有機電界効果トランジスタ並びにそれを用いた集積回路及び電子デバイス
【課題】パターニングされた有機半導体層を有する有機電界効果トランジスタにおいて、パターニングにより有機半導体層のエッジ部分が劣化した場合でも、該エッジ部分を流れるオフ電流を抑制し、良好な半導体特性を有する有機電界効果トランジスタを提供する。
【解決手段】ゲート絶縁層4aと、パターニングされた有機半導体層5aと、該ゲート絶縁層4aにより該有機半導体層5aと隔離されたゲート電極3と、該有機半導体層5aに接して設けられたソース電極1及びドレイン電極2aとを有する有機電界効果トランジスタ101において、該有機半導体層のエッジ部分5’aと、該ソース電極1及び該ドレイン電極2aのうち少なくとも一方とが接触しないように配置する。
【解決手段】ゲート絶縁層4aと、パターニングされた有機半導体層5aと、該ゲート絶縁層4aにより該有機半導体層5aと隔離されたゲート電極3と、該有機半導体層5aに接して設けられたソース電極1及びドレイン電極2aとを有する有機電界効果トランジスタ101において、該有機半導体層のエッジ部分5’aと、該ソース電極1及び該ドレイン電極2aのうち少なくとも一方とが接触しないように配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界効果トランジスタ並びにそれを用いた集積回路及び電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)は、バイポーラトランジスタと並んで重要なスイッチ、増幅素子として広く利用されている。電界効果トランジスタは、半導体材料にソース電極とドレイン電極、絶縁体層を介してゲート電極を設けた構造を有しており、基本的には、p型あるいはn型の一方のキャリアが電荷を輸送する、ユニポーラ素子の代表的なものである。
【0003】
従来、電界効果トランジスタの半導体層の材料として、シリコン等の無機材料が広く用いられていた。しかし近年、有機半導体材料を用いる試みがなされている。具体的には、導電性高分子、共役高分子を利用した例(特許文献1)、低分子化合物を利用した例(特許文献2)などが報告されている。
【0004】
有機半導体材料を用いた電界効果トランジスタ(これを適宜「有機電界効果トランジスタ」又は「有機FET」という。)は、そのほとんどが無機半導体より低温プロセスで製造されているため、プラスチック等からなる基板やフィルムを用いることができ、軽量で壊れにくい素子を製作することができる。
また、有機半導体材料は、そのバリエーションが豊富であり、分子構造を変化させることにより、容易に材料特性を根本的に変化させることが可能である。そのため、異なる機能を組み合わせることで、従前のシリコン等の無機半導体では不可能な機能、素子を実現することができる。
【0005】
有機電界効果トランジスタの有機半導体層は、溶液の塗布法を用いて成膜した後のエッチング処理によるパターニングや、印刷法によるパターニングがなされる。上記エッチング処理の微細加工技術としては、プラズマエッチング法(電子サイクロトロン共鳴方式、高周波方式等)、スパッタエッチング法、ケミカルドライエッチング法等が用いられている。以上より得られる有機半導体層は、従前のシリコン等の無機材料を用いた蒸着等による形成方法に比べて、層形成コスト面で優位であり、大面積の素子を低コストで製造することが可能である。
【0006】
従来知られている有機電界効果トランジスタの例としては、図8(a),(b)に示す構成が挙げられる。図8(a)は従来の有機電界効果トランジスタを上方からみた模式的な平面図であり、図8(b)は図8(a)のa−a’面における模式的な断面図である。図8(a),(b)の有機電界効果トランジスタ100は、ソース電極1と、ドレイン電極2と、ゲート電極3と、ゲート絶縁層4と、パターニングされた有機半導体5と、基板6とを備えてなる。
ソース電極1とドレイン電極2とは、互いに接触しないように、且つ、有機半導体層5にそれぞれ接するように設けられている。また、ゲート電極3は、ゲート絶縁層4によってソース電極1、ドレイン電極2、及び有機半導体層5から隔てられるように設けられる。更に、これらの構成要素は基板6によって支持されている。
【0007】
このように構成された従来の有機電界効果トランジスタ100においては、ゲート電極3に一定の電圧(以下、「閾値電圧」又は「スレッショルド電圧」という。)以上の電圧を印加すると、有機半導体層5内のチャネル部分にキャリアが発生して蓄積層を形成し、ソース電極1とドレイン電極2との間の導電性が上昇する。
【0008】
蓄積層は、ゲート電極3の電圧(以下、「ゲート電圧」という。)に依存して形成され、蓄積層の厚みが変化することにより、有機電界効果トランジスタ100の導電性が変化する。また、ゲート電圧3が閾値電圧よりも低い場合は蓄積層が形成されず導電性を失う。即ち、有機電界効果トランジスタ100は、ゲート電圧に依存したソース電極1−ドレイン電極2間の電流を制御する可変スイッチのような動作をする。
【0009】
【特許文献1】特開昭61−202469号公報
【特許文献2】特許第2984370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、有機電界効果トランジスタは、溶液を用いた低温プロセスで製造可能という、無機半導体材料を用いたトランジスタには無い有効な特徴を有している。
【0011】
しかしながら、パターニング加工された有機半導体層のエッジ部分は、印刷法の様なマイルドな条件下でパターニングされたものであっても、劣化しやすいという課題を有していた。さらに、上述の微細加工技術にあっては、何れの方法であっても、成膜された有機半導体層をエッチング処理する際にプロセス雰囲気に曝すと、有機半導体層のエッジ部分が劣化する虞があった。
【0012】
エッチング処理等によって劣化した有機半導体層5のエッジ部分5’(図8(a)に示す一点鎖線の外の領域部分)は、ゲート電極3に電圧を印加していない状態であっても、劣化によりキャリア密度が上がるため、高導電層が形成される。この劣化して常時高導電層が形成されているエッジ部分5’が、ソース電極1とドレイン電極2とを短絡することによって、ゲート電極3に電圧を印加していない状態におけるソース電極1−ドレイン電極2間の電流(以下、「オフ電流」という。)を上昇させる。即ち、図8(a)の矢印X1,X2に示すような経路によってオフ電流が上昇し、延いては半導体特性の低下を招いてしまうという課題を有していた。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、パターニングされた有機半導体層を有する有機電界効果トランジスタにおいて、パターニングにより有機半導体層のエッジ部分が劣化した場合でも、該エッジ部分を流れるオフ電流を抑制し、良好な半導体特性を有する有機電界効果トランジスタ並びにそれを用いた集積回路及び電子デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記実情に鑑み鋭意検討を行なった結果、有機半導体層のエッジ部分と、ソース電極及びドレイン電極のうち少なくとも一方とが接触しないように配置する、或いは、基板面を投影面とした場合に、有機半導体層の投影パターンのエッジ部分に沿ってソース電極の投影パターンとドレイン電極の投影パターンとを結ぶ全ての経路と、ゲート電極の投影パターンとが交差するように配置することにより、パターニング処理により劣化した該有機半導体のエッジ部分を流れるオフ電流を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
即ち、本発明の要旨は、ゲート絶縁層と、パターニングされた有機半導体層と、該ゲート絶縁層により該有機半導体層と隔離されたゲート電極と、該有機半導体層に接して設けられたソース電極及びドレイン電極を有する有機電界効果トランジスタであって、該有機半導体層のエッジ部分と、該ソース電極及び該ドレイン電極のうち少なくとも一方とが接触しないように配置されることを特徴とする、有機電界効果トランジスタに存する(請求項1)。
【0016】
この場合、該ソース電極及び該ドレイン電極のうち少なくとも一方が、該ゲート絶縁層を介して、該有機半導体層のエッジ部分と隔てられるように配置されることが好ましい(請求項2)。
【0017】
また、該有機半導体層に接して設けられた絶縁部をさらに備え、該ソース電極及び該ドレイン電極のうち少なくとも一方が、該絶縁部を介して、該有機半導体層のエッジ部分と隔てられるように配置されることが好ましい(請求項3)。
【0018】
さらに、基板面を投影面とした場合に、該有機半導体層の投影パターンのエッジ部分に沿って該ソース電極の投影パターンと該ドレイン電極の投影パターンとを結ぶ全ての経路と、該ゲート電極の投影パターンとが交差するように配置されることが好ましい(請求項4)。
【0019】
本発明の別の要旨は、ゲート絶縁層と、パターニングされた有機半導体層と、該ゲート絶縁層により該有機半導体層と隔離されたゲート電極と、該有機半導体層に接して設けられたソース電極及びドレイン電極を有する有機電界効果トランジスタであって、基板面を投影面とした場合に、該有機半導体層の投影パターンのエッジ部分に沿って該ソース電極の投影パターンと該ドレイン電極の投影パターンとを結ぶ全ての経路と、該ゲート電極の投影パターンとが交差するように配置されることを特徴とする、有機電界効果トランジスタに存する(請求項5)。
【0020】
また、該ゲート電極の投影パターンが、該有機半導体層の投影パターン周囲の閉曲線と2箇所以上で交差するように配置されることにより、該有機半導体層の投影パターンが、該ソース電極の投影パターンを含む該有機半導体層の部分投影パターンと、該ドレイン電極の投影パターンを含む該有機半導体層の部分投影パターンとを含む、2以上の部分投影パターンに分割されることが好ましい(請求項6)。
【0021】
本発明の別の要旨は、上述の有機電界効果トランジスタを少なくとも備えることを特徴とする集積回路に存する(請求項7)。
【0022】
本発明の別の要旨は、上述の有機電界効果トランジスタを含む電子回路を少なくとも備えることを特徴とする電子デバイスに存する(請求項8)。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、パターニング処理により劣化した有機半導体層のエッジ部分を流れるオフ電流を抑制し、良好な半導体特性を有する有機電界効果トランジスタを得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[I.本発明の実施形態]
以下、本発明の実施の形態につき、図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0025】
なお、本発明において「有機半導体層のエッジ部分」とは、有機半導体層の端部付近における、パターニング処理による劣化が生じ得る領域を指すものとする。その領域は有機半導体層の材料やパターニングの手法によっても異なるが、一般的には、有機半導体層のパターニング形状の端部から、通常0.1μm以内、好ましくは1μm以内の領域を言うものとする。
【0026】
また、パターニング処理による有機半導体層のエッジ部分の劣化の度合いは、パターニング処理の種類によって異なる。パターニング処理の手法としては、印刷法、エッチング処理、スタンプ法等が挙げられるが、中でもエッチング処理を用いた場合に、得られる有機半導体層のエッジ部分に劣化が生じ易くなる傾向がある。従って、本発明の適用によって得られる効果もより顕著となる。
【0027】
[I−1.第1実施形態]
[基本構成]
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る有機電界効果トランジスタ101を上方からみた模式的な平面図であり、図1(b)は図1(a)のb−b’面における模式的な断面図である。なお、図1(a),(b)において、図8(a),(b)に示す構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を用いて表し、その説明は省略するものとする。以下、特に断りが無い限り、後述の図2から図7に関しても同様とする。
【0028】
図1(a),(b)に示される有機電界効果トランジスタ101の構成は、図8(a),(b)に示される従来の有機電界効果トランジスタ100の構成において、ドレイン電極2を以下に説明するドレイン電極2aに変更するとともに、該変更に伴ってゲート絶縁層4と有機半導体層5の形状を一部変更した(これらをそれぞれゲート絶縁層4a、有機半導体層5aという。)ものである。
【0029】
即ち、ドレイン電極2aは、その一部が屈曲するように形成され、該屈曲部分と有機半導体層のエッジ部分5’aとの間に、ゲート絶縁層4aが介在するように構成される。ただしこの場合でも、ドレイン電極2aはその図中左側端部において有機半導体層5aに接するように設けられているものとする。これにより、ドレイン電極2aは有機半導体層5aと接触しつつ、そのエッジ部分5’aとは隔離されるように構成される。こうした構成によれば、有機半導体層のエッジ部分5’aとドレイン電極2aとの物理的接点が遮断されるので、ソース電極1とドレイン電極2aとの間に短絡が生じるのを回避できる。
【0030】
なお、ドレイン電極ではなくソース電極を、ゲート絶縁層を介して、有機半導体層のエッジ部分と隔てるように構成してもよい。この場合、図1(a),(b)のドレイン電極2aと同様に、ソース電極の一部を屈曲させて形成し、該屈曲部分と有機半導体層のエッジ部分との間に、ゲート絶縁層が介在するように構成する。こうした構成によれば、有機半導体層のエッジ部分とソース電極との物理的接点が遮断されるので、ソース電極とドレイン電極との間に短絡が生じるのを回避できる。
【0031】
[第1変形例]
さらには、ドレイン電極及びソース電極の双方を、ゲート絶縁層を介して、有機半導体層のエッジ部分と隔てるように構成してもよい。
【0032】
図2は本発明の第1実施形態の第1変形例に係る有機電界効果トランジスタ102を側方からみた模式的な断面図である。図2に示される有機電界効果トランジスタ102において、ソース電極1a及びドレイン電極2aは、それぞれその一部が屈曲するように形成され、該屈曲部分と有機半導体層のエッジ部分5’bとの間に、ゲート絶縁層4bが介在するように構成される。ただしこの場合でも、ソース電極1aはその図中右側端部において、又ドレイン電極2aはその図中左側端部において有機半導体層5aに接するように設けられているものとする。これにより、ソース電極1a及びドレイン電極2aは、何れも有機半導体層5bと接触しつつ、そのエッジ部分5’bとは隔離されるように構成される。
【0033】
こうした構成によれば、有機半導体層のエッジ部分5’bが、ソース電極1aとドレイン電極2aの何れからも隔てられているため、有機半導体層のエッジ部分5’bの劣化幅が一様でない場合であっても、より確実にオフ電流の上昇を抑制することが可能になる。
【0034】
なお、図1(a),(b)及び図2に示すソース電極1a及び/又はドレイン電極2aの屈曲形状は、あくまでも一例である。ソース電極及び/又はドレイン電極が、ゲート絶縁層を介して有機半導体層のエッジ部分から隔離されるのであれば、ソース電極及び/又はドレイン電極の屈曲形状は任意に設定することが可能である。
【0035】
[第2変形例]
また、有機半導体層上に絶縁部を設けることにより、ソース電極及び/又はドレイン電極を有機半導体層のエッジ部分から隔離することも可能である。
【0036】
図3は、本発明の第1実施形態の第2変形例に係る有機電界効果トランジスタ103の側方からみた模式的な断面図である。図3に示される有機電界効果トランジスタ103の構成は、図8に示される従来の有機電界効果トランジスタ100の構成において、ドレイン電極2上に絶縁部7aを設けるとともに、それに応じて有機半導体層5の形状の一部を変更した(これを有機半導体層5cという。)ものである。
【0037】
図3に示す絶縁部7aは、ドレイン電極2と有機半導体層のエッジ部分5’cとの間に介在するように設けられている。ただし絶縁部7aはドレイン電極2と有機半導体層5cとを完全に隔てるものではなく、ドレイン電極2はその図中左端部近傍において有機半導体層5cに接するように設けられているものとする。これにより、ドレイン電極2は、有機半導体層5cと接触しつつ、そのエッジ部分5’cとは隔離されるように構成される。こうした構成によっても、有機半導体層のエッジ部分5’cとドレイン電極2との物理的接点が絶縁部7aにより遮断されるので、ソース電極1とドレイン電極2との間に短絡が生じるのを回避できる。
また、ソース電極1とドレイン電極2を屈曲させる必要が無いので、従来の電極を用いて容易に構成することが可能である。
【0038】
なお、ドレイン電極ではなくソース電極を、有機半導体層上に設けた絶縁部により、有機半導体層のエッジ部分と隔離するように構成してもよい。この場合、図3の絶縁部7aと同様の絶縁部を、ソース電極と有機半導体層のエッジ部分との間に介在するように設ける。こうした構成によっても、有機半導体層のエッジ部分とソース電極との物理的接点が遮断されるので、やはりソース電極とドレイン電極との間に短絡が生じるのを回避できる。
【0039】
また、ドレイン電極及びソース電極の双方を、有機半導体層上に設けた絶縁部により、有機半導体層のエッジ部分から隔離するように構成してもよい。こうした構成によれば、有機半導体層のエッジ部分がソース電極及びドレイン電極の何れからも隔てられるため、有機半導体層のエッジ部分の劣化幅が一様でない場合であっても、より確実にオフ電流の上昇を抑制することが可能になる。この場合、ドレイン電極を有機半導体層のエッジ部分と隔離する絶縁部と、ソース電極を有機半導体層のエッジ部分と隔離する絶縁部とをそれぞれ個別に設けてもよいが、単一の絶縁部によってドレイン電極及びソース電極の双方を有機半導体層のエッジ部分から隔離するように構成してもよい。
【0040】
[第3変形例]
更には、ソース電極及び/又はドレイン電極を屈曲させて形成するとともに、有機半導体層上に絶縁部を設けることにより、ソース電極及び/又はドレイン電極を有機半導体層のエッジ部分から隔離することも可能である。
【0041】
図4は、本発明の第1実施形態の第3変形例に係る有機電界効果トランジスタ104を側方からみた模式的な断面図である。図4に示される有機電界効果トランジスタ104の構成は、図3に示される有機電界効果トランジスタ103の構成において、絶縁部7aを絶縁部7bに、ドレイン電極2をドレイン電極2bに変更するとともに、該変更に伴って有機半導体層5cの形状の一部を変更した(これを有機半導体層5dという。)ものである。
【0042】
図4に示すドレイン電極2bは、その一部が有機半導体層5dの図中上方(ゲート絶縁層4と反対側)に突出するように屈曲して形成されるとともに、該屈曲部分と有機半導体層のエッジ部分5’dとの間に絶縁部7bが設けられている。ただしこの場合でも、ドレイン電極2bはその図中左側端部において有機半導体層5bに接するように設けられているものとする。これにより、ドレイン電極2bは、有機半導体層5dと接触しつつ、そのエッジ部分5’dとは隔離されるように構成される。こうした構成によっても、有機半導体層のエッジ部分5’dとドレイン電極2bとの物理的接点が絶縁部7bにより遮断されるので、ソース電極1とドレイン電極2bとの間に短絡が生じることを回避できる。
【0043】
なお、図4では、ドレイン電極2bを屈曲させて形成し、更に絶縁部7bを設けることにより、ドレイン電極2bを有機半導体層のエッジ部分5’dから隔離するように構成しているが、ドレイン電極に代えてソース電極を同様の構成としたり、ドレイン電極とソース電極をともに同様の構成とすることも可能である。
【0044】
絶縁部7a,7bの材料としては、絶縁性の性質を有しており、ソース電極1−ゲート電極2,2b間の電圧に対して耐性を有するものであれば、特に制限は無い。例としては、後述するゲート絶縁層の材料と同様の材料が挙げられる。また、絶縁部7a,7bは、ゲート絶縁層に比較して印加される電圧が低いことから、ゲート絶縁層よりも絶縁性能が低い材料も用いることが可能である。なお、絶縁部7a,7bの材料は一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
【0045】
絶縁部7a,7bの形状も特に制限されない。ドレイン電極2と有機半導体層のエッジ部分5’c,5’dとの物理的な接点を遮断することができ、且つ、ドレイン電極2と有機半導体層5c,5dとの接触を許容することができれば、任意の形状とすることが可能である。好ましくは、後述するソース電極及び/又はドレイン電極と有機半導体層のエッジ部分との最近接距離を考慮して、絶縁部7a,7bの形状を定めることが好ましい。
【0046】
[その他]
以上説明した本発明の第1実施形態及びその各変形例によれば、ソース電極及び/又はドレイン電極と有機半導体層のエッジ部分とが、隔離されるように構成される。このとき、ソース電極及び/又はドレイン電極と有機半導体層のエッジ部分との物理的接点が遮断されれば、ソース電極とドレイン電極に対して、第1実施形態及びその各変形例のうち、いずれか2種以上の構成を組み合わせて適用してもよい。この構成により、ソース電極とドレイン電極との間に短絡が生じることを回避できる。その結果、オフ電流の上昇による最終製品の異常が減り、歩留まりが改善するため好ましい。
【0047】
なお、上述の第1実施形態及びその各変形例においては、ソース電極及び/又はドレイン電極と、有機半導体層のエッジ部分との最近接距離を、通常0.1μm以上、中でも1μm以上、更には2μm以上とすることが好ましい。ソース電極及び/又はドレイン電極と有機半導体層のエッジ部分との最近接距離が短過ぎると、有機半導体層のエッジ部分、即ち、劣化して高導電層が形成され得る箇所からの遮断が不完全になる傾向がある。
【0048】
[I−2.第2実施形態]
図5は、本発明の第2実施形態に係る有機電界効果トランジスタ105を上方からみた模式的な平面図である。図5の有機電界効果トランジスタ105の構成は、図8に示される従来の有機電界効果トランジスタ100の構成において、ゲート電極3を以下に説明するゲート電極3aに変更するとともに、該変更に伴ってゲート絶縁層4の形状を一部変更した(これをゲート絶縁層4cという。)ものである。
【0049】
図5に示すように、ゲート電極3aは、有機半導体層のエッジ部分5’に沿った矢印X3及び矢印X4と交差するように備えられる。ここで、矢印X3及び矢印X4は、有機半導体層5の劣化したエッジ部分5’によってソース電極1からドレイン電極2への短絡が生じ得る経路を表わしている。この経路は、基板6面を投影面とした場合に、有機半導体層5の投影パターンのエッジ部分5’に沿ってソース電極1の投影パターンとドレイン電極2の投影パターンとを結ぶ経路に相当する。即ち、この経路に電流が流れることによって、オフ電流が上昇する。図5では、ゲート電極3aの投影パターンが、これらの経路X3,X4の全てに対して交差するように、ゲート電極3aが配置されている。
【0050】
以上のように構成された有機電界効果トランジスタ105の動作時には、以下のようにゲート電極3aの電圧制御を行なう。即ち、ソース電極1からドレイン電極2へ電流を流すときには、有機半導体層5に蓄積層を形成するようにゲート電極3aに電圧を印加する。反対に、ソース電極1からドレイン電極2への電流を遮断するときには、通常蓄積層を形成するための電圧とは逆の電圧をゲート電極3aに印加する。これにより、劣化により有機半導体層のエッジ部分5’に常時形成されている高導電層中のキャリアを打ち消すことができ、ソース電極1とドレイン電極2との間に短絡が生じることを回避できる。
【0051】
即ち、オフ電流は、有機半導体層5の劣化した部分、即ちエッジ部分5’に沿って、ソース電極1の投影パターンとドレイン電極2の投影パターンとを結ぶ経路X3,X4を流れるのであり、有機半導体層5がいかなる形状にパターニングされていても、これらの経路X3,X4を全て遮断することができれば、オフ電流の上昇を制御することが可能である。経路の遮断は、有機半導体層のエッジ部分5’に沿った経路X3,X4の各々について1箇所以上、ゲート電極3aによって通常蓄積層を形成させる電圧とは逆の電圧を印加することによりなされる。
【0052】
なお、ゲート電極3aの形状や配置位置は、図5に示される形状に限定されるものではない。基板面を投影面とした場合に、有機半導体層の投影パターンのエッジ部分に沿ってソース電極の投影パターンとドレイン電極の投影パターンとを結ぶ全ての経路と、ゲート電極の投影パターンとが交差する限りにおいて、任意の形状とすることができ、また、任意の位置に配置することが可能である。
【0053】
中でも、有機半導体層の投影パターン周囲における閉曲線を考えた場合、その閉曲線とゲート電極の投影パターンとが2箇所以上で交差するように配置されることにより、有機半導体層の投影パターンが、ソース電極の投影パターンを含む有機半導体層の投影パターンの部分(以下、「部分投影パターン」という。)と、ドレイン電極の投影パターンを含む有機半導体層の部分投影パターンとを含む、2以上の部分投影パターンに分割されるように配置位置や形状を設定することが好ましい。
即ち図5の場合において、上記ソース電極の投影パターンを含む有機半導体層の投影パターンとは、有機半導体層5の投影パターンのうち、ゲート電極3aの投影パターン左縁部より左側の部分を指す。また、上記ドレイン電極の投影パターンを含む有機半導体層の投影パターンとは、有機半導体層5の投影パターンのうち、ゲート電極3aの投影パターン右縁部より右側の部分を指す。なお、本発明は図5に限られるものではない。
【0054】
有機半導体層のエッジ部分5’と交差するゲート電極3aの幅は、特に制限されるものではなく、有機電界効果トランジスタ105の構成や用途等に合わせて適宜調整すればよいが、一般的には、通常1μm以上、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下の範囲である。ゲート電極3aの幅があまり狭いと有効にオフ電流を遮断できない可能性があり、またあまりに広いと微細化の障害となる可能性がある。
【0055】
オフ電流を遮断する際にゲート電極に印加するゲート電圧は、特に制限されるものではなく、有機電界効果トランジスタ105の構成や用途、有機半導体層のエッジ部分5’の劣化の状況等に合わせて適宜調整すればよい。ゲート電圧を印加した場合にオフ状態からオン状態に移行する電圧をスレッショルド電圧(Vt)とすると、一般に、半導体の劣化によりこのVtの値が変化する。従って、このVtの値の変化に応じて、オフ電流遮断時のゲート電圧を調整すればよい。
【0056】
本実施形態においては、第1実施形態のように、ソース電極やゲート電極の形状を屈曲させる必要が無く、また、絶縁部等の新たな構成要素を設ける必要も無い。従来の有機電界効果トランジスタにおいて、ゲート電極の形状等に多少の変更を加えるだけで、実現することが可能である。そのため、有機電界効果トランジスタの各構成要素の成形や積層等に際して特別な手段等を用いる必要がないため、容易に且つ低コストで高いオフ電流抑制効果が実現できるという利点がある。
【0057】
[I−3.第3実施形態]
上述した第1実施形態の有機電界効果トランジスタ101(図6に示す)は、有機半導体層のエッジ部分5’aの劣化が進行し、該エッジ部分5’aに常時形成されている高導電層領域が拡大した場合に、図6の矢印X5,X6の経路でソース電極1とドレイン電極2aとが短絡する場合がある。この場合、オフ電流が上昇することを避けるために、第1実施形態の構成に対して更に上述の第2実施形態の技術的特長を組み合わせた構成をとることも可能である。
【0058】
図7は、本発明の第3実施形態に係る有機電界効果トランジスタ106を上方からみた模式的な平面図である。図7の有機電界効果トランジスタ106の構成は、第1実施形態と第2実施形態の技術的特長を併せ持つ構成を有する。具体的には、ドレイン電極2aが、その一部を屈曲するように形成され、該屈曲部分と有機半導体層のエッジ部分5’aとの間に、ゲート絶縁層4dが介在するように構成されることで、有機半導体層のエッジ部分5’aと隔てられている。さらに、ゲート電極3aは、基板6面を投影面とした場合に、有機半導体層5aの投影パターンのエッジ部分5’aに沿ってソース電極1の投影パターンとドレイン電極2の投影パターンとを結ぶ経路の全てに対して交差するように配置される。
【0059】
以上の構成を有する有機電界効果トランジスタ106は、有機半導体層のエッジ部分5’aとドレイン電極2aとの物理的な接点が遮断され、その結果、ソース電極1とドレイン電極2aとの間に短絡が生じるのを回避することができる。また、有機半導体層の劣化が進行し、エッジ部分5’aに常時形成されている高導電層領域が拡大した結果、有機半導体層のエッジ部分5’aとドレイン電極2aとが接触するようになった場合でも、ゲート電極3aに通常蓄積層を形成するための電圧とは逆の電圧をゲート電極に印加することで、劣化により有機半導体層のエッジ部分5’aに常時形成されている高導電層を打ち消することができる。したがって、ソース電極1とドレイン電極2aとの短絡を回避することができる。
【0060】
なお、ゲート絶縁層4dを介してドレイン電極2aを有機半導体層のエッジ部分5’aから隔てる構成に関しては、第1実施形態と基本的に同一であるので、その詳細な説明は省略する。また、ゲート電極3aの構成や、オフ電流を遮断するときのゲート電圧等に関しては、第2実施形態と基本的に同一であるので詳細な説明は省略する。
【0061】
また、第1実施形態と第2実施形態との組み合わせは、図7に示される組み合わせに制限されるわけではなく、任意に変形を加えて組み合わせることが可能である。
【0062】
例えば、図7では上記の有機半導体層のエッジ部分5’aとドレイン電極2aとを隔てる構成を示したが、ドレイン電極の代わりにソース電極を有機半導体層のエッジ部分と隔離するように構成したり、ソース電極及びドレイン電極の双方を有機半導体層のエッジ部分と隔離するように構成することもできる。
【0063】
また、図7ではゲート絶縁層4dを介して有機半導体層のエッジ部分5’aとドレイン電極2aとを隔てる構成を示したが、有機半導体層上に絶縁部を設けることにより、有機半導体層のエッジ部分とソース電極及び/又はドレイン電極とを隔離する構成としてもよい。
【0064】
[I−4.その他]
以上説明した第1〜3実施形態の有機電界効果トランジスタは、基板上にゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極及びドレイン電極、及び有機半導体層がこの順に積層された構成を有していたが、本発明が適用可能な有機電界効果トランジスタの層構成はこれに制限されるものではない。ゲート絶縁層と、パターニングされた有機半導体層と、ゲート絶縁層により有機半導体層と隔離されたゲート電極と、有機半導体層に接して設けられたソース電極及びドレイン電極とを有する有機電界効果トランジスタであれば、任意の層構成の有機電界効果トランジスタに対して、本発明を適用することが可能である。
【0065】
[II.各実施形態の共通事項]
先に実施形態を挙げて説明した本発明の有機電界効果トランジスタは、何れもその基本構成要素として、ゲート絶縁層と、パターニングされた有機半導体層と、ゲート絶縁層により有機半導体層と隔離されたゲート電極と、有機半導体層に接して設けられたソース電極及びドレイン電極とを備えている。更に、これらの構成要素は通常、基板上に設けられ、基板によって支持される。
【0066】
これらの構成要素の詳細(材料、形成方法等)は、上記[I.本発明の実施形態]の欄で説明した事項を除き、従来の有機電界効果トランジスタと同様である。よって以下の記載では、上記[I.本発明の実施形態]の欄で説明した事項以外の共通事項について、まとめて説明する。
【0067】
〔II−1.基板〕
基板の材料は、その上に設けられる有機電界効果トランジスタの各構成要素を支持できるものであれば、特に制限されない。例としては、公知のガラス、ポリシロキサン等の無機基板、及び各種有機ポリマー等の有機基板が挙げられる。これらのうち、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルスルフォン、エポキシ樹脂、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリパラバン酸、ポリシルセスキオキサン、及びポリオレフィン等のビニル系ポリマー等の有機ポリマーが好適である。中でも、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリパラバン酸等の縮合系ポリマーや、ポリビニルフェノール等の架橋体が、耐熱性や耐溶剤性の点から好ましく、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾールが更に好ましく、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、又はポリイミドが特に好ましい。これらの材料は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
【0068】
また、基板は、上述の主材料に加え、必要に応じて、充填材、添加剤等の成分を含んでいてもよい。これらの成分も、一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
【0069】
なお、基板の材料は、ガラス転移点が40℃以上であることが好ましい。ガラス転移点が40℃より低いと、流動性が大き過ぎるため、他の層の積層時や加熱時に軟化して基板を維持し難くなる傾向がなる。
【0070】
また、基板の材料は、線膨張係数が通常25×10-5cm/cm・℃以下、中でも10×10-5cm/cm・℃以下であることが好ましい。線膨張係数が25×10-5cm/cm・℃より大きいと、製造時の熱処理において寸法変化を起こし易く、有機電界効果トランジスタの性能が安定しない傾向がある。
【0071】
また、基板の材料は、有機電界効果トランジスタの各構成要素の形成時の使用溶媒に対して耐溶剤性を示すものが好ましく、また、基板に接して設けられる構成要素(上記の各実施形態の構成においては、ゲート絶縁膜及びゲート電極)との密着性が高いものが好ましい。
【0072】
基板の厚みは、通常0.01mm以上、中でも0.05mm以上、また、通常10mm以下、中でも2mm以下、更には1mm以下の範囲とすることが好ましい。
具体的に、例えば、有機ポリマーを主材料とする基板の場合は、0.05〜0.1mm程度とし、ガラス、シリコン等を主材料とする基板の場合は、0.1〜10mm程度とするのが好ましい。
【0073】
〔II−2.ゲート電極〕
ゲート電極の構成材料としては、導電性を示す材料であれば特に制限されず、公知の材料を任意に選択して用いることができる。ゲート電極の材料の例としては、白金、金、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属、InO2、SnO2、ITO等の導電性金属酸化物、樟脳スルホン酸がドープされたポリアニリン、パラトルエンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェン等の、ドープされた導電性高分子、及び、カーボンブラック、グラファイト粉、金属微粒子等がバインダーに分散されてなる導電性複合材料等が挙げられる。これらの材料は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
【0074】
ゲート電極は、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、印刷法、ゾルゲル法等により形成される。そのパターニング方法としては、例えば、フォトレジストのパターニングとエッチング液や反応性のプラズマでのエッチングを組み合わせたフォトリソグラフィー法、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法、及びこれらの手法を複数組み合わせた手法等が挙げられる。また、レーザーや電子線等のエネルギー線を照射して材料を除去することや材料の導電性を変化させることにより、直接パターンを形成することも可能である。
【0075】
ゲート電極の厚みは、特に制限されるものではないが、通常0.01μm以上、中でも0.02μm以上、また、通常2μm以下、中でも1μm以下の範囲とすることが好ましい。
【0076】
〔II−3.ゲート絶縁層〕
ゲート絶縁層は、ゲート電極とソース電極及びドレイン電極とのオーバーラッピング領域、並びにゲート電極上のチャネル領域が電気的絶縁領域として維持する機能を有する層である。なお、ここで「電気的絶縁」とは、電気伝導度が10-9S/cm以下のことを言う。
【0077】
ゲート絶縁層の材料は、絶縁性を有する材料ならば特に限定されないが、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のポリマー及びこれらを組み合わせた共重合体、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の酸化物、SrTiO3、BaTiO3等の強誘電性酸化物、窒化珪素等の窒化物、硫化物、フッ化物等の誘電体、或いはこれら誘電体の粒子を分散させたポリマー、等が挙げられる。これらの材料は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
【0078】
ゲート絶縁層としては、ゲート電極への漏れ電流、電界効果トランジスタの低ゲート電圧駆動に関係することから、室温での電気伝導度が通常10-9S/cm以下、中でも10-14S/cm以下であることが好ましい。また、比誘電率が通常2.0以上、中でも2.5以上であることが好ましい。
【0079】
ゲート絶縁層は、例えば、スピンコーティング、溶液キャスティング、スタンプ印刷、スクリーン印刷、又はジェット印刷等の公知の方法で溶液処理し、乾燥させて未架橋ポリマー層を形成した後、紫外線照射、又は加熱処理によって架橋構造を形成して架橋ポリマー層となすことにより形成される。なお、例えば、紫外線照射による架橋処理中に、フォトマスク等を使用することによってパターニングが可能であり、紫外線未照射の未架橋ポリマー部分は有機溶媒等で容易に除去することができる。このパターニング処理を施すことによって、ビアホール構造を電子回路中に構築することが容易となる。
【0080】
ゲート絶縁層の厚みは、通常0.01μm以上、中でも0.1μm以上、更には0.2μm以上、また、通常4μm以下、中でも2μm以下、更には1μm以下の範囲であることが好ましい。
【0081】
〔II−4.有機半導体層〕
有機半導体層の材料となる有機半導体としては、有機物を主成分とする半導体であれば特に制限されず、任意の材料を使用することができる。具体的には、ナフタセン、ペンタセン、ピレン、フラーレン等の縮合芳香族炭化水素、α−セキシチオフェン等のオリゴマー類、フタロシアニンやポルフィリン等の大環状化合物、α−セキシチオフェンやジアルキルセキシチオフェンに代表される、チオフェン環を4個以上含むオリゴチオフェン類、或いは、チオフェン環、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環を合計4個以上連結したもの、アントラジチオフェン、ジベンゾチエノビスチオフェン、α、α’−ビス(ジチエノ[3,2−b’:2’、3’−d]チオフェン)等の縮合チオフェン及びその誘導体、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボンサンジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボンサンジイミド等の、芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物、銅フタロシアニン、パーフルオロ銅フタロシアニン、テトラベンゾポルフィリン及びその金属塩等の大環状化合物、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリチエニレンビニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、特に、レジオレギュラーポリチオフェンのような自己組織化を示すものや、ポリフルオレンやその共重合体に代表される液晶性を示す高分子等が挙げられる。これらの有機半導体材料は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。また、有機半導体材料のみを用いてもよいが、有機半導体材料以外の材料と混合して用いることもできる。更には、異なる材料からなる複数の層の積層構造として用いることも出来る。
【0082】
中でも、有機半導体層の材料としては、アザアヌレン化合物が好ましく、ポルフィリン骨格を有する化合物(以下「ポルフィリン系化合物」と略称する。)やフタロシアニン骨格を有する化合物(以下「フタロシアニン系化合物」と略称する。)がより好ましい。ポルフィリン系化合物の具体例としては、特にベンゾポルフィリンおよびそのCuやZn等の金属錯体が好ましい。フタロシアニン系化合物の具体例としては、銅フタロシアニン、F16CuPC等のハロゲン化フタロシアニン等が挙げられる。
【0083】
有機半導体層は、上述の有機半導体材料等の材料を種々の方法で成膜することにより、形成することができる。例えば、ある程度の溶解性を有する材料に関しては、塗布による成膜が可能である。塗布の方法としては、溶液をたらすだけのキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、ワイヤバーコーティング、スプレーコーティング等のコーティング法や、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法等、更にはこれらの手法を複数組み合わせた方法を用いることができる。更に、塗布に類似の技術として、水面上に形成した単分子膜を基板に移し積層するラングミュア・ブロジェット法、液晶や融液状態を2枚の基板で挟んだり毛管現象で基板間に導入する方法等も挙げられる。
【0084】
また、溶解性の高い有機半導体前駆体を上記塗布法により成膜し、それを加熱処理等により有機半導体膜に変換することにより、有機半導体層を形成することもできる。このような有機半導体前駆体の例としては、テトラベンゾポルフィリン及びペンタセンがこれまでに報告されている。
【0085】
また、有機半導体層を真空プロセスで形成することも出来る。この場合には、有機半導体材料をルツボや金属のボートに入れて真空中で加熱し、基板等に付着させる真空蒸着法を用いることが出来る。この際、真空度としては、1×10-3Torr以下、好ましくは1×10-5Torr以下である。なお、1Torr≒133Paである。また、基板温度でトランジスタの特性が変化するので、最適な基板温度を選択する必要があるが、通常0℃以上、200℃以下の範囲が好ましい。また、蒸着速度は通常0.01Å/秒以上、好ましくは0.1Å/秒以上、また、通常100Å/秒以下、好ましくは10Å/秒以下の範囲が用いられる。材料を蒸発させる方法としては、加熱の他、加速したアルゴン等のイオンを衝突させるスパッタ法も用いることが出来る。
【0086】
有機半導体層の膜厚は、薄過ぎると電流の流れる部分が制限され、特性が不充分になってしまう傾向があり、厚過ぎると成膜に必要な材料が多くなったり、成膜時間が長くなったりしてコストアップにつながり、且つ、オフ電流が流れやすくなりオンオフ比を大きく取れなくなる傾向がある。従って、好ましい有機半導体層の膜厚は、通常5nm以上、中でも10nm以上、更には30nm以上、また、通常10μm以下、中でも1μm以下、更には500nm以下の範囲である。
【0087】
〔II−5.ソース電極及びドレイン電極〕
ソース電極及びドレイン電極の構成材料としては、ゲート電極の場合と同様、導電性を示す材料であれば特に制限されず、公知の材料を任意に選択して用いることができる。ソース電極及びドレイン電極の材料の例としては、白金、金、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属、InO2、SnO2、ITO等の導電性金属酸化物、樟脳スルホン酸がドープされたポリアニリン、パラトルエンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェン等の、ドープされた導電性高分子、及び、カーボンブラック、グラファイト粉、金属微粒子等がバインダーに分散されてなる導電性複合材料等が挙げられる。これらの材料は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
【0088】
ソース電極及びドレイン電極は、ゲート電極と同様、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、印刷法、ゾルゲル法等により形成される。そのパターニング方法としては、例えば、フォトレジストのパターニングとエッチング液や反応性のプラズマでのエッチングを組み合わせたフォトリソグラフィー法、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法、及びこれらの手法を複数組み合わせた手法等が挙げられる。また、レーザーや電子線等のエネルギー線を照射して材料を除去することや材料の導電性を変化させることにより、直接パターンを形成することも可能である。
【0089】
ソース電極及びドレイン電極の厚みは、特に制限されるものではないが、通常0.01μm以上、中でも0.02μm以上、また、通常2μm以下、中でも1μm以下の範囲とすることが好ましい。
【0090】
〔II−6.チャネル〕
有機電界効果トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極で挟まれるチャネル部分の電流をゲート電極により制御して、スイッチング或いは増幅の動作をする。このチャネル部分の長さ(ソース電極とドレイン電極とのギャップ間隔)は、一般に狭いほどトランジスタとしての特性が上昇するが、狭過ぎるとオフ電流が増加したり、オンオフ比が小さくなる、いわゆるショートチャンネル効果が生じる傾向がある。また、チャネルの幅(ソース電極とドレイン電極との間の幅)が大きくなると、大きな電流を流せるようになるという点で好ましいが、大き過ぎると素子の面積が大きくなり、集積化の面で不利になる場合がある。なお、ソース電極及びドレイン電極を櫛型電極にすることにより、長いチャネル長を得ることができる。
【0091】
従って、チャネル長は、通常100nm以上、中でも500nm以上、更には1μm以上、また、通常300μm以下、中でも100μm以下、更には50μm以下の範囲であることが好ましい。
また、チャネルの幅は、通常500nm以上、中でも5μm以上、更には10μm以上、また、通常20mm以下、中でも5mm以下、更には1mm以下の範囲であることが好ましい。
【0092】
〔II−7.その他〕
本発明の電界効果トランジスタは、以上説明した各層の他に、必要であれば任意の層を有していてもよい。
例えば、基板と反対側の最上層(上記の各実施形態では有機半導体層等)の上などに、保護膜を設けることもできる。保護層の材料は特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、ポリオレフィン等の各種樹脂からなる膜や、酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素等、無機酸化膜や窒化膜等の誘電体からなる膜が好ましく挙げられる。特に、酸素や水分の透過率や吸水率の小さな樹脂(ポリマー)が望ましい。例えばポリマーフィルムにアルミ等の金属や酸化ケイ素、窒化珪素、SiON等の気体透過性の小さな金属や無機酸化膜を有するポリマーの膜等を好適に用いることができる。
【0093】
〔II−8.電界効果トランジスタ〕
本発明の電界効果トランジスタの移動度は、通常10-3cm2/Vs以上、好ましくは10-2cm2/Vs以上が実用上望ましく用いることができる。
オンオフ比は、アプリケーション等にも依存するが、一般的には102以上、好ましくは103以上、更に好ましくは104以上が望ましい。
【0094】
本発明の電界効果トランジスタは、単独の素子として構成してもよいが、集積回路の一部として構成されていてもよい。後者の場合、集積回路が有するトランジスタの大部分又は全てが、本発明の電界効果トランジスタであることが好ましい。トランジスタを集積して集積回路とすることにより、デジタル素子やアナログ素子が実現できる。これらの素子の例としては、AND、OR、NAND、NOT等の論理回路、メモリー素子、発振素子、増幅素子等が挙げられる。さらにこれらの素子を組み合わせることにより、ICカードやICタグを作製することが出来る。
【0095】
本発明の電界効果トランジスタの用途は特に制限されず、各種の電子デバイスに使用することが可能である。電子デバイスの例としては、ディスプレーのアクティブマトリクスや、ICタグやディスプレイのドライバIC等のIC素子等が挙げられる。
【0096】
例えば、本発明の電界効果トランジスタをディスプレーのアクティブマトリクスに使用する場合、スイッチング素子として利用することが出来る。これは、ゲートに印加される電圧でソースとドレイン間の電流をスイッチング出来ることを利用して、ある表示素子に電圧を印加あるいは電流を供給する時のみスイッチを入れ、その他の時間は回路を切断する事により、高速、高コントラストな表示を行なうものである。適用される表示素子としては、液晶表示素子、高分子分散型液晶表示素子、電気泳動表示素子、エレクトロルミネッセント素子、エレクトロクロミック素子等が挙げられる。
【0097】
本発明の電界効果トランジスタを用いたアクティブマトリクス等の電子デバイス(本発明の電子デバイス)は、低温プロセスでの素子作製が可能であり、プラスチック基板、プラスチックフィルム、紙等の、高温処理に耐えない基板を用いることができる。また、塗布あるいは印刷プロセスでの素子作製が可能であることから、例えば大面積のディスプレーへの応用に適している。また、従来のアクティブマトリクスの代替としても、省エネルギープロセス、低コストプロセスの可能な素子として有利である。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の有機電界効果トランジスタによれば、有機電界効果トランジスタにおいて、パターニングにより有機半導体層のエッジ部分が劣化した場合でも、該エッジ部分を流れるオフ電流を抑制し、良好な半導体特性を有する有機電界効果トランジスタ並びにそれを用いた集積回路及び電子デバイスを得ることができ、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態に係る有機電界効果トランジスタを上方からみた模式的な平面図であり、(b)は(a)に示す有機電界効果トランジスタのb−b’面における模式的な断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の第1変形例に係る有機電界効果トランジスタを側方からみた模式的な断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の第2変形例に係る有機電界効果トランジスタを側方からみた模式的な断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の第3変形例に係る有機電界効果トランジスタを側方からみた模式的な断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る有機電界効果トランジスタを上方からみた模式的な平面図である。
【図6】本発明の第3実施形態が解決しようとする課題を説明する図であり、本発明の第1実施形態に係る有機電界効果トランジスタを上方からみた模式的な平面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る有機電界効果トランジスタを上方からみた模式的な平面図である。
【図8】(a)は従来の有機電界効果トランジスタを上方からみた模式的な平面図であり、(b)は(a)に示す有機電界効果トランジスタのa−a’面における模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0100】
1,1a ソース電極
2,2a,2b ドレイン電極
3,3a ゲート電極
4,4a,4b,4c,4d ゲート絶縁層
5,5a,5b,5c,5d 有機半導体層
6 基板
7a,7b 絶縁部
100,101,102,103,104,105,106 有機電界効果トランジスタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界効果トランジスタ並びにそれを用いた集積回路及び電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)は、バイポーラトランジスタと並んで重要なスイッチ、増幅素子として広く利用されている。電界効果トランジスタは、半導体材料にソース電極とドレイン電極、絶縁体層を介してゲート電極を設けた構造を有しており、基本的には、p型あるいはn型の一方のキャリアが電荷を輸送する、ユニポーラ素子の代表的なものである。
【0003】
従来、電界効果トランジスタの半導体層の材料として、シリコン等の無機材料が広く用いられていた。しかし近年、有機半導体材料を用いる試みがなされている。具体的には、導電性高分子、共役高分子を利用した例(特許文献1)、低分子化合物を利用した例(特許文献2)などが報告されている。
【0004】
有機半導体材料を用いた電界効果トランジスタ(これを適宜「有機電界効果トランジスタ」又は「有機FET」という。)は、そのほとんどが無機半導体より低温プロセスで製造されているため、プラスチック等からなる基板やフィルムを用いることができ、軽量で壊れにくい素子を製作することができる。
また、有機半導体材料は、そのバリエーションが豊富であり、分子構造を変化させることにより、容易に材料特性を根本的に変化させることが可能である。そのため、異なる機能を組み合わせることで、従前のシリコン等の無機半導体では不可能な機能、素子を実現することができる。
【0005】
有機電界効果トランジスタの有機半導体層は、溶液の塗布法を用いて成膜した後のエッチング処理によるパターニングや、印刷法によるパターニングがなされる。上記エッチング処理の微細加工技術としては、プラズマエッチング法(電子サイクロトロン共鳴方式、高周波方式等)、スパッタエッチング法、ケミカルドライエッチング法等が用いられている。以上より得られる有機半導体層は、従前のシリコン等の無機材料を用いた蒸着等による形成方法に比べて、層形成コスト面で優位であり、大面積の素子を低コストで製造することが可能である。
【0006】
従来知られている有機電界効果トランジスタの例としては、図8(a),(b)に示す構成が挙げられる。図8(a)は従来の有機電界効果トランジスタを上方からみた模式的な平面図であり、図8(b)は図8(a)のa−a’面における模式的な断面図である。図8(a),(b)の有機電界効果トランジスタ100は、ソース電極1と、ドレイン電極2と、ゲート電極3と、ゲート絶縁層4と、パターニングされた有機半導体5と、基板6とを備えてなる。
ソース電極1とドレイン電極2とは、互いに接触しないように、且つ、有機半導体層5にそれぞれ接するように設けられている。また、ゲート電極3は、ゲート絶縁層4によってソース電極1、ドレイン電極2、及び有機半導体層5から隔てられるように設けられる。更に、これらの構成要素は基板6によって支持されている。
【0007】
このように構成された従来の有機電界効果トランジスタ100においては、ゲート電極3に一定の電圧(以下、「閾値電圧」又は「スレッショルド電圧」という。)以上の電圧を印加すると、有機半導体層5内のチャネル部分にキャリアが発生して蓄積層を形成し、ソース電極1とドレイン電極2との間の導電性が上昇する。
【0008】
蓄積層は、ゲート電極3の電圧(以下、「ゲート電圧」という。)に依存して形成され、蓄積層の厚みが変化することにより、有機電界効果トランジスタ100の導電性が変化する。また、ゲート電圧3が閾値電圧よりも低い場合は蓄積層が形成されず導電性を失う。即ち、有機電界効果トランジスタ100は、ゲート電圧に依存したソース電極1−ドレイン電極2間の電流を制御する可変スイッチのような動作をする。
【0009】
【特許文献1】特開昭61−202469号公報
【特許文献2】特許第2984370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、有機電界効果トランジスタは、溶液を用いた低温プロセスで製造可能という、無機半導体材料を用いたトランジスタには無い有効な特徴を有している。
【0011】
しかしながら、パターニング加工された有機半導体層のエッジ部分は、印刷法の様なマイルドな条件下でパターニングされたものであっても、劣化しやすいという課題を有していた。さらに、上述の微細加工技術にあっては、何れの方法であっても、成膜された有機半導体層をエッチング処理する際にプロセス雰囲気に曝すと、有機半導体層のエッジ部分が劣化する虞があった。
【0012】
エッチング処理等によって劣化した有機半導体層5のエッジ部分5’(図8(a)に示す一点鎖線の外の領域部分)は、ゲート電極3に電圧を印加していない状態であっても、劣化によりキャリア密度が上がるため、高導電層が形成される。この劣化して常時高導電層が形成されているエッジ部分5’が、ソース電極1とドレイン電極2とを短絡することによって、ゲート電極3に電圧を印加していない状態におけるソース電極1−ドレイン電極2間の電流(以下、「オフ電流」という。)を上昇させる。即ち、図8(a)の矢印X1,X2に示すような経路によってオフ電流が上昇し、延いては半導体特性の低下を招いてしまうという課題を有していた。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、パターニングされた有機半導体層を有する有機電界効果トランジスタにおいて、パターニングにより有機半導体層のエッジ部分が劣化した場合でも、該エッジ部分を流れるオフ電流を抑制し、良好な半導体特性を有する有機電界効果トランジスタ並びにそれを用いた集積回路及び電子デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記実情に鑑み鋭意検討を行なった結果、有機半導体層のエッジ部分と、ソース電極及びドレイン電極のうち少なくとも一方とが接触しないように配置する、或いは、基板面を投影面とした場合に、有機半導体層の投影パターンのエッジ部分に沿ってソース電極の投影パターンとドレイン電極の投影パターンとを結ぶ全ての経路と、ゲート電極の投影パターンとが交差するように配置することにより、パターニング処理により劣化した該有機半導体のエッジ部分を流れるオフ電流を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
即ち、本発明の要旨は、ゲート絶縁層と、パターニングされた有機半導体層と、該ゲート絶縁層により該有機半導体層と隔離されたゲート電極と、該有機半導体層に接して設けられたソース電極及びドレイン電極を有する有機電界効果トランジスタであって、該有機半導体層のエッジ部分と、該ソース電極及び該ドレイン電極のうち少なくとも一方とが接触しないように配置されることを特徴とする、有機電界効果トランジスタに存する(請求項1)。
【0016】
この場合、該ソース電極及び該ドレイン電極のうち少なくとも一方が、該ゲート絶縁層を介して、該有機半導体層のエッジ部分と隔てられるように配置されることが好ましい(請求項2)。
【0017】
また、該有機半導体層に接して設けられた絶縁部をさらに備え、該ソース電極及び該ドレイン電極のうち少なくとも一方が、該絶縁部を介して、該有機半導体層のエッジ部分と隔てられるように配置されることが好ましい(請求項3)。
【0018】
さらに、基板面を投影面とした場合に、該有機半導体層の投影パターンのエッジ部分に沿って該ソース電極の投影パターンと該ドレイン電極の投影パターンとを結ぶ全ての経路と、該ゲート電極の投影パターンとが交差するように配置されることが好ましい(請求項4)。
【0019】
本発明の別の要旨は、ゲート絶縁層と、パターニングされた有機半導体層と、該ゲート絶縁層により該有機半導体層と隔離されたゲート電極と、該有機半導体層に接して設けられたソース電極及びドレイン電極を有する有機電界効果トランジスタであって、基板面を投影面とした場合に、該有機半導体層の投影パターンのエッジ部分に沿って該ソース電極の投影パターンと該ドレイン電極の投影パターンとを結ぶ全ての経路と、該ゲート電極の投影パターンとが交差するように配置されることを特徴とする、有機電界効果トランジスタに存する(請求項5)。
【0020】
また、該ゲート電極の投影パターンが、該有機半導体層の投影パターン周囲の閉曲線と2箇所以上で交差するように配置されることにより、該有機半導体層の投影パターンが、該ソース電極の投影パターンを含む該有機半導体層の部分投影パターンと、該ドレイン電極の投影パターンを含む該有機半導体層の部分投影パターンとを含む、2以上の部分投影パターンに分割されることが好ましい(請求項6)。
【0021】
本発明の別の要旨は、上述の有機電界効果トランジスタを少なくとも備えることを特徴とする集積回路に存する(請求項7)。
【0022】
本発明の別の要旨は、上述の有機電界効果トランジスタを含む電子回路を少なくとも備えることを特徴とする電子デバイスに存する(請求項8)。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、パターニング処理により劣化した有機半導体層のエッジ部分を流れるオフ電流を抑制し、良好な半導体特性を有する有機電界効果トランジスタを得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[I.本発明の実施形態]
以下、本発明の実施の形態につき、図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0025】
なお、本発明において「有機半導体層のエッジ部分」とは、有機半導体層の端部付近における、パターニング処理による劣化が生じ得る領域を指すものとする。その領域は有機半導体層の材料やパターニングの手法によっても異なるが、一般的には、有機半導体層のパターニング形状の端部から、通常0.1μm以内、好ましくは1μm以内の領域を言うものとする。
【0026】
また、パターニング処理による有機半導体層のエッジ部分の劣化の度合いは、パターニング処理の種類によって異なる。パターニング処理の手法としては、印刷法、エッチング処理、スタンプ法等が挙げられるが、中でもエッチング処理を用いた場合に、得られる有機半導体層のエッジ部分に劣化が生じ易くなる傾向がある。従って、本発明の適用によって得られる効果もより顕著となる。
【0027】
[I−1.第1実施形態]
[基本構成]
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る有機電界効果トランジスタ101を上方からみた模式的な平面図であり、図1(b)は図1(a)のb−b’面における模式的な断面図である。なお、図1(a),(b)において、図8(a),(b)に示す構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を用いて表し、その説明は省略するものとする。以下、特に断りが無い限り、後述の図2から図7に関しても同様とする。
【0028】
図1(a),(b)に示される有機電界効果トランジスタ101の構成は、図8(a),(b)に示される従来の有機電界効果トランジスタ100の構成において、ドレイン電極2を以下に説明するドレイン電極2aに変更するとともに、該変更に伴ってゲート絶縁層4と有機半導体層5の形状を一部変更した(これらをそれぞれゲート絶縁層4a、有機半導体層5aという。)ものである。
【0029】
即ち、ドレイン電極2aは、その一部が屈曲するように形成され、該屈曲部分と有機半導体層のエッジ部分5’aとの間に、ゲート絶縁層4aが介在するように構成される。ただしこの場合でも、ドレイン電極2aはその図中左側端部において有機半導体層5aに接するように設けられているものとする。これにより、ドレイン電極2aは有機半導体層5aと接触しつつ、そのエッジ部分5’aとは隔離されるように構成される。こうした構成によれば、有機半導体層のエッジ部分5’aとドレイン電極2aとの物理的接点が遮断されるので、ソース電極1とドレイン電極2aとの間に短絡が生じるのを回避できる。
【0030】
なお、ドレイン電極ではなくソース電極を、ゲート絶縁層を介して、有機半導体層のエッジ部分と隔てるように構成してもよい。この場合、図1(a),(b)のドレイン電極2aと同様に、ソース電極の一部を屈曲させて形成し、該屈曲部分と有機半導体層のエッジ部分との間に、ゲート絶縁層が介在するように構成する。こうした構成によれば、有機半導体層のエッジ部分とソース電極との物理的接点が遮断されるので、ソース電極とドレイン電極との間に短絡が生じるのを回避できる。
【0031】
[第1変形例]
さらには、ドレイン電極及びソース電極の双方を、ゲート絶縁層を介して、有機半導体層のエッジ部分と隔てるように構成してもよい。
【0032】
図2は本発明の第1実施形態の第1変形例に係る有機電界効果トランジスタ102を側方からみた模式的な断面図である。図2に示される有機電界効果トランジスタ102において、ソース電極1a及びドレイン電極2aは、それぞれその一部が屈曲するように形成され、該屈曲部分と有機半導体層のエッジ部分5’bとの間に、ゲート絶縁層4bが介在するように構成される。ただしこの場合でも、ソース電極1aはその図中右側端部において、又ドレイン電極2aはその図中左側端部において有機半導体層5aに接するように設けられているものとする。これにより、ソース電極1a及びドレイン電極2aは、何れも有機半導体層5bと接触しつつ、そのエッジ部分5’bとは隔離されるように構成される。
【0033】
こうした構成によれば、有機半導体層のエッジ部分5’bが、ソース電極1aとドレイン電極2aの何れからも隔てられているため、有機半導体層のエッジ部分5’bの劣化幅が一様でない場合であっても、より確実にオフ電流の上昇を抑制することが可能になる。
【0034】
なお、図1(a),(b)及び図2に示すソース電極1a及び/又はドレイン電極2aの屈曲形状は、あくまでも一例である。ソース電極及び/又はドレイン電極が、ゲート絶縁層を介して有機半導体層のエッジ部分から隔離されるのであれば、ソース電極及び/又はドレイン電極の屈曲形状は任意に設定することが可能である。
【0035】
[第2変形例]
また、有機半導体層上に絶縁部を設けることにより、ソース電極及び/又はドレイン電極を有機半導体層のエッジ部分から隔離することも可能である。
【0036】
図3は、本発明の第1実施形態の第2変形例に係る有機電界効果トランジスタ103の側方からみた模式的な断面図である。図3に示される有機電界効果トランジスタ103の構成は、図8に示される従来の有機電界効果トランジスタ100の構成において、ドレイン電極2上に絶縁部7aを設けるとともに、それに応じて有機半導体層5の形状の一部を変更した(これを有機半導体層5cという。)ものである。
【0037】
図3に示す絶縁部7aは、ドレイン電極2と有機半導体層のエッジ部分5’cとの間に介在するように設けられている。ただし絶縁部7aはドレイン電極2と有機半導体層5cとを完全に隔てるものではなく、ドレイン電極2はその図中左端部近傍において有機半導体層5cに接するように設けられているものとする。これにより、ドレイン電極2は、有機半導体層5cと接触しつつ、そのエッジ部分5’cとは隔離されるように構成される。こうした構成によっても、有機半導体層のエッジ部分5’cとドレイン電極2との物理的接点が絶縁部7aにより遮断されるので、ソース電極1とドレイン電極2との間に短絡が生じるのを回避できる。
また、ソース電極1とドレイン電極2を屈曲させる必要が無いので、従来の電極を用いて容易に構成することが可能である。
【0038】
なお、ドレイン電極ではなくソース電極を、有機半導体層上に設けた絶縁部により、有機半導体層のエッジ部分と隔離するように構成してもよい。この場合、図3の絶縁部7aと同様の絶縁部を、ソース電極と有機半導体層のエッジ部分との間に介在するように設ける。こうした構成によっても、有機半導体層のエッジ部分とソース電極との物理的接点が遮断されるので、やはりソース電極とドレイン電極との間に短絡が生じるのを回避できる。
【0039】
また、ドレイン電極及びソース電極の双方を、有機半導体層上に設けた絶縁部により、有機半導体層のエッジ部分から隔離するように構成してもよい。こうした構成によれば、有機半導体層のエッジ部分がソース電極及びドレイン電極の何れからも隔てられるため、有機半導体層のエッジ部分の劣化幅が一様でない場合であっても、より確実にオフ電流の上昇を抑制することが可能になる。この場合、ドレイン電極を有機半導体層のエッジ部分と隔離する絶縁部と、ソース電極を有機半導体層のエッジ部分と隔離する絶縁部とをそれぞれ個別に設けてもよいが、単一の絶縁部によってドレイン電極及びソース電極の双方を有機半導体層のエッジ部分から隔離するように構成してもよい。
【0040】
[第3変形例]
更には、ソース電極及び/又はドレイン電極を屈曲させて形成するとともに、有機半導体層上に絶縁部を設けることにより、ソース電極及び/又はドレイン電極を有機半導体層のエッジ部分から隔離することも可能である。
【0041】
図4は、本発明の第1実施形態の第3変形例に係る有機電界効果トランジスタ104を側方からみた模式的な断面図である。図4に示される有機電界効果トランジスタ104の構成は、図3に示される有機電界効果トランジスタ103の構成において、絶縁部7aを絶縁部7bに、ドレイン電極2をドレイン電極2bに変更するとともに、該変更に伴って有機半導体層5cの形状の一部を変更した(これを有機半導体層5dという。)ものである。
【0042】
図4に示すドレイン電極2bは、その一部が有機半導体層5dの図中上方(ゲート絶縁層4と反対側)に突出するように屈曲して形成されるとともに、該屈曲部分と有機半導体層のエッジ部分5’dとの間に絶縁部7bが設けられている。ただしこの場合でも、ドレイン電極2bはその図中左側端部において有機半導体層5bに接するように設けられているものとする。これにより、ドレイン電極2bは、有機半導体層5dと接触しつつ、そのエッジ部分5’dとは隔離されるように構成される。こうした構成によっても、有機半導体層のエッジ部分5’dとドレイン電極2bとの物理的接点が絶縁部7bにより遮断されるので、ソース電極1とドレイン電極2bとの間に短絡が生じることを回避できる。
【0043】
なお、図4では、ドレイン電極2bを屈曲させて形成し、更に絶縁部7bを設けることにより、ドレイン電極2bを有機半導体層のエッジ部分5’dから隔離するように構成しているが、ドレイン電極に代えてソース電極を同様の構成としたり、ドレイン電極とソース電極をともに同様の構成とすることも可能である。
【0044】
絶縁部7a,7bの材料としては、絶縁性の性質を有しており、ソース電極1−ゲート電極2,2b間の電圧に対して耐性を有するものであれば、特に制限は無い。例としては、後述するゲート絶縁層の材料と同様の材料が挙げられる。また、絶縁部7a,7bは、ゲート絶縁層に比較して印加される電圧が低いことから、ゲート絶縁層よりも絶縁性能が低い材料も用いることが可能である。なお、絶縁部7a,7bの材料は一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
【0045】
絶縁部7a,7bの形状も特に制限されない。ドレイン電極2と有機半導体層のエッジ部分5’c,5’dとの物理的な接点を遮断することができ、且つ、ドレイン電極2と有機半導体層5c,5dとの接触を許容することができれば、任意の形状とすることが可能である。好ましくは、後述するソース電極及び/又はドレイン電極と有機半導体層のエッジ部分との最近接距離を考慮して、絶縁部7a,7bの形状を定めることが好ましい。
【0046】
[その他]
以上説明した本発明の第1実施形態及びその各変形例によれば、ソース電極及び/又はドレイン電極と有機半導体層のエッジ部分とが、隔離されるように構成される。このとき、ソース電極及び/又はドレイン電極と有機半導体層のエッジ部分との物理的接点が遮断されれば、ソース電極とドレイン電極に対して、第1実施形態及びその各変形例のうち、いずれか2種以上の構成を組み合わせて適用してもよい。この構成により、ソース電極とドレイン電極との間に短絡が生じることを回避できる。その結果、オフ電流の上昇による最終製品の異常が減り、歩留まりが改善するため好ましい。
【0047】
なお、上述の第1実施形態及びその各変形例においては、ソース電極及び/又はドレイン電極と、有機半導体層のエッジ部分との最近接距離を、通常0.1μm以上、中でも1μm以上、更には2μm以上とすることが好ましい。ソース電極及び/又はドレイン電極と有機半導体層のエッジ部分との最近接距離が短過ぎると、有機半導体層のエッジ部分、即ち、劣化して高導電層が形成され得る箇所からの遮断が不完全になる傾向がある。
【0048】
[I−2.第2実施形態]
図5は、本発明の第2実施形態に係る有機電界効果トランジスタ105を上方からみた模式的な平面図である。図5の有機電界効果トランジスタ105の構成は、図8に示される従来の有機電界効果トランジスタ100の構成において、ゲート電極3を以下に説明するゲート電極3aに変更するとともに、該変更に伴ってゲート絶縁層4の形状を一部変更した(これをゲート絶縁層4cという。)ものである。
【0049】
図5に示すように、ゲート電極3aは、有機半導体層のエッジ部分5’に沿った矢印X3及び矢印X4と交差するように備えられる。ここで、矢印X3及び矢印X4は、有機半導体層5の劣化したエッジ部分5’によってソース電極1からドレイン電極2への短絡が生じ得る経路を表わしている。この経路は、基板6面を投影面とした場合に、有機半導体層5の投影パターンのエッジ部分5’に沿ってソース電極1の投影パターンとドレイン電極2の投影パターンとを結ぶ経路に相当する。即ち、この経路に電流が流れることによって、オフ電流が上昇する。図5では、ゲート電極3aの投影パターンが、これらの経路X3,X4の全てに対して交差するように、ゲート電極3aが配置されている。
【0050】
以上のように構成された有機電界効果トランジスタ105の動作時には、以下のようにゲート電極3aの電圧制御を行なう。即ち、ソース電極1からドレイン電極2へ電流を流すときには、有機半導体層5に蓄積層を形成するようにゲート電極3aに電圧を印加する。反対に、ソース電極1からドレイン電極2への電流を遮断するときには、通常蓄積層を形成するための電圧とは逆の電圧をゲート電極3aに印加する。これにより、劣化により有機半導体層のエッジ部分5’に常時形成されている高導電層中のキャリアを打ち消すことができ、ソース電極1とドレイン電極2との間に短絡が生じることを回避できる。
【0051】
即ち、オフ電流は、有機半導体層5の劣化した部分、即ちエッジ部分5’に沿って、ソース電極1の投影パターンとドレイン電極2の投影パターンとを結ぶ経路X3,X4を流れるのであり、有機半導体層5がいかなる形状にパターニングされていても、これらの経路X3,X4を全て遮断することができれば、オフ電流の上昇を制御することが可能である。経路の遮断は、有機半導体層のエッジ部分5’に沿った経路X3,X4の各々について1箇所以上、ゲート電極3aによって通常蓄積層を形成させる電圧とは逆の電圧を印加することによりなされる。
【0052】
なお、ゲート電極3aの形状や配置位置は、図5に示される形状に限定されるものではない。基板面を投影面とした場合に、有機半導体層の投影パターンのエッジ部分に沿ってソース電極の投影パターンとドレイン電極の投影パターンとを結ぶ全ての経路と、ゲート電極の投影パターンとが交差する限りにおいて、任意の形状とすることができ、また、任意の位置に配置することが可能である。
【0053】
中でも、有機半導体層の投影パターン周囲における閉曲線を考えた場合、その閉曲線とゲート電極の投影パターンとが2箇所以上で交差するように配置されることにより、有機半導体層の投影パターンが、ソース電極の投影パターンを含む有機半導体層の投影パターンの部分(以下、「部分投影パターン」という。)と、ドレイン電極の投影パターンを含む有機半導体層の部分投影パターンとを含む、2以上の部分投影パターンに分割されるように配置位置や形状を設定することが好ましい。
即ち図5の場合において、上記ソース電極の投影パターンを含む有機半導体層の投影パターンとは、有機半導体層5の投影パターンのうち、ゲート電極3aの投影パターン左縁部より左側の部分を指す。また、上記ドレイン電極の投影パターンを含む有機半導体層の投影パターンとは、有機半導体層5の投影パターンのうち、ゲート電極3aの投影パターン右縁部より右側の部分を指す。なお、本発明は図5に限られるものではない。
【0054】
有機半導体層のエッジ部分5’と交差するゲート電極3aの幅は、特に制限されるものではなく、有機電界効果トランジスタ105の構成や用途等に合わせて適宜調整すればよいが、一般的には、通常1μm以上、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下の範囲である。ゲート電極3aの幅があまり狭いと有効にオフ電流を遮断できない可能性があり、またあまりに広いと微細化の障害となる可能性がある。
【0055】
オフ電流を遮断する際にゲート電極に印加するゲート電圧は、特に制限されるものではなく、有機電界効果トランジスタ105の構成や用途、有機半導体層のエッジ部分5’の劣化の状況等に合わせて適宜調整すればよい。ゲート電圧を印加した場合にオフ状態からオン状態に移行する電圧をスレッショルド電圧(Vt)とすると、一般に、半導体の劣化によりこのVtの値が変化する。従って、このVtの値の変化に応じて、オフ電流遮断時のゲート電圧を調整すればよい。
【0056】
本実施形態においては、第1実施形態のように、ソース電極やゲート電極の形状を屈曲させる必要が無く、また、絶縁部等の新たな構成要素を設ける必要も無い。従来の有機電界効果トランジスタにおいて、ゲート電極の形状等に多少の変更を加えるだけで、実現することが可能である。そのため、有機電界効果トランジスタの各構成要素の成形や積層等に際して特別な手段等を用いる必要がないため、容易に且つ低コストで高いオフ電流抑制効果が実現できるという利点がある。
【0057】
[I−3.第3実施形態]
上述した第1実施形態の有機電界効果トランジスタ101(図6に示す)は、有機半導体層のエッジ部分5’aの劣化が進行し、該エッジ部分5’aに常時形成されている高導電層領域が拡大した場合に、図6の矢印X5,X6の経路でソース電極1とドレイン電極2aとが短絡する場合がある。この場合、オフ電流が上昇することを避けるために、第1実施形態の構成に対して更に上述の第2実施形態の技術的特長を組み合わせた構成をとることも可能である。
【0058】
図7は、本発明の第3実施形態に係る有機電界効果トランジスタ106を上方からみた模式的な平面図である。図7の有機電界効果トランジスタ106の構成は、第1実施形態と第2実施形態の技術的特長を併せ持つ構成を有する。具体的には、ドレイン電極2aが、その一部を屈曲するように形成され、該屈曲部分と有機半導体層のエッジ部分5’aとの間に、ゲート絶縁層4dが介在するように構成されることで、有機半導体層のエッジ部分5’aと隔てられている。さらに、ゲート電極3aは、基板6面を投影面とした場合に、有機半導体層5aの投影パターンのエッジ部分5’aに沿ってソース電極1の投影パターンとドレイン電極2の投影パターンとを結ぶ経路の全てに対して交差するように配置される。
【0059】
以上の構成を有する有機電界効果トランジスタ106は、有機半導体層のエッジ部分5’aとドレイン電極2aとの物理的な接点が遮断され、その結果、ソース電極1とドレイン電極2aとの間に短絡が生じるのを回避することができる。また、有機半導体層の劣化が進行し、エッジ部分5’aに常時形成されている高導電層領域が拡大した結果、有機半導体層のエッジ部分5’aとドレイン電極2aとが接触するようになった場合でも、ゲート電極3aに通常蓄積層を形成するための電圧とは逆の電圧をゲート電極に印加することで、劣化により有機半導体層のエッジ部分5’aに常時形成されている高導電層を打ち消することができる。したがって、ソース電極1とドレイン電極2aとの短絡を回避することができる。
【0060】
なお、ゲート絶縁層4dを介してドレイン電極2aを有機半導体層のエッジ部分5’aから隔てる構成に関しては、第1実施形態と基本的に同一であるので、その詳細な説明は省略する。また、ゲート電極3aの構成や、オフ電流を遮断するときのゲート電圧等に関しては、第2実施形態と基本的に同一であるので詳細な説明は省略する。
【0061】
また、第1実施形態と第2実施形態との組み合わせは、図7に示される組み合わせに制限されるわけではなく、任意に変形を加えて組み合わせることが可能である。
【0062】
例えば、図7では上記の有機半導体層のエッジ部分5’aとドレイン電極2aとを隔てる構成を示したが、ドレイン電極の代わりにソース電極を有機半導体層のエッジ部分と隔離するように構成したり、ソース電極及びドレイン電極の双方を有機半導体層のエッジ部分と隔離するように構成することもできる。
【0063】
また、図7ではゲート絶縁層4dを介して有機半導体層のエッジ部分5’aとドレイン電極2aとを隔てる構成を示したが、有機半導体層上に絶縁部を設けることにより、有機半導体層のエッジ部分とソース電極及び/又はドレイン電極とを隔離する構成としてもよい。
【0064】
[I−4.その他]
以上説明した第1〜3実施形態の有機電界効果トランジスタは、基板上にゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極及びドレイン電極、及び有機半導体層がこの順に積層された構成を有していたが、本発明が適用可能な有機電界効果トランジスタの層構成はこれに制限されるものではない。ゲート絶縁層と、パターニングされた有機半導体層と、ゲート絶縁層により有機半導体層と隔離されたゲート電極と、有機半導体層に接して設けられたソース電極及びドレイン電極とを有する有機電界効果トランジスタであれば、任意の層構成の有機電界効果トランジスタに対して、本発明を適用することが可能である。
【0065】
[II.各実施形態の共通事項]
先に実施形態を挙げて説明した本発明の有機電界効果トランジスタは、何れもその基本構成要素として、ゲート絶縁層と、パターニングされた有機半導体層と、ゲート絶縁層により有機半導体層と隔離されたゲート電極と、有機半導体層に接して設けられたソース電極及びドレイン電極とを備えている。更に、これらの構成要素は通常、基板上に設けられ、基板によって支持される。
【0066】
これらの構成要素の詳細(材料、形成方法等)は、上記[I.本発明の実施形態]の欄で説明した事項を除き、従来の有機電界効果トランジスタと同様である。よって以下の記載では、上記[I.本発明の実施形態]の欄で説明した事項以外の共通事項について、まとめて説明する。
【0067】
〔II−1.基板〕
基板の材料は、その上に設けられる有機電界効果トランジスタの各構成要素を支持できるものであれば、特に制限されない。例としては、公知のガラス、ポリシロキサン等の無機基板、及び各種有機ポリマー等の有機基板が挙げられる。これらのうち、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルスルフォン、エポキシ樹脂、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリパラバン酸、ポリシルセスキオキサン、及びポリオレフィン等のビニル系ポリマー等の有機ポリマーが好適である。中でも、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリパラバン酸等の縮合系ポリマーや、ポリビニルフェノール等の架橋体が、耐熱性や耐溶剤性の点から好ましく、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾールが更に好ましく、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、又はポリイミドが特に好ましい。これらの材料は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
【0068】
また、基板は、上述の主材料に加え、必要に応じて、充填材、添加剤等の成分を含んでいてもよい。これらの成分も、一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
【0069】
なお、基板の材料は、ガラス転移点が40℃以上であることが好ましい。ガラス転移点が40℃より低いと、流動性が大き過ぎるため、他の層の積層時や加熱時に軟化して基板を維持し難くなる傾向がなる。
【0070】
また、基板の材料は、線膨張係数が通常25×10-5cm/cm・℃以下、中でも10×10-5cm/cm・℃以下であることが好ましい。線膨張係数が25×10-5cm/cm・℃より大きいと、製造時の熱処理において寸法変化を起こし易く、有機電界効果トランジスタの性能が安定しない傾向がある。
【0071】
また、基板の材料は、有機電界効果トランジスタの各構成要素の形成時の使用溶媒に対して耐溶剤性を示すものが好ましく、また、基板に接して設けられる構成要素(上記の各実施形態の構成においては、ゲート絶縁膜及びゲート電極)との密着性が高いものが好ましい。
【0072】
基板の厚みは、通常0.01mm以上、中でも0.05mm以上、また、通常10mm以下、中でも2mm以下、更には1mm以下の範囲とすることが好ましい。
具体的に、例えば、有機ポリマーを主材料とする基板の場合は、0.05〜0.1mm程度とし、ガラス、シリコン等を主材料とする基板の場合は、0.1〜10mm程度とするのが好ましい。
【0073】
〔II−2.ゲート電極〕
ゲート電極の構成材料としては、導電性を示す材料であれば特に制限されず、公知の材料を任意に選択して用いることができる。ゲート電極の材料の例としては、白金、金、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属、InO2、SnO2、ITO等の導電性金属酸化物、樟脳スルホン酸がドープされたポリアニリン、パラトルエンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェン等の、ドープされた導電性高分子、及び、カーボンブラック、グラファイト粉、金属微粒子等がバインダーに分散されてなる導電性複合材料等が挙げられる。これらの材料は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
【0074】
ゲート電極は、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、印刷法、ゾルゲル法等により形成される。そのパターニング方法としては、例えば、フォトレジストのパターニングとエッチング液や反応性のプラズマでのエッチングを組み合わせたフォトリソグラフィー法、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法、及びこれらの手法を複数組み合わせた手法等が挙げられる。また、レーザーや電子線等のエネルギー線を照射して材料を除去することや材料の導電性を変化させることにより、直接パターンを形成することも可能である。
【0075】
ゲート電極の厚みは、特に制限されるものではないが、通常0.01μm以上、中でも0.02μm以上、また、通常2μm以下、中でも1μm以下の範囲とすることが好ましい。
【0076】
〔II−3.ゲート絶縁層〕
ゲート絶縁層は、ゲート電極とソース電極及びドレイン電極とのオーバーラッピング領域、並びにゲート電極上のチャネル領域が電気的絶縁領域として維持する機能を有する層である。なお、ここで「電気的絶縁」とは、電気伝導度が10-9S/cm以下のことを言う。
【0077】
ゲート絶縁層の材料は、絶縁性を有する材料ならば特に限定されないが、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のポリマー及びこれらを組み合わせた共重合体、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の酸化物、SrTiO3、BaTiO3等の強誘電性酸化物、窒化珪素等の窒化物、硫化物、フッ化物等の誘電体、或いはこれら誘電体の粒子を分散させたポリマー、等が挙げられる。これらの材料は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
【0078】
ゲート絶縁層としては、ゲート電極への漏れ電流、電界効果トランジスタの低ゲート電圧駆動に関係することから、室温での電気伝導度が通常10-9S/cm以下、中でも10-14S/cm以下であることが好ましい。また、比誘電率が通常2.0以上、中でも2.5以上であることが好ましい。
【0079】
ゲート絶縁層は、例えば、スピンコーティング、溶液キャスティング、スタンプ印刷、スクリーン印刷、又はジェット印刷等の公知の方法で溶液処理し、乾燥させて未架橋ポリマー層を形成した後、紫外線照射、又は加熱処理によって架橋構造を形成して架橋ポリマー層となすことにより形成される。なお、例えば、紫外線照射による架橋処理中に、フォトマスク等を使用することによってパターニングが可能であり、紫外線未照射の未架橋ポリマー部分は有機溶媒等で容易に除去することができる。このパターニング処理を施すことによって、ビアホール構造を電子回路中に構築することが容易となる。
【0080】
ゲート絶縁層の厚みは、通常0.01μm以上、中でも0.1μm以上、更には0.2μm以上、また、通常4μm以下、中でも2μm以下、更には1μm以下の範囲であることが好ましい。
【0081】
〔II−4.有機半導体層〕
有機半導体層の材料となる有機半導体としては、有機物を主成分とする半導体であれば特に制限されず、任意の材料を使用することができる。具体的には、ナフタセン、ペンタセン、ピレン、フラーレン等の縮合芳香族炭化水素、α−セキシチオフェン等のオリゴマー類、フタロシアニンやポルフィリン等の大環状化合物、α−セキシチオフェンやジアルキルセキシチオフェンに代表される、チオフェン環を4個以上含むオリゴチオフェン類、或いは、チオフェン環、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環を合計4個以上連結したもの、アントラジチオフェン、ジベンゾチエノビスチオフェン、α、α’−ビス(ジチエノ[3,2−b’:2’、3’−d]チオフェン)等の縮合チオフェン及びその誘導体、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボンサンジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボンサンジイミド等の、芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物、銅フタロシアニン、パーフルオロ銅フタロシアニン、テトラベンゾポルフィリン及びその金属塩等の大環状化合物、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリチエニレンビニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、特に、レジオレギュラーポリチオフェンのような自己組織化を示すものや、ポリフルオレンやその共重合体に代表される液晶性を示す高分子等が挙げられる。これらの有機半導体材料は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。また、有機半導体材料のみを用いてもよいが、有機半導体材料以外の材料と混合して用いることもできる。更には、異なる材料からなる複数の層の積層構造として用いることも出来る。
【0082】
中でも、有機半導体層の材料としては、アザアヌレン化合物が好ましく、ポルフィリン骨格を有する化合物(以下「ポルフィリン系化合物」と略称する。)やフタロシアニン骨格を有する化合物(以下「フタロシアニン系化合物」と略称する。)がより好ましい。ポルフィリン系化合物の具体例としては、特にベンゾポルフィリンおよびそのCuやZn等の金属錯体が好ましい。フタロシアニン系化合物の具体例としては、銅フタロシアニン、F16CuPC等のハロゲン化フタロシアニン等が挙げられる。
【0083】
有機半導体層は、上述の有機半導体材料等の材料を種々の方法で成膜することにより、形成することができる。例えば、ある程度の溶解性を有する材料に関しては、塗布による成膜が可能である。塗布の方法としては、溶液をたらすだけのキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、ワイヤバーコーティング、スプレーコーティング等のコーティング法や、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法等、更にはこれらの手法を複数組み合わせた方法を用いることができる。更に、塗布に類似の技術として、水面上に形成した単分子膜を基板に移し積層するラングミュア・ブロジェット法、液晶や融液状態を2枚の基板で挟んだり毛管現象で基板間に導入する方法等も挙げられる。
【0084】
また、溶解性の高い有機半導体前駆体を上記塗布法により成膜し、それを加熱処理等により有機半導体膜に変換することにより、有機半導体層を形成することもできる。このような有機半導体前駆体の例としては、テトラベンゾポルフィリン及びペンタセンがこれまでに報告されている。
【0085】
また、有機半導体層を真空プロセスで形成することも出来る。この場合には、有機半導体材料をルツボや金属のボートに入れて真空中で加熱し、基板等に付着させる真空蒸着法を用いることが出来る。この際、真空度としては、1×10-3Torr以下、好ましくは1×10-5Torr以下である。なお、1Torr≒133Paである。また、基板温度でトランジスタの特性が変化するので、最適な基板温度を選択する必要があるが、通常0℃以上、200℃以下の範囲が好ましい。また、蒸着速度は通常0.01Å/秒以上、好ましくは0.1Å/秒以上、また、通常100Å/秒以下、好ましくは10Å/秒以下の範囲が用いられる。材料を蒸発させる方法としては、加熱の他、加速したアルゴン等のイオンを衝突させるスパッタ法も用いることが出来る。
【0086】
有機半導体層の膜厚は、薄過ぎると電流の流れる部分が制限され、特性が不充分になってしまう傾向があり、厚過ぎると成膜に必要な材料が多くなったり、成膜時間が長くなったりしてコストアップにつながり、且つ、オフ電流が流れやすくなりオンオフ比を大きく取れなくなる傾向がある。従って、好ましい有機半導体層の膜厚は、通常5nm以上、中でも10nm以上、更には30nm以上、また、通常10μm以下、中でも1μm以下、更には500nm以下の範囲である。
【0087】
〔II−5.ソース電極及びドレイン電極〕
ソース電極及びドレイン電極の構成材料としては、ゲート電極の場合と同様、導電性を示す材料であれば特に制限されず、公知の材料を任意に選択して用いることができる。ソース電極及びドレイン電極の材料の例としては、白金、金、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属、InO2、SnO2、ITO等の導電性金属酸化物、樟脳スルホン酸がドープされたポリアニリン、パラトルエンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェン等の、ドープされた導電性高分子、及び、カーボンブラック、グラファイト粉、金属微粒子等がバインダーに分散されてなる導電性複合材料等が挙げられる。これらの材料は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
【0088】
ソース電極及びドレイン電極は、ゲート電極と同様、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、印刷法、ゾルゲル法等により形成される。そのパターニング方法としては、例えば、フォトレジストのパターニングとエッチング液や反応性のプラズマでのエッチングを組み合わせたフォトリソグラフィー法、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法、及びこれらの手法を複数組み合わせた手法等が挙げられる。また、レーザーや電子線等のエネルギー線を照射して材料を除去することや材料の導電性を変化させることにより、直接パターンを形成することも可能である。
【0089】
ソース電極及びドレイン電極の厚みは、特に制限されるものではないが、通常0.01μm以上、中でも0.02μm以上、また、通常2μm以下、中でも1μm以下の範囲とすることが好ましい。
【0090】
〔II−6.チャネル〕
有機電界効果トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極で挟まれるチャネル部分の電流をゲート電極により制御して、スイッチング或いは増幅の動作をする。このチャネル部分の長さ(ソース電極とドレイン電極とのギャップ間隔)は、一般に狭いほどトランジスタとしての特性が上昇するが、狭過ぎるとオフ電流が増加したり、オンオフ比が小さくなる、いわゆるショートチャンネル効果が生じる傾向がある。また、チャネルの幅(ソース電極とドレイン電極との間の幅)が大きくなると、大きな電流を流せるようになるという点で好ましいが、大き過ぎると素子の面積が大きくなり、集積化の面で不利になる場合がある。なお、ソース電極及びドレイン電極を櫛型電極にすることにより、長いチャネル長を得ることができる。
【0091】
従って、チャネル長は、通常100nm以上、中でも500nm以上、更には1μm以上、また、通常300μm以下、中でも100μm以下、更には50μm以下の範囲であることが好ましい。
また、チャネルの幅は、通常500nm以上、中でも5μm以上、更には10μm以上、また、通常20mm以下、中でも5mm以下、更には1mm以下の範囲であることが好ましい。
【0092】
〔II−7.その他〕
本発明の電界効果トランジスタは、以上説明した各層の他に、必要であれば任意の層を有していてもよい。
例えば、基板と反対側の最上層(上記の各実施形態では有機半導体層等)の上などに、保護膜を設けることもできる。保護層の材料は特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、ポリオレフィン等の各種樹脂からなる膜や、酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素等、無機酸化膜や窒化膜等の誘電体からなる膜が好ましく挙げられる。特に、酸素や水分の透過率や吸水率の小さな樹脂(ポリマー)が望ましい。例えばポリマーフィルムにアルミ等の金属や酸化ケイ素、窒化珪素、SiON等の気体透過性の小さな金属や無機酸化膜を有するポリマーの膜等を好適に用いることができる。
【0093】
〔II−8.電界効果トランジスタ〕
本発明の電界効果トランジスタの移動度は、通常10-3cm2/Vs以上、好ましくは10-2cm2/Vs以上が実用上望ましく用いることができる。
オンオフ比は、アプリケーション等にも依存するが、一般的には102以上、好ましくは103以上、更に好ましくは104以上が望ましい。
【0094】
本発明の電界効果トランジスタは、単独の素子として構成してもよいが、集積回路の一部として構成されていてもよい。後者の場合、集積回路が有するトランジスタの大部分又は全てが、本発明の電界効果トランジスタであることが好ましい。トランジスタを集積して集積回路とすることにより、デジタル素子やアナログ素子が実現できる。これらの素子の例としては、AND、OR、NAND、NOT等の論理回路、メモリー素子、発振素子、増幅素子等が挙げられる。さらにこれらの素子を組み合わせることにより、ICカードやICタグを作製することが出来る。
【0095】
本発明の電界効果トランジスタの用途は特に制限されず、各種の電子デバイスに使用することが可能である。電子デバイスの例としては、ディスプレーのアクティブマトリクスや、ICタグやディスプレイのドライバIC等のIC素子等が挙げられる。
【0096】
例えば、本発明の電界効果トランジスタをディスプレーのアクティブマトリクスに使用する場合、スイッチング素子として利用することが出来る。これは、ゲートに印加される電圧でソースとドレイン間の電流をスイッチング出来ることを利用して、ある表示素子に電圧を印加あるいは電流を供給する時のみスイッチを入れ、その他の時間は回路を切断する事により、高速、高コントラストな表示を行なうものである。適用される表示素子としては、液晶表示素子、高分子分散型液晶表示素子、電気泳動表示素子、エレクトロルミネッセント素子、エレクトロクロミック素子等が挙げられる。
【0097】
本発明の電界効果トランジスタを用いたアクティブマトリクス等の電子デバイス(本発明の電子デバイス)は、低温プロセスでの素子作製が可能であり、プラスチック基板、プラスチックフィルム、紙等の、高温処理に耐えない基板を用いることができる。また、塗布あるいは印刷プロセスでの素子作製が可能であることから、例えば大面積のディスプレーへの応用に適している。また、従来のアクティブマトリクスの代替としても、省エネルギープロセス、低コストプロセスの可能な素子として有利である。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の有機電界効果トランジスタによれば、有機電界効果トランジスタにおいて、パターニングにより有機半導体層のエッジ部分が劣化した場合でも、該エッジ部分を流れるオフ電流を抑制し、良好な半導体特性を有する有機電界効果トランジスタ並びにそれを用いた集積回路及び電子デバイスを得ることができ、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態に係る有機電界効果トランジスタを上方からみた模式的な平面図であり、(b)は(a)に示す有機電界効果トランジスタのb−b’面における模式的な断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の第1変形例に係る有機電界効果トランジスタを側方からみた模式的な断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の第2変形例に係る有機電界効果トランジスタを側方からみた模式的な断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の第3変形例に係る有機電界効果トランジスタを側方からみた模式的な断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る有機電界効果トランジスタを上方からみた模式的な平面図である。
【図6】本発明の第3実施形態が解決しようとする課題を説明する図であり、本発明の第1実施形態に係る有機電界効果トランジスタを上方からみた模式的な平面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る有機電界効果トランジスタを上方からみた模式的な平面図である。
【図8】(a)は従来の有機電界効果トランジスタを上方からみた模式的な平面図であり、(b)は(a)に示す有機電界効果トランジスタのa−a’面における模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0100】
1,1a ソース電極
2,2a,2b ドレイン電極
3,3a ゲート電極
4,4a,4b,4c,4d ゲート絶縁層
5,5a,5b,5c,5d 有機半導体層
6 基板
7a,7b 絶縁部
100,101,102,103,104,105,106 有機電界効果トランジスタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート絶縁層と、パターニングされた有機半導体層と、該ゲート絶縁層により該有機半導体層と隔離されたゲート電極と、該有機半導体層に接して設けられたソース電極及びドレイン電極とを有する有機電界効果トランジスタであって、
該有機半導体層のエッジ部分と、該ソース電極及び該ドレイン電極のうち少なくとも一方とが接触しないように配置された
ことを特徴とする有機電界効果トランジスタ。
【請求項2】
該ソース電極及び該ドレイン電極のうち少なくとも一方が、該ゲート絶縁層を介して、該有機半導体層のエッジ部分と隔てられるように配置された
ことを特徴とする、請求項1記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項3】
該有機半導体層に接して設けられた絶縁部をさらに備え、
該ソース電極及び該ドレイン電極のうち少なくとも一方が、該絶縁部を介して、該有機半導体層のエッジ部分と隔てられるように配置された
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項4】
基板面を投影面とした場合に、該有機半導体層の投影パターンのエッジ部分に沿って該ソース電極の投影パターンと該ドレイン電極の投影パターンとを結ぶ全ての経路と、該ゲート電極の投影パターンとが交差するように配置される
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項5】
ゲート絶縁層と、パターニングされた有機半導体層と、該ゲート絶縁層により該有機半導体層と隔離されたゲート電極と、該有機半導体層に接して設けられたソース電極及びドレイン電極とを有する有機電界効果トランジスタであって、
基板面を投影面とした場合に、該有機半導体層の投影パターンのエッジ部分に沿って該ソース電極の投影パターンと該ドレイン電極の投影パターンとを結ぶ全ての経路と、該ゲート電極の投影パターンとが交差するように配置される
ことを特徴とする有機電界効果トランジスタ。
【請求項6】
該ゲート電極の投影パターンが、該有機半導体層の投影パターン周囲の閉曲線と2箇所以上で交差するように配置されることにより、該有機半導体層の投影パターンが、該ソース電極の投影パターンを含む該有機半導体層の部分投影パターンと、該ドレイン電極の投影パターンを含む該有機半導体層の部分投影パターンとを含む、2以上の部分投影パターンに分割される
ことを特徴とする、請求項5記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の有機電界効果トランジスタを少なくとも備える
ことを特徴とする集積回路。
【請求項8】
請求項1〜6の何れか一項に記載の有機電界効果トランジスタを含む電子回路を少なくとも備える
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項1】
ゲート絶縁層と、パターニングされた有機半導体層と、該ゲート絶縁層により該有機半導体層と隔離されたゲート電極と、該有機半導体層に接して設けられたソース電極及びドレイン電極とを有する有機電界効果トランジスタであって、
該有機半導体層のエッジ部分と、該ソース電極及び該ドレイン電極のうち少なくとも一方とが接触しないように配置された
ことを特徴とする有機電界効果トランジスタ。
【請求項2】
該ソース電極及び該ドレイン電極のうち少なくとも一方が、該ゲート絶縁層を介して、該有機半導体層のエッジ部分と隔てられるように配置された
ことを特徴とする、請求項1記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項3】
該有機半導体層に接して設けられた絶縁部をさらに備え、
該ソース電極及び該ドレイン電極のうち少なくとも一方が、該絶縁部を介して、該有機半導体層のエッジ部分と隔てられるように配置された
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項4】
基板面を投影面とした場合に、該有機半導体層の投影パターンのエッジ部分に沿って該ソース電極の投影パターンと該ドレイン電極の投影パターンとを結ぶ全ての経路と、該ゲート電極の投影パターンとが交差するように配置される
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項5】
ゲート絶縁層と、パターニングされた有機半導体層と、該ゲート絶縁層により該有機半導体層と隔離されたゲート電極と、該有機半導体層に接して設けられたソース電極及びドレイン電極とを有する有機電界効果トランジスタであって、
基板面を投影面とした場合に、該有機半導体層の投影パターンのエッジ部分に沿って該ソース電極の投影パターンと該ドレイン電極の投影パターンとを結ぶ全ての経路と、該ゲート電極の投影パターンとが交差するように配置される
ことを特徴とする有機電界効果トランジスタ。
【請求項6】
該ゲート電極の投影パターンが、該有機半導体層の投影パターン周囲の閉曲線と2箇所以上で交差するように配置されることにより、該有機半導体層の投影パターンが、該ソース電極の投影パターンを含む該有機半導体層の部分投影パターンと、該ドレイン電極の投影パターンを含む該有機半導体層の部分投影パターンとを含む、2以上の部分投影パターンに分割される
ことを特徴とする、請求項5記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の有機電界効果トランジスタを少なくとも備える
ことを特徴とする集積回路。
【請求項8】
請求項1〜6の何れか一項に記載の有機電界効果トランジスタを含む電子回路を少なくとも備える
ことを特徴とする電子デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2007−324453(P2007−324453A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154593(P2006−154593)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】
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