説明

有機ELデバイス製造装置及び成膜装置並びに液晶表示基板製造装置

【課題】本発明は、基板やマスクの撓みを高精度に蒸着できる有機ELデバイス製造装置及び成膜装置並びに液晶表示基板製造装置を提供する。
【解決手段】本発明は、前記基板を立てた姿勢に保持する基板保持手段と、前記シャドウマスクを保持するアライメントベースと、前記アライメントベースを垂下した姿勢に保持するアライメントベース垂下手段と、前記アライメントベースの垂下された垂下平面での前記アライメントベース回転の動きに追随する送り手段を有するアライメントベース支持手段と、前記基板とシャドウマスクに設けられたアライメントマークを撮像するアライメント光学手段と、前記垂下姿勢の状態で前記アライメントベースを駆動するアライメント駆動手段と、前記アライメント光学手段の結果に基づいて前記アライメント駆動手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELデバイス製造装置及び成膜装置並びに液晶表示基板製造装置に係わり、特に大型の基板のアライメントに好適な有機ELデバイス製造装置及び成膜装置並びに液晶表示基板製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELデバイスを製造する有力な方法として真空蒸着法がある。真空蒸着においては基板とマスクとのアライメントが必要である。年々処理基板の大型化の波が押し寄せ、G6世代の基板サイズは1500mm×1800mmになる。基板サイズが大型化すると当然マスクも大型化し、その寸法は2000mm×2000mm程度にも及ぶ。特に鋼製のマスクを使用すると有機ELデバイスではその重量は300Kgにもなる。従来では、基板及びマスクを水平にして位置合せをしていた。そのような従来技術としては、下記の特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-302896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された基板とマスクを横にしてアライメントする方法は、図7に示すように、基板及びマスクはその薄さと自重により大きく撓む。その撓みが一様であるならばそれを考慮してマスクを製作すればよいが、当然中心程大きくなり基板サイズが大きくなると製作は困難となる。また、一般的にその中心点における撓み量は、基板の撓みをd1、マスクの撓みをd2とすると、d1>d2となる。基板撓みが大きいと、基板蒸着面にマスクと接触し接触傷が生じるために、密着させることができない。そのために、被写界深度以上に離間してアライメントすると精度が悪く、不良品となる課題がある。特に、表示装置用基板では高精彩な画面を得ることができない。
【0005】
従って、本発明の目的は、基板やマスクの撓みを高精度に蒸着できる有機ELデバイス製造装置及び成膜装置並びに液晶表示基板製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、前記基板を立てた姿勢に保持する基板保持手段と、前記シャドウマスクを保持するアライメントベースと、前記アライメントベースを垂下した姿勢に保持するアライメントベース垂下手段と、前記アライメントベースの垂下された垂下平面での前記アライメントベース回転の動きに追随する送り手段を有するアライメントベース支持手段と、前記基板とシャドウマスクに設けられたアライメントマークを撮像するアライメント光学手段と、前記垂下姿勢の状態で前記アライメントベースを駆動するアライメント駆動手段と、前記アライメント光学手段の結果に基づいて前記アライメント駆動手段を制御する制御手段とを有することを第1の特徴とする。
【0007】
また、上記目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記アライメントベース支持手段は、前記垂下平面での一定方向の動きを吸収し、前記送り手段と機能的に連結された伸縮手段を有することを第2の特徴とする
さらに、上記目的を達成するために、第2の特徴に加え、前記機能的とは接続された状態であり、前記送り手段は前記アライメントベースの周辺部を移動し、前記伸縮手段は前記真空チャンバの内壁又は前記真空チャンバ内に設けられた構造物に設けられたことを第3の特徴とする。
【0008】
また、上記目的を達成するために、第2の特徴に加え、前記機能的とは接続された状態であり、前記送り手段は前記真空チャンバの内壁又は前記真空チャンバ内に設けられた構造物上を移動し、前記伸縮手段は前記アライメントベースの周辺部に設けられたことを第4の特徴とする。
【0009】
さらに、上記目的を達成するために、第2の特徴に加え、前記機能的とは前記送り手段が前記伸縮手段の一端に設けられた面部を移動する状態であり、送り手段及び前記伸縮手段の他端の一方が前記アライメントベースの周辺部に設けられ、他方が前記真空チャンバの内壁又は前記真空チャンバ内に設けられた構造物上に設けられたことを第5の特徴とする。
【0010】
さらに、上記目的を達成するために、第2乃至第5のいずれかの特徴に加え、前記伸縮手段はバランスシリンダを有し、前記真空チャンバの外に設置されていことを第6の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板やマスクの撓みを低減し、高精度に蒸着できる有機ELデバイス製造装置または成膜装置あるいは液晶表示基板製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態である有機ELデバイス製造装置を示す図である。
【図2】本発明の実施形態である搬送チャンバと処理チャンバの構成の模式図と動作説 明図である。
【図3】本発明の実施形態であるアライメント部の構成とアライメントベース支持部の 第1の実施例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態であるシャドウマスクを示す図である
【図5】本発明の実施形態であるアライメントベース支持部の第1から第3の実施例を 示す図である。
【図6】本発明の実施形態であるアライメント光学系の基本構成を示す図である。
【図7】従来技術の課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の第1の実施形態を図1から図6を用いて説明する。有機ELデバイス製造装置は、単に発光材料層(EL層)を形成し電極で挟むだけの構造ではなく、陽極の上に正孔注入層や輸送層、陰極の上に電子注入層や輸送層をなど様々な材料が薄膜としてなる多層構造を形成したり、基板を洗浄したりする。図1はその製造装置の一例を示したものである。
【0014】
本実施形態における有機ELデバイス製造装置100は、大別して処理対象の基板6を搬入するロードクラスタ3、前記基板6を処理する4つのクラスタ(A〜D)、各クラスタ間又はクラスタとロードクラスタ3あるいは次工程(封止工程)との間の設置された6つの受渡室4から構成されている。本実施形態では、基板の蒸着面を上面にして搬送し、蒸着するときに基板を立てて蒸着する。
【0015】
ロードクラスタ3は、前後に真空を維持するためにゲート弁10を有するロードロック室31と前記ロードロック室31から基板6(以下、単に基板という)を受取り、旋回して受渡室4aに基板6を搬入する搬送ロボット5Rからなる。各ロードロック室31及び各受渡室4は前後にゲート弁10を有し、当該ゲート弁10の開閉を制御し真空を維持しながらロードクラスタ3あるいは次のクラスタ等へ基板を受渡する。
【0016】
各クラスタ(A〜D)は、一台の搬送ロボット5を有する搬送チャンバ2と、搬送ロボット5から基板を受取り、所定の処理をする図面上で上下に配置された2つの処理チャンバ1(第1の添え字a〜dはクラスタを示し、第2の添え字u、dは上側下側を示す)を有する。搬送チャンバ2と処理チャンバ1の間にはゲート弁10が設けてある。
図1における処理チャンバ1の構成は処理内容によって異なるが、真空で発光材料を蒸着しEL層を形成する真空蒸着チャンバ1buを例にとって説明する。
【0017】
図2は、図1に示す搬送チャンバ2bと真空蒸着チャンバ1buの構成の模式図と動作説明図である。搬送ロボット5は、全体を上下に移動可能(図2矢印59参照)で、左右に旋回可能なリンク構造のアーム57を有し、その先端には基板搬送用の櫛歯状ハンド58を有する。搬送ロボット5は受渡室4aから基板を受取り、または真空蒸着チャンバ1buに基板を搬入し、あるいは蒸着された基板を真空蒸着チャンバ1buから搬出し、受渡室4bまたは真空蒸着チャンバ1bdに搬送する。
【0018】
一方、真空蒸着チャンバ1buは、大別して発光材料を蒸発(昇華)させ基板6に蒸着させる蒸着部7と、基板6とシャドウマスクの位置合せを行い、基板6の必要な部分に蒸着させるアライメント部8と、及び搬送ロボット5と基板の受渡しを行い、蒸着部7へ基板6を移動させる処理受渡部9からなる。アライメント部8と処理受渡部9は右側Rラインと左側Lラインの2系統設ける。
【0019】
処理受渡部9は、搬送ロボット5の櫛歯状ハンド58と干渉することなく基板6を受渡し可能とする櫛歯状ハンド91と、前記櫛歯状ハンド91上にあり基板6を固定して載置し、その基板6を旋回させて立て、さらにアライメント部8に接近させる基板旋回接近手段93を有する。前記固定する手段としては、真空中であることを考慮して静電吸着や機械的クランプ等で構成し、少なくとも基板を立てたときの上部側94uに設ける。本実施形態では、基板保持手段は基板旋回接近手段93と静電吸着や機械的クランプ等からなる。
【0020】
図3に本実施形態によるアライメント部8を示す。本実施形態では、図3に示すように、基板6とシャドウマスクを概ね垂直に立てて行なう。また、アライメントのための機構部は、可能な限り、真空蒸着チャンバ1buの外側である大気側に、具体的には真空蒸着チャンバ1buの上部壁1T上、あるいは下部壁1Y下に設けている。また、真空蒸着チャンバ1bu内に設けなければならないものは、大気部から凸部を設けてその中に設けている。
本実施形態では、アライメント時は、基板6を固定し、シャドウマスク81を移動させ、基板6の必要な部分に蒸着させることができるように位置合せをする。
【0021】
以下、アライメント部8の機構とその動作について説明する。
アライメント部8は、シャドウマスク81、シャドウマスク81を固定するアライメントベース82、アライメントベース82を保持し、アライメントベース82即ちシャドウマスク81のXZ平面での姿勢を規定するアライメント駆動部83、アライメントベース82を下から支持し、アライメント駆動部83と協調してシャドウマスク81の姿勢を規定するアライメントベース支持部84、基板6と前記シャドウマスク81に設けられた後述するアライメントマークを検出するアライメント光学系85、アライメントマークの映像を処理しアライメント量を求めアライメント駆動部83を制御する制御装置60からなる。
【0022】
まず、シャドウマスク81を図4示す。シャドウマスク81は、マスク81Mとフレーム81Fからなり、例えばG6の基板サイズ1500mm×1800mmに対する寸法は2000mm×2000mm程度になり、その重量は300Kgにもなる。マスク81Mには、蒸着位置を規定するための窓がある。例えば赤(R)を発光する蒸着膜を成膜するときはRに対応する部分に窓がある。その窓の大きさは色によって異なるが平均して幅30μm、高さ150μm程度である。マスク81Mの厚さは50μm程度であり、今後さらに薄くなる傾向がある。一方、マスク81Mには、精密アライメントマーク81mが4ヶ所、粗アライメントマーク81mrが2ヶ所、計6ヶ所にアライメントマーク81mが設けられている。それに対応して、基板にも精密アライメントマーク6msが4ヶ所、粗アライメントマーク6mrが2ヶ所の計6ヶ所にアライメントマーク6mが設けられている。
【0023】
図3に示すアライメントベース82は、シャドウマスク81の上部及び下部を保持する保持部82u、82dを有し、シャドウマスク81の裏側は基板6に蒸着できるように回の字ように空洞になっている。また、アライメントベース82は、その上部両端側に設けた2ヶ所の回転支持部81a、81bで垂下されており、その2ヶ所のそれぞれの下方に設けられた後述するアライメントベース支持部84L,84Rによって回転可能に支持されている。
【0024】
次に、シャドウマスク81の姿勢を規定するアライメント駆動部83とアライメントベース支持部84について説明する。先ず、アライメント時のアライメントベース82の動きを説明し、その後アライメント駆動部83の構成と動作、アライメント駆動部83によって動作するアライメントベース支持部84の構成と動作を説明する。
【0025】
アライメント駆動部83はアライメントベース82を垂下する2つの回転支持部のうち回転支持部81aをZ方向に主動(アクティブに駆動)し、回転支持部81bをZ(垂下)方向及びX(垂下方向と垂直)方向に主動する。その結果、アライメントベース82のZ位置の回転量Δθbは回転支持部81a、81bのZ方向の移動差で、その移動量ΔZbは両者のZ方向の移動差に回転に伴う変動を加えた量で、そのX位置の補正量ΔXbは回転支持部81bのX方向の移動に前記回転に伴う変動を加えた量で決まる。そこで、基板とシャドウマスク81とのアライメント量であるX、Z方向の移動量ΔX、ΔZと、回転補正量Δθを後述するアライメント光学系85により求めれば、アライメント駆動部83の制御量が決まり、アライメントされることになる。また、回転支持部81a、81bの両者間の距離は長いほうが、同じZ方向の動きに対して回転補正を精度良くできる利点がある。
【0026】
次に、上述した回転支持部81a、81bを駆動するシャドウマスク駆動部83を説明する。シャドウマスク駆動部83は、真空蒸着チャンバ1buの上部壁1T上の大気中に設けられ、回転支持部81aをZ方向に移動させるZ駆動部83Zを有する左駆動部83Lと、回転支持部81bを左駆動部83L同様にZ方向に移動させるZ駆動部83Zと前記Z駆動部83Z全体をX方向に移動させるX駆動部83Xとを有する右駆動部83Rとからなる。左右駆動部83L、83RのZ駆動部は基本的に同じ構成であるので同じ番号を付し、右駆動部83Rでは一部番号を省略している。
【0027】
左駆動部83Lを例に採りZ駆動部83Zを説明する。Z駆動部83Zは、前述したようにレール83r上をX方向に従動するZ駆動部固定板83k上に固定され、Z方向駆動モータ83zmによりボールネジ83n、テーパ83tを介して連結棒83jをZ方向に移動させる。アライメント軸83aは、その上部に連結した連結棒83jによりZ方向に移動する。テーパ83tはアライメントベース82等の重力を利用して前記Z方向のロストモーションを防ぐために設けたもので、その結果ヒステリシスがなくなり目標値に早く収束する効果がある。また、各アライメント軸83aは、真空蒸着チャンバ1buの上部壁1Tに設けられたシール部(図示せず)に一端を固定されたベローズ83vを介して動作する。
【0028】
右駆動部83Rは、さらに前記Z駆動部83Zに加え、真空蒸着チャンバ1buの上部壁1Tに固定され、Z駆動部83Zを搭載しているZ駆動部固定板83kをX軸レール83r上に沿って駆動するX駆動部83Xを有する。X駆動部83Xの駆動方法はX方向駆動モータ83xmの回転力をボールネジ83nに伝達するなど基本的にはZ軸駆動部83Zと同じ構造を有するが、その駆動力は、アライメントベース82を回転駆動及びアライメントベースを介して回転支持部81aをX方向に従動させるパワーが必要である。
【0029】
上述左右駆動部83L、83Rのアライメント83a軸は、スプライン83sによって傾斜することなくZ方向に垂直かつ/またはX方向に平行移動する。また、左右駆動部83R、83Lのアライメント83a軸は、X方向にも移動するため、そのベローズ83vもX方向に対する自由度を有しており、伸縮とともに左右に柔軟性を有する。
【0030】
次に、アライメントベース支持部84を説明する。アライメントベース支持部84は、アライメントベース82のX方向、Z方向の移動とXZ平面での回転とによるアライメント動作に、Z方向の伸縮機能とX方向への送り機能により追随し、アライメントベース82を下から支え、確実にアライメントをできるようにする役目を有する。
【0031】
アライメントベース支持部84は、アライメントベース82の上部両端側に設けた2ヶ所の回転支持部81a、81bに対応するように、アライメントベース82の下部両端側に2ヶ所84L,84Rが設けられている。アライメントベース支持部84は、下部中心部に1ヶ所でもよいが、本実施形態では、安定して動作させるため2ヶ所設けている。両アライメントベース支持部84は基本的には同一構造を有するので、代表して84Rを説明する。図5(a)にアライメントベース支持部84の拡大図を示す。
【0032】
アライメントベース支持部84は、Z方向の伸縮機能の果たすバランスシリンダ84dと、X方向への送り機能を果たすシリンダロット84kの先端に設けられ、アライメントベース82の底部の凹部82rを回転するローラ84rとを有する。バランスシリンダ84は、真空蒸着チャンバ1buの下部壁1Y外の大気中に設けたアライメント支持部固定台84bに固定されている。シリンダロット84kは下部壁1Yに設けた真空シール部84cに一端を固定されたベローズ84vを介してローラ固定部84fに連結されている。この機構は、アライメントベース82の上下に移動に伴いローラ84rを上下に移動させ、アライメントベースの82の回転及び又はX方向の移動の移動に伴ってローラ84rを回転させる。
【0033】
このように、バランスシリンダ84dによりローラ84rは常にアライメントベース82の動きに追随し、アライメントベース支持部84を支えることができる。また、このときのアライメントベース82の動きも滑らかである。
【0034】
図5(b)はアライメントベース支持部84の第2の実施例を示す。第2の実施例は第1の実施例と、伸縮機能を果たす機構については基本的には同じであるが、送り機能を果たす機構が異なる。異なる点は以下のとおりである。第1はローラ84rがアライメントベース82に設けられている点である。第2はローラ固定部84fの代わりにローラ回転板84gを設けている点である。この機構によって、アライメントベース82が移動、回転すると、ローラ84rがローラ回転板84g上を回転し移動し、送り機能を果たすことができる。
本実施例においても、第1の実施例同様に、アライメントベース82を滑らかに支えることができる。
【0035】
図5(c)はアライメントベース支持部84の第3の実施例を示す。第3の実施例は第1の実施例の接続を逆にした例である。即ち、大気中に設けられたバランスシリンダ84dのシリンダロット84kはベローズ84v、真空シール部84cを介してアライメントベース82に固定されている。バランスシリンダ84dのシリンダロット84kの反対側にはローラ84rが設けられており、そのローラがアライメント支持部固定台84b上を回転する。この機構によって、伸縮機能と送り機能を果たすことができる。
本実施例は、アライメントベース支持部84が右駆動部83RのX駆動部83Xの多少負荷になるが、第1、第2の実施例同様に、アライメントベース82を滑らかに支えることができる。
また、バランスシリンダ84のバランス力の発生源としては、エア、圧縮バネ等を用いることができる。さらに、ローラの代わりに、シリンダロッド84の先端に球状のものを埋め込んだり、その先端の摩擦力を低減する材料をコーテングし、その先端をアライメントベース82上を摺動させたりしてもよい。
【0036】
上述のようにアライメント駆動部83によってアライメントベース82がX、Z方向に移動し、あるいは回転支持部81aまたは81bを中心にXZ平面で回転しても、主動(アクティブに駆動)する機構を有することなくアライメントベース支持部の簡単な機構で、アライメントベース82を安定して支持することができる。
【0037】
上記のアライメント部の実施形態では、2ヶ所の回転支持部81をX、Z方向に主動(アクティブに駆動)し、アライメントベース82の下部に設けた2箇所のアライメントベース支持部84でアライメントベースを支持し基板6とシャドウマスク81とのアライメントを実施している。そのほかに種々のアライメントベースの支持方法が考えられる。例えば、アライメントベースやシャドウマスクの重量を支える役目を果たさないが、アライメントベースの下部に設けたアライメントベース支持部84をアライメントベースの下側側部に左右1ヶ所づつ設けてもよい。さらに、アライメントベース支持部84アライメントベースを前後に挟むように前後にアライメントベース支持部84を設け、例えば、アライメントベース支持部の先端にアライメントベースの2次元的な動きに追随できるローラを設けてもよい。この場合は、必ずしも伸縮機能は必要ではない。
【0038】
次に、アライメント光学系85について説明する。アライメント光学系は、前述したそれぞれアライメントマークを独立して撮像できるように、4つの精密アライメントマーク81msに対する4つの精密アライメント光学系85sと、2つの粗アライメントマーク81mrに対する2つの粗アライメント光学系85rとの、計6つの光学系から構成される。
【0039】
図6に6つのアライメント光学系の基本構成を示す。光学系の基本的構成は、シャドウマスク81を挟んでアライメントベース82側に、真空蒸着チャンバ1buの上部1Tに固定され光学窓85wを介して照射する光源85kと後述する遮断アーム85asに固定された光源側反射ミラー85kmを設け、基板6側に、撮像カメラ収納筒85tからのアーム85aに取付けた撮像カメラ側反射ミラー85cm及び撮像カメラ収納筒85tに収納された撮像手段である撮像カメラ85cを設けた、いわゆる透過型の構成を有している。
なお、撮像カメラ収納筒85t、アーム85a等は、基板が垂直姿勢になるときの軌道Kの邪魔にならないように破線で示すアーム85a位置までベローズ85v等により移動できるようになっている。
【0040】
透過型であるので、光が通過できるようにマスク81Mに4角形の貫通孔のアライメントマーク81mを設け、さらに、フレーム81Fにも円筒状の貫通孔81kを設けている。一方、基板6のアライメントマーク6mは光透過性の基板の上に金属性の四角形したシャドウマスクのアライメントマーク81mに比べて十分に小さいマークである。
【0041】
貫通孔81kを設けると、蒸着時に蒸着材料が貫通孔に入りアライメントマーク上に蒸着されるため、次の工程からアライメントができない。これを防ぐために、蒸着時には蒸着材料が貫通孔81kに入らないよう遮蔽する。本実施形態では、アライメント時に光源側反射ミラーを取付けたアームが蒸着時には蒸着に有効な領域を遮断するので、そのアームを移動可能とし、かつ蒸着時には貫通孔81kを遮蔽する構造を有する遮蔽型アーム85asとした。遮蔽型アーム85asは、大気側に設けた駆動部(図示せず)に上下に駆動される連結棒85bにより伸縮し、その一端をシール部85sに固定されたベローズ85vを介して駆動させる。図6に示す破線が遮蔽状態を示す、実線がアライメント状態を示す。
【0042】
上記実施形態では、光源側反射ミラー85kmを遮断アーム85asに取付けたが、シャドウマスクのフレーム81Fの厚さが十分であれば、フレーム81FにL字型の貫通孔81kを設け、光源側反射ミラー85kmを内蔵することも可能である。その場合は、遮蔽型アームは不要である。
また、上記実施形態では、アライメント時に光源側反射ミラー85kmが蒸着領域を遮断するので遮蔽型アームを移動させたが、遮断しない場合は、遮蔽型アームを固定にすることができる。
【0043】
一方、カメラ収納筒85tは、図3に示すように真空蒸着チャンバ1buの上部1Tから突出た構造を有し、先端に光学窓85wを設けて、撮像カメラ85cを大気側に維持するととともに、アライメントマーク6m、81mを撮像できるようにしている(番号は図6を参照)。
上記実施形態では、撮像カメラ側反射ミラーを真空中に設けたが、撮像カメラ収納筒85を長くし、前記ミラーを内蔵してもよい。
【0044】
精密アライメント光学系85sと粗アライメント光学系85rの構成上の違いは、前者が高精度にアライメントするために、視野を小さくし高分解でアライメントを撮像するための高倍率レンズ85hを有している点である。これに伴い、図3に示す基板及びシャドウマスクのアライメントマーク6m、81mの寸法が異なっている。精密の場合、粗と比べて1桁以上小さく、最終的にはμmオーダのアライメントが可能である。
【0045】
従って、精密アライメント時は、視野が外れないようにシャドウマスク81のアライメント81mの移動に合せ、精密アライメント光学系85sも追随して移動する必要がある。そこで、図3に示すように、アライメントベースの上部側の精密アライメント光学系85sにおいては、撮像カメラ85cを固定する固定板85dをZ駆動部固定板83kに接続し追随させる。または、モータ付きステージを設け数値制御により追随させてもよい。
【0046】
一方、アライメントベースの下部側の精密アライメント光学系85sにおいては、撮像カメラ85cをカメラ収納筒85tに固定し、カメラ収納筒を連結部85bでアライメントベース82に接続し追随させる。なお、図3に示す真空シール85s及びベローズ85vはカメラ収納筒85tの追随自由度を確保するためのものである。
【0047】
また、粗アライメント光学系85rについては、初期の取付け時に位置調整ができるようにカメラ位置合せステージ85dを設けている。
上記実施形態では、6つのアライメント光学形を用いたが、アライメントの要求精度によっては、粗アライメント光学系を設ける必要がなく、さらに、精密アライメント光学系においても4つも必要がなく、粗・精密含めて最低2つあればよい。
【0048】
上記アライメント部8の実施形態では、アライメント駆動部83、アライメントベース支持部84、アライメント光学系85を真空蒸着チャンバ1buの上部あるいは下部の大気側に設けたが、真空蒸着チャンバ1buの側壁側の大気に設けてもよい。勿論、上部、下部及び側壁部に分散させてもよい
最後に、本機構を用いた真空蒸着チャンバにおける処理動作をアライメント動作を主体に説明する。
【0049】
以下、真空蒸着チャンバ1buに基板が搬入された後の処理フローを示す。(1)まず、図3に示すRラインに搬入された基板6の上部を基板載置台に固定し、その後概ね垂直に立てて撓みを解消する。(2)基板6から一定の距離離した状態で、粗アライメントマークにより粗アライメントを実施し、粗アライメントにおける位置ズレを検出し、粗補正量を求める。(3)その粗補正量に基づき図3に示すZX平面でシャドウマスク81を移動させ、粗位置合せをする。(4)一定の距離を保ったままで、精密アライメントマークで精密アライメントを実施し、精密アライメントにおける位置ズレを検出し、精密補正量を求める。(5)その精密補正量に基づき図3に示すZX平面でシャドウマスク81を移動させ、精密位置合せをする。(6)基板6とシャドウマスク81を密着させる。(7)(3)のアライメント結果(位置ズレ)を検出する。(8)位置ズレ量が許容範囲なら図2に示すLラインの基板の蒸着終了を待つ。(9)Lラインの蒸着が終了したら、蒸発源71をRラインに移動させ蒸着する。(10)(8)において位置ズレ量が許容範囲外なら、一度両者を離し、精密アライメントするために(4)に戻る。
【0050】
上記において、粗アライメントの位置合せは、2台の撮像カメラ85cで撮像し、基板6に設けられた図2の引出し図に示すようにシャドウマスク81と基板6のアライメントマーク81mr、6mrを撮像し、2つのアライメントマークの中間点を基準に一義的に位置合わせすることができる。一方、精密アライメントは基板の四隅近くに4つのアライメントマークを設け、基板の中心点を基準に補正する。理論的には2つで一義的に決まるのに対し、4つは情報過多である。これは4隅の情報により四隅のズレが最小になるように基板の中心点を中心に決定することによって、基板6とシャドウマスク81とのズレが小さくなり、製品として有効に使用できる面積を大きくとるためである。粗アライメントように上部中点を基準にすると、下部側の歪が大きくなり製品として利用できる面積が少なくなる。
【0051】
以上説明した本実施形態によれば、特にアクティブ駆動する機構を有しないアライメントベース支持部という簡単な機構で、基板及びシャドウマスクを垂直あるいは概ね垂直にした状態でアライメントできる有機ELデバイス製造装置を提供できる。その結果、基板やシャドウマスクの自重による撓みよる影響を排除でき、位置ズレや基板とシャドウマスクを近接できないことによる膜ボケを解消でき、高精度に蒸着でき、高精彩な基板を製造できる有機ELデバイス製造装置を提供できる。
【0052】
また、本実施形態によれば、アライメントに必要な機構において、駆動装置を大気中に設けることで粉塵やガスの発生を抑え、粉塵やガスによる不良蒸着を低減でき、生産性の高いELデバイス製造装置を提供できる。
【0053】
さらに、本実施形態によれば、アライメントに必要な機構において、駆動装置や発熱する機構あるいは多くのアライメント光学系構成要素を大気中に設けることで保守性の良く、稼働率の高い有機ELデバイス製造装置を提供できる。
【0054】
また、基板の中心を基準としたアライメントを実施することで製品として有効面積の高い蒸着ができ、即ち歩留まりの高い即ち生産性の高いELデバイス製造装置を提供できる。
【0055】
さらに、以上実施形態によれば、アライメントマークを透過型とすることで、確実に基板とシャドウマスクを検出できる信頼性の高いELデバイス製造装置を提供できる。
【0056】
以上説明した実施形態では、処理受渡部に基板を水平にして搬送した場合を説明したが、基板を垂直に搬送し、その後アライメントを実施してもよい。
【0057】
また、上記説明では有機ELデバイスを例に説明したが、有機ELデバイスと同じ背景にある蒸着処理をする成膜装置および成膜方法にも適用できる。
【0058】
さらに、上記アライメント機構は大気中で行なわれる液晶表示装置などのアライメントにも適用できる。
【符号の説明】
【0059】
1:処理チャンバ 1bu:真空蒸着チャンバ
2:搬送チャンバ 3:ロードクラスタ
6:基板 6m:基板のアライメントマーク
7:蒸着部 8:アライメント部
9:処理受渡部 60:制御装置
71:蒸発源 81:シャドウマスク
81a、81b:回転支持部 81m:シャドウマスクのアライメントマーク
82:アライメントベース 83:アライメント駆動部
83Z:Z軸駆動部 83X:X軸駆動部
84:アライメントベース支持部 84d:バランスシリンダ
84r:ローラ 85:アライメント光学系
85c:撮像カメラ 85k:光源
100:有機ELデバイスの製造装置 A〜D:クラスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ内で基板とシャドウマスクとのアライメントを行い、蒸発源内の蒸着材料を基板に蒸着する真空蒸着チャンバを有する有機ELデバイス製造装置において、
前記基板を立てた姿勢に保持する基板保持手段と、前記シャドウマスクを保持するアライメントベースと、前記アライメントベースを垂下した姿勢に保持するアライメントベース垂下手段と、前記アライメントベースの垂下された垂下平面での前記アライメントベース回転の動きに追随する送り手段を有するアライメントベース支持手段と、前記基板とシャドウマスクに設けられたアライメントマークを撮像するアライメント光学手段と、前記垂下姿勢の状態で前記アライメントベースを駆動するアライメント駆動手段と、前記アライメント光学手段の結果に基づいて前記アライメント駆動手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする有機ELデバイス製造装置。
【請求項2】
前記アライメントベース支持手段は、前記垂下平面での一定方向の動きを吸収し、前記送り手段と機能的に連結された伸縮手段を有することを特徴とする請求項1に記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項3】
前記機能的とは接続された状態であり、前記送り手段は前記アライメントベースの周辺部を移動し、前記伸縮手段は前記真空チャンバの内壁又は前記真空チャンバ内に設けられた構造物に設けられたことを特徴とする請求項2に記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項4】
前記機能的とは接続された状態であり、前記送り手段は前記真空チャンバの内壁又は前記真空チャンバ内に設けられた構造物上を移動し、前記伸縮手段は前記アライメントベースの周辺部に設けられたことを特徴とする請求項2に記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項5】
前記機能的とは前記送り手段が前記伸縮手段の一端に設けられた面部を移動する状態であり、送り手段及び前記伸縮手段の他端の一方が前記アライメントベースの周辺部に設けられ、他方が前記真空チャンバの内壁又は前記真空チャンバ内に設けられた構造物上に設けられたことを特徴とする請求項2に記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項6】
前記一定方向は垂下方向であり、前記アライメントベース支持手段は前記アライメントベースの下側に設けられたことを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項7】
前記一定方向は前記垂下平面において垂下方向と垂直であり、前記アライメントベース支持手段は前記アライメントベースの側部側に設けられたことを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項8】
前記アライメントベース支持手段は、前記アライメントベースの下部側前後を挟むように送り手段を少なくとも1対有することを特徴とする請求項1に記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項9】
前記送り手段は前記送りを回転移動で行なうローラを有していることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項10】
前記送り手段は前記送りを摺動移動で行なう摺動部を有していることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項11】
前記伸縮手段はバランスシリンダを有していることを特徴とする請求項2乃至8のいずれかに記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項12】
前記バランスシリンダを前記真空チャンバの外に設置し、前記バランスシリンダのシリンダロットは真空シール手段とベローズを介して前記送り手段に接続されていることを特徴とする請求項11に記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項13】
前記シャドウマスク垂下手段は前記アライメントベースを回転可能に支持する複数(2ヶ所以上)の回転支持部を前記アライメントベースの上部側に有し、前記アライメント駆動手段は前記複数の回転支持部のうち少なくとも2ヶ所を独立に前記アライメントベースの垂下方向に駆動する垂下方向駆動手段と、前記複数のうち1ヶ所を前記アライメントベースの垂下された垂下平面で垂下方向と垂直な方向に駆動する垂直駆動手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項14】
真空チャンバ内で基板とシャドウマスクとのアライメントを行い、蒸発源内の蒸着材料を基板に蒸着する真空蒸着チャンバを有する成膜装置において、
前記基板を立てた姿勢に保持する基板保持手段と、前記シャドウマスクを保持するアライメントベースと、前記アライメントベースを垂下した姿勢に保持するアライメントベース垂下手段と、前記アライメントベースの垂下された垂下平面での前記アライメントベース回転の動きに追随する送り手段を有するアライメントベース支持手段と、前記基板とシャドウマスクに設けられたアライメントマークを撮像するアライメント光学手段と、前記垂下姿勢の状態で前記アライメントベースを駆動するアライメント駆動手段と、前記アライメント光学手段の結果に基づいて前記アライメント駆動手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする成膜装置。
【請求項15】
前記アライメントベース支持手段は、前記垂下平面での一定方向の動きを吸収し、前記送り手段と機能的に連結された伸縮手段を有することを特徴とする請求項14に記載の成膜装置。
【請求項16】
基板とシャドウマスクとのアライメントを行い、前記基板に液体を塗布する液晶表示基板製造装置において、
前記基板を立てた姿勢に保持する基板保持手段と、前記シャドウマスクを保持するアライメントベースと、前記アライメントベースを垂下した姿勢に保持するアライメントベース垂下手段と、前記アライメントベースの垂下された垂下平面での前記アライメントベース回転の動きに追随する送り手段を有するアライメントベース支持手段と、前記基板とシャドウマスクに設けられたアライメントマークを撮像するアライメント光学手段と、前記垂下姿勢の状態で前記アライメントベースを駆動するアライメント駆動手段と、前記アライメント光学手段の結果に基づいて前記アライメント駆動手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする液晶表示基板製造装置。
【請求項17】
前記アライメントベース支持手段は、前記垂下平面での一定方向の動きを吸収し、前記送り手段と機能的に連結された伸縮手段を有することを特徴とする請求項16に記載の液晶表示基板製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−65868(P2011−65868A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215632(P2009−215632)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】