説明

有機ハロゲン化合物の分解材及びその製造方法

【課題】有機ハロゲン化合物に汚染された土壌及び/又は地下水等に対する分解速度に優れ、長期使用してもその効果が持続する分解材及びその製造方法を提供する。また、上記の分解性能に加えて、コストが低減され、また製造が容易な分解材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る有機ハロゲン化合物の分解材は、鉄粉の表面を鉄より貴な金属で被覆してなることを特徴とするものである。また、鉄よりも貴な金属の鉄粉表面に対する被覆率が30%〜95%であることを特徴とするものである。さらに、鉄100重量部、鉄よりも貴な金属0.1〜10重量部であることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機ハロゲン化合物に汚染された土壌及び/又は地下水等を迅速に分解できる有機ハロゲン化合物の分解材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ハロゲン化合物は優れた溶解力を持つ脱脂溶剤として、半導体製造業、金属加工業、クリーニング業などで広く使用されてきたが、使用後の有機ハロゲン化合物による土壌及び地下水の汚染が深刻となっている。
有機ハロゲン化合物を無害化する方法として、原位置から汚染土壌そのものを除去する方法、原位置で土壌、または有機塩素系化合物が溶けこんだ地下水を処理して有機ハロゲン化合物を分解する方法、汚染土壌の周辺において汚染土壌から流出する地下水を浄化する方法等が提案されている。
【0003】
これらのうち、原位置で汚染土壌を浄化する方法には、嫌気性微生物により生物分解する方法と鉄粉と水分を接触させ、鉄粉が酸化される際に発生する水素によって有機ハロゲン化合物を還元し、分解する方法(以下、鉄粉法)がある。これらの方法の中で、現在、鉄粉法が効果の確実性に優れ、且つ、工場跡地など広大な汚染土壌を処理するのに適していることから主流となりつつある。
【0004】
このような鉄粉法に関する技術として、特許文献1に記載された有機ハロゲン化合物分解用金属粉に関する発明がある。この特許文献1に記載された有機ハロゲン化合物分解用金属粉は、「少なくとも、鉄(以下、Feと記載する場合あり。)−ニッケル(以下、Niと記載する場合あり。)の2種の金属元素を主成分とする相を有し、Feを主成分とする相を母材金属相とし、Niを主成分とする相を付着金属相とし、付着金属相は母材金属相に付着してNi付着Fe粒子の形態となり、この粒子が集合したものである」(特許文献1[0016]参照)。
【0005】
また、鉄粉法に関する他の技術として、特許文献2に開示された被処理物用無害化処理剤の発明がある。この特許文献2に開示された発明は、「Fe粉末100重量部とNi粉末0.01〜2重量部からなる混合物をメカニカルアロイング法により合金化したFe−Ni合金からなる有機ハロゲン化合物で汚染された被処理物用無害化処理剤」である(特許文献2、請求項1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-136051
【特許文献2】特開2004-57881
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に開示された発明は、共に鉄粉とニッケル粉を用いるという点で共通している。
鉄粉とニッケル粉を用いることにより、有機ハロゲン化合物に汚染された土壌等の浄化に効果があることが知られている。
鉄粉のみの場合よりもニッケルが存在することにより有機ハロゲン化合物の分解能が高くなるのは、標準電極電位において鉄が卑、ニッケルが貴になる関係にあることが要因の一つであると考えられている。
すなわち、分解材が水と接触したときに、これらの粒子表面は局部的にカルバニ電池反応による電位差が生じ、鉄が電子を失うことにより他へ自由電子を供給するアノード反応(Fe→Fe2++2e)が、鉄粉のみの場合に比べて加速し、有機ハロゲン化合物の分解反応に供される自由電子の供給量が増大するためであると考えられている。
【0008】
しかしながら、鉄粉とニッケル粉の用い方によって分解材としての分解作用には大きな違いがあり、どのような用い方をするかについて種々の研究がなされている。
【0009】
この点、特許文献1においては、鉄粉の表面にニッケル粒子を点在するように付着させるというものである。
しかしながら、上記のような態様では、実際に分解材として使用する際、土壌と混合するときに鉄粉からニッケルが剥離し、局部電池反応の効果が低下することが考えられる。また、分解材として使用している期間が長くなると、鉄粉が溶解して鉄粉表面に付着していたニッケル粉が鉄粉から分離してしまう。ニッケル粉が鉄粉から分離すると、上述したアノード反応促進効果が少なくなり、有機ハロゲン化合物の分解効果も少なくなる。
【0010】
他方、特許文献2のものでは、鉄粉と少量のニッケル粉をメカニカルアロイング法により合金化して鉄―ニッケル合金とするものであり、特許文献1のように分解材の使用中にニッケルが鉄から分離するということはない。
しかしながら、特許文献2のものでは、合金化により鉄とニッケルの場合よりも標準電位差が小さくなり、分解速度が低下するという問題がある。
また、特許文献2のものでは、鉄粉とニッケル粉の混合粉を最低でも30分程度アトライターミルなどで混合しなければならず、製造時間とコストを要するという問題もある。
【0011】
以上のように、上記特許文献1のものでは、分解材として長期使用の点で問題があり、他方特許文献2のものでは反応速度の点で満足できるものではなかった。
【0012】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、有機ハロゲン化合物に汚染された土壌及び/又は地下水等に対する分解速度に優れ、長期使用してもその効果が持続する分解材及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、上記の分解性能に加えて、コストが低減され、また製造が容易な分解材及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、発明者は、鉄の溶出があってもニッケルが鉄粉から分離せず、かつ合金化した場合のように標準電位差が小さくなることがないようにするにはいかにすべきかを鋭意検討し、鉄粉の表面をニッケルで覆うことにより、鉄の腐食があっても両者が分離しないようにできるとの知見を得て本発明を完成したものであり、具体的には以下の構成からなるものである。
なお、上記の説明では、鉄とニッケルを例に挙げて説明したが、ニッケルに代えて鉄よりも貴な金属であれば同様な効果があることを確認しており、ニッケル以外の鉄より貴な金属の例としては、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、銅(Cu)、コバルト(Co)が挙げられる。
【0014】
(1)本発明に係る有機ハロゲン化合物の分解材は、鉄粉の表面を鉄より貴な金属で被覆してなることを特徴とするものである。
【0015】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記鉄よりも貴な金属の鉄粉表面に対する表面被覆面積比率が30%〜95%であることを特徴とするものである。
【0016】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、鉄100重量部、鉄よりも貴な金属0.1〜10重量部であることを特徴とするものである。
【0017】
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記鉄より貴な金属がニッケルであることを特徴とするものである。
【0018】
(5)本発明に係る有機ハロゲン化合物の分解材の製造方法は、鉄より貴な金属粉と鉄粉を機械的に接触させて前記鉄粉の表面を前記鉄より貴な金属で被覆することを特徴とするものである。
【0019】
(6)また、上記(5)に記載のものにおいて、前記機械的な接触は、前記鉄粉と前記鉄よりも貴な金属粉をミキサーで混合することによって行うことを特徴とするものである。
【0020】
(7)また、上記(5)又は(6)に記載のものにおいて、鉄より貴な金属粉の粒径が0.1〜1μmを90%以上含むことを特徴とするものである。
【0021】
(8)また、上記(5)乃至(7)に記載のものにおいて、前記鉄粉の粒径が500μm未満であることを特徴とするものである。
【0022】
(9)また、上記(5)乃至(8)のいずれかに記載のものにおいて、前記鉄粉表面に対するニッケルの表面被覆面積比率が30%〜95%であることを特徴とするものである。
【0023】
(10)また、上記(5)乃至(9)のいずれかに記載のものにおいて、前記鉄より貴な金属がニッケルであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の有機ハロゲン化合物の分解材よれば、有機ハロゲン化合物に汚染された土壌及び/又は地下水から、有機ハロゲン化合物を確実、且つ、迅速に長期間に亘って分解除去でき、さらに、安価に製造できるため、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態に係る分解材を構成する粒子の断面を模式的に示す図である。
【図2】実施例1の試験結果を示すグラフである。
【図3】実施例2の試験結果を示すグラフである。
【図4】実施例2の試験結果のEPMAによる分布図(a)及びSEM像(b)である。
【図5】実施例2の試験結果のEPMAによる分布図(a)及びSEM像(b)である。
【図6】実施例3の試験結果を示すグラフである。
【図7】実施例4の試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[実施の形態1]
本実施の形態に係る有機ハロゲン化合物の分解材1は、図1に示すように、鉄粉3の表面をニッケル5で被覆してなることを特徴とするものである。図1においては、後述する表面被覆面積比率の説明のため、鉄粉断面の輪郭線を実線Aで示し、鉄粉を被覆しているニッケルの輪郭線を破線Bで示している。
上記のように構成される本実施の形態の分解材1は、有機ハロゲン化合物のハロゲン原子を水素原子に置換、水素化することによって浄化作用を発揮するものである。
【0027】
<鉄粉>
この浄化剤に使用される鉄粉としては、アトマイズ鉄粉、海綿鉄粉、還元鉄粉、電解鉄粉を使用することができるが、鉄粉表面が酸化膜で覆われていない鉄粉が好ましい。もっとも、鉄粉表面が酸化膜で覆われている場合や酸化膜が厚い場合には、例えば仕上げ還元処理によって鉄粉表面の酸化膜厚を30nm以下にするのが好ましく、酸化膜の厚みは薄いほど好ましい。
酸化膜厚が30nm以下であるためには、酸化膜は鉄粉の表面にほぼ均一に形成されると想定できることから鉄粉の酸素濃度で規定することができ、鉄粉の酸素濃度が1質量%以下であればよい。なお、酸化膜の除去に関しては、仕上げ還元処理の他、酸性溶液で表面の酸化膜を除去するようにしてもよい。
【0028】
また、鉄粉粒径としては、500μm未満が望ましい。500μm未満としたのは、500μm以上の粒径の場合、鉄粉の比表面積が小さくなるため反応性が著しく劣化し、さらに、スラリー状態として土壌と混合する場合には、そのスラリーを圧送する配管、ポンプにおいて詰りや摩耗が発生するためである。また、鉄粉の粒径の下限値としては、45μm以下が45%以下にすることが施行性の観点から望ましい。
【0029】
<ニッケル>
ニッケルは鉄粉の表面を被覆している。被覆とは、鉄粉の表面に薄膜化したニッケルが貼り付いている状態をいう。
ニッケルの表面被覆面積比率としては30%〜95%であることが好ましい。表面被覆面積比率が30%未満になると、鉄粉の腐食によりニッケルが鉄粉から分離し易くなることと、上記触媒反応活性点が減少し、有機ハロゲン化合物の分解能が低下するからである。他方、表面被覆面積比率が95%を超えると鉄の露出が少なくなり、粒子表面での局部的なカルバニ電池反応が生じ難くなり、分解材として使用する際の初期段階において鉄露出度が小さく分解速度が遅くなるからである。
【0030】
鉄粉の表面を覆うニッケルの厚みは特に限定するものではないが、ニッケルの被覆厚が厚くなっても有機ハロゲン化合物の分解速度には影響は与えない。また、ニッケルの膜厚が厚くなることにより物理的に剥離しやすくなるため、例えば分解材を使用する際に鉄粉同士が擦れ合う、または土壌粒子と擦れ合うときに剥がれ易くなる。さらに、高価なニッケルの使用量も増える。また、さらにニッケルの膜厚が厚くなると、ニッケルの量が増え、ニッケルの量が増えるとニッケルの溶出量が増え、環境上好ましくない。以上の観点から厚みは、薄くするのが好ましく、例えば100nm以下にするのが好ましい。
【0031】
ニッケルの膜厚は実際に測定することもできるが、鉄粉粒径、Ni添加量、表面被覆面積比率から推測できる。表1に鉄粉表面を100%被覆した場合の、鉄粉粒径とニッケル添加量〔重量部〕によるニッケル膜厚〔nm〕を示す。
【0032】
【表1】

【0033】
表1は、鉄粉表面をニッケルで100%被覆した場合の膜厚を示しているが、ニッケルの鉄粉に対する表面被覆面積比率は実際には30〜95%であるので、表1に示した膜厚よりも実際には少し厚くなる。
【0034】
後述の実施例3に示すように、ニッケルの添加量が1重量部を超えるとニッケル溶出量が指数関数的に増大する。一方、ニッケル膜厚が薄くても有機ハロゲン化合物の分解性能に影響を与えない。したがって、ニッケル溶出量を出来るだけ少なくする観点からニッケルの添加量は1重量部以下にするのが好ましい。ニッケルの添加量を1重量部にした場合、ニッケル膜厚は表1から100nmを超えるケースが多い。したがって、膜厚を100nm以下にして、かつニッケル溶出量を抑制するためにはニッケルの添加量を1重量部よりも少ない量にするのが好ましい。
なお、ニッケル膜厚はニッケルの粒径、ニッケル添加量、被覆方法によって制御することができるが、この点は分解材の製造方法に関する実施の形態2で詳細に説明する。
【0035】
鉄粉表面をニッケルで被覆させるための具体的な方法としては、混合・造粒を主目的としたアイリッヒミキサー、ヘンシェルミキサーにより、鉄粉とニッケル微粉を混合攪拌する方法があるが、これに限られるものではない。
ニッケル微粉としては、塩化ニッケルを気化し、還元反応を起こさせて気相から粒子を析出させる気相化学反応法(CVD法)で製造するようにしてもよいが、これに限定されるものではない。
もっとも、CVD法によってニッケル微粉を製造した場合には、製造されたニッケル微粉中に塩素ガスがHClとして金属ニッケル表面に再付着しており、この塩素の存在によって反応速度が速くなるという効果がある。
【0036】
なお、金属ニッケルに付着している塩素の量は、金属ニッケルに対して0.1〜3質量%であることが好ましい。0.1質量%未満であると、分解材として使用する際に鉄の溶解を促進する効果が少なく、分解材として初期反応の促進効果が期待できない。他方、3質量%を越えると、塩素により鉄が腐食するため表面が酸化膜で覆われてしまい、Fe→Fe2++2eによるVOCの分解に寄与する自由電子の発生が少なくなるからである。また、分解材として長期保存の観点からも、塩素の量が3質量%を超えると長期保存ができなくなるので好ましくない。
【0037】
CVD法によってニッケル微粉を製造した場合には、上述したようにニッケルに塩素が付着することになり、別途塩素を添加する必要がない。しかし、ニッケル微粉を製造する方法としては、CVD法以外の例えば、金属を直接還元雰囲気下で昇華させて微粉末を作るプラズマPVD法、Ni塩の水溶液を還元して微粉末を製造する液相法、Ni塩をそのまま水素還元して微粉末を製造する固相法であってもよい。液相法や固相法では出発原料が塩化ニッケルであれば製造された微粉末に塩素が残留するので、CVD法と同様に別途塩素を添加する必要がない。
なお、ニッケル微粉の粒径は、実施の形態2で説明するように、鉄粉表面を被覆させることを考慮して、鉄粉の粒径の1/10〜1/5000にするのが好ましい。(1/5000は、0.1μmのNi粉と500μmの鉄粉の比)さらに、ニッケル微粉の粒径が鉄粉粒径の1/100〜1/5000にするのがより好ましい。なお、ニッケル微粉と鉄粉の粒径比率に関しては、実施の形態2で詳細に説明する。
【0038】
ニッケルで鉄粉を被覆することで前記局部的な反応に加え、オレフィンなどの不飽和炭化水素化合物の水素化触媒として作用するため有機ハロゲン化合物の分解に寄与する。主な触媒作用として、金属のイオン化により発生する水素分子がニッケル表面上で解離されて活性な水素原子となり、その水素原子が不飽和炭化水素化合物などに付加される脱塩素化、水素化反応が考えられる。
【0039】
上記のように構成された本実施の形態の分解材1によれば、ニッケル5が鉄粉3と合金化することなく、鉄粉表面を覆うように付着しているので、分解材としての初期の反応性に優れると共に鉄粉の溶出があってもニッケルが鉄粉と分離し難いので長期に亘ってその効果が持続する。
また、本実施の形態においては、塩素がニッケルに付着しているので、分解材としての初期の分解速度に優れると共に、分解材の使用前の保存中には塩素によって鉄粉が腐食することがなく保存性に優れる。他方、分解材の使用状態では、前述したように、塩素が水と反応して鉄粉の溶解促進に寄与する。このように、本実施の形態の分解材は保存性に優れると共に初期反応性に優れるという効果を奏する。
もっとも、塩素は初期反応性に優れるという効果の点からすれば、塩素が鉄粉側に付着するものを排除するものではない。
【0040】
なお、上記の実施の形態においては、鉄より貴な金属の例としてニッケルを例に挙げて説明したが、鉄より貴な金属としては、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、銅(Cu)、コバルト(Co)が挙げられる。
【0041】
[実施の形態2]
本実施の形態2は、分解材の製造方法に関するものである。
本実施の形態に係る有機ハロゲン化合物の分解材の製造方法は、ニッケル微粉と鉄粉を機械的に接触させて前記鉄粉の表面をニッケルで被覆するようにニッケルを圧着させる工程(圧着工程)とを有している。
【0042】
<鉄粉>
本実施の形態で使用する鉄粉は、実施の形態で説明した鉄粉を用いることができる。すなわち、アトマイズ鉄粉、海綿鉄粉、還元鉄粉、電解鉄粉を使用することができる。また、鉄粉表面が酸化膜で覆われていない鉄粉が好ましく、鉄粉表面が酸化膜で覆われている場合には鉄粉表面の酸化膜厚を30nm以下にするのが好ましい。
鉄粉粒径としては、その上限値は、実施の形態1で説明したように、分解材としての反応性の観点や輸送の観点から500μm未満が望ましい。また、鉄粉の粒径の下限値としては、45μm以下が45%以下にすることが施行性の観点から望ましい。
【0043】
<ニッケル微粉>
ニッケル微粉の粒径は、鉄粉表面を被覆させることを考慮して、鉄粉の粒径の1/10〜1/5000にするのが好ましい。(1/5000は、0.1μmのNi粉と500μmの鉄粉の比)さらに、ニッケル微粉の粒径が鉄粉粒径の1/100〜1/5000にするのがより好ましい。なお、粒径比率はニッケル微粉と鉄粉のすべてにおいて当該粒径比率であることを意味するのではなく、使用するニッケル微粉と鉄粉の50質量%以上が当該粒径比率であればよい。つまり、ニッケル微粉と鉄粉の粒径比率が1/100〜1/5000であるとは、仮にニッケル微粉の平均粒径が0.4μmの場合、鉄粉の少なくとも50質量%以上の粒径が40μm以上であることを意味する。
ニッケル微粉の粒径を鉄粉の粒径に比較して小さく設定しているのは、ニッケル微粉と鉄粉をアイリッヒミキサーなどで混合したときに、ニッケル微粉が鉄粉によって扁平化されて鉄粉の表面に薄く広い面積で被覆でき、表面被覆面積比率を大きくすることができるようにするためである。
【0044】
なお、ニッケル微粉の製造方法は特に問わないが、一つの好ましい態様を示すと以下のようなCVD法によるものが挙げられる。
CVD法によるニッケル微粉製造方法を具体的に示すと、塩化ニッケルを昇華させたガス、水素ガスおよび窒素ガスの3種のガス中で塩化ニッケルを昇華させたガスのモル比が0.10〜0.20となるように混合し、1000〜1200℃に加熱した反応管内で気相反応によってニッケル微粉を製造する(CVD法)。
CVD法によってニッケル微粉を製造した場合には、その粒度は、0.1〜1μmで90%以上となる。
CVD法によってニッケル微粉を製造した場合には、ニッケル微粉にHClが付着することになり、別途塩素を添加することなく、初期の反応速度を向上させることができる。一部、未反応の塩化ニッケルも存在するがニッケル微粉に対し1質量%以下であれば問題ない。
【0045】
<圧着工程>
圧着工程には、アイリッヒミキサーなどの混合・造粒を主目的としたミキサーを使用し、鉄粉とニッケル微粉を混合攪拌する。
ミキサーのアジテータ(ミキサー内の羽)の回転数は1500〜5000rpm、パンの回転速度は20〜150rpm、混合時間は2〜15分である。
アジテータとパンの回転により、ミキサー内の鉄粉とニッケル微粉が遠心力を受けながら混合攪拌され、このとき粒径の大きい鉄粉のせん断摩擦力によってニッケルが鉄粉表面に貼り付けられるようにして付着して鉄粉表面を覆う。このような方法でニッケル微粉を鉄粉の表面に付着させるので、加工前後で粒度がほとんど変わらない。
被覆方法は、粉砕メディアを入れないで鉄粒子同士のせん断摩擦力を利用してニッケル粒子を鉄粉表面に膜状に被覆する方法がよい。粉砕メディアを入れても被覆可能であるが、処理時間によって鉄粉の粒径、粒形が変化するため制御が煩雑になる。
なお、鉄粉を被覆するニッケルの厚みは鉄粉やニッケル微粉の粒径、鉄粉に対するニッケル微粉の添加量、加工条件によって制御することができ、前述したように、ニッケルの厚みは薄い方が好ましいので、100nm以下にするのが好ましい。
【0046】
ニッケル膜厚を100nm以下にするための好ましいニッケル微粉の粒径について説明する。
表2に、ニッケル微粉の粒径と、ニッケル添加量と鉄粒子(鉄粒子径70μm)1個当たりのニッケルの粒子量の関係を示す。
【0047】
【表2】

【0048】
表2に示されるように、ニッケル粒径が5μmの場合、ニッケル添加量が0.2重量部では鉄粒子1個当たりのニッケル粒子個数は5個になる。ニッケル膜厚を100nm以下にするには、5個のニッケル粒子についてその粒径5μmの1/50以下まで圧延して鉄粒子表面上に被覆させる必要がある。しかしながら、70μmの鉄粒子のせん断摩擦力によって粒径5μmのニッケル粒子をその1/50以下まで圧延するのは難しい。
これに対して、ニッケル粒径が0.2μmの場合、添加量が0.2重量部では鉄粒子1個当たりのニッケル粒子個数は86,000個である。同様に、ニッケル膜厚を100nm以下にするには、86,000個のニッケル粒子についてその粒径0.2μmの1/2以下まで圧延して鉄粒子表面上に被覆させればよい。この場合、70μmの鉄粒子のせん断摩擦力によって粒径0.2μmのニッケル粒子をその1/2以下まで圧延するのは比較的容易である。
よって、ニッケル微粉の粒子径は小さいほど良い。もっとも、現在製造可能な最小のニッケル粒子径は概ね0.1μm以上であるため、ニッケル微粉の粒径としては0.1μm以上であってできるだけ小さい粒径が好ましい。
【0049】
アイリッヒミキサーを使用し、ニッケル粒子径:0.2μm、ニッケル添加量:0.2重量部、鉄粉平均粒径:100μmを処理するのに、アジテータの回転速度、パンの回転速度がそれぞれ3000rpm、80rpmとした場合、
5分間の処理により、ニッケル表面被覆面積率が55%、膜厚を100nm以下に制御できる。
なお、ニッケルの添加量を増やす、またニッケル粒子径を大きくした場合には、処理時間の延長により膜厚を100nm以下に制御できる。
【0050】
また、圧着工程において鉄粉表面に付着させるニッケルの表面被覆面積比率は30〜95%が好ましい。
表面被覆面積比率の制御は、鉄粉やニッケル微粉の粒径、鉄粉に対するニッケル微粉の添加量、加工条件によって制御することができる。
【0051】
CVD法によって製造した0.1〜1μmが90%以上の粒度のニッケル微粉を、鉄粉100重量部に対して0.1〜10重量部添加し、アイリッヒミキサーによって1500〜3000rpmで2〜15分混合することによりニッケルの表面被覆面積比率を30〜95%の範囲で制御することができる。
加工時間を長くすれば、またニッケル微粉量を増やせば、さらにニッケル微粉の粒径が細かければ表面被覆面積比率は増加する。
【0052】
例えば、CVD法によって製造した平均粒径0.2μmのニッケル微粉、0.2重量部、3000rpmで10分間混合すると表面被覆面積比率は90%程度となる。
ニッケルによって表面被覆された鉄粉の断面を電子顕微鏡で観察したところ、ニッケルと鉄粉の境界は明確であり、両者は合金化されていないことが確認された。特許文献2の場合には、混合ミルの中に鉄粉とニッケル粉に加えて鋼球等の粉砕メディアを仕込んでいるが、本実施の形態ではこのような粉砕メディアの仕込みがない点で特許文献2の場合とは製造方法及びその製造された物において明確に相違している。
【0053】
なお、ニッケルの表面被覆面積比率は、鉄粉の断面を、成分分析装置EPMAやEDXを取り付けた電子顕微鏡SEMで測定する。すなわち、鉄粉断面の周長(A)(図1参照)と、外周ニッケル被覆部長(B)(図1参照)との比、B/A×100で求めることができる。なお、1個では不十分なので複数の粒子で同様な分析を行い平均値より表面被覆面積比率を求める。
【0054】
なお、アイリッヒミキサーに代えて、混合・造粒を目的としたミキサーとしてヘンシェルミキサーがあるが、このようなミキサーを使用することもできる。
また、振動ミルや回転ボールミルのようなミルでも加工でき、加工時間は1〜30分以内である。
【0055】
以上のように本実施の形態の製造方法によれば、ミキサーやミル内で混合攪拌される鉄粉のせん断摩擦力によってニッケルを鉄粉に付着させるようにしたので、鉄粉の表面をニッケルで被覆することが簡易な方法で、かつ短時間で実現でき、分解材としての初期の反応性に優れると共に長期に亘ってその効果が持続する分解材を容易に製造できる。
また、本実施の形態では、CVD法によって製造したニッケル微粉を用いているので、ニッケル微粉製造工程において製造されたニッケルに適量のHClが付着しており、HClの存在により分解材としての初期の分解速度に優れる分解材が容易に製造できる。
【0056】
上記の実施の形態で示した分解材は、鉄粉表面をニッケルで被覆するというものであるが、どのような製造方法によるのが好ましいかを確認するために、(1)ニッケル添加量と反応速度の関係、(2)混合時間と反応速度及び表面被覆面積比率の関係、(3)ニッケル添加量とニッケル溶出量との関係、(4)鉄粉表面をニッケルで被覆した場合と鉄粉表面にニッケルが点在する場合の分解材としての耐久性の比較を調査した。これらの調査結果を以下の実施例1〜4において説明する。
【実施例1】
【0057】
<ニッケル添加量と反応速度の関係>
試験方法は以下の通りである。
<試験方法>
・原料鉄粉 :仕上げ還元鉄粉[100重量部、平均粒径100μm]
・ニッケル微粉 :平均粒径:0.2μm[0.05重量部〜90重量部、及びニッケル微粉のみ]
・混合攪拌条件 :アイリッヒミキサーによって3.000rpm、6分間混合
・分解試験方法 :浄化剤1.5gを50mLのバイアル瓶に入れ、
シス-1,2-ジクロロエチレン(DCE)、トリクロロエチレン(TCE)、
テトラクロロエチレン(PCE)各10mg/lの模擬地下水を30mLを加え、
空隙を窒素で置換した後PTFE栓で密栓した。
25℃で72時間静置した後、地下水を採取し、GC-MSヘッドスペース法
によって、各有機ハロゲン化合物の濃度を定量した。
【0058】
試験結果を表3及び図2に示す。図2においては、縦軸が見かけ反応速度[1/hr]で、横軸がニッケル(Ni)添加量(重量部)である。なお、横軸については、鉄粉を用いることなくニッケル微粉のみの場合も示している。
【0059】
【表3】

【0060】
表3、図2のグラフに示されるように、ニッケルの添加量が増えるに従って反応速度は大きくなり、特に添加量が0.1重量部以上で反応速度が大きくなる。
しかし、ニッケルの添加量が10重量部を超えると反応速度は鈍る。これは、ニッケルの添加量が増えることで鉄粉表面を覆うニッケルの量が増え、10重量部を越えると鉄粉の露出が極端に小さくなるためと推察される。
この試験結果から、ニッケルの添加量としては、0.1重量部〜10重量部が好ましい。
【0061】
なお、表3、図2から分かるように、ニッケル100%であっても有機ハロゲン化合物を分解することができる。これはNi-Feの局所電池反応による分解ではなく、ニッケル自身がオレフィンの水素化触媒機能を有するためで 、ニッケル表面で水素分子が活性な水素原子となり、この水素原子が塩素化エチレンの塩素と置換すると同時に水素化によりオレフィンの2重結合が単結合(パラフィン)となり、すなわちエタンなどの飽和炭化水素へと分解するものと推察される。
このことから、鉄粉表面にニッケルを広い範囲で被覆することでNi-Feの局所電池反応とニッケルの水素化触媒反応の両反応が進行すると考えられ、これによって高い反応速度が得られることが確認された。
【実施例2】
【0062】
<混合時間と反応速度及び表面被覆面積比率の関係>
試験方法は以下の通りである。
・原料鉄粉 :仕上げ還元鉄粉[100重量部、平均粒径100μm]
・金属ニッケル :0.2重量部 ニッケル微粉[平均粒径:0.2μm]、
ニッケル試薬:10μm
・混合攪拌条件 :アイリッヒミキサーによって3.000rpm、1分〜30分間混合
・分解試験方法 :浄化剤1.5gを50mLのバイアル瓶に入れ、
シス-1,2-ジクロロエチレン(DCE)、トリクロロエチレン(TCE)
各10mg/lの模擬地下水を30mLを加え、空隙を窒素で置換した後
PTFE栓で密栓した。
25℃で72時間静置した後、地下水を採取し、GC-MSヘッドスペース法
によって、各有機ハロゲン化合物の濃度を定量した。
・表面被覆面積比率の測定法: 20粒の鉄粉粒子を樹脂加工し、研磨機により鉄粉断
面を出した。この断面をEPMAにより鉄とニッケルの
面分析を行い、上記、鉄粉断面の周長(A)(図1参照)
と、外周ニッケル被覆部長(B)(図1参照)との比、
B/A×100より計算した。
【0063】
試験結果を表4及び図3に示す。図3においては、縦軸が見かけ反応速度[1/hr]で、横軸が混合時間(min)を示している。なお、表4には反応速度に加え、表面被覆面積比率も記載した。
【0064】
【表4】

【0065】
表4、図3のグラフに示されるように、0.2μmのニッケル微粉を用いた場合、混合時間が長くなることで反応速度は向上している。これは、混合時間が長くなると鉄粉表面へのニッケル被覆率が高くなるためであり、ニッケル被覆率が高くなれば前記、Ni-Fe局所電池+水素化触媒反応の効率が上がるためであると推察される。
また、混合時間が10分を超えると反応速度はそれ以上を向上していないことから、10分程度の混合時間でニッケルによる被覆が好適な状態になることが窺える。
他方、10μmのニッケル試薬ではアイリッヒミキサーで30分間混合しても反応速度は向上していない。これは、鉄粉表面にニッケルが被覆されず、また粒径の大きなニッケルは比表面積が小さいため同一添加量での水素化触媒反応の効率が悪いためであると推察される。
【0066】
混合時間とニッケル被覆の状態を確認するため、混合時間4分と10分のものについてEPMA(Electron
Probe Micro Analyzer)による断面のニッケル濃度分布と、表面のSEM像を確認した。図4が混合時間4分のもので、図4(a)がEPMAで図4(b)がSEM像である。また、図5が混合時間10分のもので、図5(a)がEPMAで図5(b)がSEM像である。
図4(a)の粒子が鉄粉を示し、鉄粉の周囲の写真において色が薄くなった部分がニッケルである。図4(a)から分かるように、混合時間4分であっても、ある程度のニッケル被覆が行われている。しかし、鉄粉の凹部は鉄粉同士によるせん断摩擦が生じないためニッケルはコーティングされていない。
また、図4(b)から分かるように、混合時間4分では一部のニッケル粒子が被覆コーティングされずに鉄粉表面に点在しているが、大部分は鉄粉表面に被覆コーティングされている。
【0067】
図5(a)から分かるように、混合時間10分では、被覆率90%程度のニッケル被覆が行われている。
また、図5(b)から分かるように、点在するニッケル粒子はなく、全てのニッケル粒子が鉄粉表面の被覆に供されている。
【実施例3】
【0068】
<ニッケル添加量とニッケル溶出量の関係>
試験方法は以下の通りである。
・試料 実施例1で調整したバイアル瓶より72時間静置した後の液相中のニッケル溶解量
を測定した。
・サンプリング方法:バイアル瓶より0.45μmのメンブランフィルターでろ過した地下水
を測定に用いた。
・測定方法:ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)により地下水中のニッケル含有量
を定量した。
試験結果を表5及び図6に示す。図6においては、縦軸がニッケル溶出量[mg/L]で、横軸が水素還元鉄粉100重量部に対するニッケル添加量[重量部]を示している。
【0069】
【表5】

【0070】
表5、図6から分かるように、ニッケル添加量1重量部までは分解反応速度はほとんど変わらないが、ニッケル添加量が1重量部を超えるとニッケルの溶出量が指数関数的に増大する。ニッケルの溶出は環境上好ましくないので、この意味からは添加量は1重量部以下とするのが好ましい。
また、ニッケルは鉄粉に比べて高価であるため、反応速度が高く保たれる範囲内ではできるだけ少量の方が良い。この点、実施例1に示されるように、ニッケル添加量は1重量部〜10重量部の範囲では大きな差異がないので、環境面やコスト面を考慮するとニッケル添加量は1重量部以下にするのが好ましい。
【実施例4】
【0071】
<ニッケルの被覆と点在の耐久性の比較>
[試料調整方法]
・ニッケル被覆鉄粉:金属ニッケル微粉(0.2μm)を鉄粉に0.2重量部添加し、
アイリッヒミキサーで10分間混合。
鉄粉表面のほぼ全面がニッケルでコーティングされる。
・ニッケル点在鉄粉:金属ニッケル微粉(0.2μm)を鉄粉に0.2重量部添加し、
アイリッヒミキサーで1分間混合。
鉄粉表面にニッケル粒子が点在し、完全には被覆されていない。
[試験方法]
上記鉄粉1.5gを50mlバイアル瓶に入れ、10mg/LのDCE汚染地下水を30ml添加し、空隙を窒素置換した後、PTFE栓で密栓して20℃で静置した。7日後に地下水を捨て、再度、10mg/LのDCE汚染地下水を30ml添加し、空隙を窒素置換した後、PTFE栓で密栓して20℃で静置した。そして、72時間後に地下水の一部を採取して、GC-MSでDCEを定量した。
同様に31日、93日静置したバイアル瓶の地下水を捨て、再度、10mg/LのDCE汚染地下水を30ml添加し、空隙を窒素置換した後、PTFE栓で密栓して20℃で静置した。72時間後に地下水の一部を採取してGC-MSでDCEを定量した。
【0072】
実験結果を表6及び図7に示す。図7において、縦軸は反応速度(1/hr)を示している。
【0073】
【表6】

【0074】
表6、図7から分かるように、ニッケルで被覆した鉄粉は日数が増しても反応速度はほとんど低下していない。これに対して、ニッケルが点在する鉄粉は、日数が増すと極端に反応速度が低下している。このような違いは以下のような現象であると推察される。
鉄粉にニッケルを付着させることでNi-Feの局所電池反応により鉄が腐食する。ニッケルが点在する鉄粉の場合、ニッケル粒子の周囲の鉄の腐食が進行するとニッケル粒子が鉄から剥離し、局所電池反応の効果が得られなくなる。このため、腐食が進行するにしたがって反応速度が極端に低下している。これに対して、鉄粉をニッケルで被覆した場合は、ニッケルが鉄粉を包み込んでいるため、鉄粉の腐食が進行してもニッケルが鉄粉から分離してしまうことはなく、局所電池反応の効果が持続する。
また、ニッケルが点在する場合は、被覆の場合に比べて比表面積が小さいため水素化触媒効果も少なくなるため、この点でも被覆の場合に比較して反応速度が遅い要因である。
【0075】
実施例4の比較試験によって鉄粉の表面を被覆する本発明に係る有機ハロゲン化合物の分解材が、特許文献1に記載された鉄粉表面にニッケルを点在させるものに比較して分解材として長期に亘って効果が持続することが実証された。
【符号の説明】
【0076】
1 分解材
3 鉄粉
5 ニッケル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄粉の表面を鉄より貴な金属で被覆してなることを特徴とする有機ハロゲン化合物の分解材。
【請求項2】
前記鉄よりも貴な金属の鉄粉表面に対する表面被覆面積比率が30%〜95%であることを特徴とする請求項1記載の有機ハロゲン化合物の分解材。
【請求項3】
鉄100重量部、鉄よりも貴な金属0.1〜10重量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機ハロゲン化合物の分解材。
【請求項4】
前記鉄より貴な金属がニッケルであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機ハロゲン化合物の分解材。
【請求項5】
鉄より貴な金属粉と鉄粉を機械的に接触させて前記鉄粉の表面を前記鉄より貴な金属で被覆することを特徴とする有機ハロゲン化合物の分解材の製造方法。
【請求項6】
前記機械的な接触は、前記鉄粉と前記鉄よりも貴な金属粉をミキサーで混合することによって行うことを特徴とする請求項5記載の有機ハロゲン化合物の分解材の製造方法。
【請求項7】
鉄より貴な金属粉の粒径が0.1〜1μmを90%以上含むことを特徴とする請求項5又は6記載の有機ハロゲン化合物の分解材の製造方法。
【請求項8】
前記鉄粉の粒径が500μm未満であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の有機ハロゲン化合物の分解材の製造方法。
【請求項9】
前記鉄粉表面に対するニッケルの表面被覆面積比率が30%〜95%であることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか一項に記載の有機ハロゲン化合物の分解材の製造方法。
【請求項10】
前記鉄より貴な金属がニッケルであることを特徴とする請求項5乃至9のいずれか一項に記載の有機ハロゲン化合物の分解材の製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−46985(P2011−46985A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194925(P2009−194925)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000200301)JFEミネラル株式会社 (79)
【Fターム(参考)】