説明

有機金属化合物及びその使用方法

本発明は、式(Cp(R’)M(H)z−yによって表される有機金属前駆体化合物、この有機金属前駆体化合物を製造する方法及びこの有機金属前駆体化合物の熱又はプラズマ強化解離によって、例えばCVD又はALD技法によって、基板上に金属及び/又は金属炭化物層、例えばTa金属及び/又はTaC層を堆積させるための方法に関する。この金属及び/又は金属炭化物層は、集積回路の製造において導電性金属及び高誘電率材料のライナ又は障壁層として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属化合物、有機金属化合物を製造するための方法及び有機金属前駆体化合物からフィルム又は被覆を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業では、現在、種々の用途にさまざまな金属の薄膜を使用することが考えられている。多くの有機金属錯体は、これらの薄膜を形成するための可能性のある前駆体として評価されている。新たな化合物を開発すること及びフィルム堆積の前駆体としてのその可能性を探ることに対する必要性が産業界にある。薄膜のより高い均一性及び共形性を求める要求の高まりによる、物理蒸着(PVD)法から化学蒸着(CVD)法及び原子層堆積(ALD)法への産業界の動きは、将来の半導体材料のための適切な前駆体の需要を引き起こす。
【0003】
産業界において、銅などの導電性金属は、集積回路の製造中基板上にサブミクロンのフィーチャーを満たすために使用されている。しかし、銅は隣接する誘電体層の構造物中へ拡散することができ、それにより、形成されたデバイスの完全性を損なう。拡散及び層剥離などの層間欠陥は、導電性金属を堆積させる前に、下に横たわる材料の上に障壁層、ライナ層又は両方の組合せを堆積させることによって防止することができる。障壁層は下に横たわる材料の上に堆積され、しばしば層間拡散を妨げ、下に横たわる材料と引き続き堆積された材料の間の化学反応を最小にする、金属の窒化物である。ライナ層は、導電性金属層に接着する金属を従来から含む。
【0004】
タンタル、ニオブ、タングステンなどの金属及び各金属窒化物が、銅を使用する分野でライナ及び障壁材料用に考えられている。例えば、米国特許6491978B1及び6379748B1を参照されたい。用途に応じて、ライナ接着層及び/又は拡散障壁層は、タンタル、ニオブ又はタングステンなどの金属、窒化タンタル、窒化ニオブ層又は窒化タングステンなどの金属窒化物層、金属及び金属窒化物スタック(stack)、又は拡散障壁材料の別の組合せを含むことができる。金属及び金属窒化物層は、PVD技法により伝統的に堆積されてきた。しかし、伝統的なPVD技法は、高アスペクト比のバイア及び他のフィーチャーの側壁及び底部表面上に共形被覆を提供するのには適していない。従って、アスペクト比が高くなり、デバイスフィーチャーが小さくなるにつれ、新たな前駆体及び堆積技法が、これらのデバイスフィーチャーにおいて共形被覆を提供するために研究されつつある。
【0005】
上述のように、金属及び金属窒化物層のPVD技法に代わる1つの代替案は、CVD技法によりこの層を堆積させ、基板フィーチャーの良好な共形被覆を提供することである。有機金属前駆体の解離により、高アスペクト比フィーチャーにおいて共形金属及び金属窒化物層を堆積させる能力は、CVD技法の発展によって近年関心を引いてきた。このような技法において、金属成分及び有機成分を含む有機金属前駆体は、処理チャンバに導入されて解離し、前駆体の有機部分をチャンバから排気させながら、基板上に金属成分を堆積させる。
【0006】
CVD技法により金属層を堆積するための、タンタル、ニオブ、及びタングステン前駆体などの、商業的に入手可能な有機金属前駆体は殆どない。入手可能な前駆体は、炭素及び酸素などの容認できない水準の汚染物質を有する可能性があり、所望水準に達しない拡散抵抗、低い熱安定性及び望ましくない層特性を有する層をもたらす。さらにある場合は、金属窒化物層を堆積するのに使用される入手可能な前駆体は、高抵抗を有する層をもたらし、ある場合は絶縁性の層をもたらす。
【0007】
PVD法に代わる別の代替案はALD法である。ALD技術は、薄膜を堆積する場合PVD技術より優れていると考えられている。しかし、ALDの課題は、適切な前駆体の入手しやすさである。ALD堆積法は、一連のステップを含む。このステップは、1)基板表面上への前駆体の吸着;2)気相の過剰な前駆体分子をパージすること;3)反応物質を導入して基板表面上の前駆体と反応させること;及び4)過剰な反応物質をパージすることを含む。
【0008】
ALD法の場合、前駆体は厳格な必要条件を満たさなければならない。第1に、ALD前駆体は、堆積条件下で物理吸着又は化学吸着のいずれかにより基板表面上に単一層を形成することができなければならない。第2に、吸着された前駆体は、表面上で早期に分解して高い不純物水準をもたらすことを防止するのに十分な、安定性がなければならない。第3に、吸着された分子は、反応物質と相互作用するのに十分な反応性を有し、比較的低い温度で所望の材料の純粋な相を表面に残さなければならない。
【0009】
CVDと同様に、ALD技法により金属層を堆積するための、タンタル、ニオブ、及びタングステン前駆体などの、商業的に入手可能な有機金属前駆体は殆どない。入手可能なALD前駆体は、以下の短所:1)低い蒸気圧、2)堆積された材料の不適切な相、及び3)フィルムへの高水準の炭素の取込み、を1つ又は複数有する可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、新たな化合物を開発すること、並びにフィルム堆積用のCVD及びALD前駆体としての、これらの化合物の可能性を探ることに対する要求は存続している。又、CVD及びALD技法を使用して、有機金属前駆体から金属又は金属誘導体材料のライナ及び/又は障壁層を形成するための方法に対する要求も存続している。理想的には、堆積されたライナ及び/又は障壁層は、汚染物質を実質的に含まず、PVD法によって製造されたものより、低減された層抵抗率、改善された層間接着、改善された拡散抵抗及び改善された熱安定性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、式(Cp(R’)M(H)z−yを有する化合物に関し、式中、Mは、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)又はクロム(Cr)から選択される金属であり、各R’は、同一であるか又は異なり、ハロゲン原子、1から約12個の炭素原子を有するアシル基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシ基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、1から約12個の炭素原子を有するアルキル基、1から約12個の炭素原子を有するアミン基又は0から約12個の炭素原子を有するシリル基を表し、Cpは、置換若しくは非置換シクロペンタジエニル基又は置換若しくは非置換シクロペンタジエニル様の基であり、xは0から5の整数であり、yは1から5の整数であり、zはMの原子価である。
【0012】
本発明は、式(Cp(R’)M(H)z−yを有する有機金属前駆体に関し、式中、Mは、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)又はクロム(Cr)から選択される金属であり、各R’は、同一であるか又は異なり、ハロゲン原子、1から約12個の炭素原子を有するアシル基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシ基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、1から約12個の炭素原子を有するアルキル基、1から約12個の炭素原子を有するアミン基又は0から約12個の炭素原子を有するシリル基を表し、Cpは、置換若しくは非置換シクロペンタジエニル基又は置換若しくは非置換シクロペンタジエニル様の基であり、xは0から5の整数であり、yは1から5の整数であり、zはMの原子価である。
【0013】
本発明は、式(Cp(R’)M(H)z−yを有する化合物を製造するための方法に関し、式中、Mは、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)又はクロム(Cr)から選択される金属であり、各R’は、同一であるか又は異なり、ハロゲン原子、1から約12個の炭素原子を有するアシル基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシ基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、1から約12個の炭素原子を有するアルキル基、1から約12個の炭素原子を有するアミン基又は0から約12個の炭素原子を有するシリル基を表し、Cpは、置換若しくは非置換シクロペンタジエニル基又は置換若しくは非置換シクロペンタジエニル様の基であり、xは0から5の整数であり、yは1から5の整数であり、zはMの原子価であり、この方法は、金属ハロゲン化物、シクロペンタジエニル塩及び還元剤を、第1溶媒の存在下で及び中間反応物質を生成するのに十分な反応条件下で反応させること、並びに前記中間反応物質を塩基物質と、第2溶媒の存在下で及び前記化合物を生成するのに十分な反応条件下で反応させることを含む。
【0014】
本発明は、フィルム、被覆又は粉末を、有機金属前駆体を分解することにより製造するための方法に関し、前記有機金属前駆体は、式(Cp(R’)M(H)z−yを有し、式中、Mは、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)又はクロム(Cr)から選択される金属であり、各R’は、同一であるか又は異なり、ハロゲン原子、1から約12個の炭素原子を有するアシル基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシ基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、1から約12個の炭素原子を有するアルキル基、1から約12個の炭素原子を有するアミン基又は0から約12個の炭素原子を有するシリル基を表し、Cpは、置換若しくは非置換シクロペンタジエニル基又は置換若しくは非置換シクロペンタジエニル様の基であり、xは0から5の整数であり、yは1から5の整数であり、zはMの原子価であり、それにより前記フィルム、被覆又は粉末を製造する。
【0015】
本発明は、処理チャンバにおいて基板を処理するための方法に関し、前記方法は、(i)有機金属前駆体を前記処理チャンバに導入すること(ただし前記有機金属前駆体は、式(Cp(R’)M(H)z−yを有し、式中、Mは、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)又はクロム(Cr)から選択される金属であり、各R’は、同一であるか又は異なり、ハロゲン原子、1から約12個の炭素原子を有するアシル基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシ基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、1から約12個の炭素原子を有するアルキル基、1から約12個の炭素原子を有するアミン基又は0から約12個の炭素原子を有するシリル基を表し、Cpは、置換若しくは非置換シクロペンタジエニル基又は置換若しくは非置換シクロペンタジエニル様の基であり、xは0から5の整数であり、yは1から5の整数であり、zはMの原子価である)、(ii)前記基板を、約100℃から約400℃の間の温度に加熱すること、及び(iii)前記有機金属前駆体を処理ガスの存在下で解離させ、前記基板上に金属層を堆積させることを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
前述の通り、本発明は、CVD及びALDなどの技法によって、金属をベースとする材料、例えば、Ta金属及びTaC、W金属及びWC並びにNb金属及びNbCなどの金属及び金属炭化物を基板上に形成することができる、有機金属前駆体化合物に関する。この基板は、好ましくは、半導体デバイス構造体の銅メタライゼーションなどの用途向けのマイクロエレクトロニクスデバイス構造体であり得る。
【0017】
金属をベースとする材料の層、例えば、Ta金属及びTaC障壁層を形成するのに有用な、本発明の有機金属前駆体化合物は、式(Cp(R’)M(H)z−yを有する化合物を含み、式中、Mは、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)又はクロム(Cr)から選択される金属であり、各R’は、同一であるか又は異なり、ハロゲン原子、1から約12個の炭素原子を有するアシル基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシ基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、1から約12個の炭素原子を有するアルキル基、1から約12個の炭素原子を有するアミン基又は0から約12個の炭素原子を有するシリル基を表し、Cpは、置換若しくは非置換シクロペンタジエニル基又は置換若しくは非置換シクロペンタジエニル様の基であり、xは0から5の整数であり、yは1から5の整数であり、zはMの原子価である。
【0018】
本発明は、部分的に、有機金属前駆体、並びに有機金属前駆体のCVD又はALDによって基板上に金属層及び/又は金属炭化物層を形成することができる、基板の処理方法を提供する。金属又は金属炭化物層は、処理ガスの存在下で式(Cp(R’)M(H)z−yを有する有機金属前駆体を熱又はプラズマ強化解離させることによって、加熱された基板上に堆積させられる。処理ガスは、ヘリウム及びアルゴンなどの不活性ガス、及びこれらの組合せであり得る。処理ガスの組成は、所望の金属及び金属炭化物層を堆積させるように選択される。
【0019】
式(Cp(R’)M(H)z−yによって表される本発明の有機金属前駆体の場合、Mは堆積させられるべき金属を表す。本発明に従って堆積させられ得る金属の例は、タングステン、モリブデン及びクロムのVIB族金属、及びバナジウム、タンタル及びニオブのVB族金属である。Yは、前駆体の金属Mの原子価であり、VIB族金属の場合6の原子価及びVB族金属の場合5の原子価を有する。
【0020】
Cpは、一般式(C−)を有し、金属Mに対する配位子を形成するシクロペンタジエニル環である。シクロペンタジエニル環は、置換され、それにより式(Cp(R’)を有することができ、式中、nは金属Mに対する配位子を形成するシクロペンタジエニル基の数である。前駆体を形成する際に、少なくとも1つ、しかし、通常、1から5個のシクロペンタジエニル基が金属Mに対する配位子を形成する。前駆体は、好ましくは2つのシクロペンタジエニル基を含有する。
【0021】
例示的な、置換シクロペンタジエニル様の部位には、当技術分野で公知のように、シクロオレフィン、例えば、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル、シクロオクタジエニル環、複素環、置換ベンゼニルなどの芳香族環及びその他が含まれる。
【0022】
置換シクロペンタジエニル及びシクロペンタジエニル様の基の許容し得る置換基には、ハロゲン原子、1から約12個の炭素原子を有するアシル基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシ基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、1から約12個の炭素原子を有するアルキル基、1から約12個の炭素原子を有するアミン基又は0から約12個の炭素原子を有するシリル基が含まれる。
【0023】
例示的なハロゲン原子には、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が含まれる。好ましいハロゲン原子には、塩素及びフッ素が含まれる。
【0024】
例示的なアシル基には、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、1−メチルプロピルカルボニル、イソバレリル、ペンチルカルボニル、1−メチルブチルカルボニル、2−メチルブチルカルボニル、3−メチルブチルカルボニル、1−エチルプロピルカルボニル、2−エチルプロピルカルボニルなどが含まれる。好ましいアシル基には、ホルミル、アセチル及びプロピオニルが含まれる。
【0025】
例示的なアルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチロキシ、1−メチルブチロキシ、2−メチルブチロキシ、3−メチルブチロキシ、1,2−ジメチルプロピロキシ、ヘキシロキシ、1−メチルペンチロキシ、1−エチルプロピロキシ、2−メチルペンチロキシ、3−メチルペンチロキシ、4−メチルペンチロキシ、1,2−ジメチルブチロキシ、1,3−ジメチルブチロキシ、2,3−ジメチルブチロキシ、1,1−ジメチルブチロキシ、2,2−ジメチルブチロキシ、3,3−ジメチルブチロキシなどが含まれる。好ましいアルコキシ基には、メトキシ、エトキシ及びプロポキシが含まれる。
【0026】
例示的なアルコキシカルボニル基には、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、シクロプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニルなどが含まれる。好ましいアルコキシカルボニル基には、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル及びシクロプロポキシカルボニルが含まれる。
【0027】
例示的なアルキル基には、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロプロピルメチル、シクロプロピルエチル、シクロブチルメチルなどが含まれる。好ましいアルキル基には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル及びシクロプロピルが含まれる。
【0028】
例示的なアミン基には、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、tert−ブチルアミン、ジ(tert−ブチル)アミン、エチルメチルアミン、ブチルメチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどが含まれる。好ましいアミン基には、ジメチルアミン、ジエチルアミン及びジイソプロピルアミンが含まれる。
【0029】
例示的なシリル基には、例えば、シリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリス(トリメチルシリル)メチル、トリシリルメチル、メチルシリルなどが含まれる。好ましいシリル基には、シリル、トリメチルシリル及びトリエチルシリルが含まれる。
【0030】
好ましい実施形態において、本発明は、部分的に、次式によって表される有機金属タンタル化合物に関する。
【化1】


式中、R、R及び各Rは、同一であるか又は異なり、それぞれ、ハロゲン原子、1から約12個の炭素原子を有するアシル基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシ基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、1から約12個の炭素原子を有するアルキル基、1から約12個の炭素原子を有するアミン基又は0から約12個の炭素原子を有するシリル基を表す。
【0031】
本発明の例示的な有機金属化合物には、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)(アリル)タンタル、ビス(シクロペンタジエニル)(アルケン)(ヒドリド)タンタル又はビス(シクロペンタジエニル)(トリアルキル)タンタル、ビス(シクロペンタジエニル)(トリヒドリド)タンタルなどが含まれる。
【0032】
シクロペンタジエニル基に置換基、特にケイ素含有置換基が存在すると、好ましい物理特性を増強すると考えられている。置換基は、有機金属前駆体の揮発性を増大させ、前駆体を解離するのに必要とされる温度を減少させ、有機金属前駆体の沸点を低くすると考えられている。有機金属前駆体化合物の揮発性が増大すると、層を効果的に堆積させるために処理チャンバへ向かう蒸発された流体の流れの中の前駆体の濃度が十分高いことが保証される。又、揮発性が改善されると、昇華による有機金属前駆体の蒸発を利用して、早期解離の危険なしに処理チャンバへ配送することができることになる。加えて、又、置換基のシクロペンタジエニル基が存在すると、液体配送システムで使用するのに十分な、有機金属前駆体の溶解度を実現することもできる。
【0033】
本明細書に記載の有機金属前駆体は、約150℃未満の温度で熱的に安定しており、約150℃を超える温度で熱的に解離し得る、熱分解可能な有機金属化合物を形成することができる官能基を有していると考えられている。又、有機金属前駆体は、約0.6ワット/cm以上、又は200mmの基板に対して約200ワット以上の電力密度を、処理チャンバへ供給することによって発生させたプラズマ中で解離することもできる。
【0034】
本明細書に記載の有機金属前駆体は、堆積工程の処理ガス組成及びプラズマガス組成に応じて、金属及び金属炭化物層を堆積させることができる。金属又は金属炭化物層は、アルゴンなどの不活性処理ガス、水素などの反応物質処理ガス及びこれらの組合せの存在下で堆積される。
【0035】
水素などの反応物質処理ガスを使用すると、シクロペンタジエニル基との反応が容易になって揮発性ガスを形成し、それにより、シクロペンタジエニル環を前駆体から除去し、金属又は金属炭化物層を基板上に堆積させると考えられている。金属層は、好ましくはアルゴンの存在下で堆積させる。
【0036】
上記の前駆体から層を堆積させる例示的な処理方法は、以下の通りである。ビス(シクロペンタジエニル)(アリル)タンタルなどの、本明細書に記載の組成を有する前駆体及び処理ガスを、処理チャンバ内に導入する。前駆体を、約5から約500sccmの間の流量で導入し、処理ガスを約5から約500sccmの間の流量でこのチャンバ内に導入する。堆積工程の一実施形態において、前駆体及び処理ガスを、約1:1のモル比で導入する。処理チャンバを、約100ミリTorrから約20Torrの間の圧力で維持する。処理チャンバを、好ましくは、約100ミリTorrから約250ミリTorrの間の圧力で維持する。流量及び圧力条件は、使用する処理チャンバの、さまざまな製造元、大きさ及び型式に応じて変化し得る。
【0037】
前駆体の熱的解離には、基板に隣接している揮発性金属化合物の炭化水素部分を解離させて、基板上に金属を残しながら基板から脱着する炭化水素を蒸発させるために、基板を十分高い温度に加熱することが必要である。この正確な温度は、堆積条件下で使用される有機金属前駆体及び処理ガスの、素性並びに化学的、熱的及び安定性特性に応じて決まることになる。しかし、ほぼ室温から約400℃の温度が、本明細書に記載の前駆体を熱解離させるために企図されている。
【0038】
熱解離は、好ましくは、約100℃から約400℃の間の温度に基板を加熱することによって実施される。熱解離工程の一実施形態において、基板温度を約250℃から約450℃の間に維持して、基板表面上で前駆体と反応ガスとが確実に完全に反応するようにする。別の実施形態において、基板を、熱解離工程の間約400℃未満の温度に維持する。
【0039】
プラズマ強化CVD法の場合、次いで、プラズマを発生させる電力は、容量結合方式又は誘導結合方式によりチャンバに導入され、前駆体の解離を増強し、存在しているいずれの反応物質ガスとの反応をも向上させ、基板上に層を堆積させる。約0.6ワット/cmから約3.2ワット/cmの間の、又は約200から約1000ワットの間の電力密度(200mmの基板に対して、約750ワットが最も好ましく使用される)が、チャンバに供給され、プラズマを発生させる。
【0040】
前駆体が解離し、材料が基板上に堆積された後で、堆積された材料を、プラズマ処理に曝すことができる。プラズマは、水素などの反応物質処理ガス、アルゴンなどの不活性ガス及びこれらの組合せを含む。プラズマ処理工程において、プラズマを発生する電力は、容量結合方式又は誘導結合方式によりチャンバに導入され、処理ガスを励起してプラズマ状態にさせ、堆積された材料と反応することができるイオンなどのプラズマ種を生成する。このプラズマを、約0.6ワット/cmから約3.2ワット/cmの間の、又は200mmの基板に対して約200から約1000ワットの間の電力密度を、処理チャンバに供給することによって発生させる。
【0041】
一実施形態において、プラズマ処理は、ガスを約5sccmから約300sccmの間の流量で処理チャンバに導入すること、及び約0.6ワット/cmから約3.2ワット/cmの間の電力密度又は200mmの基板に対して約200ワットから約1000ワットの間の電力を供給することによりプラズマを発生させること、チャンバの圧力を約50ミリTorrから約20Torrの間に維持すること、及びプラズマ工程の間基板を約100℃から約400℃の間の温度に維持することを含む。
【0042】
プラズマ処理は、層の抵抗率を低下させ、炭素又は過剰な水素などの汚染物質を除去し、層を緻密化させて障壁及びライナ特性を増強すると考えられている。プラズマ中の水素種などの反応物質ガスからの種は、炭素不純物と反応して基板表面から容易に脱着することができ、処理域及び処理チャンバからパージされ得る揮発性炭化水素を生成すると考えられている。アルゴンなどの不活性ガスからのプラズマ種は、さらに、層をたたいて抵抗を有する成分を除去し、層の抵抗率を低下させ、電気伝導率を改善する。
【0043】
プラズマ処理は、層の望ましい炭素含有量を除去する可能性があるので、好ましくは、金属炭化物層に対するプラズマ処理は実施しない。金属炭化物層に対するプラズマ処理を実施する場合、プラズマガスは、炭素を除去するためにアルゴン及びヘリウムなどの不活性ガスを好ましくは含有する。
【0044】
上で確認された前駆体から層を堆積させること及びこの層をポスト堆積プラズマ工程に曝すことにより、改善された材料特性を有する層が製造されることになると考えられている。本明細書に記載の材料の堆積及び/又は処理は、拡散抵抗を改善し、層間接着を改善し、熱安定性を改善し及び層間結合を改善していると考えられている。
【0045】
本発明の一実施形態において、基板上に誘電体層を堆積させること、基板中にパターンをエッチングすること、誘電体層上に金属炭化物層を堆積させること及び金属炭化物層上に導電性金属層を堆積させることを含む、基板上のフィーチャーをメタライゼーションするための方法が提供される。金属炭化物層を堆積する前に、基板上の酸化物形成を排除するために、基板を水素及びアルゴンのプラズマを含む反応性前洗浄に、場合により曝すことができる。導電性金属は好ましくは銅であり、物理蒸着、化学蒸着又は電気化学的析出によって堆積させることができる。金属層及び金属炭化物層を、処理ガスの存在下で好ましくは約20Torr未満の圧力下において、本発明の有機金属前駆体を熱又はプラズマ強化解離させることにより堆積させる。堆積させた後で、金属層及び金属炭化物層を、次の層を堆積する前にプラズマに曝すことができる。
【0046】
現在の銅集積化方式は、上に銅ウエッティング層を、続いて銅シード層を有する拡散障壁を含む。本発明に従って徐々にタンタルリッチになるTaC層は、現在の集積化方式において多くのステップに取って代わることになる。TaC層は非晶質の特性を有するために、銅の拡散に対する優れた障壁である。タンタルリッチ層は、ウエッティング層としての役割を果たし、タンタル上に直接メッキすることを可能にすることができる。この単層は、堆積中の堆積パラメータを操作することにより、1ステップで堆積され得る。又、ポスト堆積処理により、フィルム中のタンタルの比率を高めることもできる。半導体製造において1つ又は複数のステップを取り去ることにより、半導体製造業者に対する実質的な節約をもたらすことになる。
【0047】
CpTaHから作られたTaCフィルムは、400℃未満の温度で堆積され、腐食性の副生物を形成することはない。TaCフィルムは非晶質であり、銅の拡散に対する、TaNより優れた障壁である。堆積パラメータの最適化及びポスト堆積処理によって、このTaC障壁は、この上に堆積されたタンタルリッチフィルムを有することができる。このタンタルリッチフィルムは銅に対するウエッティング層としての役割を果たし、Ta層の上に直接銅メッキすることを可能にすることができる。一実施形態において、堆積パラメータを最適化し、組成が層の厚さにわたって変化する層を提供することができる。例えば、層は、マイクロチップのケイ素部分の表面でTaCリッチ、例えば良好な障壁特性であることができ及び銅層の表面でTaリッチ、例えば良好な接着特性であることができる。
【0048】
又前述の通り、本発明は部分的に、式(Cp(R’)M(H)z−yによって表される有機金属化合物を製造するための方法に関し、式中、Mは、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)又はクロム(Cr)から選択される金属であり、各R’は、同一であるか又は異なり、ハロゲン原子、1から約12個の炭素原子を有するアシル基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシ基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、1から約12個の炭素原子を有するアルキル基、1から約12個の炭素原子を有するアミン基又は0から約12個の炭素原子を有するシリル基を表し、Cpは、置換若しくは非置換シクロペンタジエニル基又は置換若しくは非置換シクロペンタジエニル様の基であり、xは0から5の整数であり、yは1から5の整数であり、zはMの原子価であり、この方法は、金属ハロゲン化物、シクロペンタジエニル塩及び還元剤を、第1溶媒の存在下で及び中間反応物質を生成するのに十分な反応条件下で反応させること、並びに前記中間反応物質を塩基物質と、第2溶媒の存在下で及び前記有機金属前駆体を生成するのに十分な反応条件下で反応させることを含む。本発明の方法による有機金属化合物の収率は、40%又はそれ以上、好ましくは35%又はそれ以上、及びより好ましくは30%又はそれ以上であり得る。
【0049】
この方法は、同一の装置、同一試薬のいくつか及び実にさまざまな製品を製造するように容易に適合され得る工程パラメータを用いて実施することができるので、大規模生産に特に適している。この方法は、すべての巧みな操作を単一容器内で実行することができ、有機金属前駆体化合物への経路が、中間錯体の単離を必要としない方法を用いた、有機金属前駆体化合物の合成を提供する。
【0050】
金属ハロゲン化物化合物の出発物質は、当技術分野で公知のさまざまな化合物から選択することができる。本明細書における本発明は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)又はクロム(Cr)から選択される金属を最も好む。例示的な金属ハロゲン化物化合物には、例えば、五塩化タンタル、五塩化ニオブ、五塩化バナジウム、六塩化タングステン、六塩化モリブデン、六塩化クロムなどが含まれる。
【0051】
金属源化合物出発物質の濃度は、広範囲にわたって変化することができ、シクロペンタジエニル塩及び還元剤と反応して中間反応物質を生成し、使用されるのが望ましい一定の金属濃度を供給するのに必要な最小限の量であることだけが必要であり、この最小限の量は、少なくとも本発明の有機金属化合物に必要な金属の量の基準を与えることになる。一般に、反応混合物の大きさに応じて、約1ミリモル又はそれ以下から約10000ミリモル又はそれ以上の範囲内の金属源化合物出発物質の濃度は、殆どの工程にとって十分なはずである。
【0052】
シクロペンタジエニル塩出発物質は、当技術分野で公知のさまざまな化合物から選択することができる。例示的なシクロペンタジエニル塩には、ナトリウムシクロペンタジエン、カリウムシクロペンタジエン、リチウムシクロペンタジエン、マグネソセンなどが含まれる。シクロペンタジエニル塩出発物質は、好ましくは、ナトリウムシクロペンタジエンなどである。
【0053】
シクロペンタジエニル塩出発物質の濃度は、広範囲にわたって変化することができ、金属源化合物出発物質及び還元剤と反応して中間反応物質を生成するのに必要な最小限の量であることだけが必要である。一般に、第1反応混合物の大きさに応じて、約1ミリモル又はそれ以下から約10000ミリモル又はそれ以上の範囲内のシクロペンタジエニル塩出発物質の濃度は、殆どの工程にとって十分なはずである。
【0054】
還元剤出発物質は、当技術分野で公知のさまざまな物質から選択することができる。例示的な還元剤には、ナトリウムビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムジヒドリド(例えば、Red−Al(登録商標)及びVitride還元剤物質)、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウムなどが含まれる。還元剤物質は、好ましくは、ナトリウムビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムジヒドリド(例えば、Red−Al(登録商標)還元剤物質)などである。
【0055】
還元剤出発物質の濃度は、広範囲にわたって変化することができ、金属源化合物出発物質及びシクロペンタジエニル塩出発物質と反応して中間反応物質を生成するのに必要な最小限の量であることだけが必要である。一般に、第1反応混合物の大きさに応じて、約1ミリモル又はそれ以下から約10000ミリモル又はそれ以上の範囲内の還元剤出発物質の濃度は、殆どの工程にとって十分なはずである。
【0056】
本発明の方法において使用される第1溶媒は、任意の飽和及び不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、芳香族複素環、アルキルハライド、シリル化炭化水素、エーテル、ポリエーテル、チオエーテル、エステル、チオエステル、ラクトン、アミド、アミン、ポリアミン、シリコーン油、他の非プロトン性溶媒、又は上記の1種又は複数種の混合物;より好ましくは、ジエチルエーテル、ペンタン、又はジメトキシエタン;及び最も好ましくはトルエン又はジメトキシエタン(DME)又はこれらの混合物であり得る。意図されている反応を過度に悪い方向に妨害することのない適切な、いかなる溶媒でも使用することができる。所望する場合、1種又は複数種の異なる溶媒の混合物を使用することができる。使用する溶媒の量は、本発明に対して極めて重要なわけではなく、反応混合物中の反応成分を溶解するだけの量であることのみが必要である。一般に、溶媒の量は、反応混合物出発物質の全重量を基準にして、約5重量%から約99重量%又はそれ以上に及び得る。
【0057】
又、シクロペンタジエニル塩化合物及び還元剤が金属源化合物と反応して中間反応物質を生成するための反応条件(温度、圧力及び接触時間など)も、大幅に変化することができ、このような条件の適切な組合せであればいかなる組合せでも、本明細書において使用することができる。反応温度は、前述の溶媒のいずれかの還流温度であることができ、より好ましくは約−80℃から約150℃の間、及び最も好ましくは約20℃から約120℃の間である。通常、反応は環境圧力下で実施され、接触時間は、およそ数秒又は数分から数時間又はそれ以上に及び得る。反応物質を、任意の順序で反応混合物に添加すること又は混合することができる。使用される撹拌時間は、すべてのステップで、約0.1から約400時間、好ましくは約1から75時間、及びより好ましくは約4から16時間に及び得る。
【0058】
中間反応物質は、当技術分野で公知のさまざまな物質から選択することができる。例示的な中間反応物質には、ビス(シクロペンタジエニル)(ジヒドリド)タンタル(ビス−(2−メトキシエトキシ)アルミネートが含まれる。この中間反応物質は、好ましくは、ビス(シクロペンタジエニル)(ジヒドリド)タンタル(ビス−(2−メトキシエトキシ)アルミネートなどである。本発明の方法は、中間反応物質の単離を必要としない。
【0059】
中間反応物質の濃度は、広範囲にわたって変化することができ、塩基物質と反応して本発明の有機金属化合物を生成するのに必要な最小限の量であることだけが必要である。一般に、第2反応混合物の大きさに応じて、約1ミリモル又はそれ以下から約10000ミリモル又はそれ以上の範囲内の中間反応物質の濃度は、殆どの工程にとって十分なはずである。
【0060】
塩基物質は、当技術分野で公知のさまざまな物質から選択することができる。例示的な塩基物質には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸エチルなどが含まれる。塩基物質は、好ましくは水酸化ナトリウムなどである。
【0061】
塩基物質の濃度は、広範囲にわたって変化することができ、中間反応物質と反応して本発明の有機金属化合物を生成するのに必要な最小限の量であることだけが必要である。一般に、第2反応混合物の大きさに応じて、約1ミリモル又はそれ以下から約10000ミリモル又はそれ以上の範囲内の塩基物質の濃度は、殆どの工程にとって十分なはずである。
【0062】
本発明の方法において使用される第2溶媒は、任意の飽和及び不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、芳香族複素環、アルキルハライド、シリル化炭化水素、エーテル、ポリエーテル、チオエーテル、エステル、チオエステル、ラクトン、アミド、アミン、ポリアミン、シリコーン油、他の非プロトン性溶媒、又は上記の1種又は複数種の混合物;より好ましくは、ジエチルエーテル、ペンタン、又はジメトキシエタン;及び最も好ましくはトルエン、ヘキサン又はこれらの混合物であり得る。意図されている反応を過度に悪い方向に妨害することのない適切な、いかなる溶媒でも使用することができる。所望する場合、1種又は複数種の異なる溶媒の混合物を使用することができる。使用する溶媒の量は、本発明に対して極めて重要なわけではなく、反応混合物中の反応成分を溶解するだけの量であることのみが必要である。一般に、溶媒の量は、反応混合物出発物質の全重量を基準にして、約5重量%から約99重量%又はそれ以上に及び得る。
【0063】
又、中間反応物質が塩基物質と反応して本発明の有機金属前駆体を生成するための反応条件(温度、圧力及び接触時間など)も、大幅に変化することができ、このような条件の適切な組合せであればいかなる組合せでも、本明細書において使用することができる。反応温度は、前述の溶媒のいずれかの還流温度であることができ、より好ましくは約−80℃から約150℃の間、及び最も好ましくは約20℃から約120℃の間である。通常、反応は環境圧力下で実施され、接触時間は、およそ数秒又は数分から数時間又はそれ以上に及び得る。反応物質を、任意の順序で反応混合物に添加すること又は混合することができる。使用される撹拌時間は、すべてのステップで、約0.1から約400時間、好ましくは約1から75時間、及びより好ましくは約4から16時間に及び得る。
【0064】
本発明の有機金属化合物を調製する際に使用することができる別の代替方法は、米国特許6605735B2及び2004年7月1日に公開された米国特許出願公開2004/0127732A1において開示されたものを含み、これらの特許の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。又、本発明の有機金属化合物は、Legzdins,P.ら、Inorg.Synth.1990、28、196及びその中の参考文献に記載されているような従来の方法によって調製することもできる。
【0065】
本発明の方法により調製された有機金属化合物について、精製は、再結晶化により、より好ましくは反応残留物(例えば、ヘキサン)の抽出及びクロマトグラフィーにより、及び最も好ましくは昇華及び蒸留により行うことができる。
【0066】
当業者は、以下の特許請求の範囲においてより詳しく定義されている本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、本明細書において詳細に記述されている方法に対して、多くの変更を加えることができることを理解するはずである。
【0067】
上述の合成法によって形成される有機金属化合物を特性決定するのに使用することができる技法の例には、これに限らないが、分析ガスクロマトグラフィー、核磁気共鳴、熱重量分析、誘導結合プラズマ質量分析、示差走査熱量測定、蒸気圧及び粘度測定が含まれる。
【0068】
上記の有機金属化合物前駆体の相対蒸気圧、又は比揮発性を、当技術分野で公知の熱重量分析技法により測定することができる。又、平衡蒸気圧も、例えば、密封容器からすべての気体を排気し、その後で化合物の蒸気をこの容器に導入し、当技術分野で公知であるように圧力を測定することによって、測定することができる。
【0069】
本明細書に記載の有機金属化合物前駆体は、その場所で粉末及び被覆を調製するのに適している。例えば、有機金属化合物前駆体を基板に塗布し、次いで前駆体を分解するのに十分な温度に加熱し、それにより、金属又は金属炭化物、例えばTa金属又はTaC被覆を基板上に形成することができる。前駆体を基板に塗布するには、塗布、スプレー、浸漬又は当技術分野で公知の別の技法によることができる。加熱は、オーブン内で熱線銃を用いて基板を電気的に加熱することにより、又は当業界で公知の別の手段により行うことができる。層状被覆は、有機金属化合物前駆体を塗布し、それを加熱し、分解し、それにより、第1層を形成し、次いで同一の又は異なる前駆体を有する少なくとも1つの別の被覆を形成し、加熱することによって得ることができる。
【0070】
又、上述のような有機金属化合物前駆体は、基板上に噴霧及びスプレーすることもできる。使用することができる、ノズル、噴霧器及びその他のものなどの噴霧及びスプレーの手段は、当技術分野で公知である。
【0071】
本発明は部分的に、有機金属前駆体と、有機金属前駆体のCVD又はALDにより金属又は金属炭化物層を基板上に形成するための方法とを提供する。本発明の一態様において、本発明の有機金属前駆体を使用して、金属又は金属炭化物層を大気圧以下の圧力下で堆積させる。この金属又は金属炭化物層を堆積させるための方法は、この前駆体を、好ましくは約20Torr未満の圧力に維持されている処理チャンバ内に導入すること及び処理ガスの存在下でこの前駆体を解離させて金属又は金属炭化物層を堆積させることを含む。この前駆体を熱又はプラズマ強化法により解離させ、堆積させることができる。この方法は、堆積された層をプラズマ工程に曝して、汚染物質を除去し、層を緻密化させ、層の抵抗率を低減させるステップをさらに含むことができる。
【0072】
本発明の好ましい実施形態において、上記のような有機金属化合物を、粉末、フィルム又は被覆を形成するために、気相堆積技法において使用することができる。この化合物を、単一供給源前駆体として使用することも、又は1種又は複数の別の前駆体と一緒に、例えば少なくとも1種の別の有機金属化合物又は金属錯体を加熱することによって発生させられる蒸気と一緒に、用いることができる。又、上記のような複数の有機金属化合物前駆体を、ある特定の工程において使用することもできる。
【0073】
前述の通り、本発明は又部分的に、フィルム、被覆、又は粉末を製造するための方法に関する。この方法は、下記でさらに説明されているように、少なくとも1種の有機金属化合物前駆体を分解させ、それにより、フィルム、被覆又は粉末を製造するステップを含む。
【0074】
本明細書に記載の堆積法を実施して、単一金属を含むフィルム、粉末若しくは被覆、又は単一金属若しくは金属炭化物、例えばTa金属又はTaCを含むフィルム、粉末若しくは被覆を形成することができる。混合フィルム、粉末又は被覆、例えば混合金属/金属炭化物フィルムも、堆積させることができる。
【0075】
気相フィルム堆積を実施して、所望の厚さ、例えば約1nmから1mm超の範囲のフィルム層を形成することができる。本明細書に記載の前駆体は、薄膜、例えば約10nmから約100nmの範囲の厚さを有するフィルムを製造するのに特に有用である。本発明のフィルムは、例えば、金属電極、特に、ロジックにおけるnチャネル金属電極、DRAM用途向けのキャパシタ電極、及び誘電体材料などを作製するために検討することができる。
【0076】
又、この方法は、層の中の少なくとも2層が相又は組成が異なっている、層状のフィルムを調製するのに適している。層状のフィルムの例には、金属−絶縁体−半導体、及び金属−絶縁体−金属が含まれる。
【0077】
一実施形態において、本発明は、上記の有機金属化合物前駆体の蒸気を、熱的に、化学的に、光化学的に又はプラズマ活性化により分解し、それにより基板上にフィルムを形成するステップを含む方法を対象とする。例えば、化合物が発生した蒸気は、有機金属化合物が分解して基板上にフィルムを形成するのに十分な温度を有する基板に接触させられる。
【0078】
有機金属化合物前駆体を、化学蒸着法において又はより具体的には当技術分野で公知の有機金属化学蒸着法において使用することができる。例えば、上記の有機金属化合物前駆体を、大気圧及び低圧化学蒸着法において使用することができる。この化合物を、高温壁化学蒸着(反応チャンバ全体が加熱される方法)及び低温又は暖温(warm)壁型化学蒸着(基板だけが加熱されている技法)において使用することができる。
【0079】
又、上記の有機金属化合物前駆体を、プラズマ又は光支援化学蒸着法(それぞれ、プラズマからのエネルギー又は電磁エネルギーを用いて、化学蒸着前駆体を活性化する)において使用することもできる。又、この化合物を、イオンビーム、電子ビーム支援化学蒸着法(それぞれ、イオンビーム又は電子ビームが基板に向けられ、化学蒸着前駆体を分解するためのエネルギーを供給する)において使用することもできる。又、レーザ支援化学蒸着法(レーザ光が基板に向けられ、化学蒸着前駆体の光分解反応に影響を及ぼす)も、使用することができる。
【0080】
本発明の方法を、種々の化学蒸着反応器、例えば、当技術分野で公知の高温又は低温壁反応器、プラズマ支援、ビーム支援又はレーザ支援反応器において実施することができる。
【0081】
本発明の方法を用いて被覆することのできる基板の例には、金属基板、例えば、Al、Ni、Ti、Co、Pt、金属ケイ化物、例えば、TiSi、CoSi、NiSi;半導体材料、例えば、Si、SiGe、GaAs、InP、ダイヤモンド、GaN、SiC;絶縁体、例えば、SiO、Si、HfO、Ta、Al、チタン酸ストロンチウムバリウム(BST);又は材料の組合せを含む基板などの固体の基板が含まれる。加えて、フィルム又は被覆を、ガラス、セラミック、プラスチック、熱硬化性ポリマー材料の上に及び他の被覆又はフィルム層の上に形成することができる。好ましい実施形態において、フィルム堆積は、電子部品の製造又は加工において使用される基板上で行われる。別の実施形態において、基板を用いて、酸化剤の存在下において高温で安定な、低抵抗率の導電体堆積物又は光学的に透明なフィルムを支持する。
【0082】
本発明の方法を実施して、滑らかな、平坦な表面を有する基板上にフィルムを堆積させることができる。一実施形態において、この方法を実施して、ウエハの製造又は加工において使用される基板上にフィルムを堆積させる。例えば、この方法を実施して、トレンチ、ホール又はバイアなどのフィーチャーを含むパターン付けされた基板上に、フィルムを堆積させることができる。さらに又、本発明の方法を、ウエハの製造又は加工における別のステップ、例えば、マスキング、エッチングなどと統合することができる。
【0083】
本発明の一実施形態において、有機金属前駆体を用いてTaC及びタンタルリッチフィルムを堆積させるための、プラズマ支援ALD(PEALD)法が開発された。この固体前駆体を、不活性ガスを流しながら昇華させて、前駆体をCVDチャンバへ導入することができる。TaCフィルムが、水素プラズマの支援の下に基板上に成長する。タンタルの炭素に対する比を、水素プラズマのパルスの長さを制御することによって制御することができる。
【0084】
化学蒸着フィルムを、所望の厚さに堆積させることができる。例えば、形成されたフィルムは、1ミクロン未満の厚さ、好ましくは500nm未満及びより好ましくは200nm未満の厚さであり得る。又、50nm未満の厚さのフィルム、例えば、約0.1から約20nmの間の厚さを有するフィルムも製造することができる。
【0085】
又、上記の有機金属化合物前駆体を本発明の方法において使用して、処理の間基板が、前駆体、酸化剤及び不活性ガスの流れのパルスに交互に曝される、ALD法又は原子層核形成(ALN)技法によってフィルムを形成することもできる。順次層堆積(sequential layer deposition)技法は、例えば、米国特許第6287965号及び米国特許第6342277号に記載されている。両方の特許の開示は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0086】
例えば、あるALDサイクルにおいて、基板は、段階を追って:a)不活性ガス;b)前駆体の蒸気を運ぶ不活性ガス;c)不活性ガス;及びd)酸化剤(単独で又は不活性ガスと一緒に)に曝される。一般に、各ステップは、装置が許す程度の短さ(例えば、ミリ秒)及び工程が必要とする程度の長さ(例えば、数秒又は数分)であることができる。1サイクルの長さは、数ミリ秒程度に短く、数分程度の長さであることができる。このサイクルは、数分から数時間に及び得る時間にわたって繰り返される。製造されたフィルムは、数nmの薄さであるか又はこれよりも厚く、例えば、1ミリメートル(mm)であり得る。
【0087】
本発明は、本発明の有機金属前駆体から金属材料、例えばTa金属又はTaCを、基板、例えばマイクロエレクトロニクスデバイス構造体上に、形成するための方法を含み、前記方法は、前記有機金属前駆体を蒸発させて蒸気を形成すること、及び蒸気を基板と接触させて基板上に前記金属材料を形成することを含む。Ta金属又はTaCを基板上に堆積させた後、基板を、その後で、銅によりメタライズするか又は強誘電体薄膜と一体化させることができる。
【0088】
又、本発明の方法を、超臨界流体を使用して実施することができる。当技術分野で現在公知の超臨界流体を使用するフィルム堆積法の例には、化学流体堆積;超臨界流体輸送化学堆積;超臨界流体化学堆積及び超臨界浸漬堆積が含まれる。
【0089】
例えば、化学流体堆積法は、高純度のフィルムを製造すること、及び複雑な表面を被覆すること、及び高アスペクト比のフィーチャーを満たすことに適している。化学流体堆積は、例えば、米国特許第5789027号に記載されている。又、フィルム形成に超臨界流体を使用することは、米国特許6541278B2に記載されている。これらの2つの特許の開示は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0090】
本発明の一実施形態において、加熱された、パターン付けされた基板を、臨界点近傍又は超臨界流体、例えば、臨界点近傍又は超臨界COなどの溶媒の存在下で、1つ又は複数の有機金属化合物前駆体に曝す。COの場合、溶媒流体が、約1000psigを超える圧力で少なくとも約30℃の温度で供給される。
【0091】
前駆体は分解されて、基板上に金属フィルムを形成する。又反応により、前駆体から有機物質が発生する。この有機物質は、溶媒流体によって溶解され、基板から容易に除去される。
【0092】
一例において、堆積工程を1つ又は複数の基板を収容する反応チャンバにおいて実施する。基板を、例えば炉を用いてチャンバ全体を加熱することにより、所望の温度に加熱する。有機金属化合物の蒸気を、例えば、チャンバを真空にすることによって生成させることができる。低沸点化合物の場合、チャンバを十分高温にして化合物の蒸気を生じさせることができる。加熱された基板表面に蒸気が接触すると、蒸気は分解して金属又は金属炭化物フィルムを形成する。上記のように、有機金属化合物前駆体を、単独で、又は例えば別の有機金属前駆体、不活性キャリアガス又は反応性ガスなどの1種又は複数の成分と組み合わせて、使用することができる。
【0093】
本発明の方法によりフィルムを製造する際に使用することができるシステムにおいて、原料をガスブレンドマニホルドに誘導し、フィルム成長が行われる堆積反応器へ供給するプロセスガスを製造することができる。原料には、これに限らないが、キャリアガス、反応性ガス、パージガス、前駆体、エッチング/洗浄ガスなどが含まれる。プロセスガス組成の精密な制御を、当技術分野で公知であるような、質量の流れの調節器、バルブ、圧力変換器、及び他の手段を用いて達成する。排気マニホルドは、堆積反応器を出るガス及びバイパス流を真空ポンプまで運ぶことができる。真空ポンプの下流の減少装置を用いて、いかなる有害な物質も排ガスから除去することができる。堆積装置は、プロセスガス組成を測定することができる残留ガス分析器を含む、in−situ分析装置を装備することができる。制御及びデータ獲得装置は、さまざまな工程パラメータ(例えば、温度、圧力、流量など)を監視することができる。
【0094】
上記の有機金属化合物前駆体を用いて、単一の金属を含むフィルム又は単一の金属炭化物を含むフィルムを製造することができる。又、混合フィルム、例えば混合金属炭化物フィルムを堆積させることもできる。このようなフィルムを、例えば、いくつかの有機金属前駆体を使用することにより製造する。又、金属フィルムも、例えば、キャリアガス、蒸気又はその他の酸素源を使用しないことによって形成することができる。
【0095】
本明細書に記載の方法によって形成されるフィルムは、当技術分野で公知の技法によって、例えば、X線回折、Auger分光法、X線光電子放出分光法、原子間力顕微鏡法、走査電子顕微鏡法などの技法によって特性決定することができる。このフィルムの抵抗率及び熱安定性も、当技術分野で公知の方法により測定することができる。
【0096】
本発明の有機金属化合物は、フィルム堆積用の化学蒸着又は原子層堆積前駆体として半導体分野において使用されることに加えて、例えば、触媒、燃料添加物として及び有機合成においても、又、有用であり得る。
【0097】
本発明のさまざまな修正形態及び変形形態は、当業者には明らかなはずであり、そのような修正形態及び変形形態は、本出願の範囲内及び本特許請求の範囲の精神及び範囲内に含まれるべきものであることを理解しなければならない。
【実施例】
【0098】
(実施例1)
本実施例で使用する薄膜堆積装置は、J.Atwood、D.C.Hoth、D.A.Moreno、C.A.Hoover、S.H.Meiere、D.M.Thompson、G.B.Piotrowski、M.M.Litwin、J.Peck、Electrochemical Society Proceedings 2003−08、(2003)847に詳細に記載されている。50Torrのフローセル蒸発器において100sccmのアルゴンを使用して、CpTaHを90℃で昇華させた。前駆体/アルゴン混合物を追加のアルゴンと一緒にしてプロセスガス混合物を形成した。薄膜を、4ステップからなるパルスプロセスを使用して生成した。基板(通常、3インチのSiOウエハ)を、5Torrで及び350から450℃で、プロセスガス混合物に曝した。ステップ1において、プロセスガス混合物は前駆体(CpTaH)を収容した。基板を前駆体とアルゴンの混合物に、特定の長さの時間(通常、10秒)曝した後、前駆体の流れを中断し、アルゴンを用いて反応器をパージした。このパージステップ(ステップ2)は、通常20秒間実施した。ステップ3(通常、10秒)の間、プラズマ放電の存在下で、基板を水素とアルゴンの混合物に曝した。このプラズマを、容量結合型高周波構成を用いて発生させた。このプラズマを発生させるために、20から160ワットの順方向電力を印加した。ステップ4(通常、20秒)において、反応器をアルゴンを用いて再びパージした。このパルス工程を、所望の厚さのTa含有フィルムが堆積するまで繰り返した。
【0099】
362℃で二酸化ケイ素ウエハを基板として使用した。10/20/10/20秒のタイミングを有するプラズマ強化ALD(PEALD)法を50サイクル繰り返して、偏光解析法により4nmであると測定されたタンタル含有フィルムを成長させた。サイクルの数を増すことによって、より厚いフィルムを成長させることができる。
【0100】
(実施例2)
テトラヒドロフラン(THF)がタンタル錯体と反応するのを防ぐために、ナトリウムシクロペンタジエン(NaCp)を、THFを含有しない経路を経由して最初に合成した。新しく熱分解されたシクロペンタジエン二量体の若干の過剰量を、エーテル中でナトリウムビストリメチルシリルアミドと反応させた。
【化2】

【0101】
固体生成物を濾過し、エーテルで洗浄することによって精製した。五塩化タンタル(TaCl)の1当量を、NaCp3当量及び還元剤Vitride(登録商標)(シグマアルドリッヒ(Sigma Aldrich)から商業的に入手可能)3当量をジメトキシエタン(DME)に溶解した溶液に添加した。この溶液を加熱して、4時間還流し、次いで溶媒をトルエンと交換した。
【化3】

【0102】
反応を0℃に冷却し、蒸留した脱ガス水1当量を添加した。次いで、15%の水酸化ナトリウム溶液1当量と水3当量を添加した。
【化4】

【0103】
次いで、反応を加熱し、1時間還流して冷却した。反応混合物を硫酸マグネシウムのパッドを用いて濾過して過剰の水を除去し、溶媒を減圧下で除去した。固形物をペンタンで2乃至3回洗浄して若干灰色がかった固形物を得た。固形物をC中でNMRにより特性決定した。発明者らは、Cpの共鳴では4.8に単一ピークを、水素化物の共鳴では1.6と2.9に三重線と二重線を観測した。この時点で、さらに精製するために、100℃及び10−2Torrで昇華を実施することができる。化学的配送が昇華であるので、上記の堆積方法の場合、さらなる精製は不要である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Cp(R’)M(H)z−yを有する有機金属化合物であって、式中、Mは、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)又はクロム(Cr)から選択される金属であり、各R’は、同一であるか又は異なり、ハロゲン原子、1から約12個の炭素原子を有するアシル基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシ基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、1から約12個の炭素原子を有するアルキル基、1から約12個の炭素原子を有するアミン基、又は0から約12個の炭素原子を有するシリル基を表し、Cpは、置換若しくは非置換シクロペンタジエニル基又は置換若しくは非置換シクロペンタジエニル様の基であり、xは0から5の整数であり、yは1から5の整数であり、zはMの原子価である上記化合物。
【請求項2】
次式によって表される、請求項1に記載の有機金属化合物
【化1】


[式中、R、R及び各Rは、同一であるか又は異なり、それぞれ、ハロゲン原子、1から約12個の炭素原子を有するアシル基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシ基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、1から約12個の炭素原子を有するアルキル基、1から約12個の炭素原子を有するアミン基、又は0から約12個の炭素原子を有するシリル基を表す]。
【請求項3】
ビス(シクロペンタジエニル)(アリル)タンタル、ビス(シクロペンタジエニル)(アルケン)(ヒドリド)タンタル、ビス(シクロペンタジエニル)(トリヒドリド)タンタル又はビス(シクロペンタジエニル)(トリアルキル)タンタルから選択される、請求項1に記載の有機金属化合物。
【請求項4】
式(Cp(R’)M(H)z−yを有する有機金属化合物を製造するための方法であって、式中、Mは、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)又はクロム(Cr)から選択される金属であり、各R’は、同一であるか又は異なり、ハロゲン原子、1から約12個の炭素原子を有するアシル基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシ基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、1から約12個の炭素原子を有するアルキル基、1から約12個の炭素原子を有するアミン基、又は0から約12個の炭素原子を有するシリル基を表し、Cpは、置換若しくは非置換シクロペンタジエニル基又は置換若しくは非置換シクロペンタジエニル様の基であり、xは0から5の整数であり、yは1から5の整数であり、zはMの原子価であり、金属ハロゲン化物、シクロペンタジエニル塩及び還元剤を、第1溶媒の存在下で及び中間反応物質を生成するのに十分な反応条件下で反応させること、並びに前記中間反応物質を塩基物質と、第2溶媒の存在下で及び前記有機金属化合物を生成するのに十分な反応条件下で反応させることを含む上記方法。
【請求項5】
前記金属ハロゲン化物が、五塩化タンタル、五塩化ニオブ、五塩化バナジウム、六塩化タングステン、六塩化モリブデン又は六塩化クロムを含み;前記シクロペンタジエニル塩が、ナトリウムシクロペンタジエン、カリウムシクロペンタジエン、リチウムシクロペンタジエン又はマグネソセンを含み;前記還元剤がナトリウムビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムジヒドリド、水素化ホウ素ナトリウム又は水素化アルミニウムリチウムを含み;前記第1溶媒がジメトキシエタン(DME)、トルエン又はこれらの混合物を含み;前記中間反応物質がビス(シクロペンタジエニル)(ジヒドリド)タンタル(ビス−(2−メトキシエトキシ)アルミネートを含み;前記塩基物質が水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は酢酸エチルを含み;前記第2溶媒がトルエン、ヘキサン又はこれらの混合物を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
フィルム、被覆又は粉末を、有機金属前駆体を分解することにより製造するための方法であって、前記有機金属前駆体は、式(Cp(R’)M(H)z−yを有し、式中、Mは、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)又はクロム(Cr)から選択される金属であり、各R’は、同一であるか又は異なり、ハロゲン原子、1から約12個の炭素原子を有するアシル基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシ基、1から約12個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、1から約12個の炭素原子を有するアルキル基、1から約12個の炭素原子を有するアミン基、又は0から約12個の炭素原子を有するシリル基を表し、Cpは、置換若しくは非置換シクロペンタジエニル基又は置換若しくは非置換シクロペンタジエニル様の基であり、xは0から5の整数であり、yは1から5の整数であり、zはMの原子価であり、それにより前記フィルム、被覆又は粉末を製造する方法。
【請求項7】
前記有機金属前駆体の分解が、熱的、化学的、光化学的又はプラズマ活性化的である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記有機金属前駆体を蒸発させ、この蒸気を、基板を収納している堆積反応器に誘導する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記基板が、金属、金属ケイ化物、半導体、絶縁体及び障壁材料からなる群から選択される材料を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記有機金属前駆体を、化学蒸着、原子層堆積、プラズマ支援化学蒸着又はプラズマ支援原子層堆積により前記基板上に堆積させる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
有機金属前駆体が、ビス(シクロペンタジエニル)(アリル)タンタル、ビス(シクロペンタジエニル)(アルケン)(ヒドリド)タンタル、ビス(シクロペンタジエニル)(トリヒドリド)タンタル又はビス(シクロペンタジエニル)(トリアルキル)タンタルから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
Ta又はTaCを前記基板上に堆積させる、請求項8に記載の方法。


【公表番号】特表2009−510074(P2009−510074A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533510(P2008−533510)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/037414
【国際公開番号】WO2007/041089
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(392032409)プラクスエア・テクノロジー・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】