説明

有機酸の回収

本発明は、そのカチオンが不溶性炭酸塩を形成する、塩を含む希薄な塩溶液から、有機酸を回収するための方法が開示されている。第3級アミンおよびCOZは、不溶性炭酸塩、および酸とアミンとの複合体を形成するために溶液に導入される。例えばアルコールのような、水と混合しない溶媒が、希薄な塩溶液から反応相に酸/アミン複合体を抽出するために添加される。反応相は、継続的に乾燥され、例えばエステルのような、酸と溶媒との生成物が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、発酵ブロスのような希薄な塩溶液から、有機酸を回収するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機酸は、例えば、食料および飼料成分のような、または中間体のような、それら自体で有益な生成物である。有機酸は、アルコールへと化学的に変換することができ、アルコールはその後、オレフィンに変換することができる。上記処理は、バイオマス資源をエネルギーおよび化学工業のための様々な生成物に変換するためのバイオリファイナリーの原理として思い描くことができる。有機酸は、幅広いバイオマス資源から非常に高い炭素収率での発酵によって、製造することができる。
【0003】
例えば、酢酸、乳酸、およびプロピオン酸のような多くの有益なカルボン酸は、発酵により製造することができる(Holten, Lactic Acid: Properties and Chemistry of Lactic Acid and Derivatives, Verlag Chemie, 1971; Benninga, (1990), A History of Lactic Acid Making: A Chapter in the History of Biotechnology, Kluwer Academic Publishers, London; Partin, L., Heise, W. (1993), in Acetic Acid and Its Derivatives, Agreda, V., Zoeller, J., ed., Marcel Dekker, New York, pp. 3-13; Playne, 1985 Propionic and butyric acids pp.731-759, In M, Moo-Young (ed.) Comprehensive Biotechnology, vol. 3, Pergamon, Oxford)。しかし、現在では、ほとんど全てのカルボン酸は、石油化学製品から製造されている。
【0004】
発酵による方法が競争に敗れた理由の一つは、これらの酸を生成するために用いられる微生物が、低pHにより抑制されることである。高収率を達成するためには、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、または水酸化カルシウムのような塩基の添加により、発酵工程のpHを中性付近に保ち続けなければならない。さらに、中性のpHでさえ、一般的に、酸は、発酵に用いられる微生物の生育を抑制し、ブロスは低濃度の酸性塩に限定される。このように、発酵による方法では、一般的に、プロトン化した型の有機酸よりもむしろ、有機酸塩の希薄な水溶液が製造される。塩は、水溶性が高く、蒸気圧がごく僅かであり、不活性のカルボニル基を有している。これらの性質は、蒸留、抽出、結晶化、および大規模な生成のためのその他の一般的な工業的分離法を技術的または経済的に実現不可能とするので、塩の回収を行うことを困難なものとしている。
【0005】
有機酸塩の回収を容易なものとする一つの方法として、低pHのブロスに無機酸を添加する方法がある。それによって、有機酸は、プロトン化した型に変換される。プロトン化した型において有機酸は、例えば、蒸留、抽出、または反応的な分離方法のような公知の方法によって、より容易に回収することができる。無機酸による直接的な酸性化は、一般的に有機酸塩の回収のための困難な選択肢であるとみなされている。なぜなら、塩副生物が必然的に形成するからである。この副生物は、大抵の場合はごく少量である。例えば、石こうは、歴史的に乳酸生成物における塩副生成物である(Holten, 1971, Benninga, 1990)。
【0006】
乳酸カルシウム+硫酸=>硫酸カルシウム+乳酸
市場が存在するか、または環境的な責任をともなう処理方法が確認されなければならない。これらの制限によって、多くの研究が有機酸を回収するための代替方法を検討してきている。
【0007】
発酵によって製造した酢酸塩の回収は、Busche(Busche, R.M., “Recovering Chemical Products from Dilute Fermentation Broths”, Biotechnology and Bioengineering Symp. No. 13, p. 597-615, 1983)、およびDu Pontでの共同研究者(Busche et al., “Recovery of Acetic Acid from Dilute Acetate Solution”, Biotechnology and Bioengineering Symp. No. 12, p. 249-262, 1982)により、また1993年、PartinおよびHeiseによりまとめられている。
【0008】
有機酸が、直接的な酸性化によりプロトン化した型で溶液中に製造される以前は、ブロスから有機酸を回収するための方法として様々な方法が用いられていた(Othmer, “Acetic Acid Recovery Methods”, Chemical Engineering Progress, Vol. 54, No. 7, July, 1958, Baniel et al., U.S. Patent No. 4,275,234)。例えば、希薄な溶液からの有機酸の溶媒抽出法は、詳しく研究されている(King et al., “Solvent Equilibrium for Extraction of Carboxylic Acids from Water”, Journal of Chemical and Engineering Data, Vol. 23, No. 2, 1978)。Baniel(U.S. Patent No. 5,780,276)もまた、少量のアルコールを含むアミンの抽出におけるエンハンサー(enhancer)の使用について述べている。Baniel(U.S. Patent No. 5,780,276)は、少量(10%)のエンハンサー(enhancer) アルコールの回収のための処理を提供しているが、有機酸による反応については提案していない。
【0009】
Busche(Busche, 1983)は、希薄な発酵ブロスに含まれる有機化合物の回収に応用される一般的な概念を明確にしている。彼は、蒸留は、生成物がオーバーヘッドに蒸留されるので、水よりも沸点の低い種類のもの(例えば、エタノール)の回収に好適であると結論付けている。もし、水よりも沸点の高い種類のもの(例えば、酢酸、プロピオン酸、および乳酸)であれば、蒸留は好適ではない。これは、水をオーバーヘッド生成物として蒸留および除去するために必要なエネルギーが過剰であるからである。彼は、例えば、抽出、結晶化、濃縮、および電気透析のような高沸点の有機化合物を回収するための他の方法もまた、調査している。
【0010】
Buscheによって考察されていないが、反応蒸留は、カルボン酸(高い沸点)を揮発性のエステル(低い沸点)に変換する。このように、エネルギー的に不利な条件の回避は、水を沸騰することと結びついている(Xu and Chang, “Kinetics of Acetic Acid Esterification over Ion Exchange Catalysts”, Can J. Chem. Eng., pp. 493-500, Vol. 74, 1996, Scates et al, “Recovery of Acetic Acid from Dilute Aqueous Streams Formed During a Carbonylation Process”, U.S. Patent No. 5,599,976, February 4, 1997)。
【0011】
少なくとも20年の間に、膜処理は、大きく進歩している。クロスフロー精密ろ過および限外ろ過は、細胞集団および不溶性物質を除去することによるブロスの浄化にごく普通に使用されている。さらに、ナノろ過による浄化は、例えば、タンパク質および炭水化物のような高分子量の水溶性不純物を除去し、下流側の回収より前に有機酸塩が濃縮されるというさらなる利点を提供する。バイポーラ(bipolar)電気透析法は、ブロスを酸性にするために使用することができる。Chronopol, Inc.(Miao, “Method and Apparatus for the Recovery and Purification of Organic Acids”, U.S. Patent No. 5,681,728, October 28, 1997)に関する特許では、発酵ブロス由来の乳酸を回収し、酸性にするための様々な膜ユニットの配列についての例が記載されている。現在、高価値、少量の生成物にとって、膜処理に基づいた処理の経済的側面は、好適である。資本コストの増加は、ほぼ直線的であり、ゆえに、膜システムは、高フラックス(high flux)が実現されない限り、バイオコモディティ(bio-commodities)の大規模な製造のための競争力を常に有していない。このことは、例えば、バイポーラ(bipolar)電気透析法のような、より複雑な膜処理を考えるとき、とりわけ事実である。
【0012】
DuPont(Yates, “Removal and Concentration of Lower Molecular Weight Organic Acids From Dilute Solutions”, U.S. Patent No. 4,282,323, August 4, 1981 and Busche et. al., 1982)の研究では、発酵により生成された酢酸塩を酢酸およびその結果生じた溶媒抽出物に変換するための酸性化物質として、二酸化炭素の使用を明確にしている。Cargillの研究者たち(Baniel et. al., “Lactic Acid Production, Separation, and/or Recovery Process”, U.S. Patent No. 5,510,526, April 23, 1996)は、COでの酸性化およびアミンでの同時の抽出によって、乳酸塩を回収するための方法に関する研究をしている。しかし、この反応は、高圧で行う必要があり、処理中、同時に多相(4相)が生成する。
【0013】
CPC Internationalの研究者たち(Urbas, “Recoverry of Acetic Acid from a Fermentation Broth”, U.S. Patent No. 4,401,717, September 20, 1983 and Urbas, “Recovery of Organic Acids from a Fermentation Broth”, U.S. patent No. 4,444,881, April 24, 1984)も、酸性化物質として二酸化炭素の使用を明確にしている。トリブチルアミン(TBA)は、通常、水と混合しない。しかし、トリブチルアミン:酢酸複合体(TBA:HAc)は、水溶性である。中性のpH付近である酢酸カルシウムの希薄な水溶液にTBAを混合し、その混合溶液に二酸化炭素を泡立つように混合すると、室温付近で、以下の反応が起きる。
【0014】
Ca(Ac)+HO+CO+2TBA=>2TBA:HAc+CaCO
TBAの化学量論の量による使用は、トリブチルアミン:酢酸複合体を含む単一の水溶液相を生成する。反応は、炭酸カルシウムが形成物の上に沈殿するまで適切に促進される。アミンは、酸/アミン複合体が水溶性であるように適当に選択しなければならない。Urbas(Urbas, U.S. Patent No. 4,405,717)も、ジシクロヘキシルメチルアミンについて述べている。
【0015】
Urbasの処理の一実施形態において、アミン水溶液複合体は、有機溶媒中に抽出され、溶媒は取り除かれ、そして複合体を熱分解することによって、酢酸生成物が得られる。そして、溶媒およびアミンの双方は、再利用するために再生される。抽出処理において用いられるアミンは、抽出可能でなければならない。Urbasは、トリメチルアミン、およびトリエチルアミンと酸との複合体を含むアミン:酸複合体は過度に水溶性であるため、抽出されないことを示している。抽出について、Urbasは、酢酸と共沸せず、低沸点であり、非反応性溶媒(好ましくはクロロホルム)の使用を教示している。これらは、溶媒の選択を厳格に制限している。さらに、例えば、クロロホルムのような塩素系溶媒の使用は、工業生産規模では問題を有する。
【0016】
Urbasの処理の他の実施形態において、アミンと酸との複合体は、水の除去によって濃縮され、遊離の酸の生成およびアミンの再生のために熱分解される。一般的に、酸/アミン複合体の回収には二つの方法がある。水もしくは塩基水溶液に逆抽出する方法、または水を蒸発させた後に酸を回収する方法である。しかし、水の除去は、前に概略を説明したように、エネルギーを非常に大量に消費する。
【0017】
熱的な再生成反応は、粘り気があり処置しにくい残留物が生成し、また酢酸の収率が低いため、実際に行うことが困難であることが、本発明者らによって見出されている。
【0018】
Urbasの処理において、炭酸カルシウムは、発酵処理の中和反応のための塩基として使用するために再利用される。他の塩副生成物が生成しないという特徴は、この経路の重要な利点である。有機酸発酵における塩基としての炭酸カルシウムの使用は、酸/アミン複合体および炭酸カルシウムを形成するための反応工程において利用されるCOを生成する。ゆえに、COは純生産されない。
【0019】
Urbasは、有機酸とエステルとを形成することができる溶媒の使用から離れるように教示している。しかし、本発明者らは、エステルが有用な中間体または生成物となりえることを見出している。例として、酸とエステルを形成し得るアルコール溶媒の使用は、例えば、その全体が本明細書中に参考として示されるU.S. Patent No. 6,509,180(Verser and Eggeman, to ZeaChem)に開示されているように、間接的なエタノール処理にまとめられている。Zeachemの処理は、酢酸の生成、アルコールと酸とのエステル化、およびそれに続くエステルの水素化によって、エタノールの生成を説明している。
【0020】
有機酸のエステルの生成は、よく知られている。エステルは、有機酸の回収および精製における中間体として使用されている。もし、酸がプロトン化した型(例えば、遊離の酸)であるなら、上述した反応蒸留のような方法を用いることができる(Benninga 1990, Scates)。例えば、カチオン交換樹脂、硫酸、塩酸および硝酸のような強無機酸、ならびにメタンスルホン酸およびトルエンスルホン酸のような強有機酸といった様々な触媒が、この反応を促進させるために探索されている(Xu and Chang, 1996, Filachione et al., “Production of Esters”, U.S. Patent No. 2,565,487, August 28, 1951)。
【0021】
エステル化は、平衡反応であり、加水分解の逆反応が、正反応と同時に起きる。ほとんどの方法では、水または生成したエステルのどちらか一方は、所望の順方向の反応を促進するために、反応中、継続的に除去される。
【0022】
酸/アミン複合体の直接のエステル化は、いくつかの研究グループによって報告されている(Filachione, 1951, Tung et al, “Sorption and Extraction of Lactic and Succinic Acids at pH > pKa, 2. Regeneration and Process Considerations”, Industrial and Engineering Chemistry, Vol. 33, pgs. 3224-3229, 1994, Sterzel et al, “Preparation of Lactates”, U.S. Patent No. 5,453,365, September 26, 1995)。これらの各参考文献では、大量の水を蒸発または蒸留オーバーヘッド(distillation overhead)によって除去する高濃度の複合体のエステル化を報告している。このように、これらの処理は、水を蒸発させるためのエネルギー的に不利な条件に苦しむ。
【0023】
有機酸部からアルコールを生成するため、およびエステルのアルコールを再生するためのエステルの水素化または水素化分解は、よく知られている。エステルの水素化によって生成したアルコールは、有機酸部から誘導されるオレフィンにも変換される(McKee, WO 00/53791)。アルコールのオレフィンへの脱水について記載されている(Tsao et al., “Dehydrate Ethanol to Ethylene”, Hydrocarbon Processing, 57(2), p. 133-136, Feb. 1978)。エチレンを生成するためにエタノールを脱水する処理は、工業規模で行われている。この処理は、不活性担体(inert support)上のリン酸触媒により流動層中で行われる。
【0024】
同様に、プロピオン酸は、発酵によって生成され、適当なエステルの水素化によってプロパノールに変換され、そして次にプロピレンを生成するために脱水される(Playne, 1985)。
【0025】
さらに、多数の種類のエステルは、第2のアルコールのエステルを形成するために、大過剰の第2のアルコールをエステルに加えて反応させるエステル交換によって、相互交換される。エステル交換の技術は、例えば、反応蒸留のような処理など、様々知られている。
【0026】
エステルもまた、加水分解により、有機酸およびアルコールを再生することができる。乳酸は、メタノールでエステル化し、そして次に加水分解することによって、回収および精製される。
【発明の開示】
【0027】
本発明に係る一実施形態は、有機酸塩を含む希薄な塩溶液から有機酸を回収するための方法である。塩のカチオンは、不溶性炭酸塩を形成する。上記方法は、不溶性炭酸塩だけではなく、酸/アミン複合体を形成するために、希薄な塩溶液に第3級アミンおよび二酸化炭素を導入する工程を包含している。水と混合しない溶媒は、酸/アミン複合体および水と混合しない溶媒を含む反応相を形成するために希薄な塩溶液に導入される。上記方法では、反応相を継続的に乾燥し、そして酸と、水と混合しない溶媒との生成物を形成する工程をさらに包含している。
【0028】
本発明に係るさらなる実施形態は、有機酸のカルシウム塩を含む希薄な塩溶液から有機酸を回収するための方法である。上記方法は、希薄な塩溶液に第3級アミンおよび二酸化炭素を導入し、酸/アミン複合体および炭酸カルシウムを形成する工程を包含している。希薄な塩溶液は、少なくとも0.5程度の分配係数を有する水と混合しないアルコールに混合され、そして酸/アミン複合体は、水と混合しないアルコール中に抽出される。上記方法は、水と混合しないアルコールを継続的に乾燥し、そして酸とアルコールとからエステルを形成する工程をさらに包含している。この方法において、エステル、残余した水と混合しないアルコール、そして第三級アミンからなる混合物が生成される。
【0029】
本発明に係るさらなる実施形態は、有機酸のカルシウム塩を含む発酵ブロス由来の酢酸、乳酸、およびプロピオン酸からなる群より選択される有機酸を回収するための方法である。上記方法は、酸/アミン複合体および炭酸カルシウムを形成するために、希薄な塩溶液に二酸化炭素、およびトリブチルアミンまたはジシクロメチルヘキシルアミンのどちらか一方を導入する工程を包含している。希薄な塩溶液は、n−オクタノール、n−ヘキサノール、n−ペンタノール、およびn−ブタノールから選択される水と混合しないアルコールに混合される。この方法において、酸/アミン複合体は、水と混合しないアルコール中に抽出される。上記方法は、アルコールを継続的に乾燥し、そしてエステル、アルコール、および第3級アミンを含む生成物を形成するために、酸とアルコールとからエステルを形成する工程をさらに包含している。上記方法は、エステルと、第3級アミンと、アルコールとを分離する工程をさらに包含している。分離した第3級アミンは、酸/アミン複合体を形成するために希薄な塩溶液に導入する第3級アミンとして使用される。分離した、水と混合しない溶媒は、酸/アミン複合体の抽出のために希薄な塩溶液に混合するアルコールとして使用される。分離したエステルは、酸のアルコールを形成し、アルコール溶媒を再生するためにエステルを水素化すること、第2のエステルを形成するための第2のアルコールをエステルに混合し、エステル交換すること、または酸を形成し、アルコール溶媒を再生するためにエステルを加水分解することによって、さらなる回収のための処理が行われる。
【0030】
本発明に係るさらなる実施形態は、水溶液中の酸/アミン複合体から有機酸の回収を行うための方法である。上記方法は、反応相と水相とを形成するために、水溶液に水と混合しない溶媒を導入する工程を包含している。反応相は、酸/アミン複合体と、水と混合しない溶媒とを含有している。上記方法は、反応相を継続的に乾燥し、そして酸と、水と混合しない溶媒との生成物を形成する工程をさらに包含している。
【0031】
本発明の多数の実施形態において一例を挙げると、水と混合しない溶媒は、アルコールとすることができ、そして酸/溶媒生成物は、エステルとすることができる。アルコールは、n−オクタノール、n−ヘキサノール、n−ペンタノール、およびn−ブタノールからなる群より選択することができる。水と混合しない溶媒は、酸/アミン複合体の酸部分に対して反応性を有する溶媒と、酸/アミン複合体の酸部分に対して不活性の溶媒とを含む混合溶媒とすることもできる。他の実施形態において、水と混合しない溶媒の分配係数は、少なくとも0.5、0.75、または1程度とすることができる。さらなる実施形態において、水と混合しない溶媒の選択性の値は、少なくとも8、15、または20程度とすることができる。
【0032】
多数の実施形態において、第3級アミンは、トリブチルアミンまたはジシクロヘキシルメチルアミンのどちらか一方とすることができる。
【0033】
本発明の有機酸は、酢酸、乳酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、クエン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、グリコール酸、およびギ酸より選択することができる。
【0034】
本発明の多数の実施形態において、継続的に反応相を乾燥する工程は、共沸によって、共沸混合物として溶媒と共に水を除去する工程、または吸水剤と反応相とを接触することよって水を除去する工程のどちらか一方を包含することができる。
【0035】
酸/溶媒生成物を形成する工程は、酸とアルコール溶媒との間の水の生成によりエステルを形成する工程を包含することができる。さらに、酸/溶媒生成物を形成する工程は、溶媒に触媒を添加する工程を包含することができる。触媒は、強酸触媒、すなわち有機酸および固体触媒よりも大きなpKaを有する酸触媒とすることができる。触媒は、硫酸、塩酸、およびメタンスルホン酸より選択することができる。
【0036】
本発明のさらなる実施形態において、本方法は、酸/溶媒生成物と、第3級アミンと、溶媒とを反応相から分離する工程を包含させることができる。分離した第3級アミンは、酸/アミン複合体を形成するために希薄な塩溶液に導入するアミンとして使用することができる。さらに、分離した溶媒は、希薄な塩溶液に添加するための、水と混合しない溶媒として使用することができる。分離する工程は、第3級アミンおよび溶媒から酸/溶媒生成物を蒸留することによって行うことができる。さらに、分離する工程は、第3級アミンから溶媒を蒸留する工程を包含させることができる。
【0037】
酸/溶媒生成物は、酸とアルコールとの間に形成したエステルであるとき、本方法は、酸のアルコールを形成し、かつアルコール溶媒を再生するために、エステルを水素化する工程をさらに包含することができる。この実施形態において、酸のアルコールは、オレフィンを形成するために脱水することができる。さらに、この実施形態において、再生した溶媒は、希薄な塩溶液に導入するための溶媒として使用することができる。さらなる実施形態において、酸/溶媒エステル生成物は、酸を形成し、かつ希薄な塩溶液に導入するために再利用されるアルコール溶媒を再生するために加水分解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明に係る一実施形態において、希薄な塩溶液から有機酸を回収するための方法を提供する。希薄な塩溶液は、有機酸塩と、不溶性炭酸塩を形成するカチオンとを含んでいる。上記方法は、酸/アミン複合体および不溶性炭酸塩を形成するために、塩溶液に第3級アミンおよびCOを導入する工程を包含している。上記方法は、水と混合しない溶媒中に酸/アミン複合体を含む反応相を形成するために、水と混合しない溶媒を希薄溶液に導入する工程をさらに包含している。上記反応相は、継続的に乾燥される。上記方法は、酸と、水と混合しない溶媒との生成物を形成する工程をさらに包含している。
【0039】
本発明に係るこの実施形態は、発酵により生成される希薄な塩溶液における有機酸に対して特に好適である。例えば、上記有機酸は、酢酸、乳酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、クエン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、およびギ酸などであり、好ましくは、酢酸、乳酸およびプロピオン酸である。この実施形態における有機酸塩は、不溶性炭酸塩を形成するカチオンを含んでいる。例えば、炭酸カルシウムは不溶性である。Caとは別の他の好適なカチオンは、Zn、Ba、およびMgである。
【0040】
希薄な塩溶液に第3級アミンおよびCOを導入する工程は、概して、第3級アミンを希薄な塩溶液と混合し、COを混合溶液の中に泡立つように混合する間、中性付近のpHで行われる。この方法において、有機酸塩は、水、CO、および第3級アミンと反応して、酸/アミン複合体および不溶性炭酸塩を形成する。炭酸塩は溶液から分離するため、酸/アミン複合体を形成する方向の反応が促進され、反応はほとんど完了する。本発明の重要な利点は、この反応が、発酵ブロスのpHのような中性付近のpH条件で、周囲の温度および圧力の条件で起きることである。
【0041】
例えば、炭酸カルシウムのような不溶性炭酸塩は、従来の固液分離により容易に回収することができる。一実施形態において、この塩は、有機酸の初期生成の間に、pH制御のため、有機酸発酵における塩基として使用することができる。発酵中の炭酸カルシウムの上記にような使用は、酸/アミン複合体および不溶性炭酸塩を形成するための本発明の様々な実施形態において使用されるCOを生成することができる。これをまとめた処理において、COの純生成は起きない。このように、酸性化物質として、希薄な塩溶液にCOを導入する工程は、有機酸の回収における無機酸の消費、および塩処理の問題点を克服するものであり、重要な利点を提供する。
【0042】
酸/アミン複合体とした場合に希薄な塩溶液に溶解する、いくつかの第3級アミンは、この工程の処理における使用に好適である。具体的には、第3級アミンは、トリブチルアミン(TBA)、およびジシクロヘキシルメチルアミンからなる群より選択することができる。
【0043】
本発明にかかるこの実施形態では、酸/アミン複合体および水と混合しない溶媒を含む反応相を形成するために、水と混合しない溶媒を希薄な塩溶液に導入する工程をさらに包含している。このように、酸/アミン複合体は、少なくともある程度、水と混合しない溶媒に溶解しなければならない。酸/アミン複合体が希薄な水溶液から抽出されるこの工程は、水溶液から酸/アミン複合体を分離するための方法として、大量の水を蒸発させるための高いエネルギーコストを削減することができるという重要な利点を提供する。液液抽出系を行うことは、当業者にとって周知である。
【0044】
水と混合しない溶媒は、有機酸とエステルを形成することが知られているアルコール(詳細には、第1級アルコール)などのアルコールとすることができる。より詳細には、水と混合しない溶媒がアルコールである場合、当該アルコールは、n−オクタノール、n−ヘキサノール、n−ペンタノール、およびn−ブタノールより選択することができる。
【0045】
水と混合しない溶媒は、分配係数(K)によって、さらに特徴づけることができる。分配係数は、溶媒中の酸/アミン複合体の質量比を、例えば水相のような第2相中の酸/アミン複合体の質量比によって除したものであると定義されている。より詳細には、水と混合しない溶媒の分配係数は、少なくとも0.5、0.75.および1程度とすることができる。したがって、抽出において、高いKを有する溶媒の使用は、溶媒の在庫を減らし、容器を小さくし、ならびに資本および操業コストの減少を導くという観点から、とても有益である。
【0046】
水と混合しない溶媒は、酸/アミン複合体の酸部分と生成物を形成するために、酸/アミン複合体と反応するものより選択される。例えば、水と混合しない溶媒がアルコールである場合、酸と反応してエステルを形成する。より有効な中間体生成物(例えば、エステル)を形成するために酸/アミン複合体の酸部分に対して反応する溶媒の使用は、酸/アミン複合体から酸を回収するための高収率で効果的な処理を提供する。
【0047】
上記溶媒(例えば、アルコール)は、わずかに水に溶解するし、逆に水は、わずかに溶媒に溶解する。本発明において有用である、水と混合しない溶媒は、選択性によっても特徴づけることができる。選択性は、水相における水の質量比の割合を溶媒におけるの水の質量比の割合で除した値に分配係数を乗じたものとして定義されている。この値は、水相において、水から酸/アミン複合体を優先的に分離する溶媒の能力の尺度である。選択性が高いほど、水と混合しない溶媒中に水がほとんど移動しないことを示しており、結果的に、後に続く処理工程において、遊離水を除去するために必要なエネルギーが少なくて済む。好ましい実施形態において、水と混合しない溶媒は、少なくとも8、15および20程度の選択性の値を有している。
【0048】
さらなる実施形態において、水と混合しない溶媒は、酸/アミン複合体の酸部分に対して反応して、酸/溶媒生成物を形成する溶媒を含むだけではなく、酸/アミン複合体の酸部分に対して不活性な溶媒を含む溶媒と混合することができる。例えば、上記混合溶媒は、トルエン、キシレン、芳香族化合物、およびアルカンを不活性な成分として含有することができる。比較的疎水性である上記成分は、水と混合しない溶媒から水を避けることを助力していると考えられる。これによって、溶媒の効果的な選択性が向上する。
【0049】
さらなる実施形態において、水と混合しない溶媒は、酸/アミン複合体の酸部分に対して反応して酸/溶媒生成物を形成する溶媒を含むだけではなく、エステルのような疎水性の他の成分を含有している溶媒を混合することができる。上記成分は、溶媒相から水を避けることによって、水と混合しない溶媒の効果的な選択性を助力している。上記成分は、酸および/または溶媒のどちらかに対して反応することもありえる。
【0050】
反応相は、水溶性の希薄な塩溶液から分離した相を形成し、そして酸/アミン複合体が反応相中に抽出される。二つの相は、この時点で分離することができ、反応相は、下記で詳細に説明するように、さらなる処理を行う。水相は、残余した溶媒およびアミンを公知の方法、例えば、水蒸気蒸留または炭素吸着によって除去する。そして回収した溶媒は、処理に再利用され、そして水は、排出されるか、または発酵のために再利用される。
【0051】
本発明に係るこの実施形態では、反応相を継続的に乾燥する工程をさらに包含する。上述のように、反応相は、酸/アミン複合体および水と混合しない溶媒を含有しており、水と混合しない溶媒と、酸/アミン複合体の酸部分との間の反応のための環境を提供している。反応相を継続的に乾燥することによって、酸と、水と混合しない溶媒との反応を妨げる水の存在が減少する。例えば、一例を挙げると、水と混合しない溶媒が、水分子の除去によって酸と反応するアルコールである場合、水の存在は、エステルの形成のための反応の進行に好ましくない。反応相の乾燥によって、溶媒中に最初に存在する水は除去される。さらに、この例においては、水分子は、酸と溶媒との反応によって生成する。そして、生成した水分子は、エステル形成の方向に反応を促進させるために、乾燥することによって除去しなければならない。反応相を継続的に乾燥することは、生成物が形成されるほど、反応相中に、酸/溶媒生成物の形成を妨げる無益な水が生成していることと関係している。例えば、一実施形態における反応相を継続的に乾燥する工程では、共沸によって、溶媒の共沸混合物として水を除去する工程を包含させることができる。この方法において、反応相中に初めから存在している水は、除去される。さらに、水は、酸/溶媒生成物の形成によって生成するけれども、生成した水は、共沸によって共沸混合物として除去される。乾燥は、例えば、モレキュラーシーブのような固体吸水剤の使用によっても行うことができる。
【0052】
上記処理は、酸と、水と混合しない溶媒との生成物を形成する工程を最後に包含している。本発明における酸/溶媒生成物の一例は、上述したように、酸とアルコール溶媒との間のエステルの形成である。酸とアルコール溶媒とのエステル形成を例に挙げると、生成物の形成の工程は、水を除去することによって、エステルの形成の方向に反応を促進させる工程を包含している。エステルの形成は、例えば、反応蒸留のような公知の方法によって達成することができる。反応蒸留の設計は、温度、速度、滞留時間、およびその他設計の特徴点の条件が当業者にとって公知である方法によって行われる。反応は、一括、または連続的に行われる。
【0053】
さらに、生成物を形成する工程は、溶媒に触媒を添加する工程を包含することができる。例えば、触媒は、有機酸および固体酸触媒よりも大きなpKaを有する触媒のような、ブレンステッド酸およびルイス酸の双方を包含する強酸触媒とすることができる。具体的な実施例において、触媒は、硫酸、塩酸、およびメタンスルホン酸を用いることができる。
【0054】
本発明の重要な利点のいくつかは、処理に再利用するために、処理に用いた様々な成分を回収し、再利用することができることである。したがって、酸/溶媒生成物を形成するうえで、処理は、好ましくは、酸/溶媒生成物と、第3級アミンと、溶媒とを分離する工程を包含している。例えば、酸/溶媒生成物は、混合物から蒸留され、第3級アミンおよび溶媒から除去される。それとともに、溶媒は、第3級アミンから蒸留される。この方法において、処理の終了したときの反応相は、3つのストリーム(stream)に分離されている。第3級アミンは、希薄な塩溶液にCOを導入して酸/アミン複合体および不溶性炭酸塩を形成するための処理における使用に再利用される。同様に、分離した溶媒は、酸/アミン複合体を含む反応相を形成するために使用される。別の方法としては、反応混合物は、アルコール溶媒と、アルコール生成物とが分離された後、水素化分解工程に直接送られる。
【0055】
酸/溶媒生成物は、有機酸の回収のために有用な形である。なぜなら、酸の迅速な形成、または酸/溶媒生成物から他の有用な生成物の形への変換を可能にするからである。例えば、酸/溶媒生成物がエステルである一例を挙げると、有機酸を回収するための方法として、酸を形成し、アルコール溶媒を再生する、エステルの加水分解工程をさらに包含させることができる。この例において、再生したアルコール溶媒は、水と混合しない溶媒として使用するために再利用することができる。エステルの加水分解工程の条件は、当業者にとって周知である。
【0056】
別の方法として、酸/溶媒生成物がエステルである場合、有機酸を回収するための方法は、酸のアルコールを形成し、アルコール溶媒を再生するためにエステルを水素化する工程を包含させることができる。この場合も先と同様に、再生したアルコール溶媒は、水と混合しない溶媒として使用するために再利用することができる。この実施形態において、有機酸は、アルコールとして回収される。上記水素化する反応の条件は、当業者にとって公知である。さらなる実施形態において、酸のアルコールは、オレフィンを形成するために脱水することができる。オレフィンを形成するためのアルコールの脱水は、Tsaoらによって述べられており(Tsao et al. 1978)、その処理は、工業的規模で実施されている。処理は、不活性担体(inert support)上のリン酸触媒により流動層中で行われる。同時に、発酵によるプロピオン酸の生成物は、適当なエステルの水素化によってプロパノールに変換し、プロピレンを形成するために脱水することが知られている(Playne, Comprehensive Biotech, Chapter 37)。
【0057】
さらなる実施形態において、酸/溶媒生成物を第1のエステルとすると、第2のアルコールによって第1のエステルをエステル交換して第2のエステルを形成する工程をさらに包含させることができる。上記エステル交換反応は、当業者にとって公知である。
【0058】
本発明に係る実施形態について、図1を参照して説明する。酸性化装置100において、酢酸カルシウム(Ca(Ac))を含んだ希薄な塩溶液が、導入される。酸性化装置100には、COおよび第3級アミン(TBA)も導入される。この装置において、酸とTBAとの間に酸/アミン複合体が形成される。また、不溶性炭酸塩(炭酸カルシウム)が形成される。次に、希薄な塩溶液は、ろ過装置110において炭酸カルシウムを除去するためにろ過される。炭酸カルシウムは、ろ過装置110において洗浄され、発酵において、中和するための塩基として循環流(recycle stream)に使用される。次に、TBA:HAcアミン/酸複合体および水は、抽出装置120に送られる。n−ペンタノールが、水と混合しない溶媒として抽出装置120に導入される。TBA:HAcアミン/酸複合体は、水相からn−ペンタノール相に抽出される。水相および溶媒相は分離され、分離した水は、再利用される。TBA:HAcアミン/酸複合体を含むn−ペンタノール相は、エステル化装置130に導かれる。エステル化装置130において、溶液は、残余した水を除去するため、継続的に乾燥される。さらに、酢酸とn−ペンタノールとの反応によって形成した水は、エステル化装置130から取り除かれる。次に、生成した反応混合物は、蒸留装置140に導かれ、n−ペンタノールと酢酸とから形成したエステル、および残余したn−ペンタノールが、蒸留して分離され、回収される。そして、残ったTBAは、再利用のために酸性化装置100に戻される。
【0059】
本発明に係る特定の実施形態は、有機酸のカルシウム塩を含む希薄な塩溶液から、有機酸を回収するための方法である。この方法は、酸/アミン複合体および不溶性炭酸塩を形成するために、希薄な塩溶液に第3級アミンおよびCOを導入する工程を包含している。希薄な塩溶液は、分配係数が少なくとも0.5程度であることを特徴とする、水と混合しないアルコールに混合される。この方法において、酸/アミン複合体は、水と混合しないアルコール中に抽出される。上記方法は、水と混合しないアルコールを継続的に乾燥し、そしてエステル、残余した水と混合しないアルコール、および第3級アミンを含む混合物を生成するために、酸と、水と混合しないアルコールとからエステルを形成する。
【0060】
本発明に係る特定の実施形態は、有機酸のカルシウム塩を有する発酵ブロス由来の酢酸、乳酸、およびプロピオン酸より選択された有機酸の回収のための方法である。上記方法は、酸/アミン複合体および炭酸カルシウムを形成するために、希薄な塩溶液に第3級アミンおよびCOを導入する工程を包含している。第3級アミンは、トリブチルアミンおよびジシクロヘキシルメチルアミンより選択することができる。上記方法は、希薄な塩溶液に、n−オクタノール、n−ヘキサノール、n−ペンタノール、およびn−ブタノールより選択される、水と混合しないアルコールを混合する工程をさらに包含している。酸/アミン複合体は、水と混合しないアルコール中に抽出され、水と混合しないアルコールは、継続的に乾燥される。上記方法は、エステル、残余した水と混合しないアルコール、および第3級アミンを含む混合物を生成するために、酸と、水と混合しない溶媒とからエステルを形成する工程を包含している。エステルと、水と混合しないアルコールと、第3級アミンとは分離される。分離した第3級アミンは、希薄な塩溶液に導入するために再利用され、分離した水と混合しないアルコールは、希薄な塩溶液に混合するために再利用される。分離したエステルは、3種類の処理より選択した1つによって処理される。第1は、酸のアルコールを形成し、アルコール溶媒を再生するために、エステルを水素化する。第2は、第2のエステルを形成するために、エステルを第2のアルコールでエステル交換する。第3は、酸を形成し、アルコール溶媒を再生するために、エステルを加水分解する。
【0061】
本発明に係る特定の実施形態は、水溶液中の酸/アミン複合体から有機酸を回収するための方法である。上記方法は、反応相および水相を形成するために、水溶液に水と混合しない溶媒を導入する工程を包含している。反応相は、酸/アミン複合体および水と混合しない溶媒を含んでいる。上記方法は、反応相を継続的に乾燥する工程をさらに包含している。最終的に、酸と、水と混合しない溶媒との生成物が形成される。
【0062】
以下、実施例を例証の目的のために提供するが、本発明の範囲を制限することは、意図されない。
【実施例】
【0063】
(分析方法)
水溶液および有機溶媒、双方における酸/アミン複合体の濃度は、Ricker et. al. (“Solvent Properties of Organic Bases for Extraction of Acetic Acid from Water”, Journal of Separation Process Technology, Vol. 1, No. 1, 1979)の方法にしたがって、10〜20mlのサンプルを30mlのメタノールで希釈し、標準KOHメタノール溶液で滴定する、電位差滴定によって決定した。
【0064】
有機相の含水量は、Karl Fischer分析によって決定した。
【0065】
実施例1〜3は、様々な酸およびアミンを使用して、酸/アミン複合体および炭酸カルシウムの形成を例証する。実施例4は、酸/アミン複合体を形成するための反応ができないトリオクチアミンの使用を例証する。実施例5は、不溶性炭酸塩を形成しないカチオンを含有する希薄な塩溶液の使用を例証する。したがって、酸/アミン複合体の形成の完了は妨げられる。
【0066】
(実施例1)
500mlの酢酸カルシウム水溶液(0.6M酢酸塩溶液)を1リットルのメスシリンダーに注ぎ、酢酸を用いてpH6.9〜7.0に調整した。モル濃度5%の過剰のTBAを添加し、分離層を形成させた。次に、COを周囲圧力下で30分間、溶液に導入(sparged)した。液体混合物は、均質な単一層となった。CaCOの多量の白色沈殿が形成された。溶液は、ろ過され、CaCOの固まりは、水で一度洗浄され、アセトンで再度洗浄され、乾燥された後、重量を測定された。酸性化実験は、CaCOの理論(theoretical)収率が91.0〜96.1%の範囲で4度行われた。生成したCaCOの沈殿をろ過し、洗浄することは容易であった。全ての事例において、細かい白色粉末が生成した。
【0067】
(実施例2)
実施例1の実験を50ml程度に縮小した。実施例1の酢酸塩溶液、0.6M乳酸カルシウム溶液、および0.6Mプロピオン酸カルシウム溶液を用いた実験を並行して行った。COを30分間供給した後、各反応は、同量のCaCOの沈殿を生成した。
【0068】
(実施例3)
COの供給の代わりに、反応混合物にN:COの比率が10:1で窒素およびCOの混合物を供給する他は、実施例2と同様に生成された。結果は、実施例2と同一であった。
【0069】
(実施例4)
酢酸塩溶液のみを用い、TBAの代わりとしてトリオクチルアミンを用いて実施例2と同様の実験を行った。COを30分間供給した後、明白な反応は、全く起きなかった。CaCOの沈殿は起こらず、2つの液相のままであった。トリオクチルアミンは、酸/アミン複合体が酢酸カルシウム溶液に溶解しないため、反応することができないと確信される。
【0070】
(実施例5)
酢酸ナトリウム溶液を用いた以外は、実施例1と同様の実験を行った。反応は起きるようには見えなかった。NaCOは水溶性であり、沈殿しないため、酸/アミン複合体を形成する反応の進行が促進されなかったと確信される。
【0071】
(実施例6)
この実施例は、水から酢酸/TBA複合体の抽出を行うための、種々の、水と混合しない溶媒の使用を例証する。
【0072】
全ての抽出実験は、室温(25℃)で行われた。溶媒のスクリーニングのために、4.08gの酢酸(HAc)および12.56gのTBAをモル比1:1で含有する典型的な混合水溶液100gと、有機溶媒100gとを分液ろうと中で混合した。混合物は、手でよく撹拌され、そして分離させるために放置した。各相は、回収され、重量が測定された。サンプリングし、上述したRicker(Ricker et al., 1979)の方法により酸/アミン複合体を、Karl Fischerにより水を分析した。
【0073】
異なるタイラインを作成するためにTBA:HAcの開始濃度を変化させたことを除いて、液液相図のデータを作成するために同様の手順が用いられた。
【0074】
多数の溶媒に対する水からのトリブチルアミン/酢酸の溶媒抽出のデータを以下の表に提示する。上記溶媒は、同じ体積量の、水に溶解している等モルのTBA:HAc塩と混合された。試料は、手でよく撹拌され、静置された。有機相をサンプリングし、Ricker et al., 1979の方法によって酢酸塩を分析し、分配係数(K)が決定された。相の体積変化は測定していないため、結果は近似値ではあるけれども、様々な溶媒の利点を示唆している。
【0075】
〔表1−分配係数〕
【0076】
【表1】

【0077】
表1にみられるように、炭素数の多い高級アルコールは、非常に望ましい分配係数であり、酢酸と反応してエステルを形成することが可能である。
【0078】
(実施例7)
この実施例では、水から酢酸/TBA複合体を抽出するため、炭素数の多い高級アルコール系(n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、およびn−オクタノール)の使用を例証する。
【0079】
最初の分液は、溶媒抽出実験に含まれる全ての溶媒に関して、迅速に(30秒以内)達成された。第2の分液もまた、全ての溶媒に関して、双方の相において透明な溶液を得るために数分間を要したのみであり、非常に迅速であった。
【0080】
〔表2−分配係数および選択性の報告〕
【0081】
【表2】

【0082】
上記実施例は、分配係数と選択性との間の矛盾を示している。低分子量アルコールは、より好ましい分配係数を有しているけれども、低分子量アルコールに対する水の相互溶解度は、選択性を低くしている。n−ペンタノールおよびn−ヘキサノールは共に、高い分配係数および高い選択性を有している。
【0083】
(実施例8)
この実施例は、本発明の処理によって希薄な塩溶液からプロピオン酸を回収するための工程を示す。
【0084】
(TBAおよびCOを用いたCaCOの沈殿)
22.42gのTBAを、100mlの0.6MCa(Pr)溶液(106g/L)に添加し、COを30分間供給した。CaCOの白色沈殿が形成し、上記沈殿をろ過した後、重量を測定したところ、回収率は、90.8%であった。
【0085】
(TBA/Prの抽出)
TBA/Prアミン/酸複合体を、199.92gのHO、10.46gのプロピオン酸、および21.66gのTBAを混合することによって調製した。50gのHO/TBA/HPr溶液は、3つのフラスコにそれぞれ入れられた、50gのn−ブタノール、n−ペンタノール、およびn−ヘキサノールと混合され、分液ろうとで分液された。有機相中のTBA/HPrからサンプリングし、Ricker et al., 1979の方法によって測定した。3つの溶媒の分配係数は、それぞれ、n−ブタノールが1.39、n−ペンタノールが1.46、そしてn−ヘキサノールが1.38であると決定された。
【0086】
(n−ヘキサノール中TBA/HPrのエステル化)
325.44gのn−ヘキサノールと、74.48gのHPrと、155.64gのTBAとの混合物を調製し、実施例10において説明する蒸留装置に導いた。始めのポット(pot)の試料および反応後の最後のポット(pot)の試料をサンプリングした。反応時間は、加熱および冷却時間を含めずに約12時間であった。ポット(pot)温度は、開始時157℃から終点で163℃までの範囲であった。試料は、Ricker et al., 1979の方法によって分析された。ポット(pot)中のHPrの消滅は、92.2%のエステルへの変換率を示していた。
【0087】
(実施例9)
この実施例は、n−ペンタノールおよびn−ヘキサノールに関して作図された液液相平衡図を示している。図2および3は、実験で測定された相図である。タイラインは、上述した抽出系におけるTBA:HAc濃度の開始濃度の変更によって作成した。2つの相の領域は、かなり幅広く、タイラインは、好ましい傾斜である。分配係数は、TBA:HAc濃度が高くなると、より好ましくなる。高濃度のTBA:HAcを希薄な水溶液から抽出して生成するためには、ほんの僅かの段階(stage)が必要である。
【0088】
(実施例10)
この実施例は、酢酸と、実施例7の4種類のアルコール溶媒との間の酸/溶媒生成物の生成を示している。n−ヘキサノール溶媒は、硫酸触媒を用いたものと、用いてないものとで実験が行われた。
【0089】
アルコール溶媒および酸/アミン複合体の単蒸留は、電熱マントルヒーター、1リットルの丸底フラスコ、4mm×4mmのガラスリングが詰まった真空被覆の30cm蒸留塔、およびオーバーヘッドコンデンサーからなるガラス蒸留器、並びに様々な量の留出物を除去し、還流液をカラムに戻すことができる生成物スプリッター(product splitter)によって、大気圧(630mmHg以下)下で行われた。2段構えの処理(two-step process)が確認された。まず、抽出物中に溶解している水は、アルコール溶媒中のアミン複合体の乾燥溶液を生成する抽出物用の乾燥溶媒として、アルコール自体を用いた共沸蒸留によって除去される。オーバーヘッドスプリッター(overhead splitter)が配されているので、水が生成される、および溶媒が還流として蒸留器に戻されるにつれて、水は継続的に除去される。試験を行った全てのアルコールが、水と不均一な共沸混合物を形成し、オーバーヘッドで2つの液相を形成した。
【0090】
初めの水の除去速度は非常に早く、わずか数分間であった。抽出物を乾燥した後、蒸留処理は、アルコール溶媒の全還流によって継続され、そして、通常、数時間以上かけて蒸留器にオーバーヘッド水(water overhead)がゆっくりと連続生成した。この水は、アルコール溶媒と酸とのエステル化反応から生成した。蒸留器中に残余した酢酸塩は、蒸留器からサンプリングされ、上述したRicker et al., 1979の方法によって酢酸塩濃度を測定した。最初の濃度と様々な時間での試料との間の違いは、エステルに変換されているためである。
【0091】
エステル化反応は、それぞれの溶媒を検証するため、大気圧下(630mmHg以下)で上述した装置において行った。アルコールとTBA:HAc複合体をモル比3:1で含有する450gの室温の溶液を、蒸留器に加えた。触媒を用いた、n−ヘキサノールでの実施では、TBA:HAc複合体に対してHSOをモル比0.1:1で開始溶液中に含有させた。マントルヒーターのスイッチを入れ、約30分後に溶液が沸騰し始めた。反応が進行するにつれて、水は、オーバーヘッドに第2相を形成した。水は収集され、その量は長時間にわたって記録された。変換率は、全ての酢酸がエステルに変換されたときに生成する水の理論(theoretical)最大量における割合として計算され、蒸留器のポット(pot)試料における残余したTBA:HAcの滴定によって確認された。エステル形成は、既知のエステル試料を基準物質として用いて、ガスクロマトグラフィーによって検証した。エステル化収率の点に関するこの実験の結果は、表3に示されている。
【0092】
【表3】

【0093】
図4は、エステル化の間に生成した水をプロットしたものであり、溶液が沸騰している時間のポット(pot)温度の範囲を観測した記録である。長期間にわたって上昇しているポット(pot)温度は、反応のさらなる証拠である。図4の曲線は、収率を比較するために役立つが、収率を比較するために定性的にのみ使用することができる。これは、異なるモル濃度量のTBA:HAcが開始溶液に存在しており、異なる量の物質が実験の過程で試料としてサンプリングされるからである。表3の値は、収率の比較のためにより役立つ。
【0094】
エステル化率および収率の双方とも、アルコールの分子量を増加させると増加した。このパフォーマンスの向上は、アルコールの炭素鎖の長さと関係するよりもむしろ、おそらくは、高分子量アルコールの高い沸点、および高い反応温度によるものである。十分なエステル化率および収率は、反応が高圧で行われたのであれば、低分子量アルコールで達成される。所要の圧力は、極端に変化させる必要はない。例えば、170℃、428.6kPaで沸騰するn−ブタノールは、十分に工業的重要性の範囲内に含まれている。
【0095】
エステル化率および収率は、触媒を用いることによっても向上する。触媒なしのn−ヘキサノールの実験と、触媒を加えた実験との比較は、硫酸が優れた触媒となる可能性を秘めていることを示している。
【0096】
本発明の様々な実施形態を詳細に説明しているが、それらの実施形態の改良、および脚色が、当業者に行われることは明白である。それははっきりと理解しているけれども、上記改良および脚色は、上述した特許請求の範囲に記載の本発明の適用範囲に含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施の形態に係るブロック流れ図である。
【図2】n−ペンタノール、水、およびTBA:HAc複合体の相図である。
【図3】n−ヘキサノール、水、およびTBA:HAc複合体の相図である。
【図4】実施例8におけるエステル化の間に生成した水のプロット、および観測したポット(pot)温度の範囲の記録である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
そのカチオンが不溶性炭酸塩を形成する、有機酸塩を含む希薄な塩溶液から、有機酸を回収するための方法であって、
a.酸/アミン複合体および該不溶性炭酸塩を形成するために、該希薄な塩溶液に第3級アミンおよびCOを導入する工程;
b.該酸/アミン複合体および水と混合しない溶媒を含む反応相を形成するために該希薄な塩溶液に水と混合しない該溶媒を導入する工程;
c.該反応相を継続的に乾燥する工程;および、
d.酸と、水と混合しない該溶媒との生成物を形成する工程;を包含することを特徴とする方法。
【請求項2】
水と混合しない上記溶媒が、アルコールであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水と混合しない上記溶媒が、アルコールであり、かつ酸/溶媒生成物が、エステルであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
水と混合しない上記溶媒の分配係数が、少なくとも0.5程度であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記アルコールが、n−オクタノール、n−ヘキサノール、n−ペンタノール、およびn−ブタノールからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
水と混合しない上記溶媒が、酸/溶媒生成物を形成するため、上記酸/アミン複合体の酸部分に対して活性を有する溶媒と、上記酸/アミン複合体の酸部分に対して不活性の溶媒とを含む混合溶媒であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
水と混合しない上記溶媒の分配係数が、少なくとも0.5程度であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
水と混合しない上記溶媒の分配係数が、少なくとも0.75程度であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
水と混合しない上記溶媒の分配係数が、少なくとも1程度であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
水と混合しない上記溶媒の選択性の値が、少なくとも8程度であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
水と混合しない上記溶媒の選択性の値が、少なくとも15程度であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
水と混合しない上記溶媒の選択性の値が、少なくとも20程度であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
上記第3級アミンが、トリブチルアミンおよびジシクロヘキシルメチルアミンからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
上記有機酸が、酢酸、乳酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、クエン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、グリコール酸、およびギ酸からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
上記反応相を継続的に乾燥する工程が、共沸蒸留により上記溶媒の共沸混合物として水を除去する工程、および吸水剤に上記反応相を接触させることにより水を除去する工程からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
上記溶媒がアルコールであって、酸/溶媒生成物の形成工程は、水の生成によって上記酸と該アルコールとの間にエステルを形成する工程を包含することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
酸/溶媒生成物の形成工程は、上記溶媒に触媒を添加する工程を包含することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
上記触媒が、強酸触媒であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記触媒が、有機酸および固体酸触媒よりも大きいpKaを有する酸触媒からなる群より選択されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
上記触媒が、硫酸、塩酸、およびメタンスルホン酸からなる群より選択されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
酸/溶媒生成物、上記第3級アミン、および上記溶媒を分離する工程をさらに包含することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
分離した上記第3級アミンが、工程(a)における上記第3級アミンとして使用されることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
分離した上記溶媒が、工程(b)における上記溶媒として使用されることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項24】
上記分離する工程は、上記第3級アミンおよび上記溶媒から上記酸/溶媒生成物を蒸留する工程を包含することを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項25】
上記分離する工程は、上記第3級アミンから上記溶媒を蒸留する工程を包含することを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
上記溶媒がアルコール、上記酸/溶媒生成物がエステルであって、上記酸のアルコールを形成し、かつアルコール溶媒を再生するために、該エステルが水素化される工程をさらに包含することを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項27】
オレフィン生成物を形成するために、上記酸のアルコールを脱水する工程をさらに包含することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
再生した上記溶媒は、工程(b)における上記溶媒として使用されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
上記溶媒がアルコール、上記酸/溶媒生成物が第1のエステルであって、該第1のエステルは、第2のエステルを形成するために、第2のアルコールによりエステル交換される工程をさらに包含することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項30】
上記溶媒がアルコール、上記酸/溶媒生成物がエステルであって、上記酸を形成し、かつアルコール溶媒を再生するために、該エステルが加水分解される工程をさらに包含することを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項31】
再生した上記溶媒が、工程(b)における上記溶媒として使用されることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
有機酸のカルシウム塩を含む希薄な塩溶液から、有機酸を回収するための方法であって、
a.酸/アミン複合体および炭酸カルシウムを形成するために該希薄な塩溶液に第3級アミンおよびCOを導入する工程;
b.少なくとも分配係数が0.5程度である、水と混合しないアルコールを該希薄な塩溶液に混合し、該酸/アミン複合体が、該水と混合しないアルコール中に抽出される工程;
c.水と混合しない該アルコールを継続的に乾燥する工程;および、
d.エステル、残余の水と混合しないアルコール、および該第3級アミンを含む混合物を生成するために酸と、水と混合しないアルコールとから該エステルを形成する工程;を包含することを特徴とする方法。
【請求項33】
有機酸のカルシウム塩を含む発酵ブロスから、酢酸、乳酸、プロピオン酸からなる群より選択された有機酸を回収するための方法であって、
a.酸/アミン複合体および炭酸カルシウムを形成するために、希薄な塩溶液にトリブチルアミンおよびジシクロヘキシルメチルアミンからなる群より選択された第3級アミンならびにCOを導入する工程;
b.オクタノール、ヘキサノール、ペンタノール、およびブタノールからなる群より選択された、水と混合しないアルコールを該希薄な塩溶液に混合し、該酸/アミン複合体が、水と混合しない該アルコール中に抽出される工程;
c.水と混合しない該アルコールを継続的に乾燥する工程;
d.エステル、残余した水と混合しないアルコール、および該第3級アミンを含む混合物を生成するために、該酸と、水と混合しない該アルコールとから該エステルを形成する工程;
e.該エステルと、該第3級アミンと、水と混合しない該アルコールとを分離する工程;
f.分離した該第3級アミンを工程(a)における該第3級アミンとして使用する工程;
g.分離した水と混合しない該アルコールを工程(b)における水と混合しない該アルコールとして使用する工程;
h.該エステルは、
i.該酸のアルコールを形成し、かつアルコール溶媒を再生するために、該エステルを水素化する処理;
ii.第2のエステルを形成するために、第2のアルコールにより該エステルをエステル交換する処理;
iii.該酸を形成し、かつ該アルコール溶媒を再生するために、該エステルを加水分解する処理;
からなる群より選択された処理によって処理される工程;を包含することを特徴とする方法。
【請求項34】
水溶液中の酸/アミン複合体から、有機酸を回収するための方法であって、
a.該酸/アミン複合体、水と混合しない溶媒、および水相を含む反応相を形成するために、水と混合しない該溶媒を該水溶液に導入する工程;
b.継続的に該反応相を乾燥する工程;
c.該酸と水と混合しない該溶媒との生成物を形成する工程;を包含することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−522136(P2007−522136A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551619(P2006−551619)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/003434
【国際公開番号】WO2005/073161
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(506261224)ズィーケム インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】