説明

有機半導体材料,有機半導体膜,有機半導体デバイス及び有機薄膜トランジスタ

【課題】 溶剤溶解性が向上した有機半導体材料を提供し、該有機半導体材料を塗布することによって有機半導体膜が形成可能であり、得られた有機半導体膜を用いて、キャリア移動度が高い、有機半導体デバイス、有機薄膜トランジスタ及び、該デバイスまたは該トランジスタを具備する有機EL素子を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物を含有することを特徴とする有機半導体材料。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体材料、有機半導体膜、有機半導体デバイス及び有機薄膜トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
情報端末の普及に伴い、コンピュータ用のディスプレイとしてフラットパネルディスプレイに対するニーズが高まっている。また、さらに情報化の進展に伴い、従来、紙媒体で提供されていた情報が電子化される機会が増え、薄くて軽い、手軽に持ち運びが可能なモバイル用表示媒体として、電子ペーパーあるいはデジタルペーパーへのニーズも高まりつつある。
【0003】
一般に平板型のディスプレイ装置においては、液晶、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)、電気泳動等を利用した素子を用いて表示媒体を形成している。また、こうした表示媒体では画面輝度の均一性や画面書き換え速度等を確保するために、画像駆動素子としてアクティブ駆動素子(TFT素子)を用いる技術が主流になっている。例えば、通常のコンピュータディスプレイではガラス基板上にこれらTFT素子を形成し、液晶、有機EL素子等が封止されている。
【0004】
ここでTFT素子には主にa−Si(アモルファスシリコン)、p−Si(ポリシリコン)等の半導体を用いることができ、これらのSi半導体(必要に応じて金属膜も)を多層化し、ソース、ドレイン、ゲート電極を基板上に順次形成していくことでTFT素子が製造される。こうしたTFT素子の製造には通常、スパッタリング、その他の真空系の製造プロセスが必要とされる。
【0005】
しかしながら、このようなTFT素子の製造では、真空チャンバーを含む真空系の製造プロセスを何度も繰り返して各層を形成せざるを得ず、装置コスト、ランニングコストが非常に膨大なものとなっていた。例えば、TFT素子では、通常それぞれの層の形成のために真空蒸着、ドープ、フォトリソグラフ、現像等の工程を何度も繰り返す必要があり、何十もの工程を経て素子を基板上に形成している。スイッチング動作の要となる半導体部分に関しても、p型、n型等、複数種類の半導体層を積層している。こうした従来のSi半導体による製造方法ではディスプレイ画面の大型化のニーズに対し、真空チャンバー等の製造装置の大幅な設計変更が必要とされる等、設備の変更が容易ではない。
【0006】
また、このような従来からのSi材料を用いたTFT素子の形成には高い温度の工程が含まれるため、基板材料には工程温度に耐える材料であるという制限が加わることになる。このため実際上はガラスを用いざるをえず、先に述べた電子ペーパーあるいはデジタルペーパーといった薄型ディスプレイを、こうした従来知られたTFT素子を利用して構成した場合、そのディスプレイは重く、柔軟性に欠け、落下の衝撃で割れる可能性のある製品となってしまう。ガラス基板上にTFT素子を形成することに起因するこれらの特徴は、情報化の進展に伴う手軽な携行用薄型ディスプレイへのニーズを満たすにあたり望ましくないものである。
【0007】
一方、近年において高い電荷輸送性を有する有機化合物として、有機半導体材料の研究が精力的に進められている。これらの化合物は有機EL素子用の電荷輸送性材料のほか、有機レーザー発振素子(例えば、非特許文献1参照。)や、多数の論文にて報告されている有機薄膜トランジスタ素子(有機TFT素子)への応用が期待されている(例えば非特許文献2参照。)。
【0008】
これら有機半導体デバイスを実現できれば、比較的低い温度での真空ないし低圧蒸着による製造プロセスの簡易化や、さらにはその分子構造を適切に改良することによって、溶液化できる半導体を得る可能性があると考えられ、有機半導体溶液をインク化することによりインクジェット方式を含む印刷法による製造も考えられる。これらの低温プロセスによる製造は、従来のSi系半導体材料については不可能と考えられてきたが、有機半導体を用いたデバイスにはその可能性があり、従って前述の基板耐熱性に関する制限が緩和され、透明樹脂基板上にも例えばTFT素子を形成できる可能性がある。透明樹脂基板上にTFT素子を形成し、そのTFT素子により表示材料を駆動させることができれば、ディスプレイを従来のものよりも軽く、柔軟性に富み、落としても割れない(もしくは非常に割れにくい)ディスプレイとすることができるであろう。
【0009】
しかしながら、こうしたTFT素子を実現するための有機半導体としてこれまでに検討されてきたのは、ペンタセンやテトラセンといったアセン類(例えば、特許文献1参照。)、鉛フタロシアニンを含むフタロシアニン類、ペリレンやそのテトラカルボン酸誘導体といった低分子化合物(例えば、特許文献2参照。)や、α−チエニールもしくはセクシチオフェンと呼ばれるチオフェン6量体を代表例とする芳香族オリゴマー(例えば、特許文献3参照。)、ナフタレン、アントラセンに5員の芳香族複素環が対称に縮合した化合物(例えば、特許文献4参照。)、モノ、オリゴ及びポリジチエノピリジン(例えば、特許文献5参照。)、更には、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリ−p−フェニレンビニレンといった共役高分子等限られた種類の化合物(例えば、非特許文献1〜3参照。)でしかなく、溶剤への十分な溶解性を保持しながら、十分なキャリア移動度・ON/OFF比を示す材料は見出されていない。
【0010】
最近、溶解性の高いアセン類であるルブレンの単結晶によって非常に高い移動度が報告されているが(例えば、非特許文献4参照。)、溶液キャストで成膜したルブレンの膜はこのような単結晶構造を取らず、十分な移動度は得られていない。
【0011】
また、高いキャリア移動度と優れた半導体デバイス特性を発現することが報告されているペンタセンは、有機溶媒に対して不溶、もしくは難溶という課題があった。この点を改良するために、ペンタセンに官能基を付与した化合物等も開示され、溶液塗布によって比較的良好なキャリア移動度が得られるとの報告もされている(例えば、特許文献6参照。)。
【0012】
しかし、これらルブレンやペンタセン等のアセン系の化合物は、空気によって容易に酸化されエンドペルオキシドのような酸化体や二量体などへの転化を起こし、電界効果トランジスタとしての性能が大きく劣化してしまうことが知られており、溶液での保存安定性や、塗布膜の安定性についてはいまだ解決すべき課題が残されている。
【0013】
酸化に対して比較的安定なアセン系化合物の例としては、ペンタセンの6、13位をシリルエチニル基で置換した一部の化合物が、塗布膜の安定性が良いとの報告がある(例えば、非特許文献5、6及び特許文献7参照。)。
【0014】
しかしながら、これらの報告においては、酸化に対する安定性が向上したと定性的な性状を述べているのみであり、いまだ実用に耐えうる程度の安定性は得られていない。
【0015】
従って、工程適性を有する溶媒に高濃度に溶解し、かつ十分なキャリア移動度、on/off比を有し、さらには溶液状態での安定性を有するような、新規な電荷輸送性材料を用いた半導体性組成物の開発が待望されている。
【特許文献1】特開平5−55568号公報
【特許文献2】特開平5−190877号公報
【特許文献3】特開平8−264805号公報
【特許文献4】特開平11−195790号公報
【特許文献5】特開2003−155289号公報
【特許文献6】国際公開第03/016599号パンフレット
【特許文献7】米国特許第6690029号明細書
【非特許文献1】『サイエンス』(Science)誌289巻、599ページ(2000)
【非特許文献2】『ネイチャー』(Nature)誌403巻、521ページ(2000)
【非特許文献3】『アドバンスド・マテリアル』(Advanced Material)誌、2002年、第2号、99ページ
【非特許文献4】Science,2004,303,5664,1644−1646
【非特許文献5】Org.Lett.,vol.4(2002),15ページ
【非特許文献6】J.Am.Chem.Soc.,vol.127(2005),4986ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、酸化安定性、経時安定性及び溶剤溶解性が向上した有機半導体材料を提供し、該有機半導体材料を塗布することによって有機半導体膜が形成可能であり、得られた有機半導体膜を用いて、キャリア移動度が高い、有機半導体デバイス、有機薄膜トランジスタ及び、該デバイスまたは該トランジスタを具備する有機EL素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の上記目的は下記の構成(1)〜(12)により達成された。
【0018】
(1)
下記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物を含有することを特徴とする有機半導体材料。
【0019】
【化1】

【0020】
〔式中、R1は置換基を表し、R2〜R6は水素原子または置換基を表す。ただし、R3〜R6の少なくとも1つはアルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を表し、また、R3とR4、及び、R5とR6で、各々環を形成することはない。n1+n2は0〜2以下の整数を表す。〕
(2)
前記一般式(1)のR2が下記一般式(a)で表される基であることを特徴とする前記(1)に記載の有機半導体材料。
【0021】
【化2】

【0022】
〔式中、R1’は置換基を表す。〕
(3)
前記一般式(1)のR3またはR4、R5またはR6が、各々芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の有機半導体材料。
【0023】
(4)
前記一般式(1)のR1、R1’が、各々分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、またはSi(R)3基(Rは、置換基を表す。)で表されることを特徴とする前記(2)または(3)に記載の有機半導体材料。
【0024】
(5)
前記一般式(1)のR1、R1’が、各々Si(R)3基(Rは置換基を表す。)で表される基であることを特徴とする前記(2)または(3)に記載の有機半導体材料。
【0025】
(6)
下記一般式(2)で表される部分構造を有する化合物を含有することを特徴とする有機半導体材料。
【0026】
【化3】

【0027】
〔式中、R1及びR1’は置換基を表し、R7〜R10は、各々水素原子または置換基を表し、各々互いに結合して環を形成しても良い。n1+n2は0〜2の整数を表す。〕
(7)
前記一般式(2)のR1、R1’が、各々分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、またはSi(R)3基(Rは、置換基を表す。)で表されることを特徴とする前記(6)に記載の有機半導体材料。
【0028】
(8)
前記一般式(2)のR1及びR1’が、各々Si(R)3(Rは置換基を表す。)で表される基であることを特徴とする前記(6)に記載の有機半導体材料。
【0029】
(9)
前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の有機半導体材料を含有することを特徴とする有機半導体膜。
【0030】
(10)
前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の有機半導体材料を、有機溶媒に溶解し、得られた溶液を塗布・乾燥することによって形成されることを特徴とする有機半導体膜。
【0031】
(11)
前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の有機半導体材料を用いることを特徴とする有機半導体デバイス。
【0032】
(12)
前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の有機半導体材料を半導体層に用いることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、酸化安定性、経時安定性及び溶剤溶解性が向上した有機半導体材料を提供し、該有機半導体材料を塗布することによって有機半導体膜が形成可能であり、得られた有機半導体膜を用いて、キャリア移動度が高い、有機半導体デバイス、有機薄膜トランジスタ及び、該デバイスまたは該トランジスタを具備する有機EL素子を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の有機半導体材料においては、請求項1〜8のいずれか1項に規定される構成を用いることにより、薄膜トランジスタ用途に有用な有機半導体膜を得ることが出来る。また、該有機半導体膜を用いて作製した有機薄膜トランジスタ(有機TFTともいう)は、キャリア移動度が高く、良好なON/OFF特性を示す等、優れたトランジスタ特性を示すことがわかった。また、有機TFTを具備した有機エレクトロルミネッセンス素子は、良好な発光特性を示すことが判った。
【0035】
以下、本発明に係る各構成要素の詳細について、順次説明する。
【0036】
《有機半導体材料》
本発明の有機半導体材料について説明する。
【0037】
従来公知の有機半導体材料としては、ペンタセンに代表されるアセン類などのように、芳香環が2環以上直線的に縮合した化合物は高移動度材料としてよく知られている。
【0038】
しかし、従来公知のアセン類等は、環数が増加するにつれて酸化や二量体への転化が起きやすい傾向があり、また、縮合環数の多い芳香環は分子間凝集力が強く、そのため溶媒溶解性が低く溶液を用いたプロセスに適用することが難しいという問題点があった。
【0039】
上記課題について本発明の研究者らが検討を重ねた結果、従来公知のアセン類の中でも環数3以下のアセンを骨格として用いることにより、酸化に対してより安定性の高い化合物が得られることを見出した。
【0040】
更に、環数が3以下のアセン誘導体骨格に、電子的に吸引性のエチニル基を置換させることにより、酸化安定性がさらに向上し、また、前記エチニル基以外に、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいう)または、芳香族複素環基(ヘテロアリール基ともいう)等を置換基として持たせることにより、π電子雲の拡大したπ共役面の大きい、且つ、酸化に対し安定な化合物が得られた。
【0041】
また、チオフェン環のように、分子の平面性が維持されるような基を導入することにより、分子間のπスタックがより促進され、密に分子が配列した膜を得ることができた。
【0042】
また、従来公知のアセン類の一例であるペンタセンやセクシチオフェンのような平面性が高い分子は難溶であることが多いが、本発明の有機半導体材料に係る、上記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物や、上記一般式(2)で表される部分構造を有する化合物は、いずれもアセン骨格のペリ位に置換エチニル基を導入することによって溶媒に対する溶解性が大きく向上させることができた。
【0043】
更に、エチニル基の置換基として、シリル基を導入することにより ペンタセンに代表されるようなヘリングボーン構造ではなく“Face−to−face”構造をとることが可能となった。
【0044】
以上から、酸化安定性が高く、高移動度の材料を提供することが可能となった。
【0045】
ここで、本発明における芳香環とは、特に記載がない場合、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環を示す。芳香族炭化水素環、芳香族複素環については、後で詳細に説明する。
【0046】
《一般式(1)で表される部分構造を有する化合物》
本発明に係る一般式(1)で表される部分構造を有する化合物について説明する。
【0047】
本発明の有機半導体材料は、一般式(1)で表される部分構造を有することが特徴であり、前記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物が少なくとも主成分として含まれていることが特徴である。ここで、主成分とは有機半導体材料の総質量の50質量%以上含まれていることを示す。もちろん、一般式(1)で表される部分構造を有する化合物が、本発明の有機半導体材料において、100質量%の含有量で含まれていてもよい。
【0048】
一般式(1)において、R1〜R6で各々表される置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、tert−オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、イソプロペニル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(ヘテロアリール基ともいい、例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、等が挙げられる。
【0049】
これらの置換基は、上記の置換基によって更に置換されていてもよい。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0050】
中でも、一般式(1)において、R2で表される置換基は、前記一般式(a)で表される基であることが好ましく、ここで、一般式(a)において、R1’で表される置換基は、上記一般式(1)において、R1〜R6で各々表される置換基と同義である。
【0051】
更に、一般式(1)においては、R1、R1’が、各々分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、またはSi(R)3基(Rは、置換基を表す。)で表されることが好ましい。
【0052】
一般式(1)において、R1、R1’で各々表される分岐状アルキル基としては、一般式(1)において、R1〜R6で各々表される置換基のアルキル基の中で、例えば、イソプロピル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−オクチル基等が挙げられる。
【0053】
一般式(1)において、R1、R1’で各々表される、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基は、上記一般式(1)において、R1〜R6で各々表される置換基として記載されている、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基と各々同義である。
【0054】
一般式(1)において、R1、R1’で各々表されるSi(R)3基のRで表される置換基は、上記一般式(1)において、R1〜R6で各々表される置換基と同義である。
【0055】
また、一般式(1)においては、R3またはR4、R5またはR6が、各々前記芳香族炭化水素環基または前記芳香族複素環基であることが好ましく、ここで、前記芳香族炭化水素基、前記芳香族複素環基は、各々、上記一般式(1)において、R1〜R6で各々表される置換基として記載されている、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基と各々同義である。
【0056】
《一般式(2)で表される部分構造を有する化合物》
本発明に係る一般式(1)で表される部分構造を有する化合物としては、本発明に係る一般式(2)で表される部分構造を有する化合物が好ましい。
【0057】
一般式(2)において、R1、R1’で各々表される置換基は、上記一般式(1)において、R1、R1’で各々表される置換基と同義である。
【0058】
一般式(2)において、R7〜R10で各々表される置換基は、上記一般式(1)において、R1〜R6で各々表される置換基と同義である。
【0059】
以下、本発明に係る一般式(1)または(2)で表される部分構造を有する化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0060】
【化4】

【0061】
【化5】

【0062】
【化6】

【0063】
【化7】

【0064】
【化8】

【0065】
【化9】

【0066】
【化10】

【0067】
【化11】

【0068】
《合成例》
本発明に係る一般式(1)または(2)で表される部分構造を有する化合物の合成は、従来公知の複素環化合物の合成法を参照することにより合成可能であるが、ここで、上記に具体例としてあげた例示化合物13の合成例を一例として示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0069】
《例示化合物13の合成》
【0070】
【化12】

【0071】
上記化合物の合成スキームの概要を以下に示す。
【0072】
まず、J.Am.Chem.Soc.,vol.127(2005),4986−4987頁を参考に中間体2を合成した。更に、中間体2と2−thienyl−5−thiopheneboronic acidよりSuzuki Couplingによって中間体3を合成した。中間体3をNBSによってブロモ化し中間体4とした後、フェニルボロン酸とのSuzuki Couplingによって例示化合物13を合成した。
【0073】
《有機半導体膜》
本発明に係る有機半導体膜について説明する。
【0074】
本発明の有機半導体材料は適当な有機溶媒(後述する)と混合し、溶液または分散液として用いることができる。
【0075】
本発明の有機半導体材料を含有する溶液を用いて有機半導体膜を作製する場合、使用する有機溶媒は何を用いても構わず、また2種以上の有機溶媒を混合して用いてもよいが、好ましくは非ハロゲン系の溶媒を1種以上含んでおり、より好ましくは非ハロゲン系の溶媒のみで構成されていることが望ましい。
【0076】
《室温で溶液または分散液》
本発明の有機半導体膜は、本発明の有機半導体材料を下記に示す有機溶媒と混合して調製した、室温で溶液または分散液を用いて膜形成する工程を経て作製されることが好ましい。ここで、室温で溶液または分散液とは、有機半導体材料と有機溶媒とを10℃〜80℃の条件下で混合した時に、溶液または分散液が形成されることが好ましく、分散液とは、有機半導体材料が粒子状に分散された状態を表すが、分散液中に、有機半導体材料が部分的溶解している状態も含まれる。
【0077】
また、分散液の一態様としては、例えば、80℃の温度条件下では溶解し、溶液を形成するが、室温(通常25℃前後の温度を示す)に戻すと有機半導体材料の粒子、凝集体、析出物等が有機溶媒中に分散されている状態等を挙げることが出来る。
【0078】
(有機溶媒)
上記の溶液または分散液の調製に用いる有機溶媒としては、特に制限はなく、単一溶媒でも混合溶媒でもよいが、好ましくは、非ハロゲン系溶媒が用いられる。本発明に用いられる非ハロゲン系溶媒としては、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族系、シクロヘキサンなどの脂環式系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、アニソール、ベンジルエチルエーテル、エチルフェニルエーテル、ジフェニルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、エチルセロソルブ等のエステル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン系溶媒、その他ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルホルムアミド、1,3−ジオキソラン等が挙げられる。
【0079】
また、併用される有機溶剤は、特に制限されるものではないが、好ましいものとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ピロリドン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、β−メトキシプロピオン酸メチル、β−エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、ヘキサン、リモネン、シクロヘキサンなどが挙げられる。これらの有機溶媒は2種類以上を組合せて用いることもできる。
【0080】
また、エステル系溶剤としては、オキシイソ酪酸アルキルエステル等を用いてもよく、オキシイソ酪酸エステルとしては、α−メトキシイソ酪酸メチル、α−メトキシイソ酪酸エチル、α−エトキシイソ酪酸メチル、α−エトキシイソ酪酸エチルなどのα−アルコキシイソ酪酸アルキルエステル;β−メトキシイソ酪酸メチル、β−メトキシイソ酪酸エチル、β−エトキシイソ酪酸メチル、β−エトキシイソ酪酸エチルなどのβ−アルコキシイソ酪酸アルキルエステル;およびα−ヒドロキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸エチルなどのα−ヒドロキシイソ酪酸アルキルエステルが挙げられ、特にα−メトキシイソ酪酸メチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、β−エトキシイソ酪酸メチルまたはα−ヒドロキシイソ酪酸メチル等を用いることができる。
【0081】
《有機半導体デバイス、有機薄膜トランジスタ(有機TFTともいう)》
本発明の有機半導体デバイス、有機薄膜トランジスタ(本願では、有機TFTともいう)について説明する。
【0082】
本発明の有機半導体材料は、有機半導体膜、有機半導体デバイス、有機薄膜トランジスタ(有機TFT)等の半導体層に用いられることにより、良好に駆動する有機半導体デバイス、有機TFTを提供することができる。
【0083】
有機TFT(有機薄膜トランジスタ)は、支持体上に、半導体層として有機半導体チャネルで連結されたソース電極とドレイン電極を有し、その上にゲート絶縁層を介してゲート電極を有するトップゲート型と、支持体上にまずゲート電極を有し、ゲート絶縁層を介して有機半導体チャネルで連結されたソース電極とドレイン電極を有するボトムゲート型に大別される。
【0084】
本発明の有機半導体材料を有機TFTの半導体層に設置するには、真空蒸着により基板上に設置することもできるが、適切な溶剤に溶解し必要に応じ添加剤を加えて調製した溶液をキャストコート、スピンコート、印刷、インクジェット法、アブレーション法等によって基板上に設置するのが好ましい。
【0085】
この場合、本発明に係る有機半導体化合物を溶解する溶剤は、該有機半導体化合物を溶解して適切な濃度の溶液が調製できるものであれば格別の制限はないが、具体的にはジエチルエーテルやジイソプロピルエーテル等の鎖状エーテル系溶媒、テトラヒドロフランやジオキサンなどの環状エーテル系溶媒、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルムや1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、トルエン、o−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、m−クレゾール等の芳香族系溶媒、N−メチルピロリドン、2硫化炭素等を挙げることができる。これらの溶媒のうち、非ハロゲン系溶媒を含む溶媒が好ましく、非ハロゲン系溶媒で構成することが好ましい。
【0086】
本発明において、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を形成する材料は導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられるが、特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITOおよび炭素が好ましい。あるいはドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体なども好適に用いられる。中でも半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。
【0087】
電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅などの金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーションなどにより形成してもよい。更に導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
【0088】
ゲート絶縁層としては種々の絶縁膜を用いることができるが、特に比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウムなどが挙げられる。それらのうち好ましいのは酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物も好適に用いることができる。
【0089】
上記皮膜の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法などのドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などの塗布による方法、印刷やインクジェットなどのパターニングによる方法などのウェットプロセスが挙げられ、材料に応じて使用できる。
【0090】
ウェットプロセスは、無機酸化物の微粒子を、任意の有機溶剤あるいは水に必要に応じて界面活性剤などの分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えば、アルコキシド体の溶液を塗布、乾燥する、いわゆるゾルゲル法が用いられる。これらのうち好ましいのは、大気圧プラズマ法とゾルゲル法である。
【0091】
大気圧下でのプラズマ製膜処理による絶縁膜の形成方法は、大気圧または大気圧近傍の圧力下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、基材上に薄膜を形成する処理で、その方法については特開平11−61406号公報、同11−133205号公報、特開2000−121804号公報、同2000−147209号公報、同2000−185362号公報等に記載されている(以下、大気圧プラズマ法とも称する)。これによって高機能性の薄膜を、生産性高く形成することができる。
【0092】
また有機化合物皮膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、およびシアノエチルプルラン等を用いることもできる。有機化合物皮膜の形成法としては、前記ウェットプロセスが好ましい。無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は積層して併用することができる。またこれら絶縁膜の膜厚としては、一般に50nm〜3μm、好ましくは100nm〜1μmである。
【0093】
また、支持体はガラスやフレキシブルな樹脂製シートで構成され、例えば、プラスチックフィルムをシートとして用いることができる。前記プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。このように、プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができるとともに、衝撃に対する耐性を向上できる。
【0094】
以下に、本発明に係る有機半導体化合物を用いて形成された有機薄膜を用いた有機薄膜トランジスタ(有機TFT)について説明する。
【0095】
図1は、本発明に係る有機TFTの構成例を示す図である。同図(a)は、支持体6上に金属箔等によりソース電極2、ドレイン電極3を形成し、両電極間に本発明の有機薄膜トランジスタ材料からなる有機半導体層1を形成し、その上に絶縁層5を形成し、更にその上にゲート電極4を形成して電界効果トランジスタを形成したものである。同図(b)は、有機半導体層1を、(a)では電極間に形成したものを、コート法等を用いて電極及び支持体表面全体を覆うように形成したものを表す。(c)は、支持体6上に先ずコート法等を用いて、有機半導体層1を形成し、その後ソース電極2、ドレイン電極3、絶縁層5、ゲート電極4を形成したものを表す。
【0096】
同図(d)は、支持体6上にゲート電極4を金属箔等で形成した後、絶縁層5を形成し、その上に金属箔等で、ソース電極2及びドレイン電極3を形成し、該電極間に本発明の有機薄膜トランジスタ材料により形成された有機半導体層1を形成する。その他同図(e)、(f)に示すような構成を取ることもできる。
【0097】
図2は、有機TFTシートの概略等価回路図の1例を示す図である。
【0098】
有機TFTシート10はマトリクス配置された多数の有機TFT11を有する。7は各TFT11のゲートバスラインであり、8は各TFT11のソースバスラインである。各TFT11のソース電極には、出力素子12が接続され、この出力素子12は例えば液晶、電気泳動素子等であり、表示装置における画素を構成する。画素電極は光センサの入力電極として用いてもよい。図示の例では、出力素子として液晶が、抵抗とコンデンサからなる等価回路で示されている。13は蓄積コンデンサ、14は垂直駆動回路、15は水平駆動回路である。
【0099】
また、本発明の有機半導体材料を用いた有機TFTは、例えばSID2005, session49−1,2,3で紹介されている技術に適用することができ、a−Siトランジスタを本発明の有機半導体トランジスタに置き換えることで良好な特性を得ることが可能である。
【0100】
以下、技術適用の一例として、本発明の有機TFTを具備している有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)について記載する。
【0101】
《有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)》
本発明の有機半導体デバイスまたは有機薄膜トランジスタは、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子ともいう)に具備することができ、本発明の有機EL素子は、例えば、陽極と陰極との間に有機EL層(有機化合物層ともいう)が挟まれた状態のものが挙げられるが、これらの構成としては、従来公知の層構成、有機EL層の材料等を用いて作製することが出来る。例えば、Nature,395巻,151〜154頁の文献等が参照出来る。
【0102】
本発明の有機EL素子を発光(例えば、表示装置、照明装置等に適用)させるにあたっては、高い発光輝度を得、且つ、発光寿命が長い等の効果を得る観点から、本発明の有機半導体デバイスまたは、本発明の有機薄膜トランジスタを具備していることが好ましい。
【実施例】
【0103】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。ここで、実施例に用いる、比較用の有機半導体材料(有機半導体化合物ともいう)の構造式を以下に示す。
【0104】
【化13】

【0105】
実施例1
《有機薄膜トランジスタ1の作製》
ゲート電極としての比抵抗0.01Ω・cmのSiウェハーに、厚さ2000Åの熱酸化膜を形成してゲート絶縁層とした後、オクタデシルトリクロロシランによる表面処理を行った。
【0106】
このような表面処理を行ったSiウェハー上に、比較化合物(1)(ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(regioregular、アルドリッチ社製、平均分子量89000、PHT))を窒素雰囲気下で窒素を30分間バブリングしたトルエンに対して0.5質量%の濃度で溶解させ、窒素雰囲気下でスピンコート塗布(回転数2500rpm、15秒)し、自然乾燥することによりキャスト膜を形成して、窒素雰囲気下で50℃、30分間の熱処理を施した。
【0107】
更に、この膜の表面にマスクを用いて金を蒸着してソースおよびドレイン電極を形成した。ソースおよびドレイン電極は幅100μm、厚さ200nmで、チャネル幅W=3mm、チャネル長L=20μmの有機薄膜トランジスタ1を作製した。
【0108】
《有機薄膜トランジスタ2の作製》
有機薄膜トランジスタ1の作製において、比較化合物(1)を比較化合物(2)(ペンタセン、アルドリッチ社製市販試薬を昇華精製して用いた)に変更した以外は同様にして、有機薄膜トランジスタ2を作製した。
【0109】
《有機薄膜トランジスタ3の作製》
比較化合物3は、に記載の方法で合成した。
【0110】
有機薄膜トランジスタ1の作製において、比較化合物2を比較化合物3に変更した以外は同様にして、有機薄膜トランジスタ3を作製した。
【0111】
《有機薄膜トランジスタ4の作製》
有機薄膜トランジスタ1の作製において、比較化合物2を比較化合物4(ルブレン、アルドリッチ社製、市販試薬を昇華製精して用いた)に変更した以外は同様にして、有機薄膜トランジスタ4を作製した。
【0112】
《有機薄膜トランジスタ5の作製》
比較化合物5は、J.Am.Chem.Soc.,vol.123(2001),p9486,supporting informationに記載の方法で合成した。
有機薄膜トランジスタ1の作製において、比較化合物2を比較化合物5に変更した以外は同様にして、有機薄膜トランジスタ5を作製した。
【0113】
《有機薄膜トランジスタ6〜10の作製》
有機薄膜トランジスタ2の作製において、比較化合物1の代わりに、表1に記載の本発明の有機半導体材料に変更した以外は同様にして、有機薄膜トランジスタ6〜10を作製した。
【0114】
《キャリア移動度及びON/OFF値の評価》
得られた有機薄膜トランジスタ1〜10について、各素子のキャリア移動度とON/OFF値を、素子作成直後に測定した。尚、本発明では、I−V特性の飽和領域からキャリア移動度を求め、さらに、ドレインバイアス−50Vとし、ゲートバイアス−50V及び0Vにしたときのドレイン電流値の比率からON/OFF比を求めた。
【0115】
また同様の評価を、各素子を40℃、90%RHの環境室に48時間投入したのち、キャリア移動度・ON/OFF比の再測定を行った。
【0116】
【表1】

【0117】
表1から、本発明の有機半導体材料を用いて作製した有機薄膜トランジスタ5〜10では、作製直後においてキャリア移動度・ON/OFF比ともに優れた特性を示し、かつ、耐久試験後においても、移動度が10-2台以上、ON/OFF比も105以上であり,経時劣化が少なく高い耐久性を併せ持つということが分かる。
【0118】
実施例2
《有機EL素子の作製》
有機EL素子の作製は、Nature,395巻,151〜154頁に記載の方法を参考にして、図3に示したような封止構造を有するトップエミッション型の有機EL素子を作製した。尚、図3において、101は基板、102aは陽極、102bは有機EL層(具体的には、電子輸送層、発光層、正孔輸送層等が含まれる)、102cは陰極を示し、陽極102a、有機EL層102b、陰極102cにより、発光素子102が形成されている。103は封止膜を示す。尚、本発明の有機EL素子は、ボトムエミッション型でもトップエミッション型のどちらでもよい。
【0119】
本発明の有機EL素子と本発明の有機薄膜トランジスタ(ここで、本発明の有機薄膜トランジスタは、スイッチングトランジスタや駆動トランジスタ等として用いられる)を組み合わせて、アクティブマトリクス型の発光素子を作製したが、その場合は、例えば、図4に示すように、ガラス基板601上にTFT602(有機薄膜トランジスタ602でもよい)が形成されている基板を用いる態様が一例として挙げられる。ここで、TFT602の作製方法は公知のTFTの作製方法が参照できる。勿論、TFTとしては、従来公知のトップゲート型TFTであってもボトムゲート型TFTであっても構わない。
【0120】
上記で作製した有機EL素子は、単色、フルカラー、白色等の種々の発光形態において、良好な発光特性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明に係る有機TFTの構成例を示す図である。
【図2】本発明の有機TFTの概略等価回路図の1例である。
【図3】封止構造を有する有機EL素子の一例を示す模式図である。
【図4】有機EL素子に用いる、TFTを有する基板の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0122】
1 有機半導体層
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 ゲート電極
5 絶縁層
6 支持体
7 ゲートバスライン
8 ソースバスライン
10 有機TFTシート
11 有機TFT
12 出力素子
13 蓄積コンデンサ
14 垂直駆動回路
15 水平駆動回路
101、201 基板
102 有機EL素子
102a、202 陽極
102b 有機EL層
102c、204 陰極
103 封止膜
205 駆動用素子
206 正孔輸送層
207 発光層
208 電子輸送層
601 基板
602 TFT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物を含有することを特徴とする有機半導体材料。
【化1】

〔式中、R1は置換基を表し、R2〜R6は水素原子または置換基を表す。ただし、R3〜R6の少なくとも1つはアルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を表し、また、R3とR4、及び、R5とR6で、各々環を形成することはない。n1+n2は0〜2以下の整数を表す。〕
【請求項2】
前記一般式(1)のR2が下記一般式(a)で表される基であることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体材料。
【化2】

〔式中、R1’は置換基を表す。〕
【請求項3】
前記一般式(1)のR3またはR4、R5またはR6が、各々芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機半導体材料。
【請求項4】
前記一般式(1)のR1、R1’が、各々分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、またはSi(R)3基(Rは、置換基を表す。)で表されることを特徴とする請求項2または3に記載の有機半導体材料。
【請求項5】
前記一般式(1)のR1、R1’が、各々Si(R)3基(Rは置換基を表す。)で表される基であることを特徴とする請求項2または3に記載の有機半導体材料。
【請求項6】
下記一般式(2)で表される部分構造を有する化合物を含有することを特徴とする有機半導体材料。
【化3】

〔式中、R1及びR1’は置換基を表し、R7〜R10は、各々水素原子または置換基を表し、各々互いに結合して環を形成しても良い。n1+n2は0〜2の整数を表す。〕
【請求項7】
前記一般式(2)のR1、R1’が、各々分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、またはSi(R)3基(Rは、置換基を表す。)で表されることを特徴とする請求項6に記載の有機半導体材料。
【請求項8】
前記一般式(2)のR1及びR1’が、各々Si(R)3(Rは置換基を表す。)で表される基であることを特徴とする請求項6に記載の有機半導体材料。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機半導体材料を含有することを特徴とする有機半導体膜。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機半導体材料を、有機溶媒に溶解し、得られた溶液を塗布・乾燥することによって形成されることを特徴とする有機半導体膜。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機半導体材料を用いることを特徴とする有機半導体デバイス。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機半導体材料を半導体層に用いることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−88115(P2007−88115A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273167(P2005−273167)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】