説明

映像信号処理装置

【課題】コンポジット信号をコンポーネント信号に変換する際に発生したドット妨害を除去することである。
【解決手段】フレーム単位の時間差のある2つの信号を入力し、フィルタ演算することで妨害成分を除去するドット妨害除去手段(3)と、上記フレーム単位の時間差のある2つの信号に加え、さらに同じ時間差のある3つ目の信号を入力し、妨害成分を除いた動き信号を検出するドット成分除去動き検出手段(4)とを備え、
上記ドット成分除去動き検出手段(4)の検出信号により、妨害成分ではない動き信号であると判断されたときには上記ドット妨害除去手段においてフィルタ演算をおこなわず、静止信号あるいは妨害成分であるときに上記ドット妨害除去手段においてフィルタ演算をおこなう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンポジット信号をコンポーネント信号に変換した際に変換により得られる信号に混入したノイズ成分を検出し除去する映像信号処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の映像信号処理装置は、コンポジット信号をコンポーネント信号に変換するための輝度信号色信号分離(Y/C分離)において、ラインメモリを備える2次元輝度信号色信号分離フィルタを用いずに分離したときの垂直方向への色信号の境界部分や、
フレームメモリを備える3次元輝度信号色信号分離フィルタを用いずに分離したときの斜め45度に傾斜した色信号の境界部分に発生するドット妨害(色信号が輝度信号に洩れこんだ妨害、クロスルミナンスとも言う)を生じさせる成分(妨害成分)が、コンポーネント信号(輝度信号)に残留しているため、映像出力においても、この妨害成分が視認されてしまうという問題があった。
【0003】
この改善策として、色副搬送波の帯域を抽出するバンドパスフィルタと、時間軸方向フィルタによりドット妨害を検出することが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、帯域分離フィルタと、振幅安定度検出回路と、位相安定度検出回路と、レベル安定度検出回路を用いてドット妨害判定を行うことも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−130237号公報
【特許文献2】特開2007−221407号公報(第14頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、コンポジット信号をコンポーネント信号に変換する際に発生したドット妨害を除去することが可能な映像信号処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の映像信号処理装置は、
コンポジット信号から輝度信号と色信号とが分離されて得られたコンポーネント信号の妨害成分を除去する映像信号処理装置において、
相互間にフレーム単位の時間差のある第1及び第2のコンポーネント信号を入力とし、ドット妨害成分を除いた動き信号を検出し、検出結果を示すドット成分除去動き信号を出力するドット成分除去動き検出手段と、
上記第1及び第2のコンポーネント信号と、上記ドット成分除去動き信号とを入力とし、
上記ドット成分除去動き信号が、静止信号あるいは妨害成分であると判断されたことを示しているときには、上記第1及び第2のコンポーネント信号に対して妨害成分を除去するためのフィルタ演算をおこない、
上記ドット成分除去動き信号が、妨害成分ではない動き信号であると判断されたことを示しているときには、上記フィルタ演算をおこなわずに、上記第1又は第2のコンポーネント信号をそのまま出力するドット妨害除去手段と
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、動き信号のときに画像がぼけることなく、コンポジット信号をコンポーネント信号に変換する際に発生したドット妨害を除去するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1の映像信号処理装置を示すブロック図である。
【図2】図1のドット妨害除去回路3の一例を示すブロック図である。
【図3】図1のドット成分除去動き検出回路4の一例を示すブロック図である。
【図4】図3の動き検出回路43の一例を示すブロック図である。
【図5】図3のドット妨害検出回路44の一例を示すブロック図である。
【図6】図3の合成回路45の一例を示すブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態2の映像信号処理装置で用いられるドット成分除去動き検出回路4aの一例を示すブロック図である。
【図8】図7の合成回路45aの一例を示すブロック図である。
【図9】実施の形態2の映像信号処理装置で用いられるドット妨害除去回路3aを示すブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態3の映像信号処理装置で用いられるドット成分除去動き検出回路4bを示すブロック図である。
【図11】図10の合成回路45bの一例を示すブロック図である。
【図12】画面の形状及びフォーマット変換前後の画像の大きさ及び形状の概略を示す概略図である。
【図13】変換画像の画素数を示す概略図である。
【図14】この発明の実施の形態4の映像信号処理装置で用いられるドット成分除去動き検出回路4cを示すブロック図である。
【図15】この発明の実施の形態5の映像信号処理装置で用いられるドット成分除去動き検出回路4dを示すブロック図である。
【図16】この発明の実施の形態6の映像信号処理装置を示すブロック図である。
【図17】図16のドット成分除去動き検出回路4eの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1の映像信号処理装置を示す。図示の映像信号処理装置は、第1の1フレーム遅延回路5aと、第2の1フレーム遅延回路5bと、ドット妨害除去回路(妨害成分除去回路)3と、ドット成分除去動き検出回路4とを備える。
入力ポート1から入力された信号である現フレームのコンポーネント信号(輝度信号)(以下「0フレーム遅延信号」ということがある)VS0は、第1の1フレーム遅延回路5aと、ドット妨害除去回路3と、ドット成分除去動き検出回路4に入力される。
【0010】
第1の1フレーム遅延回路5aは、現フレーム信号VS0を1フレーム期間遅延して、1フレーム遅延信号VS1を出力する。
第2の1フレーム遅延回路5bは、1フレーム遅延信号VS1を1フレーム期間遅延して、2フレーム遅延信号VS1を出力する。
なお、本発明は、上記のような遅延回路を用いる構成に限定されず、相互間にフレーム単位の時間差を有するコンポーネント信号が得られるものであれば良い。
【0011】
ドット成分除去動き検出回路4は、0フレーム遅延信号VS0、1フレーム遅延信号VS1及び2フレーム遅延信号VS2を受けて、これらに基づいて、ドット成分除去動き検出結果を示す信号(ドット成分除去動き信号)MWDを生成して出力する。
【0012】
ドット妨害除去回路3ではドット成分除去動き信号MWDを制御信号として、入力された0フレーム遅延信号VS0及び1フレーム遅延信号VS1に対して妨害成分を除去するための3次元フィルタ演算した信号とフィルタ演算しない信号を、ドット成分除去動き信号MWDに応じた割合で混合して、ドット妨害除去映像信号VSmとして出力する。
フィルタ演算しない信号としては、例えば0フレーム遅延信号VS0自体、あるいは1フレーム遅延信号VS1自体を用いる。なお、フィルタ演算しない信号をフィルタ演算に要する処理時間分だけ遅延させた信号を用いても良い。
【0013】
図2は図1のドット妨害除去回路3の一例を示す。図示のドット妨害除去回路3は、フィルタ31と、混合回路32とを備えている。この回路へ入力される0フレーム遅延信号VS0及び1フレーム遅延信号VS1は、フィルタ31に入力され、3次元平滑化処理された出力信号VSfは混合回路32に送られる。混合回路32には上記フィルタ31の出力VSfと、1フレーム遅延信号VS1とが入力され、ドット成分除去動き信号MWDに応じて混合動作が行われる。
混合回路32の出力がドット妨害除去映像信号VSmとなる。
【0014】
ドット成分除去動き検出回路4から出力されるドット成分除去動き信号MWDが、比較的大きな値を有する(ドット成分を除去した後も、動きがある(比較的大きな動きがあると判定されている)場合には、混合回路32において、1フレーム遅延信号VS1の混合割合が大となるよう混合され、ドット成分除去動き信号MWDが、比較的小さな値を有する(ドット妨害成分が多い、或いは入力信号が静止信号であると判定されている場合)には、混合回路32において、フィルタ出力VSfの混合割合が大となるよう混合される。
【0015】
図3は図1のドット成分除去動き検出回路4の一例を示す。図示のドット成分除去動き検出回路4は、1フレーム間差分算出回路41と、2フレーム間差分算出回路42と、動き検出回路43と、ドット妨害検出回路44と、合成回路45とを備える。
【0016】
この回路へ入力される0フレーム遅延信号VS0は、1フレーム間差分算出回路41及び2フレーム間差分算出回路42に入力され、1フレーム遅延信号VS1は、1フレーム間差分算出回路41に入力され、2フレーム遅延信号VS2は、2フレーム間差分算出回路42に入力される。
【0017】
1フレーム間差分算出回路41は、0フレーム遅延信号VS0と1フレーム遅延信号VS1の差の絶対値を求め、1フレーム間差分信号DV1として出力する。
2フレーム間差分算出回路42は、0フレーム遅延信号VS0と2フレーム遅延信号VS2の差の絶対値を求め、2フレーム間差分信号DV2として出力する。
本願では、1フレーム間差分信号DV1で表される差分を同じ符号DV1で表し、2フレーム間差分信号DV1で表される差分を同じ符号DV2で表すことがある。他の信号についても同じである。
1フレーム間差分算出回路41から出力される1フレーム間差分信号DV1は、動き検出回路43とドット妨害検出回路44に入力され、2フレーム間差分算出回路42から出力される2フレーム間差分信号DV2も同様に、動き検出回路43とドット妨害検出回路44に入力される。
【0018】
動き検出回路43は、1フレーム間差分信号DV1と2フレーム間差分信号DV2とに基づいて動きを検出し、動き検出信号MNを出力する。
ドット妨害検出回路44は、1フレーム間差分信号DV1と2フレーム間差分信号DV2とに基づいてドット妨害を検出し、ドット妨害検出信号BGを出力する。
【0019】
動き検出回路43から出力される動き検出信号MNとドット妨害検出回路44から出力されるドット妨害検出信号BGは合成回路45に入力される。
合成回路45は、動き検出信号MNとドット妨害検出信号BGとを合成して、合成結果を、ドット成分除去動き信号MWDとして出力する。
【0020】
図4は図3の動き検出回路43の一例を示す。図示の動き検出回路43は最大値回路431を有する。動き検出回路43へ入力される1フレーム間差分信号DV1及び2フレーム間差分信号DV2は最大値回路431に入力され、最大値回路431は、1フレーム間差分信号DV1(で表される1フレーム間差分)と、2フレーム間差分信号DV2(で表される2フレーム間差分)のうち大きい方(最大値)を動き検出信号MNとして出力する。従って、1フレーム間差分信号DV1及び2フレーム間差分信号DV2の少なくとも一方が大きい場合に、動き検出信号MNは大きくなる。最大値回路431の出力が、動き検出回路43の出力(動き検出信号MN)となる。
【0021】
図5は図3のドット妨害検出回路44の一例を示す。図示のドット妨害検出回路44は、減算回路441とリミッタ442とを有する。
ドット妨害検出回路44へ入力される1フレーム間差分信号DV1及び2フレーム間差分信号は減算回路441に入力され、減算回路441は、1フレーム間差分信号DV1(で表される1フレーム間差分)から2フレーム間差分信号DV2(で表される2フレーム間差分)を減算して、減算結果EDを出力する。
動き信号であれば(映像信号が画像の動きの部分の映像信号であれば)1フレーム間差分DV1も、2フレーム間差分DV2も大きくなるが、ドット妨害であれば、1フレーム間差分DV1は大きくなる一方、2フレーム間差分DV2は小さくなる。これは、1フレーム離れた信号の色搬送波位相は逆位相となるのに対して、2フレーム離れた信号の色搬送波位相は同位相となるためである。このことから、動き信号であれば、減算結果EDは小さい値であるが、ドット妨害であれば減算結果EDは大きくなる。
リミッタ442は、減算結果EDを受けて、負の値とならないように制限した値を出力する。即ち減算結果EDが負であれば、リミッタ442の出力BGは0となり、減算結果EDが負でなければ、減算結果EDがそのままリミッタ442から出力される。
【0022】
図6は図3の合成回路45の一例を示す。図示の合成回路45は減算回路451と、リミッタ452とを備える。合成回路45へ入力される動き検出信号MN及びドット妨害検出信号BGは減算回路451に入力され、減算回路451は、動き検出信号MNからドット妨害検出信号BGを減算し、減算結果FDを出力する。
動き信号であれば動き検出信号MNが大きくなるが、コンポーネント信号がドット妨害であれば(ドット妨害成分を含む場合には)ドット妨害検出信号BGが大きくなることから、動き信号であれば減算結果FDの値が大きくなるが、ドット妨害であれば減算結果FDの値が小さくなる。
リミッタ452では、減算結果FDを受けて、負の値とならないように制限した値をドット成分除去動き信号MWDとして出力する。即ち減算結果FDが負であれば、ドット成分除去動き信号MWDは0となり、減算結果FDが負でなければ、減算結果FDがそのままリミッタ452からドット成分除去動き信号MWDとして出力される。
【0023】
上記の構成により、1フレーム間差分信号DV1及び2フレーム間差分信号DV2を用いて、動き検出回路43では動きの程度を検出し、ドット妨害検出回路44ではドット妨害の程度を検出する。
【0024】
本発明のドット成分除去動き検出回路4においては、通常の動き検出で検出する「動きの程度」のみでなく、「動きの程度」と「ドット妨害の程度」の組み合わせに応じて、ドット成分を除去した動きの程度を検出することができる。
ドット妨害除去回路3の混合回路32では、上記の検出結果のうち「動きの程度が大きく、ドット妨害の程度が小さいとき(ドット成分除去動き検出信号MWDの値が大きいとき)に、フィルタ処理をしない信号の混合割合を増やし、それ以外のときには、フィルタ処理をした信号の混合割合を増やしている。
上記の動作により、動き信号のときに画像がぼけることなく、コンポジット信号をコンポーネント信号に変換する際に発生したドット妨害を除去することができる。
【0025】
実施の形態2.
図7はこの発明の実施の形態2の映像信号処理装置で用いられるドット成分除去動き検出回路4aを示す。
図7のドット成分除去動き検出回路4aは、図3のドット成分除去動き検出回路4と概して同じであるが、差分判定回路46a及び46bとが付加されている点で異なる。
差分判定回路46aは、1フレーム間差分算出回路41の出力DV1を所定の差分閾値DT1と比較して、比較結果を示す1ビットの信号DB1を出力する。同様に、差分判定回路46bは、1フレーム間差分算出回路42の出力DV2を所定の差分閾値DT2と比較して、比較結果を示す1ビットの信号DB2を出力する。
【0026】
動き検出回路43は、1ビットの信号DB1、DB2に対して図4を参照して説明したのと同様の処理を行い、「動きあり」又は「動きなし」を示す2値の、即ち1ビットの動き検出信号MNを出力する。ドット妨害検出回路44は、1ビットの信号DB1、DB2に対して図5を参照して説明したのと同様の処理を行い、「ドット妨害あり」又は「ドット妨害なし」を示す2値の、即ち1ビットのドット妨害検出信号BGを出力する。
このように本実施の形態では、動き検出結果とドット妨害検出結果が1ビットの信号で表わされる。
【0027】
図8はこの発明の実施の形態2における合成回路45aを示す。図示の合成回路45aはNOT回路453とAND回路454とを備える。合成回路45aと実施の形態1における合成回路45との違いは、合成回路45が多ビット信号を受けるのに対して、合成回路45aが1ビット信号を受けて合成処理するようにした点である。つまり動き信号であれば動き検出信号MNが「1」となるが、ドット妨害であればドット妨害検出信号BGが「1」となることから、ドット妨害であればNOT回路453の出力が「0」となる。その結果、「動きあり」で「ドット妨害なし」の場合にAND回路454の出力は「1」となり、それ以外のときにAND回路454の出力はAND回路454の出力は「0」となる。AND回路454の出力は合成回路45aの出力、即ちドット妨害除去動き信号MWDとなる。
【0028】
図9はこの発明の実施の形態2で用いられるドット妨害除去回路3aを示す。
図示のドット妨害除去回路3aは、図2のドット妨害除去回路3と概して同じであるが、図2の混合回路32の代わりに、選択回路33を備える。
選択回路33は、ドット成分除去動き検出信号MWDが「1」のときに、フィルタ処理しない信号(1フレーム遅延信号VS1)を選択し、それ以外のとき(ドット成分除去動き検出信号MWDが「0」のとき)に、フィルタ処理した信号(フィルタ31の出力)を選択する。
【0029】
これは、実施の形態1のドット成分除去動き検出信号MWDが多ビット信号であるのに対して、実施の形態2のドット成分除去動き検出信号MWDは1ビット信号であることによるものであり、実施の形態1では多ビットのドット成分除去動き検出信号MWDを受けた混合回路32によって混合動作がなされていたが、本実施の形態では1ビットのドット成分除去動き検出信号MWDを受けた選択回路33によって選択動作をおこなうこととしている。但し、選択動作は、混合比1:0または0:1の混合と見ることができ、従って、選択回路も混合回路の一種と見ることもできる。
【0030】
上記の構成により、実施の形態1では多ビットとして扱っていたドット成分除去動き検出信号MWDが、実施の形態2では1ビット信号として扱うことができ、混合回路32を用いていた実施の形態1のような画像の動きの程度に応じた割合で、フィルタ処理しない信号とフィルタ処理した信号を混合することができない反面、回路規模の削減が図ることができる効果がある。
【0031】
実施の形態3.
図10はこの発明の実施の形態3の映像信号処理装置で用いられるドット成分除去動き検出回路4bを示す。
図10に示されるドット成分除去動き検出回路4bは、図3のドット成分除去動き検出回路4の代わりに用いられるものであり、図10のドット成分除去動き検出回路4aは、図3のドット成分除去動き検出回路4と概して同じであるが、図3の合成回路45の代わりに、合成回路45bが用いられている点で異なる。
合成回路45bには、動き検出信号MNと、ドット妨害検出信号BGのほか、ドット妨害閾値BTが入力されている。
【0032】
図11は図10の合成回路45bの一例を示す。
図示の合成回路45bは比較回路455と判定回路456とを備える。図11の合成回路45aでは、ドット妨害検出信号BGをドット妨害検出閾値BTと比較し、比較結果を用いて判定回路456において動き検出信号MNの値を制御する点である。
つまり、ドット妨害検出信号BGをドット妨害検出閾値BTと比較し、ドット妨害検出信号BGがドット妨害検出閾値BTより大きければ、比較結果BBを「1」とし、そうでなければ、比較結果BBを「0」とする。このような比較の結果を示す1ビットの信号(1ビット化したドット妨害検出信号)BBが「1」のときには、判定回路456において動き検出信号MNを全ビット「0」とする。1ビット化したドット妨害検出信号BBが「0」のときには、動き検出信号MNをそのまま出力する。
判定回路456の出力が、合成回路45bの出力、従って、ドット成分除去動き信号MWDとなる。
【0033】
上記の構成により、実施の形態1の合成回路45では多ビットとして扱っていた信号を、実施の形態2の合成回路45bでは部分的に1ビット信号として扱う(ドット妨害検出信号を1ビットの信号に変換する)ことで、合成回路の動作の簡単化、回路規模の削減が図ることができる効果がある。また、ドット成分除去動き信号MWDについては、実施の形態1と同様多ビットとして扱うことができ、画像の動きの程度に応じた割合でフィルタ処理しない信号とフィルタ処理信号を混合することができるので、「動き」と「静止」の間の切り替わりを滑らかに表現することができる。
【0034】
実施の形態4.
実施の形態1〜3では、ドット妨害成分除去動き検出回路4によりドット成分除去動き検出信号MWDを検出し、静止信号あるいは妨害成分であるときにドット妨害除去回路3においてフィルタ演算をおこなうことで、動き信号のときに画像がぼけることなく、ドット妨害を除去するという効果があるが、動き成分が色副搬送波に近い周波数の場合には、動き検出結果とドット妨害検出結果の差が少なくなり、その結果、ドット成分除去動き信号の検出漏れが発生し、出力画像がぼける症状になりやすい。ドット妨害検出回路44にフレーム間差分信号DV1、DV2のうち色副搬送波帯域成分のみを抽出して入力することでドット成分除去動き信号の検出漏れを少なくすることができる。ただし、コンポジット信号をコンポーネント信号に変換する際に、信号フォーマットも変換され水平方向にスケーリング処理されている場合には、色副搬送波帯域抽出に際して、この点を考慮に入れる必要がある。
【0035】
図12にNTSC信号をHDフォーマットの1125i信号に変換する場合の出力画像のアスペクト比などを概略的に示す。図示のようにアスペクト比4:3のNTSC信号の画面SEを、そのアスペクト比を保ったまま、アスペクト比16:9のHDフォーマットの画面(Wa:Hc=16:9)に、できるだけ大きくはめ込む場合、一般的には、ライン数を1125ラインに変換し、同じ比率(スケーリング率)で横方向を拡大して拡大後の有効画面部分SF(Wb:Hc=4:3)を形成し、画面の左右に黒い帯状の部分BSを残す。拡大後の有効画面部分の画素数SFは、図13に示すように、1440画素となる。
NTSCの有効画素数が768画素であるので、スケーリング率は1440/768=1.875である。
NTSC信号における色副搬送波周波数fsc3.58MHzは、4fsc=14.318MHzでサンプリングされているが、74.25MHzでサンプリングされる1125i信号においては、上記のスケーリング率から色副搬送波周波数は9.9MHzに変換されている。よって、NTSC信号が1125i信号に変換されている場合、変換後の信号から色搬送波成分を抽出するには、9.9MHzの帯域を抽出するフィルタを用いる。
【0036】
図14はこの発明の実施の形態4の映像信号処理装置で用いられるドット成分除去動き検出回路4cを示す。
図14に示されるドット成分除去動き検出回路4cは、図3のドット成分除去動き検出回路4の代わりに用いられるものであり、図3のドット成分除去動き検出回路4と概して同じであるが、第1及び第2の搬送波帯域抽出手段としての搬送波帯域抽出フィルタ47及び48が付加されている点で異なる。
【0037】
搬送波帯域抽出フィルタ47は、1フレーム間差分信号DV1の色副搬送波周波数成分DB1を抽出する。搬送波帯域抽出フィルタ48は、2フレーム間差分信号DV2色副搬送波周波数成分DB2を抽出する。
水平スケーリングしない場合は色副搬送波周波数fsc3.58MHzを抽出すればよいが、上記のようにフォーマット変換のため水平スケーリングをおこなった信号の場合は色副搬送波周波数が変換された帯域を抽出する必要がある。そこで、第1及び第2の搬送波帯域抽出フィルタ47、48は、スケーリング前の信号における色副搬送波周波数成分に対応する、変換後の成分(上記の例では、9.9MHxの成分)を抽出するように構成されている。
【0038】
ドット妨害検出回路44の動作は、図3を参照して説明したのと同じであるが、入力が、搬送波帯域抽出フィルタ47、48の出力、即ち、1フレーム間差分DV1の搬送波帯域成分DB1、及び2フレーム間差分DV2の搬送波帯域成分DB2である点で異なる。
【0039】
実施の形態5.
図15は、実施の形態5の映像信号処理装置で用いられるドット成分除去動き検出回路4dを示す。図示のドット成分除去動き検出回路4dは、概して図14のドット成分除去動き検出回路4cと同じであるが、図14の搬送波帯域抽出フィルタ47の代わりに用いられた複数の搬送波帯域抽出フィルタ47a乃至47nと選択回路49とで搬送波帯域抽出手段が構成され、搬送波帯域抽出フィルタ48の代わりに用いられた複数の搬送波帯域抽出フィルタ48a乃至48nと選択回路50とで搬送波帯域抽出手段が構成されている。
【0040】
図14に示すドット成分除去動き検出回路4cは変換後の信号フォーマットが1種類の場合に対応するものであったが、図15に示すドット成分除去動き検出回路4dは、変換後の信号フォーマットが複数の場合に対応する。
選択回路49と選択回路50は連動するものであり、フォーマット変換信号FCにより示されている変換後のフォーマットに応じて、それぞれ、複数の搬送波帯域抽出フィルタ47a乃至47n、48a乃至48nのうちのいずれかを選択する。
このように構成することにより、変換後の信号フォーマットにおける、搬送波帯域成分を抽出することができ、変換後の信号フォーマットごとに適切なドット成分除去を行うことができる。
【0041】
なお、図15に示すように、複数の搬送波帯域抽出フィルタと選択回路の組み合わせの代わりに、搬送波帯域抽出手段として、タップ係数を切り換えることが可能な搬送波帯域フィルタを用いて、フォーマット変換信号FCで示される変換後の信号フォーマットに応じてタップ係数を切り換えることで、変換後の信号の帯域成分を抽出するようにしても良い。
【0042】
実施の形態6.
図16は、実施の形態6の映像信号処理装置を示す。
図示の映像信号処理装置は、概して図1の映像信号処理装置と同じであるが、搬送波帯域抽出フィルタ6、並びに1フレーム遅延回路7a及び7bが付加され、図1のドット成分除去動き検出回路4の代わりに、ドット成分除去動き検出回路4eが設けられている点で異なる。
【0043】
搬送波帯域抽出フィルタ6は、0フレーム遅延信号VS0から、色搬送波帯域成分を抽出して、搬送波帯域信号VC0として出力する。
ここで言う色搬送波帯域成分は、フォーマット変換されている場合には、フォーマット変換後の色搬送波周波数帯域成分である。
【0044】
1フレーム遅延回路7aは、搬送波帯域信号VC0を1フレーム期間遅延して、1フレーム遅延搬送波帯域信号VC1を出力する。
1フレーム遅延回路7bは、1フレーム遅延搬送波帯域信号VC1を1フレーム期間遅延して、2フレーム遅延搬送波帯域信号VC2を出力する。
なお、本発明は、上記のような遅延回路を用いる構成に限定されず、相互間にフレーム単位の時間差を有するコンポーネント搬送波帯域信号が得られるものであれば良い。
【0045】
ドット成分除去動き検出回路4eは、例えば図17に示すように構成されている。
図示のドット成分除去動き検出回路4eは、概して図3に示す回路と同じであるが、1フレーム間差分算出回路51及び2フレーム間差分算出回路52が付加されており、ドット妨害検出回路44が、1フレーム間差分算出回路41及び2フレーム間差分算出回路42の出力の代わりに、1フレーム間差分算出回路51及び2フレーム間差分算出回路52の出力を受けている点で異なる。
【0046】
1フレーム間差分算出回路51は、搬送波帯域信号VC0と1フレーム遅延搬送波帯域信号VC1の差の絶対値を求め、1フレーム間差分信号DC1として出力する。
2フレーム間差分算出回路52は、搬送波帯域信号VC0と2フレーム遅延搬送波帯域信号VC2の差の絶対値を求め、2フレーム間差分信号DC2として出力する。
【0047】
ドット妨害検出回路44の動作は、図3を参照して説明したのと同じであるが、入力が、ドット妨害成分である搬送波帯域信号VC0並びにそれをフレーム遅延した信号VC1、VC2から得られる差分DC1、DC2である点で異なる。従って、実施の形態4について述べたのと同様に、正確にドット妨害検出を行なうことができる。
【0048】
なお、搬送波帯域抽出フィルタ6の代わりに、図15を参照して説明したのと同様に複数の帯域抽出フィルタと選択回路の組み合わせを用いて、複数の信号フォーマットに対応可能としても良い。また、タップ係数切り換ええ可能なフィルタを用い、信号フォーマットに応じてタップ係数を切り換えることとしても良い。
【符号の説明】
【0049】
1 入力ポート、 2 出力ポート、 3 ドット妨害除去回路、 4、4a、4b、4c、4d、4e ドット成分除去動き検出回路、 5 1フレーム遅延回路、 6 搬送波帯域抽出フィルタ、 31 フィルタ、 32 混合回路、 33 選択回路、 41 1フレーム間差分算出回路、 42 2フレーム間差分算出回路、 43 動き検出回路、 44 ドット妨害検出回路、 45 合成回路、 46 差分判定回路、 47、48 搬送波帯域抽出フィルタ、 431 最大値回路、 441 減算回路、 442 ドット妨害検出回路、 451 減算回路、 452 リミッタ、 453 NOT回路、 454 AND回路、 455 比較回路、 456 判定回路、 51 1フレーム間差分算出回路、 52 2フレーム間差分算出回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンポジット信号から輝度信号と色信号とが分離されて得られたコンポーネント信号の妨害成分を除去する映像信号処理装置において、
相互間にフレーム単位の時間差のある第1及び第2のコンポーネント信号を入力とし、ドット妨害成分を除いた動き信号を検出し、検出結果を示すドット成分除去動き信号を出力するドット成分除去動き検出手段と、
上記第1及び第2のコンポーネント信号と、上記ドット成分除去動き信号とを入力とし、
上記ドット成分除去動き信号が、静止信号あるいは妨害成分であると判断されたことを示しているときには、上記第1及び第2のコンポーネント信号に対して妨害成分を除去するためのフィルタ演算をおこない、
上記ドット成分除去動き信号が、妨害成分ではない動き信号であると判断されたことを示しているときには、上記フィルタ演算をおこなわずに、上記第1又は第2のコンポーネント信号をそのまま出力するドット妨害除去手段と
を備えることを特徴とする映像信号処理装置。
【請求項2】
上記ドット成分除去動き検出手段は、さらに、上記第1及び第2のコンポーネント信号に対してフレーム単位の時間差のある第3のコンポーネント信号を入力とし、
上記第1のコンポーネント信号と上記第2のコンポーネント信号が1フレームの時間差を有し、
上記第1のコンポーネント信号と上記第3のコンポーネント信号が2フレームの時間差を有し、
上記ドット成分除去動き検出手段は、
上記第1及び第2のコンポーネント信号に基づいて、1フレーム間差分を求める1フレーム間差分算出回路と、
上記第1及び第3のコンポーネント信号に基づいて、2フレーム間差分を求める2フレーム間差分算出回路と、
上記1フレーム間差分及び上記2フレーム間差分に基づいて検出した動きを示す動き検出信号を出力する動き検出回路と、
上記1フレーム間差分及び上記2フレーム間差分に基づいて検出したドット妨害を示すドット妨害検出信号を出力するドット妨害検出回路と、
上記動き検出信号と上記ドット妨害検出信号とを合成して、上記ドット成分除去動き信号を出力する合成回路とを備え、
上記動き検出回路は、上記1フレーム間差分及び上記2フレーム間差分の少なくとも一方が大きいときに、上記動き検出信号の値を大きくし、
上記ドット妨害検出回路は、上記1フレーム間差分が大きくかつ上記2フレーム間差分が小さいときに、上記ドット妨害検出信号の値を大きくし、
上記合成回路は、上記ドット妨害検出信号の値が大きいときには、上記ドット成分除去動き信号の大きさを、上記動き検出信号よりも小さくする
ことを特徴とする請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項3】
上記ドット妨害検出回路は、
上記1フレーム間差分から上記2フレーム間差分を減算して両者の差を求める減算回路と、
上記減算回路で求めた差が正の値、又は0である場合に、該差をそのまま出力し、上記差が負の値である場合に、0を出力するリミッタとを備える
ことを特徴とする請求項2に記載の映像信号処理装置。
【請求項4】
上記動き検出回路は、
上記1フレーム間差分と上記2フレーム間差分の大きい方を選択して動き検出信号として出力する
ことを特徴とする請求項2に記載の映像信号処理装置。
【請求項5】
上記ドット妨害除去手段は、
上記第1及び第2のコンポーネント信号に対して、妨害成分を除去するためのフィルタ演算を行うフィルタ回路と、
上記ドット妨害除去動き信号に応じた混合割合で、フィルタ回路の出力、及び上記第1又は第2のコンポーネント信号を混合して出力する混合回路を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項6】
上記ドット妨害除去手段は、
上記第1及び第2のコンポーネント信号に対して、妨害成分を除去するためのフィルタ演算を行うフィルタ回路と、
上記ドット妨害除去動き信号に応じて、フィルタ回路の出力、及び上記第1又は第2のコンポーネント信号のいずれかを選択して出力する選択回路を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項7】
上記1フレーム間差分の、色搬送波帯域成分を抽出する第1の搬送波帯域抽出手段と、
上記2フレーム間差分の、色搬送波帯域成分を抽出する第2の搬送波帯域抽出手段とをさらに備え、
上記ドット妨害検出回路は、上記1フレーム間差分の色搬送波帯域成分及び上記2フレーム間差分の色搬送波帯域成分に基づいてドット妨害を示すドット妨害検出信号を出力する
ことを特徴とする請求項2に記載の映像信号処理装置。
【請求項8】
上記搬送波帯域抽出手段は、抽出する搬送波周波数帯域が切り替え可能であることを特徴とする請求項7に記載の映像信号処理装置。
【請求項9】
上記ドット成分除去動き検出手段は、さらに、上記第1及び第2のコンポーネント信号に対してフレーム単位の時間差のある第3のコンポーネント信号を入力とし、
上記第1のコンポーネント信号と上記第2のコンポーネント信号が1フレームの時間差を有し、
上記第1のコンポーネント信号と上記第3のコンポーネント信号が2フレームの時間差を有し、
上記入力されたコンポーネント信号の色搬送波帯域成分を抽出し、第1のコンポーネント搬送波帯域信号を出力する搬送波帯域抽出手段と、
上記搬送波帯域抽出手段の出力を遅延させて、上記第1のコンポーネント搬送波帯域信号に対して1フレーム遅延した第2のコンポーネント搬送波帯域信号を生成し、さらに上記第1のコンポーネント搬送波帯域信号に対して2フレーム遅延した第3のコンポーネント搬送波帯域信号を生成する遅延手段とをさらに備え、
上記ドット成分除去動き検出手段は、
上記第1及び第2のコンポーネント信号に基づいて、第1の1フレーム間差分を求める第1の1フレーム間差分算出回路と、
上記第1及び第3のコンポーネント信号に基づいて、第1の2フレーム間差分を求める第1の2フレーム間差分算出回路と、
上記第1の1フレーム間差分及び上記第1の2フレーム間差分に基づいて検出した動きを示す動き検出信号を出力する動き検出回路と、
上記第1及び第2のコンポーネント搬送波帯域信号に基づいて、第2の1フレーム間差分を求める第2の1フレーム間差分算出回路と、
上記第1及び第3のコンポーネント搬送波信号に基づいて、第2の2フレーム間差分を求める第2の2フレーム間差分算出回路と、
上記第2の1フレーム間差分及び上記第2の2フレーム間差分に基づいて検出したドット妨害を示すドット妨害検出信号を出力するドット妨害検出回路と、
上記動き検出信号と上記ドット妨害検出信号とを合成して、上記ドット成分除去動き信号を出力する合成回路とを備え、
上記動き検出回路は、上記第1の1フレーム間差分及び上記第1の2フレーム間差分の少なくとも一方が大きいときに、上記動き検出信号の値を大きくし、
上記ドット妨害検出回路は、上記第2の1フレーム間差分が大きくかつ上記第2の2フレーム間差分が小さいときに、上記ドット妨害検出信号の値を大きくし、
上記合成回路は、上記ドット妨害検出信号の値が大きいときには、上記ドット成分除去動き信号の大きさを、上記動き検出信号よりも小さくする
ことを特徴とする請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項10】
上記搬送波帯域抽出手段は、抽出する搬送波周波数帯域が切り替え可能であることを特徴とする請求項9に記載の映像信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−161698(P2010−161698A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3380(P2009−3380)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】