説明

有機EL装置及び有機EL装置の製造方法

【課題】有機EL装置において、陽極やバッファ層が発光層に及ぼす消光や劣化等の影響を低減させ、駆動における安定性を確保する。
【解決手段】基体の上方に配置された第1の電極と第2の電極との間に、少なくとも発光層を備えた有機EL装置の製造方法であって、前記発光層が液体状態から形成され、前記第1の電極の上方にバッファ層を形成する第1の工程を含み、前記第1の工程において、前記バッファ層の少なくとも一部をプラズマ重合法により形成することを特徴とする有機EL装置の製造方法。この方法によれば、駆動において、良好な安定性を有する有機EL装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置等の電気光学装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機EL装置に含まれる有機EL素子は、陽極と陰極との間に発光性の有機材料を薄膜形成した構造となっている。そして、両電極から注入された電子と正孔とが発光層内で再結合し、励起したエネルギーが発光として放出されるとして理解されている。
【0003】
このような有機EL素子において、発光層やキャリア輸送層等の有機材料の成膜には、おもに真空蒸着法や塗布法が採用される。
【0004】
蒸着法においては、微細なパターニングのためにマスク真空蒸着法等が用いられるが、マスクの撓み等の問題で大型ディスプレイの製造において高いパターニング精度を得ることは一般に困難であるとされている。
【0005】
一方、塗布法においては、微細なパターニングのために選択的に液滴を吐出するインクジェット法等が用いられるが、大型ディスプレイの製造への適用は比較的容易である。また、必要な部分にのみ材料を配置するため、材料利用効率の向上も図ることができる。
【0006】
なお、塗布法により作製された有機EL素子については、J. H. Burroughes, D. D. C. Bradley, A. R. Brown, R. N. Marks, R. H. Friend, P. L.Burns, A. B. Holmes, Nature, 347, 539 (1990).(非特許文献1)などに報告されている。
【0007】
一般に有機EL素子において、キャリア注入層やキャリア輸送層等を発光を担う発光層と電極との間に挿入することにより発光の量子効率や寿命等の素子特性が向上することが知られている。
【0008】
例えば、特願平9−187137(特許文献1)には、PEDOT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸)からなる導電性高分子を正孔注入層としてITOと発光層の間に挿入することで、素子特性が向上することが報告されている。
【0009】
【特許文献1】特願平9−187137
【非特許文献1】J. H. Burroughes, D. D. C. Bradley, A. R. Brown, R. N. Marks, R. H. Friend, P. L. Burns, and A. B. Holmes, Nature, 347, 539 (1990).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、キャリア注入層や輸入層は、発光効率や寿命の低下を引き起こすことがある。例えば、正孔注入層に用いる材料としてPEDOT/PSSを利用する場合、化学種が発光層中に拡散することにより、発光効率や寿命の低下を引き起こすという問題が生じていた。また、電子と正孔の移動速度のアンバランスにより、発光層以外の部分での電子と正孔との衝突確率が増大して、無効電流の増加し、発光効率が低下するという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、主に上記問題点を解決するためになされたものである。
【0012】
本発明に係る有機EL装置の製造方法は、基体の上方に配置された第1の電極と第2の電極との間に、少なくとも発光層を備えた有機EL装置の製造方法であって、前記第1の電極の上方にバッファ層を形成する第1の工程を含み、前記第1の工程において、前記バッファ層の少なくとも一部をプラズマ重合法により形成することを特徴とする。
【0013】
上記の有機EL装置の製造方法において、プラズマ重合法を用いることにより、緻密で良好な膜を得ることができる。
【0014】
これにより、例えば、前記第1の電極に含まれる、前記発光層の劣化因子となる化学種の前記発光層への拡散を抑制することが可能となる。
【0015】
また、前記第1の電極と前記バッファ層との間にキャリア注入層やキャリア輸送層が配置されている場合は、上記のキャリア注入層やキャリア輸送層に含まれる、前記発光層の劣化因子となる化学種の前記発光層への拡散を抑制することが可能となる。
【0016】
さらに、前記発光層で発生した励起子や前記第2の電極から注入されたキャリアの前記第1の電極方向への移動を抑制するという効果も期待することができる。
【0017】
なお、前記第1の電極とは、例えば、画素電極、陽極あるいは陰極であってもよい。
【0018】
上記の有機EL装置の製造方法において、前記プラズマ重合法において、フッ素を含有する材料を用いるようにしてもよい。
【0019】
上記の材料としては、例えば、炭素―フッ素結合を有するフルオロカーボン化合物が好ましい。炭素―フッ素結合を含む化合物を用いて得られた膜は、耐溶媒性や耐久性が高い等の特性を有する。
【0020】
このため、前記バッファ層を形成した後、インクジェット法等の液滴吐出法により発光層などの機能層を積層してもバッファ層より下の層に対する損傷を最小限とすることができる。
【0021】
また、前記バッファ層を形成した後、蒸着法等により発光層などの機能層を成膜した場合でも、バッファ層より下の層に対する損傷を最小限とすることができる。
【0022】
なお、上記の材料としては、水素や窒素等の元素が含まれるものを使用してもよい。
【0023】
上記の有機EL装置の製造方法において、さらに前記第1の電極上に正孔注入層を形成する第2の工程を含み、前記第2の工程を行った後に、前記第1の工程を行うようにしてもよい。
【0024】
前記正孔注入層は、エチレンジオキシチオフェンを含む高分子化合物を含んでいてもよい。
【0025】
また、前記正孔注入層は、PEDOT/PSSであってもよい。
【0026】
正孔注入層が前記発光層と前記第1の電極との間に配置されることになるが、これにより、正孔注入効率が向上し、あるいは、電子の移動速度に対して最適の正孔の移動速度を設定することが可能となる。
【0027】
正孔注入層に前記発光層の劣化因子等特性低下の要因となる化学種が含まれている場合に、前記バッファ層はそのような化学種の前記発光層への拡散や浸透を抑制することができる。
【0028】
あるいは、前記発光層で発生した励起子の前記第1の電極側への拡散や前記第2の電極から注入された電子が前記第1の電極に貫通することを抑制することが可能となる。
上記の有機EL装置の製造方法において、前記正孔注入層は前記バッファ層に接触するようにしてもよい。
【0029】
これにより、例えば、前記正孔注入層に前記発光層の劣化因子等特性低下の要因となる化学種が含まれている場合に、前記バッファ層はそのような化学種の前記発光層への拡散や浸透を効率良く抑制することができる。
【0030】
また、前記正孔注入層の表面に発生した構造欠陥等のキャリアや励起子の捕捉サイトを補修するという効果も期待できる。
【0031】
上記の有機EL装置の製造方法において、前記発光層は、前記基体の上方に配置され、記発光層を区画するバンクが設けられ、前記バッファ層は前記バンクの上方にも設けられていることが好ましい。
【0032】
上記の有機EL装置の製造方法は、特に前記バンクの上方の前記第2の電極が配置されている場合に顕著な効果を奏する。
【0033】
つまり、前記バッファ層は前記第2の電極に含まれる、発光層等の機能層や有機EL素子を駆動するためのトランジスタ等の能動素子の劣化因子となる拡散を抑制するという効果が期待できる。
【0034】
上記の有機EL装置の製造方法において、前記第1の工程において、前記バッファ層を前記第1の電極に接触するように形成し、前記第1の電極の表面の平均粗さ(Ra)が、15Å以上である場合において、前記バッファ層の平均の厚さが、15Åより大きく200Åより小さいことが望ましい。
【0035】
特に、前記バッファ層の厚さが平均して10Å以下の場合、前記第1の電極と前記発光層とが直接接触する部分が形成されてしまうことがあるため、素子劣化が誘引されてしまう可能性がある。
【0036】
上記の有機EL装置の製造方法において、前記バッファ層の平均の厚さが200Å以下であってもよい。
【0037】
特に前記バッファ層と前記第1の電極とが接触する場合、前記バッファ層の平均の厚さが200Å以下であれば、適度な導電性を確保することが可能である。
【0038】
上記の有機EL装置の製造方法において、前記バッファ層の平均の厚さが60Å以下であってもよい。
【0039】
特に前記バッファ層と前記第1の電極との間に正孔注入層等のキャリア注入層、あるいは正孔輸送層等のキャリア輸送層等が配置されている場合、適度な導電性を確保するためには、前記バッファ層の平均の厚さが60Å以下であることが好ましい。
【0040】
上記の有機EL装置の製造方法において、前記バッファ層は、前記第2の電極に接触していてもよい。
【0041】
上記の有機EL装置の製造方法において、さらに、前記バッファ層上に前記第2の電極を形成する第3の工程を含み、前記バッファ層と前記第2の電極は接触してもよい。
【0042】
前記バッファ層が前記第2の電極に接触していることにより、前記第2の電極に含まれる、有機EL素子の劣化因子となる化学種の拡散や浸透を抑制することができる。
【0043】
また、トランジスタ等の能動素子により有機EL素子を駆動する場合は、前記第2の電極に含まれる物質が可動イオンとなって能動素子を劣化させることがあるが、前記第2の電極と前記バッファ層とが接触することにより、可動イオンの拡散や浸透を抑制するという効果も期待できる。
【0044】
前記バッファ層が前記第2の電極に接触して設けられている場合、前記バッファ層の平均の厚さは30Å以下であることが望ましい。
【0045】
上記の有機EL装置の製造方法において、前記バッファ層は、前記正孔注入層を完全に覆うことが好ましい。
【0046】
これにより、例えば、前記正孔注入層に前記発光層の劣化因子等特性低下の要因となる化学種が含まれている場合に、前記バッファ層はそのような化学種の前記発光層への拡散や浸透をより効率良く抑制することができる。
【0047】
上記の有機EL装置の製造方法において、前記バンクを構成する第1の膜は、前記第1の電極の一部を覆っており、前記第1の膜の、少なくとも一部は前記バッファ層の一部と重なっていてもよい。
【0048】
これにより、前記第1の電極、キャリア注入層あるいはキャリア輸送層の端部も前記バッファ層により覆われることが可能となり、前記第1の電極、キャリア注入層あるいはキャリア輸送層を発生源とする有機EL素子の劣化因子の拡散や浸透を抑制するという効果が期待できる。
【0049】
なお、前記第1の膜は、例えば、後で説明する無機バンク13に対応するものであってもよい。
【0050】
上記の有機EL装置の製造方法において、前記第1の膜は、無機材料から構成されていてもよい。前記無機材料としては、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、または酸窒化ケイ素等が挙げられる。
【0051】
本発明に係る有機EL装置は、基体の上方に配置された第1の電極と、前記基体の上方に配置された第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された発光層と、前記発光層と前記第1の電極との間に配置された絶縁膜と、を含むこと、を特徴とする。
【0052】
上記の有機EL装置において、前記発光層はインクジェットあるいはスピンコート法等の液相プロセスにより形成することがことが好ましい。
【0053】
上記の絶縁膜は、上記の有機EL装置の製造方法における前記バッファ層のような機能を有するものであってもよい。例えば、前記第1の電極に含まれる、前記発光層の劣化因子となる化学種の前記発光層への拡散を抑制し、あるいは、前記第1の電極と前記バッファ層との間にキャリア注入層やキャリア輸送層が配置されている場合は、上記のキャリア注入層やキャリア輸送層に含まれる、前記発光層の劣化因子となる化学種の前記発光層への拡散を抑制するものであることが好ましい。
【0054】
上記の絶縁膜を形成する方法としては、例えば、塗布法、蒸着法、あるいはCVD法等が適宜用いられるが、上記のようにプラズマ重合法を用いれば緻密で耐久性に優れた膜を形成することが可能である。
【0055】
上記の絶縁膜は、前記発光層あるいは前記第1の電極を区画するバンクの上方にも設けられていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下、本発明を詳しく説明する。なお、この実施の形態は、本発明の一部の態様を示すものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で適宜変更可能である。また、以下に示す各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を異ならせてある。
【0057】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。なお、有機EL装置を表示装置として用いた例を示す。
【0058】
[本発明に係る第一例の有機EL装置]
インクジェット方式による有機EL装置の製造方法においては、例えば、画素を形成する有機物からなる発光材料、キャリア注入材料、あるいはキャリア輸送材料等を溶媒に溶解または分散させたインク組成物を、インクジェットヘッドから吐出し、電極上に塗布し、有機EL素子を形成する。吐出されたインク滴を精度よく所定の画素領域に塗布する為に、画素領域あるいは電極を仕切る隔壁(以下バンク)を設ければ、より精度良く、画素に対応して発光層、キャリア注入層、あるいはキャリア輸送層を配置することが可能となる。
【0059】
(基板)
図1は本発明に係る第一例の有機EL装置の断面図を示したものである。ガラス基板10上に薄膜トランジスタ(TFT)11及び絶縁層15を有する回路素子部16が形成され、この回路素子部16上にパターンニングされた陽極12が配置されている。TFT11と陽極12とは、絶縁層15に設けられた配線17を介して接続されている。
【0060】
更に、陽極12を区画するためにSiO2などからなる無機バンク13と無機バンク13上に配置された有機バンク14とから構成されている。バンクの形状つまり画素の開口形は、円形、楕円、四角、いずれの形状でも構わないが、インク組成物には表面張力があるため、四角形の角部は丸みを帯びているほうが好ましい。有機バンク14に用いる材料は所望の機能に応じて適宜選択されるが、一般に絶縁性、耐熱性あるいは無機バンク13との密着性を有することが好ましい。発光層等の機能層の形成にインクジェット法等の液滴吐出法を用いる場合は、撥液性あるいはインク溶剤耐性を有するものであることが望まれる。バンクは、上述したような積層構造を有するものに特には限定されないが、例えば陽極12がITOからなる場合は、ITOとの密着性を上げるために、無機バンク13を備える方が好ましい。有機物バンク14の膜厚は発光層等の機能層の膜厚、吐出される液滴の量等を考慮して適宜選択されるが、本実施形態では1〜2μm程度としている。
【0061】
(陽極)
本実施形態では、陽極12は透明導電材料によって形成されているので、発光層60から発した光がガラス基板10側から取り出される、いわゆるボトムエミッション型有機EL装置として利用できる。透明導電材料としてはITOが好適であるが、これ以外にも、例えば、酸化インジウム・酸化亜鉛系アモルファス透明導電膜(Indium Zinc Oxide :IZO/アイ・ゼット・オー)(登録商標))(出光興産社製)等を用いることができる。なお、本実施形態ではITOを用いるものとする。
【0062】
なお、陽極12が透明電極である場合、下層にアルミニウム膜を配置することにより、発光層60で発した光が陰極70側から取り出される、いわゆるトップエミッション型有機EL装置を構成することができる。
【0063】
(正孔注入層)
正孔注入層40の形成材料としては、特に3,4−ポリエチレンジオシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)[商品名;バイトロン−p(Bytron-p):バイエル社製]の分散液、すなわち、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水やイソプロピルアルコール等の極性溶媒に溶解させたものが好適に用いられる。
【0064】
(バッファ層)
バッファ層70の形成においては、気体状材料を用いたプラズマ重合法を用いることが望ましい。これにより、緻密で耐久性の高い重合膜を形成することが可能である。
【0065】
上記のプラズマ重合法に用いる材料としては、所望の膜質等を考慮して適宜選択することができる。例えば、バッファ層70が極性の高いイオン等の化学種の浸透や拡散を抑制する場合は、バッファ層70を非極性とすることが好ましい。その場合、メタン、エチレン、あるいはエタン等の通常の炭化水素化合物をプラズマ重合の材料として用いることができる。
【0066】
また、キャリアや励起子の散逸等を抑制するのであれば、上記の炭化水素化合物の他、酸化ケイ素等の無機の絶縁物質の前駆体であるアルコキシシラン類等の絶縁膜の原料となる材料も用いることができる。
【0067】
バッファ層70上に塗布法で発光層等の機能膜を形成する場合は、バッファ層70の濡れ性も考慮することも可能である。強い撥液性の重合膜を形成する場合、炭素―フッ素結合を有する、例えば、CF4、CH48、C410、C24 及びC48等のフルオロカーボンを含むものをプラズマ重合の材料として用いることが望ましい。
【0068】
バッファ層70の平均の厚さは、例えば、図1のように示したように、正孔注入層40が発光層60と陽極12との間に配置された場合は、適切な積層方向における導電性を確保するために60Åよりも小さいことが好ましい。
【0069】
無機バンク13の一部が有機バンク14から陽極12のある方向に張り出しており、当該無機バンク13の一部が陽極12の一部を覆うように形成されているが、バッファ層70の一部は、当該無機バンク13の一部と重なるように形成されている。このような構成を採用することにより、正孔注入層40の端部における発光層60と正孔注入層40とを接触させないようにすることになり、発光層60の周辺部と中央部との間の輝度の差、すなわち輝度ムラを低減することができる。
【0070】
また、図1に示した本発明に係る第一例の有機EL装置は、発光層60構成する膜の周辺部において、当該陽極12の一部と重なる当該無機バンク13の一部と当該バッファ層70の一部との間に正孔注入層40を構成する膜の一部が挿入されている構造を有しているが、その挿入された膜の一部の膜厚が当該膜の中央部の膜厚より小さくなっており、かつ、その上方に当該バッファ層70の一部が配置されているため、当該膜の周辺部におけるキャリア集中が緩和され、長寿命化という効果も期待できる。
【0071】
上述のキャリア集中の緩和という効果は、例えば、電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層及び発光層等の有機EL素子を構成する他の機能層を、図1に示した構成において正孔注入層40と適宜に置換することにより同様な効果が期待できる。
【0072】
(発光層)
発光層60を形成するための材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料が適宜用いられる。また、本実施形態では、フルカラー表示を行うべく、その発光波長帯域が光の三原色にそれぞれ対応して形成されている。すなわち、発光波長帯域が赤色に対応した発光層60R、緑色に対応した発光層60G、及び青色に対応した発光層60Bの三つの発光層が、指定された階調レベルで発光することにより、有機EL装置が全体としてフルカラー表示を行う構成となっている。
【0073】
発光層60を形成するための材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料が適宜用いられる。
【0074】
発光層60の形成材料として特に限定はないが、例えば、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン、Ir(ppy)3等の低分子材料をドープして用いることもできる。
【0075】
なお、ここで、「高分子」とは、分子量が数百程度のいわゆる「低分子」よりも分子量の大きい重合体を意味し、上述の高分子材料には、一般に高分子と呼ばれる分子量10000以上の重合体の他に、分子量が10000以下のオリゴマーと呼ばれる低重合体が含まれる。
【0076】
なお、本実施形態では、赤色の発光層60Rの形成材料としてMEHPPV(ポリ(3−メトキシ 6−(3−エチルヘキシル)パラフェニレンビニレン)を、緑色の発光層60Gの形成材料としてポリジオクチルフルオレンとF8BT(ジオクチルフルオレンとベンゾチアジアゾールの交互共重合体)の混合溶液を、青色の発光層60Bの形成材料としてポリジオクチルフルオレンを用いている。また、これら発光層60R、発光層60G及び発光層60Bのそれぞれの膜厚については、寿命、輝度、あるいは色度等を考慮して適宜設定されるが、ここでは、駆動電圧を考慮して、60〜120nmに設定されている。
【0077】
(陰極)
陰極50は陰極の安定性、仕事関数あるいは光の透過率等を考慮して適宜選択される。ここでは、上述の発光層に用いる材料に適合するCa(カルシウム)を用いている。Caの仕事関数は2.9eVと小さく、発光層への電子注入が良好に行われる。しかし、酸化されやすく安定性に乏しいため、導電性を補う役割として、Ca表面をAl(アルミニウム)で覆う。さらに、発光特性を向上させるために、LiF(フッ化リチウム)をCaと発光層の界面に挿入する。この共通陰極50の厚さとしては、本実施例においては、LiFが2nm、Caが20nm、Alは200nmとした。また、特にトップエミッション型の有機EL装置とする場合には、十分に薄い補助陰極50を形成してこれに透光性を持たせることが可能であり、あるいは透光性を有するITO等の導電性材料を用いて陰極50を形成することも可能である。
【0078】
[有機EL装置の製造方法]
次に、図2を参照して、上述の本発明に係る第一の例の有機EL装置を製造する方法の一例を各工程の断面構造に沿って説明する。
【0079】
(正孔注入層の形成)
図2(A)に陽極12、薄膜トランジスタ(TFT)11等を含む基体の一部の断面図を示す。正孔注入層をインクジェット塗布する前に、プラズマ処理により無機バンク13及び有機バンク14をそれぞれ親インク化及び撥インク化する。プラズマ処理の条件は、大気圧下で、パワー300W 、電極−基板間距離1mm、酸素プラズマ処理では、酸素ガス流量100m/min、ヘリウムガス流量10l/min、テーブル搬送速度10mm/sで行い、続けてCF4プラズマ処理では、CF4ガス流量100ml/min、ヘリウムガス流量10l/min、テーブル搬送速度3mm/sの往復で行う。
【0080】
図2(B)において、正孔注入層40の材料としてPEDOT/PSSを用い、極性溶剤であるイソプロピルアルコール,N−メチルピロリドン,1,3−ジメチルー2−イミダゾリジノンで分散させたインク組成物を調製し、インクジェット法により吐出、塗布する。
【0081】
次に、真空中(1torr(133.3Pa))、室温、20分という条件でインク組成物に含まれる溶媒を除去し、その後、窒素中、200℃(ホットプレート上)、10分の熱処理を行う。この方法により、膜厚の均一な第1の正孔注入層40を形成する。
【0082】
(バッファ層の形成)
次に、図2(C)に示したように、正孔注入層40の上にバッファ層70を形成する。このバッファ層形成工程では、気体状材料を原料とするプラズマ重合法が用いられる。ここでは、プラズマ重合法に用いる原料としては、CHF3を用いた。
【0083】
まず、チャンバー内を9×10-5Torr以下にした。その後、ガス流量50sccm、ガス圧力0.2Torr、プラズマ放電周波数13.56MHz、放電出力25Wの条件において、約80Å/minの速度で重合膜が形成された。
【0084】
(発光層の形成)
次いで、図2(D)に示すように、発光層形成工程による発光層60の形成を行う。この発光層形成工程では、液滴吐出法であるインクジェット法が好適に採用される。すなわち、インクジェット法により、発光層形成材料を陽極バッファ層70上に吐出し、その後、乾燥処理および熱処理を行うことにより、発光層60を形成する。この発光層60の形成は、赤、緑、及び青のそれぞれの画素に対応したバッファ層70上にインクジェット法により選択的に塗布することにより行う。なお、インクジェット法において、吐出量や吐出回数等を最適化することにより、発光層60R、発光層60G、及び発光層60Bのそれぞれの所望の膜特性を適宜調整することが可能である。
【0085】
(陰極の形成)
次いで、図2(E)に示すように、陰極50を形成する。ここで、陰極50はLiF、Ca及びAlを積層して形成される。陰極50の形成には真空蒸着法が用いられる。
【0086】
その後、陰極50の上面全体をエポキシ樹脂系接着剤で覆い封止を行い、本実施形態の有機EL装置が形成される。
【0087】
[本発明に係る第二例の有機EL装置]
図3は、本発明に係る第二例の有機EL装置の断面図を示したものである。
【0088】
上述の第一例の有機EL装置と第二例の有機EL装置との主な相違点は、上述の第一例有機EL装置においては、陽極12の上方において、バッファ層70は発光層60と正孔注入層40との間に配置されているのに対して、第二例の有機EL装置においては、陽極12の上方において、バッファ層70は陽極12及び発光層60の両方と接触している点である。それ以外の構成要素については、上述の第一例の有機EL装置の説明において述べた構成材料、出発原料及びプロセス条件等が採用可能である。
【0089】
図3に示した本発明に係る第二例の有機EL装置におけるバッファ層70の膜厚は、陽極12とバッファ層70とが接触している等の理由により図1に示した第一例の有機EL装置におけるバッファ層70の膜厚より大きくすることが可能である。
【0090】
具体的には、第二例の有機EL装置におけるバッファ層70の膜厚は、適度な有機EL素子の積層方向における導電性を確保するためには、200Å程度であってもよい。
【0091】
陽極の表面の平均粗さ(Ra)が、15Å以上である場合において、バッファ層70の平均の厚さが、15Åより大きく200Åより小さければ、陽極12は、発光層60との直接のコンタクトが回避され、有機EL素子の駆動安定性の向上や発光層60を構成する膜の部部位による輝度の差を低減等が期待できる。
【0092】
また、無機バンク13の一部が有機バンク14から陽極12のある方向に張り出しており、当該無機バンク13の一部が陽極12の一部を覆うように形成されているが、バッファ層70の一部は、当該無機バンク13の一部と重なるように形成されている。このような構成を採用することにより、陽極12の端部における発光層60と陽極12とを接触させないようにすることになり、発光層60を構成する膜の周辺部と中央部との間の輝度の差、すなわち輝度ムラを低減することができる。
【0093】
上述の本発明に係る第二の例の有機EL装置を製造する方法と、図2に示した有機EL装置を製造する方法との主な相違点は、陽極12上に直接バッファ層70を形成するという点である。
【0094】
具体的には陽極12の表面を酸素プラズマ処理を行うことにより、陽極12とバッファ層70との密着性が向上する。次に、図2に示した有機EL装置を製造する方法において述べたバッファ層70を形成するための出発原料を用いたプラズマ重合を行うことにより、バッファ層70が形成される。
【0095】
それ以外の工程については、図2に示した有機EL装置を製造する方法において述べた構成材料、出発原料及びプロセス条件等が採用可能である。
【0096】
[電子機器]
次に、本発明に係る電子機器について、図4を用いて説明する。図4は、本実施形態の有機EL装置を備えた携帯電話の斜視図である。図3において符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は表示部を示している。この携帯電話1000は、本実施形態の有機EL装置からなる表示部1001を備えているので、良好な表示特性を発揮することができる。
【0097】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0098】
[実施例]
次に、本発明に係る実施例について説明する。
【0099】
(実施例1)
ガラス基板の上面にITOからなる画素電極を形成し、その上面に正孔注入層としてPEDOT/PSSを塗布法により600Å成膜した。
【0100】
その上面に、バッファ層として、CHF3ガスを用い、ガス流量50sccm、ガス圧力0.2Torr、プラズマ放電周波数13.56MHz、放電出力25Wの条件において重合膜を30Å形成した。
【0101】
その上面にポリジオクチルフルオレンとF8BT(ジオクチルフルオレンとベンゾチアジアゾールの交互共重合体)の混合溶液を用いて発光層を形成した。
【0102】
その発光層の上面に、陰極となるLiF40Å、Caを50Å、Alを2000Å真空蒸着法により成膜した。
【0103】
その後、封止基板により全体を封止した。
【0104】
このように形成した有機EL装置において、陽極と陰極との間に直流電圧を印加し、発光層からの発光の輝度、電流を測定した。図5中の実線は、輝度―電圧特性を示す。そして、図6中の実線は、所定の輝度に設定した時の電流値を一定に保った状態での、時間に対する輝度の変化を示す。また、図7中の実線は、時間に対する電圧の変化を示す。ここで、相対輝度とは、初期輝度に対するある時間での輝度の比率である。
【0105】
(実施例2)
ガラス基板の上面にITOからなる画素電極を形成し、その上面に正孔注入層としてPEDOT/PSSを塗布法により600Å成膜した。
【0106】
その上面に、バッファ層として、CHF3ガスを用い、ガス流量50sccm、ガス圧力0.2Torr、プラズマ放電周波数13.56MHz、放電出力25Wの条件において重合膜を60Å形成した。
【0107】
その上面にポリジオクチルフルオレンとF8BT(ジオクチルフルオレンとベンゾチアジアゾールの交互共重合体)の混合溶液を用いて発光層を形成した。
【0108】
その発光層の上面に、陰極となるLiF40Å、Caを50Å、Alを2000Å真空蒸着法により成膜した。
【0109】
その後、封止基板により全体を封止した。
【0110】
このように形成した有機EL装置において、陽極と陰極とのの間に直流電圧を印加し、発光層からの発光の輝度、電流を測定した。図5中の破線は、輝度―電圧特性を示す。そして、図6中の破線は、実施例1と同じ所定の輝度に設定した時の電流値を一定に保った状態での、時間に対する輝度の変化を示す。また、図7中の破線は、時間に対する電圧の変化を示す。
【0111】
(比較例1)
ガラス基板の上面にITOからなる画素電極を形成し、その上面に正孔注入層としてPEDOT/PSSを塗布法により600Å成膜した。
【0112】
その上面にポリジオクチルフルオレンとF8BT(ジオクチルフルオレンとベンゾチアジアゾールの交互共重合体)の混合溶液を用いて発光層を形成した。
【0113】
その発光層の上面に、陰極となるLiF40Å、Caを50Å、Alを2000Å真空蒸着法により成膜した。
【0114】
その後、封止基板により全体を封止した。
【0115】
このように形成した有機EL装置において、陽極と陰極との間に直流電圧を印加し、発光層からの発光の輝度、電流を測定した。図5中の点線は、輝度―電圧特性を示す。そして、図6中の点線は、実施例1と同じ所定の輝度に設定した時の電流値を一定に保った状態での、時間に対する輝度の変化を示す。また、図7中の点線は、時間に対する電圧の変化を示す。
【0116】
(実施例3)
○バッファ層の調整
ガラス基板を用いて、バッファ層調製を行った。ガラス基板の表面に酸素プラズマ処理を施した。その後、バッファ層を形成した。バッファ層はプラズマ重合法を用いて形成した。重合膜形成は、平行平板型リアクターが搭載されたチャンバー内で行い、CHF3ガスを使用した。まず、チャンバー内を9×10-5Torr以下にした。その後、ガス流量50sccm、ガス圧力0.2Torr、プラズマ放電周波数13.56MHz、放電出力25Wの条件において、約80Å/minの速度で重合膜が形成された。
【0117】
形成した重合膜を、XPS(X線光電子分光法)を用いて分析を行ったところ、C1sにスペクトルからは、不純物に起因するスペクトルは検出されず、CF3、CF2、CF、C−CF、CHに由来するスペクトルが検出された。
【0118】
次いで、ITO基板上に重合膜を形成した。ITO基板とは、ガラス上面にITOからなる陽極を形成された基板である。この基板の表面に酸素プラズマ処理を施した。ITO表面に10Å、100Å、500Åの膜厚で形成した高分子重合膜と、高分子重合膜を形成していないITOの表面状態を、AFMを用いて観測した。その結果、ITO表面の平均面粗さ(Ra)が17.5Åであり、高分子重合膜を10Å、100Å、500Å形成したもののRaはそれぞれ、17.4Å、16.5Å、13.1Åであった。高分子重合膜が10Åの場合は、ITO表面のRaに比べほとんど変化がないが、100Å、500Åと厚くなるに従い、Raが小さくなっていた。
【0119】
○バッファ層の導電性
上述と同様の方法により、ITO基板上にCHF3ガスを用いた重合膜を100Å、500Å形成した。その上面に、真空蒸着法によりAlを2000Å形成した。
【0120】
このように形成した素子において、陽極と陰極との間に直流電圧を印加した。その際の素子に流れる電流値を測定した。
【0121】
重合膜が500Åと厚い場合には、電流値は測定装置における測定限界以下であり、4V印加時の電流密度に換算すると、1×10‐5mA/cm2以下であった。一方、重合膜が100Åの場合においては、4V印加時の電流密度は1.5×102mA/cm2であった。
【0122】
上述と同様の方法により、ITO基板上にCHF3ガスを用いた重合膜を100Å形成した。
【0123】
その上面にポリジオクチルフルオレンとF8BT(ジオクチルフルオレンとベンゾチアジアゾールの交互共重合体)の混合溶液を用いて発光層を形成した。
【0124】
その発光層の上面に、陰極となるLiF40Å、Caを50Å、Alを2000Å真空蒸着法により成膜した。
【0125】
その後、封止基板により全体を封止した。このように形成した有機EL装置において、陽極と陰極との間に直流電圧を印加し、発光層からの発光の輝度、電流を測定した。図8中の実線は、所定の輝度に設定した時の電流値を一定に保った状態での、時間に対する輝度の変化を示す。また、図9中の実線は、時間に対する電圧の変化を示す。ここで、相対輝度とは、初期輝度に対するある時間での輝度の比率であり、相対電圧とは、初期電圧に対するある時間での電圧である。
【0126】
(実施例4)
実施例3と同様に、ITO基板上にCHF3ガスを用いた重合膜を10Å形成した。
【0127】
実施例3と同様に発光層までを形成した。
【0128】
その上面にポリジオクチルフルオレンとF8BT(ジオクチルフルオレンとベンゾチアジアゾールの交互共重合体)の混合溶液を用いて発光層を形成した。
【0129】
その発光層の上面に、陰極となるCaを200Å、Alを2000Å真空蒸着法により成膜した。
【0130】
その後、封止基板により全体を封止した。
【0131】
このように形成した有機EL装置において、陽極と陰極との間に直流電圧を印加し、発光層からの発光の輝度、電流を測定した。図8中の破線は、実施例1と同じ所定の輝度に設定した時の電流値を一定に保った状態での、時間に対する輝度の変化を示す。また、図9中の破線は、時間に対する電圧の変化を示す。
【0132】
(比較例2)
ITO基板表面に酸素プラズマ処理を施した。
【0133】
その上面にポリジオクチルフルオレンとF8BT(ジオクチルフルオレンとベンゾチアジアゾールの交互共重合体)の混合溶液を用いて発光層を形成した。
【0134】
その発光層の上面に、陰極となるLiF40Å、Caを50Å、Alを2000Å真空蒸着法により成膜した。
【0135】
その後、封止基板により全体を封止した。
【0136】
このように形成した有機EL装置において、陽極と陰極との間に直流電圧を印加し、発光層からの発光の輝度、電流を測定した。図8中の点線は、実施例1と同じ所定の輝度に設定した時の電流値を一定に保った状態での、時間に対する輝度の変化を示す。また、図9中の点線は、時間に対する電圧の変化を示す。
【0137】
(比較例3)
ITO基板表面に酸素プラズマ処理を施した。その上にPEDOT/PSS分散液[商品名;バイトロン−p(Bytron-p):バイエル社製]を塗布法により600Å成膜した。
【0138】
その上面にポリジオクチルフルオレンとF8BT(ジオクチルフルオレンとベンゾチアジアゾールの交互共重合体)の混合溶液を用いて発光層を形成した。
【0139】
その発光層の上面に、陰極となるLiF40Å、Caを50Å、Alを2000Å真空蒸着法により成膜した。
【0140】
その後、封止基板により全体を封止した。
【0141】
このように形成した有機EL装置において、陽極と陰極との間に直流電圧を印加し、発光層からの発光の輝度、電流を測定した。図8中の点破線は、実施例1と同じ所定の輝度に設定した時の電流値を一定に保った状態での、時間に対する輝度の変化を示す。また、図9中の点破線は、時間に対する電圧の変化を示す。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明に係る第一例の有機EL装置を説明する断面図である。
【図2】図1の有機EL表示装置の製造工程を説明するための断面図である。
【図3】本発明に係る第二例の有機EL装置を説明する断面図である。
【図4】本実施形態の有機EL装置を備えた携帯電話の斜視図である。
【図5】実施例1と実施例2、比較例1における輝度―電圧特性である。
【図6】実施例1と実施例2、比較例1における時間に対する輝度の変化である。
【図7】実施例1と実施例2、比較例1における時間に対する電圧の変化である。
【図8】実施例3、実施例4、比較例2及び比較例3における時間に対する輝度の変化である。
【図9】実施例3、実施例4、比較例2及び比較例3における時間に対する電圧の変化である。
【符号の説明】
【0143】
12陽極 40正孔注入層 50陰極 60発光層 70陽極バッファ層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の上方に配置された第1の電極と第2の電極との間に、少なくとも発光層を備えた有機EL装置の製造方法であって、
前記発光層が液体状態から形成され、
前記第1の電極の上方にバッファ層を形成する第1の工程を含み、
前記第1の工程において、前記バッファ層の少なくとも一部をプラズマ重合法により形成すること、
を特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の有機EL装置の製造方法において、
前記プラズマ重合法において、フッ素を含有する材料を用いること、
を特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2の有機EL装置の製造方法において、
前記材料はフルオロカーボンを含むこと、
を特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の有機EL装置の製造方法において、
さらに前記第1の電極上に正孔注入層を形成する第2の工程を含み、
前記第2の工程を行った後に、前記第1の工程を行うこと、
を特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の有機EL装置の製造方法において、
前記正孔注入層は前記バッファ層に接触すること、
を特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載の前記正孔注入層は、エチレンジオキシチオフェンを含む高分子化合物であることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項7】
請求項4に記載の前記正孔注入層は、PEDOT/PSSであることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれかに記載の有機EL装置の製造方法において、
前記発光層は、前記基体の上方に配置され、
前記発光層を区画するバンクが設けられ、
前記バッファ層は前記バンクの上方にも設けられていること、
を特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の有機EL装置の製造方法において、
前記第1の工程において、前記バッファ層を前記第1の電極に接触するように形成し、
前記第1の電極の表面の平均粗さ(Ra)が、15Å以上である場合において、前記バッファ層の平均の厚さが、15Åより大きく200Åより小さいこと、
を特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の有機EL装置の製造方法において、
前記バッファ層の平均の厚さが200Å以下であること、
を特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項11】
請求項4に記載の有機EL装置の製造方法において、
前記バッファ層の平均の厚さが60Å以下であること、
を特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至3のいずれかに記載の有機EL装置の製造方法において、
前記バッファ層は、前記第2の電極に接触すること、
を特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項13】
請求項8に記載の有機EL装置の製造方法において、
さらに、前記バッファ層上に前記第2の電極を形成する第3の工程を含み、
前記バッファ層と前記第2の電極は接触すること、
を特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項14】
請求項12乃至13のいずれかに記載の有機EL装置の製造方法において、
前記バッファ層の平均の厚さが30Å以下であること、
を特徴とする有機EL装置の製造方法
【請求項15】
請求項4又は5に記載の有機EL装置の製造方法において、
前記バッファ層は、前記正孔注入層を完全に覆うこと、
を特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項16】
請求項8に記載の有機EL装置の製造方法において、
前記バンクを構成する第1の膜は、前記第1の電極の一部を覆っており、
前記第1の膜の、少なくとも一部は前記バッファ層の一部と重なっていること、
を特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の有機EL装置の製造方法において、
前記第1の膜は、無機材料から構成されていること、
を特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項18】
基体の上方に配置された第1の電極と、
前記基体の上方に配置された第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された発光層と、
前記発光層と前記第1の電極との間に配置された絶縁膜と、を含むこと、
を特徴とする有機EL装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−310282(P2006−310282A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88286(P2006−88286)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】