説明

有機修飾微粒子

【課題】 ナノ粒子のような微粒子は様々な特有の優れた特性・機能を示すことから、ハイテク製品の開発に不可欠な材料として注目されているが、その表面に強固な結合を介して有機基を結合させる技術の開発が求められている。
【解決手段】 高温高圧水を反応場とすることで、金属酸化物微粒子表面と有機物との間で強結合せしめて有機修飾金属酸化物微粒子を得ることができる。同様な条件を使用すれば、金属酸化物微粒子の形成とその生成微粒子表面を有機修飾することもできる。得られた有機修飾金属酸化物微粒子は、優れた性状・特性・機能を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子の表面に炭化水素を強結合せしめてある有機修飾微粒子、特には有機修飾金属酸化物微粒子並びにその製造法,さらにはナノ粒子などの微粒子の回収又は収集法、そしてその応用技術に関する。
【背景技術】
【0002】
微粒子,特にはナノメーターサイズの粒子(ナノ粒子)は、様々な特有の優れた性状・特性・機能を示すことから、材料・製品のすべてに対して、現状よりも高精度で、より小型化、より軽量化の要求を満たしている技術を実現するものとして期待されている。このようにナノ粒子は、セラミックスのナノ構造改質材、光機能コーティング材、電磁波遮蔽材料、二次電池用材料、蛍光材料、電子部品材料、磁気記録材料、研摩材料などの産業・工業材料、医薬品・化粧品材料などの高機能・高性能・高密度・高度精密化を可能にするものとして且つ21世紀の材料として注目されている。最近のナノ粒子に関する基礎研究から、ナノ粒子の量子サイズ効果による超高機能性や新しい物性の発現、新物質の合成などの発見も相次いでいることから産業界からも大きな関心を集めている。しかしながら、ナノ粒子の実用化のためには、それぞれの微細粒子に特有の機能を付加せしめることが必要であり、そのためにはその機能の付加を可能にするため粒子の表面を修飾する技術の確立が求められている。微粒子、特にはナノ粒子に安定して使用・利用できる機能を付加するに便利なものとしては、有機修飾をなすことが挙げられ、特に強固な結合を介して修飾することが求められている。
【0003】
これまで有機・無機複合材料並びにその合成研究については多くの報告がなされているし、無機粒子を有機修飾する研究もなされているが、有機修飾を行うためにはいずれも有機溶媒中で反応を実施しようとするものであった。そして、水又は水性溶液中で微粒子を合成しつつ、その反応場、すなわち水中で有機物質を微粒子に反応させる手法は知られていない。粒子の表面を修飾するにあたり、有機溶媒中で無機粒子の表面修飾する手法は数多く知られているが、ナノサイズの粒子の場合、凝集し易く、特に水中で合成された粒子を有機溶媒中に分散させるには、界面活性剤を用いるなど、前処理が必要である。このように、水中で粒子を合成しつつ、表面修飾する技術はその報告はない。
in-situ で表面修飾する方法としては、逆ミセル法とかホットソープ法などの報告がなされている。逆ミセル法では、界面活性剤を用いて水を油相に懸濁し、逆ミセルを形成させ、そこに反応性基質を添加することで、反応晶析させるものである。懸濁水相で生成した金属酸化物粒子を界面活性剤により安定化させ、ナノ粒子を安定・分散させるもので、界面活性剤は粒子表面に吸着した状態であり、反応による結合はない。また、ホットソープ法とは、上記の方法を、油相を用いずに界面活性剤のみを用いて高温で行うもので、反応させる金属塩水溶液は急速に攪拌されつつ供給されて、反応晶析を行うと同時に周囲の界面活性剤が吸着することを利用した技術である。これまで報告のある有機修飾の例としては、アルカンチオールの吸着であり、反応性修飾は行われていない。
高温高圧水が有機物質とも均一相を形成することや高温高圧場では水が酸や塩基触媒として機能して無触媒下でも有機合成反応が進行することも多くの研究報告がある。しかし、無機材料と有機材料との反応を行う方法については報告はない。
【0004】
水熱合成の反応場を超臨界水とすることで、ナノサイズの結晶性の高い粒子を合成できることは知られている。しかしながら、該反応場で、製造したナノ粒子の表面に修飾を行ったり,有機物と反応させて有機修飾した粒子を合成するといった方法については報告されてはいない。
超臨界流体中でCVDを行うと同時にin-situ表面修飾する技術も既に知られている。それ
は超臨界流体中でCVDを行って金属ナノ粒子を合成する反応場に、上記ホットソープ法な
どの方法を参考にしてアルカンチオールあるいはアルコールを共存せしめるというものである。該手法では、粒子成長が抑制され、ナノメーターサイズの粒子が生成することが報告されている。該CVD技術では、アルカンチオールによる還元反応と表面修飾が同時に生
じ、得られる生成物は金属Cuであってアルカンチオールが配位した構造も報告されている。また、超臨界水中で還元剤を用いつつ、上記と同様、アルカンチオール存在下に合成を行うことで金属ナノ粒子にチオール基を配位させて粒子生長を抑制しナノ粒子を製造する方法も報告がある。アルコールについては配位だけでなく結合が生じて反応場でin-situ
表面修飾されていたことがその結果の一部に報告されてもいる。しかし、超臨界「水」中での反応晶析ではなく、有機溶媒中での反応in-situ表面改質法に属する手法でしかない

またガラスやシリカゲルを水中で表面処理する方法は広く知られているが、その方法はCNBr活性化法やエポキシ活性化法といった方法である。該CNBr法やエポキシ活性化法はそのいずれもアルカリ性溶液中で行うものであるため、ナノメーター(nm)程度の粒子はすべて溶解してしまうことから、これら既知の反応を利用した水中での酸化物ナノ粒子の表面修飾は不可能である。
【0005】
以下, 従来の有機修飾法をまとめて示す。
1)有機無機複合材料合成
一般的な金属酸化物表面の修飾法としてシランカップリング法がある(非特許文献1)有機・無機複合材料の合成研究も存在している(非特許文献2〜5)。水中における酸化物の表面修飾も知られている。ガラスやシリカゲルを水中で表面修飾する手法として、CNBr活性化法やエポキシ活性化法などがある。CNBrや、エポキシと表面のOHとを反応させ、CNやエポキシの官能基を付与し、それを介して目的とする官能基を導入する方法である。しかし、これらの反応に必要なph設定、触媒の添加が必要であり、また、生成物として酸の生成もある。一般に、これらの活性化法のいずれもアルカリ性溶液中で行うため、nm程度の粒子はすべて溶解してしまい、これらの概知の反応を利用した水中での酸化物ナノ粒子の表面修飾は不可能である(非特許文献6)。以上の方法は、いずれも、有機修飾を有機溶媒中で反応を行うものである。ナノサイズの粒子の場合、表面エネルギーが高く、凝集しやすい。10nm以下の粒子を合成する方法としては、図1に示すように、ゾルゲル法や水熱法等の溶液法が有効である。しかし、溶媒中で合成された粒子を取り出し乾燥させると、強固に凝集し、それを有機溶媒中に再分散させることは極めて困難である。溶媒を有機溶媒に段階的に変えていく必要がある。特に、水中で合成したナノ粒子は、親水基を有していることが多く、有機溶媒中に分散させるには、界面活性剤を用いるなど、前処理が必要である。したがって、in-situでナノ粒子を合成しつつ、表面修飾を行う技術が50nm
以下のナノ粒子の合成においては重要となる。
【0006】
2)in-situで表面修飾を行う手法
逆ミセル法
界面活性化剤を用いて、水を油相に懸濁し、逆ミセルを形成させ、そこに反応性基質を添加することで、反応晶析させる。例えばCd(NO3)2水溶液とNa2Sのミセルを混合すると、CdS ナノ粒子とNaNO3 とを生成させることができる。CdS ナノ粒子を安定化させるために、アルカンチオールのような安定化剤を供給させて、ナノ粒子を安定させることができる。界面活性剤は表面に吸着した状態であり、反応による結合はない(非特許文献7)。最近、溶媒を超臨界二酸化炭素とする方法も報告されている(非特許文献8及び9)。
ホットソープ法
上記の方法を、油相を用いず、界面活性剤ものを用い、高温で行う。反応させる金属塩水溶液を急速に攪拌しつつ供給し、反応晶析させると同時に周囲の界面活性剤が吸着される(非特許文献10)。今まで報告例はほとんどがアルカンチオールの吸着であり、反応性修飾は行われていない。
超臨界流体中での反応晶析in-situ表面修飾
超臨界流体中で、熱分解CVD(Chemical Vapor Deposition)を行い、同時に有機修飾を
行う方法も提案されている。特に、超臨界水熱合成(テクノアーチ特許)場においてアルカンチオールを共存させることで、表面修飾を行った論文も報告されている。Cu(NO3)2水溶液を超臨界状態としつつ、ヘキサンチオールを共存させると、還元が生じ、Cu粒子が合成され、in situ でヘキサンチオールによる安定化が生じる。この場合、チオールが還元剤として働き、生成したCuナノ粒子表面にヘキサンチオールが配位する。これは良く知られた金属への配位である(非特許文献11)。超臨界有機溶媒中での熱分解により、Si02合成を行いつつアルコールによる表面修飾を行なうことも知られている(非特許文献11)。
水熱合成の反応場を超臨界水とすることで、ナノサイズの結晶性の高い粒子を合成する超臨界水中でのナノ粒子合成を本発明者らはすでに提案しているが, そこではその反応場で、製造した粒子表面に修飾を行ったり、有機物と反応させて有機修飾した粒子合成を行なう方法については触れられていない。また高温高圧水が有機物質とも均一相を形成すること、高温高圧場では、水が酸や塩基触媒として機能し、無触媒下でも有機合成反応が進行することは、多くの研究報告がある。しかし、無機材料と有機物質との反応を行う方法については報告がない。
【0007】
【非特許文献1】ポリマーフロンティア 21 シリーズ 15「無機/高分子ナノ界面制御」、高分子学会編、pp.3-23 、エヌ・ティーエス、2003年
【非特許文献2】"Formation of Ordered Monolayer of Anionic Silica Particles on a Cationic Molecular Layer", T. Yonezawa, S.Onoue, and T. Kunitake, Chem. Lett., No.7, 689-690(1998).
【非特許文献3】"Molecular Imprinting of Azobenzene Carboxylic Acid on a Ti02 Ultrathin Film by the Surface Sol-Gel Process", S. -W. Lee, I.Ichinose, T. Kunitake, Langmuir,Vol.14, 2857-2863 (1998).
【非特許文献4】"Alternate Molecular Layers of Metal Oxides and Hydroxyl Polymers Prepared by the Surface Sol-Gel Process", I.Ichinose, T. Kawakami, T. Kunitake, Adv. Mater., Vol.10, 535-539 (1998).
【非特許文献5】"Molecular Imprinting of Protected Amino Acids in Ultrathin Multilayers of Ti02 Gel", S.W.Lee, I.Ichinose, T.Kunitake, Chem. Lett,. No.12, 1993-1994 (1998)
【非特許文献6】Rolf Axen,Jerker Porath,Sverker Ernbvack, "Chemica Coupling of Peptides and Proteins to Polysaccharides by Means of Cyanogen Halides", Nature, Vol.214, 1967, pp.1302-1304
【非特許文献7】A)「ナノ粒子の製造・評価・応用・機器の最新技術」、pp.16-19、2002年、シーエムシー出版
【非特許文献8】Ye, X. R., Lin, Y. Wang, C.. Wai, C. M., Adv. Materials, 2003, 15, 316
【非特許文献9】Ye, X. R., Lin, Y. Wang, C., Wai, C. M., Chem. Comm, 2003, 642
【非特許文献10】A)「ナノ粒子の製造・評価・応用・機器の最新技術」、pp.19-21, 2002年、シーエムシー出版
【非特許文献11】Kirk J. Ziegler, R. ChristopherDoty, Keith P. Johnston, and Brian A. Korgel, "Synthesis of Organic Monolayer-Stabilized Copper Nanocrystals in Supercritical Water", J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 7797-7803
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
様々な有用な性質・機能を有することから、その有用性が期待されている微粒子,特に
はナノ粒子については、超臨界合成法を含めて多くの合成方法が提案・開発されてきている。しかしながら、こうして合成された微細粒子やナノ粒子を回収する方法、そして回収後も凝集などさせることなく微粒子のまま分散安定化させておく方法が必要とされている。また、利用する場合にも、樹脂やプラスチックス、溶剤に良分散させる必要もある。特には、水中で合成されたナノ粒子等は、親水性の表面を有していることが多く、水からの回収は容易ではない。また該ナノ粒子等は、有機溶媒や樹脂等になじみが悪いという問題がある。
これらのニーズを満足させるためには、ナノ粒子の表面にそれぞれの目的に応じて、有機物質でもって表面修飾を行う必要があると考えられている。例えば、望ましい修飾としては、樹脂と同様の高分子により修飾するとか、溶剤と同じ官能基を付与するなどが挙げられる。そして、水中で表面修飾を行うことが可能であれば、水からナノ粒子を分離させて回収することも容易になる。ところが、水中で合成されたナノ粒子を有機物質で表面修飾するには、水と有機物質が均一相であることが望ましいが、その場合に使用できる修飾剤は、両親媒性の界面活性剤か、あるいは水にも溶解しうる低級アルコールなどに限られる。さらに、何らかの方法で回収されたとしても、該回収されたナノ粒子も極めて凝集しやすいし、一度、凝集してしまったナノ粒子は、たとえ分散剤を使用しても容易には再分散化させることは難しい。また、こうしたナノ粒子の表面修飾は全く困難である。
高温高圧場で、水と有機物質が均一相を形成することは知られており、例えば、アルコールや糖、カルボン酸とアルコール、そしてカルボン酸とアミンでは高温高圧水中で無触媒下に脱水反応が生起することがわかっている。しかしながら、当該条件で粒子表面の水酸基と有機物質との間で反応が生ずることは知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かくして所要の望まれる官能基を水中のナノ粒子の合成時に導入する方法を開発することが必要であり、本発明者らは鋭意研究の結果、高温高圧の水熱合成場において、有機物質を共存させて金属酸化物粒子を合成すると、粒子表面と有機物質との間での均一相反応の生起により粒子表面に有機物質が強固に結合した表面修飾のなされた微粒子が得られることを見出した。そして、得られたナノ粒子は有機修飾されているため、冷却後残存有機物質と共に水から相分離して容易に回収できることも見出した。こうした知見に基づいて本発明を完成した。
代表的な態様では、本発明は、次のものを提供している。
〔1〕 有機修飾微粒子であって、微粒子の表面に炭化水素を強結合せしめてあることを特徴とする有機修飾微粒子。
〔2〕 金属酸化物微粒子の表面に炭化水素を強結合せしめてあり、有機修飾微粒子が有機修飾金属酸化物微粒子であることを特徴とする上記〔1〕記載の微粒子。
〔3〕 微粒子の平均径が、100 nmあるいはそれ以下であることを特徴とする上記〔1〕記載の微粒子。
〔4〕 微粒子の平均径が、50 nm あるいはそれ以下であることを特徴とする上記〔1〕記載の微粒子。
〔5〕 微粒子の平均径が、20 nm あるいはそれ以下であることを特徴とする上記〔1〕記載の微粒子。
〔6〕 微粒子の平均径が、10 nm あるいはそれ以下であることを特徴とする上記〔1〕記載の微粒子。
〔7〕 微粒子の平均径が、5 nmあるいはそれ以下であることを特徴とする上記〔1〕記載の微粒子。
〔8〕 炭化水素が炭素数1、2、3あるいはそれ以上の鎖を有する長鎖炭化水素であることを特徴とする上記〔1〕〜〔7〕のいずれか一記載の微粒子。
〔9〕 強結合が、エーテル結合、エステル結合、N原子を介した結合、S原子を介した結合、金属−C−の結合、金属−C=の結合及び金属−(C=O)−の結合からなる群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔8〕のいずれか一記載の微粒子

〔10〕 有機修飾において、粒子の表面の被覆割合が調節されていることを特徴とする上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一記載の微粒子。
〔11〕 高温高圧水を反応場として微粒子の表面に炭化水素を強結合せしめてあることを特徴とする上記〔1〕〜〔10〕のいずれか一記載の微粒子。
〔12〕 超臨界又は亜臨界条件にある水を反応場として微粒子の表面に炭化水素を強結合せしめてあることを特徴とする上記〔1〕〜〔11〕のいずれか一記載の微粒子。
〔13〕 高温高圧水を反応場として、金属酸化物微粒子表面と有機物との間で強結合せしめて、有機修飾金属酸化物微粒子を合成することを特徴とする有機修飾金属酸化物微粒子の製造法。
〔14〕 臨界点またはそれを超える圧力及び/又は温度条件の水を反応場としていることを特徴とする上記〔13〕記載の微粒子の製造法。
〔15〕 250〜500℃の温度並びに10〜30 MPaの圧力条件の下の水が存在する反応場で有機修飾金属酸化物微粒子を合成することを特徴とする上記〔13〕又は〔14〕記載の微粒子の製造法。
〔16〕 炭化水素が炭素数1、2、3あるいはそれ以上の鎖を有する長鎖炭化水素であることを特徴とする上記〔13〕〜〔15〕のいずれか一記載の微粒子の製造法。
〔17〕 強結合が、エーテル結合、エステル結合、N原子を介した結合、S原子を介した結合、金属−C−の結合、金属−C=の結合及び金属−(C=O)−の結合からなる群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔13〕〜〔16〕のいずれか一記載の微粒子の製造法。
〔18〕 有機修飾剤が、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、アミン、チオール、アミド、ケトン、オキシム、ホスゲン、エナミン、アミノ酸、ペプチド及び糖からなる群から選択されたものであることを特徴とする上記〔13〕〜〔17〕のいずれか一記載の製造法。
〔19〕 有機修飾剤と水との均一相化を促す溶剤を共存物質として用いることを特徴とする上記〔13〕〜〔18〕のいずれか一記載の製造法。
〔20〕 溶剤が、メタノール、エタノール、プロパノール、i-プロパノール、ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール及びエチレングリコールからなる群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔19〕記載の製造法。
〔21〕 反応を促進させる助剤の共存下に反応を行うことを特徴とする上記〔13〕〜〔18〕のいずれか一記載の製造法。
〔22〕 反応促進助剤が、酸であることを特徴とする上記〔21〕記載の製造法。
〔23〕 酸が,硝酸、硫酸、塩酸、臭素酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸及びトルエンスルホン酸からなる群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔22〕記載の製造法。
〔24〕 有機修飾の反応割合を、温度、酸濃度及び反応時間からなる群から選択された因子を制御することを特徴とする上記〔13〕〜〔23〕のいずれか一記載の製造法。
〔25〕 微粒子の表面を有機修飾することにより、
(1) 水溶液に分散させた金属酸化物微粒子を沈殿させて回収すること、
(2) 水溶液に分散させた金属酸化物微粒子を有機溶媒中へ移行せしめて回収すること、又は
(3) 油相−水相界面に金属酸化物微粒子を集めること、
を特徴とする微粒子の回収又は収集法。
〔26〕 親水性基を含む有機表面修飾により、水溶液に良分散せしめた金属酸化物微粒子を製造することを特徴とする微粒子の製造法。
〔27〕 超臨界水熱合成法における反応場で、有機修飾剤を共存させて金属酸化物微粒子を製造することを特徴とする有機修飾金属酸化物微粒子の製造法。
〔28〕 生成粒子の粒径をより小粒子径に調整することを特徴とする上記〔27〕記載の製造法。
〔29〕 高温高圧水を反応場として、金属化合物を水熱反応に付して金属酸化物微粒子を形成し、該形成された金属酸化物微粒子表面と有機物との間で強結合せしめて、有機修飾金属酸化物微粒子を合成することを特徴とする有機修飾金属酸化物微粒子の製造法。
【発明の効果】
【0010】
親水性表面を有する微粒子(特には,ナノ粒子)を炭化水素といった有機基などの疎水性基でその表面を修飾することで、水性媒質から回収したりすることが困難な粒子を簡単に且つ確実に、そして該微粒子(特には,ナノ粒子)の有している有用な特性を損なうことなく有機性の媒質側に移行させて分離・回収することができる。一方、疎水性を有する微粒子(特には,ナノ粒子)では、親水基を有する炭化水素をその表面に結合せしめて修飾することで、水溶液などの水性媒質側に移行させて分離・回収することができる。
水性媒質に存在する金属酸化物微粒子(特には,ナノ粒子)などでは、疎水性の炭化水素といった有機基などを有する修飾剤では、均一反応系を形成することが困難なため、該微粒子(特には,ナノ粒子)をその粒子の有している有用な特性を損なうことなく有機修飾することは不可能であったが、本発明の修飾を利用すればそれが可能となる。さらに、修飾の程度などのコントロールも可能であることから、修飾によりそれぞれに特有な様々な特性付与が可能である。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、高温高圧水を反応場として、金属酸化物微粒子表面と有機物との間で結合を形成せしめて、有機修飾金属酸化物微粒子、特には近年その特異な特性から注目を集めいている有機修飾金属酸化物ナノ粒子を合成する技術並びにこうして得られた有機修飾金属酸化物微粒子、さらにはその利用・応用技術を提供するものである。本発明は、ある相挙動をなす反応場で水と有機物質が均一相を形成する点に着目した有機修飾法である。本手法の特徴を概念的且つ模式的に図6に示す。
本発明の修飾反応の反応場としては、好適には水の亜臨界あるいは水の臨界点またはそれを超える圧力及び/又は温度条件が挙げられる。図1には水の密度−温度・圧力依存性(図1左側)並びに水の誘電率−圧力依存性(図1右側)を示すが,そこからも明らかなごとく水の臨界点及びそれ以上の温度・圧力の領域を反応場とすると独特の反応環境を提供可能であることがわかる。また、図2には水の臨界点近傍での水−ガス2成分系の相挙動(図2左側)並びに水−有機溶媒系の相挙動(図2右側)を示すが、同様に、特徴的な均一相形成領域が存在することが明らかで、本発明の修飾反応に応用できることは明らかである。
ナノ粒子の利用にあたって使用しようとする溶剤や樹脂と親和性の高い官能基を該粒子に導入すれば、該溶剤や樹脂に高濃度で分散することが可能であり、優れている。
本発明では、超臨界領域を含む水熱合成の反応場でin-situ 表面改質を行うことで粒子径の制御を行うこともできる。
【0012】
本明細書中、用語「微粒子」とは、その平均粒子径が1 μm(1,000 nm)以下のサイズの
ものを指していてよいが, 好ましくはナノ粒子が挙げられる。該ナノ粒子は、一般的にはその平均粒子径が 200 nm 以下のサイズのものを指していてよいが, 好ましくは200 nm以下のサイズのものが挙げられる。ある場合には、該ナノ粒子は、その平均粒子径が100 nm
以下のサイズのもの、また別の場合にはその平均粒子径が50 nm 以下のサイズのものであってよい。また好適な場合には、該ナノ粒子は、その平均粒子径が20 nm 以下のサイズのもの、また別の場合にはその平均粒子径が10 nm 以下のサイズのものあるいは5 nm以下のサイズのものであってよい。また好適な場合には、該ナノ粒子の粒子サイズは均一なものが好ましいが、一定の割合でその粒子サイズの異なるものの混合しているものが好ましい場合もある。
粒子径の測定は当該分野で知られた方法によりそれを行うことができ, 例えば、TEM 、吸着法、光散乱法、SAXSなどにより測定できる。TEM では電子顕微鏡で観察するが、粒子径分布が広い場合には、視野内に入った粒子が全粒子を代表しているか否かに注意を払う必要がある。吸着法は、N2吸着などによりBET 表面積を評価するものである。
一般に、加水分解反応を利用して生成させた微粒子は、例えば、Fe(OH)3 のような水酸化物であり、高温ほどFeO(OH), Fe2O3へと平衡はシフトする。分子配列状態は、高温ほどランダムなアモルファス状態から整列した結晶状態へとシフトする。本発明の技術を利用すれば、高い結晶性のナノ粒子であって有機修飾されたものを得ることが可能である。
高い結晶性は, 電子回折法、電子顕微鏡写真の解析、エックス線回折、熱重量分析などにより確認できる。例えば、電子回折では、単結晶であれば回折干渉像としてドットがえられ、多結晶ではリング、そしてアモルファスではハローが得られる。電子顕微鏡写真では、単結晶であれば結晶面がしっかり出ており、粒子の上からさらに結晶が現れるような形状であれば、多結晶である。多結晶の一次粒子が小さく多くの粒子が凝集して二次粒子をつくっている場合球状になる。アモルファスであれば必ず球状である。エックス線回折では単結晶であればシャープなピークが得られる。Sherreの式を利用してX 線のピークの1/2 高さの幅から結晶子サイズを評価できる。該評価により得られた結晶子サイズが電子顕微鏡像から評価される粒子径と同一であれば、単結晶と評価される。熱重量分析では、熱天秤により、乾燥不活性ガス中で加熱すると、100℃付近で吸着していた水分の蒸発によ
る重量減少が、また、さらに250℃程度までで粒子内からの脱水による重量減少がみられ
る。有機物質を含む場合には、250〜400℃においてさらに大きな重量減少が観察される。本発明の技術で得られた粒子の場合、400℃まで昇温しても、結晶内部からの脱水による
重量減少は最大10% 以下であり、低温で合成された金属酸化物微粒子の場合と大きく異なる。かくして、本発明にしたがって得られる有機修飾金属酸化物微粒子の微粒子の特徴としては、高い結晶性、例えば、X 線回折でシャープなピークを有している、電子線回折でドットあるいはリングが観察される、熱重量分析で結晶水の脱水が乾粒子あたり10% 以下、及び/又は電子顕微鏡写真で一次粒子が結晶面を持っているなどが挙げられる。
【0013】
微粒子においては粒子径に関連して、表面エネルギーと重力、電場等の外部エネルギーとが拮抗する、すなわち、遠心力や重力沈降、電気泳動などで粒子を分離したり、分散操作を行う場合、粒子径が数100 nmサイズ以下となると大きな外場力を与えないと分散しない。50 nm 以下となると、表面エネルギーの影響がさらに大きくなり、表面性状を制御したり、溶媒の物性を制御するなどをしないと、外場エネルギーだけでは極めて困難となる。本発明の技術ではこの問題を解決可能である。
特に粒子の大きさを10 nm 以下とすると、量子状態の重なりがなくなり、また表面の電子状態の影響がバルク物性にも大きく影響する。そのため、バルクの粒子と全く異なる物性が得られること、すなわち量子サイズ効果(久保効果)が現れることがわかってきた。10
nm 程度以下のサイズの粒子では、特に全く異なる物質とも考えることができるが、本発明の技術では好適に該微細なナノ粒子を有機修飾可能である。
本発明における代表的な微粒子としては、金属酸化物を主要な粒子の構成としているものが挙げられ、以下これを「金属酸化物微粒子」と称する。
該金属酸化物微粒子に含まれる金属酸化物中の「金属」としては、典型的にはナノ粒子を製造することが可能なものであれば特に限定されず、当業者に知られたものから選択して使用できる。代表的な金属としては、長周期型周期表で第IIIB族のホウ素(B)-第IVB 族のケイ素(Si)-第VB族のヒ素(As)-第VIB 族のテルル(Te)の線を境界としてその線上にある
元素並びにその境界より、長周期型周期表において左側ないし下側にあるものが挙げられ、例えば、第VIII族の元素ではFe, Co, Ni, Ru, Rh, Pd, Os, Ir, Ptなど、第IB族の元素ではCu, Ag, Auなど、第IIB 族の元素ではZn, Cd, Hgなど、第IIIB族の元素ではB, Al, Ga, In, Tlなど、第IVB 族の元素ではSi, Ge, Sn, Pbなど、第VB族の元素ではAs, Sb, Bi
など、第VIB 族の元素ではTe, Poなど、そして第IA〜VIIA族の元素などが挙げられる。金属酸化物としては、Fe, Co, Ni, Cu, Ag, Au, Zn, Cd, Hg, Al, Ga, In, Tl, Si, Ge, Sn, Pb, Ti, Zr, Mn, Eu, Y, Nb, Ce, Ba などの酸化物が挙げられ、例えば、SiO2, TiO2, ZnO2, SnO2, Al2O3, MnO2, NiO, Eu2O3, Y2O3, Nb2O3, InO, ZnO, Fe2O3, Fe3O4, Co3O4,
ZrO2, CeO2, BaO ・6Fe2O3, Al5(Y+Tb)3O12, BaTiO3, LiCoO2, LiMn2O4, K2O・6TiO2, AlOOHなどが挙げられる。
【0014】
微粒子、特にナノ粒子の表面を有機修飾する場合には、高温高圧の条件を達成できる装置であれば特に限定されず、当該分野で当業者に広く知られている装置から選択して使用できるが、例えば、回分式装置、流通式装置のいずれをも使用できる。代表的なリアクターとしては、図3で示されるようなものが挙げられ、図5のような系を構成してよいが、必要に応じて適宜適切な反応装置を構成できる。
有機修飾剤としては、微粒子の表面に炭化水素を強結合せしめることのできるものであれば特には限定されず、有機化学の分野、無機材料分野、高分子化学の分野を含めてナノ粒子の応用が期待されている分野で広く知られている有機物質から選択することができる。該有機修飾剤としては、例えば、エーテル結合、エステル結合、N原子を介した結合、S原子を介した結合、金属−C−の結合、金属−C=の結合及び金属−(C=O)−の結合などの強結合を形成することを許容するものが挙げられる。該炭化水素としては、その炭素数は特に限定されず、炭素数1や2のものも使用できるが、本発明の特徴を生かす観点からは、炭素数3あるいはそれ以上の鎖を有する長鎖炭化水素であるものは好ましく、例えば、炭素数3〜20の直鎖又は分岐鎖、あるいは環状の炭化水素などが挙げられる。該炭化水素は、置換されていてもよいし、非置換のものであってもよい。該置換基としては、有機化学の分野、無機材料分野、高分子化学の分野などで広く知られた官能基の中から選択されたものであってよく、該置換基は1又はそれ以上が存在していてもよいし、複数の場合互いは同じでも異なっていてもよい。
有機修飾剤としては、例えば、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、エステル類、アミン類、チオール類、アミド類、オキシム類、ホスゲン、エナミン類、アミノ酸類、ペプチド類、糖類などが挙げられる。
代表的な修飾剤としては、例えば、ペンタノール、ペンタナール、ペンタン酸、ペンタンアミド、ペンタンチオール、ヘキサノール、ヘキサナール、ヘキサン酸、ヘキサンアミド、ヘキサンチオール、ヘプタノール、ヘプタナール、ヘプタン酸、ヘプタンアミド、ヘプタンチオール、オクタノール、オクタナール、オクタン酸、オクタンアミド、オクタンチオール、デカノール、デカナール、デカン酸、デカンアミド、デカンチオールなどが挙げられる。
上記炭化水素基としては,置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換されていてもよい環式アルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよい飽和又は不飽和の複素環式基などが挙げられる。置換基としては、例えば、カルボキシ基、シアノ基,ニトロ基、ハロゲン、エステル基、アミド基、ケトン基、ホルミル基、エーテル基、水酸基、アミノ基、スルホニル基、−O−、−NH−、−S−などが挙げられる。
【0015】
反応機構
水中では、一般に金属酸化物表面には水酸基が存在する。これは、以下の反応平衡によるものである。
MO + H2O = M(OH) (1)
一般に、本反応は発熱であり、高温側では平衡は左側にシフトする。また、用いた表面
修飾剤による反応は、以下の通りであり、脱水反応によるものである。
左向きの反応(逆反応)は、アルコキシド等の加水分解でよく知られる反応であり、室温付近でも水の添加により容易に生じる反応である。この逆反応は、一般に発熱反応であるから高温側では抑制され、右向きの反応がより有利となる。これは(1)式の金属水酸化物
の脱水反応の温度依存性と同様である。
また、生成物の水中での安定性は、右向きの反応(脱水)は、反応原系と比較して生成物の極性が低いため、溶媒の極性が低いほど有利となる。水の誘電率は、高温ほど低く、350
℃以下では誘電率は15以下に、特に臨界点近傍以上では誘電率は1-10程度と急激に低くなる。このため、通常の温度効果以上に脱水反応が加速されることとなる。
【0016】
M(OH) + ROH = M(OR) + H2O = M・R + 2H2O
M(OH) + RCOOH = M(OCOR) + H2O = MR + H2O + CO2
M(OH) + RCHO = M(OH)CR + H2O = MC=R + 2H2O, MCR + 2H2O, MR + H2 + CO2
M(OH) + RSH = MSR + H2O (還元)
(これらの式を(2) とする)
アミンによる水酸基の攻撃は、室温付近では強力な酸の共存下やClによる置換を介して進行することが知られているが、高温高圧水中ではOHとの交換が生じている。有機物質については、ヘキサンアミドとヘキサノール間でカルボン酸を触媒してヘキサノールのアミノ化が進行することは確認しているが、類似の反応が進行しているものと推察される。本手法の反応機構につき、その一部を例にとり模式的に図7に示す。
チオールの場合には、反応場で還元が生じる可能性が報告されており、金属酸化物表面で一部還元され、それによるチオール付加反応が生じたものと推察される。
【0017】
条件の設定方法
1)反応平衡
有機修飾の生じる反応条件については、金属種、修飾剤により異なるが、以下のように整理される。
すなわち、(1)式の平衡が右側にあり、(2)式以下の平衡が右側にある場合に、反応が進行する。それぞれの平衡が金属種、修飾剤により異なるために、最適な反応条件が異なる。温度を上げると、(2)式以下の平衡は、右にシフトし、特に350℃以上では急激に進行側にシフトするが、その一方で(1)式の平衡は左にシフトする。反応条件については(1)式および(2)式のDBを参考にする。
塩基や酸を共存させれば、金属酸化物の表面官能基をOHとすることが可能であるから、その条件下で修飾剤との脱水反応を進行させることが可能である。その場合、酸の存在下で脱水反応が生じやすいから、高温で若干の酸を共存させることで反応を進行させることができる。
【0018】
2)相平衡
比較的短鎖の炭化水素のアルコール、アルデヒド、カルボン酸、アミンであれば水に可溶であるので、例えば、メタノールによる金属酸化物の表面修飾等は可能である。しかし、より長鎖の炭化水素の場合には、水相と相分離するため、上記の反応平衡が進行側であったとしても、実際には水相にある金属酸化物と有機修飾剤は反応しない場合もある。すなわち、親油基の導入は比較的容易であるが、C3以上の長鎖の炭化水素を対象とする場合には、相挙動を考慮する必要がある。
炭化水素と水との相挙動については、すでに報告があり、それを参考とすることができる。一般に気液の臨界軌跡以上であれば、任意の割合で均一相を形成するから、そのような温度圧力条件を設定することで、良好な反応条件を設定できる。
また、最適な反応温度をより低温としたい場合には、水と有機物とを均一相とするための第3成分を共存させることも可能である。例えば、ヘキサノールと水との共存領域は、水と低温においても均一相を形成するエタノールやエチレングリコールの共存により、よ
り低温で形成させうることは公知である。それを利用して、金属酸化物と有機物質との反応を行わせることができる。ただし、この場合、第3成分による表面修飾反応が生じないように、第3成分の選択が重要となる。
以上、本手法によって、初めて、水中での長鎖の有機修飾が可能となる。
【0019】
水熱合成中でのin-situ表面修飾
上述のように(1)式の金属酸化物表面の水酸基生成と、(2)式以下の有機修飾反応の温度依存性は、逆方向にある。そのため、特に(1)式の反応が左側、すなわち脱水側にある場
合、修飾反応を生じさせるために、酸の共存等、反応条件の設定が極めて重要となるし、困難な場合もある。
それに対し、水熱合成in-situ表面修飾は、それを可能とする方法である。
水熱合成は、下記の反応経路で進行する。
Al(NO3)3+3H2O=Al(OH)3 +3HNO3
nAl(OH)3=nAlO(OH)+nH2O
nAlO(OH)=n/2Al2O3+n/2H2O
こうした反応経路で進行することは、他の金属種および硫酸塩、塩酸塩等を用いた場合も同様である。さらに水熱合成は例えば、図18に示すような装置を使用してそれを高温高圧の水を反応場として行うと、図18に示すようにより粒子径の微細な粒子とすることができるから、in-situ表面修飾技法ではより微細な有機修飾粒子を得ることが可能であること
は明らかであろう。また温度や圧力を調節することで, 粒子のサイズをコントロールできることも明らかであろう。
ここに示したように、最終的に脱水反応により表面から水酸基が脱水反応によって脱離したとしても、反応前駆体として生成物、あるいはその表面に多くの水酸基が生成する。この反応場に有機修飾剤が共存していれば、水酸基が存在する条件で反応を行わせることが可能である。また、反応場には、脱水反応を進行させるための触媒でもある酸が共存するため、修飾反応は加速される。これにより、酸化物に対して行うことができなかった表面修飾を行うことが可能となった。
【0020】
本発明の技術では、前駆体を一旦合成し、それを加水分解などにより金属酸化物、金属水酸化物を合成するなどという高温場を達成して酸化物への平衡を前提としたものでなく,さらにラジカル重合基質といった,例えば、酸化性物質、温度、光などに感受性のものを使用することなく、微粒子の表面を有機修飾できる。したがって、金属粒子や酸化還元状態の異なる粒子の有機修飾もできる。
本発明では水と有機物質とが均一相を形成するような相状態を使い、しかも、無機―有機複合物質合成を試みるものであり、数nmから50nm以下のサイズの、高結晶性の金属、金属酸化物ナノ粒子を合成しつつ、その表面を有機分子で修飾する。その際、高温高圧水熱合成法を用いることで、従来の課題であった、
1)高結晶性を持つナノ粒子合成を行いつつ表面有機修飾を行なう。
2)単一層の高分子膜を形成させる
ことが可能となり、
それにより、今まで工業的に課題であった
1)ナノ粒子を反応溶媒から回収
2)溶媒中に高濃度で長期間にわたり安定に分散保持
3)高分子と高濃度均一分散させ、
4)ナノ粒子を2次元配列させる
ことを可能とする。
【0021】
CVD法、PVD法、噴霧熱分解法、ゾルゲル法、逆ミセル法、ホットソープ法、超臨界水熱合成法等、様々なナノ粒子合成法が開発されている。しかし、ナノ粒子は、表面エネルギーが極めて高く、容易に凝集し、そのため本来のナノ粒子の物性が発現しないことが多い。
また、ナノ粒子を回収する方法も必要である。さらに、回収後も分散安定化させておく方法が必要である。また、利用する場合にも、樹脂やプラスチックス、溶剤に良分散させる必要がある。これらのニーズを満足させるためには、ナノ粒子の表面にそれぞれの目的に応じ、有機物質で表面修飾を行うことが必要である。望ましいのは、樹脂と同じ高分子、溶剤と同じ官能基を修飾することである。これらは、本発明により解決される。
ナノ粒子を表面修飾する手法は、いくつかの提案がある。しかし、従来の金属表面へのチオールの配位や、金属酸化物への界面活性剤の吸着のような弱い結合では、ナノサイズの粒子としたことで発現する、半導体特性や蛍光特性、発光特性、誘電特性等が失われる場合がある。金属あるいは金属酸化物と有機分子とを共有結合させることができれば、従来にはないナノ粒子の特性を引き出すことができる。例えば、BaTi03では、吸着法では、吸着層において誘電損失があらわれるが、共有結合分子ではそれが大幅に削減される。
共有結合を形成させて有機修飾を行う技術として、シランカップリング剤を用いる方法があるが、ナノ粒子表面にSi原子層ができてしまい、上記と同様ナノ粒子の半導体特性や蛍光特性、発光特性、誘電特性等が失われる場合がある。また、クロロ化合物を用いる官能基導入の方法もあるが、修飾反応条件下(高pH、低pH下)でナノ粒子が溶解するおそれも
ある。本発明によりこれらの問題が解決可能である。本発明によれば、高温高圧水熱合成法も使用でき、高結晶性ナノ粒子を合成しつつ、有機修飾が可能である。高温高圧の水熱合成場において、有機物質を共存させることで、金属酸化物粒子を合成させつつ、粒子表面と有機物質との均一相反応により、表面に有機物質が結合した強固な表面修飾をつくる。粒子径は、50nmサイズ以下も十分に可能であり、結晶性が極めて高い。高温高圧水では、有機物質とも均一相を形成する。そして, 生成粒子表面において、有機・無機結合が形成される。重合反応のようなそれ以外の反応は生じないため、1層のみの修飾が可能であ
る。そして表面修飾により、結晶成長は抑制され、ナノ粒子が合成できる。また、合成時に、in situ 高温熱処理効果が得られ、結晶性が高い。
本発明では,ナノ粒子合成の手段として有機無機複合体を前駆体として使用することも要求されるものでなく、その適用範囲が格段に優れている。
それによって、以下の効果が期待される。
【0022】
1) ナノ粒子を水相から回収することができる。
超臨界水中で合成したナノ粒子は、通常、水に懸濁している。しかし本発明の表面修飾法により、油相に移行せしめることを可能にし、水から完全に分離される。
ナノ粒子の回収は、極めて困難であった。凝集剤の添加や界面活性剤、吸着剤などを用いた方法が経験的に用いられてきたが、さらにそこからもナノ粒子を回収する技術が必要となったり、分散させたりするために、あらたな分散技術が必要となったりしていた。
本発明の手法によれば、そのような操作を必要とせず、そのまま粒子回収が可能である。2) ナノ粒子を有機溶媒に良分散できる。極高濃度分散も原理的に可能である。
親水性のチタニア粒子は、水に懸濁しているが、本発明の表面修飾により、水からクロロホルム相に移行した。
従来のように、表面修飾操作、界面活性剤による表面改質操作等を行わなくとも、結晶析出を行いつつ表面修飾が可能である。また、従来法では、修飾基の導入には制限があったが、任意の修飾基の導入が可能である。したがって、樹脂や溶剤に最も適した溶剤を選択できる。樹脂や溶剤と同じ分子を用いることで、究極の高濃度分散、溶媒、樹脂を用いない分散まで可能となる。
3) 被覆率を制御した表面修飾による界面配列
反応制御により、被覆率を低下させると、水と油の界面に配列することが観測された。よって、粒子回収のほか、本発明の手法を利用したナノ粒子配列が可能である。
4) 分散能の連続的な制御
水中に分散しているナノ粒子を本発明の手法で表面修飾することにより、水:エタノー
ル=50:50の溶液など適切な溶媒系を使用して簡単に沈殿させることが可能となる。表面修飾の程度を制御することで、沈殿が始まる濃度を連続的に変える事も可能となる。例えば
、具体的には図19に示すような現象を達成することができる。
5) 選択的認識能の呈示
お互いに化学結合を形成しない官能基で修飾したナノ粒子を作製したり、化学結合を形成する官能基で修飾したナノ粒子を作製することも可能であり、このような表面修飾により、お互いと結合する能力を付与することができると共に、本発明技術を利用したナノ粒子の高次構造形成が可能である。
【0023】
ナノ粒子は、例えば、SiO2が顔料、触媒担体、高温材料、ハニカム、耐食性材料などの用途に、Fe2O3 が顔料、磁性材料などの用途に、CeO2が研磨剤、触媒担体、イオン導電体、固体電解質などの用途に、TiO2が光触媒、顔料、化粧品などの用途に、Y2O3が顔料、触媒担体などの用途に、InO が透明導電体などの用途に、ZnO が螢光体材料、導電性材料、顔料、電子材料などの用途に、SiO2が触媒担体、ゼオライト、フィラー、ビーズなどの用途に、SnO2が導電性材料、導電体、センサーなどの用途に、Nb2O3 が磁性材料などの用途に、CuやAgやAlは電極、触媒材料などの用途に、Niは電極、磁性材料、触媒材料などの用途に、CoやFeは磁性材料、触媒材料などの用途に、Ag/Cu は電極、触媒材料などの用途に、さらにB4C, AlN, TiB2などは高温材料、高強度材料などの用途に応用される。
ナノ粒子やナノ粒子を特定の配列で有する薄膜はそれぞれ特有の優れた特性を示すことがみとめられている。例えば、ナノ粒子を単層配列したものでは、磁性ナノ粒子などのように緻密化充填を可能にし、近接場記憶素子として優れた機能を示すことが知られており、磁気テープなどに応用されて優れた特性を示し有用である。また,分散系パターンに配列されたものでは,例えば、ナノ蛍光体などでは,量子サイズ効果が得られることから、量子効果蛍光体、量子効果発光体、LSI高密度実装基盤などの製品を提供できる。チタニ
アなどのナノ粒子を多層同時配列したようなものでは、低光散乱や光触媒効果など優れた機能を示し、湿式光電変換素子、高機能光触媒コーティングなどとなる。粒子分散膜では、補強効果や難燃効果など優れた機能を持つものが提供でき、半導体封止剤などにできる。典型的なナノ粒子並びに微粒子とその調製法、そして粒子サイズについて、図4を参照して理解できよう。
【0024】
本発明にしたがって表面を有機修飾された微粒子(ナノ粒子を含む)は、ユーザーニーズに適合した粒子として機能する。例えば、半導体パッケージング用高濃度チタン酸バリウム分散樹脂、インクジェット用ナノ粒子分散インク、電池材料、触媒材料、潤滑剤などとして有用であり、それらは次のように調製できる。
半導体などの電子部品にはパッケージ外からの電気的外乱を除くために、高誘電率樹脂によるパッケージングが必要である。そのための方法としてチタン酸バリウム粒子分散熱硬化性樹脂が使用される。本半導体などのパッケージング用高濃度チタン酸バリウム分散樹脂においては、チタン酸バリウム粒子を高濃度分散することが求められていた。界面活性剤を用いた樹脂中へのチタバリ分散は可能であるが、界面での誘電損失が生じるという問題がある。本発明の有機修飾微粒子の製造技術を使用すれば、強結合表面修飾した粒子を合成でき、しかも、究極的には樹脂と同じモノマーを導入して、樹脂と無機材料が一体となった材料が合成できる。
ナノ粒子はその色合い、発色の良さ、耐久性など優れた物性を示すことから、ハイテク機器用のインク、例えば、インクジェット用ナノ粒子分散インクに利用する。ナノ粒子を分散させたインクによるインクジェットプリンターは、インクジェットによる配線、回路図等の作製に使用することが期待される。しかし、そのためにはそれに適したナノ粒子合成とその高濃度で溶剤に分散せしめることが必要である。本発明の有機修飾微粒子の製造技術によりインク溶剤と同じ高分子を有する粒子合成が可能となる。
【0025】
電池材料,例えば、Liイオン電池やキャパシタ材料などの電極材料は、炭素材料と混合して製品用材料化される。電池材料が炭素および溶剤と十分に分散する必要がある。一般には、分散剤を用いた処理が必要となるが、本発明の有機修飾微粒子の製造技術により分
散剤を一切用いずに溶剤とも均質分散する材料が合成できる。
担持金属触媒は、金属が持つ電子軌道が酸化物触媒と相互作用して電荷移動が生じることにより活性化する。そこで、ナノメートルオーダーで異種材料を混合できる本発明の有機修飾微粒子の製造技術を用いれば、金属と酸化物が接触する活性点を高密度に有する触媒の調製が可能となり、優れた触媒材料となる。
また、潤滑剤は固体間にはたらく摩擦を軽減するために用いられているが、ナノ粒子が潤滑剤に含まれることにより、ナノベアリングとして働くことが期待できる。具体的には、せん断力をベアリングの回転運動エネルギーに転化せしめて、もう一方の面にせん断力としてそれが伝達することを防ぐ。従来、潤滑剤としては有機高分子が用いられてきたが、本発明の有機修飾微粒子の製造技術によりこれに強固な構造を持つ酸化物ナノ粒子を分散することが可能となる。
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
【実施例1】
【0026】
〔金属酸化物微粒子の高温高圧水中での有機修飾〕
5ccの管型オートクレーブ(Tube Bomb Reactor)を用いて実験を行った。TiO2ナノ粒子0.1gを、純水2.5cc、ヘキサナール0.1ccとともに反応管に仕込んだ。あらかじめ、400℃に
設定した加熱炉に反応管を入れて加熱させた。純水と仮定した時の圧力は、390barである。昇温には、1.5minを要した。10min反応させた。反応管を冷水に投入することで反応を
停止させた。生成物の回収は、水洗浄とクロロホルム洗浄を2回繰り返して行った。回収した生成物を図8の右側に示す。ヘキサナールを用いなかった場合、回収された生成物は、図8の左側のように水に懸濁した状態である。これは親水基が生成しているためである。なお、反応させずに修飾剤を混合しただけではこのような顕著な差異は見られず、修飾基の物理吸着によるものではないことがわかる。また、得られた粒子のIRスペクトル測定によれば、表面の水酸基が減少し、Ti-O-R、Ti-(C=O)-R及びTi-Rの結合が見られた。以上により、反応による共有結合の形成が確認できた。
このように、高温高圧水を反応溶媒として用いれば、金属酸化物の表面修飾を行うことができる。
【実施例2】
【0027】
〔金属酸化物微粒子の高温高圧水中での有機修飾〕
実施例1と同様に、5ccの管型オートクレーブ(Tube Bomb Reactor)を用いて実験を行った。SiO2ナノ粒子0.1gを、純水2.5cc、ヘキシルアミン0.1ccとともに反応管に仕込んだ。あらかじめ、400℃に設定した加熱炉に反応管を入れて加熱させた。純水と仮定した時の
圧力は、390barである。昇温には、1.5minを要した。10min反応させた。反応管を冷水に
投入することで反応を停止させた。生成物の回収は、水洗浄とクロロホルム洗浄を2回繰り返して行った。ヘキシルアミンを用いなかった場合、回収された生成物は、実施例1と同様に水に懸濁した状態である。これは親水基が生成しているためである。それに対し、修飾を行った場合、クロロホルムと水との界面に粒子が集まった。このように、修飾が完全でなく、水にもクロロホルムにも十分な濡れ角が得られない場合、クロロホルム相へ移行せず、界面に集まることがわかった。高温高圧水中での制御された有機修飾により、界面への金属酸化物の収集の可能性を示している。なお、この場合にも、反応させずに修飾剤を混合しただけではこのような顕著な差異は見られず、修飾基の物理吸着によるものではないことがわかる。また、得られた粒子のIRスペクトル測定によれば、表面にCH2, CH3
のピークが見られた(図9)。以上により、反応による共有結合の形成が確認できた。
【実施例3】
【0028】
〔金属酸化物微粒子の高温高圧水中でのアミノ酸修飾〕
反応は、5ccの管型オートクレーブ(Tube Bomb Reactor)を用いた実験により行う。
SiO2ナノ粒子0.1gを、純水2.5cc、システイン100mgとともに反応管に仕込んむ。あらかじめ、400℃に設定した加熱炉に反応管を入れて加熱させる。純水と仮定した時の圧力は、390barである。昇温には、1.5minを要する。10min反応させる。反応管を冷水に投入することで反応を停止させる。回収された粒子は、水に完全に分散されており、また、反応前に懸濁した状態よりも、良分散している。これは、親水基の付与によりSiO2が凝集せず、より分散性がよくなることを示している。
実施例1,2と同様、反応させずに修飾剤を混合しただけではこのような顕著な差異は見られず、修飾基の物理吸着によるものではないことがわかる。また、得られた粒子のIRスペクトル測定によれば、COOH,NH2基が減少し、Si-N-RとSiO-(CO)Rの結合が表面に見られる。以上により、反応による共有結合の形成が確認できる。
【実施例4】
【0029】
〔酸を共存させた金属酸化物微粒子の高温高圧水中での有機修飾〕
反応は、5ccの管型オートクレーブ(Tube Bomb Reactor)を用いた実験により行った。
Al2O3ナノ粒子0.1gを、0.1MのH2SO4水溶液2.5cc、ヘキサナール0.1ccとともに反応管に仕込んだ。あらかじめ、400℃に設定した加熱炉に反応管を入れて加熱させた。純水と仮定
した時の圧力は、390barである。昇温には、1.5minを要した。10min反応させた。反応管
を冷水に投入することで反応を停止させた。生成物の回収は、水洗浄とクロロホルム洗浄を2回繰り返して行った。同様の実験をおこない、クロロホルムではなく、ヘキサノールで回収する実験も行った。
酸を加えず、純水を用いた場には、回収された生成物はクロロホルム相(下の相)の底に沈殿した状態である。これは表面処理実験を行わない場合と同様の結果となった。それに対し、酸を共存させて表面修飾を行うと、一部クロロホルム相に懸濁した状態となった。ヘキサノールで回収した場合、ヘキサノールに一部懸濁し、一部ヘキサノール(上の相)と水との界面に集まった。これは、酸を共存させたことで表面処理反応が進行することを示している。このように有機修飾が進行しにくい反応系についても、酸を共存させることで反応を進行させることが可能である。同様の実験を修飾が困難であったZnOについても行
い、上記と同様、酸の共存で修飾が可能であることを確認した。
【実施例5】
【0030】
〔金属酸化物微粒子の高温高圧水中での長鎖有機修飾〕
反応は、5ccの管型オートクレーブ(Tube Bomb Reactor)を用いた実験を行った。
SiO2ナノ粒子0.1gを、純水1.5cc、ドデカナール1ccとともに反応管に仕込んだ。あらかじめ、400℃に設定した加熱炉に反応管を入れて加熱させた。純水と仮定した時の圧力は、390barである。昇温には、1.5minを要した。10min反応させた。反応管を冷水に投入することで反応を停止させた。生成物の回収は、水洗浄とクロロホルム洗浄を2回繰り返して行った。同様の実験をヘキサナールでも行った。
ドデカナールを用いなかった場合、回収された生成物は、水に懸濁した状態であるが、それに対し、修飾を行った場合、400℃においてクロロホルムと水との界面に粒子が集まり
、修飾が達成されていたことを示している。ヘキサナールを用いた場合、300℃、400℃では反応は良好に進行したが、さらに200℃においても若干の反応の進行は確認できた。し
かし、ドデカナールを用いた場合、400℃においては良好な表面修飾は可能であったが、200℃では全く反応が進行しなかった。300℃においてもヘキサナールと比較して反応の進
行度は低かった。
アルカンー水系の相挙動については十分な報告例があり、ドデカンー水系の相挙動を参考
にすると、低温では不均一相を形成していたためと考えられる。
【実施例6】
【0031】
〔金属酸化物微粒子の高温高圧水中での有機修飾〕
5ccの管型オートクレーブ(Tube Bomb Reactor)を用いて反応を行うことで実験を行った。TiO2ナノ粒子 0.1g を、純水 2.5cc 、ヘキサン酸 0.1cc とともに反応管に仕込んだ。あらかじめ、400℃に設定した加熱炉に反応管を入れて加熱させた。純水と仮定した時の
圧力は、390barである。昇温には、1.5 min を要した。10 min 反応させた。反応管を冷
水に投入することで反応を停止させた。生成物の回収は、水洗浄とクロロホルム洗浄を2回繰り返して行った。回収した生成物を図10に示す。
ヘキサン酸を用いず、表面修飾を行わなかった場合、回収された生成物は、図10左のように水(上相)に懸濁した状態である。ところが、ヘキサン酸により表面修飾を行ったところ、ナノ粒子はクロロホルム相(下相)に移行した。これは、表面修飾を行わなかった場合、TiO2ナノ粒子表面には親水基(OH基)が生成しているのに対して、ヘキサン酸で表面修飾した結果、粒子表面に疎水基が導入されたことを示唆している。なお、反応させずに修飾剤を混合しただけではこのような顕著な差異は見られず、ここで得られた結果は修飾基の物理吸着によるものではないことがわかる。また、得られた粒子のIRスペクトル測定によれば、図11に示すように、CH3, CH2結合のピークが見られた。以上により、反応による共有結合の形成が確認できた。
このように、高温高圧水を反応溶媒として用いれば、金属酸化物の表面修飾を行うことができる。同様の結果は、ヘキサンアミドを用いた場合にも得られている。
【実施例7】
【0032】
〔金属酸化物微粒子の高温高圧水中でのアミノ酸による有機修飾〕
5ccの管型オートクレーブ(Tube Bomb Reactor)を用いて反応を行うことで実験を行った。TiO2ナノ粒子 0.1g を、純水 2.5cc 、アスパラギン酸 100mgとともに反応管に仕込ん
だ。あらかじめ、400℃に設定した加熱炉に反応管を入れて加熱させた。純水と仮定した
時の圧力は、390barである。昇温には、1.5 min を要した。10 min 反応させた。反応管
を冷水に投入することで反応を停止させた。回収された粒子は水に完全に分散されており、また、反応前に水に懸濁した状態(図12左側)よりも、良分散していた(図12右側)。これは親水基の付与により、TiO2が凝集せず、より分散性がよくなったことを示している。
実施例2や6と同様、反応させずに修飾剤を混合しただけではこのような顕著な差異は見られず、修飾基の物理吸着によるものではないことがわかる。また、得られた粒子のIRスペクトル測定によれば、COOH,NH2基が減少し、Ti-N-R、TiO-(CO)R及びTi-Rの結合が表面に見られた。以上により、反応による共有結合の形成が確認できた。
【実施例8】
【0033】
〔金属酸化物微粒子の高温高圧水中での長鎖炭化水素の有機修飾〕
5ccの管型オートクレーブ(Tube Bomb Reactor)を用いて反応を行うことで実験を行った。SiO2ナノ粒子 0.1g を、純水 1.5cc 、デカン酸 1cc とともに反応管に仕込んだ。あらかじめ、400℃に設定した加熱炉に反応管を入れて加熱させた。純水と仮定した時の圧力
は、390barである。昇温には、1.5 min を要した。10 min 反応させた。反応管を冷水に
投入することで反応を停止させた。生成物の回収は、水洗浄とヘキサデカン洗浄を2回繰り返して行った。回収した生成物を図13の右側に示す。デカン酸を用いなかった場合、回収された生成物は、水に懸濁した状態であるが、それに対し、修飾を行った場合、図13右側に示すようにヘキサデカン中に分散し、修飾が達成されていることを示している。
同様の実験をデカナール、デカンアミンについても行い、同様の結果が得られている。図13左側にデカンアミンでの有機修飾ナノ粒子の様子を示す。これらは、室温付近ではほとんど水に溶解しない長鎖の有機物質で表面修飾することが可能であることを示すものであ
る。
【実施例9】
【0034】
〔高温高圧水熱合成中でのin-situ有機修飾(1)〕
5ccの管型オートクレーブ(Tube Bomb Reactor)を用いて反応を行うことで実験を行った。0.01 Mol/l のMn(NO3)2水溶液に過酸化水素を 0.05 Mol/l となるように加え、それを
反応管に 2.5 g仕込み、さらに、ヘキサノールを 0.1 cc 仕込んだ。あらかじめ、400℃
に設定した加熱炉に反応管を入れて加熱させた。純水と仮定した時の圧力は、390barである。昇温には、1.5 min を要した。10 min 反応させ、生成物を回収した。回収した生成
物を図14に示す。ヘキサノールを用いなかった場合、回収された生成物は、図14 a) のように水に懸濁した状態であり、これは、親水基が生成しているためである。それに対し、修飾を行ったところ、図14 b) のように、水相から完全に分離した状態となった。
一般に、水溶液中で生成したナノ粒子を水相から回収するのは、技術的に困難であるが、本手法により、水溶液からの分離・回収が容易に行うことができる。また、予め生成させた金属酸化物へのヘキサノール修飾は容易ではないが、in-situ 表面修飾により酸化物ナノ粒子表面への有機修飾が可能であることを示している。
【実施例10】
【0035】
〔高温高圧水熱合成中でのin-situ有機修飾(2)〕
5ccの管型オートクレーブ(Tube Bomb Reactor)を用いて反応を行うことで実験を行った。0.01 Mol/l のZn(NO3)2水溶液に過酸化水素を 0.05 Mol/l となるように加え、それを
反応管に 2.5 g仕込み、さらに、ヘキサノールを 0.1 cc 仕込んだ。あらかじめ、400℃
に設定した加熱炉に反応管を入れて加熱させた。純水と仮定した時の圧力は、390barである。昇温には、1.5 min を要した。10 min 反応させ、生成物を回収した。ヘキサノール
を用いなかった場合、回収された生成物は、水に懸濁した状態であり、これは、親水基が生成しているためである。それに対し、修飾を行ったところ、水相から完全に分離した状態となった。Zn(NO3)2のほか、Zn(COOH)2も用いて同様に行った。
いずれの場合にも、実施例4にも示したように、ZnOに対しては、良好な修飾が酸を共
存させなければ困難であった。しかし、本手法によれば、in-situ での表面修飾が可能であることを示している。特に蟻酸塩の場合には、生成する酸がHCOOHであるが、高温場でH2+CO2に分解することがわかっており、酸として機能しない。にもかかわらず、良好な表
面修飾が達成できたことは、結晶生成初期の水酸基OHと有機修飾剤との脱水反応が良好に進行しているためと考えられる。
本手法によって得られた、粒子のTEM写真を図15に示す。図15において表面修飾を行わ
なかった場合(上側)と比較して表面修飾さでたもの(下側)は均一な微粒子であることが観察された。表面修飾を行うことで、粒子成長が抑制され、微粒子が得られていることがわかる。
【実施例11】
【0036】
〔高温高圧水熱合成中でのin-situ有機修飾(3)〕
5ccの管型オートクレーブ(Tube Bomb Reactor)を用いて反応を行うことで実験を行った。0.01 Mol/l のMn(NO3)2水溶液に過酸化水素を 0.1 Mol/lとなるように加え、それを反
応管に 2.5 g仕込み、さらに、ヘキサノールを 0.1cc 仕込んだ。あらかじめ、400℃に設定した加熱炉に反応管を入れて加熱させた。純水と仮定した時の圧力は、390barである。昇温には、1.5 min を要した。10 min 反応させ、生成物を回収した。回収した生成物を
図16 b) に示す。ヘキサノールを用いなかった場合、回収された生成物は、図16 a) のように水に懸濁した状態であり、これは、親水基が生成しているためである。それに対し、修飾を行ったところ、水相から完全に分離した状態となった。
【実施例12】
【0037】
〔高温高圧水熱合成中でのin-situ有機修飾(4)〕
5ccの管型オートクレーブ(Tube Bomb Reactor)を用いて反応を行うことで実験を行った。0.01 Mol/l のCe(NO3)2水溶液に過酸化水素を 0.1 Mol/lとなるように加え、それを反
応管に 2.5 g仕込み、さらに、ヘキサン酸を 0.1cc 仕込んだ。あらかじめ、200, 300及
び400℃に設定した加熱炉に反応管を入れて加熱させた。純水と仮定した時の圧力は、390barである。昇温には、1.5 min を要した。10 min 反応させ、生成物を回収した。回収した生成物を図17に示す。ヘキサン酸を用いなかった場合、回収された生成物は、図17 a) のように水に懸濁した状態であり、これは、親水基が生成しているためである。200℃で
は処理は進行しなかったが(図17 b))、300 及び400℃では図17 c) 及び d) のように、水相から完全に分離した状態となった。
水に不溶であるヘキサン酸を用いて修飾を行うときに、200℃という低温では水と均一
層を形成しないため、処理が進行しないが、300℃や400℃では処理が進行することから、水の誘電率が減少し、修飾剤と均一相を形成することが可能である。また反応が十分に進行しうる高温域において処理することが必須となるケースが存在することを示している。
【実施例13】
【0038】
〔高温高圧水熱合成中でのin-situ有機修飾(5)〕
実施例9〜12と同様な手法により、Fe2O3, NiO, ZnO, Co2O3について、ヘキサノール、ヘキサン酸、ヘキシルアミン、ヘキサナール、ヘキサンチオール共存下で反応を行った。得られた結果をまとめて表1〜4に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
上記の表中それぞれの表記は次を意味する: None: 修飾剤なし, W: 水相, Int.: 水相と
有機相の間の界面相, O: 有機相, a little: 少し存在, little: ほんの僅か, w: 若干の
振動で界面から水相へ, o: 若干の振動で界面から油相へ, more: より多く存在, thick layer: 厚い層, thin layer: 薄い層, white: 白色, black: 黒色, red: 赤色, green: 緑色, yellow: 黄色, brown: 褐色, gray: 灰色, NP: ナノ粒子, L: 境界面相の厚さで、添字は処理温度を示す, S: 有機相中のNPの溶解性を示し、添字は処理温度を示す。
全体として比較した結果を表5に示す。
【0044】
【表5】

【0045】
ZnOについても同様に表面修飾処理された。表面修飾の効果は十分に得られている。し
かし、ヘキサノールの場合、いずれにおいても必ずしも十分な表面修飾が得られているとはいえなかった。
そこでin-situ有機修飾を行った。実験方法は実施例8及び9と同様にして行った。す
なわち、5ccの管型オートクレーブ(Tube Bomb Reactor)を用いて反応を行うことで実験を
行った。0.01 Mol/l のZn(NO3)2水溶液に過酸化水素を 0.1 Mol/lとなるように加え、そ
れを反応管に 2.5 g仕込み、さらに、ヘキサノールを 0.1cc 仕込んだ。あらかじめ、200, 300及び400℃に設定した加熱炉に反応管を入れて加熱させた。純水と仮定した時の圧力は、390barである。昇温には、1.5 min を要した。10 min 反応させ、生成物を回収した
。ヘキサノールを用いなかった場合、回収された生成物は、水と油相に懸濁した状態であったが、ヘキサノールを用いた表面修飾により、粒子は油相に移行している。十分な表面修飾効果が得られている。
このように、一旦生成された粒子では表面修飾が十分に行い得ない場合でも、in situで
の表面修飾により十分な表面修飾を行うことができることが示されている。
ZnO, CeO2, Al2O3, SnO2, SiO2のナノ粒子につき、同様に表面修飾処理して得られた結果をまとめて表6及び7に示す。表6は各金属酸化物微粒子の表面修飾の結果の比較を示すもので、表7はin situ修飾の結果を示す。表中,〇印は有機相への粒子の移行が認め
られたものを示し,×印は明確には有機相への粒子の移行が認められていないものを示す。△は有機修飾が不十分ながらも進行したことを示す。
【0046】
【表6】

【0047】
【表7】

【0048】
表1〜7までをそれぞれ比較するとわかるように、ZnO, CeO2, TiO2 等においても同様のin situ表面修飾効果が得られている。
【実施例14】
【0049】
〔高温高圧水熱合成中でのin-situ有機修飾(6)〕
実施例8及び9と同様の手法により、Fe2O3, Co2O3, NiO, ZnO, TiO2合成を、ヘキサノール、ヘキサン酸、ヘキシルアミン、ヘキサナール、ヘキサンチオール共存下で反応を行った。得られた結果をまとめて表7に示す。表面修飾剤を用いなかった場合を基準として、表面修飾の効果の大きさを1〜10の指標で表した。
【0050】
【表8】

【0051】
上記の表より、表面修飾反応の進行の度合いは、温度だけでなく、反応物質によっても異なっていることがわかった。これは、表面修飾を行わない場合においても、ZnO, NiOのように水に分散し親水基を十分に有している場合と、TiO2のように油相に分散し親水基が少ない場合とがあり、したがって、粒子生成の場でin situで表面修飾を行う場合におい
ても、粒子表面の官能基の安定性や反応性が異なるためである。また、アルデヒド修飾の場合やアミン修飾の場合、400℃よりも300℃の方が良好な表面修飾が得られている場合もある。これらの結果は高温場で加水分解反応が生じているためである。すなわち、最適条件としては、300℃〜400℃が挙げられ、高温にすぎると逆反応の影響が現れるものと考え
られる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、微粒子の表面に炭化水素を強結合せしめてある有機修飾微粒子(特にはナノ粒子)、特には有機修飾金属酸化物微粒子並びにその製造法,さらにはナノ粒子などの微粒子の回収又は収集法を提供しており、様々な特有の優れた性状・特性・機能を示すナノ粒子をセラミックスのナノ構造改質材、光機能コーティング材、電磁波遮蔽材料、二次電池用材料、蛍光材料、電子部品材料、磁気記録材料、研摩材料などの産業・工業材料、医薬品・化粧品材料として利用することを促進する。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかであ
る。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】左側の図は、圧力及び温度と水の密度との関係を示し、右側の図は、水の誘電率と圧力及び温度との関係を示す。
【図2】水の臨界点近傍での水−ガス二成分系の相挙動(左側)並びに水−有機溶媒系の相挙動(右側)を示す。
【図3】有機修飾に利用される典型的な反応器を示す。
【図4】利用を図ることが求められる典型的なナノ粒子をその代表的な製造法及び粒子サイズと共に示す。
【図5】本発明の有機修飾に利用される代表的な反応系装置の構成を示す。
【図6】本発明の有機修飾法の特徴を模式的に示す。
【図7】本発明の修飾反応の機構を模式的に示す。
【図8】本発明の手法で金属酸化物微粒子(TiO2ナノ粒子) をヘキサナールで表面修飾した場合(右側)と未修飾の粒子(左側)を比較して示す。
【図9】本発明の手法で金属酸化物微粒子(SiO2 ナノ粒子) をヘキシルアミンで表面修飾した場合の修飾された粒子のIRスペクトルを示す。
【図10】本発明の手法で金属酸化物微粒子(TiO2 ナノ粒子) をヘキサン酸で表面修飾した場合(右側)と未修飾の粒子(左側)を比較して示す。
【図11】本発明の手法で金属酸化物微粒子(TiO2 ナノ粒子) をヘキサン酸で表面修飾した場合の修飾された粒子のIRスペクトルを示す。
【図12】本発明の手法で金属酸化物微粒子(TiO2 ナノ粒子) をアスパラギン酸で表面修飾した場合(右側)と未修飾の粒子(左側)を比較して示す。
【図13】本発明の手法で金属酸化物微粒子(SiO2 ナノ粒子) をデカン酸で表面修飾した場合(右側)とデカンアミンで表面修飾した場合(左側)を比較して示す。
【図14】本発明の手法で金属酸化物微粒子を水熱合成し、その表面をヘキサノール共存下in-situ有機修飾した場合(右側)と未修飾の粒子(左側)を比較して示す。
【図15】本発明の手法で有機修飾された金属酸化物微粒子(下側)のTEM写真を未修飾の粒子(上側)と比較して示す。
【図16】本発明の手法で金属酸化物微粒子を水熱合成し、その表面をヘキサノール共存下in-situ有機修飾した場合(右側)と未修飾の粒子(左側)を比較して示す。
【図17】本発明の手法で金属酸化物微粒子(CeO2ナノ粒子) を処理温度を変えてin-situ有機修飾した結果を示す。
【図18】亜臨界や超臨界などの高温高圧の水を反応場として水熱合成を実施して微粒子を合成する場合の典型的な装置構成と各条件で得られる粒子のサイズとの関係を示す。
【図19】本発明の手法で有機修飾された金属酸化物微粒子が溶媒との親和性を調整することにより、媒質に対する特有の分散性などの性状が現れることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機修飾微粒子であって、微粒子の表面に炭化水素を強結合せしめてあることを特徴とする有機修飾微粒子。
【請求項2】
金属酸化物微粒子の表面に炭化水素を強結合せしめてあり、有機修飾微粒子が有機修飾金属酸化物微粒子であることを特徴とする請求項1記載の微粒子。
【請求項3】
微粒子の平均径が、100 nmあるいはそれ以下であることを特徴とする請求項1記載の微粒子。
【請求項4】
微粒子の平均径が、50 nm あるいはそれ以下であることを特徴とする請求項1記載の微粒子。
【請求項5】
微粒子の平均径が、20 nm あるいはそれ以下であることを特徴とする請求項1記載の微粒子。
【請求項6】
微粒子の平均径が、10 nm あるいはそれ以下であることを特徴とする請求項1記載の微粒子。
【請求項7】
微粒子の平均径が、5 nmあるいはそれ以下であることを特徴とする請求項1記載の微粒子。
【請求項8】
炭化水素が炭素数1、2、3あるいはそれ以上の鎖を有する長鎖炭化水素であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一記載の微粒子。
【請求項9】
強結合が、エーテル結合、エステル結合、N原子を介した結合、S原子を介した結合、金属−C−の結合、金属−C=の結合及び金属−(C=O)−の結合からなる群から選ばれたものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一記載の微粒子。
【請求項10】
有機修飾において、粒子の表面の被覆割合が調節されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一記載の微粒子。
【請求項11】
高温高圧水を反応場として微粒子の表面に炭化水素を強結合せしめてあることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一記載の微粒子。
【請求項12】
超臨界又は亜臨界条件にある水を反応場として微粒子の表面に炭化水素を強結合せしめてあることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一記載の微粒子。
【請求項13】
親水性基を含む有機表面修飾により、水溶液に良分散せしめた金属酸化物微粒子を製造することを特徴とする微粒子の製造法。
【請求項14】
超臨界水熱合成法における反応場で、有機修飾剤を共存させて金属酸化物微粒子を製造することを特徴とする有機修飾金属酸化物微粒子の製造法。
【請求項15】
生成粒子の粒径をより小粒子径に調整することを特徴とする請求項14記載の製造法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−282503(P2006−282503A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107820(P2006−107820)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【分割の表示】特願2005−9538(P2005−9538)の分割
【原出願日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【出願人】(899000035)株式会社 東北テクノアーチ (68)
【Fターム(参考)】