説明

有機物除去装置

【課題】 処理効率が高く、かつオゾン発生装置もしくは紫外線照射装置を停止した場合にも、一定の浄化機能を維持できる低コストの有機物除去装置を得る。
【解決手段】 本発明の有機物除去装置は、オゾン発生装置1と、オゾン混合装置11と、反応塔5と、紫外線照射装置6とからなり、反応塔5内に、三次元網目または多孔質構造状からなる触媒担持体9を、光触媒層と12オゾン反応触媒層13の性質の異なる二層の触媒で形成するとともに、除去対象物の濃度または強度を計測するセンサ16を設け、計測値によりオゾン発生装置と紫外線照射装置を同時あるいは一方だけの運転に切り替えて制御するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気や水の処理に関し、特に限定されるものではないが、主に大気中に含まれる揮発性有機物(VOC)、臭気成分、細菌類等の人体に有害な成分を分解して清浄な空気に浄化する目的や、上下水道や、スイミングプール、し尿、産業排水、農畜産排水、ゴミ埋立地浸出水等の排水に含まれる、臭気、着色物質、環境ホルモン等の有害有機物や細菌類の処理方法として有用な有機物除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の有機物除去装置は、例えば下水二次処理水や工場排水等の処理において、被処理水中の難分解性有機物の除去を行う場合、強力な酸化力を有するOHラジカルを生成してこれを効果的に活用する手段としてオゾンと紫外線を併用した処理法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この処理装置の概略を図5に示す。図5において、1はオゾン発生装置、2はオゾン、3はエゼクタ、4は被処理水、5は反応塔、6は紫外線照射装置、7は処理水である。
オゾン発生装置1で生成されたオゾン2はエゼクタ3により被処理水中4に注入され、オゾンが溶解した気泡混合状態の被処理水は反応塔5に送られる。反応塔内では紫外線照射装置6から照射された紫外線によって生成されたOHラジカルにより被処理水中の有機物質が酸化分解され、清浄な処理水7が得られるといったものである。
また、有機物を分解・除去する目的として前例と同様ではあるが、液体または気体中の有機物を除去する方法として、紫外線照射により光触媒表面で活性化して生じるOHラジカルの作用を有効に利用した処理法がある。さらに光触媒の反応機構については、OHラジカルの生成と同時に過酸化水素が生成し、これも有機物との反応に寄与しているとの報告もある。
このような光触媒反応装置については中空管の内部に光触媒活性を有する材料を担持させた立体的な網目構造を有する多孔質セラミックを充填し、これに紫外線を照射するものがある(例えば、特許文献2参照)。
この装置の概略を図6に示す。図6において、8は中空管、9は触媒担持体である。触媒担持体には酸化チタン等の光触媒がコーティングされている。なお、共通する符号については、同じ機能を示すため説明を省略する。
浄化の機構について説明する。被処理水4は、中空管8内に固定された触媒担持体9を通過する際、紫外線照射装置6により照射された紫外線と光触媒の作用により、被処理水中の有機物が分解され、清浄な処理水7が得られるといったものである。
このように、従来の有機物除去装置は、オゾンと紫外線または光触媒の作用を利用した構成となっていた。
【特許文献1】特開平11−300376
【特許文献2】特開平9−105120
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のオゾンと紫外線を併用した装置は、強力な処理性能を有するものの、オゾン発生時には原料ガスの生成工程も含めると大きな電力を要するため、汚染度合が比較的軽微または強力な処理が不要である場合は、オゾン処理を停止し別の手法で代替できることが望ましい。ところが、従来のオゾンと紫外線とを組み合わせた促進酸化手法では、オゾンの発生を停止した際、紫外線による殺菌効果はあるものの、脱臭や有機物分解等の効果はほとんど期待できないものであった。
一方、光触媒装置による反応は、紫外線が照射された光触媒表面でのみ起こるので、反応効率は接触面積に対する依存率が高い。三次元空間で効率良く処理を行うためには透過性の良好な触媒担持体の採用や、空隙を小さくし接触効率を向上させる等の措置が必要であるが、諸々の課題があるため未だこれらを満足できるような材料の開発には至っていない。このため光触媒における除去効率はあまり高くなく、処理には時間を要する問題があった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、オゾン、紫外線、光触媒、オゾン反応触媒のそれぞれの作用を効果的に併用することにより、処理効率が高く、かつオゾン発生装置もしくは紫外線照射装置を停止した場合においても、一定の浄化機能を維持できる低コストの有機物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため、本発明は次のように構成したものである。
請求項1に記載の発明は、オゾン発生装置と、前記オゾン発生装置より発生したオゾンと被処理流体とを混合するオゾン混合装置と、前記被処理流体とオゾンとを反応処理させる反応塔と、前記反応塔内に設けられ前記被処理流体に紫外線を照射する紫外線照射装置とから構成される有機物除去装置において、前記反応塔内に三次元網目構造または多孔質構造の光触媒層およびオゾン反応触媒層の二層からなる触媒担持体を設けるとともに、前記被処理流体の除去対象物の濃度または強度を計測するセンサを設け、前記センサの計測値により前記オゾン発生装置と前記紫外線照射装置を同時あるいは一方だけの運転に切り替えて制御するものである。
請求項2に記載の発明は、前記光触媒の材料が、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化スズおよび酸化タンタルの少なくとも一種から選択されるものである。
前記光触媒において、光触媒機能を有する材料が、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化スズおよび酸化タンタルの一種または二種以上から選択されるものである。
請求項3に記載の発明は、前記オゾン反応触媒の材料が、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、セリウム、タングステン、銅、銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムおよびイリジウムの少なくとも一種またはその化合物から選択されるものである。
請求項4に記載の発明は、前記紫外線照射装置と前記触媒担持体からなる構成を1ユニットとし、処理量や負荷に適応してこれを複数組み合わせたものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1記載の発明によれば、反応塔内に三次元網目構造または多孔質構造の光触媒層およびオゾン反応触媒層の二層からなる触媒担持体を設けたので、触媒の表面において有機物の酸化分解反応が早まり処理効率が向上する。また、触媒担持体は三次元網目構造または多孔質構造状であるため、紫外線、被処理流体およびオゾンとの接触効率が高く、効果的に光触媒反応やオゾン反応が行われる。また、オゾンと紫外線、オゾンとオゾン反応触媒および光触媒による全ての反応工程を1槽で行うため、付帯設備が削減されコンパクトな構造になる。また、触媒の清掃作業を同時に行えるため、作業が容易かつ短時間にでき、ランニングコストを低減化できる。
請求項2記載の発明によれば、光触媒の材料が通常使用される酸化チタン以外のものも選択できるので、触媒性能の向上、性能の長期安定化、成形性の向上、原料コストの低減等が可能である。また、異種特性を利用することにより、複数の種類からなる除去対象物質に対して選択的に反応を行う等の手段をとることができる。
請求項3記載の発明によれば、オゾン反応触媒の材料を、通常使用されるマンガン酸化物以外のものにも選択できるので、触媒性能の向上、性能の長期安定化、成形性の向上、原料コストの低減等ができる。
請求項4記載の発明によれば、紫外線照射装置と触媒担持体からなる構成を1ユニットにしているので、設計または構造上、処理量や負荷量への対応が容易になり、コンパクトになるとともにコストの低減にもつながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は、本発明の有機物除去装置の概略図である。図において、10は被処理空気、11はオゾン混合装置、12は光触媒層、13はオゾン反応触媒層、14は処理空気、15は隔壁、16は除去対象物計測センサである。なお、同じ機能のものは、同じ符号を付しているため、前出のものは説明を省略する。
本発明が特許文献1と異なる部分は、紫外線照射装置6の外周に光触媒層12とオゾン反応触媒層13の性質の異なる二層の触媒で形成した三次元網目または多孔質構造状からなるセラミックス触媒担持体を設置したことであり、特許文献2と異なる部分は、光触媒とオゾン反応触媒層13の性質の異なる二層の触媒で形成したことである。なお、光触媒層12を紫外線照射側に、オゾン反応触媒層13はその反対側になるように配置している。
また、双方とも異なる点は除去対象物の濃度または強度を計測するセンサを設け、計測値によりオゾン発生装置1と紫外線照射装置6を同時あるいは一方だけの運転に切り替えて制御するように構成している点である。
同触媒担時体9に酸化チタン等の光触媒層12や酸化マンガン等のオゾン反応触媒層13の異性質の触媒をコーティングしている。この場合、スパッタリングや、ガスの燃焼炎やプラズマ炎を利用した被覆法等がある。本構成においては触媒担持体9の内部までコーティングする必要があるため、触媒に浸漬して添着後、焼付け時の温度差を利用して焼付け温度が高い触媒から順に焼付けて被覆する。
異性質触媒層の構成は、図2のような構造や、図3のように接触効率を高めるために隔壁15を設けて流路を延長している。触媒層の厚みについては任意に変更することができる。
水処理においてオゾン混合装置11を選択する場合は、オゾン混合直後のオゾン溶解量を高める手段として、ディフューザよりもエゼクタ等のインラインによるオゾン混合装置を採用する方が有効である。その後段にスタティックミキサ等の混合手段を付加すればさらなる混合効率の向上を図ることができる。
【0008】
つぎに、本実施例の動作について説明する。
本実施例は、水等の液体または空気等の気体ともに同様の効果を有するが、空気中のVOC、臭気物質、細菌類を除去対象物質とし、これらを分解・除去する。
被処理空気10はオゾン混合装置11において、オゾン発生装置1から供給されるオゾン2と混合し、反応塔5の触媒担持体9の内方に送られる。紫外線照射装置6と触媒担持体間の三次元空間中において紫外線を浴びることにより混合気体中のオゾンが分解してOHラジカルが生成する。このときオゾン、OHラジカル等の活性種により被処理空気中の除去対象物質が効果的に分解される。この空間で一定時間滞留した被処理空気は三次元網目状の触媒担持体9の細孔を抜けて外方に移動する。そのとき光触媒層12表面に接触あるいは吸着した除去対象物は、光触媒層表面に生成するOHラジカルの作用によりさらに分解が進行する。
紫外線の届かないオゾン反応触媒層13を通過する際、この触媒と接触したオゾンは分解すると同時に、OHラジカル等の活性種が生成する。ここでさらに除去対象物質は酸化分解反応が進行するとともに、残存したオゾンは完全に酸素に分解するため、処理空気中14に有害な濃度のオゾンが残存することを防止することができる。
なお、予め処理の前段で被処理空気中の水分量を任意に維持するような手段を付設することにより、オゾン発生装置運転時や光触媒におけるOHラジカルの生成効率を向上させることができる。
また、被処理空気中に存在する除去対象物質の濃度や強度を計測する除去対象物計測センサ16を設け、これを計測することにより所要処理条件を算出してオゾンの発生量や紫外線照射量を調節することが可能である。しかしながらオゾンの発生には原料ガスのコストを伴うため、気中の汚染量が比較的少ない場合においてはオゾン発生装置を停止すれば良い。この場合でも光触媒による一定の浄化機能は維持することができる。
付着物により触媒機能が低下した際は、触媒担持体を取り外して表面を洗浄することにより、両触媒の機能を回復させることができる。
本発明の作用・効果を整理するとつぎのようになる。
(1)〔オゾン+紫外線〕処理
先に触れたように、紫外線照射装置と中空体間の空間において、オゾンと紫外線(低圧水銀ランプによる254nm波長の紫外線)との併用により、オゾンが分解し過酸化水素の生成を経てOHラジカルが生成する。このとき水中へのオゾン溶解量が大きく紫外線による分解率が大きいほどOHラジカルの生成量は大きい。OHラジカルの作用は前述したように酸化還元電位が2.85V(酸性下)とオゾンの2.07(酸性下)よりも高く、強い酸化力により有機物を最終的には二酸化炭素と水にまで分解することができる。
(2)〔オゾン+オゾン反応触媒〕処理
オゾンがこの触媒と接触するとオゾンが分解すると同時に、OHラジカル等の活性種が生成し、触媒の表面において有機物の酸化分解反応が進行する。
(3)光触媒処理
光照射により光触媒表面では周辺に存在する水の水酸イオンから電子を引き抜き、OHラジカルを生成する。このため光触媒表面に有機物が接触するとOHラジカルの作用により分解される。また、光触媒面からは紫外線照射により過酸化水素が生成することが知られており、オゾンとの相乗効果が期待できる。
また、処理の状況によりオゾン発生装置を停止しても、上記(3)の作用は維持することができる。もしくは紫外線照射装置を停止しても上記(2)の作用は維持することができる。
さらに、触媒担持体を光触媒とオゾン反応触媒の別々の特性を有する二層の触媒体で形成することにより、次の効果が得られる。
・オゾン+紫外線、オゾン+オゾン反応触媒、光触媒による全ての反応工程を1槽で行うため、付帯設備が削減されシンプルな構造になる。
・触媒担持体が同一構造体の場合においては製造工程が短縮できる。
・触媒の清掃作業を同時に行えるため、作業が容易かつ短時間にできる。
なお、本発明における触媒担体は三次元網目構造または多孔質構造状であるため、紫外線、被処理流体およびオゾンとの接触効率が高く、効果的に光触媒反応やオゾン反応が行われる。
【実施例2】
【0009】
図4は、本発明の第2実施例の構成を示す概略図である。
実施例1で説明した任意の紫外線照射装置と、それを取り囲むように構成した光触媒層とオゾン反応触媒層の二層構造からなる触媒担持体を1ユニットとし、複数からなるユニットを1台の反応塔内に並列に収めている。このように処理空気の風量や汚染度合いに応じて収めるユニットの台数を決めることができる。
【0010】
このように、三次元網目または多孔質構造状からなる触媒担持体を光触媒とオゾン反応触媒の異特性を有する二層の触媒で形成することにより、オゾン+紫外線、オゾン+オゾン反応触媒、光触媒による全ての反応工程を1槽で行うことができるため、除去対象物質の除去効率が向上するのみでなく、付帯設備が削減されシンプルな構造になる。また、触媒担持体が同一構造体の場合においては製造工程が短縮できるとともに、触媒の清掃作業を同時に行えるため、作業が容易かつ短時間にできるようになる。
また、気中の汚染量に応じてオゾン発生装置と紫外線照射装置を同時あるいは一方だけの運転に切り替えて制御することができるので、処理の状況によりランニングコストが高いオゾン発生装置を停止しても、光触媒の作用により一定の浄化機能を維持することができる。もしくは紫外線照射装置を停止してもオゾン+オゾン反応触媒の機能が存在する。
以上により、処理効率が向上するとともに、コンパクト化、イニシャルおよびランニングコストの低減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明の有機物除去装置は、空気の処理のみでなく下水や上水等の分野において、水中の着色・臭気物質や細菌類、あるいはゴミ処理場の浸出水中に含まれるダイオキシン等の難分解性有機物の除去にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施例を示す有機物除去装置の概略図
【図2】本発明の第1実施例を示す触媒層の断面図
【図3】本発明の第1実施例を示す他の触媒層の断面図
【図4】本発明の第2実施例を示す有機物除去装置の概略図
【図5】従来のオゾンと紫外線を用いた有機物除去装置の概略図
【図6】従来の光触媒を用いた有機物除去装置の概略図
【符号の説明】
【0013】
1 オゾン発生装置
2 オゾン
3 エゼクタ
4 被処理水
5 反応塔
6 紫外線照射装置
7 処理水
8 中空管
9 触媒担持体
10 被処理空気
11 オゾン混合装置
12 光触媒層
13 オゾン反応触媒層
14 処理空気
15 隔壁
16 除去対象物計測センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾン発生装置と、前記オゾン発生装置より発生したオゾンと被処理流体とを混合するオゾン混合装置と、前記被処理流体とオゾンとを反応処理させる反応塔と、前記反応塔内に設けられ前記被処理流体に紫外線を照射する紫外線照射装置とから構成される有機物除去装置において、
前記反応塔内に三次元網目構造または多孔質構造の光触媒層およびオゾン反応触媒層の二層からなる触媒担持体を設けるとともに、前記被処理流体の除去対象物の濃度または強度を計測するセンサを設け、前記センサの計測値により前記オゾン発生装置と前記紫外線照射装置を同時あるいは一方だけの運転に切り替えて制御することを特徴とする有機物除去装置。
【請求項2】
前記光触媒の材料が、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化スズおよび酸化タンタルの少なくとも一種から選択されることを特徴とする請求項1記載の有機物除去装置。
【請求項3】
前記オゾン反応触媒の材料が、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、セリウム、タングステン、銅、銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムおよびイリジウムの少なくとも一種またはその化合物から選択されることを特徴とする請求項1または2記載の有機物除去装置。
【請求項4】
前記紫外線照射装置と前記触媒担持体からなる構成を1ユニットとし、処理量や負荷に適応してこれを複数組み合わせることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の有機物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−26194(P2006−26194A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211207(P2004−211207)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】