説明

有機酸若しくはシアン酸と、ハロアルコキシシランを用いたオルガノアルコキシシランの調製方法

【課題】有機酸若しくはシアン酸、及びハロアルキルアルコキシシランから、連続工程又はバッチ工程によりオルガノアルコキシシランを調製する方法の提供。
【解決手段】有機酸若しくはシアン酸を塩基と反応させ、有機酸のアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩、又はアンモニウム塩、又は金属シアネートを、ウエットな若しくは乾燥した状態で形成させ、ウエット若しくは乾燥した状態の中和された有機酸又は金属シアネートと触媒量のグアニジウム塩とを混合し、中和された有機酸又は金属シアネートとグアニジウム塩との固体混合物を調製し、中和された有機酸若しくは金属シアネートとグアニジウム塩との固体混合物と、液体ハロアルキルアルコキシシランとを反応させ、オルガノアルコキシシラン生成物、及び副産物としてのアルカリ金属ハロゲン化物又はアンモニウムハロゲン化物を得る工程を含んでなる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)本特許出願は2005年8月5日に出願の、米国仮特許出願第60/705781号(発明の名称:「IMPROVED PROCESS FOR PRODUCING ORGANO ALKOXYS ILANES FROM ORGANIC ACIDS OR CYANATES AND HALOALKYLALKOXYSILANES」に関し、35U.S.C.§119(e)に基づく優先権を主張し、その開示内容を本願明細書に援用する。
【0002】
(技術分野)本発明は有機酸又はシアン酸(hydrogen cyanate)に由来する有機官能基を有するオルガノアルコキシシランの新規な調製方法に関する。当該方法は、相転移触媒の存在下での、有機酸のアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩、又はアンモニウム塩、又は金属シアネートと、ハロアルキルアルコキシシランとの公知の反応に基づく。
【背景技術】
【0003】
有機酸の塩とハロアルキルアルコキシシランからのオルガノアルコキシシランの調製における、相転移触媒としてのグアニジウム塩の使用は公知である。特に、Simonianらの特許文献1では、イソシアヌレート及びカルボキシレートシラン調製における、この相転移触媒及び関連する特定の反応におけるその使用を開示している。特許文献1は、有機酸又は金属シアネートのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩からのオルガノアルコキシシラン製造の際の、バッチ反応により生じる熱による温度上昇を最小化する方法を開示している。しかし、オルガノアルコキシシラン生成物をベース有機酸又はシアン酸から作り出すための連続若しくはバッチ反応、又はそれを実施する方法に関しては何ら開示していない。
【0004】
更に特許文献1は、好ましい実施態様の相転移触媒(塩化ヘキサエチルグアニジウム)が水溶液、又はクロロベンゼン若しくはジクロロベンゼン溶媒中に溶解した形態でのみ市販されていることに関して開示していない。触媒が水溶液形態若しくは溶媒溶液形態であることは、当該方法の好適な実施にとり顕著な障害となる。水がハロアルキルアルコキシシラン反応物質及び/又はオルガノアルコキシシラン生成物と反応して副産物シロキサンが形成し、それにより生成物の量が減少することとなる。更に、水加水分解反応により形成されるアルコールによりグアニジウム触媒の活性が損なわれ、それによりオルガノアルコキシシラン生成物を形成する反応が停止する。またクロロベンゼン及びジクロロベンゼンは発癌性を有し、中程度の毒性を有し、強い中枢神経系の抑制剤として働き、また実験において催奇形薬として使用できることから、ヒトに対して危険性を有すると考えられている。相転移触媒を用いた連続又はバッチ方法に導入する場合、クロロベンゼン又はジクロロベンゼンは蒸留の軽量側終端部のリサイクルループ、又は廃物流のいずれかに混入すると予想される。クロロベンゼン又はジクロロベンゼンが連続的な計量側終端部のリサイクルループに混入する場合には高濃度となり、ゆえに廃物流中への経路変更の必要がある。但しいずれの方法でも、クロロベンゼン又はジクロロベンゼンは処理工程から発生する望ましくない有害廃棄物としては変わりない。
【0005】
様々なポリマー調製用の相転移触媒としての、テトラアルキルアンモニウム及びヘキサアルキルグアニジウム塩の使用が公知である。特に特許文献2では、ハロ−又はニトロ置換されたフタルイミドとビスフェノール塩の有機溶媒中での反応によりビスイミドが生じ、更に二無水物への転換及びジアミンとの反応によりポリエーテルイミドが形成されることをに関して開示している。特許文献3は芳香族ジアミンのハロ−、又はニトロ置換されたビス(フタルイミド)誘導体又は類似の化合物と、ビスフェノール塩との同様の相転移触媒反応により、ポリエーテルイミド及び他のポリエーテルポリマーが直接形成されることを開示している。特許文献2及び3で使用される相転移触媒は、グアニジウム塩及び特にヘキサアルキルグアニジウム塩である。
【0006】
オルガノアルコキシシラン化合物の合成方法としては、通常4つの方法が存在する。
1. アリル−若しくはビニル官能性化合物とトリアルコキシシランとのヒドロシリル化反応。
2. アリル−若しくはビニル官能性化合物とトリクロロシランとのヒドロシリル化反応及びそれに続くアルコーリシス。
3. クロロプロピルトリメトキシシランと、有機酸のナトリウム又はカリウム塩との反応。
4. アミノアルキルシランとカーボネートとの反応による、カルバメートを経た当該生成物の形成。
【0007】
特許文献4は上記の第1の方法に関して開示し、またイソシアヌレート有機シランは、金属触媒の存在下で、不飽和イソシアネート(より詳細にはアリルイソシアネート)にハイドロシランを添加することによって従来調製されたことを引用している。ハイドロシランは高価であり、また不飽和イソシアネートは通常非常に有毒であるため、このプロセスは大規模なものに制限される。
【0008】
第1の方法は実際的には多くの課題が存在し、例えば遅いヒドロシリル化プロセス、内部オレフィンなどの副産物の形成、有毒な及び低発火点試薬(例えばトリメトキシ−又はトリエトキシシラン)の使用が欠点として挙げられる。
【0009】
第2の方法は、特許文献5に記載されている。当該文献は、ビス(3−トリメチルシリルプロピル)フマル酸エステルが、ジアリルマレアートのトリクロロシランとのヒドロシリル化、及び次のトリクロロシリル化合物のメトキシル化によって調製できることを教示している。残念なことに、この材料は低沸点、非常に高い反応性及び毒性を特徴とするため、トリクロロシランの取扱いは非常に危険である。また、メタノリシス工程を制御するのは困難で、大量の無駄が生じる。
【0010】
第3の方法は、特許文献6から8に記載されている。これらの方法は1,3,5−トリス(トリアルコキシシリルプロピル)イソシアヌレートの合成法である。このプロセスは、クロロプロピルメトキシシランとシアン酸カリウムとの反応を極性非プロトン溶媒(例えばN,N−ジメチルホルムアミド(DMF))中で行うことを含んでなるが、当該溶媒は有毒であり、除去するのが困難である。反応時間は約3〜8時間である。得られる材料は約70%の純度であり、顕著に着色されている。
【0011】
特許文献9及び10では第4の方法を開示しており、すなわちアミノアルキルシランをカーボネート(例えばジメチルカーボネート)と塩基性条件下で反応させることにより、カルバメートを形成させることができることを開示している。形成後、カルバメートを中和し、冗長な、高い温度、大気中より低い圧力によって分解反応を行わせ、イソシアヌレートに変化させるが、その際、分解触媒(例えばアルミニウムトリエトキシド)及び塩基性触媒(例えば酢酸ナトリウム)の使用が必要となる。
【0012】
特許文献11には、相転移触媒としてのテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物の存在下で、クロロプロピルトリメトキシシランとメタクリル酸カリウムとを接触させることによる、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランの調製方法が開示されている。反応収率は90%以下であり、得られる生成物は通常触媒の熱分解に起因する暗色を有する。
【0013】
特許文献12は、4−N,N−ジアルキルアミノピリジン触媒の存在下で、クロロプロピルトリメトキシシランとメタクリル酸カリウムを接触させることによって、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランの高収量の調製方法を開示する。4−ジアルキルアミノピリジンはこれらの方法の有効な触媒であるものの、ジアルキルアミノピリジンの使用は、これらの化合物が非常に高い毒性を有するため極めて限定されたものとなる。
【特許文献1】米国特許第5950150号
【特許文献2】米国特許第5132423号
【特許文献3】米国特許第5229482号
【特許文献4】米国特許第3517001号
【特許文献5】米国特許第4281145号
【特許文献6】米国特許第3607901号
【特許文献7】米国特許第3821218号
【特許文献8】米国特許第3598852号
【特許文献9】米国特許第5218133号
【特許文献10】米国特許第4880927号
【特許文献11】米国特許第4946977号
【特許文献12】欧州特許出願公開第483480号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上より本発明は、有機酸若しくはシアン酸、及びハロアルキルアルコキシシランから、連続工程又はバッチ工程によりオルガノアルコキシシランを調製する方法の提供を課題とする。また本発明の課題は、相転移触媒として市販のグアニジウム塩を添加することにより、危険な副産物の生成が少ない方法を提供することである。更に本発明の目的は、従来技術のイソシアヌレート及びカルボキシレートシランに加えて、硫黄及びリン含有シラン及びアミドシランの調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、有機酸若しくはシアン酸と、ハロアルキルアルコキシシランから、オルガノアルコキシシランを調製する新規な方法に関する。加えて、有機酸のアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩、又は金属シアネートと、ハロアルキルアルコキシシランとの反応に用いる相転移触媒としてのグアニジウム塩の利用に基づく改良方法に関する。グアニジウム塩は、クロロベンゼン又はジクロロベンゼンの非存在下で用いられる。当該方法は、
a)有機酸若しくはシアン酸を塩基と反応させ、有機酸のアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩、又は金属シアネートを、ウエットな若しくは乾燥した状態で形成させる工程と、
b)ウエット若しくは乾燥した状態の中和された有機酸又は金属シアネートと、触媒量のグアニジウム塩とを混合する工程と、
c)中和された有機酸又は金属シアネートとグアニジウム塩との固体混合物を調製する工程と、
d)中和された有機酸若しくは金属シアネートとグアニジウム塩との固体混合物と、液体ハロアルキルアルコキシシランとを反応させ、オルガノアルコキシシラン生成物、及び副産物としてのアルカリ金属ハロゲン化物又はアンモニウムハロゲン化物を得る工程を含んでなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
驚くべきことに発明者らは、オルガノアルコキシシラン(有機酸又はシアン酸に由来する有機官能基を含む)が、連続工程又はバッチ工程において、相転移触媒として固体グアニジウム塩を利用して、液体ハロアルキルアルコキシシランと、有機酸のアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩、又は金属シアネート(いずれも固体状)との反応を実施することにより、簡便かつ経済的に調製できることを見出した。発明者らはグアニジウム塩がハロアルキルアルコキシシラン中に可溶であり、それゆえ、固相グアニジウム塩をこの固体及び1つの液相からなるシステムにおける相転移触媒として機能させることができることを見出した。したがって、当該方法は溶媒を用いずに無水で、又は任意に溶媒を添加した形態で実施できる。当該反応は高収量及び速い反応時間を特徴とする。
【0017】
当該方法の第一工程では、有機酸又はシアン酸を塩基と反応させて中和し、溶液、スラリー、ペースト又は固体状の、有機酸のアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩、又は金属シアネートを形成することが行われる。当該塩基はアルカリ又はアルカリ土類金属、金属のアルカリ性又は塩基性塩、金属アルコレート又はアンモニアであってもよい。化学量論モル比に近い状態に反応を制御し、冷却して反応により生じる熱を除去する。
【0018】
特に好ましい実施形態は、アルカリ若しくはアルカリ土類金属、又はアンモニアの、アルカリ性若しくは塩基性塩の水溶液、並びにグアニジウム塩の使用を特徴とする。本実施形態では、反応生成物の形態はアルカリ又はアンモニウム塩基の含水量に依存する。低含水量塩基を用いる場合、生成物はペースト状となる。より希釈された塩基の場合、反応により溶液が形成される。固体状の塩基を液体有機酸と共に用いる場合、生成物は固体状となる。
【0019】
利用できる適切な有機酸としては、カルボン酸、ジカルボン酸、ホスフィン酸及びホスホン酸、スルフィン酸、スルホン酸及びスルファミン酸、ヒドロキシアミド酸など、並びにその混合物が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、利用できるカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、ブテン酸、ブテンジオン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。通常、有機酸はアルキル型及び芳香族型のいずれの形態であっても使用できる。
【0020】
本発明に用いられる適切な塩基は、アルカリ又はアルカリ土属金属、当該金属のアルカリ又は塩基性塩、金属アルコレート、又はアンモニアであってもよく、金属カチオンは周期表1A族のアルカリ金属、及び2A族のアルカリ土類金属に由来する。好適なアルカリ若しくはアルカリ土属金属由来の塩基としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、バリウム、ルビジウム、マグネシウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の好ましい塩基は、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム及びそれらの混合物である。最も好ましくは、本発明の塩基はアルカリ金属ナトリウム及びカリウムに由来する。
【0021】
本発明の他の実施形態では、当該塩基は金属アルコレート(例えば金属メチレート又は金属エチレート)であってもよい。適切な金属アルコレートの非限定的例としては、ナトリウムメチレート、ナトリウムエチレート、カリウムメチレート、カリウムエチレート、マグネシウムメチレート、マグネシウムエチレート、カルシウムメチレート、カルシウムエチレート及びそれらの混合物が挙げられる。最も好ましくは、本発明の金属アルコレートは、ナトリウムメチレート、ナトリウムエチレート、カリウムメチレート及びカリウムエチレートである。
【0022】
好ましい実施態様に係る方法の次の工程では、グアニジウム相転移触媒の水溶液を、生成物を得るための反応工程に必要とされる触媒濃度で、第一段階から得た溶液、スラリー又はペーストと混合することが行われる。本願明細書に使用できるグアニジウム塩は、以下の式で表される。
【化1】

式中、R1−2及びR4−6は炭素数1〜12、好ましくは炭素数2〜6のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基からなる群から独立に選択され、
は炭素数1〜12、好ましくは炭素数2〜6のアルキル基又はアルキレン基であるか、又は、各R1−2、R3−4及びR5−6の対がそれらに結合するNと共にピペリジノ基又はピロリジノ基又はモルホリノ基を形成し、
はハロゲン、フッ化ホウ素(BF)、アルキルスルホネート、硫酸、スルフェート又はカーボネートであり、
nは1又は2である。
好ましくは、当該グアニジウム塩はヘキサアルキルグアニジウム部分を有する相転移触媒であり、詳細には、当該アルキルがヘキサエチルグアニジウム、ヘキサブチルグアニジウム及びテトラエチルジブチルグアニジウムなどの最高40の炭素原子数を有する脂肪族炭化水素基、並びにその混合物である。特に本発明のグアニジウム塩触媒は、約12〜30の炭素原子数を有する、上記の式で表されるいかなるグアニジウム塩であってもよい。ハロゲン化ヘキサエチルグアニジウムなどのグアニジウム触媒は、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンなどの他の触媒よりも毒性が顕著に少なく、更により良好な熱安定性を有する。
【0023】
中和された有機酸若しくは金属シアネート、及びグアニジウム相転移触媒の混合物を乾燥させて固体にすることが、好ましい実施態様に係る次の反応処理前において必要な操作として挙げられる。すなわち、水が生成反応中にシロキサンを生成し、アルコールが相転移触媒を不活性化するため、粉末又は固体中に水又はアルコールが残存することにより生成物の全体的な収率にきわめて重大な影響が及ぶ。乾燥固体は、吸湿性のグアニジウム塩が水分を吸収しないように乾燥空気下で維持する必要がある。
【0024】
本発明の別の実施形態では、第一工程の中和反応において使用する塩基が金属アルコレートである場合に、有機酸のアルカリ金属塩若しくは金属シアネート、及びハロゲン化グアニジウム相転移触媒からのアルコール及び水の乾燥若しくは除去は、生成物反応処理のためのハロアルキルアルコキシシランとの混合前若しくは後(in−situ)で実施してもよい。好ましい実施態様は、生成物の反応処理前に混合物を乾燥させることである。
【0025】
生成物の反応処理は、有機酸の固体状のアルカリ若しくはアルカリ土類金属又はアンモニウム塩、又は金属シアネート及びグアニジウム相転移触媒と、液体ハロアルキルアルコキシシランとを反応させ、所望のオルガノアルコキシシランを形成することを特徴とする。反応物質は通常、化学量論的比率で用いられる。反応物質のうちの1つを完全に消費することが望ましい場合、いずれの反応物質を小過剰で使用してもよい。更にハロアルキルアルコキシシランを、生成物から副産物の塩を洗浄除去するための溶媒として利用する場合、反応液中に過剰のハロアルキルアルコキシシランを添加し、形成された副産物の塩を希釈して、混合を改善するのが好適である。従来公知の溶媒(例えばキシレン、トルエン、ヘキサン、ヘプタンなど)をその目的で利用してもよい。しかしながら、アルコール類はグアニジウム相転移触媒を不活性化するため、利用すべきでない。通常、溶媒は反応速度を減速させるため、溶媒を使用しないのが好適である。
【0026】
本発明の実施の際に使用できるハロアルキルアルコキシシランは、以下の一般の式で表される。
XRSi(OR3−z
式中、Rは1〜20の炭素原子数のアルキル基、アルキレン基又はアルキレンオキシアルキレン基であり、
は1〜4の炭素原子数のアルキル基、又は2〜4の炭素原子数のアルコキシアルキル基であり、
は一価の炭化水素基であり、
Xはハロゲン原子であり、
zは1、2又は3の整数である。
【0027】
本発明の好ましいハロアルキルアルコキシシランは、クロロアルキルアルコキシシランである。本発明の適切なクロロアルキルアルコキシシランとしては、クロロプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、クロロプロピルメチルジメトキシシラン、クロロプロピルメチルジエトキシシラン、クロロプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、クロロブチルトリメトキシシラン、クロロブチルメチルジメトキシシラン、クロロメチルジメチルメトキシシラン、ブロモプロピルトリメトキシシランなど、並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の最も好ましいクロロアルキルアルコキシシランは、クロロプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、クロロプロピルメチルジメトキシシラン及びクロロプロピルメチルジエトキシシランである。
【0028】
グアニジウム相転移触媒は、有機酸のアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩、又は金属シアネート成分のモル等量当たり、0.001mol〜0.1molの量、好ましくは0.003mol〜0.03molの量で用いる。反応温度は約80℃〜約200℃、好ましくは約100℃〜約140℃の範囲である。グアニジウム相転移触媒の利点としては、反応器における全温度範囲にわたるその温度安定性が挙げられる。他の相転移触媒にとり典型的である反応器温度より高い温度で反応させることにより、反応速度の速度が上昇し、反応時間が減少する。反応時間は通常15分〜3時間の間である。
【0029】
アルカリ若しくはアルカリ土類金属塩が重合可能な有機酸(例えばアクリレート又はメタクリレート官能基を有するカルボン酸)から生じる場合、生成反応組成物中に従来公知の重合阻害剤を含有させてもよく、それは本発明の目的に適する方法である。本発明の阻害剤の例としてはヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、フェノチアジン、N,N−ジアルキルアミノメチレンフェノール、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェニル2−ナフチルアミン、2,2,6,6−テトラメチル(1−ピペリジニルオキシ)基若しくは硫黄含有化合物、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。通常、これらの阻害剤は、それらの活性を維持するために少量の酸素と組み合わせて用いられる。
【0030】
粗オルガノアルコキシシラン生成物からの副産物ハライド塩の分離は2つの方法で実施でき、それらの第1は従来の機械的方法であり、第2は水抽出である。従来の方法としては濾過又は遠心分離などが挙げられる。従来の分離方法を用いる場合、濾過後又は遠心分離後のケーキ状物を洗浄してオルガノアルコキシシラン生成物を抽出する必要がある。ハロアルキルアルコキシシラン反応物質はこの目的において有用であり、あるいは適合性溶媒を利用してもよい。
【0031】
粗オルガノアルコキシシラン生成物からの副産物塩の除去のための別の方法は、水抽出である。水抽出を実施する前に、混合可能な溶媒(例えばキシレン)を添加して粗生成物を保護する必要がある。水抽出は公知のバッチ工程若しくは連続工程により実施してもよい。好ましくは、水抽出はわずかに塩基性を有する水溶液を用いて実施し、それにより粗生成物中のいかなる酸性ハロゲン化物又は過剰なカルボン酸が中和される。水相は大部分のグアニジウム塩を含有するため、処理前に有機相の除去又は分解処置を実施する必要がある。
【0032】
粗生成物の精製は通常、その高い沸点のため、減圧蒸留によって実施される。粗生成物の純度でも、多くの用途には良好であるが、過剰なハロアルキルアルコキシシラン又はハライド塩ケーキの洗浄工程からの溶媒は、生成物から除去する必要がある。蒸留工程に重合可能な有機基が含まれる場合、重合阻害剤が必要となる。
【0033】
処理又は再利用のために副産物ハライド塩を調製する方法もまた、本発明に包含される。経済的及び環境的理由から、濾過又は遠心分離から生じたハライド塩ケーキ中のハロアルキルアルコキシシラン又は溶媒を蒸発させ、再利用のために回収するべきである。蒸発の後、ハライド塩に存在するいかなる微量残留ハロアルキルアルコキシシラン又はオルガノアルコキシシラン生成物を加水分解することも好適である。
【実施例】
【0034】
本発明を以下の実施例によって更に詳細に説明する。しかしながら、本発明が単に以下の特定の実施例のみに限定されるものではないことを理解すべきである。実施例においては、各部分及びパーセンテージは、特に明記しない限り重量により表される。<比較実施例1、2及び4、実施例3及び5から9>
【0035】
<比較実施例1>
この実施例は、重合阻害剤を用いずに実施した。還流凝縮器、熱電対及びマグネチックスターラーを装着した100mlの4首丸底フラスコに、メタクリル酸ナトリウム4.98g(46mmoles)、クロロプロピルトリメトキシシラン32.3g(163mmoles)及び塩化ヘキサエチルグアニジウム0.10g(0.38mmole)を充填した。混合物を100℃まで加熱し、3時間その温度に維持した。時間経過後、反応混合物を室温に冷却し、ガスクロマトグラフィにより分析した。その結果、粗反応混合物が29.2%のメタクリルオキシトリメトキシシランを含有していた。これは、含有される生成物の理論的な量に基づき88%の収率であること意味する。
【0036】
<比較実施例2>
この実施例は、重合阻害剤を用いて実施した。還流凝縮器、熱電対及びマグネチックスターラーを装着した250mlの4首丸底フラスコに、31.34g(290mmole)のナトリウムメタクリレート溶液、83.22g(419mmoles)のクロロプロピルトリメトキシシラン、0.04gの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT、0.18mmole)、0.12gのEthanox 702(登録商標)及び6.0gのo−ジクロロベンゼン中の20%塩化ヘキサエチルグアニジウム(1.2gの塩化ヘキサエチルグアニジウム(4.5mmole))を充填した。この混合物を100℃で4時間加熱した。加熱終了後、黒紫色の溶液をガスクロマトグラフィ分析した結果、68.0%のメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(98%の理論)を含有していた。
【0037】
<実施例3>
A.ナトリウムメタクリレート溶液の調製
還流凝縮器、熱電対及びマグネチックスターラーを装着した5Lの4首丸底フラスコに、脱イオン水を1500.11g添加した。水酸化ナトリウムのペレットを合計511.63g(12.79mol)で徐々に添加した。ポット温度が50℃を越えないように添加速度を調節した。溶液を室温に冷却した後、1115.40g(12.82mol)のメタクリル酸を2.5時間かけて添加した。メタクリル酸の添加を通じで、反応混合物の温度を50℃以下に維持した。この調製の結果、ナトリウムメタクリレートを44.1重量%で含有する、清澄な、無色の溶液が得られた。
【0038】
B.塩化ヘキサエチルグアニジウムの添加、及び共乾燥
上記で調製した426.17gのナトリウムメタクリレート溶液を、32ozの広口ジャーに添加した。これに、9.77gの34.5%塩化ヘキサエチルグアニジウム水溶液(3.37gの塩化ヘキサエチルグアニジウム)を添加した。ジャーの口をアルミホイルで覆い、更に真空オーブン中に設置した。オーブンを一晩、70℃の温度及び125mmHgの圧力に維持した。時間経過後、窒素パージし、乾燥させた。重量が一定になるまで材料を90℃及び125mmHgに維持した。乾燥粉末を計量した結果、塩化ヘキサエチルグアニジウムを1.76重量%で含有していた。
【0039】
C.ナトリウムメタクリレート及び塩化ヘキサエチルグアニジウムの共乾燥物の使用
還流凝縮器、熱電対及びマグネチックスターラーを装着した500mlの4首丸底フラスコに、上記において調製したナトリウムメタクリレート/ヘキサエチルグアニジウム塩化物を45.29g添加した。この混合物中には、塩化ヘキサエチルグアニジウムが0.797g(3.02mmoles)、及びナトリウムメタクリレートが44.49g(412mmole)含まれていた。また、反応容器中にクロロプロピルトリメトキシシランを122.89g(618mmole)、及びEthanox 702(登録商標)を0.16g(0.37mmole)添加した。この混合物を100℃で加熱し、5.5時間その温度に維持した。粗反応混合物をサンプリングし、ガスクロマトグラフィで測定した結果、69.9重量%(理論値98%)のメタクリルオキシプロピルトリメトキシシランが含まれていた。
【0040】
<比較実施例4>
この実施例では、粗生成物から副産物の塩化ナトリウムを除去するために希釈剤溶媒及び水による洗浄(抽出)を使用することを特徴とする、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランの代替的な調製方法を例示する。還流凝縮器、熱電対及びマグネチックスターラーを装着する1000mlの4首丸底フラスコに、153.21g(1.42mol)のナトリウムメタクリレート、0.59g(1.4mmoles)のEthanox 702(登録商標)、253.24g(1.27mol)のクロロプロピルトリメトキシシラン及び112.33gのキシレンを添加した。混合物を100℃に加熱した。この温度で、クロロベンゼン中の14.5%の塩化ヘキサエチルグアニジウム溶液38.66gを添加した。反応混合物を5時間、100℃に維持した。次に得られる黒紫色の溶液を50℃に冷却し、257.5gの脱イオン水を反応容器に添加し、塩が溶解するまで撹拌した。フラスコ内容物を1Lの分離漏斗に注入し、水層を除去した。有機層をガスクロマトグラフィ分析した結果、63.7重量%のメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(94%の理論値)を含有していた。
【0041】
<実施例5>
この実施例では、中和用塩基としてのナトリウムメトキシドの使用を例示する。還流凝縮器、滴下漏斗、熱電対及びマグネチックスターラーを装着した500mlの4首丸底フラスコに、38.67g(0.45mol)のメタクリル酸及び52.12gのメタノールを添加した。滴下漏斗に、メタノール中の25%ナトリウムメトキシド溶液95.89g(ナトリウムメトキシドを23.97g、0.44mol(理論値98.6%))を添加した。1.3時間にわたりメタクリル酸を激しく撹拌しながら、ナトリウムメトキシド溶液を徐々に添加した。添加終了時に近づくと、固体がかなりの量で形成され、撹拌が困難になった。全てのナトリウムメトキシド溶液の添加終了後、滴下漏斗を17.53gのメタノールによってリンスした。得られる厚いスラリーに、塩化ヘキサエチルグアニジウム溶液の34%水溶液3.21g(塩化ヘキサエチルグアニジウムを1.09g、4.1mmoles含有)を添加した。この材料を、反応フラスコ中で7.58gのメタノールでリンスした。真空下で反応スラリーを穏やかに加熱し、メタノールを除去した。残留するペーストを、90℃で一晩、125mmHgで真空オーブン加熱し、更に乾燥させた。
【0042】
得られる乾燥固体を、還流凝縮器、熱電対及びマグネチックスターラーを装着した反応フラスコとスパチュラを用いて粉砕した。当該固体に、0.192g(0.45mmoles)の4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、0.081g(0.36mmoles)のブチルヒドロキシトルエン(BHT)及び131.58g(0.66mol)のクロロプロピルトリメトキシシランを添加した。次に混合物を110℃で3時間加熱した。この間に、反応混合物の色が紫から黄色に変化した。ガスクロマトグラフィによる最終生成物の分析を行い、粗反応混合物中に、所望のγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランが72.3%を含まれることを確認した。
【0043】
<実施例6>
この実施例では、本発明の工程がアセトキシアルコキシシランの調製に適用できることを例示する。4オンスのガラスジャーに、20.23g(0.247mol)の酢酸ナトリウム、25.01gの脱イオン水及び2.88gの塩化ヘキサエチルグアニジウムの34.5%水溶液(塩化ヘキサエチルグアニジウムを0.99g又は3.8mmole)を添加した。混合物をゆるく被覆し、110〜120℃で72時間、125mmHgで真空オーブン中に置き、水を除去した。還流凝縮器、熱電対及びマグネチックスターラーを装着した250mlの4首丸底フラスコに、上記で調製した20.37gの乾燥酢酸ナトリウム/塩化ヘキサエチルグアニジウム(19.42g又は0.237molの酢酸ナトリウム塩、及び0.95g又は3.6mmoleの塩化ヘキサエチルグアニジウム)、及び80.78g(0.41mol)の3−クロロプロピルトリメトキシシランを添加した。混合物を110℃まで加熱し、7時間この温度に維持した。時間経過後、反応液を室温に冷却した。ガスクロマトグラフィによる粗反応混合物の分析の結果、58.4%の3−アセトキシプロピルトリメトキシシラン(理論的値96%)が含まれることを見出した。生成物のアイデンティティをGC/MSで確認した。
【0044】
<実施例7>
この実施例では、本発明の方法がアミドに適用できることを例示する。蒸留ヘッド、マグネチックスターラー及び熱電対を装着した500mlの4首丸底フラスコに、20.33g(0.34mol)のアセトアミド及び111.5gのトルエンを添加した。ポットから徐々に25.7gの材料を蒸留することによって、水を共沸除去した。残留する材料を56℃に冷却し、合計7.09g(0.31mol)の金属ナトリウムを1時間にわたり3段階で増加させながら添加した。全てのナトリウムの添加終了後、反応マスを100℃に加熱し、3時間その温度に維持した。次に混合物を常温に冷却し、クロロベンゼン中の14%塩化ヘキサエチルグアニジウム溶液8.45g(塩化ヘキサエチルグアニジウムの1.18g又は4.5mmole)を添加した。次にトルエン及びクロロベンゼンを常温で真空除去した。
【0045】
上記で得られた茶色の乾燥残余物に、3−クロロプロピルトリメトキシシランを91.49g(0.46mol)添加した。ポットの内容物を100℃で加熱した。加熱の間、反応液は125℃に発熱し、アイスバスで急速に冷却することが必要であった。反応マスを100℃で8時間維持した。時間経過後、ポット内容物を常温に冷却した。粗反応塊をガスクロマトグラフィ分析した結果、24.8%のN−(プロピル−トリメトキシシリル)アセトアミド(38%の理論値)が含まれていた。生成物のアイデンティティをGC/MSで解析した。
【0046】
<実施例8>
この実施例では、本発明の方法が、含硫形態のオルガノアルコキシシランに適用できることを例示する。4オンスのガラスジャーに、10.13g(99.3mmole)のメチルスルフィン酸ナトリウム、8.85gの脱イオン水及び1.59gの塩化ヘキサエチルグアニジウム34.5%水溶液(塩化ヘキサエチルグアニジウムが0.55g又は2.1mmole)を添加した。ジャーをゆるく被覆し、110〜120℃で一晩、125mmHgで真空オーブン中に置き、水を除去した。還流凝縮器、熱電対及びマグネチックスターラー装着した500mlの4首丸底フラスコに、10.71gのメチルスルフィン酸ナトリウムと上記の塩化ヘキサエチルグアニジウムとの乾燥混合物、並びに34.12g(172mmole)の3−クロロプロピルトリメトキシシランを添加した。混合物を110℃に加熱し、5時間この温度に維持した。時間経過後、反応塊を室温に冷却した。粗反応混合物を分析した結果、16.3%の(プロピルトリメトキシシリル)スルフィン酸エステル、及び34.6%の(プロピルトリメトキシシリル)メチルスルホン(連結で81.2%の理論含有量)が含まれていた。生成物のアイデンティティをGC/MSで解析した。
【0047】
<実施例9>
この実施例では、本発明の方法が、ホスフェート形態のオルガノアルコキシシランの調製に適用できることを例示する。還流凝縮器、熱電対及びマグネチックスターラーを装着した250mlの3首丸底フラスコに、キシレン47.49g、リン酸ジフェニル20.52g(82.0mmole)及び金属ナトリウム1.78g(77.4mmole)を添加した。反応液を非常に緩慢に加温した。反応塊が約30℃となったとき、撹拌が困難となった。この時点で更に36.36gのキシレンを添加し、反応塊を希釈させた。約70℃でリン酸ジフェニルが溶解し、キシレン中で混合できるようになった。90〜100℃でナトリウムが溶解し、反応液が発熱し128℃となった。反応塊を冷却し、110℃で30分間維持し、更に室温に冷却した。得られる白色固体を5μフィルタパッドで濾過し、合計32.75gのキシレンで二度洗浄し、ブローして乾燥させた。合計20.30gの乾燥固体を回収した(理論的値96%)。50mlの丸底フラスコに、上記で調したジフェニルリン酸ナトリウムを6.35g(23.3mmole)添加した。これに、1.05gの34.5%塩化ヘキサエチルグアニジウム水溶液(塩化ヘキサエチルグアニジウムを0.362g又は1.4mmole含む)を添加した。水を真空除去した。還流凝縮器、熱電対及びマグネチックスターラーを装着した250mlの4首丸底フラスコに、上記のジフェニルリン酸ナトリウムと塩化ヘキサエチルグアニジウムとの乾燥混合物6.64g(6.28g又は23.1mmoleのジフェニルリン酸ナトリウム、及び0.36g又は1.4mmoleの塩化ヘキサエチルグアニジウムを含む)、3−クロロプロピルトリメトキシシラン38.36g(194mmole)を添加した。ポットの内容物を120℃に加熱し、6時間この温度で維持した。時間経過後、反応液を室温に冷却した。粗反応生成物のガスクロマトグラフィ分析の結果、ジフェニルリン酸のプロピルトリメトキシシリルエステルが20.6%(93.9%の理論値)含まれていた。生成物の構造をGC/MSにより解析した。
【0048】
本発明の他の実施形態は、本願明細書に開示される記載内容の考慮又は本発明の実施により、当業者にとり自明となる。明細書及び実施例は典型例を示すのみであり、本発明の本当の意味での範囲及び技術思想は、添付の特許請求の範囲に示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルガノアルコキシシランの調製方法であって、
a)有機酸若しくはシアン酸を塩基と反応させ、有機酸のアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩、又は金属シアネートを、ウエットな若しくは乾燥した状態で形成させる工程と、
b)ウエット若しくは乾燥した状態の中和された有機酸又は金属シアネートと、触媒量のグアニジウム塩とを混合する工程と、
c)中和された有機酸又は金属シアネートとグアニジウム塩との固体混合物を調製する工程と、
d)中和された有機酸若しくは金属シアネートとグアニジウム塩との固体混合物と、液体ハロアルキルアルコキシシランとを反応させ、オルガノアルコキシシラン生成物、及び副産物としてのアルカリ金属ハロゲン化物又はアンモニウムハロゲン化物を得る工程を含んでなる方法。
【請求項2】
前記ハロアルキルアルコキシシランが以下の一般式で表される、請求項1記載の方法。XRSi(OR3−z
(式中、Rは1〜20の炭素原子数のアルキル基、アルキレン基又はアルキレンオキシアルキレン基であり、
は1〜4の炭素原子数のアルキル基、又は2〜4の炭素原子数のアルコキシアルキル基であり、
は一価の炭化水素基であり、
Xはハロゲン原子であり、
zは1、2又は3の整数である)。
【請求項3】
前記有機酸がカルボン酸、ジカルボン酸、ホスフィン酸及びホスホン酸、スルフィン酸、スルホン酸、スルファミン酸及びヒドロキシアミド酸から選択される、請求項1の方法
【請求項4】
前記グアニジウム塩がヘキサアルキルグアニジウム塩である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記ヘキサアルキルグアニジウム塩のアルキル基が炭素原子数C−C20の脂肪族炭化水素である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記塩基がアルカリ又はアルカリ土属金属、当該金属のアルカリ又は塩基性塩、金属アルコレート、又はアンモニアであり、金属カチオンが周期表1A族のアルカリ金属、及び2A族のアルカリ土類金属に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記塩基が水溶液であり、中和反応工程(a)が水性条件下で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記グアニジウム塩が水溶液である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記金属アルコレートが金属メチレート又は金属エチレートである、請求項6記載の方法。
【請求項10】
中和された有機酸若しくは金属シアネート、及びグアニジウム触媒溶液が、アルコール除去及び乾燥の前に、ハロアルキルアルコキシシランと混合される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記カルボン酸がアクリル酸及びメタクリル酸から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記ハルアルキルアルコキシシランがクロロアルキルアルコキシシランである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記クロロアルキルアルコキシシランが、クロロプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、クロロプロピルメチルジメトキシシラン及びクロロプロピルメチルジエトキシシランからなる群から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
有機酸若しくはシアン酸:前記塩基のモル比が、前記塩基の反応部位当たり約1.2:1〜1:1.2である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
(有機酸のアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩、又は金属シアネート):ハロアルキルアルコキシシランのモル比が、有機酸のアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩、又は金属シアネート上の反応部位当たり約1.2:1〜1:2である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記グアニジウム塩が、有機酸のアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩、又は金属シアネートのモル当量当たり約0.001mol〜約0.1molの量で用いられる、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記グアニジウム塩が、有機酸のアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩、又は金属シアネートのモル当量当たり約0.003mol〜約0.3molの量で用いられる、請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記有機酸のアルカリ金属塩若しくは金属シアネートが、ナトリウム若しくはカリウムの塩若しくはシアネートである、請求項1記載の方法。
【請求項19】
中和反応工程(a)が、冷却して反応熱を除去しながら約−50℃〜約215℃の温度で行われ、有機酸又は金属シアネートのアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩が、溶液、ペースト又は固体の状態で形成される、請求項1記載の方法。
【請求項20】
工程(d)が、充分な滞留時間で、同時に冷却して反応熱を除去しながら約80℃〜約200℃の温度で行われ、粗オルガノアルコキシシラン生成物及び副産物の金属若しくはアンモニウムハライド塩が形成される、請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記反応が溶媒を添加せずに行われる、請求項1記載の方法。
【請求項22】
更に過剰量のハロアルキルアルコキシシランが、形成された副産物ハライド塩の希釈剤として、及び分離された副産物ハライド塩の洗浄溶媒として利用される、請求項1記載の方法。
【請求項23】
炭化水素溶媒が、形成された副産物ハライド塩の希釈剤として、及び/又は分離された副産物ハライド塩の洗浄溶媒として利用される、請求項1記載の方法。
【請求項24】
前記炭化水素溶媒が、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、脂肪族混合物及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記炭化水素溶媒が、副産物ハライド塩の水抽出又は分離の間に、オルガノアルコキシシラン生成物を保護するために利用される、請求項1記載の方法。
【請求項26】
前記炭化水素溶媒が、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン又は脂肪族化合物の混合物からなる群から選択される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
重合が1つ以上の重合阻害剤の添加により阻害される、請求項1記載の方法。
【請求項28】
前記重合阻害剤が、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)フェノチアジン、N,N−ジアルキルアミノメチレンフェノール、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、2,2,6,6テトラメチル(1−ピペリジニルオキシ)ラジカル若しくは硫黄含有化合物、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記阻害剤の活性が酸素の共添加により維持される、請求項28記載の方法。

【公表番号】特表2009−503068(P2009−503068A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524993(P2008−524993)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/028145
【国際公開番号】WO2007/018997
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(506390498)モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク (85)
【Fターム(参考)】