説明

映像品質客観評価方法、映像品質客観評価装置、およびプログラム

【課題】シーンの違いによる映像の主観品質の変動を考慮し、画素情報へのデコードに莫大な計算量を要することなく、前記主観品質の推定を可能にする。
【解決手段】動き補償フレーム間予測とDCT変換を用いるとともに、特にH.264方式を用いて符号化された映像のビット列を受信するとともに、受信したビット列に含まれる量子化パラメータを抽出してその統計量を演算し、この量子化パラメータの最小値に基づいて映像の主観品質を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間が映像を見て体感した品質(主観品質)を推定する場合に、主観品質評価実験を行うことなく、符号化されたビット列の情報から客観的に主観品質を導出する、符号化による映像品質劣化を対象とした映像品質客観評価方法、映像品質客観評価装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、映像通信サービスのユーザが視聴している映像の主観品質の評価を精度良く効率的に行うため、ビットレートやフレームレート等の符号化パラメータ情報やIPパケットのヘッダ情報を用いて客観的に映像品質評価を行う技術が検討されてきた(非特許文献1)。また、符号化ビットストリーム情報と画素信号情報を組み合わせて客観的に映像品質評価を行う技術についても検討されてきた(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】山岸和久,林孝典,“IPTVサービスを対象とした映像品質推定モデルの検討",信学技報,CQ2007-35, pp. 123-126, July. 2007.
【非特許文献2】D. Hands, “Quality Assurance for IPTV,”ITU-T Workshop on “End-to-End QoE / QoS,”June. 2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では精度良く計算量を抑えて客観的に映像品質評価を行う技術の構築を目指している。しかし文献1に記載の技術は、平均的なシーンを想定した主観品質の推定を行うため、シーンの違いによる主観品質の変動を考慮することができず、主観品質の推定を良好な精度で実現できないという課題があった。
また、文献2に記載の技術は、符号化ビットストリームとデコードされた画素情報に符号化されたビット列をサブ情報として加えた情報を用いて主観品質の推定を試みているが、特にH.264方式では画素情報へのデコードには莫大な計算量を要するため現実的に実行することは難しいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために本発明は、動き補償フレーム間予測とDCT変換を用いて符号化された映像のビット列を受信する受信ステップと、受信したビット列に含まれる情報を入力して所定の演算を行う演算ステップと、演算ステップの演算結果に基づいて映像の主観品質を推定する演算を行う主観品質推定ステップを備えることを特徴とする。
すなわち、本発明は、現在主流である動き補償フレーム間予測とDCT変換を用いる符号化方式、特にH.264方式のビットストリームから、フレーム/スライス/動きベクトルのIPB属性を検出するステップと、動きベクトルとそのデータ量を抽出するステップと、DCT係数とそのデータ量を抽出するステップと、符号化制御情報とそのデータ量を抽出するステップと,量子化係数/量子化パラメータを抽出するステップと、これらの情報を統合して主観品質を客観的に映像の主観品質を推定するステップを備えるものである。
【0006】
本発明ではビットストリームのデコードを行わないため、小さい計算量で映像品質の推定が可能になると共に、ビットストリーム中に存在するシーンの違いを考慮可能なパラメータである動きベクトルやDCT係数の内容やデータ量を主観品質の推定に用いることにより、精度良く映像の主観品質を推定することが可能になる。
【0007】
ここで、本発明では、上記演算ステップが、ビット列に含まれる量子化情報を抽出して、量子化情報の統計量(例えば、H.264方式の量子化パラメータの最小値)を演算し、主観品質推定ステップは、量子化情報の統計量(例えば、H.264方式の量子化パラメータの最小値)に基づいて映像の主観品質を推定する演算を行うものである。
さらに、演算ステップは、ビット列に含まれる動きベクトルの情報を抽出して、抽出した動きベクトルの情報から動きベクトルの統計量(例えば、ベクトルの大きさの尖度)を演算し、主観品質推定ステップは、量子化情報の統計量(例えば、H.264方式の量子化パラメータの最小値)と動きベクトルの統計量(例えば、ベクトルの大きさの尖度)に基づいて映像の主観品質を推定する演算を行う。
【0008】
また、演算ステップは、ビット列に含まれるIスライス、PスライスおよびBスライスの情報を抽出するとともに、抽出したIスライス、PスライスおよびBスライスの情報に基づいてIスライス、PスライスおよびBスライスの統計情報を演算し、主観品質推定ステップは、量子化情報の統計量(例えば、H.264方式の量子化パラメータの最小値)とIスライス、PスライスおよびBスライスの統計情報に基づいて映像の主観品質を推定する演算を行う。
【0009】
なお、演算ステップは、ビット列に含まれる、予測符号化に用いられる情報、変換符号化に用いられる情報および符号化の制御に用いられる情報を抽出して、抽出したこれらの情報から、予測符号化に用いられるビット量、変換符号化に用いられるビット量および符号化の制御に用いられるビット量を演算することもできる。この場合、主観品質推定ステップは、演算ステップの演算結果を示す、予測符号化に用いられるビット量、変換符号化に用いられるビット量および符号化の制御に用いられるビット量に基づいて映像の主観品質を推定する演算を行う。
【0010】
この場合、演算ステップは、ビット列に含まれる動きベクトルの情報を抽出して、抽出した動きベクトルの情報から動きベクトルの統計量(例えば、ベクトルの大きさの尖度)を演算し、主観品質推定ステップは、予測符号化に用いられるビット量、変換符号化に用いられるビット量および符号化の制御に用いられるビット量と動きベクトルの統計量(例えば、ベクトルの大きさの尖度)に基づいて映像の主観品質を推定する演算を行う。
また、演算ステップは、ビット列に含まれるIスライス、PスライスおよびBスライスの情報を抽出するとともに、抽出したIスライス、PスライスおよびBスライスの情報に基づいてIスライス、PスライスおよびBスライスの統計情報を演算し、主観品質推定ステップは、予測符号化に用いられるビット量、変換符号化に用いられるビット量および符号化の制御に用いられるビット量とIスライス、PスライスおよびBスライスの統計情報に基づいて映像の主観品質を推定する演算を行う。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明ではDCT変換と動き補償を用いる符号化方式、特にH.264方式で符号化されたビット列の情報(ビットストリーム)を利用することにより、計算量を抑えながら精度良く客観的に主観品質の推定を行うことが可能となり、主観品質評価法や従来の客観品質評価法を本発明に置き換えることにより多大な労力と時間を必要としなくなる。従って、映像伝送サービスで、ユーザが感じている主観品質を大規模かつリアルタイムに管理することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】選択されたフレームにおける量子化パラメータの最小値の導出方法を説明する図である。
【図2】動きベクトルの導出対象フレームの位置を説明する図である。
【図3】動きベクトルの導出対象フレームと参照フレームとの間の位置関係を示す図である。
【図4】動きベクトルの導出対象フレームと参照フレームとの間の位置関係を示す図である。
【図5】映像品質客観評価装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態1の構成を示す機能ブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態2の構成を示す機能ブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態3の構成を示す機能ブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態4の構成を示す機能ブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態5の構成を示す機能ブロック図である。
【図11】本発明の実施の形態6の構成を示す機能ブロック図である。
【図12】本発明の実施の形態7の構成を示す機能ブロック図である。
【図13】本発明の実施の形態8の構成を示す機能ブロック図である。
【図14】本発明の実施の形態9の構成を示す機能ブロック図である。
【図15】実施の形態1の処理動作を示すフローチャートである。
【図16】実施の形態2の処理動作を示すフローチャートである。
【図17】実施の形態3の処理動作を示すフローチャートである。
【図18】実施の形態4の処理動作を示すフローチャートである。
【図19】実施の形態5の処理動作を示すフローチャートである。
【図20】実施の形態6の処理動作を示すフローチャートである。
【図21】実施の形態7の処理動作を示すフローチャートである。
【図22】実施の形態8の処理動作を示すフローチャートである。
【図23】実施の形態9の処理動作を示すフローチャートである。
【図24】量子化係数/パラメータの特性を示す図である。
【図25】一般的な品質推定モデルとの精度の比較結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図5は、本発明に係る映像品質客観評価装置の構成を示すブロック図である。本映像品質客観評価装置1は、図5に示すように、受信部2、演算部3、記憶媒体4および出力部5からなる。ここで、図5に示すH.264符号化装置6は、入力映像を後述するH.264方式により符号化する。そして、符号化された映像ビット列は伝送網内を伝送パケットとして通信され映像品質客観評価装置1に送信される。
【0014】
映像品質客観評価装置1は、その伝送パケット、すなわち前記符号化されたビット列を受信部2で受信する。そして、CPUが記憶媒体4に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、演算部3の各機能を実現する。即ち、演算部3は受信部2で受信されたビット列の情報を利用して後述する実施の形態1〜8に示される各種の演算処理を行い、その演算処理結果を表示部などの出力部5に出力することにより、映像の主観品質を推定するものである。
【0015】
(実施の形態1)
実施の形態1では、図6に示すように、量子化パラメータ統計量計算部11と統合部20とが設けられ、H.264方式で符号化された評価映像Vのビットストリーム内に存在する量子化情報である量子化パラメータの情報を使って主観品質EVを推定する。本方式は、DCT係数と動き補償を使う符号化方式には原理的に適用可能である。本実施の形態の簡単な流れを次に示す。まず図6において、符号化ビットストリームはまず量子化パラメータ統計量計算部11に入力される。量子化パラメータ統計量計算部11では、ビットストリームから量子化パラメータを抽出して以下に示すアルゴリズムに従って量子化パラメータの代表値QPminを導出する。次に統合部20では以下のアルゴリズムに従って量子化パラメータの代表値QPminから評価映像Vの主観品質EVを推定する。これらの流れを図15のフローチャートに示している。H.264方式のビット列の仕様は参考文献1(ITU-T H.264, “Advanced video coding for generic audiovisual services,”Feb. 2000.)に記載されており、H.264方式の仕様に従ってマクロブロック毎に設定される量子化パラメータの情報の抽出を行う。
【0016】
図1に示すように、まず評価映像Vを構成する全てのフレームについて、フレーム内に存在する全てのマクロブロック(全m個)の量子化パラメータ値を使って、フレーム毎の量子化パラメータの代表値QPmin(i)を導出する。ただし、iはフレーム番号(i=1から映像の再生を開始してi=nで映像の再生を終了)を示す。QPmin(i)は以下の式で導出される。
【0017】
【数1】

【0018】
ただし、QPijはフレーム番号i中のマクロブロック番号jの量子化パラメータを表し(図1)、また、演算子
【0019】
【数2】

【0020】
は、自然数A1〜Amを参照して最小となる値を出力する。ただし、最小値以外の任意の統計量(最大値、平均値等)を導出しても良い。
上記処理によりフレーム番号i中で最も値が小さい量子化パラメータの導出がなされる。これは量子化パラメータがより小さくなると該当マクロブロックに対してより細かい量子化が適用されることから、上記処理は最も細かい量子化を行うマクロブロックを導出することになる。絵柄が複雑な映像ほどきめ細かい量子化が必要になるため、上記処理はフレーム番号i中で最も複雑な絵柄となるマクロブロックの特定を目的としている。
【0021】
以上で導出したフレーム毎の量子化パラメータの代表値QPmin(i)を用いて、次に評価映像の全ての量子化パラメータの代表値QPminを導出する。QPminは以下の式で導出される。
【0022】
【数3】

【0023】
ただし、演算子
【0024】
【数4】

【0025】
は、自然数A1〜Amを参照して平均となる値を出力する。
以上で導出したQPminを用いて、評価映像Vの主観品質EVを推定する。主観品質EVは以下の式で導出される。H.264では方式では量子化パラメータの代表値QPminと主観品質EVの間に非線形性が存在するため、その特性を考慮したものとなっている。
【0026】
【数5】

【0027】
ただし、係数a,b,c,dは予め主観評価実験を行って、回帰分析により最適化される係数である。なお、EVの尺度としては参考文献2(ITU-T P.910,“TELEPHONE TRANSMISSION QUALITY, TELEPHONE INSTALLATIONS, LOCAL LINE NETWORKS,”Sep. 1999.)に示されているACR法や参考文献3(ITU-R BT.500,“Methodology for the subjective assessment of the quality of television pictures,”2002.)に示されているDSIS法またはDSCQS法などがある。また、フレーム毎の量子化パラメータであるQPmin(i)を用いて、QPmin(i)の平均値であるQPaveや、最大値であるQPmaxなど、QPmin(i)の統計量をQPminの代わりに使っても良い。
【0028】
(実施の形態2)
実施の形態2では、図7に示すように、量子化パラメータ統計量計算部11、動きベクトル統計量計算部12および統合部20が設けられ、H.264方式で符号化された評価映像Vに対して、H.264方式の符号化で利用される量子化パラメータに加えて動きベクトルの情報を使って主観品質EVを客観的に推定する。本方式は、原理的にはDCT係数と動き補償を使う符号化方式に適用可能である。本実施の形態の簡単な流れを次に示す。まず図7において、符号化ビットストリームはまず量子化パラメータ統計量計算部11と動きベクトル統計量計算部12に入力される。量子化パラメータ統計量計算部11では、ビットストリームから量子化パラメータを抽出して以下に示すアルゴリズムに従って量子化パラメータの代表値QPminを導出する。また動きベクトル統計量計算部12では、ビットストリームから動きベクトルを抽出して以下に示すアルゴリズムに従って動きベクトルの代表値MVkurtを導出する。次に統合部20では以下のアルゴリズムに従って量子化パラメータの代表値QPminと動きベクトルの代表値MVkurtから評価映像Vの主観品質EVを推定する。これらの流れを図16のフローチャートに示している。H.264方式のビット列の仕様は参考文献1に記載されており、H.264方式の仕様に従ってマクロブロック毎に設定される量子化パラメータとマクロブロック・サブマクロブロック毎に設定される動きベクトルの情報を抽出する。
【0029】
量子化パラメータについては、実施の形態1で示したQPmin(ただし、実施の形態1で示した量子化パラメータの統計量を使っても良い)をEVの導出に利用する。
一方、動きベクトルの代表値については、図2、図3、図4を用いて説明する。図2に示すように、H.264方式では動きベクトルの導出に用いる参照フレームを、前方、後方に限らず、マクロブロック・サブマクロブロック単位で任意の2つ選ぶことが可能である。そこで各マクロブロック・サブマクロブロック毎に設定される動きベクトルの大きさを正規化するように、動きベクトルの導出対象フレームの前方・後方1フレームに各マクロブロック・サブマクロブロックを射影する。具体的な処理を図3、図4で説明する。
【0030】
図3は、動きベクトルの導出対象フレームi中のj番目のブロックMBijの参照フレームがフレームiの(p+1)フレーム後方にある場合を示している。図3のように動きベクトルの導出対象フレームiから参照フレーム上に動きベクトルMVijが存在しており、以下のようにしてMVijを動きベクトルの導出対象フレームiから1フレーム後方へのベクトルMV’ijに射影する。
【0031】
【数6】

【0032】
また図4は、動きベクトルの導出対象フレームi中のj番目のブロックMBijの参照フレームがフレームiの(q+1)フレーム前方にある場合を示している。図4のように動きベクトルの導出対象フレームiから参照フレーム上に動きベクトルMVijが存在しており、以下のようにしてMVijを動きベクトルの導出対象フレームiから1フレーム前方へのベクトルMV’ijに射影する。
【0033】
【数7】

【0034】
以上の処理により、動きベクトルの導出対象フレームiの全てのマクロブロック・サブマクロブロックj(1≦j≦x)毎に設定される動きベクトルを、i±1フレーム上のベクトルへ射影することが可能になる。ただし、xはフレームi内のマクロブロックの個数である。
【0035】
以上で導出した動きベクトルの導出対象フレームi上のベクトルMV’ijを用いて、次に以下の式で動きベクトルの導出対象フレームiの統計量として尖度Kurt(i)を導出する。ただし尖度Kurt(i)以外にも平均や最大値、或いは最小値や分散等の各種統計量を代替として用いることが可能である。
下式中の
【0036】
【数8】

【0037】
は、ベクトルの大きさを表すものとする。
【0038】
【数9】

【0039】
以上で導出したフレーム毎の動きベクトルの代表値MVkurt(i)を用いて、次に評価映像の全ての動きベクトルの代表値MVkurtを導出する。MVkurtは以下の式で導出される。
【0040】
【数10】

【0041】
ただし、演算子
【0042】
【数11】

【0043】
は、自然数A1〜Amを参照して平均となる値を出力し、nは評価映像Vの全フレーム数である。
ここで動きベクトルの尖度を用いたのは、動きベクトルの分布を表現するためであり、映像で一様な動きや特定の物体の動きを定量化するためである。これと類似の物理的意味を持った特徴量(分散や歪度等)を使っても良い。
【0044】
以上で導出したMVkurtとQPminを用いて、評価映像Vの主観品質EVを推定する。EVは以下の式で導出される。下式中のMVkurtはベクトルの大きさを表すものとする。
【0045】
【数12】

【0046】
ただし、係数a,b,c,d,e,f,g,h,i,j,k,l,mは予め主観評価実験を行って、回帰分析により最適化される係数である。なお、EVの尺度としては参考文献2に示されているACR法や参考文献3に示されているDSIS法またはDSCQS法などがある。
【0047】
(実施の形態3)
実施の形態3では、図8に示すように、量子化パラメータ統計量計算部11、フレーム種別統計量計算部13および統合部20が設けられ、H.264方式で符号化された評価映像Vに対して、H.264方式の符号化で利用される量子化パラメータに加えてIスライス、Pスライス、Bスライスの統計情報を使って主観品質EVを客観的に推定する。なお、スイッチングIスライスはIスライス、スイッチングPスライスはPスライスとみなす。本方式は、原理的にはDCT係数と動き補償を使う符号化方式に適用可能である。本実施の形態の簡単な流れを次に示す。まず図8において、符号化ビットストリームはまず量子化パラメータ統計量計算部11とフレーム種別統計量計算部13に入力される。量子化パラメータ統計量計算部11では、ビットストリームから量子化パラメータを抽出して以下に示すアルゴリズムに従って量子化パラメータの代表値QPminを導出する。またフレーム種別統計量計算部13では、ビットストリームからフレーム種別を抽出して以下に示すアルゴリズムに従ってフレーム種別統計量Rを導出する。次に統合部20では以下のアルゴリズムに従って量子化パラメータの代表値QPminとフレーム種別統計量Rから評価映像Vの主観品質EVを推定する。これらの流れを図17のフローチャートに示している。H.264方式のビット列の仕様は参考文献1に記載されており、H.264方式の仕様に従ってマクロブロック毎に設定される量子化パラメータとスライス毎に設定されるI・P・B属性の情報を抽出する。
【0048】
量子化パラメータについては、実施の形態1で示したQPmin(ただし、実施の形態1で示した量子化パラメータの統計量を使っても良い)をEVの導出に利用する。
一方、スライス毎に設定されるI・P・B属性については、評価映像中に存在するIスライスの数をカウントしたSI、Pスライスの数をカウントしたSP、Bスライスの数をカウントしたSBを導出し、以下の式で全てのスライスの数に対する各スライスの数の割合RSI、RSP、RSB、RSPBを導出する。これは基本的にPスライスやBスライスなどの他スライスからの差分となるスライスを増やすと原理的に1枚当たりのスライス品質が向上し、逆にIスライスを増やすと1枚当たりのスライス品質が低下するため、全体のスライス数に対する各スライスの割合が品質に密接に関係するために、このようなパラメータを導入した。ただし、スライスの代わりに、I・P・B属性のフレームまたはブロックを用いて上記処理を実行しても良い。
【0049】
【数13】

【0050】
これらのパラメータを用いて回帰分析で予め主観品質評価実験で導出しておいた主観品質との相関を比較して最も主観品質の推定精度が良いパラメータをRとする。
【0051】
以上で導出したRとQPminを用いて、評価映像Vの主観品質EVを推定する。EVは以下の式で導出される。
【0052】
【数14】

【0053】
ただし、係数a,b,c,d,e,f,g,h,i,j,k,l,mは予め主観評価実験を行って、回帰分析により最適化される係数である。なお、EVの尺度としては参考文献2に示されているACR法や参考文献3に示されているDSIS法またはDSCQS法などがある。
【0054】
(実施の形態4)
実施の形態4では、図9に示すように、量子化パラメータ統計量計算部11、動きベクトル統計量計算部12、フレーム種別統計量計算部13および統合部20が設けられ、H.264方式で符号化された評価映像Vに対して、H.264方式の符号化で利用される量子化パラメータに加えて動きベクトルとIスライス、Pスライス、Bスライスの情報を使って主観品質EVを客観的に推定する。なお、スイッチングIスライスはIスライス、スイッチングPスライスはPスライスとみなす。本実施の形態の簡単な流れを次に示す。まず図9において,符号化ビットストリームはまず量子化パラメータ統計量計算部11と動きベクトル統計量計算部12とフレーム種別統計量計算部13に入力される。量子化パラメータ統計量計算部11では、ビットストリームから量子化パラメータを抽出して以下に示すアルゴリズムに従って量子化パラメータの代表値QPminを導出する。また動きベクトル統計量計算部12では、ビットストリームから動きベクトルを抽出して以下に示すアルゴリズムに従って動きベクトルの代表値MVkurtを導出する。さらに、フレーム種別統計量計算部13では、ビットストリームからフレーム種別を抽出して以下に示すアルゴリズムに従ってフレーム種別統計量Rを導出する。次に統合部20では以下のアルゴリズムに従って量子化パラメータの代表値QPminと動きベクトルの代表値MVkurtとフレーム種別統計量Rから評価映像Vの主観品質EVを推定する。これらの流れを図18のフローチャートに示している。H.264方式のビット列の仕様は参考文献1に記載されており、H.264方式の仕様に従ってマクロブロック毎に設定される量子化パラメータとスライス毎に設定されるI・P・B属性とマクロブロック・サブマクロブロック毎に設定される動きベクトルの情報を抽出する。
【0055】
量子化パラメータについては、実施の形態1で示したQPmin(ただし、実施の形態1で示した量子化パラメータの統計量を使っても良い)をEVの導出に利用する。
動きベクトルについては、実施の形態2で示したMVkurtをEVの導出に利用する。
Iスライス、Pスライス、Bスライスについては実施の形態3で示したRを利用する。
【0056】
以上で、導出したMVkurtとRとQPminを用いて、評価映像Vの主観品質EVを推定する。EVは以下の式で導出される。下式中のMVkurtはベクトルの大きさを表すものとする。
【0057】
【数15】

【0058】
ただし、係数a,b,c,d,e,f,g,h,i,j,k,l,m,o,p,q,r,s,t,u,v,w,x,yは予め主観評価実験を行って、回帰分析により最適化される係数である。なお、EVの尺度としては参考文献2に示されているACR法や参考文献3に示されているDSIS法またはDSCQS法などがある。
【0059】
(実施の形態5)
実施の形態5では、図10に示すように、ビット量の和の統計量計算部14と統合部20が設けられ、H.264方式で符号化された評価映像Vのビットストリームの予測符号化に使われるビット量、変換符号化に使われるビット量、符号化の制御に使われるビット量を用いて主観品質EVを推定する。本方式は、原理的にはDCT係数と動き補償を使う符号化方式に適用可能である。本実施の形態の簡単な流れを次に示す。まず図10において、符号化ビットストリームはまずビット量の和統計量計算部14に入力される。ビット量の和統計量計算部14では、ビットストリームからビット量の和を抽出して以下に示すアルゴリズムに従ってビット量の和の代表値Bitmaxを導出する。次に統合部20では以下のアルゴリズムに従ってビット量の和の代表値Bitmaxから評価映像Vの主観品質EVを推定する。これらの流れを図19のフローチャートに示している。H.264方式のビット列の仕様は前述の参考文献1に記載されており、H.264方式の仕様に従ってマクロブロック毎に設定される予測符号化に使われるビット量、変換符号化に使われるビット量、符号化の制御に使われるビット量の情報の導出を行う。
【0060】
図9に示すように、まず評価映像Vを構成する全てのフレームについて、フレーム内に存在する全てのマクロブロック(全m個)の予測符号化に使われるビット量、変換符号化に使われるビット量、符号化の制御に使われるビット量の和を使って、フレーム毎のビット量子の和の代表値Bitmax(i)を導出する。ただし、iはフレーム番号(i=1から映像の再生を開始してi=nで映像の再生を終了)を示す。Bitmax(i)は以下の式で導出される。
【0061】
【数16】

【0062】
ただし、Bitijはフレーム番号i中のマクロブロック番号jのビット量の和を表し、また、演算子
【0063】
【数17】

【0064】
は、自然数A1〜Amを参照して最大となる値を出力する。ただし、最大値以外の任意の統計量(最小値、平均値等)を導出しても良い。
上記処理によりフレーム番号i中で最も値が大きいビット量の和の導出がなされる。これはビット量の和がより大きくなると該当マクロブロックに対してよりビット量を割り振る符号化処理が適用されることから、上記処理は効率的な処理が難しいマクロブロックのビット量の和を導出することになる。
【0065】
以上で導出したフレーム毎のビット量の和の代表値Bitmax(i)を用いて、次に評価映像の全てのビット量の和の代表値Bitmaxを導出する。Bitmaxは以下の式で導出される。
【0066】
【数18】

【0067】
ただし、演算子
【0068】
【数19】

【0069】
は、自然数A1〜Amを参照して平均となる値を出力する。
以上で導出したBitmaxを用いて、評価映像Vの主観品質EVを推定する。主観品質EVは以下の式で導出される。H.264では方式ではビット量の和の代表値Bitmaxと主観品質EVの間に非線形性が存在するため、その特性を考慮したものとなっている。
【0070】
【数20】

【0071】
ただし、係数a,b,c,dは予め主観評価実験を行って、回帰分析により最適化される係数である。なお、EVの尺度としては前述の参考文献2に示されているACR法や前述の参考文献3に示されているDSIS法またはDSCQS法などがある。また、フレーム毎のビット量の和の代表値であるBitmax(i)を用いて、Bitmax(i)の平均値であるBitaveや、最小値であるBitminなど、Bitmax(i)の統計量をBitmaxの代わりに使っても良い。
【0072】
(実施の形態6)
実施の形態6では、図11に示すように、ビット量の和の統計量計算部14、動きベクトル統計量計算部12および統合部20が設けられ、H.264方式で符号化された評価映像Vに対して、H.264方式の符号化で利用されるビットストリームの予測符号化に使われるビット量、変換符号化に使われるビット量、符号化の制御に使われるビット量を用いて主観品質EVを客観的に推定する。本方式は、原理的にはDCT係数と動き補償を使う符号化方式に適用可能である。本実施の形態の簡単な流れを次に示す。まず図11において、符号化ビットストリームはまずビット量の和統計量計算部14と動きベクトル統計量計算部12に入力される。ビット量の和統計量計算部14では、ビットストリームからビット量の和を抽出して以下に示すアルゴリズムに従ってビット量の和の代表値Bitmaxを導出する。また動きベクトル統計量計算部12では、ビットストリームから動きベクトルを抽出して以下に示すアルゴリズムに従って動きベクトルの代表値MVkurtを導出する。次に統合部20では以下のアルゴリズムに従ってビット量の和の代表値Bitmaxと動きベクトルの代表値MVkurtから評価映像Vの主観品質EVを推定する。これらの流れを図20のフローチャートに示している。H.264方式のビット列の仕様は参考文献1に記載されており、H.264方式の仕様に従ってマクロブロック毎に設定される量子化パラメータとマクロブロック・サブマクロブロック毎に設定されるビットストリームの予測符号化に使われるビット量、変換符号化に使われるビット量、符号化の制御に使われるビット量と、マクロブロック、サブマクロブロック毎に設定される動きベクトルの情報を抽出する。
【0073】
ビットストリームの予測符号化に使われるビット量、変換符号化に使われるビット量、符号化の制御に使われるビット量については、実施の形態5で示したBitmaxをEVの導出に利用する。
一方、動きベクトルの代表値の導出については、既に実施の形態2で図2、図3、図4を用いて説明したとおりであるので省略する。
【0074】
以上で導出した評価映像の全ての動きベクトルの代表値MVkurtと、評価映像の全てのビット量の和の代表値Bitmaxを用いて、評価映像Vの主観品質EVを推定する。EVは以下の式で導出される。下式中のMVkurtはベクトルの大きさを表すものとする。
【0075】
【数21】

【0076】
ただし、係数a,b,c,d,e,f,g,h,i,j,k,l,mは予め主観評価実験を行って、回帰分析により最適化される係数である。なお、EVの尺度としては参考文献2に示されているACR法や参考文献3に示されているDSIS法またはDSCQS法などがある。
【0077】
(実施の形態7)
実施の形態7では、図12に示すように、ビット量の和の統計量計算部14、フレーム種別統計量計算部13および統合部20が設けられ、H.264方式で符号化された評価映像Vに対して、H.264方式の符号化で利用されるビットストリームの予測符号化に使われるビット量、変換符号化に使われるビット量、および符号化の制御に使われるビット量に加えてIスライス、Pスライス、Bスライスの統計情報を用いて主観品質EVを客観的に推定する。なお、スイッチングIスライスはIスライス、スイッチングPスライスはPスライスとみなす。本方式は、原理的にはDCT係数と動き補償を使う符号化方式には適用可能である。本実施の形態の簡単な流れを次に示す。まず図12において、符号化ビットストリームはまずビット量の和統計量計算部14とフレーム種別統計量計算部13に入力される。ビット量の和統計量計算部14では、ビットストリームからビット量の和を抽出して以下に示すアルゴリズムに従ってビット量の和の代表値Bitmaxを導出する。またフレーム種別統計量計算部13では、ビットストリームからフレーム種別を抽出して以下に示すアルゴリズムに従ってフレーム種別統計量Rを導出する。次に統合部20では以下のアルゴリズムに従ってビット量の和の代表値Bitmaxとフレーム種別統計量Rから評価映像Vの主観品質EVを推定する。これらの流れを図21のフローチャートに示している。H.264方式のビット列の仕様は参考文献1に記載されており、H.264方式の仕様に従ってマクロブロック毎に設定される予測符号化に使われるビット量、変換符号化に使われるビット量、および符号化の制御に使われるビット量と、スライス毎に設定されるI・P・B属性の情報を抽出する。
【0078】
ビットストリームの予測符号化に使われるビット量、変換符号化に使われるビット量、および符号化の制御に使われるビット量については、実施の形態5で示したBitmaxをEVの導出に利用する。
【0079】
一方、スライス毎に設定されるI・P・B属性については、既に実施の形態3で説明したように、評価映像中に存在するIスライスの数をカウントしたSI、Pスライスの数をカウントしたSP、Bスライスの数をカウントしたSBを導出し、全てのスライスの数に対する各スライスの数の割合RSI、RSP、RSB、RSPBをパラメータとして導出する。そして、これらのパラメータを用いて回帰分析で予め主観品質評価実験で導出しておいた主観品質との相関を比較して最も主観品質の推定精度が良いパラメータをRとする。
【0080】
以上で導出したパラメータRとBitmaxを用いて、評価映像Vの主観品質EVを推定する。EVは以下の式で導出される。
【0081】
【数22】

【0082】
ただし、係数a,b,c,d,e,f,g,h,i,j,k,l,mは予め主観評価実験を行って、回帰分析により最適化される係数である。なお、EVの尺度としては参考文献2に示されているACR法や参考文献3に示されているDSIS法またはDSCQS法などがある。
【0083】
(実施の形態8)
実施の形態8では、図13に示すように、ビット量の和の統計量計算部14、動きベクトル統計量計算部12、フレーム種別統計量計算部13および統合部20が設けられ、H.264方式で符号化された評価映像Vに対して、H.264方式の符号化で利用されるビットストリームの予測符号化に使われるビット量、変換符号化に使われるビット量、および符号化の制御に使われるビット量に加えて動きベクトルとIスライス、Pスライス、Bスライスの情報を使って主観品質EVを客観的に推定する。なお、スイッチングIスライスはIスライス、スイッチングPスライスはPスライスとみなす。本方式は、原理的にはDCT係数と動き補償を使う符号化方式に適用可能である。本実施例の簡単な流れを次に示す。まず図13において、符号化ビットストリームはまずビット量の和統計量計算部14と動きベクトル統計量計算部12とフレーム種別統計量計算部13に入力される。ビット量の和統計量計算部14では、ビットストリームからビット量の和を抽出して以下に示すアルゴリズムに従ってビット量の和の代表値Bitmaxを導出する。また動きベクトル統計量計算部12では、ビットストリームから動きベクトルを抽出して以下に示すアルゴリズムに従って動きベクトルの代表値MVkurtを導出する。さらに、フレーム種別統計量計算部13では、ビットストリームからフレーム種別を抽出して以下に示すアルゴリズムに従ってフレーム種別統計量Rを導出する。次に統合部20では以下のアルゴリズムに従ってビット量の和の代表値Bitmaxと動きベクトルの代表値MVkurtとフレーム種別統計量Rから評価映像Vの主観品質EVを推定する。これらの流れを図22のフローチャートに示している。H.264方式のビット列の仕様は参考文献1に記載されており、H.264方式の仕様に従ってマクロブロック毎に設定されるビットストリームの予測符号化に使われるビット量、変換符号化に使われるビット量、および符号化の制御に使われるビット量と、スライス毎に設定されるI・P・B属性とマクロブロック・サブマクロブロック毎に設定される動きベクトルの情報を抽出する。
【0084】
ビットストリームの予測符号化に使われるビット量、変換符号化に使われるビット量、および符号化の制御に使われるビット量については、実施の形態5で示したBitmaxをEVの導出に利用する。
動きベクトルについては、実施の形態2で示したMVkurtをEVの導出に利用する。
Iスライス、Pスライス、Bスライスについては実施の形態3で示したRを利用する。
【0085】
以上で、導出したMVkurtとRとQPminを用いて、評価映像Vの主観品質EVを推定する。EVは以下の式で導出される。下式中のMVkurtはベクトルの大きさを表すものとする。
【0086】
【数23】

【0087】
ただし、係数a,b,c,d,e,f,g,h,i,j,k,l,m,o,p,q,r,s,t,u,v,w,x,yは予め主観評価実験を行って、回帰分析により最適化される係数である。なお、EVの尺度としては参考文献2に示されているACR法や参考文献3に示されているDSIS法またはDSCQS法などがある。
【0088】
(実施の形態9)
実施の形態9では、図14に示すように、Iスライス・Pスライス・Bスライスのビット量の和の統計量計算部15、Iスライス・Pスライス・Bスライスの量子化情報の統計量計算部16および主観品質推定部17が設けられ、H.264方式で符号化された評価映像Vに対して、H.264方式の符号化で利用されるビットストリームのうち、Iスライス・Pスライス・Bスライスの各々の予測符号化に使われるビット量、変換符号化に使われるビット量、符号化の制御に使われるビット量に加えて、Iスライス・Pスライス・Bスライスの量子化パラメータ(量子化情報)を使って主観品質EVを客観的に推定するものである。なお、スイッチングIスライスはIスライス、スイッチングPスライスはPスライスとみなす。
【0089】
本実施の形態の簡単な流れを次に示す。まず、図14において、符号化ビットストリームはまずIスライス・Pスライス・Bスライスのビット量の和計算部15に入力される。この計算部15では、Iスライス,Pスライス,Bスライスのビット量を動きベクトルや量子化係数、また符号化制御情報に場合分けして導出する。次にIスライス・Pスライス・Bスライスの量子化情報の統計量計算部16では、Iスライス,Pスライス,Bスライス内の量子化情報を抽出して以下に示すアルゴリズムに従って、Iスライス・Pスライス・Bスライスの量子化情報の統計量QPmin(I)・QPmin(P)・QPmin(B)を導出する。
【0090】
次に主観品質推定部17では、統計量QPmin(I)・QPmin(P)・QPmin(B)等を用い、以下で示すアルゴリズムに従って評価映像Vの主観品質EVを推定する。これらの流れを図23のフローチャートに示している。H.264方式のビット列の仕様は参考文献1に記載されており、H.264方式の仕様に従ってマクロブロック毎に設定されるビットストリームの予測符号化に使われるビット量、変換符号化に使われるビット量、符号化の制御に使われるビット量とスライス毎に設定されるI・P・B属性の情報を抽出する。
【0091】
Iスライス、Pスライス、Bスライスの各々の予測符号化に使われるビット量・変換符号化に使われるビット量・符号化の制御に使われるビット量については、Iスライスの予測符号化に使われるビット量・変換符号化に使われるビット量・符号化の制御に使われるビット量をそれぞれ、Bitpred(I)・Bitres(I)・Bitother(I)とし、Pスライスの予測符号化に使われるビット量・変換符号化に使われるビット量・符号化の制御に使われるビット量をそれぞれ、Bitpred(P)・Bitres(P)・Bitother(P)とし、Bスライスの予測符号化に使われるビット量・変換符号化に使われるビット量・符号化の制御に使われるビット量をそれぞれ、Bitpred(B)・Bitres(B)・Bitother(B)とする。ただし、各ビット量は評価映像の全ての該当スライスのビット量としても良いし、ある特定時間内に存在するスライスのビット量としても良い。また、Bitpred(BP)・Bitres(BP)・Bitother(BP)という値を定義し、以下の式で導出する。
【0092】
Bitpred(BP)=Bitpred(B)+Bitpred(P)
Bitres(BP)=Bitres(B)+Bitres(P)
Bitother(BP)=Bitother(B)+Bitother(P)
量子化情報については、実施の形態1で示したスライス毎のQPminの導出プロセスを、Iスライスのみに適用したQPmin(I)・Pスライスのみに適用したQPmin(P)・Bスライスのみに適用したQPmin(B)を利用する。
【0093】
具体的には、評価映像Vを構成する全てのスライスについてI・P・B属性を判定し、各スライス毎に、スライス内に存在する全てのマクロブロック(全m個)の量子化情報の値を使って、スライス毎の量子化情報の代表値QPmin(i)を以下の式で導出する。ただし、iはスライス番号(i=1から映像の再生を開始してi=nで映像の再生を終了)を示す。
【0094】
【数24】

【0095】
ただし、QPijはスライス番号i中のマクロブロック番号jの量子化情報を表す(図1)。また、演算子
【0096】
【数25】

【0097】
は、自然数A1〜Amを参照して最小となる値を出力する。
上記処理によりスライス番号i中で最も値が小さい量子化情報の導出がなされる。これは量子化情報がより小さくなると該当マクロブロックに対してより細かい量子化が適用されることから、上記処理は最も細かい量子化を行うマクロブロックを導出することになる。絵柄が複雑な映像ほどきめ細かい量子化が必要になるため、上記処理はスライス番号i中で最も複雑な絵柄となるマクロブロックの特定を目的としている。
なお、QPmin(i)の代わりにQPave(i)等の平均や最小や最大等の平均や最小や最大等の別のパラメータを以下の処理で利用することができる。QPave(i)は以下の式で導出される。
【0098】
【数26】

【0099】
ただし、演算子
【0100】
【数27】

【0101】
は、自然数A1〜Amを参照して平均となる値を出力する。
以上で導出したスライス毎の量子化情報の代表値QPmin(i)を用いて、次に評価映像の全ての量子化情報の代表値QPminを導出する。QPminは以下の式で導出される。
【0102】
【数28】

【0103】
以上の導出処理を、I・P・B属性毎に適用して得られる値をそれぞれ、QPmin(I)・QPmin(P)・QPmin(B)とする。また、QPmin(BP)という値を定義し、以下の式で導出する。
QPmin(BP)=(QPmin(B)+QPmin(P))/2
次に、評価映像Vの主観品質EVを推定する。主観品質EVは以下の式で導出される。H.264方式ではI・P・Bスライスのビット量と量子化情報の代表値と主観品質EVの間に非線形性が存在するため、その特性を考慮したものとなっている。
【0104】
【数29】

【0105】
ただし、係数a,b,c,d,e,f,g,h,i,j,k,l,m,n,oは予め主観評価実験を行って、回帰分析により最適化される係数である。なお、EVの尺度としては参考文献2に示されているACR法や参考文献3に示されているDSIS法またはDSCQS法などがある。
また、Bitres(I)・Bitres(BP)の代わりに、Bitpred(I)・Bitpred(BP)や以下で定義するビット量の割合Rres(I)・Rres(BP)、またBitother(I)・Bitother(BP)を用いることもでき、各場合を組み合わせて和算・平均・分散等の各種統計演算を適用して重ね合わせを行って主観品質を導出しても良い。以上の式について、指数関数の代わりに対数関数や多項式関数や、それらの逆数により上記非線形性を考慮しても良い。
【0106】
【数30】

【0107】
さらに、本実施の形態では、スライス単位で演算を行っているが、マクロブロック単位・フレーム単位・GoP単位・映像全体等の演算単位に変更が可能である。
【0108】
なお、上記で量子化パラメータの代表値と主観品質EVとの間に非線形性の関係が存在すると述べたが、その関係を図24に示す。量子化パラメータの代表値と主観品質EVとの間に存在するこのような特性を考慮することで、より的確な品質推定が可能になる。参考までに、一般的な統計量である平均と標準偏差を適用して主観品質の推定を行った場合と、本発明で示したモデルで主観品質を推定した場合の推定結果を図25に示す。図25では、横軸が主観品質評価実験で取得した主観品質であり、縦軸が主観品質を推定した客観品質となる。
【0109】
図25に示すように、平均と標準偏差を用いる一般的なモデルでは、図24に示す飽和特性を考慮しきれずに推定精度の悪化を招いているが、本発明ではこれを正確に考慮できており、推定精度の向上を可能にしている。
【符号の説明】
【0110】
1…映像品質客観評価装置、2…受信部、3…演算部、4…記憶媒体、5…出力部、6…H.264符号化装置、11…量子化パラメータ統計量計算部、12…動きベクトル統計量計算部、13…フレーム種別統計量計算部、14…ビット量の和統計量計算部、15…Iスライス・Pスライス・Bスライスのビット量の和計算部、16…Iスライス・Pスライス・Bスライスの量子化情報の統計量計算部、17…主観品質推定部、20…統合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像の主観品質を評価する評価方法であって、
動き補償フレーム間予測とDCT変換もしくはウェーブレット変換等のその他の直交変換を用いて符号化された前記映像のビット列を受信する受信ステップと、
受信したビット列に含まれる情報を入力して所定の演算を行う演算ステップと、
前記演算ステップの演算結果に基づいて前記映像の主観品質を推定する演算を行う主観品質推定ステップと
を有することを特徴とする映像品質客観評価方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記演算ステップは、前記ビット列に含まれる量子化情報を抽出して、前記量子化情報の統計量を演算し、
前記主観品質推定ステップは、前記量子化情報の統計量に基づいて前記映像の主観品質を推定する演算を行うことを特徴とする映像品質客観評価方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記演算ステップは、前記ビット列に含まれる動きベクトルの情報を抽出して、抽出した動きベクトルの情報から動きベクトルの統計量を演算し、
前記主観品質推定ステップは、前記量子化情報の統計量と前記動きベクトルの統計量に基づいて前記映像の主観品質を推定する演算を行うことを特徴とする映像品質客観評価方法。
【請求項4】
請求項2において、
前記演算ステップは、前記ビット列に含まれる動き補償フレーム間予測であるI(イントラ)フレームまたはスライスまたはブロック、P(前方向予測)フレームまたはスライスまたはブロックおよびB(双方向、双予測)フレームまたはスライスまたはブロックの情報を抽出するとともに、抽出したI(イントラ)フレームまたはスライスまたはブロック、P(前方向予測)フレームまたはスライスまたはブロックおよびB(双方向、双予測)フレームまたはスライスまたはブロックの情報に基づいてI(イントラ)フレームまたはスライスまたはブロック、P(前方向予測)フレームまたはスライスまたはブロックおよびB(双方向、双予測)フレームまたはスライスまたはブロックの統計情報を演算し、
前記主観品質推定ステップは、前記量子化情報の統計量と、前記I(イントラ)フレームまたはスライスまたはブロック、P(前方向予測)フレームまたはスライスまたはブロックおよびB(双方向、双予測)フレームまたはスライスまたはブロックの各統計情報に基づいて前記映像の主観品質を推定する演算を行うことを特徴とする映像品質客観評価方法。
【請求項5】
請求項1において、
前記演算ステップは、前記ビット列に含まれる、予測符号化に用いられる情報、変換符号化に用いられる情報および符号化の制御に用いられる情報を抽出して、抽出したこれらの情報から、予測符号化に用いられるビット量、変換符号化に用いられるビット量および符号化の制御に用いられるビット量を演算し、
前記主観品質推定ステップは、前記演算ステップの演算結果を示す、予測符号化に用いられるビット量、変換符号化に用いられるビット量および符号化の制御に用いられるビット量に基づいて前記映像の主観品質を推定する演算を行うことを特徴とする映像品質客観評価方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記演算ステップは、前記ビット列に含まれる動きベクトルの情報を抽出して、抽出した動きベクトルの情報から動きベクトルの統計量を演算し、
前記主観品質推定ステップは、前記予測符号化に用いられるビット量、前記変換符号化に用いられるビット量および前記符号化の制御に用いられるビット量と前記動きベクトルの統計量に基づいて前記映像の主観品質を推定する演算を行うことを特徴とする映像品質客観評価方法。
【請求項7】
請求項5において、
前記演算ステップは、前記ビット列に含まれるI(イントラ)フレームまたはスライスまたはブロック、P(前方向予測)フレームまたはスライスまたはブロックおよびB(双方向、双予測)フレームまたはスライスまたはブロックの情報を抽出するとともに、抽出したI(イントラ)フレームまたはスライスまたはブロック、P(前方向予測)フレームまたはスライスまたはブロックおよびB(双方向、双予測)フレームまたはスライスまたはブロックの情報に基づいてI(イントラ)フレームまたはスライスまたはブロック、P(前方向予測)フレームまたはスライスまたはブロックおよびB(双方向、双予測)フレームまたはスライスまたはブロックの統計情報を演算し、
前記主観品質推定ステップは、前記予測符号化に用いられるビット量、前記変換符号化に用いられるビット量および前記符号化の制御に用いられるビット量、前記I(イントラ)フレームまたはスライスまたはブロック、P(前方向予測)フレームまたはスライスまたはブロックおよびB(双方向、双予測)フレームまたはスライスまたはブロックの各統計情報に基づいて前記映像の主観品質を推定する演算を行うことを特徴とする映像品質客観評価方法。
【請求項8】
請求項1において、
前記演算ステップは、前記ビット列に含まれる、Iスライス、PスライスおよびBスライスのビット量と、Iスライス、PスライスおよびBスライスの量子化情報の統計量を抽出し、前記主観品質推定ステップは、前記ビット量と前記量子化情報に基づいて、前記映像の主観品質を推定する演算を行うことを特徴とする映像品質客観評価方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記ビット量とは、前記ビット列に含まれる、予測符号化に用いられる情報、変換符号化に用いられる情報および符号化の制御に用いられる情報を抽出して、抽出したこれらの情報から演算される、予測符号化に使われるビット量、変換符号化に使われるビット量および符号化の制御に使われるその他のビット量であることを特徴とする映像品質客観評価方法。
【請求項10】
請求項8において、
前記ビット量とは、PスライスとBスライスの予測符号化に使われるビット量の和、変換符号化に使われるビット量の和および符号化の制御に使われるその他のビット量の和であることを特徴とする映像品質客観評価方法。
【請求項11】
請求項8において、
前記量子化情報とは、PスライスとBスライスのビット列に含まれる量子化情報の平均値、もしくは和算や乗算や指数対数演算による統計量であることを特徴とする映像品質客観評価方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかにおいて、
Iスライスの代わりにIマクロブロック、Iフレームを使い、Pスライスの代わりにPマクロブロック、Pフレームを使い、Bスライスの代わりにBマクロブロック、Bフレームを使って前記映像の主観品質を推定することを特徴とする映像品質客観評価方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかにおいて、
Iモードは動き補償を用いないモード、Pモードは1つのリファレンスフレームから動き補償するモード、Bモードは2つ以上のリファレンスフレームから動き補償するモードであることを特徴とする映像品質客観評価方法。
【請求項14】
映像の主観品質を評価する評価装置であって、
動き補償フレーム間予測とDCT変換もしくはウェーブレット変換等のその他の直交変換を用いて符号化された前記映像のビット列を受信する受信部と、
受信したビット列に含まれる情報を入力して所定の演算を行う第1演算部と、
前記第1演算部の演算結果に基づいて前記映像の主観品質を推定する演算を行う第2演算部と
を有することを特徴とする映像品質客観評価装置。
【請求項15】
動き補償フレーム間予測とDCT変換もしくはウェーブレット変換等のその他の直交変換を用いて符号化された前記映像のビット列を受信する受信処理と、
前記受信処理に基づいて受信したビット列に含まれる情報を入力して所定の演算を行う演算処理と、
前記演算処理の演算結果に基づいて前記映像の主観品質を推定する演算を行う主観品質推定処理と
をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2009−260940(P2009−260940A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41457(P2009−41457)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】