説明

有機廃棄物の堆肥化処理方法およびその装置

【課題】 化石燃料の使用を大幅に削減し、ランニングコストを低減することが可能な堆肥化処理方法およびその装置を提供する。
【解決手段】 家畜の糞尿や生ゴミ等の有機廃棄物を熟成発酵処理する熟成発酵工程と、該熟成発酵工程で生じる臭気ガスを回収して脱臭剤により吸着・脱臭処理する脱臭工程と、前記熟成発酵工程の前工程に、熱風発生室にて生成した熱風を用いて前記有機廃棄物の水分を蒸発させ、発酵条件を整える乾燥前処理工程と、を具備した有機廃棄物の堆肥化処理方法であって、前記乾燥前処理工程で使用する熱風の熱源として、前記脱臭工程にて臭気ガスを吸着・脱臭処理した後の脱臭能力が低下した脱臭剤を燃焼したときの燃焼熱を利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機廃棄物の堆肥化処理方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家畜の糞尿や生ゴミ等の有機廃棄物は、堆肥化処理して再び肥料として利用されている。堆肥化処理には、堆積式(有機廃棄物に籾殻などの水分調整剤を混合して水分60〜70%に調整し、これを堆積させて自然発酵、腐熟させる方式)や、機械的攪拌式(有機廃棄物に熱風を送風しながら攪拌して好気的発酵を施し、この発酵熱によって有機廃棄物中の水分を蒸発させて発酵させる方式)などが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、堆積式にあっては、家畜の糞尿におが屑や籾殻などを混合させて堆積させるので、その容量が大きくなり、広い保管場所が必要となる問題がある。また、攪拌式にあっては、熱風を生成するための重油バーナを使用しており、昨今の化石燃料の高騰などにより、大幅にランニングコストがかかる問題がある。
【0003】
一方、バイオマスを利用した熱風発生炉も周知であるが、燃料となるバイオマス原料は水分40〜50%の高水分であり、熱風発生炉の前段において別途乾燥装置を設けて、温度100〜300℃で加熱して原料を乾燥させなければ着火して燃焼させることができず、原料を乾燥するためにバーナに供する重油などの化石燃料が必要であった(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005-231912号公報
【特許文献2】特開2006-328326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題点にかんがみ、化石燃料の使用を大幅に削減し、ランニングコストを低減することが可能な堆肥化処理方法およびその装置を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、家畜の糞尿や生ゴミ等の有機廃棄物を熟成発酵処理する熟成発酵工程と、該熟成発酵工程で生じる臭気ガスを回収して脱臭剤により吸着・脱臭処理する脱臭工程と、前記熟成発酵工程の前工程に、熱風発生室にて生成した熱風を用いて前記有機廃棄物の水分を蒸発させ、発酵条件を整える乾燥前処理工程と、を具備した有機廃棄物の堆肥化処理方法であって、前記乾燥前処理工程で使用する熱風の熱源として、前記脱臭工程にて臭気ガスを吸着・脱臭処理した後の脱臭能力が低下した脱臭剤を燃焼したときの燃焼熱を利用する、という技術的手段を講じた。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、前記脱臭剤は、木の樹皮を粉砕したバークチップ、籾殻又はおが屑チップなどの木質系バイオマスとなし、前記乾燥前処理工程で使用する熱風の熱源として、前記脱臭工程にて吸着・脱臭処理した後の水分25%未満に低下した脱臭剤を燃焼したときの燃焼熱を利用することを特徴とする。
【0008】
さらに、請求項3記載の発明は、前記脱臭剤を燃焼したときの燃焼灰を、前記乾燥前処理工程にて処理中の有機廃棄物に水分調整剤として混合することを特徴とする。
【0009】
そして、堆肥化処理装置としての請求項4記載の発明は、家畜の糞尿や生ゴミ等の高水分の有機廃棄物に熱風を送風しながら攪拌して水分を蒸発させて発酵条件を整える乾燥機(2)と、水分を蒸発させた後の低水分の有機廃棄物を熟成発酵処理する熟成発酵機(3)と、該熟成発酵機(3)で生じた臭気ガスを回収して脱臭剤により吸着・脱臭処理する脱臭槽(4)と、を備えた有機廃棄物の堆肥化処理装置であって、前記乾燥機(2)の前工程には、前記脱臭槽(4)にて臭気ガスを吸着・脱臭処理した後の脱臭能力が低下した脱臭剤をバイオマス燃料とするバイオマス熱風発生炉(5)を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、熱風発生室にて生成した熱風を用いて前記有機廃棄物の水分を蒸発させ、発酵条件を整える乾燥前処理工程で使用する熱風の熱源として、前記脱臭工程にて臭気ガスを吸着・脱臭処理した後の脱臭能力が低下した脱臭剤を燃焼したときの燃焼熱を利用するものであり、温度400〜500℃、風量23〜25Nm/minの熱風を乾燥前処理工程に供給することが可能であり、該乾燥前処理工程では、例えば、有機廃棄物の品温を約70〜80℃程度に維持し、投入時に水分60〜70%であった有機廃棄物を、排出時には水分50〜60%まで乾減されるような乾燥が可能となる。このときの使用燃料の燃料効率を試算すれば、日量1tonの木質系バイオマスからなる脱臭剤を原料とする熱風発生炉において、温度400〜500℃の熱風として取り出される熱量は約10000MJであり、A重油に換算して256リットル必要であるのに対し、本発明の熱風発生炉のA重油の使用量はおおよそ着火に必要なエネルギのみとなるために1リットル程度でよく、A重油の使用量を約99%以上節減することができ、化石燃料の使用を削減し、ランニングコストを低減することが可能となる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、前記脱臭剤は、木の樹皮を粉砕したバークチップ、籾殻又はおが屑チップなどの木質系バイオマスとなし、前記乾燥前処理工程で使用する熱風の熱源として、前記脱臭工程にて吸着・脱臭処理した後の水分25%未満に低下した脱臭剤を燃焼したときの燃焼熱を利用するので、例えば、使用済の脱臭剤は水分10%,見掛け密度200Kg/mとなっており、一般的なバイオマス熱風発生炉で使用されるバイオマス原料の水分(例えば、水分40〜50%)よりも低く、着火性がよく、前工程に何ら乾燥処理を必要とせず、直ちにバイオマス燃料として用いることができ、更なるランニングコストの低減が可能となる。
【0012】
さらに、請求項3記載の発明は、前記脱臭剤を燃焼したときの燃焼灰を、前記乾燥前処理工程にて処理中の有機廃棄物に水分調整剤として混合するものであり、脱臭剤を燃焼したときの副産物である燃焼灰を廃棄することなく、有効利用することが可能となる。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、家畜の糞尿や生ゴミ等の高水分の有機廃棄物に熱風を送風しながら攪拌して水分を蒸発させて発酵条件を整える乾燥機(2)と、水分を蒸発させた後の低水分の有機廃棄物を熟成発酵処理する熟成発酵機(3)と、該熟成発酵機(3)で生じた臭気ガスを回収して脱臭剤により吸着・脱臭処理する脱臭槽(4)と、を備えた有機廃棄物の堆肥化処理装置であって、前記乾燥機(2)の前工程には、前記脱臭槽(4)にて臭気ガスを吸着・脱臭処理した後の脱臭能力が低下した脱臭剤をバイオマス燃料とするバイオマス熱風発生炉(5)を備えた堆肥化処理装置であり、脱臭槽(4)での使用済の脱臭剤をバイオマス熱風発生炉(5)の燃料として有効利用すること、及びバイオマス熱風発生炉(5)での燃焼後の燃焼灰を乾燥機(2)に投入して、処理中の有機廃棄物の水分調整剤として有効利用することが可能となり、廃棄予定の脱臭剤及び燃焼灰からなる副産物を有効利用して循環型の堆肥化処理装置を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の堆肥化処理方法およびその装置の実施の一形態を示す概要図であり、家畜の糞尿や生ゴミ等の高水分の有機廃棄物1(wet)に熱風を送風しながら攪拌して水分を蒸発させて発酵条件を整える二軸式多目的乾燥機2と、水分を蒸発させた後の低水分の有機廃棄物1(dry)を熟成発酵処理する熟成発酵機3と、該熟成発酵機3で生じた臭気ガスを回収して脱臭剤により吸着・脱臭処理する脱臭槽4と、前記二軸式多目的乾燥機2の前工程に設けられ、該二軸式多目的乾燥機2に送り込む熱風を生成するため、籾殻,おが屑,木質チップなどのバイオマス燃料(再生可能な生物由来の有機性資源であって、化石燃料を除いたもの)を燃焼させて得られる熱を利用して熱風を生成するバイオマス熱風発生炉5と、を備えている。
【0015】
上記二軸式多目的乾燥機2は、例えば、図1のように直方体状の機枠6内に形成した発酵処理槽7と、該処理槽7内に回転自在に支持される回転軸9と、該回転軸9に対して放射状に植設された多数の攪拌パドル8…と、前記処理槽7と機枠6の外殻との間に介装され、前記バイオマス熱風発生炉5から送給される熱風と前記処理槽(7)内の有機廃棄物との熱交換を行う熱交換部10と、を備えて構成される。前記発酵処理槽7は半円筒状ドラムを複数横設して、横断面を略W字状に形成した発酵処理槽7とするのが好ましく、この処理槽7の凹部長手方向にそれぞれ回転軸9を回転可能に軸架して二軸式の処理槽7とするとよい。
前記発酵処理槽7の上部には、有機廃棄物1(wet)の投入口11が、処理槽7の一側部下方には処理済みの有機廃棄物の排出口12がそれぞれ設けられ、各開口には、シリンダ等によって開閉自在に形成された開閉扉13,14が被着される。処理槽7の他側部には、前記回転軸9を回転駆動するギアモータ15が設けられる。また、処理槽7と機枠6の外殻との間に介装される熱交換部10は、処理槽7の底部7a側に設けた底部熱交換部10aと、処理槽7の横断面W字の両側面部7b,7b側にそれぞれ設けられる側面部側熱交換部10b,10bとからなり、機外から送給される熱風との熱交換が十分に行われるように構成されている。なお、符号16は機外から送給される熱風を供給するための熱風供給管であり、符号17は熱交換部10を通過した後の空気を排出する熱風排出管であり、符号18は機外から送給される熱風を熱交換部10に導入し、かつ、排気を行うための吸引排気ファンである。
【0016】
二軸式多目的乾燥機2の前工程に設けられるバイオマス熱風発生炉4は、機枠19内に耐火煉瓦等の耐火物を使用して築造(築炉)された横型円筒状の燃焼炉20と、該燃焼炉20内に供給されたバイオマス燃料に着火を行うためのガンタイプバーナ21と、前記燃焼炉20内部へ燃焼空気を供給する燃焼空気供給管22と、該燃焼空気供給管22を囲繞するように配設され、熱風発生炉4全体を空冷するための冷却管23と、で構成され、前記燃焼炉20の一端には、バイオマス燃料を燃焼炉20内に繰り出すための燃料供給機24が配設され、他端側には、バイオマス燃料を燃焼させる際に生じる熱風と燃焼灰とをそれぞれ回収する分離室25が配設される。該分離室25の下部には燃焼灰を回収するための回収ホッパー26及び排出スクリュー27が設けられ、回収ホッパー26の下流側には、燃焼灰を機外に搬出するための搬送スクリュー28が連絡されている。
一方、分離室25の上部には熱風を回収するためのフード状の排気ダクト29が設けられ、該排気ダクト29の下流側には、回収した熱風から微細粉塵を分離・除去するためのサイクロン30が連絡されている。符号31は前記冷却管23内の空気を吸気するとともに、前記燃焼空気供給管22内及び排気ダクト29内にそれぞれ送風する送風ファンであり、符号32は前記排出スクリュー27の熱変形を防止すべく、排出スクリュー27の中空部に通水を行って水冷を行うためのクーリングタワーであり、符号33はバイオマス燃料の貯留ホッパーである。
【0017】
前記二軸式多目的乾燥機2の後工程に設けられ、低水分の有機廃棄物を熟成発酵処理する熟成発酵機3は、例えば、図1のように、発酵槽34と、該発酵槽34に設けられて原料を投入するための一端側の原料投入部35と、堆肥が搬出される他端側の堆肥搬出部36と、投入された堆肥を攪拌するためのロータリー撹拌機37と、建家38などから構成されている。
発酵槽34は、低水分の有機廃棄物1(dry)を堆積するためにコンクリート製の長い溝形状をなしており、該発酵槽34の長手方向に沿って固定されるレールが設けられ、該レール上にロータリー攪拌機37が搭載される。そして、発酵槽34の底部には、堆積された有機廃棄物1(dry)に空気を供給して、発酵を促進するために空気供給ダクト39が敷設されている。この空気供給ダクト39には、送風機40が接続され、所定の圧力で空気が送出される構成となっている。
建家38は、発酵槽34の上方をフードなどで覆うことで構成され、発酵槽34の保温のほか、発酵の際に生じる悪臭空気などが外に出ないように多数の吸引ノズル41…が垂設され、さらに、該各吸引ノズル41…には、吸引ファン42と連絡した排気管43が接続されている。
【0018】
前記脱臭槽4には、前記熟成発酵機3で生じた悪臭空気を槽体44の下方から送り込むよう、前記排気管43から分岐した多数の噴出管45…を、槽体44,44の底面部44a,44aに臨ませてある。そして、槽体44の内部には、下部に玉石や砂利又はスノコ等で空間部を形成し、その上にバーク(木の樹皮のチップ)、籾殻又はおが屑チップ等からなる脱臭剤47を約1〜2m堆積し、該脱臭剤47に悪臭空気が下方から送り込まれ、その堆積層を通過した後に大気へ放出されるように形成されている。なお、符号46は噴出管45…を閉鎖するための閉鎖弁である。この脱臭槽4において、例えば、脱臭剤47の堆積高さを約1m、見掛風速を2mm/秒とすると、悪臭空気と脱臭剤47とが接触する時間は500秒となり、悪臭空気のアンモニア濃度が300ppm程度であれば20日間位で脱臭剤47表面からアンモニアが検出され始め、以後、脱臭能力は低下することになる。また、見掛風速を10mm/秒,アンモニア濃度が300ppm程度であるとすれば4日間程度で脱臭剤47表面からアンモニアが検出し始めることになる。
【0019】
図2は、本発明の実施形態の工程について模式的に示した図である。本実施形態において、家畜等から排出されるし尿等の汚水は、バキュームカー48によって回収され、これをスクリーンユニット49に搬送して汚水中のごみが除去され、次いで、一時貯留槽50に貯留して曝気処理が行われ、好気性条件を作成して臭気の低減が図られる。そして、原料貯留槽51による活性汚泥法等の浄化処理を行い、上澄み液は河川等に放流する一方、沈殿した高水分汚泥は二軸式多目的乾燥機2に搬送されて堆肥化処理が行われることになる。
【0020】
一方、生ゴミ等の食品残渣と、稲わら、籾がら、米ぬか、又はくず米等の農業残渣とは、回収車52等により回収して生ゴミ・農業残渣置場53に貯留するとともに、バーク、又はおが屑チップ等からなる若干の水分調整剤が加えられて水分が調整されて好気発酵が行われる。そして、数日間好気発酵された食品残渣及び農業残渣は、ホイルローダ等の運搬車54によって粉砕機55に供給されて一定粒度に整えられた後、上記同様の二軸式多目的乾燥機2に搬送されて堆肥化処理が行われることになる。また、バーク、又はおが屑チップ等の一部は、チップ置場56に一時貯留された後、前記脱臭槽4の脱臭剤として利用されることになる。
【0021】
二軸式多目的乾燥機2に供給された汚泥、食品残渣及び農業残渣は、該二軸式多目的乾燥機2にて所定水分まで乾燥されて発酵条件を整えられた後、熟成発酵機3に供給されて熟成発酵処理される。そして、熟成発酵機3から排出された堆肥化処理物は、ホイルローダ等の運搬車57によって貯留槽58に堆積し、堆肥化処理物を完熟させる。貯留槽58で完熟した堆肥化処理物は出荷するまで待機され、堆肥製品として出荷する際は、運搬車57によりホッパー59に搬送すると、篩装置60によって粒度が整えられる。そして、整粒された堆肥化製品は、製品出荷場に設けられた袋詰装置61に搬送して袋詰加工を行った後、ロボットパレタイザ62等によりパレットに積み付けられ、製品として出荷されることになる。
【0022】
次に、本発明の要部である、二軸式多目的乾燥機2、熟成発酵機3、脱臭槽4、及びバイオマス熱風発生炉5の動作について図1を参照して説明する。
【0023】
まず、バイオマス熱風発生炉5の動作を説明する。前述したように、脱臭槽4に堆積されるバークチップ、籾殻又はおが屑チップ等からなる脱臭剤47は、使用済のときは、水分10%,見掛け密度200Kg/mとなっており、一般的なバイオマス熱風発生炉で使用されるバイオマス原料の水分(例えば、水分40〜50%)よりも低く、着火性がよく、直ちにバイオマス熱風発生炉5のバイオマス燃料として用いることができる。貯留ホッパー33から燃料となる使用済脱臭剤47を供給すると、燃料供給機24により燃焼炉20内に使用済脱臭剤47が繰り出される。次に、ガンタイプバーナ21から使用済脱臭剤47に着火を行うと、使用済脱臭剤47が燃焼を開始するようになる。一方、燃焼炉20の下方からは、空気噴出孔20aから燃焼空気が供給され、燃焼が盛んになるにつれて燃焼温度が上昇し、燃焼炉20内の始端側では約1000℃の熱風が生じる。そして、燃焼炉20全体を覆う冷却管23から、管路63及び送風ファン31により吸引して空冷するとともに、送風ファン31からは管路64を介して燃焼空気供給管22及び排気ダクト29にそれぞれ分岐して送風が行われる。
【0024】
燃焼の際に生じる熱風及び燃焼灰は、燃焼炉20終端側の分離室25に至り、該分離室25において燃焼灰が回収ホッパー26及び排出スクリュー27により回収される。この際に回収される燃焼灰は、前記二軸式多目的乾燥機2に供給すれば有機廃棄物の水分調整剤として利用することができる。一方、燃焼炉20終端側に至った熱風は、分離室25上部の排気ダクト29に回収される。この際に回収される熱風は、微細粉塵が混入しているので、管路64を介してサイクロン30に供給し、微細粉塵の分離・除去を行う。そして、サイクロン30により微細粉塵の分離・除去され、熱風供給管16を通過するときの熱風は、温度が400〜500℃、風量が23〜25Nm/min(ノルマル・リューベ;0℃、1気圧状態に換算したガス流量の単位)であった。
【0025】
次に、二軸式多目的乾燥機2の動作について説明する。二軸式多目的乾燥機2の排気側に設置された吸引排気ファン18を作動させると、バイオマス熱風発生炉5からの温度400〜500℃、風量23〜25Nm/minの熱風が吸引され、熱風供給管16を介して底部熱交換部10a、側面部側熱交換部10b,10bに順次導入され、該各熱交換部10a,10bから発酵処理槽7への熱伝達が行われる。また、ギアモータ15を駆動させて攪拌パドル8…を回転駆動させるとともに、回収された汚泥、食品残渣及び農業残渣からなる高水分(例えば、60〜70%)の有機廃棄物1(wet)を、投入口11から発酵処理槽7に投入する。すると、攪拌パドル8…の回転、攪拌、搬送作用により、大き目の塊状物も粉砕され、均一化されて発酵のしやすい条件が整えられる。このとき、発酵槽7内は熱交換によって約80〜100℃程度に維持され、投入された有機廃棄物1(wet)が約70〜80℃程度に維持され、排出時には水分50〜60%まで乾減されるよう乾燥が行われる。なお、側面部側熱交換部10b,10bを通過した熱風は、吸引排気ファン18及び管路65を介して機外に排気される一方、排気の一部は管路66により発酵処理槽7内に直接返還される。このとき、管路65から排気されるときの熱風は、温度180〜230℃、風量19〜22Nm/minであり、管路66により発酵処理槽7内に返還される熱風は、温度180〜230℃、風量3Nm/minであった。
符号67は、発酵処理槽7内への2次空気取り込み用の管路であり、この2次空気は、温度15℃前後、風量4Nm/minであった。また、符号68は、発酵処理槽7内へ通過後の熱風を排気する排気用の管路であり、温度90℃前後、風量11Nm/minの排気であった。
【0026】
次に、水分50〜60%まで乾減された有機廃棄物1(dry)は、熟成発酵機3に移される。熟成発酵機3では、ロータリー攪拌機37が作動され、発酵槽34に堆積された有機廃棄物1(dry)が掬い上げられた後、落下される。これにより、有機廃棄物1(dry)の塊状物を小片にほぐしつつ均一に混合させ、好気性発酵に適した通気性を付与する。そして、発酵の際に生じる悪臭空気は前述と同様、吸引ノズル41…、吸引ファン42及び排気管43を介して脱臭槽4にて脱臭されることになる。
【0027】
以上のような堆肥化処理方法およびその装置において、使用燃料の燃料効率を試算すれば、日量1tonの木質系バイオマスを原料とするバイオマス熱風発生炉5において、温度400〜500℃の熱風を取り出すために必要な熱量は約10000MJであり、A重油に換算して256リットルである。これに対し、本発明のバイオマス熱風発生炉5のA重油の使用量はおおよそ着火に必要なエネルギのみとなるため1リットル程度でよく、A重油の使用量を約99%以上節減することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の堆肥化処理方法およびその装置の実施形態を示す概要図である。
【図2】本発明の実施形態の工程について模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0029】
1 有機廃棄物
2 二軸式多目的乾燥機
3 熟成発酵機
4 脱臭槽
5 バイオマス熱風発生炉
6 機枠
7 発酵処理槽
8 攪拌パドル
9 回転軸
10 熱交換部
11 投入口
12 排出口
13 開閉扉
14 開閉扉
15 ギアモータ
16 熱風供給管
17 熱風排出管
18 吸引排気ファン
19 機枠
20 燃焼炉
21 ガンタイプバーナ
22 燃焼空気供給管
23 冷却管
24 燃料供給機
25 分離室
26 回収ホッパー
27 排出スクリュー
28 搬送スクリュー
29 排気ダクト
30 サイクロン
31 送風ファン
32 クーリングタワー
33 貯留ホッパー
34 発酵槽
35 原料投入部
36 堆肥搬出部
37 ロータリー撹拌機
38 建屋
39 空気供給ダクト
40 送風機
41 吸引ノズル
42 吸引ファン
43 排気管
44 槽体
45 噴出管
46 閉鎖弁
47 脱臭剤
48 バキュームカー
49 スクリーンユニット
50 一時貯留槽
51 原料貯留槽
52 回収車
53 生ゴミ・農業残渣置場
54 運搬車
55 粉砕機
56 チップ置場
57 運搬車
58 貯留槽
59 ホッパー
60 篩装置
61 袋詰装置
62 ロボットパレタイザ
63 管路
64 管路
65 管路
66 管路
67 管路
68 管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜の糞尿や生ゴミ等の有機廃棄物を熟成発酵処理する熟成発酵工程と、該熟成発酵工程で生じる臭気ガスを回収して脱臭剤により吸着・脱臭処理する脱臭工程と、前記熟成発酵工程の前工程に、熱風発生室にて生成した熱風を用いて前記有機廃棄物の水分を蒸発させ、発酵条件を整える乾燥前処理工程と、を具備した有機廃棄物の堆肥化処理方法であって、
前記乾燥前処理工程で使用する熱風の熱源として、前記脱臭工程にて臭気ガスを吸着・脱臭処理した後の脱臭能力が低下した脱臭剤を燃焼したときの燃焼熱を利用することを特徴とする有機廃棄物の堆肥化処理方法。
【請求項2】
前記脱臭剤は、木の樹皮を粉砕したバークチップ、籾殻又はおが屑チップなどの木質系バイオマスとなし、前記乾燥前処理工程で使用する熱風の熱源として、前記脱臭工程にて吸着・脱臭処理した後の水分25%未満に低下した脱臭剤を燃焼したときの燃焼熱を利用してなる請求項1記載の有機廃棄物の堆肥化処理方法。
【請求項3】
前記脱臭剤を燃焼したときの燃焼灰を、前記乾燥前処理工程にて処理中の有機廃棄物に水分調整剤として混合してなる請求項1又は2記載の有機廃棄物の堆肥化処理方法。
【請求項4】
家畜の糞尿や生ゴミ等の高水分の有機廃棄物に熱風を送風しながら攪拌して水分を蒸発させて発酵条件を整える乾燥機(2)と、水分を蒸発させた後の低水分の有機廃棄物を熟成発酵処理する熟成発酵機(3)と、該熟成発酵機(3)で生じた臭気ガスを回収して脱臭剤により吸着・脱臭処理する脱臭槽(4)と、を備えた有機廃棄物の堆肥化処理装置であって、
前記乾燥機(2)の前工程には、前記脱臭槽(4)にて臭気ガスを吸着・脱臭処理した後の脱臭能力が低下した脱臭剤をバイオマス燃料とするバイオマス熱風発生炉(5)を備えたことを特徴とする有機廃棄物の堆肥化処理装置。
【請求項5】
前記乾燥機(2)は、直方体状の機枠(6)内に形成した処理槽(7)と、該処理槽(7)内に回転自在に支持される回転軸(9)と、該回転軸(9)に対して放射状に植設された多数の攪拌パドル(8…)と、前記処理槽(7)と機枠(6)の外殻との間に介装され、前記バイオマス熱風発生炉(5)から送給される熱風と前記処理槽(7)内の有機廃棄物との熱交換を行う熱交換部(10)と、を備えてなる請求項4記載の堆肥化処理装置。
【請求項6】
前記バイオマス熱風発生炉(4)は、機枠(19)内に築炉された横型円筒状の燃焼炉(20)と、該燃焼炉(20)内に供給されるバイオマス燃料に着火を行うためのガンタイプバーナ(21)と、前記燃焼炉(20)内部へ燃焼空気を供給する燃焼空気供給管(22)と、該燃焼空気供給管(22)を囲繞するように配設され、前記熱風発生炉(4)全体を空冷するための冷却管(23)と、前記脱臭剤からなるバイオマス燃料を前記燃焼炉(20)内に繰り出すための燃料供給機(24)と、前記燃焼炉(20)内の熱風と燃焼灰とをそれぞれ回収する分離室(25)と、該分離室(25)下部に配設される燃焼灰を回収するための回収ホッパー(26)及び排出スクリュー(27)と、前記分離室(25)上部に配設される熱風を回収するための排気ダクト(29)と、を備えてなる請求項4又は5記載の堆肥化処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−167063(P2009−167063A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8738(P2008−8738)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】