説明

時間特異的遅延/パルス放出剤形

少なくとも1種の有効成分および少なくとも1種の崩壊剤を含むコアと、コアを取り囲み、1種または複数の水溶性または非水溶性のpH非依存性ポリマーから本質的になる密封層と、1種または複数の親水性pH非依存性ポリマーから本質的になる外側被膜とを含み、少なくとも1種の崩壊剤が、コアに対して1〜20重量%の量で存在し、少なくとも1種の有効成分が、コアに対して1〜80重量%の量で存在し、密封層が、コアに対して0.1〜10重量%を占め、外側被膜が、コアに対して5〜500重量%を占める、時間特異的遅延/パルス放出剤形。このような被覆コアは、哺乳動物の胃腸管内で起こる物理的pHの変化とは無関係に、予め規定した遅延時間後に有効成分の即時放出を確実にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、朝に生じる病態を治療するための医薬製剤に関する。具体的な深夜または早朝に生じる病態の例としては、それらだけに限らないが、喘息、狭心症、高血圧症、心筋梗塞または脳梗塞、関節炎、失禁、睡眠障害、パーキンソン病が挙げられる。本発明の遅延/パルス放出製剤により送達される医薬活性剤は、治療する病状または病態に対して有効な有効成分である。
【0002】
特に、本発明は、
・ 少なくとも1種の有効成分および少なくとも1種の崩壊剤を含むコアと、
・ コアを取り囲み、1種または複数の水溶性または非水溶性のpH非依存性ポリマーから本質的になる密封層と、
・ 1種または複数の親水性のpH非依存性ポリマーから本質的になる外側被膜と
を含み、
コアに対して、少なくとも1種の崩壊剤は1〜20重量%の量で存在し、少なくとも1種の有効成分は1〜80重量%の量で存在し、
密封層は、コアに対して0.1〜10重量%を占め、
外側被膜は、コアに対して5〜500重量%を占める
時間特異的遅延/パルス放出剤形に関する。
【0003】
このような被覆コアは、哺乳動物の胃腸管で起こる生理的pHの変化とは無関係に、予め規定した遅延時間後に有効成分の即時放出を確実にすることができる。
【背景技術】
【0004】
時間特異的遅延/パルス放出製剤とは、剤形からの活性剤(または複数の活性剤)の放出が、従来の即時放出製品からの放出よりも後に起こるように変更されている薬物送達システムを意味する。このような遅延/パルス放出製剤からの医薬活性成分のその後の放出は、摂取から所定時間後に放出部位での吸収に即座に利用できるように、薬剤を放出するよう設計されている。あるいは、該システムは、活性物質の一部分が放出部位での吸収に即座に利用でき、別の一部分が摂取から所定時間が経過した後に長期的な放出動態で放出されるように、活性物質の一部分の送達を遅延させるように設計することができる。
【0005】
遅延放出剤形の一般的な定義の中に、胃耐性製剤(腸溶性とも呼ばれる)が含まれる。しかし、胃耐性剤形では、薬物放出の遅延は、胃で示すpH1〜2から十二指腸環境のpH6.8へと変化するpH変化により制御される。実際、胃耐性被膜は、pH依存溶解性を有するポリマー、特にpH5.5以下で不溶性のポリマーで通常調製される。したがって、被覆層は、pH5.5以下では不浸透性でコアが胃内で薬物を放出するのを防ぎ、pH5.5以上では溶解して体液がコアに浸透できるようにし、したがって十二指腸内での薬物放出を可能にする。
【0006】
パルス放出剤形は、活性物質(複数可)の連続放出を示す調節放出剤形である(欧州薬局方6.0)。連続放出は特別な製剤設計および/または製造方法により実現され、ある特定の仕方では、所定の休止期を経過した後にのみ放出を生じさせることができる。
【0007】
本発明では、遅延/パルス放出とは、in vitro(試験管内)での溶出媒体のpHやin vivo(生体内)での胃腸管によるpHとは無関係に、薬物放出のない休止期、次いで薬物の急放出に存する、特定のin vitro放出プロファイルを意味する。
【0008】
本発明の医薬製剤に含まれていてもよい具体的な医薬活性剤の例としては、それだけに限らないが、抗喘息薬、抗高血圧薬、抗凝固剤、抗血小板薬、抗パーキンソン病薬、鎮静剤、抗不安薬、抗コリン剤および抗痙攣薬、バソプレッシン誘導体、ペプチド、ならびに生体高分子剤が挙げられる。
【0009】
遅延/パルス放出システムは、比較的新しい部類の改変された薬物送達デバイスであり、興味のある話題である。
【0010】
最適な薬物送達パターンの実現は、放出の速度と時間との両方の同時制御に依存する場合が多い、総合技術および生理学的/薬物動態学的アプローチを必要とすることがある。詳細には、時間的に調節された経口薬物送達システムは、パルス放出の原理を含む他に、それらが、特にG.I.(胃腸管)の領域で部位特異的薬物送達をもたらすのに有用と見なされているため、重要な研究分野となった。この点において、特に関心があるのは、薬物の放出を防ぐプログラムされた遅延期後の結腸での薬物放出の時間を調節するために、小腸通過時間の相対的な恒常性を使用する、結腸を標的とした薬物送達システムである。
【0011】
多くの生物学的過程および病態での時間的リズム(例えば、概日性)の役割および影響は、当然、このようなリズムの時間パターンを反映する治療法で必要なものとして周知である。この種のアプローチを必要とする病態の例としては、虚血性心疾患、喘息、関節炎、睡眠障害および疼痛を挙げることができる。他方では、例えば、炎症性腸疾患等の治療の必要性に取り組むためか、またはより好ましい吸収窓口を標的とすることにより薬物の経口による生物学的利用能を改善するために、胃腸管の特定の部位に薬物を送達することに対する関心が高まっている。これは、低濃度の酵素活性により結腸領域の攻撃性の低い環境に遭遇するペプチドおよびタンパク質薬の場合である。したがって、経口投与後に所定の時間および/または部位で薬物を放出することができるシステムの開発について、有力な原理が一般的に受け入れられている。(非特許文献1参照)
本発明の送達システムの目的は、1種または複数の親水性ポリマーで被覆され、薬物放出の開始前にプログラムされた休止期をもたらすように設計されている、急速放出コアに存する。薬物放出は、高度の部位特異性を確実にするように、時間依存性およびpH非依存性となるように設計されている。
【0012】
被覆した投与単位の製剤設計は、急速放出コアが、生理学的水性液で外側の高分子層を浸食および/または溶解するために必要とする時間継続するプログラムされた遅延期間後に、その元の薬物放出パターンを保持することが確実でなくてはならない。
【0013】
これらのシステムは、経口投与の2〜3時間後、例えば特定の夜間または患者の覚醒前に有効な血中濃度を必要とする治療法に推奨される。さらに、設計の適切な変更および遅延期の持続時間の制御を介して、胃腸管(例えば)結腸内の特定の部位への送達を実現することができる(例えば、非特許文献2参照)。
【0014】
実際に、多くの利用可能なシステムは、pH依存特性を有するポリマーで被覆されている薬物含有コアからなる。このようなポリマーは、胃から大腸にかけてpHがコンスタントに上昇するという仮説を利用するために、その化学的性質により、pH6から7以下で不溶性であり、それより高いpHで可溶性であるように設計されている。したがって、該単位の被膜は、その完全性を保持し、したがって胃および小腸を通過する間の活性剤の放出を防ぎ、次いで結腸に到着したときに溶解することが想定される。しかし、ヒト胃腸管に沿ったpHプロファイルは、推定勾配に従っていない。
【0015】
したがって、pH7以上で溶解する被膜に関しては、剤形が結腸ではなく回腸で放出し始める可能性があるという理にかなった危険性があり、小腸内で原型を保つ場合はさらに問題が多い。実際に、炎症性腸疾患(IBD)を有する患者における結腸腔内環境のpH値は、健常志願者と比較したとき、有意に低下しており、保護フィルムのトリガー機構を損なうことが証明された(例えば、非特許文献3参照)。pH依存性製剤が生物活性剤を放出し始めることができる場所についてはpH環境に由来する不確実性がある。pH依存性ポリマーに基づく遅延/パルス放出システムの限界を克服するために、親水性のpH非依存性ポリマーに基づく代替の被覆システムが開発された。遅延は、薬物含有コア上に施された親水性ポリマー層の水性液との緩やかな相互作用に基づくものである。
【0016】
親水性被膜は、スプレーコーティングおよび粉末積層等の公知の技法を用いて施すことができる。スプレーコーティングが用いられるとき、ポリマー(複数も可)を水溶液中に溶解し、それを、それだけに限らないが流動床または被覆パンを含む任意の適切な被覆装置によりコア上にスプレーする。
【0017】
あるいは、高分子被覆層は、粉末積層によりコア上に施される。この技法は、液体結合剤を連続的または交互にスプレーすることによる、粉末状高分子被覆混合物の固体薬物含有コア上への積層プロセスに依存する。プロセス中、コア表面に結合剤溶液をスプレーし、それにより粉末状高分子被膜のコア上への接着を促進する。適切な液体結合剤としては、従来の医薬として許容できる結合剤、例えば適切な溶媒中の高分子物質の溶液を挙げることができる。
【0018】
該投与単位が生理液と接触すると、親水性層が膨張し始める。ポリマーと水性媒体との緩やかな相互作用は、ガラスゴム転移を介してゲルの形成に至り、結果、厚みが増す。ゲル層は、高分子成分および高分子組成物の両方の特性に応じて、徐々に浸食し、かつ/または十分に透過性になる。これは、元の層厚の関数として遅延期の持続時間を決定する。溶媒とポリマーとの間の相互作用は、浸食面および膨張面の移動により追跡し得る。この点において、ゲル層の必然的な最小厚と共に、その急速な同時進行は、薬物放出パターンが関係している限りでは、所望のバースト効果またはパルス効果を実現するための主な要件を表している。
【0019】
薬物放出の遅延期の持続時間は、コア上に積層された親水性のpH非依存性ポリマーの厚さを調節することにより変えることができる。
【0020】
残念なことに、親水性のpH非依存性ポリマーは、コアと相互作用し、薬物の溶出を減速させるマトリックス効果を生み出すことがある。概日周期に従って送達する必要がある多くの薬物に関しては、プログラムされた遅延時間が経過した直後に放出が起こることが望ましい場合が多いため、被覆されていないコアと同じ崩壊性を依然として有する被覆コアを製剤することが必須である。したがって、適切なピーク血漿濃度に達するためには、時間非依存性およびpH非依存性の遅延薬物送達システムの望ましい特性は、外側の親水性層が完全にまたは部分的に浸食された時点での薬物の即時放出である。
【0021】
薬物を、異なる放出挙動を示す異なる種類の単位(ペレットA、B、C)に分け、同時に投与されるようにまとめた、パルス放出剤形(錠剤またはカプセル)が記載されている(例えば、特許文献1参照)。特に、ペレットAは、即時放出剤形である。延長放出部分(ペレットB)は、薬物含有コアを不溶性ポリマー(主にエチルセルロース)に基づき、孔形成剤として親水性ポリマーを含有する不透過性膜で被覆することにより得られる。不溶性フィルムの被覆における親水性ポリマーの存在により、水性液がコアに浸透することができ、薬物の徐放出が可能となる。薬物の遅延放出(ペレットC)は、薬物含有コアをpH感受性物質(メタクリル酸コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セラック、ゼインおよび他の腸溶性ポリマー)に基づくpH依存性フィルムで被覆し、したがってpHに依存した方法により薬物の放出の遅延を制御することにより得られる。
【0022】
二重放出剤形、例えば遅延放出ビーズと共に送達される即時放出単位からなる多層錠剤または多層カプセルからなる、パルス放出剤形が記載されている(例えば、特許文献2参照)。遅延放出単位は、不透過性膜を薬物に施すことにより調製される。被覆層は、被膜の浸食または透過性の増加により、しばらくすると薬物に対して透過性になる。不透過性層は、不溶性ポリマーと可溶性ポリマーとの混合物を用いて、フィルムを徐々に水和できるように組成物を調整することにより調製される。あるいは、被膜は、第4級アンモニア基を有する、エチルセルロースとメタクリレートとのコポリマー等の物理的に非相溶性のポリマー、または疎水性で浸食性の親油性物質(例えばカルナバワックス、水素化油)に存し、これは水性体液の内層への浸透を遅延させる。適当な界面活性剤を被覆コアに加えることにより、遅延の持続時間を制御できる。
【0023】
主にセルロースエーテルに基づく親水性のpH非依存性ポリマーで連続的に被覆される迅速崩壊コアで作られる、遅延放出錠剤の製造方法が教示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0024】
迅速崩壊性は、発泡を起こす特性を有する崩壊促進剤の存在により保証される。
【0025】
適切な崩壊促進賦形剤の具体的な例としては、有機酸、酸無水物、酸性塩および炭酸塩から選択される酸性賦形剤が挙げられる。
【0026】
前記の酸性賦形剤と炭酸塩との組合せは、発泡を起こし、コアが水と接触すると、バースト効果を発揮し、コアからの薬物の即時放出を促進して、セルロースエーテルの残量により誘発されて生じ得る任意のマトリックス効果を克服することが明白である。
【0027】
しかし最終的な結果が期待できるにしても、この解決策は、錠剤化のプロセスを非常に低い湿度水準で行い、コアの早期崩壊現象を回避することを必要とする。さらに、発泡性混合物を含有するコアは、水性被覆に使用される水と接触したときに、被覆コアの表面上でガス形成が起こるのを回避するために、有機溶媒系のシステムにより通常被覆される。
【0028】
さらに、多量の酸性賦形剤および炭酸塩が、薬物のバースト放出を確実にするために必要な発泡を起こすのに必要である。したがって、コアの重量およびサイズが大きくなり、したがってより長い被覆期が必要となり、プロセスの生産性が低下する。
【0029】
特許文献3の限界を克服するために、考案者等は、発泡を起こすことができる崩壊促進賦形剤を公知の崩壊剤で代用することができた。被覆は、スプレーコーティングおよび粉末積層等の任意の適切な技法により行うことができる。
【0030】
しかし、外側被膜が、親水性セルロースエーテルの水溶液をスプレーすることによりコア上に積層されると、遅延被覆層でいくつかの亀裂現象が認められ、最終生成物の遅延放出特性という考慮すべき結果を伴った。亀裂現象は、崩壊剤が、不十分な乾燥条件により、被覆プロセス中に過剰量の水溶液と接触したときに誘発されるコアの急速な膨張により生じた。より正確には、スプレーコーティング技法の場合、水は親水性ポリマーが可溶化された被覆溶液から生じたのに対して、粉末積層の場合、水はコアの表面に粉末形態で親水性ポリマーを接着することを促進するために使用される結合剤溶液から生じた。特に、粉末積層プロセスの最初の段階で、粉末の接着および次の積層プロセスを開始するために、液体結合剤のスプレーによりコア表面が過度に濡らされる可能性がある。錠剤コア表面の変化は、厚さ、密度という点で、したがって遅延効率特性という点で、以下の層状の被膜の均一性を弱めることが判明した。
【0031】
亀裂形成の可能性を減少させるために、1つは、プロセスの長期化を招く、被覆溶液(スプレーコーティングプロセス)もしくは結合剤溶液(粉末積層プロセス)のいずれかのスプレー速度を低下させるか、または薬物分解の危険性をもたらすことになる処理温度の上昇を行なわなくてはならない。あるいは、有機溶媒を単独でまたは水と混合して利用することが可能であるが、コスト、安全性および環境汚染に対する欠点を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】国際公開第01/13895号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開第1064937号明細書
【特許文献3】米国特許第5788987号明細書
【非特許文献】
【0033】
【非特許文献1】Sangalli M.E. et al. In Vitro and in vivo evaluation of an oral system for time and/or site-specific drug delivery, Journal of Controlled Release 2001 73:1 (103-110)
【非特許文献2】Gazzaniga A. et al. Time-controlled oral delivery systems for colon targeting, Expert Opinion on Drug Delivery 2006 3:5 (583-597)
【非特許文献3】Fallingborg, J et al. Very lowe intraluminal colonic pH in patients with active ulcerative colitis. Dig Dis Sci, 38 (1993) 89-93
【非特許文献4】Elie R., Zaleplon is effective in reducing time to sleep onset, European Neuropsychopharmacology, Volume 9, Supplement 5, September 1999, pp. 361-361 (1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
したがって、当技術分野の現状を包含する新しい遅延/パルス放出薬物送達システムを開発することが必要とされている。
【0035】
特に、新しい提示は、1種または複数の薬物を含有するpH非依存性の遅延放出コアの製造を確実にしなくてはならない。1種または複数の親水性ポリマーで被覆された後のこのようなコアは、被膜が水性媒体により浸食または溶解された時点で、薬物の迅速な放出をやはり確実にすることができる。そこで、被膜は水性であることが好ましく、親水性ポリマーは1種または複数のセルロースエーテルで作られており、コアは1種または複数の崩壊剤を含有している。特に、急速崩壊コアは、水性被覆プロセスに耐えるのに適した機械抵抗を有していなくてはならない。
【0036】
使用する被覆プロセスが、水性であることが好ましいが、有機溶媒を水との任意の組合せで使用して、処理時間を短縮してもよい。
【0037】
本発明の目的は、2つの連続層で急速崩壊コアを被覆することにより達成された。以下でアンダーコートとして定義される内層はコアを密封するのに対して、外層は遅延放出機能を果たす。
【0038】
密封は、水性溶媒もしくは有機溶媒、またはそれらの混合物を用いるスプレー技法により行うことができる。水性システムが好ましい。内層および外層の両方が、pH非依存性ポリマーで作られる。アンダーコートは、所望の遅延放出を確実にする機能性被膜の積層中にコア内での崩壊剤の任意の早期膨張を防ぐように設計されている。
【0039】
アンダーコートは、外層が水性媒体により溶解および/または浸食された時点では、コアの即時放出特性を修正していない。
【課題を解決するための手段】
【0040】
新規の時間特異的遅延/パルス製剤により好都合に送達することができる有効成分の中には、睡眠障害の治療のための短時間作用型催眠薬がある。このような有効成分は、催眠作用、鎮静作用、抗不安作用、筋弛緩作用および抗痙攣作用を誘発することができ、全睡眠時間を延長するか、または覚醒症状出現の回数を減少させる際に使用してもよい。
【0041】
このような化合物の例としては、ピラゾロピリミジン類、シクロピロロン類、イミダゾピリジン類、ベンゾジアゼピン類、フェノチアジン類が挙げられる。
【0042】
特に、催眠有効成分の中で、ピラゾロピリミジン化合物であるザレプロンは、ピーク濃度までの時間(t max)約1時間で急速に吸収され、最終相の排出半減期(t 1/2)約1時間で急速に排出されるため、本発明による時間特異的遅延/パルス放出経口製剤で送達されるモデル候補と見なすことができる。
【0043】
ザレプロンは、その薬物動態のため、就寝時に摂取した即時放出経口剤形により送達したとき、早期覚醒の症状が通常起こる早朝の時間帯に治療上ピークの血漿濃度には到達しない。
【0044】
直接の結果として、その分子は、全睡眠時間を増加することもなく、覚醒回数を減少させることもない。逆に、ザレプロンは、入眠までの時間(TSO)を短縮するのに有効であることが証明されており、睡眠を開始または維持する上での障害を治療するためにその分子を使用する可能性が示唆されている(例えば、非特許文献4参照)。
【0045】
したがって、就寝時に摂取すると、早朝の時間帯に睡眠障害を治療するのに治療上有効なピーク血漿濃度を確保することができる、時間特異的遅延放出経口剤形に有効成分を含むことが必要である。さらに、覚醒時間中に持ち越し作用を誘発する危険性を回避するために、プログラムされた遅延時間が経過した時点で、ザレプロンが急速に放出されることが極めて重要である。このことは、外側の機能性で親水性の高分子層が、体液により溶解および/または浸食された時点で、本発明のコアにより確保される急速崩壊性により、得ることができる。
【0046】
しかし、他の有効成分も、本発明の教示に従って好都合に送達することができる。非限定的なリストとしては、アミノ酸、ペプチド、酵素、ホルモン、抗感染薬、抗痙攣薬、中枢神経系興奮薬、コリン作用薬および抗コリン作用薬、抗パーキンソン病薬、抗ヒスタミン薬、β2アドレナリン受容体作動薬、抗喘息薬、抗炎症鎮痛剤、心臓血管薬が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1のザレプロン10mgの非被覆錠剤の溶出プロファイルである。
【図2】実施例1のザレプロン10mgの遅延放出錠剤の溶出プロファイルである。
【図3】実施例2のザレプロン10mgの遅延放出錠剤の溶出プロファイルである。
【図4】実施例3のザレプロン10mgの非被覆錠剤の溶出プロファイルである。
【図5】実施例3のザレプロン10mgの遅延放出錠剤の溶出プロファイルである。
【図6】実施例4のザレプロン10mgの遅延放出錠剤の溶出プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
コアの製造
時間特異的製剤のコアは、錠剤もしくはミニタブレット(即ち、直径1.5mm〜3.0mmの範囲の円筒状の錠剤)、またはペレット(直径300〜2000μmの回転楕円体を含有するコア)の形態とすることができる。各コアは、1種または複数の有効成分だけでなく、少なくとも1種の崩壊剤および公知の錠剤化(およびペレット用、ペレット化用)補助剤、例えばそれだけに限らないが可溶性または不溶性の充填剤、結合剤、流動促進剤、凝固阻止剤、緩衝剤、保存料、抗酸化剤、界面活性剤、キレート剤、潤滑剤等を含有する。
【0049】
本発明で使用するのに適した崩壊剤は、以下に要約されている、様々な部類、またはそれらの混合物から選択することができる:
改質セルロース、例えば架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム;架橋ポリビニルピロリドン、例えばクロスポビドン;天然デンプン、例えばトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン;直接圧縮可能なデンプン、例えばデンプン1500;改質デンプン、例えばカルボキシメチルデンプンおよびグリコール酸デンプンナトリウム;デンプン誘導体、例えばアミロース、アルギン酸およびアルギン酸ナトリウム。
【0050】
架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびクロスポピドンが好ましい崩壊剤である。
【0051】
通常、非被覆コアを1杯の水に入れた後5分以内に、その完全な崩壊が起こる。崩壊性も、可溶性および不溶性の充填剤の存在によりおよびその重量比により好都合に変更できる。
【0052】
不溶性賦形剤は、微結晶性セルロース、三塩基性リン酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウムおよび第二リン酸カルシウムからなる群から選択することができる。無水第二リン酸カルシウムまたは水和第二リン酸カルシウムのいずれかが好ましい。
【0053】
可溶性賦形剤は、ラクトース、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、アミロース、デキストロース、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、様々な分子量のポリエチレングリコール、可溶性ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、スクロースからなる群から選択することができる。
【0054】
非被覆コアの重量に対して、少なくとも1種の有効成分は、約1〜80%、好ましくは5〜50%の量で存在し、少なくとも1種の崩壊剤は、0.5〜20%、好ましくは1〜10%の量である。
【0055】
錠剤化すべき混合物のレオロジー特性に応じて、コアは、直接圧縮、乾式造粒、湿式造粒、溶融造粒等の任意の公知の技法により調製することができる。
【0056】
錠剤に関して記載されているのと同じ製剤により調製したペレットコアは、押出球形化、直接ペレット化、薬物積層等の任意の公知の技法により得ることができる。
【0057】
本発明の別の実施形態では、コアは、薬物のパルス放出を確実にするように設計された多層錠剤であってよい。この方式は、プログラムされた遅延時間を経過した後、1日1回の用量で様々な溶出速度で送達する必要がある薬物について考えられている。
【0058】
2層錠剤の場合、この目標は、用量を2つの部分、即ち、崩壊剤を含む層中の即時放出部分と放出制御を与える賦形剤を含む層中の調節放出部分に分けることにより達成することができる。あるいは、異なる有効成分を1つの別の錠剤層に各々含むことができる。
【0059】
持続放出を与える(特に、多層錠剤の場合)賦形剤には、アルキルセルロース、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースに属するポリマー、およびポリビニルピロリドン、コポビドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールコポリマー、ポリビニルアセテート、ポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート)2:1、ポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート、トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド)1:2:0.2、ポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート、トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド)1:2:0.1、架橋ポリアクリル酸誘導体、天然ゴム、例えばキサンタンガムからなる群から選択されるポリマーがある。
【0060】
あるいは、放出制御は、ワックス状の賦形剤単独でまたは前記ポリマーとの組合せで確実にすることができる。
【0061】
適切な賦形剤の非限定的なリストとしては、ステアレート、グリセリルエステル、ワックス(カルナバ、セチルエステル、微結晶)を単独で、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0062】
本実施形態は、例えばそれだけに限らないが、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤などの心臓血管薬、および抗炎症鎮痛剤を送達するのにも有効である。ACE阻害剤の中では、ラミプリルは、急速に吸収および排出されるため、1日1回の用量の投与が24時間を賄うために必要とされるとき、抗高血圧薬の分野でのモデル候補と見なすことができる。このような場合、就寝時に摂取したパルス製剤は、早朝の時間帯(即ち、血圧レベルが、最大強度に達するとき)に薬物をバースト放出し、1日中血圧制御の維持に寄与する薬物の徐放出を伴うことを確実にすることができる。
【0063】
同じ薬物動態の理由で、抗炎症鎮痛剤の中で、オキシカム誘導体であるロルノキシカムは、1日1回の用量で2つの異なる溶出速度(即ち、即時放出および調節放出)で有効成分を放出することができる2層錠剤により好都合に送達することができる。
【0064】
コアの密封(アンダーコート)
アンダーコートは、本質的に1種または複数のpH非依存性の水溶性および/または非水溶性ポリマーからなる。これは、このようなポリマーが、アンダーコートの主な成分であるが、それにもかかわらず少量の賦形剤または補助剤をさらに含有することができ、しかしその含量は、アンダーコート自体の20重量%、好ましくは10重量%を超えないことを意味する。このようなポリマーは、水性溶媒もしくは有機溶媒またはそれらの混合物を用いて、被覆パンまたは流動床中で高分子溶液または高分子分散液をスプレーすることによりコア上に積層される。
【0065】
アンダーコートは、水性環境で積層されることが好ましい。
【0066】
ポリマーは、ポリビニルピロリドン、コポビドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールコポリマー、ポリビニルアセテート、ポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート)2:1、ポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート、トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド)1:2:0.2、ポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート、トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド)1:2:0.1、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテート、カルボキシメチルセルロース等のセルロース(アルキルセルロース)のエーテル、それらの誘導体およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0067】
低分子量のアルキルセルロースは、好ましいポリマーである。このようなセルロースエーテルは、異なる見掛け粘度および置換度で多数の様々な等級で商品化されている。セルロースエーテルは、2から100mPas(2%水溶液、20℃)、好ましくは2から45mPas、さらにより好ましくは2から20mPasの範囲で変化する見掛け粘度を有する。好ましいセルロースエーテルは、19〜30、好ましくは28〜30(メトキシル基)および7〜12(ヒドロキシプロピル基)の間に及ぶ置換度(%)を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0068】
追加の機能性被覆賦形剤、例えば固着防止剤、可塑剤、ワックス、界面活性剤、顔料、孔形成剤、pH調整剤、緩衝剤等は、高分子フィルムの一部であってよい。
【0069】
通常、アンダーコートは、固体物質により決定したとき、0.1から10%の間、好ましくは0.5から5%の間の出発コアの重量増加を実現するために積層される。例えば、非被覆コアは各々100mgであり、アンダーコートが5%の重量増加として表されると仮定すると、密封コアが各々105mgの重量に達することを意味している。アンダーコートは、非被覆コアの崩壊特性が修正されないように設計される。
【0070】
本発明の好ましい実施形態により、密封層は、水溶性がpH依存性である任意のポリマーを含有していない。
【0071】
遅延放出被膜
密封コアは、1種または複数の親水性のpH非依存性ポリマーを含む高分子フィルムで被覆される。摂取後、高分子被膜は水和し、体液により完全にもしくは部分的に溶解および/または浸食されるまでコアからの薬物放出を遅延させるゲル様層を形成する。薬物放出は、得られた被膜厚さおよびポリマー混合組成物に応じて、所定時間後に起こる。
【0072】
この機能性被膜は、被覆層の厚さに応じて、コアからの薬物放出をプログラムされた時間遅延する。
【0073】
「密封層を取り囲み、少なくとも1種の親水性ポリマーから本質的になる外側被膜」という表現は、前記1種または複数のポリマーが、外側被膜の主な成分であるが、それにもかかわらず少量の賦形剤または補助剤をさらに含有することができ、しかし外側被膜自体の20重量%、好ましくは10重量%を超えないことを意味する。
【0074】
被覆は、水性溶媒もしくは有機溶媒またはその混合物を用いて、被覆パンまたは流動床中でコアにポリマー溶液またはポリマー分散液をスプレーすることにより行われる。アンダーコートは水性環境で積層されることが好ましい。
【0075】
あるいは、被膜は、コアに液体結合剤をスプレーし、それに1種または複数の親水性のpH非依存性ポリマーを含む粉末形態での混合物を同時または交互に塗布することにより粉末形態で積層してもよい。
【0076】
適切な結合剤溶液は、適切な溶媒中で可溶化された医薬として許容できる結合剤を含むことができる。水が好ましい溶媒であるが、適切な水性溶媒もしくは有機溶媒のいずれか、またはそれらの混合物の他の例は、当業者により認識されると思われ、本発明の方法により企図されている。
【0077】
結合剤の例としては、それだけに限らないがビニルポリマー、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等、セルロースポリマー、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等、アクリルポリマーおよびアクリルコポリマー、例えばメタクリル酸コポリマー、エチルアクリレート−メチルメタクリレートコポリマー等、天然ゴムまたは合成ゴム、例えばグアーガム、アラビアゴム、キサンタンガム等、ゼラチン、ペクチン、ならびにそれらの混合物が挙げられる。ポリビニルピロリドンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい結合剤である。
【0078】
遅延放出被膜を構成する最適なポリマーには、アルキルセルロース(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース)およびポリエチレングリコールがある。追加の機能性被覆賦形剤、例えば固着防止剤、流動促進剤、可塑剤、ワックス、界面活性剤、顔料、孔形成剤、pH調整剤、緩衝剤等が、機能性高分子フィルム被膜の一部であってよい。ヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましいアルキルセルロースポリマーである。
【0079】
1つの好ましい実施形態では、それらが単独またはブレンドで、5から4000mPasの範囲、好ましくは46から400mPas(2%水溶液、20℃)の範囲の公称粘度、ならびに19〜30、好ましくは28〜30(メトキシル基)および7〜12(ヒドロキシプロピル基)の間に及ぶ置換度%を有する。
【0080】
別の好ましい実施形態では、被膜は、20:1から1:5の間、好ましくは15:1から1:1の間の重量比で、1種または複数のアルキルセルロースをポリエチレングリコールと組み合わせて含み、ポリエチレングリコールは約200から9000、好ましくは約400から6000の範囲の分子量を有する。
【0081】
通常、重量増加%として表される遅延放出被膜のレベルは、固体物質により決定したとき、5から500%の間、好ましくは10から200%の間の範囲で変化することができる。例えば、密封コアは各々105mgであり、アンダーコートが60%の重量増加として表されると仮定すると、非被覆コアが各々168mgの重量に達することを意味している。
【0082】
本発明の好ましい実施形態により、外側被膜は、水溶性がpH依存性であるポリマーを含有していない。
【0083】
本発明は、以下の非限定的な実施例によりさらに例示される。
【実施例1】
【0084】
(比較例)
コアの製造
ザレプロン10mgの非被覆錠剤(ロットp−06−031)4Kgのバッチを直接圧縮により製造した。
【0085】
定性的−定量的処方は表1に示されている。
【0086】
【表1】

【0087】
すべての成分を710μmのふるいにかけた。成分1から7を12Lの立方体型ブレンダー中で15rpmにて25分間混合し、次いで成分8を加え、該混合物をさらに5分間回転させた。最終混合物を、直径6mmおよび曲率半径6mmを有する円形の凸パンチを用いる回転錠剤形成機で9KNにて圧縮した。プロセスの最後で、各々116mgである錠剤3.6Kgが得られた。
【0088】
主な物理的−技術的特性は表IIに示されている。
【0089】
【表2】

【0090】
非被覆錠剤(ロットP−06−031)をin vitro溶出分析にかけた(UV=232nm)。
【0091】
結果は図1に示されており、それは溶出曲線の即時および急激な上昇を示しており、錠剤が水性媒体と接触すると直ちに崩壊し、活性剤を即座に放出することを示している。
【0092】
遅延放出被膜
非被覆コア(ロットP−06−031)1.8Kgをサイドベント被覆パンに充填し、10:1の重量比でヒドロキシプロピルメチルセルロース(タイプ2910)50mPasおよびポリエチレングリコール(タイプ400)の6.6%w/w水溶液をスプレーした。被覆は、174mgの錠剤重量に対して錠剤総重量の50%の重量増加が、達成されるまで継続した。
【0093】
表IIIには、処理条件が示されている。
【0094】
【表3】

【0095】
プロセスの最後で、被覆生成物を観察すると、相当数の錠剤で被膜表面に溶出動態に影響を及ぼすこともある亀裂線を示していた。
【0096】
被覆錠剤(ロットP−06−032)をin vitroでの溶出分析(UV=232nm)にかけた。結果は図2に要約されている。
【0097】
図2は、錠剤により溶出プロファイルが広範に変動することを示している。薬物放出の開始は、約15分(容器#2)から約60分(容器#1)の範囲で起こった。被膜表面上で認められた亀裂線により、被覆層により誘発される遅延放出特性が激しく変動したことが明らかであった。
【実施例2】
【0098】
コアの密封
ザレプロン10mgの非被覆錠剤(ロットP−06−031)の残り1.8Kg(製造の詳細については実施例1参照)をサイドベント被覆パンに充填し、10:1の重量比でヒドロキシプロピルメチルセルロース(タイプ2910)5mPasおよびポリエチレングリコール(タイプ400)の6.6%w/w水溶液をスプレーした。被覆は、119.5mgの錠剤重量に対して錠剤総重量の3%の重量増加が、達成されるまで継続した。被覆条件は表IVに示されている。
【0099】
遅延放出被膜
次いで密封被覆に用いたのと同じ装置を用いて10:1の重量比でヒドロキシプロピルメチルセルロース(タイプ2910)50mPasおよびポリエチレングリコール(タイプ400)の6.6%w/w水溶液で密封コアを被覆した。被覆は、179.2mgの錠剤重量に対して錠剤総重量の50%の重量増加が、達成されるまで継続した。被覆条件は表IVに示されている。
【0100】
【表4】

【0101】
プロセスの最後で、被膜に変質がないことが分かった。被覆錠剤(ロットP−06−033)をin vitroでの溶出分析(UV=232nm)にかけた。
【0102】
結果は図3に要約されており、これは本発明に従って製造した6つの錠剤すべてが、分析したすべての単位について約45〜55分の範囲で開始する急速な溶解動態と関連した溶出プロファイルの変動幅の狭いことにより特徴付けられる。
【0103】
さらに、システムが薬物放出を開始した時点で、遅延放出錠剤の溶解動態は、対応する非被覆錠剤のそれと依然として重ねあわすことができると思われるため、マトリックス効果は認められないとすることができる(図1参照)。
【実施例3】
【0104】
コアの製造
ザレプロン10mgの非被覆錠剤(ロットp−06−034)25Kgを表Iに示したと同じ成分を用いて直接圧縮により製造した。
【0105】
すべての成分を710μmのふるいにかけた。成分1から7を90Lのタンブラーブレンダーで10rpmにて25分間混合し、次いで成分8を加え、該混合物をさらに5分間回転させた。最終混合物を、直径6mmおよび曲率半径6mmを有する円形の凸パンチを用いる回転錠剤形成機で9KNにて圧縮した。プロセスの最後で、各々115mgである錠剤22Kgが得られた。
【0106】
主な物理的−技術的特性は表Vに示されている。
【0107】
【表5】

【0108】
非被覆錠剤(ロットP−06−034)をin vitroでの溶出分析にかけた(UV=232nm)。
【0109】
結果は図4に示されており、それは溶出曲線の即時および急激な上昇を示しており、錠剤が水性媒体と接触した時点で直ちに崩壊し、活性剤を即座に放出することを示している。
【0110】
遅延放出被膜
結合剤溶液として、ヒドロキシメチルセルロース(タイプ2910)50mPas(94.0%)、タルク(4.5%)および二酸化シリコン(1.5%)を含有する粉末混合物を塗布するか、あるいは重量比10:1でヒドロキシプロピルメチルセルロース(タイプ2910)50mPasおよびポリエチレングリコール(タイプ400)の6.6%w/w水溶液をスプレーする粉末積層技法により、錠剤(P−06−034)10Kgのバッチを被覆した。被覆プロセスは、180.0mgの錠剤重量に対して錠剤総重量の50%の重量増加が達成されるまで継続した。遅延放出被膜に関する処理条件は表VIに要約されている。
【0111】
【表6】

【0112】
プロセスの最後で、層状被膜の顕著な体積変化が見られた。被覆錠剤(ロットP−06−035)をin vitroでの溶出(UV=232nm)にかけた。
【0113】
結果は図5に要約されており、錠剤により溶出プロファイルが広範に変動することを示している。薬物放出の開始は、約15分(容器#4)から約54分(容器#3)の範囲で起こった。被膜表面上で認められた亀裂線により、被覆層により誘発される遅延放出特性が激しく変動したことが明らかであった。
【実施例4】
【0114】
コアの密封
ザレプロン10mgの非被覆錠剤(ロットP−06−034)10Kgのバッチを従来の被覆パンに充填し、10:1の重量比でヒドロキシプロピルメチルセルロース(タイプ2910)5mPasおよびポリエチレングリコール(タイプ400)の6.6%w/w水溶液をスプレーした。被覆は、118.5mgの錠剤重量に対して錠剤総重量の3%の重量増加が、達成されるまで継続した。
【0115】
遅延放出被膜
次いで、結合剤溶液として、ヒドロキシメチルセルロース(タイプ2910)50mPas(94.0%)、タルク(4.5%)および二酸化シリコン(1.5%)を含有する粉末混合物を塗布するか、あるいは重量比10:1でヒドロキシプロピルメチルセルロース(タイプ2910)50mPasおよびポリエチレングリコール(タイプ400)の6.6%w/w水溶液をスプレーする粉末積層技法により、密封コアを被覆した。被覆は、約180mgの錠剤重量に対して錠剤総重量の50%の重量増加が、達成されるまで継続した。
【0116】
【表7】

【0117】

プロセスの最後で、被膜に変質がないことが分かった。被覆錠剤(ロットP−06−036)をin vitroでの溶出分析(UV=232nm)にかけた。
【0118】
結果は図6に要約されており、それは本発明に従って製造した6つの錠剤すべてが、分析した各単位について約45〜55分の範囲で開始する急速な溶解動態と関連した溶出プロファイルの変動幅の狭いことにより特徴付けられる。
【0119】
さらに、システムが薬物放出を開始した時点で、遅延放出錠剤の溶解動態は、対応する非被覆錠剤のそれと依然として重ねあわすことができると思われるため、マトリックス効果は認められないとすることができる(図4参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の有効成分および少なくとも1種の崩壊剤を含むコアと、
前記コアを取り囲み、少なくとも1種のポリマーから本質的になる密封層と、
前記密封層を取り囲み、少なくとも1種の親水性ポリマーから本質的になる外側被膜と
を含み、
前記コアに対して、前記少なくとも1種の崩壊剤は0.5〜20重量%の量で存在し、前記少なくとも1種の有効成分は1〜80重量%の量で存在し、
前記密封層は、前記コアに対して0.1〜10重量%を占め、
前記外側被膜は、前記コアに対して5〜500重量%を占める
ことを特徴とする医薬製剤。
【請求項2】
前記密封層および前記外側被膜に含有されるポリマーの水溶性は、pH非依存性であることを特徴とする請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記密封層は、水溶性がpH非依存性である少なくとも1種のポリマーからなり、前記密封層は、それ自体に対して20重量%、好ましくは10重量%を超えない量で賦形剤または補助剤を含有できることを特徴とする請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記外側被膜は、水溶性がpH非依存性である少なくとも1種のポリマーからなり、前記外側被膜は、それ自体に対して20重量%、好ましくは10重量%を超えない量で賦形剤または補助剤を含有してもよいことを特徴とする請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記密封層および/または前記外側被膜は、水溶性がpH依存性であるポリマーを含有しないことを特徴とする請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項6】
前記密封層に含有される前記少なくとも1種のポリマーは、前記外側被膜に含有される前記少なくとも1種のポリマー以外であることを特徴とする請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項7】
前記少なくとも1種の崩壊剤は、前記コアに対して1〜10重量%の量で存在することを特徴とする請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項8】
前記少なくとも1種の有効成分は、前記コアに対して5〜50重量%の量で存在することを特徴とする請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項9】
前記密封層は、前記コアに対して0.5〜5重量%を占めることを特徴とする請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項10】
前記外側被膜は、前記コアに対して10〜200重量%を占めることを特徴とする請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項11】
前記少なくとも1種の崩壊剤は、改質セルロース、天然デンプン、直接圧縮可能なデンプン、改質デンプン、デンプン誘導体および架橋ポリビニルピロリドンから選択されることを特徴とする請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項12】
前記改質セルロースは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムであり、前記架橋ポリビニルピロリドンはクロスポビドンであり、前記天然デンプンはトウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンから選択され、前記直接圧縮可能なデンプンはデンプン1500であり、前記改質デンプンはカルボキシメチルデンプンおよびグリコール酸デンプンナトリウムから選択され、前記デンプン誘導体はアミロース、アルギン酸およびアルギン酸ナトリウムから選択されることを特徴とする請求項11に記載の医薬製剤。
【請求項13】
前記少なくとも1種の有効成分は、催眠薬、鎮静薬、抗不安薬、筋弛緩薬および抗痙攣薬から選択されることを特徴とする請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項14】
前記少なくとも1種の有効成分は、ピラゾロピリミジン類、シクロピロロン類、イミダゾピリジン類、ベンゾジアゼピン類およびフェノチアジン類から選択されることを特徴とする請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項15】
前記少なくとも1種の有効成分はザレプロンであることを特徴とする請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項16】
前記コアは、多層錠剤、好ましくは2層錠剤であることを特徴とする請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項17】
前記密封層の前記少なくとも1種のポリマーは、ポリビニルピロリドン、コポビドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールコポリマー、ポリビニルアセテート、ポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート)2:1、ポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート、トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド)1:2:0.2、ポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート、トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド)1:2:0.1、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテート、カルボキシメチルセルロース等のセルロース(アルキルセルロース)のエーテルからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項18】
前記密封層の前記少なくとも1種のポリマーは、20℃の2重量%水溶液が2mPasから100mPas、好ましくは2から45mPas、さらにより好ましくは2から20mPasの見掛け粘度を有するアルキルセルロースであることを特徴とする請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項19】
前記少なくとも1種のアルキルセルロースは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであることを特徴とする請求項18に記載の医薬製剤。
【請求項20】
前記外層コーティングの前記少なくとも1種の親水性ポリマーは、アルキルセルロースおよびポリエチレングリコールから選択されることを特徴とする請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項21】
前記アルキルセルロースは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースから選択されることを特徴とする請求項20に記載の医薬製剤。
【請求項22】
前記ポリエチレングリコールは、200から9000Da、好ましくは400から6000Daの分子量を有することを特徴とする請求項20に記載の医薬製剤。
【請求項23】
前記外側被膜の前記少なくとも1種の親水性ポリマーは、20℃の2重量%水溶液が5mPasから4000mPas、好ましくは46mPasから400mPasの見掛け粘度を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースであることを特徴とする請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項24】
前記外側被膜は、本質的に1種または複数のポリエチレングリコールと1種または複数のアルキルセルロースの組み合わせからなり、前記アルキルセルロース:ポリエチレングリコールの重量比が、20:1から1:5の間、好ましくは15:1から1:1の間であることを特徴とする請求項1に記載の医薬製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−521437(P2010−521437A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553136(P2009−553136)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052957
【国際公開番号】WO2008/110577
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(503459992)ポリケム・エスエイ (16)
【Fターム(参考)】