説明

有機溶媒ガス濃度の検出方法、有機溶媒ガス濃度の調整方法、有機溶媒ガス濃度検出装置及び有機デバイスの製造方法

【課題】不活性ガス中の低濃度の有機溶媒の濃度を継続的に検出する方法、不活性ガス中の有機溶媒の濃度を低濃度に調整する方法、不活性ガス中の有機溶媒の濃度を継続的に検出する装置、湿式法による有機デバイスの製造方法の提供。
【解決手段】ガス検出装置で不活性ガス中の有機溶媒ガスの濃度を検出する方法であって、
前記ガス検出装置に前記有機溶媒ガスを含んだ前記不活性ガス及び酸素ガス、又は酸化性ガスを供給し、前記有機溶媒ガスの濃度を検出することを特徴とする不活性ガス中の有機溶媒ガス濃度の検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
有機溶媒ガスを含んだ不活性ガス中の有機溶媒ガス濃度の検出方法、有機溶媒ガス濃度の調整方法、有機溶媒ガス濃度検出装置、及び有機溶媒ガス濃度の検出方法を使用した有機デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中の有害ガス、有機溶媒を使用した製造工程の有機溶媒ガス等の検出には様々なガスセンサーが使用されている。例えば、ガス検知管、各種ガスクロマトグラフ、熱線型半導体式センサー、定電位電解式センサー、薄型半導体式センサー、半導体式センサー、接触燃焼式センサー、オルガスタ式半導体式センサー、気体熱伝導式半導体式センサー、隔膜ガルバニ電池式センサー等が使用されており必要に応じて使い分けて使用されている。この中でも有機溶媒ガスの様可燃性ガスを検出するセンサーとしては、半導体ガスセンサーや接触燃焼式センサーが検出安定性、使い易さ等の面から使用されている。半導体ガスセンサーの中でも金属酸化物を用いた酸化物半導体ガスセンサーが挙げられる。
【0003】
酸化物半導体ガスセンサーは、SnO、WO、LaNiO等の半導体微粒子を成型焼結して作製された多孔質体の素子を用いるもので、素子をヒーターで一定温度に加熱して使用される。素子の電気抵抗値は素子に吸着した酸素が有機溶剤ガスで消費されることで変化する。このように素子の電気抵抗値は周囲のガス濃度に応じて変化するため、素子に一定電流を流しその両端電圧を測定するなどの方法で抵抗変化を検出することによりガス濃度を知ることが出来る。有機溶剤ガスで消費される酸素を補充するため一定の酸素が必要とする。すなわち、酸化物半導体ガスセンサーは酸素ガスが存在する環境で発生する有機溶剤ガスの濃度を測定するのに適していることが知られており、酸素ガスの存在が使用条件となっている。特開平9−72871号公報に、酢酸菌によるエタノールを利用した酢酸発酵工程のエタノールの濃度の管理に酸化物半導体ガスセンサーを使用した技術が公開されている。
【0004】
又、接触燃焼式ガスセンサーは、アルミナ等の金属酸化物焼結体に白金等の貴金属触媒を担持した燃焼触媒部を、白金等の貴金属線に設けた構造をしている。可燃性ガスが触媒表面で接触燃焼し、その熱により貴金属線の電気抵抗が変化することにより、ガス濃度を検知している。
【0005】
ガスクロマトグラフを用いても、高精度で、不活性ガス中の有機溶剤ガスを検出することが出来る。しかしながら、装置が非常に高価であり、連続的に測定することも難しい。
【0006】
近年、有機薄膜太陽電池、有機半導体、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子とも言う)等の様々な有機デバイスに注目が集まっている。これら有機デバイスの中でも有機EL素子は大きく着目されている。
【0007】
例えば、有機EL素子の製造方法としては、真空プロセスを利用した乾式法と、塗布装置を用いる湿式法がある。特に、材料の利用効率がよく、大面積化が容易、又、大型の真空装置が必要でない等の観点から湿式法による製造方法が着目されている。しかしながら、湿式法で有機デバイスを製造しようとすると、材料の酸化や変性、また、有機デバイス中への水や酸素の混入による性能変化が問題になる。この様問題に対応するため、窒素やアルゴン等の不活性ガス環境下で作業を行うことが一般的となっている。
【0008】
又、湿式法で有機EL素子を製造すると、ムラが生じたり、効率・寿命などにばらつきが発生する場合があった。これらの問題に対する検討が成されてきた。
【0009】
例えば、素子基板の上に、有機EL素子の機能層を構成する正孔輸送層及び、赤、緑及び青用発光層の形成を湿式法で行う際、不活性ガスで満たされた各工程を各液状組成物を構成する有機溶媒を気化して、各工程内の雰囲気を蒸気圧測定手段で測定し、各液状組成物を構成する有機溶媒の蒸気圧が80%以上の雰囲気で行うことで安定した膜を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
しかしながら、特許文献1には具体的な蒸気圧測定方法が記載されておらず、公知のセンサーである、酸化物半導体式ガスセンサーや接触燃焼式ガスセンサーを用いた場合、測定の再現性が悪いことがあることが判った。特許文献1に記載の高い有機溶媒濃度雰囲気中で成膜する方法は次の欠点を有していることが判った。
1)乾燥に時間が掛かるため、乾燥する間に基板上に塗布された塗布膜が振動、乾燥風などの外乱を受け安定しなくなる。
2)有機デバイス中に有機溶媒が残存しやすくなり、有機デバイスの性能劣化や、連続使用時間の低下などが生じる。
【0011】
この様な状況から、低濃度の有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスを含有するガスから有機溶媒ガスの濃度を継続的に検出する方法、有機溶媒ガスの濃度を低濃度に調整する方法、有機溶媒の濃度を継続的に検出する装置、湿式法により安定した成膜が出来る有機デバイスの製造方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−260778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記状況に鑑みなされたものであり、その目的は、不活性ガス中の低濃度の有機溶媒の濃度を継続的に検出する方法、不活性ガス中の有機溶媒の濃度を低濃度に調整する方法、不活性ガス中の有機溶媒の濃度を継続的に検出する装置、湿式法による有機デバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は下記の構成により達成された。
【0015】
1.ガス検出装置で不活性ガス中の有機溶媒ガスの濃度を検出する方法であって、前記ガス検出装置に前記有機溶媒ガスを含んだ前記不活性ガス及び酸素ガス、又は酸化性ガスを供給し、前記有機溶媒ガスの濃度を検出することを特徴とする不活性ガス中の有機溶媒ガス濃度の検出方法。
【0016】
2.前記ガス検出装置に供給する酸素ガス、又は酸化性ガスの量は、該ガス検出装置に供給するガスの量に対して0.01%以上、10%以下であることを特徴とする前記1に記載の不活性ガス中の有機溶媒ガス濃度の検出方法。
【0017】
3.前記ガス検出装置は半導体ガスセンサーを使用していることを特徴とする前記1又は2に記載の不活性ガス中の有機溶媒ガス濃度の検出方法。
【0018】
4.有機溶媒ガスを含んだ不活性ガス中の有機溶媒ガスの濃度を調整する方法であって、
前記有機溶媒ガス濃度を前記前記1から3の何れか1項に記載の検出方法で有機溶媒ガス濃度を検出し、検出結果に基づき前記不活性ガス中の有機溶媒ガス濃度を調整することを特徴とする有機溶媒ガス濃度の調整方法。
【0019】
5.前記有機溶媒ガス濃度を5ppmから50ppmに調整することを特徴とする前記4に記載の有機溶媒ガス濃度の調整方法。
【0020】
6.有機溶媒ガスを含んだ不活性ガス中の有機溶媒ガスの濃度を検出する有機溶媒ガス濃度検出装置であって、
少なくとも、前記ガスの供給手段と、酸素ガス供給手段と、有機溶媒ガス濃度検出手段と、前記有機溶媒ガス濃度検出手段による検出情報に基づき、前記不活性ガス中の前記有機溶媒ガスの濃度を調整する調整手段とを有することを特徴とする有機溶媒ガス濃度検出装置。
【0021】
7.前記有機溶媒ガス濃度検出手段は半導体ガスセンサーを使用していることを特徴とする前記6に記載の有機溶媒ガス濃度検出装置。
【0022】
8.支持体の上に、湿式法で形成された少なくとも一層の有機物質薄膜を有する有機デバイスの製造方法において、前記有機物質薄膜の成膜工程、乾燥工程の少なくとも1つの工程の有機溶媒ガス濃度を、前記前記1から3の何れか1項に記載の検出方法により監視することを特徴とする有機デバイスの製造方法。
【0023】
9.前記前記1から3の何れか1項に記載の検出方法による有機溶媒ガス濃度の検出結果に基づき、成膜工程、乾燥工程の該有機溶媒ガス濃度を調整することを特徴とする前記8に記載の有機デバイスの製造方法。
【0024】
10.前記有機溶媒ガス濃度を5ppmから50ppmに調整することを特徴とする前記8又は9に記載の有機デバイスの製造方法。
【0025】
11.前記有機デバイスが有機ELパネルであることを特徴とする前記8から10の何れか1項に記載の有機デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0026】
不活性ガス中の低濃度の有機溶媒の濃度を継続的に検出する方法、不活性ガス中の有機溶媒の濃度を低濃度に調整する方法、不活性ガス中の有機溶媒の濃度を継続的に検出する装置、湿式法による有機デバイスの製造方法を提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】有機溶媒ガス濃度検出装置を使用し、工程の有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスを含有するガスの有機溶媒ガス濃度を制御する方法を示す概略のブロック図である。
【図2】有機ELパネルの概略図である。
【図3】湿式塗布法による有機ELパネルの製造工程の模式図である。
【図4】図3に示される有機物質薄膜形成工程の模式図である。
【図5】図4に示す正孔輸送層形成工程の成膜工程の有機溶媒ガス濃度を制御するために使用している各部材の関係を示す概略のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明者らは、有機溶媒ガスを含む不活性ガスを含有するガス中の有機溶媒ガス濃度の測定について、低濃度まで測定可能な酸化物半導体ガスセンサーの使用を検討した。しかしながら、酸化物半導体センサーは、酸素と有機溶媒等の還元ガスの吸着平衡で溶媒ガス濃度を検知する。このため、酸素ガスを含まず、有機溶媒ガスを含む不活性ガスを含有するガス(検体ガスとも言う)では、酸化物半導体表面が次第に有機溶媒で満たされ、使用中に測定値が飽和してしまうという問題が発生した。
【0029】
これに対し、酸素ガスを含まない検体ガスに対して、酸化物半導体センサーを使用する方法に付き検討した結果、酸化物半導体センサーに検体ガスが供給される直前に酸素ガスを混合する方法、酸化物半導体センサーに直接酸素ガスを供給する方法が有効であることが判り本発明に至った次第である。
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図1から図5を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】
図1は、有機溶媒ガス濃度検出装置を使用し、工程の有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスを含有するガスの有機溶媒ガス濃度を制御する方法を示す概略のブロック図である。
【0032】
図中、1は有機溶媒ガス濃度検出手段を示す。有機溶媒ガス濃度検出手段1は、有機溶媒ガス濃度検出装置101と、工程2の有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスを含有するガスの供給手段102と、酸素ガス供給手段103と、有機溶媒ガス濃度検出装置101の情報に基づき、工程2の有機溶媒ガスの濃度を制御するCPUとメモリーとを有する制御手段104とを有している。有機溶媒ガス濃度検出手段1としては、ガスセンサーが使用されている。
【0033】
供給手段102は、ポンプ102aと供給管102bとを有しており、設定された間隔で有機溶媒ガス濃度検出装置101に工程2の内部の有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスを含有するガスを供給する様に配設されている。
【0034】
ガス中の不活性ガスの濃度は、装置への影響、製造物への影響等を考慮し、98%以上であることが好ましい。
【0035】
不活性ガスの濃度を直接測定するのは困難であるため、酸素濃度、水分濃度、その他の不純物濃度を求め、100%から不純物濃度を引いた値を不活性ガスの濃度とする。
【0036】
ガス中の酸素ガス濃度は、製造物への影響等を考慮し、0.1%以下であることが好ましい。
【0037】
酸素ガス濃度は、ALPHA OMEGA INSTRUMENTS Corp.製Series 3500 Trace Oxygen Transmitterを使用して測定した値を用いた。
【0038】
水分濃度は、Alpha Moisture Systems社製水分濃度計Model DS1000を使用して測定した値を用いた。
【0039】
また、不純物濃度はガスクロマトグラフ質量分析装置(Agilent 6890GC/5973MSD)により求めた値を用いた。
【0040】
尚、ガスクロマトグラフ質量分析装置にても、酸素及び水分濃度を測定することは可能であるが、サンプリングや測定時の誤差が大きくなるため、酸素・水分濃度はそれぞれの検出装置を用いて、系中で測定をすることが好ましい。
【0041】
酸素ガス供給手段103は、酸素ガス(乾燥空気)供給タンク103aと、供給管103bとを有している。供給管103bを接合する位置は、酸素ガス(乾燥空気)を供給する方法に合わせ設定することが好ましい。また、乾燥装置103cを設けても良い。乾燥装置103cとしては、塩化カルシウム、シリカゲル等の乾燥剤が充填された容器が使用することが出来る。
【0042】
酸素ガス(乾燥空気)を供給する方法としては特に限定はなく、例えば、1)工程2の有機溶媒ガスを含む不活性ガスと酸素ガスとを交互に有機溶媒ガス濃度検出装置101に供給する方法、2)工程2の有機溶媒ガスを含む不活性ガスと酸素ガス(乾燥空気)とを混合して有機溶媒ガス濃度検出装置101に供給する方法が挙げられる。
【0043】
上記、1)に記載の方法の場合、供給管103bを接合する位置は有機溶媒ガス濃度検出装置101であることが好ましく、2)に記載の方法の場合、供給管103bを接合する位置は、工程2の有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスと均一に混合出来れば特に限定はない。例えば、供給管102bに接合し供給管102bの内部で混合してもよいし、混合容器を設け工程2の有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスと酸素ガスとを混合した後、有機溶媒ガス濃度検出装置101に供給してもよい。本図は供給管102bに接合した場合を示している。尚、供給管102bの内部で混合する場合は、スタティックミキサーを供給管102bに配設することが好ましい。混合容器の場合は、攪拌用のファンを配設することが好ましい。
【0044】
上記、1)に記載の方法の場合、有機溶媒ガス濃度検出装置101への工程2の有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスと、酸素ガスとの供給タイミング、期間は特に制限はないが、一方のガスの供給期間が長過ぎると検出出来なくなるので、概ね10分以下でガスを切り替えるのが好ましく、更に5分以下が好ましく、3分以下で切り替えるのが最も好ましい。
【0045】
次に、酸素ガス(乾燥空気)の供給比率に付き説明する。
【0046】
上記、1)に記載の方法の場合、検出精度、ガス使用量の点から工程2の有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスを含有するガスの体積1に対して、酸素ガス又は酸化性ガスは体積0.01%以上10%以下が好ましく、0.1%以上5%以下がより好ましく0.5%以上2%以下が最も好ましい。
【0047】
2)に記載の方法の場合、又は酸化性ガスは体積0.01%以上10%以下が好ましく、0.1%以上5%以下がより好ましく0.5%以上2%以下が最も好ましい。工程2の有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスを含有するガスの体積1に対して、酸素ガス又は酸化性ガスは体積0.01%以上10%以下が好ましく、0.1%以上5%以下がより好ましく0.5%以上2%以下が最も好ましい。
【0048】
工程2は、内部の有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスを含有するガスの循環手段201と、不活性ガス供給手段202とを有している。
【0049】
循環手段201は排気管201bと、供給管201d、ポンプ201aと、有機溶媒ガストラップ201cとを有している。ポンプ201aにより有機溶媒ガストラップ201cに送られた有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスを含有するガスは、ガス中の有機溶媒ガスが有機溶媒ガストラップ201cにより捕捉され、不活性ガスが主体になった状態で供給管201dを介して工程2に戻される。
【0050】
有機溶媒ガストラップ201cとしては、有機溶媒ガスが捕捉することが出来れば特に限定はなく、例えば液体窒素/チラー冷却による方式、モレキュラーシーブ(ユニオン・カーバイト社製)等が挙げられる。
【0051】
不活性ガス供給手段202は、不活性ガスタンク202aと弁202bとを有している。尚、工程2には酸素ガス濃度検出装置(不図示)、水分濃度検出装置(不図示)等が配設されており、これらの情報に従って工程2内部への空気の混入、不活性ガスの漏れ等による不活性ガス濃度の不足分を補うために弁202bが開けられ、工程2への空気の混入、漏れ等により減少した不活性ガス濃度を設定値にするために工程2内部へ不活性ガスの供給が行うことが可能となっている。
【0052】
本発明で有機溶媒ガスとは、常温常圧で液体であって、沸点が200℃以下の有機溶媒のガスを言う。
【0053】
酸素ガス及び酸化性ガスは、酸素ガス又は酸化性ガス単独で供給してもよいし、他のガスと混合された状態で供給してもよい。例えば、乾燥空気の様な形態で供給してもよい。但し、有機溶媒ガス濃度検出装置の検出を妨害する様なガスや、検出対象となる有機溶剤等の還元性ガスは、酸素ガスと混合して用いることは好ましくなく、水分と有機溶媒等の還元性ガスの濃度が1ppm以下でなければならない。
【0054】
本発明での、酸化性ガスとは、他の物質を発火させる、又は燃焼を助けるガスのことを言う。酸化性ガスとしては、例えば、酸素の他に、亜酸化窒素や、フッ素ガスが挙げられる。
【0055】
不活性ガスとは、窒素ガス、及び18族元素(たとえばアルゴンガス、ヘリウムガス)を言う。
【0056】
乾燥空気とは、大気中の空気を乾燥させたのではなく、上市品である高純度ガス圧縮空気 G1(大陽日酸東関東(株)製)、高純度圧縮ガス合成空気 ZERO−U(住友精化(株)製)等を言う。
【0057】
本図に示す有機溶媒ガス濃度検出装置101を使用し、工程2の有機溶媒ガス濃度を調整する方法で、工程2の有機溶媒ガス濃度は、検出精度、ガス使用量等を考慮し、5ppmから50ppmに調整することが好ましい。
【0058】
次に、本図を使用して、工程2内部の有機溶媒ガスの濃度を調整する方法に付き説明する。
【0059】
ステップ1では、供給手段102により工程2内部の有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスが供給管102bに送られる。合わせて酸素ガス供給手段103から供給管103bを介して酸素ガスが供給管102bに供給され、有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスと混合され、有機溶媒ガス濃度検出装置101に供給される。
【0060】
ステップ2では、有機溶媒ガス濃度検出装置101により、解析が行われ、情報が制御手段104のCPUに送られる。CPUに送られた情報は、予め工程2内部の有機溶媒ガス濃度が設定されているメモリーとで演算処理が行われる。
【0061】
ステップ3では、制御手段104の情報に従って循環手段201のポンプ201aを稼動させることで工程2内部の有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスの循環が行われる。ポンプ201aの稼動により排気された工程2内部の有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスは有機溶媒ガストラップ201cにより有機溶媒ガスが捕捉され、不活性ガスが主体になった状態で供給管201dを介して工程2に戻され、工程2の内部の有機溶媒ガスの濃度を設定値に調整することが可能となる。
【0062】
ステップ1からステップ3により、工程内の有機溶媒ガス濃度を設定値に調整することが可能となる。
【0063】
有機溶媒ガス濃度検出装置101に使用するガスセンサーとしては、ガスが測定出来れば特に制限なく用いることが出来る。具体的なガスセンサーとしては、対象とする有機溶媒ガスにあわせて上市されている酸化物半導体センサー、燃焼式センサー、電気化学式センサー、固体電解質ガスセンサー等が挙げられる。更に、これらの中で、酸化物半導体センサー、燃焼式センサーが有機溶剤等の還元性ガスを感度よく測定出来るので好ましく、更に、酸化物半導体センサーが好ましい。
【0064】
本発明は、これらの酸化物半導体ガスセンサー、(燃焼式センサー等)を使用して、有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスの濃度を測定するため、測定時に酸化物半導体ガスセンサー(、燃焼式センサー)に酸素ガスを供給することで、不活性ガスの濃度が98%以上のガス中の有機溶剤ガスの濃度を検出することを可能にした。
【0065】
本発明の有機溶媒ガス濃度の検出方法は、支持体の上に、湿式法で形成された少なくとも、一層の有機物質薄膜を有する有機デバイスの製造方法に適用すると有効である。
【0066】
本発明で有機デバイスとは、太陽電池、有機薄膜トランジスタ、有機ELパネル等を言う。
【0067】
次に、本発明の有機溶媒ガス濃度の検出方法を使用した有機デバイスの製造方法に付き、有機ELパネルを代表として図2から図5で説明する。
【0068】
図2は有機ELパネルの概略図である。図2(a)は有機ELパネルの概略斜視図である。図2(b)は図2(a)のA−A′に沿った概略断面図である。図2(c)は図2(a)のB−B′に沿った概略断面図である。
【0069】
図中、3は有機ELパネルを示す。有機ELパネル3は、基材301上に順次、第1電極(陽極)302と、正孔輸送層303と、発光層304と、電子輸送層305と、第2電極(陰極)306とを積層した構造を有する有機EL素子を、接着剤層307を介して封止部材308により封止された封止構造となっている。302aは第1電極(陽極)302の取り出し電極を示し、306aは第2電極(陰極)306の取り出し電極を示す。第1電極(陽極)302は、基材301上に取り出し電極302aを有する形状にマスクを使用し形成されている。第1電極(陽極)302と第1基材301との間にガスバリア膜(不図示)を設けても構わない。
【0070】
湿式法で形成される有機層としては、正孔輸送層303と、発光層304と、電子輸送層305とが湿式塗布法が挙げられる。
【0071】
本図に示す有機ELパネルの層構成は一例を示したものであるが、他の代表的な有機ELパネルの層構成としては次の構成が挙げられる。
【0072】
(1)基材/陽極/発光層/電子輸送層/陰極/封止層
(2)基材/陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極/封止層
(3)基材/陽極/正孔輸送層(正孔注入層)/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層(電子注入層)/陰極/封止層
(4)基材/陽極/陽極バッファー層(正孔注入層)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層(電子注入層)/陰極/封止層
図2で示される湿式塗布方式で形成される有機ELパネルの層構成の他、上記(1)から(4)で示される有機ELパネルの層構成の内、湿式塗布方式で形成される層として、陽極バッファー層(正孔注入層)、陰極バッファー層(電子注入層)が挙げられる。
【0073】
図3は湿式塗布法による有機ELパネルの製造工程の模式図である。
【0074】
以下に、一例としてパターン化されて形成されている第1電極を有する帯状可撓性支持体上に湿式塗布法で形成した正孔輸送層、発光層、電子輸送層とを有する有機ELパネルの製造方法を本図で説明する。
【0075】
図中、4は正孔輸送層、発光層、電子輸送層を湿式塗布法で形成する製造工程を示す。製造工程4は、供給工程401と、有機物質薄膜形成工程402、第2電極形成工程403、封止工程404、回収工程405とを有している。
【0076】
供給工程401は、繰り出し装置401aと、表面処理装置401bと、アキュームレータ401cとを使用している。繰り出し装置401aからは巻き芯に巻き取られロール状態で供給された、ガスバリア膜と第1電極とがこの順番で既に形成された帯状可撓性支持体401aが繰り出され表面処理装置401bを介して有機物質薄膜形成工程402に送られる。
【0077】
第1電極の形成位置は帯状可撓性支持体401aに付けられたアライメントマーク(不図示)により判る様になっている。
【0078】
表面処理装置401bは、第1電極の表面を洗浄改質する洗浄表面改質処理手段401b1と、除電処理手段401b2とを有している。洗浄表面改質処理手段401b1としては、例えば低圧水銀ランプ、エキシマランプ、プラズマ洗浄装置等が挙げられる。除電処理手段401b2としては、例えば光照射方式とコロナ放電式等が挙げられる。
【0079】
アキュームレータ401cは、供給工程401から搬送されてくる帯状可撓性支持体401aの搬送速度と有機物質薄膜形成工程402の塗布速度との差を調整するために配設されており、一定長さの帯状可撓性支持体401aを溜める機能を有している。溜める長さの調整は速度差に応じてアキュームレータ部401cの長さを変えることで可能となっている。
【0080】
有機物質薄膜形成工程402は、正孔輸送層形成工程402aと、発光層形成工程402bと、電子輸送層形成工程402cとを有している。有機物質薄膜形成工程402で供給工程401から搬送されてくる帯状可撓性支持体401aに付けられたアライメントマーク(不図示)を検出装置(不図示)で読み取り、検出装置(不図示)の情報に従って、帯状可撓性支持体401aの上に形成されている第1電極の位置に合わせて正孔輸送層、発光層、電子輸送層が順次形成され、第2電極形成工程403に搬送される。有機物質薄膜形成工程402の各正孔輸送層形成工程402aと、発光層形成工程402bと、電子輸送層形成工程402cとには、図1に示される有機溶媒ガス濃度検出手段1が配設されており、図1に示されるブロック図と同じ構成となっている。尚、有機物質薄膜形成工程402に関しては、図4で説明する。
【0081】
第2電極形成工程403は、蒸着装置403aとアキュームレータ403bとを使用している。第2電極形成工程403では電子輸送層形成工程402cから連続的に搬送されてくる電子輸送層までが形成された帯状可撓性支持体401aに付けられたアライメントマーク(不図示)を検出装置(不図示)で読み取り、検出装置(不図示)の情報に従って、帯状可撓性支持体401aの上に形成されている第1電極の位置に合わせて蒸着装置403aで、取り出し電極(不図示、図2の取り出し電極306aに相当する)を有する第2電極(陰極)(不図示、図2の第2電極(陰極)306に相当する)を、既に形成されている電子輸送層(電子注入層)(不図示、図2の電子輸送層305に相当する)の上にマスクパターン成膜する。第2電極(陰極)としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nmから5μm、好ましくは50nmから200nmの範囲で選ばれる。この段階で、基材/バリア層/第1電極(陽極)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/第2電極(陰極)の構成を有する有機EL素子が出来上がる。本図では、第2電極形成工程403が蒸着装置を使用している場合を示したが、第2電極(陰極)の形成方法については、特に限定はなく、例えばスパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法等を用いることが出来る。アキュームレータ403bは封止部404との速度調整のために配設されている。
【0082】
封止工程404は、接着剤塗設装置404aと、封止部材供給装置404bと、貼合装置404cと、アキュームレータ404dとを使用している。
【0083】
接着剤塗設装置404aで第2電極までが形成された帯状可撓性支持体401aの第2電極が形成された側に接着剤が塗設される。この後、封止部材供給装置404bより搬送されてくる封止部材404b1を貼合装置404cにより、第2電極までが形成された帯状可撓性支持体401aの接着剤が塗設された面側に貼合され有機ELパネルが作製される。この段階で作製された有機ELパネルは連続的に繋がっている。この後、回収工程405に搬送される。
【0084】
回収工程405は打ち抜き断裁装置405aと巻き取り装置405bとを使用している。打ち抜き断裁装置405aで、封止部材404b1が貼合された帯状可撓性支持体401aを帯状可撓性支持体401aに付けられたアライメントマーク(不図示)を検出装置(不図示)で読み取り、検出装置(不図示)の情報に従って打ち抜き、個別の有機ELパネル5に断裁される。有機ELパネルが打ち抜かれたスケルトンは巻き取り装置405bで巻き取られ回収される。断裁された有機ELパネルは図2に示される有機ELパネルと同じ構成を有している。
【0085】
本図は、第1電極が形成された帯状可撓性支持体を使用し、正孔輸送層形成から断裁までを連続して行う場合を示したが、第1電極形成から正孔輸送層形成と、発光層形成と、電子注入層形成から断裁との3工程に分割することも可能である。
【0086】
図4は、図3に示される有機物質薄膜形成工程の模式図である。
【0087】
有機物質薄膜形成工程402は、正孔輸送層形成工程402aと、発光層形成工程402bと、電子輸送層形成工程402cとを有しており、酸素ガスによる影響、静電気による蒸発した有機溶媒の引火等を防止するため、不活性ガス雰囲気中で各層の形成が行われている。
【0088】
正孔輸送層形成工程402aは、成膜工程402a1と、乾燥工程402a2と、アキュームレータ402a3とを有している。成膜工程402a1は、塗布室(図5参照)に配設された塗布装置402a11と、バックアップロール402a12とを使用している。
【0089】
正孔輸送層形成工程402aは、供給工程401から搬送されてくる帯状可撓性支持体401aをバックアップロール402a12上に保持し、塗布装置402a11により、帯状可撓性支持体401a上に形成されている第1電極の端部を除いた領域に正孔輸送層形成用塗布液を塗布し、正孔輸送層形成用塗膜中の溶媒を乾燥工程402a2で除去し正孔輸送層を形成する。
【0090】
塗布装置402a11により塗布が行われる時は、供給工程401(図3参照)から搬送されてくる第1電極が形成された帯状可撓性支持体401aに設けられたアライメントマーク(不図示)を正孔輸送層形成工程402aに配設された検出機(不図示)により検出し、アライメントマークに従って塗布装置402a11の位置合わせが行われ、バックアップロール402a12に保持された帯状可撓性支持体401aの上のパターン化されて形成された第1電極の取り出し電極部を除いて第1電極の領域に、正孔層形成用塗布液が塗布される。
【0091】
発光層形成工程402bと、電子輸送層形成工程402cとは正孔輸送層形成工程402aと同じ構成となっている。
【0092】
尚、成膜工程402a1と、乾燥工程402a2は何れも有機溶媒ガス濃度検出装置(不図示)により有機溶媒の濃度の監視・調整が行われている。尚、成膜工程402a1と、乾燥工程402a2との有機溶媒の濃度の監視・調整に付いては図5で説明する。
【0093】
発光層形成工程402bは、成膜工程402b1と、乾燥工程402b2と、アキュームレータ402b3とを有している。成膜工程402b1は、塗布室(不図示)に配設された塗布装置402b11と、バックアップロール402b12とを使用している。
【0094】
発光層形成工程402bは、正孔輸送層形成工程402aから搬送されてくる帯状可撓性支持体401aをバックアップロール402b12上に保持し、塗布装置402b11により、帯状可撓性支持体401a上に形成されている正孔輸送層の領域に発光層形成用塗布液を塗布し、発光層形成用塗膜中の溶媒を乾燥工程402b2で除去し発光層を形成する。
【0095】
塗布装置402b11により塗布が行われる時は、正孔輸送層形成工程402aから搬送されてくる正孔輸送層が形成された帯状可撓性支持体401aに設けられたアライメントマーク(不図示)を発光層形成工程402bに配設された検出機(不図示)により検出し、アライメントマークに従って塗布装置402b11の位置合わせが行われ、バックアップロール402b12上に保持された帯状可撓性支持体401aの上の正孔輸送層が形成された領域に発光層形成用塗布液が塗布される。
【0096】
尚、発光層形成工程402bも正孔輸送層形成工程402aと同じ方式で有機溶媒ガス濃度検出装置(不図示)により有機溶媒の濃度が監視され、監視結果に基づき、有機溶媒の濃度の調整が行われている。
【0097】
電子輸送層形成工程402cは、成膜工程402c1と、乾燥工程402c2と、アキュームレータ402c3とを有している。成膜工程402c1は、塗布室(図5参照)に配設された塗布装置402c11と、バックアップロール402b12とを使用している。
【0098】
電子輸送層形成工程402cは、発光層形成工程402bから搬送されてくる帯状可撓性支持体401aをバックアップロール402c12上に保持し、塗布装置402c11により、帯状可撓性支持体401a上に形成されている発光層の領域に電子輸送層形成用塗布液を塗布し、電子輸送層形成用塗膜中の溶媒を乾燥工程402c2で除去し電子輸送層を形成する。
【0099】
塗布装置402c11により塗布が行われる時は、発光層形成工程402bから搬送されてくる発光層が形成された帯状可撓性支持体401aに設けられたアライメントマーク(不図示)を電子輸送層形成工程402cに配設された検出機(不図示)により検出し、アライメントマークに従って塗布装置402c11の位置合わせが行われ、バックアップロール402c12上に保持された帯状可撓性支持体401aの上の発光層が形成された領域に電子輸送層形成用塗布液が塗布される。
【0100】
尚、電子輸送層形成工程402cも正孔輸送層形成工程402aと同じ方式で有機溶媒ガス濃度検出装置(不図示)により有機溶媒の濃度が監視され、監視結果に基づき、有機溶媒の濃度の調整が行われている。
【0101】
電子輸送層形成工程402cで電子輸送層が形成された後、次工程の第2電極形成工程403(図3参照)での静電気に伴う故障を防止するため除電処理された後、第2電極形成工程403(図3参照)へ搬送される。
【0102】
正孔輸送層形成工程402aと、発光層形成工程402bと、電子輸送層形成工程402cとで使用している塗布装置としては特に限定はなく、例えば、押出し塗布方式、インクジェット方式、フレキソ印刷方式、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、スクリーン印刷方式、マスクを用いたスプレー塗布方式等に使用する各種塗布装置が挙げられる。これらの塗布機の使用は各工程での塗布液の材料に応じて適宜選択することが可能となっている。本図は押出し塗布方式の場合を示している。
【0103】
図5は図4に示す正孔輸送層形成工程の成膜工程の有機溶媒ガス濃度を調整するために使用している各部材の関係を示す概略のブロック図である。尚、図4に示す正孔輸送層形成工程402aの乾燥工程402a2及び発光層形成工程402bと、電子輸送層形成工程402cとの有機溶媒ガス濃度を監視・調整する方法は、本図に示す成膜工程402a1の有機溶媒ガス濃度を監視・調整すると同じであるため省略する。
【0104】
又、成膜工程402a1の塗布室402a13の中の有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスを含有するガスの有機溶媒ガス濃度を検出する有機溶媒ガス濃度検出手段1は図1に示される有機溶媒ガス濃度検出手段と同じであり、又有機溶媒ガス濃度検出方法は、図1に示される方法と同じであるため詳細な説明は省略する。
【0105】
成膜工程402a1は、塗布室402a13と、塗布装置402a11と、バックアップロール402a12とを使用しており、塗布室402a13の中は酸素ガスの影響を防止するため不活性ガスで満たされている。
【0106】
塗布室402a13は、内部の有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスを含有するガスの循環手段402a14と、不活性ガス供給手段402a15とを有している。
【0107】
循環手段402a14は排気管402a16と、供給管402a17、ポンプ402a18と、有機溶媒ガストラップ402a19とを有している。ポンプ402a18により有機溶媒ガストラップ402a19に送られた有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスを含有するガスは、ガス中の有機溶媒ガスが有機溶媒ガストラップ402a19により捕捉され、不活性ガスが主体になった状態で供給管402a17を介して塗布室402a13に戻される。
【0108】
有機溶媒ガストラップ402a19としては、図1に示される有機溶媒ガストラップ201cと同じ有機溶媒ガストラップを使用することが出来る。
【0109】
不活性ガス供給手段402a15は、不活性ガスタンク402a20と弁402a21とを有している。尚、塗布室402a13には酸素ガス濃度検出装置(不図示)、水分濃度検出装置(不図示)等が配設されており、これらの情報に従って塗布室402a13の内部への空気の混入、不活性ガスの漏れ等による不活性ガス濃度の不足分を補うために弁402a21が開けられ、塗布室402a13への空気の混入、漏れ等により減少した不活性ガス濃度を設定値にするために塗布室402a13の内部へ不活性ガスの供給が行うことが可能となっている。他の符号は、図1、図4と同義である。
【0110】
有機溶媒ガスとは、正孔輸送層形成用塗布液の調製に使用する溶媒を言う。不活性ガスとは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等を言う。
【0111】
塗布室402a13の有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスを含有するガスは、設定された間隔で有機溶媒ガス濃度検出装置101に、ポンプ102aにより、供給管102bを介して供給される様になっている。
【0112】
有機溶媒ガスを含んだガス中の不活性ガスの濃度は、有機膜への影響等を考慮し、98%以上であることが好ましい。不活性ガスの濃度は、不活性ガスの濃度を直接測定するのは困難であるため、酸素濃度、水分濃度、その他の不純物濃度を求め、100%から不純物濃度を引いた値を不活性ガスの濃度として求めた。
【0113】
酸素ガス濃度は系内にて、ALPHA OMEGA INSTRUMENTS Corp.製Series 3500 Trace Oxygen Transmitterを使用して測定した値を用いた。
【0114】
水分濃度は系内にて、Alpha Moisture Systems社製水分濃度計Model DS1000を使用して測定した値を用いた。
【0115】
また、その他の不純物濃度はガスクロマトグラフ質量分析装置(Agilent 6890GC/5973MSD)により求めた値を用いた。
【0116】
ガス中の酸素ガス濃度は、製造物への影響、防曝等を考慮し、1%以下であることが好ましい。
【0117】
酸素ガス供給手段103による有機溶媒ガス濃度検出装置101に酸素ガスを供給する方法は、図1に示した方法と同じ方法が好ましい。又、供給する酸素ガスも図1の説明に記載した酸素ガスと同じであることが好ましい。
【0118】
有機溶媒ガス濃度検出装置101に酸素ガスを供給するタイミング、酸素ガスの供給比率も図1の説明に記載した酸素ガスと同じであることが好ましい。
【0119】
本図に示す有機溶媒ガス濃度検出装置101を使用し、塗布室402a13の有機溶媒ガス濃度を調整する方法で、塗布室402a13の有機溶媒ガス濃度は、有機化合物の製膜性や膜中への残留する溶媒等を考慮し、5ppmから50ppmに調整することが好ましい。
【0120】
次に、本図を使用して、塗布室402a13の内部の有機溶媒ガスの濃度を調整する方法に付き説明する。
【0121】
ステップ1では、供給手段102により塗布室402a13の内部の有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスが供給管102bに送られる。合わせて酸素ガス供給手段103から供給管103bを介して酸素ガスが供給管102bに供給され、有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスと混合され、有機溶媒ガス濃度検出装置101に供給される。
【0122】
有機溶媒ガス濃度検出装置101に供給手段102により塗布室402a13の内部の有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスに対して供給管102b中に、酸素ガス供給手段103から供給管103bを介して酸素ガスが供給され、有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスと混合され、有機溶媒ガス濃度検出装置101に供給される。
【0123】
ステップ2では、有機溶媒ガス濃度検出装置101により、解析が行われ、情報が制御手段104のCPUに送られる。CPUに送られた情報は、予め塗布室402a13の内部の有機溶媒ガス濃度が設定されているメモリーとで演算処理が行われる。
【0124】
ステップ3では、制御手段104の情報に従って循環手段402a14のポンプ402a18を稼動させることで塗布室402a13の内部の有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスの循環が行われる。ポンプ402a18の稼動により排気された塗布室402a13の内部の有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスは有機溶媒ガストラップ402a19により有機溶媒ガスが捕捉され、不活性ガスが主体になった状態で供給管402a17を介して塗布室402a13に戻され、塗布室402a13の内部の有機溶媒ガスの濃度を設定値にすることが可能となる。
【0125】
ステップ1からステップ3により、塗布室402a13の内部の有機溶媒ガス濃度を5ppmから50ppmの範囲に調整することが可能となる。
【0126】
尚、図4に示す正孔輸送層形成工程402aの乾燥402a2工程及び発光層形成工程402bと、電子輸送層形成工程402cとも本図に示される有機溶媒ガス濃度検出装置を使用した有機溶媒ガス濃度の調整方法により、有機溶媒ガス濃度を5ppmから50ppmに調整することが可能となっている。
【0127】
他の有機デバイスである有機薄膜太陽電池を構成している有機半導体膜の形成、又、有機薄膜トランジスタを構成している有機半導体膜、絶縁層の形成も、図5に示される有機ELパネルの湿式塗布方式による成膜工程の有機溶媒ガス濃度を監視・調整しながら製造する方法で製造することが出来る。
【0128】
以下、有機デバイスである有機ELパネル、太陽電池、有機半導体を構成している部材に付き説明する。
【0129】
有機ELパネルを構成している部材の一例に付き説明する。
【0130】
(基材)
基材としては、枚葉シート状基板、帯状可撓性基板が挙げられる。枚葉基材としては、透明ガラス板、シート状透明樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロハン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート(TAC)、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル或いはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)或いはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0131】
帯状基材としては、透明樹脂フィルムが挙げられ、枚葉基材と同じ樹脂フィルムが使用可能である。基材として透明樹脂フィルムを使用する場合、樹脂フィルムの表面にはガスバリア膜が必要に応じて形成されることが好ましい。ガスバリア膜としては無機物、有機物の被膜又はその両者のハイブリッド被膜が挙げられる。ガスバリア膜の特性としては、水蒸気透過度が0.01g/m・day以下であることが好ましい。更には、酸素透過度0.1ml/m・day・MPa以下、水蒸気透過度10−5g/m・day以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
【0132】
バリア膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることが出来る。更に該膜の脆弱性を改良するためにこれら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。バリア膜の形成方法については、特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることが出来るが、特開2004−68143号公報に記載されている様な大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。
【0133】
尚、貼合法で有機ELパネルを製造する場合、第1電極(陽極)側に使用する第1基材も上記基材の使用が可能である。又、第2電極(陰極)側に使用する第2基材も上記基材の使用が可能である。
【0134】
(第1電極(陽極))
第1電極(陽極)としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。この様な電極物質の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。又、IDIXO(In・ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。或いは、有機導電性化合物の様に塗布可能な物質を用いることも可能である。この第1電極(陽極)より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、又第1電極(陽極)としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。更に膜厚は材料にもよるが、通常10nmから1000nm、好ましくは10nmから200nmの範囲で選ばれる。
【0135】
(正孔注入層(陽極バッファー層))
第1電極(陽極)と発光層又は正孔輸送層の間に、正孔注入層(陽極バッファー層)を存在させてもよい。正孔注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123−166頁)に詳細に記載されている。陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
【0136】
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層又は複数層設けることが出来る。正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性の何れかを有するものであり、有機物、無機物の何れであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、又導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
【0137】
正孔輸送材料としては上記のものを使用することが出来るが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0138】
(発光層)
発光層とは青色発光層、緑色発光層、赤色発光層を指す。発光層を積層する場合の積層順としては、特に制限はなく、又各発光層間に非発光性の中間層を有していてもよい。本発明においては、少なくとも1つの青発光層が、全発光層中最も陽極に近い位置に設けられていることが好ましい。又、発光層を4層以上設ける場合には、陽極に近い順から、例えば青色発光層/緑色発光層/赤色発光層/青色発光層、青色発光層/緑色発光層/赤色発光層/青色発光層/緑色発光層、青色発光層/緑色発光層/赤色発光層/青色発光層/緑色発光層/赤色発光層の様に青色発光層、緑色発光層、赤色発光層を順に積層することが、輝度安定性を高める上で好ましい。発光層を多層にすることで白色素子の作製が可能である。
【0139】
発光層の膜厚の総和は特に制限はないが、膜の均質性、発光に必要な電圧等を考慮し、通常2nmから5μm、好ましくは2nmから200nmの範囲で選ばれる。更に10nmから20nmの範囲にあるのが好ましい。膜厚を20nm以下にすると電圧面のみならず、駆動電流に対する発光色の安定性が向上する効果があり好ましい。個々の発光層の膜厚は、好ましくは2nmから100nmの範囲で選ばれ、2nmから20nmの範囲にあるのが更に好ましい。青、緑、赤の各発光層の膜厚の関係については、特に制限はないが、3発光層中、青発光層(複数層ある場合はその総和)が最も厚いことが好ましい。
【0140】
発光層は発光極大波長が各々430nmから480nm、510nmから550nm、600nmから640nmの範囲にある発光スペクトルの異なる少なくとも3層以上の層を含む。3層以上であれば、特に制限はない。4層より多い場合には、同一の発光スペクトルを有する層が複数層あってもよい。発光極大波長が430nmから480nmにある層を青発光層、510nmから550nmにある層を緑発光層、600nmから640nmの範囲にある層を赤発光層と言う。又、前記の極大波長を維持する範囲において、各発光層には複数の発光性化合物を混合してもよい。例えば、青発光層に、極大波長430nmから480nmの青発光性化合物と、同510nmから550nmの緑発光性化合物を混合して用いてもよい。
【0141】
発光層の材料として使用する有機発光材料は、(a)電荷の注入機能、即ち、電界印加時に陽極或いは正孔注入層から正孔を注入することが出来、陰極或いは電子注入層から電子を注入することが出来る機能、(b)輸送機能、すなわち、注入された正孔及び電子を電界の力で移動させる機能、及び(c)発光機能、すなわち、電子と正孔の再結合の場を提供し、これらを発光に繋げる機能、の3つの機能を併せもつものであれば特に限定はない。例えば、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤や、スチリルベンゼン系化合物を用いることが出来る。
【0142】
その他、上述した有機発光材料をホストとし、当該ホストに青色から緑色までの強い蛍光色素、例えばクマリン系或いは前記ホストと同様の蛍光色素をドープした化合物も、有機発光材料として好適である。有機発光材料として前記の化合物を用いた場合には、青色から緑色の発光(発光色はドーパントの種類によって異なる)を高効率で得ることが出来る。前記化合物の材料であるホストの具体例としては、ジスチリルアリーレン骨格の有機発光材料(特に好ましくは、例えば、4,4′−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル)が挙げられ、前記化合物の材料であるドーパントの具体例としては、ジフェニルアミノビニルアリレーン(特に好ましくは、例えば、N,N−ジフェニルアミノビフェニルベンゼンや4,4′−ビス[2−[4−(N,N−ジ−p−トリル)フェニル]ビニル]ビフェニル)が挙げられる。
【0143】
発光層には、発光層の発光効率を高くするために公知のホスト化合物と公知のリン光性化合物(リン光発光性化合物とも言う)を含有することが好ましい。
【0144】
ホスト化合物とは、発光層に含有される化合物の内で、その層中での質量比が20%以上であり、且つ室温(25℃)においてリン光発光のリン光量子収率が、0.1未満の化合物と定義される。好ましくはリン光量子収率が0.01未満である。ホスト化合物を複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することが出来る。又、リン光性化合物を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることが出来る。リン光性化合物の種類、ドープ量を調整することで白色発光が可能であり、照明、バックライトへの応用も出来る。
【0145】
これらのホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、且つ発光の長波長化を防ぎ、尚且つ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。公知のホスト化合物としては、例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0146】
リン光性化合物(リン光発光性化合物)とは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物である。先に説明したホスト化合物と合わせ使用することで、より発光効率の高い有機EL素子とすることが出来る。
【0147】
本発明に係るリン光性化合物は、リン光量子収率は好ましくは0.1以上である。上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定出来る。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定出来るが、本発明に用いられるリン光性化合物は、任意の溶媒の何れかにおいて上記リン光量子収率が達成されればよい。
【0148】
リン光性化合物は、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることが出来る。リン光性化合物としては、好ましくは元素の周期表で8族−10族の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、又は白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
【0149】
本発明においては、リン光性化合物のリン光発光極大波長としては特に制限されるものではなく、原理的には中心金属、配位子、配位子の置換基等を選択することで得られる発光波長を変化させることが出来る。
【0150】
本発明の有機EL素子や本発明に係る化合物の発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタセンシング社製)で測定した結果をCIE色度座標に当て嵌めた時の色で決定される。
【0151】
(電子注入層)
電子注入層とは、電子を輸送する機能を有する材料からなり広い意味で電子輸送層に含まれる。電子注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123から166頁)に詳細に記載されている。電子注入層(陰極バッファー層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。上記バッファー層(注入層)は、ごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその膜厚は0.1nmから5μmの範囲が好ましい。
【0152】
(電子輸送層)
発光層側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることが出来、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることが出来る。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることも出来る。
【0153】
又、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることが出来る。その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることが出来る。又、ジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることが出来るし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることが出来る。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nmから5μm程度、好ましくは5nmから200nmである。電子輸送層は上記材料の1種又は2種以上からなる一層構造であってもよい。
【0154】
又、不純物をドープしたn性の高い電子輸送層を用いることも出来る。その例としては、特開平4−297076号公報、特開平10−270172号公報、特開2000−196140号公報、特開2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。この様なn性の高い電子輸送層を用いることがより低消費電力の素子を作製することが出来るため好ましい。
【0155】
(電子注入層(陰極バッファー層))
電子注入層形成工程で形成される電子注入層(陰極バッファー層)とは、電子を輸送する機能を有する材料からなり広い意味で電子輸送層に含まれる。電子注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123から166頁)に詳細に記載されている。電子注入層(陰極バッファー層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
【0156】
(第2電極(陰極))
第2電極(陰極)としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。この様な電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することが出来る。
【0157】
尚、発光した光を透過させるため、有機EL素子の第1電極(陽極)又は第2電極(陰極)の何れか一方が、透明又は半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
【0158】
又、第2電極に上記金属を1nmから20nmの膜厚で作製した後に、第1電極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明又は半透明の第2電極(陰極)を作製することが出来、これを応用することで第1電極(陽極)と第2電極(陰極)の両方が透過性を有する素子を作製することが出来る。
【0159】
(保護層(無機防湿膜))
無機防湿膜はケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、スズ、インジウムからなる群から選択される少なくとも1つの元素の酸化物、窒化物、酸窒化物もしくはフッ化物、叉はこれらの混合物からなる。これらの中で特に、酸窒化ケイ素や酸化ケイ素、窒化ケイ素が優れている。又上記材料を混合した単層でなく、積層にしてもよい。特に積層にした場合、透明性と密着力及び脆性に優れた材料となる。
【0160】
(接着剤)
接着剤としては液状接着剤、シート状接着剤、熱可塑性樹脂等が挙げられる。液状接着剤としては、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型シール剤、2−シアノアクリル酸エステルなどの湿気硬化型等の接着剤、エポキシ系などの熱及び化学硬化型(二液混合)等の接着剤、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤等を挙げることが出来る。
【0161】
(金属製の封止部材)
金属製封止部材としては、例えば、ステンレス鋼、普通鋼、各種メッキ鋼、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属薄板叉は金属箔等が挙げられる。
【0162】
又、上記の様基板の両面叉は片面に絶縁化膜をコーティングしてもよい。例えば有機系樹脂の場合は、ポリステル系、アクリル系、フッ素系、エポキシ系、ウレタン系、シリコン系等が挙げられる。この場合、ロールコート、スプレー、スピンコート、ディッピング等の方法で樹脂塗料を塗布し、乾燥、焼成することにより形成される。
【0163】
(その他)
本発明に係わる有機EL素子は、発光層で発生した光を効率よく取り出すために以下に示す方法を併用することが好ましい。有機EL素子は、空気よりも屈折率の高い(屈折率が1.7から2.1程度)層の内部で発光し、発光層で発生した光の内15%から20%程度の光しか取り出せないことが一般的に言われている。これは、臨界角以上の角度θで界面(透明基板と空気との界面)に入射する光は、全反射を起こし素子外部に取り出すことが出来ないことや、透明電極ないし発光層と透明基板との間で光が全反射を起こし、光が透明電極ないし発光層を導波し、結果として、光が素子側面方向に逃げるためである。
【0164】
この光の取り出しの効率を向上させる手法としては、例えば、透明基板表面に凹凸を形成し、透明基板と空気界面での全反射を防ぐ方法(米国特許第4,774,435)。基板に集光性を持たせることにより効率を向上させる方法(特開昭63−314795号公報)。素子の側面等に反射面を形成する方法(特開平1−220394号公報)。基板と発光体の間に中間の屈折率を持つ平坦層を導入し、反射防止膜を形成する方法(特開昭62−172691号公報)。基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法(特開2001−202827号公報)。基板、透明電極層や発光層の何れかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法(特開平11−283751号公報)等がある。
【0165】
集光シートとしては、例えば液晶表示装置のLEDバックライトで実用化されているものを用いることが可能である。この様なシートとして例えば、住友スリーエム社製輝度上昇フィルム(BEF)等を用いることが出来る。プリズムシートの形状としては、例えば基板に頂角90度、ピッチ50μmの△状のストライプが形成されたものであってもよいし、頂角が丸みを帯びた形状、ピッチをランダムに変化させた形状、その他の形状であってもよい。又、発光素子からの光放射角を制御するために光拡散板・フィルムを、集光シートと併用してもよい。例えば、(株)きもと製拡散フィルム(ライトアップ)等を用いることが出来る。
【0166】
次に太陽電池として有機太陽電池素子について説明する。
【0167】
《有機太陽電池素子の構成》
本発明の有機エレクトロニクス素子の別の例として、有機太陽電池素子が挙げられ、基板(支持基盤)、電極、種々の機能を有する有機層等によって構成される。好ましい構成の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0168】
(1)陽極/発電層/陰極
(2)陽極/正孔輸送層/発電層/陰極
(3)陽極/陽極バッファー層/発光層/正孔阻止層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/第1発電層/電子輸送層/中間電極/正孔輸送層/第2発電層/電子輸送層/陰極
(*第1発電層と第2発電層は光の吸収波長が異なる)
これらの層構成からなる有機太陽電池素子の働きを、最も単純な構成を有する(1)の素子を用いて説明する。
【0169】
基板を介して陽極(透明電極)から入射された光は、発電層(p型有機半導体材料とn型有機半導体材料とが混合されたバルクヘテロジャンクション層)におけるp型半導体或いはn型半導体で吸収され、p型半導体からn型半導体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。発生した電荷は、内部電界、例えば、透明電極と対電極(陰極)の仕事関数が異なる場合では透明電極と対電極との電位差によって、電子は、電子受容体間を通り、また正孔は、電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。
【0170】
バルクヘテロジャンクション層は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とが一様に混合された層である。p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプタ)として機能する。ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極の様に単に電子を供与或いは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与或いは受容するものである。本発明に用いることの出来るp型半導体材料及びn型半導体材料については、後述する。
【0171】
尚、バルクヘテロジャンクション層と各電極の間には、HOMO及びLUMO準位の差があり、これらの差が電流を取り出す際の抵抗となることがあるため、電流を取り出しやすくするために、中間的なHOMO又はLUMOを有する正孔輸送層及び電子輸送層を設けることで効率が向上する。すなわち、正孔輸送層はバルクヘテロジャンクション層のp型半導体層のHOMO準位と第1の電極の仕事関数の中間に準位を有することが好ましく、電子輸送層はバルクヘテロジャンクション層のn型半導体のLUMO準位と第2の電極の仕事関数との中間に準位を有することが好ましい。
【0172】
また、前述の正孔阻止層的な機能を有する電子輸送層でも良い。中でも、カルボリン環及びジアザカルバゾール環を有する化合物を用いることが好ましい。
【0173】
これらの有機太陽電池素子に用いられる正孔輸送層、電子輸送層、及び電極は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子で用いた材料と同様の材料を用いて形成することが出来る。
【0174】
更に、太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、この様な光電変換素子を積層した、タンデム型の構成(前記(4)の構成)としてもよい。また、有機太陽電池素子も環境中の酸素、水分等で劣化するために、前述の有機エレクトロルミネッセンス素子と同様の封止手法によって封止されることが好ましい。
【0175】
以下、バルクヘテロジャンクション層に用いることが出来る。p型半導体材料及びn型半導体材料について説明する。
【0176】
〔p型半導体材料〕
p型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族化合物や共役系ポリマーが挙げられる。縮合多環芳香族化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
【0177】
又、上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基を持ったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
【0178】
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、又はTechnical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有する様ポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、WO2008/000664号に記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv Mater,2007p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等の様なポリチオフェン共重合体、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
【0179】
又、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることが出来る。
【0180】
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。この様な化合物を用いることで、バルクヘテロジャンクション層を溶液プロセスで形成しても厚い膜を形成することが出来、又厚い膜であってもキャリアの拡散長を膜厚以上にすることが出来、高い光電変換効率を得ることが出来る。
【0181】
〔n型半導体材料〕
有機太陽電池素子は、n型半導体材料及びp型半導体材料を混合したバルクヘテロジャンクション層に適用することが好ましく、p型半導体材料として低分子化合物を用いればよく、n型半導体材料としては特に限定されないが、例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることが出来る。
【0182】
しかし、チオフェン含有縮合環を有する材料をp型半導体材料として用いる場合、効率的な電荷分離を行えるフラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等、及びこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、シリル基等によって置換されたフラーレン誘導体を挙げることが出来る。
【0183】
中でも、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PCBM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(PCBH)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116等に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報等のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報等のメタロセン化フラーレン、米国特許第7329709号明細書等の環状エーテル基を有するフラーレン等の様な、置換基を有してより溶解性が向上したフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
【0184】
基材、電極、バリア膜、接着剤、封止材料などは有機ELと同様のものを用いることが出来る。
【0185】
次に有機薄膜トランジスタの一例として、基材/有機半導体膜/電極/絶縁層の層構成を有するトップゲート型有機薄膜トランジスタを構成する材料の一例に付き説明する。
【0186】
(基材)
基体に使用する材料としては、種々の材料が利用可能であり、例えば、ガラス、石英、酸化アルミニウム、サファイア、チッ化ケイ素、炭化ケイ素等のセラミック基体、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐、ガリウム窒素等半導体基体、紙、不織布等を用いることが出来るが、本発明において支持体は樹脂からなることが好ましく、例えば、プラスチックフィルムシートを用いることが出来る。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基体を用いる場合に比べて軽量化を図ることが出来、可搬性を高めることが出来ると共に衝撃に対する耐性を向上出来る。
【0187】
〔有機半導体膜〕
有機半導体膜を形成する有機半導体材料としては、半導体として機能するものであれば、どの様な有機化合物を選択してもよい。有機半導体材料としては、例えば、特開平5−55568号公報等にて開示されているペンタセンやテトラセンといったアセン類、特開平4−167561号公報等に開示されている鉛フタロシアニンを含むフタロシアニン類、特開2004−319982号公報等に開示されているベンゾポルフィリン等のポルフィリン類、その他、ペリレンやそのテトラカルボン酸誘導体、テトラチアフルバレン類等といった低分子量化合物や、特開平8−264805号公報等に開示されているα−チエニールもしくはセクシチオフェンと呼ばれるチオフェン6量体を代表例とする芳香族オリゴマー、又ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリ−p−フェニレンビニレンといった共役高分子など(これらの多くは「アドバンスド・マテリアル」(Advanced Material)誌2002年、第2号99頁に記載されている)が一般的に知られている。その中でも、有機半導体材料として低分子量化合物を用いた場合に本発明の効果がより発揮され、特に数平均分子量が5000以下の低分子量有機半導体材料を用いると、高移動度で駆動する有機薄膜トランジスタを得る上でより好ましい。
【0188】
有機半導体材料の中でも、低分子量化合物として、例えば、ピレン、コロネン、オバレン等やその誘導体、アントラセン、ペンタセン等やその誘導体(アセン類)、ルブレンやその誘導体等に代表される縮合多環式炭化水素類、ベンゾジチオフェン、アントラジチオフェン等やその誘導体等に代表されるヘテロ原子を含む縮合多環式芳香族化合物類、チオフェンオリゴマー等が好ましい例として挙げられる。ペンタセン類の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基を持ったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.A.C.S.vol127.No14.4986等に記載のアセン類及びその誘導体等が挙げられる。
【0189】
これらの有機半導体膜を形成する方法としては、公知の方法で形成することが出来、例えば、真空蒸着、MBE(Molecular Beam Epitaxy)、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、スパッタ法、CVD、レーザー蒸着、電子ビーム蒸着、電着、スピンコート、ディップコート、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、及びLB法等、又スクリーン印刷、インクジェット印刷、ブレード塗布等の方法を挙げることが出来る。
【0190】
(電極)
ソース又はドレイン電極材料としては導電性材料であれば特に限定されず、公知の電極材料にて形成される。電極材料としては導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペースト及びカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられる。或いはドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン(ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等)も好適に用いられる。
【0191】
(絶縁層)
有機薄膜トランジスタのゲート電極の絶縁層としては、種々の絶縁膜を用いることが出来るが、特に比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等が挙げられる。それらの内、好ましいのは酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物も好適に用いることが出来る。
【0192】
上記皮膜の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法等のドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法等の塗布による方法、印刷やインクジェット等のパターニングによる方法等のウェットプロセスが挙げられ、材料に応じて使用出来る。
【0193】
絶縁層が陽極酸化膜又は該陽極酸化膜と絶縁膜とで構成されることも好ましい。陽極酸化膜は封孔処理されることが望ましい。陽極酸化膜は、陽極酸化が可能な金属を公知の方法により陽極酸化することにより形成される。
【0194】
陽極酸化処理可能な金属としては、アルミニウム又はタンタルを挙げることが出来、陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることが出来る。陽極酸化処理を行うことにより、酸化被膜が形成される。陽極酸化処理に用いられる電解液としては、多孔質酸化皮膜を形成することが出来るものならばいかなるものでも使用出来、一般には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸、ホウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等、或いはこれらを2種類以上組合せた混酸或いは、それらの塩が用いられる。陽極酸化の処理条件は使用する電解液により種々変化するので一概に特定し得ないが、一般的には電解液の濃度が1質量%から80質量%、電解液の温度5℃から70℃、電流密度0.5A/dmから60A/dm、電圧1ボルトから100ボルト、電解時間10秒から5分の範囲が適当である。好ましい陽極酸化処理は電解液として硫酸、リン酸又はホウ酸の水溶液を用い、直流電流で処理する方法であるが、交流電流を用いることも出来る。これらの酸の濃度は5質量%から45質量%であることが好ましく、電解液の温度20℃から50℃、電流密度0.5A/dmから20A/dmで20秒間から250秒間電解処理するのが好ましい。
【0195】
又、有機化合物皮膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、或いはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、及びシアノエチルプルラン等を用いることも出来る。
【0196】
有機化合物皮膜の形成法としては、前記ウェットプロセスが好ましい。無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は積層して併用することが出来る。又、これら絶縁膜の膜厚としては一般に50nmから3μm、好ましくは100nmから1μmである。
【実施例】
【0197】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0198】
実施例1
(検出用ガスの調製)
不活性ガスとしてNガスを使用し、容積2.0mの容器の内部の空気をNガスと置換し、有機溶媒ガスとしてトルエンガスを使用し、トルエンガスの濃度を500ppmとなる様に3.8gのトルエンをバットにあけ、ホットプレートにて加熱した。容器中を、市販のファンを用いて混合し、有機溶媒ガスを含んだ不活性ガスを調製し、検出用ガスとした。
【0199】
使用したNガスは、Nガスが99.99995%以上の大陽日酸(株)製高純度窒素G1を使用した。
【0200】
不活性ガスの濃度を直接測定するのは困難であるため、酸素濃度、水分濃度、その他の不純物濃度を求め、100%から不純物濃度を引いた値を不活性ガスの濃度とした。
【0201】
酸素ガス濃度は、ALPHA OMEGA INSTRUMENTS Corp.製Series 3500 Trace Oxygen Transmitterを使用して測定した値を用いた。
【0202】
水分濃度は、Alpha Moisture Systems社製水分濃度計Model DS1000を使用して測定した値を用いた。
【0203】
また、その他の不純物濃度はガスクロマトグラフ質量分析装置(Agilent 6890GC/5973MSD)により求めた値を用いた。
【0204】
(有機溶媒ガス濃度検出装置の準備)
表1に示す様にガスセンサーの種類を変えた有機溶媒ガス濃度検出装置を準備し、No.A、Bとした。
【0205】
【表1】

【0206】
(トルエンガスの検出)
図1に示すブロック図になる様に、準備した有機溶媒ガス濃度検出装置No.1−1、1−2を配置し、酸素ガスの供給条件を表2に示す様に変えて検出用ガス中のトルエンガスの検出実験を行いNo.101から139とした。
【0207】
トルエンガスの検出は、ブランク測定1、有機溶剤の測定1、ブランク測定2、有機溶剤の測定2、ブランク測定3、有機溶剤の測定3の順で3回行った。
【0208】
各有機溶剤の測定では前記の様トルエンをバットにあけ加熱し、全てのトルエンが気化した後、30分後の有機溶剤の濃度を測定値とした。各、有機溶剤の測定の後に、容積2.0mの容器中を窒素ガスと再度置換した。各測定ごとに、下記計算式によりS/Nを求め、これを3回分平均し、測定値とした。
【0209】
S/N = 20×log10(A/A
: 各ブランク測定の測定電圧
: 各有機溶剤の測定の測定電圧
それぞれの電圧は各センサーの出力値で、1秒ごとに1分間測定を行い、その測定値のRMS(二乗平均平方根)とした。RMSの算出は下記式1)に従った。
【0210】
【数1】

【0211】
ここで、xは各測定値、Nは総測定数である。
【0212】
有機溶媒ガス濃度検出装置に連続的に供給する検出用ガスの量は、100ml/minとし、酸素ガスの供給も検出用ガスの量(ml/min)に対にして比率を変えて連続的に供給管(混合容器)に供給した。
【0213】
有機溶媒ガス濃度検出装置に間欠的に供給する検出用ガスの量は、100ml/minで5分間供給した後、止め、酸素ガスを供給された検出用ガスの量(ml/min)に対にして比率を変えて2分間連続的に供給した。
【0214】
酸素ガスの供給量は検出用ガスの量に対する割合を示す。
【0215】
検出用ガスと酸素ガスとの混合を配管中で行う時は、株式会社ノリタケカンパニーリミテド製のスタティックミキサーGシリーズG1/4−6(直径4.35mm、長さ140mm、エレメント6枚)を用いた。
【0216】
検出用ガスと酸素ガスとの混合を容器中で行う時は、直径50mm、深さ10mmの円筒状容器を使用し、攪拌羽根で回転速度(周速度)2.4m/minで連続的に攪拌した。
【0217】
【表2】

【0218】
燃焼式ガスセンサーを使用した有機溶媒ガス濃度検出装置で、トルエンガスを含んだ窒素ガスを含有するガス量に対して酸素ガスを0.05%から12.0%配管中で連続的に供給して混合する方法で測定した検出実験No.101から105、容器中で連続的に供給して混合する方法で測定した検出実験No.107から111、トルエンガスを含んだ窒素ガスを含有するガス量に対して酸素ガスを0.05%から12.0%を配管中で間欠的に供給する方法で測定した検出実験No.113から117は何れも検出結果のバラツキも低く安定した検出が出来ることを確認出来た。
【0219】
燃焼式ガスセンサーを使用した有機溶媒ガス濃度検出装置で、酸素ガスを使用することなくトルエンガスを含んだ窒素ガスを含有するガスを検出する検出実験No.106、112、118は何れも検出不可能となった。
【0220】
半導体ガスセンサーを使用した有機溶媒ガス濃度検出装置で、トルエンガスを含んだ窒素ガスを含有するガス量に対して酸素ガスを0.05%から12.0%を配管中で連続的に供給して混合する方法で測定した検出実験No.119から123、容器中で連続的に供給して混合する方法で測定した検出実験No.125から129、トルエンガスを含んだ窒素ガスを含有するガス量に対して酸素ガスを0.05%から12.0%を配管中で間欠的に供給する方法で測定した検出実験No.130から134は何れも検出結果のバラツキも低く安定した検出が出来ることを確認出来た。
【0221】
燃焼式ガスセンサーを使用した有機溶媒ガス濃度検出装置で、酸素ガスを使用することなくトルエンガスを含んだ窒素ガスを含有するガスを検出する検出実験No.124、135は何れも検出不可能となった。本発明の有効性が確認された。
【0222】
実施例2
実施例1で有機溶媒ガス濃度検出装置に供給する酸素ガスの代わりに乾燥空気を使用した他は全て実施例1と同じ条件でトルエンガス濃度の検出実験を行った結果、実施例1と同じ結果が得られた。尚、乾燥空気としては、大陽日酸(株)圧縮空気G1を使用した。
【0223】
実施例3
図3に示す製造工程により湿式塗布法で図2に示す構成の有機ELパネル(基材/第1電極(陽極)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/第2電極(陰極)/封止層)の、正孔輸送層/発光層/電子輸送層を湿式方式で形成する時、各層を形成する各塗布工程の有機溶媒ガス濃度を図5に示す有機溶媒ガス濃度検出装置を使用し表3に示す様に調整し以下の方法で作製し試料No.301から319とした。尚、発光層形成用塗布液を塗布する時、塗布工程の有機溶媒ガス濃度を調整しないで形成し、正孔輸送層及び電子輸送層を形成する各塗布工程の有機溶媒ガス濃度を表3に示す様に調整し、作製し第2電極(陰極)、封止層、断裁は同じ条件で有機ELパネルを作製し比較試料No.317とした。
【0224】
電子輸送層形成用塗布液を塗布する時、塗布工程の有機溶媒ガス濃度を調整しないで形成し、正孔輸送層及び発光層の各塗布工程の有機溶媒ガス濃度を表3に示す様に調整し、作製し第2電極(陰極)、封止層、断裁は同じ条件で有機ELパネルを作製し比較試料No.318とした。
【0225】
正孔輸送層、発光層及び電子輸送層を形成する各塗布工程の有機溶媒ガス濃度を調整しないで形成した他は全て同じ条件で有機ELパネルを作製し比較試料No.319とした。
【0226】
〈帯状可撓性支持体の準備〉
帯状可撓性支持体として厚さ100μmのポリエチレンナフタレートフィルム(帝人・デュポン社製フィルム、以下、PENと略記する)を準備した。
【0227】
(第1電極層の形成)
準備したPENの上に厚さ120nmのITO(インジウムチンオキシド)をスパッタ法により成膜し、フォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、第1電極層を形成し、巻き芯に巻き取りロール状とした。
【0228】
〈正孔輸送層の形成〉
図3に示す製造装置を使用し、準備した巻き芯に巻き取りロール状とした第1電極層が形成された帯状可撓性支持体の第1電極層の上に、以下に示す正孔輸送層形成用塗布液を押出し塗布機で塗布した後、乾燥し正孔輸送層を形成した。正孔輸送層形成用塗布液は乾燥後の厚みが50nmになる様に塗布した。
【0229】
正孔輸送層形成用塗布液を塗布する前に、帯状可撓性支持体の洗浄表面改質処理を、波長184.9nmの低圧水銀ランプを使用し、照射強度15mW/cm、距離10mmで実施した。帯電除去処理は、微弱X線による除電器を使用し行った。
【0230】
(塗布条件)
塗布工程は大気中、25℃相対湿度50%の環境で行った。
【0231】
(正孔輸送層形成用塗布液の準備)
ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製 Bytron P AI 4083)を純水で65%、メタノール5%で希釈した溶液を正孔輸送層形成用塗布液として準備した。
【0232】
(乾燥及び加熱処理条件)
正孔輸送層形成用塗布液を塗布した後、製膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度100℃で溶媒を除去した後、引き続き、加熱処理装置で温度150℃で裏面伝熱方式の熱処理を行い正孔輸送層を形成した。
【0233】
〈発光層の形成〉
引き続き、正孔輸送層迄を形成した帯状可撓性支持体の正孔輸送層の上に、以下に示す発光層形成用塗布液を押出し塗布機で塗布した後、乾燥し発光層を形成した。尚、塗布は塗布工程に配設した有機溶媒ガス濃度検出装置を使用して塗布工程の有機溶媒濃度を表3に示す様に調整して行った。発光層形成用塗布液は乾燥後の厚みが40nmになる様塗布した。
【0234】
(青色発光層形成用塗布液の準備)
ホスト材のH−A1.0gと、ドーパント材D−A100mgを100gのトルエンに溶解し青色緑色発光層形成用塗布液として準備した。
【0235】
【化1】

【0236】
(塗布条件)
塗布工程を窒素ガス濃度99%以上の雰囲気で、電子輸送層形成用塗布液の塗布温度を25℃とし、塗布速度1m/minで行った。使用した窒素ガスは窒素ガス濃度99.99995%以上の大陽日酸(株)製高純度窒素G1を使用した。
【0237】
(乾燥及び加熱処理条件)
緑色発光層形成用塗布液を塗布した後、製膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度60℃で溶媒を除去した後、引き続き、加熱処理部で温度220℃で加熱処理を行い発光層を形成した。
【0238】
〈電子輸送層の形成〉
引き続き、発光層迄を形成した帯状可撓性支持体の発光層の上に、以下に示す電子輸送層形成用塗布液を押出し塗布機で塗布した後、乾燥し電子輸送層を形成した。尚、塗布は塗布工程に配設した有機溶媒ガス濃度検出装置を使用して塗布工程の有機溶媒濃度を表3に示す様に調整して行った。電子輸送層形成用塗布液は乾燥後の厚みが30nmになる様塗布した。
【0239】
(塗布条件)
塗布工程を窒素ガス濃度99%以上の雰囲気で、電子輸送層形成用塗布液の塗布温度を25℃とし、塗布速度1m/minで行った。使用した窒素ガスは窒素ガス濃度99.99995%以上の大陽日酸(株)製高純度窒素G1を使用した。
【0240】
(電子輸送層形成用塗布液の準備)
電子輸送層はE−Aを2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール中に溶解し0.5質量%溶液とし電子輸送層形成用塗布液とした。
【0241】
【化2】

【0242】
(乾燥及び加熱処理条件)
電子輸送層形成用塗布液を塗布した後、製膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度60℃で溶媒を除去した後、引き続き、加熱処理部で温度200℃で加熱処理を行い電子輸送層を形成した。
【0243】
(電子注入層の形成)
引き続き、形成された電子輸送層の上に電子注入層を形成した。まず、基板を減圧チャンバーに投入し、5×10−4Paまで減圧した。予め、真空チャンバーにタンタル製蒸着ボートに用意しておいたフッ化セシウムを加熱し、厚さ3nmの電子注入層を形成した。
【0244】
(第2電極の形成)
引き続き、形成された電子注入層の上に第1電極の上に取り出し電極になる部分を除き、形成された電子注入層の上に5×10−4Paの真空下にて第2電極形成材料としてアルミニウムを使用し、取り出し電極を有する様に蒸着法にて第1電極と同じ大きさにマスクパターン成膜し、厚さ100nmの第2電極を積層した。
【0245】
(封止部材による封止)
引き続き、第2電極の上に取り出し電極になる部分を除き接着剤を電子輸送層の端面を覆う大きさに塗設布し、厚さ40μmの帯状のアルミニウム製の封止部材が積重され、押圧50kPa貼合し、40mJ/cmの紫外線を1分間照射し、温度100℃で5分間加熱し接着固定化する。この段階で帯状支持体の上に、繋がった状態の保護層(無機防湿膜)と封止部材都で密着封止した有機ELパネルが製造される。
【0246】
(有機ELパネルの打ち抜き断裁)
引き続き、封止部材の接着面積に合わせ打ち抜き断裁機で個別の有機ELパネルを打ち抜き断裁した。各条件で、サンプルを5ずつサンプリングした。
【0247】
(正孔輸送層、発光層及び電子輸送層を形成する各塗布工程の有機溶媒ガス濃度の調整方法)
有機溶媒ガス濃度検出装置への検出用ガス(有機溶媒ガスを含む窒素ガスを含有するガス)及び酸素ガスは連続的に供給し、配管中で混合した後に有機溶媒ガス濃度検出装置へ供給した。図5に示した有機溶媒ガスの濃度を調整するステップ1からステップ3に準じて有機溶媒ガス濃度の調整を行った。
【0248】
有機溶媒ガス濃度検出装置:半導体ガスセンサー(フィガロ技研(株)製半導体ガスセンサー TGS823)
検出用ガスの供給量:100ml/min
酸素ガスの供給量:検出用ガスの供給量に対して2%とした。
【0249】
混合に使用する配管:株式会社ノリタケカンパニーリミテド製のスタティックミキサーGシリーズG1/4−6(直径4.35mm、長さ140mm、エレメント6枚)を用いた。
【0250】
【表3】

【0251】
評価
作製した各試料No.301から319に付き、発光状態、発光輝度のバラツキ、発光寿命に付き以下に示す方法で試験し、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表4に示す。
【0252】
発光状態の評価方法
試料に1mA/cmの電流を印加し発光させ、100倍のマイクロスコープ(株式会社モリテックス製MS−804、レンズMP−ZE25−200)でムラの有無など発光状態の観察を目視で行った。
【0253】
発光状態の評価ランク
○:未発光故障が確認されない
△:実技上問題とならない僅かな未発光故障が認められる
×:実技上問題となる未発光故障が散見される。
【0254】
発光輝度のバラツキの評価方法
試料に2.5mA/cmの電流を印加し発光させ、輝度を測定し下式に基づき計算で発光輝度のバラツキを求めた。尚、輝度の測定は株式会社エーディーシー製電圧/電流発生器R6243を用いて電流を印加し、コニカミノルタセンシング株式会社製CS−1000Aを用いて輝度の測定を行った。
【0255】
輝度のバラツキ=(最大の輝度値−最低の輝度値)/平均の輝度
発光寿命の評価方法
試料を初期輝度4000cd/mに設定し定電流で駆動し、輝度の減衰を観測した。輝度が初期の半分(2000cd/m)になる時間を半減寿命とした。試料301を100とした時の相対値を表に示す。尚、輝度の減衰は定電流源を用い行い、測定はコニカミノルタセンシング株式会社製のCS−1000Aを使用して測定した。
【0256】
【表4】

【0257】
塗布工程の有機溶媒ガス濃度を調整しないで塗布を行い作製した試料No.317、318、319は発光状態、発光輝度のバラツキ、発光寿命共に劣る結果となった。本発明の有効性が確認された。
【符号の説明】
【0258】
1 有機溶媒ガス濃度検出手段
101 有機溶媒ガス濃度検出装置
102 供給手段
102b、103b、201d、402a17 供給管
103 酸素ガス供給手段
103c 乾燥装置
104 制御手段
2 工程
201、402a14 循環手段
201b、402b16 排気管
201c、402a19 有機溶媒ガストラップ
202、402a15 不活性ガス供給手段
202a、402a20 不活性ガスタンク
202b、402a21 弁
3、5 有機ELパネル
301 基材
302 第1電極(陽極)
303 正孔輸送層
304 発光層
305 電子輸送層
306 第2電極(陰極)
308 404b1 封止部材
4 製造工程
402 有機物質薄膜形成工程
402a13 塗布室
402a 正孔輸送層形成工程
402b 発光層形成工程
402c 電子輸送層形成工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス検出装置で不活性ガス中の有機溶媒ガスの濃度を検出する方法であって、前記ガス検出装置に前記有機溶媒ガスを含んだ前記不活性ガス及び酸素ガス、又は酸化性ガスを供給し、前記有機溶媒ガスの濃度を検出することを特徴とする不活性ガス中の有機溶媒ガス濃度の検出方法。
【請求項2】
前記ガス検出装置に供給する酸素ガス、又は酸化性ガスの量は、該ガス検出装置に供給するガスの量に対して0.01%以上、10%以下であることを特徴とする請求項1に記載の不活性ガス中の有機溶媒ガス濃度の検出方法。
【請求項3】
前記ガス検出装置は半導体ガスセンサーを使用していることを特徴とする請求項1又は2に記載の不活性ガス中の有機溶媒ガス濃度の検出方法。
【請求項4】
有機溶媒ガスを含んだ不活性ガス中の有機溶媒ガスの濃度を調整する方法であって、
前記有機溶媒ガス濃度を前記請求項1から3の何れか1項に記載の検出方法で有機溶媒ガス濃度を検出し、検出結果に基づき前記不活性ガス中の有機溶媒ガス濃度を調整することを特徴とする有機溶媒ガス濃度の調整方法。
【請求項5】
前記有機溶媒ガス濃度を5ppmから50ppmに調整することを特徴とする請求項4に記載の有機溶媒ガス濃度の調整方法。
【請求項6】
有機溶媒ガスを含んだ不活性ガス中の有機溶媒ガスの濃度を検出する有機溶媒ガス濃度検出装置であって、
少なくとも、前記ガスの供給手段と、酸素ガス供給手段と、有機溶媒ガス濃度検出手段と、前記有機溶媒ガス濃度検出手段による検出情報に基づき、前記不活性ガス中の前記有機溶媒ガスの濃度を調整する調整手段とを有することを特徴とする有機溶媒ガス濃度検出装置。
【請求項7】
前記有機溶媒ガス濃度検出手段は半導体ガスセンサーを使用していることを特徴とする請求項6に記載の有機溶媒ガス濃度検出装置。
【請求項8】
支持体の上に、湿式法で形成された少なくとも一層の有機物質薄膜を有する有機デバイスの製造方法において、前記有機物質薄膜の成膜工程、乾燥工程の少なくとも1つの工程の有機溶媒ガス濃度を、前記請求項1から3の何れか1項に記載の検出方法により監視することを特徴とする有機デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記請求項1から3の何れか1項に記載の検出方法による有機溶媒ガス濃度の検出結果に基づき、成膜工程、乾燥工程の該有機溶媒ガス濃度を調整することを特徴とする請求項8に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記有機溶媒ガス濃度を5ppmから50ppmに調整することを特徴とする請求項8又は9に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記有機デバイスが有機ELパネルであることを特徴とする請求項8から10の何れか1項に記載の有機デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−175428(P2010−175428A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19290(P2009−19290)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】