説明

映像反射放射凸面部材を使用した球形映像投影システム

【課題】本投影機システムは、投影された映像を、球形空間又は他の三次元空間を取り囲むスクリーンの内面上に放射する。
【解決手段】そのために、凸面反射鏡を使用する。そのスクリーンが球形で半透明の後方投影スクリーンである場合、この投影機システムは、閉じた空間の外から見えるほぼ球形の表示像を作成する。スクリーンが不透明であるが球形又は他の三次元形状である場合、本投影システムは観者を取り囲む三次元画像を作成する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の背景
発明の技術分野
本発明は一般に広角投影表示システムに関し、特に球形スクリーンその他の三次元スクリーンのほぼ全部に亘って映像を表示する装置に関する。
【0002】
関連発明の説明
後方投影システムは透過スクリーンの背面に映像を投影して該スクリーンの前面上にその映像を表示する。種々の先行技術投影システムは、球形、半球形、その他の三次元的な後方投影スクリーン上に映像を表示する。1952年4月8日にマテレーナ(Matelena)に付与された米国特許第2,592,444号は、球体の対向する両側に映像を投影すべく球体内部に取り付けた2個の対向レンズを有する投影機を備えた装置を記載している。この球体は、映像が球体の外側表面に現れるように半透明の物質で形成されている。ペンテス(Pentes)に付与された1969年4月1日付け米国特許第3,586,432号は、半透明球体内部に取り付けられた三台一組の投影機を使用するシステムを記載している。これらのシステムは両方とも、球形スクリーン全体の極めて制限された範囲のみに投影できるに過ぎず、また、球体内部に取り付けられた投影機へのアクセスが困難であるという問題を引き起こしている。
【0003】
映像を直接に半球形スクリーンに投影する魚眼レンズを有する投影機を使用することが知られているが、しかし、そのような単一の投影機では球形スクリーン上に映像を送ることができない。ニコラス(Nicolas)に付与された1989年8月22日付け米国特許第4,859,053号は半球部分に映像を生成するシステムを記載している。半球の外部に置かれた投影機が、半透明の半球の内側に、その半透明の半球とは反対側の一側部に設けた開口を通して、映像を投影する。このシステムは、投影機へのアクセスが容易であるが、しかし、それは映像を半球スクリーン上に作成するだけである。
【0004】
米国特許第4,427,274号は球体外部に配置された二台の投影機を使用する前方投影システムを記載しているが、それは球体の両対向側面の開口を通して、対向する半球の内面上に映像を投影する。同様の原理を使用する後方投影システムは、球形をした後方投影スクリーン面のほとんど全部に亘って表示像を作成することができよう。しかし、表示像の外観を損ねる球体の反対端に外付けされた投影機を使用するそのようなシステムは、美観上、球体の一端のみに外付けされた投影機を使用するシステムが好ましい。
【0005】
上記のシステムは、すべて、スクリーン面から外向きに投影された映像の一部が内部表面から内側に反射されて、内部球面の別の部分に投影されると「ゴースト映像」を発生する可能性がある。
【0006】
ベース上に載置させた球体のほぼ全部の外側表面に亘って表示像を作成できる後方投影システムであって、そのベース内にのみ取り付けられた投影設備を必要とし、かつ、ゴースト映像を抑制しうる後方投影システムが必要とされている。
【発明の要約】
【0007】
発明の要約
本発明に基づく投影システムは、三次元空間を実質的に取り囲む内面を有する前方投影用あるいは後方投影用のスクリーン上に表示像を作成する。本投影システムは、三次元空間内に配置した凸面鏡を使用して投影機が作成した映像を反射する。この凸面鏡はスクリーンの内面に亘って映像を放射する。スクリーンが半透明材料で形成されている場合、映像はスクリーンの外側表面に現れ、それが取り囲まれた空間の外部から見ることができる。スクリーンの内面が不透明である場合、スクリーンの内面上にできた映像を前記三次元空間の内部から見ることができる。投影機によって作成される映像は予め適切な歪みを与えておき、それがスクリーンに投影されたときに正確な映像となって現れるようにスクリーン及び放射鏡の幾何学形状によって引き起こされるいかなる歪みをも補償する。
【0008】
本発明の一つの実施の形態では、投影機を内蔵したベース上に載置された球形の半透明スクリーンを使用するが、この投影機はスクリーンに設けた開口を通して映像を投影する。閉じた三次元空間内に取り付けられた凸面鏡が、後方投影スクリーンのほぼ全内面に亘って投影映像を反射することにより投影映像を放射し、それによって、球の外側表面のほぼ全部に亘り後方投影像を作成する。投影軸に沿って位置する比較的小さな二つのスクリーン領域だけがぼやける。球内面からの反射を吸収しゴースト映像を防止するために非反射遮蔽体を、球内に取り付けてもよい。
【0009】
本発明の別の実施の形態では、ベース内に装着した二台の投影機を使用し、その各々がスクリーンによって取り囲まれた空間に別個の映像を投影する。その空間の中心付近に取り付けられた第一の鏡の下側の凸面は、第一の投影機からの映像を、スクリーン内面の下半分の面上に向かって反射する。ベースに対向して空間頂点付近に取り付けられた第二の鏡は、第二の投影機によって作成された映像を、空間の中心付近に取り付けられた上向きの第二の凸面反射体に向かって反射し、その反射体がその映像をスクリーン内面の上半分の面上に向かって反射する。この複式投影機表示システムは、単式投影機表示システムよりさらに精細で明るい表示映像を作成する。
【0010】
本発明の他の実施の形態は一又はそれ以上の凸面鏡を使用して、一個又はそれ以上の投影機からの映像を半球形スクリーンの内面に亘って放射する。
【0011】
それ故、本発明の目的は、三次元スクリーン、特に球形の後方投影スクリーンのほぼ全面に亘って表示像を作成するシステムを提供することである。
【0012】
本明細書の特許請求の範囲は、本発明の主題を特定し明確に権利を請求するものである。しかしながら、本技術分野の通常の技術者は、同様の部材には同じ参照符号を付した添付図面を考慮して明細書の残りの部分を読むことにより、本発明の更なる利点及びその目的と共に本発明の構成及び操作方法の両方を最も良く理解することができる。
【発明の詳細な説明】
【0013】
発明の詳細な説明
図1は、本発明に基づくシステム10の立断面図であり、このシステム10は、単一の投影機を使用して、好適には、実質的に球形の空間17を取り囲む中空球状の三次元スクリーン14の外側表面12に映像を作成するものである。スクリーン14はベース16の上に載置される。ベース16内に設けた投影機18が、スクリーン14の開口19を通して上向きに、スクリーン14に取り付けられた取付板26から下方へ延びる棒24に懸架された鏡22の下面20に向かって映像を投影する。投影機18及び開口19並びに鏡22は、スクリーン14の共通軸沿いに存在する。鏡22の下側の凸面20が投影された像を反射し、その像をスクリーン14のほぼ全内面26に放射する。スクリーン14は半透明であるので、スクリーンのうちで鏡22あるいはベース16によりぼかされる投影軸線沿いの領域28及び30を除くほぼ全部の外側表面12に、その映像が現れる。システム10の高さが十分にある場合には、スクリーンの隣に立つ人間は、上部領域28における映像の途切れに気づかない。凸面鏡22の鏡面は球形の幾何形状若しくは楕円形の幾何形状のいずれでもよい。凸状虚焦点面を有する投影機レンズに関連して使用される球面鏡、あるいは平面状虚焦点面を有する投影機に関連して使用される楕円面鏡は、適当な深度の焦点をもっており、像が現れるスクリーン14上のどこでも明瞭な表示像を与える。必要であれば、スクリーンと放射鏡の幾何学形状とに起因して生じるいかなる歪みをも補償すべく、投影機18によって作成された映像は予め適切に歪めておき、スクリーン14上に投影されたときに正確な映像が現れるようにすることができる。
【0014】
図1は投影機18から出た投影光が鏡の下面20に至る光路34と、反射された光が鏡の下面20からスクリーン内面26に至る光路36とを例示している。スクリーンの内面がわずかに反射する仕上げになっていると、スクリーンの内面26に当たった光のごく一部は反射され、半透明材料のスクリーンを通過して外に出ることはない。反射光のほとんどは光路38を通って黒い円筒状の光遮蔽体40に向かうが、この光遮蔽体40はベース16から鏡22向けて上に延出し、投影機18から出る光線を取り囲む。光遮蔽体40は、前記内面26から反射される光を吸収し、その光がスクリーン内面の他の部分に達してゴースト映像を発生することを防ぐ。
【0015】
投影機18は、静止画や動画を作成するための、フィルム投影機又はディジタル投影機若しくは他のいかなる種類の投影機でもよい。図1に例示した発明の実施の形態では、やはりベース16内に搭載されたコンピュータ42によって提供されるビデオデータに基づいて映像を作成するためのディジタル投影機である。ベース16に設けたドア(図示せず)は、投影機18とコンピュータ42へのアクセスを容易にする。
【0016】
図2及び図3は、それぞれ、図1に示す鏡22を取り付けるための別のシステムの平面図と立断面図である。図1に示すようにスクリーン14の内面26に取り付けられたプレート26から下方に延出する棒24に鏡22を懸架するよりも、図2及び図3に示す別の取り付けシステムは、光遮蔽体40から上方へ延びる中央の棒52を使用して鏡22を下から支持する。この支持棒52はそれ自体が、投影光の妨害を最小限にとどめるように整合された光遮蔽体40内に、薄いフィン53によって支持される。
【0017】
図4は、ベース76上に載置された半透明の球形スクリーン70を有する投影システム60を示すが、これは多くの点で図1のシステム10に類似する。しかしながら、投影システム60は、ベース76内において一台の投影機ではなく二台の投影機62及び64を使用して、より明るい表示像を与える。ベース76から上に延出する中央の棒73に支持された鏡66の下側の凸面は、投影機62から来る光線を、主としてスクリーン70の下半球68の内面上に亘って放射する。スクリーン70の頂点内面に取り付けた第二の鏡72は、投影機64から来る光線を、上向きにされた第3の鏡67の凸面に向かって反射するように傾斜を有しており、この鏡67がその映像を主としてスクリーン70の上半球の内面上に亘って放射する。投影機62及び鏡66,67,72は、スクリーン70によって取り囲まれた空間の垂直軸に沿って存在するが、一方、投影機64はその軸線からずれており、その光線を、該垂直軸と鏡72の位置で交差する光路に向かわせる。好適な実施の形態では、投影機62,64は、ベース76内に設置したコンピュータ78によって制御されるディジタル投影機である。しかし、投影機62及び64は、任意の種類の投影機でよい。
【0018】
ゴースト映像が中央の鏡66,67に向けて反射し戻されるので、そのゴースト映像は図4に示す複式投影機方式の場合にはさほど問題にならない。したがって、このシステムの複式投影機方式は、光遮蔽体40に機能上類似した光遮蔽体を有しない。しかし、スクリーン70の内面から反射された光を遮るように適切な形状、配置、大きさにした光遮蔽体を設けてゴーストを低減することができることは明白であろう。
【0019】
図5は、本発明の一つの実施の形態の略式立断面図であり、この実施の形態は、投影機90がスクリーンに近接したベース内に取り付けられるよりもむしろ球面スクリーン92から離隔して配置されていることを除いて、図1の単一投影システム10の光学系と全体的に類似する光学系を有する。スクリーン92によって取り囲まれた空間の内外いずれの側から映像を見るべきかに応じて、スクリーン92は半透明又は不透明にされる。
【0020】
図6は、本発明の一つの実施の形態の略式立断面図であり、この実施の形態は、投影機94が球形スクリーン96の外部に配置されるよりむしろその内部に配置されることを除いて、図1の単一投影システム10の光学系と全体として類似する光学系を有する。スクリーン96によって取り囲まれた空間の内外いずれの側から映像を見るべきかに応じて、スクリーン96は半透明又は不透明にされる。
【0021】
図7は、本発明の一つの実施の形態の略式立断面図であり、この実施の形態は壁102上に装着された半透明の半球形スクリーン100の外側表面に表示像を作成するものである。スクリーン100の背後で壁102に埋め込まれた投影機104が、スクリーン100内部の鏡106に向かって映像を投影する。鏡106は、壁102に装着された凸面鏡108上に向かって映像を反射し、この鏡108が透過スクリーン100の内面上に亘って映像を放射し、その結果当該映像がその外側表面に現れる。
【0022】
図8は、本発明の別の実施の形態の略式立断面図であり、この実施の形態は壁112上に装着された半透明の半球形スクリーン110の外側表面上に表示像を作成するものである。スクリーン110の下端部の背後において壁112に埋め込まれた投影機114が、スクリーン100の内部の鏡116に向かって映像を投影する。鏡106は、壁112上に装着された凸面鏡118に向かって映像を反射し、この凸面鏡118がスクリーン110の内面のうちの下半分に亘って映像を放射する。スクリーン110上端部の背後において壁112に埋め込まれた別の投影機120が、鏡122に第二の映像を投影し、この鏡122がその映像を鏡118に向かって反射する。鏡124は、スクリーン110内面のうちの上半分に亘ってその第二の映像を放射する。凸面鏡118と組み合わせた図8の二台の投影機は、図7の単一投影機半球システムによって提供されるものよりももっと明るく、より精細な映像を半球形スクリーン110上に提供する。複式投影機の利点を結合して明るさと精細さを得るために、二台以上の投影機を単一の凸面鏡又は一対の凸面鏡へ向けて投影させることができることは明白であろう。
【0023】
一台又はそれ以上の投影機からの映像を反射して、半透明又は不透明のいずれでもよい球形若しくは半球形のスクリーンの内面のほぼ全体に亘りその映像を放射する凸面放射鏡を使用するシステムの好ましい実施例を図示し、説明してきた。この凸面反射体構成は、投影機(単数又は複数)がスクリーンの一端にのみ位置する場合でも、映像がスクリーン表面のほぼ全面をカバーすることを可能にする。
【0024】
上記は本発明の好適な実施の形態を説明してきたが、当該業界において通常の技量を有する技術者は、本発明から逸脱することなくより広範な点で上記好適な実施の形態に多くの改変を施すことができる。例えば、同様のシステムを使用して、円筒形や多面体などの他の形をした三次元スクリーンに投影像を作成することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の範囲及びその精神に属するすべての改変に及ぶものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に基づき単一の投影機を使用して三次元スクリーン面上に映像を生成するシステムの立断面図である。
【図2】図1の鏡を取り付けるための別のシステムの平面図である。
【図3】図2の別の鏡取り付けシステムの立断面図である。
【図4】本発明に基づき二台の投影機を使用して三次元スクリーンの外側表面上に表示像を作成する別の実施の形態の投影システムの立断面図である。
【図5】本発明に基づき球形スクリーン面上に表示像を作成する単一投影機システムの別の実施の形態の略式立断面図である。
【図6】本発明に基づき球形スクリーン面上に表示像を作成する単一投影機システムの別の実施の形態の略式立断面図である。
【図7】本発明に基づき半球形スクリーン面上に映像を表示する単一投影機システムの略式立断面図である。
【図8】本発明に基づき半球形スクリーン面上に映像を表示する複式投影機システムの簡略な立断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側表面を有し、かつ、半透明材料で構成されたスクリーンであって、三次元空間を実質的に取り囲む内側表面を有するものと、
ビデオデータを用いて、第一の映像を投影するデジタル投影機と、
前記三次元空間内に配設された第一の凸面を有する第一の鏡であって、前記第一の映像を反射し、更に、前記スクリーンの内側表面に亘って前記第一の映像を放射して、前記スクリーンの内側表面に亘って放射された前記第一の映像が前記スクリーンの外側表面に統一された映像として現れるようにしたものを具備する映像表示装置であって、
前記ビデオデータが、投影以前に、処理されて前記第1の映像を予め調整して前記第1の鏡とスクリーンに起因する歪みを補償して、前記第1の映像が前記スクリーンに投影されたときに前記第1の映像が正しく現れるようにすることを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
前記スクリーンが開口を有し、
前記デジタル投影機が実質的に閉じた前記三次元空間の外側に存在し、
前記デジタル投影機が前記スクリーンの開口を通して直接前記第一の鏡の第一の凸面へ前記第一の映像を投影することを特徴とする前記請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記デジタル投影機が実質的に前記三次元空間内に存在することを特徴とする前記請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項4】
前記三次元空間がほぼ球状であることを特徴とする前記請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の映像表示装置。
【請求項5】
前記スクリーンが中心軸を有する中空の球状に形成され、
前記デジタル投影機及び第一の鏡が前記中心軸に沿って存在することを特徴とする前記請求項4項に記載の映像表示装置。
【請求項6】
前記第1の凸面の中心が前記中空の球の中心から距離をあけて置かれていることを特徴とする前記請求項4項に記載の映像表示装置。
【請求項7】
前記第1の凸面が楕円面の幾何形状を有することを特徴とする前記請求項1乃至6のうちのいずれか1項に記載の映像表示装置。
【請求項8】
更に、前記スクリーンを支持すると共に、前記デジタル投影機を実質的に囲繞するベースを具備することを特徴とする前記請求項1乃至7のうちのいずれか1項に記載の映像表示装置。
【請求項9】
前記第1の鏡が、上向きに突出した中央ロッドであって、下から前記鏡を支持するものにより支持されていることを特徴とする前記請求項1乃至8のうちのいずれか1項に記載の映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−20920(P2008−20920A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186201(P2007−186201)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【分割の表示】特願2002−564665(P2002−564665)の分割
【原出願日】平成14年1月31日(2002.1.31)
【出願人】(503292045)
【氏名又は名称原語表記】LIGON,Thomas,R.
【Fターム(参考)】