説明

有機テルル化合物、その製造方法、リビングラジカル重合開始剤、それを用いるポリマーの製造法及びポリマー

【課題】 温和な条件下で、精密な分子量及び分子量分布(PD=Mw/Mn)の制御を可能とする、リビングラジカル重合開始剤として有用な有機テルル化合物、その製造方法、それを用いるポリマーの製造法及びポリマーを提供する。
【解決手段】 式(1)で表される有機テルル化合物。
【化1】


〔式中、Rは、C〜Cのアルキル基を示す。R及びRは、水素原子又はC〜Cのアルキル基を示す。Rは、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機テルル化合物及びその製造方法に関する。更に詳しくは、テルル系リビングラジカル重合開始剤、それを用いるマクロリビングラジカル重合開始剤、リビングラジカルポリマーならびにブロックポリマーの製造方法、及びこれらマクロリビングラジカル重合開始剤ならびにポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
リビングラジカル重合は、ラジカル重合の簡便性と汎用性を保ちつつ分子構造の精密制御を可能にする重合法で、新しい高分子材料の合成に大きな威力を発揮している。リビングラジカル重合の代表的な例として、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニロキシ)を開始剤として用いたリビングラジカル重合が、ジョージズらにより報告されている(特許文献1参照)。
この方法は分子量と分子量分布の制御を可能にしているが、130℃という高い重合温度が必要であり、熱的に不安定な官能基を有するモノマーには適用し難い。また、高分子末端の官能基の修飾制御には不適当である。
【特許文献1】特開平6−199916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、温和な条件下で、精密な分子量及び分子量分布(PD=Mw/Mn)の制御を可能とする、リビングラジカル重合開始剤として有用な有機テルル化合物、その製造方法、それを用いるポリマーの製造法及びポリマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は式(1)で表される有機テルル化合物に係る。
【0005】
【化1】

〔式中、Rは、C〜Cのアルキル基を示す。R及びRは、水素原子又はC〜Cのアルキル基を示す。Rは、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。〕
【0006】
本発明は式(2)で表される化合物と、式(3)で表される化合物と、金属テルルを反応させることを特徴とする式(1)で表される有機テルル化合物の製造法に係る。
【0007】
【化2】

〔式中、R、R及びRは、上記と同じ。Xは、ハロゲン原子を示す。〕
M(R)m (3)
〔式中、Rは、上記と同じ。Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は銅原子を示す。Mがアルカリ金属の時、mは1、Mがアルカリ土類金属の時、mは2、Mが銅原子の時、mは1または2を示す。〕
【0008】
【化3】

〔式中、R〜Rは上記と同じ。〕
【0009】
本発明は式(2)で表される化合物と、式(3)で表される化合物と、金属テルルを反応させて得られうる式(1)で表される有機テルル化合物に係る。
【0010】
【化4】

〔式中、R、R及びRは、上記と同じ。Xは、ハロゲン原子を示す。〕
M(R)m (3)
〔式中、Rは、上記と同じ。Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は銅原子を示す。Mがアルカリ金属の時、mは1、Mがアルカリ土類金属の時、mは2、Mが銅原子の時、mは1または2を示す。〕
【0011】
【化5】

〔式中、R〜Rは上記と同じ。〕
【0012】
本発明は式(4)で表されるリビングラジカル重合開始剤に係る。
【0013】
【化6】

〔式中、Rは、C〜Cのアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族へテロ環基を示す。R及びRは、水素原子又はC〜Cのアルキル基を示す。Rは、アリール基、置換アリール基、芳香族へテロ環基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。〕
本発明はビニルモノマーを、式(4)の化合物をリビングラジカル重合開始剤として用いて重合することを特徴とするリビングラジカルポリマーの製造法に係る。
【0014】
【化7】

〔式中、Rは、C〜Cのアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族へテロ環基を示す。R及びRは、水素原子又はC〜Cのアルキル基を示す。Rは、アリール基、置換アリール基、芳香族へテロ環基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。〕
【0015】
本発明はビニルモノマーを、式(4)のリビングラジカル重合開始剤を用いてリビングラジカル重合して得られうるリビングラジカルポリマーに係る。
【0016】
【化8】

〔式中、Rは、C〜Cのアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族へテロ環基を示す。R及びRは、水素原子又はC〜Cのアルキル基を示す。Rは、アリール基、置換アリール基、芳香族へテロ環基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。〕
【0017】
本発明は上記のリビングラジカルポリマーからなるマクロリビングラジカル重合開始剤に係る。
本発明は上記のマクロリビングラジカル重合開始剤をリビングラジカル重合開始剤として用いて、ビニルモノマーを重合することを特徴とするブロック共重合体の製造法に係る。
本発明は上記のマクロリビングラジカル重合開始剤をリビングラジカル重合開始剤として用いて、ビニルモノマーを重合して得られうるブロック共重体に係る。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、有機テルル化合物及びその製造法を提供し、有機テルル化合物はリビングラジカル重合開始剤として有用で、温和な条件下で、精密な分子量及び分子量分布制御を可能とする。また、重合により得られるリビングラジカルポリマーは、末端基を他の官能基へ変換することが容易であり、これらにより、本発明で得られるリビングラジカルポリマーは、マクロリビングラジカル重合開始剤(マクロイニシエーター)として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の有機テルル化合物は、式(1)で表される。
【0020】
【化9】

〔式中、Rは、C〜Cのアルキル基を示す。R及びRは、水素原子又はC〜Cのアルキル基を示す。Rは、アリール基、置換アリール基、芳香族へテロ環基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。〕
【0021】
で示される基は、具体的には次の通りである。
〜Cのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の炭素数1〜8の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を挙げることができる。好ましいアルキル基としては、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、より好ましくはメチル基又はエチル基が良い。
及びRで示される各基は、具体的には次の通りである。
〜Cのアルキル基としては、上記Rで示したアルキル基と同様のものを挙げることができる。
【0022】
で示される各基は、具体的には次の通りである。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等、置換アリール基としては置換基を有しているフェニル基、置換基を有しているナフチル基等、芳香族へテロ環基としてはピリジル基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。上記置換基を有しているアリール基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、−CORで示されるカルボニル含有基(R=C〜Cのアルキル基、アリール基、C〜Cのアルコキシ基、アリーロキシ基)、スルホニル基、トリフルオロメチル基等を挙げることができる。好ましいアリール基としては、フェニル基、トリフルオロメチル置換フェニル基が良い。また、これら置換基は、1個又は2個置換しているのが良く、パラ位若しくはオルト位が好ましい。
オキシカルボニル基としては、−COOR(R=H、C〜Cのアルキル基、アリール基)で示される基が好ましく、例えばカルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、ter−ブトキシカルボニル基、n−ペントキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等を挙げることができる。好ましいオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が良い。
【0023】
式(1)で示される有機テルル化合物は、具体的には次の通りである。
有機テルル化合物としては、(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−クロロ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−アミノ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−シアノ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−アミノ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−シアノ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−アミノ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−シアノ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、2−(メチルテラニル−メチル)ピリジン、2−(1−メチルテラニル−エチル)ピリジン、2−(2−メチルテラニル−プロピル)ピリジン、2−メチルテラニル−エタン酸メチル、2−メチルテラニル−プロピオン酸メチル、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸メチル、2−メチルテラニル−エタン酸エチル、2−メチルテラニル−プロピオン酸エチル、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メチルテラニルアセトニトリル、2−メチルテラニルプロピオニトリル、2−メチル−2−メチルテラニルプロピオニトリル等を挙げることができる。好ましくは、(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸メチル、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メチルテラニルプロピオニトリル、2−メチル−2−メチルテラニルプロピオニトリルが良い。
式(1)で示される有機テルル化合物は、式(2)の化合物、式(3)の化合物および金属テルルを反応させることにより製造することができる。
【0024】
上記、式(2)で表される化合物としては、具体的には次の通りである。
【化10】

〔式中、R、R及びRは、上記と同じ。Xは、ハロゲン原子を示す。〕
【0025】
、R及びRで示される各基は、上記に示した通りである。
Xで示される基としては、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素等のハロゲン原子を挙げることができる。好ましくは、塩素、臭素が良い。
【0026】
具体的な化合物としては、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、1−クロロ−1−フェニルエタン、1−ブロモ−1−フェニルエタン、2−クロロ−2−フェニルプロパン、2−ブロモ−2−フェニルプロパン、p−クロロベンジルクロライド、p−ヒドロキシベンジルクロライド、p−メトキシベンジルクロライド、p−アミノベンジルクロライド、p−ニトロベンジルクロライド、p−シアノベンジルクロライド、p−メチルカルボニルベンジルクロライド、フェニルカルボニルベンジルクロライド、p−メトキシカルボニルベンジルクロライド、p−フェノキシカルボニルベンジルクロライド、p−スルホニルベンジルクロライド、p−トリフルオロメチルベンジルクロライド、1−クロロ−1−(p−クロロフェニル)エタン、1−ブロモ−1−(p−クロロフェニル)エタン、1−クロロ−1−(p−ヒドロキシフェニル)エタン、1−ブロモ−1−(p−ヒドロキシフェニル)エタン、1−クロロ−1−(p−メトキシフェニル)エタン、1−ブロモ−1−(p−メトキシフェニル)エタン、1−クロロ−1−(p−アミノフェニル)エタン、1−ブロモ−1−(p−アミノフェニル)エタン、1−クロロ−1−(p−ニトロフェニル)エタン、1−ブロモ−1−(p−ニトロフェニル)エタン、1−クロロ−1−(p−シアノフェニル)エタン、1−ブロモ−1−(p−シアノフェニル)エタン、1−クロロ−1−(p−メチルカルボニルフェニル)エタン、1−ブロモ−1−(p−メチルカルボニルフェニル)エタン、1−クロロ−1−(p−フェニルカルボニルフェニル)エタン、1−ブロモ−1−(p−フェニルカルボニルフェニル)エタン、1−クロロ−1−(p−メトキシカルボニルフェニル)エタン、1−ブロモ−1−(p−メトキシカルボニルフェニル)エタン、1−クロロ−1−(p−フェノキシカルボニルフェニル)エタン、1−ブロモ−1−(p−フェノキシカルボニルフェニル)エタン、1−クロロ−1−(p−スルホニルフェニル)エタン、1−ブロモ−1−(p−スルホニルフェニル)エタン、1−クロロ−1−(p−トリフルオロメチルフェニル)エタン、1−ブロモ−1−(p−トリフルオロメチルフェニル)エタン、2−クロロ−2−(p−クロロフェニル)プロパン、2−ブロモ−2−(p−クロロフェニル)プロパン、2−クロロ−2−(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−ブロモ−2−(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−クロロ−2−(p−メトキシフェニル)プロパン、2−ブロモ−2−(p−メトキシフェニル)プロパン、2−クロロ−2−(p−アミノフェニル)プロパン、2−ブロモ−2−(p−アミノフェニル)プロパン、2−クロロ−2−(p−ニトロフェニル)プロパン、2−ブロモ−2−(p−ニトロフェニル)プロパン、2−クロロ−2−(p−シアノフェニル)プロパン、2−ブロモ−2−(p−シアノフェニル)プロパン、2−クロロ−2−(p−メチルカルボニルフェニル)プロパン、2−ブロモ−2−(p−メチルカルボニルフェニル)プロパン、2−クロロ−2−(p−フェニルカルボニルフェニル)プロパン、2−ブロモ−2−(p−フェニルカルボニルフェニル)プロパン、2−クロロ−2−(p−メトキシカルボニルフェニル)プロパン、2−ブロモ−2−(p−メトキシカルボニルフェニル)プロパン、2−クロロ−2−(p−フェノキシカルボニルフェニル)プロパン、2−ブロモ−2−(p−フェノキシカルボニルフェニル)プロパン、2−クロロ−2−(p−スルホニルフェニル)プロパン、2−ブロモ−2−(p−スルホニルフェニル)プロパン、2−クロロ−2−(p−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2−ブロモ−2−(p−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2−(クロロメチル)ピリジン、2−(ブロモメチル)ピリジン、2−(1−クロロエチル)ピリジン、2−(1−ブロモエチル)ピリジン、2−(2−クロロプロピル)ピリジン、2−(2−ブロモプロピル)ピリジン、2−クロロエタン酸メチル、2−ブロモエタン酸メチル、2−クロロプロピオン酸メチル、2−ブロモエタン酸メチル、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−クロロエタン酸エチル、2−ブロモエタン酸エチル、2−クロロプロピオン酸エチル、2−ブロモエタン酸エチル、2−クロロ−2−エチルプロピオン酸エチル、2−ブロモ−2−エチルプロピオン酸エチル、2−クロロアセトニトリル、2−ブロモアセトニトリル、2−クロロプロピオニトリル、2−ブロモプロピオニトリル、2−クロロ−2−メチルプロピオニトリル、2−ブロモ−2−メチルプロピオニトリル等を挙げることができる。
【0027】
上記、式(3)で表される化合物としては、具体的には次の通りである。
M(R)m (3)
〔式中、Rは、上記と同じ。Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は銅原子を示す。Mがアルカリ金属の時、mは1、Mがアルカリ土類金属の時、mは2、Mが銅原子の時、mは1または2を示す。〕
で示される基は、上記に示した通りである。
Mで示されるものとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、銅を挙げることができる。好ましくは、リチウムが良い。
具体的な化合物としては、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム等を挙げることができる。
【0028】
上記製造方法としては、具体的には次の通りである。
金属テルルを溶媒に懸濁させる。使用できる溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラハイドロフラン(THF)等の極性溶媒やトルエン、キシレン等の芳香族溶媒、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ジアルキルエーテル等のエーテル類等が挙げられる。好ましくは、THFが良い。溶媒の使用量としては適宜調節すればよいが、通常、金属テルル1gに対して5〜10ml、好ましくは、7〜8mlが良い。
上記懸濁溶液に、化合物(3)をゆっくりと滴下しその後撹拌する。反応時間は、反応温度や圧力により異なるが、通常5分〜24時間、好ましくは、10分〜2時間が良い。反応温度としては、−20℃〜80℃、好ましくは、15℃〜40℃、より好ましくは、室温が良い。圧力は、通常、常圧で行うが、加圧或いは減圧しても構わない。
次に、この反応溶液に、化合物(2)を加え、撹拌する。反応時間は、反応温度や圧力により異なるが、通常5分〜24時間、好ましくは、10分〜2時間が良い。反応温度としては、−20℃〜80℃、好ましくは、15℃〜40℃、より好ましくは、室温が良い。圧力は、通常、常圧で行うが、加圧或いは減圧しても構わない。
金属テルル、化合物(2)及び化合物(3)の使用割合としては、金属テルル1molに対して、化合物(2)を0.5〜1.5mol、化合物(3)を0.5〜1.5mol、好ましくは、化合物(2)を0.8〜1.2mol、化合物(3)を0.8〜1.2molとするのが良い。
反応終了後、溶媒を濃縮し、目的化合物を単離精製する。精製方法としては、化合物により適宜選択できるが、通常、減圧蒸留や再結晶精製等が好ましい。
本発明のリビングラジカル重合開始剤は、式(4)で表される化合物である。
【0029】
【化11】

〔式中、R〜Rは前記に同じ、Rは、C〜Cのアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族へテロ環基を示す。〕
【0030】
で示されるアルキル基としては、Rで示した基と同様のアルキル基を挙げることができる。
アリール基、置換アリール基、芳香族へテロ環基としては、上記Rで示した基と同様のものを挙げることができる。
式(4)で示されるリビングラジカル重合開始剤は、具体的には、式(1)で具体的に示した化合物以外に、(フェニルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−フェニルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−フェニルテラニル−プロピル)ベンゼン等を挙げることができる。
式(4)で示されるリビングラジカル重合開始剤は、式(3)で表される化合物の代わりに、式(7)で表される化合物を使用する以外は、式(1)の化合物の製造方法と同様の方法で製造することができる。
M(R)m (7)
〔式中、R、M及びmは、上記と同じ。〕
化合物(7)としては、具体的には化合物(3)の他、フェニルリチウム、p−クロロフェニルリチウム、p−メトキシフェニルリチウム、p−ニトロフェニルリチウム等を挙げることができる。好ましくは、フェニルリチウムが良い。
【0031】
本発明で使用するビニルモノマーとしては、ラジカル重合可能なものであれば特に制限はないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル等のシクロアルキル基含有不飽和モノマー、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸等メチル等のカルボキシル基含有不飽和モノマー、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の3級アミン含有不飽和モノマー、N−2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、N−メタクリロイルアミノエチル−N,N,N−ジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩基含有不飽和モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有不飽和モノマー、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、2−ヒドロキシメチルスチレン、2−クロロスチレン、4−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、1−ビニルナフタレン、ジビニルベンゼンp−スチレンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)等の芳香族不飽和モノマー、2−ビニルチオフェン、N−メチル−2−ビニルピロール等のヘテロ環含有不飽和モノマー、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のビニルアミド、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等のα−オレフィン、酢酸ビニル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリロニトリル、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、塩化ビニル等を挙げることができる。
【0032】
この中でも好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、3級アミン含有不飽和モノマー、スチレン系モノマー、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドが良い。
好ましい(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチルが挙げられる。特に好ましくは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチルが良い。
好ましい3級アミン含有不飽和モノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
好ましいスチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、p−スチレンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)が挙げられる。特に好ましくは、スチレン、p−メトキシスチレン、p−クロロスチレンが良い。
尚、上記の「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の総称である。
【0033】
上記製造方法としては、具体的には次の通りである。
不活性ガスで置換した容器で、ビニルモノマーと本発明の式(4)で示されるリビングラジカル重合開始剤を混合する。この時、不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等を挙げることができる。好ましくは、アルゴン、窒素が、特に好ましくは、窒素が良い。また、ビニルモノマーとリビングラジカル重合開始剤の使用量としては、得られるリビングラジカルポリマーの分子量或いは分子量分布により適宜調節すればよいが、通常、リビングラジカル重合開始剤1当量に対して、ビニル系モノマーを5〜10,000当量、好ましくは50〜5,000当量が良い。この時、通常、無溶媒で行うが、ラジカル重合で一般に使用される溶媒を使用しても構わない。使用できる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル等が挙げられる。好ましくはDMFが良い。溶媒の使用量としては適宜調節すれば良いが、例えば、ビニルモノマー1gに対して、溶媒を0.01〜1ml、好ましくは、0.05〜0.5mlが良い。
次に、上記混合物を撹拌する。反応温度、反応時間は、得られるリビングラジカルポリマーの分子量或いは分子量分布により適宜調節すればよいが、通常、60〜150℃で、5〜100時間撹拌する。好ましくは、80〜120℃で、10〜30時間撹拌するのが良い。この時、通常、常圧で行われるが、加圧或いは減圧しても構わない。
反応終了後、常法により使用溶媒や残存モノマーを減圧下除去して目的ポリマーを取り出したり、目的ポリマー不溶溶媒を使用して再沈澱処理により目的物を単離する。反応処理については、目的物に支障がなければどのような処理方法でも行う事が出来る。
【0034】
本発明のリビングラジカル重合開始剤は、優れた分子量制御及び分子量分布制御を非常に温和な条件下で行うことができる。
本発明で得られるリビングラジカルポリマーの分子量は、反応時間及び有機テルル化合物の量により調整可能であるが、数平均分子量500〜1,000,000のリビングラジカルポリマーを得ることができる。特に数平均分子量1,000〜50,000のリビングラジカルポリマーを得るのに好適である。
本発明で得られるリビングラジカルポリマーの分子量分布(PD=Mw/Mn)は、1.05〜1.50の間で制御される。更に、分子量分布1.05〜1.30、更には1.05〜1.20、更には1.05〜1.15のより狭いリビングラジカルポリマーを得ることができる。
【0035】
本発明で得られるリビングラジカルポリマーの末端基は、有機テルル化合物由来のアルキル基、アリール基、置換アリール基、芳香族へテロ環基又はオキシカルボニル基が、また、成長末端は、反応性の高いテルルであることが確認されている。従って、有機テルル化合物をリビングラジカル重合に用いることにより従来のリビングラジカル重合で得られるリビングラジカルポリマーよりも末端基を他の官能基へ変換することが容易である。これらにより、本発明で得られるリビングラジカルポリマーは、マクロリビングラジカル重合開始剤(マクロイニシエーター)として用いることができる。
即ち、本発明のマクロリビングラジカル重合開始剤を用いて、例えばスチレン−アクリル酸ブチル等のA−Bジブロック共重合体やスチレン−アクリル酸ブチル−スチレン等のA−B−Aトリブロック共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル等のA−B−Cトリブロック共重合体を得ることができる。これは、本発明のリビングラジカル重合開始剤で、種々の異なったタイプのビニル系モノマーをコントロールできること、また、リビングラジカル重合開始剤によりえられるリビングラジカルポリマーの成長末端に反応性の高いテルルが存在していることによるものである。
【0036】
ブロック共重合体の製造方法としては、具体的には次の通りである。
A−Bジブロック共重合体の場合、例えば、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体の場合は、上記のリビングラジカルポリマーの製造方法と同様に、まず、スチレンと本発明の式(4)で示されるリビングラジカル重合開始剤を混合し、ポリスチレンを製造後、続いてアクリル酸ブチルを混合して、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体を得る方法が挙げられる。
A−B−Aトリブロック共重合体やA−B−Cトリブロック共重合体の場合も、上記の方法でA−Bジブロック共重合体を製造した後、ビニルモノマー(A)或いはビニルモノマー(C)を混合し、A−B−Aトリブロック共重合体やA−B−Cトリブロック共重合体を得る方法が挙げられる。
上記で、各ブロックを製造後、そのまま次のブロックの反応を開始しても良いし、一度反応を終了後、精製してから次のブロックの反応を開始しても良い。ブロック共重合体の単離は通常の方法により行うことができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが何らこれらに限定されるものではない。また、実施例及び比較例において、各種物性測定は以下の方法で行った。
(1)有機テルル化合物及びリビングラジカルポリマーの同定
有機テルル化合物を、H−NMR、H−NMR、13C−NMR、IR及びMSの測定結果から同定した。また、リビングラジカルポリマーの分子量及び分子量分布は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いてポリスチレン標準サンプルの分子量を基準として求めた。使用した測定機器は以下の通りである。
H−NMR:Varian Gemini 2000(300MHz forH)、JEOL JNM−A400(400MHz for H)
H−NMR:JEOL JNM−A400
13C−NMR:Varian Gemini 2000、JEOL JNM−A400
IR:Shimadzu FTIR−8200(cm−1
MS(HRMS、FAB−MS):JEOL JMS−300
分子量及び分子量分布:液体クロマトグラフ Shimadzu LC−10(カラム:Shodex K−804L + K−805L、ポリスチレンスタンダード:TOSOH TSK Standard)
【0038】
合成例1
1−(1−ブロモエチル)−4−クロロベンゼンの合成〔化合物(2)、実施例2で使用〕
メタノール 100mlに4−クロロアセトフェノン 15.5g(100mmol)を溶かした溶液に、メタノール 250mlに水素化ほう素ナトリウム 5.67g(150mmol)を溶かした溶液を、ゆっくり加えた。この溶液を、室温で一晩撹拌した。この反応溶液を、1規定塩酸を加え、有機層をジエチルエーテルで抽出した。集めた有機層を芒硝で乾燥、濃縮後、1−(4−クロロフェニル)エタノール〔H−NMR(300MHz,CDCl)1.48(d,J=6.3Hz,3H),4.88(q,J=6.6Hz,1H),7.31(s,4H)〕をほとんど純粋な形で得た。
ジエチルエーテル 100mlに上記1−(4−クロロフェニル)エタノールを溶かした溶液に、ジエチルエーテル
50mlに三臭化リン 13.5g(50mmol)を溶かした溶液を、ゆっくり加えた。この溶液を、室温で一晩撹拌した。この反応溶液を、氷水に注いだ。この溶液に炭酸水素ナトリウムを加え中和し、有機層をジエチルエーテルで抽出した。集めた有機層を水洗し、芒硝で乾燥後、有機層を減圧濃縮し、1−(1−ブロモエチル)−4−クロロベンゼン〔H−NMR(300MHz,CDCl3)2.02(d,J=6.9Hz,3H),5.1(q,J=6.9Hz,1H),7.26−7.40(m,4H)〕9.00g(41mmol:収率82%)をほとんど純粋な形で得た。
【0039】
合成例2
フェニルトリメチルシリルテルライドの合成(比較例1で使用)
金属テルル〔Aldrich製、商品名:Tellurium(−40mesh)〕6.38g(50mmol)をTHF 50mlに懸濁させ、フェニルリチウム(関東化学株式会社製、商品名:フェニルリチウム,シクロヘキサン−ジエチルエーテル溶液)52.8mlを室温でゆっくり加えた(15分間)。この反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで撹拌した(30分間)。この反応溶液に、トリメチルシリルクロライド
5.98g(55mmol)を室温で加え、40分間撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を濃縮し、続いて減圧蒸留して、黄色油状物
6.798g(24.5mmol:収率49%)を得た。
H−NMRによりフェニルトリメチルシリルテルライドであることを確認した。
H−NMR(300MHz,CDCl)0.522(s,9H),7.095−7.144(m,2H),7.254−7.312(m,1H),7.220−7.758(m,2H)
【0040】
合成例3
2−ビニルチオフェンの合成(実施例23で使用のビニルモノマー)
カリウムtert−ブトキシド 20.2g(180mmol)をジエチルエーテル
200mlに懸濁させ、メチルトリフェニルホスホニウム ブロミド 64.3g(180mmol)を加えた。この黄色懸濁溶液を1時間還流した。この混合溶液を室温まで冷却し、2−チオフェンアルデヒド(stabilized with Hydroquinone)16.8g(150mmol)を0℃でゆっくり加え(10分間)、1時間還流した。反応溶液に水を加え反応を終了させ、エチルアセテートで有機層を数回抽出し、集めた有機層を芒硝で乾燥後、減圧濃縮し、透明油状物4.31g(39.2mmol:収率26%)を得た。
H−NMRにより2−ビニルチオフェンであることを確認した。
H−NMR(300MHz,CDCl)5.41(d,J=11.1Hz,1H),5.57(d,J=17.4Hz,1H),6.81(dd,J=17.3,10.7Hz,1H),6.94−7.00(m,2H),7.24−7.20(m,1H)
【0041】
合成例4
N−メチル−2−ビニルピロールの合成(実施例26で使用のビニルモノマー)
カリウムtert−ブトキシド 13.5g(120mmol)をジエチルエーテル200mlに懸濁させ、メチルトリフェニルホスホニウム ブロミド
42.9g(120mmol)を加えた。この黄色懸濁溶液を1時間還流した。この混合溶液を室温まで冷却し、1−メチル−2−ピロールアルデヒド
10.9g(100mmol)を0℃でゆっくり加え(10分間)、1時間還流した。反応溶液に水を加え反応を終了させ、エチルアセテートで有機層を数回抽出し、集めた有機層を芒硝で乾燥後、減圧濃縮し、透明油状物
3.96g(37.0mmol:収率37%)を得た。
H−NMRにより1−メチル−2−ビニルピロールであることを確認した。
H−NMR(300MHz,CDCl)3.62(s,3H),5.04(dd,j=11.3,1.4Hz,1H),5.47(dd,j=17.4,1.5Hz,1H),6.07−6.14(m,1H),6.37(dd,J=3.6,1.8Hz,1H),6.52−6.66(m,2H)
【0042】
合成例5
エチル−2−トリブチルスタニルメチルアクリレートの合成(試験例2で使用)
エチル−2−ブロモメチルアクリレート 1.5ml(10.9mmol)のメタノール 22ml溶液にベンゼンスルフィン酸ナトリウム 3.50g(21.3mmol)を加え、11時間加熱還流した。溶媒を減圧留去後、水と酢酸エチルを加えた。有機層を分離後、水層を酢酸エチルで3回抽出した。集めた有機層を食塩水で洗った後、芒硝を加えて乾燥した。乾燥剤をろ過した後、溶媒を留去することで得られた素生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することによりエチル−2−ベンゼンスルフォニルメチルアクリレート
2.69gを97%の収率で得た。
上記で得たエチル−2−ベンゼンスルフォニルメチルアクリレート 1.29g(5.1mmol)、トリブチル錫ヒドリド 2.75ml(10.2mmol)、アゾビスブチロニトリル(AIBN)33.4mg(0.20mmol)のベンゼン 2.6ml溶液を1時間加熱還流した。溶媒を留去後、得られた生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、エチル−2−トリブチルスタニルメチルアクリレート
1.34gを65%の収率で得た。
【0043】
実施例1
(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼンの合成
金属テルル(上記と同じ)6.38g(50mmol)をTHF
50mlに懸濁させ、これにメチルリチウム(関東化学株式会社製、商品名:メチルリチウム,ジエチルエーテル溶液)52.9ml(1.04Mジエチルエーテル溶液、55mmol)を、室温でゆっくり滴下した(10分間)。この反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで撹拌した(20分間)。この反応溶液に、(1−ブロモエチル)ベンゼン
11g(60mmol)を室温で加え、2時間撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を濃縮し、続いて減圧蒸留して、黄色油状物8.66g(収率70%)を得た。
IR、MS(HRMS)、H−NMR、13C−NMRにより(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼンであることを確認した。
IR(neat,cm−1)1599,1493,1451,1375,1219,1140,830,760,696,577
HRMS(EI)m/z:Calcd for C12Te(M),250.0001;Found250.0001
H−NMR(300MHz,CDCl)1.78(s,3H,TeCH),1.90(d,J=7.2Hz,3H),4.57(q,J=7.2Hz,1H,CHTe),7.08−7.32(m,5H)
13C−NMR(75MHz,CDCl)−18.94,18.30,23.89,126.17,126.80,128.30,145.79
【0044】
実施例2
1−クロロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼンの合成
金属テルル 4.08g(32mmol)をTHF
50mlに懸濁させ、これにメチルリチウム(上記と同じ)42ml(35mmol)を、0℃でゆっくり滴下した(20分間)。この反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで撹拌した(10分間)。この反応溶液に、1−(1−ブロモエチル)−4−クロロベンゼン(合成例1で得たもの)7.68g(35mmol)を室温で加え、1.5時間撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を濃縮し、続いて減圧蒸留して、褐色油状物3.59g(12.7mmol:収率36%)を得た。
H−NMR、13C−NMRにより1−クロロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼンであることを確認した。
H−NMR(300MHz,CDCl)1.81(s,3H,TeCH),1.89(d,J=6.6Hz,3H),4.54(q,J=7.2Hz,1H),7.23(s,4H)
13C−NMR(100MHz,CDCl)−18.80(TeCH),17.18(CH),23.81(CH),128.08(CH,2C),128.39(CH,2C),131.15(C),144.45(C)
【0045】
実施例3
(1−フェニルテラニル−エチル)ベンゼンの合成
メチルリチウムをフェニルリチウム(上記と同じ)53.0ml(1.06Mジエチルエーテル溶液、55mmol)に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、黄色油状物
1.53g(収率10%)を得た。
MS(HRMS)、H−NMRにより(1−フェニルテラニル−エチル)ベンゼンであることを確認した。
HRMS(EI)m/z:Calcd for C1414Te(M),312.0158;Found312.0164
H−NMR(300MHz,CDCl)1.97(d,J=7.5Hz,3H),4.80(q,J=7.2Hz,1H,CHTe),7.00−7.71(m,10H)
【0046】
実施例4
(メチルテラニル−メチル)ベンゼンの合成
(1−ブロモエチル)ベンゼンをベンジルブロマイド 9.4g(55mmol)に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、黄色油状物 7.30g(収率50%)を得た。
IR、MS(HRMS)、H−NMR、13C−NMRにより(メチルテラニル−メチル)ベンゼンであることを確認した。
IR(neat,cm−1)1599,1493,1453,1418,1221,1140,1059,1030,847,754,696,569
HRMS(EI)m/z:Calcd for C10Te(M),235.9845;Found235.9844
H−NMR(300MHz,CDCl)1.83(s,3H,TeCH),3.97(s,2H),7.10−7.32(m,5H)
13C−NMR(75MHz,CDCl)−18.48,37.86,125.81,128.29,140.89,141.67
【0047】
実施例5
エチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピネートの合成
(1−ブロモエチル)ベンゼンをエチル−2−ブロモ−イソ−ブチレート 10.7g(55mmol)に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、黄色油状物 6.53g(収率51%)を得た。
IR、MS(HRMS)、H−NMR、13C−NMRによりエチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピネートであることを確認した。
IR(neat,cm−1)1700,1466,1385,1269,1146,1111,1028
HRMS(EI)m/z:Calcd for C14Te(M),260.0056;Found260.0053
H−NMR(300MHz,CDCl)1.27(t,J=6.9Hz,3H),1.74(s,6H),2.15(s,3H,TeCH),4.16(q,J=7.2Hz,2H)
13C−NMR(75MHz,CDCl)−17.38,13.89,23.42,27.93,60.80,176.75
【0048】
実施例6
2−メチルテラニルプロピオニトリルの合成
金属テルル6.38g(50mmol)をTHF50mlに懸濁させ、これにメチルリチウム52.9ml(55mmol)を、室温でゆっくり滴下した(10分間)。この反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで撹拌した(20分間)。この反応溶液に、2−ブロモプロピオニトリル8.0g(60mmol)を室温で加え、2時間撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を濃縮し、続いて減圧蒸留して、黄色油状物4.52g(収率46%)を得た。
IR、MS(HRMS)、H−NMR、13C−NMRにより2−メチルテラニルプロピオニトリルであることを確認した。
【0049】
比較例1
(ジフェニル−フェニルテラニル−メトキシ)トリメチルシランの合成
ベンゾフェノン 0.92g(5.0mmol)をプロピオニトリル 5.0mlに溶かし、これにフェニルトリメチルシリルテルライド(合成例2で得たもの)1.39g(5.0mmol)を、室温でゆっくり滴下し、その後12時間撹拌した。反応終了後、沈殿したピンク色の粉末をろ過し、冷ヘキサンで洗浄後、減圧乾燥し、表題の物質を1.37g(収率60%)得た。母液を濃縮後、残留固体をプロピオニトリル/ヘキサン/エチルアセテートで再結晶精製し、二度目の収穫物
0.63g(29%)を得た。
IR、MS(FAB−MS)、H−NMR、13C−NMRにより(ジフェニル−フェニルテラニル−メトキシ)トリメチルシランのであることを確認した。
融点65.3−66.4℃
IR(KBr)1265(m),1250(m),1170(m),1110(s),1075(m),870(s),835(s),750(m),735(m),720(m),700(s),690(m)
H−NMR(300MHz,CDCl)−0.02(s,9H),7.05−7.25(m,13H),7.81−7,84(m,2H)
13C−NMR(75MHz,CDCl)2.3,88.4,108.0,125.8,126.4,128.2,129.4,131.2,137.7,145.8
FAB−MS(matrix:3−ニトロベンジルアルコール)m/z:255(M−TePh)
【0050】
比較例2
テルル−メチルテルロベンゾエートの合成
金属テルル (上記と同じ)6.38g(50mmol)をTHF
50mlに懸濁させ、これにメチルリチウム(上記と同じ) 48.0ml(1.14Mジエチルエーテル溶液、55mmol)を、室温でゆっくり滴下した(20分間)。この反応溶液に、ベンゾイルクロライド
7.7g(55mmol)を0℃で加え、室温で30分間撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を濃縮し、続いて減圧蒸留して、赤色油状物8.75g(収率71%)を得た。
IR、MS(HRMS)、H−NMR、13C−NMRによりテルル−メチルテルロベンゾエートであることを確認した。
IR(neat,cm−1)1660,1580,1447,1200,1169,868,762,685,666,596
HRMS(EI)m/z:Calcd for COTe(M),249.9637;Found249.9635
H−NMR(300MHz,CDCl)2.25(s,3H,TeCH),7.41(t,J=6.9Hz,2H),7.57(t,J=7.7Hz,1H),7.70−7.78(m,2H)
13C−NMR(75MHz,CDCl)−14.72,126.63,128.79,133.59,142.67,195.64
【0051】
実施例7〜13
スチレンのリビングラジカル重合
窒素置換したグローブボックス内で、スチレンと実施例1で合成した(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン
24.8mg(0.10mmol)を、表1に記載の通り配合し、105℃で18〜29時間反応させた。反応終了後、クロロホルム5mlに溶解した後、その溶液を撹拌しているメタノール250ml中に注いだ。沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することによりポリスチレンを得た。GPC分析による結果を表1に示した。
【0052】
【表1】

【0053】
実施例14
窒素置換したグローブボックス内で、スチレン 1.04g(10mmol)と実施例3で合成した(1−フェニルテラニル−エチル)ベンゼン
30.9mg(0.10mmol)を配合し、105℃で17時間反応させた。反応終了後、クロロホルム
5mlに溶解した後、その溶液を撹拌しているメタノール 200ml中に注いだ。沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することによりポリスチレン 0.9481g(収率91%)を得た。GPC分析により、Mn 15900、PD=1.45であった。
【0054】
実施例15
窒素置換したグローブボックス内で、スチレン 1.04g(10mmol)と実施例4で合成した(メチルテラニル−メチル)ベンゼン
23.4mg(0.10mmol)を配合し、105℃で16時間反応させた。反応終了後、クロロホルム
5mlに溶解した後、その溶液を撹拌しているメタノール 250ml中に注いだ。沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することによりポリスチレン 0.9273g(収率89%)を得た。GPC分析により、Mn 9000、PD=1.46であった。
【0055】
実施例16
窒素置換したグローブボックス内で、スチレン 1.04g(10mmol)と実施例5で合成したエチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピネート
25.8mg(0.10mmol)を配合し、105℃で20時間反応させた。反応終了後、クロロホルム5mlに溶解した後、その溶液を撹拌しているメタノール
250ml中に注いだ。沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することによりポリスチレン 0.9286g(収率89%)を得た。GPC分析により、Mn 9000、PD=1.46であった。
【0056】
実施例17
窒素置換したグローブボックス内で、スチレン1.04g(10mmol)と実施例6で合成した2−メチルテラニルプロピオニトリル19.7mg(0.10mmol)を配合し、100℃で11時間反応させた。反応終了後、クロロホルム5mlに溶解した後、その溶液を撹拌しているヘキサン250ml中に注いだ。沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することによりポリスチレン1.01g(収率97%)を得た。GPC分析により、Mn 11000、PD=1.21であった。
【0057】
実施例18
窒素置換したグローブボックス内で、p−クロロスチレン 1.39g(10mmol)と実施例1で合成した(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン 24.8mg(0.10mmol)を配合し、100℃で17時間反応させた。反応終了後、クロロホルム 5mlに溶解した後、その溶液を撹拌しているメタノール
250ml中に注いだ。沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することによりポリスチレン 1.2244g(収率88%)を得た。GPC分析により、Mn 8800、PD=1.41であった。
【0058】
実施例19
窒素置換したグローブボックス内で、p−メトキシスチレン 1.18g(10mmol)と実施例1で合成した(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン 24.8mg(0.10mmol)を配合し、105℃で13時間反応させた。反応終了後、クロロホルム 5mlに溶解した後、その溶液を撹拌しているメタノール
250ml中に注いだ。沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することによりポリスチレン 1.1018g(収率93%)を得た。GPC分析により、Mn 10600、PD=1.13であった。
【0059】
比較例3
窒素置換したグローブボックス内で、スチレン 1.04g(10mmol)と比較例1で合成した(ジフェニル−フェニルテラニル−メトキシ)トリメチルシラン
46.0mg(0.10mmol)を配合し、105℃で16時間反応させた。反応終了後、クロロホルム
5mlに溶解した後、その溶液を撹拌しているメタノール 250ml中に注いだ。沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することによりポリスチレン 0.7875g(収率76%)を得た。GPC分析により、Mn 50700、PD=1.80であった。
【0060】
比較例4
窒素置換したグローブボックス内で、スチレン 1.04g(10mmol)と比較例2で合成したテルル−メチルテルロベンゾエート
24.8mg(0.10mmol)を配合し、105℃で18時間反応させた。反応終了後、クロロホルム
5mlに溶解した後、その溶液を撹拌しているメタノール 250ml中に注いだ。沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することによりポリスチレン 0.8660g(収率83%)を得た。GPC分析により、Mn 25400、PD=1.58であった。
【0061】
実施例20
窒素置換したグローブボックス内で、アクリル酸メチル〔stabilized with Hydroquinone methyl ether(MEHQ)〕8.60g(10mmol)と実施例1で合成した(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン 24.8mg(0.10mmol)を配合し、100℃で24時間反応させた。反応終了後、クロロホルム 5mlに溶解した後、その溶液を撹拌しているヘキサン
250ml中に注いだ。沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することによりポリアクリル酸メチル 7.40g(収率86%)を得た。GPC分析により、Mn 8800、PD=1.12であった。
【0062】
実施例21
窒素置換したグローブボックス内で、アクリル酸メチル 8.60g(10mmol)と実施例5で合成したエチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピネート 25.8mg(0.10mmol)を配合し、100℃で24時間反応させた。反応終了後、クロロホルム
5mlに溶解した後、その溶液を撹拌しているヘキサン 250ml中に注いだ。沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することによりポリアクリル酸メチル 6.03g(収率70%)を得た。GPC分析により、Mn 6400、PD=1.11であった。
【0063】
実施例22
窒素置換したグローブボックス内で、アクリル酸n−ブチル(stabilized with MEHQ)1.28g(10mmol)と実施例1で合成した(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン 24.8mg(0.10mmol)を配合し、100℃で24時間反応させた。反応終了後、クロロホルム 5mlに溶解した後、その溶液を撹拌しているヘキサン
250ml中に注いだ。沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することによりポリアクリル酸n−ブチル 1.15g(収率89%)を得た。GPC分析により、Mn 10300、PD=1.13であった。
【0064】
実施例23
窒素置換したグローブボックス内で、N,N−ジメチルアクリルアミド(stabilized with MEHQ)0.99g(10mmol)と実施例1で合成した(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン 24.8mg(0.10mmol)を配合し、100℃で19時間反応させた。反応終了後、クロロホルム 5mlに溶解した後、その溶液を撹拌しているヘキサン
250ml中に注いだ。沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することによりポリN,N−ジメチルアクリルアミド 0.92g(収率93%)を得た。GPC分析により、Mn 10600、PD=1.26であった。
【0065】
実施例24
窒素置換したグローブボックス内で、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート(stabilized with MEHQ)14.3g(10mmol)と実施例1で合成した(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン 24.8mg(0.10mmol)をDMF 1mlに溶解し、100℃で96時間反応させた。反応終了後、溶媒を減圧留去することによりポリ2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート11.583g(収率81%)を得た。GPC分析により、Mn 12000、PD=1.23であった。
【0066】
実施例25
窒素置換したグローブボックス内で、2−ビニルチオフェン(合成例3で得たもの)1.10g(10mmol)と実施例1で合成した(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン 24.8mg(0.10mmol)を配合し、100℃で15時間反応させた。反応終了後、クロロホルム 5mlに溶解した後、その溶液を撹拌しているヘキサン
250ml中に注いだ。沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することによりポリ2−ビニルチオフェン 1.08g(収率97%)を得た。GPC分析により、Mn 9500、PD=1.25であった。
【0067】
実施例26
窒素置換したグローブボックス内で、2−ビニルチオフェン(上記と同じ)1.10g(10mmol)と実施例5で合成したエチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピネート 25.8mg(0.10mmol)を配合し、100℃で15時間反応させた。反応終了後、クロロホルム
5mlに溶解した後、その溶液を撹拌しているヘキサン 250ml中に注いだ。沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することによりポリ2−ビニルチオフェン 1.04g(収率95%)を得た。GPC分析により、Mn 7600、PD=1.34であった。
【0068】
実施例27
窒素置換したグローブボックス内で、N−メチル−2−ビニルピロール(合成例4で得たもの)1.07g(10mmol)と実施例1で合成した(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン 24.8mg(0.10mmol)を配合し、100℃で20時間反応させた。反応終了後、クロロホルム 5mlに溶解した後、その溶液を撹拌しているヘキサン
250ml中に注いだ。沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することによりポリN−メチル−2−ビニルピロール1.02g(収率95%)を得た。GPC分析により、Mn 12700、PD=1.15であった。
【0069】
実施例28
窒素置換したグローブボックス内で、N−メチル−2−ビニルピロール(上記と同じ)1.10g(10mmol)と実施例5で合成したエチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピネート 25.8mg(0.10mmol)を配合し、100℃で20時間反応させた。反応終了後、クロロホルム
5mlに溶解した後、その溶液を撹拌しているヘキサン 250ml中に注いだ。沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することによりポリN−メチル−2−ビニルピロール1.05g(収率96%)を得た。GPC分析により、Mn 13800、PD=1.12であった。
【0070】
実施例29
ポリスチレン−ポリアクリル酸tert−ブチルジブロックポリマーの製造
窒素置換したグローブボックス内で、スチレン 1.04g(10mmol)と実施例1で合成した(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン
24.8mg(0.10mmol)を、100℃で20時間反応させた。反応終了後、重クロロホルム
5mlに溶解した後、その溶液を撹拌しているメタノール 300ml中に注いだ。沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することによりポリスチレン 1.015g(収率95%)を得た。GPC分析により、Mn 9000、PD=1.15であった。
次に、上記で得られたポリスチレン(開始剤として使用)521mg(0.05mmol)とアクリル酸tert−ブチル(stabilized with MEHQ)640mg(5mmol)を、100℃で25時間反応させた。反応終了後、クロロホルム
5mlに溶解した後、その溶液を撹拌している水/メタノール混合溶液 300ml(水:メタノール=1:4)中に注いだ。沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することによりポリスチレン−ポリアクリル酸tert−ブチルジブロックポリマー580mg(収率50%)を得た。GPC分析により、Mn 11300、PD=1.18であった。
【0071】
試験例1
ポリスチレン末端基の標識実験(重水素変換)
窒素置換したグローブボックス内で、スチレン 1.04g(10mmol)と開始剤として実施例1で合成した(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン
24.8mg(0.10mmol)を配合し、105℃で19時間反応させた。反応混合物をTHF4mlに溶かし、トリブチル錫重水素
87.6mg(0.30mmol)とアゾビスブチロニトリル(AIBN)1.6mg(0.01mmol)を加え、80℃で4時間反応させた。反応終了後、反応混合物を、撹拌しているメタノール
250ml中に注ぎ、吸引して沈殿ポリマーを得た。分析用GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)により得られたポリマーは、Mn=8500、PD=1.18、収率=82%であった。ポリマーを分取用GPCにより精製し、テトラクロロエタン−dを使用しH−NMRにより分析したところ、ベンジル位が重水素原子に93%以上変換されていた。
【0072】
試験例2
ポリスチレン末端基のα,β−不飽和エステル変換
窒素置換したグローブボックス内で、スチレン 1.04g(10mmol)と開始剤として実施例1で合成した(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン
24.8mg(0.10mmol)を配合し、105℃で14時間撹拌した。反応混合物をTHF
4mlに溶かし、エチル−2−トリブチルスタニルメチルアクリレート(合成例5で得たもの) 161.3mg(0.40mmol)とAIBN 1.6mg(0.01mmol)を加え、80℃で6時間反応させた。反応終了後、反応混合物を、撹拌しているメタノール 250ml中に注ぎ、吸引により沈殿ポリマーを得た。分取用GPCにより得られたポリマーは、Mn=10000、PD=1.16、収率=93%であった。ポリマーを分取用GPCにより精製し、H−NMRにより分析したところ、ポリマー末端基がアクリルエステル基に61%変換されていた。
【0073】
試験例3
ポリスチレン末端基のリチウムカルボキシレート変換
窒素置換したグローブボックス内で、スチレン 2.08g(20mmol)と開始剤として実施例1で合成した(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン
49.6mg(0.20mmol)を配合し、105℃で18時間撹拌した。反応混合物をTHF
10mlに溶かし、n−ブチルリチウム 0.20ml(1.48Mヘキサン溶液、0.30mmol;関東化学株式会社製、商品名:n−ブチルリチウム,ヘキサン溶液)を−78℃で加えたところ、溶液の色が黄色から赤色に変色した。同温度で3分撹拌し、1分間、二酸化炭素を吹き込み、得られた透明溶液をメタノール
19.2mg(0.60mmol)で処理し、室温に戻した。反応終了後、反応混合物を水洗し、水層をEtOで3回抽出した。集めた有機層を芒硝で乾燥後、減圧濃縮した。クロロホルムとメタノールで再沈殿精製し、収率=92%(1.922g)、Mn=10400、PD=1.18で、末端基がリチウムカルボキシレート化されたポリスチレンを得た。
【0074】
試験例4
ポリスチレン末端基のピレンエステル変換
試験例3で合成した末端基がリチウムカルボキシレート化されたポリスチレン832mg(Mn=10400、PD=1.18、0.08mmol)の4mlTHF溶液に、トリエチルアミン 16.2mg(0.16mmol)と2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライド 39mg(0.16mmol)を加え、室温で1.5時間反応させた。揮発性物質(主にTHF)は、減圧留去し、1−ピレンブタノール 87.8mg(0.32mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)39.1mg(0.32mmol)とジクロロメタン 5mlを加えた。室温で3時間撹拌し、反応溶液を撹拌しているメタノール中に注ぎ、吸引により沈殿ポリマーを得た。分取用GPCにより精製し、クロロホルムとメタノールで再沈殿し、ポリマー812mgを得た。UV測定(λ=344nm)とHPLC分析により末端基は86%変換されていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される有機テルル化合物。
【化1】

〔式中、Rは、C〜Cのアルキル基を示す。R及びRは、水素原子又はC〜Cのアルキル基を示す。Rは、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。〕
【請求項2】
式(2)で表される化合物と、式(3)で表される化合物と、金属テルルを反応させることを特徴とする式(1)で表される有機テルル化合物の製造方法。
【化2】

〔式中、R、R及びRは、上記と同じ。Xは、ハロゲン原子を示す。〕
M(R)m (3)
〔式中、Rは、上記と同じ。Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は銅原子を示す。Mがアルカリ金属の時、mは1、Mがアルカリ土類金属の時、mは2、Mが銅原子の時、mは1または2を示す。〕
【化3】

〔式中、R〜Rは上記と同じ。〕
【請求項3】
式(2)で表される化合物と、式(3)で表される化合物と、金属テルルを反応させて得られうる式(1)で表される有機テルル化合物。
【化4】

〔式中、R、R及びRは、上記と同じ。Xは、ハロゲン原子を示す。〕
M(R)m (3)
〔式中、Rは、上記と同じ。Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は銅原子を示す。Mがアルカリ金属の時、mは1、Mがアルカリ土類金属の時、mは2、Mが銅原子の時、mは1または2を示す。〕
【化5】

〔式中、R〜Rは上記と同じ。〕
【請求項4】
式(4)で表されるリビングラジカル重合開始剤。
【化6】

〔式中、Rは、C〜Cのアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族へテロ環基を示す。R及びRは、水素原子又はC〜Cのアルキル基を示す。Rは、アリール基、置換アリール基、芳香族へテロ環基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。〕
【請求項5】
ビニルモノマーを、式(4)の化合物をリビングラジカル重合開始剤として用いて重合することを特徴とするリビングラジカルポリマーの製造方法。
【化7】

〔式中、Rは、C〜Cのアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族へテロ環基を示す。R及びRは、水素原子又はC〜Cのアルキル基を示す。Rは、アリール基、置換アリール基、芳香族へテロ環基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。〕
【請求項6】
ビニルモノマーを、式(4)のリビングラジカル重合開始剤を用いてリビングラジカル重合して得られうるリビングラジカルポリマー。
【化8】

〔式中、Rは、C〜Cのアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族へテロ環基を示す。R及びRは、水素原子又はC〜Cのアルキル基を示す。Rは、アリール基、置換アリール基、芳香族へテロ環基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。〕
【請求項7】
請求項6に記載のリビングラジカルポリマーからなるマクロリビングラジカル重合開始剤。
【請求項8】
請求項7に記載のマクロリビングラジカル重合開始剤をリビングラジカル重合開始剤として用いて、ビニルモノマーを重合することを特徴とするブロック共重合体の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載のマクロリビングラジカル重合開始剤をリビングラジカル重合開始剤として用いて、ビニルモノマーを重合して得られうるブロック共重体。

【公開番号】特開2008−247919(P2008−247919A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121333(P2008−121333)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【分割の表示】特願2004−527297(P2004−527297)の分割
【原出願日】平成14年8月6日(2002.8.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (I)インターネット(掲載年月日、いずれも2002年2月27日) (1)http://pubs.acs.org/journals/query/nonsubscriberResults.jsp (2)http://pubs.acs.org/journals/jacsat/abstract.cgi/jacsat/2002/124/i12/abs/ja025554b.html (3)http://pubs.acs.org/journals/jacsat/article.cgi/jacsat/2002/124/i12/html/ja025554b.html (4)http://pubs.acs.org/journals/jacsat/article.cgi/jacsat/2002/124/i12/pdf/ja025554b.pdf (5)http://pubs3.acs.org/acs/journals/doilookup?in_doi=10.1021/ja025554b (6)http://pubs.acs.org/cgi−bin/suppinfo.pl?ja025554b (7)http://pubs.acs.org/subscribe/journals/jacsat/suppinfo/ja025554b/ja025554b_sl.pdf (8)http://pubs3.acs.org/acs/journals/toc.page?incoden=jacsat&indecade=&involume=124&inissue=12の「Organotellurium Compounds as Novel Initiators for Controlled/Living Radical Polymerizations. Synthesis of Functionalized Polystyrenes and End−Group Modifications」 (II)雑誌 J.AM.CHEM.SOC. VOL.124,NO.12,2002, 2874−2875 (発行年月日 2002年3月27日) (III)日本化学会第81春季年会 社団法人日本化学会主催 平成14年3月28日 「有機テルル化合物を開始剤として用いたスチレン類のリビングラジカル重合」
【出願人】(302060306)大塚化学株式会社 (88)
【Fターム(参考)】