説明

曲面壁構造

【課題】特別な部材を必要とすることなく曲面壁を形成することができるとともに、多様な曲率半径に対して柔軟に対応することができる曲面壁構造を提供する。
【解決手段】 所定の曲率半径Rを有する曲線C上に間隔をあけて配置される複数の柱4と、隣り合う前記柱4の外面に両端部の内面が夫々固定される複数の構造用合板5と、該構造用合板5の両端部の外面を前記柱4に押しつけるようにして固定される胴縁6と、該胴縁6に両端を固定することによって前記構造用合板5から前記胴縁6の厚さ分の間隙Xをあけて配設される複数のサイディング材7と、を備え、隣接する夫々の前記サイディング材7の目地部13にはパテ材14が充填されることを特徴とする曲面壁構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁構造に関するものであり、詳しくは近似曲面を形成する曲面壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅デザインの多様化等の観点に伴って、曲面壁を形成した建物が施工されている。このような曲面壁としては、例えば、特許文献1のように、外部側が曲面でフレーム側が平面に形成されている複数の曲面外壁パネルを下地フレームに取り付け、更に、この下地フレームを建物ユニットのフレームに取り付けることにより曲面壁を形成するものがある(例えば、特許文献1参照)。このような曲面壁では、外部側が曲面に形成されている曲面外壁パネルを用いているので、外観をきれいな曲面に形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−158513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この特許文献1の曲面壁では、外部側が曲面に形成された特別な外壁パネルを用いる必要があるため、コストが高くなる。また、この曲面壁では、外壁パネルの曲率によって形成される外壁の形状が決定されてしまうため、柔軟に曲面壁の曲率を変更させることができない。
【0005】
本発明は、上記のような種々の課題に鑑みてなされたものであって、特別な部材を必要とすることなく曲面壁を形成することができるとともに、多様な曲率半径に対して柔軟に対応することができる曲面壁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の曲面壁構造は、所定の曲率半径を有する曲線上に間隔をあけて配置される複数の柱と、隣り合う前記柱の外面に両端部の内面が夫々固定される複数の構造用合板と、該構造用合板の両端部の外面を前記柱に押しつけるようにして固定される胴縁と、該胴縁に両端を固定することによって前記構造用合板から前記胴縁の厚さ分の間隙をあけて配設される複数のサイディング材と、を備え、隣接する夫々の前記サイディング材の目地部にはパテ材が充填されることを特徴としている。
【0007】
請求項2記載の曲面壁構造は、前記構造用合板の外面に透湿防水シートが張設されていることを特徴としている。
【0008】
請求項3記載の曲面壁構造は、前記柱が、2×4(ツーバイフォー)材が少なくとも2本接合されてなる合せ柱であることを特徴としている。
【0009】
請求項4記載の曲面壁構造は、前記曲率半径が5500mm以上であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の曲面壁構造によれば、所定の曲率半径を有する曲線上に間隔をあけて複数の柱を配置し、その柱の外面に構造用合板を固定し、その構造用合板の屋外側に胴縁を介してサイディング材を配設している。そのため、柱を配置する曲線の曲率半径を変更させることにより容易に多様な曲面に対応した曲面壁を形成することができる。また、特別な部材等を用いることなく、通常用いられる部材を利用して曲面壁を形成することができるので、コストを軽減することができる。
【0011】
請求項2記載の曲面壁構造によれば、構造用合板の外面には、透湿防水シートが張設されている。これにより、胴縁を介して構造用合板とサイディング材の間に形成される通気隙間内の透湿性及び防水性を向上させ、通気隙間内の結露水等の発生を抑制することにより、曲面壁構造の耐久性を向上させることができる。
【0012】
請求項3記載の曲面壁構造によれば、曲線上に配置される複数の柱には、全て規格寸法である2×4(ツーバイフォー)材を接合させて形成される合せ柱を用いているので、コストをより軽減させることができる。また、規格寸法にて設計や組み立て等が行えるため、作業を効率化することができる。
【0013】
請求項4記載の曲面壁構造によれば、柱を配置する曲線の曲率半径を5500mm以上にすることによって、より滑らかな近似曲面が形成されるので、外観の見栄えを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る曲面壁構造が利用される建物の外観の一例を示す概略斜視図である。
【図2】本発明に係る曲面壁構造の一例を示す概略斜視図である。
【図3】本発明に係る曲面壁構造の一例を示す概略平面断面図である。
【図4】図3における一部拡大平面断面図である。
【図5】本発明に係る曲面壁構造の一例を示す概略側面断面図である。
【図6】下方に開口部を有する場合の曲面壁構造の一例を示す概略斜視図である。
【図7】下方に開口部を有する場合の曲面壁構造の一例を示す概略側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明に係る曲面壁構造について、各図面を用いて説明する。
【0016】
本発明に係る曲面壁構造は、図1に示すように建物100等の壁構造の一部等に用いられるものであり、この曲面壁1の構造は、枠組壁工法(ツーバイフォー工法)により形成されるものである。
【0017】
曲面壁1は、図2〜4に示すように、基礎2に不図示のアンカーボルトを用いて締結される土台3の上に設けられており、所定の曲率半径Rを有する曲線C上に配置される複数の合せ柱4と、隣り合う合せ柱4の外面に幅方向の両端部の内面が取り付けられる複数の構造用合板5と、該構造用合板5の外面に固定される胴縁6を介して配設される複数のサイディング材7とを備えている。
【0018】
合せ柱4は、2本の縦長の2×4(ツーバイフォー)材8が、重ね合わされた状態で、例えば、図4に示すように釘9等により接合されてなるものである。この合せ柱4の下端は、図2に示すように、下枠10上に載置して固定されており、上端は上枠11によって連結されている。このように構成された夫々の合せ柱4は、その中心が所定の曲率半径Rを有する曲線C上に位置するように間隔を設けて配置される。本実施形態では、隣り合う合せ柱4の中心間の距離Dは455mmになるように配置されている。また、曲線Cの曲率半径Rとしては、例えば、5500mm以上に設定されることが好適である。これにより、屋外側に面して隣接するサイディング材7のなす角度が大きくなるので、外観をより滑らかな曲面状に近似することができる。
【0019】
尚、本実施形態では、2つの2×4材8を接合させて形成した合せ柱4を用いた例を用いて説明しているが、強度を向上させるために2×4材8を4つ利用して合せ柱を形成するようにしても良い。
【0020】
構造用合板5は、図3,4に示すように、その両端部が夫々釘打ちされることにより、構造用合板5の幅方向の両端と合せ柱4の幅方向の中央が略一致するように合せ柱4の外面に取り付けられる。構造用合板5は、薄くスライスした単板を数枚接着剤等で張り合わせたものであり、このような構造用合板5の取り付けを隣り合う合せ柱4毎に行うことにより、複数の構造用合板5により形成される外面形状が曲面に近似した形状を描くようになる。また、この際、構造用合板5の両端部は若干曲げられて合せ柱4に取り付けられるため、曲がり易いが曲げに対しては強い強度を有する構造用合板を用いることが好ましい。
【0021】
また、構造用合板5の外面には、透湿防水シート12が張設されている。この透湿防水シート12は、例えば、ステープル打ち或いは接着剤等によって構造用合板5に張設されている。透湿防水シート12は、防水性および透湿性を有するシートであり、例えば、タイベック(登録商標)等が使用される。これにより、構造用合板5とサイディング材7の間に形成される通気隙間X内の透湿性及び防水性を向上させ、通気隙間X内の結露水の発生を抑制するとともに雨水等が内部へ侵入するのを防止するので、曲面壁構造の耐久性を向上させることができる。
【0022】
また、透湿防水シート12が張設された構造用合板5の両端部における外面には、縦方向に長尺な胴縁6が、図4に示すように構造用合板5を合せ柱4に押しつけるようにして釘9等により夫々固定されている。この胴縁6から構造用合板5及び合せ柱4の内部にまで至る釘9により、構造用合板5を合せ柱4の外面により強固に固定することができる。そして、胴縁6の外面には、当該胴縁6により形成される通気隙間(間隙)Xをあけてサイディング材7が釘やネジ等の不図示の固定具により屋外側に張り付けられる。
【0023】
このサイディング材7は、図2,3に示すように、夫々続けて隣接するように屋外側に配置される。この隣接する夫々のサイディング材7間は、曲率半径Rに応じて若干の角度を有するため、図4に示すように屋外側に向かうに従って少し広がるように目地部13が形成される。そして、この目地部13には、隣接する夫々のサイディング材7の外面と略一致するようにパテ材14が充填され、所謂コーキング処理が施される。これにより、雨水の浸入の防止を図ることは勿論のこと、屋外側からサイディング材7の外面を見た場合、その外面形状は滑らかな曲面に近似した形状を描くようになるので、外観の見栄えを向上させることができる。
【0024】
また、合せ柱4の外面に取り付けられる構造用合板5の内面には、屋外側と屋内側とを熱的に遮断する機能を有する断熱材15が密着固定されている。この断熱材15としては、グラスウール、ロックウール等の無機繊維系断熱材、ビーズ法ポリスチレンフォーム、押出法ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、フェノールフォーム等の発泡プラスチック系断熱材、及びセルロースファイバー、羊毛断熱材、炭酸発泡コルク等の天然素材系断熱材等が適宜目的に応じて用いられる。尚、この断熱材15の厚みは、必要とする断熱性能を有する厚みを有していれば良く、特に限定されるものではない。
【0025】
また、図3,4に示すように、本実施形態では、合せ柱4の内面である屋内側にも構造用合板5を釘9等により固定し、その外面に釘9等により固定した縦長の胴縁6を介して複数のサイディング材7を配設した例を示しているが、屋内側が室内に当たる場合等には、内装材を直接、合せ柱4の内面に取り付けるように構成しても良い。
【0026】
本実施形態に係る曲面壁構造では、図1に示すように、上方側にベランダ部Yを備える場合や、下方側に開口部Zを備える場合にも利用することができる。図2及び図5に示すように、上方側にベランダ部Yを備える場合には、合せ柱4の上端が連結される上枠11の上面に側根太16が設けられ、建物100の構造体に一端が支持されている床根太17の他端が前記側根太16に対して略垂直方向すなわち水平方向に延びるようにして複数平行するように固定されている。
【0027】
この複数の床根太17の上方には、図5に示すように、床用構造用合板18が設けられ、その上面には下地材19を介してベランダ部Yの床となるタイル20等が敷かれている。また、タイル20が敷かれる床の曲面壁1側の端部には、ベランダ部に溜まった雨水等を排水するために凹部21が形成されている。
【0028】
また、図5に示すように、側根太16の上方には、下枠10aが固定されており、合せ柱4がその下端を下枠10aに連結された状態で配置されている。また、合せ柱4の上端は上枠11aに連結されており、合せ柱4の外面には前述と同様に構造用合板5が不図示の釘等により固定され、該構造用合板5の外面に固定される胴縁6を介してサイディング材7が設けられている。また、屋内側の構造も同様に合せ柱4の内面に構造用合板5が取り付けられ、胴縁6を介してサイディング材7が設けられている。
【0029】
これら構造用合板5、胴縁6、サイディング材7のそれぞれの上端、及び合せ柱4の上端に連結される上枠11aの上方には、図5に示すように、笠木22が取り付けられる。このようにして構成された側根太16よりも上方の曲面壁1は、ベランダ部Yの柵としての役割を果たすことになる。従って、このような曲面壁構造を有することにより、ベランダ部Yの外周も曲面形状に形成することができるので、よりデザイン性に優れた設計が可能となる。
【0030】
また、図6及び図7に示すように、下方側に開口部Zを有する場合の曲面壁1では、開口部Zを有していない部分に端部が支えられている下枠23の上面の屋内側には横方向に長尺な板材24が設けられ、該板材24の外面に所定の間隔をあけてパッキン材25が複数取り付けられている。そして、このパッキン材25及び板材24の上方には合せ柱4が所定の間隔をあけて複数配置され、合せ柱4及びパッキン材25の外面には横長のスペーサー26が不図示の釘等により取り付けられている。
【0031】
このスペーサー26の外面には、構造用合板5が取り付けられており、該構造用合板5の外面に設けられる胴縁6を介してサイディング材が配設されている。そのため、開口部Yを有する曲面壁1では、スペーサー26の分だけ開口部Yを有しない部分に比べて厚みが出るので、下枠23、及び合せ柱4の上端を連結する上枠27は、その形状に対応するように形成されている。また、上枠27を覆う笠木28も同様に曲面壁1の厚みに対応するよう形成されている。また、屋外側に配置されるサイディング材7の下端には水切り29が取り付けられており、下枠23の下面にはサイディング材30が取り付けられている。このように合せ柱4の外面にスペーサー26を設けることにより、曲面形状及び曲面壁の厚みを容易に変更させることができる。
【0032】
尚、本発明の実施の形態は上述の形態に限るものではなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る曲面壁構造は、建物の外観を曲面状に形成するための壁構造として有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 曲面壁
4 合せ柱
5 構造用合板
6 胴縁
7 サイディング材
8 2×4(ツーバイフォー)材
12 透湿防水シート
13 目地部
14 パテ材
C 曲線
R 曲率半径
X 通気隙間(間隙)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の曲率半径を有する曲線上に間隔をあけて配置される複数の柱と、
隣り合う前記柱の外面に両端部の内面が夫々固定される複数の構造用合板と、
該構造用合板の両端部の外面を前記柱に押しつけるようにして固定される胴縁と、
該胴縁に両端を固定することによって前記構造用合板から前記胴縁の厚さ分の間隙をあけて配設される複数のサイディング材と、を備え、
隣接する夫々の前記サイディング材の目地部にはパテ材が充填されることを特徴とする曲面壁構造。
【請求項2】
前記構造用合板の外面には、透湿防水シートが張設されていることを特徴とする請求項1記載の曲面壁構造。
【請求項3】
前記柱は、2×4(ツーバイフォー)材が少なくとも2本接合されてなる合せ柱であることを特徴とする請求項1又は2記載の曲面壁構造。
【請求項4】
前記曲率半径は5500mm以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の曲面壁構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−94305(P2011−94305A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246254(P2009−246254)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(509174794)株式会社ブイハウス (2)
【出願人】(509174808)有限会社アトリエJIGSAW (2)
【Fターム(参考)】