説明

有機光電素子及びその製造方法

【課題】有機光電素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】第1の電極と、第1の電極上に形成された能動層と、能動層上に形成された第2の中間層と、第2の中間層上に形成された第2の電極と、を備え、第2の中間層が、第2の重合体と第2の有機化合物とを含有した第2の混合物を含み、且つ第2の有機化合物が、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子ブロッキング材料及び正孔ブロッキング材料からなる群から選択される。本発明に係る有機光電素子は、溶液製造工程により製造されてなるものであり、製造工程の簡略化、薄膜成膜性の改善及び素子効率の向上に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光電素子に関し、より詳しくは、重合体と有機化合物とを含有した混合物を含む中間層を備える有機光電素子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光電素子として、例えば発光ダイオード、太陽電池及び光検出器は、いずれも材料自体の光学性又は電気的特性を利用して電磁輻射又は電流を生成するものである。
【0003】
有機光検出器を例にすれば、有機光検出器は感光性素子を利用して光信号を電気信号に変換するものである。具体的には、有機光検出器における有機感光性材料が電磁輻射を吸収した後、励起された分子状態、即ち電子正孔対(electron−hole pair)の励起子(exciton)が生成され、当該電子正孔対が分離した場合、いわゆる光電流が生成される。
【0004】
好ましい素子特性を達成するためには、通常、キャリアの輸送又はキャリアのブロッキングとして機能する異なる層が必要である。例えば、特許文献1には重合体材料を電子輸送層又は正孔ブロッキング層とすることが開示されている。ただし、重合体については、鎖長の異なる重合された分子を複数含んでいるため、同じ構造の繰り返し単位(repeating unit)を有した混合物と見なすことができる。当該重合体自体を例えばキャリアの輸送に用いたり、ないしは能動層とする場合には、化合物の構造の複雑度により素子性能の制御が難しくなることがある。また、非特許文献1には重合体と低分子量材料とを含有してなる能動層が開示されているが、当該重合体はエネルギーの変換に用いられているため、前述した問題が存在している。また、当該定期刊行物に開示されたキャリア輸送層は、低分子量材料の蒸着により得られたものであるため、大面積素子の製造に不利であり、コストがかかることとなる。
【0005】
従って、製造工程が簡単でかつ大寸法の光電素子を容易に製造するための方法、及び、素子効率を向上させるとともに、コストを低減する有機光電素子を提供することが課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第98/20565号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Advanced Functional Materials,16,611(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、以上のとおりの事情に鑑み、本発明は、重合体と有機化合物とを含有した混合物を含む中間層を備える有機光電素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、素子効率を向上させる有機光電素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、有機発光素子を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、有機光検出装置を提供することを目的とする。
またさらに、本発明は、有機太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る有機光電素子は、第1の電極と、第1の電極上に形成された能動層と、能動層上に形成され、第1の電極との間に能動層が介在された第2の中間層と、第2の中間層上に形成され、能動層との間に第2の中間層が介在された第2の電極と、を備え、第2の中間層が、第2の重合体と第2の有機化合物とを含有した第2の混合物を含み、且つ第2の有機化合物が、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子ブロッキング材料及び正孔ブロッキング材料から選択される。
【0010】
一つの態様として、本発明では、本発明に係る有機光電素子を使用した有機発光素子がさらに提供されている。
【0011】
また一つの態様として、本発明では、本発明に係る有機光電素子と、当該有機光電素子に電気的に接続された電流検出素子とを備えた有機光検出装置がさらに提供されている。
【0012】
さらにまた一つの態様として、本発明では、本発明に係る有機光電素子により電磁輻射を吸収することで電流を生成する有機太陽電池がさらに提供されている。
【0013】
また、本発明に係る有機光電素子の製造方法は、第1の電極を提供する工程と、第1の溶剤に溶解された、第1の重合体と第1の有機化合物とを含む第1の混合物を前記第1の電極上に用いることで第1の中間層を形成する工程と、前記第1の溶剤を除去した後、前記第1の中間層の表面に能動層を形成する工程と、前記能動層の表面に第2の電極を形成し、前記能動層を前記第1の中間層と前記第2の電極との間に介在させた工程と、を備え、前記第1の有機化合物が、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子ブロッキング材料及び正孔ブロッキング材料から選択される。
【0014】
この方法に基づいて形成された有機光電素子は、第1の電極と、第1の電極上に形成された第1の中間層と、第1の中間層上に形成され、第1の電極との間に第1の中間層が介在された能動層と、能動層上に形成され、第1の電極との間に能動層が介在された第2の電極と、を備え、第1の中間層が、第1の重合体と第1の有機化合物とを含有した第1の混合物を含み、且つ第1の有機化合物が、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子ブロッキング材料及び正孔ブロッキング材料から選択される。
【0015】
他の態様として、本発明に係る有機光電素子の製造方法は、第1の電極を提供する工程と、前記第1の電極の表面に能動層を形成する工程と、第2の溶剤に溶解された、第2の重合体と第2の有機化合物とを含む第2の混合物を前記能動層上に用いることで第2の中間層を形成し、前記能動層を前記第2の中間層と前記第1の電極との間に介在させた工程と、前記第2の溶剤を除去した後、前記第2の中間層の表面に第2の電極を形成し、前記第2の中間層を前記能動層と前記第2の電極との間に介在させた工程と、を備え、前記第2の有機化合物が、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子ブロッキング材料及び正孔ブロッキング材料から選択される。
【0016】
本発明は、有機化合物の光電特性と重合体の成膜性との組み合わせにより、本発明に係る有機光電素子を溶液製造工程により製造し、製造工程の簡略化、素子効率の向上を図るものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る一例及び他の例の有機光電素子の断面を模式的に示した図である。
【図2】本発明に係る他の有機光電素子の断面を模式的に示した図である。
【図3】有機発光素子の電圧及び電流密度を示した図である。
【図4】TPBiを正孔ブロッキング材料とする有機発光素子の電圧及び電流効率の比較を示した図である。
【図5】PBDを正孔ブロッキング材料とする有機発光素子の電圧及び電流効率の比較を示した図である。
【図6】塗布成膜により製造された素子及び蒸着成膜により製造された素子の電流効率比較を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
下記において特定の具体的な実施例により本発明の実施形態を説明する。この技術分野に精通した者であれば、本明細書に記載の内容によって、容易に本発明のその他の利点や効果が理解できる。
【0019】
従来、有機光電素子は所要の層、例えばキャリア輸送層を真空蒸着してなるものであるため、大寸法素子の製造には困難がともなう。この問題を解決するために、本発明に係る有機光電素子の製造方法は、第1の電極を提供する工程と、第1の溶剤に溶解された、第1の重合体と第1の有機化合物とを含む第1の混合物を前記第1の電極上に用いることで第1の中間層を形成する工程と、前記第1の溶剤を除去した後、前記第1の中間層の表面に能動層を形成する工程と、前記能動層の表面に第2の電極を形成し、前記能動層を前記第1の中間層と前記第2の電極との間に介在させた工程と、を備え、且つ前記第1の有機化合物が、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子ブロッキング材料及び正孔ブロッキング材料から選択される。
【0020】
また、他の態様として、本発明に係る有機光電素子の製造方法は、第1の電極を提供する工程と、前記第1の電極の表面に能動層を形成する工程と、第2の溶剤に溶解された、第2の重合体と第2の有機化合物とを含む第2の混合物を前記能動層上に用いることで第2の中間層を形成し、前記能動層を前記第2の中間層と前記第1の電極との間に介在させた工程と、前記第2の溶剤を除去した後、前記第2の中間層の表面に第2の電極を形成し、前記第2の中間層を前記能動層と前記第2の電極との間に介在させた工程と、を備え、且つ前記第2の有機化合物が、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子ブロッキング材料及び正孔ブロッキング材料から選択される。
【0021】
本発明では、第1の溶剤は、第1の重合体及び/又は第1の有機化合物を溶解可能な溶剤から選択される。好ましくは、第1の溶剤は第1の重合体及び第1の有機化合物を溶解可能な溶剤から選択される。より好ましくは、第1の重合体及び第1の有機化合物は互いに溶解可能である。また、有機化合物を溶解するための溶剤を選択し、溶剤の特性に応じて当該溶剤に溶解された重合体を選択してもよい。
【0022】
本発明に係る方法では、第1の電極が陽極で、第2の電極が陰極であれば、第1の中間層は正孔輸送層又は電子ブロッキング層として用いられ、かつ本発明に係る重合体が成膜性質用のものであり、有機化合物が光電性質用のものであるため、第1の中間層が正孔輸送層として用いられた場合には、有機化合物が正孔輸送材料を選択し、第1の中間層が電子ブロッキング層として用いられた場合には、有機化合物が電子ブロッキング材料を選択する。
【0023】
同様に、第2の中間層が電子輸送層又は正孔ブロッキング層として用いられた場合には、有機化合物が電子輸送材料又は正孔ブロッキング材料から選択される。
【0024】
本発明の能動層は、いずれの適当な材料又は方法で製造してもよい。例えば、低分子量の材料を使用した場合は、真空蒸着法により薄膜層を形成することができるが、重合体材料を使用した場合は、溶液製造工程により大面積の薄膜を製造することができる。本発明では、好ましくは重合体材料により能動層を製造する。また、溶液製造工程においては、第1の中間層を破壊しない溶剤又は製造方法を選択する。
【0025】
他の態様として、本発明に係る有機光電素子の製造方法は、第2の電極を形成する前に、第2の溶剤に溶解された、第2の重合体と第2の有機化合物とを含む第2の混合物を前記能動層の表面に用いることで第2の中間層を形成することにより、前記第2の溶剤を除去した後、前記第2の中間層の表面に第2の電極を形成し、前記第2の中間層を前記能動層と前記第2の電極との間に介在させた工程をさらに備え、且つ前記第2の有機化合物が正孔輸送材料、電子輸送材料、電子ブロッキング材料及び正孔ブロッキング材料から選択される。前記第2の溶剤は、前記能動層の材質と互いに溶解しない溶剤から選択され、能動層の薄膜が破壊され所要の光電性能に影響が及ぶことを回避する。例えば、ある正孔ブロッキング層はアルコール系溶剤に溶解するが、能動層がアルコール系溶剤に溶解しない場合、アルコール系溶剤と互いに溶解可能な重合体、例えばポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)等から選択されてよいが、それらに限定されるものではない。これにより正孔ブロッキング層として用いられた有機化合物は成膜のための重合体と互いに溶解可能な溶液となる。また、能動層がアルコール系溶剤に溶解しないため、中間層が形成された場合に、予め形成された能動層又はその他の層を破壊することはない。これに加えて、独特な製造工程、例えばブレード塗布方法により、能動層を破壊することのないいずれの溶剤でも中間層を形成してよい。
【0026】
本発明に係る方法では、第1の中間層は第1の混合物を塗布により前記第1の電極上に塗布することで形成されたものである。同様に、第2の中間層も、第2の混合物を塗布により前記能動層の表面に塗布することで所要の薄膜が形成されるものである。塗布の実施例は、スピンコーティング又はブレード塗布等でよいが、これらに限定されるものではない。
【0027】
図1(A)に示すように、本発明に係る方法によれば、本発明に係る有機光電素子10は、第1の電極110と、第1の電極110上に形成された第1の中間層130と、第1の中間層130上に形成され、第1の電極110との間に第1の中間層130が介在された能動層150と、能動層150上に形成され、第1の中間層130との間に能動層150が介在された第2の電極170と、を備え、第1の中間層130が第1の重合体と第1の有機化合物とを含有した第1の混合物を含み、且つ第1の有機化合物が正孔輸送材料、電子輸送材料、電子ブロッキング材料及び正孔ブロッキング材料からなる群から選択される。
【0028】
さらに、図1(B)に示すように、本発明に係る有機光電素子10’は、第1の電極110と、第1の電極110上に形成された能動層150と、能動層150上に形成され、第1の電極110との間に能動層150が介在された第2の中間層190と、第2の中間層190上に形成され、能動層150との間に第2の中間層190が介在された第2の電極170と、を備え、第2の中間層190が第2の重合体と第2の有機化合物とを含有した第2の混合物を含み、且つ第2の有機化合物が正孔輸送材料、電子輸送材料、電子ブロッキング材料及び正孔ブロッキング材料からなる群から選択される。
【0029】
図2は本発明に係る他の態様の有機光電素子20を示す。第1の中間層130のほかに、有機光電素子20は、能動層150と第2の電極170との間に形成された第2の中間層290をさらに備え、第2の中間層290が第2の重合体と第2の有機化合物とを含有した第2の混合物を含み、且つ第2の有機化合物が正孔輸送材料、電子輸送材料、電子ブロッキング材料及び正孔ブロッキング材料からなる群から選択され、第2の有機化合物が第1の有機化合物と異なるようにする。
【0030】
本発明では、電極は金属又は金属代替物を含んでよい。金属とは金属元素を除く材料又は金属合金を含む材料を含むことを指す。このうち、金属合金は2種又は2種以上の金属の材料を含む。金属代替物とは類金属性質を有する材料、例えばドープされた半導体又は酸化インジウム錫(indium tin oxide,ITO)といった透明の導電酸化物であって、従来の一般の金属ではない。通常、酸化インジウム錫(以下ITOと略称)は陽極として用いられる。陰極は、通常、一層の金属と、例えばカルシウム/アルミニウム、カルシウム/銀、バリウム/銀等の2層の金属とから構成されてもよいが、2層又は2層以上の金属塩類を金属と組み合わせてもよい。例えばフッ化リチウム/アルミニウム、フッ化リチウム/カルシウム/アルミニウム、フッ化セシウム/アルミニウム等の組み合わせにより、当該金属塩を能動層又は中間層と陰極との間に介在させてもよい。
【0031】
第1の中間層と第2の中間層とを有する本発明の具体的な実施例においては、第1の中間層が正孔輸送層であれば、第2の中間層は電子輸送層又は正孔ブロッキング層である。また、第1の中間層が電子ブロッキング層であれば、第2の中間層は電子輸送層又は正孔ブロッキング層である。この具体的な実施例において、第1の中間層が正孔輸送層又は電子ブロッキング層として、又は第2の中間層が電子輸送層又は正孔ブロッキング層として用いられた場合、第1の電極は陽極で、第2の電極は陰極である。一方、第1の中間層は、正孔輸送層及び電子ブロッキング層等の2つのサブ層(sub−layers)を同時に、若しくは電子輸送層及び正孔ブロッキング層を同時に含んでもよい。例えば、複数のサブ層を有する態様において、第1の中間層は、正孔輸送の補助や表面の修飾に用い且つ陽極に接触させるために、一層のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/ポリ(スチレンスルホン酸))(略称PEDOT/PSS)を含んでもよいが、その他のサブ層は、本発明に記載のように重合体と有機化合物とを有する正孔輸送層又は電子ブロッキング層であってもよい。
【0032】
本発明に係る有機光電素子の具体的な実施例においては、特に重合体の実施例を制限するものではなく、成膜性質を有する重合体であれば好適な材料である。通常、重合体(第1の重合体と第2の重合体とを含む)の数平均分子量は1000〜5,000,000である。
【0033】
一方、本発明に係る有機光電素子に用いられる有機化合物とは、低分子量の材料をいい、例えば、分子量は50〜1000である。第1及び第2の中間層を有する有機光電素子において、第1及び第2の有機化合物の分子量は、いずれも50〜1000であるのが好ましい。
【0034】
また、通常、本発明の重合体は、成膜性を有し且つ光電性質を有しない材料のみを使用するが、所属する技術分野において通常知識を有する者が本発明を参酌した後、光電性質を有する重合体を選択してもよい。具体的には、第1の重合体は正孔輸送材料、電子輸送材料、電子ブロッキング材料又は正孔ブロッキング材料から選択される。また、第2の中間層を有する有機光電素子において、第1の重合体は正孔輸送材料又は電子ブロッキング材料、第2の重合体は電子輸送材料又は正孔ブロッキング材料から選択されてもよい。
【0035】
本発明に係る有機光電素子の中間層に所要の性能を付与させるためには、中間層に含まれた有機化合物の含有量も極めて重要である。例えば、一層の中間層を有する有機光電素子において、第1の重合体と第1の有機化合物とを含む第1の混合物の重量に対しては、第1の有機化合物の含有量は30〜95wt%である。好ましくは、第1の有機化合物の含有量は、50〜90wt%である。同様に、第2の中間層を有する有機光電素子において、第2の混合物の重量に対しては、第2の有機化合物の含有量は30〜95wt%である。好ましくは、第2の有機化合物の含有量は、50〜90wt%である。
【0036】
より具体的には、図3に示すように、具体的な実施例において、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(以下PBDと略称)を有機化合物とし、かつポリビニルピロリドン(PVP)の重合体を基質として、有機化合物を含有した基質を塗布により陽極と陰極との間に成膜させ、素子を作成し、その電流密度を測定する。本発明では約30wt%のPBDを使用すれば所要の電流密度を達成することができる。有機化合物の含有量は50wt%以上であるのが好ましいが、70wt%であるのがより好ましい。一方、成膜性質を考慮すれば、有機化合物の含有量は95wt%より小さいのが好ましいが、90wt%以下であるのがより好ましい。さらに、PBDを有機化合物とする実施例を図3に示しているが、異なる有機化合物を使用した実施例において、いずれも類似した電流密度や成膜性を有している。また、ここで述べた数値範囲はいずれも上下限度の数値を含み、且つ任意の組み合わせの数値範囲であってもよい。
【実施例】
【0037】
以下、有機発光素子の実施例を用いて本発明を説明するが、各層に用いられた材料、厚さ及び濃度によって、本発明の範囲が制限されるものではない。
【0038】
本発明の1つの実施例において、素子の操作電圧、電流密度及び電流効率を濃度比の異なる正孔輸送材料で測定する。
【0039】
(実施例1)
本発明に係る第1の実施例において、第1の電極は陽極である。有機化合物は、1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン(以下TPBiと略称)を正孔ブロッキング材料及び第2の中間層として選択し、第2の中間層の重合体は、数平均分子量が約1,000,000であるポリメチルメタクリレート(以下PMMAと略称)から選択される。能動層は、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)(以下ポリフルオレン又はPFOと略称)から選択される。第2の電極は陰極である。実施の工程は以下の通りである。
【0040】
厚さが0.7nmであるガラス基板上に150nmのITOを第1の電極(陽極)として形成した後、能動層として前記第1の電極上に厚さが80nmであるPFOを熱蒸着(その他の重合体材料を選択し溶液製造工程により薄膜を形成してもよい)により蒸着させ、そして、重量30mg及び70mgのPMMA及びTPBiをトルエンに溶解させ、PMMA及びTPBiを溶解した第2の混合物をブレード塗布により前記能動層上に塗布する。前記溶剤は能動層の材料と互いに溶解しないため、前記第2の混合物が能動層を破壊することはない。その後、50℃の真空環境において溶剤を1時間ベーキングして除去することにより第2の中間層を得て、最後に厚さが100nmであるアルミニウム第2の電極(陰極)を熱蒸着により形成する。
【0041】
(比較例1)
実施例1の方法を繰り返すが、前記第2の中間層はTPBiのみを蒸着により能動層上に蒸着することにより形成する。
【0042】
厚さが0.7nmであるガラス基板上に150nmのITOを第1の電極(陽極)として形成した後、能動層として前記第1の電極上に厚さが60nmであるPFOを熱蒸着(その他の重合体材料を選択し溶液製造工程(スピンコーティングなど)により薄膜を形成してもよい)により蒸着させ、そして、TPBiを能動層上に蒸着することにより第2の中間層を形成し、最後に厚さが2nmであるフッ化セシウム及び100nmのアルミニウム第2の電極(陰極)を熱蒸着により形成する。
【0043】
図4に示すように、重合体と有機化合物とを含む本発明に係る発光素子は、比較例1において正孔ブロッキング層を蒸着により形成した素子に相当する電流効率を有している。また、正孔ブロッキングを含まない素子と比較して、本発明に係る実施例1の発光素子はより高い電流効率を有している。
【0044】
(実施例2)
実施例1の方法を繰り返すが、前記第2の中間層の有機化合物は代わりにPBDを正孔ブロッキング材料とし、第2の中間層の重合体は数平均分子量が360,000であるポリビニルピロリドン(PVP)、ポリフルオレン(PFO)を能動層の材料として選択する。
【0045】
厚さが0.7nmであるガラス基板上に150nmのITOを第1の電極(陽極)として形成した後、能動層として前記第1の電極上に厚さが60nmであるPFOをスピンコーティング(その他の重合体材料を選択し溶液製造工程により薄膜を形成してもよい)により塗布し、そして、重量50mg及び50mgのPVP及びPBDを10mlのノーマルブタノール(normal−butanol)に溶解させ、PVP及びPBDを溶解した第2の混合物を前記能動層上にスピンコーティングにより塗布する。前記溶剤は能動層の材料と互いに溶解しないため、前記第2の混合物が能動層を破壊することはない。その後、50℃の真空環境において溶剤を30分ベーキングして除去することにより第2の中間層を得て、最後に厚さが2nmであるフッ化セシウム及び100nmのアルミニウム第2の電極(陰極)を熱蒸着により形成する。
【0046】
(比較例2)
厚さが0.7nmであるガラス基板上に150nmのITOを第1の電極(陽極)として形成した後、能動層として前記第1の電極上に厚さが60nmであるPFOをスピンコーティングにより塗布し、最後に厚さが100nmであるアルミニウム第2の電極(陰極)を熱蒸着により形成する。
【0047】
(比較例3)
実施例2の方法を繰り返すが、前記第2の中間層はPBDのみを能動層上に蒸着することにより第2の中間層を形成する。
【0048】
厚さが0.7nmであるガラス基板上に150nmのITOを第1の電極(陽極)として形成した後、能動層として前記第1の電極上に厚さが60nmであるPFOをスピンコーティングにより塗布し、そしてPBDを能動層上に蒸着することにより第2の中間層を形成し、最後に厚さが100nmであるアルミニウム第2の電極(陰極)を熱蒸着により形成する。
【0049】
図5に示すように、比較例2の単層の有機発光素子と比較して、本発明に係る重合体と有機化合物とを有する有機発光素子では電流効率が2倍に向上している。一方、図6に示すように、本発明に係る重合体と有機化合物とを有する有機発光素子の電流効率は、比較例3における単にPBDを第1の中間層とする有機発光素子に相当する。
【0050】
上記のように、これらの実施例は本発明の原理および効果・機能を例示的に説明するものであり、本発明は、これらによって限定されるものではない。本発明に係る実質的な技術内容は、下記の特許請求の範囲に定義される。本発明は、この技術分野に精通した者により本発明の特許請求の範囲を逸脱しない範囲で色々な修飾や変更をすることが可能であり、そうした修飾や変更は本発明の技術範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0051】
10、10’、20 有機光電素子
110 第1の電極
130 第1の中間層
150 能動層
170 第2の電極
190、290 第2の中間層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機光電素子であって、
第1の電極と、
前記第1の電極上に形成された能動層と、
前記能動層上に形成され、前記第1の電極との間に前記能動層が介在された第2の中間層と、
前記第2の中間層上に形成され、前記能動層との間に前記第2の中間層が介在された第2の電極と、を備え、
前記第2の中間層が、第2の重合体と第2の有機化合物とを含有した第2の混合物を含み、且つ前記第2の有機化合物が、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子ブロッキング材料及び正孔ブロッキング材料からなる群から選択されることを特徴とする有機光電素子。
【請求項2】
前記能動層と前記第1の電極との間に形成された第1の中間層をさらに備え、前記第1の中間層が、第1の重合体と第1の有機化合物とを含有した第1の混合物を含み、且つ前記第1の有機化合物が、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子ブロッキング材料及び正孔ブロッキング材料からなる群から選択され、前記第2の有機化合物が前記第1の有機化合物と異なるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の有機光電素子。
【請求項3】
前記第1の中間層が正孔輸送層であり、且つ前記第2の中間層が電子輸送層又は正孔ブロッキング層であることを特徴とする請求項2に記載の有機光電素子。
【請求項4】
前記第1の中間層が電子ブロッキング層であり、前記第2の中間層が電子輸送層又は正孔ブロッキング層であることを特徴とする請求項2に記載の有機光電素子。
【請求項5】
前記第2の重合体の数平均分子量が1000〜5,000,000であることを特徴とする請求項1に記載の有機光電素子。
【請求項6】
前記第1の重合体及び前記第2の重合体の数平均分子量がいずれも1000〜5,000,000であることを特徴とする請求項2に記載の有機光電素子。
【請求項7】
前記第1の有機化合物の分子量が50〜1000であることを特徴とする請求項1に記載の有機光電素子。
【請求項8】
前記第1の有機化合物及び第2の有機化合物の分子量がいずれも50〜1000であることを特徴とする請求項2に記載の有機光電素子。
【請求項9】
前記第1の重合体が正孔輸送材料、電子輸送材料、電子ブロッキング材料又は正孔ブロッキング材料から選択されることを特徴とする請求項1に記載の有機光電素子。
【請求項10】
前記第1の重合体が正孔輸送材料又は電子ブロッキング材料から選択され、前記第2の重合体が正孔ブロッキング材料又は電子輸送材料から選択されることを特徴とする請求項2に記載の有機光電素子。
【請求項11】
前記第1の電極が陽極であり、前記第2の電極が陰極であることを特徴とする請求項3又は4に記載の有機光電素子。
【請求項12】
前記第1の混合物の重量に対して、前記第1の有機化合物の含有量が30〜95wt%であることを特徴とする請求項1に記載の有機光電素子。
【請求項13】
前記第2の混合物の重量に対して、前記第2の有機化合物の含有量が30〜95wt%であることを特徴とする請求項2に記載の有機光電素子。
【請求項14】
有機光電素子であって、
第1の電極と、
前記第1の電極上に形成された第1の中間層と、
前記第1の中間層上に形成され、前記第1の電極との間に前記第1の中間層が介在された能動層と、
前記能動層上に形成され、前記第1の中間層との間に前記能動層が介在された第2の電極と、を備え、
前記第1の中間層が第1の重合体と第1の有機化合物とを含有した第1の混合物を含み、且つ前記第1の有機化合物が正孔輸送材料、電子輸送材料、電子ブロッキング材料又は正孔ブロッキング材料から選択され、前記第1の混合物の重量に対して、前記第1の有機化合物の含有量が30〜95wt%であることを特徴とする有機光電素子。
【請求項15】
請求項1〜14の何れかに記載の有機光電素子を用いたことを特徴とする有機発光素子。
【請求項16】
請求項1〜14の何れかに記載の有機光電素子を用いたことを特徴とする光検出装置。
【請求項17】
請求項1〜14の何れかに記載の有機光電素子を用いたことを特徴とする太陽電池。
【請求項18】
有機光電素子の製造方法であって、
第1の電極を提供する工程と、
第1の溶剤に溶解された、第1の重合体と第1の有機化合物とを含む第1の混合物を前記第1の電極上に用いることで第1の中間層を形成する工程と、
前記第1の溶剤を除去した後、前記第1の中間層の表面に能動層を形成する工程と、
前記能動層の表面に第2の電極を形成し、前記能動層を前記第1の中間層と前記第2の電極との間に介在させた工程と、を備え、
前記第1の有機化合物が、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子ブロッキング材料及び正孔ブロッキング材料からなる群から選択されることを特徴とする有機光電素子の製造方法。
【請求項19】
第2の電極を形成する前に、第2の溶剤に溶解された、第2の重合体と第2の有機化合物とを含む第2の混合物を前記能動層の表面に用いることで第2の中間層を形成することにより、前記第2の溶剤を除去した後、前記第2の中間層の表面に第2の電極を形成し、前記第2の中間層を前記能動層と前記第2の電極との間に介在させた工程をさらに備え、
前記第2の有機化合物が正孔輸送材料、電子輸送材料、電子ブロッキング材料又は正孔ブロッキング材料から選択されることを特徴とする請求項18に記載の有機光電素子の製造方法。
【請求項20】
前記第2の溶剤が、前記能動層の材質と互いに溶解しないことを特徴とする請求項19に記載の有機光電素子の製造方法。
【請求項21】
第1の混合物を塗布により前記第1の電極上に塗布することにより第1の中間層を形成することを特徴とする請求項18に記載の有機光電素子の製造方法。
【請求項22】
第2の混合物を塗布により前記能動層の表面に塗布することにより第2の中間層を形成することを特徴とする請求項19に記載の有機光電素子の製造方法。
【請求項23】
有機光電素子の製造方法であって、
第1の電極を提供する工程と、
前記第1の電極の表面に能動層を形成する工程と、
第2の溶剤に溶解された、第2の重合体と第2の有機化合物とを含む第2の混合物を前記能動層上に用いることで第2の中間層を形成し、前記能動層を前記第2の中間層と前記第1の電極との間に介在させた工程と、
前記第2の溶剤を除去した後、前記第2の中間層の表面に第2の電極を形成し、前記第2の中間層を前記能動層と前記第2の電極との間に介在させた工程と、
前記第2の有機化合物が、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子ブロッキング材料及び正孔ブロッキング材料からなる群から選択されることを特徴とする有機光電素子の製造方法。
【請求項24】
前記第2の溶剤が、前記能動層の材質と互いに溶解しないことを特徴とする請求項23に記載の有機光電素子の製造方法。
【請求項25】
前記第2の混合物を塗布により前記能動層の表面に塗布することにより第2の中間層を形成することを特徴とする請求項24に記載の有機光電素子の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−135716(P2010−135716A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41465(P2009−41465)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(598139748)國立交通大學 (92)
【Fターム(参考)】