説明

木質材料の製造方法

【課題】木質材料の製造方法を提供する。
【解決手段】a)木質パーツを、
a1)アルカリ性バインダー、および
a2)チアクロプリドと
接触させる工程と、
b)工程a)に従い処理した木質パーツを含む木質パーツ床を、加圧下、126℃〜240℃のプレス接触表面温度でプレスする工程と
を含む、木質パーツ含む木質材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質材料を製造する方法、木質材料を昆虫から保護するためのチアクロプリドの使用、および対応の木質材料自体に関する。
【背景技術】
【0002】
無垢の木を保護するのにも好適なすべての防腐剤は、主に、木質材料の保護に好適である。防腐剤の適用は、製造前処理、製造中処理または製造後処理で行うことができる。
【0003】
製造前処理および製造中処理による処理中、アルカリ性物質(例えば、フェノール接着剤の場合には、pH11〜13)の存在下、温度は200℃に達する可能性がある。これらのプロセス条件は、防腐剤に影響を及ぼし、防腐剤の分解を招く恐れがある。アルカリ媒体中では、特に高温において、多くの殺虫剤が直ちに分解する。
【0004】
許容できる毒性プロフィールとの組み合わせにおいて高効率を示す代替の殺虫剤を追求していくと、チアクロプリドの名前が挙がるかもしれない。しかしながら、チアクロプリドの特性プロフィールでは、アルカリ性条件下、製造中または製造前処理ができない。
【0005】
これらの特性の試験によれば、例えば、チアクロプリドは、pH13.7のNaOH溶液中、僅か15分後に75℃で完全に分解した(実施例1参照)。
【0006】
同様のクラスの浸透性殺虫剤、すなわちイミダクロプリドについて、その使用が、製造前または製造中の適用に関して(特許文献1)に記載されているが、プレスの接触表面が中温から125℃までだけである(実施例参照)。
【0007】
しかしながら、木質材料の1つのクラスである、いわゆる配向性ストランドボード(OSB)の製造については特に、これらの条件では不十分である。木質材料を、昆虫による攻撃および/または分解から保護するための代替となる方策が検討された。その方策は、かかる激しい条件にも好適である。
【0008】
このように、例えば、OSBを製造するためにチップマットをプレスする間、プレスツールとの接触表面の温度は200℃に達し、この温度は、例えば、合板の外側板には吸収されず、活性物質に直接作用する。(特許文献1)の他の実施例には、イミダクロプリドを、例えばpH中性ユリア接着剤と共に使用することが記載されているが(実施例5参照)、それは活性物質に対する大きなストレスの原因となるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第1998/18328号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
意外にも、本発明による木材防腐剤を、アルカリ系接着剤の存在下での製造プロセス中、非常に高い温度に曝される木質材料に組み込むと、極めて有効なシロアリからの保護が達成されることが知見された。シロアリ耐性は、特に190〜200℃まで加熱されたプレスツールと直接接触した木質材料の表面で検出可能であった。
【0011】
従って、本発明は、木質パーツ含む木質材料の製造プロセスに関し、該プロセスは、
a)木質パーツを、
a1)アルカリ性バインダー、および
a2)チアクロプリド
と接触させる工程と、
b)工程a)に従い処理した木質パーツを含む木質パーツ床を、加圧下、126℃〜240℃のプレス接触表面温度でプレスする工程と
を含む。
【0012】
本発明によるプロセスは、配向ストランドボード(OSB、長くて細い配向チップを含む木質材料)、積層木材(接着剤ジョイント部で中断された表面を有するベニヤ層またはベニヤ部分を含む木質材料)、繊維板(繊維状木材粒子を含む木質材料)、またはチップボード(短いチップを含む木質材料)の製造に特に好適である。
【0013】
好ましい木質材料は、OSB、チップボードおよび繊維板である。
【0014】
木質材料の製造の基礎として、異なる木質パーツが好適である。
【0015】
プロセスの工程a)で好ましく用いられる木質パーツは、
−好ましくは厚さが0.5〜5mm、長さが50〜400cmの木質ベニヤ層および/または部分、
−好ましくは幅が10〜15mm、厚さが0.6〜0.8mm、長さが5〜20cmの、特にOSB用の、木質チップ、
−長さが0.4〜15mmの木質チップ、
−長さが0.4〜6mmの繊維
である。
【0016】
好適なアルカリ性バインダーa1)は固体または液体バインダーであり、好ましくは、特に、バインダー含量が10〜60重量%、好ましくは35〜50重量%の水性形態である、水溶液またはエマルジョンである。特に、35〜50重量%強度の水溶液の形態で、pHが10〜13.5であるものが好ましく用いられる。
【0017】
アルカリ性フェノールバインダー(PF)および/またはフェノール−ユリア−ホルムアルデヒドバインダー(PUF)が好ましい。
【0018】
アルカリ性バインダーは、水溶液として木質パーツに適用されるのが好ましい。溶液中に存在するフェノールバインダーは、好ましくは、オリゴマー〜ポリマー鎖を含む。さらに、好ましくは、溶液として用いられるバインダーは、特に、1〜13重量%のアルカリ性化合物、特に、水酸化ナトリウムを含む。
【0019】
非アルカリ性バインダーの同時使用も可能である。例えば、好適なのは、ポリメチレンジイソシアネート(PMDI)、ユリア接着剤(UF)、メラミン強化ユリア接着剤(mUF)、メラミン接着剤(MF)、メラミン−ユリア−ホルムアルデヒド接着剤(MUF)、メラミン−ユリア−フェノール−ホルムアルデヒド接着剤(MUPF)、レゾルシノール−ホルムアルデヒド接着剤(RF)、ポリ酢酸ビニル接着剤(PVAc)である。
【0020】
特に、OSBの場合には、プレスに用いる木質パーツ床またはマットは、一般的に、粗く、同様に処理された木質パーツを含む上下層(外側層)を含み、細かい木質パーツを任意で含む少なくとも1つの中間層を囲んでいる。中間層も、好ましくは、非アルカリ性バインダーまたは非フェノールバインダー、例えば、PMDIバインダーを含むことができる。
【0021】
大容量のドラムを、木質パーツ(OSBについては、ストランドとも呼ばれる)を接着するのに用いるのが好ましい。
【0022】
用いる接着剤および化学物質の量は、ボード品質、ボード厚さおよび接着剤適用の方法に従って変わる。OSB製造の場合には、異なる接着剤タイプを、外側および中間層に用いることができる。好ましくは、フェノールバインダー(PF)、フェノール−ユリア−ホルムアルデヒドバインダー(PUF)、MUPF(メラミン−ユリア−フェノール−ホルムアルデヒド)またはMUF(メラミン−ユリア−ホルムアルデヒド)バインダーを外側層に、PMDI(ポリメチレンジイソシアネート)バインダーを中間層に用いる。
【0023】
木質パーツを、アルカリ性バインダーと別々か、あるいは一緒に、下式の殺虫剤であるチアクロプリドと接触させる。
【化1】

添加の順番は重要でない。好ましくは、チアクロプリドは、0.2〜10重量%、特に、0.2〜2重量%の活性物質を有する水溶液として木質パーツに適用される。チアクロプリドをバインダーと混合することもできる。
【0024】
接着ボンディングおよび木質材料の処理性に影響を与えるエクステンダおよびフィラー、撥水剤、防炎剤、難燃剤および染料、同様に、殺生剤、例えば、殺虫剤および/または殺菌剤を用いることもできる。その適用は、アルカリ性バインダーまたは殺虫剤の適用と同じやり方で行うことができる。エクステンダおよびフィラーとしては、シリアルやリグノセルロース系材料の有機粉末(organic meals)または無機粉末(inorganic meals)が例示される。油および/またはワックス、例えば、固体形態または分散剤としてのパラフィンが、撥水剤の一般例である。防炎剤および難燃剤としては、例えば、ホウ酸、水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸モノ−およびジアンモニウムが例示される。
【0025】
アルカリ性バインダー以外のバインダーも、木質パーツを、任意で付随して用いる中間層のために、接触させるのに用いることができる。しかしながら、同じ防腐剤(殺虫剤)を用いるのが好ましい。
【0026】
以下の成分を用いるのが好ましい。
それぞれ完成木質材料を基準として、
85〜97重量%の木質パーツ、
2〜10重量%のアルカリ性バインダー、
0〜10重量%の非アルカリ性バインダー、
0.0002〜0.02重量%のチアクロプリド、
0〜2重量%の撥水剤。
【0027】
木質パーツを添加剤で処理した後、一般的に、木質パーツ床を散布すると、木質パーツを含むマットが得られる。OSBの場合には、これは、ストランドの最適な配列がなされるため特に好ましい。工程a)に従って処理されたストランドは、散布機ホッパーから、好ましくは適用および分配ロールを介して、配向装置を備えた散布ヘッドに送られる。製造方向における外側層の配向は、ディスク配向装置によりなされるのが好ましく、中間層の配向は、区分化されたロールにより、横方向になされるのが好ましい。散布されたマットの重量と、中間層に対する外側層の比率との両方共、秤りにより制御することができる。連続プレスの使用により、マットは、循環するテキスタイルベルト上に好ましくは散布される。このベルトから、マットを、プレスの鋼ベルトに移すことができる。多段プレスの使用により、マットを、プレスの加熱板長さに適合する循環スクリーンセクション上に散布することができる。遷移領域においてマットを横方向に切断することにより、それらをプレスの装填装置に別個に導入することができる。連続可動手段によるマットの側部トリミングにより、異なる板幅を製造することができる。
【0028】
本発明によるプロセスの工程b)において、バインダーを、圧力および温度を作用させて、プレス内で硬化し、マットを所定の厚さまでプレスする。
【0029】
主に2つのプレスタイプが、OSB製造では用いられる。多段プレスと連続プレスである。
【0030】
プレス中の好ましい圧力は、一般的に、100〜500N/cmである。好ましい温度は、126〜210℃、特に、150〜200℃である。
【0031】
プレスにおける滞留時間は、一般的に、木質材料厚さ(板厚さ)1mm当たり4〜15秒である。
【0032】
本発明は、木質パーツを含む木質材料を、昆虫、特に、シロアリによる攻撃および/または分解から保護するためのチアクロプリドの使用にさらに関し、木質材料が、アルカリ性バインダーを含むことを特徴とする。他の点については、上述の好ましい範囲が適用可能である。
【0033】
本発明は、少なくとも1種のアルカリ性バインダーとチアクロプリドとを含む木質パーツを含む、木質パーツを含む木質材料にさらに関する。
【0034】
意外なことに、木質材料のシロアリに対する高い安定性が、結果として、見出された。
【実施例】
【0035】
実施例1
チアクロプリドの熱不安定性の調査
5gのNaOHを、250mlの蒸留水(pH13.7)に溶解し、100mgの活性物質を添加した。攪拌を、15分間、異なる温度で行った。混合物を塩化メチレンで2回抽出し、中和し、蒸発させた。残渣を秤量し、NMR、GC、GC−MSまたはHPLCにより分析した。
【0036】
チアクロプリドは、35℃の温度で安定で、75℃の温度で100%分解された。
【0037】
実施例2
スクリーニングにより<6mmの細粒分を除去したパイン材チップ(OSB製造用ストランド)の外側層を、フェノール−ホルムアルデヒド接着剤(PF、Georgia Pacific製、タイプGP155C42、pH約11〜13)で、中間層を、ポリメチレンジイソシアネート接着剤(PMDI、Bayer製、タイプDesmodur1520A20)で湿らせた。それぞれ処理した外側および中間層チップを、0.5%のチアクロプリドを含む水溶液で、そして、最終的に、それぞれ、ワックスエマルジョン(Sasolwax Hydrowax730)で湿らせた。それぞれ、適用は、チップミキサーにおいて、噴霧機(回転ディスクシステム)を用いて行った。アルカリ性バインダーの量は、完成OSBボードにおいて、4.5%のPF(または2.5%のPMDI)固体樹脂質量分率であった。これは、PF接着剤については、用いるチップを基準として、約10%の質量分率に相当する。チアクロプリドを含む水溶液を、完成OSBボードの2000ml/mに用いた。650kg/mの密度だと、完成OSBボードを基準として、0.00153%のチアクロプリドに相当する。ワックスの割合は、OSBボードを基準として、0.8質量%であった。
【0038】
製造されたOSB木質複合体は、外側層は60%のPF接着剤コートチップから、そして中間層は40%のPMDI接着剤コートチップから、500N/cmのプレスで、そしてプレスプレート温度190〜200℃で製造された。
【0039】
完成ボードの密度は、650〜680kg/m、厚さは11〜12mmであった。加熱時間因子は、12s/mmであった(すなわち、圧力を加えた後、ボード表面を、加熱したプレスプレートと、約12s/mm×12mm=244秒にわたって直接接触させた)。
【0040】
OSBボードのサンプルに対し、EN117(シロアリ種Reticulitermes santonensisについての強制的試験におけるシロアリ耐性)と同様の試験を行った。8週間後の表面の検査により評価を行った。試験試料で測定可能な摂食の痕跡は見つからなかったが、チアクロプリドを添加していない複合体OSB材料では攻撃の後が顕著であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質パーツ含む木質材料の製造方法であって、
a)木質パーツを、
a1)アルカリ性バインダー、および
a2)チアクロプリド
と接触させる工程と、
b)工程a)に従い処理した木質パーツを含む木質パーツ床を、加圧下、126℃〜240℃のプレス接触表面温度でプレスする工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記木質材料が、配向ストランドボード(OSB)、積層木材、チップボードまたは繊維板であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)で用いる前記木質パーツが、
−好ましくは厚さが0.5〜5mm、長さが50〜400cmの木質ベニヤ層、
−好ましくは幅が10〜15mm、厚さが0.6〜0.8mm、長さが5〜20cmの木質チップ、
−長さが0.4〜15mmの木質チップ、
−長さが0.4〜6mmの繊維
であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アルカリ性バインダーが、フェノール−ホルムアルデヒドおよび/またはフェノール−ユリア−ホルムアルデヒドバインダーであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
いずれも完成木質材料を基準として、
85〜97重量%の木質パーツ、
2〜10重量%のアルカリ性バインダー、
0.0002〜0.02重量%のチアクロプリド、
0.4〜2重量%の撥水剤
の成分が用いられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程b)が、100〜500N/cmの圧力で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種のアルカリ性バインダーとチアクロプリドを含む木質パーツとを含む、木質パーツを含む木質材料。
【請求項8】
木質パーツを含む木質材料を、昆虫による攻撃および/または分解から保護するためのチアクロプリドの使用であって、前記木質材料が、アルカリ性バインダーを含むことを特徴とする使用。

【公開番号】特開2009−279934(P2009−279934A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−113635(P2009−113635)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】