説明

有機化合物

【課題】本発明は、再狭窄およびアテローム性動脈硬化症を処置するための、PDGF受容体チロシンキナーゼ活性阻害剤を含んでなる全身投与用医薬組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決するため、ナノ粒子技術によるPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の細胞内送達が、再狭窄、アテローム性動脈硬化血管疾患および原発性肺高血圧のような血管平滑筋細胞増殖性疾患に対する有利な治療戦略を示すことを見いだした。したがって、PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤を、PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤を含むナノ粒子、とりわけ遊離形または薬学的に許容される塩形の式I


(記号および置換基は明細書中に定義の通り)のN-フェニル-2-ピリミジン-アミン誘導体を含むナノ粒子とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体チロシンキナーゼ阻害剤を含むナノ粒子、とりわけ式I(記号および置換基は下記の意味を有する)のN-フェニル-2-ピリミジン-アミン誘導体の遊離形または薬学的に許容される塩形を含むナノ粒子;生物吸収可能な重合ナノ粒子での、イマチニブのようなPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の細胞内送達;血管平滑筋細胞増殖性疾患の処置用医薬組成物の製造におけるナノ粒子の使用;血管平滑筋細胞増殖性疾患を有する温血動物(ヒトを含む)の処置法;かかるナノ粒子の製造方法;かかるナノ粒子を含む医薬組成物;および血管平滑筋細胞増殖性疾患の予防および処置のための、かかるナノ粒子を組み込まれた薬剤送達システムに関連する。
【背景技術】
【0002】
血管平滑筋細胞(SMC)および単球によって発現されたPDGFは、実験動物における再狭窄およびアテローム性動脈硬化血管疾患の病因の中心的役割を果たす(Myllarniemi Mら、Cardiovasc Drugs Ther. 1999年;13巻:159-68.)。冠動脈のまたは周囲の血管流量を制限するまたは遮断するアテローム性動脈硬化障害は、環状心臓病および卒中を含む罹患率および死亡率に関係する虚血性疾患の主な原因である。多数の有機化合物がPDGF受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害することが知られている。特に、式IのN-フェニル-2-ピリミジンアミン誘導体の一つのメシル酸塩(以下参照)、メシル酸イマチニブ(Gleevec(商標))は、かかるPDGF受容体チロシンキナーゼ活性を阻害するその能力について既知である。この阻害効果を考慮して、現在メシル酸イマチニブは、悪性神経膠腫についての臨床試験で評価されている(Radford, I. R., Curr. Opin. Investig. Drugs, 3巻: 492-499, 2002年)。しかし、再狭窄に対するイマチニブの全身投与の有益な効果は、D. ZohlnhoferらによるJ Am Coll Cardiol. 2005年;46巻:1999-2003で報告された臨床試験において発見されなかった。
【特許文献1】米国特許出願第5,521,184号
【特許文献2】国際公開第99/03854号公報
【特許文献3】国際公開第03/066613号公報
【特許文献4】国際公開第98/35958号公報
【特許文献5】米国特許出願第5,093,330号
【非特許文献1】Myllarniemi Mら、Cardiovasc Drugs Ther. 1999年;13巻:159-68
【非特許文献2】Radford, I. R., Curr. Opin. Investig. Drugs, 3巻: 492-499, 2002年
【非特許文献3】J Am Coll Cardiol. 2005年;46巻:1999-2003
【非特許文献4】Schwam S. J.ら, Kidney Int. 36巻: 707-711, 1989年
【非特許文献5】Feldman H. I., J. Am. Soc. Nephrol. 7巻: 523-535, 1996年
【非特許文献6】Ecclestonら (1995年) Interventional Cardiology Monitor 1:33-40-41
【非特許文献7】Slepian, N.J. (1996年) Intervente. Cardiol. 1:103-116
【非特許文献8】Regar E, Sianos G, Serruys PW.ステント発達および局所医薬送達、Br Med Bull 2001年,59:227-48
【非特許文献9】Ono H,Ichiki T,ら Arterioscler Thromb Vasc Biol.2004年;24:1634-9
【発明の開示】
【0003】
驚くべきことに、本発明においてナノ粒子技術によるPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の細胞内送達が、再狭窄、アテローム性動脈硬化血管疾患および原発性肺高血圧のような血管平滑筋細胞増殖性疾患に対する有利な治療戦略を示すことを見いだした。
【0004】
したがって、本発明はPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤を含むナノ粒子、とりわけ遊離形または薬学的に許容される塩形の式I(記号および置換基は下記の意味を有する)のN-フェニル-2-ピリミジン-アミン誘導体を含むナノ粒子(以下、本発明のナノ粒子と称する)に関する。
【0005】
好ましい態様において、本発明は、式I
【化1】

〔式中、
R1は4-ピラジニル;1-メチル-1H-ピロリル;アミノ-またはアミノ-低級アルキル-置換フェニル(ただし、前記アミノ基はそれぞれの場合で、遊離、アルキル化またはアシル化されている);五員環炭素原子で結合した1H-インドリルまたは1H-イミダゾリル;または、環炭素原子で結合し、かつ窒素原子上で酸素により置換されたまたは非置換されていない低級アルキル-置換、または非置換または非置換のピリジルであり;
R2およびR3はそれぞれ互いに独立して水素または低級アルキルであり;
R4、R5、R6、R7およびR8の1個または2個は、それぞれニトロ、フルオロ-置換低級アルコキシまたは式II
【化2】

[式中、
R9は水素または低級アルキルであり、
Xはオキソ、チオ、イミノ、N-低級アルキル-イミノ、ヒドロキシイミノまたはO-低級アルキル-ヒドロキシイミノであり、
Yは酸素またはNH基であり、
nは0または1であり、そして
R10は少なくとも5つの炭素原子を有する脂肪族基、または芳香族、芳香族-脂肪族、環状脂肪族、環状脂肪族-脂肪族、ヘテロ環またはヘテロ環-脂肪族基である]
であり、そして
残りのR4、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ互いに独立して水素、遊離もしくはアルキル化アミノ、ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニルもしくはモルホリニルによって置換された、または置換されていない低級アルキル、または低級アルカノイル、トリフルオロメチル、遊離、エーテル化もしくはエステル化ヒドロキシ、遊離、アルキル化もしくはアシル化アミノまたは遊離またはエステル化カルボキシである〕
のN-フェニル-2-ピリミジン-アミン誘導体、または、少なくとも一個の塩形成基を有するかかる化合物の塩を含むナノ粒子に関する。
【0006】
1-メチル-1H-ピロリルは、好ましくは1-メチル-1H-ピロール-2−イルまたは1-メチル-1H-ピロール-3−イルである。
【0007】
アミノ-またはアミノ-低級アルキル-置換フェニルR(式中、前記アミノ基はそれぞれの場合にで、遊離、アルキル化またはアシル化されている)は、所望の位置(オルト、メタまたはパラ)のいずれかでフェニル置換されており、ここで、アルキル化アミノ基は好ましくはモノ-またはジ-低級アルキルアミノ、例えばジメチルアミノであり、そしてアミノ-低級アルキルの低級アルキル部分は好ましくはとりわけメチルまたはエチルのような直鎖C-C3アルキルである。
【0008】
五員環炭素原子で結合した1H-インドリルが1H-インドル-2−イルまたは1Hインドル-3−イルである。
【0009】
非置換であるか、または、環炭素原子で結合した低級アルキル-置換ピリジルは、低級アルキル-置換、または、好ましくは非置換2-、4-、または好ましくは3-ピリジル、例えば3-ピリジル、2-メチル-3-ピリジルまたは4-メチル-3-ピリジルである。酸素によって窒素原子で置換されたピリジルは、ピリジンN-オキシドから誘導される基、すなわちN-オキシド-ピリジルである。
【0010】
フルオロ-置換低級アルコキシは少なくとも一個、しかし好ましくは複数のフルオロ置換基を担持する低級アルコキシ、とりわけトリフルオロメトキシまたは1,1,2,2-テトラフルオロ-エトキシである。
【0011】
Xがオキソ、チオ、イミノ、N-低級アルキル-イミノ、ヒドロキシイミノまたはO-低級アルキル-ヒドロキシイミノである場合、C=X基は、上記の順番で、それぞれ、C=O、C=S、C=N-H、C=N-低級アルキル、C=N-OHまたはC=N-O-低級アルキル基である。Xは好ましくはオキソである。
nは好ましくは0であり、すなわちY基は存在しない。
存在する場合、Yは好ましくはNH基である。
【0012】
“低級”なる語は、本明細書の範囲内において、7個までの、好ましくは4個までの炭素原子を有する基を意味する。
低級アルキルR、R2、R3およびR9は好ましくはメチルまたはエチルである。
【0013】
少なくとも5個の炭素原子を有する脂肪族基R10は、好ましくは22個以下、一般的に10個以下の炭素原子を有し、そして、置換または好ましくは非置換脂肪族炭化水素基、すなわち、置換または好ましくは非置換アルキニル、アルケニルまたは好ましくは、C5-C7アルキル、例えばn-ペンチルのようなアルキル基である。芳香族基R10は、20個までの炭素原子を有し、そして非置換であるかまたは置換された、例えばそれぞれの場合で、置換されていない、または、とりわけ2-ナフチルのような置換されたナフチル、または好ましくはフェニルであり、前記置換基は好ましくは、シアノ、非置換またはヒドロキシ-、アミノ-または4-メチル-ピペラジニル-置換低級アルキル、例えばとりわけメチル、トリフルオロメチル、遊離、エーテル化もしくはエステル化ヒドロキシ、遊離、アルキル化もしくはアシル化アミノおよび、遊離またはエステル化カルボキシから選択される。芳香族性-脂肪族基R10において、芳香族性基は上記定義の通りであり、そして脂肪族基は、好ましくは低級アルキル、例えばとりわけC-C2アルキルであり、これは置換されたまたは好ましくは非置換であり、例えば、ベンジルである。環状脂肪族基R10は、とりわけ30個まで、さらにとりわけ20個まで、および、最もとりわけ10個までの炭素原子を有し、単-または多-環式であり、そして、置換または好ましくは非置換であり、例えば、シクロアルキル基のような、とりわけ5-または6員シクロアルキル基のような、好ましくはシクロヘキシルである。環状脂肪族-脂肪族R10基において、環状脂肪族基は上記定義の通りであり、脂肪族基は好ましくは低級アルキル、例えばとりわけC-C2アルキルのであり、これは置換されたか、または、好ましくは置換されていない。ヘテロ環式基R10は、とりわけ20個までの炭素原子を含み、そして好ましくは、5または6個の環員ならびに、好ましくは、窒素、酸素および硫黄から選択された1-3ヘテロ原子を有する飽和または不飽和単環式基、とりわけ、例えばチエニル、または、2-、3-もしくは4-ピリジル、または、二-もしくは三-環式基であり、ここで、例えば、一個または二個のベンゼン基が上記単環式基にアニール(縮合)している。ヘテロ環式-脂肪族基R10において、ヘテロ環式基は上記定義の通りであり、そして脂肪族基は好ましくは低級アルキル、例えばとりわけC1-C2アルキルであり、これは置換されているかまたは好ましくは非置換である。
【0014】
エーテル化ヒドロキシは好ましくは低級アルコキシである。エステル化ヒドロキシは、好ましくは、低級アルカン酸のような有機カルボン酸、またはハロゲン化水素酸のような無機酸、例えば低級アルカノイルオキシ、または、とりわけヨウ素、臭素、または、とりわけフッ素または塩素のようなハロゲンでエステル化されたヒドロキシである。
【0015】
アルキル化アミノは、例えば、メチルアミノのような低級アルキルアミノ、または、ジメチルアミノのようなジ-低級アルキルアミノである。アシル化アミノは、例えば、低級アルカノイルアミノまたはベンゾイルアミノである。
エステル化されたカルボキシは例えば、メトキシカルボニルのような低級アルコキシカルボニルである。
【0016】
置換フェニル基は、5個までのフッ素のような置換基を担持し得るが、とりわけ、比較的大きな置換基の場合、一般的に1−3個の置換基からのみで置換される。特に記載され得る置換フェニルの例は、4クロロ-フェニル、ペンタフルオロ-フェニル、2-カルボキシ-フェニル、2-メトキシ-フェニル、4-フルオロ-フェニル、4シアノ-フェニルおよび、4-メチル-フェニルである。
【0017】
式Iの化合物の塩形成基は、塩基または酸の性質を有する基またはラジカルである。少なくとも一つの塩基または、少なくとも一つの塩基ラジカル、例えば遊離アミノ基、ピラジニル基もしくはピリジル基を有する化合物は、例えば塩酸、硫酸もしくはリン酸のような無機酸、または適当な有機カルボン酸またはスルホン酸、例えばトリフルオロ酢酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、ヒドロキシマレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸もしくはシュウ酸のような脂肪族モノ-またはジ-カルボン酸、または、アルギニンもしくはリシンのようなアミノ酸、安息香酸、2-フェノキシ-安息香酸、2-アセトキシ-安息香酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸のような芳香族性カルボン酸、マンデル酸もしくはケイ皮酸のような芳香族性-脂肪族カルボン酸、ニコチン酸もしくはイソニコチン酸のようなヘテロ芳香族性カルボン酸、メタン-、エタン-もしくは2-ヒドロキシエタン-スルホン酸のような脂肪族スルホン酸、または芳香族性スルホン酸、例えばベンゼン-、p-トルエン-もしくはナフタレン-2-スルホン酸との酸付加塩を形成し得る。複数の塩基性基が存在するとき、モノ-またはポリ-酸付加塩を形成し得る。
【0018】
酸性基、例えば基R10における遊離カルボキシ基を有する式Iの化合物は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウムもしくはカルシウム塩のような金属塩またはアンモニウム塩、あるいはアンモニアもしくは第三級モノアミン、例えば、トリエチル-アミンもしくはトリ-(2-ヒドロキシエチル)-アミン、または、ヘテロ環式塩基、例えばN-エチル-ピペリジンもしくはN,N’-ジメチル-ピペラジンのような、適当な有機アミンとのアンモニウム塩を形成し得る。
【0019】
好ましくは、式I
〔式中、R4、R5、R6、R7およびR8基の一個または二個がそれぞれニトロまたは式II
[式中、
R9が水素または低級アルキルであり、
Xがオキソ、チオ、イミノ、N-低級アルキル-イミノ、ヒドロキシイミノまたはO-低級アルキル-ヒドロキシイミノであり、
Yが酸素またはNH基であり、
nが0または1であり、そして
R10が少なくとも5個の炭素原子を有する脂肪族基、または芳香族、芳香族-脂肪族、環状脂肪族、環状脂肪族-脂肪族、ヘテロ環またはヘテロ環-脂肪族基である]
の基であり、そして
および残るR4、R5、R6、R7およびR8がそれぞれ互いに独立して水素、遊離もしくはアルキル化アミノ、ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニルもしくはモルホリニルによって置換された、または弛緩されていない低級アルキル、または低級アルカノイル、トリフルオロメチル、遊離、エーテル化もしくはエステル化ヒドロキシ、遊離、アルキル化もしくはアシル化アミノまたは遊離もしくはエステル化カルボキシであり、そして
残る置換基が上記定義の通りである〕
のN-フェニル-2-ピリミジン-アミン誘導体を含むナノ粒子である。
【0020】
好ましくは、式I
〔式中
R1が炭素原子と結合したピリジルであり、
R2、R3、R5、R6およびR8がそれぞれ水素であり、
R4が低級アルキルであり、
R7が式II
[式中
R9が水素であり、
Xがオキソであり、
nが0であり、そして
R10が4-メチル-ピペラジニル-メチルである]
の基である〕
のN-フェニル-2-ピリミジン-アミン誘導体を含む上記全てのナノ粒子である。
【0021】
好ましくは{イマチニブまたはN-{5-[4-(4-メチル-ピペラジノ-メチル)-ベンゾイルアミド]-2-メチルフェニル}-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミンとしても知られる}STI571である式IのN-フェニル-2-ピリミジンアミン誘導体を含む上記全てのナノ粒子である。
【0022】
さらに好ましくは、イマチニブはモノメシル酸塩の形態で使用される。モノメシル酸イマチニブは非常に水溶性である(約100−150g/100ml、20℃)。それゆえ、本発明はさらに非常に水溶性な、とりわけ20℃で約2.5g/100mlから約250g/100mlの間、さらに好ましくは約5g/100mlから約175g/100mlの間、もっとも好ましくは約75g/100mlから約150g/100mの間の水溶性を有するPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤を含む本発明のナノ粒子を提供する。
【0023】
式IのN-フェニル-2-ピリミジン-アミン誘導体は一般的におよび具体的にUS特許US5,521,184および特許出願WO99/03854、特に請求項の化合物および実施例の最終産物で記載されている。実施例の最終産物および医薬生成物の内容を、出典明示により本明細書の一部とする。同様に、それらに開示されている、対応する立体異性体および対応する多形、例えば結晶修飾物を含む。式IのN-フェニル-2-ピリミジン-アミン誘導体の製造のための便利な方法は、WO03/066613に記されている。
【0024】
さらに適当なPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、例えば、WO98/35958、とりわけ実施例62の化合物、およびUS5,093,330のそれぞれの場合、特に、化合物の請求項および実施例の最終産物に記載されており、その内容を出典明示により本明細書の一部とする。
【0025】
“血管平滑筋細胞増殖性疾患疾患”との表現は、とりわけ再狭窄、アテローム性動脈硬化血管疾患および原発性肺高血圧に関連している。
【0026】
本明細書において使用される、“ナノ粒子”なる語は約2.5nm〜約1000nm、好ましくは5nm〜約500nm、さらに好ましくは25nm−約75nm、そして最も有利には、約40から約50nmの間の平均直径の粒子を意味する。本発明は特に、生物分解性のポリエステルを含む生物吸収可能な重合ナノ粒子に関係している。
【0027】
“生物分解性のポリエステル”は好ましくは、D,L-ラクチド、D-ラクチド、L-ラクチド、D,L-乳酸、D-乳酸、L-乳酸、グリコリド、グリコール酸、E-カプロラクトン、E-ヒドロキシヘキサン酸、y-ブチロラクトン、y-ヒドロキシ酪酸、8-バレロラクトン、8-ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸およびそれらのコポリマーからなる群から選択されるモノマーから合成される、任意の重合ポリエステルを意味する。
【0028】
本明細書において使用される、“PLGA”なる語は、様々な割合の乳酸またはラクチド(LA)およびグリコール酸またはグリコリド(GA)からなるコポリマーを意味する。コポリマーは様々な平均鎖長をもち、その結果、様々な内部粘性およびポリマー特性の差異をもたらす。
【0029】
好ましい生物吸収可能な重合ナノ粒子は、ポリ-エチレン-グリコール(PEG)修飾ポリ-ラクチド-グリコリドコポリマー(PLGA)ナノ粒子である。例えば実施例に記載されているように、球状結晶化技術を適用することにより、平均直径50nmのナノ粒子を入手することができる。
【0030】
下記実施例に示す通り、生物吸収可能な重合ナノ粒子技術によるイマチニブの細胞内送達が、効果的に血管平滑筋増殖および血管平滑筋細胞遊走を抑制する。
【0031】
さらなる局面において、本発明は血管平滑筋細胞増殖性疾患の予防および処置のための、本発明のナノ粒子を組み込まれた薬剤送達システムに関する。
【0032】
多くのヒトが、心臓および他の主要な臓器を潅流する血管の進行妨害によって引き起こされる循環疾患を有する。かかるヒトにおける重症の血管の妨害は、しばしば虚血性障害、高血圧、卒中または心筋梗塞を導く。冠状動脈のまたは末端の血流を制限または妨害するアテローム性動脈硬化病変が、冠状動脈心臓疾患および卒中を含む罹患率および死亡率に関する虚血性疾患の主な原因である。疾患の進行を止め、かつ心筋または他の器官が危険であるより進行した疾患状態を予防するために、経皮的冠動脈形成術(PCTA)、経皮経管的血管形成術(PTA)、アテローム切除術、バイパス移植術または他のタイプの血管移植術のような医学的血管再生処置が使われる。
【0033】
様々な血管移植処置の後、使用された処置および動脈部位に依存して、この処置を受けた患者の10-80%にアテローム性動脈硬化環状動脈の再狭窄(例えば動脈再狭窄)がおこる。アテローム性動脈硬化症によって閉塞した血管の開通に加えて、再脈管化はまた、血管壁内の内皮細胞および平滑筋細胞を傷つけ、したがって血栓症および炎症反応を開始させる。PDGF、浸潤性マクロファージ、白血球または平滑筋細胞のような細胞誘導性増殖因子それら自体が、平滑筋細胞における増殖性および遊走性反応を引き起こす。局所増殖および遊走と同時に、炎症性細胞はまた血管障害部位へと侵入し、そして血管壁のより深い層へと移動する。
【0034】
アテローム性動脈硬化病巣内の細胞および中膜内の細胞の両方が、細胞外マトリックスタンパク質のかなりの量を遊走、増殖および/または分泌する。損傷を受けた内皮層が修復されるまで、増殖、遊走および細胞外マトリックス合成が続き、そのとき脈管内膜内で増殖が鈍化する。新しく形成された組織は新脈管内膜、脈管内膜肥厚または再狭窄病巣と呼ばれ、そして通常血管内腔の狭窄をもたらす。さらに、内腔狭窄は構造リモデリング、例えば血管リモデリングのために起こり得、これはさらに脈管内膜肥厚または過形成へと至る。
【0035】
さらに、血管の血流を制限または妨害しないが、いわゆる“不安定プラーク”を形成するアテローム性動脈硬化病巣も存在する。かかるアテローム性動脈硬化病巣または不安定プラークは、破裂または潰瘍を生じさせる傾向があり、これは、血栓症をもたらし、したがって不安定狭心症、心筋梗塞または突然死を引き起こす。炎症性アテローム性動脈硬化プラークは、サーモグラフィーによって検出できる。
【0036】
血管アクセスデバイスに関連する合併症は、多くの疾患状態における罹患率の主要な原因である。例えば、血液透析患者の血管アクセス機能障害は一般的に、静脈循環系での流出狭窄によって引き起こされる(Schwam S. J.ら, Kidney Int. 36巻: 707-711, 1989年)。血管アクセス関連罹患率は、進行した腎臓疾患患者が入院する全病院の約23パーセントを占め、そしてかかる患者の全入院費のほぼ半分までもに関与する(Feldman H. I., J. Am. Soc. Nephrol. 7巻: 523-535, 1996年)。加えて、化学療法患者の血管アクセス機能障害は、一般的に静脈循環系での流出狭窄によって引き起こされ、そして癌患者への医薬の投与能を減少させる。しばしば、流出狭窄は介入を必要とするほど重症ではない。加えて、完全静脈栄養(TPN)患者での血管アクセス機能障害は、一般的に静脈循環系の流出狭窄により引き起こされ、そして、これらの患者の治療能を減少させる。これまで、哺乳動物、特にヒト患者の静脈に、内在型シャント、フィステルまたは大口径カテーテルのようなカテーテルの挿入または処置に伴う、血管アクセス機能障害の予防または減少のための効果的な薬剤はなかった。慢性腎不全を有する患者の生存は、透析の最適な、定期的な実行に依存している。もし、これが可能でないなら(例えば血管アクセス機能障害または機能不全の結果として)、それは急速な臨床的悪化に至り、そして状況が改善されない限り、これらの患者は死ぬであろう。血液透析は循環器系へのアクセスを必要とする。血液透析血管アクセスの理想形は、循環器系への反復アクセスを可能にし、高い血流速度を提供し、そして併発する合併症が最小であるべきである。現在、血管アクセスの三形態は、先天的動静脈瘻(AVF)、合成グラフト、および中枢静脈カテーテルである。グラフトは、もっとも一般に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、またはGore-Tex)から成る。アクセスのそれぞれのタイプはそれ自身の利点および欠点を有する。
【0037】
血管アクセス機能不全は、血液透析集団での罹患率および入院率のもっとも重要な原因である。狭窄によって特徴付けられる静脈新脈管内膜過形成およびそれに続く血栓症は、透析グラフト機能不全を起こす病因の圧倒的大多数を占める。
【0038】
したがって、例えば外科的傷害、例えば血管再開通術誘発性傷害、例えばまた心臓または他の移植片における傷害を含む、傷害、例えば血管損傷の後に起こる、脈管内膜肥厚または再狭窄の例えば予防および処置する、血管再開通術のための、不安定プラークの安定化処置のための、または血管アクセス機能不全の予防または処置のための、効果的な処置および薬剤送達システムが必要である。
【0039】
したがって、本発明の目的はまた、デバイスの被覆表面でまたは周辺でPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤を持続的に送達する、本発明のナノ粒子を含む医薬デバイスを提供する。
【0040】
本発明の特別な発見にしたがって、下記を提供する:
(1)本発明のナノ粒子を使用した治療上有効量のPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の局所投与を含む、それを必要とする哺乳動物での、中空チューブ(例えばカテーテル利用デバイス)中の平滑筋細胞増殖および遊走の、または上昇した細胞増殖もしくは減少したアポトーシス、もしくは増加したマトリックス沈着の予防または処置法。
(2)治療上有効量のPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の本発明のナノ粒子を含むカテーテル利用デバイス(例えば、内在型シャント、フィステルまたは、カテーテル)または内腔医療デバイスからの制御された送達を含む、血管壁における脈管内膜肥厚の処置法。
(3)治療上有効量のPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の本発明のナノ粒子を含むカテーテル利用デバイス、内腔医療デバイスまたは外膜医療デバイスからの制御された送達を含む、かかる安定化を必要とする患者の血管壁における、不安定プラークの安定化方法。
(4)治療上有効量のPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の本発明のナノ粒子を含むカテーテル利用デバイス、内腔医療デバイスまたは外膜医療デバイスからの制御された送達を含む、再狭窄(例えば、糖尿病患者または高血圧患者の再狭窄)の予防または処置法。
【0041】
(5)治療上有効量のPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の本発明のナノ粒子を含むカテーテル利用デバイス、内腔医療デバイスまたは外膜医療デバイスからの制御された送達を含む、対象における、動脈または静脈瘤の安定化または修復方法。
(6)治療上有効量のPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の本発明のナノ粒子を含むカテーテル利用デバイス、内腔医療デバイスまたは外膜医療デバイスからの制御された送達を含む、対象における、吻合過形成の予防または処置法。
(7)治療上有効量のPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の本発明のナノ粒子を含むカテーテル利用デバイス、内腔医療デバイスまたは外膜医療デバイスからの制御された送達を含む、対象における、動脈、例えば大動脈バイパス吻合の予防または処置法。
(8)a)中空チューブでの局所適用または投与に適した医療デバイス、例えばカテーテルを利用する送達デバイス(例えば、内在型シャント、フィステルまたは、カテーテル)または、外膜内に置くインプラントまたはシースのような中空チューブの管内または管外医薬デバイスおよびb)カテーテルを利用する送達装置または医療デバイスに、放出可能なように固定された本発明のナノ粒子を含む、薬剤送達デバイスまたはシステム。
【0042】
かかる局所送達デバイスまたはシステムを、本明細書に記載の血管傷害、例えば狭窄、再狭窄、またはステント内再狭窄を、ポリテトラフルオロエチレンを有するかまたは有さない動脈-静脈透析アクセス、または例えばGore-Texグラフト移植およびステント移植を有するかまたは有さない、または何らかの他の心臓もしくは移植処置と、または先天的な血管介入と組み合わせる場合を含む、心臓動脈、頸動脈、腎臓動脈、末梢動脈、脳動脈または、他の動脈または静脈位置を含む全ての血管位置で行う血管再生、バイパスまたは移植処置の補助として、吻合狭窄または過形成を減少させるために使用できる。
【0043】
局所投与は、好ましくは血管病変部位でまたは付近で行う。
投与は下記の経路の一つまたはそれ以上である: カテーテルまたは他の血管内送達システムを介して、鼻腔内、気管支内、腹膜内または食道。中空チューブは血管(動脈または静脈)、組織内腔、リンパ管、消化管を含む消化器官系、呼吸管、排出系の管、生殖系の管および導管、体腔管など、のような循環系の管を含む。PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の局所投与または適用は、他の投与経路を通じてでは得ることのできない標的組織における組織レベルを達成する、前記PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の濃縮された送達を提供する。加えて、局所投与または適用は、遠隔または全身毒性の危険を減少させ得る。好ましくは、平滑筋細胞増殖または遊走は、本発明にしたがって、局所的に処置またはステントされた領域の近位または遠位を迅速に阻害または減少させる。
【0044】
中空チューブへのPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の局所送達の手段は、中空チューブへの内部的または外部的のいずれかで、本発明のナノ粒子の物理的な送達により得る。局所送達は、カテーテル送達システム、局所注入デバイスもしくはシステムまたは内在型デバイスを含む。かかるデバイスまたはシステムは、制限されないが、内在型シャント、フィステル、カテーテル、ステント、内腔内スリーブ、ステント-グラフト、制御された放出マトリックス、ポリマー性腔内ペービング、または他の血管内部デバイス、塞栓性の送達粒子、親和性に基づいた送達のような細胞ターゲッティング、中空チューブ周辺の内部パッチ、中空チューブ周辺外部のパッチ、中空チューブカフ、外部の覆い、外部のステントスリーブ、などを含む。参照、Ecclestonら. (1995年) Interventional Cardiology Monitor 1:33-40-41およびSlepian, N.J. (1996年) Intervente. Cardiol. 1:103-116,またはRegar E, Sianos G, Serruys PW.ステント発達および局所医薬送達、Br Med Bull 2001年,59:227-48。これらの文献を参照により本明細書の一部とする。好ましくは送達デバイスまたはシステムは、薬理学的、薬物動力学および機械的な要件を果たす。好ましくはそれはまた、滅菌のために適当である。
【0045】
本発明に記載のステントは、自己膨張性ステント、またはバル−ンをふくらませることにより放射状に膨張可能である、もしくは膨張部材により膨張されるステント、またはステントにそのサイズの変化を引き起こす熱を供給する無線周波数の使用により膨張されるステントのいずれかであり得る。
【0046】
PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の送達または適用は、内在型シャント、フィステル、ステントまたはスリーブまたはシースを使用することで行うことができる。ポリマーまたは他の生体適合性の物質、例えば多孔セラミック、例えばナノ細孔セラミックで構成されたまたはコーティングした、本発明のナノ粒子を含浸させたまたは組み込まれたステントを、使用することができる。かかるステントは生物分解性であるか、または、恒久的な使用を意図するとき、金属または合金、例えばNiとTi、または他の好適な物質で製造される。本発明のナノ粒子はまたマイクロ細孔またはチャネルを含むように修飾したステントまたはグラフト体の金属へとトラップされていてもよい。また、PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤を含む、例えば上記のとおりのポリマーまたは生体適合性物質で製造された内腔および/または外腔コーティングまたは外スリーブも、PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の局所送達のために使用できる。
【0047】
“生体適合”とは、例えば血栓形成および/または炎症を含む、負の組織反応を導き出すことのないまたは最小限の物質を意味する。
【0048】
例えば、本発明のナノ粒子を、多くの方法で、そして任意の生体適合性の物質を利用して、ステントへと(または内在型シャント、フィステルまたはカテーテルへと)組み込み、または付加し得;それは、例えばポリマーまたはポリマーマトリックスへと組み込まれそしてステントの外表面上に噴霧される。本発明のナノ粒子およびポリマー性物質の混合物は溶媒(溶媒は蒸発させてトラップされた医薬を有するフィルムを残す)または溶媒の混合物中で製造され得、そしてまた、ディップ-コーティング、ブラシコーティングおよび/またはディップ/スピンコーティングによりステントの表面に適用され得る。PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤が、マイクロ細孔、ストラットまたはチャネルから送達されるステントの場合、ポリマーの溶液は、さらに、PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の放出を制御するための外層として適用され得;あるいは、本発明のナノ粒子は、マイクロ細孔、ストラットまたはチャネルに含まれ得、そして補助剤を外層に、またはその逆に、組み込むことができる。本発明のナノ粒子はまた、ステントの(または内在型シャント、フィステルまたはカテーテルの)内層に付加し得、そして、補助剤を外層に、またはその逆に、組み込み得る。本発明のナノ粒子はまた、化学誘導体化を含む、ステント(または内在型シャント、フィステルまたはカテーテルの)表面に、共有結合、例えばエステル、アミドまたは無水物によって結合し得る。本発明のナノ粒子はまた、生体適合性の多孔セラミックコーティング、例えばナノ細孔セラミックコーティングに組み込まれ得る。
【0049】
ポリマー性物質の例は、親水性、疎水性、または生体適合性の生物分解性物質、例えばポリカルボン酸;セルロースポリマー;デンプン;コラーゲン;ヒアルロン酸;ゼラチン;ラクトンベースのポリエステルまたはコポリエステル、例えばポリラキチド;ポリグリコリド;ポリラクチド-グリコリド;ポリカプロラクトン;ポリカプロラクトン-グリコリド;ポリ(ヒドロキシ酪酸)エステル;ポリ(ヒドロキシ吉草酸)エステル;ポリヒドロキシ(酪酸-コ-吉草酸)エステル;ポリグリコリド-コ-トリメチレン炭酸エステル;ポリ(ジアキサノン);ポリオルトエステル;ポリ無水物;ポリアミノ酸;ポリサッカライド;ポリホスホエステル;ポリホスホエステル-ウレタン;ポリシアノアクリル酸エステル;ポリホスファゼン;ポリ(エーテル-エステル)コポリマー、例えばPEO-PLLA、フィブリン;フィブリノーゲン;またはそれらの混合物;および生体適合性の非-分解性物質、例えばポリウレタン;ポリオレフィン;ポリエステル;ポリアミド;ポリカプロラクタム;ポリイミド;ポリビニルクロライド;ポリビニルメチルエーテル;ポリビニルアルコールまたはビニルアルコール/オレフィンコポリマー、例えばビニルアルコール/エチレンコポリマー;ポリアクリロニトリル;オレフィンとのビニルモノマーのポリスチレンコポリマー、例えばスチレンアクリロニトリルコポリマー、エチレンメチルメタクリル酸エステルコポリマー;ポリジメチルシロキサン;ポリ(エチレン-ビニル酢酸)エステル;アクリル酸エステルベースのポリマーまたはコポリマー、例えばポリブチルメタクリル酸エステル、ポリ(ヒドロキシエチルメチルメタクリル酸)エステル;ポリビニルピロリジノン;ポリテトラフルオエチレンのようなフッ素化ポリマー;セルロースエステル、例えばセルロース酢酸エステル、セルロース硝酸エステルまたはセルロースプロピオン酸エステル;またはそれらの混合物を含む。
【0050】
本発明の方法にしたがって、または本発明のデバイスまたはシステムにおいて、PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、受動的に、活性的にまたは活性化、例えば光-活性化状態下で溶出し得る。
【0051】
確立された試験モデル、およびとりわけ本明細書に記載の試験モデルによって、本発明のナノ粒子が、血管平滑筋細胞(SMC)増殖性疾患の効果的な予防または処置における使用に適することが示され得る。
【0052】
実施例に示した通り、ラット大動脈およびヒト冠動脈血管SMCをインキュベートしたとき、PGDF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の代わりに蛍光マーカーでロードされたナノ粒子は、ほとんどすべてのSMCに急速に入り込み、そして1時間以内に、核周辺領域にたどり着く。加えて、細胞の中へ取り込まれたかかるナノ粒子が、少なくとも14日間、細胞質内に長く保持されることを示す。さらに実施例に示した通り、非カプセル化0.1、1.0、および10μMのイマチニブは、用量-依存方法でSMCのPDGF誘導性増殖/遊走を阻害する:0.1μMのイマチニブは効果を示さないが、10μMのイマチニブは、PDGF誘導性反応を正常化する。0.1μMのイマチニブを含むナノ粒子による共または前処置は、完全にSMCのPDGF誘導性増殖/遊走を正常化する。このことは、ナノ粒子化イマチニブの阻害能力は、非粒子化遊離イマチニブと比較して、少なくとも100倍の強度であることを示す。
【0053】
実施例の詳細な説明
ナノ粒子の細胞取り込みおよび細胞内分散
蛍光標識は、ナノ粒子の細胞取り込みを蛍光顕微鏡によって容易に検出可能にする。ラット大動脈およびヒト冠動脈血管SMCをインキュベートしたとき、蛍光封入ナノ粒子は、細胞内送達のすぐれた能力を示すことが発見された(図1)。対照的に、SMCをナノ粒子またはブランクのナノ粒子または蛍光のみとインキュベートしたとき、蛍光は検出できなかった。大部分のナノ粒子(>90%)が、すばやく細胞内に入り、そして取り込み速度を24時間までは安定に維持し(図2);細胞を0.5mg/mLのPEG-PLGAナノ粒子とインキュベートするとき、送達速度は15分で約100%、30分で98**%、60分で88**%、6時間で96%、そして24時間で94%である。細胞は、この試験の経過の間生存可能である。SMCによるナノ粒子の取り込みの時間経過に関して、ナノ粒子がエンドサイトーシス経路を通じて取り込まれ、そして細胞質で、とりわけ特に核周辺領域で、安定に維持されることが発見された。長期間の追跡試験により、30分間のナノ粒子のインキュベーションおよび洗浄後、蛍光の離散パターンが14日まで、核周辺で維持され続けることが示される。
【0054】
PDGF-BB誘導性SMC増殖および遊走がイマチニブおよびイマチニブをロードしたPEG-PLGAナノ粒子で抑制される
さらに、ヒト冠動脈血管SMCの10ng/mlのPDGF-BBでの刺激が、細胞数の明白な増加を引き起こすことを発見した。遊離イマチニブが、用量-依存方法で、PDGF-BBによって誘導されるSMC増殖を減少させる。10μMの濃度のイマチニブが、細胞増殖に対するPDGF-BB誘導性の刺激効果を完全に根絶する。対照的に、0.5mg/mlのイマチニブをロードしたPEG-PLGAナノ粒子(0.1μMイマチニブを含む)での共処置および前処置の両方が、PDGF-BB誘導性増殖を、用量10μMの遊離イマチニブと同様の程度、減少させる。言い換えると、阻害の強度は、10μMの遊離イマチニブと0.1μMのナノ粒子イマチニブとで匹敵する、2A)。
【0055】
最後に、PDGF-BB誘導性遊走はまた、ラット大動脈SMCにおいて、遊離イマチニブによって阻害されることが発見された。イマチニブは、ラットSMCにおける用量-依存方法を示す。0.1μMのイマチニブを含むPEG-PLGAナノ粒子での共処置および前処置の両方が、PDGF-BB誘導性遊走を、1μMの遊離イマチニブと同様の程度、阻害する。すなわち、阻害の強度は、1μMの遊離イマチニブと0.1μMのナノ粒子化されたイマチニブとで匹敵する。増殖アッセイの結果と同様に、0.5mg/mlのイマチニブをロードしたPEG-PLGAナノ粒子(0.1μMイマチニブを含む)で同時にまたは前処置で処置された細胞は、PDGF-BB誘導性増殖を減少させる。
【0056】
SMCのPDGF誘導性増殖および遊走は、イマチニブ低濃度(0.1μM)を含むナノ粒子での前処理によって、完全に正常化される。対照的に、遊離イマチニブの同様の用量範囲では効果は見られない。ナノ粒子化されたイマチニブの阻害能は、遊離イマチニブのそれと比較して100倍強力である。
【0057】
本発明の特定の発見によると、本発明はまた、本発明のナノ粒子の治療上有効用量を血管平滑筋細胞増殖性疾患を有する温血動物へと投与する、ヒトを含む温血動物の処置法を提供する。
本発明はまた、とりわけ血管平滑筋細胞増殖性疾患の処置のための本発明のナノ粒子を含む医薬組成物に関する。
【0058】
本発明のナノ粒子は、内皮細胞、白血球、心筋細胞および繊維芽細胞のような他の細胞タイプによって同様に取り込まれ、これはいくつかの難治疾患処置に本発明のナノ粒子を適用することができる。したがって、本発明の広い局面で、本発明のナノ粒子はまた、アテローム性動脈硬化症(心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患)、静脈移植不全、移植後動脈硬化、臓器線維症および動脈瘤の処置に使用できる。
【0059】
局所的、経腸的、例えば経口的もしくは経直腸的、または非経腸的投与に適しており、そして、無機または有機、固体または液体であり得る薬学的に許容される担体と一緒に本発明のナノ粒子を含む医薬組成物。経口投与のために、希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリセロール、および/または滑沢剤、例えばケイ酸、タルク、ステアリン酸もしくはステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウムのようなその塩、および/またはポリエチレングリコール、および/または安定化剤と一緒に本発明のナノ粒子を含む、とりわけ錠剤またはゼラチンカプセルを使用する。錠剤はまた結合剤および、所望により、崩壊剤、吸着剤、染料、香味料および甘味剤を含み得る。本発明のナノ粒子はまた非経腸的投与用組成物の形または注入溶液の形で使用できる。かかる溶液は、賦形剤、例えば安定化剤、保存剤、湿潤剤および/または乳化剤、浸透圧を調節する塩および/またはバッファーを含む。本医薬組成物は、それ自体既知の方法で製造され、そして約1%−100%、とりわけ約1%−約20%の有効成分を含む。
【0060】
使用される本発明のナノ粒子の用量範囲は、温血動物の種、体重および年齢、投与形態、特定の使用される物質および処置される疾患の状態を含む、当業者に既知の要素に依存している。特に記載がない限り、本発明のナノ粒子は、好ましくは一日に1−4回の投与される。
【実施例】
【0061】
下記実施例は、本発明をその範囲に限ることなく本発明を説明するために用いる。
実施例1:ナノ粒子の製造
蛍光マーカーまたはイマチニブをロードしたPEG-PLGAナノ粒子を、溶媒拡散法(solvent diffusion method)により製造する。75:25のL:Gモル比および20000の分子量を有する疎水性ポリ(D,L-コ-グリコール乳酸)(PLGA)、30,000-70,000の分子量を有するポリビニルアルコール(PVA)、蛍光マーカーのクマリン-6を、酢酸エチル溶解させる。水溶性のポリエチレングリコール(2,000−20,000の平均分子量を有するPEG、Aldrich Chemical Coから購入)を、まず水に溶解させ、次いで、有機層に溶けているPLGA中に乳化させる。PEG-PLGAの油相溶液をゆっくりPVAを含む水溶液に注ぎ、そしてマイクロチッププローブソニケーターを使用して乳化させる。PEG-PLGAコポリマー溶液も、それぞれ蛍光マーカーまたはイマチニブをロードしたPEG-PLGAナノ粒子の製造のために、蛍光マーカーとして、0.05%(w/v)クマリン-6もしくは5%(w/v)フルオレセインイソチオシアネート(FITC)を、または15%(w/v)イマチニブを含む。次いで、得られた水中油型乳液を室温で撹拌する。得られたPEG-PLGAナノ粒子は、遠心分離によって集められ、そして過剰な乳化剤を取り除くために三度ミリポア水で洗浄する。
【0062】
実施例2:蛍光顕微鏡
ラット大動脈SMC(Toyobo)は、他に指示されたものを除いて、10%FBS(Equitech-Bio, Inc.)を補ったDMEM(Sigma)で培養する。ヒト冠動脈SMC(Cambrex Bio Science Walkersville, Inc.)を、SmGM-2(Cambrex Bio Science)中で培養した。それぞれの細胞は、4−8代目の間を使用した。ラット大動脈SMCを、チャンバーカバーガラス上に播種し、そして細胞がサブコンフルエントになるまで、37℃/5%CO2環境でインキュベートする。試験一日目は、成長培地をクマリン-6をロードしたPEG-PLGAナノ粒子懸濁培地(0.5mg/ml)に置き換え、そして次いで、さらに1時間インキュベートする。試験の後に細胞を、細胞内に取り込まれていない過剰なナノ粒子を取り除くためPBSで三度洗浄する。次いで、細胞を1%ホルムアルデヒド/PBSバッファーで固定し、そして核をプロピディウムアイオダイド(PI)で対比染色する。クマリン-6をロードしたPEG-PLGAナノ粒子の細胞取り込みは蛍光顕微鏡によって評価される。
【0063】
あるいは、ラット大動脈SMCを30分間、FITCをロードしたPEG-PLGAナノ粒子(0.5mg/ml)とインキュベートする。次いで、培地を廃棄し、三度PBSで洗浄し、そしてその後、新鮮な培地でインキュベートする。その後、細胞を、14日間観察する。
【0064】
実施例3:ナノ粒子の細胞取り込みおよび細胞内分散
ラット大動脈SMCを、ウエルあたり1×105細胞の初期濃度で、48-ウエル培養プレート上に播種する(ウエルあたりn=4)。クマリン-6をロードしたPEG-PLGAナノ粒子懸濁媒体を、0.1−0.5mg/mlの範囲の最終濃度で細胞に加える。細胞内取り込みに対するインキュベート時間の効果を試験するために、継続時間を5分から24時間に変化させる。異なる時点で、ナノ粒子を含む培地を取り除き、そして細胞を三度PBSで洗浄する。その細胞を、1%ホルムアルデヒド/PBSバッファーで固定する。微分干渉コントラスト(DIC)および蛍光像を顕微鏡で捕らえられる。画像をAdobe PhotoshopおよびScion Image Softwareでデジタル化および分析する。各フィールドの全蛍光陽性細胞の数および全細胞数を数える。細胞取り込み率を、各フィールドの全細胞に対する蛍光陽性細胞の割合によって評価する。細胞取り込み率を下記の式;蛍光陽性領域/細胞表面領域×100によって評価する。
【0065】
実施例4:SMC増殖アッセイ
ヒト冠動脈血管SMC(Cambrex Bio Science Walkersville, Inc.)を、10%FBSを含むSM-BM中に、ウエルあたり5×10細胞で、48ウエル細胞プレート(FALCON 354506 BIOCOAT CELL WARE Human Fibronectine)に播種する(群あたりn=6)。24時間後、細胞を72時間、無血清培地で飢餓状態にして、分裂期でない休止細胞を手に入れる。飢餓後、10ng/mlの組換えPDGF-BB(Sigma)を加える。また、様々な濃度のイマチニブ(0.1、1、10μM)またはイマチニブをロードしたPEG-PLGAナノ粒子(0.5mg/ml)をそれぞれのウエルに加える。いくつかの実験において、イマチニブをロードしたPEG-PLGAナノ粒子(0.5mg/ml)を、終了の24時間前に細胞に加える。これらのウエルをPDGF刺激前にPBSで洗浄する。四日間後、細胞をメタノールで固定し、そしてDiff-Quick染色溶液(Baxter)で染色する。顕微鏡で、実験プロトコールを知らない一人の観察者が、SMC増殖の定量化のため、細胞数の数/プレートを数えた。イマチニブをロードしたPEG-PLGAナノ粒子(0.5mg/ml)は、濃度0.1μMの遊離イマチニブに相当する。
【0066】
実施例5:SMC遊走アッセイ
以前に記載した(Ono H,Ichiki T,ら Arterioscler Thromb Vasc Biol.2004年;24:1634-9.)通り、ラット大動脈SMCの遊走を、8.0μM孔を有する、ポリ炭酸塩膜コラーゲンで予め被覆されたポリカーボネート膜を有する、Boydenチャンバー型細胞遊走アッセイキット(Chemicon)で評価する。SMCをセミコンフルエントへと成長させ、そして次いで、遊走の前に、24時間無血清培地で静止させる。細胞(1×10細胞/ml)を膜の上層チャンバー(群あたりn=6)に加え、そして孔を通じて遊走させる。イマチニブ(0.1、1、10μM)またはイマチニブをロードしたPEG-PLGAナノ粒子(0.5mg/ml)を加える前に、細胞を膜に30分付着させる。いくつかの実験において、イマチニブをロードしたPEG-PLGAナノ粒子(0.5mg/ml)を、終了の24時間前に細胞に加える。これらの細胞をPDGF刺激前にPBSで洗浄する。次いで、SMCを、下層チャンバーで、4時間、PDGF-BB(10ng/ml)に曝露し、その後、非遊走細胞を、綿棒を使って、上層チャンバーから取り除く。フィルターの下側へと遊走したSMCを、メタノールで固定し、Diff-Quick染色溶液(Baxter)で染色し、そしてSMC遊走の定量化のため、顕微鏡下で数える。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1A】PEG-PLGAナノ粒子でローディングされたイマチニブ(Fig.1A)。ラット大動脈およびヒト冠動脈SMCを30分間インキュベートするとき、クマリン-6をロードしたPEG-PLGAナノ粒子は、細胞膜を通過するおよび核周辺領域に到達する、すぐれた能力を示す。核はプロピディウムアイオダイド(PI)で対比染色する。スケール=50μm。ナノ粒子の大部分が、急速に細胞内に入る:送達速度は15分で約60%が細胞膜を通過し、そして1時間以内に核周辺領域に到達する。
【図1B】PEG-PLGAナノ粒子の細胞取り込みの効率(Fig.1B)。細胞取り込みは、PEG-PLGAナノ粒子懸濁液の濃度とは無関係に観察される。細胞取り込み率は、コンピューターで補助した顕微鏡で、蛍光陽性面積/細胞表面面積×100を測定することにより定量化した。データは平均±標準偏差(n=4)である。
【図2A】PDGF-BB誘導性SMC増殖および遊走は、イマチニブおよびイマチニブをロードしたPEG-PLGAナノ粒子で抑制される(Fig.2A)。10ng/mlのPDGF-BBでのヒト冠動脈血管SMCの刺激は、細胞数の顕著な増加を引き起こす。イマチニブは用量依存的にPDGF-BBにより誘導されたSMC増殖を減少させる。10μMの濃度のイマチニブが、細胞増殖に対するPDGF-BBの刺激効果を完全に根絶する。対照的に、0.5mg/mlのイマチニブをロードしたPEG-PLGAナノ粒子(0.1μMイマチニブを含む)で同時または前処置をした細胞は、PDGF-BB誘導性増殖を減衰される。データは平均±標準偏差(n=6)である。P<0.01対コントロール、P<0.01対PDGF。
【図2B】PDGF-BBにより誘導されるラット大動脈SMCの遊走をトランスウエル遊走チャンバーで測定する(Fig.2B)。イマチニブは、PDGF-BB依存遊走に対する用量依存的阻害効果を示す。増殖アッセイの結果と同様に、0.5mg/mLのイマチニブをロードしたPEG-PLGAナノ粒子(0.1μMイマチニブを含む)で同時処置または前処置した細胞は、PDGF-BB誘導性増殖を減衰される。
【図3】PEG-PLGAナノ粒子の細胞毒性のMTSアッセイ(Fig3)。棒グラフは、48時間、表示の濃度のFITCをロードしたPEG-PLGAナノ粒子でインキュベートしたヒト冠動脈血管SMCの生存を示す。データは、平均±標準偏差である(n=5)。SMCのPDGF-BB誘導性増殖および遊走は、低濃度(0.1μM)のイマチニブを含むナノ粒子での前処置によって完全に正常化される。対照的に、遊離イマチニブの同様の投与範囲では効果は見られない。ナノ粒子化されたイマチニブの阻害効果は、遊離イマチニブのそれと比較して100倍の強度である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤を含むナノ粒子。
【請求項2】
PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤が20℃で約2.5g/100mlから250g/100mlの間の水溶性を有する、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤が式I
【化1】

〔式中、
R1は4-ピラジニル;1-メチル-1H-ピロリル;アミノ-またはアミノ-低級アルキル-置換フェニル(ただし、前記アミノ基はそれぞれの場合で、遊離、アルキル化またはアシル化されている);五員環炭素原子で結合した1H-インドリルまたは1H-イミダゾリル;または、環炭素原子で結合し、かつ窒素原子上で酸素により置換されたまたは非置換されていない低級アルキル-置換、または非置換または非置換のピリジルであり;
R2およびR3はそれぞれ互いに独立して水素または低級アルキルであり;
R4、R5、R6、R7およびR8の1個または2個は、それぞれニトロ、フルオロ-置換低級アルコキシまたは式II
【化2】

[式中、
R9は水素または低級アルキルであり、
Xはオキソ、チオ、イミノ、N-低級アルキル-イミノ、ヒドロキシイミノまたはO-低級アルキル-ヒドロキシイミノであり、
Yは酸素またはNH基であり、
nは0または1であり、そして
R10は少なくとも5つの炭素原子を有する脂肪族基、または芳香族、芳香族-脂肪族、環状脂肪族、環状脂肪族-脂肪族、ヘテロ環またはヘテロ環-脂肪族基である]
であり、そして
残りのR4、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ互いに独立して水素、遊離もしくはアルキル化アミノ、ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニルもしくはモルホリニルによって置換された、または置換されていない低級アルキル、または低級アルカノイル、トリフルオロメチル、遊離、エーテル化もしくはエステル化ヒドロキシ、遊離、アルキル化もしくはアシル化アミノまたは遊離またはエステル化カルボキシである〕
のN-フェニル-2-ピリミジン-アミン誘導体、または、少なくとも一個の塩形成基を有するかかる化合物の塩である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項4】
式1のN-フェニル-2-ピリミジン-アミン誘導体がN-{5-[4-(4-メチル-ピペラジノ-メチル)-ベンゾイルアミド]-2-メチルフェニル)-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン}(イマチニブ)である、請求項3に記載のナノ粒子。
【請求項5】
イマチニブがそのモノメシル酸塩である、請求項4に記載のナノ粒子。
【請求項6】
ナノ粒子が約2.5nm−約1000nmの平均直径を有する、請求項1−5のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項7】
ナノ粒子が約5nm−約500nmの平均直径を有する、請求項1−6のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項8】
ナノ粒子が生物分解性のポリエステルを含む、請求項1−7のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項9】
ナノ粒子がポリ-エチレン-グリコール(PEG)-修飾ポリ-ラクチド-グリコリドコポリマー(PLGA)ナノ粒子を含む、請求項1−7のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項10】
球状結晶化技術の適用による、50nmの平均直径を有する、請求項1−9のいずれか1項に記載のナノ粒子の製造方法。
【請求項11】
請求項1−9のいずれか1項に記載のナノ粒子を含む、血管平滑筋細胞増殖性疾患処置用薬剤。
【請求項12】
血管平滑筋細胞増殖性疾患の処置用薬剤の製造のための、請求項1−9のいずれか1項に記載のナノ粒子の使用。
【請求項13】
前記血管平滑筋細胞増殖性疾患が、再狭窄、アテローム性動脈硬化血管疾患および原発性肺高血圧から選択される、請求項11記載の薬剤または請求項12記載の使用。
【請求項14】
請求項1−9のいずれか1項に記載のナノ粒子を含む医薬組成物。
【請求項15】
内在型シャント、フィステルまたはカテーテルの挿入または治療に関連する、糖尿病患者の再狭窄の予防または処置のため、または血管アクセス機能障害の予防または改善のための、血管内における不安定プラークの安定化用医薬生成物の製造のための請求項1−9のいずれか1項に記載のナノ粒子の使用。
【請求項16】
請求項1−9のいずれか1つに記載のナノ粒子を含む、静脈または動脈中への内在型シャント、フィステルまたはカテーテルの挿入または治療、あるいは実際の処置に関連する、血管アクセス機能障害の予防または改善用医薬。
【請求項17】
透析患者に使用するための請求項15または16に記載の使用または薬剤。
【請求項18】
i)中空チューブでの局所適用または投与に適した医薬デバイスおよびii) 放出可能なように薬剤の送達デバイスまたはシステムに固定された、請求項1−9のいずれか1項に記載のナノ粒子を含む、薬剤送達デバイスまたはシステム。
【請求項19】
請求項1−9のいずれか1項に記載のナノ粒子を含む、カテーテル利用デバイスまたは管腔内医療デバイスから、PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の治療上有効量を制御送達するための血管壁の内膜肥厚の処置用薬剤。
【請求項20】
請求項1−9のいずれか1項に記載のナノ粒子を含む、カテーテル利用デバイス、管腔内医療デバイスまたは外膜医療デバイスから、PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の治療上有効量を制御送達するための、かかる安定化を必要とする対象の血管における不安定プラークの安定化用薬剤。
【請求項21】
請求項1−9のいずれか1項に記載のナノ粒子を含む、カテーテル利用デバイス、管腔内医療デバイスまたは外膜医療デバイスから、PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の治療上有効量を制御送達するための、再狭窄の予防または処置用薬剤。
【請求項22】
請求項1−9のいずれか1項に記載のナノ粒子を含む、カテーテル利用デバイス、管腔内医療デバイスまたは外膜医療デバイスから、PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の治療上有効量を制御送達するための、患者の動脈または静脈の安定化または治療用薬剤。
【請求項23】
請求項1−9のいずれか1項に記載のナノ粒子を含む、カテーテル利用デバイス、管腔内医薬デバイスまたは外膜医薬デバイスから、PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の治療上有効量を制御送達するための、患者の吻合過形成の予防または処置用薬剤。
【請求項24】
請求項1−9のいずれか1項に記載のナノ粒子を含む、カテーテル利用デバイス、管腔内医薬デバイスまたは外膜医薬デバイスから、PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の治療上有効量を制御送達するための、患者の動脈の、例えば大動脈の、バイパス吻合の予防または処置用薬剤。


【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図1A】
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【公開番号】特開2007−254452(P2007−254452A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171514(P2006−171514)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年12月22日〜2006年1月24日 インターネットアドレス「http://www.congre.co.jp/jcs70/japanese/japanese_index.html」に発表
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】