説明

有機性排水を処理する方法および装置

【課題】ミルキングパーラー排水を含む有機性排水を、余剰汚泥や悪臭の発生が少なく、維持管理を容易にした生物処理により、pH, BOD, COD, SS, T-N, T-Pを水質汚濁防止法に規定する基準値以下にする方法。
【解決手段】密閉容器1内に、第1沈澱槽2、第1接触酸化槽3、第2沈澱槽4、及び第2接触酸化槽5を上部で連通配設し、固形汚濁物質を除去したミルキングパーラー排水中の高分子物質を、第1沈澱槽で通性嫌気性微生物群で低分子物質にし、第1接触酸化槽で酸素富化空気を曝気し、PP−付着・固定化好気性微生物群で有機物を酸化・分解し、第2沈殿槽で重力沈降により液状汚濁物質を濃縮して汚泥と上澄液に分離し、第2接触酸化槽で有機性排水を曝気し、立体構造物接着−活性炭−付着・固定好気性微生物群で有機物を、水、炭酸ガスに酸化・分解し、好気性微生物群で酸化・分解できない難分解化合物を、多孔質担体で吸着して浄化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性排水を処理する方法および装置に関し、特に、フリーストール・ミルキングパーラー排出汚水を生物処理するにあたって、通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)による有機高分子汚濁物質の予備分解と、所定の担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)による第1接触酸化、および所定の担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)による第2接触酸化においてそれぞれ使用する微生物群の形態と瀑気法を改良し、もって負荷変動に容易に対応でき、低濃度BOD排水の高度処理に適し、余剰汚泥の発生量を少なくし、悪臭の発生を少なくし、維持管理を容易にした、有機排水の処理方法及び装置に関する。
【0002】
本明細書において、微生物群に関して使用する用語について説明しておく。本明細書では、用語「通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)」を広義に使用し、Escherichia, Saccharomycesのように分子状酸素があれば利用するが、分子状酸素の不存在下でも増殖する、いわゆる「通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)、及びButyribacterium, Sarcina, Bifidobacteriumのように分子状酸素を利用する能力はないが、分子状酸素が存在していても、増殖にとって無害な「耐性嫌気性微生物群(Aerotolerant anaaerobe)」も包含するものとする。
【0003】
また、用語「好気性微生物群((aerobic)」を広義に使用し、Azospirillum, Beggiatoaのように、大気圧よりかなり低い酸素分圧(10%以下)が適し、高い分圧では増殖することができない「微好気性微生物群(Microaerobe)」およびAerobacter, Azotobacter, Bacillusのように増殖には絶対的に分子状酸素を必要とし、分子状酸素の不存在下では増殖できない、いわゆる「偏性好気性微生物群」或いは「厳性好気性微生物群」を包含するものとする。
【0004】
原生動物(protozoa)とは、被膜、明瞭な核を持ち、分裂、出芽、融合、接合などによって増殖し、運動は擬足、鞭毛、繊毛などで行う細菌より進化した単細胞非光合成生物と定義し、鞭毛虫類(Mastigophora)、根足虫類(Rhizopoda)、胞子虫類(Sporozoa)、繊毛虫類(Ciliata)の4綱に分類され、たとえば、アルケラ(Arcela),アメーバ(Amoeba),ケントロピキシス(Centropyxis),トリネマ(Trinema)、アクチノフィリス(Actinophrys),アスピディスカ(Aspidisca)、ボルティケラ(Vorticella),エピスティリス(Epistylis),カルケシウム(Carchesium)等が例示される。
【0005】
なお、動物、植物、土壌、淡水、海水等自然界には、多種多様な微生物が生存している。本発明により処理され浄化される有機性排水、たとえば、フリーストール・ミルキングパーラー排水も、本来的に多種多様な通性嫌気性微生物群(Facultative ana−aerobe)、或いは好気性微生物群(aerobic)を含んでいる。
【0006】
従って、請求項3及び13に記載した「通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)が、Genus Escherichia, Genus Flavobacterium, Genus Bacillus,enus Corynebacterium, Genus Bacillus, Genus Lactobacillus、及びそれらの混合物から成る群から選択された1種を含む」は、本発明の第1沈殿槽で有機性排水の予備処理に利用する通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)を含む汚泥が、Genus Escherichia, Genus Flavobacterium, Genus Bacillus,enus Corynebacterium, Genus Bacillus或いは Genus Lactobacillusから構成されているという意味ではなく、通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)が、Genus Escherichia, Genus Flavobacterium, Genus Bacillus,enus Corynebacterium, Genus Bacillus, Genus Lactobacillus、及びそれらの混合物から成る群から選択された少なくとも1種を含んでいればよいという意味であり、当然原生動物群、後性動物群を含んでいることは当業者の理解するところである。また、本発明フリーストール・ミルキングパーラー排水には、本来的に多種多様な通性嫌気性微生物群(Facultatigve anaaerobe)が含まれているが、それらが何らかの稼働条件、たとえば酸素の過剰曝気、あるいはpHの不適正等により死滅したり或いは失活した場合に、人為的に添加して富化状態にすると好ましい通性嫌気性微生物群(Facultatigve anaaerobe)という意味である。
【0007】
同じように、請求項4及び14に記載した「好気性微生物群(aerobic)が、Genus Pseudomonas, Genus Zogloea, Genus Alcaligenus, Genus Escherichia,Genus Bacillus, Bacillus subtilis, Genus Lactobacillus,Genus Corynebacterium,Gensu Ncardia,及びそれらの混合物から成る群から選択された1種を含む」は、本発明の第1及び第2接触酸化槽で有機性排水の処理に利用する汚泥が、好気性微生物群(aerobic)が、Genus Pseudomonas, Genus Zogloea, Genus Alcaligenus, Genus Escherichia,Genus Bacillus, Bacillus subtilis, Genus Lactobacillus,Genus Corynebacterium,又はGensu Ncardiaから構成されているという意味ではなく、本発明の第1及び第2接触酸化槽で有機性排水の処理に利用する汚泥が、好気性微生物群(aerobic)が、Genus Pseudomonas, Genus Zogloea, Genus Alcaligenus, Genus Escherichia,Genus Bacillus, Bacillus subtilis, Genus Lactobacillus,Genus Corynebacterium,Gensu Ncardia、及びそれらの混合物から成る群から選択された1種を含んでいればよいという意味であり、当然原生動物群、後性動物群を含んでいることは当業者の理解するところである。また、本発明フリーストール・ミルキングパーラー排水には、本来的に多種多様な好気性微生物群(aerobic)が含まれているが、それらが何らかの稼働条件、たとえば酸素の過剰曝気、あるいはpHの不適正等により死滅したり或いは失活した場合に、人為的に添加して富化状態にすると好ましい好気性微生物群(aerobic)という意味である。
【背景技術】
【0008】
本明細書で使用する用語「有機性排水」は、法令に規定されている動植物性・有機性原料加工工程からの排出汚泥・デンプン・血液・製紙汚泥等、有機性泥状副産物、ビルピット汚泥、有機性廃薬剤等、有機合成工程排出汚泥、汚水の生物処理汚泥・活性汚泥の余剰汚泥・散水ろ過床汚泥・下水汚泥等腐敗性・分解性のある水分が95%以下の有機性汚泥、および動物性廃油、ならびに政令に規定されている畜産農業・実験用・愛玩用動物の飼育業から排出される牛・馬・豚・めん羊・ヤギ・鶏などの糞尿(畜舎排水またはこれらを処理したものを含む)、ならびに現段階では法令・政令で規定されていないが、搾乳工場から排出される各種排水を含む。
【0009】
前述した有機性排水の汚濁成分や濃度は、発生源の工程により変化に富むが、通常、汚濁物質として、SS,BOD,COD(易分解性、難分解性)、油分、タンパク質、炭水化物のような複雑な高分子化合物を多量に含有している。
【0010】
近年、酪農経営の効率化を目的として、フリーストール牛舎と、それに併設された搾入工場であるフリーストール・ミルキングパーラーが導入されつつある。フリーストール牛舎とは、色々なタイプがあるが、たとえば、幅120cm、長さ230〜240cm、高さ20〜25cmの牛床(ストール)を乳牛1頭用の牛床とし、それを片側または対向して複数床設け、作業機械が通り抜けできる通路(ドライブスルー)と、水切れがよく、乾燥しやすいように、屎尿を掃除する方向に下り勾配を設けた牛用通路を設けたものである。フリーストール・ミルキングパーラーとは、フリーストールに併設された搾乳工場である。
【0011】
フリーストール・ミルキングパーラーからは、物性、組成内容が多種多様な汚水が排出される。フリーストール・ミルキングパーラーから排出される汚水を、発生源から見ると、搾乳作業後に行われるパイプライン・ミルカーの洗浄・殺菌排水と牛乳出荷後に行われるバルククーラーの洗浄・搾乳排水および牛待機場、搾乳場所の清掃排水がある。
【0012】
フリーストール・ミルキングパーラーシステムから排出される汚水を作業別に見ると、パイプライン・ミルカー関連設備を洗浄した際に排出される排水、前洗浄水、アルカリ洗浄、酸洗浄、殺菌洗浄、濾布洗いによる排水等である。また、バルククーラーを洗浄した際に排出される排水は、残乳排水、前洗浄、アルカリ洗浄、酸洗浄、殺菌洗浄による排水である。
【0013】
さらに、フリーストール・ミルキングパーラーから排出される汚水を物性から見ると、通常、pHが約2〜約12の範囲、CODが最高約4500PPM、BODが最高約14,000PPM、SSが最高約4,000PPM、大腸菌群数が最高約9×104/MLである。
【0014】
このほかに、フリーストール・ミルキングパーラーから排出される汚水には、乳房炎等疾病に罹患したため抗生物質を投与された乳牛や、子牛を生んでから数日間の乳牛の廃棄牛乳が混入されたり、排水の回収システムの不完全さに起因する赤土、おが屑、もみ殻、生石灰、敷き藁、飼料、糞尿等各種固形汚濁物質も含まれている。
【0015】
すなわち、有機性排水の中でも、フリーストール・ミルキングパーラーから排出される汚水は、pHが約2〜約12の範囲、CODが最高約4500PPM、BODが最高約14,000PPM、SSが最高約4,000PPM、大腸菌群数が最高約9×104/MLであり、アミノ酸、タンパク質等複雑な高分子化合物、脂質、ラクトースおよび無機質の水溶液にタンパク質が懸濁コロイドとなり、脂肪が乳濁質となっている牛乳や、白色の原因であるカゼインカルシウム、さらには、赤土、おが屑、もみ殻、生石灰、敷き藁、飼料、糞尿等各種固形汚濁物質を含んでいて、非常に複雑な内容となっている。
【0016】
したがって、本明細書で使用する用語「フリーストール・ミルキングパーラー排水」とは、上述した物性を有し、複雑な高分子化合物、廃乳、多種多様な固形物を含む有機性排水と定義する。
【0017】
現在、フリーストール・ミルキングパーラー排水は、法令・政令による排出規制の対象にはなっていないが、水質汚濁防止法に違反する濃度の汚染物質を含んでいるので、適正に処理することが要請されている。
【0018】
従来、フリーストール・ミルキングパーラー排水は、都市下水等生活排水、食品加工工場、製紙・パルプ工場、有機化学工場、繊維加工工場などから排出される有機性排水と同じ取り扱いで、主として、活性汚泥法、散水ろ床法、回転円板法、接触酸化法、或いはこれらの組合せで、通常の生物処理法で処理されている。
【0019】
しかしながら、従来の活性汚泥法、散水ろ床法、回転円板法、接触酸化法には、欠点があり、フリーストール・ミルキングパーラー排水を処理するには、十分な効果を発揮することができなかった。
【0020】
たとえば、活性汚泥法は、生物から成るフロックとその表面を中心に発育した生物群を、処理すべき汚水中に均一に混和・瀑気して処理する方法で、種々の変法がある。ステップエアレーション、コンタクトスタビリゼーション、酸化溝法など、都市下水処理、工場排水処理に広く使用されている。
【0021】
活性汚泥法によるBOD除去率は、90%以上で、処理が安定しているという長所があるが、(イ)バルキングを起こすことがある。(ロ)ブロワの騒音がある。(3)BODの負荷変動に対応しにくい。(ハ)発泡、臭気がある。(ニ)活性汚泥の発生量が多い。(ホ)ランニングコストが高い。(ホ)管理項目が多い。(ヘ)他方に比べて返送汚泥の管理が必要である等の短所がある。
【0022】
散水ろ床法は、やや大型の濾過材を使用し、連続散水する方法で、連続、高速の二散水ろ床に区分される。散水ろ床法は、(イ)返送汚泥が不要。(ロ)バルキングを起こさない。(ハ)設置面積が小さい。(ニ)BODの負荷変動には循環水量の調節により対応できる。(ホ)ランニングコストが安い。(ヘ)正常運転時には維持管理が比較的楽である等の長所があるので、都市下水、工場排水の低級処理に広く使用されてきた。
【0023】
しかしながら、(イ)BOD除去率が60〜80%と低い。(ロ)汚泥量の調整が必要である。(ハ)外気温の影響が大きく、特に冬季は保温が必要となる。(ニ)悪臭やハエが発生することがある。(ニ)設備面積がやや大きい。等の欠点があるため、近年では採用されることが少なくなってきている。
【0024】
回転円板法は、汚水タンクの上方に円板を配置し、それを水平軸を中心に回転させ、円板の一部分を間歇的に浸水させるようになっていて、生物群は円板表面に成長・増殖する。都市下水、工場排水の処理に利用されている。
【0025】
回転円板法によるBOD除去率は90%以上で、(イ)返送汚泥が不要である。(ロ)バルキングを起こすことがない。(ハ)電力消費量が小さい。(ニ)騒音が発生しない。(ホ)ランニングコストが安い。(ホ)維持管理に関しては、正常運転時は比較的楽である等の長所がある。
【0026】
しかしながら、(イ)汚泥量の調整が必要である。(ロ)外気温の影響が大きく、特に冬季は保温が必要となる。(ニ)設備面積がやや大きい。(ホ)剥離した汚泥が貯水槽の低部で腐敗することがある等の欠点がある。
【0027】
接触酸化法は、生物相を付着・増殖させた濾材を槽内に固定し、その間隙を、瀑気により水を循環変動させる方法で、活性汚泥法に類似した方法である。
【0028】
接触酸化法によるBOD除去率は90%以上で、(イ)返送汚泥が不要である。(ロ)バルキングを起こすことがない。(ハ)BODの負荷変動には、循環水量や空気量の調節により容易に対応できる。(ハ)低BOD濃度排水の高度処理に適している。(ニ)外気温度の影響が少ない。(ニ)設備面積を立体設計により小さくすることができる。(ホ)正常運転時の維持管理が楽である等の長所がある。
【0029】
しかしながら、(イ)汚泥の過剰付着により処理性能が低下することがある。(ロ)剥離汚泥の分離が難しい等の短所がある。
【0030】
上述した従来技術の中で、中小規模の有機性排水の生物処理法としては、接触酸化法が比較的適していると言える。その理由は、接触酸化法が、(イ)負荷変動に容易に対応できる。(ロ)低濃度BOD排水の高度処理に適している。(ハ)余剰汚泥の発生量が少ない。(ニ)維持管理が容易である。(ホ)悪臭の発生が少ない。等の利点を有しているからである。
【0031】
接触酸化法は、槽内に浸漬固定した濾材の表面に微生物群を増殖付着させ、その間隙を、瀑気により汚水を循環変動させるシステムである。瀑気することにより排水は循環流となり、微生物群が付着された濾材内を下向流で通過する際に、生物膜と接触して浄化される。
【0032】
接触酸化法を効率よく稼動させるのに重要なことは、嫌気性微生物群および/または好気性微生物群(aerobic)を付着・固定させる担体を適切に選択し、担体固定化微生物群の使用形態を適切に選択することである。すなわち、比表面積及び空隙率が大きく微生物群の付着性がよい担体を選択すること、および絶えず汚水が担体固定化微生物群と均一に接触する構造にして、水の停滞部分、担体固定化微生物群の閉塞部分がないようにすることである。したがって、従来から、接触酸化法は、主として、被処理水の循環方法、瀑気方法と装置、微生物群の担体への付着・固定方法に改良を加え、それぞれ組み合わせて使用されている。
【0033】
しかし、従来の接触酸化法は、それぞれ一長一短があり、フリーストール・ミルキングパーラー排水を、法令・政令に規定する排出基準を満たすように浄化処理することが難しかった。以下、従来の接触酸化法の数例を、主として、被処理水の循環方法、瀑気方法と装置、微生物群を付着・固定する担体、脂質、タンパク質等牛乳成分の完全分解という観点から検討する。
【0034】
特許文献1は、トイレ用汚水浄化方法を開示している。接触酸化槽、固定化微生物群を使用しているので接触酸化法である。この従来技術においては、密閉沈分槽において、排泄物は、単に比重により固形分と汚水に分離していて、嫌気性微生物群を使用していないので、脂質、タンパク質等複雑な有機物含む有機性排水に応用した場合には、分離効率が悪い。また、曝気に使用している気体は、酸素ではなく空気である。したがって、被処理汚水中に溶存される酸素濃度が低く、有機化合物を酸化する能力が低い。また、微生物群を付着・固定する担体は、ポリプロピレン製の不織布で、比重が0.90と低いので、槽の下方から瀑気した場合、その大部分が槽の上方へ浮遊・移動し、被処理水との接触効率が悪い。
【0035】
特許文献2は、シート状に成形した活性炭繊維を鋼板に固定して、板状のエレメントを形成し、このエレメントを複数、所定間隔で並設してエレメントモジールを形成し、水槽内に浸漬して、モジュールの下方に散気管を設置した微生物群活性炭水処理装置を開示している。この従来技術で処理されるのは、水道原水であり、フリーストール・ミルキングパーラーシステム排水のように、多種多様な複雑な汚濁物質を含むものでなく、除去される物質は、懸濁物質や鉄の酸化物、微細藻であり、処理槽も単一槽である。当然ではあるが、この従来技術では、有機性排水を密閉下で嫌気性微生物群の存在下で沈降させて、固形分と汚水分に予め分離する沈殿槽がないので、フリーストール・ミルキングパーラーシステム排水の処理には適用できない。
【0036】
特許文献3は、合成樹脂と無機物質とから成り、比重が0.95〜1.10g/cm3で特定の形状を持つ多孔性担体に微生物群を付着させ、これを、簡単な構造の密閉単一槽に充填した表面曝気式廃水処理装置を開示している。この従来技術では、生物反応槽は、好気性微生物群(aerobic)による単一槽であり、被処理水を密閉下で嫌気性微生物群の存在下で沈降させて、固形分と汚水分に予め分離する沈殿槽がないので、フリーストール・ミルキングパーラーシステム排水のように複雑な有機性排水に適用した場合は、処理速度が極めて遅くなる。さらに、被処理水と接触させるのは好気性微生物群(aerobic)のみであるので、フリーストール・ミルキングパーラーシステム排水のように、脂質、タンパク質等複雑な高分子物質を含む有機性排水では、十分な処理効果を上げることができない。
【0037】
特許文献4は、炭酸カルシウムを充填材として発泡させた担体に好気性微生物群(aerobic)を付着・固定して、密閉した生物反応槽に入れ、下方から酸素富化空気を瀑気する都市生活廃水や工場廃水を活性汚泥処理する装置を開示している。この従来技術では、生物反応槽は、好気性微生物群(aerobic)による単一槽であり、被処理水を密閉下で嫌気性微生物群の存在下で沈降させて、固形分と汚水分に予め分離する沈殿槽がないので、フリーストール・ミルキングパーラーシステム排水のように複雑な有機性排水に適用した場合は、処理速度が極めて遅くなる。さらに、被処理水と接触させるのは好気性微生物群(aerobic)のみであるので、フリーストール・ミルキングパーラーシステム排水のように、脂質、タンパク質等複雑な高分子物質を含む有機性排水では、十分な処理効果を上げることができない。
【0038】
特許文献5(特開平8−173983号)は、密閉型処理槽内において、実比重1.03〜1.10の微生物群付着用担体を流動させながら、酸素富化空気を用い、表面曝気をすることにより原廃水を処理する流動床式廃水処理装置をユニットとして、これを一段または多段で使用することを開示している。
【0039】
この従来技術は、担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)を流動させながら酸素富化空気を用い、表面曝気をする点で、典型的な接触酸化装置である。この従来技術では、生物反応槽は、好気性微生物群(aerobic)による単一槽であり、被処理水を密閉下で嫌気性微生物群の存在下で沈降させて、固形分と汚水分に予め分離する沈殿槽がないので、フリーストール・ミルキングパーラーシステム排水のように複雑な有機性排水に適用した場合には、処理速度が極めて遅くなる。さらに、被処理水と接触させるのは好気性微生物群(aerobic)のみであるので、フリーストール・ミルキングパーラーシステム排水のように、脂質、タンパク質等複雑な高分子物質を含む有機性排水では、十分な処理効果を上げることができない。
【0040】
さらに、この従来技術では、好気性微生物群(aerobic)を付着・固定させる担体を、ポリエチレンとポリプロピレンと炭酸カルシウムとから構成しているが、ポリエチレンとポリプロピレンを成形する際の充填材として炭酸カルシウムを使用した場合、溶融ポリエチレンとポリプロピレンが炭酸カルシウムの細孔に充填されるので、比表面積及び空隙率が小さく、微生物群の付着性が悪いという欠点がある。
【0041】
【特許文献1】特開2001−200571号公報
【特許文献2】特開2003−200183号公報
【特許文献3】特開平10−3145780号公報
【特許文献4】特開平10−296282号公報
【特許文献5】特開平8−173983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0042】
従って、発明が解決すべき課題は、負荷変動に容易に対応でき、低濃度BOD排水の高度処理に適し、余剰汚泥の発生量を少なくし、悪臭の発生を少なくし、維持管理を容易にした有機性排水の生物処理方法及び装置を提供することである。
【0043】
発明が解決すべき特定的な課題は、PHが約2〜約12の範囲、CODが最高約4500PPM、BODが最高約14,000PPM、SSが最高約4,000PPM、大腸菌群数が最高約9×104/MLであり、アミノ酸、タンパク質等複雑な高分子化合物、脂質、ラクトースおよび無機質の水溶液にタンパク質が懸濁コロイドとなり、脂肪が乳濁質となっている牛乳や、白色の原因であるカゼインカルシウム、さらには、赤土、おが屑、もみ殻、生石灰、敷き藁、飼料、糞尿等各種固形汚濁物質を含んでいるフリーストール・ミルキングパーラー排水を、法令・政令に規定する排出基準以下に浄化するための負荷変動に容易に対応でき、低濃度BOD排水の高度処理に適し、余剰汚泥の発生量を少なくし、悪臭の発生を少なくし、維持管理を容易にした生物処理方法及び装置を提供することである。
発明が解決すべき別の課題および利点については、以下逐次明らかにする。
【0044】
本発明者は、課題を解決するための手段を策定するために、有機性排水、特にフリーストール・ミルキングパーラー排水の物性と組成の特殊性に鑑み、従来の接触酸化法を改良することを検討した。それについて、以下に説明する。
【0045】
従来、ごみピットのような濃厚な排水、比較的低濃度の洗車排水や生活排水等有機性排水を生物処理する場合、通常、直接、接触酸化槽で好気性微生物群(aerobic)処理していた。しかし、本発明では、まず、有機性排水を濃縮により固形汚濁物質と液状汚濁物質に分離し、沈殿した汚泥中に存在する高分子有機物質を、通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)により、予め可溶性の低分子物質に変換することを検討した。
【0046】
さらに、通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)として、主として、Genus Escherichia, Genus Flavobacterium, GenusBacillus, Genus Corynebacterium, Genus Lactobacillus および原生動物を含む微生物群を使用することを検討した。
【0047】
さらに、接触酸化槽を第1及び第2接触酸化槽に分け、それぞれで使用する好気性微生物群(aerobic)の形態を変え、第1接触酸化槽で酸化・吸着処理出来なかった汚濁物質を、第2接触酸化槽で完全に酸化・吸着処理することを検討した。
【0048】
そして、好気性微生物群(aerobic)として、主として、Genus Pseudomonas, Genus Zogloea, Genus Alcaligenus, Genus Escherichia,Genus Bacillus, Bacillus subtilis, Genus Lactobacillus,Genus Corynebacterium,Gensu Ncardia, および原生動物を含む微生物群を使用することを検討した。
【0049】
さらに、フリーストール・ミルキングパーラー排水に含まれているアミノ酸、タンパク質等複雑な高分子化合物、脂質、ラクトースおよび無機質の水溶液にタンパク質が懸濁コロイドとなり、脂肪が乳濁質となっている牛乳や、白色の原因であるカゼイン等は、微生物群処理だけでは処理速度が遅いので、脂質分解酵素、タンパク分解酵素を使用することを検討した。
【0050】
さらに、曝気方法も、空気曝気に代えて、酸素富化空気曝気を採用し、溶存酸素の量を増やして、好気性微生物群(aerobic)の活性を高め、好気性微生物群(aerobic)と被処理有機排水と循環流動接触の効率を高めることを検討した。
【課題を解決するための手段】
【0051】
かくて、上記課題は、下記の各項に記載する手段によって解決することができる。
1.(1)有機性排水を、濃縮により固形汚濁物質と液状汚濁物質に分離し、沈殿した汚泥中に存在する高分子有機物質を通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)により高分子有機物質の構成単位低分子物質に変換する工程と、
(2)前記液状汚濁物質と、担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)を、酸素富化空気を曝気させながら循環流動させて相互に接触させ、液状汚濁物質に含まれている前記高分子有機物質の構成単位低分子物質有機物を、主として有機酸とアルコールに酸化・分解する工程と、
(3)被処理液状汚濁物質を、濃縮させて担体から剥離した汚泥と上澄液に分離する工程と、
(4)上澄液を、酸素富化空気曝気下に、多孔質担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)と接触させて、上澄液に含まれている主として有機酸とアルコールを好気性微生物群(aerobic)で酸化・分解して水と炭酸ガスに変換し、好気性微生物群(aerobic)で酸化・分解できない難分解化合物を多孔質担体で吸着して浄化することを、密閉容器内で連続して行う工程を含む有機性排水の処理方法。
【0052】
2.前記1項において、有機性排水を、フリーストール・ミルキングパーラー排水とする。
【0053】
3。前記1または2項において、通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)が、Genus Escherichia, Genus Flavobacterium, GenusBacillus, Genus Corynebacterium, Genus Lactobacillus、及びそれらの混合物から成る群から選択された1種を含むものとする。
【0054】
4.前記1または2項において、好気性微生物群(aerobic)を、Genus Pseudomonas, Genus Zoogloea, Genus Alcaligenus, Genus Escherichia,Genus Bacillus, Bacillus subtilis, Genus Lactobacillus, Genus Corynebacterium,Gensu Ncardia, 及びそれらの混合物から成る群から選択された1種を含むものとする。
【0055】
5.前記1〜4項のいずれか1項において、少なくとも1つの工程に酵素を添加する。
【0056】
6.前記5項において、酵素を、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、ブルラナーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、ラクターゼ、プロテアーゼ、トリプトシン、パパイン、レンネット、リパーゼ、ホスホリパーゼA2、及びそれらの混合物から成る群から選択された1種とする。
【0057】
7.前記1〜6項のいずれかに1項において、担体を、無機質多孔体とする。
【0058】
8.前記1〜6項のいずれか1項において、担体を、無機質多孔体と繊維集合体または合成樹脂成形体との複合体とする。
【0059】
9.前記1〜6項のいずれか1項において、担体を、繊維集合体または合成樹脂成形体とする。
【0060】
10.前記7または8項において、無機質多孔体を、所定の形状に成形した活性炭、ゼオライト、リン酸アルミニウム、シリカ、活性炭繊維、カーボンアエロジェル、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、セピオライト、炭酸カルシウム、またはクレーとする。
【0061】
11.有機性排水を濃縮させる第1沈殿槽、第1沈殿槽と連通して第1沈殿槽の下流に配設された第1接触酸化槽、第1接触酸化槽と連通して第1接触酸化槽の下流に配設された第2沈殿槽、及び第2沈殿槽と連通して第2沈殿槽の下流に配設された第2接触酸化槽を、密閉容器内に含む有機性排水を処理する装置であって、
(1)第1沈殿槽が、有機性排水を濃縮により固形汚濁物質と液状汚濁物質に分離し、沈殿した汚泥中に存在する高分子有機物質を通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)により高分子有機物質の構成単位低分子物質に変換するようになっており、
(2)第1接触酸化槽が、所定の位置に酸素富化空気を曝気させる装置を備えていて、担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)を浮遊状態で含んでいて、第1沈殿槽から移送された液状汚濁物質と、担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)を、酸素富化空気を曝気させながら、それぞれ循環流動させて相互に接触させ、液状汚濁物質に含まれている前記高分子有機物質の構成単位低分子物質有機物を、主として有機酸とアルコールに酸化・分解するようになっており、
(3)第2沈殿槽が、前記第1接触酸化槽から移送された被処理液状汚濁物質を更に濃縮させて、担体から剥離した汚泥と上澄液に分離するようになっており、
(4)第2接触酸化槽が、所定の位置に、酸素富化空気を曝気させる装置と、多孔質担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)が固定されていて、前記第2沈殿槽から移送された上澄液を曝気下に、担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)と接触させて、上澄液に含まれている主として有機酸とアルコールを水と炭酸ガスに酸化・分解し、好気性微生物群(aerobic)で酸化・分解できない難分解化合物を多孔質担体で吸着して浄化するようになっている、ことを特徴とする有機性排水を処理する装置。
【0062】
12.前記11項において、有機性排水を、フリーストール・ミルキングパーラー排水とする。
【0063】
13.前記11または12項において、通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)が、Genus Escherichia, Genus Flavobacterium, Genus Bacillus,enus Corynebacterium, Genus Bacillus, Genus Lactobacillus、及びそれらの混合物から成る群から選択された1種を含むものとする。
【0064】
14.前記11または12項において、好気性微生物群(aerobic)群が、Genus Pseudomonas, Genus Zogloea, Genus Alcaligenus, Genus Escherichia,Genus Bacillus, Bacillus subtilis, Genus Lactobacillus,Genus Corynebacterium,Gensu Ncardia,及びそれらの混合物から成る群から選択された1種を含むものとする。
【0065】
15.前記11〜14のいずれか1項において、第1沈殿槽、第1接触酸化槽、第2沈殿槽、及び第2接触酸化槽の少なくとも1槽に酵素を添加する。
【0066】
16.前記15項において、酵素を、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、ブルラナーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、ラクターゼ、プロテアーゼ、トリプトシン、パパイン、レンネット、リパーゼ、ホスホリパーゼA2、及びそれらの混合物から成る群から選択された1種とする。
【0067】
17.前記11〜16のいずれか1項において、担体を、無機質多孔体とする。
【0068】
18.前記11〜16のいずれか1項において、担体を、無機質多孔体と繊維集合体または合成樹脂発泡体との複合体とする。
【0069】
19.前記11〜16いずれか1項において、担体を、繊維集合体または合成樹脂成形体とする。
【0070】
20.前記17または18項において、無機質多孔体を、所定の形状に成形した活性炭、ゼオライト、リン酸アルミニウム、シリカ、活性炭繊維、カーボンアエロジェル、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、セピオライト、炭酸カルシウム、またはクレーとする。
【発明の効果】
【0071】
請求項1の発明によると、通気性嫌気性微生物と好気性微生物の組合わせによる生物処理により、負荷変動に容易に対応でき、低濃度BOD排水の高度処理に適し、余剰汚泥の発生量を少なく、悪臭の発生が少なく、維持管理を容易にした有機性排水を処理する新規な方法が提供される。
【0072】
請求項2の発明によると、pHが約2〜約12の範囲、CODが最高約4500PPM、BODが最高約14,000PPM、SSが最高約4,000PPM、大腸菌群数が最高約9×104/MLであり、アミノ酸、タンパク質等複雑な高分子化合物、脂質、ラクトースおよび無機質の水溶液にタンパク質が懸濁コロイドとなり、脂肪が乳濁質となっている牛乳や、白色の原因であるカゼインカルシウム、さらには、赤土、おが屑、もみ殻、生石灰、敷き藁、飼料、糞尿等各種固形汚濁物質を含んでいて、非常に複雑な内容となっているフリーストール・ミルキングパーラー排水を、負荷変動に容易に対応でき、低濃度BOD排水の高度処理に適し、余剰汚泥の発生量を少なくし、悪臭の発生を少なくし、維持管理を容易にした副次的効果をもって、法令・政令に規定した排出基準で浄化する方法が提供される。
【0073】
請求項3の発明によると、通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)を、Genus Escherichia, Genus Flavobacterium, Genus Bacillus, Genus Corynebacterium,Genus Lactobacillus、及びそれらの混合物から成る群から選択された1種を含むものとしたので、適当に選択して組み合わせることにより、分子状酸素の存在下でも不存在下でも、タンパク質、脂質、多糖類等複雑な高分子化合物を、それらの構成単位低分氏化合物に分解する方法が提供される。
【0074】
請求項4の発明によると、好気性微生物群(aerobic)が、Genus Pseudomonas, Genus Zoogloea, Genus Alcaligenus, Genus Escherichia,Genus Bacillus, Bacillus subtilis, Genus Lactobacillus, Genus Corynebacterium,Gensu Ncardia, 及びそれらの混合物から成る群から選択された1種を含むものとしたので、適当に選択して組み合わせることにより、分子状酸素の存在下で、タンパク質、脂質、多糖類等複雑な高分子化合物の構成単位低分子化合物を有機酸やアルコールに分解する方法が提供される。
【0075】
請求項5の発明によると、少なくとも1つの工程に酵素を添加するので、有機高分子物質を分解し、通性嫌気性微生物または好気性微生物による有機高分子物質のさらなる酸化または還元による分解反応に資する。
【0076】
請求項6の発明によると、酵素を、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、ブルラナーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、ラクターゼ、プロテアーゼ、トリプトシン、パパイン、レンネット、リパーゼ、ホスホリパーゼA2、及びそれらの混合物から成る群から選択された1種としたので、澱粉、糖質、タンパク質、脂質、繊維質を、主として加水分解して、微生物群による酸化・分解を容易にする。
【0077】
請求項7の発明によると、微生物群を付着・固定する担体を、無機質多孔体としたので、好気性微生物群(aerobic)を多量に付着・固定させることができ、また無機質多孔体自体が、固体汚濁物質及び悪臭を吸着する方法が提供される。
【0078】
請求項8の発明によると、担体を、無機質多孔体と繊維集合体または合成樹脂成形地体との複合体としたので、比較的容易に比重の調整を行うことができ、使用後の回収が容易である。
【0079】
請求項9の発明によると、担体を、繊維集合体または合成樹脂成形体としたので、任意の形状、大きさのものを、大量に安価に製造することができる。
【0080】
請求項10の発明によると、無機質多孔体を、所定の形状に成形した活性炭、ゼオライト、リン酸アルミニウム、シリカ、活性炭繊維、カーボンアエロジェル、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、セピオライト、炭酸カルシウム、またはクレーとしたので、細孔径が0.3〜104nmの範囲で、細孔形状が円筒、ケージ、四角形、スリット、ボイド、円錐、粒子間隙チャネルのものまで、選択の幅が広がる。
【0081】
請求項11の発明によると、下記に例示する効果を得ることができる。
イ.第1沈殿槽を設けたことにより、有機性排水を濃縮により固形汚濁物質と液状汚濁物質に分離し、沈殿した汚泥中に存在する高分子有機物質を通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)により、予め可溶性の低分子物質に変換するので、後続装置である第1接触酸化槽における有機化合物の分解時間を短縮することができる。
【0082】
ロ.従来、接触酸化槽は、通常、一槽であったものを、第1接触酸化槽及び第2接触酸化槽の2槽設置し、それぞれで使用する好気性微生物群(aerobic)の使用形態を変えたので、第1接触酸化槽で分解処理出来なかった汚濁物質を、第2接触酸化槽で完全に酸化・吸着処理することができる。
【0083】
第1接触酸化槽及び第2接触酸化槽において、酸素富化空気曝気を採用したので、水中への酸素の溶存量を、効率よく増加させることができる。
【0084】
請求項12の発明によると、有機性排水を、フリーストール・ミルキングパーラー排水としたので、pHが約2〜約12の範囲、CODが最高約4500PPM、BODが最高約14,000PPM、SSが最高約4,000PPM、大腸菌群数が最高約9×104/MLであり、アミノ酸、タンパク質等複雑な高分子化合物、脂質、ラクトースおよび無機質の水溶液にタンパク質が懸濁コロイドとなり、脂肪が乳濁質となっている牛乳や、白色の原因であるカゼインカルシウム、さらには、赤土、おが屑、もみ殻、生石灰、敷き藁、飼料、糞尿等各種固形汚濁物質を含んでいて、非常に複雑な内容となっているフリーストール・ミルキングパーラー排水を、負荷変動に容易に対応でき、低濃度BOD排水の高度処理に適し、余剰汚泥の発生量を少なくし、悪臭の発生を少なくし、維持管理を容易にした副次的効果をもって、法令・政令に規定した排出基準で浄化することがきる。
【0085】
請求項13の発明によると、第1沈殿槽における通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)を、Genus Escherichia, Genus Flavobacterium, Genus Bacillus,enus Corynebacterium, Genus Bacillus, Genus Lactobacillus、及びそれらの混合物から成る群から選択された1種を含むものとしたので、適当に選択して組み合わせることにより、分子状酸素の存在下でも不存在下でも、第1沈澱槽で、タンパク質、脂質、多糖類等複雑な高分子化合物を、それらの構成単位低分氏化合物に分解する方法が提供される。
【0086】
請求項14の発明によると、第1接触酸化槽及び第2接触酸化槽における好気性微生物群(aerobic)を、Genus Pseudomonas, Genus Zogloea, Genus Alcaligenus, Genus Escherichia,Genus Bacillus, Bacillus subtilis, Genus Lactobacillus,Genus Corynebacterium,Gensu Ncardia, 及びそれらの混合物から成る群から選択された1種を含むものとしたので、適当に選択して組み合わせることにより、分子状酸素の存在下で、タンパク質、脂質、多糖類等複雑な高分子化合物の構成単位低分子化合物を有機酸やアルコールに分解することができる。
【0087】
請求項15の発明によると、第1沈殿槽、第1接触酸化槽、第2沈殿槽、及び第2接触酸化槽の少なくとも1槽に酵素を添加するので、有機高分子物質を分解し、通性嫌気性微生物または好気性微生物による有機高分子物質のさらなる接触酸化による分解反応に資することができる。
【0088】
請求項16の発明によると、酵素を、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、ブルラナーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、ラクターゼ、プロテアーゼ、トリプトシン、パパイン、レンネット、リパーゼ、ホスホリパーゼA2、及びそれらの混合物から成る群から選択された1種としたので、澱粉、糖質、タンパク質、脂質、繊維質を、主として加水分解して、微生物群による酸化・分解を容易にする。
【0089】
請求項17の発明によると、微生物群を付着・固定する担体を、無機質多孔体としたので、好気性微生物群(aerobic)を多量に付着・固定させることができ、また無機質多孔体自体が、固体汚濁物質及び悪臭を吸着することができる。
【0090】
請求項18の発明によると、担体を、無機質多孔体と繊維集合体との複合体としたので、比較的容易に比重の調整を行うことができ、使用後の回収が容易である。
【0091】
請求項19の発明によると、担体を、繊維集合体としたので、任意の形状、大きさのものを、大量に安価に製造することができる。
【0092】
請求項20の発明によると、無機質多孔体を、所定の形状に成形した活性炭、ゼオライト、リン酸アルミニウム、シリカ、活性炭繊維、カーボンアエロジェル、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、セピオライト、炭酸カルシウム、またはクレーとしたので、細孔径が0.3〜104nmの範囲で、細孔形状が円筒、ケージ、四角形、スリット、ボイド、円錐、粒子間隙チャネルのものまで、選択の幅が広がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0093】
以下、添付図面を参照して、本発明の第1沈殿槽、第1接触酸化槽、第2沈殿槽、2接触酸化槽に関して詳細に説明する。
【0094】
図1は、本発明の装置の一態様を示す概略図である。本発明の装置1は、有機性排水を濃縮させる第1沈澱槽2と、第1沈澱槽2の下流に配設された第1接触酸化槽3と、第1接触酸化槽3の下流に配設された第2沈澱槽4と、第2沈澱槽4の下流に配設された第2接触酸化槽5が、それぞれ上部で連通させて、密閉容器内に配設されている。次に、それぞれの槽の構成と効果に関して説明する。
【0095】
本発明で浄化処理する有機性排水は、主として、フリーストール・ミルキングパーラー排水である。前述したように、フリーストール・ミルキングパーラー排水は、極めて複雑な汚濁物質を含んでおり、主として、牛舎排水とミルキングパーラー排水と廃棄牛乳から構成されている。
【0096】
牛舎排水は、乳牛の糞尿と排水の回収システムの不完全さに起因する赤土、おが屑、もみ殻、生石灰、敷き藁、飼料等各種固形汚濁物質を含んでいる。これを成分から見ると、有機物、窒素、リンである。発明者が、1日に乳牛から排出される排泄物の成分を調査したところ、糞が30.0kg、尿が20.0kg;BOD濃度(mg/L)が24,000(糞)、4,000(尿);BOD負荷量(g/日)が720(糞)、80(尿);COD濃度(mg/L)が12,000(糞)、3,000(尿);COD負荷量(g/日)が360(糞)、60(尿);SS濃度(mg/l)が120,000(糞)、5,000(尿)、SS負荷量(g/日)が3,600(糞)、100(尿)であった。
【0097】
この調査から明らかなように、牛舎排水は、汚濁負荷量が高いこと、汚濁成分が糞の中に多いこと、汚濁成分濃度が高いこと、窒素濃度が高いこと、アンモニヤ、硫化水素等悪臭成分が含まれていて、臭気が強いことを特徴とし、BOD/COD>1、BOD/TOC>1なので生物処理に適している。
【0098】
一方、本田勝男・倉田直亮・矢島潤共著「ミルキングパーラー排出汚水の処理に関する試験」(出典:神農研研報No. 86 1996)に記載されている表1(ミルキングパーラーの作業別排水性状)を簡略にまとめると、パイプ・ミルカー関連洗浄排水のpHが2.98〜11.7、CODが88〜700ppm、BODが240〜3,120ppm、SSが6〜878ppm、大腸菌群数が0〜1.2×104/mL:バルククーラー洗浄排水のpHが2.66〜9.79、CODが4〜4,480ppm、BODが6〜14,000ppm、SSが8〜3,982ppm、大腸菌群数が最大6.5×104/mLとなる。
【0099】
さらに、前掲文献は、ミルキングパーラーの作業別排水の全量を混合し、量と性状を4回測定した結果を、表2として記載している。これを簡略にまとめると、pHが6.34〜8.589,CODが183〜245ppm、BODが440〜460ppm、SSが388〜588ppm、大腸菌群数が5.1×101〜2.2×102/mLとなる。:バルククーラー洗浄排水のpHが2.66〜9.79、CODが4〜4,480ppm、BODが6〜14,000ppm、SSが8〜3,982ppm、大腸菌群数が最大6.5×104mLとなる。
【0100】
ところで、水質汚濁防止法は、畜産汚水の排出基準を、表1に示すように規定している。
【表1】

なお、( )内の数値は許容される日間平均値である。
【0101】
したがって、ミルキングパーラー排水の内、COD, BOD, SSは水質汚濁防止法の規制値以上であることが分かる。現在、フリーストール・ミルキングパーラー排水は、法令・政令による排出規制の対象にはなっていないが、水質汚濁防止法に違反する濃度の汚染物質を含んでいるので、適正に処理することが要請されている。
【0102】
乳牛の汚濁成分が、糞中に大量に含まれていることは、前述したとおりである。したがって、本発明の装置の第1沈殿槽2にフリーストール・ミルキングパーラー排水を投入するに前に、所定の振動篩いを備えた固液分離装置(図示していない)により、糞、赤土、おが屑、もみ殻、生石灰、敷き藁、飼料等各種固形汚濁物質を除去しなければならない。
【0103】
この工程は、通常、有機性排水の濃縮工程と言われている。濃縮工程は、本発明を効率よく実施するために必要である。従来から、濃縮工程で採用されているのは沈降分離、いわゆる重力濃縮である。
【0104】
重力濃縮としては、回分式沈殿濃縮、或いは円形連続濃縮装置、角形連続濃縮装置、重ね連続濃縮装置、ドルトルク連続濃縮装置等連続式沈殿装置がある。どの重力濃縮法を採用するかは、有機性排水の排水量、処理能力等を勘案して決定すべきである。
【0105】
然し、本発明で処理する有機性排水のように有機物質濃度が高い排水の場合、重力による濃縮では有機物質を汚泥として十分に沈降させることができず、その一部が次工程の第1接触酸化槽3に流入し、第1接触酸化槽3の循環負荷となり、悪影響を及ぼすことがある。したがって、場合により、強制濃縮装置を使用することが好ましい。
【0106】
強制濃縮法としては、減圧後混合法、加圧下小混合法、全量加圧法で例示される加圧浮上濃縮、常圧浮上法、円錐型及び直胴型に代表されるデカンタ型遠心分離濃縮法、固体排出式分離機、垂直型デカンタ、垂直型多段デカンタに代表される分離板型(横型)遠心分離濃縮法、及びバスケット型(立て型)に代表される遠心分離濃縮法がある。
【0107】
浮上濃縮法は、重力沈降では沈降し難い汚泥粒子に、気泡を付着させて、浮上濃縮する方法である。気泡は微細であることが条件である。気泡の生成方法により加圧浮上濃縮と常圧浮上濃縮に分類される。加圧浮上濃縮は、浮上濃縮槽、空気溶解槽、加圧ポンプ、コンプレッサー・減圧弁・汚泥供給ポンプ・脱気槽などの設備を要し、常圧浮上濃縮法は、起泡装置・混合装置・浮上装置・水位調節装置・脱気装置・起泡助剤希釈装置・高分子凝集剤溶解装置等を要す。
【0108】
遠心分離濃縮法は、主として縦型遠心分離装置、横型遠心分離装置に二大別されるが、保守管理が容易であること、単純な原理で汚泥の濃縮を行うので、本発明のように、長時間曝気などの濃縮性の悪い汚泥の場合の濃縮には最も好ましい。
【0109】
なお、濃縮により、除去された糞、赤土、おが屑、もみ殻、生石灰、敷き藁、飼料等各種固形汚濁物質は、コンポスト化しなければならない。しかしこのことは、本発明の趣旨ではないので、その説明は割愛する。
【0110】
このようにして、固体汚濁物質を予め除去した有機性排水を、第1沈殿槽2に投入する。第1沈殿槽1に投入された有機性排水は多量の牛乳を含んでいる。微生物に牛乳を分解させるには、その性状・成分を理解することが重要であるので、以下に牛乳の成分・性状に関して説明する。
【0111】
牛乳は、ラクトースおよび無機質の水溶液にタンパク質が懸濁コロイドとなり、脂肪が乳濁質となっているコロイド溶液である。白色はカゼインカルシウムの存在による。脂肪は脂肪球となっていて、乳濁しているのはリポ蛋白質の存在による。その組成(%)は、水分88.6、タンパク質3.0,脂肪3.2,ラクトース4.5である。タンパク質の分布は、全窒素100分中、カゼイン窒素78.5,アルブミン窒素9.2,グロブリン窒素3.3,プロテオースおよびペプトン窒素4.0および非タンパク窒素5.0%である。非タンパク窒素は、遊離のアミノ酸、尿素、尿酸、アンモニヤなどを含んでいて、複雑な形態をなしている。
【0112】
このように、タンパク質、脂質、多糖類等を含んでいる複雑な有機高分子化合物は、通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)により可溶性の低分子物質に変換することが好ましい。第1沈殿槽2は、有機性排水を濃縮によりさらに固形汚濁物質と液状汚濁物質に分離し、沈殿した汚泥中に存在する高分子有機物質を、通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)により可溶性の低分子物質に変換する装置である。
【0113】
第1沈殿槽2は、その下流に配設された第1接触酸化槽3と上部で連通している。第1接触酸化槽3では、酸素富化空気を曝気させながら、好気性微生物群(aerobic)を利用するので、第1接触酸化槽3に吹き込んだ酸素の一部が、第1沈殿槽2と第1接触酸化槽3の連通部分から第1沈殿槽2に流入するので、第1沈殿槽2で利用する微生物は、偏性嫌気性微生物(Obligate anaaerobe)を利用ですることができない。そのため、第1沈殿槽2で利用する微生物群は、通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)になる。
【0114】
なお、第1沈殿槽2で利用する微生物群(Facultative anaaerobe)は、分子状酸素があれば利用できるが、分子状酸素が不存在下でも増殖する、いわゆる通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)、及び分子状酸素を利用する能力はないが、分子状酸素が存在していても増殖することができる耐性嫌気性微生物群(Aerotolerant anaaerobe)も利用できる。
【0115】
たとえば、通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)の代表的なGenus Escherichiaに属するEscherichia coli(和名:大腸菌)は、20〜40℃で発育可能で、至適温度は37℃であり、室温でも数週間、土壌中や水中でも数ケ月生存する。その特徴は、ブドウ糖、乳糖、白糖など多くの糖を速やかに分解して酸を酸生する。
【0116】
Escherichia coli(和名:大腸菌)は、ヒト及び動物の腸管内に生息している。ところで、第1沈殿槽に投入される有機性排水は、主として、フリーストール・ミルキングパーラー排水であり、それ自体が大量のEscherichia coli(和名:大腸菌)を含んでいるので、Escherichia coli(和名:大腸菌)の場合、第1沈殿槽1に、装置の稼働当初は、あえて人為的に添加する必要はないが、第1接触酸化槽から流入してくる酸素の量によっては、いわゆる過瀑気の状態なり、微生物同士が捕食し、浄化作用が低下することがあるので、新鮮なEscherichia coli(和名:大腸菌)を添加することが好ましい。
【0117】
通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)であるフラボバクテリウム属(Genus Flavobacterium)は、現在12種の菌類に分類されているが、そのほとんどが、土壌、淡水、及び海水中に生息し、野菜や乳製品からも検出されている。従って、装置の稼働当初は、あえて人為的に添加する必要はないが、第1接触酸化槽3から流入してくる酸素の量によっては、いわゆる過瀑気の状態なり、微生物同士が捕食し、浄化作用が低下することがあるので、新鮮なフラボバクテリウム属(Genus Flavobacterium)を添加することが好ましい。
【0118】
第1沈殿槽2で沈殿した汚泥中には、本明の処理対象である有機性排水に多量に含まれている牛乳の主要成分であるタンパク質、脂質、或いは多糖類等を含有している。第1沈殿槽2では、これらの有機性高分子物質を、通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)により、加水分解して、先ずアミノ酸、多糖類などの構成単位の有機物に変換し、次いで酸生成菌により有機酸などの中間生成物に変換し、最終的には、二酸化炭素、硫化水素、アンモニヤ等に変換する。
【0119】
しかし、上述した通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)による反応速度は遅いので、第1沈殿槽でも、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、ブルラナーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、ラクターゼ、プロテアーゼ、トリプトシン、パパイン、レンネット、リパーゼ、ホスホリパーゼA2等の澱粉、糖質、タンパク質、脂質、繊維質加水分解酵素を添加して、通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)による酸化・分解を助けることが好ましい。
【0120】
第1沈澱槽2における通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)は、反応温度により影響を受ける。本発明では、30〜35℃に調整した温度範囲で、反応を20〜30日間行わせるか、或いは50〜60℃に調整した温度範囲で、反応を10〜15日間行わせることが好ましい。
【0121】
本発明の第1沈澱槽2の場合、投入される投入濃度は、2〜6%の範囲に有機物質負荷を上げ、後続装置の第1接触酸化槽3、第2沈殿槽4、第2接触酸化槽5により、さらに固液分離するものである。
【0122】
通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)による反応を阻害する物質に関して説明する。通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)による反応を阻害する物質としては、クロム、銅、亜鉛などの重金属、シアン、フェノール類、4塩化炭素等の有機物質があるが、本発明の有機性排水は、その発生源から見て、阻害要因となるほどこれらの阻害物質を含有していないので、その対策をとる必要はない。
【0123】
第1沈澱槽2の形状も重要である。沈澱槽内の混合性及びスカムの発生量が少なく、維持管理が容易等の理由から、第1沈澱槽2の形状は、卵型または縦長型が好ましい。
【0124】
このようにして、第1沈澱槽2で、汚泥中のタンパク質、脂質、多糖類などの有機性構高分子化合物が通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)により、加水分解されて、それぞれ低分子化、液化し低級脂肪酸、アミノ酸、単糖類になり、これらが上澄み液に混入する。次いで、この上澄み液6(以下、「第1次処理済み有機性排水」という)は、第1接触酸化槽3に移送される。
【0125】
第1接触酸化槽3では、第1沈澱槽2から流入した第1次処理済み有機性排水6と、担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)7を、酸素富化空気を曝気させながら、それぞれ循環流動させて相互に接触させ、液状汚濁物質に含まれている有機物を酸化・分解する槽である。
【0126】
通常、曝気槽は、水中に空気を吹き込んだり、機械的に槽内の水を攪拌して酸素を供給する。曝気の形式では中心曝気両側循環、端側曝気片側旋回、或いは全面曝気方式がある。
【0127】
また、酸素の供給方式では、空気をブロワーで水中に散気する方法、機械的に水面を攪拌して表面の空気から酸素を供給する方法がある。本発明は、全操作を密閉容器内で行うので、酸素の供給方式として空気をブロワーで水中に散気する方法を採用する。また、処理水と、担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)の両方を、それぞれ循環流動させて相互に接触させ、液状汚濁物質に含まれている有機物を接触酸化するので、曝気形式としては全面曝気形式が好ましい。
【0128】
8は、酸素富化空気をブロワーするための散気管である。散気管8を取り付ける位置は、第1接触酸化槽3の底部が好ましい。この位置に固定することで、排水が槽3の底部から上面に向かって上昇し、同時に、比重が水の比重1に限りなく近い担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)が、上向流、下向流、左右向流で不規則に流動する際に、両者が接触するので好ましい。
【0129】
なお、図では、酸素富化空気をブロワーする装置として散気管8を使用しているが、当然、他の曝気装置、たとえば、スクリュー型旋回エアレーター等を使用してもよい。その場合には、槽3の底面の全面から酸素が上昇するように、槽3の底面の面積に合わせて、複数個使用することが好ましい。
【0130】
槽3に酸素富化空気をブロワーする量は、槽3の容量、処理排水の濃度、量、担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)の添加量等諸条件によって変動する値である。酸素の量が少ないと、排水の浄化作用が低下し、逆に、多すぎると、好気性微生物群(aerobic)の活動が過剰に活発になり、排水中の有機性物質を完全に捕食し尽くし、最後には、好気性微生物群(aerobic)同士が共食いをして、好気性微生物群(aerobic)が少なくなるか、浄化能力が低下する。さらに、酸素の量が多すぎると、槽3の中の排水のpHが低下し、酸性の処理水が放流される場合もある。第1接触酸化槽3のpHが一旦低下すると、復元するのが難しいので、曝気する酸素の量は、諸条件を勘案して慎重に行うことが必要である。
【0131】
図1において、7は、担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)である。好気性微生物群(aerobic)を付着・固定させる担体として重要な要件は、機械的強度が大きく、温度、化学薬品、pHに安定で、耐久性があり、粒度調整が容易で、低価格でありこと、中でも、できるだけ多量の好気性微生物群(aerobic)を付着固定させることができることである。
【0132】
このような担体として、無機質多孔体、合成樹脂繊維製の織布、不織布、ロープ、ネット、メッシュ、チュール、リボン、ボンボン、或いは立体造形物、或いは無機質多孔体と合成樹脂発泡体との複合体等から選択することができる。
【0133】
担体が無機質多孔体の場合には、所定の形状に成形した活性炭、ゼオライト、リン酸アルミニウム、シリカ、活性炭繊維、カーボンアエロジェル、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、セピオライト、炭酸カルシウム、またはクレー系等がある。
【0134】
これらの無機質多孔体を選択すると、その表面に形成されている細孔径が0.3〜104nmの範囲で、細孔形状が円筒、ケージ、四角形、スリット、ボイド、円錐、粒子間隙チャネルのものまで、選択の幅が広がる。
【0135】
無機質多孔体を選択する上で重要なことは、付着・固定すべき好気性微生物群(aerobic)との大きさの関係である。厳正好気性微生物群(aerobic)であるGenus Pseudomonasは、1.5〜3.0×0.5〜0.8μmの両端がやや丸味を帯びた棹菌である。同じく、厳正好気性微生物群(aerobic)であるGenus Alcaligenusは、0.5〜2.0μmの1〜8本の鞭毛をもつ棹菌である。同じく、厳正好気性微生物群(aerobic)であるGenus Bacillusは、5〜10×1〜3μmの大きな棹菌である。同じく、Bacillus subtilisは、2.8〜8.0×0.7〜0.8μmの大きな棹菌である。好気性微生物群(aerobic)であるGenus Corynebacteriumは、0.3〜0.8×1.0〜8.0μmのかなり細長い棹菌である。
【0136】
なお、菌の大きさに関する表示は、細菌学で使用する表記法に従った。たとえば、0.3〜0.8×1.0〜8.0μmは、0.3〜0.8μm in lemgth ×1.0〜8.0μm in width の意味である。
【0137】
活性炭は、気孔径(チャンネル径)が数Å〜1000Åで、比表面積は通常1000m2/g以上で、吸着能力にも優れているので、上述したサイズの各種好気性微生物群(aerobic)を多量に吸着することができるので優れた担体である。
【0138】
ゼオライトの気孔径(チャンネル径)は、2.2〜7.5Åである。セピオライトの気孔径(チャンネル径)は、3.7〜×10.6Åである。したがって、ゼオライト、セピオライトも、上述したサイズの各種好気性微生物群(aerobic)を多量に吸着することができるので優れた担体である。
【0139】
その他に、リン酸アルミニウム、シリカ、活性炭繊維、カーボンアエロジェル、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、炭酸カルシウム、またはクレー系等も、適当に成形することで、細孔径が0.3〜104nmの範囲で、細孔形状が円筒、ケージ、四角形、スリット、ボイド、円錐、粒子間隙チャネルのものまで設定することができるので、前記好気性微生物群(aerobic)と適当に組合わせて担体として使用することができる。
【0140】
また、各種繊維の集合体を、独立した担体として、或いは無機質多孔体と組み合わせて担体として使用することができる。
【0141】
繊維集合体とは、0次元的集合体として、繊維粉状体の集合、繊維の小塊品、チョップド品。1次元的集合体として、トウ、ロービング、モノフィラメント、マルチフィラメント、中空糸膜束。1.5次元的集合体として、ロープ、ケーブル、組みひも。2次元的集合体として、ウェブ、織布、不織布、編布、ストランドマット、ネット、レース。2.5次元的集合体として、積層布、多重織物トウ。チューブ状集合体として、チューブ織物等。3次元的集合体として、3次元織物、3次元編み物、立体成型品等。面殻集合体として立体成型シート等。組み立て構造体として、ハニカム、中空膜モジュール、プリーツフィルターユニット、マトリックス複合体と、その成型・組み立て構造体として、上記0〜3次元的集合体と樹脂、セラミックス等との複合体等が例示される。
【0142】
また、合成樹脂成形体も、独立した担体として、或いは無機質多孔体と組み合わせて担体として使用することができる。合成樹脂成形体は、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン等熱可塑性樹脂の発泡体が好ましい。発泡体の気孔は、独立気泡より連続気泡が好ましい。発泡体の形状は、第1接触酸化槽3の有機排水中で、曝気された酸素または水の動きにより、水中を自由に上昇、下降、左右への浮遊・流動ができるような形、たとえば、クラゲのような形状、円盤をつぶしたような形状、竹輪のような中空円筒状等できるだけ多くの水が、できるだけ長く接触することができるような形状が好ましい。
【0143】
各種担体の比重は、水の比重1の近傍が好ましい。担体の比重が1より極端に大きな場合は、接触酸化槽3の底に沈降する量が多くなり、担体の比重が1より極端に小さい場合は、接触酸化槽3の表面近くに浮上する量が多くなるので好ましくない。したがって、各種担体の比重は、1.10〜0.90の範囲が好ましい。
【0144】
各種担体の大きさは、材料、成形体の形状によって異なるが、たとえば、竹輪のような中空円筒状の場合は、径が40〜50mm、長さが50〜60mmの範囲が好ましい。
【0145】
担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)7を第1接触酸化槽3に投入する量は、第1沈殿槽2から、第1接触酸化槽3に移送され、第1接触酸化槽3で処理される有機性排水の量の5〜50vol%が好ましく、10〜40vol%が一層好ましく、20〜30vol%が最も好ましい。
【0146】
担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)7の投入量が5vol%以下の場合、有機性排水と担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)6との接触効率が悪く、担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)7の酸化・分解作用が低いので好ましくない。
【0147】
担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)7の投入量が50vol%以上の場合、有機性排水、及び担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)7の曝気された酸素富化空気による流動効率が悪く、付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)7同士が衝突する率が高くなり、好気性微生物群(aerobic)が担体から剥落する場合があるので好ましくない。
【0148】
有機性排水と担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)7との接触効率、有機性排水と担体固定させた好気性微生物群(aerobic)7の曝気された酸素富化空気による流動効率、付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)7同士の衝突率、担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)7の酸化・分解作用の点から、付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)6の投入量は、10〜40vol%が一層好ましく、20〜30vol%が最も好ましい。
【0149】
第1接触酸化槽3における酸素富化空気の供給量は、第1沈殿槽2から第1接触酸化槽3に供給される有機性排水の量(リットル/時間)に対して1/2〜1/4(リットル/時間)が好ましい。酸素富化空気の曝気量が多すぎると、いわゆる過曝気状態になり、好気性微生物の活動が活発になりすぎ、有機性化合物を完全に捕食した後で、微生物同士が捕食し、酸化・分解能力が低下し、処理水が酸性のまま放流されることがあるので好ましくない。従って、第1接触酸化槽3における酸素富化空気の供給量は、適正に維持することが必要である。
【0150】
第1接触酸化槽3で曝気される酸素富化空気の酸素濃度は、90%〜100%である。酸素富化空気の酸素濃度を90%〜100%の高濃度にすることにより、有機性排水中へ溶解する酸素、いわゆる溶存酸素量を効率よく高めることができる。従って、従来技術で、好気性微生物が有機性化合物を捕食する際に必要な酸素を溶存させるのに必要としていた被処理水の強制攪拌を、必ずしも行う必要がない。
【0151】
前述したように、第1沈殿槽2では、通性嫌気性微生物がタンパク質、脂質、多糖類等複雑な有機高分子化合物を還元・分解して、アミノ酸、単糖類等簡単な構成単位の有機物に変換する。アミノ酸、単糖類等簡単な有機物を含む有機性排水が、第1接触酸化槽3へ移送され、第1接触酸化槽3では、好気性微生物の代謝作用により、有機性排水中に存在するアミノ酸、単糖類等簡単な有機物を、有機酸やアルコールに酸化・分解し、有機性窒素をアンモニヤ性窒素に酸化した後、硝化細菌(Nitrosomonas, Nitrobacter)により亜硝酸窒素や硝酸性窒素に変換される。
【0152】
従って、第1接触酸化槽3で処理された有機性排水の中には、好気性微生物では完全に酸化・分解されなかった有機酸、アルコール、アンモニヤ性窒素、担体に付着・固定された好気性微生物、及び微生物非分解性の浮遊固形物質を含んでいる。
【0153】
本発明では、第1接触酸化槽3で処理されたが、好気性微生物では完全に酸化・分解されなかった有機酸、アルコール、アンモニヤ性窒素、担体に付着・固定された好気性微生物、及び微生物非分解性の浮遊固形物質を含んでいる有機性排水9(以下、「第2次処理済み有機性排水」という)を、第1接触酸化槽3と連通させて、その下流に配設された第2沈澱槽4に移送する。
【0154】
第2沈澱槽4では、担体から剥離された汚泥を、重力により沈降させる。第2沈澱槽4で沈降した汚泥は、第1接触酸化槽3において、曝気した酸素の存在下に、フロック形成に寄与するZooglea、Sphaerotilis菌を中心に、数種の好気性微生物の増殖によって有機性排水中に生育した汚泥状のフロック、およびフロックの周辺に生息する原生動物、後性動物の生物群である。フロック形成に寄与するZoogleaは、細菌体が不規則な形状をした粘性物質に包まれた状態で生息しており、この粘性物質が、フロック形成、汚濁物質の吸着に寄与する。汚泥中には、たとえば、Colpidium, Dexiotrichides, Lionotus, Loxophyllum, Oxytricha, Aspidisca, Vorticella, Opercularia, Epystilis等の生物群がを含まれている。
【0155】
従って、第2沈澱槽4で沈降した汚泥10は、第1沈澱槽2に返送して、再利用される。一方、第2沈澱槽4の上澄み液11(以下、「第3次処理済み有機性排水」という)は、第2沈澱槽4と連通され、その下流に配設された第2接触酸化槽5へ移送される。
【0156】
第2接触酸化槽5では、合成樹脂製繊維を任意の形状に成形した集合体、たとえば、織布、不織布、ロープ、ネット、メッシュ、チュール、リボン、ボンボン、或いは立体構造物に、多孔質担体、たとえば活性炭へ付着・固定した好気性微生物群(aerobic)を付着させた枠状構造体と、曝気装置が、第2接触酸化槽5の所定の位置に固定されている。
【0157】
多孔質担体、たとえば活性炭へ付着・固定した好気性微生物群(aerobic)を付着させるた合成樹脂製繊維製の立体構造物としては、多様な構造が考えられる。図2は、その一例を示す斜視図である。図2の立体構造物12は、合成樹脂繊維、たとえば、ポリエチレン系、ポリエステル系、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン等の太さ1.0〜1.5mmの繊維15で製造したネットを所定の底面径dと高さh1000〜1500mmの中空の円筒形に立体成形したものである。その周囲には、約10mmの目合いの編み目16が多数形成されている。
【0158】
図3は、別の立体構造物12Aの斜視図で、たとえば、ポリエチレン系、ポリエステル系、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン等の太さ1.0〜1.5mmの繊維15Aで製造したネットを直方体に立体成形したユニットを、1例として4個組合わせたのものである。その周囲には、約10mmの目合いの編み目16Aが多数形成されている。
【0159】
立体構造物12を形成する場合、繊維の結節の形状は、本目、蛙股、二重蛙股、無結節、普通もじ、ラッセル等があるが、目合いずれ、解撚し難いと言う点からは無結節が、多量の活性炭−付着・固定好気性微生物を付着・固定する点では、普通もじ、ラッセルが好ましい。
【0160】
そして、多孔質体、たとえば、活性炭に付着・固定された好気性微生物(活性炭−付着・固定好気性微生物)が、立体構造物12を構成する全ての繊維の周囲に固定されている。
【0161】
この立体構造物12を使用するときには、第2接触酸化槽5の容量及び底面積に応じて、複数個を任意の手段で固定する。そして、底面に固定した曝気装置(散気管13)から酸素富化空気を曝気すると、被処理有機性排水が、中空円筒形の立体構造物12の中空内から上昇し、編み目16に流入し、かつ流出し、その際、立体構造物12を構成する繊維に固定された活性炭−付着・固定好気性微生物と接触して、被処理有機性排水に含まれている有機性物質が酸化・分解される。
【0162】
第2接触酸化槽5で、好気性微生物を付着・固定させる担体12として活性炭を選択した場合の、好気性微生物のサイズと活性炭の気孔径(チャンネル径)の関係を説明する。
【0163】
厳正好気性微生物群(aerobic)であるGenus Pseudomonasは、1.5〜3.0(長さ)×0.5〜0.8μm(幅)の両端がやや丸味を帯びた棹菌である。同じく、厳正好気性微生物群(aerobic)であるGenus Alcaligenusは、0.5〜2.0μmの1〜8本の鞭毛をもつ棹菌である。同じく、厳正好気性微生物群(aerobic)であるGenus Bacillusは、5〜10(長さ)×1〜3μm(幅)の大きな棹菌である。同じく、Bacillus subtilisは、2.8〜8.0(長さ)×0.7〜0.8μm(幅)の大きな棹菌である。好気性微生物群(aerobic)であるGenus Corynebacteriumは、0.3〜0.8(長さ)×1.0〜8.0μm(幅)のかなり細長い棹菌である。即ち、好気性微生物の最大長が約10μm、最大幅が約8μmである。
【0164】
一方、活性炭は、気孔径(チャンネル径)が数Å〜1000Åであるので、上記のサイズの好気性微生物を気孔内に十分落とし込み、かつ比表面積が1500m2/g以上であるので、大量の好気性微生物を吸着することができ、担体としては最も好ましい。
【0165】
次に、活性炭の吸着能力に関して説明する。活性炭には、その原料から、木材、木炭、ヤシガラ炭など植物系、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭など石炭系、石油残滓、硫酸スラッジ、オイルカーボンなど石油系、パイプ廃液、合成樹脂廃材などその他に4分類され、それぞれ特徴をもっている。活性炭の比表面積は、1500m2/g以上で、他の吸着剤と比べて格段に大きい。活性炭の吸着能力は、この細孔構造によるところが大きい。従って、通常、比表面積が大きいほど、その吸着能力も大きいと言える。
【0166】
しかし、活性炭を選択する場合には、比表面積だけではなく、微生物では酸化・分解できない難分解性物質の分子サイズ等を考慮することが必要である。たとえば、気相での吸着や脱臭装置には、ミクロ細孔が多く低分子の有機物の吸着に適したヤシガラ、木材系の活性炭が適しているが、本発明は、液相で比較的大きな有機物質も吸着対象としているので、細孔分布の広い瀝青炭など石炭系の活性炭を使用することが好ましい。
【0167】
このような構成の第2接触酸化槽5では、第2沈殿槽4から移送されてきた、簡単な構造の有機酸やアルコール、及び好気性微生物群(aerobic)(aerobic)では酸化・分解出来なかった難分解性物質を含む有機性排水11を、曝気しながら循環流動させて、活性炭−付着・固定好気性微生物を付着・固定した繊維の立体構成体15と接触させると、好気性微生物群(aerobic)12が、まず、簡単な構造の有機酸やアルコール等を炭酸ガスや水に変換し、好気性微生物群(aerobic)では酸化・分解出来ない難分解性物質を多孔性担体、たとえば活性炭により吸着する。
【0168】
13は、酸素富化空気をブロワーするための散気管である。散気管13を取り付ける位置は、第2接触酸化槽5の底部が好ましい。この位置に固定することにより、排水が槽5の底部から上面に向かって上昇し、同時に、比重が水の比重1に限りなく近い担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)が、上向流、下向流、左右向流で不規則に流動する際に、両者が接触するので好ましい。
【0169】
なお、図では、酸素富化空気をブロワーする装置として、散気管13を使用しているが、当然、他の曝気装置、たとえば、スクリュー型旋回エアレーター等を使用してもよい。その場合には、槽5の底面の全面から酸素が上昇するように、槽5の底面の面積に合わせて複数個使用することが好ましい。
【0170】
第2接触酸化槽5における酸素富化空気の供給量は、第2沈澱槽4から第2接触酸化槽5に供給される有機性排水の量(リットル/時間)に対して、1/2〜1/4(リットル/時間)が好ましい。酸素富化空気の曝気量が多すぎると、いわゆる過曝気状態になり、好気性微生物の活動が活発になりすぎ、有機性化合物を完全に捕食した後で、微生物同士が捕食し、酸化・分解能力が低下し、処理水が酸性のまま放流されることがあるので好ましくない。従って、第2接触酸化槽5における酸素富化空気の供給量は、適正に維持することが必要である。
【0171】
近年、各種環境汚染物質が問題になってているが、環境汚染物質を生分解する主要な微生物が発見されている。たとえば、前述したGenus Psuedomonas, Genuse Acinenetobacter, Genus Alcaligenes, Genus Rhodococcus, Genus Arthrobacter, Genus Norcardia が環境汚染物質を生分解する主要な微生物である。
【0172】
数種のGenus Psuedomonas菌は、PCB、クロロ安息香酸を分解する能力がある。Genus Rhodococcus菌は、PCBを分解する能力がある。
【0173】
Genus γ−Sphingomonas菌 は、γ−BHCを分解する能力がある。Burkhoderia cepaciaの一菌株は、2,4,5−Tを分解する能力がある。
【0174】
Genus Psuedomonasの一菌株は、有機水銀化合物のC−Hg結合を切断し、次いで発生したHg2+イオンを金属水銀(Hg0)へ還元する能力がある。
【0175】
Genus Enterobacter, Genus Psuedomonas, Genus Streptococcusの菌の0なかには、6価クロムを3価クロムへ還元するものがある。
【0176】
ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタンは、Genus Psuedomonasにより分解されることが確認されている。
【0177】
上述した、各種有害物質を生分解する微生物は単離されているものもあるので、被処理有機性排水に、PCB, γ−BHC, クロロ安息香酸、2,4,5−T、トリクルロロエチレン、テトラクロロエチレン、有機水銀、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン等合成ポリマーが混入していることが予想されるような場合、それぞれに選択分解性能が優れた微生物を、第2接触酸化槽5で使用することができる。
【0178】
悪臭防止法は、アンモニヤ、メチルカプタン、硫化水素、硫化メチル、トリメチルアミン、アセトアルデヒド、スチレン、プロピオン酸、ノルマル絡酸、イソ吉草酸、トルエン、キシレン、酢酸エチレン、メチルメルカプタン、イソブタノール、プロピオンアルデヒド、ノルマルブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ノルマルバレルアルデヒド、イソバレルアルデヒドを悪臭物質と規定している。
【0179】
本発明で処理対象となるミルキングパーラー排水は、悪臭物質として、主として、アンモニヤ、メチルカプタン、硫化水素等であるが、これらは有機性排水を第1接触酸化槽2及び第2接触酸化槽5で好気性微生物処理することで、ほぼ完全に酸化・分解されている。さらに、確実に悪臭を除去するために、Genus Thiobacillus, Genus Xhantomonas, Gensu Hyphomicrobium菌等悪臭成分を分解する微生物を、充填したリアクター(バイオフィルター)を付帯設備として取り付けてもよい。
【0180】
上述したように、第1沈澱槽2で、通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)により、タンパク質、脂質、多糖類糖複雑な構造の高分子化合物が、アミノ酸、単類等の構成単位有機物に変換される。
【0181】
次いで、アミノ酸、単類等の構成単位有機物を含む有機性排水6が第1接触酸化槽3に移送され、好気性微生物群(aerobic)により、さらに簡単な有機酸やアルコールに変換される。
【0182】
さらに、簡単な有機酸やアルコール及び汚泥を含む有機性排水9が第2沈澱槽4に移送され、担体から剥離された汚泥10が沈降させられる。
【0183】
最後に、簡単な構造の有機酸、アルコール及び好気性微生物群(aerobic)では酸化・分解出来なかった難分解性物質を含む有機性排水11が、第2接触酸化槽5に移送される。
【0184】
第2接触酸化槽5では、第2沈殿槽4から移送されてきた、簡単な構造の有機酸やアルコール、及び好気性微生物群(aerobic)では酸化・分解出来なかった難分解性物質を含む有機性排水を、第2接触酸化槽5に固定した多孔質担体に付着・固定した好気性微生物群(aerobic)を、曝気管13で曝気しながら循環流動させて接触させ、先ず、好気性微生物群(aerobic)により、簡単な構造の有機酸やアルコール等を炭酸ガスや水に変換し、好気性微生物群(aerobic)では酸化・分解出来ない難分解性物質を多孔性担体、たとえば活性炭により吸着する。
【0185】
このように、本発明は、有機性排水を、第1沈澱槽2での通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)による還元・分解作用と、第1接触酸化槽3での好気性微生物群(aerobic)による酸化・分解作用と、第2沈澱槽4での重力沈降作用による汚泥10の回収作用と、第2接触酸化槽5での好気性微生物群(aerobic)によるさらなる酸化・分解作用と、多孔質担体による吸着作用を組み合わせて処理する、フリーストール・ミルキングパーラー排出汚水のように、複雑な内容の高濃度の有機性排水も、最終的には、水質汚濁防止法に規定する排出基準を満たした処理水として、河川等に排出することができる。
【0186】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
図1は、本発明の装置の一実施例を示す断面図である。本発明の有機性排水処理装置1は、長さ5230mm、幅2980mm、高さ2400mmの密閉容器とした。密閉容器1内には、有機性排水を濃縮させる第1沈澱槽2(1.58m3)と、第1沈澱槽2の下流に第1接触酸化槽3(8.0m3)を、第1接触酸化槽3の下流に第2沈澱槽4(2.92m3)を、第2沈澱槽4の下流に第2接触酸化槽5(2.0m3)を、それぞれ上部で連通して連続した配設した。
【0187】
1.第1接触酸化槽3で使用した担体−付着・固体好気性微生物
1−1:担体
ポリプロピレンで直径50mm、長さ60mmの円筒形発泡体を製造した。この物性は、下記の通りであった。
比重:0.90〜0.91
比容積:1,050〜1,122cm3/kg
硬度(Rockwell):R85~R110
吸水率(24時間3.18mm厚):>0.01
弱酸の影響:非常に耐える
強アルカリの影響:非常に耐える
【0188】
1−2:担体に付着・固定した好気性微生物群(aerobic)
Genus Pseudomonas, Genus Zoogloea, Genus Alcaligenus, Genus Escherichia,
Genus Bacillus, Bacillus subtilis, Genus Lactobacillus, Genus Corynebacterium,Gensu Ncardia
【0189】
2.第2接触酸化槽5で使用した立体構造物
太さ1.5mmのポリエステル繊維で、コアサイズ50mm、ピッチ50、目合い10mmのネットをラッセル編みで製造し、底面直径が30cm、高さが1500mmの円筒形を立体成形して、立体構造物12とした。
【0190】
3.第2接触酸化槽5で使用した担体
平均粒径が1.0mm、比表面積が1500m2/gの瀝青炭径の活性炭を使用した。
【0191】
この活性炭に、第1接触酸化槽3で使用したと同じ好気性微生物群(aerobic)を付着・固定して、活性炭−付着・固定好気性微生物群(aerobic)を製造した。次いで、活性炭−付着・固定好気性微生物群(aerobic)を、前記立体構成体の全繊維に接着して固定した。
【0192】
4.第1接触酸化槽3及び第2接触酸化槽5で使用した曝気装置
直径50mm、長さ1000mm(第1接触酸化槽3)、直径50mm、長さ550mm(第2接触酸化槽5)のステンレススティール製パイプに多数の小孔を設けた散気管を製造した。酸素濃度が90%以上の酸素富化空気を排出するポンプを装置1の外に設置し、散気管に連結した。
【0193】
図示していないが、第1沈澱槽2の外部には、小型トロンメル(回転ふるい、目開き3mm)を上部に備える有機性排水貯留タンクを設置し、その底部の排出口と、装置1の有機性排水投入口17を接続した。
【0194】
第1沈殿槽2の内部には、有機性排水6を第1接触酸化槽3へ投入するための投入ポンプP1(口径30mm、単相100V、0.2kw)を配設した。
【0195】
第1接触酸化槽3の内部には、底部に上述した曝気装置として散気管8を固定し、装置外に設けた酸素富化空気(酸素濃度90%以上)を吹き込むポンプP2に接続した。
【0196】
さらに、第1接触酸化槽3の内部に、上述したPP製担体に付着・固定させた好気性微生物7を、第1接触酸化槽3の容量(8.0m3)対して35%投下し、槽3の上部を目開き5mmの金属製フィルターMF1で覆って、PP製担体−付着・固定化好気性微生物群(aerobic)が、曝気により水面から浮上するのを防止すると共に、第1沈澱槽2から移送される有機性排水6に残存している固形物が第1接触酸化槽3の内部に混入するのを防止した。
【0197】
また、散気管8の上に、目開き5mmの金属製フィルターMF2を取り付けて、PP製担体−付着・固定化好気性微生物群(aerobic)が下降した際、散気管8に接触するのを防止した。さらに、第1接触酸化槽3の内部に、第2沈澱槽4へ有機性排水9を投入するための投入ポンプP3(口径30mm、単相100V、0.2kw)を配設した。
【0198】
第2沈澱槽4の内部には、第2接触酸化槽5へ有機性排水11を投入するための投入ポンプP4(口径30mm、単相100V、0.2kw)を配設した。さらに、汚泥10を第1沈澱槽2へ移送するための吸入ポンプP5(口径30mm、単相100V、0.2kw)を配設し、第1沈澱槽2とラインLで接続した。
【0199】
第2接触酸化槽5には、上述した立体構成体に固定した活性炭−付着・固定好気性微生物群(aerobic)を、第2接触酸化槽5全体に充填して、底面に固定した。
さらに、底部に曝気装置として散気管13を固定し、装置外に設けた酸素富化空気(酸素濃度90%以上)を吹き込むポンプP2に接続した。
【0200】
乳牛170頭を育成している酪農家からの排水を処理対象排水とした。この酪農家は、搾乳牛の種類で牛乳用、チーズ用でバルククーラーを分離していて、ミルカーのラインも長くなっている。従って、その分、廃棄牛乳の比率も高くなっており、また、極少量であるが、簡易トイレ、手洗い場、洗濯排水等の生活雑排水が混入していることを確認した。当然であるが、この排水は、ミルキングパーラーのパイプ、ミルカー、バルククーラーの洗浄排水、糞便、屎尿、赤土、おが屑、もみ殻、生石灰、敷き藁、飼料等各種固形汚濁物質を含んでいた。
【0201】
そこで、先ず、第1沈澱槽2の外部に設置した、小型トロンメル(回転ふるい、目開き10mm)を通して、糞便、屎尿、赤土、おが屑、もみ殻、生石灰、敷き藁、飼料等各種固形汚濁物質を除去しながら、有機性排水を下部の貯留タンクに貯留した。
【0202】
この貯留タンク内の排水をサンプリングして性状を検査した結果、下記の通りであった。

【0203】
次いで、有機性排水を投入口17から、第1沈澱槽2へ投入した。投入量は、第1沈澱槽2の容量である1.58m3の約70%とした。
【0204】
第1沈澱槽2へ投入した有機性排水は、乳牛からの排泄物を含んでいるので、当然大腸菌等多数の微生物群を含んでいるが、新鮮な微生物群としてGenus Escherichia, Genus Flavobacterium, Genus Bacillus, Genus Corynebacterium, Genus Lactobacillus等の通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)を添加した。
【0205】
第1沈澱槽2では、前記通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)が、有機性排水中に含まれているタンパク質、脂質、多糖類等高分子化合物を、その構成単位物質であるアミノ酸、単糖類等に還元・分解した後、汚泥となって沈降している。
【0206】
次いで、アミノ酸、単糖類等を含む有機性排水6の全量を、ポンプP1により、金属フィルターMF1を経て、第1接触酸化槽3へ投入した。散気管8から、酸素濃度95%の空気を4m3/時の量で吹き込んで、有機性排水とPP製担体−付着・固定化好気性微生物7の双方を循環・流動させて接触させ、アミノ酸、単糖類等をより低分子の有機酸、アルコールへ酸化・分解させた。
【0207】
所定時間の経過後、有機酸、アルコールを含む有機性排水9の全量を、ポンプP3で第2沈澱槽4へ投入して、静置した。重力沈降により担体から剥離した汚泥10は、ポンプP5でラインLを経て第1沈澱槽2へ移送し、再利用に供した。一方、有機酸、アルコールを含む有機性排水11の全量を、ポンプP4で第2接触酸化槽5へ投入した。
【0208】
第2接触酸化槽5において、散酸管13から、酸素濃度95%の空気を1m3/時の量で吹き込んで、有機性排水を、第2接触酸化槽5の内部に充填して取り付けた立体構造物−固定化−活性炭−付着・固定好気性微生物群(aerobic)の立体構造物12のメッシュの内外へ循環・流動させながら、好気性微生物群(aerobic)と接触させて、有機酸、アルコールを水、炭酸ガスに変換し、好気性微生物群(aerobic)が酸化・分解できなかった、微小固形物質は活性炭が吸着した。
【0209】
処理水をサンプリングして性状を検査した結果、下記の通りであった。

いずれも、水質汚濁防止法による畜産汚水の排出基準を満たしていたので、排出口18から河川に流出させた。
【産業上の利用可能性】
【0210】
以上説明したように、本発明の装置は、有機性排水を、第1沈澱槽2での通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)による還元・分解作用と、第1接触酸化槽3での好気性微生物群(aerobic)による酸化・分解作用と、第2沈澱槽4での重力沈降作用による汚泥10の回収作用と、第2接触酸化槽5での好気性微生物群(aerobic)によるさらなる酸化・分解作用と、多孔質担体による吸着作用を組み合わせたので、次に例示する産業上の利用可能性がある。
【0211】
1.法令に規定されている動植物性・有機性原料加工工程からの排出汚泥・デンプン・血液・製紙汚泥等、有機性泥状副産物、ビルピット汚泥、有機性廃薬剤等、有機合成工程排出汚泥、汚水の生物処理汚泥・活性汚泥の余剰汚泥・散水ろ過床汚泥・下水汚泥等腐敗性・分解性のある水分が95%以下の有機性汚泥、および動物性廃油、ならびに政令に規定されている畜産農業・実験用・愛玩用動物の飼育業から排出される牛・馬・豚・めん羊・ヤギ・鶏などの糞尿(畜舎排水またはこれらを処理したものを含む)を処理して水質汚濁防止法で規定された排出基準値にして、河川等に排出できる。
【0212】
2.現段階では、法令・政令で規定されていないが、フリーストール・ミルキングパーラー排出汚水のように、複雑な内容の高濃度の有機性排水も、最終的には、水質汚濁防止法に規定する排出基準を満たした処理水として河川等に排出することができる。
【0213】
3.従来、小規模の産業系濃厚有機性排水、コミュニティープラントは、よほど大量に収集しないと経済的な完全処理が困難であったが、本発明の装置は、長さが約5000mm、幅約3000mm、高さ2400mm、総容量が約15m3と小型化することができるので、小規模の産業系濃厚有機性排水、コミュニティープラントに最適である。
【0214】
4.また、小型化したにも拘わらず、ミルキングパーラーのパイプ、ミルカー、バルククーラーの洗浄排水、糞便、屎尿、赤土、おが屑、もみ殻、生石灰、敷き藁、飼料等各種固形汚濁物質、廃棄牛乳、簡易トイレ、手洗い場、洗濯排水等の生活雑排水が混入している高濃度の有機性排水のpH, BOD, COD, SS, T-N, T-Pを、水質汚濁防止法に規定する畜産排出基準値以下に処理できるので、ミルキング・パーラーを併設した通常規模の酪農家も、設備することができる。
【0215】
5.第2接触酸化槽5で使用する、ポリエチレン系、ポリエステル系、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン等の合成樹脂繊維で製造したネットで製造した立体構造物に接着させた活性炭−付着・固定化好気性微生物群(aerobic)は、それ自体で、有機性排水を好気性微生物群(aerobic)で接触酸化する場合の資材として、商取引の対象になる。
【図面の簡単な説明】
【0216】
【図1】本発明の装置の一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明で使用する立体構造物接着−活性炭−付着・固定化好気性微生物群(aerobic)の1例を示す斜視図である。
【図3】本発明で使用する立体構造物接着−活性炭−付着・固定化好気性微生物群(aerobic)の別の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0217】
1 本発明の装置
2 第1沈澱槽
3 第1接触酸化槽
4 第2沈澱槽
5 第2接触酸化槽
6 有機性排水
7 好気性微生物
8 散気管
9 有機性排水
10 汚泥
11 有機性排水
12 立体構造物
12A 立体構造物
13 散気管
14 立体構造物
15 繊維
16 編み目
17 有機性排水投入口
18 処理水排出口
P1 投入ポンプP1
P2 ポンプ
P3 投入ポンプP3
P4 投入ポンプ
P5 吸入ポンプ
MF1 金属製フィルター
MF2 金属製フィルター
L ライン
d 立体構造物底面径
h 立体構造物高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.有機性排水を、濃縮により固形汚濁物質と液状汚濁物質に分離し、沈殿した汚泥中に存在する高分子有機物質を通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)により高分子有機物質の構成単位低分子物質に変換する工程と、
2.前記液状汚濁物質と、担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)を、酸素富化空気を曝気させながら循環流動させて相互に接触させ、液状汚濁物質に含まれている前記高分子有機物質の構成単位低分子物質有機物を、主として有機酸とアルコールに酸化・分解する工程と、
3.被処理液状汚濁物質を、濃縮させて担体から剥離した汚泥と上澄液に分離する工程と、
4.上澄液を、酸素富化空気曝気下に、多孔質担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)と接触させて、上澄液に含まれている主として有機酸とアルコールを好気性微生物群(aerobic)で酸化・分解して水と炭酸ガスに変換し、好気性微生物群(aerobic)で酸化・分解できない難分解化合物を多孔質担体で吸着して浄化することを、密閉容器内で連続して行う工程を含む有機性排水の処理方法。
【請求項2】
有機性排水が、フリーストール・ミルキングパーラー排水である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)が、Genus Escherichia, Genus Flavobacterium, Genus Bacillus, Genus Corynebacterium,Genus Lactobacillus、及びそれらの混合物から成る群から選択された1種を含む請求項1または2項に記載の方法。
【請求項4】
好気性微生物群(aerobic)が、Genus Pseudomonas, Genus Zoogloea, Genus Alcaligenus, Genus Escherichia,Genus Bacillus, Bacillus subtilis, Genus Lactobacillus, Genus Corynebacterium,Gensu Ncardia、及びそれらの混合物から成る群から選択された1種を含む請求項1または2に記載した方法。
【請求項5】
1〜4のいずれか少なくとも1つに工程に酵素を添加すること含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
酵素が、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、ブルラナーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、ラクターゼ、プロテアーゼ、トリプトシン、パパイン、レンネット、リパーゼ、ホスホリパーゼA2、及びそれらの混合物から成る群から選択された1種である請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
担体が、無機質多孔体である請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
担体が、無機質多孔体と繊維集合体または合成樹脂成形体との複合体である請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
担体が、繊維集合体または合成樹脂成形体である請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
無機質多孔体が、所定の形状に成形した活性炭、ゼオライト、リン酸アルミニウム、シリカ、活性炭繊維、カーボンアエロジェル、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、セピオライト、炭酸カルシウム、またはクレーである請求項7または8に記載の方法。
【請求項11】
有機性排水を濃縮させる第1沈殿槽、第1沈殿槽と連通して第1沈殿槽の下流に配設された第1接触酸化槽、第1接触酸化槽と連通して第1接触酸化槽の下流に配設された第2沈殿槽、及び第2沈殿槽と連通して第2沈殿槽の下流に配設された第2接触酸化槽を、密閉容器内に含む有機性排水を処理する装置であって、
1.第1沈殿槽が、有機性排水を濃縮により固形汚濁物質と液状汚濁物質に分離し、沈殿した汚泥中に存在する高分子有機物質を通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)により高分子有機物質の構成単位低分子物質に変換するようになっており、
2.第1接触酸化槽が、所定の位置に酸素富化空気を曝気させる装置を備えていて、担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)を浮遊状態で含んでいて、第1沈殿槽から移送された液状汚濁物質と、担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)を、酸素富化空気を曝気させながら、それぞれ循環流動させて相互に接触させ、液状汚濁物質に含まれている前記高分子有機物質の構成単位低分子物質有機物を、主として有機酸とアルコールに酸化・分解するようになっており、
3.第2沈殿槽が、前記第1接触酸化槽から移送された被処理液状汚濁物質を更に濃縮させて、担体から剥離した汚泥と上澄液に分離するようになっており、
4.第2接触酸化槽が、所定の位置に、酸素富化空気を曝気させる装置と、多孔質担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)が固定されていて、前記第2沈殿槽から移送された上澄液を曝気下に、担体に付着・固定させた好気性微生物群(aerobic)と接触させて、上澄液に含まれている主として有機酸とアルコールを水と炭酸ガスに酸化・分解し、好気性微生物群(aerobic)で酸化・分解できない難分解化合物を多孔質担体で吸着して浄化するようになっている、ことを特徴とする有機性排水を処理する装置。
【請求項12】
有機性排水は、フリーストール・ミルキングパーラー排水である請求項11に記載の装置。
【請求項13】
通性嫌気性微生物群(Facultative anaaerobe)は、Genus Escherichia, Genus Flavobacterium, Genus Bacillus,enus Corynebacterium, Genus Bacillus, Genus Lactobacillus、及びそれらの混合物から成る群から選択された1種を含む請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
好気性微生物群(aerobic)は、Genus Pseudomonas, Genus Zogloea, Genus Alcaligenus, Genus Escherichia,Genus Bacillus, Bacillus subtilis, Genus Lactobacillus,Genus Corynebacterium,Gensu Ncardia、及びそれらの混合物から成る群から選択された1種を含む請求項11または12に記載の装置。
【請求項15】
第1沈殿槽、第1接触酸化槽、第2沈殿槽、及び第2接触酸化槽の少なくとも1槽に酵素を添加した請求項11〜14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
酵素が、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、ブルラナーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、ラクターゼ、プロテアーゼ、トリプトシン、パパイン、レンネット、リパーゼ、ホスホリパーゼA2、及びそれらの混合物から成る群から選択された1種である請求項15に記載の装置。
【請求項17】
担体が、無機質多孔体である請求項11〜16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
担体が、無機質多孔体と繊維集合体または合成樹脂成形体との複合体である請求項11〜16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
担体が、繊維集合体または合成樹脂成形体である請求項11〜16いずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
無機質多孔体が、所定の形状に成形した活性炭、ゼオライト、リン酸アルミニウム、シリカ、活性炭繊維、カーボンアエロジェル、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、セピオライト、炭酸カルシウム、及びクレーから成る群から選択された1種である請求項17または18に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−831(P2007−831A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186366(P2005−186366)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(592180225)株式会社楢崎製作所 (9)
【Fターム(参考)】