説明

有機電界発光素子用封止部材及び有機電界発光素子

【課題】 発光面積を小さくすることなく低ロスでの電力の注入を可能にすることができると共に、スルーホール等の加工をする必要なく外部回路への接続を容易に行なうことができる有機電界発光素子用封止部材を提供する。
【解決手段】 2つの電極1,2の間に有機発光層3を設けて形成される有機電界発光素子4の、有機発光層3を封止するための封止部材Aに関する。封止部材Aには、補助電極5と、補助電極5に接続され有機電界発光素子4の電極1,2と接続可能に対向する導通部6と、補助電極5に接続され封止部材Aの外面に露出する外部電極7とが、備えられている。有機電界発光素子4の透明電極で形成される電極1,2に補助電極を設ける場合のように発光面積を小さくすることがなくなり、また補助電極5に接続された外部電極7は封止部材Aの外面に露出して設けられており、スルーホール等の加工をする必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大面積ディスプレイ、液晶表示機用バックライト、電飾、サイン用光源、発光ポスター、照明用光源などに用いられる有機電界発光素子に適用される封止部材、及びこの封止部材を備えた有機電界発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は、一般に、透明電極からなる陽極、ホール輸送層、有機発光層、電子注入層、陰極の各層を、透明基板の片側の表面にこの順で積層した構成で形成される。そして陽極と陰極の間に電圧を印加することによって、陰極側から注入された電子と、陽極側から注入されたホールが有機発光層内で再結合し、有機発光層で発光した光が透明電極や透明基板を通して取り出されるようになっている。
【0003】
ここで、有機電界発光素子の寿命を支配する要因は多数あるが、その中でよく知られているのは、空気中の水分や酸素によるものである。水分は、例えば有機発光層と電極との界面に悪影響を及ぼし、結果としてダークスポットと呼ばれる点状の非発光部を生成し、寿命に影響を与えるものであり、また酸素は、有機物の酸化を引き起こすため、存在することが寿命の上で好ましくないのである。そこでこれら水分や酸素の悪影響を低減して長寿命化するため、ガラスもしくは金属缶による封止を有機電界発光素子に対して行なったり、ガスバリア性の高い膜を有機電界発光素子の上に形成して有機電界発光素子の封止を行なったりして、有機電界発光素子に水や酸素等が触れないようにすることが従来から行なわれている。有機電界発光素子においてはその寿命の観点からこのような封止は必須のものである。
【0004】
有機電界発光素子を上記のように封止すると、有機電界発光素子に電力を供給する電極は、封止されていない箇所、具体的には有機発光層を設けた基板の周辺部から取り出すことが必要になり、基板の内側に位置する有機電界発光素子への電力供給は、一般には基板の上に設けられた透明電極からなる陽極あるいは陰極と、それに対応して形成された対電極によって行なわれる。ここで、透明電極からなる陽極あるいは陰極に給電する際の電極抵抗による電力ロスは、基板のサイズが小さい場合にはほとんど問題とならないが、有機電界発光素子の面積や、基板の面積が大きくなるにつれて、電極抵抗は顕著となり、例えば数十インチクラスのディスプレイ、あるいは数十cmサイズオーダーの発光体として形成する場合には、電力ロスは無視できなくなり、結果として発光体の効率低下や、発熱による発光体の寿命低下等の問題を引き起こすおそれがある。
【0005】
そこでこの問題を解決するために、基板の上に低抵抗の金属からなる補助電極を設けることが従来から行なわれている。すなわち、基板に設けられた透明電極の上もしくは透明電極に併設して、例えばCr、Ni、Au等の低抵抗金属を細幅で設けて補助電極を形成することによって、透明電極単独の場合に比して電極抵抗による電力ロスを低減することが可能になるものである。しかし、有機電界発光素子は一般に、片側の透明電極(例えば透明基板の上に形成された透明電極)を介して発生した光を外部に取り出すようになっているので、補助電極を透明電極に設けると、補助電極を設けた部分からは光の取り出しができなくなり、結果として発光面積の低下や、光の取り出し効率の低下を引き起こすことになり、好ましくない。
【0006】
このため、補助電極を基板以外の箇所に設ける方法も検討されている。例えば特許文献1、特許文献2では、有機電界発光素子を封止する封止板にスルーホールを設け、スルーホールを介して封止板の外側の導電パターンと内側の導電パターンを接続し、これらの導電パターンを補助電極として用いることが提案されている。しかし、封止板に多数のスルーホールを設けるための加工は困難であり、またスルーホールの部分で封止性能が低下するおそれがあるという問題があった。
【0007】
また特許文献3には、有機発光素子の電極に導電体を介して補助電極を接続する方法が記載されている。しかしこの発明では、複数箇所で有機発光素子の電極と補助電極が接するようになっているが、補助電極との接続に関しては一切考慮されていない。
【特許文献1】特許第3290584号公報
【特許文献2】特開2000−317940号公報
【特許文献3】特開2002−033198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、発光面積を小さくすることなく低ロスでの電力の注入を可能にすることができ、しかもスルーホール等の加工をする必要なく外部回路への接続を容易に行なうことができると共に外部回路との接続のためのスペースを低減できる有機電界発光素子用封止部材及び有機電界発光素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る有機電界発光素子用封止部材は、2つの電極1,2の間に有機発光層3を設けて形成される有機電界発光素子4の、有機発光層3を封止するための封止部材Aであって、封止部材Aには、補助電極5と、補助電極5に接続され有機電界発光素子4の電極1,2と接続可能に対向する導通部6と、補助電極5に接続され封止部材Aの外面に露出する外部電極7とが、備えられていることを特徴とするものである。
【0010】
また請求項2の発明は、請求項1において、封止部材Aは、有機電界発光素子4の有機発光層3に対向して配置される補助電極5を備えた封止板8と、有機発光層3を囲む位置で有機電界発光素子4と封止板8との間に接着可能な接合部材9とを備えて形成されるものであることを特徴とするものである。
【0011】
また請求項3の発明は、請求項2において、封止板8の端部の少なくとも一部の厚みを他の部分より薄く形成し、封止板8のこの厚みの薄い部分10に外部電極7を設けると共に、接合部材9を封止板8の厚みの厚い部分に接着するようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、導通部6は封止部材Aの表面に突出して設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項5に係る有機電界発光素子は、2つの電極1,2の間に有機発光層3を設けて形成される有機電界発光素子4において、有機発光層3を封止するように請求項1乃至4のいずれかに記載の封止部材Aが接着されて成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、有機発光層3を封止するための封止部材Aに補助電極5を備えるので、有機電界発光素子4の透明電極で形成される電極1,2に補助電極を設ける場合のように発光面積を小さくすることなく、低ロスでの電力の注入が可能になるものである。また補助電極5に接続された外部電極7は封止部材Aの外面に露出して設けられており、スルーホール等の加工をする必要がなく、外部回路への接続を容易に行なうことができると共に外部回路との接続のためのスペースを低減することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0016】
有機電界発光素子4は、陽極あるいは陰極となる2つの電極1,2の間に有機発光層3を介在させた構成で、これらを基板15の片面に積層することによって、図1のように形成されるものである。有機発光層3には必要に応じて、陽極の側にホール輸送層を、陰極の側に電子注入層を積層して設けてあるが、これらについては図示は省略してある。基板15の表面に設けられる電極1を陽極、他方の電極2を陰極として形成するようにしてもよく、逆に基板15の表面に設けられる電極1を陰極、他方の電極2を陽極として形成するようにしてもよい。有機発光層3で発光した光を基板15を通して出射させる場合、基板15はガラス等の光透過性材料で形成されるものであり、基板15の表面に設けられる電極1も透明電極として形成されるものである。電極1,2の透明電極の材料としては、CuI、ITO(インジウムチンオキサイド)、SnO、酸化亜鉛系材料、IZO(インジウムジンクオキサイド)などを用いることができる。
【0017】
図2は封止部材Aの実施の形態の一例を示すものであり、封止板8と枠状の接合部材9とを備えて封止部材Aを形成するようにしてある。封止板8や接合部材9は気体不透過性の材料で形成されるものであり、封止板8には補助電極5が設けてある。
【0018】
補助電極5は、有機電界発光素子4を構成する電極1,2と少なくとも同等もしくはそれ以上の導電率を有するものであることが好ましい。特に限定されるものではないが、具体的には、Cr、Cu、Ag、Ni、Au、Nd、Al、Au、Pt等の金属、ITO、NESA(酸化錫)、IZO、酸化亜鉛系、酸化インジウム系その他の透明導電体、導電性有機材料、銀ペースト、カーボンペースト等の導電ペーストなどを挙げることができる。補助電極5は給電回路パターンで多数本形成されるが、補助電極5の幅寸法や、厚み寸法は用いる材料の特性、および対応する有機電界発光素子4の形状等に応じて任意に選定することが可能である。また、補助電極5のパターンは、エッチング、パターンスパッタリング、塗布、レーザー加工、切削、貼付、印刷等の任意の方法により、必要に応じた任意の形状で形成することが可能である。
【0019】
また補助電極5は、封止部材Aの有機電界発光素子4に対向する面、すなわち図2のように封止板8の片側表面に形成するのが一般的であるが、必要に応じて封止部材Aの内部に形成するようにしても良い。封止部材Aの内部に補助電極5を形成するにあたっては、例えば表面に補助電極5を形成した部材を2枚積層するようにしたり、封止部材Aの表面を彫り込み、その部位に補助電極5を形成するようにしたり、封止部材Aを成形する際に補助電極5を封止部材Aの内部に埋め込むようにしたり、封止部材Aの表面に形成した補助電極5の上に絶縁層を設け、さらにこの上に補助電極5を形成するようにしたり、任意の方法を採用することができる。このように封止部材Aの内部に補助電極5を形成することによって、封止部材Aの表面を平坦かつ絶縁性に形成することが可能になり、また封止部材Aの表面にその内部に設けた補助電極5とは異なるパターンでさらに補助電極5を形成することができ、高密度で補助電極5を形成することが可能になって、例えば陰極用補助電極と陽極用補助電極の積層化、信号用補助電極と駆動用補助電極の形成などが可能になるものである。
【0020】
給電回路パターンとして形成される補助電極5の封止板8の端部側の一端は外部電極7となるものであり、図1及び図2の実施の形態では、封止板8の側端面に補助電極5の一側端を折り曲げて沿わせることによって、この部分を外部電極7として形成してある。また補助電極5の他端部には導通部6が設けてある。導通部6は補助電極5と接触して電気的に接続された状態で設けられるものであり、封止板8の有機電界発光素子4に対向する表面に、有機電界発光素子4の側へ突出するように設けてある。導通部6の形状や材質等は特に限定されるものではないが、例えばシート状、半球状、柱状、錐状、針状等に形成することができ、補助電極5の表面に対して凸の形状を有する金属や、銀ペースト等の金属・樹脂混合導電体、スプリング付き導通ピン、異方性導電膜などで形成することができる。導通部6は補助電極5を形成する際に設けておき、予め形成されているようにしてもよいが、有機電界発光素子4を実際に封止する際に、その都度導通部6を形成するようにしてもよい。また導通部6の種類や抵抗値は、通電する電流値に基づいて必要に応じて選定することができる。
【0021】
上記のように補助電極5、外部電極7、導通部6を備えて形成される封止部材Aを用いて有機電界発光素子4の封止を行なうにあたっては、図2に示すように、有機電界発光素子4の基板15の有機発光層3を設けた側と、封止板8の補助電極5や導通部6を設けた側とを対向させ、有機電界発光素子4と封止板8の端部間において、有機発光層3を囲むように枠状の接合部材9を配置する。そして接合部材9を有機電界発光素子4の基板15と封止板8にそれぞれ封止用接着剤で接着し、有機発光層3を封止板8と接合部材9とで気密的に囲むことによって、図1のように有機電界発光素子4の封止を行なうことができるものである。このように有機電界発光素子4に接合部材9を介して封止板8を取り付けると、封止板8に設けた導通部6が有機電界発光素子4の電極1または/および電極2に接触して電気的に接続され、導通部6によって有機電界発光素子4の電極1,2と封止部材Aの補助電極5とを導通接続することができるものである。また封止板8の側端面に補助電極5の一端を導出して外部電極7が形成してあるので、外部電極7は封止部材Aの外部に露出しているものであり、この外部電極7に外部回路を接続することができる。従って、外部電極7から補助電極5、導通部6を通して、有機電界発光素子4の電極1,2に通電することができるものであり、透明電極で形成される電極1,2よりも電気抵抗を小さく形成することができる補助電極5を通して、電力ロス少なく有機電界発光素子4に通電を行なうことが可能になるものである。
【0022】
上記のように本発明に係る封止部材Aで有機電界発光素子4を封止するにあたって、補助電極5は封止部材Aに設けてあるので、有機電界発光素子4の発光部の位置と無関係に配置して補助電極5を形成することができるものである。従って、補助電極5の厚み寸法や、幅寸法、透明性についても任意に設定することができるものであり、発光面積が大きい有機電界発光素子4、すなわち大電流を要する有機電界発光素子4に対しても、低電力ロスで必要量の電流を通電することが可能になるものである。
【0023】
ここで、導通部6は上記のように封止部材Aの表面から有機電界発光素子4の側に突出して設けられていることが好ましい。このように導通部6が突出して設けられていると、有機電界発光素子4に封止部材Aを対向させて配置して封止を行なう際に、導通部6が有機電界発光素子4の電極1,2と接触して接続を行なうことができるものであり、有機電界発光素子4の側に突出部を設けたり、導通部6と接続する部位を設けたりする必要がなくなるものである。
【0024】
また外部電極7は封止部材Aの側面に露出するように設けられているので、この外部電極7によって補助電極5に外部回路を接続することができるものである。従って、外部回路との接続のために、封止部材Aにスルーホールを加工するような必要がなくなり、補助電極5への外部回路の接続を容易に行なうことができるものである。ここで、有機電界発光素子4の基板15に設けた電極1を外部回路と直接接続する場合には、外部電極7を基板15の端部に設ける必要があり、基板15の端部には発光面を形成することができない非発光部が存在することになるが、本発明では封止部材Aに外部電極7を設けているために、基板15に外部電極7を設けるような必要がなくなり、非発光部を小さくして発光効率を高めることが可能になるものである。
【0025】
外部電極7を封止部材Aの外部に露出させるようにするにあたっては、上記の図1及び図2の実施の形態のように補助電極5の一端を封止板8の端面にまで延長させて外部電極7を形成するようにする他に、図3(a)のように封止板8を有機電界発光素子4より一回り大きく形成することによって、有機電界発光素子4を封止した際に封止板8の端部が接合部材9より外側に張り出すようにし、封止板8の表面に形成した補助電極5の一端を封止板8の端部において封止部材Aの外側に露出させ、この露出させた補助電極5の端部を外部電極7として形成するようにしてもよい。また図3(b)のように、補助電極5の端部を封止部材A(封止板8)の内部に設けることによって、封止部材A(封止板8)の側端面に露出させ、この露出させた補助電極5の端部を外部電極7として形成するようにしてもよい。
【0026】
また上記の実施の形態では、封止部材Aを封止の面を構成する封止板8と、封止の辺を構成する接合部材9とから形成し、必要に応じて封止の前に、あるいは封止の際に、封止板8と接合部材9とを一体化するようにしてある。このように有機電界発光素子4に接合する辺部材である接合部材9を別体構成にすることによって、封止板8の表面は全面が平面となり、封止板8の表面に補助電極5を形成するにあたってパターニングの自由度が高くなると共に加工が容易になり、また封止板8の内部に補助電極5を形成するにあたっても、積層などを容易に行なうことができるものである。勿論、封止部材Aを封止板8と接合部材9の複数部材から形成する他に、単一部材で封止部材Aを形成することも可能である。
【0027】
接合部材9の材質は、封止板8の材質と同等のものであることが、寸法整合性の観点から好ましいが、特に限定されるものではなく必要に応じて適宜選定されるものである。例えば封止板8がガラスからなる場合は、封止板8の周辺に相当する寸法でリング状薄肉部材にガラスで形成したものを、接合部材9として用いることができる。
【0028】
図4は本発明の実施の形態の他の一例を示すものであり、枠状の接合部材9の内側に、外部電極7と有機電界発光素子4の電極1,2との接続に問題を与えない箇所に、スペーサ17を配置するようにしてある。このようにスペーサ17を用いることによって、有機電界発光素子4と封止板8の間の距離を規制することができ、発光面積が大きい有機電界発光素子4であっても封止板8との間の距離を一定に保つことができるものである。スペーサ17は接合部材9と一体に形成しても、別体に形成してもいずれでもよい。またスペーサ17としては、ガラス粒子、プラスチック粒子、シリカ、アルミナ、およびこの種の絶縁性粒子を好ましく用いることができる。また導通部6にスペーサ17の機能も併せて持たせることも可能である。
【0029】
図5は本発明の実施の形態の他の一例を示すものであり、封止板8の端部の少なくとも一部の厚みを、封止板8の中央部など他の部分より薄く形成してある。例えば、厚みが一定な封止板8の有機電界発光素子4に対向する側の面の端部を斜めに切除し、外側ほど有機電界発光素子4から離れる斜面19に形成することによって、封止板8の端部に厚みが薄くなる部分10を設けるようにしてある。封止板8の有機電界発光素子4の側の表面には上記と同様にして補助電極5が設けてあり、補助電極5の一端部をこの斜面19まで沿わせて設けるようにしてある。このように補助電極5の斜面19に設けた部分で外部電極7が形成されるものであり、封止板8の端部の厚みの薄い部分10に外部電極7を設けることができるものである。その他の構成は上記の各実施の形態と同じである。
【0030】
そして、有機電界発光素子4の有機発光層3を設けた側と、封止板8の補助電極5を設けた側とを対向させ、有機電界発光素子4と封止板8の端部間に枠状の接合部材9を配置し、接合部材9を有機電界発光素子4の基板15と封止板8にそれぞれ封止用接着剤で接着することによって、有機発光層3を封止板8と接合部材9とで気密的に囲んで有機電界発光素子4の封止を行なうことができるものである。このとき、図5のように接合部材9は封止板8の端部の厚みの薄い部分10より内側の位置の厚みの厚い部分に接着されるものであり、封止板8の厚みの薄い部分10に形成した外部電極7は接合部材9で覆われることなく、封止部材Aの外部に露出している。従って、この外部電極7に外部回路を接続することによって、上記と同様にして有機電界発光素子4への通電を行なうことができるものである。
【0031】
ここで、図5の実施形態のように、封止板8の端部に斜面19を形成し、この斜面19に外部電極7を設けることによって、斜面19の上から接合部材9を封止板8に接着するようにしても、封止板8は斜面19より内側の封止板8の厚みの厚い部分の表面に接着されるものであり、外部電極7を斜面19と接合部材9の間の空間において封止部材Aの外部に露出させることができるものである。
【0032】
また図6の実施の形態は、図5の実施の形態において、接合部材9の有機電界発光素子4の側の面の内側寄りの部分を内側ほど有機電界発光素子4から離れる斜面20に形成して、接合部材9の外側部分を厚肉部9a、内側部分を薄肉部9bに形成してある。その他の構成は図5のものと同じである。そしてこの接合部材9を有機電界発光素子4の基板15と封止板8にそれぞれ接着して有機電界発光素子4の封止を行なうと、接合部材9はその厚肉部9aが有機電界発光素子4の基板15に接着され、薄肉部9bの部分は基板15に接着されない。従って、基板15に接合部材9が接着される部分の幅を小さくして、有機発光層3を形成することができない基板15の周辺部の面積を小さくすることができ、発光部の面積を大きく確保することが可能になるものである。
【実施例】
【0033】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0034】
(実施例1)
ガラス板に厚み1100ÅのITO(シート抵抗12Ω/□)をスパッタしたものを用い、ITOをパターニングして図7(a)のようにa=10mm、b=10mm、c=5mmのパターンの陰極(電極1)を形成すると共に、ガラス板を100mm×100mmの大きさに切断することによって、電極1を片面に設けた基板15を作製した。この基板15を純水、アセトン、イソプロピルアルコールで各10分間超音波洗浄をした後、イソプロピルアルコール蒸気で2分間蒸気洗浄して乾燥し、さらに30分間UVオゾン洗浄した。
【0035】
次に、図8(a)に示すように、d=12mm、e=6mm、f=13mm、g=13mmのパターンの開口部22を設けて、120mm×120mmの大きさに形成したマスク23を用い、電極1の上から基板15にこのマスク23を重ねた状態で、基板15を真空蒸着装置にセットし、5×10−5Paの減圧下、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)を、1Å/sの蒸着速度で800Å厚に蒸着してホール輸送層を形成し、次に青色発光層としてジナフチルアントラセン誘導体(コダック社製「BH−2」)にジスチリルアリーレン誘導体を4質量%ドープした層を500Å厚積層することによって発光層を設け、次にバソクプロイン((株)同仁化学研究所製)とCsをモル比1:1で200Å厚に共蒸着して電子注入層を設けて有機発光層3を設けた。
【0036】
さらに、図8(b)に示すように、h=10mm、i=10mm、j=15mm、k=10mmのパターンの開口部24を設けて、120mm×120mmの大きさに形成したマスク25を用い、有機発光層3の上から基板15にこのマスク25を重ねた状態で、同様にアルミニウムを4Å/sの成膜速度で800Å厚に真空蒸着して陰極(電極2)形成し、図7(b)に示すように、1cm×1cmの発光部26が並列する有機電界発光素子4を得た。
【0037】
一方、封止部材Aとして、図9(a)に示す封止板8と、図9(b)に示す接合部材9を用いた。封止板8は98mm×98m×厚み1mmのガラス板で形成してあり、片面にCrを厚み2200Åにスパッタして、l=5mm、m=15mm、n=4mm、o=9mmのパターンの補助電極5が設けてある。補助電極5がガラス板の側端にまで到達している部分には、ガラス板の側端面にも厚み2200ÅにCrをスパッタして外部電極が形成してある。また補助電極5の表面には、p=20mm、q=19mmの間隔でAuボールを圧着することによって、5×5個の配置で導通部6が設けてある。接合部材9は外寸が98mm×98mm、内寸が96mm×96mm、厚みが0.3mmのガラスで形成してある。
【0038】
そして、有機電界発光素子4に接合部材9を介して封止板8を重ね、接合部材9をスリーボンド社製有機EL封止材「30Y−437」を用いて有機電界発光素子4の基板15と封止板8に接着することによって有機発光層3を封止した。
【0039】
(実施例2)
封止板8に銀ペーストを用いて幅1mm、厚み300μmに描画して補助電極5を形成し、またこの補助電極5の表面に銀ペーストをさらに200μmの厚みで積層して導通部6を形成するようにした。また実施例1と同様に、補助電極5がガラス板の側端にまで到達している部分には、ガラス板の側端面にも銀ペーストの塗布を行なって外部電極を形成した。この他は、実施例1と同様にして有機電界発光素子4の有機発光層3を封止した。
【0040】
(実施例3)
封止部材Aとして、図10(a)(b)に示す封止板8と、図10(c)に示す接合部材9を用いた。封止板8は100mm×100m×厚み1mmのガラス板で形成してあり、四周の各辺を45°の角度で研磨して斜面19を形成した。補助電極5は斜面19も含む範囲でCrを厚み6000Åにスパッタして形成し、導通部6は1mm×1mm×厚み0.6mmのカーボンテープを貼付して形成した。また接合部材9は外寸が100mm×100mm、内寸が96mm×96mm、厚みが0.3mmのガラスで形成してある。
【0041】
この封止部材Aを用いるようにした他は、実施例1と同様にして、有機電界発光素子4の有機発光層3を封止した。
【0042】
(比較例1)
導通部6を設けない封止部材Aを用いるようにした他は、実施例1と同様にして、有機電界発光素子4の有機発光層3を封止した。
【0043】
(比較例2)
導通部6を設けない封止部材Aを用いるようにした他は、実施例2と同様にして、有機電界発光素子4の有機発光層3を封止した。
【0044】
上記のように実施例1〜2及び比較例1〜2で封止した有機電界発光素子4について、電極1,2にそれぞれ基板15の一辺のみから給電を行なった。そして100mA/画素で通電した際の、陰極(電極2)に最も近い列の、陽極(電極1)の給電部から最も近い画素(発光部26)と、最も遠い画素(発光部26)の、駆動電圧を測定した。結果を表1に示す。
【0045】
また、実施例3のものは、有機電界発光素子4の基板15と封止部材Aの封止板8の大きさが同じであるにもかかわらず、斜面19の部分で配線の導通をとることができた。封止板8に斜面19を設けず、有機電界発光素子4の基板15と封止板8の大きさが同じものを用いて同様に封止を行なった場合には、導通をとることができないものであった。
【0046】
【表1】

【0047】
表1にみられるように、各実施例のものは、給電部からの距離にかかわらず、同一の駆動電圧で駆動することが可能であることが確認される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す一部の断面図である。
【図2】同上の分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態の他の一例を示すものであり(a),(b)はそれぞれ一部の断面図である。
【図4】本発明の実施の形態の他の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態の他の一例を示す一部の断面図である。
【図6】本発明の実施の形態の他の一例を示す一部の断面図である。
【図7】(a)は実施例で用いた電極付きの基板を示す平面図、(b)は実施例で用いた有機電界発光素子を示す平面図である。
【図8】(a),(b)は実施例で用いたマスクを示す平面図である。
【図9】(a)は実施例で用いた封止板を示す平面図、(b)は実施例で用いた接合部材を示す平面図である。
【図10】(a),(b)は実施例で用いた封止板を示す平面図と正面図、(c)は実施例で用いた接合部材を示す平面図である。
【符号の説明】
【0049】
A 封止部材
1 電極
2 電極
3 有機発光層
4 有機電界発光素子
5 補助電極
6 導通部
7 外部電極
8 封止板
9 接合部材
10 厚みの薄い部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの電極の間に有機発光層を設けて形成される有機電界発光素子の、有機発光層を封止するための封止部材であって、封止部材には、補助電極と、補助電極に接続され有機電界発光素子の電極と接続可能に対向する導通部と、補助電極に接続され封止部材の外面に露出する外部電極とが、備えられていることを特徴とする有機電界発光素子用封止部材。
【請求項2】
封止部材は、有機電界発光素子の有機発光層に対向して配置される補助電極を備えた封止板と、有機発光層を囲む位置で有機電界発光素子と封止板との間に接着可能な接合部材とを備えて形成されるものであることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子用封止部材。
【請求項3】
封止板の端部の少なくとも一部の厚みを他の部分より薄く形成し、封止板のこの厚みの薄い部分に外部電極を設けると共に、接合部材を封止板の厚みの厚い部分に接着するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の有機電界発光素子用封止部材。
【請求項4】
導通部は封止部材の表面に突出して設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の有機電界発光素子用封止部材。
【請求項5】
2つの電極の間に有機発光層を設けて形成される有機電界発光素子において、有機発光層を封止するように請求項1乃至4のいずれかに記載の封止部材が接着されて成ることを特徴とする有機電界発光素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−127916(P2006−127916A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314688(P2004−314688)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度、新エネルギー・産業技術総合開発機構、「高効率有機デバイスの開発事業」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】