説明

有機EL装置の製造方法、及びカラーフィルターの製造方法

【課題】インクジェット法で形成される機能層の層厚均一性を向上させる。
【解決手段】第1電極45と第2電極47と、第1電極45と第2電極47に挟持される少なくとも有機EL層42を含む発光機能層44とを備える有機EL素子29を備える有機EL装置の製造方法であって、基板10上に複数の第1電極45を形成する第1工程と、第1電極45の各々を囲む隔壁77を形成する第2工程と、隔壁77で囲まれた領域内75に、溶質または分散質として発光機能層形成材料を含む第1のインクを吐出して第1のインク層11を形成する第3工程と、隔壁77で囲まれた領域内75に第1のインクよりも比重が小さい第2のインクを吐出して、第1のインク層11を覆う第2のインク層12を形成する第4工程と、第1のインクと第2のインクとを乾燥させる第5工程と、を含む有機EL装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置の製造方法、及びカラーフィルターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大画面のFPD(フラットパネルディスプレイ)に用いる表示装置として、有機EL(エレクトロルミネッセンス)装置が注目されている。有機EL装置は、一般的に陽極と少なくとも有機EL材料層を含む発光機能層と陰極とを積層してなる有機EL素子を、基板上に規則的に配置して形成されている。
【0003】
有機EL装置をカラー化する手法としては、白色光を射出する有機EL素子とカラーフィルターとを組み合わせる手法と、3原色光(赤色光と緑色光と青色光)に対応する3種類の有機EL素子を規則的に配置する手法がある。後者の手法では、3種類の有機EL素子毎に異なる材料を含む有機EL層(有機EL材料層)を形成することが必要となる。上述の有機EL材料が低分子型である場合、蒸着法等の真空成膜法による形成が可能である。そのため、基板に各々の有機EL素子の画素領域に対応する開口部を有するマスクを被せて、該マスク越しに有機EL材料を堆積させるマスク蒸着法(あるいはマスクスパッタ法)が研究されている。一方、高分子型の有機EL材料を用いる場合は、真空成膜法の適用が不可能である。そのため、有機EL材料を含むインク(すなわち液体材料)の液滴を上述の有機EL素子の画素領域を囲むように形成された隔壁内に吐出し、該インクを乾燥させることにより有機EL素子毎に個別に有機EL層を形成するインクジェット法が研究されている。インクジェット法は、直径がμmオーダーの液滴を高解像度で吐出できるため、有機EL材料の高精細パターニングが可能である。そのため、上述のカラーフィルターの形成にも用いられている。
【0004】
インクジェット法の問題点のひとつとして、層厚の均一性がある。有機EL層及び該有機EL層を含む発光機能層の特性は層厚に左右される。したがって、該層厚は有機EL素子間、及び有機EL素子内における均一性が高いことが求められる。しかし、基板上の塗布領域すなわち後述する表示領域100(図1参照)における外縁部では、吐出された液滴から蒸発した溶媒(または分散媒)の分子分圧が低いため、一般的に早く乾きはじめる。かかる乾燥時間の差は、有機EL素子間(及び有機EL素子内)における層厚の均一性の低下をもたらし得る。上述したように発光機能層の特性は層厚に左右されるため、かかる均一性の低下は、輝度ムラ、発光色ムラ等の表示品質の低下をもたらし得る。そこで、かかる均一性の低下を抑制するために、表示領域100の周辺領域にも上述の隔壁を形成して、該周辺領域にも液滴を吐出する手法が紹介されている(特許文献1)。かかる手法によれば、表示領域100内の分子分圧のばらつきを低減できるため、乾燥時間のばらつきに起因する発光機能層の層厚の均一性を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−222695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、かかる手法は表示装置領域の周辺にも隔壁を形成するため大画面化への妨げとなり得る。また、インクの揮発性が高い場合には効果を得にくいという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]第1電極と第2電極と上記第1電極及び上記第2電極とに挟持される、少なくとも有機EL層を含む発光機能層とを備える有機EL素子を複数備えてなる有機EL装置の製造方法であって、基板の一方の面に複数の上記第1電極を形成する第1の工程と、平面視で上記複数の第1電極の各々を囲む隔壁を形成する第2の工程と、上記隔壁で囲まれた領域内に、溶質または分散質として発光機能層形成材料を含む第1のインクを吐出して第1のインク層を形成する第3の工程と、上記隔壁で囲まれた領域内に上記第1のインクよりも比重が小さい第2のインクを吐出して、上記第1のインク層を覆う第2のインク層を形成する第4の工程と、上記第1のインクと上記第2のインクとを乾燥させる第5の工程と、を含むことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【0009】
このような製造方法であれば、第1電極上に発光機能層形成材料を含む第1のインク層と発光機能層形成材料を含まない第2のインク層との積層体を形成できる。そして、かかる第2のインク層により、複数の上記第1電極上に順次第1のインク層を形成した後、第5の工程すなわち第1のインクの乾燥工程にいたる間に、該第1のインク層の乾燥が自然に進行することを抑制できる。したがって、複数の上記第1のインク層の乾燥を同条件で実施できる。そのため、基板面内における発光機能層々厚の均一性を向上でき、表示品質の向上した大画面の有機EL装置を得ることができる。
【0010】
[適用例2]上述の有機EL装置の製造方法であって、上記第4の工程は上記隔壁で囲まれた領域内に上記第1のインクよりも比重が小さく、かつ、上記第1のインクよりも沸点が高い上記第2のインクを吐出して、上記第1のインク層を覆う上記第2のインク層を形成する工程であることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【0011】
このような製造方法であれば、第4の工程が終了した後、第5の工程が開始されるまでの間に、第2のインク層が蒸発して第1のインク層が露出することをより一層抑制できる。したがって、複数の上記第1のインク層の乾燥をより一層好ましい条件で実施でき、より一層表示品質の向上した有機EL装置を得ることができる。
【0012】
[適用例3]上述の有機EL装置の製造方法であって、上記第1のインクと上記第2のインクとは共に有機系液体を主成分としていることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【0013】
有機系液体はさまざまな種類があり、比重や沸点を広い範囲から選択できる。したがって、このような製造方法であれば第1のインクと第2のインクの双方についてそれぞれ好適な液体を用いることができる。その結果、複数の上記第1のインク層の乾燥をより一層好ましい条件で実施でき、より一層表示品質の向上した有機EL装置を得ることができる。
【0014】
[適用例4]上述の有機EL装置の製造方法であって、上記第1のインクは水を分散媒としており、上記第2のインクは有機系液体であることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【0015】
このような製造方法であれば、発光機能層形成材料が水に分散しやすい材料である場合において、層厚の均一性が高い発光機能層を形成できる。
【0016】
[適用例5]上述の有機EL装置の製造方法であって、上記第1のインクは有機系液体を溶媒としており、上記第2のインクは水を主成分としていることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【0017】
水は自然乾燥が進みにくいため、このような製造方法であれば、第1のインク層の乾燥をより一層好ましい条件で実施でき、より一層表示品質の向上した有機EL装置を得ることができる。
【0018】
[適用例6]第1電極と第2電極と上記第1電極及び上記第2電極とに挟持される、少なくとも有機EL層を含む発光機能層とを備える有機EL素子を複数備えてなる有機EL装置の製造方法であって、基板の一方の面に複数の上記第1電極を形成する第1の工程と、平面視で上記複数の第1電極の各々を囲む隔壁を形成する第2の工程と、上記隔壁で囲まれた領域内に、溶質または分散質として発光機能層形成材料を含む第1のインクと上記第1のインクよりも比重が小さい第2のインクとを混合してなる第3のインクを吐出する第3の工程と、上記第1のインクと上記第2のインクとを乾燥させる第4の工程と、を含むことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【0019】
比重の異なる2種類のインクを混合してなるインクは時間の経過と共に比重の差で分離する。したがって、一回の吐出で上記第1電極上に発光機能層形成材料を含む第1のインク層と発光機能層形成材料を含まない第2のインク層との積層体を形成できる。そして、かかる第2のインク層により、該第1のインク層の乾燥が自然に進行することを抑制して、複数の上記第1のインク層の乾燥を同条件で実施できる。したがって、このような製造方法であれば、吐出工程を増加させることなく、すなわち1回の描画工程(吐出工程)で基板面内における発光機能層々厚の均一性を向上でき、表示品質の向上した大画面の有機EL装置を得ることができる。
【0020】
[適用例7]上述の製造方法であって、上記第3の工程は、上記隔壁で囲まれた領域内に、溶質または分散質として発光機能層形成材料を含む第1のインクと、上記第1のインクよりも比重が小さく、かつ、上記第1のインクよりも沸点が高い第2のインクと、を混合してなるインクを吐出する工程であることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【0021】
このような製造方法であれば、上述の吐出工程が終了するまでの間に、第2のインク層が蒸発して第1のインク層が露出することをより一層抑制できる。したがって、複数の上記第1のインク層の乾燥をより一層好ましい条件で実施でき、より一層表示品質の向上した有機EL装置を得ることができる。
【0022】
[適用例8]上述の有機EL装置の製造方法であって、上記第1のインクは水を分散媒としており、上記第2のインクは有機系液体であることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【0023】
水と有機系液体はあまり溶け合わないため、吐出された後の分離が速やかに進行する。したがって、このような製造方法であれば上記第1のインク層の乾燥をより一層好ましい条件で実施でき、より一層表示品質の向上した有機EL装置を得ることができる。
【0024】
[適用例9]透明性基板の一方の面に隔壁を形成して、上記一方の面を底部とし上記隔壁を側壁とする複数の凹部を形成する第1の工程と、上記凹部内に溶質または分散質としての着色材料を含む第1のインクを吐出して第1のインク層を形成する第2の工程と、上記凹部内に上記第1のインクよりも比重が小さい第2のインクを吐出して、上記第1のインク層を覆う第2のインク層を形成する第3の工程と、上記第1のインク層と上記第2のインク層とを乾燥させる第4の工程と、を含むことを特徴とするカラーフィルターの製造方法。
【0025】
このような製造方法であれば、凹部内に着色材料を含む第1のインク層と着色材料を含まない第2のインク層との積層体を形成できる。そして、かかる第2のインク層により、複数の上記凹部内に順次第1のインク層を形成した後、第4の工程すなわち第1のインクの乾燥工程にいたる間に、該第1のインク層の乾燥が進行することを抑制できる。したがって、複数の上記第1のインク層の乾燥を同条件で実施できる。そのため、面内における着色材料の層厚の均一性を向上でき、着色性の向上したカラーフィルターを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】有機EL装置の全体構成を示す回路構成図。
【図2】有機EL装置の模式断面図。
【図3】第1の実施形態の製造方法を示す工程断面図。
【図4】第1の実施形態の製造方法を示す工程断面図。
【図5】第2の実施形態の製造方法を示す工程断面図。
【図6】第3の実施形態の製造方法を示す工程断面図。
【図7】カラーフィルターの概要を模式的に示す斜視図。
【図8】第5の実施形態の製造方法を示す工程断面図。
【図9】第4の実施形態の製造方法を示す工程断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明にかかる有機EL装置の製造方法の実施形態について、図面を参照しつつ述べる。なお、以下の各図においては、各層や各部位を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部位の縮尺を実際とは異ならしめてある。
【0028】
(第1の実施形態)
本実施形態にかかる製造方法を述べる前に、本実施形態にかかる製造方法の対象となる有機EL装置について、図1及び図2を用いて説明する。
【0029】
図1は、本実施形態の製造方法の対象となる有機EL装置の全体構成を示す回路構成図である。有機EL装置は、表示領域100と該表示領域の周辺部に形成された周辺領域(符号無し)とを備えている。表示領域100には、X方向に延在する複数の走査線103と、Y方向に延在する複数の信号線104と、同じくY方向に延在する複数の容量線106と、が形成されている。
【0030】
X方向が信号線104と容量線106とで規定され、Y方向が走査線103の中心線で規定される方形の区画毎に3種類の有機EL画素30(赤色有機EL画素30R、緑色有機EL画素30G、青色有機EL画素30B、)が規則的に形成されている。なお、該アルファベットは各有機EL画素30が射出する光の色を表わしている。図示するように、X方向には該3種類の画素がR,G,Bの順に規則的に形成され、Y方向には同一の色の画素が配置されている。なお、以下の記載において、対応する色を区別しない場合には、単に「有機EL画素30」と称する。
【0031】
有機EL装置はアクティブマトリクス型の表示装置である。各々の有機EL画素30は、走査線103を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT(薄膜トランジスター)108と、スイッチング用TFT108を介して信号線104から供給される画像信号を保持する保持容量110と、保持容量110によって保持された画像信号がゲート電極に供給される駆動用TFT112と、駆動用TFT112を介して容量線106から駆動電流が流れ込む有機EL素子29等からなる。有機EL画素30とは、上述の各要素等で構成される機能的な概念である。
【0032】
周辺領域には、走査線駆動回路120、及び信号線駆動回路130が形成されている。走査線駆動回路120は、図示しない外部回路より供給される各種信号に応じて、走査線103に走査信号を順次供給する。信号線駆動回路130は、信号線104に画像信号を供給する。容量線106には、図示しない外部回路から画素駆動電流が供給される。走査線駆動回路120の動作と信号線駆動回路130の動作とは、同期信号線140を介して外部回路から供給される同期信号により相互に同期が図られている。
【0033】
走査線103が駆動されスイッチング用TFT108がオン状態になると、その時点の信号線104の電位が保持容量110に保持され、保持容量110の状態に応じて駆動用TFT112のレベルが決まる。そして、駆動用TFT112を介して容量線106から有機EL素子29に駆動電流が流れ込む。有機EL素子29は一対の電極間に少なくとも有機EL層42(図2参照)を含む発光機能層44(図2参照)を備えてなり、流れ込む駆動電流の大きさに応じて発光する。かかる発光の色は、該有機EL層の材料によって定められる。
【0034】
図2は、形成中の有機EL装置、具体的には有機EL素子29が形成された段階の有機EL装置のY方向における断面を模式的に示す図である。上述の3種類の有機EL画素30の各々が備える、有機EL素子29と駆動用TFT(以下、「TFT」と称する。)112の断面を示している。本図では、スイッチング用TFT108と保持容量110については図示を省略している。また、第2電極としての陰極(共通電極)47のZ(−)方向に形成されるパシベーション層等の各層、及び、素子基板10とともに有機EL素子を挟持する対向基板についても図示を省略している。以下、素子基板10側から順に説明する。なお、以下の記述において上記の方向を「上方」、「上」あるいは「上層」と称する。
【0035】
TFT112は素子基板10上に形成されている。なお、素子基板10との界面に別途保護層を形成してもよい。TFT112は、半導体層31、ゲート電極33、及び、半導体層31とゲート電極33との間に形成されたゲート絶縁層70等からなる。半導体層31のうちゲート電極33と重なる領域がチャネル領域38であり、該チャネル領域の両側にソース領域35とドレイン領域36とが形成されている。
【0036】
TFT112の上層には、窒化シリコン、又は酸化シリコンからなる層間絶縁層71が形成されている。ソース領域35は、層間絶縁層71を局所的にエッチングして形成されたコンタクトホール(符号無し)を介してソース電極53と電気的に接続されており、同様にドレイン領域36は層間絶縁層71を局所的にエッチングして形成されたコンタクトホール(符号無し)を介してドレイン電極54と電気的に接続されている。ソース電極53とドレイン電極54との上層には、窒化シリコンからなる平坦化層72が配置されている。そして、平坦化層72の上層における所定の領域には、反射層48と保護層74とが形成され、さらに該反射層と該保護層の積層体を覆うように第1電極としての画素電極(陽極)45が形成されている。
【0037】
画素電極45は、陰極47よりも仕事関数が高く、かつ、導電性を有していることが必要である。本実施形態にかかる有機EL装置では、画素電極45を透明導電材料であるITO(酸化インジウム・錫合金)で形成されている。そして、本実施形態にかかる有機EL装置は上方向に光を射出するトップエミッション型であるため、該方向に向けて光を反射する反射層48が配置されている。なお、画素電極45を反射性の金属材料で形成した場合、反射層48は必要とされない。反射層48は、Al(アルミニウム)等で形成することが好ましい。保護層74は窒化シリコン等からなり、画素電極45の形成時に反射層48を保護する機能を果たしている。
【0038】
隣り合う画素電極45間には、平面視で該画素電極を囲むように隔壁77が配置されている。該隔壁で囲まれた領域が凹部75である。隔壁77は、素子基板側の下部隔壁78と、その上層の上部隔壁79とからなる。後述するように下部隔壁78は酸化シリコンからなり、上部隔壁79はアクリル樹脂等の有機材料からなる。
【0039】
凹部75内には、正孔注入輸送層43と有機EL層42とが順に形成されている。正孔注入輸送層43は、3種類の有機EL画素30間で共通である。一方、有機EL層は、3種類の有機EL画素30毎にそれぞれ異なる材料を含み、それぞれ異なる色の光を発光する層が形成されている。具体的には、赤色有機EL画素30Rには赤色光を発光する赤色有機EL層42Rが形成され、緑色有機EL画素30Gには緑色光を発光する緑色有機EL層42Gが形成され、青色有機EL画素30Bには青色光を発光する青色有機EL層42Bが形成されている。なお、以下の記載において、発光する光の色を区別しない場合は、総称として、単に「有機EL層42」と称する。また以下の記述において、他の構成要素についてもR,G,Bのいずれかの符号を付加した場合は、該色(R=赤、G=緑、B=青)に対応する構成要素であるものとする。
【0040】
正孔注入輸送層43と有機EL層42との積層体が発光機能層44である。すなわち、上述の2層は凹部内に局所的に形成されている。そして、陰極47は、該2層の上層及び隔壁77の上層を含む素子基板10の上層全面に形成されている。有機EL素子29は、画素電極45と陰極47、及び該一対の電極間に挟持される上述の発光機能層44とからなる。正孔注入輸送層43を介して供給された正孔と陰極47から供給された電子とが有機EL層内で結合する際に発光が生じている。そして該発光の一部は直接的に、一部は反射層48で反射されて陰極47の方向に射出される。なお、陰極47は、層厚数nm〜十数nmのAl(アルミニウム)あるいはMgAg(マグネシウム・銀)合金等で形成されており導電性と透明性の双方を有している。
【0041】
各有機EL画素30が射出する光の色は有機EL層42の形成材料で決まるため、該形成材料は、上記有機EL画素間で異なっている。一方、正孔注入輸送層の形成材料は、各有機EL画素30で共通である。なお、正孔注入輸送層43を正孔注入層と正孔輸送層とに分けて形成する態様もある。また、陰極47と有機EL層42との間に電子輸送層あるいは電子注入層を形成する態様もある。
【0042】
上述したように、正孔注入輸送層43と有機EL層42とは、凹部75内に局所的に形成されている。かかる局所的な層の形成を、本実施形態にかかる製造方法ではインクジェット法で行っている。インクジェット法とは、固形成分を溶媒または分散媒に溶解または分散させた液体材料を吐出した後、該溶媒または分散媒を乾燥除去することで、上記固形成分からなる層を形成する手法である。本実施形態、及び後述する各実施形態においては、上述の固形成分を含有する液体材料と、固形成分を含有しない液体のみの材料を、共に「インク」と称している。
【0043】
インクジェット法は、フォトリソグラフィー法等に比較して低コストで局所的な層形成(すなわちパターニング)が可能な方法である。しかし上述したように、溶媒(または分散媒)の乾燥速度(時間)の差(ばらつき)に起因する層厚の均一性の低下という問題がある。本実施形態にかかる製造方法は、以下に示すように、上述の凹部内にインクを2層形成した後に上述の乾燥除去を行うことで、層厚の均一性を向上させている。
【0044】
図3(a)〜(d)及び図4(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態の製造方法を示す工程断面図である。以下、工程順に述べる。
【0045】
まず、図3(a)に示すように、第1の工程として、素子基板10上(上層)に画素電極45を形成する。なお、本図及び図4〜図6においては、素子基板10と画素電極45の間に形成されているTFT112(図2参照)、反射層48(図2参照)等の各構成要素は図示を省略して、素子基板10上に画素電極45及び隔壁77が形成されるように図示している。画素電極45は、上述したようにITOからなり、ITOの薄膜をスパッタ法等で形成後、フォトリソグラフィー法でパターニングして形成される。
【0046】
次に、図3(b)に示すように、第2の工程として平面視で画素電極45を囲むように隔壁77を形成する。画素電極45は平面視で互いに所定の距離を有する島状にパターニングされている。したがって、隔壁77を形成することにより、画素電極45上に該画素電極を底部(底面)とし隔壁77を側壁(側面)とする、凹部75が形成される。上述したように、本実施形態の隔壁77は、酸化シリコンからなる下部隔壁78とアクリル樹脂からなる上部隔壁79との2層構造である。しかし、隔壁77は2層構造を必須とするものではない。単層の隔壁77を用いても、本発明の実施は可能である。
【0047】
下部隔壁78は、CVD法等で形成された酸化シリコン薄膜をフォトリソグラフィー法でパターニングすることで形成される。上部隔壁79も、スピンコート等法で形成されたアクリル樹脂の薄膜を、同様にフォトリソグラフィー法でパターニングすることで形成される。ここで、アクリル樹脂に感光性のアクリル樹脂を用い場合、レジスト塗布工程を省略できる。
【0048】
次に、図3(c)に示すように、素子基板10上全面にCF4プラズマ17を照射する。かかる照射により、上部隔壁79を構成するアクリル樹脂に含まれる炭素とプラズマ中のフロンとが反応して、フッ化炭素樹脂となる。その結果、上部隔壁79の表面が撥液性となる。
【0049】
次に、図3(d)に示すように、素子基板10上全面に酸素プラズマ18を照射する。かかる照射により、画素電極45の表面及び下部隔壁78の表面に残留している有機系の残渣が除去される。その結果、該表面が親液性となる。
なお、上述の双方のプラズマ照射工程のうちの少なくとも一方を省略して、工程を簡略化することもできる。
【0050】
次に、図4(a)に示すように、第3の工程として、インクジェットヘッド19から、凹部75内に第1のインクとしての正孔注入輸送材料液21の液滴を吐出(滴下)して、凹部75内に該第1のインクからなる液層である第1のインク層11を形成する。インクジェットヘッド19は液滴吐出面に微小なノズル孔を複数有しており、ピエゾ圧電効果により該ノズル孔から微小なインクの液滴を吐出できる。
【0051】
正孔注入輸送材料液21は、正孔注入輸送層の形成材料であるPEDOT/PSSを、分散媒としての水に分散した液材(液体材料)である。正孔注入輸送材料液21の主成分は水であり、分散質であるPEDOT/PSSの量(濃度)はわずかである。したがって、第1のインクの比重は略1.0となる。また、第1のインクの沸点は、該インクの溶媒または分散媒の沸点と考えることができるため、水は沸点すなわち略100℃となる。
【0052】
後述する各実施形態において、第1のインクは正孔注入輸送材料液21と同様に溶質あるいは分散質を含んでいる。しかし、沸点及び比重は、該溶質等にかかわらず溶媒または分散媒の沸点及び比重をそのまま用いるものとする。また、インク(第1のインク及び後述する第2のインク)が2種類の液体を含む場合でも、比重は加重平均で算出できる。そして沸点は、主成分となる液体の数値を用いることができる。
【0053】
インクジェットヘッド19の液滴吐出面の面積が素子基板10の面積と同等以上である場合は、すべての凹部75内に同時に液滴を吐出できる。しかし、上述の液滴吐出面の面積が素子基板10の面積よりも小さい場合は、インクジェットヘッド19を走査させつつ液滴を吐出して、各凹部75内に順次インク層を形成する。本図は、かかる場合を示している。破線または実線の矢印に示すようにインクジェットヘッド19を走査させて、順次インク層(第1のインク層11)を形成している。
【0054】
次に、図4(b)に示すように、第4の工程として、凹部75内に第2のインクとしてのシクロヘキシルベンゼン22の液滴を吐出(滴下)して、凹部75内に形成されている第1のインク層11の上層に、第2のインクとしてのシクロヘキシルベンゼン22からなる第2のインク層12を形成する。第1のインクと異なり、第2のインクは溶質あるいは分散質を含んでいない。すなわち、第2のインクは液体のみからなる。なお、本工程は、上述の第3の工程を実施後に時間を空けずに即座に実施することが必要である。
【0055】
第2のインクとしては、比重が第1のインクの比重よりも小さいことが必要である。また、沸点が第1のインクの沸点よりも高いことが好ましい。シクロヘキシルベンゼンは、沸点が略240℃で比重が略0.94である。したがって、上述の条件を双方とも満たしている。
【0056】
また、第2のインクは上述のシクロヘキシルベンゼンに限定されることはなく、比重が水よりも小さい非水系有機溶媒(非水系有機液体)であれば使用可能である。沸点については、第2のインクの沸点が第1のインクの沸点よりも高いことは必ずしも必要ではない。したがって、比重が水の比重すなわち1.0よりも小さければ、沸点が100℃以下の非水系有機溶媒を用いることもできる。
【0057】
第2のインクとしてのシクロヘキシルベンゼン22も、正孔注入輸送材料液21と同様に吐出される。すなわち、インクジェットヘッド19の液滴吐出面の面積が素子基板10の面積よりも小さい場合は、インクジェットヘッド19を走査させつつ液滴を吐出して、各凹部75内に順次第2のインク層12を形成する。かかる場合において、素子基板10上の全ての凹部75内に第1のインクとしての正孔注入輸送材料液21からなる第1のインク層11が形成される前に、第2のインクとしてのシクロヘキシルベンゼン22の吐出を開始しても構わない。
【0058】
上述したように、第2のインクは、第1のインクの吐出後即座に吐出される必要がある。したがって、第1のインクを吐出するインクジェットヘッド19と第2のインクを吐出するインクジェットヘッド19とを同時に駆動して、個々の凹部75に対して第3の工程と第4の工程との2工程を連続して、すなわちできる限り時間を空けずに実施することとなる。すなわち、第3の工程の後に第4の工程を実施するということは個々の凹部75についてのことであり、素子基板10全体に関しては、第3の工程と第4の工程とが同時に実施されていてもよい。かかる場合、素子基板10上には、第1のインク層11と第2のインク層12の双方が形成された凹部75と、第1のインク層11が形成され第2のインク層12は未形成の凹部75と、第1のインク層11も未形成の凹部75の、夫々異なる段階(状態)の凹部75が混在することとなる。
【0059】
また、第1のインクと第2のインクは、異なるインクジェットヘッド19を用いて吐出するとは限らない。インクの供給系を2組備えたインクジェットヘッド19を用いて、第1のインクと第2のインクとを、夫々異なるノズルから連続して吐出することもできる。
【0060】
図4(c)は、第3の工程と第4の工程との双方の工程が終了した時点の態様を示す図である。凹部75内には、第1のインクとしての正孔注入輸送材料液21からなる第1のインク層11と第2のインクとしてのシクロヘキシルベンゼン22からなる第2のインク層12とが重なって形成されている。
【0061】
かかる状態において、第2のインクは第1のインクよりも比重が小さいため、上述の2つのインク層が交じり合うことは抑制される。また、第2のインクは沸点が高いため、常温常圧時における蒸発すなわち自然乾燥は抑制されている。したがって、第2のインク層12に覆われている第1のインク層11は、沸点が比較的低い液材からなるにもかかわらず、蒸発が抑制されている。
【0062】
次に、図4(d)に示すように、第5の工程として、第1のインクの分散媒である水、及び第2のインクとしてのシクロヘキシルベンゼン22を乾燥除去する。その結果、凹部75内、すなわち画素電極45の上層に、第1のインクの分散質であったPEDOT/PSSの層が形成される。かかる層が、正孔注入輸送層43である。上記乾燥は減圧により蒸発を促進させることで行う。具体的には、スクロールポンプで4×10-4Paの気圧を保ちつつ20分間乾燥させる。なお、上述の乾燥除去の条件は上記の数値に限定されるものではなく、また、加熱と減圧を組み合わせてもよい。
【0063】
本実施形態によれば、将来的に正孔注入輸送層43となる正孔注入輸送材料液の液層、すなわち第1のインク層11は、第5の工程すなわち乾燥除去工程に至るまでの時間、第2のインク層12で覆われることとなる。そのため、上述の時間中、該第1のインク層は自然乾燥が抑制される。そして第5の工程において、素子基板10上の全域で同時かつ略同等の条件で乾燥が開始される。個々の凹部75内においても同様であり、平面視で隔壁77に近い領域と(凹部75の)中央部との双方の領域において、第1のインク層11の乾燥は同時かつ略同等の条件で開始される。
【0064】
上述したように、乾燥条件の差に伴う乾燥時間のばらつきは、該乾燥によって形成される薄膜の層厚の均一性を低下させる。そして、かかる均一性の低下は、有機EL装置の表示品質を低下させる。本実施形態の製造方法によれば、第1のインク層11を、液滴の吐出から乾燥除去工程が開始されるまでの間、第2のインク層12で覆うことにより表面を露出させず維持できるため、乾燥時間(乾燥条件)のばらつきを低減できる。したがって、本実施形態の製造方法によれば、正孔注入輸送層43の層厚の均一性が高く表示品質が向上した有機EL装置を得ることができる。
【0065】
なお、第2のインク層12の層厚は、素子基板10上の全面において同一である必要はなく、適宜変化をつけてもよい。上述の第5の工程、すなわち溶媒あるいは分散媒の乾燥除去工程において、第2のインク層12に覆われた状態でも第1のインク層11の乾燥は始まっているが、本格的な乾燥は第2のインク層12が除去された後に進行する。したがって、第1のインク層11の乾燥が、素子基板10の面内において同条件で行われるためには、第2のインク層12の乾燥除去が素子基板10の面内で同時に終了していることが必要となる。
【0066】
一方で、第2のインク層12の表面は常に露出しているため、吐出された直後から自然乾燥が生じている。したがって、インクジェットヘッド19の液滴吐出面の面積が素子基板10の面積に比べて小さい場合は、初期に形成される第2のインク層12の層厚は厚めにして、第4の工程すなわち第2のインク層12の形成工程が進行するにつれて序々に薄くすることで、第5の工程すなわち乾燥除去工程が開始される時点における第2のインク層12の層厚の面内均一性を向上できる。その結果、層厚の均一性がより一層向上した正孔注入輸送層43を形成でき、表示品質がより一層向上した有機EL装置を得ることができる。
【0067】
また、素子基板10の面内において、外側に位置する凹部75に形成される第2のインク層12は層厚を厚めにして、中央部に位置する凹部75に形成される第2のインク層12は層厚を薄めにしてもよい。第2のインク層12の形成が終了後、乾燥除去工程が開始されるまでの間に、第2のインク層12は自然乾燥が進行する。その場合、第2のインク(本実施形態においてはシクロヘキシルベンゼン)の蒸気密度は中央部の方が高くなる。そのため、該自然乾燥は、該中央部においては進行速度が低下する。
【0068】
かかる場合において、素子基板10の中央部における第2のインク層12の層厚を薄めにすることにより、自然乾燥速度の低下を相殺できる。したがって、乾燥除去工程を開始する時点の層厚を均一化できる。その結果、第1のインク層11の乾燥条件をより一層均一化でき、表示品質がより一層向上した有機EL装置を得ることができる。
【0069】
本実施形態では、第1のインクとしての正孔注入輸送材料液21の分散媒として水と第2のインクとしての非水系有機溶媒であるシクロヘキシルベンゼン22とを組み合わせている。しかしインクに用いる液体はかかる組み合わせに限定されるものではなく、第1のインクの溶媒としての非水系有機溶媒(有機系液体)と第2のインクとしての水(あるいは水系溶媒)との組み合わせも可能である。また、双方を非水系有機溶媒とすることもできる。ただし、双方を水(あるいは水系溶媒)とすることは比重が略同一となるので用いることはできない。
【0070】
本実施形態では、第1のインクの分散媒としての水に、水よりも比重が軽く沸点が高いシクロヘキシルベンゼン22を、第2のインクとして組み合わせている。しかし、第2のインクの沸点は、必ずしも第1のインクの主成分となる液体の沸点よりも高い必要はない。凹部75内において第2のインク層12が第1のインク層11を完全に覆い、かかる状態が第5の工程、すなわち乾燥除去工程が実施されている間維持されれば、第1のインク層11の乾燥を同一条件で行うことが可能である。したがって、第2のインクに水よりも沸点が低い液体を用いても、本発明の効果を得ることは可能である。
【0071】
なお、本実施形態では、画素電極45上に正孔注入輸送層43を形成しているが、該正孔注入輸送層を正孔注入層と正孔輸送層とに分けて形成する場合においても、上記実施形態の第3〜第5の工程を2回繰り返すことで可能である。
【0072】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について述べる。図5(a)〜(d)は、本発明の第2の実施形態の製造方法を示す工程断面図である。本実施形態は、有機EL装置が備える有機EL素子29の、正孔注入輸送層43の上層に形成される有機EL層42、より具体的には赤色有機EL層42Rの形成に関するものである。有機EL装置自体は第1の実施形態で述べたものと共通している。そこで、本実施形態及び後述する第3の実施形態においては、有機EL装置の構成等の説明は省略する。又、有機EL装置の構成要素(たとえば素子基板10等)の符号は第1の実施形態と共通とする。
【0073】
なお、本実施形態と上述の第1の実施形態は互いに独立している。したがって、第1の実施形態によらずに、従来の技術(製造方法)を用いて形成した正孔注入輸送層43の上層に、本実施形態にかかる製造方法を用いて有機EL層42を形成することもできる。以下、工程順に述べる。
【0074】
まず、図5(a)に示すように、第1の工程として素子基板10上に画素電極45を形成し、さらに第2の工程として該画素電極を平面視で囲む隔壁77を形成し、さらに、画素電極45の上層に正孔注入輸送層43を形成する。上述したように、正孔注入輸送層43は上述の第1の実施形態にかかる方法で形成してもよく、また、他の方法で形成してもよい。
【0075】
次に、図5(b)に示すように第3の工程として、隔壁77を側面とし正孔注入輸送層43を底面とする凹部75内に、インクジェットヘッド19から第1のインクとしての有機EL材料液23を吐出して、該凹部内に第1のインク層11を形成する。有機EL材料液23は、赤色有機EL材料(通電により赤色光を発する有機EL材料)であるPoly[{2−methoxy−5−(2−ethylhexyloxy)−1,4−(1−cyanovinylenephenylene)}−co−{2,5−bis(N,N’−diphenylamino)-1,4-phenylene}]を溶質とし、P-クロロトルエンを溶媒とする溶液である。
P-クロロトルエンは、沸点が162℃、比重が1.07であり、溶質濃度は1.5重量%である。かかる沸点及び比重が、第1のインクの沸点及び比重となる。
【0076】
次に、図5(c)に示すように、第4の工程として凹部75内に第2のインクとしてのペンチルベンゼン24を吐出して、凹部75内に形成されている有機EL材料液23からなる第1のインク層11の上層に、ペンチルベンゼン24からなる第2のインク層12を形成する。
【0077】
ペンチルベンゼンは、沸点が205℃、比重が0.86である。上述の第1の実施形態と同様に、第2のインクとしてのペンチルベンゼン24は溶質を含んでいない。すなわち、第2のインクとしてのペンチルベンゼン24は液体のみからなる。したがって、上述の2工程で、凹部75内に有機EL材料を含有する第1のインク層11と、該第1のインク層を覆う、第1のインク層11の溶媒よりも高沸点かつ低比重の液体からなる第2のインク層12と、が形成される。上層に形成された第2のインク層12の方が低比重の液体であるため、上述の2層は混じり合うことなく保たれる。
【0078】
上述の第1の実施形態と同様に、本工程は第3の工程を実施後に時間を空けずに即座に実施することが必要である。したがって、インクジェットヘッド19の液滴吐出面が小さい場合は、素子基板10の全面で第3の工程が終了する前に、第4の工程を開始してもよい。個々の凹部75において、第3の工程と第4の工程とが連続して、すなわち時間を空けず即座に実施されることが重要である。
【0079】
次に、図5(d)に示すように、第5の工程として第1のインクとしての有機EL材料液23の溶媒であるP-クロロトルエン、及び第2のインクとしてのペンチルベンゼン24を乾燥除去する。乾燥方法は第1の実施形態と同様であり、スクロールポンプを用いて4×10-4の減圧下におくことで行う。
【0080】
本工程により正孔注入輸送層43の上層に、第1のインクの溶質であった有機EL材料からなる有機EL層42、詳しくは赤色有機EL層42Rが形成される。有機EL層42と正孔注入輸送層43との積層体が発光機能層44である。
【0081】
本実施形態によれば、上述の第1の実施形態と同様に、素子基板10内、及び個々の凹部75内において、第1のインク層11の乾燥を同時かつ略同等の条件で行うことができる。その結果、有機EL層42の層厚の均一性が高く、表示品質が向上した有機EL装置を得ることができる。第2のインク層12の層厚は、素子基板10の面内において適宜変化をつけてもよい点も、第1の実施形態の製造方法と同様である。
【0082】
なお、本実施形態では、赤色有機EL層42Rの形成について述べたが、他の2色に対応する有機EL層42も同様の方法で形成できる。かかる場合、一色毎に乾燥除去工程を行ってもよく、また3種類の、すなわち3色に対応する夫々の有機EL材料を含む第1のインク層11を形成後に乾燥除去工程を行って、3種類の有機EL層42(R,G,B)を同時に形成してもよい。
【0083】
第2のインクは、第1のインクよりも比重が低ければ、沸点は必ずしも高くなくてよい点も、第1の実施形態と同様である。また、第1のインクと第2のインクとは、水(水系溶媒)同士の組み合わせでない限り、色々な組み合わせが可能なことも第1の実施形態と同様である。
【0084】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について述べる。図6(a)〜(d)は、本発明の第3の実施形態の製造方法を示す工程断面図である。本実施形態は、正孔注入輸送層43の上層に、R,G,Bの3色に対応する3種類の有機EL層42を同時に形成する場合を示している。以下、工程順に述べる。
【0085】
まず、図6(a)に示すように、素子基板10上に画素電極45と該画素電極を平面視で囲む隔壁77を形成し、さらに、画素電極45の上層に正孔注入輸送層43を形成する。正孔注入輸送層43は第1の実施形態にかかる方法を用いて形成してもよく、従来の方法で形成してもよい。
【0086】
次に、図6(b)に示すように、第3の工程としてインクジェットヘッド19から正孔注入輸送層43上に3種類の第1のインクとしての有機EL材料液23を吐出して第1のインク層11を形成する。付加されたアルファベットは有機EL材料液23の溶質である有機EL材料の発光色を示している。3種類の有機EL材料液23(R,G,B)の溶媒は第2の実施形態における有機EL材料液23の溶媒と共通のP-クロロトルエンである。
【0087】
有機EL材料液23Rの溶質である赤色有機EL材料は、上述の第2の実施形態で用いた材料と同一である。有機EL材料液23Gの溶質である緑色有機EL材料は、Poly[(9,9−dioctylfluorenyl−2,7−diyl)−co−(1,4−benzo−{2,1’,3}−thiadiazole)]である。有機EL材料液23Bの溶質である青色有機EL材料は、Poly[(9,9-dihexylfluorenyl-2,7-diyl)-co-(9,10-anthracene)]である。
【0088】
本実施形態で用いるインクジェットヘッド19は、インクの供給系を4本備えている。したがって、素子基板10上の所定の領域内において、3種類の第1のインクと(1種類の)第2のインクを同時に吐出できる。
【0089】
次に、図6(c)に示すように、第4の工程として第1のインクとしての有機EL材料液23の上層に第2のインクとしてのペンチルベンゼン24を吐出して、ペンチルベンゼン24からなる第2のインク層12を形成する。上述したように、本実施形態で用いるインクジェットヘッド19は複数の供給系を備えているため、有機EL材料液23を吐出させたノズルに近い位置に形成されたノズルからペンチルベンゼン24を吐出できる。したがって、第1のインクとしての有機EL材料液23を吐出した後、インクジェットヘッド19を若干移動させることで、連続的に第2のインクとしてのペンチルベンゼン24を吐出できる。
【0090】
かかる工程により、将来的に3種類の有機EL素子が形成される3つの凹部75内に、3種類の有機EL材料のいずれかを含有する第1のインク層11と、該第1のインク層を覆う、第1のインク層11の溶媒よりも高沸点かつ低比重の液体からなる第2のインク層12と、が形成される。
【0091】
次に、図6(d)に示すように、第5の工程として、第1のインクとしての有機EL材料液23の溶媒であるP-クロロトルエン、及び第2のインクとしてのペンチルベンゼン24を乾燥除去する。そして、3種類の有機EL層42のいずれかと正孔注入輸送層43との積層体である3種類の発光機能層44(符号は同一)を形成する。
【0092】
本実施形態によれば、液材の供給系を複数備えるインクジェットヘッド19を用いて3種類の有機EL材料液23を同時に吐出し、さらに間隔をほとんど空けずにペンチルベンゼン24を吐出している。したがって、溶媒等の乾燥除去工程を1回で済ますことができ、工数低減を可能としている。また、第1のインク層11と第2のインク層12を連続して形成できるため、第1のインク層11、すなわち有機EL材料液23の溶媒の自然乾燥を低減できる。したがって、本実施形態によれば、有機EL層42の層厚の均一性がより一層高く、表示品質が向上した有機EL装置を低コストで得ることができる。
【0093】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について述べる。図9(a)〜(d)は、本発明の第4の実施形態の製造方法を示す工程断面図である。本実施形態の製造方法は、第1の実施形態の製造方法と同様に、画素電極45上に正孔注入輸送層43を形成する工程に関するものである。
【0094】
図3(a)〜(d)に示す各工程、すなわち、素子基板10上に画素電極45を形成する工程と、画素電極45を平面視で囲むように下部隔壁78と上部隔壁79とからなる隔壁77を形成して凹部75を形成する工程と、素子基板10上全面にCF4プラズマ17を照射する工程と、素子基板10上全面に酸素プラズマ18を照射する工程、の4工程は同一である。そこで、上述の4工程が終了した後の状態から説明する。
なお、本実施形態において、上述の画素電極45を形成する工程が第1の工程であり、上述の隔壁77を形成する工程が第2の工程である。したがって、本実施形態の説明は第3の工程から始める。
【0095】
まず、図9(a)に示すように、第3の工程として、インクジェットヘッド19から凹部75内に、第1のインクとしての正孔注入輸送材料液21と第2のインクとしてのシクロヘキシルベンゼン22を混合してなる第3のインク33の液滴を吐出(滴下)して、凹部75内に該第3のインクの層を形成する。正孔注入輸送材料液21は第1の実施形態で用いたものと同一であり、分散質であるPEDOT/PSSを分散媒である水に分散して得られるインク(液体材料)である。
【0096】
図9(b)は、凹部75内に第3のインク33からなる層を形成した状態を示す図である。第1のインクの分散媒すなわち主成分である水と有機溶剤であるシクロヘキシルベンゼン22とは互いに溶け合うことがないため、吐出直後から図示するように凹部75内で互いに分離し始める。
【0097】
図9(c)は、図9(b)に示す状態から若干の時間が経過した状態を示している。上述したようにシクロヘキシルベンゼン22の比重は略0.94と水よりも軽いため、第3のインクは下層(画素電極45側)の正孔注入輸送材料液21からなる第1のインク層11とシクロヘキシルベンゼン22からなる第2のインク層12が形成される。
【0098】
次に図9(d)に示すように、第4の工程として、正孔注入輸送材料液21の分散媒である水、及びシクロヘキシルベンゼン22を乾燥除去する。その結果、凹部75内、すなわち画素電極45の上層に、第1のインクの分散質であったPEDOT/PSSの層、すなわち正孔注入輸送層43が形成される。上記乾燥の条件は上述の第1の実施形態の乾燥条件と同一である。加熱と減圧を組み合わせてもよい点も同一である。
【0099】
本実施形態によれば、上述の第1の実施形態の製造方法と同様の効果を得ることができる。すなわち、凹部75内に第1のインク層11と第2のインク層12と積層体を形成して、正孔注入輸送材料を含む第1のインク層11を、乾燥除去工程が開始されるまでの間第2のインク層12で覆うことにより表面を露出させず維持できるため、乾燥時間(乾燥条件)のばらつきを低減できる。したがって、本実施形態の製造方法によれば、正孔注入輸送層43の層厚の均一性が高く表示品質が向上した有機EL装置を得ることができる。
【0100】
そして、上述の第1の実施形態の製造方法と同様の効果をインクの吐出(滴下)工程を増加させることなく得ることができる。すなわち、将来的に第1のインク層11となる正孔注入輸送材料液21と将来的に第2のインク層となるシクロヘキシルベンゼン22とを混合して第3のインク33とすることで、1回の吐出工程で上述の積層体を形成できる。したがって、工程数の増加に伴う製造コストの増加を抑制しつつ、表示品質が向上した有機EL装置を得ることができる。
【0101】
なお、本実施形態の製造方法は、正孔注入輸送層の形成工程に限定されるものではなく、上述の第2の実施形態の製造方法のように、有機EL層42の形成にも用いることもできる。また、本実施形態では第1のインクに水系のインクを用いているが、第1のインクに水よりも比重が大きい有機系溶媒を用いた正孔注入輸送材料液を用い、第2のインクとして水と組み合わせて第3のインク33とする態様も可能である。また、互いに比重が異なる2種類の有機系溶媒を組み合わせて第3のインク33とする態様も可能である。
【0102】
また、本実施形態の製造方法においては、第3のインク33が均一に混じり合ない可能性、あるいは凹部75に吐出される前に分離してしまう可能性がある。かかる可能性に対しては、吐出される前の第3のインク33に超音波等による振動を加えることで対処可能である。また、インクジェットヘッドのノズルに至るまでは第1のインクと第2のインクとに分けた状態として、吐出直前に該ノズル内において混合して第3のインク33とする態様も可能である。さらには、該2種類のインクを夫々異なるノズルから同時に凹部75内に吐出して該凹部内で第3のインク33とした後に、該凹部内で分離させて積層体とする態様も可能である。
【0103】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態として、カラーフィルターの製造方法を示す。図7は、本実施形態の対象であるカラーフィルターの機能及び概要を模式的に示す斜視図である。図7は、光源としての白色光67を発するバックライト66と、光シャッターとして機能する液晶パネル60と白色光67を有色光68とするカラーフィルター80と、を示している。なお、実際のカラーフィルター80は液晶パネル60を構成する一方の基板に形成されていることが一般的である。しかし本図では、カラーフィルターの機能を説明するために間隔を空けて示している。
【0104】
液晶パネル60は、シール材63を介して貼り合された第1基板61と第2基板62、及び該一対の基板間に挟持された液晶層(不図示)等を備えており、画素64が規則的に形成されている。双方の基板は透明性を有している。そして液晶パネル60はTN型であり、第2基板62には液晶パネル60の全面を共通電位に保つ対向電極が形成され、第1基板61には画素64毎に独立した画素電極(不図示)が形成されている。該一対の電極間に電圧を印加することで、液晶分子の配向を変化させて、バックライト66から照射される光の透過量を制御している。上述の印加電圧は画素64毎に制御できるため、上述の光の透過量は画素64毎に制御できる。
【0105】
カラーフィルター80は、画素64毎に配置されたカラーフィルター層81と該カラーフィルター層を囲むように網目状に形成された遮光性を有するブラックマトリクス82とを備えている。カラーフィルター層81はR,G,Bのいずれかの色に着色された透過性を有する材料層であり、照射された白色光67を3原色のいずれかの色の有色光68として射出できる。画素64毎にR,G,Bのいずれかの色の光が任意の強度で射出されるため、図示する矢印の方向に向けてカラー画像が形成される。
【0106】
カラーフィルター80の製造方法、具体的にはカラーフィルター層81のパターニング方法はフォトリソグラフィー法等を含んで種々存在するが、大面積のカラーフィルター80の場合はインクジェット法がコスト面等で有利である。しかし、インクジェット法では有機EL層42の形成時と同様の問題、すなわち層厚の均一性の低下が起こり得る。そこで本実施形態では、上述の第1〜第3の実施形態と同様に、インク層を2層形成した後に溶媒等を乾燥除去することで、カラーフィルター層81の層厚の均一性を向上させている。
【0107】
図8は、(a)〜(e)は、本発明の第5の実施形態にかかるカラーフィルター80の製造方法を示す工程断面図である。将来的に液晶パネル60を構成する第2基板62の一方の面(以下、該面を「上面」と称する。)に3原色のいずれかの色のカラーフィルター層81を形成する工程を示している。
【0108】
まず、図8(a)に示すように、第1の工程として第2基板62の上面にブラックマトリクス82を形成する。ブラックマトリクス82は該上面にスパッタ法により形成したクロムの薄膜をフォトリソグラフィー法でパターニングして形成する。かかるブラックマトリクス82は上述の各実施形態における隔壁77のように機能する。したがって、第2基板62を底面として側面をブラックマトリクス82で囲まれた凹部75が形成される。
【0109】
なお図示は省略しているが、ブラックマトリクス82と平面視で重なる有機樹脂性の隔壁をさらに形成してもよい。クロムの薄膜のみでは高さが不足する場合でも、該有機樹脂性の隔壁で補うことができる。又、ブラックマトリクス82の形成後に上述の各実施形態と同様に酸素プラズマ18を照射してもよい。さらには、クロムと該有機樹脂性との2層構造の隔壁を形成後に、CF4プラズマ17と酸素プラズマ18とを連続して照射してもよい。
【0110】
次に、図8(b)に示すように、第2の工程として凹部75内に、第1のインクとしてのカラーフィルター材料液25を図示しないインクジェットヘッドから吐出して、該カラーフィルター材料液25からなる第1のインク層11を形成する。カラーフィルター材料液25は、分散媒としてのポリウレタン樹脂オリゴマーにR,G,Bのいずれかの色の無機顔料を分散させた液材に、低沸点溶剤として酢酸ブチルを加えたものである。酢酸ブチルは沸点が略126℃、比重が略0.88である。
【0111】
次に、図8(c)に示すように、第3の工程として凹部75内に第2のインクとしてのペンチルベンゼン26を吐出して、該ペンチルベンゼンからなる第2のインク層12を形成する。上述の各実施形態と同様に、第3の工程は第2の工程を終えた後、できる限り時間を空けずに即座に実施する。
【0112】
かかる第2の工程と第3の工程とにより、凹部75内には第1のインク層11と第2のインク層12の積層体が形成される。第2のインク層12を構成するペンチルベンゼン26は比重が第1のインク層11の主成分である酢酸ブチルよりも軽いため、該2層は混じり合うことが抑制されている。
【0113】
次に、図8(d)に示すように、第4の工程として、第1のインク層11に含まれるポリウレタン樹脂オリゴマーと酢酸ブチル、及び第2のインク層12を構成するペンチルベンゼン26を乾燥除去する。そして分散質であった無機顔料からなるカラーフィルター層81を形成する。
【0114】
次に、図8(e)に示すように、第2基板62の全面に、オーバーコート層83と共通電極(対向電極)84とを順に形成する。オーバーコート層83は透明樹脂材料からなり、共通電極84はITOからなる。以上の工程により、第2基板62上にカラーフィルター80が形成される。
【0115】
本実施形態によれば、上述の各実施形態と同様に、第2基板62内、及び個々の凹部75内において、第1のインク層11すなわちカラーフィルター材料液25の乾燥を同時かつ略同等の条件で行うことができる。その結果、層厚の均一性が高いカラーフィルター層81を形成できる。
【0116】
本実施形態では、R,G,Bの内の一色のカラーフィルター層81を形成する工程を示したが、他の2色も同様に方法で形成できる。又3色のカラーフィルター層81を同時に形成してもよい。3種類の液剤供給系を備えるインクジェットヘッドを用いることで、該3色のカラーフィルター層81を同時に形成できる。
【0117】
上述したように、カラーフィルター層81は該カラーフィルター層を透過する白色光を有色光にしている。本実施形態の製造方法によれば、光源66から照射される白色光67を、画素64間でばらつきの少ない有色光にすることができる。したがって、本実施形態の製造方法を用いることで表示品質の向上した液晶パネルを得ることができる。
【0118】
なお、上述の各実施形態と同様に、第2のインクとしてのペンチルベンゼン26を吐出量、すなわち第2のインク層の層厚は、第2基板62の面内において適宜変化をつけてもよい。すなわち、初期に形成される第2のインク層の層厚は厚めにして、第3の工程すなわち第2のインク層の形成工程が進行するにつれて序々に薄くすることで、乾燥条件をより一層均一にでき、層厚の均一性がより一層向上したカラーフィルター層81を形成できる。
また、カラーフィルター80は液晶パネルのみではなく、有機EL層42に白色光を発光する材料を用いた有機ELパネルと組み合わせることもできる。
【符号の説明】
【0119】
10…素子基板、11…第1のインク層、12…第2のインク層、17…CF4プラズマ、18…酸素プラズマ、19…インクジェットヘッド、21…第1のインクとしての正孔注入輸送材料液、22…第2のインクとしてのシクロヘキシルベンゼン、23…第1のインクとしての有機EL材料液、24…第2のインクとしてのペンチルベンゼン、25…第1のインクとしてのカラーフィルター材料液、26…第2のインクとしてのペンチルベンゼン、29…有機EL素子、30…有機EL画素、33…第3のインク、42…有機EL層、43…正孔注入輸送層、44…発光機能層、45…第1電極としての画素電極(陽極)、47…第2電極としての陰極、48…反射層、60…液晶パネル、61…第1基板、62…第2基板、63…シール材、64…画素、66…バックライト(光源)、67…白色光、68…有色光、70…ゲート絶縁層、74…保護層、75…隔壁で囲まれた領域としての凹部、77…隔壁、78…下部隔壁、79…上部隔壁、80…カラーフィルター、81…カラーフィルター層、82…ブラックマトリクス、83…オーバーコート層、84…共通電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と第2電極と前記第1電極及び前記第2電極とに挟持される、少なくとも有機EL層を含む発光機能層とを備える有機EL素子を複数備えてなる有機EL装置の製造方法であって、
基板の一方の面に複数の前記第1電極を形成する第1の工程と、
平面視で前記複数の第1電極の各々を囲む隔壁を形成する第2の工程と、
前記隔壁で囲まれた領域内に、溶質または分散質として発光機能層形成材料を含む第1のインクを吐出して第1のインク層を形成する第3の工程と、
前記隔壁で囲まれた領域内に前記第1のインクよりも比重が小さい第2のインクを吐出して、前記第1のインク層を覆う第2のインク層を形成する第4の工程と、
前記第1のインクと前記第2のインクとを乾燥させる第5の工程と、
を含むことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記第4の工程は前記隔壁で囲まれた領域内に前記第1のインクよりも比重が小さく、かつ、前記第1のインクよりも沸点が高い前記第2のインクを吐出して、前記第1のインク層を覆う前記第2のインク層を形成する工程であることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記第1のインクと前記第2のインクとは共に有機系液体を主成分としていることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記第1のインクは水を分散媒としており、前記第2のインクは有機系液体であることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記第1のインクは有機系液体を溶媒としており、前記第2のインクは水を主成分としていることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項6】
第1電極と第2電極と前記第1電極及び前記第2電極とに挟持される、少なくとも有機EL層を含む発光機能層とを備える有機EL素子を複数備えてなる有機EL装置の製造方法であって、
基板の一方の面に複数の前記第1電極を形成する第1の工程と、
平面視で前記複数の第1電極の各々を囲む隔壁を形成する第2の工程と、
前記隔壁で囲まれた領域内に、溶質または分散質として発光機能層形成材料を含む第1のインクと前記第1のインクよりも比重が小さい第2のインクとを混合してなる第3のインクを吐出する第3の工程と、
前記第1のインクと前記第2のインクとを乾燥させる第4の工程と、
を含むことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記第3の工程は、前記隔壁で囲まれた領域内に、溶質または分散質として発光機能層形成材料を含む第1のインクと、前記第1のインクよりも比重が小さく、かつ、前記第1のインクよりも沸点が高い第2のインクと、を混合してなるインクを吐出する工程であることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記第1のインクは水を分散媒としており、前記第2のインクは有機系液体であることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項9】
透明性基板の一方の面に隔壁を形成して、前記一方の面を底部とし前記隔壁を側壁とする複数の凹部を形成する第1の工程と、
前記凹部内に溶質または分散質としての着色材料を含む第1のインクを吐出して第1のインク層を形成する第2の工程と、
前記凹部内に前記第1のインクよりも比重が小さい第2のインクを吐出して、前記第1のインク層を覆う第2のインク層を形成する第3の工程と、
前記第1のインク層と前記第2のインク層とを乾燥させる第4の工程と、
を含むことを特徴とするカラーフィルターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−49028(P2011−49028A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196436(P2009−196436)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】