説明

有機ナノ顔料粒子凝集体および有機ナノ顔料粒子非水性分散物の製造方法、その分散物を含む着色感光性樹脂組成物、ならびにそれを用いたカラーフィルタ

【課題】有機ナノ顔料粒子水性分散物を有機ナノ顔料粒子非水性分散物に相転換させる際の、フラッシングに代表されるような一旦水性ペーストを作成する工程、すなわちフィルタろ過などのような莫大な時間を要する煩雑な工程に対して、有機ナノ粒子顔料水性分散物中のナノ顔料粒子を、容易にろ過可能な凝集体を製造する方法を提供する。
【解決手段】水性媒体中に分散された有機ナノ顔料粒子に対して、少なくとも1種の分子量1000未満の有機低分子化合物と、少なくとも1種の重量平均分子量1000以上の有機高分子化合物とを作用させることにより凝集させた後、単離する有機ナノ顔料粒子凝集体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ナノ顔料粒子水性分散物を非水性媒体へ相転換させて得る有機ナノ顔料粒子非水性分散物の製造方法に関し、更に詳しくいえば、本発明は、従来、ろ過が困難であった有機ナノ顔料粒子水性分散物中の有機ナノ顔料粒子を、容易にろ過可能な凝集体とし、これをろ過操作により単離し、非水性媒体中で再分散させて得る有機ナノ顔料粒子非水性分散物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粒子を小サイズ化する取り組みが進められている。特に、粉砕法、析出法などでは製造することが困難なナノメートルサイズ(例えば、10〜100nmの範囲)にまで小サイズ化する研究が進められている。さらに、ナノメートルサイズに小サイズ化し、しかも単分散性(本発明において、単分散性とは粒径が揃っている度合いをいう。)の高い粒子とすることが試みられている。
【0003】
このようなナノメートルサイズの微粒子の大きさは、より大きなバルク粒子や、より小さな分子や原子の中間に位置し、従来にないサイズ領域であり、予想できなかった新たな特性を引き出しうることが指摘されている。しかも、この単分散性を高くできれば、その特性を安定化することも可能であり、このようなナノ粒子のもつ可能性はさまざまな分野で期待され、生化学、新規材料、電子素子、発光表示素子、印刷、医療などの広い分野で研究が盛んになりつつある。
【0004】
特に、有機化合物からなる有機ナノ粒子は、有機化合物自体が多様性を有するため、機能性材料としてのそのポテンシャルは高い。例えば、ポリイミドは、耐熱性、耐溶剤性、機械的特性など、化学的および機械的に安定な材料であること、電気絶縁性が優れているなどのことから多く分野で利用されている。そしてポリイミドを微粒子化して、ポリイミド有する特性と形状とを組み合わせて、さらに広い分野で利用されるようになってきている。例えば、微粒子化したポリイミドを、画像形成用の粉末トナーの添加剤とすることなどが提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、有機ナノ粒子のなかでも有機顔料についてみると、例えば、塗料、印刷インク、電子写真用トナー、インクジェットインク、カラーフィルタ等を用途として挙げることができる。これらは、今や、生活上欠くことができない重要な化合物となっている。なかでも高性能が要求され、実用上、特に重要なものとして、インクジェットインク用顔料およびカラーフィルタ用顔料が挙げられる。
【0006】
インクジェット用インクの色材については、従来、染料が用いられてきたが、耐水性や耐光性の面で問題があり、それを改良するために顔料が用いられるようになってきている。顔料インクにより得られた画像は、染料系のインクによる画像に較べて耐光性、耐水性に優れるという利点を有する。しかしながら、紙表面の空隙に染み込むことが可能なナノメートルサイズで単分散性を高くすることは難しく、紙への密着性に劣る。
【0007】
また、デジタルカメラの高画素化に伴い、CCDセンサーなどの光学素子や表示素子に用いるカラーフィルタの薄層化が望まれている。カラーフィルタには有機顔料が用いられているが、フィルタの厚さは有機顔料の粒子径に大きく依存するため、ナノメートルサイズレベルで、しかも単分散で安定な微粒子の製造が望まれている。
【0008】
有機粒子の製造方法に関しては、気相法(不活性ガス雰囲気下で試料を昇華させ、粒子を基板上に回収する方法)、液相法(例えば、良溶媒に溶解した試料を撹拌条件や温度を制御した貧溶媒に注入することにより、微粒子を得る再沈法)、レーザーアブレーション法(溶液中に分散させた試料に、レーザーを照射しアブレーションさせることにより粒子を微細化する方法)などが研究されている。また、これらの方法により、所望のサイズで単分散化を試みた製造例が報告されている。中でも液相法は、簡易性および生産性に優れた有機粒子の製造法として注目されている(特許文献2、3など参照)。この液相法で製造した有機粒子は、析出条件を溶媒種、注入速度、温度等で調整することにより結晶形や粒子表面の性質を調整でき、特許文献3には、キナクリドン顔料の結晶形を貧溶媒種によって調整した例が記載されている。
【0009】
一方、粒子の分散性の改善についてみると、従来有機顔料の分散が各種の分散機(ロールミル、ボールミル、アトライター等)を用いて工業的に行われているが、粒子を微細化することにより粘度が上昇してしまう場合がある。粘度が上昇してしまうと、分散機からの取り出しが困難となったり、パイプラインによる輸送ができなくなったり、更には貯蔵中にゲル化して使用不能となったりする。これらを解決するために、分散を助ける分散剤、分散を安定化させるポリマーの添加が行われているが十分な効果は得られていない(非特許文献1など参照)。
【0010】
またカラーフィルタ用の有機顔料分散液では、その分散性を高めるため、カラーフィルタの製造に必要なアルカリ現像性と分散安定性との両性質を付与し得るポリマーや顔料分散剤を添加している(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、これらの方法では分散に時間がかかり、また粘度が上昇してしまうなどのために、要求を充足するには至っていない。
【0011】
また、前記液相法によって調製した顔料粒子を用い、分散性を改善した例が報告されている。特許文献5では、液相法によって顔料粒子水分散体を調製した例が記載されている。しかしながら、この方法は、最終的に水性分散体として提供する方法であり、有機溶剤分散体として提供する方法については、何ら言及されていない。
【0012】
特許文献6では、液相法によって調製した顔料粒子を用い、有機溶剤分散体として提供する例が記載されている。特許文献6では、顔料を塩基性化合物および/または塩基性溶液に溶解させ、ついで液体の中性化合物および/または酸性化合物、または中性液体および/または酸性液体を添加することで、顔料を析出させる方法が記載されている。しかしながら、この手法で得られた有機顔料粒子は、一次粒子径が大きいものになってしまい、微粒子化の要求に、充分に答えられていなかった。
【0013】
前記液相法におけるナノ粒子の調製においては、ナノ粒子の凝集を防ぐために、低分子界面活性剤や中性の水溶性ノニオン系高分子化合物を使用している。そのため高濃度でナノ粒子を分散できても、使用する分散助剤の量が多く必要であるという欠点があり、インクジェットのように粘度が低く高分子化合物含有率の極端に低い場合に、それらの技術をそのまま適用することは困難である。さらに水性のナノ粒子を調製した後に溶剤系に相転換させる要求のためには、顔料を高濃度に含有する水性スラリーや水性ペーストを作成し、樹脂又は樹脂溶液を添加し、混合攪拌し、顔料の周囲の水分を樹脂又は樹脂溶液で置換するフラッシング法が知られている。しかしこの方法では一度水性粒子が強く凝集した形を経るので、樹脂での被覆の効率が悪くなり再分散が困難になるという問題がある(例えば特許文献7〜8などを参照。)。さらにこのような手法では、水性ペーストを作成するために一旦水性のナノ顔料粒子を一次粒子のままあるいは凝集させた状態でフィルタろ過する方法もあるが、ろ過に莫大な時間がかかり工業的に大変非効率で煩雑になってしまうという問題がある。また低分子のアニオン系又はカチオン系界面活性剤も分散剤として使用できるが、低分子であることによる分散安定性不足が問題である。そこでカチオン性高分子化合物で水性粒子をろ過の工程を通らずにイオン性液体に相転換させる手法も試みられている(例えば非特許文献2を参照。)しかし、非特許文献2記載の方法では低濃度の無機粒子に限られており、非特許文献2には有機顔料に関する言及はなく、さらに最終分散媒が不揮発性のイオン性液体ということもあり、非特許文献2記載の方法は工業的な使用には適していない。
【特許文献1】特開平11−237760号公報
【特許文献2】特開平6−79168号公報
【特許文献3】特開2004−91560号公報
【特許文献4】特開2000−239554号公報
【特許文献5】特開2004−43776号公報
【特許文献6】特開2004−123853号公報
【特許文献7】特開平5−301037号公報
【特許文献8】特開平6−161154号公報
【非特許文献1】顔料分散技術−表面処理と分散剤の使い方および分散性評価−技術情報協会 1999
【非特許文献2】「small」,2006,Vol.2,No.7,p.879-883
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、有機ナノ顔料粒子水性分散物を有機ナノ顔料粒子非水性分散物に相転換させる際の、フラッシングに代表されるような一旦水性ペーストを作成する工程、すなわちフィルタろ過などのような莫大な時間を要する煩雑な工程に対して、有機ナノ粒子顔料水性分散物中のナノ顔料粒子を、容易にろ過可能な凝集体とし、これを単離し、非水性媒体中で再分散させて、効率良く得られる有機ナノ顔料粒子非水性分散物の製造方法を提供することである。さらに上記の有機ナノ顔料粒子分散物を用いた着色感光性樹脂組成物およびそれにより作成されたカラーフィルタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、水性媒体中に分散された有機ナノ顔料粒子を、有機低分子化合物と有機高分子化合物とを溶解させた溶液を添加することにより、ろ過容易な凝集体に凝集させ、該凝集体を単離し、非水性媒体中で再分散させることにより、効率良く有機ナノ顔料粒子非水性分散物を得ることができることを見出した。本発明はこのような知見に基づきなされるに至ったものである。
【0016】
上記課題は下記の手段によって達成された。
〔1〕水性媒体中に分散された有機ナノ顔料粒子に対して、少なくとも1種の分子量1000未満の有機低分子化合物と、少なくとも1種の重量平均分子量1000以上の有機高分子化合物とを作用させることにより凝集させた後、単離することを特徴とする有機ナノ顔料粒子凝集体の製造方法。
〔2〕前記有機低分子化合物と有機高分子化合物とを、前記水性媒体中と混和する溶媒で溶解させ、該水性媒体中に添加することにより、水性媒体中に分散された有機ナノ顔料粒子を凝集させることを特徴とする〔1〕記載の有機ナノ顔料粒子凝集体の製造方法。
〔3〕前記単離が、ろ過により行われることを特徴とする〔1〕または〔2〕記載の有機ナノ顔料粒子分散物の製造方法。
〔4〕少なくとも余分な前記有機低分子化合物を除く工程を含むことを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の有機ナノ顔料粒子凝集体の製造方法。
〔5〕前記水性媒体中に分散された有機ナノ顔料粒子が、良溶媒に溶解した有機顔料の溶液と、前記良溶媒と相溶性でありかつ前記有機顔料に対しては貧溶媒となる媒体とを混合して、ナノサイズの微粒子として生成させて得られることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の有機ナノ顔料粒子凝集体の製造方法。
〔6〕前記有機ナノ顔料粒子の平均一次粒径が、100nm以下であることを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の有機ナノ顔料粒子凝集体の製造方法。
〔7〕前記凝集体の平均粒径が、10000nm以上であることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の有機ナノ顔料粒子分散物の製造方法。
〔8〕〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の単離された有機ナノ顔料粒子凝集体を、非水性媒体中で再分散させて得ることを特徴とする有機ナノ顔料粒子非水性分散物の製造方法。
〔9〕有機高分子化合物が下記一般式(11)、あるいは一般式(14)で表されることを特徴とする〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の有機ナノ顔料粒子非水性分散物の製造方法。
【0017】
【化1】

【0018】
(前記一般式(11)中、A1は、酸性基、塩基性窒素原子を有する基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、および水酸基から選択される基を有する1価の有機基、または置換基を有してもよい有機色素構造もしくは複素環を含有する1価の有機基を表す。n個のA1は同一であっても、異なっていてもよい。R1は、(m+n)価の連結基を表す。m+nは3〜10を表し、mは1〜8の整数を表し、nは2〜9の整数を表す。R2は、単結合あるいは2価の連結基を表す。P1は高分子残基を表す。)
【0019】
【化2】

【0020】
(前記一般式(14)中、Gは−COO、−SO3、−OSO3、−P(O)(OH)O、又は−OP(O)(OH)Oを表す。Jは2価の連結基または単結合を表す。Qは(m+l)価の連結基を表す。Rは高分子化合物残基を表す。Zは有機または無機カチオンを表す。m+lは3〜6を表す。)
〔10〕前記有機高分子化合物を、そのまま非水性媒体中での分散剤として使用することを特徴とする〔9〕記載の有機ナノ顔料粒子非水性分散物の製造方法。
〔11〕〔9〕または〔10〕記載の有機ナノ顔料粒子非水性分散物と、バインダーと、モノマーもしくはオリゴマーと、光重合開始剤もしくは光重合開始剤系とを少なくとも含む着色感光性樹脂組成物。
〔12〕〔11〕記載の着色感光性樹脂組成物を用いてなることを特徴とするカラーフィルタ。
【発明の効果】
【0021】
本発明の製造方法によれば、有機ナノ顔料粒子水性分散物から効率的に有機ナノ顔料粒子凝集体を製造することができる。また、この有機ナノ顔料粒子凝集体用いることで、非水性媒体へ容易に相転換と解こう(再分散)をさせることが可能であり、有機ナノ顔料粒子非水性分散物を工業的規模で効率よく製造することができる。本発明の製造方法によればカラーフィルタ塗布液やインクジェット用インクに適した有機ナノ顔料粒子分散物およびその分散液を工業的規模で生産することができる。また、本発明の有機ナノ顔料粒子非水性分散物は、優れた分散性、高いコントラストを有し、これを用いたカラーフィルタは目的の色純度と高いコントラストとを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の有機ナノ顔料粒子の製造方法について説明する。
[有機顔料]
本発明の有機ナノ顔料粒子の製造方法に用いられる有機顔料は、液相法で粒子形成できるものであれば特に限定されず、単独で用いても、複数であっても、これらを組み合わせたものであってもよい。
【0023】
有機顔料は、色相的に限定されるものではなく、例えば、ペリレン、ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アントラキノン、アントアントロン、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ縮合、ジスアゾ、アゾ、インダントロン、フタロシアニン、トリアリールカルボニウム、ジオキサジン、アミノアントラキノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピラントロンもしくはイソビオラントロン化合物顔料、またはそれらの混合物などが挙げられる。
【0024】
更に詳しくは、たとえば、C.I.ピグメントレッド190(C.I.番号71140)、C.I.ピグメントレッド224(C.I.番号71127)、C.I.ピグメントバイオレット29(C.I.番号71129)等のペリレン化合物顔料、C.I.ピグメントオレンジ43(C.I.番号71105)、もしくはC.I.ピグメントレッド194(C.I.番号71100)等のペリノン化合物顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(C.I.番号73900)、C.I.ピグメントバイオレット42、C.I.ピグメントレッド122(C.I.番号73915)、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド202(C.I.番号73907)、C.I.ピグメントレッド207(C.I.番号73900、73906)、もしくはC.I.ピグメントレッド209(C.I.番号73905)のキナクリドン化合物顔料、C.I.ピグメントレッド206(C.I.番号73900/73920)、C.I.ピグメントオレンジ48(C.I.番号73900/73920)、もしくはC.I.ピグメントオレンジ49(C.I.番号73900/73920)等のキナクリドンキノン化合物顔料、C.I.ピグメントイエロー147(C.I.番号60645)等のアントラキノン化合物顔料、C.I.ピグメントレッド168(C.I.番号59300)等のアントアントロン化合物顔料、C.I.ピグメントブラウン25(C.I.番号12510)、C.I.ピグメントバイオレット32(C.I.番号12517)、C.I.ピグメントイエロー180(C.I.番号21290)、C.I.ピグメントイエロー181(C.I.番号11777)、C.I.ピグメントオレンジ62(C.I.番号11775)、もしくはC.I.ピグメントレッド185(C.I.番号12516)等のベンズイミダゾロン化合物顔料、C.I.ピグメントイエロー93(C.I.番号20710)、C.I.ピグメントイエロー94(C.I.番号20038)、C.I.ピグメントイエロー95(C.I.番号20034)、C.I.ピグメントイエロー128(C.I.番号20037)、C.I.ピグメントイエロー166(C.I.番号20035)、C.I.ピグメントオレンジ34(C.I.番号21115)、C.I.ピグメントオレンジ13(C.I.番号21110)、C.I.ピグメントオレンジ31(C.I.番号20050)、C.I.ピグメントレッド144(C.I.番号20735)、C.I.ピグメントレッド166(C.I.番号20730)、C.I.ピグメントレッド220(C.I.番号20055)、C.I.ピグメントレッド221(C.I.番号20065)、C.I.ピグメントレッド242(C.I.番号20067)、C.I.ピグメントレッド248、C.I.ピグメントレッド262、もしくはC.I.ピグメントブラウン23(C.I.番号20060)等のジスアゾ縮合化合物顔料、C.I.ピグメントイエロー13(C.I.番号21100)、C.I.ピグメントイエロー83(C.I.番号21108)、もしくはC.I.ピグメントイエロー188(C.I.番号21094)等のジスアゾ化合物顔料、C.I.ピグメントレッド187(C.I.番号12486)、C.I.ピグメントレッド170(C.I.番号12475)、C.I.ピグメントイエロー74(C.I.番号11714)、C.I.ピグメントイエロー150(C.I.番号48545)、C.I.ピグメントレッド48(C.I.番号15865)、C.I.ピグメントレッド53(C.I.番号15585)、C.I.ピグメントオレンジ64(C.I.番号12760)、もしくはC.I.ピグメントレッド247(C.I.番号15915)等のアゾ化合物顔料、C.I.ピグメントブルー60(C.I.番号69800)等のインダントロン化合物顔料、C.I.ピグメントグリーン7(C.I.番号74260)、C.I.ピグメントグリーン36(C.I.番号74265)、ピグメントグリーン37(C.I.番号74255)、ピグメントブルー16(C.I.番号74100)、C.I.ピグメントブルー75(C.I.番号74160:2)、もしくは15(C.I.番号74160)等のフタロシアニン化合物顔料、C.I.ピグメントブルー56(C.I.番号42800)、もしくはC.I.ピグメントブルー61(C.I.番号42765:1)等のトリアリールカルボニウム化合物顔料、C.I.ピグメントバイオレット23(C.I.番号51319)、もしくはC.I.ピグメントバイオレット37(C.I.番号51345)等のジオキサジン化合物顔料、C.I.ピグメントレッド177(C.I.番号65300)等のアミノアントラキノン化合物顔料、C.I.ピグメントレッド254(C.I.番号56110)、C.I.ピグメントレッド255(C.I.番号561050)、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド272(C.I.番号561150)、C.I.ピグメントオレンジ71、もしくはC.I.ピグメントオレンジ73等のジケトピロロピロール化合物顔料、C.I.ピグメントレッド88(C.I.番号73312)等のチオインジゴ化合物顔料、C.I.ピグメントイエロー139(C.I.番号56298)、C.I.ピグメントオレンジ66(C.I.番号48210)等のイソインドリン化合物顔料、C.I.ピグメントイエロー109(C.I.番号56284)、もしくはC.I.ピグメントオレンジ61(C.I.番号11295)等のイソインドリノン化合物顔料、C.I.ピグメントオレンジ40(C.I.番号59700)、もしくはC.I.ピグメントレッド216(C.I.番号59710)等のピラントロン化合物顔料、またはC.I.ピグメントバイオレット31(60010)等のイソビオラントロン化合物顔料が挙げられる。なかでも、キナクリドン化合物顔料、ジケトピロロピロール化合物顔料、ジオキサジン化合物顔料、フタロシアニン化合物顔料、またはアゾ化合物顔料であることが好ましく、ジケトピロロピロール化合物顔料又はジオキサジン化合物顔料がより好ましい。
【0025】
C.I.P.R.254、255、264に代表されるピロロピロール化合物顔料は、カラーフィルタを構成する赤画素の色純度を高めるのに適した吸収域を有し、色再現域を広げられるため、そのカラーフィルタへの利用が試みられている。しかしながら従来の顔料では、色純度やコントラスト等、要求に応えられていない。例えば特開2003−336001号公報に記載されているインクジェット用インク、ビーズ分散やソルトミリングによる方法で得たものなどでは良好なカラーフィルタは得られない。
【0026】
本発明の製造方法によれば、ナノサイズのピロロピロール化合物顔料微粒子を粒径分布がシャープな状態で得ることができる。また、その顔料微粒子をカラーフィルタに用いたとき、所望の色純度と高いコントラストを両立でき、しかも耐光性に優れ、また折出物の発生を抑えることができる。
本発明においては、2種類以上の有機顔料または有機顔料の固溶体を組み合わせて用いることもできる。
【0027】
[有機ナノ顔料粒子水性分散液の調製]
次に、有機ナノ顔料粒子水性分散液の調製について説明する。
本発明において、有機ナノ顔料粒子は、有機顔料を良溶媒に溶解した有機顔料溶液と、前記良溶媒に対しては相溶性を有し、有機顔料に対しては貧溶媒となる溶媒(以下、この溶媒を[有機顔料の貧溶媒]ともいい、あるいは単に[貧溶媒]ということもある。)とを混合することにより生成させる(以下、この方法を「再沈法」ということもあり、このとき得られる有機ナノ粒子を含有する分散液を「有機ナノ顔料粒子再沈液」ということもある。)。
【0028】
有機顔料の貧溶媒は、有機顔料を溶解する良溶媒と相溶するもしくは均一に混ざるものであれば特に限定されない。有機顔料の貧溶媒としては、有機顔料の溶解度が0.02質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。有機顔料の貧溶媒への溶解度にとくに下限はないが、通常用いられる有機顔料を考慮すると0.000001質量%以上が実際的である。この溶解度は酸またはアルカリの存在下で溶解された場合の溶解度であってもよい。また、良溶媒と貧溶媒との相溶性もしくは均一混合性は、良溶媒の貧溶媒に対する溶解量が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。良溶媒の貧溶媒に対する溶解量に特に上限はないが、任意の割合で混じり合うことが実際的である。
【0029】
貧溶媒としては、水性媒体であれば、特に制限はなく、例えば、水性溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素溶媒、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、エステル化合物溶媒、またはこれらの混合物がこの好ましく、水性溶媒、アルコール化合物溶媒またはエステル化合物溶媒がより好ましい。
【0030】
アルコール化合物溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールなどが挙げられる。ケトン化合物溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。エーテル化合物溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。脂肪族化合物溶媒としては、例えば、ヘキサンなどが挙げられる。ニトリル化合物溶媒としては、例えば、アセトニトリルなどが挙げられる。ハロゲン化合物溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、トリクロロエチレンなどが挙げられる。エステル化合物溶媒としては、例えば、酢酸エチル、乳酸エチル、2−(1−メトキシ)プロピルアセテートなどが挙げられる。イオン性液体としては、例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムとPF6-との塩などが挙げられる。
【0031】
次に、有機顔料を溶解する良溶媒について説明する。
良溶媒は用いる有機顔料を溶解することが可能で、前記貧溶媒と相溶するもしくは均一に混ざるものであれば特に限定されない。有機顔料の良溶媒への溶解性は有機材料の溶解度が0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。有機顔料の良溶媒への溶解度に特に上限はないが、通常用いられる有機顔料を考慮すると50質量%以下であることが実際的である。この溶解度は酸またはアルカリの存在下で溶解された場合の溶解度であってもよい。貧溶媒と良溶媒との相溶性もしくは均一混合性の好ましい範囲は前述のとおりである。
【0032】
良溶媒としては、例えば、水性溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール化合物溶媒、アミド化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素溶媒、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、硫酸、これらの混合溶媒などが挙げられ、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、エステル化合物溶媒、アミド化合物溶媒、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、硫酸、またはこれらの混合物が好ましく、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、エステル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、アミド化合物溶媒、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、硫酸がより好ましく、スルホキシド化合物溶媒、アミド化合物溶媒、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、硫酸が特に好ましい。
【0033】
スルホキシド化合物溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキド、ヘキサメチレンスルホキシド、スルホランなどが挙げられる。アミド化合物溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。
【0034】
また、良溶媒に有機顔料を溶解した有機顔料溶液の濃度としては、溶解時の条件における有機顔料の良溶媒に対する飽和濃度乃至これの1/100程度の範囲が好ましい。
【0035】
有機顔料溶液の調製条件に特に制限はなく、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−10〜150℃が好ましく、−5〜130℃がより好ましく、0〜100℃が特に好ましい。
【0036】
本発明において有機顔料は、良溶媒中に均一に溶解されなければならないが、酸性でもしくはアルカリ性で溶解することも好ましい。一般に分子内にアルカリ性で解離可能な基を有する顔料の場合はアルカリ性が、アルカリ性で解離する基が存在せず、プロトンが付加しやすい窒素原子を分子内に多く有するときは酸性が用いられる。例えば、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ジスアゾ縮合化合物顔料はアルカリ性で、フタロシアニン化合物顔料は酸性で溶解される。
【0037】
アルカリ性で溶解させる場合に用いられる塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、もしくは水酸化バリウムなどの無機塩基、またはトリアルキルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、金属アルコキシドなどの有機塩基であるが、好ましくは無機塩基である。
【0038】
使用される塩基の量は、顔料を均一に溶解可能な量であり、特に限定されないが、無機塩基の場合、好ましくは有機材料に対して1.0〜30モル当量であり、より好ましくは1.0〜25モル当量であり、さらに好ましくは1.0〜20モル当量である。有機塩基の場合、好ましくは有機材料に対して1.0〜100モル当量であり、より好ましくは5.0〜100モル当量であり、さらに好ましくは20〜100モル当量である。
【0039】
酸性で溶解させる場合に用いられる酸は、硫酸、塩酸、もしくは燐酸などの無機酸、または酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、もしくはトリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸であるが好ましくは無機酸である。特に好ましくは硫酸である。
【0040】
使用される酸の量は、有機顔料を均一に溶解可能な量であり、特に限定されないが、塩基に比べて過剰量用いられる場合が多い。無機酸および有機酸の場合を問わず、好ましくは有機材料に対して3〜500モル当量であり、より好ましくは10〜500モル当量であり、さらに好ましくは30〜200モル当量である。
【0041】
アルカリまたは酸を有機溶媒と混合して、有機顔料の良溶媒として用いる際は、アルカリまたは酸を完全に溶解させるため、若干の水や低級アルコールなどのアルカリまたは酸に対して高い溶解度をもつ溶剤を、有機溶媒に添加することができる。水や低級アルコールの量は、有機材料溶液全量に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコールなどを用いることができる。
【0042】
有機粒子作製時、すなわち有機粒子を析出し、形成する際の貧溶媒の条件に特に制限はなく、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−30〜100℃が好ましく、−10〜60℃がより好ましく、0〜30℃が特に好ましい。
【0043】
有機顔料溶液と貧溶媒とを混合する際、両者のどちらを添加して混合してもよいが、有機顔料溶液を貧溶媒に添加して混合することが好ましく、その際に貧溶媒が撹拌された状態であることが好ましい。撹拌速度は100〜10000rpmが好ましく150〜8000rpmがより好ましく、200〜6000rpmが特に好ましい。添加にはポンプ等を用いることもできるし、用いなくてもよい。また、液中添加でも液外添加でもよいが、液中添加がより好ましい。有機顔料溶液と貧溶媒の混合比(有機ナノ顔料粒子再沈液中の良溶媒/貧溶媒比)は体積比で1/50〜2/3が好ましく、1/40〜1/2がより好ましく、1/20〜3/8が特に好ましい。本発明においては、有機ナノ顔料粒子は、まず水性媒体中に分散されるものであり、この場合の水性媒体としては、上記の水性溶媒を少なくとも60質量%含まれているものであり、好ましくは80質量%以上含まれているものである。
【0044】
有機ナノ顔料粒子再沈液の濃度は有機ナノ顔料粒子を生成することができれば特に制限されないが、水性媒体1000mlに対して有機顔料粒子が10〜40000mgの範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜30000mgの範囲であり、特に好ましくは50〜25000mgの範囲である。
【0045】
また、有機ナノ顔料粒子を生成させる際の調製スケールは、特に限定されないが、貧溶媒の混合量が1〜1000Lの調製スケールであることが好ましく、1〜100Lの調製スケールであることがより好ましい。
【0046】
有機ナノ顔料粒子の粒径に関しては、計測法により数値化して集団の平均の大きさを表現する方法があるが、よく使用されるものとして、分布の最大値を示すモード径、積分分布曲線の中央値に相当するメジアン径、各種の平均径(数平均、長さ平均、面積平均、質量平均、体積平均等)などがあり、本発明においては、特に断りのない限り、平均粒径とは数平均径をいう。有機顔料ナノ粒子(一次粒子)の平均粒径はナノメートルサイズであり、平均粒径が1nm〜1μmであることが好ましく、1〜200nmであることがより好ましく、2〜100nmであることがさらに好ましく、5〜80nmであることが特に好ましい。なお本発明において形成される粒子は結晶質粒子でも非晶質粒子でもよく、またはこれらの混合物でもよい。
【0047】
また、粒子の単分散性を表す指標として、本発明においては、特に断りのない限り、体積平均粒径(Mv)と数平均粒径(Mn)の比(Mv/Mn)を用いる。有機ナノ顔料粒子の濃縮方法に用いられる有機ナノ顔料粒子分散液に含まれる粒子(一次粒子)の単分散性、つまりMv/Mnは、1.0〜2.0であることが好ましく、1.0〜1.8であることがより好ましく、1.0〜1.5であることが特に好ましい。
【0048】
有機ナノ顔料粒子の粒径の測定方法としては、顕微鏡法、重量法、光散乱法、光遮断法、電気抵抗法、音響法、動的光散乱法が挙げられ、顕微鏡法、動的光散乱法が特に好ましい。顕微鏡法に用いられる顕微鏡としては、例えば、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡などが挙げられる。動的光散乱法による粒子測定装置として、例えば、日機装社製ナノトラックUPA−EX150、大塚電子社製ダイナミック光散乱光度計DLS−7000シリーズ、堀場製作所社製LB−400などが挙げられる(いずれも商品名)。
【0049】
有機ナノ顔料粒子水性分散液を調製するに当り、分散剤(以下、水性分散液の分散剤とも言う)を含有させることが好ましい。分散剤を含有させる工程は特に限定されないが、有機顔料溶液および貧溶媒の両方もしくは一方に分散剤を添加して含有させることが好ましい。また、分散剤溶液を上記両液とは別系統で有機ナノ顔料粒子形成時に添加することも好ましい。予め分散剤により表面処理を施された顔料粒子を用いることも好ましく、顔料粒子には分散剤の吸着を促進し得るような表面処理が施されていてもよい。分散剤は(1)析出した顔料表面に素早く吸着して、微細なナノ粒子を形成し、かつ(2)これらの粒子が再び凝集することを防ぐ作用を有するものである。
【0050】
用いることのできる分散剤として、例えば、アニオン性、カチオン性、両イオン性、ノニオン性もしくは顔料誘導体の、低分子または高分子分散剤を使用することができる。なお、低分子または高分子分散剤の添加量は、溶解された顔料に対して10質量%以上1000質量%以下が好ましい。更には、50質量%以上200質量%以下がより好ましい。10質量%未満では顔料粒子の成長及び凝集を抑制する効果が少なくなり、1000質量%を超えると粘度上昇、溶解不良等の問題が発生し易くなる。
【0051】
以下、高分子分散剤について説明する。
高分子分散剤の分子量は、数平均分子量で1,000以上200,000以下が好ましい。更には、3,000以上40,000以下がより好ましい。1,000未満では顔料粒子の成長及び凝集を抑制する効果が少なくなり、200,000を超えると粘度上昇、溶解不良等の問題が発生し易くなる。なお、本発明における高分子とは数平均分子量で1000以上のものを指す。
【0052】
高分子分散剤としては、ノニオン性のものとして、具体的には、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール−部分ホルマール化物、ポリビニルアルコール−部分ブチラール化物、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体などが挙げられ、中でもポリビニルピロリドンが好ましい。
【0053】
アニオン性のものとしては、ポリアクリル酸塩、ポリビニル硫酸塩、ポリ(4−ビニルピリジン)塩、ポリアミド、ポリアリルアミン塩、ポリベンゼンスルホン酸塩、縮合ナフタレンスルホン酸塩、セルロース誘導体、澱粉誘導体などが挙げられる。中でも、ポリベンゼンスルホン酸塩、縮合ナフタレンスルホン酸塩がより好ましい。
【0054】
これらアニオン性のものは、アニオン性のモノマーを共重合することにより得られるが、アニオン性モノマー自身だけでなく、ノニオン性のモノマーとも共重合させたものであっても良い。ノニオン性のモノマーは、具体的には、ビニルピロリドン、スチレン、ナフタレン、スチリルメチルクロリド、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、アクリルアミド、ビニルアミドなどが挙げられる。
【0055】
カチオン性のものとしては、特に4級アンモニウム部位を有する高分子化合物が好ましく、ポリ(メタクリルオキシアルキルアンモニウム塩)、ポリ(メタクリルオキシアリールアンモニウム塩)、ポリ(アクリルオキシアルキルアンモニウム塩)、ポリ(アクリルオキシアリールアンモニウム塩)、ポリ(ジアリルアンモニウム塩)などが挙げられるが、4級アンモニウム部位を有する高分子化合物としては、下記一般式(1)で表されるカチオン性繰り返し単位を有する高分子化合物であることが好ましい。
【0056】
【化3】

【0057】
(式中、R1〜R3は、それぞれ独立にアルキル基、アラルキル基、又はアリール基を表す。R1、R2、R3の任意の2つは互いに連結していてもよく、さらに酸素原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子を含む複素環を形成してもよい。Xはハロゲン原子、又は有機もしくは無機アニオンを表す。nは1〜5の自然数を表す。Aは水素原子またはアルキル基を表す。Lは単結合または2価の連結基、あるいはさらにR1、R2、R3の任意の2つとも結合した4価の連結基を表す。)
一般式(1)中R1〜R3が表すアルキル基は、置換又は無置換の、直鎖状、分岐状または環状のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。R1〜R3が表すアラルキル基は、置換又は無置換のアラルキル基であり、好ましくは炭素数7〜10のアラルキル基である。R1〜R3が表すアリール基は、置換又は無置換のアリール基であり、好ましくは炭素数6〜10のアリール基である。アラルキル基又はアリール基はそれぞれ単環でも縮環していてもよい。
【0058】
アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ターシャリーオクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基が好ましい。特に好ましくは、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基である。
【0059】
アラルキル基としては、具体的には、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−ブトキシベンジル基、4−メトキシベンジルメトキシフェニル基、4−ヒドロキシベンジル基が好ましい。特に好ましくは、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−ブトキシベンジル基である。
【0060】
アリール基としては、具体的には、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、4−ブトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基が好ましい。特に好ましくは、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、4−ブトキシフェニル基である。
【0061】
1、R2、R3の任意の2つが互いに連結して4級アンモニウム部位を有する含窒素複素環を形成する場合、該複素環は4〜6員環であることが好ましい。また、該複素環はさらに酸素原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子を含んでもよい。該複素環としては、イミダゾリウム、ピリジニウム、オキサゾリウム、チアゾリウム、イミダゾリニウム、オキサゾリニウム、チアゾリニウムなどが挙げられる。より好ましくは、イミダゾリウム、ピリジニウム、オキサゾリウム、チアゾリウムが挙げられる。
【0062】
一般式(1)中、Xは1価でも多価でもよく、このXが表すハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。Xが表す有機アニオンの具体例としては、カルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、アルコシキシド、ベンゼンスルホン酸アニオン、ナフタレンスルホン酸アニオン、ナフタレンジスルホン酸アニオン、アントラセンジスルホン酸アニオンなどが挙げられる。Xが表す無機アニオンの具体例としては、4フッ化臭素アニオン、6フッ化リンアニオン、ヒドロキシドなどが挙げられる。特に好ましくは、nが1〜2の自然数である条件を満たす有機または無機アニオンである。
【0063】
一般式(1)中、Aが表すアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基が好ましい。特に好ましくは、メチル基、エチル基である。
【0064】
一般式(1)中、Lは単結合または2価の連結基、あるいはさらにR1、R2、R3の任意の2つとも結合した4価の連結基を表す。Lが表す2価の連結基は、アリール基、アラルキル基を含む連結基である。Lが表す2価の連結基に含まれるアリール基、アラルキル基は単環でも縮環していてもよい。Lが表すR1、R2、R3の任意の2つとも結合した4価の連結基は、一般式(1)中のアンモニウム塩部位と複素環基を形成する。
【0065】
Lが表す2価の連結基の具体例としては、アリール基として、フェニレン、ナフチレン等が挙げられ、アラルキル基として、フェニルメチレン、ナフチルメチレン等が挙げられる。Lが表すR1、R2、R3の任意の2つとも結合した4価の連結基が、一般式(1)中のアンモニウム塩部位と形成する複素環としては、イミダゾリウム、ピリジニウム、オキサゾリウム、チアゾリウム、イミダゾリニウム、オキサゾリニウム、チアゾリニウムなどが挙げられる。より好ましくは、イミダゾリウム、ピリジニウム、オキサゾリウム、チアゾリウムが挙げられる。
【0066】
1、R2、R3の任意の2つが互いに連結したもの、さらにそれらで形成される酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含む複素環の具体例も含めて、以下に前記一般式(1)で表されるカチオン性繰り返し単位を有する高分子化合物の例を示す。例えば、ポリビニルイミダゾリニウム塩類、ポリビニルベンズイミダゾリニウム塩類、ポリビニルピリジニウム塩類、ポリスチリルメチレンイミダゾリウム塩類、ポリスチリルメチレンイミダゾリニウム塩類、ポリスチリルメチレンピリジニウム塩類、ポリスチリルメチレンオキサゾリウム塩類、ポリスチリルメチレンオキサゾリニウム塩類、ポリスチリルメチレンチアゾリウム塩類、ポリスチリルメチレンチアゾリウム塩類、ポリスチリルメチレンアンモニウム塩類、ポリナフチルメチレンイミダゾリウム塩類、ポリナフチルメチレンイミダゾリニウム塩類、ポリナフチルメチレンピリジニウム塩類、ポリナフチルメチレンオキサゾリウム塩類、ポリナフチルメチレンオキサゾリニウム塩類、ポリナフチルメチレンチアゾリウム塩類、ポリナフチルメチレンチアゾリウム塩類、ポリナフチルメチレンアンモニウム塩類が挙げられる。
【0067】
これらの中で、特に好ましい例としては、ポリスチリルメチレンイミダゾリウム塩類、ポリスチリルメチレンイミダゾリニウム塩類、ポリスチリルメチレンピリジニウム塩類、ポリスチリルメチレンオキサゾリウム塩類、ポリスチリルメチレンオキサゾリニウム塩類、ポリスチリルメチレンチアゾリウム塩類、ポリスチリルメチレンチアゾリウム塩類、ポリスチリルメチレンアンモニウム塩類が挙げられる。
【0068】
本発明に用いられる4級アンモニウム部位を有する高分子化合物は、下記一般式(2)で表されるカチオン性繰り返し単位を有する高分子化合物であることが更に好ましい。
【0069】
【化4】

【0070】
一般式(2)中、R1〜R3、X及びnは前記一般式(1)におけるR1〜R3、X及びnと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0071】
また、本発明に用いられる4級アンモニウム部位を有する高分子化合物は、前記一般式(1)で表されるカチオン性繰り返し単位とその他の繰り返し単位とからなるランダム共重合体であってもよい。重合比は、前者4級アンモニウム部位を有する高分子化合物に対して、0.1〜0.7質量%の繰り返し単位を共重合させることが好ましく、0.1〜0.5質量%がより好ましい。
【0072】
共重合成分としては例えば、ビニルイミダゾリニウム塩類、ビニルベンズイミダゾリニウム塩類、ビニルピリジニウム塩類、スチリルメチレンイミダゾリウム塩類、スチリルメチレンイミダゾリニウム塩類、スチリルメチレンピリジニウム塩類、スチリルメチレンオキサゾリウム塩類、スチリルメチレンオキサゾリニウム塩類、スチリルメチレンチアゾリウム塩類、スチリルメチレンチアゾリウム塩類、スチリルメチレンアンモニウム塩類、ナフチルメチレンイミダゾリウム塩類、ナフチルメチレンイミダゾリニウム塩類、ナフチルメチレンピリジニウム塩類、ナフチルメチレンオキサゾリウム塩類、ナフチルメチレンオキサゾリニウム塩類、ナフチルメチレンチアゾリウム塩類、ナフチルメチレンチアゾリウム塩類、ナフチルメチレンアンモニウム塩類、ビニルピロリドン、スチレン、ナフタレン、スチリルメチルクロリド、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、アクリルアミド、ビニルアミドなどが挙げられる。特に好ましくはスチリルメチレンイミダゾリウム塩類、スチリルメチレンイミダゾリニウム塩類、スチリルメチレンピリジニウム塩類、スチリルメチレンアンモニウム塩類、ビニルピロリドン、スチレン、ナフタレン、スチリルメチルクロリド、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、アクリルアミド、ビニルアミドなどが挙げられる。
【0073】
以下に本発明で用いられる4級アンモニウム部位を有する高分子化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。以下の具体例では、本発明に用いられる高分子化合物は、例示された繰り返し単位が重合したものである。
【0074】
【化5】

【0075】
【化6】

【0076】
前記の4級アンモニウム部位を有する高分子化合物は、「small」,2006,Vol.2,No.7,p.879-883を参考にして製造することができる。
【0077】
その他、アルギン酸塩、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アラビアゴム、トラガントゴム、リグニンスルホン酸塩などの天然高分子類も使用できる。
【0078】
これら高分子は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの分散剤は、単独あるいは併用して使用することができる。顔料の分散に用いる分散剤に関しては、「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」(化学情報協会、2001年12月発行)の29〜46頁に詳しく記載されている。
【0079】
以下、低分子分散剤について説明する。
低分子分散剤としては、アニオン性のものとして、N−アシル−N−アルキルタウリン塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。なかでも、N−アシル−N−アルキルタウリン塩が好ましい。N−アシル−N−アルキルタウリン塩としては、特開平3−273067号明細書に記載されているものが好ましい。これらアニオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
カチオン性のものとして、四級アンモニウム塩、アルコキシル化ポリアミン、脂肪族アミンポリグリコールエーテル、脂肪族アミン、脂肪族アミンと脂肪族アルコールから誘導されるジアミンおよびポリアミン、脂肪酸から誘導されるイミダゾリンおよびこれらのカチオン性物質の塩が含まれる。これらカチオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
両イオン性のものとしては、前記アニオン性分散剤が分子内に有するアニオン基部分とカチオン性分散剤が分子内に有するカチオン基部分を共に分子内に有する分散剤である。
【0082】
ノニオン性のものとしては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。中でも、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルが好ましい。これらノニオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0083】
顔料誘導体型のものとしては、親物質としての有機顔料から誘導され、その親構造を化学修飾することで製造される顔料誘導体型分散剤、あるいは化学修飾された顔料前駆体の顔料化反応により得られる顔料誘導体型分散剤と定義する。例えば、糖含有顔料誘導体型分散剤、ピペリジル含有顔料誘導体型分散剤、ナフタレンまたはペリレン誘導顔料誘導体型分散剤、メチレン基を介して顔料親構造に連結された官能基を有する顔料誘導体型分散剤、ポリマーで化学修飾された顔料親構造、スルホン酸基を有する顔料誘導体型分散剤、スルホンアミド基を有する顔料誘導体型分散剤、エーテル基を有する顔料誘導体型分散剤、あるいはカルボン酸基、カルボン酸エステル基またはカルボキサミド基を有する顔料誘導体型分散剤などがある。
【0084】
本発明においては、良溶媒に溶解させた有機顔料溶液を調製する際、アミノ基を含有する顔料分散剤を共存させることが好ましい。ここで、アミノ基とは一級アミノ基、二級アミノ基、三級アミノ基を含み、アミノ基の数は一つでも複数でもよい。顔料骨格にアミノ基を有する置換基を導入した顔料誘導体化合物でも、アミノ基を有するモノマーを重合成分としたポリマー化合物でもよい。これらの例として、例えば、特開2000−239554号公報、2003−96329号公報、2001−31885号公報、特開平10−339949号公報、特公平5−72943号公報に記載の化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
[有機低分子化合物、および有機高分子化合物]
本発明においては、水性媒体中に分散された有機ナノ顔料粒子に対して、少なくとも1種の分子量1000未満の有機低分子化合物(以下、低分子化合物とも言う)と、少なくとも1種の重量平均分子量1000以上の有機高分子化合物(以下、高分子化合物とも言う)とを作用させることにより凝集させた後、有機ナノ粒子凝集体を単離する。本発明において、低分子化合物は、有機ナノ顔料粒子を凝結させる。凝結により生じた凝結体を高分子化合物は凝集させ、ろ過容易な大きい凝集体を形成させる。本発明においては、低分子化合物と高分子化合物を併用するものであり、低分子化合物のみでは、有機ナノ粒子が凝結するものの、大きな凝集体とならず、ろ紙でろ過をしても、ろ紙をすり抜けたり、ろ過フィルタでろ過をしても、ろ過に莫大な時間がかかってしまう。また、高分子化合物のみでは、凝結体自体がほとんど生じず、ろ過が不可能となる。本発明における高分子化合物にとって、有機ナノ顔料粒子が分散している水性溶媒が貧溶媒であるため、上述の凝結体に吸着することより、凝結体の極性が前記水性溶媒に不溶となり、該凝結体を大きな凝集体へと成長させる。
【0086】
凝集体としては、平均粒径が10000nm以上であることが好ましく、大きければ大きいほうがより好ましい。10000nm未満であると、凝集体の単離に多大な時間を要したり、ろ取しようとしてもろ紙、あるいはフィルタを通り抜けてしまったり、目詰りしたりする。
【0087】
また、本発明における低分子化合物、高分子化合物は、凝集した有機ナノ顔料粒子に吸着しているため、ろ過し、後述の洗浄、後述の再分散(解こう)を行った後も、そのまま非水性媒体中での分散剤(以下、非水性分散液の分散剤とも言う)として使用できるため、新たに分散剤を添加する必要がない。分散性の調整のため、分散剤を後で新たに添加しても良いが、製造コストの観点から添加しないほうが好ましい。
【0088】
さらに本発明における凝集体を構成する有機ナノ顔料粒子は、低分子および高分子化合物にコーティングされた状態で凝集しているので、これら低分子および高分子化合物なしで凝集した場合、例えば、塩酸などで凝集させた場合に比べ、その後の再分散が容易で、有機ナノ顔料粒子が一次粒子にまでほぐれやすく、コントラストが高くなる。
【0089】
該低分子化合物、高分子化合物はそのまま添加してもよいが、該低分子化合物、高分子化合物を溶媒に溶解して添加するほうが、良好なろ過性を得るという観点で好ましい。
【0090】
前記溶媒としては、有機ナノ顔料粒子水性分散液と混和でき、且つ該低分子化合物、高分子化合物を溶解可能であり、さらに、添加後も該低分子化合物、高分子化合物がそれ自身で析出してしまわなければ、特に制限はない。
【0091】
また、該溶媒は、それ自体を有機ナノ顔料粒子水性分散液に添加しても、有機ナノ顔料粒子が凝集しない、あるいは凝集しても再分散しうる弱い凝集(ミリングまたは高速撹拌などの高いせん断力を加えなくても再分散が可能であるフロック)を生ずる溶媒であることが好ましい。
【0092】
該溶媒としては、例えば、水性溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール化合物溶媒、アミド化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素溶媒、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、エステル化合物溶媒、アミド化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、またはこれらの混合物が好ましく、特にケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、またはこれらの混合物がより好ましい。
【0093】
アルコール化合物溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールなどが挙げられる。ケトン化合物溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。エーテル化合物溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。脂肪族化合物溶媒としては、例えば、ヘキサンなどが挙げられる。ニトリル化合物溶媒としては、例えば、アセトニトリルなどが挙げられる。ハロゲン化合物溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、トリクロロエチレンなどが挙げられる。エステル化合物溶媒としては、例えば、酢酸エチル、乳酸エチル、2−(1−メトキシ)プロピルアセテートなどが挙げられる。イオン性液体としては、例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムとPF6-との塩などが挙げられる。
【0094】
該溶媒の使用量としては、低分子化合物、高分子化合物を溶解でき、ろ過容易な凝集体が形成できる量であれば、特に制限はないが、製造の煩雑さ、原材料コストをより低減させることを考慮して、できる限り少量であることが好ましい。これを質量比で示すと、有機ナノ顔料粒子水性分散液を100としたとき、添加される溶媒は1〜100の範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜70の範囲であり、20〜70の範囲が特に好ましい。多すぎると凝集体の沈降時間に多大な時間を要し、少なすぎると凝集体の形成が不十分となり、凝集体が沈降しにくくなる。
【0095】
該溶媒を添加した後、有機ナノ顔料粒子水性分散液と十分に混合するように撹拌することが好ましい。撹拌混合は通常の方法を用いることができる。該溶媒を添加し混合するときの温度に特に制約はないが、1〜100℃であることが好ましく、5〜60℃であることがより好ましい。該溶媒の添加、混合はそれぞれの工程を好ましく実施できるものであればどのような装置を用いてもよいが、例えば、撹拌羽、ラモンドスターラーなどの装置を用いて実施できる。
【0096】
また、上述のとおり、本発明では、有機ナノ顔料粒子水性分散液中の有機ナノ顔料粒子を凝集させるに当り、別途本発明における低分子化合物、高分子化合物を含有させることができる。本発明における低分子化合物、高分子化合物を含有させる工程は特に限定されないが、有機ナノ顔料粒子水性分散液に前記溶媒を添加した後に、本発明における低分子化合物、高分子化合物を一緒に添加する方法であっても、前記溶媒にそれらを溶解させた後、有機ナノ顔料粒子水性分散液に添加する方法であっても良いが、より好ましくは前記溶媒に溶解させた後、有機ナノ顔料粒子水性分散液に添加する方法である。またこの場合、低分子化合物と高分子化合物を別々にして添加してもよく、前記溶媒に高分子化合物を溶解させた後、有機ナノ顔料粒子水性分散液に添加し、その後、低分子化合物をそのまま添加する方法、有機ナノ顔料粒子水性分散液に低分子化合物を添加した後に、高分子化合物を溶解させた溶液を添加する方法でも良い。
【0097】
なお、低分子および高分子化合物の添加量は、顔料に対して10質量%以上1000質量%以下が好ましい。更には、50質量%以上200質量%以下がより好ましい。10質量%未満ではナノ粒子の凝集効果が少なくなり、1000質量%を超えると、後述の再分散時の粘度上昇等の問題が発生し易くなる。低分子化合物、高分子化合物の添加量比としては、特に限定されないが、質量比で高分子化合物を1とすると、低分子化合物は1〜50が好ましく、より好ましくは10〜30である。
【0098】
以下、低分子化合物についてさらに詳細に説明する。
低分子化合物としては、例えば、アニオン性、カチオン性、ノニオン性の低分子化合物が挙げられる。用いる低分子化合物としては、上述の有機ナノ顔料粒子水性分散液の調製において用いる水性分散の分散剤に応じて選ぶことができる。例えば、水性分散液の分散剤がノニオン性、特に塩基性であれば、低分子化合物としては、ノニオン性、特に酸性であること、水性分散液の分散剤がアニオン性であれば、低分子化合物としては、カチオン性であること、水性分散液の分散剤がカチオン性であれば、低分子化合物としては、アニオン性であることが好ましい。特に好ましい形態としては、水性分散液の分散剤がノニオン性、特に塩基性であり、低分子化合物として、ノニオン性、特に酸性であること、水性分散液の分散剤がカチオン性であり、低分子化合物としては、アニオン性であることが好ましい。
【0099】
ノニオン性の低分子化合物において、特に酸性のものとしては、分子量1000未満であれば特に限定されないが、1価以上のカルボン酸、スルホン酸、リン酸化合物が好ましく、特に好ましくは、1〜5価のカルボン酸、スルホン酸、リン酸化合物が好ましい。 カルボン酸としては、具体的には、酢酸、プロピオニック酸、ブチリック酢酸、バレリック酸、ヘキサノイック酸、ヘプタノイック酸、オクタノイック酸、ノナノイック酸、デカノイック酸、ウンデカノイック酸、ラウリック酸、トリデカノイック酸、イソブチリック酸、2−エチルブチリック酸、トリメチルラセチック酸、t−ブチル酢酸、2−プロピルペンタノイック酸、2−エチルヘキサノイック酸、マロン酸、ブチルマロン酸、ジメチルマロン酸、ジエチルマロニン酸、スクシニック酸、グルタリック酸、トリカルバリリック酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、cis−5,8,11,14,17−エイコサペンタエノイック酸、cis−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエノイック酸、安息香酸、フェニル酢酸、11−フェノキシウンデカノイック酸、フェニルマロン酸などが挙げられる。
【0100】
スルホン酸としては、具体的には、メタンスルホン酸、N−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。
【0101】
リン酸としては、具体的には、ジメチルホスホニック酸、メチレンジホスホニック酸などが挙げれらる。
【0102】
アニオン性の低分子化合物としては、分子量1000未満であれば特に限定されないが、前記アニオン性化合物は、下記一般式(3)で表されるアニオン性化合物であることが好ましい。
【0103】
【化7】

【0104】
(式中、Dは−COO-、−SO3-、−OSO3-、−P(O)(OH)O-、又は−OP(O)(OH)O-、を表す。Eは、総炭素数10〜100の置換基を有してもよいアルキル基、アラルキル基、アリール基、又はアルコキシ基を表す。Yは有機または無機カチオンを表す。
【0105】
一般式(3)中、Dは、−COO-、−SO3-、−OSO3-、−P(O)(OH)O-、又は−OP(O)(OH)O-を表し、より好ましくは−SO3-、−P(O)(OH)O-である。
【0106】
一般式(3)中、Eは、総炭素数10〜100の置換基を有してもよいアルキル基、アラルキル基、アリール基、又はアルコキシ基であり、より好ましくは総炭素数20〜50の置換基を有してもよいアルキル基、アラルキル基、アリール基、又はアルコキシ基である。アルキル基もしくはアルコキシ基又は置換基はそれぞれ直鎖状でも分岐状でもよく、アラルキル基又はアリール基はそれぞれ単環でも縮環していてもよい。
【0107】
アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ターシャリーオクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基が挙げられる。
【0108】
アラルキル基としては、具体的には、ベンジル基、ナフチルメチレン基が挙げられ、特にベンジル基が好ましい。
【0109】
アリール基としては、具体的には、フェニル基、ナフチル基が挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
【0110】
アルコキシ基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ノルマルブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、ターシャリーブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ターシャリーオクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基が挙げられ、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ノルマルブチルオキシ基、イソブチルオキシ基が挙げられる。
【0111】
一般式(3)中、Yが表す有機カチオンとしては、イミダゾリウム塩類、ピリジニウム塩類、チアゾリウム塩類、オキサゾリウム塩類、イミダゾリミウム塩類、チアゾリニウム塩類、オキサゾリニウム塩類などが挙げられる。後述の脱塩の容易さから、好ましくは無機カチオンが挙げられ、無機カチオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどが挙げられる。
【0112】
以下、前記一般式(3)で表されるアニオン性化合物の具体例を示すが、これらに限定されない。
【0113】
【化8】

【0114】
これら低分子化合物の分子量としては、1000未満であれば、いくらであってもよい。1000以上であると、高分子化合物の性質が現れてしまい、ナノ粒子を凝結させることが難しくなる。
【0115】
以下、高分子化合物についてさらに詳細に説明する。
好ましい形態として、低分子化合物と同様に、有機ナノ顔料粒子水性分散液の分散剤がノニオン性、特に塩基性であり、高分子化合物として、ノニオン性、特に酸性であること、水性分散液の分散剤がカチオン性であり、高分子化合物としては、アニオン性であることが好ましい。本発明においては、高分子化合物の重量平均分子量は1000以上であることが好ましい。特に上限はないが、3000000以下であることがより好ましく、より好ましくは300000以下であることが好ましい。本発明に用いうる公知の高分子化合物の具体例としては、BYK Chemie社製「Disperbyk−110(酸基を含む共重合物)、130(ポリアミド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和ポリカルボン酸)、EFKA社製「EFKA4047、4050、4010、4165(ポリウレタン系)、EFKA4330、4340(ブロック共重合体)、4400、4402(変性ポリアクリレート)、5010(ポリエステルアミド)、5765(高分子量ポリカルボン酸塩)、6220(脂肪酸ポリエステル)」、味の素ファンテクノ社製「アジスパーPB821、PB822」、共栄社化学社製「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合体)」、楠本化成社製「ディスパロンKS−860、873SN、874、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル)、DA−703−50、DA−705、DA−725」、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン重縮合物)」、「ホモゲノールL−18(高分子ポリカルボン酸)」、「エマルゲン920、930、935、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン86(ステアリルアミンアセテート)」、ルーブリゾール社製「ソルスパース55000(グラフト型高分子)、13240(ポリエステルアミン)、3000、17000、27000(末端部に機能部を有する高分子)、24000、28000、32000、38500(グラフト型高分子)」、日光ケミカル社製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)」等が挙げられる。本発明における高分子化合物としては、公知の高分子化合物を単独で用いてもよく、2種以上用いても良い。また公知の高分子化合物は、後述する高分子化合物1種以上と併用してもよく、さらに、後述する高分子化合物を単独で用いてもよい。
【0116】
以下、ノニオン性の高分子化合物についてさらに詳細に説明する。
ノニオン性の高分子化合物は、下記一般式(11)で表されることが好ましい。
【0117】
【化9】

【0118】
前記一般式(11)中、A1は、酸性基、塩基性窒素原子を有する基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、および水酸基から選択される基を有する1価の有機基、または置換基を有してもよい有機色素構造もしくは複素環を含有する1価の有機基を表す。n個のA1は同一であっても、異なっていてもよい。
【0119】
具体的には、A1は特に制限されるものではないが、前記「酸性基を有する1価の有機基」として、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、モノ硫酸エステル基、リン酸基、モノリン酸エステル基、ホウ酸基などを有する1価の有機基が挙げられる。また、前記「塩基性窒素原子を有する基を有する1価の有機基」として、例えば、アミノ基(−NH2)を有する1価の有機基、置換イミノ基(−NHR8、−NR910)を有する1価の有機基(ここで、R8、R9、およびR10は各々独立に、炭素数1〜20までのアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基、炭素数7以上30以下のアラルキル基を表す。)、下記一般式(a1)で表されるグアニジル基を有する1価の有機基〔一般式(a1)中、Ra1およびRa2は各々独立に、炭素数1〜20までのアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基、炭素数7以上30以下のアラルキル基を表す。〕、下記一般式(a2)で表されるアミジニル基を有する1価の有機基〔一般式(a2)中、Ra3およびRa4は各々独立に、炭素数1〜20までのアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基、炭素数7以上30以下のアラルキル基を表す。〕などが挙げられる。
【0120】
【化10】

【0121】
前記「ウレア基を有する1価の有機基」として、例えば、−NHCONHR15(ここで、R15は、水素原子あるいは、炭素数1〜20までのアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基、炭素数7以上30以下のアラルキル基を表す。)などが挙げられる。
【0122】
前記「ウレタン基を有する1価の有機基」として、例えば、−NHCOOR16、−OCONHR17(ここで、R16およびR17は各々独立に、炭素数1〜20までのアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基、炭素数7以上30以下のアラルキル基を表す。)などが挙げられる。
【0123】
前記「‘配位性酸素原子を有する基’を有する基」としては、例えば、アセチルアセトナト基を有する基、クラウンエーテルを有する基などが挙げられる。
【0124】
前記「炭素数4以上の炭化水素基を有する基」としては、炭素数4以上のアルキル基(例えば、オクチル基、ドデシル基など)、炭素数6以上のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基など)、炭素数7以上のアラルキル基(例えばベンジル基など)などが挙げられる。このとき炭素数に上限はないが、30以下であることが好ましい。 前記「アルコキシシリル基を有する基」としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基などを有する基が挙げられる。
【0125】
前記「エポキシ基を有する基」としては、例えば、グリシジル基などを有する基が挙げられる。
【0126】
前記「イソシアネート基を有する基」としては、例えば、3−イソシアナトプロピル基などが挙げられる。
【0127】
前記「水酸基を有する基」としては、例えば、3−ヒドロキシプロピル基などが挙げられる。
【0128】
上記の中では、前記A1として、酸性基、塩基性窒素原子を有する基、ウレア基、および炭素数4以上の炭化水素基から選択される基を有する1価の有機基であることが好ましい。
【0129】
また、前記有機色素構造または複素環としては、特に限定されないが、より具体的には、有機色素構造としては、例えば、フタロシアニン化合物、不溶性アゾ化合物、アゾレーキ化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、ジオキサジン化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラピリジン化合物、アンサンスロン化合物、インダンスロン化合物、フラバンスロン化合物、ペリノン化合物、ペリレン化合物、チオインジゴ化合物等が挙げられる。また、複素環としては、例えばチオフェン、フラン、キサンテン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ジオキソラン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、ジオキサン、モルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピペラジン、トリアジン、トリチアン、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、コハクイミド、フタルイミド、ナフタルイミド、ヒダントイン、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、アントラキノン等が挙げられる。
【0130】
また、前記有機色素構造または複素環は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜20までのアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜16までのアリール基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホンアミド基、N−スルホニルアミド基、アセトキシ基等の炭素数1〜6までのアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6までのアルコキシ基、塩素、臭素等のハロゲン原子、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数2〜7までのアルコキシカルボニル基、シアノ基、t−ブチルカーボネート等の炭酸エステル基、等が挙げられる。
【0131】
また、前記A1としては、下記一般式(4)で表される1価の有機基であることが好ましい。
【0132】
【化11】

【0133】
前記一般式(4)において、B1は、酸性基、塩基性窒素原子を有する基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、および水酸基から選択される基、または置換基を有してもよい有機色素構造または複素環を表し、R18は単結合あるいはa1価の有機もしくは無機の連結基を表す。a1は、1〜5を表し、a1個のB1は同一であっても、異なっていてもよい。
【0134】
1は、一般式(4)における前記A1と同義であり、好ましい態様も同様であるが、前記有機色素構造または複素環としては、例えばフタロシアニン化合物、不溶性アゾ化合物、アゾレーキ化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、ジオキサジン化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラピリジン化合物、アンサンスロン化合物、インダンスロン化合物、フラバンスロン化合物、ペリノン化合物、ペリレン化合物、チオインジゴ化合物等の有機色素構造、例えばチオフェン、フラン、キサンテン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ジオキソラン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、ジオキサン、モルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピペラジン、トリアジン、トリチアン、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、コハクイミド、フタルイミド、ナフタルイミド、ヒダントイン、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、アントラキノン等の複素環が挙げられる。
【0135】
また、前記有機色素構造または複素環は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜20までのアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜16までのアリール基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホンアミド基、N−スルホニルアミド基、アセトキシ基等の炭素数1〜6までのアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6までのアルコキシ基、塩素、臭素等のハロゲン原子、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数2〜7までのアルコキシカルボニル基、シアノ基、t−ブチルカーボネート等の炭酸エステル基、等が挙げられる。
【0136】
18は、単結合あるいはa1+1価の連結基を表し、a1は1〜5を表す。連結基R18としては、1〜100個までの炭素原子、0個〜10個までの窒素原子、0個〜50個までの酸素原子、1個〜200個までの水素原子、および0個〜20個までの硫黄原子から成り立つ基が含まれ、無置換でも置換基を更に有していてもよい。R18は、有機連結基であることが好ましい。
【0137】
18具体的な例として、下記の構造単位又は該構造単位が組み合わさって構成される基を挙げることができる。
【0138】
【化12】

【0139】
上記のうち、置換基R18を有する場合、該置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜20までのアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜16までのアリール基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホンアミド基、N−スルホニルアミド基、アセトキシ基等の炭素数1〜6までのアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6までのアルコキシ基、塩素、臭素等のハロゲン原子、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数2〜7までのアルコキシカルボニル基、シアノ基、t−ブチルカーボネート等の炭酸エステル基、等が挙げられる。
【0140】
前記一般式(11)中、R1は、(m+n)価の連結基を表す。m+nは3〜10を満たす。
【0141】
前記R1で表される(m+n)価の連結基としては、1〜100個までの炭素原子、0個〜10個までの窒素原子、0個〜50個までの酸素原子、1個〜200個までの水素原子、および0個〜20個までの硫黄原子から成り立つ基が含まれ、無置換でも置換基を更に有していてもよい。R1は有機連結基であることが好ましい。
【0142】
1の具体的な例として、前記(t−1)〜(t−34)の構造単位又は該構造単位が組み合わさって構成される基(環構造を形成していてもよい。)を挙げることができる。
【0143】
上記の連結基が置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜20までのアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜16までのアリール基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホンアミド基、N−スルホニルアミド基、アセトキシ基等の炭素数1〜6までのアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6までのアルコキシ基、塩素、臭素等のハロゲン原子、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数2〜7までのアルコキシカルボニル基、シアノ基、t−ブチルカーボネート等の炭酸エステル基、等が挙げられる。
【0144】
2は、単結合あるいは2価の連結基を表す。R2としては、1〜100個までの炭素原子、0個〜10個までの窒素原子、0個〜50個までの酸素原子、1個〜200個までの水素原子、および0個〜20個までの硫黄原子から成り立つ基が含まれ、無置換でも置換基を更に有していてもよい。R2は有機連結基であることが好ましい。
【0145】
2の具体的な例として、前記t−3、4、7〜18、22〜26、32、34の構造単位又は該構造単位が組み合わさって構成される基を挙げることができる。
【0146】
上記のうち、R2が置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜20までのアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜16までのアリール基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホンアミド基、N−スルホニルアミド基、アセトキシ基等の炭素数1〜6までのアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6までのアルコキシ基、塩素、臭素等のハロゲン原子、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数2〜7までのアルコキシカルボニル基、シアノ基、t−ブチルカーボネート等の炭酸エステル基、等が挙げられる。
【0147】
前記一般式(11)中、mは1〜8の整数を表す。mとしては、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が特に好ましい。
【0148】
また、nは2〜9の整数を表す。nとしては、2〜8が好ましく、2〜7がより好ましく、3〜6が特に好ましい。
【0149】
前記一般式(11)中、P1は高分子残基を表し、通常のポリマーなどから目的等に応じて選択することができる。
【0150】
ポリマーの中でも、高分子骨格を構成するには、ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体、エステル系ポリマー、エーテル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、アミド系ポリマー、エポキシ系ポリマー、シリコーン系ポリマー、及びこれらの変性物、又は共重合体〔例えば、ポリエーテル/ポリウレタン共重合体、ポリエーテル/ビニルモノマーの重合体の共重合体など(ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。)を含む。〕からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体、エステル系ポリマー、エーテル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、およびこれらの変性物又は共重合体からなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体が特に好ましい。
【0151】
更には、前記ポリマーは有機溶媒に可溶であることが好ましい。有機溶媒との親和性が低いと、例えば、顔料分散剤として使用した場合、分散媒との親和性が弱まり、分散安定化に十分な吸着層を確保できなくなることがある。
【0152】
前記一般式(11)で表される高分子化合物の中でも、下記一般式(12)で表される高分子化合物がより好ましい。
【0153】
【化13】

【0154】
前記一般式(12)において、A2は前記一般式(11)におけるA1と同義であり、その具体的な好ましい態様も同様であるが、有機色素構造の具体的な例として、フタロシアニン化合物、アゾレーキ化合物、アントラキノン化合物、ジオキサジン化合物、ジケトピロロピロール化合物等がより好ましく、複素環としては、イミダゾール、トリアゾール、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、トリアジン、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンゾチアゾール、コハクイミド、フタルイミド、ナフタルイミド、ヒダントイン、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、アントラキノン等がより好ましい。
【0155】
また、A1と同様に置換基を有していてもよく、該置換基については、A1における場合と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0156】
更に、A2として、前記一般式(4)で表される1価の有機基が好ましく、該有機基の詳細および具体的な例、好ましい態様については同様である。
【0157】
前記一般式(12)において、R3は、(x+y)価の連結基を表す。前記R3で表される(x+y)価の連結基としては、1〜60個までの炭素原子、0個〜10個までの窒素原子、0個〜50個までの酸素原子、1個〜100個までの水素原子、及び0個〜20個までの硫黄原子から成り立つ基が含まれ、無置換でも置換基を更に有していてもよい。
【0158】
前記R3で表される(x+y)価の連結基としては、前記R1における(m+n)価の連結基と同義であり、その好ましい態様も同様である。また、具体的な例として、前記同様の構造単位又は、該構造単位が組み合わさって構成される基が挙げられる。
【0159】
これらのうち、R3で表される連結基は有機連結基であることが好ましく、その有機連結基の好ましい具体的な例〔具体例(r−1)〜(r−17)〕を以下に示す。但し、本発明においては、これらに制限されるものではない。
【0160】
【化14】

【0161】
【化15】

【0162】
上記の中でも、原料の入手性、合成の容易さ、各種溶媒への溶解性の観点から、上記(r1)、(r2)、(r−10)、(r−11)、(r−16)、(r−17)の基が好ましい。
【0163】
また、上記のR3が置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜20までのアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜16までのアリール基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホンアミド基、N−スルホニルアミド基、アセトキシ基等の炭素数1〜6までのアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6までのアルコキシ基、塩素、臭素等のハロゲン原子、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数2〜7までのアルコキシカルボニル基、シアノ基、t−ブチルカーボネート等の炭酸エステル基、等が挙げられる。
【0164】
前記一般式(12)において、R4およびR5は、各々独立に、単結合あるいは2価の連結基を表す。
【0165】
前記R4、R5で表される「2価の連結基」としては、無置換でも置換基を有していてもよく、直鎖、分岐、又は環状のアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基、並びに、−O−、−S−、−C(=O)−、−N(R19)−、−SO−、−SO2−、−CO2−、−N(R20)SO2−、あるいはこれらの基を2つ以上組み合わせた2価の基を好ましい例として挙げることができる(前記R19およびR20は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4個のアルキル基を表す。)。なかでも有機連結基であるここが好ましい。
【0166】
前記R4としては、直鎖、分岐のアルキレン基、アラルキレン基、並びに、−O−、−C(=O)−、−N(R19)−、−SO2−、−CO2−、−N(R20)SO2−(前記R19およびR20は各々独立に水素原子又は炭素数1〜4個のアルキル基を表す。)、あるいはこれらの基を2つ以上組み合わせた2価の基がより好ましく、直鎖、分岐のアルキレン基、アラルキレン基、並びに、−O−、−C(=O)−、−N(R19)−(前記R19は、水素原子又は炭素数1〜4個のアルキル基を表す。)、−CO2−あるいはこれらの基を2つ以上組み合わせた2価の基が特に好ましい。
【0167】
前記R5としては、単結合あるいは直鎖、分岐のアルキレン基、アラルキレン基、並びに、−O−、−C(=O)−、−N(R19)−、−SO2−、−CO2−、−N(R20)SO2−(前記R19およびR20は各々独立に水素原子又は炭素数1〜4個のアルキル基を表す。)、あるいはこれらの基を2つ以上組み合わせた2価の基がより好ましく、直鎖、分岐のアルキレン基、アラルキレン基、並びに、−O−、−C(=O)−、−N(R19)−(前記R19は、水素原子又は炭素数1〜4個のアルキル基を表す。)、−CO2−あるいはこれらの基を2つ以上組み合わせた2価の基が特に好ましい。
【0168】
また、前記R4、R5が置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜20までのアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜16までのアリール基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホンアミド基、N−スルホニルアミド基、アセトキシ基等の炭素数1〜6までのアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6までのアルコキシ基、塩素、臭素等のハロゲン原子、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数2〜7までのアルコキシカルボニル基、シアノ基、t−ブチルカーボネート等の炭酸エステル基、等が挙げられる。
【0169】
前記一般式(12)中、yは1〜8を表し、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が特に好ましい。また、xは2〜9を表し、2〜8が好ましく、2〜7がより好ましく、3〜6が特に好ましい。
【0170】
また、一般式(12)中のP2は、高分子残基を表し、通常のポリマーなどから目的等に応じて選択することができる。ポリマーの好ましい態様については、前記一般式(11)におけるP1と同義であり、その好ましい態様も同様である。
【0171】
前記一般式(12)で表される高分子化合物のうち、特に、R3が前記具体例(r−1)、(r−2)、(r−10)、(r−11)、(r−16)、又は(r−17)であって、R4が、単結合、直鎖、分岐のアルキレン基、アラルキレン基、−O−、−C(=O)−、−N(R19)−(前記R19は、水素原子又は炭素数1〜4個のアルキル基を表す。)、−CO2−、またはこれらの基を2つ以上組み合わせた2価の有機基であって、R5が単結合、エチレン基、プロピレン基、又は下記一般式(s−a)もしくは(s−b)で表される連結基であって、P2がビニルモノマーの重合体もしくは共重合体、エステル系ポリマー、エーテル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、又はこれらの変性物であって、yが1〜2であって、xが3〜6である高分子化合物が特に好ましい。なお、下記基中、R21は水素原子又はメチル基を表し、lは1又は2を表す。
【0172】
【化16】

【0173】
本発明の製造方法に用いられる高分子化合物の重量平均分子量は1000以上であるが、重量平均分子量で3000〜100000が好ましく、5000〜80000がより好ましく、7000〜60000が特に好ましい。重量平均分子量が前記範囲内であると、ポリマーの末端に導入された複数の官能基の効果が十分に発揮され、固体表面への吸着性、ミセル形成能、界面活性性に優れた性能を発揮する。特に本発明に係る高分子化合物を顔料分散剤として用いた場合に、良好な分散性と分散安定性を達成することができる。
前記一般式(11)で表される高分子化合物(一般式(12)で表されるものを含む)は、特に制限されないが、下記方法などにより合成することができる。下記合成方法のうち、合成上の容易さから、下記2、3、4、5等の合成方法がより好ましく、下記3、4、5等の合成方法が特に好ましい。
【0174】
1.カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基等から選択される官能基を末端に導入したポリマーと、複数の官能基(前記一般式中のA1又はA2)を有する酸ハライド、あるいは複数の官能基(前記一般式中のA1又はA2)を有するアルキルハライド、あるいは複数の官能基(前記一般式中のA1又はA2)を有するイソシアネート等とを高分子反応させる方法。
【0175】
2.末端に炭素−炭素二重結合を導入したポリマーと、複数の官能基(前記一般式中のA1又はA2)を有するメルカプタンとをマイケル付加反応させる方法。
【0176】
3.末端に炭素−炭素二重結合を導入したポリマーと、複数の官能基(前記一般式中のA1又はA2)を有するメルカプタンとをラジカル発生剤存在下で反応させる方法。
【0177】
4.末端に複数のメルカプタンを導入したポリマーと、炭素−炭素二重結合を導入した官能基(前記一般式中のA1又はA2)とをラジカル発生剤存在下で反応させる方法。
【0178】
5.複数の官能基(前記一般式中のA1又はA2)を有するメルカプタン化合物を連鎖移動剤として、ビニルモノマーをラジカル重合する方法。
【0179】
上記のうち、本発明の製造方法に用いられる高分子化合物(好ましくは一般式(12)で表される高分子化合物)は、例えば、上記2、3、4、5のいずれかの方法で合成することができるが、合成上の容易さから、上記5の方法で合成することがより好ましい。
【0180】
より具体的には、下記一般式(13)で表される化合物を連鎖移動剤として用いて、ラジカル重合させることが好ましい。
【0181】
【化17】

【0182】
前記一般式(13)において、R6、R7、A3、g、およびhは、それぞれ前記一般式(12)におけるR3、R4、A2、x、およびyと同義であり、その好ましい態様も同様である。
【0183】
前記ビニルモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエーテル類、ビニルアルコールのエステル類、スチレン類、(メタ)アクリロニトリルなどが好ましい。このような例としては、下記のような化合物が挙げられる。
【0184】
前記(メタ)アクリル酸エステル類の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β−フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチルなどが挙げられる。
【0185】
前記クロトン酸エステル類の例としては、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル等が挙げられる。
【0186】
前記ビニルエステル類の例としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、安息香酸ビニルなどが挙げられる。
【0187】
前記マレイン酸ジエステル類の例としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
【0188】
前記フマル酸ジエステル類の例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどが挙げられる。
【0189】
前記イタコン酸ジエステル類の例としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチルなどが挙げられる。前記(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチルアクリル(メタ)アミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミドなどが挙げられる。
【0190】
前記スチレン類の例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt−Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、及びα−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0191】
前記ビニルエーテル類の例としては、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、及びメトキシエチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0192】
上記の化合物以外にも、(メタ)アクリロニトリル、ビニル基が置換した複素環式基(例えば、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾールなど)、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクトン等も使用できる。
【0193】
また、上記の化合物以外に、例えばウレタン基、ウレア基、スルホンアミド基、フェノール基、イミド基などの官能基を有するビニルモノマーも用いることができる。このようなウレタン基、又はウレア基を有する単量体としては、例えばイソシアナート基と水酸基、又はアミノ基の付加反応を利用して、適宜合成することが可能である。具体的には、イソシアナート基含有モノマーと水酸基を1個含有する化合物または1級あるいは2級アミノ基を1個含有する化合物との付加反応、又は水酸基含有モノマーまたは1級あるいは2級アミノ基含有モノマーとモノイソシアネートとの付加反応等により適宜合成することができる。
【0194】
上記のビニルモノマーは一種のみで重合させてもよいし、二種以上を併用して共重合させてもよく、このようなラジカル重合体は、それぞれ相当するビニルモノマーを通常の方法で常法に従って重合させることで得られる。
【0195】
例えばこれらのビニルモノマー、および連鎖移動剤を適当な溶媒中に溶解し、ここにラジカル重合開始剤を添加して、約50℃〜220℃で、溶液中で重合させる方法(溶液重合法)を利用して得られる。
【0196】
溶液重合法で用いられる適当な溶媒の例としては、用いる単量体、及び生成する共重合体の溶解性に応じて任意に選択できる。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メトキシプロピルアセテート、乳酸エチル、酢酸エチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、トルエンが挙げられる。これらの溶媒は、二種以上を混合して使用してもよい。
【0197】
また、ラジカル重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス−(2,4’−ジメチルバレロニトリル)のようなアゾ化合物、ベンゾイルパーオキシドのような過酸化物、及び過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムのような過硫酸塩などなどが利用できる。
【0198】
前記一般式(13)で表される化合物は、以下の方法等で合成することができるが、合成上の容易さから、下記7の方法がより好ましい。
【0199】
6.複数の官能基(前記一般式中のA1又はA2)を有するハライド化合物からメルカプタン化合物に変換する方法(チオ尿素と反応させ、加水分解する方法、NaSHと直接反応させる方法、CH3COSNaと反応させ、加水分解させる方法などが挙げられる)
7.一分子中に3〜10個のメルカプト基を有する化合物と、官能基(前記一般式中のA1又はA2)を有し、かつメルカプト基と反応可能な官能基を有する化合物、とを付加反応させる方法
前記方法7における「メルカプト基と反応可能な官能基」としては、酸ハライド、アルキルハライド、イソシアネート、炭素−炭素二重結合などが好適に挙げられる。
【0200】
「メルカプト基と反応可能な官能基」が炭素−炭素二重結合であり、付加反応がラジカル付加反応で合成することが特に好ましい。炭素−炭素二重結合としては、メルカプト基との反応性の点で、1置換もしくは2置換のビニル基がより好ましい。
【0201】
前記「一分子中に3〜10個のメルカプト基を有する化合物」の具体的な例〔具体例(18)〜(34)〕として、以下の化合物が挙げられる。
【0202】
【化18】

【0203】
【化19】

【0204】
上記の中でも、原料の入手性、合成の容易さ、各種溶媒への溶解性の観点から、(u−18)、(u−19)、(u−27)、(u−28)、(u−33)、(u−34)が好ましい。
【0205】
官能基(前記一般式中のA1又はA2)を有し、かつ、炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、特に制限されないが、以下のようなものが挙げられる。
【0206】
【化20】

【0207】
【化21】

【0208】
【化22】

【0209】
【化23】

【0210】
【化24】

【0211】
例えば、前記「一分子中に3〜10個のメルカプト基を有する化合物」と、前記「酸性基、塩基性窒素原子を有する基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、および水酸基から選択される少なくとも1種の官能基を有し、かつ、炭素−炭素二重結合を有する化合物」とのラジカル付加反応生成物は、例えば、上記の「一分子中に3〜10個のメルカプト基を有する化合物」および「酸性基、塩基性窒素原子を有する基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、および水酸基から選択される少なくとも1種の官能基を有し、かつ、炭素−炭素二重結合を有する化合物」を適当な溶媒中に溶解し、ここにラジカル発生剤を添加して、約50℃〜100℃で、付加させる方法(チオール−エン反応法)を利用して得られる。
【0212】
前記方法で用いられる好ましい溶媒の例としては、用いる「一分子中に3〜10個のメルカプト基を有する化合物」、「酸性基、塩基性窒素原子を有する基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、および水酸基から選択される少なくとも1種の官能基を有し、かつメルカプト基と反応可能な官能基(例えば炭素−炭素二重結合)を有する化合物」、および生成するラジカル付加反応生成物の溶解性に応じて任意に選択できる。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メトキシプロピルアセテート、乳酸エチル、酢酸エチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、トルエンが挙げられる。これらの溶媒は、二種以上を混合して使用してもよい。
【0213】
また、ラジカル発生剤としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス−(2,4’−ジメチルバレロニトリル)のようなアゾ化合物、ベンゾイルパーオキシドのような過酸化物、及び過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムのような過硫酸塩などなどが利用できる。
【0214】
本発明の製造方法に好ましく用いられる一般式(11)で表される化合物の具体例を以下に示す。但し本発明はこれらの具体例に何ら限定されるものではない。
【0215】
【化25】

【0216】
【化26】

【0217】
【化27】

【0218】
【化28】

【0219】
【化29】

【0220】
【化30】

【0221】
【化31】

【0222】
【化32】

【0223】
またこの高分子化合物は、酸性基を有する高分子化合物であることが好ましく、カルボキシル基を有する高分子化合物であることがより好ましく、(A)カルボキシル基を有する化合物から導かれた繰り返し単位の少なくとも1種および(B)カルボン酸エステル基を有する化合物から導かれた繰り返し単位の少なくとも1種を含有する共重合化合物が特に好ましい。
【0224】
前記(A)カルボキシル基を有する化合物から導かれた繰り返し単位として、下記一般式(I)で表される繰り返し単位であることが好ましく、アクリル酸またはメタクリル酸から導かれた繰り返し単位であることがより好ましく、前記(B)カルボン酸エステル基を有する化合物から導かれた繰り返し単位として、下記一般式(II)で表される繰り返し単位であることが好ましく、下記一般式(IV)で表される繰り返し単位であることがより好ましく、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェネチルアクリレート、フェネチルメタクリレート、3−フェニルプロピルアクリレート、または3−フェニルプロピルメタクリレートから導かれた繰り返し単位であることが特に好ましい。
【0225】
【化33】

【0226】
(R1は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。)
【0227】
【化34】

【0228】
(R2は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。R3は下記一般式(III)で表される基を表す。)
【0229】
【化35】

【0230】
(R4は水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基、又は炭素原子数6〜20のアリール基を表す。R5及びR6はそれぞれ水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。X1は1〜5の数を表す。)
【0231】
【化36】

【0232】
(R7は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。R8は下記一般式(V)で表される基を表す。)
【0233】
【化37】

【0234】
(R9は炭素原子数2〜5のアルキル基又は炭素原子数6〜20のアリール基を表す。R10及びR11は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。Y1は1〜5の数を表す。)
また、(A)カルボキシル基を有する化合物から導かれた繰り返し単位と、前記(B)カルボン酸エステル基を有する化合物から導かれた繰り返し単位との重合比率としていえば、繰り返し単位(A)の全繰り返し単位数に対する数量比%が3〜40であることが好ましく、5〜35であることがより好ましい。
【0235】
また、本発明の有機ナノ粒子の製造方法においては、アミノ基及びエーテル基を有するグラフト共重合体を含有し、必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有する高分子化合物を用いることも好ましい。
【0236】
前記グラフト共重合体は、アミノ基及びエーテル基を少なくとも有してなり、その他のモノマー等を共重合体単位として含んでいてもよい。
【0237】
前記グラフト共重合体の重量平均分子量(Mw)としては、3000〜100000が好ましく、5000〜50000がより好ましい。前記重量平均分子量(Mw)が、3000未満であると、有機ナノ粒子の凝集を防ぐことができず、粘度が上昇してしまうことがあり、100000を超えると有機溶剤への溶解性が不足し、粘度が上昇してしまうことがある。なお、該重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(キャリア:テトラヒドロフラン)により測定されるポリスチレン換算重量平均分子量である。
【0238】
前記グラフト共重合体は、(i)末端にエチレン性不飽和二重結合を有する重合性オリゴマーと、(ii)アミノ基とエチレン性不飽和二重結合とを有するモノマーと、(iii)エーテル基を有する重合性モノマーとを共重合体単位として少なくとも含み、必要に応じて(iv)その他のモノマーを共重合単位として含むことが好ましい。
【0239】
これらの共重合体単位の、前記グラフト共重合体における含有量としては、(i)前記重合性オリゴマーが15〜98質量%であることが好ましく、25〜90質量%であることがより好ましく、(ii)アミノ基含有モノマーが1〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましく、(iii)前記エーテル基を有する重合性モノマーが1〜70質量%であることが好ましく、5〜60質量%であることがより好ましい。
【0240】
前記重合性オリゴマーの含有量が、15質量%未満であると、分散剤としての立体反発効果が得られず、有機ナノ粒子の凝集が防止できないことがあり、98質量%を超えると、前記窒素含有モノマーの割合が減り有機粒子に対する吸着能力が低下し、分散性が十分でないことがある。前記窒素含有モノマーの含有量が、1質量%未満であると、有機粒子に対する吸着能力が低下し、分散性が十分でないことがあり、40質量%を超えると、前記重合性オリゴマーの割合が減ることから、分散剤としての立体反発効果が得られず、有機粒子の凝集を十分に防止できないことがある。前記エーテル基を有する重合性モノマーの含有量が、1質量%未満であると、カラーフィルタ等の製造の際の現像適性が十分でないことがあり、70質量%を超えると、分散剤としての能力が低下することがある。
【0241】
(i) 重合性オリゴマー
前記重合性オリゴマー(以下、「マクロモノマー」と称することがある。)は、エチレン性不飽和二重結合を有する基を末端に有するオリゴマーである。本発明においては、前記重合性オリゴマーの中でも、該オリゴマーの両末端の内の一方にのみ前記エチレン性不飽和二重結合を有する基を有するのが好ましい。
【0242】
前記オリゴマーとしては、一般的には、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、及びブタジエンから選択された少なくとも一種のモノマーから形成された単独重合体又は共重合体などが挙げられ、これらの中でも、アルキル(メタ)アクリレートの単独重合体又は共重合体、ポリスチレンなどが好ましい。本発明において、これらのオリゴマーは、置換基で置換されていてもよく、該置換基としては、特に制限はないが、例えば、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0243】
前記エチレン性不飽和二重結合を有する基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、などが好適に挙げられ、これらの中でも(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。
【0244】
本発明においては、前記重合性オリゴマーの中でも、下記一般式(E6)で表されるオリゴマーが好ましい。
【0245】
【化38】

【0246】
前記一般式(E6)において、R61及びR63は、水素原子又はメチル基を表す。R62は、炭素数1〜8のアルコール性水酸基で置換されてもよいアルキレン基を表し、炭素数2〜4のアルキレン基が好ましい。Y6は、フェニル基、炭素数1〜4のアルキル基を有するフェニル基、又は−COOR64(ここで、R64は、炭素数1〜6のアルコール性水酸基、ハロゲンで置換されてもよいアルキル基、フェニル基、又は炭素数7〜10のアリールアルキル基を表す。)を表し、フェニル基又は−COOR64(ここで、R64は、炭素数1〜4のアルコール性水酸基で置換されてもよいアルキル基を表す。)が好ましい。qは、20〜200を表す。
【0247】
前記重合性オリゴマーの具体例としては、ポリ−2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ−n−ブチル(メタ)アクリレート、ポリ−i−ブチル(メタ)アクリレート、それらの共重合体であって、分子末端の一個に(メタ)アクリロイル基が結合したポリマーが好ましい。
【0248】
前記重合性オリゴマーは、市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよく、該市販品としては、例えば、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー(Mn=6000、商品名:AS−6,東亜合成化学工業(株)社製)、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AA−6,東亜合成化学工業(株)社製)、片末端メタクリロイル化ポリ−n−ブチルアクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AB−6,東亜合成化学工業(株)社製)、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートオリゴマー(Mn=7000、商品名:AA−714,東亜合成化学工業(株)社製)、片末端メタクリロイル化ポリブチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートオリゴマー(Mn=7000、商品名:707S,東亜合成化学工業(株)社製)、片末端メタクリロイル化ポリ2−エチルヘキシルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートオリゴマー(Mn=7000、商品名:AY−707S、AY−714S,東亜合成化学工業(株)社製)、などが挙げられる。
【0249】
本発明における前記重合性オリゴマーの好ましい具体例としては、アルキル(メタ)アクリレートの重合体、及び、アルキル(メタ)アクリレートとポリスチレンとの共重合体から選択される少なくとも1種のオリゴマーであって、数平均分子量が1000〜20000であり、末端に(メタ)アクリロイル基を有するものが挙げられる。
【0250】
(ii) アミノ基含有モノマー
前記アミノ基含有モノマーとしては、例えば、下記一般式(E2)で表される化合物より選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。
【0251】
【化39】

【0252】
前記一般式(E2)において、R21は、水素原子又はメチル基を表す。R22は、炭素数1〜8のアルキレン基を表し、これらの中でも、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基が特に好ましい。X2は、−N(R23)(R24)、−R25N(R26)(R27)を表す。ここで、R23及びR24は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を表す。R25は、炭素数1〜6のアルキレン基を表し、R26及びR27は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を表す。
【0253】
上記のうち、−N(R23)(R24)のR23及びR24は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基若しくはフェニル基が好ましく、−R25−N(R26)(R27)のR25は、炭素数2〜6のアルキレン基が好ましく、R26及びR27は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。m2及びn2は、1又は0を表し、m2=1かつn2=1、又は、m2=1かつn2=0が好ましい(即ち、下記一般式(E3)、(E4)で表されるモノマーに対応する)。
【0254】
本発明においては、前記一般式(E2)で表されるモノマーの中でも、下記一般式(E3)及び(E4)のいずれかで表されるモノマーから選択される少なくとも1種が好ましい。
【0255】
【化40】

【0256】
前記一般式(E3)において、R31は、一般式(E2)におけるR21と同義である。R32は、一般式(E2)におけるR22と同義である。X3は、一般式(E2)におけるX2と同義である。
【0257】
【化41】

【0258】
前記一般式(E4)において、R41は、一般式(E2)におけるR21と同義である。X4は、一般式(E2)におけるX2と同義であり、−N(R43)(R44)(ここで、R43及びR44は、一般式(E2)におけるR23及びR24と同義である。)、又は、−R45−N(R46)(R47)(ここで、R45、R46及びR47は、それぞれ一般式(E2)におけるR25、R26及びR27と同義である。)が好ましい。
【0259】
前記一般式(E2)で表されるモノマーの具体例としては、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、ジ−i−ブチル(メタ)アクリルアミド、モルホリノ(メタ)アクリルアミド、ピペリジノ(メタ)アクリルアミド、N−メチル−2−ピロリジル(メタ)アクリルアミド及びN,N−メチルフェニル(メタ)アクリルアミド(以上(メタ)アクリルアミド類);2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリルアミド、6−(N,N−ジエチルアミノ)ヘキシル(メタ)アクリルアミド(以上アミノアルキル(メタ)アクリルアミド類)などが好ましいものとして挙げられる。
【0260】
(iii) エーテル基を有する重合性モノマー
前記エーテル基を有する重合性モノマーとしては、例えば、下記一般式(E1)で表されるモノマーより選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。
【0261】
【化42】

【0262】
前記一般式(E1)において、R11は、水素原子又はメチル基を表す。R12は、炭素数1〜8のアルキレン基を表し、中でも、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基がより好ましい。X1は、−OR13又は−OCOR14を表す。ここで、R13は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、フェニル基、又は炭素数1〜18のアルキル基で置換されたフェニル基を表す。R14は、炭素数1〜18のアルキル基を表す。また、m3は、2〜200を表し、5〜100が好ましく、10〜100が特に好ましい。
【0263】
前記エーテル基を有する重合性モノマーとしては、エーテル基を有し、且つ重合性のものであれば特に制限はなく、通常のものの中から適宜選択することができ、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノメタクリレートなどが挙げられ、これらは市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよい。該市販品としては、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名:NKエステルM−40G,M−90G,M−230G(以上、東亜合成化学工業(株)社製);商品名:ブレンマーPME−100,PME−200,PME−400,PME−1000,PME−2000、PME−4000(以上、日本油脂(株)社製))、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350,日本油脂(株)社製)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPP−500、PP−800、PP−1000,日本油脂(株)社製)、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマー70PEP−370B,日本油脂(株)社製)、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマー55PET−800,日本油脂(株)社製)、ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーNHK−5050,日本油脂(株)社製)などが挙げられる。
【0264】
(iv) その他のモノマー
前記グラフト共重合体は、前記その他のモノマーを更に共重合体単位として含有していてもよく、該その他のモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、芳香族ビニル化合物(例、スチレン、α−メチルスチレン及びビニルトルエン)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート及びi−ブチル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル(例、ベンジル(メタ)アクリレート)、グリシジル(メタ)アクリレート、カルボン酸ビニルエステル(例、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル)、シアン化ビニル(例、(メタ)アクリロニトリル及びα−クロロアクリロニトリル)、及び脂肪族共役ジエン(例、1,3−ブタジエン及びイソプレン)、(メタ)アクリル酸、などが挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル及びカルボン酸ビニルエステルが好ましい。
【0265】
前記グラフト共重合体における該その他のモノマーの含有量としては、例えば、5〜70質量%が好ましい。前記含有率が、5質量%未満であると、塗布膜の物性の制御ができなくなることがあり、70質量%を超えると、分散剤としての能力が十分に発揮されないことがある。
【0266】
前記グラフト共重合体の好ましい具体例としては、
(11) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、
(12) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリスチレン共重合体、
(13) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/メチル(メタ)アクリレート末端メタクリロイル化ポリスチレン共重合体、
(14) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化メチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体の共重合体、
(15) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化メチルメタアクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体の共重合体、
(16) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化メチルメタアクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体の共重合体、
(17) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、
(18) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、
(19) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、
(20) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、などが挙げられる。
【0267】
なかでも、(11)、(14)、(18)が好ましく、下記式(D4)で表される化合物がより好ましい。式(D4)中、Meはメチル基を表す。
【0268】
【化43】

【0269】
前記グラフト共重合体は、前記各共重合体単位となる成分を、例えば、溶媒中でラジカル重合させることにより得ることができる。該ラジカル重合の際、ラジカル重合開始剤を使用することができ、また、更に連鎖移動剤(例、2−メルカプトエタノール及びドデシルメルカプタン)を使用することができる。グラフト共重合体を含有する顔料分散剤については特開2001−31885号公報の記載を参考にすることもできる。
【0270】
グラフト共重合体の含有量は、有機粒子の均一分散性および保存安定性をより一層向上させるために、顔料100質量部に対して0.1〜1000質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜500質量部の範囲であり、さらに好ましくは5〜20質量部の範囲である。0.1質量部未満であると有機ナノ粒子の分散安定性の向上が見られない場合がある。また、グラフト共重合体は、単独で用いても、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0271】
本発明の製造方法において高分子の分子量とは、特に断らない限り、重量平均分子量をいう。高分子の分子量の測定方法としては、クロマトグラフィー法、粘度法、光散乱法、沈降速度法等が挙げられる。本発明では、特に断らない限りクロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量を用いる。
【0272】
以下、アニオン性の高分子化合物について説明する。
前記凝集には、アニオン性基を少なくとも1つ有する高分子化合物を添加することができる。当該高分子化合物は重量平均分子量1000以上であり、下記一般式(14)で表される高分子化合物であることが好ましい。
【0273】
【化44】

【0274】
(式中、Gは−COO-、−SO3-、−OSO3-、−P(O)(OH)O-、又は−OP(O)(OH)O-を表す。Jは2価の連結基または単結合を表す。Qは(m+l)価の連結基を表す。Rは高分子化合物残基を表す。Zは有機または無機カチオンを表す。m+lは3〜6を表す。)
一般式(14)中、Gは、−COO-、−SO3-、−OSO3-、−P(O)(OH)O-、−OP(O)(OH)O-を表し、より好ましくは−SO3-、−OSO3-、−P(O)(OH)O-である。複数のGがある場合、Gは同一のアニオン性基であっても、異なっていても良い。
【0275】
一般式(14)中、Jが表す2価の連結基としては、直鎖、分岐のアルキレン基、アラルキレン基、並びに、−O−、−C(=O)−、−SO2−、−CO2−、あるいはこれらの基を2つ以上組み合わせた2価の基が好ましく、一般式(14)中のQと連結する部位が硫黄原子であることがより好ましい。
【0276】
また置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜16のアリール基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホンアミド基、N−スルホニルアミド基、アセトキシ基等の炭素数1〜6のアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、塩素、臭素等のハロゲン原子、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基、シアノ基、t−ブチルカーボネート等の炭酸エステル基、等が挙げられる。
【0277】
一般式(14)中、Zが表す有機カチオンとしては、イミダゾリウム塩類、ピリジニウム塩類、チアゾリウム塩類、オキサゾリウム塩類、イミダゾリニウム塩類、チアゾリニウム塩類、オキサゾリニウム塩類などが挙げられる。無機カチオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどが挙げられる。Zは無機カチオンが好ましい。
【0278】
前記一般式(14)中、Qは(m+l)価の連結基を表す。m+lは3〜6を表す。
【0279】
前記Qで表される(m+l)価の連結基としては、1〜100個までの炭素原子、0〜10個の窒素原子、0〜50個の酸素原子、1〜200個の水素原子から成り立つ基が含まれ、無置換でも置換基を更に有していてもよい。Qは有機連結基であることが好ましく、その有機連結基の好ましい具体的な例〔例示化合物(r−1)〜(r−17)〕を以下に示す。但し、本発明においては、これらに制限されるものではない。
【0280】
【化45】

【0281】
【化46】

【0282】
前記一般式(14)中、mは1〜5の整数を表す。mとしては、2〜5が好ましく、3〜5がより好ましい。また、lは1〜5の整数を表す。lとしては、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が特に好ましい。
【0283】
前記一般式(14)中、Rは高分子化合物残基(高分子骨格)を表し、通常のポリマーなどから目的等に応じて選択することができる。この場合、高分子骨格とは、数平均分子量が1000以上の高分子構造を指す。ポリマーの中でも、高分子骨格を構成するには、ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体、エステル系ポリマー、エーテル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、アミド系ポリマー、エポキシ系ポリマー、シリコーン系ポリマー、及びこれらの変性物、又は共重合体〔例えば、ポリエーテル/ポリウレタン共重合体、ポリエーテル/ビニルモノマーの重合体の共重合体など(ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。)を含む。〕からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体、エステル系ポリマー、エーテル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、およびこれらの変性物又は共重合体からなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体が特に好ましい。
【0284】
更には、前記ポリマーは有機溶媒に可溶であることが好ましい。有機溶媒との親和性が低いと、例えば、顔料分散剤として使用した場合、分散媒との親和性が弱まり、分散安定化に十分な吸着層を確保できなくなることがある。
【0285】
本発明に用いられるアニオン性基を有する高分子化合物の重量平均分子量は1000以上であるが、重量平均分子量で3000〜100000が好ましく、5000〜80000がより好ましく、7000〜60000が特に好ましい。重量平均分子量が前記範囲内であると、ポリマーの末端に導入された複数の官能基の効果が十分に発揮され、固体表面への吸着性、ミセル形成能、界面活性性に優れた性能を発揮する。特に上記アニオン性基を有する高分子化合物を、有機ナノ顔料粒子凝集体を再分散させる際の顔料分散剤として用いた場合に、良好な分散性と分散安定性を達成することができる。
【0286】
前記一般式(14)で表される高分子化合物は、特に制限されないが、下記方法などにより合成することができる。複数の官能基(前記一般式中のG)を有するメルカプタン化合物を連鎖移動剤として、ビニルモノマーをラジカル重合する方法である。
【0287】
より具体的には、下記一般式(15)で表される化合物を連鎖移動剤として用いて、ラジカル重合させることが好ましい。
【0288】
【化47】

【0289】
一般式(15)中、G、J、Q、Z、及びm+lは前記一般式(14)におけるG、J、Q、Z、及びm+lと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0290】
前記ビニルモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエーテル類、ビニルアルコールのエステル類、スチレン類、(メタ)アクリロニトリルなどが好ましい。このような例としては、下記のような化合物が挙げられる。
【0291】
前記(メタ)アクリル酸エステル類の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β−フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチルなどが挙げられる。
【0292】
前記クロトン酸エステル類の例としては、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル等が挙げられる。前記ビニルエステル類の例としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、安息香酸ビニルなどが挙げられる。前記マレイン酸ジエステル類の例としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどが挙げられる。前記フマル酸ジエステル類の例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどが挙げられる。前記イタコン酸ジエステル類の例としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチルなどが挙げられる。前記(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチルアクリル(メタ)アミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミドなどが挙げられる。
【0293】
前記スチレン類の例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt−Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、及びα−メチルスチレンなどが挙げられる。前記ビニルエーテル類の例としては、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、及びメトキシエチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0294】
上記のビニルモノマーは一種のみで重合させてもよいし、二種以上を併用して共重合させてもよく、このようなラジカル重合体は、それぞれ相当するビニルモノマーを通常の方法で常法に従って重合させることで得られる。
【0295】
例えばこれらのビニルモノマー、および連鎖移動剤を適当な溶媒中に溶解し、ここにラジカル重合開始剤を添加して、約50℃〜220℃で、溶液中で重合させる方法(溶液重合法)を利用して得られる。溶液重合法で用いられる適当な溶媒の例としては、用いる単量体、及び生成する共重合体の溶解性に応じて任意に選択できる。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メトキシプロピルアセテート、乳酸エチル、酢酸エチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、トルエン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が挙げられる。これらの溶媒は、二種以上を混合して使用してもよい。
【0296】
また、ラジカル重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス−(2,4’−ジメチルバレロニトリル)のようなアゾ化合物、ベンゾイルパーオキシドのような過酸化物、及び過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムのような過硫酸塩などなどが利用できる。
【0297】
以下、前記一般式(14)で表される高分子化合物の具体例を示すが、これらに限定されない。
【0298】
【化48】

【0299】
【化49】

【0300】
【化50】

【0301】
[単離]
以下、凝集させた有機ナノ粒子の単離方法について説明する。
【0302】
まず単離前に、凝集した液を0.5〜2時間静置することが好ましい。凝集体が沈降するので、上澄みをデカントしたり、吸い取ることにより除去でき、凝集体の単離がさらに容易になる。また静置の代わりに遠心分離を行うことで、より速い凝集体の沈降が可能であり、時間短縮ができる。
【0303】
単離方法としては、種種のろ取方法が可能であり、限界ろ過、遠心分離、ろ紙やフィルタによるろ過が挙げられる。
【0304】
限外ろ過による場合、例えばハロゲン化銀乳剤の脱塩/濃縮に用いられる方法を適用することができる。リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)No.10208(1972)、No.13 122(1975)およびNo.16 351(1977)が知られている。操作条件として重要な圧力差や流量は、大矢春彦著「膜利用技術ハンドブック」幸書房出版(1978)、p275に記載の特性曲線を参考に選定することができるが、目的の有機ナノ粒子分散物を処理する上では、粒子の凝集を抑えるために最適条件を見いだす必要がある。また、膜透過より損失する溶媒を補充する方法においては、連続して溶媒を添加する定容式と断続的に分けて添加する回分式とがあるが、脱塩処理時間が相対的に短い定容式が好ましい。こうして補充する溶媒には、イオン交換または蒸留して得られた純水を用いるが、純水の中に分散剤、分散剤の貧溶媒を混合してもよいし、有機ナノ粒子分散物に直接添加してもよい。
【0305】
フィルタろ過は、例えば、加圧ろ過のような装置を用いることができる。好ましいフィルタとしては、ろ紙、ナノフィルタ、ウルトラフィルタなどが挙げられる。
【0306】
遠心分離による有機ナノ粒子の濃縮に用いられる遠心分離機は有機ナノ粒子分散液(または有機ナノ粒子濃縮抽出液)中の有機ナノ粒子を沈降させることができればどのような装置を用いてもよい。遠心分離機としては、例えば、汎用の装置の他にもスキミング機能(回転中に上澄み層を吸引し、系外に排出する機能)付きのものや、連続的に固形物を排出する連続遠心分離機などが挙げられる。
【0307】
遠心分離条件は、遠心力(重力加速度の何倍の遠心加速度がかかるかを表す値)で50〜10000が好ましく、100〜8000がより好ましく、150〜6000が特に好ましい。遠心分離時の温度は、分散液の溶剤種によるが、−10〜80℃が好ましく、−5〜70℃がより好ましく、0〜60℃が特に好ましい。
【0308】
単離した凝集体については、脱塩、脱水、余分な分散剤の除去を目的に、洗浄を行うこともできる。洗浄操作は、限界ろ過、遠心分離、ろ紙やフィルタによるろ過の後に、そのまま洗浄液を添加してかけ洗いしてもよく、一旦凝集体を取り出し、洗浄液中でリスラリーした後に、限界ろ過、遠心分離、ろ紙やフィルタによるろ過で単離してもよく、それらを組み合わせた洗浄を行っても良い。
【0309】
また、洗浄は上述のような単離の後に行うことだけでなく、単離前に行うこともできる。凝集したナノ顔料粒子分散液を静置し、上澄み液を除き、洗浄液を添加し、リスラリーさせることにより達成される。リスラリーの後は、静置し、上澄み液を除き、ろ過してもよいが、そのままろ過してもよい。単離前に洗浄を行うと、凝集体が常に湿潤しているため、洗浄効率が上がるのみならず、後述の再分散がより容易になる。
【0310】
洗浄液としては、脱塩、脱水、余分な分散剤・凝集剤の除去水性溶媒が達成できれば、特に限定されないが、具体的には、水性溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール化合物溶媒、アミド化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素溶媒、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、エステル化合物溶媒、アミド化合物溶媒、またはこれらの混合物が好ましく、特に水性溶媒、アルコール化合物溶媒、エステル化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒が好ましい。
【0311】
洗浄した凝集体については、そのまま後述の再分散を行っても、再分散溶媒(後述)で濡らした後再分散を行っても、乾燥して有機ナノ粒子分散物の粉体として取り出した後再分散を行っても良い。
【0312】
凍結乾燥の方法については、特に限定されず、当業者が利用可能な方法であればいかなるものを採用してもよい。例えば、冷媒直膨方法、重複冷凍方法、熱媒循環方法、三重熱交換方法、間接加熱凍結方法が挙げられるが、好ましくは冷媒直膨方法、間接加熱凍結方法、より好ましくは間接加熱凍結方法を用いるのがよい。いずれの方法においても、予備凍結を行なった後凍結乾燥を行なうことが好ましい。予備凍結の条件は特に限定されないが、凍結乾燥を行なう試料がまんべんなく凍結されている必要がある。
【0313】
間接加熱凍結方法の装置としては、小型凍結乾燥機、FTS凍結乾燥機、LYOVAC凍結乾燥機、実験用凍結乾燥機、研究用凍結乾燥機、三重熱交換真空凍結乾燥機、モノクーリング式凍結乾燥機、HULL凍結乾燥機が挙げられるが、好ましくは小型凍結乾燥機、実験用凍結乾燥機、研究用凍結乾燥機、モノクーリング式凍結乾燥機、より好ましくは小型凍結乾燥機、モノクーリング式凍結乾燥機を用いるのがよい。
【0314】
凍結乾燥の温度は特に限定されないが、例えば−190〜−4℃、好ましくは−120〜−20℃、より好ましくは−80〜−60℃程度である。凍結乾燥の圧力も特に限定されず、当業者が適宜選択可能であるが、例えば、0.1〜35Pa、好ましくは1〜15Pa、さらに好ましくは、5〜10Pa程度で行なうのがよい。凍結乾燥時間は、例えば2〜48時間、好ましくは6〜36時間、より好ましくは16〜26時間程度である。もっとも、これらの条件は当業者に適宜選択可能である。凍結乾燥方法については、例えば、製剤機械技術ハンドブック:製剤機械技術研究会編、地人書館、p.120−129(2000年9月);真空ハンドブック:日本真空技術株式会社編、オーム社、p.328−331(1992年);凍結及び乾燥研究会会誌:伊藤孝治他、No.15、p.82(1965)などを参照することができる。
【0315】
減圧乾燥による有機ナノ粒子の濃縮に用いられる装置は有機ナノ粒子分散液(または有機ナノ粒子濃縮抽出液)の溶媒を蒸発させることができれば特に制限はない。例えば、汎用の真空乾燥器およびロータリーポンプや、液を撹拌しながら加熱減圧乾燥できる装置、液を加熱減圧した管中に通すことによって連続的に乾燥ができる装置等が挙げられる。
【0316】
加熱減圧乾燥温度は30〜230℃が好ましく、35〜200℃がより好ましく、40〜180℃が特に好ましい。減圧時の圧力は、100〜100000Paが好ましく、300〜90000Paがより好ましく、500〜80000Paが特に好ましい。
【0317】
[再分散]
本発明の製造方法によれば、必要に応じて、凝集状態にある有機ナノ顔料粒子を微細分散化することができる(本発明において、微細分散化とは、分散液中の粒子の凝集を解き分散度を高めることをいう)。
【0318】
上述した凝集化した有機ナノ顔料粒子を、速やかなフィルタろ過を可能とし、再度良好な分散状態を得るためには、再分散可能な程度に凝集させたフロックとして得ることが好ましい。
【0319】
そのため、通常の分散化方法を用いて分散化した程度では微粒子化に不十分であり、さらに微細化効率の高い方法が必要となる。
【0320】
このようなナノ粒子の凝集体を微細分散化する方法として、例えば超音波による分散方法や物理的なエネルギーを加える方法を用いることができる。
【0321】
用いられる超音波照射装置は10kHz以上の超音波を印加できる機能を有することが好ましく、例えば、超音波ホモジナイザー、超音波洗浄機などが挙げられる。超音波照射中に液温が上昇すると、ナノ粒子の熱凝集が起こるため(非特許文献1参照)、液温を1〜100℃とすることが好ましく、5〜60℃がより好ましい。温度の制御方法は、分散液温度の制御、分散液を温度制御する温度調整層の温度制御、などによって行うことができる。
【0322】
物理的なエネルギーを加えて濃縮した有機ナノ粒子を分散させる際に使用する分散機としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、ロールミル、アトライダー、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、サンドミル等の分散機が挙げられる。また、高圧分散法や、微小粒子ビーズの使用による分散方法も好適なものとして挙げられる。
【0323】
有機ナノ粒子分散物の好ましい製造方法としては、着色剤を樹脂成分で混練分散処理後の25℃における粘度が10,000mPa・s以上、望ましくは100,000mPa・s以上の比較的高粘度になるように混練分散処理し、次いで溶剤を添加して、微分散処理後の粘度が1,000mPa・s以下、望ましくは100mPa・s以下の比較的低粘度になるように微分散処理する方法が好ましい。
【0324】
再分散処理で使用する機械は二本ロール、三本ロール、ボールミル、トロンミル、ディスパー、ニーダー、コニーダー、ホモジナイザー、ブレンダー、単軸および2軸の押出機等であり、強い剪断力を与えながら分散する。次いで、溶剤を加えて、主として縦型若しくは横型のサンドグラインダー、ピンミル、スリットミル、超音波分散機、高圧分散機等を使用し、0.1〜1mmの粒径のガラス、ジルコニア等でできたビーズで微分散処理する。さらに0.1mm以下の微小粒子ビーズを用いて精密分散処理をすることもできる。
【0325】
また主顔料と補顔料を別々に分散処理した後、両者の分散液を混合して更に分散処理を加えたり、主顔料と補顔料をいっしょに分散処理することも可能である。
【0326】
尚、分散についての詳細はT.C. Patton著“Paint Flow and ピグメント Dispersion”(1964年 John Wiley and Sons社刊)等にも記載されており、この方法を用いてもよい。
【0327】
有機ナノ顔料粒子分散物には、有機ナノ顔料粒子の分散性を向上させる目的で通常の顔料分散剤や界面活性剤を添加することができる。これらの分散剤としては、多くの種類の化合物が用いられるが、例えば、フタロシアニン誘導体(市販品EFKA−6745(エフカ社製))、ソルスパース5000(ゼネカ(株)社製);オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)社製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社油脂化学工業(株)社製)、W001(裕商社製)等のカチオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤;W004、W005、W017(裕商社製)等のアニオン系界面活性剤;EFKA−46、EFKA−47、EFKA−47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450(以上森下産業(株)社製)、ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(サンノプコ社製)等の高分子分散剤;ソルスパース3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、24000、26000、28000などの各種ソルスパース分散剤(ゼネカ(株)社製);アデカプルロニックL31,F38,L42,L44,L61,L64,F68,L72,P95,F77,P84,F87、P94,L101,P103,F108、L121、P−123(旭電化(株)社製)およびイソネットS−20(三洋化成(株)社製)が挙げられる。また、2000−239554号公報に記載の顔料分散剤や、特公平5−72943号公報に記載の化合物(C)や、特開2001−31885号公報に記載の合成例1の化合物なども好適に用いることができる。
【0328】
有機ナノ粒子分散組成物においては、再分散後の有機ナノ粒子(一次粒子)を微細分散化した粒子とすることができ、粒径を好ましくは1〜200nmとすることができ、2〜100nmがより好ましく、5〜50nmが特に好ましい。また、再分散後の粒子のMv/Mnは、1.0〜2.0であることが好ましく、1.0〜1.8であることがより好ましく、1.0〜1.5であることが特に好ましい。
【0329】
本発明の製造方法によれば、例えば、有機ナノ顔料粒子分散組成物や後述する着色感光性樹脂組成物に含まれる顔料粒子を、ナノメートルサイズ(例えば、10〜100nm)という微小な粒径にもかかわらず、濃縮再分散化することができる。このため、カラーフィルタに用いたときには、光学濃度が高く、フィルタ表面の均一性に優れ、コントラストが高く、かつ画像のノイズを少なくすることができる。
【0330】
さらに、有機ナノ顔料粒子分散組成物、着色感光性組成物に含まれる有機ナノ顔料粒子を、高度に、また均一に、微細分散化することができるため、薄い膜厚さで、高い着色濃度を発揮し、例えばカラーフィルタ等の薄層化を可能とするものである。
【0331】
また有機ナノ顔料粒子分散組成物、着色感光性樹脂組成物において、鮮明な色調と高い着色力とを示す顔料を含有させることで、例えばカラープルーフやカラーフィルタ等を作製するための画像形成材料として優れている。
【0332】
さらに、着色画像形成時の露光・現像に用いられるアルカリ性の現像液に対して、有機ナノ粒子分散組成物、着色感光性樹脂組成物に、結合剤(バインダー)としてアルカリ性水溶液に可溶なものを用いることができ、環境上の要求にも応えることができる。
【0333】
また有機ナノ顔料粒子分散組成物、着色感光性樹脂組成物に用いられる溶媒(顔料の分散媒)として適度な乾燥性を有する有機溶媒を用いることができ、塗布後の乾燥の点でもその要求を満足することができる。
【0334】
[着色感光性樹脂組成物]
本発明の着色感光性樹脂組成物は、少なくとも、(a)有機ナノ顔料粒子、(b)バインダー、(c)モノマーもしくはオリゴマー、および(d)光重合開始剤もしくは光重合開始剤系を含む。以下、本発明の着色感光性樹脂組成物の各成分について説明する。
a)有機ナノ顔料粒子
有機ナノ顔料粒子を作製する方法については既に詳細に述べた。有機ナノ顔料粒子の含有量は、着色感光性樹脂組成物中の全固形分(本発明において、全固形分とは、有機溶媒を除く組成物合計をいう。)に対し、3〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましく、25〜60質量%がさらに好ましい。この量が多すぎると分散液の粘度が上昇し製造適性上問題になることがある。少なすぎると着色力が十分でない。着色剤として機能する有機ナノ顔料粒子としては、粒径0.1μm以下、特には粒径0.08μm以下であることが好ましい。また、調色のために通常の顔料と組み合わせて用いてもよい。顔料は上記で記述したものを用いることができる。本発明においては、有機ナノ粒子は、上記の有機ナノ顔料非水性分散物として用いられることが好ましい。
(b)バインダー
着色感光性樹脂組成物中のバインダーとしては、先に述べた重量平均分子量1000以上の高分子化合物を好ましく用いることができる。バインダーの含有量は、着色感光性樹脂組成物の全固形分に対して15〜50質量%が一般的であり、20〜45質量%が好ましい。この量が多すぎると組成物の粘度が高くなりすぎ製造適性上問題となる。少なすぎると塗布膜の形成上問題がある。
【0335】
(c)モノマー又はオリゴマー
本発明の着色感光性樹脂組成物に含有させるモノマー又はオリゴマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー又はオリゴマーであることが好ましい。そのようなモノマー及びオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。その例としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。また、特開平10−62986号公報に一般式(1)および(2)に記載のように、多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化した化合物も好適なものとして挙げられる。
【0336】
更に特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報及び特開昭51−37193号公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報及び特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレートを挙げることができる。
【0337】
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0338】
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。
【0339】
これらのモノマー又はオリゴマーは(モノマー又はオリゴマーとしては、分子量200〜1000のものが好ましい。)、単独でも、二種類以上を混合して用いてもよく、着色感光性樹脂組成物の全固形分に対する含有量は5〜50質量%が一般的であり、10〜40質量%が好ましい。この量が多すぎると現像性の制御が困難になり製造適性上問題となる。少なすぎると露光時の硬化力が不足する。
【0340】
(d)光重合開始剤又は光重合開始剤系
本発明の着色感光性樹脂組成物に含有させる光重合開始剤又は光重合開始剤系(本発明において、光重合開始剤系とは複数の化合物の組み合わせで光重合開始の機能を発現する混合物をいう。)としては、米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書及び同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール二量体とp−アミノケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。特に、トリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾール及びトリアリールイミダゾール二量体が好ましい。
【0341】
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」や、オキシム系として、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、O−ベンゾイル−4’−(ベンズメルカプト)ベンゾイル−ヘキシル−ケトキシム、2,4,6−トリメチルフェニルカルボニル−ジフェニルフォスフォニルオキサイド、ヘキサフルオロフォスフォロ−トリアルキルフェニルホスホニウム塩等も好適なものとしてあげることができる。
【0342】
これらの光重合開始剤又は光重合開始剤系は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよいが、特に2種類以上を用いることが好ましい。少なくとも2種の光重合開始剤を用いると、表示特性、特に表示のムラが少なくできる。
【0343】
着色感光性樹脂組成物の全固形分に対する光重合開始剤又は光重合開始剤系の含有量は、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。この量が多すぎると感度が高くなりすぎ制御が困難になる。少なすぎると露光感度が低くなりすぎる。露光に際して用いることができる放射線としては、特に、g線、i線等の紫外線が好ましく用いられる。照射量は5〜1500mJ/cmが好ましく10〜1000mJ/cmがより好ましく、10〜500mJ/cmが最も好ましい。
【0344】
(その他の添加剤)
〔溶媒〕
本発明の着色感光性樹脂組成物においては、上記成分の他に、更に有機溶媒を用いてもよい。有機溶媒の例としては、特に限定されないが、エステル類、例えば酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチルなどの3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等;エーテル類、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、等;ケトン類、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等;芳香族炭化水素類、例えばトルエン、キシレシ等が挙げられる。これら溶剤のうち、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が本発明における溶剤として好ましく用いられる。これらの溶剤は、単独で用いてもあるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0345】
また沸点が180℃〜250℃である溶剤を必要によって使用することができる。これらの高沸点溶剤としては、次のものが例示される。ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、ブチルラクテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−n−プロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、2−エチルヘキシルアセテート、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、γブチルラクトン、トリプロピレングリコールメチルエチルアセテート、ジプロピレングリコール−n−ブチルアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテルアセテート、1,3−ブタンジオールジアセテート。
【0346】
溶媒の含有量は、樹脂組成物全量に対して10〜95質量%が好ましい。
【0347】
〔界面活性剤〕
従来用いられてきたカラーフィルタにおいては、高い色純度を実現するために各画素の色が濃くなり、画素の膜厚のムラが、そのまま色ムラとして認識されるという問題があった。そのため、画素の膜厚に直接影響する、感光性樹脂層の形成(塗布)時の、膜厚変動の良化が求められていた。
【0348】
本発明のカラーフィルタ又は本発明の着色感光性樹脂組成物を用いた転写材料においては、均一な膜厚に制御でき、塗布ムラ(膜厚変動による色ムラ)を効果的に防止するという観点から、該着色感光性樹脂組成物中に適切な界面活性剤を含有させることが好ましい。
【0349】
上記界面活性剤としては、特開2003−337424号公報、特開平11−133600号公報に開示されている界面活性剤が、好適なものとして挙げられる。界面活性剤の含有量は、樹脂組成物全量に対して5質量%以下が好ましい。
【0350】
〔熱重合防止剤〕
本発明の着色感光性樹脂組成物は、熱重合防止剤を含むことが好ましい。該熱重合防止剤の例としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンズイミダゾール、フェノチアジン等が挙げられる。熱重合防止剤の含有量は、樹脂組成物全量に対して1質量%以下が好ましい。
【0351】
〔補助的に使用する染料、顔料〕
本発明の着色感光性樹脂組成物には、必要に応じ前記着色剤(顔料)に加えて、着色剤(染料、顔料)を添加することができる。着色剤のうち顔料を用いる場合には、着色感光性樹脂組成物中に均一に分散されていることが望ましく、そのため粒径が0.1μm以下、特には0.08μm以下であることが好ましい。
【0352】
染料ないし顔料としては、具体的には、前記顔料として、特開2005−17716号公報[0038]〜[0040]に記載の色材や、特開2005−361447号公報[0068]〜[0072]に記載の顔料や、特開2005−17521号公報[0080]〜[0088]に記載の着色剤を好適に用いることができる。補助的に使用する染料もしくは顔料の含有量は、樹脂組成物全量に対して5質量%以下が好ましい。
【0353】
〔紫外線吸収剤〕
本発明の着色感光性樹脂組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、特開平5−72724号公報記載の化合物のほか、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、ニッケルキレート系、ヒンダードアミン系などが挙げられる。
【0354】
具体的には、フェニルサリシレート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−4’−ヒドロキシベンゾエート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2,2’−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ニッケルジブチルジチオカーバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピリジン)−セバケート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、サルチル酸フェニル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン縮合物、コハク酸−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリデニル)−エステル、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、7−{[4−クロロ−6−(ジエチルアミノ)−5−トリアジン−2−イル]アミノ}−3−フェニルクマリン等が挙げられる。紫外線吸収剤の含有量は、樹脂組成物全量に対して5質量%以下が好ましい。
【0355】
また、本発明の着色感光性樹脂組成物においては、上記添加剤の他に、特開平11−133600号公報に記載の「接着助剤」や、その他の添加剤等を含有させることができる。
【0356】
[着色感光性樹脂組成物の塗布膜]
本発明の着色感光性樹脂組成物を用いた塗布膜における含有成分については、既に[着色感光性樹脂組成物]の項において記載したものと同様である。また、本発明の着色感光性樹脂組成物を用いた塗布膜の厚さは、その用途により適宜定めることができるが、0.5〜5.0μmであることが好ましく、1.0〜3.0μmであることがより好ましい。この本発明の着色感光性樹脂組成物を用いた塗布膜においては、そこに含まれる(c)モノマー又はオリゴマーを重合させて着色感光性樹脂組成物の重合膜とし、それを有するカラーフィルタを作製することができる(カラーフィルタの作製については後述する。)。重合性モノマー又は重合性オリゴマーの重合は、光照射により(d)光重合開始剤又は光重合開始剤系を作用させて行うことができる。
【0357】
<カラーフィルタおよびその製造方法>
次に、本発明のカラーフィルタおよびその製造方法について説明する。
【0358】
本発明のカラーフィルタは、支持体上に、本発明の光硬化性組成物(着色感光性樹脂組成物)を用いてなる着色パターンを有することを特徴とする。
【0359】
以下、本発明のカラーフィルタについて、その製造方法(本発明のカラーフィルタの製造方法)を通じて詳述する。
【0360】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、本発明の光硬化性組成物を、直接もしくは他の層を介して基板上に付与して感光性膜を形成する工程(以下、適宜「感光性膜形成工程」と略称する。)と、形成された感光性膜を、パターン露光する(マスクを介して露光する)工程(以下、適宜「露光工程」と略称する。)と、露光後の感光性膜を現像して着色パターンを形成する工程(以下、適宜「現像工程」と略称する。)と、を含むことを特徴とする。
【0361】
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法における各工程について説明する。
(感光性膜形成工程)
感光性膜形成工程では、直接もしくは他の層を有する基板上に、本発明の光硬化性組成物を塗布して(付与して)感光性膜を形成する。
【0362】
本工程に用いうる基板としては、例えば、液晶表示素子等に用いられるソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラスおよびこれらに透明導電膜を付着させたものや、撮像素子等に用いられる光電変換素子基板、例えばシリコン基板等や、相補性金属酸化膜半導体(CMOS)等が挙げられる。これらの基板は、各画素を隔離するブラックストライプが形成されている場合もある。
【0363】
また、これらの基板上には、必要により、上部の層との密着改良、物質の拡散防止或いは、基板表面の平坦化のために下塗り層(他の層)を設けてもよい。
【0364】
基板上への本発明の光硬化性組成物の塗布方法としては、スリット塗布、インクジェット法、回転塗布、流延塗布、ロール塗布、スクリーン印刷法等の各種の塗布方法を適用することができる。
【0365】
光硬化性組成物の塗布膜厚としては、0.1〜10μmが好ましく、0.2〜5μmがより好ましく、0.2〜3μmがさらに好ましい。
【0366】
基板上に塗布された感光性膜の乾燥(プリベーク)は、ホットプレート、オーブン等で50℃〜140℃の温度で10〜300秒で行うことができる。
(露光工程)
露光工程では、前記感光性膜形成工程において形成された感光性膜を、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光する、即ち、パターン露光を行う。
【0367】
本工程では、塗布膜である感光性膜に対し、所定のマスクパターンを介して露光を行うことで、光照射された塗布膜部分だけを硬化させることができる。
【0368】
露光に際して用いることができる放射線としては、特に、g線、i線等の紫外線が好ましく用いられる。照射量は5〜1500mJ/cm2が好ましく10〜1000mJ/cm2がより好ましく、10〜500mJ/cm2が最も好ましい。
【0369】
本発明のカラーフィルタが液晶表示素子用である場合は、上記範囲の中で5〜200mJ/cm2が好ましく10〜150mJ/cm2がより好ましく、10〜100mJ/cm2が最も好ましい。また、本発明のカラーフィルタが固体撮像素子用である場合は、上記範囲の中で30〜1500mJ/cm2が好ましく50〜1000mJ/cm2がより好ましく、80〜500mJ/cm2が最も好ましい。
【0370】
(現像工程)
次いで、現像処理を行うことにより、露光工程における未露光部分が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが残る。現像液としては、未硬化部における光硬化性組成物の膜を溶解する一方、硬化部を溶解しないものであれば、いずれのものも用いることができる。具体的には、種々の有機溶剤の組合せやアルカリ性の水溶液を用いることができる。
【0371】
現像温度としては、通常20℃〜30℃であり、現像時間は20〜90秒である。
【0372】
前記有機溶剤としては、本発明の顔料分散組成物または光硬化性組成物を調製する際に使用できる既述の溶剤が挙げられる。
【0373】
前記アルカリ性の水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン等のアルカリ性化合物を、濃度が0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜1質量%となるように純水で希釈したアルカリ性水溶液が現像液として好ましく使用される。
【0374】
なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、一般に現像後純水で洗浄(リンス)する。
【0375】
現像工程後、余剰の現像液を洗浄除去し、乾燥を施した後に加熱処理(ポストベーク)を行う。
【0376】
ポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の加熱処理であり、通常100℃〜240℃の熱硬化処理を行う。基板がガラス基板またはシリコン基板の場合は上記温度範囲の中でも200℃〜240℃が好ましい。
【0377】
このポストベーク処理は、現像後の塗布膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。
【0378】
以上説明した、感光性膜形成工程、露光工程、および現像工程(更に、必要により加熱処理)を所望の色相数だけ繰り返すことにより、所望の色相よりなるカラーフィルタが作製される。
【0379】
本発明の光硬化性組成物を基板上に付与して膜形成する場合、膜の乾燥厚みとしては、一般に0.3〜5.0μmであり、好ましくは0.5〜3.5μmであり、最も望ましくは1.0〜2.5μmである。
【0380】
基板としては、例えば、液晶表示素子等に用いられる無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス、及びこれらに透明導電膜を付着させたものや、固体撮像素子等に用いられる光電変換素子基板、例えばシリコン基板等、並びにプラスチック基板が挙げられる。これらの基板上には、通常、各画素を隔離するブラックストライプが形成されている。
【0381】
プラスチック基板には、その表面にガスバリヤー層及び/又は耐溶剤性層を有していることが好ましい。
【0382】
本発明の光硬化性組成物の用途として、主にカラーフィルタの画素への用途を主体に述べてきたが、カラーフィルタの画素間に設けられるブラックマトリックスにも適用できることは言うまでもない。ブラックマトリックスは、本発明の光硬化性組成物に着色剤として、カーボンブラック、チタンブラックなどの黒色の着色剤を添加したものを用いる他は、上記画素の作製方法と同様に、パターン露光、アルカリ現像し、更にその後、ポストベークして膜の硬化を促進させて形成させることができる。
【実施例】
【0383】
<実施例1>
[有機ナノ顔料粒子水性分散液の調製]
C.I.ピグメントレッド254(45質量部)とポリビニルピロリドン(K−25、和光純薬工業社製、90質量部)をジメチルスルホキシド(DMSO)(953質量部)に添加し攪拌した。この溶液に28質量%ナトリウムメトキシドメタノール溶液(30体積部)を添加し、顔料溶液Aを調製した。一方、水(4000質量部)を顔料不溶性溶媒Bとして調製した。
【0384】
前記顔料不溶性溶媒Bを30℃で藤沢製薬工業社製GK−0222−10型ラモンドスターラー(商品名)により500rpmで攪拌しながら、該顔料不溶性溶媒Bに前記顔料溶液Aを日本精密科学社製NP−KX−500型大容量無脈流ポンプ(商品名)で流速100mL/minで、4分4秒間注入して有機顔料ナノ粒子を晶析させ、水性有機ナノ水性分散液を得た。
【0385】
堀場製作所社製LB−400(商品名)を用いて動的光散乱法により評価を行い、そのメジアン径を平均粒径とし、分散性の指標とした。また動的光散乱法では二次凝集している粒子も観測されてしまうので、一次粒子としての評価も透過型電子顕微鏡にて行った。
【0386】
[凝集]
ノニオン性低分子化合物として酢酸(45質量部)、ノニオン性高分子化合物としてC−1(3質量部)をアセトン(200質量部)に溶解させ、上述の有機ナノ粒子水性分散液(300質量部)に添加し、0.5時間撹拌した。0.5時間静置し、生じた凝集体を光学顕微鏡で観察した後、凝集体を沈降させ、上澄み液をデカントにより除去した。
【0387】
[単離・洗浄・乾燥]
ろ紙(ADVANTEC社製、No.2)により上述の凝集体をろ取し、この時のろ過に要する時間を測定した。ろ取した固体については、水(300質量部)、メタノール(200体積部)で洗浄した。得られた固体をアセトニトリル(100体積部)中で、0.5時間リスラリーさせ、0.5時間静置させ、上澄みをデカントにより除去した。得られた固体を室温下、一晩真空乾燥させた。
【0388】
[再分散]
この有機顔料固体(1質量部)に下記非水性溶媒1−メトキシ−2−プロピルアセテート(4質量部)を添加し、日本精密製作所社製超音波ホモジナイザーUSシリーズ(商品名)を用いて超音波照射を3時間行うことにより、下記非水性溶媒を分散剤とする有機ナノ粒子非水性分散液(以下、顔料分散組成物Aとも言う。)を得た。
【0389】
【化51】

【0390】
(評価試験)
得られた分散組成物について下記の評価を行なった。結果を表1に示す。
(1)有機ナノ粒子水性分散液の平均粒径
堀場製作所社製LB−500(商品名)を用いて動的光散乱法により評価を行い、そのメヂアン径を平均粒径とすることにより有機ナノ粒子水性分散液の平均粒径を測定した。
(2)凝集体の直径
凝集体を光学顕微鏡で観察し、別途観察したモノサシを参考に凝集体の直径を測定した。ここでいう凝集体の直径については、凝集体の端から端の長さを測定し、その長さが最も長いところを直径と定義した。ここでいう凝集体とは、本来肉眼では見ることができない一次粒子であるナノ粒子が、より集まって大きく成長して二次粒子になったものである。
(3)ろ過時間
直径9cmのヌッチェとろ紙(アドバンテック社製フィルターペーパーNo.2(商品名))を用いて、アスピレーターで減圧ろ過することにより顔料1g当たりのろ過時間を測定した。
(4)粘度の測定
得られた分散組成物について、E型粘度計を用いて、分散直後の顔料分散組成物の粘度η1および分散後(室温にて)1週間経過した後の顔料分散組成物の粘度η2を測定し、増粘の程度を評価した。ここで、粘度が低いことは、分散性、分散安定性が良好であることを示す。
(5)コントラスト評価
得られた顔料分散組成物Aを、それぞれガラス基板上に厚みが2μmになるように塗布し、サンプルを作製した。バックライトユニットとして3波長冷陰極管光源(東芝ライテック(株)社製FWL18EX−N)に拡散板を設置したものを用い、2枚の偏光板((株)サンリツ社製の偏光板HLC2−2518)の間にこのサンプルを置き、偏光軸が平行のときと、垂直のときとの透過光量を測定し、その比をコントラストとした(「1990年第7回色彩光学コンファレンス、512色表示10.4”サイズTFT−LCD用カラーフィルタ、植木、小関、福永、山中」等参照。)。色度の測定には色彩輝度計((株)トプコン社製BM−5)を用いた。2枚の偏光板、サンプル、色彩輝度計の設置位置は、バックライトから13mmの位置に偏光板を、40mm〜60mmの位置に直径11mm長さ20mmの円筒を設置し、この中を透過した光を、65mmの位置に設置した測定サンプルに照射し、透過した光を、100mmの位置に設置した偏光板を通して、400mmの位置に設置した色彩輝度計で測定した。色彩輝度計の測定角は2°に設定した。バックライトの光量は、サンプルを設置しない状態で、2枚の偏光板をパラレルニコルに設置したときの輝度が1280cd/m2になるように設定した。
【0391】
<実施例2>
実施例1のノニオン性低分子化合物をノニオン性の2−プロピルペンタノイック酸に変更し、実施例1と同様の操作を行った。得られた有機ナノ粒子非水性分散液を顔料分散組成物Bとも言う。顔料分散組成物Bについて実施例1と同様の評価試験を行った結果を表1に示す。
【0392】
<実施例3>
実施例1のノニオン性高分子化合物をノニオン性C−10に変更し、実施例1と同様の操作を行った。得られた有機ナノ粒子非水性分散液を顔料分散組成物Cとも言う。顔料分散組成物Cについて実施例1と同様の評価試験を行った結果を表1に示す。
【0393】
<実施例4>
実施例1のポリビニルピロリドンをカチオン性高分子分散剤C−5に、ノニオン性低分子化合物をアニオン性低分子化合物E−3に、アニオン性高分子化合物をアニオン性高分子化合物F−2に変更し、実施例1と同様の操作を行った。得られた有機ナノ粒子非水性分散液を顔料分散組成物Dとも言う。顔料分散組成物Dについて実施例1と同様の評価試験を行った結果を表1に示す。
【0394】
<実施例5>
実施例1において、有機ナノ粒子水性分散液に対して、ノニオン性高分子化合物をノニオン性のメタクリル酸/メタクリル酸ベンジル共重合体に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた有機ナノ粒子非水性分散液を顔料分散組成物Eとも言う。顔料分散組成物Eについて実施例1と同様の評価試験を行った結果を表1に示す。
【0395】
<実施例6>
実施例1において、有機ナノ粒子水性分散液に対して、ノニオン性低分子化合物として酢酸を添加した後に、ノニオン性高分子化合物としてC−1をアセトンに溶解させ、有機ナノ粒子水性分散液に添加したこと以外は、実施例1と同様な操作を行った。得られた有機ナノ粒子非水性分散液を顔料分散組成物Fとも言う。顔料分散組成物Fについて実施例1と同様の評価試験を行った結果を表1に示す。
【0396】
<実施例7>
実施例1において、有機ナノ粒子水性分散液に対して、ノニオン性高分子化合物としてC−1をアセトンに溶解させ、有機ナノ粒子水性分散液に添加した後に、ノニオン性低分子化合物として酢酸を添加したこと以外は、実施例1と同様な操作を行った。得られた有機ナノ粒子非水性分散液を顔料分散組成物Gとも言う。顔料分散組成物Gについて実施例1と同様の評価試験を行った結果を表1に示す。
<実施例8>
実施例1において得られた凝集体を沈降させ、上澄み液をデカントにより除去した後、水(200質量部)を添加し、0.5時間リスラリーした。0.5時間静置し、分散物を沈降させ、上澄み液をデカントにより除去した。また、これにメタノール(100質量部)を添加し、0.5時間リスラリーした。0.5時間静置し、分散物を沈降させ、上澄み液をデカントにより除去した。さらにアセトニトリル100質量部)を添加し、0.5時間リスラリーした。0.5時間静置し、分散物を沈降させ、上澄み液をデカントにより除去した。その後は、実施例1と同様な操作を行った。得られた有機ナノ顔料粒子非水性分散液を顔料分散組成物Hとも言う。顔料分散組成物Hについて実施例1と同様の評価試験を行った結果を表1に示す。
【0397】
<比較例1>
実施例1と同様な操作で調製した有機ナノ粒子水性分散液に塩酸(64質量部)添加し、ナノ粒子を凝集させ、フィルタ(アドバンテック社製H010A047A、商品名)を用いてフィルタろ過し、要する時間を測定した。ろ取した固体を、に対して実施例1と同様な洗浄、乾燥した固体(1質量部)に対して、メタクリル酸/メタクリル酸ベンジル共重合体(1質量部)、1−メトキシ−2−プロピルアセテート(8質量部)添加し、日本精密製作所社製超音波ホモジナイザーUSシリーズ(商品名)を用いて超音波照射を3時間行うことにより、下記非水性溶媒を分散剤とする有機ナノ粒子非水性分散液を得た。得られた有機ナノ粒子非水性分散液を顔料分散組成物Iとも言う。評価は実施例1と同様な評価を行った。顔料分散組成物Iについて実施例1と同様の評価試験を行った結果を表1に示す。
【0398】
<試験例1>
実施例1〜8、比較例1と同様な操作で調製した有機ナノ粒子水性分散液(300質量部)に、酢酸(45質量部)を溶解させたアセトン(200質量部)を添加し、その凝集体を光学顕微鏡で観察した後、フィルタ(アドバンテック社製H010A047A、商品名)を用いてフィルタろ過し、要する時間を測定した。
評価結果を以下に示す。
【0399】
<参考例1>
実施例1と同様な操作で調製した有機ナノ粒子水性分散液(300質量部)に、酢酸(45質量部)を溶解させたアセトン(200質量部)を添加し、その凝集体を光学顕微鏡で観察した後、フィルタ(アドバンテック社製H010A047A、商品名)を用いてフィルタろ過し、要する時間を測定した。
評価結果を以下に示す。
【0400】
【表1】

【0401】
以上、本発明により、有機ナノ粒子水性分散物を有機ナノ粒子非水性分散物に相転換させる際の、フラッシングに代表されるような一旦水性ペーストを作成する工程、すなわちフィルタろ過などのような莫大な時間を要する煩雑な工程に対して、有機ナノ粒子水性分散物中のナノ粒子を、容易にろ過可能な凝集体とし、これを単離し、非水性溶媒中で再分散させて、効率良く得られる有機ナノ粒子非水性分散物、およびその製造方法を提供することができる。さらに分散性に優れ、高いコントラストを有する有機ナノ粒子非水性分散物、およびその製造方法を提供することができる。
【0402】
[着色観光性樹脂組成物の調製]
実施例1〜8、比較例1で得られた顔料分散組成物A〜Iにさらに下記組成の成分を添加し、撹拌混合して、本発明の着色感光性樹脂組成物(カラーレジスト液)を調製した。
【0403】
〔組成〕
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート ・・・80質量部
・4−[o−ブロモ−p−N,N−ジ(エトキシカルボニル)アミノフェニル]−2,6−ジ(トリクロロメチル)−S−トリアジン (光重合開始剤) ・・・30質量部
・メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸(=70/30[モル比])共重合体(重量平均分子量:10,000)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(固形分40%) ・・・200質量部
・1−メトキシ−2−プロピルアセテート ・・・490質量部
【0404】
得られた光硬化性組成物(カラーレジスト液)を、100mm×100mmのガラス基板(1737、コーニング社製)上に、色濃度の指標となるx値が0.650となるように塗布し、90℃のオーブンで60秒間乾燥させた(プリベーク)。その後、塗膜の全面に200mJ/cm2にて(照度20mW/cm2)露光し、露光後の塗膜をアルカリ現像液CDK−1(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)の1%水溶液にて覆い、60秒間静止した。静止後、純水をシャワー状に散布して現像液を洗い流した。そして、上記のように露光および現像が施された塗膜を220℃のオーブンで1時間加熱処理し(ポストベーク)、ガラス基板上にカラーフィルタ用の着色樹脂被膜を形成し、着色フィルタ基板(カラーフィルタ)を作製した。
得られた各膜のR成分のコントラストを実施例1と同様に測定した結果を、下記表に示した。
【0405】
【表2】

【0406】
以上、本発明により得られた有機ナノ粒子非水性分散液有機粒子を用いた着色感光性樹脂組成物から作成したカラーフィルタは、比較例のものに比べ、極めて優れたコントラストを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中に分散された有機ナノ顔料粒子に対して、少なくとも1種の分子量1000未満の有機低分子化合物と、少なくとも1種の重量平均分子量1000以上の有機高分子化合物とを作用させることにより凝集させた後、単離することを特徴とする有機ナノ顔料粒子凝集体の製造方法。
【請求項2】
前記有機低分子化合物と有機高分子化合物とを、前記水性媒体中と混和する溶媒で溶解させ、該水性媒体中に添加することにより、水性媒体中に分散された有機ナノ顔料粒子を凝集させることを特徴とする請求項1記載の有機ナノ顔料粒子凝集体の製造方法。
【請求項3】
前記単離が、ろ過により行われることを特徴とする請求項1または2に記載の有機ナノ顔料粒子凝集体の製造方法。
【請求項4】
少なくとも余分な前記有機低分子化合物を除く工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機ナノ顔料粒子凝集体の製造方法。
【請求項5】
前記水性媒体中に分散された有機ナノ顔料粒子が、良溶媒に溶解した有機顔料の溶液と、前記良溶媒と相溶性でありかつ前記有機顔料に対しては貧溶媒となる媒体とを混合して、ナノサイズの微粒子として生成させて得られることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機ナノ顔料粒子凝集体の製造方法。
【請求項6】
前記有機ナノ顔料粒子の平均一次粒径が、100nm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機ナノ顔料粒子凝集体の製造方法。
【請求項7】
前記凝集体の平均粒径が、10000nm以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機ナノ顔料粒子凝集体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の単離された有機ナノ顔料粒子凝集体を、非水性媒体中で再分散させて得ることを特徴とする有機ナノ顔料粒子非水性分散物の製造方法。
【請求項9】
有機高分子化合物が下記一般式(11)、あるいは一般式(14)で表されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機ナノ顔料粒子非水性分散物の製造方法。
【化1】

(前記一般式(11)中、A1は、酸性基、塩基性窒素原子を有する基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、および水酸基から選択される基を有する1価の有機基、または置換基を有してもよい有機色素構造もしくは複素環を含有する1価の有機基を表す。n個のA1は同一であっても、異なっていてもよい。R1は、(m+n)価の連結基を表す。m+nは3〜10を表し、mは1〜8の整数を表し、nは2〜9の整数を表す。R2は、単結合あるいは2価の連結基を表す。P1は高分子残基を表す。)
【化2】

(前記一般式(14)中、Gは−COO、−SO3、−OSO3、−P(O)(OH)O、又は−OP(O)(OH)Oを表す。Jは2価の連結基または単結合を表す。Qは(m+l)価の連結基を表す。Rは高分子化合物残基を表す。Zは有機または無機カチオンを表す。m+lは3〜6を表す。)
【請求項10】
前記有機高分子化合物を、そのまま非水性媒体中での分散剤として使用することを特徴とする請求項9記載の有機ナノ顔料粒子非水性分散物の製造方法。
【請求項11】
請求項9または10記載の有機ナノ顔料粒子非水性分散物と、バインダーと、モノマーもしくはオリゴマーと、光重合開始剤もしくは光重合開始剤系とを少なくとも含む着色感光性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項11記載の着色感光性樹脂組成物を用いてなることを特徴とするカラーフィルタ。

【公開番号】特開2008−280391(P2008−280391A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123981(P2007−123981)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 ナノテクノロジープログラム「ナノテク・先端部材実用化研究開発」/「有機顔料ナノ結晶の新規製造プロセスの研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】