説明

有機電界発光素子及び錯体化合物

【課題】発光輝度が高く、発光効率が高く、かつ耐久性に優れる発光素子の提供、及びその発光素子を提供するために好適な金属錯体化合物の提供を目的とする。
【解決手段】一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、特定の一般式で表される化合物の少なくとも一種を有機層に含有することを特徴とする有機電界発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを光に変換して発光できる有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」、「発光素子」又は「素子」ともいう。)及び錯体化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、種々の表示素子に関する研究開発が活発であり、中でも有機電界発光素子(有機EL素子)は、低電圧駆動で高輝度の発光が得られることから、近年活発な研究開発が行われている。一般に有機EL素子は、発光層を含む有機層および該層を挟んだ一対の電極から構成されており、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔が発光層において再結合し、生成した励起子からの発光を利用するものである。
【0003】
近年、燐光発光材料を用いることにより、素子の高効率化が進んでいる。燐光発光材料としてはイリジウム錯体や白金錯体などが知られているが(例えば、特許文献1及び2参照)、高効率と高耐久性を両立しうる燐光材料の開発が切望されているのが現状である。
【特許文献1】米国特許第6303238号明細書
【特許文献2】国際公開第00/57676号パンフレット
【特許文献3】国際公開第04/108857号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、発光輝度が高く、発光効率が高く、かつ耐久性に優れる発光素子の提供にある。また発光素子に好適に用いることのできる錯体化合物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は下記手段によって達成された。
【0006】
(1)一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、下記一般式(I)で表される化合物の少なくとも一種を有機層に含有することを特徴とする有機電界発光素子。
【0007】
【化1】

【0008】
(一般式(I)中、Mは金属イオン、Q11、Q12、Q13及びQ14は、各々独立に、Mに配位する原子群、L10、L11、L12及びL13は、各々独立に、単結合または連結基を表し、Q11、Q12、Q13及びQ14とMを結ぶ実線は、共有結合、イオン結合、配位結合のいずれかを表す。n10は0もしくは1で、n=0の場合はQ13とQ14の間に結合は存在しない。m11、m12、m13及びm14は、各々独立に、0以上の整数で、少なくともひとつは1以上である。Ar11、Ar12、Ar13及びAr14は、各々独立に、アリール基またはヘテロアリール基を表し、R11、R12、R13及びR14は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。)
【0009】
(2)一般式(I)中の金属イオンMが、白金イオン、イリジウムイオン、レニウムイオン、パラジウムイオン、ロジウムイオン、ルテニウムイオン、および銅イオンの群から選ばれたイオンであることを特徴とする、上記(1)に記載の有機電界発光素子。
【0010】
(3)一般式(I)中の金属イオンMが、白金イオン、イリジウムイオン、パラジウムイオン、およびロジウムイオンの群から選ばれたイオンであることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の有機電界発光素子。
【0011】
(4)一般式(I)における置換基がアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基であることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【0012】
(5)一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【0013】
【化2】

【0014】
(一般式(II)中、Q21、Q22、Q23及びQ24は、各々独立に、白金イオンに配位する原子群、L20、L21及びL22は、各々独立に、単結合または連結基を表し、Q21、Q22、Q23及びQ24と白金イオンを結ぶ実線は共有結合、イオン結合、配位結合のいずれかを表している。m21、m22は、各々独立に、0以上の整数で、少なくともひとつは1以上である。Ar及びAr22は、各々独立に、アリール基またはヘテロアリール基、R21及びR22は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。)
【0015】
(6)一般式(II)における置換基がアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基であることを特徴とする、上記(5)に記載の有機電界発光素子。
【0016】
(7)一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【0017】
【化3】

【0018】
(一般式(III)中、白金イオンと窒素原子を結ぶ実線は配位結合を表し、白金イオンと炭素原子を結ぶ実線は共有結合あるいはイオン結合を表す。R301及びR302は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。Ar31及びAr32は、各々独立に、アリール基またはヘテロアリール基を表し、R31及びR32は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。R331、R332、R341及びR342は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。R35及びR36は、各々独立に、置換基を表し、n35及びn36は、各々独立に、0〜4の整数を表す。)
【0019】
(8)上記(7)に記載の一般式(III)で表されることを特徴とする化合物。
【発明の効果】
【0020】
本発明の発光素子は、少なくとも外部量子効率及び最高輝度に優れる。また特定の置換基を有する場合、耐久性にも優れる。本発明の錯体化合物は、発光素子に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の有機電界発光素子(以下、本発明の素子と呼ぶことがある。)は、一対の電極間に、発光層を含む少なくとも一層の有機層(有機化合物のみから成る層であっても良いし、無機化合物を含有する有機層であっても良い)を有する有機電界発光素子であって、任意の、一対の電極に挟まれる層中に、下記一般式(I)で表される化合物を含有することを特徴とする。
【0022】
一般式(I)で表される化合物について説明する。
【0023】
【化4】

【0024】
一般式(I)において、Mは金属イオンを表す。金属イオンとしては特に限定されないが、白金イオン、イリジウムイオン、ロジウムイオン、ルテニウムイオン、銅イオン、ユーロピウムイオン、ガドリニウムイオン、テルビウムイオンが好ましく、白金イオン、イリジウムイオン、パラジウムイオン、レニウムイオンがより好ましく、白金イオン、イリジウムイオンがさらに好ましく、白金イオンが特に好ましい。
【0025】
11、Q12、Q13、Q14はそれぞれMに配位する配位子を表す。Q11、Q12、Q13、Q14に含まれ、かつ、Mに配位する原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子が好ましく、窒素原子、酸素原子、炭素原子がより好ましい。
【0026】
MとQ11、Q12、Q13、Q14でそれぞれ形成される結合は、共有結合であってもイオン結合であっても配位結合であってもよい。Q11、L10、Q12、L11、Q13、L12、Q14、L13により構成される配位子は、アニオン性配位子(少なくとも一つのアニオンが金属と結合する配位子)であることが好ましい。アニオン性配位子中のアニオンの数は、1〜3が好ましく、1、2がより好ましく、2がさらに好ましい。
【0027】
Mに炭素原子で配位するQ11、Q12、Q13、Q14としては特に限定されないが、イミノ配位子、芳香族炭素環配位子(例えばベンゼン配位子、ナフタレン配位子、アントラセン配位子、フェナントラセン配位子など)、ヘテロ環配位子(例えばチオフェン配位子、ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、チアゾール配位子、オキサゾール配位子、ピロール配位子、イミダゾール配位子、及び、それらを含む縮環体(例えばキノリン配位子、ベンゾチアゾール配位子など)およびこれらの互変異性体)である。
【0028】
Mに窒素原子で配位するQ11、Q12、Q13、Q14としては特に限定されないが、含窒素へテロ環配位子{例えば、ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、トリアジン配位子、チアゾール配位子、オキサゾール配位子、ピロール配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子、オキサジアゾール配位子、チアジアゾール配位子、及び、それらを含む縮環体(例えば、キノリン配位子、ベンズオキサゾール配位子、ベンズイミダゾール配位子など)、及び、これらの互変異性体、アミノ配位子{アルキルアミノ配位子(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばメチルアミノなどが挙げられる。)、アリールアミノ配位子(例えばフェニルアミノなどが挙げられる。)、アシルアミノ配位子(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ配位子(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ配位子(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、イミノ配位子などが挙げられる。これらの配位子はさらに置換されていても良い。
【0029】
Mに酸素原子で配位するQ11、Q12、Q13、Q14としては特に限定されないが、アルコキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシルオキシ配位子(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、シリルオキシ配位子(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチ
ルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)、カルボニル配位子(例えばケトン配位子、エステル配位子、アミド配位子など)、エーテル配位子(例えばジアルキルエーテル配位子、ジアリールエーテル配位子、フリル配位子など)などが挙げられる。
【0030】
Mに硫黄原子で配位するQ11、Q12、Q13、Q14としては特に限定されないが、アルキルチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、チオカルボニル配位子(例えばチオケトン配位子、チオエステル配位子など)、チオエーテル配位子(例えばジアルキルチオエーテル配位子、ジアリールチオエーテル配位子、チオフリル配位子など)などが挙げられる。これらの置換配位子は更に置換されてもよい。
【0031】
13、Q14は芳香族炭素環配位子、アルキルオキシ配位子、アリールオキシ配位子、エーテル配位子、アルキルチオ配位子、アリールチオ配位子、アルキルアミノ配位子、アリールアミノ配位子、アシルアミノ配位子、含窒素へテロ環配位子(例えばピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、トリアジン配位子、チアゾール配位子、オキサゾール配位子、ピロール配位子、イミダゾール配位子、トリアゾール配位子、オキサジアゾール配位子、チアジアゾール配位子、及び、それらを含む縮配位子体(例えば、キノリン配位子、ベンズオキサゾール配位子、ベンズイミダゾール配位子など)、及び、これらの互変異性体などが好ましく、芳香族炭素環配位子、アリールオキシ配位子、アリールチオ配位子、アリールアミノ配位子、並びにピリジン配位子、ピラジン配位子、イミダゾール配位子、及び、それらを含む縮配位子体(例えば、キノリン配位子、キノキサリン配位子、ベンズイミダゾール配位子など)、及び、これらの互変異性体がより好ましく、芳香族炭素環配位子、アリールオキシ配位子、アリールチオ配位子、アリールアミノ配位子がさらに好ましく、芳香族炭素環配位子が特に好ましい。
【0032】
11、Q12はMと配位結合を形成する配位子が好ましい。Mと配位結合を形成する配位子としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、チアゾール環、オキサゾール環、ピロール環、トリアゾール環、及び、それらを含む縮環体(例えば、キノリン環、ベンズオキサゾール環、ベンズイミダゾール環、インドレニン環など)及び、これらの互変異性体が好ましく、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピロール環、及び、それらを含む縮環体(例えば、キノリン環、ベンズピロールなど)、及び、これらの互変異性体がより好ましく、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、及びそれらを含む縮環体(例えば、キノリン環など)がさらに好ましく、ピリジン環、及び、ピリジン環を含む縮環体(例えば、キノリン環など)が特に好ましい。
【0033】
10、L11、L12、L13はそれぞれ連結基、単結合、または二重結合を表す。連結基としては特に限定されないが、例えば、カルボニル連結基、チオカルボニル連結基、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、酸素原子連結基、窒素原子連結基、珪素原子連結基、及び、これらの組み合わせからなる連結基などが挙げられる。
【0034】
10、L11、L12、L13はそれぞれ単結合、二重結合、カルボニル連結基、アルキレン連結基、アルケニレン基が好ましく、L10は単結合、アルキレン基がより好ましく、アルキレン基がさらに好ましい。L11、L12は単結合、アルケニレン基がより好ましく、単結
合がさらに好ましい。L13は単結合、アルキレン基がより好ましく、アルキレン基がさらに好ましい。
【0035】
M、Q11、L10、Q12で形成される環、M、Q11、L11、Q13で形成される環、M、Q12、L12、Q14で形成される環は、M、Q13、L13、Q14で形成される環は、それぞれ環員数4〜10が好ましく、環員数5〜7がより好ましく、環員数5または6がさらに好ましい。
【0036】
10は0もしくは1を表し、n10が0の場合は、Q13とQ14が連結して環を形成することはなく、n10が1の場合は、Q13とQ14が連結して環を形成する。n10は0が好ましい。
【0037】
11、R12、R13、R14はそれぞれ水素原子または置換基を表す。置換基としては特に限定されないが、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)などが挙げられる。置換基として好ましくはアルキル基、アルケニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、リン酸アミド基、シリル基、アリール基またはヘテロアリール基であり、より好ましくはアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シリル基、アリール基またはヘテロアリール基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基である。これらの置換基は更に置換されてもよい。
【0038】
Ar11、Ar12、Ar13、Ar14はアリール基またはヘテロアリール基を表す。アリール基またはヘテロアリール基としては特に限定されないが、例えば、アリール基として好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、さらに好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられ、ヘテロアリール基として好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子であり、具体的には例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、チエニル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンズオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。Ar11、Ar12、Ar13、Ar14は好ましくは、アントラニル基、ナフチル基、フェニル基、ピリジル基、キノリル基、カル
バゾリル基であり、より好ましくはナフチル基、フェニル基、ピリジル基、キノリル基であり、特に好ましくはフェニル基である。
【0039】
11、R12、R13、R14が水素原子でない場合には、Ar11とR11、Ar12とR12、Ar13とR13、Ar14 とR14は、それぞれ互いに連結して環構造を形成していてもよい。Ar11、R11、窒素原子で形成される環、Ar12、R12、窒素原子で形成される環、Ar13、R13、窒素原子で形成される環、Ar14、R14、窒素原子で形成される環は、それぞれ環員数4〜10が好ましく、環員数5〜7がより好ましく、環員数5または6(例えば、ピロール環、ピロリジン環、ピペリジン環など)がさらに好ましい。
【0040】
Ar11、Ar12、Ar13、Ar14は、それぞれQ11、Q12、Q13、Q14と連結して環を形成していてもよく、R11、R12、R13、R14が水素原子でない場合には、R11、R12、R13、R14は、それぞれQ11、Q12、Q13、Q14と連結して環を形成していてもよい。Ar11と Q11、Ar12とQ12、Ar13とQ13、Ar14とQ14、R11とQ11、R12とQ12、R13とQ13、R14とQ14が窒素原子とそれぞれ形成する環は、環員数4〜10が好ましく、環員数5〜7がより好ましく、環員数6がさらに好ましい。
【0041】
11、m12、m13、m14は0〜20の整数で、少なくともひとつは0ではなく、好ましくはm11とm12が1〜3で、m13、m14が0であり、さらに好ましくはm11とm12が1で、m13、m14が0である。
【0042】
一般式(I)で表される化合物は好ましくは一般式(II)で表される化合物である。
【0043】
【化5】

【0044】
一般式(II)で表される化合物について説明する。
【0045】
21、Q22、Q23、Q24はそれぞれ前記Q11、Q12、Q13、Q14と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0046】
20、L21、L22はそれぞれ前記L10、L11、L12と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0047】
21、R22はそれぞれ前記R11、R12と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0048】
Ar21、Ar22はそれぞれ前記Ar11、Ar12と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0049】
21、m22はそれぞれ前記m11、m12と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0050】
一般式(I)及び 一般式(II)で表される化合物は一般式(III)で表される化合物であることが好ましい。
【0051】
【化6】

【0052】
301、R302は水素原子または置換基を表す。置換基としては、前記R21で説明した基が挙げられる。R301、R302としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基、水素原子が好ましく、さらに好ましくはアルキル基、アリール基であり、特に好ましくはメチル基、フェニル基である。
【0053】
301、R302は互いに連結して環構造を形成していてもよく、形成される環構造の環員数は好ましくは3〜8であり、さらに好ましくは5〜6である。
【0054】
31、R32は水素原子あるいは置換基を表し、前記R21、R22と同義であり、好ましい範囲も同じであり、特に好ましくはフェニル基、メチル基である。
【0055】
Ar31、Ar32はそれぞれ前記Ar21、Ar22と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0056】
31、R32が水素原子でない場合には、Ar31とR31、Ar32 とR32は、それぞれ互いに連結して環構造を形成していてもよい。Ar31、R31、窒素原子で形成される環、Ar32、R32、窒素原子で形成される環は、それぞれ環員数4〜10が好ましく、環員数5〜7がより好ましく、環員数5または6(例えば、インドール環、イソインドール環、インドリン環、カルバゾール環、キノリン環、イソキノリン環など)がさらに好ましい。
【0057】
331、R332、R341、R342は水素原子あるいは置換基を表す。置換基としては、前記R21で説明した基が挙げられる。R331、R332、R341、R342は、水素原子、アルキル基
、アミノ基が好ましく、水素原子、アルキル基がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。
【0058】
331、R332、R341、R342が水素原子でない場合、R331、R332はR31、Ar31と結合して環構造を形成していてもよく、R341、R342はR32、Ar32と結合して環構造を形成していてもよい。形成される環構造の環員数は好ましくは5〜8であり、さらに好ましくは6である。
【0059】
35、R36は水素原子あるいは置換基を表す。置換基としては、前記R21で説明した基が挙げられる。R35、R36はハロゲン原子、シアノ基、アリール基、水素原子が好ましく、ハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、水素原子がより好ましく、フッ素原子、シアノ基、水素原子がさらに好ましい。
【0060】
35、n36は0〜4の整数を表し、好ましくは1〜3である。R35、R36をそれぞれ複数個有する場合、複数個のR35、R36は同じであっても異なってもよく、連結して環を形成してもよい(例えば、ベンゼン縮環、ピリジン縮環、ピロール縮環、フラン縮環など)。
【0061】
本発明の一般式(I)で表される化合物は、その用途が限定されることはなく、有機層の内いずれの層に含有されてもよいが、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層、電荷ブロック層のいずれか、もしくは複数に含有されるのが好ましく、発光層に含有されるのがより好ましく、特に発光層中の発光材料として含有されるのが好ましい。
【0062】
一般式(I)で表される化合物の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらの化合物に限定されることはない。
【0063】
【化7】

【0064】
【化8】

【0065】
【化9】

【0066】
【化10】

【0067】
【化11】

【0068】
本発明の化合物は低分子化合物であっても良く、また、オリゴマー化合物、ポリマー化合物(重量平均分子量(ポリスチレン換算)は好ましくは1000〜5000000、より好ましくは2000〜1000000、さらに好ましくは3000〜100000である。)であっても良い。ポリマー化合物の場合、前記一般式(1)で表される構造がポリマー主鎖中に含まれても良く、また、ポリマー側鎖に含まれていても良い。また、ポリマー化合物の場合、ホモポリマー化合物であっても良く、共重合体であっても良い。本発明の化合物は低分子化合物が好ましい。
【0069】
一般式(I)で表される化合物を含むポリマー化合物、オリゴマー化合物の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらの化合物に限定されることはない。共重合体はランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体のいずれでもよい。化学式中、m:nはポリマーに含まれる各モノマーのモル比を表し、mは1〜100、nは0〜99の数値を表し、mとnの和は100である。
【0070】
【化12】

【0071】
【化13】

【0072】
一般式(I)で表される化合物の合成法を記載するが、本発明はこれらの方法に限定されることはない。
【0073】
錯体化の反応は、例えば、配位子と金属源(例えば、塩化白金、塩化パラジウム、塩化白金酸カリウム、塩化パラジウム酸ナトリウム、臭化白金、白金アセチルアセトン錯体など)を溶媒(アセトニトリル、ベンゾニトリル、酢酸、エタノール、メトキシエタノール、グリセロール、水、及び、これらの混合溶媒など)の存在下、もしくは、非存在下混合し、合成することができる。反応を促進させる添加剤(トリフルオロメタンスルホン酸銀、ピリジン、トリエチルアミンなど)を添加させても良いし、不活性ガス(窒素、アルゴンなど)の存在下で反応させても良い。
【0074】
反応温度は特に限定されないが、−30℃〜400℃が好ましく、0℃〜350℃がより好ましく、25℃〜300℃がさらに好ましい。
【0075】
なお、合成法については、[実施例]中に例示化合物1を例としてさらに詳細に説明する。本発明の他の化合物は例示化合物1と類似の方法で合成できる。
【0076】
本発明の素子を構成する各要素について詳細に説明する。
【0077】
<基板>
本発明で使用する基板としては、有機層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。その具体例としては、ジルコニア安定化イットリウム(YSZ)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料が挙げられる。
例えば、基板としてガラスを用いる場合、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合には、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0078】
基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。
【0079】
基板は、無色透明であっても、有色透明であってもよいが、有機発光層から発せられる光を散乱又は減衰等させることがない点で、無色透明であることが好ましい。
【0080】
基板には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。
透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機物が好適に用いられる。透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。熱可塑性基板を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
【0081】
<陽極>
陽極は、通常、有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極とし
て設けられる。
【0082】
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物が好適に挙げられる。陽極材料の具体例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
【0083】
陽極は、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、陽極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って、前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、陽極の形成は、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。
【0084】
本発明の有機電界発光素子において、陽極の形成位置としては特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記基板上に形成されるのが好ましい。この場合、陽極は、基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
【0085】
なお、陽極を形成する際のパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0086】
陽極の厚みとしては、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
【0087】
陽極の抵抗値としては、103Ω/□以下が好ましく、102Ω/□以下がより好ましい。陽極が透明である場合は、無色透明であっても、有色透明であってもよい。透明陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
【0088】
なお、透明陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載される事項を本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
【0089】
<陰極>
陰極は、通常、有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0090】
陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na
、K、Cs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0091】
これらの中でも、陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0092】
なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの広報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
【0093】
陰極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。例えば、陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
【0094】
陰極を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0095】
本発明において、陰極形成位置は特に制限はなく、有機層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、陰極と前記有機層との間に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
【0096】
陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1〜10nmの厚さに薄く成膜し、更にITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0097】
<有機層>
本発明における有機層について説明する。本発明の素子は、発光層を含む少なくとも一層の有機層を有しており、有機発光層以外の他の有機層としては、前述したごとく、正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
【0098】
−有機層の形成−
本発明の有機電界発光素子において、有機層を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等
の乾式製膜法、転写法、印刷法等いずれによっても好適に形成することができる。
【0099】
−発光層−
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
本発明における発光層は、発光材料のみで構成されていても良く、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でも良い。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、ドーパントは一種であっても二種以上であっても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は一種であっても二種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。発光層としては、発光材料として本発明の錯体を用いたものが好ましく、少なくとも一種のホスト材料と本発明の錯体により構成されていることがより好ましい。
また、発光層は一層であっても二層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0100】
本発明に使用できる蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の錯体やピロメテン誘導体の錯体に代表される各種錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
【0101】
また、本発明に使用できる燐光発光材料は、本発明の錯体の他に、例えば、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体が挙げられる。
遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、及び白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金である。
ランタノイド原子としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、及びガドリニウムが好ましい。
【0102】
錯体の配位子としては、例えば、G. Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H. Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer-Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0103】
燐光発光材料は、発光層中に、0.1〜40質量%含有されることが好ましく、0.5〜20質量%含有されることがより好ましい。
【0104】
また、本発明における発光層に含有されるホスト材料としては、例えば、カルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するもの及びアリールシラン骨格を有するものや、後述の正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層の項で例示されている材料が挙げられる。
【0105】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
【0106】
−正孔注入層、正孔輸送層−
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層、正孔輸送層は、具体的には、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン等を含有する層であることが好ましい。
【0107】
正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、正孔注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.5nm〜100nmであるのがより好ましく、1nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0108】
−電子注入層、電子輸送層−
電子注入層、電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層、電子輸送層は、具体的には、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする錯体に代表される各種錯体、有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0109】
電子注入層、電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々50nm以下であることが好ましい。
電子輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.2nm〜1
00nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのが更に好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0110】
−正孔ブロック層−
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0111】
<保護層>
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。
その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al23、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe23、Y23、TiO2等の金属酸化物、SiNx、SiNxy等の金属窒化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
【0112】
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
【0113】
<封止>
本発明の素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。封止容器と素子の間の空間に水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム等を挙げることができる。不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類が挙げられる。
【0114】
本発明の素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
【0115】
本発明の素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0116】
本発明の発光素子は、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等の分野に好適に使用できる。また、本発明の錯体化合物は、医療用途、蛍光増白剤、写真用材料、UV吸収材料、レーザー色素、記録メディア用材料、インクジェット用顔料、カラーフィルター用染料、色変換フィルター等にも適用可能である。
【実施例】
【0117】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0118】
<合成例:例示化合物1の合成>
例示化合物1は下記スキームに従って合成した。
【0119】
【化14】

【0120】
化合物Bの合成
窒素気流下、化合物A(5.0g)、酢酸パラジウム(73mg)、ナトリウム−tert−ブトキシド(11.5g)、キシレン(20mL)の混合物に、トリ−tert−ブチルホスフィン(0.3ml)、ブロモベンゼン(9.4ml)を加えて、150℃で3時間加熱した。室温まで冷却後、水を加えて、酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、酢酸エチルを留去した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)で精製することにより化合物Bを3.13g(収率32%)得た。
【0121】
化合物Cの合成
窒素気流下、ドライアイスで冷却したテトラヒドロフラン(5ml)にn−ブチルリチウムの10Mヘキサン溶液(0.36ml)、アセトニトリル(0.21ml)を順次加え、10分間攪拌後、化合物B(0.31g)のテトラヒドロフラン溶液(4ml)を加えて、室温まで昇温した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて、酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、酢酸エチルを留去した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製することにより化合物Cを0.28g(収率87%)得た。
【0122】
化合物Dの合成
化合物B(0.43g)、化合物C(0.33g)、水酸化カリウム(0.27g)をメチルスルホキシド(4ml)に溶かして、100℃で20分間加熱した。室温まで冷却後、希塩酸を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、酢酸エチルを留去した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1〜5:1)で精製することにより化合物Dを0.33g(収率55%)得た。
【0123】
化合物Eの合成
化合物D(0.33g)を濃塩酸(4ml)、イソプロピルアルコール(4ml)に溶かして、5時間過熱還流した。冷却後、炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、酢酸エチルを留去した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1〜4:1)で精製することにより化合物Eを0.23g(収率40%)得た。
【0124】
化合物Fの合成
化合物E(0.20g)をテトラヒドロフラン(5ml)に溶かして、氷浴で冷却しながらリチウムジイソプロピルアミドの1.8Mテトラヒドロフラン−エチルベンゼン−ヘプタン溶液(0.3ml)を加え、引き続きヨウ化メチルの0.35Mテトラヒドロフラン溶液(1ml)を加えた。この操作を再度繰り返し、水を加えて、酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、酢酸エチルを留去した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)で精製することにより化合物Fを0.17g(収率81%)得た。
【0125】
化合物Gの合成
窒素雰囲気下、化合物F(0.17g)、2、4−ジフルオロフェニルホウ酸(0.18g)、酢酸パラジウム(6.3mg)、トリフェニルホスフィン(29mg)、キシレン(5ml)の混合物に炭酸カリウム(0.31g)水溶液(1ml)を加えて、150℃で4時間攪拌した。室温まで冷却後、酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、酢酸エチルを留去した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で精製することにより化合物Gを84mg(収率40%)得た。
【0126】
例示化合物1の合成
窒素気流下、化合物G(84mg)、塩化白金(35mg)、ベンゾニトリル(10ml)の混合物を、160℃で4時間攪拌した。ベンゾニトリルを留去し、得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン)で精製することにより例示化合物1を62mg(収率60%)得た。
【0127】
<有機電界発光素子の作製と評価>
1.有機電界発光素子の作製
(1)本発明の有機電界発光素子(TC−21)の作製
0.5mm厚み、2.5cm角のITO膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極(ITO膜)上に真空蒸着法にて以下の有機化合物層を順次蒸着した。
本発明の実施例における蒸着速度は、特に断りのない場合は0.1〜2nm/秒である。蒸着速度は水晶振動子を用いて測定した。以下に記載の膜厚も水晶振動子を用いて測定したものである。
【0128】
(ホール注入層)
銅フタロシアニン(CuPc):膜厚10nm
(ホール輸送層)
NPD:膜厚40nm
(発光層)
MCP=92質量%、例示化合物1=8質量%の混合層:膜厚30nm
(電子輸送層)
Balq:膜厚10nm
(電子注入層)
Alq:膜厚10nm
【0129】
上記CuPc、NPD、MCP、Balq、Alqの化学構造を以下に示す。
【0130】
【化15】

【0131】
最後にフッ化リチウム0.1nmおよび金属アルミニウムをこの順に100nm蒸着し陰極とした。これを大気に触れさせること無く、アルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し有機電界発光素子(TC−21)を得た。
【0132】
(2)比較例の有機電界発光素子(TC−22)の作製
発光材料を、例示化合物1から国際公開第04/108857号パンフレットに記載の下記比較化合物1に変更する以外は、TC−21と同様の方法で有機電界発光素子(TC−22)を作製した。
【0133】
【化16】

【0134】
2.有機電界発光素子の評価
上記で得られた有機電界発光素子(TC−21及び22)に、直流定電圧(5V)を印加したところ、共に、リン光発光材料に由来する青緑色に発光した。
TC−21はTC−22に比べて、最高輝度が1.5倍、駆動寿命が1.5倍であった。
【0135】
上記実施例により、本発明の化合物(例示化合物1)を用いることにより、高効率かつ高耐久性の有機電界発光素子が得られることが分った。また、他の本発明の化合物を用いても、同様な効果を得ることが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、下記一般式(I)で表される化合物の少なくとも一種を有機層に含有することを特徴とする有機電界発光素子。
【化1】


(一般式(I)中、Mは金属イオン、Q11、Q12、Q13及びQ14は、各々独立に、Mに配位する原子群、L10、L11、L12及びL13は、各々独立に、単結合または連結基を表し、Q11、Q12、Q13及びQ14とMを結ぶ実線は、共有結合、イオン結合、配位結合のいずれかを表す。n10は0もしくは1で、n=0の場合はQ13とQ14の間に結合は存在しない。m11、m12、m13及びm14は、各々独立に、0以上の整数で、少なくともひとつは1以上である。Ar11、Ar12、Ar13及びAr14は、各々独立に、アリール基またはヘテロアリール基を表し、R11、R12、R13及びR14は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。)
【請求項2】
一般式(I)中の金属イオンMが、白金イオン、イリジウムイオン、レニウムイオン、パラジウムイオン、ロジウムイオン、ルテニウムイオン、および銅イオンの群から選ばれたイオンであることを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
一般式(I)中の金属イオンMが、白金イオン、イリジウムイオン、パラジウムイオン、およびロジウムイオンの群から選ばれたイオンであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
一般式(I)における置換基がアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【化2】


(一般式(II)中、Q21、Q22、Q23及びQ24は、各々独立に、白金イオンに配位する原子群、L20、L21及びL22は、各々独立に、単結合または連結基を表し、Q21、Q22、Q23及びQ24と白金イオンを結ぶ実線は共有結合、イオン結合、配位結合のいずれかを表している。m21、m22は、各々独立に、0以上の整数で、少なくともひとつは1以上である。Ar及びAr22は、各々独立に、アリール基またはヘテロアリール基、R21及びR22は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。)
【請求項6】
一般式(II)における置換基がアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基であることを特徴とする、請求項5に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【化3】


(一般式(III)中、白金イオンと窒素原子を結ぶ実線は配位結合を表し、白金イオンと炭素原子を結ぶ実線は共有結合あるいはイオン結合を表す。R301及びR302は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。Ar31及びAr32は、各々独立に、アリール基または
ヘテロアリール基を表し、R31及びR32は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。R331、R332、R341及びR342は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。R35及びR36は、各々独立に、置換基を表し、n35及びn36は、各々独立に、0〜4の整数を表す。)
【請求項8】
請求項7に記載の一般式(III)で表されることを特徴とする化合物。

【公開番号】特開2007−73891(P2007−73891A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262305(P2005−262305)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】