説明

曲がりボーリング工法

【課題】後工程の薬液注入による地盤改良に支障を来たすような地山の乱れを生じさせずに削孔できる曲がりボーリング工法の提供。
【解決手段】可撓性のある外管1の中心に同じく可撓性のある内管2を貫通させた二重管式の掘削ロッド22を備え、該掘削ロッド22の先端に前記内管2の先端に連結した掘削ビット5が突設され、前記内管2を通じて掘削用泥水を掘削ビット5先端の噴射ノズル6から噴射されるようになっているとともに、前記外管の先端付近に泥水吸引口8を備え、該泥水吸引口8から前記噴射ノズル6から噴射された掘削用泥水を掘削土砂とともに地上のバキューム9により吸引させ、地表より地中に挿入したガイド管25内を通じて前記掘削ロッド22を地中に挿入自在となし、前記ガイド管25は、その地上側に補助泥水注入路30を連通させ、該補助泥水注入路30からの補助泥水を前記掘削用泥水とともに泥水吸引口8から地上に吸引できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として防波堤や護岸構造物等の港湾構造物下の置き替え砂地盤の液状化防止のための地盤改良に使用する薬液注入作業孔を掘削形成に適した曲がりボーリング工法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、地震時の地盤の液状化防止工法として、地表より地盤中に薬液注入作業孔を形成し、この孔をとおして地盤中に経時的にゲル化する薬液を注入することにより、地震時の土壌間隙水の移動を防止する工法が知られている(例えば特許文献1及び2)。
【0003】
また、この液状化防止工法を、建造物下の基礎地盤においても施工できるように、薬液注入作業孔を対象建造物周囲の地表より、建造物下に向けて斜めに穿孔し、建造物直下において水平方向に向きを変えて穿孔する曲がりボーリング工法が開発されている(例えば特許文献1及び2)。
【0004】
上述した曲がりボーリングは、図8に示す装置が使用されている。この装置は可撓性のある外管1の中心に同じく可撓性のある内管2を貫通させ、内管2の先端に位置検出器ボックス3を連結し、内管2の先端を外管延長方向に導出させ、その先端に可撓性先端ロッド4が連結され、そのロッド4の先端に掘削ビット5が固定されている。
【0005】
掘削ビット5には、図9に示すように片側にテーパ面5aが形成されているとともに、先端に前記テーパ面5と平行な延長方向に向けた掘削用ジェット水噴射ノズル6が備えられ、このノズル6へは、地上の掘削用泥水圧送ポンプ7より、内管2及び先端ロッド4を通してベントナイト溶液からなる掘削用泥水が供給され、該ノズル6から高圧で噴射されるようになっている。この掘削ビット5は、回転させないで押し込むことにより、図9(a)に示すようにテーパ面の延長方向に曲り削孔がなされ、回転させつつ押し込むことにより図9(b)に示すように直進削孔がなされるようになっている。
【0006】
外管1には、ボックス3より後方の位置に掘削用泥水吸引口8が設けられ、外管1の地表側端部からバキューム9により吸引することによって、掘削土砂を含む掘削用泥水を地上に搬出させ、地上の分離タンク(図示せず)にて掘削土砂と掘削用泥水とを分離させ、掘削用泥水を再度内管2を通してノズル6へ送り込むようにしている。また、揚泥を補助する方法として、外管1内のスライムが停滞し易い場所に空気を吹き込み、その上昇力によって揚泥を助ける方法が採られている。
【0007】
このようにして曲り形成された削孔孔を薬液注入作業孔とし、これに図10に示すように薬液注入ホース10を挿入し、該薬液注入ホース10を通じて注入用プラント11から基礎地盤12内に所定間隔毎に薬液を注入し、土壌間隙内に薬液を浸透させることによって、略球状の薬液浸透部13多数連続した配置に造成し、土壌間隙水が移動不能な改良地盤層14を形成することにより液状化を防止している。
【特許文献1】特許第3896369号公報
【特許文献2】特許第3826386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来の曲がりボーリング工法では、掘削土砂を掘削用泥水とともに外管内を通じて搬出させるようにしているものであり、その搬出は、バキュームによる吸引力と掘削用泥水噴射による押上げ力及び注入した空気の浮力によっているが、この種の従来の曲がりボーリング工法では、深度が大きくなったり、地盤中に例えば5〜10mmの粒径の礫を多く含んでいたりする場合には、地上までの揚泥が難しくなるという問題がある。
【0009】
実験によれば、従来のボーリング工法では、深度が最大15m程度の場合にはあまり問題なく掘削土砂の搬出がなされるが、それ以上では揚泥が困難となることが判明した。
【0010】
一方、港湾建造物のように水底の軟弱地盤を置き換え砂層によって安定化させ、その上に建造物、例えばケーソンを設置したような場合においては、置き換え砂として比較的平均粒径の大きい山砂を使用している場合が多く存在し、また、深度も20mを超える大深度となる場合が多く存在している。
【0011】
このような場合、上述したバキュームによる吸引能力が十分な効果を発揮できなくなって揚泥がなされず、削孔によるスライムは、外管の水平部分から上昇に転じる曲がり部分下付近に滞留し、掘削用泥水の戻りラインを閉塞させる。この時、掘削ビットの先端から噴射されている掘削用泥水は、行き場を失い、削孔地山面の弱い部分を走り、逸泥が発生する。
【0012】
この逸泥のラインは地山を割裂し、結果的に液状化対策のための薬液注入前に地盤を過度に乱すこととなる。この液状化対策のための薬液注入は、ゲル化している時間(ゲルタイム)の長い恒久性のある薬液を低圧にて長時間をかけて地盤中に注入することにより、地盤を割裂させずに浸透させ、直径が2〜3m程度の球状の薬液浸透域を並べて形成するものであるが、削孔時に地山に割裂が生じ、逸泥ラインができていると、そこを伝って薬液が散逸し、良好な改良地盤形成が難しくなるという問題がある。
【0013】
本発明はこのような従来の問題に鑑み、従来に比べて深度が大きく、また粒径が10mmに近い礫を含む地盤を削孔する場合であってもスムーズに掘削土砂の搬出が可能となり、しかも削孔孔内の掘削用泥水圧の異常な上昇を防止し、地山を乱すことなく、後工程の薬液注入による地盤改良が良好になされる曲がりボーリング工法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載する発明の特徴は、可撓性のある外管の中心に同じく可撓性のある内管を貫通させた二重管式の掘削ロッドを備え、該掘削ロッドの先端に前記内管の先端に連結した掘削ビットが突設され、前記内管を通じて掘削用泥水を掘削ビット先端の噴射ノズルから噴射されるようになっているとともに、前記外管の先端付近に泥水吸引口を備え、該泥水吸引口から前記噴射ノズルから噴射された掘削用泥水を掘削土砂とともに地上のバキュームにより吸引させ、外管と内管の間の空隙を通して吸引搬出させる曲がりボーリング装置において、
前記外管の外径より大きい内径のガイド管を備え、地表より地中に挿入した前記ガイド管内を通じて前記掘削ロッドを地中に挿入自在となし、前記ガイド管は、その地上側に補助泥水注入路を連通させ、該補助泥水注入路からの補助泥水を前記掘削用泥水とともに泥水吸引口から地上に吸引できるようにしたことにある。
【0015】
請求項2に記載の発明の特徴は、前記請求項1の構成に加え、前記ガイド管の地上側端部を空気圧室とし、該空気圧室には空気圧導入路が連通されるとともに内圧調整器が備えられ、前記ガイド管内に供給させた補助泥水表面に所定の空気圧を作用させることができるようにしたことにある。
【0016】
請求項3に記載の発明の特徴は、前記請求項1又は2のいずれか1の請求項の構成に加え、前記内圧調整器として、前記空気圧室内が設定圧より高圧になったときに空気を排出する圧力調整用減圧弁を使用していることにある。
【0017】
請求項4に記載の発明の特徴は、前記請求項1,2又は3いずれか1の請求項の構成に加え、前記ガイド管の地上突出部分にあって、前記空気圧導入路連通部分と前記補助泥水注入路連通部分との間に泥水レベル検出器を備えたことにある。
【0018】
請求項5に記載の発明の特徴は、可撓性のある外管の中心に同じく可撓性のある内管を貫通させた二重管式の掘削ロッドを備え、該掘削ロッドの先端に前記内管の先端に連結した掘削ビットが突設され、前記内管を通じて掘削用泥水を掘削ビット先端の噴射ノズルから噴射されるようになっているとともに、前記外管の先端付近に泥水吸引口を備え、該泥水吸引口から前記噴射ノズルから噴射された掘削用泥水を掘削土砂とともに地上のバキュームにより吸引させ、外管と内管の間の空隙を通して吸引搬出させる曲がりボーリング装置を使用し、掘削ロッドの外管の外径より大きい内径のガイド管を地表より前記掘削ロッドの直進掘削方向に向けて地中に挿入し、該ガイド管内を通じて前記掘削ロッドを地中に挿入することにより地表面からの直進削孔を行い、前記ガイド管の下端より深い位置の削孔に際し、前記ガイド管内にその上端側より補助泥水を該ガイド管内に注入しつつ前記掘削ビットのノズルからの掘削用泥水を噴射させて削孔を行い、前記泥水吸引口から噴射された掘削土砂を含む戻り掘削用泥水と前記補助泥水とをともに前記泥水吸引口から吸引搬出させる曲がりボーリング方法にある。
【0019】
請求項6に記載の発明の特徴は、前記請求項6の構成に加え、前記ガイド管の上端部に空気圧室を備え、該空気圧室内を大気圧より高い所定の空気圧に維持させることにより、削孔孔の地山面に該地山面における地下水圧より高い圧力を印加させつつ前記ガイド管より深い位置の削孔を行うことにある。
【0020】
請求項7に記載の発明の特徴は、前記請求項6の構成に加え、前記ガイド管内の補助泥水水位を該ガイド管の地上突出部分の所望の高さ範囲に維持させつつ前記削孔を行うことにある。
【発明の効果】
【0021】
本発明における曲がりボーリング装置では、前記外管の外径より大きい内径のガイド管を備え、地表より地中に挿入した前記ガイド管内を通じて前記掘削ロッドを地中に挿入自在となし、前記ガイド管は、その地上側に補助泥水注入路を連通させ、該補助泥水注入路からの補助泥水を前記掘削用泥水とともに泥水吸引口から地上に吸引できるようにしたことにより、外管内の泥水戻り量、即ちバキュームによる泥水吸引量を掘削のために噴射させた掘削用泥水量より多いものとでき、このため外管内における掘削土砂の搬送能力(揚泥能力)が大きくなり、戻りライン中のスライムの停滞がなくなり、高深度や礫分の多い砂質地盤における曲がりボーリングにおいても、地山を乱さず、後工程の薬液注入による地盤改良に支障を来たすことのない削孔がなされる。
【0022】
また、ガイド管内の補助泥水面を地表に近い高さに維持した状態で揚泥が可能となるため、バキュームによる揚泥の水頭差が小さくなり、バキュームの可動効率をあげることができ、大深度であっても高い揚泥能力が発揮できる。
【0023】
更に、ガイド管の地上側端部を空気圧室とし、該空気圧室には、空気圧導入路が連通されるとともに内圧調整器を備え、前記ガイド管内に供給させた補助泥水表面に所定の空気圧を作用させることしができるようにしたことにより、削孔孔の地山面に対する泥水圧のコントロールが容易となる。
【0024】
更に、前記内圧調整器として、空気圧室内が設定圧より高圧になったときに空気を排出する圧力調整用減圧弁を使用することにより、空気室内圧のコントロールが容易かつ正確になされる。
【0025】
更に、ガイド管の地上突出部分にあって、前記空気圧導入路連通部分と前記補助泥水注入路連通部分との間に泥水レベル検出器を備えることにより、補助泥水面を所定のレベルに維持させることが容易となる。
【0026】
本発明における曲がりボーリング方法は、可撓性のある外管の中心に同じく可撓性のある内管を貫通させた二重管式の掘削ロッドを備え、該掘削ロッドの先端に前記内管の先端に連結した掘削ビットが突設され、前記内管を通じて掘削用泥水を掘削ビット先端の噴射ノズルから噴射されるようになっているとともに、前記外管の先端付近に泥水吸引口を備え、該泥水吸引口から前記噴射ノズルから噴射された掘削用泥水を掘削土砂とともに地上のバキュームにより吸引させ、外管と内管の間の空隙を通して吸引搬出させる曲がりボーリング装置を使用し、前記掘削ロッドの外管の外径より大きい内径のガイド管を地表より前記掘削ロッドの直進掘削方向に向けて地中に挿入し、該ガイド管内を通じて前記掘削ロッドを地中に挿入することにより地表面からの直進削孔を行い、前記ガイド管の下端より深い位置の削孔に際し、前記ガイド管内にその上端側より補助泥水を該ガイド管内に注入しつつ前記掘削ビットのノズルからの掘削用泥水を噴射させて削孔を行い、前記泥水吸引口から噴射された掘削土砂を含む戻り掘削用泥水と前記補助泥水とをともに吸引させつつ削孔を行うことにより、外管内の泥水戻り量、即ちバキュームによる泥水吸引量を掘削のために噴射させた掘削用泥水量より多くなり、外管内における掘削土砂の搬送能力(揚泥能力)が大きく、高深度や礫分の多い砂質地盤における曲がりボーリングにおいても、戻りライン中のスライムを停滞させることなく削孔でき、このため掘削用泥土圧が異常に上昇するのを防止でき、地山を乱さず、後工程の薬液注入による地盤改良に支承を来たすことなく削孔できる。
【0027】
また、前記ガイド管の上端部に空気圧室を備え、該空気圧室内を大気圧より高い所定の空気圧に維持させることにより、削孔孔の地山面に該地山面における地下水圧より高い圧力を印加させつつ前記ガイド管より深い位置の削孔を行うことにより、地山面には、その地下水圧より空気圧室内の空気圧分だけ高い泥水圧を印加させつつ削孔がなされることとなり、削孔孔内面の深度に対応した適切な泥水圧とすることができる。
【0028】
更に、ガイド管内の補助泥水水位を該ガイド管の地上突出部分の所望の高さ範囲に維持させることにより、泥水重量による地山面に対する泥水圧を地下水圧に一定に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。 図1は本発明に係る装置の一例の概略構成を示しており、図中符号20は被削孔地盤であり、21はこの装置によって形成された削孔孔、22は二重管式の掘削ロッドである。掘削ロッド22は前述した従来技術に示したものと同様に、外管1の中心に同じく可撓性のある内管2を貫通させた構造となっており、内管2の先端に位置検出器ボックス3が連結され、内管2の先端を外管延長方向に導出され、その先端に可撓性先端ロッド4を介して掘削ビット5が固定されている。
【0030】
掘削ビット5には、片側にテーパ面5aが形成されているとともに、先端に前記テーパ面5aと平行な延長方向に向けた掘削用ジェット水噴射ノズル6が備えられ、このノズル6へは、地上の掘削用泥水圧送ポンプ7より、内管2及び先端ロッド4を通してベントナイト溶液からなる掘削用泥水が供給され、該ノズル6から高圧で噴射されるようになっている。
【0031】
外管1には、ボックス3より後方の位置に掘削用泥水吸引口8が設けられ、外管1の地表側端部からバキューム9により吸引することによって、掘削土砂を含む掘削用泥水を地上に搬出させるようになっている。尚、図中符号15は泥水中の掘削土砂を分離する土砂分離篩、16は分離された掘削土砂、17は泥水タンクである。
【0032】
この装置では、地表面から所望の直線掘削方向に向けて地盤20中に挿入するガイド管25が備えられている。このガイド管25は、斜め下向きの直線掘削部分の略全長に亘る長さが好ましく、最大深度が25mの場合に40m程度の長さのものが使用される。ガイド管25には屈曲し難い鋼管が使用され、その大きさは、掘削ロッド22によって形成される削孔孔21の内径より大きい内径のものを使用する。一例として外管1の外径が114mm、掘削ビット5の外径が150mmの時に、内径が180mm程度の鋼管を使用する。
【0033】
前述した掘削ロッド22は、ガイド管25の頂部の蓋体25aを貫通させ、該ガイド管25を通して地盤20中に挿入して削孔を行うものであり、蓋体25aの中心部分に、気密性を維持させつつ軸方向に移動可能に挿入されている。
【0034】
ガイド管25の上端部は気密性が維持できる空気圧室26となっており、加圧ポンプ27からの圧力空気供給路28が連通されているとともに、内部が所定の空気圧に維持するための減圧弁29からなる内圧調整器が備えられている。尚、この圧力空気供給路28の連通位置は後述するオーバーフロー泥水排水口32より高い位置となっている。
【0035】
この空気圧室26の下側に補助泥水供給路30が連通されている。この補助泥水供給路30は、補助泥水供給ポンプ31からベントナイト溶液からなる補助泥水がガイド管25内に供給されるようになっている。ガイド管25には、この補助泥水供給路30の開口部よりやや上側に、補助泥水の水位が上昇した再に検知する水位センサー31が設置され、その水位センサー31の少し上側の位置に前述したオーバーフロー泥水排出路32が備えられている。この排出路32は開閉コック32aによって開閉できるようになっている。また、ガイド管25の下端よりやや上側の位置に圧力センサー33が備えられている。
【0036】
次に上述した装置を使用して、図2に示す如き傾斜直線区間A、該傾斜直線区間Aから水平方向に湾曲された曲がり区間B、及び曲がり区間Bに連続した水平直線区間Cからなる薬液注入用削孔孔21を形成する曲がりボーリング方法について説明する。
【0037】
先ず、前述したガイド管25の建て込みを行う。このガイド管25は、傾斜直線区間Aの略全域に亘る長さに立込むことが好ましく、その建込みに際しては、ガイド管25を挿入するための削孔孔を、図8に示した従来と同様の曲がりボーリング装置、即ち、前述した本発明装置の内のガイド管25を使用しないで削孔することによって形成する。この削孔孔形成には、図3に示す支援装置35を使用する。支援装置35は、走行手段を備えた台車に押し込み用のガイド36を備えるとともに掘削ロッド22を地盤20中に押し込む油圧シリンダー及び該掘削ロッド22を必要に応じて回転させる回転駆動装置を備えている。
【0038】
この支援装置35により、先端に位置検出器ボックス3、先端ロッド4及び掘削ビット5を備えた掘削ロッド22を装着させ、掘削ビット5の先端から掘削用泥水を噴射させるとともに、泥水吸引口から掘削用泥水を吸引させ、掘削ロッド22を回転させつつ地盤中に押し込み、且つ位置検出器ボックス3内の位置検出器を稼動させて掘削ビット5の位置を検出しながら、直進削孔されるように向きをコントロールしながら直進削孔する。
【0039】
このようにしてガイド管25の建込み深さまでの傾斜直線区間Aの直進削孔を行った後、該削孔孔内に地表面よりガイド管25を挿入することによりガイド管の建込みを行う。ガイド管25は、図には詳示してないが、単位長さのものを複数用意しておき、先に挿入したものの上端に次のものを連結しつつ建込みを行い、最終段階において、前述した補助泥水供給路30、オーバーフロー泥水排出路32、圧力空気供給路28、減圧弁29を有する地上突出部分の連結を行う。
【0040】
この地上突出部分の上端に蓋体25aを施蓋する。その施蓋に際し、蓋体25aの中心に気密性を維持させて掘削ロッド22を貫通させる。掘削ロッド22は、前述と同様に支援装置35に保持させ、図1に示すように外管1より突出した内管2の先端に掘削用泥水圧送ポンプ7からの掘削用泥水供給路7aを連結するとともに、外管1の上端部に、バキューム9に通じる吸引路9aを連結する。
【0041】
この状態で、ガイド管25の下端より深い位置の削孔を行う。ガイド管25を使用する削孔に際しては、先ず図4に示すように、オーバーフロー泥水排出路32を開いた状態で補助泥水供給路30から過剰な状態(Q2+q)で補助泥水を送り込み、余剰の泥水(+q)をオーバーフロー泥水排出路32から自然流出させる。この時、圧力空気供給路28からの空気注入は行わず減圧弁29を開放状態とし、空気圧室26を大気に開放した状態としておく。
【0042】
この状態で掘削ロッド22の内管2を回転させつつ地表より内管2の上端より掘削用泥水(Q1)を圧入し、掘削ビット5先端部分のノズルより掘削用泥水を高圧噴射させるとともに、外管1の先端部の泥水吸引口8より、その周囲の泥水をバキューム9により吸引させる。これによって、泥水(Q1+Q2)とともに掘削土砂を地上に搬出させる。
【0043】
この時、泥水吸引口8からの泥水吸引量をノズルより噴射される掘削用泥水量より多くすることによってガイド管25と掘削ロッド22との隙間から供給される補助泥水も合わせて吸引させる。これによって外管1内を通って地上に戻される泥水の流量が多くなり、その分だけ掘削土砂の搬出能力が向上する。
【0044】
また、削孔孔内の地山面には、地下水圧P1が削孔孔内側に常時作用しているが、削孔孔内の泥土圧P2は、その泥土水位H1と地下水位H2との水頭差h分だけ地下水圧に対抗する方向に多く作用するため、泥水中の泥土による孔壁保護作用が維持される。
【0045】
次いで、深度の増大、削孔孔全長の長大、掘削土砂に含まれる礫質の割合増加によって、掘削土砂の搬出能力が低下したときには、前記空気圧室26を利用した空気圧付加掘削方法に移行する。この空気圧付加掘削は、図5に示すように、オーバーフロー泥水排出路32を閉じ、圧力空気供給路28から圧力空気を供給し、空気圧室26内圧が大気圧(P)より所定の圧力(+α)だけ高くなるように減圧弁29を調整し、前述と同様に補助泥水供給路30から補助泥水をガイド管25の上端に供給しながら削孔する。
【0046】
尚、この時、水位センサー31によって検出されるガイド管25内の補助泥水位が所定の範囲にあるように補助泥水供給路30からの泥水供給量を自動コントロールさせるとともに、空気圧室26内の圧力は、削孔孔内における泥水圧P2が地下水圧P1より0.05MPa程度高くなるように、地下水の水位に対応させて設定する。
【0047】
これにより、補助泥水面には常時大気圧より+α分だけ多い圧力(P+α)が印加された状態となり、この+α分の圧力が補助泥水送り込み側に作用し、補助泥水の削孔孔内への供給効率が向上するとともに、バキューム9による泥土排出能力の低下を補うこととなり、掘削土砂の搬出能力を高い状態に維持される。
【0048】
また、削孔孔内においては、泥土の水位と地下水位との水頭差分と、前記+α分とが地下水圧より高くなるため、これによって泥水中の泥土による孔壁保護作用が維持される。また、護岸や防波堤等の海洋構造物の基礎地盤に施工する場合には、地下水が海水である場合があるが、削孔孔内の泥水圧が、どの位置であっても地下水圧より高いものとなるため、削孔孔内への海水の流入が効果的に防止でき、泥水への海水混入が防止され、海水による泥水の劣化を抑えることができる。
【0049】
更に、補助泥水の削孔孔内への供給量は、泥水圧P2が地下水圧P1より0.05MPa程度高くなるように設定することにより、掘削ビット5先端からの掘削用泥水供給量の3倍もの量を供給することができ、削孔孔内壁と掘削ロッド22との間のスライム、特に停滞し易い曲がり削孔の部分のスライムは、補助泥水流によって削孔ロッド先端の泥水吸引口8側に送られて地上に搬出されるため、泥水吸引口8より地表側の削孔孔内はクリーンな状態が維持され、削孔孔が長大化しても掘削ロッド5が地盤からうけるフリクションが小さくなり、長距離削孔が容易となる。
【0050】
次に、削孔途中において、泥水吸引口8より削孔孔先端側内の掘削土砂をきれいに搬出させる方法について説明する。掘削ビット5から掘削ロッド先端部泥水吸引口8までの間であっても、この間にスライムが滞留すれば、短い区間ではあるが削孔孔中の地山に割裂を起こす可能性がある。これを防止するために以下の方法により泥水吸引口8から前方側の掘削土砂を含む泥水の搬出を行うことができる。
【0051】
本発明方法による曲がりボーリングの削孔サイクルは、3m程度の長さの単位掘削ロッドを掘削ロッド22の上端に継ぎ足しつつ削孔作業を行う。即ち1回の削孔長さが、単位掘削ロッドの1本分の長さの削孔作業を連続して行い。然る後一旦削孔を停止し、次の単位掘削ロッドの継ぎ足し作業を行うものであるが、その削孔停止時に次の作業を行う。
【0052】
図6に示すように、掘削ビット5からの掘削用泥水の吐出を継続させながら、掘進を停止する。この状態でガイド管25内への補助泥水の注入を止め、空気圧室26内の空気圧を上昇させながら外管1の上端からの泥水吸引を継続させる。これによってガイド管25内の泥水レベルH1が低下するが、これに応じて空気圧室26内の空気圧を上昇させる。この時はガイド管25の下端付近に設置した圧力センサー33により地山へ印加される泥水圧が大きく変化しないように制御し、過大圧印加による地山の割裂を防止する。
【0053】
ガイド管25内の泥水面がある程度低下した時点で、バキューム9による吸引を停止する。この状態で空気圧室の内圧を大気圧までゆっくり大気圧まで上昇させる。このときガイド管への補助泥水の注入はなく、先端ロッドだけからの泥水吐出となる。
【0054】
これによって掘削ビット5から泥水吸引口8までの間に滞留したスライムaが泥水吸引口8より後方側の削孔孔内に移動される。このようにして泥水吸引口8より後方に戻されたスライムは、その後、単位掘削ロッドが増設され、次の削孔工程が開始されたとき、補助泥水によって押し出され、泥水吸引口8より外管1内を通って排出される。
【0055】
尚、この工程は、1単位掘削ロッドの継ぎ足し作業毎に行っても良く、数本の単位掘削ロッド継ぎ足し置きに行っても良い。これによって、泥水吸引口より先端側の削孔孔内がクリーンな状態で次の削孔作業を開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る装置の一例の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明にかかる曲がりボーリング方法の全体の概略を示す断面図である。
【図3】同上のガイド管挿入のための直線削孔状態を示す断面図である。
【図4】同上の空気圧室を大気圧状態として削孔する場合の説明図である。
【図5】同上の空気圧室を加圧状態として削孔する場合の説明図である。
【図6】同上の削孔孔先端部清浄化工程の補助泥水水位低下状態時の説明図である。
【図7】同上の削孔孔先端部清浄化工程のスライム移動状態時の説明図である。
【図8】従来の曲がりボーリング工法の一例を示す断面図である。
【図9】同上の掘削ビットの進行状態を示す部分拡大断面図である。
【図10】従来の護岸岸壁下の液状化防止の薬液浸透固化状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 外管
2 内管
3 位置検出器ボックス
4 可撓性先端
5 掘削ビット
5a テーパ面
6 ノズル
7 掘削用泥水圧送ポンプ
8 掘削用泥水吸引口
9 バキューム
10 薬液注入ホース
11 注入用プラント
12 基礎地盤
13 薬液浸透部
14 改良地盤層
15 土砂分離篩
16 掘削土砂
17 泥水タンク
20 被削孔地盤
21 削孔孔
22 掘削ロッド
25 ガイド管
25a 蓋体
26 空気圧室
27 加圧ポンプ
28 圧力空気供給路
29 減圧弁
30 補助泥水供給路
31 補助泥水供給ポンプ
32 オーバーフロー泥水排出路
32a 開閉コック
33 圧力センサー
35 支援装置
a スライム
P 大気圧
P1 地下水圧
P2 泥水圧
H1 泥土水位
H2 地下水位
h 水頭差



【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のある外管の中心に同じく可撓性のある内管を貫通させた二重管式の掘削ロッドを備え、該掘削ロッドの先端に前記内管の先端に連結した掘削ビットが突設され、前記内管を通じて掘削用泥水を掘削ビット先端の噴射ノズルから噴射されるようになっているとともに、前記外管の先端付近に泥水吸引口を備え、該泥水吸引口から前記噴射ノズルから噴射された掘削用泥水を掘削土砂とともに地上のバキュームにより吸引させ、外管と内管の間の空隙を通して吸引搬出させる曲がりボーリング装置において、
前記外管の外径より大きい内径のガイド管を備え、地表より地中に挿入した前記ガイド管内を通じて前記掘削ロッドを地中に挿入自在となし、前記ガイド管は、その地上側に補助泥水注入路を連通させ、該補助泥水注入路からの補助泥水を前記掘削用泥水とともに泥水吸引口から地上に吸引できるようにしたことを特徴としてなる曲がりボーリング装置。
【請求項2】
前記ガイド管の地上側端部を空気圧室とし、該空気圧室には空気圧導入路が連通されるとともに内圧調整器が備えられ、前記ガイド管内に供給させた補助泥水表面に所定の空気圧を作用させることができるようにしてなる請求項1に記載の曲がりボーリング装置。
【請求項3】
前記内圧調整器として、前記空気圧室内が設定圧より高圧になったときに空気を排出する圧力調整用減圧弁を使用してなる請求項1又は2のいずれかに記載の曲がりボーリング装置。
【請求項4】
前記ガイド管の地上突出部分にあって、前記空気圧導入路連通部分と前記補助泥水注入路連通部分との間に泥水レベル検出器を備えてなる請求項1,2又は3のいずれかに記載の曲がりボーリング装置。
【請求項5】
可撓性のある外管の中心に同じく可撓性のある内管を貫通させた二重管式の掘削ロッドを備え、該掘削ロッドの先端に前記内管の先端に連結した掘削ビットが突設され、前記内管を通じて掘削用泥水を掘削ビット先端の噴射ノズルから噴射されるようになっているとともに、前記外管の先端付近に泥水吸引口を備え、該泥水吸引口から前記噴射ノズルから噴射された掘削用泥水を掘削土砂とともに地上のバキュームにより吸引させ、外管と内管の間の空隙を通して吸引搬出させる曲がりボーリング装置を使用し、
掘削ロッドの外管の外径より大きい内径のガイド管を地表より前記掘削ロッドの直進掘削方向に向けて地中に挿入し、該ガイド管内を通じて前記掘削ロッドを地中に挿入することにより地表面からの直進削孔を行い、
前記ガイド管の下端より深い位置の削孔に際し、前記ガイド管内にその上端側より補助泥水を該ガイド管内に注入しつつ前記掘削ビットのノズルからの掘削用泥水を噴射させて削孔を行い、前記泥水吸引口から噴射された掘削土砂を含む戻り掘削用泥水と前記補助泥水とをともに前記泥水吸引口から吸引搬出させることを特徴としてなる曲がりボーリング方法。
【請求項6】
前記ガイド管の上端部に空気圧室を備え、該空気圧室内を大気圧より高い所定の空気圧に維持させることにより、削孔孔の地山面に該地山面における地下水圧より高い圧力を印加させつつ前記ガイド管より深い位置の削孔を行う請求項5に記載の曲がりボーリング方法。
【請求項7】
前記ガイド管内の補助泥水水位を該ガイド管の地上突出部分の所望の高さ範囲に維持させつつ前記削孔を行う請求項6に記載の曲がりボーリング方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−41301(P2009−41301A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209009(P2007−209009)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】