問題に対しては対応していない。また、隣接画素間(水平方向)、隣接ライン間(垂直方向)の電圧差に基づく液晶配向の乱れに対する解決策は提示されていない。
【0024】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、マトリクス駆動方式の表示装置における横電界に起因した画質不良に対し、現象発生画素にのみ補正電圧を印加して画質不良を改善できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の一側面の情報処理回路は、隣接画素電圧差検出部と、補正量演算部と、補正量加算部とを含むようにして構成される。隣接画素電圧差検出部は、入力映像信号からマトリクス駆動方式の表示パネルの各画素に対する駆動電圧とその隣接画素に対する駆動電圧との差分を検出する。また、補正量演算部は、前記隣接画素電圧差検出部で検出された当該2つの画素の各々に対する駆動電圧の差分に起因して、当該2つの画素の電極間に発生する電界により輝度変化を生じる補正対象画素に対する駆動電圧の補正量を演算する。補正量加算部は、前記補正量演算部で演算された補正量に基づいて、前記輝度変化を生じる補正対象画素に対する駆動電圧の値を補正する。
【0026】
本発明の一側面の表示装置は、マトリクス駆動方式の表示パネルと、隣接画素電圧差検出部と、補正量演算部と、補正量加算部と、駆動回路とを含むようにして構成される。隣接画素電圧差検出部は、入力映像信号から前記表示パネルの各画素に対する駆動電圧とその隣接画素に対する駆動電圧との差分を検出する。また、補正量演算部は、前記隣接画素電圧差検出部で検出された当該2つの画素の各々に対する駆動電圧の差分に起因して、当該2つの画素の電極間に発生する電界により輝度変化を生じる補正対象画素に対する駆動電圧の補正量を演算する。また、補正量加算部は、前記補正量演算部で演算された補正量に基づいて、前記輝度変化を生じる補正対象画素に対する駆動電圧の値を補正する。さらに、駆動回路は、前記表示パネルの各画素に対して前記補正量加算部から出力される駆動電圧を供給する。
上記表示装置は、例えばマトリクス駆動方式の液晶パネルを用いた直視型の液晶表示装置に適用できる。
また上記表示装置は、例えば照明光をマトリクス駆動方式の液晶パネルに照射し、その透過光をスクリーンに投射する投射型表示装置に適用できる。
【0027】
本発明の一側面の映像信号処理回路によれば、まず表示パネル上の隣接する2画素に入力される映像信号の電位差(駆動電圧の差分)を検出する。そして、隣接する2画素に対する駆動電圧に電圧差がある場合、2画素間の駆動電圧の差分に基づいて補正の対象となる画素(補正対象画素)を選択する。次に、2画素間の駆動電圧の差分及び補正対象画素に対応する入力映像信号に基づいて、補正対象画素に対する駆動電圧の補正量を算出する。そして、算出した補正量から補正対象画素に供給する駆動電圧の値を補正する。このように、隣接する2画素に対する駆動電圧の電圧差を求め、その電圧差に基づいて補正対象画素に供給する駆動電圧を算出するので、横電界によって輝度変化を生じる補正対象画素に対してのみ駆動電圧の値を補正することができる。
また、前記輝度変化を生じる補正対象画素に対してのみ駆動電圧の値を補正して表示パネルに表示するので、良好な表示画像が得られる。
【0028】
本発明の一側面の映像信号処理方法は、入力映像信号からマトリクス駆動方式の表示パネルの各画素に対する駆動電圧とその隣接画素に対する駆動電圧との差分を検出するステップを含む。また、前記検出された当該2つの画素の各々に対する駆動電圧の差分に起因して、当該2つの画素の電極間に発生する電界により輝度変化を生じる補正対象画素に対する駆動電圧の補正量を演算するステップを含む。さらに、前記演算された補正量に基づいて、前記輝度変化を生じる補正対象画素に対する駆動電圧の値を補正するステップを含む。
【0029】
本発明の一側面の映像信号処理方法によれば、まず表示パネル上の隣接する2画素に入力される映像信号の電位差(駆動電圧の差分)を検出する。そして、隣接する2画素に対する駆動電圧に電圧差がある場合、2画素間の駆動電圧の差分に基づいて補正の対象となる画素(補正対象画素)を選択する。次に、2画素間の駆動電圧の差分及び補正対象画素に対応する入力映像信号に基づいて、補正対象画素に対する駆動電圧の補正量を算出する。そして、算出した補正量から補正対象画素に供給する駆動電圧の値を補正する。このように、隣接する2画素に対する駆動電圧の電圧差を求め、その電圧差に基づいて補正対象画素に供給する駆動電圧を算出するので、横電界によって輝度変化を生じる補正対象画素に対してのみ駆動電圧の値を補正することができる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明によれば、マトリクス駆動方式の表示装置において隣接する画素間の横電界に起因した画質不良に対し、現象発生画素にのみ補正電圧を印加して画質不良を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態の例について、添付図面を参照しながら説明する。
【0032】
以下に述べる実施の形態は、本発明を実施するための好適な形態の具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されている。ただし、本発明は、以下の実施の形態の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限られるものではない。したがって、例えば、以下の説明で挙げる使用材料とその使用量、処理時間、処理順序及び各パラメータの数値的条件等は好適例に過ぎず、また、説明に用いた各図における寸法、形状及び配置関係等も実施の形態の一例を示す概略的なものである。
【0033】
まず本発明の第1の実施の形態について、図6〜図14を参照して説明する。
【0034】
図6は、本発明の表示装置の第1の実施の形態に係る液晶表示装置が適用された液晶表示装置100の構成を示す図である。液晶表示装置100は、映像信号処理回路110と、画像メモリ116と、Xドライバ回路117X及びYドライバ回路117Y、並びに、液晶パネル118を含むようにして構成される。この液晶表示装置100は、図3に示したような一般的な液晶表示装置を適用することができるが、入力映像信号に対する信号処理が一般的なものと異なる。
【0035】
映像信号処理回路110は、入力された映像信号を液晶パネル118の表示に適した信号形式に処理し、画像メモリ116へ供給するものである。この映像信号処理回路110は、A/D・PLL(Analog/Digital・Phase Locked Loop)部111と、映像信号変換部112と、デジタル信号処理部113と、サンプルホールド部114と、制御部115とを含むようにして構成される。
【0036】
A/D・PLL部111は、映像信号処理回路110に入力される映像信号がアナログ信号の場合にこれをデジタル形式の画素データに変換する処理、及び、位相同期を実現する処理デバイスである。なお、入力映像信号がデジタル信号である場合、A/D・PLL部111に替えてデジタル・インタフェース部を設ける。デジタル・インタフェース部は、DVI(Digital Visual Interface)方式やHDMI(High-Definition Multimedia Interface)形式をはじめとするデータ伝送技術による入力映像信号を、デジタル形式に変換する処理デバイスである。
【0037】
映像信号変換部112は、A/D・PLL部111から出力された画素データを、液晶パネル118の画素数やクロック周波数に適応した画素データ(原色データ)に変換する処理デバイスである。例えば液晶パネル118がカラー液晶パネルである場合、コンポジット信号などからカラー液晶パネルの駆動に適したRGBセパレート信号に変換して、映像信号とともにデジタル信号処理部113へ出力する。
【0038】
デジタル信号処理部113は、映像信号処理変換部112から出力された画素データ(原色データ)について、コントラスト調整やクロストーク補正等を実行する処理デバイスである。本発明の映像信号処理すなわち補正対象画素に対する駆動電圧の補正も、このデジタル信号処理部113が実行する。
【0039】
サンプルホールド部114は、映像信号処理変換部112から出力された信号処理後の画素データ(原色データ)を液晶パネル118の駆動用にサンプルホールド処理し、Xドライバ回路117Xへ出力する処理デバイスである。デジタル信号処理部113が、このサンプルホールド部114の機能を含むようにしてもよい。
【0040】
制御部115は、液晶表示装置100全体を制御する制御ユニットであり、映像信号処理回路110の映像信号変換部112、デジタル信号処理部113及びサンプルホールド部114等を制御する。また、制御部115は、上記RGBセパレート信号に応じた所定のタイミングで、Xドライバ回路117X及びYドライバ回路117Yを制御する。この制御部115は、例えばMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサを適用できる。
【0041】
画像メモリ116は、映像信号処理回路110のサンプルホールド部114から出力された画素データ(原色データ)を一時的に記憶(バッファ)し、所定のタイミングでYドライバ117Yへ出力する。
【0042】
Yドライバ117Yは、制御部115により制御された所定のタイミングで、画像メモリ116からの映像信号を液晶パネル118のY電極(信号線)へ供給する。これと並行して、Xドライバ117Xは、制御部115により制御された所定のタイミングで、液晶パネル118のX電極(走査線)へ駆動電圧を供給する。
【0043】
そして、上記画像メモリ116からYドライバ回路117Yに映像信号とともに供給されるRGBセパレート信号で液晶パネル118を駆動することにより、上記RGBセパレート信号に応じた映像を表示する。
【0044】
以下、図6に示したデジタル信号処理部113の概要について、図7を参照して説明する。
図7は、デジタル信号処理部113における、映像信号補正処理を行うための概略構成例を示すブロック図である。デジタル信号処理部113は、映像信号補正処理を行う処理ブロックとして、隣接画素電圧差算出ブロック113A,補正量演算ブロック113B,補正量加算ブロック113Cを備える。
【0045】
隣接画素電圧差算出ブロック113Aは、映像信号変換部112より入力された映像信号から、任意の対象画素に供給される駆動電圧と対象画素に隣接する画素に供給される駆動電圧との差分(隣接画素電圧差)を算出する処理デバイスである。
【0046】
補正量演算ブロック113Bは、上記隣接画素電圧差算出ブロック113Aで算出された隣接画素電圧差と補正を行う画素(以下、「補正対象画素」ともいう。)に対する映像信号データ(駆動電圧情報)を取得する。そして、取得した情報に基づいて補正量設定情報を参照し、補正対象画素に供給される駆動電圧の補正量を演算する処理デバイスである。
【0047】
補正量加算ブロック113Cは、補正対象画素に供給される映像信号データ(駆動電圧情報)に上記補正量演算ブロック113Bで算出された補正量を加算し、出力映像信号としてサンプルホールド部114に出力する処理デバイスである。
【0048】
図8は、デジタル信号処理部114による映像信号処理例を示すフローチャートである。まず隣接画素電圧差算出ブロック113Aに映像信号が入力されると、隣接画素電圧差算出部ブロック113Aにおいて入力映像信号から任意の対象画素に対する駆動電圧と対象画素に隣接する画素に対する駆動電圧との差分が算出される(ステップS1)。
【0049】
続いて、補正量演算ブロック113Bに、上記ステップS1で算出された隣接画素電圧差の情報が入力されるとともに、補正対象画素に対する映像信号データ(駆動電圧情報)が入力される。そして、補正量演算ブロック113Bにおいて、隣接画素電圧差情報と補正対象画素に対する駆動電圧情報に基づいて補正量設定情報が参照され、補正対象画素に供給する駆動電圧の補正量を求める(ステップS2)。
【0050】
最後に、補正量加算ブロック113Cに、ステップS2で算出された補正対象画素に対する駆動電圧の補正量と当該補正対象画素に対する駆動電圧情報が入力され、駆動電圧と補正量が加算され、出力映像信号として出力される(ステップS3)。
【0051】
次に、デジタル信号処理部113(図6参照)の実施の形態の例について、図9を参照して詳細に説明する。
図9は、デジタル信号処理部113の要部の詳細構成例を示すブロック図である。デジタル信号処理部120は、水平走査方向だけでなく垂直走査方向における補正も対象とするため、入力映像信号の遅延制御が可能となるように構成される。すなわち、デジタル信号処理部120は、遅延制御ブロック121と、メモリ制御ブロック122と、隣接画素電圧差算出ブロック113A(図7参照)に対応する水平方向電圧差算出ブロック123H及び垂直方向電圧差算出ブロック123Vと、補正量演算ブロック124と、補正量加算ブロック125とを含むようにして構成される。
【0052】
なお、デジタル信号処理部120は、映像信号から同期信号を分離する同期分離回路(図示略)を備える。入力される映像信号がモノクロ(白黒)映像信号の場合、映像信号から同期信号を分離した後の信号は輝度信号である。また例えば入力される映像信号がカラー映像信号の場合、映像信号から同期信号を分離した後の信号は輝度情報と色情報を含んでいる。カラー映像信号の一例としては例えばRGB信号などが挙げられる。
【0053】
遅延調整ブロック121は、原映像信号から分離された同期信号に基づいて生成した遅延信号をメモリ制御ブロック122に出力するとともに、入力された同期信号をサンプルホールド部114へ出力する処理デバイスである。
【0054】
メモリ制御ブロック122は、ラインメモリ122aを備え、遅延調整ブロック121から供給される遅延信号に基づく時間(タイミング)で入力映像信号を走査線ごとに遅延させる処理デバイスである。ラインメモリには例えばRAM(Random Access Memory)が用いられる。以降の説明において、メモリ制御ブロック122から走査線ごとに遅延された映像信号をライン映像信号と称す。
【0055】
水平方向電圧差算出ブロック123Hは、ライン映像信号を受信して、水平走査方向において自画素と隣接画素の各々に供給される駆動電圧の電圧差を検出する処理デバイスである。すなわち、水平方向の処理に関して、時系列的にあるラインのN画素目(Nは任意の自然数)を自画素とした場合、同一ラインのN画素目(自画素)と隣接するN−1画素目に供給される駆動電圧の差分(電圧差)を算出する。同様に、同一ラインのN画素目(自画素)と隣接するN+1画素目に供給される駆動電圧の差分(電圧差)を算出し、それぞれを補正量演算ブロック124に出力する。
【0056】
同様に、垂直方向電圧差算出ブロック123Vは、ライン映像信号を受信して、垂直走査方向において自画素と隣接画素との電圧差を検出する処理デバイスである。すなわち、垂直方向の処理に関して、時系列的にNライン目(Nは任意の自然数)の画素を自画素とした場合、Nライン目の画素(自画素)とN−1ライン目の隣接する画素に供給される駆動電圧の差分(電圧差)を差出する。同様に、Nライン目の画素(自画素)とN+1ライン目の隣接する画素に供給される駆動電圧の差分(電圧差)を算出し、それぞれを補正量演算ブロック124に出力する。
【0057】
カラー表示の表示装置であって表示パネルの1画素が例えばRGBの3色のサブ画素からなる場合、上述した水平方向及び垂直方向ともにN画素目(自画素)とN−1画素(ライン)目及びN+1画素(ライン)目との2系統の差分情報を、RGBのサブ画素それぞれで算出する。
【0058】
補正量演算ブロック124は、補正量演算ブロック113B(図7参照)に相当する処理デバイスであり、詳しくは後述するものとし、ここでは簡単に説明する。補正量演算ブロック124には、水平方向電圧差算出ブロック123H及び垂直方向電圧差算出ブロック123Vにより算出された電圧差情報、いずれかの電圧差算出ブロックから出力されるライン映像信号、並びに、水平/垂直走査線信号が入力される。水平/垂直走査線信号には、垂直走査方向及び水平走査方向における走査の向きを示す情報が含まれている。補正量演算ブロック124は、これらの情報を基に補正対象画素を選択し、選択した補正対象画素に供給される駆動電圧の補正量を算出し、ライン映像信号とともに補正量加算ブロック125に出力する。
【0059】
補正量加算ブロック125は、補正量加算ブロック113C(図7参照)に相当し、補正量演算ブロック124にて抽出された補正量をライン映像信号に加算して出力映像信号としてサンプルホールド部114へ出力する処理デバイスである。
【0060】
なお、図9において、補正量演算ブロック124及び補正量加算ブロック125に対して、ライン映像信号をメモリ制御ブロック122から直接入力するようにしてもよい。
【0061】
次に、図9に示した補正量演算ブロック124について、図10を参照して詳細に説明する。
図10は、補正量演算ブロック124の内部構成の例を示すブロック図である。図10に示すように、補正量演算ブロック124は、水平方向選択回路131Hと、垂直方向選択回路131Vと、補正量算出回路132と、補正量補間回路133とを含むように構成される。
【0062】
本発明で対象とする画質不良現象は、映像信号の反転・非反転(走査方向の反転・非反転)において液晶パネル上の画質不良発生方向が変化しない性質を持つ。つまり電圧差の生じる画素間において、画質不良現象が発生する方向が一定である。このため、水平/垂直走査方向にかかわらず、同方向に補正を行う処理が必要となる。例えば右蒸着液晶表示装置において黒レベルの画素の左側画素に画質不良が発生していた場合、その映像信号を反転した先の黒レベルの画素と左側画素に電圧差があればその左側画素に画質不良が発生する。例えば、プロジェクタシステムであれば反転・非反転が投射方法などに起因する。このようなことから、表示画像を正しく表示するために反転・非反転(走査方向)を設定する。本実施の形態では、水平/垂直方向電圧差算出ブロックで算出した複数の電圧差信号から使用する信号を選択する下記選択回路を設ける。
【0063】
水平方向選択回路131Hは、水平方向電圧差算出ブロック123Hから水平走査方向における自画素と隣接画素の各々に供給される駆動電圧の電圧差情報と、制御部115から水平走査線信号を取得する。水平走査方向における自画素と隣接画素との電圧差情報とは、同一ラインのN画素目(自画素)と隣接するN−1画素目に供給される駆動電圧の差分、同一ラインのN画素目(自画素)と隣接するN+1画素目に供給される駆動電圧の差分である。また、水平走査線信号は、画素がマトリクス状に配列されてなる液晶パネルに対する水平走査方向の情報、つまり水平走査方向が左から右であるか逆に右から左であるかを示す情報を含んでいる。あるいは水平走査線信号そのものを解析することで水平走査方向の情報を得るようにしてもよい。そして、水平方向走査回路131Hは、水平方向電圧差情報と水平走査線信号に基づいて駆動信号を補正すべき画素(補正対象画素)を選択し、その選択情報を補正量算出回路132へ供給する。
【0064】
同様に、垂直方向選択回路131Vは、垂直方向電圧差算出ブロック123Vから垂直走査方向における自画素と隣接画素の各々に供給される駆動電圧の電圧差情報と、制御部115から垂直走査線信号を取得する。垂直走査方向における自画素と隣接画素との電圧差情報とは、Nライン目の画素(自画素)とN−1ライン目の隣接する画素に供給される駆動電圧の差分、Nライン目の画素(自画素)とN+1ライン目の隣接する画素に供給される駆動電圧の差分である。また、垂直走査線信号は、画素がマトリクス状に配列されてなる液晶パネルに対する垂直走査方向の情報、つまり垂直走査方向が上から下であるか逆に下から上であるかを示す情報を含んでいる。あるいは垂直走査線信号そのものを解析することで垂直走査方向の情報を得るようにしてもよい。そして、垂直方向走査回路131Vは、垂直方向電圧差情報と垂直走査線信号に基づいて駆動信号を補正すべき画素(補正対象画素)を選択し、その選択情報を補正量算出回路132へ供給する。
【0065】
ここで、電圧差算出ブロックから入力される電圧差信号(電圧差情報)について水平方向電圧差を例に説明する。図11は、入力映像信号による表示画像140とその中央ラインの画像140Aの駆動電圧レベルを示した図である。また、図12は、図11に示した表示画像140に画質不良が発生した場合の補正対象位置/信号レベル差の検出を説明する図である。
【0066】
図11において、表示画像140の中央ラインの画像140Aは8画素から構成され、中央の4画素が黒レベル、その周辺4画素がグレーレベルである。黒レベルの4画素の最も左側の画素141bとはグレーレベルの画素141aが隣接し、黒レベルの4画素の最も右側の画素141cとはグレーレベルの画素141dが隣接している。一方、図12(A)に示す画質不良発生後の表示画像141の中央ラインの画像141Aは、4画素の黒レベルの最も左側の画素141bと隣接する画素141aに白が滲んだような表示になっている。このような状況で、水平方向電圧差算出ブロック123Hからは入力映像信号に基づいてそれぞれ図12(B),(C)に示す電圧差信号が出力される。
【0067】
図12(B)は、自画素とN+1画素目との電圧差をとった電圧差信号、つまり自画素の右隣の画素の駆動電圧レベルから自画素の駆動電圧レベルを減算した電圧レベル差を示している。この図12(B)においては、画素141aと画素141bとの電圧差(黒電位−グレー電位との差分)が正極性、画素141cと画素141dとの電圧差(グレー電位−黒電位との差分)が負極性である。また図12(C)は、自画素とN−1画素目との電圧差をとった電圧差信号、つまり自画素の駆動電圧レベルから自画素の右隣の画素の駆動電圧レベルを減算した電圧レベル差を示している。この図12(C)においては、画素141aと画素141bとの電圧差(グレー電位−黒電位との差分)が負極性、画素141cと画素141dとの電圧差(黒電位−グレー電位との差分)が正極性である。この電圧レベル差の波形から補正対象位置の候補を検出することができる。
【0068】
このように走査方向によって、自画素とN+1画素目との電圧差をとった電圧差信号と、自画素とN−1画素目との電圧差をとった電圧差信号とでは、信号の波形が全く異なる。垂直走査方向においても同様である。このようなとき、水平方向選択回路131H及び垂直方向選択回路131Vにより、例えば2画素間で電圧差が生じた場合、時系列的に前方の画素を補正対象とするか、後方の画素を補正対象とするか選択可能となる。この選択信号はユーザが定義して指定可能としてもよい。あるいはTN型とVA型のような液晶表示装置100の構造の違いや蒸着方向(プレチルトの向き)等によって画質不良の生じる画素が変わるので、水平/垂直方向選択回路は液晶表示装置の構造を示す情報や蒸着方向情報等を取得して選択信号に反映する。
【0069】
補正量算出回路132は、水平方向選択回路131Hからの水平方向選択情報と、垂直方向選択回路131Vからの垂直方向選択情報と、水平/垂直方向電圧差算出ブロックからのライン映像信号とに基づいて、補正対象画素に対する駆動電圧の補正量を算出する。
【0070】
水平方向選択回路131Hから供給される水平方向選択情報は、水平走査線信号に応じて同一ラインにおける自画素とN−1画素目との電圧差、もしくは自画素とN+1画素目との電圧差のいずれかの情報が含まれている。同様に、垂直方向選択回路131Vから供給される垂直方向選択情報は、垂直走査線信号に応じてNライン目の自画素とN−1ライン目の隣接画素との電圧差、Nライン目の自画素とN+1ライン目の隣接画素との電圧差のいずれかの情報が含まれる。また、ライン映像信号には、自画素及び補正対象画素を始めとして各画素に対する駆動電圧情報が含まれている。
【0071】
補正量算出回路132は、これら水平方向選択情報、垂直方向選択情報、及び、ライン映像信号に含まれた補正対象画素に対する駆動電圧の情報をパラメータとし、当該補正対象画素に対する駆動電圧の補正量を算出する。また、本実施の形態の補正量算出回路132は、水平方向選択情報、垂直方向選択情報、及び、駆動電圧の情報に基づいて2次元又は3次元のルックアップテーブル(以下、「LUT」という。)132aを備えている。
【0072】
LUT132aには、自画素の入力映像信号の電圧レベルと、自画素と隣接する画素の設定電圧レベルすなわち自画素と隣接画素との電圧レベルの差分に対応して、補正対象画素に加えるべき補正量が設定されている。補正値は、補正対象画素に対する駆動電圧を補正した後の当該補正対象画素の平均輝度が、当該補正対象画素に補正前の入力映像信号に基づく駆動信号を供給した場合と同様の輝度となるように設定されている。このようにすることにより、補正前の表示画像の表示パターンと補正後の表示画像の表示パターンが同じものになる。
【0073】
またLUT132aは、自画素の入力映像信号の電圧レベルと、自画素と隣接画素の2画素間の電圧レベル差との関係によって決定される補正対象点が離散的に設定されている。なお、自画素と隣接画素との電圧レベルの差が少ないときは発生する横電界が弱く画質不良の発生が少ない。したがって、自画素と隣接画素との電圧レベルの差に対する閾値を設定し、この閾値を超えた場合に補正対象画素に対する駆動信号の補正を実施する。このようにすることにより、液晶パネル118を構成する全画素に対して補正をすることなく、補正をした場合の画質不良改善の効果が高い画素に対してのみ効率よく補正を実施できる。なお、補正量についても、ユーザが定義して指定できるようにしてもよい。
【0074】
またLUT132aは、制御部115から供給される液晶表示装置100の環境情報に応じて複数のテーブルが存在する。液晶表示装置100の環境情報としては、例えば、水平/垂直走査方向、プレチルトの向き、隣り合う2画素間の距離(ギャップ)などがある。そこで、水平走査方向が左(右)から右(左)の場合に自画素と左(右)側の隣接画素との関係で参照するテーブル、垂直走査方向が上(下)から下(上)の場合に自画素と上(下)側の隣接画素との関係で参照するテーブルを用意する。また、プレチルトの向きが液晶パネル118正面に対し左(右)向きの場合に参照するテーブルを用意する。さらに、隣り合う2画素間の距離により発生する横電界の強さが変わるので、仮に隣り合う画素に印加する駆動電圧が同じもしくは2画素間の電圧差が同じでも、2画素間のギャップを考慮して補正対象画素に対する駆動電圧の補正量の設定値を変える。このようにLUT132aは、種々の環境情報又はそれらの組合せに対応できるように内容及び補正量が設定されている。
【0075】
補正量補間回路133は、補正量算出回路132がLUT132aを参照して算出した補正量を補間して出力するものである。例えば、上記LUT132aには、補正対象点が離散的に設定されているので、自画素の入力映像信号の電圧レベルに直接対応する補正対象点が存在しないことがあり、この場合、例えば入力映像信号の電圧レベルに最も近い2つの補正対象点が選択される。同様に、自画素と隣接画素の2画素間の電圧レベル差に直接対応する補正対象点が存在しない場合、例えば2画素間の電圧レベル差に最も近い2つの補正対象点が選択される。そして、補正量に対するこれら4つの補正対象点について線形補間等の補間処理を実施し、処理結果を補正量加算ブロック125へ出力する。
【0076】
なお、本実施の形態においては、補正量算出回路132はLUT132aを備えるようにしたが、この例に限られない。例えば、例えば補正量算出回路132が水平/垂直方向選択回路からの選択情報及び補正対象画素の駆動電圧情報と補正量を対応づけた(選択情報,駆動電圧)−(補正量)対応曲線のようなデータを備えていてもよい。この対応曲線に基づいて、補正量算出回路132に入力される情報から補正対象画素の補正量が一意的に決定される。あるいはユーザが定義して補正量を指定できるようにしてもよい。さらには、液晶表示装置100の外部のデジタル信号制御部(図示略)とシリアル・インタフェース等を利用して通信を行うことで補正量設定を実施し、設定内容をレジスタ等の不揮発性記憶手段に記録する。このように様々な形態により設定することが可能である。なお、補正量の演算にLUT132aを使用しない場合、補正量補間回路133は不要であり、補正量算出回路132において算出された補正量を直接、補正量加算ブロック125へ出力するようにしてもよい。
【0077】
次に、画質不良の改善例についてVA型かつ右蒸着の液晶表示装置を例に説明する。
図13(A),(B),(C)は、ある画質不良発生時の水平方向の表示画像とそれぞれの駆動電圧レベルの例を示す図であり、それぞれ図4(A),(B),(C)に示したものと同じである。また、図14は、図13に示した表示画像に対応する補正後の表示画像とそれぞれの駆動電圧レベルの例を示す図である。
【0078】
図13(A)において、画質不良が発生している補正前の1ライン(7画素)の表示画像51Aは、中央部分の3画素の左側に隣接する画素51aに、白が滲んだような表示パターンである。本来であれば画素51aはグレーレベルの輝度で表示される。そこで、本実施の形態においては、補正量演算ブロック124(図9,10を参照)の水平方向選択回路131Hが、液晶表示装置の構造的特徴やプレチルトの向きなどから補正対象位置として画素51aを選択する。そして、補正量算出回路132は、既述した各情報をパラメータとしてLUT132aを参照し、入力映像信号中の補正対象画素である画素51aに対応する駆動電圧に対して負極性の補正量161を加算する。その結果、画素51aの駆動電圧レベルが下がり、白滲みが解消されたグレーレベルの画素151aを含む表示画像151Aが得られる。
【0079】
また、図13(B)において、画質不良が発生している補正前の1ライン(7画素)の表示画像52Aは、中央部分の3画素の右側に隣接する画素52aに、黒が滲んだような表示パターンである。本来であれば画素52aは白レベルの輝度で表示される。そこで、本実施の形態においては、補正量演算ブロック124の水平方向選択回路131Hが、液晶表示装置の構造的特徴やプレチルトの向きなどから補正対象位置として画素52aを選択する。そして、補正量算出回路132は、既述した各情報をパラメータとしてLUT132aを参照し、入力映像信号中の補正対象画素である画素52aに対応する駆動電圧に対して正極性の補正量162を加算する。その結果、画素52aの駆動電圧レベルが上がり、黒滲みが解消された白レベルに近い画素152aを含む表示画像152Aが得られる。
【0080】
さらに、図13(C)において、画質不良が発生している補正前の1ライン(7画素)の表示画像53Aは、中央部分の3画素のうち最も右側に位置して白レベルの画素と隣接する画素53aに、黒が混じったような表示パターンである。本来であれば画素53aはグレーレベルの輝度で表示される。そこで、本実施の形態においては、補正量演算ブロック124の水平方向選択回路131Hが、液晶表示装置の構造的特徴やプレチルトの向きなどから補正対象位置として画素53aを選択する。そして、補正量算出回路132は、既述した各情報をパラメータとしてLUT132aを参照し、入力映像信号中の補正対象画素である画素53aに対応する駆動電圧に対して正極性の補正量163を加算する。その結果、画素53aの駆動電圧レベルが上がり、黒混じりが解消されたグレーレベルの画素153aを含む表示画像153Aが得られる。
【0081】
なお、液晶パネル118がカラー表示の場合、1画素は例えばRGBのサブ画素から構成される。この場合、RGBの各サブ画素とその隣接する画素に着目して映像信号の補正を行う。例えば、水平方向においては、隣接画素のB画素−自画素のR画素、自画素のR画素−自画素のG画素、自画素のG画素−自画素のB画素、自画素のB画素−隣接画素が隣接する位置関係にある。一方、垂直方向においては、自ラインのR画素−隣接ラインの隣接するR画素、自ラインのG画素−隣接ラインの隣接するG画素、自ラインのB画素−隣接ラインの隣接するB画素が隣接する位置関係にある。垂直方向の場合、隣接するラインは自ラインの上側及び下側の2つがある。
【0082】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る液晶表示装置は、同一フレーム期間において隣接する2画素に入力される映像信号の電位差を検出する。そして、隣接する2画素に対する入力映像信号に電位差がある場合、2画素間の電位差、走査方向さらには配向膜の蒸着方向(プレチルト方位)に基づいて、補正の対象となる画素を選択する。次に、2画素間の電位差及び補正対象画素に対応する入力映像信号の電位に基づいて例えば補正量が書き込まれたLUTを参照し、入力映像信号の補正対象画素に対応する電位(駆動電圧)の補正量を算出する。このとき、2画素間の距離も考慮した上で補正量を算出するとより適当な値を得ることができる。そして、算出した補正量から補正対象画素に入力する映像信号の電位、すなわち補正対象画素に対する駆動電圧の値を補正する。
【0083】
ここで隣接する2画素は、水平方向又は垂直方向の位置関係を想定している。したがって、2画素間の電位差とは、任意の画素(自画素)と隣接画素との間(水平方向)、又は、あるラインの任意の画素と隣接ラインの隣接画素との間(垂直方向)の電位差である。
【0084】
したがって、マトリクス駆動方式の液晶パネルにおいて、同一フレーム期間において水平方向又は垂直方向に隣り合う画素に対する入力映像信号を適宜補正して、2画素間の電位差を小さくし、横電界の発生を抑制もしくは横電界を弱くすることができる。その結果、2画素間に発生する横電界の影響で液晶分子の配向(液晶配向)が所望の配向からずれることを抑制できるので、画素透過率の変動による画質不良が改善される。
【0085】
なお、本実施の形態では、本発明における映像信号処理機能(補正機能)を直視型の液晶表示装置に適用したが、マトリクス駆動方式を利用している他の表示装置にも適用することができる。例えば、液晶パネルを利用しているプロジェクタに本発明の映像信号処理機能を実装できる。
【0086】
以下、図15及び図16を参照し、本発明の第2の実施の形態として、本発明における映像信号処理機能(補正機能)を適用したプロジェクタを説明する。図15は、プロジェクタ全体の構成例を示すブロック図である。また図16は、図15に示したプロジェクタの光学系の構成例を示す図である。
【0087】
まず、プロジェクタの全体構成例について説明する。
図15に示すように、プロジェクタ300は主に、入力映像信号を処理する映像信号処理210と、照明光学系220と、液晶パネル230と、投射光学系240を含むようにして構成される。
【0088】
映像信号処理回路210は、図6に示した映像信号処理回路110とほぼ同様の構成及び機能を備え、入力された映像信号を液晶パネル230の表示に適した信号形式のプロジェクタ用映像信号に処理するものである。この映像信号処理回路210は、A/D・PLL部211と、映像信号変換部212と、デジタル信号処理部213と、LCDドライバ214と、制御部215とを含むようにして構成される。
【0089】
LCDドライバ214は、図6に示したXドライバ117X及びYドライバ117Yの機能を備え、制御部215により制御された所定のタイミングで例えば3板式の液晶パネル230へ映像信号を供給する。このLCDドライバ214に、サンプルホールド部114や画像メモリ116の機能を実装するようにしてもよい。
【0090】
A/D・PLL部211と、映像信号変換部212と、デジタル信号処理部213と、制御部215については、図6に記載したものと同様の機能を備えており、詳細な説明を割愛する。
【0091】
次に、プロジェクタの光学系の構成例について説明する。
図16に示すように、例えば超高圧水銀ランプ(UHPランプ)やメタルハライドランプ等の放電ランプ等とリフレクタ(放物面鏡)からなる光源221を備える。光源221の光は、リフレクタにより光軸にほぼ平行な平行光束となるようにコリメートされて出射される。
【0092】
光源221から出射された光束は、フィルタ222に入射されノイズ等の不要な周波数成分の光束が除去された後、フライアイレンズ(マルチレンズアレイ)223に入射される。光束がフライアイレンズ223を透過することで、後述する空間光変調素子の有効開口に、効率よくかつ均一に調整される。
【0093】
フライアイレンズ223を透過した光束は、PS分離合成部224で偏光成分が高効率に分離され、一定方向に偏光変換されることで最適な光量が確保される。そして、レンズ225を透過し、ダイクロイック・ミラー226R以降の色分離/合成光学系に入射される。
【0094】
まず、ダイクロイック・ミラー226Rは、赤色の光束Rを反射し、緑色の光束G及び青色の光束Bを透過する。このダイクロイック・ミラー226Rで反射した赤色の光束Rは、ミラー227aにより光路を90゜偏向され、赤色用のコンデンサレンズ228Rに導かれる。
【0095】
一方、ダイクロイック・ミラー226Rにて透過された緑色及び青色の光束G,Bはダイクロイック・ミラー226Gにより分離されることになる。すなわち、このダイクロイック・ミラー226Gにおいて、緑色の光束Gが反射されて進行方向を90゜偏向され、緑色用のコンデンサ・レンズ228Gに導かれる。
【0096】
また、赤色の光束Rは、ダイクロイック・ミラー226Gを透過して直進し、ミラー227b,227cを介して、青色用のコンデンサ・レンズ228Bに導かれる。
【0097】
そして、赤色、緑色、青色の各光束R,G,Bは、各々のコンデンサ・レンズ228R,228G,228Bを通過して、各色用の空間光変調素子にそれぞれ入射される。
【0098】
これら各色の空間光変調素子は、それぞれ液晶パネルと2枚の偏光板から構成されている。例えば赤色用の空間光変調素子は、赤色用の液晶パネル230Rを有するとともに、この液晶パネル230Rの前段に入射光の偏光方向を一定方向に揃えるための入射側偏光板(図示略)を有している。また、赤色用の液晶パネル230Rの後段には、出射光の所定の偏光面を持つ光成分のみ透過させる偏光板(図示略)が配置され、液晶を駆動するLCDドライバ214から供給される電圧により、透過光の強度を表示画像に応じて変調するようになされている。同様に、緑色用の空間変調素子は、緑色用の液晶パネル230Gと2枚の偏光板を備え、青色用の空間変調素子は、青色用の液晶パネル230Bと2枚の偏光板を備えている。
【0099】
空間光変調素子により光変調された各色の光束は、ダイクロイック・プリズム(光合成素子)241に対して、3方向から入射される。このダイクロイック・プリズム241は、4分割された立方体状のプリズムと、該分割面に形成された反射膜とが組み合わされて構成されている。
【0100】
ダイクロイック・プリズム241において、赤色の光束Gは反射膜で反射され、また青色の光束Bも反射膜で反射されて、投射レンズ242に向けて出射される。そして緑色の光束Gは、ダイクロイック・プリズム241内を直進して透過し、投射レンズ242に向けて出射される。これにより、各光束R,G,Bが1つの光束に合成された状態で、投射レンズ241に向けて出射される。
【0101】
投射レンズ242は、ダイクロイック・プリズム241から入射された光束を投射光に変換して、例えば反射型スクリーンの前面に対して投射する。一般的に、液晶パネルを光変調素子として用いる前面投射型表示装置においては、液晶パネルが偏光状態を利用することから、所定の偏光状態の投射光を投射する。
【0102】
液晶パネル230の種類としては、図15,16に示した透過型液晶パネルの他、反射型液晶パネルによるものなどが存在する。
【0103】
以上のとおり、第2の実施の形態においては、デジタル信号処理部213が、同一フレーム期間における2画素間(サブ画素間を含む)の電位差、走査方向さらにはプレチルト方位に基づいて、各色の液晶パネル内の補正対象画素を選択する。次に、2画素間の電位差及び各画素に対応する入力映像信号の電位に基づいて例えば補正量が書き込まれたLUTを参照し、入力映像信号の補正対象画素に対応する電位(駆動電圧)の補正量を算出する。そして、各色の液晶パネルについて、算出した補正量から補正対象画素に入力する映像信号の電位、すなわち補正対象画素に対する駆動電圧の値を補正する。
【0104】
したがって、上記第1の実施の形態の例と同様に、マトリクス駆動方式の液晶パネルを用いたプロジェクタにおいて、同一フレーム期間において水平/垂直方向に隣り合う画素に対する入力映像信号を適宜補正して、2画素間の電位差を小さくすることができる。これにより、横電界の発生を抑制もしくは横電界を弱くすることができる。その結果、2画素間に発生する横電界の影響で液晶分子の配向(液晶配向)が所望の配向からずれることを抑制できるので、画素透過率の変動による画質不良が改善される。
【0105】
なお、図15,16に示したプロジェクタは投射型表示装置の一例であり、投射型表示装置の構成はこの例に限られない。
【0106】
また、本発明における映像信号処理機能(補正機能)を、有機EL素子を用いたマトリクス駆動方式の表示装置にも適用することができる。
【0107】
以下、本発明の第3の実施の形態として、本発明における映像信号処理機能(補正機能)を適用した有機EL素子を用いた表示装置を説明する。有機EL表示装置の一例として、例えば、特開2007−123240号公報(公開公報1)に記載されているようなものがある。本発明の第3の実施の形態に係る有機EL表示装置の一例として、公開公報1に記載されている有機EL表示装置を、図面を参照して簡単に説明する。
【0108】
図17は、公開公報1に記載されている有機EL素子の概略構成例を示し、(A)は断面図、(B)は平面図である。図17に示す有機EL表示装置300は、上面発光型のアクティブマトリクス方式の有機EL表示装置の例である。
【0109】
図17に示すように、例えばガラスなどの絶縁材料からなる基板301の表示領域302上に、駆動回路303が形成されている。この駆動回路303は、以後の工程で表示領域302に形成される有機EL素子(発光素子)を駆動するための回路であり、例えばモリブデン(Mo)で形成されるTFT回路303aとこのTFT回路303a上にTFT絶縁膜303bを介して配置され、例えばアルミニウム(Al)で形成されるTFT回路303cとを備えている。このTFT回路303aとTFT回路303cとからは、一部が外部接続端子304として、表示領域302よりも外側の基板301上に引き出されている。ここで、表示領域302の外側の外部接続端子304が形成される領域を外部端子領域305とする。ここでは、例えば矩形状の基板301の4辺のうち1角を構成する2辺に沿って外部端子領域305が設けられていることとする。
【0110】
この駆動回路303が形成された基板301上に、ポジ型感光性ポリベンゾオキサゾール等からなる第1絶縁膜306が塗布形成されている。この第1絶縁膜306は、基板301の表面側に生じた凹凸を平坦化する平坦化膜として機能する。
【0111】
第1絶縁膜306にTFT回路303cと接続するためのコンタクトホール307が形成されている。また、外部接続端子304上を覆う第1絶縁膜306にも開口部308が形成され、外部接続端子304の表面が露出する。
【0112】
また、コンタクトホール77を埋め込む状態で、第1絶縁膜306上に、ITO膜、Ag合金膜、ITO膜が基板1側から順次積層された導電材料層(図示省略)が成膜されている。
【0113】
表示領域302内の第1絶縁膜306上には、コンタクトホール307を介してTFT回路303cに接続され、各画素に対応する下部電極(陽極)309が配列形成されている。また、表示領域302の周縁部上の第1絶縁膜306上に、補助配線310が形成されている。この補助配線310は、約3mmの幅で額縁状に形成されているとともに、ここでの図示を省略した駆動回路と接続されている。
【0114】
下部電極309及び補助配線310が設けられた第1絶縁膜306上には、例えばポジ型感光性ポリベンゾオキサゾールからなる第2絶縁膜311が塗布形成されている。また、表示領域302内に各画素、すなわち、有機EL素子を形成するための画素開口312が形成されて、下部電極309の表面が露出するとともに、補助配線310の表面も露出する。さらに、画素開口312内の下部電極309上には、各色の有機EL素子313における有機層314、すなわち、赤色有機層314R、緑色有機層314G、青色有機層314Bがそれぞれ所定の膜厚で形成されている。例えば、赤色有機層314Rの膜厚が約150nm、緑色有機層314Gの膜厚が約100nm、青色有機層314Bの膜厚が約200nmである。
【0115】
以上のように、各有機層314が形成された基板301の有機層314上、第2絶縁膜311上及び補助配線310上に、例えばLiFからなる電子注入層(図示省略)が約1nmの膜厚で形成されている。この電子注入層上に例えば半透過性のMgAg合金からなる上部電極315が形成されている。電子注入層を介して補助配線310と上部電極(陰極)315とが接続されている。なお、ここでは、下部電極309が陽極、上部電極315が陰極である例について説明するが、下部電極309が陰極、上部電極315が陽極であってもよい。
【0116】
以上のように、有機EL表示装置300は、基板301の表示領域302上に、下部電極309と上部電極315とで有機層314を挟持してなる有機EL素子313が配列形成されているとともに、外部端子領域305には駆動回路303から引き出された外部接続端子304が露出している。
【0117】
以上のとおり、第3の実施の形態においては、上述した第1,2の実施の形態の例と同様にして、同一フレーム期間における2画素間(サブ画素間を含む)の電位差、走査方向に基づいて、有機EL素子313内の補正対象画素を選択する。次に、2画素間の電位差及び各画素に対応する入力映像信号の電位に基づいて例えば補正量が書き込まれたLUTを参照し、入力映像信号の補正対象画素に対応する電位(駆動電圧)の補正量を算出する。そして、有機EL素子313について、算出した補正量から補正対象画素に入力する映像信号の電位、すなわち補正対象画素に対する駆動電圧の値を補正する。
【0118】
したがって、マトリクス駆動方式の有機EL表示装置において、同一フレーム期間において水平/垂直方向に隣り合う画素に対する入力映像信号を適宜補正して、2画素間の電位差を小さくすることができる。これにより、横電界の発生を抑制もしくは横電界を弱くすることができる。その結果、2画素間に発生する横電界の影響を排除できるので、横電界による画質不良が改善される。
【0119】
さらに、本発明における映像信号処理機能(補正機能)を、プラズマ表示装置にも適用することができる。
【0120】
以下、本発明の第4の実施の形態として、本発明における映像信号処理機能(補正機能)を適用したプラズマ表示装置を説明する。プラズマ表示装置の一例としては、例えば、特開2007−73513号公報(公開公報2)に記載されているようなものがある。本発明の第4の実施の形態に係るプラズマ表示装置の一例として、公開公報2に記載されているプラズマ表示装置を、図面を参照して簡単に説明する。
【0121】
図18は、プラズマ表示装置の構成を示す要部断面図である。図19は、図18に示したプラズマ表示装置の要部平面図であり、(A)は上部電極層、(B)は下部電極層、及び(C)は誘電層を示す。
【0122】
図18,19に示すプラズマ表示装置400は、マイクロ放電構造の寄生容量を減らすため、通孔416,436の周辺を除いた電極部分を除去している。また、通孔440の周辺の個別電極412、432部分に電圧を印加するための接続部414、434を形成する際に、マトリクス状のプラズマ表示装置のような構成を有するようにしてある。
【0123】
上部電極410の接続部414を図19(A)に示すように、縦方向、あるいは横方向に形成して一群の第1電極418を設け、そして、下部電極430の接続部434を図19(B)に示すように、第1電極とほぼ垂直に形成して一群の第2電極458を設けている。誘電層420の通孔426をデルタ配列にするため、図19(B)に示すように、第2電極458は、横に形成された直線状の接続部434と、その上下にジグザグ状に配列された通孔を囲む個別電極432とから構成する。全体的には第2電極が横方向に形成され、第2電極に包括される電極層の通孔も横方向に配列される一群の通孔に含まれるとみなす。
【0124】
また、第1電極をアドレス電極としてアドレス駆動ドライバの各端子に接続し、第2電極をスキャン電極としてスキャン駆動ドライバの各端子に接続する。この場合、図19(B)の最も上側にある第1スキャン電極に負電圧が印加され、図19(A)の最も左側にある第1アドレス電極と、3番目の第3アドレス電極に正電圧が印加される。各電極間に、放電可能な電位差が生じると、配列された通孔の第1行の第1及び第2番目で放電が起こるようになる。
【0125】
また、第2、第3スキャン電極に順次に電圧が印加されて、各アドレス電極にも表示する部分に相応して電圧を印加すると、当該通孔で放電が行われる。そのような方式により、全体の通孔をスキャンすると、各通孔の放電有無による残像効果によって画像が表示される。
【0126】
図18に示す上下部電極410,430の外側に配設される基板、450,460は、基板内部を密閉するためのものである。これら基板の周辺部にはシールが施されている。放電空間を形成する内部を排気口(図示せず)のみを除いてシールした後、内部にある空気を排出し、その代わりに放電ガスを適正な圧力で投入する。次いで、排気口を封止する。このようにして、電圧が印加される際、電極が空気中の酸素と接して酸化して劣化するのを防止し、放電ガスを電極の蒸発の抑止と放電効率の増加のために用いる。
【0127】
以上のとおり、第4の実施の形態においては、上述した第1,2,3の実施の形態の例と同様にして、同一フレーム期間における2画素間(サブ画素間を含む)の電位差、走査方向に基づいて、プラズマ表示装置400内の補正対象画素を選択する。次に、2画素間の電位差及び各画素に対応する入力映像信号の電位に基づいて例えば補正量が書き込まれたLUTを参照し、入力映像信号の補正対象画素に対応する電位(駆動電圧)の補正量を算出する。そして、算出した補正量から補正対象画素に入力する映像信号の電位、すなわち補正対象画素に対する駆動電圧の値を補正する。
【0128】
したがって、マトリクス駆動方式のプラズマ表示装置において、同一フレーム期間において水平/垂直方向に隣り合う画素に対する入力映像信号を適宜補正して、2画素間の電位差を小さくすることができる。これにより、横電界の発生を抑制もしくは横電界を弱くすることができる。その結果、2画素間に発生する横電界の影響を排除できるので、横電界による画質不良が改善される。
【0129】
その他、本発明は、上述した実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】横電界による画質不良現象の例を示す図である。
【図2】画質不良現象の発生原理の説明図である。
【図3】液晶表示装置の概略構成を示す図である。
【図4】垂直配向型(右蒸着)の液晶表示装置における画質不良現象の例を示す図である。
【図5】TN型液晶パネルとVA型液晶パネルの画質不良現象の例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る液晶表示装置の構成例を示すブロック図である。
【図7】図6に示したデジタル信号処理部の概略構成例を示すブロック図である。
【図8】デジタル信号処理部による映像信号処理方法を示すフローチャートである。
【図9】図7に示したデジタル信号処理部の要部の詳細構成例を示すブロック図である。
【図10】図8に示した補正量演算ブロックの内部構成例を示すブロック図である。
【図11】入力映像信号に基づく表示画像の例を示す図である。
【図12】電圧差信号選択による補正位置設定例の説明図である。
【図13】画質不良発生時の表示画像と駆動電圧レベルの例を示す図である。
【図14】補正後の表示画像と駆動電圧レベルの例を示す図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態に係るプロジェクタ全体の構成例を示すブロック図である。
【図16】図15に示したプロジェクタの光学系の構成例を示す図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態に係る有機EL表示装置の概略構成例を示す図である。
【図18】本発明の第4の実施の形態に係るプラズマ表示装置の構成を示す要部断面図である。
【図19】図17に示したプラズマ表示装置の上部電極層、下部電極層及び誘電層を示した平面図である。
【符号の説明】
【0131】
100…液晶表示装置、110…映像信号処理回路、113…デジタル信号処理部、116…画像メモリ、117X…Xドライバ、117Y…Yドライバ、118…液晶パネル、113A…隣接画素電圧差算出ブロック、113B…補正量演算ブロック、113C…補正量加算ブロック、120…デジタル信号処理部、121…遅延調整ブロック、122…メモリ制御ブロック、122a…ラインメモリ、123H…水平方向電圧差算出ブロック、123V…垂直方向電圧差算出ブロック、124…補正量演算ブロック、125…補正量加算ブロック、131H…水平方向選択回路、131V…垂直方向選択回路、132…補正量算出回路、132a…LUT、133…補正量補間回路、200…プロジェクタ、210…映像信号処理回路、213…デジタル信号処理部、214…液晶ドライバ、220…照明光学系、221…光源、230…液晶パネル、230R…液晶パネル(R)、230G…液晶パネル(G)、230B…液晶パネル(B)、240…投射光学系、300…有機EL素子、400…プラズマ表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力映像信号からマトリクス駆動方式の表示パネルの各画素に対する駆動電圧とその隣接画素に対する駆動電圧との差分を検出する隣接画素電圧差検出部と、
前記隣接画素電圧差検出部で検出された当該2つの画素の各々に対する駆動電圧の差分に起因して、当該2つの画素の電極間に発生する電界により輝度変化を生じる補正対象画素に対する駆動電圧の補正量を演算する補正量演算部と、
前記補正量演算部で演算された補正量に基づいて、前記輝度変化を生じる補正対象画素に対する駆動電圧の値を補正する補正量加算部と、を含む
映像信号処理回路。
【請求項2】
前記隣接画素電圧差検出部は、
前記各画素に対する駆動電圧と当該画素と水平方向に隣接する画素に対する駆動電圧との差分を検出する水平方向電圧差検出部と、
前記各画素に対する駆動電圧とその当該画素と垂直方向に隣接する画素に対する駆動電圧との差分を検出する垂直方向電圧差検出部と、をさらに含む
請求項1に記載の映像信号処理回路。
【請求項3】
前記補正量演算部は、
前記水平方向電圧差検出部で検出された各画素とその左及び右に隣接する画素の各々に対する駆動電圧の差分、及び、水平走査線信号に基づいて補正対象画素を選択する水平方向選択部と、
前記垂直方向電圧差検出部で検出された各画素とその上及び下に隣接する画素の各々に対する駆動電圧の差分、及び、垂直走査線信号に基づいて補正対象画素を選択する垂直方向選択部と、
前記水平方向選択部及び前記垂直方向選択部により選択された補正対象画素について、前記補正対象画素の補正後の平均輝度が前記入力映像信号に基づく駆動信号を供給した場合と同様の輝度となる駆動電圧の補正量を決定する補正量算出部と、をさらに含む
請求項2に記載の映像信号処理回路。
【請求項4】
前記補正量算出部は、少なくとも当該画素に対する駆動電圧と隣接画素に対する駆動電圧との差分が所定の閾値以上である場合に、前記補正対象画素に対する駆動電圧の補正量を決定する
請求項3に記載の映像信号処理回路。
【請求項5】
隣り合う2画素の電極間に発生する電界により輝度変化を生じる画素は、前記表示パネルに使用されている液晶分子のプレチルト角度により決定される
請求項3に記載の映像信号処理回路。
【請求項6】
隣り合う2画素の電極間に発生する電界により輝度変化を生じる画素に対する駆動電圧の補正量は、前記液晶分子のプレチルト角度、前記隣接する2画素の各々に対する駆動電圧の差分値、及び前記電極間の距離に基づいて決定される
請求項5に記載の映像信号処理回路。
【請求項7】
前記水平/垂直方向画素選択部は、前記走査線信号から走査方向を判定し、各画素と当該画素から走査方向側に位置する隣接画素の各々に対する駆動信号に差分がある画素を、補正対象画素として選択する
請求項3に記載の映像信号処理回路。
【請求項8】
前記補正量算出部により算出された補正量として複数の候補が存在する場合、前記複数の候補に基づく補間処理により前記補正対象輝度に対する駆動信号の補正量を算出する補正量補間部、をさらに含む
請求項3に記載の映像信号処理回路。
【請求項9】
前記入力映像信号に含まれるフレーム画像を遅延信号に基づき走査線単位で記憶するラインメモリを備え、前記フレーム画像を前記ラインメモリから前記走査線単位で隣接画素電圧差検出部へ出力するメモリ制御部、をさらに含む
請求項1に記載の映像信号処理回路。
【請求項10】
マトリクス駆動方式の表示パネルと、
入力映像信号から前記表示パネルの各画素に対する駆動電圧とその隣接画素に対する駆動電圧との差分を検出する隣接画素電圧差検出部と、前記隣接画素電圧差検出部で検出された当該2つの画素の各々に対する駆動電圧の差分に起因して、当該2つの画素の電極間に発生する電界により輝度変化を生じる補正対象画素に対する駆動電圧の補正量を演算する補正量演算部と、前記補正量演算部で演算された補正量に基づいて、前記輝度変化を生じる補正対象画素に対する駆動電圧の値を補正する補正量加算部とを含む映像信号処理回路と、
前記表示パネルの各画素に対して前記補正量加算部から出力される駆動電圧を供給する駆動回路と、を含む
表示装置。
【請求項11】
マトリクス駆動方式の液晶パネルと、
入力映像信号から前記液晶パネルの各画素に対する駆動電圧とその隣接画素に対する駆動電圧との差分を検出する隣接画素電圧差検出部と、前記隣接画素電圧差検出部で検出された当該2つの画素の各々に対する駆動電圧の差分に起因して、当該2つの画素の電極間に発生する電界により画素透過率変化を生じる補正対象画素に対する駆動電圧の補正量を演算する補正量演算部と、前記補正量演算部で演算された補正量に基づいて、前記画素透過率変化を生じる補正対象画素に対する駆動電圧の値を補正する補正量加算部とを含む映像信号処理回路と、
前記液晶パネルの各画素に対して前記補正量加算部から出力される駆動電圧を供給する駆動回路と、を含む
液晶表示装置。
【請求項12】
光源と、
前記光源から照明光学系を介して照明光が照射されるマトリクス駆動方式の液晶パネルと、
前記液晶パネルを透過した光を投射する投射光学系と、
入力映像信号から前記液晶パネルの各画素に対する駆動電圧とその隣接画素に対する駆動電圧との差分を検出する隣接画素電圧差検出部と、前記隣接画素電圧差検出部で検出された当該2つの画素の各々に対する駆動電圧の差分に起因して、当該2つの画素の電極間に発生する電界により輝度変化を生じる補正対象画素に対する駆動電圧の補正量を演算する補正量演算部と、前記補正量演算部で演算された補正量に基づいて、前記輝度変化を生じる補正対象画素に対する駆動電圧の値を補正する補正量加算部とを含む映像信号処理回路と、
前記液晶パネルの各画素に対して前記補正量加算部から出力される駆動電圧を供給する駆動回路と、を含む
投射型表示装置。
【請求項13】
入力映像信号からマトリクス駆動方式の表示パネルの各画素に対する駆動電圧とその隣接画素に対する駆動電圧との差分を検出するステップと、
前記検出された当該2つの画素の各々に対する駆動電圧の差分に起因して、当該2つの画素の電極間に発生する電界により輝度変化を生じる補正対象画素に対する駆動電圧の補正量を演算するステップと、
前記演算された補正量に基づいて、前記輝度変化を生じる補正対象画素に対する駆動電圧の値を補正するステップと、を含む
映像信号処理方法。

【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−237366(P2009−237366A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84812(P2008−84812)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】