説明

有機エレクトロルミネッセンス素子および表示装置

【課題】光取り出し効率が向上し、もって、高輝度化且つ低消費電力化が実現可能な有機EL素子、およびそれを用いた表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】透明電極であるカソード電極25と、光を透過する金属層である透明金属層243および光を反射する金属層である反射性金属層241で少なくとも構成され、透明金属層243および反射性金属層241が積層された第1領域と、光を透過する絶縁層である透明絶縁層242が透明金属層243および反射性金属層241の間に形成された第2領域とを有するアノード電極24と、カソード電極25およびアノード電極24の間に形成され、カソード電極25を介して出射される光を発光する有機EL層23と、を備え、有機EL層23は、前記第2領域における透明金属層243と接して形成され、反射性金属層241は、前記第2領域において、有機EL層23からの発光を反射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子およびそれを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来のCRTディスプレイに対して、薄型、軽量、低消費電力などの特徴を有する液晶ディスプレイなどの平面型の表示装置の需要が急速に伸びている。しかし、液晶ディスプレイは、視野角や応答性などに課題を有している。
【0003】
そのため、最近では、自発光であり、広視野角および高速応答性を有する有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL(Electro Luminescence)素子」と記す)を用いた、単純マトリクス方式やアクティブマトリクス方式などの表示装置が注目されている。特に、高精細や大画面化に有利なアクティブマトリクス方式の表示装置の開発が活発に行われている。
【0004】
有機EL素子を用いた表示装置は、一般に有機EL素子を用いた表示パネルと、有機EL素子を駆動するための駆動回路とから構成されている。
【0005】
表示パネルは、ガラスなどの基板上に、Alなどの金属電極と、それに対向するITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)などの透明電極と、それらの間に設けられた発光層とを備える有機EL素子を、マトリクス状に配置して構成されている。駆動回路は、有機EL素子を個別に駆動する薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)などで構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−318556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、有機EL素子に対しては更なる高輝度化、または低消費電力化が望まれている。
【0008】
本発明は、上述の要望を鑑みてなされたもので、光取り出し効率を向上させ、よって、高輝度化または低消費電力化が可能な有機エレクトロルミネッセンス素子およびそれを用いた表示装置を提供することを目的とする。
【0009】
ここで、光取り出し効率とは、外部に光を取り出せる割合であり、外部出力光量/全発光量で示すことができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を実現するために本発明の一つの実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、透明電極である第1電極層と、光を透過する金属層である透明金属層および光を反射する金属層である反射性金属層で少なくとも構成され、前記透明金属層および前記反射性金属層が積層された第1領域と、光を透過する絶縁層である透明絶縁層が前記透明金属層および前記反射性金属層の間に形成された第2領域とを有する第2電極層と、前記第1電極層および前記第2電極層の間に形成され、前記第1電極層を介して出射される光を発光する有機EL層と、を備え、前記有機EL層は、前記第2領域における前記透明金属層と接して形成され、前記反射性金属層は、前記第2領域において、前記有機EL層からの発光を反射する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光取り出し効率を向上させ、よって、高輝度化または低消費電力化が可能な有機エレクトロルミネッセンス素子、およびそれを用いた表示装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における有機EL素子の要部を説明するための断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1における有機EL層に形成される素子構造の1例を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるアノード電極の特徴的な構成を説明するための図である。
【図4】本発明の有機EL素子を用いた表示装置の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1の変形例における有機EL素子の要部を説明するための断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2における有機EL素子の要部を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一つの実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、透明電極である第1電極層と、光を透過する金属層である透明金属層および光を反射する金属層である反射性金属層で少なくとも構成され、前記透明金属層および前記反射性金属層が積層された第1領域と、光を透過する絶縁層である透明絶縁層が前記透明金属層および前記反射性金属層の間に形成された第2領域とを有する第2電極層と、前記第1電極層および前記第2電極層の間に形成され、前記第1電極層を介して出射される光を発光する有機EL層と、を備え、前記有機EL層は、前記第2領域における前記透明金属層と接して形成され、前記反射性金属層は、前記第2領域において、前記有機EL層からの発光を反射する。
【0014】
この構成によれば、第2電極層で光を反射する際にプラズモン発生の影響による光の減衰を抑制することができるので、光取り出し効率が向上し、高輝度化且つ低消費電力化が可能な有機エレクトロルミネッセンス素子を実現することできる。
【0015】
また、前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板と、前記基板上に、前記有機EL層を駆動するためのアクティブ素子を有する駆動回路層と備え、前記第1電極層、前記有機EL層および前記第2電極層は、前記駆動回路層上に形成されているとしてもよい。
【0016】
また、前記第2電極層は、駆動回路層上に形成され、前記有機EL層は、前記第2電極層上に形成され、前記第1電極層は、前記有機EL層上に形成されているとしてもよい。
【0017】
この構成により、トップエミッション型の有機エレクトロルミネッセンス素子を実現することできる。
【0018】
また、前記駆動回路層では、前記アクティブ素子が、前記第2領域外に対応する領域に形成されており、前記第1電極層は、駆動回路層上に形成され、前記有機EL層は、前記第1電極層上に形成され、前記第2電極層は、前記有機EL層上に形成されているとしてもよい。
【0019】
この構成により、ボトムエミッション型の有機エレクトロルミネッセンス素子を実現することできる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態における有機EL素子について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施の形態および各図面において、同じ構成要素には同じ符号を付し説明する。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものでなはない。
【0021】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、有機EL表示装置と記す)について、図面を用いて説明する。また、以下では、上面発光方式のトップエミッション型有機EL素子を例に説明するが、これに限られない。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態1における有機EL素子1の要部を説明するための断面図である。図1では、トップエミッション型の有機EL素子1を示している。
【0023】
図1に示す有機EL素子1は、基板100と、基板100上に積層された駆動回路層11Aと、駆動回路層11A上に積層された発光素子層11Bと、発光素子層11B上に積層されたガラス基板105とを備える。
【0024】
基板100は、例えば、ガラス基板であり、駆動回路層11Aとともに、薄膜トランジスタ(TFT)を構成する。なお、有機EL素子1は、トップエミッション型の構造であるので、基板100は透明である必要はない。そのため、基板100は、非透明の基板、例えば、シリコン基板で形成されているとしてもよい。また、基板100は、樹脂からなる透明または不透明のフレキシブル基板で形成されているとしてもよい。
【0025】
発光素子層11Bは、有機EL層23と、アノード電極24と、バンク層30と、薄膜封止膜103と、樹脂封止層104と、遮光層106とを備える。詳細は後述するためここでの説明を省略する。
【0026】
駆動回路層11Aは、層間絶縁膜101と、平坦化絶縁膜102とを備え、層間絶縁膜101および平坦化絶縁膜102中に、発光素子層11Bを駆動するためのアクティブ素子として、例えば選択トランジスタ21と駆動トランジスタ22とが形成されている。また、駆動回路層11Aでは、平坦化絶縁膜102に、接続開口25aを有するコンタクトホール102aが形成されている。
【0027】
選択トランジスタ21及び駆動トランジスタ22は、例えば、ボトムゲート型の薄膜トランジスタである。選択トランジスタ21は、基板100上から順に形成されたゲート電極211、ゲート絶縁膜212、半導体層213、およびソースドレイン電極214により構成されている。駆動トランジスタ22は、基板100上から順に形成されたゲート電極221、ゲート絶縁膜212、半導体層223、およびソースドレイン電極224により構成されている。ここで、上述した各電極の材料としては、例えば、モリブデン(Mo)とタングステン(W)との合金、または、MoとWとの合金/アルミニウム(Al)/MoとWとの合金の積層構造が挙げられる。また、ゲート絶縁膜212の材料としては、例えば、シリコン酸化膜(SiOx)または、シリコン窒化膜(SiN)などが挙げられる。なお、ゲート絶縁膜212は、所望の静電容量を確保するため、誘電体材料であってもよい。
【0028】
また、駆動トランジスタ22のソースドレイン電極224の一方(例えばソース電極)は、発光素子層11Bを構成するアノード電極24と、平坦化絶縁膜102に設けられた接続開口25aを介して接続されている。
【0029】
平坦化絶縁膜102は、本発明の平坦化絶縁層に相当し、アクティブ素子を覆うように形成され、当該駆動回路層の上面を平坦化する。具体的には、平坦化絶縁膜102は、層間絶縁膜101の上に選択トランジスタ21および駆動トランジスタ22を覆うように形成され、駆動回路層11Aの上面を平坦化する。また、平坦化絶縁膜102には、上述したように、接続開口25aを有するコンタクトホール102aが形成されている。そして、接続開口25aを介して、駆動トランジスタ22のソース電極と発光素子層11Bのアノード電極24とは接続される。換言すると、コンタクトホール102aは、第2領域外(第1領域)に対応する平坦化絶縁膜102の領域に形成されており、透明金属層243とアクティブ素子である駆動トランジスタ22とを電気的に接続する。
【0030】
平坦化絶縁膜102は、例えば、CVD法やスパッタリング法などを用いて形成されたシリコン酸化膜から構成される。つまり、平坦化絶縁膜102は、例えば、まず、シリコン酸化膜が形成され、次に、形成されたシリコン酸化膜の表面を、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法などにより平坦化することにより形成される。なお、平坦化絶縁膜102は、シリコン窒化膜(SiN)などから構成されるとしてもよい。
【0031】
アノード電極24は、平坦化絶縁膜102の上に形成される反射性金属電極であり、カソード電極25に対して正の電圧を発光素子層11Bに印加する。具体的には、アノード電極24は、本発明の第2電極層に相当し、光を透過する金属層である透明金属層243および光を反射する金属層である反射性金属層241で少なくとも構成され、透明金属層243および反射性金属層241が積層された第1領域と、光を透過する絶縁層である透明絶縁層242が透明金属層243および反射性金属層241の間に形成された第2領域とを有する。この反射性金属層241は、第2領域において、有機EL層23からの発光を反射する。なお、このアノード電極24は、本願の特徴的な構成要素であるが、詳細を後述するため、ここでの説明を省略する。
【0032】
有機EL層23は、本発明の有機EL層に相当し、第1電極層および前記第2電極層の間に、第2領域における透明金属層243と接して形成され、第1電極層を介して放出される光を発光する。具体的には、有機EL層23は、アノード電極24の一部の領域を覆うように積層され、アノード電極24およびカソード電極25からそれぞれ正孔と電子とが注入され再結合されることにより励起状態が生成され発光する。
【0033】
有機EL層23は、インクジェットやスピンコートのような湿式成膜法で成膜できる発光性の有機材料を用いて形成されることが好ましい。これにより、大画面の基板に対して、簡易で均一な成膜が可能となる。その材料としては、特に限定されるものではないが、高分子有機材料が好ましい。高分子有機材料の特徴としては、デバイス構造が簡単であること、膜の信頼性に優れ、低電圧駆動のデバイスであることも挙げることができる。
【0034】
なお、有機EL層23は、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子注入層および電子輸送層のうち少なくとも1つを含む素子構造が形成されているとしてもよい。以下、例として、図2を用いて、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子注入層および電子輸送層が形成されている場合の構成について説明する。
【0035】
図2は、本発明の実施の形態1における有機EL層に形成される素子構造の1例を詳細に説明するための図である。図2に示す有機EL層23には、正孔注入層231、正孔輸送層232、有機発光層233、電子輸送層234および電子注入層235が形成されている。
【0036】
正孔注入層231は、アノード電極24の表面上に形成される。正孔注入層231は、正孔を安定的に、又は正孔の生成を補助して、有機発光層233へ正孔を注入する機能を有する。これにより駆動電圧が低電圧化され、正孔注入の安定化により素子が長寿命化される。正孔注入層231の材料としては、例えばPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)などを用いることができる。
【0037】
正孔輸送層232は、正孔注入層231の表面上に形成される。正孔輸送層232は、正孔注入層231から注入された正孔を有機発光層233内へ効率良く輸送し、有機発光層233と正孔注入層231との界面での励起子の失活防止をし、さらには電子をブロックする機能を有する。正孔輸送層232の材料としては、例えば、生じた正孔を分子間の電荷移動反応により伝達する性質を有する有機高分子材料があり、例えば、トリフェルアミン、ポリアニリンなどが挙げられる。
【0038】
電子注入層235は、有機発光層233上に形成される。電子注入層235は、有機発光層233への電子注入の障壁を低減し駆動電圧を低電圧化すること、励起子失活を抑制する機能を有する。これにより、電子注入を安定化し素子を長寿命化すること、カソード電極25との密着を強化し発光面の均一性を向上させ素子欠陥を減少させることが可能となる。電子注入層235は、例えば、バリウム、アルミニウム、フタロシアニン、フッ化リチウム、さらに、バリウム−アルミニウム積層体などからなる。
【0039】
電子輸送層234は、有機発光層233と電子注入層235との間に形成される。電子輸送層234は、電子注入層235から注入された電子を有機発光層233内へ効率良く輸送し、有機発光層233と電子注入層235との界面での励起子の失活防止をし、さらには正孔をブロックする機能を有する。
【0040】
以上のように、有機EL層23には、例えば正孔注入層231、正孔輸送層232、有機発光層233、電子注入層235および電子輸送層234の素子構造が形成されている。
【0041】
以下、図1についての説明に戻る。
【0042】
カソード電極25は、本発明の第1電極層に相当し、有機EL層23を覆うように積層されている透明電極である。また、カソード電極25は、アノード電極24に対して負の電圧を有機EL層23に印加し、電子を発光素子層11B内(特に有機EL層23)に注入する機能を有する。カソード電極25の材料としては、特に限定されるものではないが、透過率の高い物質および構造を用いることが好ましい。これにより、発光効率が高いトップエミッション型の有機EL素子1を実現することができる。例えば、カソード電極25は、インジウム錫酸化物(以下、ITOと記す)、またはインジウム亜鉛酸化物(以下、IZOと記す)からなる金属酸化物層が用いられる。なお、カソード電極25は、これらの材料に特に限定されるものではない。
【0043】
薄膜封止膜103は、カソード電極25の上に、形成されている。具体的には、薄膜封止膜103は、カソード電極25の表面上に形成され、水分から素子を保護する機能を有する。ここで、薄膜封止膜103は、透明であることが要求されることから、薄膜封止膜103の材料としては、例えば、SiN、SiON、または有機膜などが挙げられる。
【0044】
樹脂封止層104は、薄膜封止膜103の上に、形成されている。
【0045】
ガラス基板105は、樹脂封止層104の上に、形成されている。
【0046】
遮光層106は、有機EL層23の形成領域以外の遮光領域(第1領域)に形成されている。
【0047】
バンク層30は、湿式成膜法を用いて形成される有機EL層23を所定の領域に形成するバンク(土手)としての機能を有する。バンク層30に用いられる材料は、無機物質および有機物質のいずれであってもよいが、有機物質の方が、一般的に、撥水性が高いので、より好ましく用いることができる。このような材料の例としては、ポリイミド、ポリアクリルなどの樹脂が挙げられる。
【0048】
以上のように構成された有機EL素子1は、発光素子層11Bに電圧を印加すると、有機EL層23で光が生じ、カソード電極25および薄膜封止膜103を通じて光が上方に出射する。また、有機EL層23で生じた光のうち下方に向かったものは、反射性金属電極としてのアノード電極24で反射され、カソード電極25および薄膜封止膜103を通じて光が上方に出射する。
【0049】
なお、駆動回路層11Aは、平坦化絶縁膜102を必ずしも備えていなくてもよい。また、駆動回路層11Aは、平坦化絶縁膜102を備える場合でも、アクティブ素子とアノード電極24との導通が実現されるのであれば、コンタクトホールを必ずしも備える必要はない。
【0050】
次に、本発明の特徴的な部分であるアノード電極24について、説明する。
【0051】
図3は、本発明の実施の形態1におけるアノード電極の特徴的な構成を説明するための図である。
【0052】
上述したように、図3に示す反射性金属電極であるアノード電極24は、透明金属層243および反射性金属層241で少なくとも構成され、透明金属層243および反射性金属層241が積層された第1領域と、透明絶縁層242が透明金属層243および反射性金属層241の間に形成された第2領域とを有する。
【0053】
反射性金属層241は、光を反射する金属層で構成されており、例えばAl、Ag、またはそれらの合金など反射率の高い金属を使用して形成される。また、反射性金属層241は、第2領域において、有機EL層23からの発光を反射する。
【0054】
透明金属層243は、光を透過する金属層で構成されており、例えばITO、ZnS、ZTO、IZO、Sbなどの無機透明導電性材料を使用して形成される。そして、透明金属層243は、第2領域において、有機EL層23と物理的にも電気的にも接して形成されている。
【0055】
透明絶縁層242は、例えば、ポリイミド、ポリウレタン、アクリルなどの透明樹脂材料を使用して形成される。この透明絶縁層242は、第2領域すなわち反射性金属層241が有機EL層23からの発光を反射する領域に少なくとも形成される。発光素子層11Bは、この透明絶縁層242を有することにより、第2領域において、反射性金属層241と透明金属層243とが直接接触しない構造となっている。
【0056】
なお、上述したように、駆動トランジスタ22のソースドレイン電極224の一方(例えばソース電極)は、有機EL素子1のアノード電極24と、平坦化絶縁膜102に設けられたコンタクトホール102aすなわち接続開口25aを介して接続される。ここで、接続開口25aのアスペクト比が高い(すなわち深さが深い)場合であっても、反射性金属層241は金属材料で形成されることから、接続開口25aの底面にまで電気的導通を維持した状態で形成することが比較的容易である。したがって、平坦化絶縁膜102にコンタクトホール102aを形成することにより、ソースドレイン電極224の一方(例えばソース電極)と反射性金属層241との電気的接触を安定して得ることが可能となる。
【0057】
なお、本願発明者(ら)は、上述のような構成とすることで、有機EL素子1の光取り出し効率が向上し、高輝度化且つ低消費電力化が可能となっていることを確認した。
【0058】
以下、このことについての考察を述べる。
【0059】
まず、従来の有機EL素子の構成においては、光取り出し効率が低いのは、プラズモン発生の影響によるものであると考えている。すなわち、有機EL層23に直接、反射層を形成する目的で、反射性金属材料を用いて反射性金属層241のみからなるアノード電極を形成する場合、有機EL層23からの光が反射性金属層241で反射する以上に、表面プラズモン−ポラリトンの形成を通じて反射性金属層241で多くの光が失われ、その結果、取り出し効率が低下する。
【0060】
また、有機EL層23と反射性金属層241との間に透明金属層243を挟んで、有機EL層23と反射性金属層241とを直接、接触しない構成とした場合でも、取り出し効率の低下の現象が見られることがわかった。
【0061】
そこで、本願発明者らが検討を行った結果、反射性金属層241での表面プラズモン−ポラリトンの形成を低減するには、有機EL層23からの光を反射性金属層241が反射する領域(上述の第2領域)において、反射性金属層241を有機EL層23に対して電気的に接触させないことが有効であることがわかった。
【0062】
本発明は以上の知見に基づくものであり、有機EL層23で生じた光のうち下方に向かったものを上方に反射させる反射性金属電極であるアノード電極24を、第2領域においては反射性金属層241、透明絶縁層242および透明金属層243により構成し、第1領域においては反射性金属層241および透明金属層243により構成する。つまり、透明絶縁層242を、有機EL層23からの発光を反射性金属層241が反射する第2領域に少なくとも形成する。この構成により、第2領域において、反射性金属層241と透明金属層243とが直接電気的には接触しない構造となる。
【0063】
以上の構成とすることで、アノード電極24すなわち反射性金属層241で光を反射する際にプラズモン発生の影響による光の減衰を抑制することができるので、光取り出し効率が向上し、高輝度化且つ低消費電力化が可能な有機EL素子1を実現することができる。
【0064】
さらに、図4に示す表示装置に、本実施の形態における有機EL素子1を用いた場合には、高輝度且つ低消費電力の表示装置を実現することができる。ここで、図4は、本発明の有機EL素子を用いた表示装置の一例を示す図である。
【0065】
(変形例)
図5は、本発明の実施の形態1の変形例における有機EL素子の要部を説明するための断面図である。なお、図1と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0066】
図5に示す有機EL素子2は、図1に示す有機EL素子1に対して、接続開口25bとアノード電極34との構成が異なる。具体的には、図1に示す有機EL素子1では、平坦化絶縁膜102に設けられたコンタクトホール102aには、反射性金属層241が形成され、接続開口25aを構成していた。一方、図5に示す有機EL素子2では、平坦化絶縁膜102に設けられたコンタクトホール102aには、反射性金属層241と透明金属層343とが形成され、接続開口25bを構成している。これは、コンタクトホール102aのアスペクト比が低い(すなわち深さが浅い、もしくは、開口径が深さに対して大きい)場合には、反射性金属層241だけでなく、透明金属層343も形成されるからである。
【0067】
なお、上記構成以外の点は、有機EL素子1と同様であるため、説明を省略する。
【0068】
(実施の形態2)
実施の形態1では、上面発光方式の有機EL素子を例に説明したのに対して、実施の形態2では、下面発光方式のボトムエミッション型有機EL素子を例に説明する。
【0069】
図6は、本発明の実施の形態1における有機EL素子1の要部を説明するための断面図である。図6では、ボトムエミッション型の有機EL素子3を示している。
【0070】
図6に示す有機EL素子3は、基板300と、基板300上に積層された駆動回路層31Aと、駆動回路層31A上に積層された発光素子層31Bとを備える。
【0071】
基板300は、例えば、ガラス基板であり、駆動回路層31Aとともに、発光素子層31Bの発光領域外に対応する領域(第1領域)に薄膜トランジスタ(TFT)を構成する。なお、有機EL素子3は、ボトムエミッション型の構造であるので、基板300は透明であることが要求される。したがって、基板300の材料としては、例えば、SiN、SiONなどが挙げられる。
【0072】
駆動回路層31Aは、層間絶縁膜301と、平坦化絶縁膜302とを備え、層間絶縁膜301および平坦化絶縁膜302の第1領域中(発光素子層31Bの発光領域外に対応する領域)に、発光素子層31Bを駆動するためのアクティブ素子として、例えば駆動トランジスタ42が形成されている。また、駆動回路層31Aでは、平坦化絶縁膜302に、接続開口45aを有するコンタクトホール302aが形成されている。
【0073】
駆動トランジスタ42は、例えば、ボトムゲート型の薄膜トランジスタであり、基板300上から順に形成されたゲート電極421、ゲート絶縁膜422、半導体層423、およびソースドレイン電極424により構成されている。
【0074】
ここで、各電極の材料としては、例えば、モリブデン(Mo)とタングステン(W)との合金、または、MoとWとの合金/アルミニウム(Al)/MoとWとの合金の積層構造が挙げられる。また、ゲート絶縁膜422の材料としては、有機EL素子3がボトムエミッション型の構造であるので、透明であることが要求され、例えば、シリコン酸化膜(SiOx)または、シリコン窒化膜(SiN)などが挙げられる。なお、ゲート絶縁膜422は、透明であれば、所望の静電容量を確保するための誘電体材料であってもよい。
【0075】
また、駆動トランジスタ42のソースドレイン電極424の一方(例えばソース電極)は、発光素子層31Bを構成するアノード電極44と、平坦化絶縁膜302に設けられた接続開口45aを介して接続されている。
【0076】
平坦化絶縁膜302は、本発明の平坦化絶縁層に相当し、アクティブ素子上を覆うように形成され、当該駆動回路層の上面を平坦化する。具体的には、平坦化絶縁膜302は、層間絶縁膜301の上に駆動トランジスタ42を覆うように形成され、駆動回路層31Aの上面を平坦化する。また、平坦化絶縁膜102は、上述したように、接続開口45aを有するコンタクトホール302aが形成されている。そして、接続開口45aを介して、駆動トランジスタ42のソース電極と発光素子層31Bのアノード電極44とが接続される。換言すると、平坦化絶縁層320は、第2領域外(第1領域)に対応する領域において、アノード電極44と駆動トランジスタ42とを電気的に接続するためのコンタクトホール302aを有する。そして、アノード電極44はコンタクトホール302a内にも形成されている。つまり、コンタクトホール302aが、第2領域外(第1領域)に対応する平坦化絶縁膜302の領域に形成され、アノード電極44とアクティブ素子である駆動トランジスタ42とを電気的に接続する。なお、層間絶縁膜301および平坦化絶縁膜302の材料としては、透明であることが要求される点を除いて、実施の形態1の層間絶縁膜101および平坦化絶縁膜102と同様のため、説明を省略する。
【0077】
発光素子層31Bは、有機EL層43と、アノード電極44と、カソード電極45と、画素分離絶縁層46とを備える。
【0078】
アノード電極44は、本発明の第1電極層に相当し、平坦化絶縁膜302の上に形成される透明電極である。また、アノード電極44は、カソード電極45に対して正の電圧を発光素子層31Bに印加する。アノード電極44の材料としては、特に限定されるものではないが、透過率の高い物質および構造を用いることが好ましい。これにより、発光効率が高いボトムエミッション型の有機EL素子3を実現することができる。例えば、アノード電極44は、ITO、または、IZOからなる金属酸化物層が用いられる。なお、アノード電極44、これらの材料に特に限定されるものではない。
【0079】
カソード電極45は、有機EL層43と画素分離絶縁層46とを覆うように形成される反射性金属電極であり、アノード電極44に対して負の電圧を有機EL層43に印加し、電子を発光素子層31B内(特に有機EL層43)に注入する機能を有する。
【0080】
具体的には、カソード電極45は、本発明の第2電極層に相当し、光を透過する金属層である透明金属層453および光を反射する金属層である反射性金属層451で少なくとも構成され、透明金属層453および反射性金属層451が積層された第1領域と、光を透過する絶縁層である透明絶縁層452が透明金属層453および反射性金属層451の間に形成された第2領域とを有する。この反射性金属層451は、第2領域において、有機EL層43からの発光を反射する。なお、透明絶縁層452、透明金属層453および反射性金属層451の材料と、これらを備える場合の効果については、実施の形態1の透明絶縁層242、透明金属層243および反射性金属層241と同様のため、説明を省略する。
【0081】
有機EL層43は、本発明の有機EL層に相当し、第1電極層および第2電極層の間に、第2領域における透明金属層453と接して形成され、第1電極層を介して放出される光を発光する。具体的には、有機EL層43は、カソード電極45の一部の領域(第2領域)の下に形成されており、アノード電極44およびカソード電極45から正孔と電子とが注入され再結合されることにより励起状態が生成され発光する。なお、有機EL層43の構成および材料については、実施の形態1の有機EL層23と同様のため、説明を省略する。
【0082】
以上のように構成された有機EL素子3は、発光素子層31Bに電圧を印加すると、有機EL層43で光が生じ、アノード電極44、平坦化絶縁膜302、層間絶縁膜301、ゲート絶縁膜422および基板300を通じて光が下方に出射する。また、有機EL層43で生じた光のうち上方に向かったものは、反射性金属電極としてのカソード電極45で反射され、アノード電極44、平坦化絶縁膜302、層間絶縁膜301、ゲート絶縁膜422および基板300を通じて光が下方に出射する。
【0083】
以上のように、本実施の形態の有機EL素子3は、透明絶縁層452を、有機EL層43からの発光を反射性金属層451が反射する第2領域に少なくとも形成する。この構成により、第2領域において、反射性金属層451と透明金属層453とが直接電気的には接触しない構造となる。
【0084】
以上の構成とすることで、反射性金属層451で光を反射する際にプラズモン発生の影響による光の減衰を抑制することができるので、光取り出し効率が向上し、高輝度化且つ低消費電力化が実現可能な有機EL素子1を実現することできる。
【0085】
さらに、図4に示す表示装置に、本実施の形態における有機EL素子1を用いた場合には、高輝度且つ低消費電力の表示装置を実現することができる。
【0086】
なお、駆動回路層31Aは、平坦化絶縁膜302を必ずしも備えていなくてもよい。また、駆動回路層31Aは、平坦化絶縁膜302を備える場合でも、アクティブ素子とアノード電極44との導通が実現されるのであれば、コンタクトホールを必ずしも備える必要はない。
【0087】
以上、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子およびそれを用いた表示装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子およびそれを用いた表示装置に利用でき、特に、高輝度・低消費電力を実現する有機エレクトロルミネッセンス素子およびそれを用いた表示装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1、2、3 有機EL素子
11A、31A 駆動回路層
11B、31B 発光素子層
21 選択トランジスタ
22、42 駆動トランジスタ
23、43 有機EL層
24、34、44 アノード電極
25、45 カソード電極
25a、25b、45a 接続開口
30 バンク層
46 画素分離絶縁層
100、300 基板
101、301 層間絶縁膜
102、302 平坦化絶縁膜
102a、302a コンタクトホール
103 薄膜封止膜
104 樹脂封止層
105 ガラス基板
106 遮光層
211、221、421 ゲート電極
212、422 ゲート絶縁膜
213、223、423 半導体層
214、224、424 ソースドレイン電極
231 正孔注入層
232 正孔輸送層
233 有機発光層
234 電子輸送層
235 電子注入層
241、451 反射性金属層
242、452 透明絶縁層
243、343、453 透明金属層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明電極である第1電極層と、
光を透過する金属層である透明金属層および光を反射する金属層である反射性金属層で少なくとも構成され、前記透明金属層および前記反射性金属層が積層された第1領域と、光を透過する絶縁層である透明絶縁層が前記透明金属層および前記反射性金属層の間に形成された第2領域とを有する第2電極層と、
前記第1電極層および前記第2電極層の間に形成され、前記第1電極層を介して出射される光を発光する有機EL(Electro Luminescence)層と、を備え、
前記有機EL層は、前記第2領域における前記透明金属層と接して形成され、
前記反射性金属層は、前記第2領域において、前記有機EL層からの発光を反射する
有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、
基板と、
前記基板上に、前記有機EL層を駆動するためのアクティブ素子を有する駆動回路層と備え、
前記第1電極層、前記有機EL層および前記第2電極層は、前記駆動回路層上に形成されている
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記駆動回路層は、
前記アクティブ素子を覆うように形成され、当該駆動回路層の上面を平坦化する平坦化絶縁層を備え、
前記第1電極層、前記有機EL層および前記第2電極層は、前記平坦化絶縁層上に形成されている
請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記第2電極層は、駆動回路層上に形成され、
前記有機EL層は、前記第2電極層上に形成され、
前記第1電極層は、前記有機EL層上に形成されている
請求項2または3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記平坦化絶縁層は、前記第2領域外に対応する領域において、前記透明金属層と前記アクティブ素子とを電気的に接続するためのコンタクトホールを有し、
前記反射性金属層は、前記コンタクトホール内にも形成されている
請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記駆動回路層では、前記アクティブ素子が、前記第2領域外に対応する領域に形成されており、
前記第1電極層は、駆動回路層上に形成され、
前記有機EL層は、前記第1電極層上に形成され、
前記第2電極層は、前記有機EL層上に形成されている
請求項2または3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記平坦化絶縁層は、前記第2領域外に対応する領域において、前記第1電極層と前記アクティブ素子とを電気的に接続するためのコンタクトホールを有し、
前記第1電極層は、前記コンタクトホール内にも形成されている
請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える
表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−204017(P2012−204017A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64999(P2011−64999)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】