説明

映像蓄積装置

【課題】タイムコード処理におけるCPUの負担を低減し、より効率的に符号化データの収録及び再生を行い得る映像蓄積装置を提供する。
【解決手段】エンコーダで生成された符号化データを、WRAPPER CPU12が解析してタイムコードを生成し、共有メモリ13に書き込む。そして、WRAPPER CPU12は、符号化データをCOM CPU16またはMEM CPU19に転送する。COM CPU16またはMEM CPU19は、MAIN CPU14からの収録指示に応じて、符号化データをCOM CPU16またはMEM CPU19に接続される大容量素材記録装置にファイル形式で収録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放送局内で放送に使用する映像信号/音声信号の記録または再生を行う映像蓄積装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、放送局内にあっては、例えば放送番組の送出素材を予め蓄積装置に格納しておき、指示に従って該当する素材を再生し、オンエアを行うようになっている。この場合、上記蓄積装置の各処理部では、収録・再生の処理に応じたタイムコードが必要となる。
【0003】
ところで、上記蓄積装置にあっては、収録系のタイムコード及び再生系のタイムコードをCPUが生成し、CPUが各処理部に収録系のタイムコード及び再生系のタイムコードを配信する手法が用いられている。この場合、タイムコード生成元となるCPUによる処理が多くなる。
【0004】
なお、この種に関連する従来技術として、特許文献1に、CPUによって共有メモリを介してLANとマルチファンクション周辺装置との間のデータの受け渡しを制御する構成が示されている。但し、この特許文献1に記載のものは、共有メモリへのデータの格納及び、マルチファンクション周辺装置との間のデータの受け渡しの制御をCPUが全て行っている。
【特許文献1】特開平8−195764公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上述べたように、上記蓄積装置では、タイムコード生成元による処理が多く、各処理部に対しタイムコードを配信するための条件判断ソフトウェアを付加する必要がある。
【0006】
そこで、この発明の目的は、タイムコード処理におけるCPUの負担を低減し、より効率的に符号化データの収録及び再生を行い得る映像蓄積装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明に係る映像蓄積装置は、少なくとも映像信号を符号化したフレーム構造の符号化データをファイル形式で記録媒体に収録し、再生指示に応じて前記記録媒体から該当するファイルの符号化データを再生する映像蓄積装置において、符号化データの収録処理、再生処理に必要なタイムコードを格納する共有メモリと、符号化データを入力し解析してフレーム毎のタイムコードを生成し、タイムコードを共有メモリに書き込む制御部と、収録指示に応じて、共有メモリからタイムコードを読み出し、当該タイムコードに基づいて符号化データの記録媒体への収録処理を実行する収録処理部とを備えるようにしたものである。また、符号化データの再生指示に応じて、共有メモリからタイムコードを読み出し、当該タイムコードに基づいて共有メモリから符号化データの再生処理を実行する再生処理部をさらに備えたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、符号化データの収録時に、制御部は符号化データからタイムコードを生成して共有メモリに書き込むだけでよく、後は収録処理部で共有メモリからタイムコードを読み出して符号化データの収録処理を実行するため、制御部の処理量は軽減され、その負担低減により安価なCPUでも符号化データの収録処理が可能となる。さらに、符号化データの再生時に、再生処理部で共有メモリからタイムコードを読み出して符号化データの再生処理を実行するため、この点でも、制御部の処理量は軽減される。
【発明の効果】
【0009】
以上詳述したようにこの発明によれば、タイムコード処理におけるCPUの負担を低減し、より効率的に符号化データの収録及び再生を行い得る映像蓄積装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、この発明に係る映像蓄積装置の一実施形態を示すブロック構成図である。図1において、符号11は制御バスであり、この制御バス11には、制御部としてのWRAPPER CPU12と、共有メモリ13と、MAIN CPU14と、PROXY DSP15と、COM CPU16と、GBIT CPU17と、MPEG2(Moving Picture Experts Group 2) DEC MODULE18と、MEM CPU19と、AUDIO DSP(Digital Signal Processor)20と、LCD(Liquid Crystal Display) DSP21とが接続される。
【0012】
MAIN CPU14には、キーボード等の操作パネルが接続される。上記COM CPU16には、PAK(フラッシュメモリレコーダ)の大容量素材記録装置が接続される。GBIT CPU17は、外部装置との間で符号化データのファイルをやりとりするためのものである。
【0013】
WRAPPER CPU12は、エンコーダで映像信号及び音声信号をMPEG2(Moving Picture Experts Group 2)符号化方式で符号化された符号化データを取り込み、この符号化データの解析処理を行って、映像信号のフレーム毎のタイムコードを生成し、共有メモリ13に書き込む。また、WRAPPER CPU12は、符号化データをCOM CPU16またはMEM CPU19に転送する。
【0014】
MAIN CPU14は、操作パネルにより収録指示が入力されると、収録指示をPROXY DSP15、AUDIO DSP20、LCD DSP21、WRAPPER CPU12、COM CPU16または、MEM CPU19に送出する。WRAPPER CPU12は、指示に従ってタイムコードを生成し、共有メモリ13に書き込む。COM CPU16またはMEM CPU19は、共有メモリ13に書き込まれたタイムコードを読み出し、WRAPPER CPU12から転送された符号化データをCOM CPU16またはMEM CPU19に接続される大容量素材記録装置にファイル形式で収録する。このとき、AUDIO DSP20、LCD DSP21は、共有メモリ13に書き込まれたタイムコードを表示する。
【0015】
また、MAIN CPU14は、操作パネルにより再生指示が入力されると、共有メモリ13にタイムコードを書き込む。COM CPU16またはMEM CPU19は、このタイムコードに基づいてCOM CPU16またはMEM CPU19に接続される大容量素材記録装置から該当するファイルの符号化データを選択的に再生する。この再生データは、MPEG2 DEC MODULE18によりビデオ信号(映像、音声を含む)にデコードされて出力される。このとき、AUDIO DSP20、LCD DSP21は、共有メモリ13に書き込まれたタイムコードを表示する。
【0016】
上記構成において、以下に処理動作を説明する。
【0017】
以前に考えられていた蓄積装置では、収録系の処理をするブロック、再生系の処理をするブロック、双方に関係するブロックに大別でき、各ブロックは収録・再生の処理に応じたタイムコードが必要となる。収録系のタイムコードは、図2に示すように、WRAPPER CPU12が生成して、MAIN CPU14、PROXY DSP15、COM CPU16、MEM CPU19、AUDIO DSP20、LCD DSP21に制御バス11経由で配信する。
【0018】
再生系のタイムコードは、図3に示すように、MAIN CPU14が生成して、PROXY DSP15、COM CPU16、MEM CPU19、AUDIO DSP20、LCD DSP21に制御バス11経由で配信する。共有メモリ13を有しない場合は、タイムコードを生成するCPUが、制御バス11経由でタイムコードを配信することになるが、タイムコードの更新は映像同期のフレーム信号毎(33ms毎)となるので、以下のような問題が発生する。
【0019】
(1)タイムコード生成元が、送信先数分同じタイムコードを送信する必要がある。
(2)装置の動作状態によっては、送信先に想定している各ブロックで、タイムコードを必要としないブロックがあるが、それを考慮した場合はソフトウェアによる送信判断を行うか、条件を無視して全ブロックに送信する。前者の場合は、条件判断ソフトウェアを付け加える必要があり、後者の場合はバス資源を無駄に使用する。
【0020】
(3)受信側は、タイムコードを受け取る際に、データ受信割り込みを受けて読み込むことになるが、受信側の処理が重い場合は、割り込みの発生が負担になる可能性がある。
【0021】
(4)仕様の変更等で、タイムコードの配信先が追加/削除された場合は、送信側と受信側の両方のソフトを変更する必要がある。
【0022】
そこで、本発明の映像蓄積装置では、エンコーダで生成された符号化データを、WRAPPER CPU12が解析してタイムコードを生成し、共有メモリ13に書き込む。そして、WRAPPER CPU12は、符号化データをCOM CPU16またはMEM CPU19に転送する。
【0023】
MAIN CPU14は、操作パネルからの収録指示に応じて、各CPU(DSP)に収録指示を行う。COM CPU16または、MEM CPU19は、符号化データを、COM CPU16またはMEM CPU19に接続される大容量素材記録装置にファイル形式で収録する。
【0024】
また、MAIN CPU14は、操作パネルからの再生指示に応じて、共有メモリ13からタイムコードを書き込む。このタイムコードに基づいてCOM CPU16またはMEM CPU19に接続される大容量素材記録装置から該当するファイルの符号化データを選択的に再生して、MPEG2 DEC MODULE18に転送する。これにより、ビデオ信号が再生される。
【0025】
この動作の中で、WRAPPER CPU12が制御バス11にアクセスするのは、共有メモリ13にタイムコードを書き込むときと、符号化データをCOM CPU16またはMEM CPU19に転送するときだけである。それ以外の時間は符号化データの解析処理やタイムコードの生成処理などに充てることができる。
【0026】
また、上記動作の中で、MAIN CPU14が制御バス11にアクセスするのは、共有メモリ13からタイムコードを読み出すときと、COM CPU16またはMEM CPU19に接続される大容量素材記録装置から該当するファイルの符号化データを選択的に再生するときと、各ブロックに収録指示と再生指示を通知するときだけである。それ以外の時間は、外部装置との通信処理などに充てることができる。
【0027】
従って、以下のような作用効果が得られる。
(1)タイムコード生成元となるWRAPPER CPU12は、共有メモリ13にのみタイムコードを書き込むだけになるので、タイムコード配信の負荷が軽減できる。
(2)タイムコードの受信は、必要とするブロックが読み出しに行けばよいので、生成元となるWRAPPER CPU12は配信先の判断をしなくても済む。
(3)受信側は、フレーム時間内の任意のタイミングで共有メモリ13からタイムコードを取得しに行けばよいので、処理に余裕が持てる。
(4)仕様の変更等で、タイムコードの配信先が追加/削除された場合は、受信側のみのソフトウェア変更で対処できる。
【0028】
また、上記実施形態では、COM CPU16に接続される大容量素材記録装置に格納される符号化データをGBIT CPU17を介して外部装置に転送することもできるので、符号化データを外部装置に集約して格納しておくこともできる。
【0029】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明に係る映像蓄積装置の一実施形態を示すブロック構成図。
【図2】以前に考えられていた蓄積装置における収録系のタイムコードの配信の様子を説明するために示すブロック図。
【図3】以前に考えられていた蓄積装置における再生系のタイムコードの配信の様子を説明するために示すブロック図。
【符号の説明】
【0031】
11…制御バス、12…WRAPPER CPU、13…共有メモリ、14…MAIN CPU、15…PROXY DSP、16…COM CPU、17…GBIT CPU、18…MPEG2 DEC MODULE、19…MEM CPU、20…AUDIO DSP、21…LCD DSP。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも映像信号を符号化したフレーム構造の符号化データをファイル形式で記録媒体に収録し、再生指示に応じて前記記録媒体から該当するファイルの符号化データを再生する映像蓄積装置において、
前記符号化データの収録処理、再生処理に必要なタイムコードを格納する共有メモリと、
前記符号化データを入力し解析してフレーム毎のタイムコードを生成し、前記タイムコードを前記共有メモリに書き込む制御部と、
収録指示に応じて、前記共有メモリから前記タイムコードを読み出し、当該タイムコードに基づいて前記符号化データの前記記録媒体への収録処理を実行する収録処理部とを具備したことを特徴とする映像蓄積装置。
【請求項2】
前記符号化データの再生指示に応じて、前記共有メモリから前記タイムコードを読み出し、当該タイムコードに基づいて前記共有メモリから前記符号化データの再生処理を実行する再生処理部をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の映像蓄積装置。
【請求項3】
前記記録媒体に格納されている符号化データをファイルごとに外部装置に転送する転送制御部をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の映像蓄積装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−130401(P2009−130401A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299850(P2007−299850)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】