説明

有機ELパネルの製造方法及び有機ELパネル

【課題】回路の短絡を抑制できる有機ELパネル及び有機ELパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】透明基板10上に設けられたパッド20ap、20bp、20cp、20dp1、20dp2を有する回路パターン20に対して、パッドを露出させるように回路パターン20を覆う電気絶縁性被覆層80を形成する工程と、電気絶縁性被覆層80が形成された透明基板10上に有機EL素子30を形成する工程と、電気絶縁性被覆層80から露出されたパッド及び絶縁性被覆層80上に異方性導電膜62、72を重ねる工程と、異方性導電膜62、72を介して回路パターン20のパッドと、ICチップ60の端子又はフレキシブル基板72の端子と、を電気的に接続させる工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELパネルの製造方法及び有機ELパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELパネル等の薄型ディスプレイの1つとして、例えば、特許文献1〜4に示すフラットディスプレイパネルが知られている。このようなフラットディスプレイパネルでは、透明基板上の回路パターンと、表示素子駆動用のICチップや外部接続用のフレキシブル基板とを、異方性導電膜により実装している。
【0003】
そして、ICチップやフレキシブル基板の端子と回路パターンのパッドとを電気的に接続する際に、隣接する端子間やパッド間等での短絡を防ぐため、端子間やパッド間に電気絶縁性の仕切りを設ける技術が開示されている。(特許文献5、6)
【特許文献1】特開2003−241678号公報
【特許文献2】特開2004−206096号公報
【特許文献3】特開2004−206097号公報
【特許文献4】特開2007−27483号公報
【特許文献5】実開昭62−065679号公報
【特許文献6】実開平03−035529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、有機ELパネルにおける回路の短絡を十分に抑制することが困難であった。
【0005】
本発明者等が検討したところ、以下の事項が判明した。すなわち、透明基板上に形成された回路パターンに対するICチップやフレキシブル基板の実装は、透明基板上へ有機EL素子を形成した後に行われる。この有機EL素子の形成時には、フォトリソグラフィー法等を用いて種々の導電性素材による成膜等を行うことから、回路パターン上には導電性の異物が発生することが多い。そして、回路パターン上に導電性の異物が配置された状態で、回路パターン上に異方性導電膜を重ねると、回路間で短絡が起きやすい。
【0006】
この場合、回路パターン上に異方性導電膜を重ねる前に、回路パターンを十分に洗浄して異物を除去すればよいとも考えられるが、有機EL素子中の有機EL層は水を極度に嫌うため、強力な洗浄を行うことも困難である。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、回路の短絡を抑制できる有機ELパネル及び有機ELパネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る有機ELパネルの製造方法は、透明基板上に設けられたパッドを有する回路パターンに対して、パッドを露出させるように回路パターンを覆う電気絶縁性被覆層を形成する工程と、電気絶縁性被覆層が形成された透明基板上に有機EL素子を形成する工程と、電気絶縁性被覆層から露出されたパッド及び絶縁性被覆層上に異方性導電膜を重ねる工程と、異方性導電膜を介して回路パターンのパッドと、ICチップの端子又はフレキシブル基板の端子と、を電気的に接続させる工程と、を備える。
【0009】
本発明によれば、有機EL素子の形成工程前に電気絶縁性被覆層によって、回路パターンのパッド以外の部分が覆われるので、異方性導電膜を介してICチップ又はフレキシブル基板を回路パターンのパッドに対して接続させる際に、導電性の異物による回路の短絡が抑制される。
【0010】
ここで、パッドの頂面の高さは、電気絶縁性被覆層の内のパッドの周囲の部分の頂面の高さよりも低いことが好ましい。
【0011】
パッドの頂面の高さが周囲よりも低くなるので、ICチップの端子又はフレキシブル基板の端子をパッドの上に位置合わせすることが容易となる。
【0012】
本発明に係る有機ELパネルは、透明基板と、パッドを有し透明基板上に設けられた回路パターンと、透明基板上に設けられパッドを露出させるように回路パターンを覆う電気絶縁性被覆層と、電気絶縁性被覆層から露出されたパッド及び絶縁性被覆層上に設けられた異方性導電膜と、異方性導電膜を介してパッドと電気的に接続されたICチップ又はフレキシブル基板と、透明基板上に形成された有機EL素子と、を備える。
【0013】
本発明によれば、電気絶縁性被覆層によって、回路パターンのパッド以外の部分が覆われているので、回路パターン上に導電性の異物が存在することによる回路の短絡が抑制される。
【0014】
ここで、パッドの頂面の高さは、電気絶縁性被覆層の内のパッドの周囲の部分の頂面の高さよりも低いことが好ましい。この場合、端子の位置精度が優れることとなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回路の短絡を抑制できる有機ELパネル及び有機ELパネルの製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、各図面の寸法比率は、必ずしも実際の寸法比率とは一致していない。
【0017】
まず、本実施形態に係る有機ELパネルの製造方法について説明する。
【0018】
最初に、図1に示すように、透明基板10を用意する。透明基板10の材質は特に限定されないが、例えば、ガラス基板や、樹脂基板が挙げられる。厚みは特に限定されないが、例えば、0.1〜1.1mm程度のものを使用できる。
【0019】
続いて、透明基板10上に、有機ELパネル用の回路パターン20を形成する。回路パターン20は、主として、有機EL素子30が形成されるべき部分10ELから有機EL素子駆動用ICチップが実装されるべき部分10ICまで延びる、陽極側とされる垂直電極部20a及び陰極とされる水平電極部20b、20cを備えると共に、有機EL素子駆動用ICチップが実装されるべき部分10ICからフレキシブルプリント基板が実装されるべき部分10FPCまで延びる配線部20dを備えている。
【0020】
垂直電極部20aは、有機EL素子が形成されるべき部分10EL上を上下方向すなわちY方向に延びている。水平電極部20bは、有機EL素子が形成されるべき部分10ELの左側端部の上部まで延びており、水平電極部20cは、有機EL素子が形成されるべき部分10ELの右側端部の下部まで延びている。
【0021】
また、垂直電極部20a、水平電極部20b、20c、配線部20dはそれぞれ、有機EL素子駆動用ICチップが実装されるべき部分上に接続用のパッド20ap、20bp、20cp、20dp1を有し、配線部20dは、フレキシブルプリント基板が実装されるべき部分10FPC上に接続用のパッド20dp2を有する。
【0022】
このような回路パターン20は、ITO等の導電材料や、Al、Cr、Mo等の金属膜を用い、フォトリソグラフィー法等により容易に製造できる。また、回路パターン20は、ベースとなる金属膜上に、タンタル、Ti等のバリア膜を有することができる。回路パターン20は、3層以上の構造を有してもよい。
なお、回路パターン20の形成後には、十分に基板上を洗浄し、異物を取り除いておくことが好ましい。
【0023】
(電気絶縁性被覆層の形成)
続いて、図2に示すように、透明基板10の回路パターン20上に、電気絶縁性被覆層80を形成する。ここでは、電気絶縁性被覆層80は、回路パターン20のうち、有機EL素子が形成されるべき部分10ELを除くように、かつ、各パッド20ap、20bp、20cp、20dp1、20dp2及びその周囲の領域を除くように、透明基板10上に形成される。すなわち、図2に示すように、電気絶縁性被覆層80は、開口80aを有し、この開口80aからパッド20ap、20bp、20cp、20dp1、20dp2が外部に露出するように電気絶縁性被覆層80が形成される。
【0024】
ここで、電気絶縁性被覆層80の材料は、電気絶縁性があれば特に限定されない。例えば、電気絶縁性被覆層80の材料として、レジスト材料等の樹脂を用いることが好適である。レジスト材料としては、ノボラック樹脂等のポジ型レジスト材料を用いることが好ましい。
【0025】
電気絶縁性被覆層80の高さH80は、図2(b)に示すように、各パッド20ap、20bp、20cp、20dp1、20dp2の高さH20よりも大きくする。電気絶縁性被覆層80の高さH80、及び、各パッド20ap、20bp、20cp、20dp1、20dp2の高さH20は特に限定されないが、それぞれ、例えば、1〜5μm、0.1〜1μmとすることができる。
【0026】
また、各パッド20ap、20bp、20cp、20dp1、20dp2の図2の横方向の幅W20は例えば、10〜100μmとすることができ、パッド間の間隔I20は例えば、5〜50μmとすることができる。
【0027】
このような電気絶縁性被覆層80の形成方法は特に限定されないが、例えば、フォトリソグラフィー法を用いることができる。
【0028】
(有機EL素子30の形成)
続いて、透明基板10の有機EL素子が形成されるべき部分10EL上に、図3の(a)に示すように、有機EL素子30を形成する。
【0029】
有機EL素子30は、主として、垂直電極膜32、有機EL層34、水平電極膜36を備えている。
【0030】
垂直電極膜32は、透明基板10の上に、上下方向すなわちY方向に延びており、回路パターン20の垂直電極部20aとそれぞれ接触している。垂直電極膜32は、透明な導電膜であり、例えば、ITO等を使用できる。
【0031】
有機EL層34及び水平電極膜36は、透明基板10の上における垂直電極膜32上に、垂直電極膜32と交差するように上下方向(X方向)に延びてこの順に配置されている。水平電極膜36は、その端部が水平電極部20b又は水平電極部20cと接触している。有機EL層34及び水平電極膜36は、Y方向に互いに分離され、それぞれ、ストライプ状となっている。
【0032】
水平電極膜36の材料は特に限定されず、Al等が利用できる。
【0033】
有機EL層34の材料は特に限定されず、例えば、正孔輸送層、発光層、電子輸送層から構成される公知のものを利用できる。
【0034】
有機EL層34における垂直電極膜32及び水平電極層36に挟まれた各部分にそれぞれ画素Gが形成されている。
【0035】
なお、垂直電極膜32上に、互いに接触する垂直電極部20a及び垂直電極膜32と、これらと隣接する垂直電極部20a及び垂直電極膜32とをそれぞれ電気的に絶縁する格子状のいわゆる層間絶縁膜を形成してもよく、さらに、有機EL層34及び水平電極膜36をY方向に分離するセパレータ層を形成してもよい。
【0036】
このような垂直電極膜32、有機EL層34、水平電極膜36等の形成方法は特に限定されず、公知の方法が採用できる。例えば、フォトリソグラフィー法を用いて好適に製造できる。
【0037】
最後に、有機EL層34が形成されている部分を、内部に乾燥剤が設けられた封止缶44で封止されている。
【0038】
(異方性導電膜の積層)
続いて、図3に示すように、ICチップが形成されるべき部分10IC上に異方性導電膜62を重ねる。また、フレキシブルプリント基板が実装されるべき部分10FPC上に、異方性導電膜72を重ねる。
【0039】
異方性導電膜62、72は、それぞれ、樹脂やペーストに導電性粒子群を混合した膜であり、公知のものが利用できる。例えば、樹脂としては、エポキシ樹脂、導電性粒子群としては、樹脂ボールに金属めっきした粒子が挙げられる。
【0040】
異方性導電膜62、72の厚みは特に限定されないが、例えば、10〜20μmとすることができる。
【0041】
このとき、図3の(b)に示すように、パッド20ap等の頂面の高さが、電気絶縁性被覆層80のうちのパッドの周囲の部分の頂面の高さよりも低くされているので、異方性導電膜62、72には、各パッド20ap等の部分毎に窪み62aが形成される。
【0042】
(ICチップ60及びFPC70の実装)
続いて、図4に示すように、異方性導電膜62上に有機EL駆動用ICチップ60を配置し、透明基板10に対して押圧することにより、異方性導電膜62中の導電性粒子群を介して、図4の(b)に示すように、有機EL駆動用ICチップ60の接続用バンプ61とパッド20ap等を電気的に接続すると共に、有機EL駆動用ICチップ60を透明基板10上に固定する。
【0043】
同様に、異方性導電膜72上にフレキシブルプリント基板70を配置し、透明基板10に対して押圧することにより、異方性導電膜72中の導電性粒子群を介して、フレキシブルプリント基板70の接続端子71とパッド20dp2とを電気的に接続すると共に、フレキシブルプリント基板70を透明基板10に固定する。
【0044】
このとき、異方性導電膜62、72には、有機EL駆動用ICチップ60の接続用バンプ61やフレキシブルプリント基板70の接続端子に対応する窪み62aが形成されているので、有機EL駆動用ICチップ60やフレキシブルプリント基板70の位置決めが容易となる。
【0045】
ここで、有機EL駆動用ICチップ60は、フレキシブルプリント基板70を介して入力される信号に基づいてパッシブマトリクス式の有機EL素子30の所望の画素の発光を制御するものであり、また、フレキシブルプリント基板70は、フレキシブルな外部配線手段であり、いずれも特に限定されず、公知のものが利用できる。
【0046】
そして、このようにして、本実施形態に係る有機ELパネルPNが完成する。
【0047】
そして、本実施形態では、有機EL素子30を形成する前に、回路パターン20が電気絶縁性被覆層80によって覆われる。したがって、有機EL素子30の形成工程時等において、回路パターン20に対して接触する導電性の異物の発生を防止することができる。したがって、その後に、回路パターン20上に異方性導電膜62、72をのせた場合であっても、回路の短絡が発生しにくくなり、歩留まりを向上できる。特に、回路パターン20を覆っているので、回路パターンの終端となる端子間での短絡だけでなく、回路の途中の部分間での短絡も抑制することができる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず様々な変形態様が可能である。
【0049】
例えば、上記実施形態では、図4に示すように、電気絶縁性被覆層80の高さH80を、各パッド20ap、20bp、20cp、20dp1、20dp2の高さH20よりも大きくしているが、図5に示すように、電気絶縁性被覆層80の高さH80を、各パッド20ap、20bp、20cp、20dp1、20dp2の高さH20よりも小さくしても本発明の実施は可能である。
【0050】
また、上記実施形態では、異方性導電膜62、72を透明基板10上に重ねてから、ICチップ60及びフレキシブルプリント基板70を両方実装しているが、異方性導電膜62又は72のいずれか一方を透明基板10にかさね、ICチップ60又はフレキシブルプリント基板70の一方を実装した後に、異方性導電膜62又は72のいずれか他方を透明基板10にかさね、ICチップ60又はフレキシブルプリント基板70の他方を実装してもよい。
【0051】
また、有機EL素子30、回路パターン20等の構成も特に限定されず、種々の態様が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る有機ELパネルの製造方法を示す図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のb−b矢視図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る有機ELパネルの製造方法を示す図1に続く図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のb−b矢視図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係る有機ELパネルの製造方法を示す図2に続く図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のb−b矢視図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係る有機ELパネルの製造方法を示す図3に続く図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のb−b矢視図である。
【図5】図5は、本発明の他の実施形態に係る有機ELパネルの製造方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
10…透明基板、20…回路パターン、20ap、20bp、20cp、20dp1、20dp2…パッド、30…有機EL素子、60…有機EL駆動用ICチップ(ICチップ)、61…端子、62…異方性導電膜、70…フレキシブルプリント基板、71…端子、72…異方性導電膜、80…電気絶縁性被覆層、PN…有機ELパネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に設けられたパッドを有する回路パターンに対して、前記パッドを露出させるように前記回路パターンを覆う電気絶縁性被覆層を形成する工程と、
前記電気絶縁性被覆層が形成された透明基板上に有機EL素子を形成する工程と、
前記電気絶縁性被覆層から露出されたパッド及び前記絶縁性被覆層上に異方性導電膜を重ねる工程と、
前記異方性導電膜を介して前記回路パターンのパッドと、前記ICチップ又はフレキシブル基板と、を電気的に接続させる工程と、
を備える有機ELパネルの製造方法。
【請求項2】
前記パッドの頂面の高さは、前記電気絶縁性被覆層の内の前記パッドの周囲の部分の頂面の高さよりも低い請求項1記載の有機ELパネルの製造方法。
【請求項3】
透明基板と、
パッドを有し前記透明基板上に設けられた回路パターンと、
前記透明基板上に設けられ、前記パッドを露出させるように前記回路パターンを覆う電気絶縁性被覆層と、
前記電気絶縁性被覆層から露出されたパッド及び前記絶縁性被覆層上に設けられた異方性導電膜と、
前記異方性導電膜を介して前記パッドと電気的に接続されたICチップ又はフレキシブル基板と、
前記透明基板上に形成された有機EL素子と、
を備える有機ELパネル。
【請求項4】
前記パッドの頂面の高さは、前記電気絶縁性被覆層の内の前記パッドの周囲の部分の頂面の高さよりも低い請求項4記載の有機ELパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−288540(P2009−288540A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141279(P2008−141279)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】