説明

木質様成形品の製造方法

【課題】樹脂との馴染みを良好とし、かつ、吸水率を低下させて、長期に渡る寸法変化や変形・割れ等を防止することのできる木質様成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】木質廃材を粉砕することによって得られた木質廃材粉砕粉にアセチル化処理を行ってアセチル化木粉とし、樹脂廃材から得られ、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂と不純物とが混合されてなる廃材混合樹脂を20mm以下に粗粉砕して廃材混合樹脂粗粉砕物とする。その後、廃材混合樹脂粗粉砕物と、粉砕された熱可塑性樹脂と、アセチル化木粉とを混練・成形して第1木粉含有コンパウンドを製造する。そして、第1木粉含有コンパウンドを溶融して所要の形状に成形することによって木質様成形品を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂廃材から得られ熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂と不純物とが混合されてなる廃材混合樹脂と、木質廃材を粉砕して得られた木質廃材粉砕粉とを含む木質様成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、セルロース材を粉砕して得た粉砕粉と、樹脂等とを混合し、押出成形又は射出成形により所望形状に成形して、手触り感等の風合いも天然の木に近い木質様成形品を形成することが行われていた。そして、上述したセルロース材は、建築用木質部材の端材やおが屑を使用していたが、資源の有効利用や環境保護の観点から建築部材として、一度使用した建築パネル等を回収して、この回収した建築部材を粉砕して、再度、原料として使用することが望まれるようになった。
このような回収された建築パネル等の建築部材から得られた粉砕粉を原料として使用する木質様成形品の製造方法の一例として、例えば、建築部材から木質の回収木質部材と、樹脂からなる回収樹脂部材とを回収し、回収木質部材と回収樹脂部材とを混合する混合工程と、この混合工程において混合したものを粉砕して粉砕粉を形成する粉砕工程と、この粉砕工程により得られた粉砕粉を混練する混練工程と、この混練工程において混練したものを押出もしくは射出成形する成形工程とを備えた技術が知られている(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開平11−129223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術によって製造された木質様成形品は、その弱点として吸水(吸湿)による長期に渡る寸法変化や吸水条件の偏りからくる変形・割れ等がある。そのため、木粉を使用する以上避けられない特性として設計・施工し、対応しているのが現状である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、樹脂との馴染みを良好とし、かつ、吸水率を低下させて、長期に渡る寸法変化や変形・割れ等を防止することのできる木質様成形品の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、例えば、図1に示すように、樹脂廃材から得られ、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂と不純物とが混合されてなる廃材混合樹脂と、木質廃材を粉砕することによって得られた木質廃材粉砕粉とを含む木質様成形品の製造方法であって、
前記木質廃材粉砕粉にアセチル化処理を行ってアセチル化木粉とし、
前記廃材混合樹脂を20mm以下に粗粉砕して廃材混合樹脂粗粉砕物とし、
この廃材混合樹脂粗粉砕物と、粉砕された熱可塑性樹脂と、前記アセチル化木粉とを混練・成形して第1木粉含有コンパウンドを製造し、
この第1木粉含有コンパウンドを溶融して所要の形状に成形することを特徴とする。
【0005】
請求項1の発明によれば、木質廃材粉砕粉にアセチル化処理を行うことによって、木粉の原料となるセルロースの末端の水酸基がアセチル基に変換され、すなわち親水基から疎水基に変えられて、水の吸着を阻害することができる。そして、このようなアセチル化木粉と、廃材混合樹脂粗粉砕物と、熱可塑性樹脂とを混練・成形して第1木粉含有コンパウンドを製造し、この第1木粉含有コンパウンドを溶融して所要の形状に成形するので、吸水率の低い木質様成形品を製造することができる。その結果、吸水又は吸湿によって長期に渡る寸法変化や、吸水条件の偏りによる変形・割れ等を防止することができる。また、木質廃材粉砕粉によるアセチル化処理によって、水の吸着を阻害できるので、木粉と樹脂の馴染みが良くなり、強度面においても向上を図ることができる。
また、熱硬化性樹脂や不純物が混合された溶融しづらい廃材混合樹脂は、20mm以下に粗粉砕されて、廃材混合樹脂粗粉砕物とされたうえで、粉砕された熱可塑性樹脂と、アセチル化木粉とを、混練・成形して第1木粉含有コンパウンドを製造するが、この第1木粉含有コンパウンドは、廃材混合樹脂粗粉砕物、熱可塑性樹脂、アセチル化木粉のそれぞれが、混練の際に十分に脱水されて比重が小さくなって、均一に混合された成形物となる。このような第1木粉含有コンパウンドを溶融して所要の形状に成形することによって、容易に木質様成形品を得ることができる。
つまり、廃材混合樹脂粗粉砕物、熱可塑性樹脂、アセチル化木粉を直接成形しようとすると、これらがその比重差によって、成形機のホッパ内で分離して均一に混合できず、さらに、ホッパから粉塵放散されて含有量の変動が生じるので、成形不可となってしまうが、本発明では前記第1木粉含有コンパウンドを製造しておき、これを溶融して所要の形状に成形するので容易に木質様成形品を得ることができる。
このように、溶融しやすい熱可塑性樹脂や溶融しづらい熱硬化性樹脂、不純物とが混合されてなる廃材混合樹脂と、木質廃材とから容易に木質様成形品を製造することができるので、廃材混合樹脂と木質廃材とを再利用することができ、廃材の再利用率を向上させることができる。
【0006】
また、第1木粉含有コンパウンドは、例えば、樹脂、顔料、木粉からなる材料を融解し、多孔円形ノズルからひも状に押し出して切断して製造されたペレットに比して、製造する際に溶融に要する時間及びエネルギーが小さくて済む。
【0007】
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂と不純物とを含む廃材混合樹脂としては、例えば、容器包装リサイクル法によるプラスチックゴミを使用する。プラスチックゴミには、ペットボトル、人工大理石等の水酸化アルミニウムを含んだアクリル樹脂、ガラス繊維で補強された強化プラスチック(FRP)、ナイロン、さらに前記のような樹脂に紙や布、アルミ箔を含んだもの等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、飲料物を含む食品の容器や包装、トレイ等から得られる樹脂であって、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリエチレン樹脂(PE)、発泡塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。
木質廃材としては、例えば、住宅等の建物を解体した際に排出される木質廃材や家具を解体した際に排出される木質廃材、建物建築中に排出される木材の端材、おが屑等が挙げられる。
【0008】
請求項2の発明は、例えば、図2に示すように、樹脂廃材から得られ、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂と不純物とが混合されてなる廃材混合樹脂と、木質廃材を粉砕することによって得られた木質廃材粉砕粉とを含む木質様成形品の製造方法であって、
前記木質廃材粉砕粉にアセチル化処理を行ってアセチル化木粉とし、
前記廃材混合樹脂を20mm以下に粗粉砕して廃材混合樹脂粗粉砕物とし、
この廃材混合樹脂粗粉砕物を融着させて固形化して、廃材混合樹脂固形化物とし、
この廃材混合樹脂固形化物を粉砕して、固形化物粉砕粉とし、
この固形化物粉砕粉と、粉砕された熱可塑性樹脂と、前記アセチル化木粉とを混練・成形して第2木粉含有コンパウンドを製造し、
この第2木粉含有コンパウンドを溶融して所要の形状に成形することを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明によれば、木質廃材粉砕粉にアセチル化処理を行うことによって、木粉の原料となるセルロースの末端の水酸基がアセチル基に変換され、すなわち親水基から疎水基に変えられて、水の吸着を阻害することができる。そして、このようなアセチル化木粉と、固形化物粉砕粉と、熱可塑性樹脂とを混練・成形して第2木粉含有コンパウンドを製造し、この第2木粉含有コンパウンドを溶融して所要の形状に成形するので、吸水率の低い木質様成形品を製造することができる。その結果、吸水又は吸湿によって長期に渡る寸法変化や、吸水条件の偏りによる変形・割れ等を防止することができる。また、木質廃材粉砕粉によるアセチル化処理によって、水の吸着を阻害できるので、木粉と樹脂の馴染みが良くなり、強度面においても向上を図ることができる。
また、熱硬化性樹脂や不純物が混合された溶融しづらい廃材混合樹脂は、20mm以下に粗粉砕されて、次いで、融着させて固形化し、さらに粉砕して固形化物粉砕粉とされたうえで、粉砕された熱可塑性樹脂と、アセチル化木粉と混練・成形して第2木粉含有コンパウンドを製造するが、この第2木粉含有コンパウンドは、廃材混合樹脂粗粉砕物、熱可塑性樹脂、アセチル化木粉のそれぞれが、混練の際に十分に脱水されて比重が小さくなって、均一に混合された成形物となる。このような第2木粉含有コンパウンドを溶融して所要の形状に成形することによって、容易に木質様成形品を得ることができる。
つまり、廃材混合樹脂粗粉砕物、熱可塑性樹脂、アセチル化木粉を直接成形しようとすると、これらがその比重差によって、成形機のホッパ内で分離して均一に混合できず、さらに、ホッパから粉塵放散されて含有量の変動が生じるので、成形不可となってしまうが、本発明では前記第2木粉含有コンパウンドを製造しておき、これを溶融して所要の形状に成形するので容易に木質様成形品を得ることができる。
このように、溶融しやすい熱可塑性樹脂や溶融しづらい熱硬化性樹脂、不純物とが混合されてなる廃材混合樹脂と、木質廃材とから容易に木質様成形品を製造することができるので、廃材混合樹脂と木質廃材とを再利用することができ、廃材の再利用率を向上させることができる。
また、廃材混合樹脂は20mm以下に粗粉砕されて、次いで、融着させて固形化し、さらに粉砕して固形化物粉砕粉とされたうえで混練・成形して第2木粉含有コンパウンドを製造するので、請求項1に比して、熱硬化性樹脂、不純物、熱可塑性樹脂を分離することなくより均等に混合された状態とすることができ、成形性が良好となる。
【0010】
請求項3の発明は、樹脂廃材から得られ、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂と不純物とが混合されてなる廃材混合樹脂と、木質廃材を粉砕することによって得られた木質廃材粉砕粉とを含む木質様成形品の製造方法であって、
前記木質廃材粉砕粉にアセチル化処理を行ってアセチル化木粉とし、
前記廃材混合樹脂を20mm以下に粗粉砕して廃材混合樹脂粗粉砕物とし、
この廃材混合樹脂粗粉砕物と、粉砕された熱可塑性樹脂と、前記アセチル化木粉とを混練・成形して第1木粉含有コンパウンドを製造し、
一方、前記廃材混合樹脂を20mm以下に粗粉砕して廃材混合樹脂粗粉砕物とし、
この廃材混合樹脂粗粉砕物を融着させて固形化して、廃材混合樹脂固形化物とし、
この廃材混合樹脂固形化物を粉砕して、固形化物粉砕粉とし、
この固形化物粉砕粉と、粉砕された熱可塑性樹脂と、前記アセチル化木粉とを混練・成形して第2木粉含有コンパウンドを製造し、
前記第1木粉含有コンパウンドと第2木粉含有コンパウンドとを混合・溶融して所要の形状に成形することを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明によれば、木質廃材粉砕粉にアセチル化処理を行うことによって、木粉の原料となるセルロースの末端の水酸基がアセチル基に変換され、すなわち親水基から疎水基に変えられて、水の吸着を阻害することができる。そして、このようなアセチル化木粉を使用して、第1木粉含有コンパウンド及び第2木粉含有コンパウンドを製造し、第1木粉含有コンパウンドと第2木粉含有コンパウンドとを混合・溶融して所要の形状に成形するので、吸水率の低い木質様成形品を製造することができる。その結果、吸水又は吸湿によって長期に渡る寸法変化や、吸水条件の偏りによる変形・割れ等を防止することができる。また、木質廃材粉砕粉によるアセチル化処理によって、水の吸着を阻害できるので、木粉と樹脂の馴染みが良くなり、強度面においても向上を図ることができる。
また、第1木粉含有コンパウンドと第2コンパウンドとをそれぞれ製造するが、これら第1木粉含有コンパウンド及び第2木粉含有コンパウンドは、廃材混合樹脂粗粉砕物、熱可塑性樹脂、アセチル化木粉のそれぞれが、混練の際に十分に脱水されて比重が小さくなって、均一に混合された成形物となる。このような第1木粉含有コンパウンドと第2木粉含有コンパウンドとを混合・溶融して所要の形状に成形することによって、容易に木質様成形品を得ることができる。
つまり、廃材混合樹脂粗粉砕物、熱可塑性樹脂、アセチル化木粉を直接成形しようとすると、これらがその比重差によって、成形機のホッパ内で分離して均一に混合できず、さらに、ホッパから粉塵放散されて含有量の変動が生じるので、成形不可となってしまうが、本発明では前記第1木粉含有コンパウンドと第2木粉含有コンパウンドとを製造しておき、これを混合・溶融して所要の形状に成形するので容易に木質様成形品を得ることができる。
このように、溶融しやすい熱可塑性樹脂や溶融しづらい熱硬化性樹脂、不純物とが混合されてなる廃材混合樹脂と、木質廃材とから容易に木質様成形品を製造することができるので、廃材混合樹脂と木質廃材とを再利用することができ、廃材の再利用率を向上させることができる。
【0012】
請求項4の発明は、例えば、図3に示すように、樹脂廃材から得られ、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂と不純物とが混合されてなる廃材混合樹脂と、木質廃材を粉砕することによって得られた木質廃材粉砕粉とを含む木質様成形品の製造方法であって、
前記木質廃材粉砕粉にアセチル化処理を行ってアセチル化木粉とし、
前記廃材混合樹脂を1mm以下に粉砕して廃材混合樹脂粉砕物とし、
この廃材混合樹脂粉砕物と、粉砕された熱可塑性樹脂と、前記アセチル化木粉とを混練・溶融して所要の形状に成形することを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明によれば、木質廃材粉砕粉にアセチル化処理を行うことによって、木粉の原料となるセルロースの末端の水酸基がアセチル基に変換され、すなわち親水基から疎水基に変えられて、水の吸着を阻害することができる。そして、このようなアセチル化木粉と、廃材樹脂混合樹脂粉砕物と、熱可塑性樹脂とを混練・溶融して所用形状に成形するので、吸水率の低い木質様成形品を製造することができる。その結果、吸水又は吸湿によって長期に渡る寸法変化や、吸水条件の偏りによる変形・割れ等を防止することができる。また、木質廃材粉砕粉によるアセチル化処理によって、水の吸着を阻害できるので、木粉と樹脂の馴染みが良くなり、強度面においても向上を図ることができる。
また、廃材混合樹脂を1mm以下に粉砕したうえで、粉砕された熱可塑性樹脂と、前記アセチル化木粉と混練・溶融して所要の形状に成形するので、請求項1〜3に比して、前記廃材混合樹脂はより細かく粉砕されており、この粉砕された廃材混合樹脂粉砕物と熱可塑性樹脂とアセチル化木粉とは一層均等に混合された状態となる。
したがって、例えば、中空形状のある押出成形の場合、融解しなかったものが中子に引っかかる等の不具合を生じることなく、これら廃材混合樹脂と木質廃材粉砕粉とから容易に木質様成形品を製造することができる。
【0014】
請求項5の発明は、例えば、図4に示すように、樹脂廃材から得られ、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂と不純物とが混合されてなる廃材混合樹脂と、木質廃材を粉砕することによって得られた木質廃材粉砕粉とを含む木質様成形品の製造方法であって、
前記木質廃材粉砕粉にアセチル化処理を行ってアセチル化木粉とし、
前記廃材混合樹脂を20mm以下に粗粉砕して廃材混合樹脂粗粉砕物とし、
この廃材混合樹脂粗粉砕物を融着させて固形化して、廃材混合樹脂固形化物とし、
この廃材混合樹脂固形化物を1mm以下に粉砕して、固形化物粉砕粉とし、
この固形化物粉砕粉と、粉砕された熱可塑性樹脂と、前記アセチル化木粉とを混練・溶融して所要の形状に成形することを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明によれば、木質廃材粉砕粉にアセチル化処理を行うことによって、木粉の原料となるセルロースの末端の水酸基がアセチル基に変換され、すなわち親水基から疎水基に変えられて、水の吸着を阻害することができる。そして、このようなアセチル化木粉と、固形化物粉砕粉と、熱可塑性樹脂とを混練・溶融して所用形状に成形するので、吸水率の低い木質様成形品を製造することができる。その結果、吸水又は吸湿によって長期に渡る寸法変化や、吸水条件の偏りによる変形・割れ等を防止することができる。また、木質廃材粉砕粉によるアセチル化処理によって、水の吸着を阻害できるので、木粉と樹脂の馴染みが良くなり、強度面においても向上を図ることができる。
また、廃材混合樹脂固形化物を1mm以下に粉砕したうえで、粉砕された熱可塑性樹脂と、アセチル化木粉と混練・溶融して所要の形状に成形するので、請求項1〜3に比して、廃材混合樹脂はより細かく粉砕されており、この粉砕された廃材混合樹脂粉砕物と熱可塑性樹脂とアセチル化木粉とは一層均等に混合された状態となる。
したがって、例えば、中空形状のある押出成形の場合、融解しなかったものが中子に引っかかる等の不具合を生じることなく、これら廃材混合樹脂と木質廃材粉砕粉とから容易に木質様成形品を製造することができる。
また、廃材混合樹脂固形化物は、廃材混合樹脂を20mm以下に粗粉砕されて、次いで、融着させて固形化しているので、請求項4に比して、熱硬化性樹脂、不純物、熱可塑性樹脂を分離することなく均等に混合された状態とすることができ、成形性が良好となる。
【0016】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の木質様成形品の製造方法において、
成形品全体に対して、
前記廃材混合樹脂は、5〜20wt%、前記熱可塑性樹脂は25〜40wt%、前記アセチル化木粉は10〜55wt%それぞれ含まれていることを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明によれば、アセチル化木粉は成形品全体に対して、10〜55wt%含ませることによって、木質様成形品にアセチル化木粉を多く含むことが可能となるので、吸水率を低下させ、寸法変化や変形・割れ等を防止することができる。また、強度面での向上も図れ、本物の木材により近い手触りや風合いを出すことができる。また、廃材混合樹脂は5〜20wt%、熱可塑性樹脂は25〜40wt%含ませることによって、利用する廃材の量が多くなり廃材の再利用率を向上させることができる。
【0018】
ここで、アセチル化木粉を成形品全体に対して10〜55wt%含ませたのは、10wt%未満では吸水率が高くなり、寸法変化や変形・割れ等が生じ易く、強度の向上を図れないためである。また、本物の木材により近い手触り等の風合いを出すことも難しくなる。一方、55wt%を越えるとアセチル化木粉が過多となって木質様成形品の成形性が低下するためである。
また、廃材混合樹脂を成形品全体に対して5〜20wt%含ませたのは、5wt%未満では、廃材の再利用率を向上させることが難しく、20wt%を越えると溶融しづらい不純物や熱硬化性樹脂を多く含むので木質様成形品の成形性が低下するためである。
さらに、熱可塑性樹脂を成形品全体に対して25〜40wt%含ませたのは、25wt%未満では、熱可塑性樹脂が少なすぎるため溶融しづらい廃材混合樹脂と混練・成形するのが難しく、40wt%を越えると熱可塑性樹脂を多く含むので木質感のある木質様成形品とすることができないためである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、吸水率が低く、長期に渡る寸法変化や変形・割れ等を防止することができ、強度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明によって製造される木質様成形品は、樹脂廃材から得られ、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂と不純物とが混合されてなる廃材混合樹脂と、木質廃材を粉砕することによって得られた木質廃材粉砕粉を無水酢酸によってアセチル化処理したアセチル化木粉と、を含んでいる。以下、このような木質様成形品の製造方法において第1〜第5の実施の形態について説明する。
【0021】
図1に示すように第1の実施の形態では、まず、粉砕工程において、木質廃材を粉砕して木質廃材粉砕粉を形成する。なお、この粉砕工程は、一次粉砕、二次粉砕及び三次粉砕の三段階から形成されている。もちろん、この粉砕形態は、効率的に行うために各段階に分けたもので特にこれに限定されることはなく、一種類の粉砕工程で行うことも充分可能である。
【0022】
一次粉砕工程において使用される粉砕装置は、一つの塊の大きさが数センチメートル程度のものからなる大塊状にすることができる粉砕機能を有するものであって、具体的には、二個の対向するローラーの表面に多数の突起を形成し、このローラー間を加圧させながらローラーを回転させることにより、この間を通過するものを破砕するような粉砕装置である。もちろん、粉砕装置は、これに限定されるものではなく、同様の機能を有するものであれば他の粗粉砕用の粉砕装置を使用しても良い。例えば、上向きV型に開いたジョーと振動アゴの間に原料を入れ、加圧することにより原料を粉砕するジョークラッシャや、固定破砕面の中を可動破砕面が旋回し、連続的に破砕するジャイレントリクラッシャ等の他の粗粉砕装置を使用しても良いものである。
【0023】
次に、二次粉砕工程において、一次粉砕工程を終えた一次粉砕材料に対して細粉状に粉砕を施す。この二次粉砕工程に使用される粉砕装置は、大塊状のものを数ミリメートル以下にまで、細粉状に粉砕することができるものであって、具体的には、高速回転するハンマチップで材料を打ち砕き、ハンマチップの外周にあるスクリーンの丸穴を通過するまで打砕作用を繰り返すハンマーミルを使用するものである。もちろん、使用する粉砕装置は、上述したハンマーミルに限定されるものではなく、同様の機能を有するものであれば他の粉砕装置でも良いものである。例えば、カッターにより細断するカッターミルや、ローラーにより圧砕するロールミル等を使用しても良い。
【0024】
次に、三次粉砕工程において、二次粉砕工程を終えた二次粉砕材料に対して微粉状に粉砕を施す。この三次粉砕工程に使用される粉砕装置は、二次粉砕工程により得られた材料を更に細かい微粉状に粉砕することができるものである。具体的には、いわゆるピンミルであって、円盤に取り付けられたピンによって、衝撃、反発の相互作用を受けて微粉砕を施すことができるものである。更に具体的には、このピンミルは、垂直方向に多数のピンを有する円盤状の回転ディスクと、この回転ディスクに向かい合う面に多数のピンを有する固定ディスクとを備え、二次粉砕工程により得られた材料を回転ディスクの中心部へ投入すると、遠心力によって回転ディスクと固定ディスクに取り付けられたピンの間隙に入り込み、ピンによる衝撃や反発の相互作用を受けて微粉状に粉砕することができるものである。この三次粉砕工程では、上述したピンミルにより、約60ミクロンメートル程度の大きさの粒に粉砕される。もちろん、粉砕装置は、上述したピンミルに限定されるものではなく、同様の機能を有する他の細粉砕装置、例えば、ボールミルや石臼等でも良いものである。
上述したような粉砕工程において、回収した木質廃材を三段階に分けて、粉砕が段階的に効率的に行われる。
【0025】
次に、三次粉砕工程を終えた三次粉砕材料に対して無水酢酸によるアセチル化処理を行い、アセチル化木粉とする。具体的には、開放された容器において、三次粉砕材料を120℃の無水酢酸に24時間浸漬し、取り出した後、水洗いして乾燥することによって行う。このようにして得られたアセチル化木粉は、木粉(セルロース)の末端の水酸基をアセチル基に変換され、すなわち親水基から疎水基に変換され、水の吸着が阻害されるなか、加圧された容器内で無水酢酸に浸漬するようにすれば温度を下げたり、処理時間を短くすることができる。
【0026】
次に、樹脂廃材から得られ、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂と不純物とが混合されてなる廃材混合樹脂を粉砕する。
前記樹脂廃材としては、例えば、容器包装リサイクル法によるプラスチックゴミを使用する。プラスチックゴミには、ペットボトル、人工大理石等の水酸化アルミニウムを含んだアクリル樹脂、ガラス繊維で補強された強化プラスチック(FRP)、ナイロン、さらに前記のような樹脂に紙や布、アルミ箔を含んだもの等が挙げられる。
前記熱可塑性樹脂は、例えば、食品等の包装に用いられた後回収されたトレー、食品コンテナ等のポリプロピレン包装部材や、ポリプロピレン包装部材を形成した際に出るポリプロピレンの端材を粉砕したものである。ポリプロピレン包装部材の組成は、主にポリプロピレン75%、タルク20%、炭酸カルシウム5%であり、ここで、炭酸カルシウムはポリプロピレン包装部材の温度変化等に伴う膨張収縮を防止し、形状を安定化させるために添加されている。
そして、前記樹脂廃材から得られ、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂と不純物とが混合されてなる廃材混合樹脂を例えば、ハンマーミルを用いて20mm以下に粗粉砕して廃材混合樹脂粗粉砕物を得る。
また、上述したようなポリプロピレン包装部材を例えば、ハンマーミルを用いて粉砕して熱可塑性樹脂の粉砕粉を得る。
【0027】
次に、混練工程において、アセチル化処理で得られた木質廃材のアセチル化木粉と、20mm以下に粉砕された廃材混合樹脂粗粉砕物と、粉砕された熱可塑性樹脂とを均一に分布するように混練・成形し、第1木粉含有コンパウンドを製造する。
ここで、成形品全体に対して、廃材混合樹脂が5〜20wt%含まれ、熱可塑性樹脂が25〜40wt%含まれ、アセチル化木粉が10〜55wt%含まれるように配合量を調整する。
【0028】
次に、成形工程において、第1木粉含有コンパウンドを所定の温度及び圧力を加えて、押出成形機又は射出成形機により所要の形状に成形する。
この成形工程においては、成形温度を160〜220℃に設定し、この成形温度で成形されている。ここで、成形工程における成形温度を160〜220℃に設定したのは、160℃未満では廃材混合樹脂粗粉砕物及び熱可塑性樹脂の軟化が不十分でアセチル化木粉と均等に混練し難く、また220℃以上ではアセチル化木粉が熱で炭化等の変化を起こすためである。
このように成形温度を160〜220℃に設定したので、アセチル化木粉を成形工程において熱で変化させることなく、しかも廃材混合樹脂粗粉砕物及び熱可塑性樹脂を十分に溶融し軟化させて、アセチル化木粉と均等に混練することができ、これによって木質様成形品を容易かつ確実に得ることができる。
【0029】
なお、前記木質様成形品には通常表面処理が施されるので、この表面処理の一例を以下に説明する。
まず、エンボス加工工程において、回転軸とその回転軸の軸周りに回転可能な円筒状のエンボスローラーとを備えたエンボス加工装置を使用して、木質様成形品に対して上方から押圧させながらエンボスローラーを回転させることによって、木質様成形品の表面に多数の溝部を形成する。
そして、ヘアライン加工工程において、サンディングペーパーにより木質様成形品の表面に引っ掻き傷を多数形成する。
次に、着色工程において、着色塗料の塗装又はワイピングステイン処理を行う。ワイピングステイン処理とは、塗料を木質様成形品の表面に塗り、その後、乾かないうちにふき取り、前記エンボス加工により形成された溝部のみを着色する処理である。
【0030】
着色工程が終了した後は、乾燥工程に入り木質様成形品の着色塗料が塗布された表面を乾燥する。そして、研磨工程において、着色加工処理が施された木質様成形品の表面に研磨加工を施す。
すなわち、研磨装置を使用して研磨装置の研磨ローラーの回転に沿って木質様成形品を押し出しながら研磨する。
さらに、研磨工程終了後、塗装工程に移行する。この塗装工程は、中塗り作業工程と上塗り作業工程とに分かれ、中塗り作業工程においては、カラーサンディングシーラーを木質様成形品の表面全体に塗布する。また必要に応じて、中塗りの前及び又は後にUVコートを施しても良い。そして、上塗り作業工程において、木質様成形品の表面にトップコートを施し、トップコートの上からトップコートを硬化させるためにUVコートを施す。
【0031】
本発明の第1の実施の形態によれば、木質廃材粉砕粉にアセチル化処理を行うことによって、木粉の原料となるセルロースの末端の水酸基がアセチル基に変換されて、水の吸着を阻害することができる。そして、このようなアセチル化木粉と、廃材混合樹脂粗粉砕物と、熱可塑性樹脂とを混練・成形して第1木粉含有コンパウンドを製造し、この第1木粉含有コンパウンドを溶融して所要の形状に成形するので、吸水率の低い木質様成形品を製造することができる。その結果、吸水又は吸湿によって長期に渡る寸法変化や、吸水条件の偏りによる変形・割れ等を防止することができる。また、木質廃材粉砕粉によるアセチル化処理によって、水の吸着を阻害できるので、木粉と樹脂の馴染みが良くなり、強度面においても向上を図ることができる。
また、廃材混合樹脂を20mm以下に粗粉砕したうえで、粉砕された熱可塑性樹脂と、アセチル化木粉と混練・成形して第1木粉含有コンパウンドを製造し、所要形状に成形するので、廃材混合樹脂粗粉砕物、熱可塑性樹脂、アセチル化木粉のそれぞれが、均一に混合された成形物となり、このような第1木粉含有コンパウンドを溶融して所要の形状に成形することによって容易に木質様成形品を得ることができる。
また、木質様成形品にアセチル化木粉を10〜55wt%含むことが可能となるので、本物の木材により近い手触りや風合いを出すことができるとともに、廃材混合樹脂は5〜20wt%、熱可塑性樹脂は25〜40wt%含ませることによって、利用する廃材の量が多くなり廃材の再利用率を向上させることができる。
また、熱可塑性樹脂を得るために使用したポリプロピレンを含む食品包装部材は、組成が等しいものをまとめて回収されることが多いので、性状等がわかりやすく再利用しやすい。
さらに、成形工程後、木質様成形品に表面処理を施したので、表面の樹脂が削り取られ、アセチル化木粉が表面に露出し、手触りをより本物の木材に近いものとすることができるとともに、視覚的にも本物の木材に近づけることができる。
【0032】
次に、第2〜第5の実施の形態について説明する。
なお、第2〜第5の実施の形態では、第1の実施の形態と異なる点について主に説明し、同様の部分についてはその説明を省略する。
図2に示すように、第2の実施の形態では、まず、木質廃材を上述した粉砕工程により粉砕し木質廃材粉砕粉とする。そして、三次粉砕工程後の木質廃材粉砕粉を、第一の実施の形態と同様に120℃の無水酢酸に24時間浸積し、取り出した後、水洗いして乾燥することによってアセチル化処理を行う。一方、樹脂廃材は、例えばハンマーミル等を使用して20mm以下に粗粉砕して廃材混合樹脂粗粉砕物とし、この廃材混合樹脂粗粉砕物を押出機を使用して高圧下で自己発熱によって融着させて固形化し、廃材混合樹脂固形化物とする。さらに、この廃材混合樹脂固形化物を粉砕して固形化物粉砕粉とする。
次いで、この固形化物粉砕粉と、粉砕された熱可塑性樹脂と、木質廃材粉砕粉とを混練工程において混練・成形して第2木粉含有コンパウンドを製造する。その後、第2木粉含有コンパウンドを成形工程において溶融して押出成形機又は射出成形機により所要の形状に成形する。
【0033】
本発明の第2の実施の形態によれば、木質廃材粉砕粉にアセチル化処理を行うので、水の吸着を阻害することができる。そして、このようなアセチル化木粉と、固形化物粉砕粉と、熱可塑性樹脂とを混練・成形して第2木粉含有コンパウンドを製造し、この第2木粉含有コンパウンドを溶融して所要の形状に成形するので、吸水率の低い木質様成形品を製造することができる。その結果、吸水又は吸湿によって長期に渡る寸法変化や、吸水条件の偏りによる変形・割れ等を防止することができる。また、木質廃材粉砕粉によるアセチル化処理によって、水の吸着を阻害できるので、木粉と樹脂の馴染みが良くなり、強度面においても向上を図ることができる。
また、廃材混合樹脂を20mm以下に粗粉砕し、次いで融着させて固形化し、さらに粉砕したうえで、粉砕された熱可塑性樹脂と、アセチル化木粉と混練・成形して第2木質含有コンパウンドを製造し、所要形状に成形するので、廃材混合樹脂粗粉砕物、熱可塑性樹脂、アセチル化木粉のそれぞれが均一に混合された成形物となり、このような第2木粉含有コンパウンドを溶融して所要の形状に成形することによって、容易に木質様成形品を得ることができる。
また、廃材混合樹脂は固形化物粉砕粉とされたうえで混練・成形して第2木粉含有コンパウンドを製造するので、第1の実施の形態に比して、熱硬化性樹脂、不純物、熱可塑性樹脂を分離することなくより均等に混合された状態とすることができ、成形性が良好となる。
【0034】
第3の実施の形態では、第1の実施の形態のアセチル化木粉を使用した第1木粉含有コンパウンドと、第2の実施の形態のアセチル化木粉を使用した第2木粉含有コンパウンドとをそれぞれ製造する。そして、第1木粉含有コンパウンドと第2木粉含有コンパウンドとを成形工程において混合・溶融し押出成形機又は射出成形機により所要の形状に成形する(図示しない)。
【0035】
本発明の第3の実施の形態によれば、木質廃材粉砕粉にアセチル化処理を行うことによって、水の吸着を阻害することができる。そして、このようなアセチル化木粉を使用して、第1木粉含有コンパウンドや第2木粉含有コンパウンドを製造し、第1木粉含有コンパウンドと第2木粉含有コンパウンドとを混合・溶融して所要の形状に成形するので、吸水率の低い木質様成形品を製造することができる。その結果、吸水又は吸湿によって長期に渡る寸法変化や、吸水条件の偏りによる変形・割れ等を防止することができる。また、木質廃材粉砕粉によるアセチル化処理によって、水の吸着を阻害できるので、木粉と樹脂の馴染みが良くなり、強度面においても向上を図ることができる。
また、第1木粉含有コンパウンドと第2コンパウンドとをそれぞれ製造し、混合・溶融し所要の形状に成形するので、廃材混合樹脂粗粉砕物、熱可塑性樹脂、アセチル化木粉のそれぞれが均一に混合された成形物となり、このような第1木粉含有コンパウンドと第2木粉含有コンパウンドとを混合・溶融して所要の形状に成形することによって、容易に木質様成形品を得ることができる。
【0036】
図3に示すように、第4の実施の形態では、木質廃材を粉砕工程により粉砕して木質廃材粉砕粉とする。そして、三次粉砕工程後の木質廃材粉砕粉を、第一の実施の形態と同様に120℃の無水酢酸に24時間浸積し、取り出した後、水洗いして乾燥することによってアセチル化処理を行う。一方、樹脂廃材から得られる廃材混合樹脂を例えば、ハンマーミル等を使用して1mm以下に粉砕して廃材混合樹脂粉砕物とし、この廃材混合樹脂粉砕物と、粉砕された熱可塑性樹脂と、アセチル化木粉とを混練・溶融して押出成形機又は射出成形機により所要の形状に成形する。
【0037】
本発明の第4の実施の形態によれば、木質廃材粉砕粉にアセチル化処理を行うことによって、水の吸着を阻害することができる。そして、このようなアセチル化木粉と、廃材樹脂混合樹脂粉砕物と、熱可塑性樹脂とを混練・溶融して所用形状に成形するので、吸水率の低い木質様成形品を製造することができる。その結果、吸水又は吸湿によって長期に渡る寸法変化や、吸水条件の偏りによる変形・割れ等を防止することができる。また、木質廃材粉砕粉によるアセチル化処理によって、水の吸着を阻害できるので、木粉と樹脂の馴染みが良くなり、強度面においても向上を図ることができる。
また、廃材混合樹脂を1mm以下に粉砕したうえで、粉砕された熱可塑性樹脂と、アセチル化木粉と混練・溶融して所要の形状に成形するので、第1〜第3の実施の形態に比して、廃材混合樹脂はより細かく粉砕されており、この粉砕された廃材混合樹脂粉砕物と熱可塑性樹脂とアセチル化木粉とは一層均等に混合された状態となる。また、例えば中空形状のある押出成形においても容易に製造することができる。
【0038】
図4に示すように、第5の実施の形態では、木質廃材を粉砕工程により粉砕して木質廃材粉砕粉とする。そして、三次粉砕工程後の木質廃材粉砕粉を、第一の実施の形態と同様に120℃の無水酢酸に24時間浸積し、取り出した後、水洗いして乾燥することによってアセチル化処理を行う。一方、樹脂廃材から得られる廃材混合樹脂を例えば、ハンマーミル等を使用して20mm以下に粉砕して廃材混合樹脂粗粉砕物とし、この廃材混合樹脂廃材粗粉砕物を押出機を使用して高圧下で融着させて固形化し、廃材混合樹脂固形化物とする。さらに、この廃材混合樹脂固形化物を粉砕して固形化物粉砕粉とする。
次いで、この固形化物粉砕粉と、粉砕された熱可塑性樹脂と、アセチル化木粉とを混練・溶融して押出成形機又は射出成形機により所要の形状に成形する。
【0039】
本発明の第5の実施の形態によれば、木質廃材粉砕粉にアセチル化処理を行うことによって、水の吸着を阻害することができる。そして、このようなアセチル化木粉と、固形化物粉砕粉と、熱可塑性樹脂とを混練・溶融して所用形状に成形するので、吸水率の低い木質様成形品を製造することができる。その結果、吸水又は吸湿によって長期に渡る寸法変化や、吸水条件の偏りによる変形・割れ等を防止することができる。また、木質廃材粉砕粉によるアセチル化処理によって、水の吸着を阻害でき、木粉と樹脂の馴染みが良くなり、強度面においても向上を図ることができる。
また、廃材混合樹脂固形化物を1mm以下に粉砕したうえで、粉砕された熱可塑性樹脂と、アセチル化木粉と混練・溶融して所要の形状に成形するので、第1〜第3の実施の形態に比して、廃材混合樹脂はより細かく粉砕されており、この粉砕された廃材混合樹脂粉砕物と熱可塑性樹脂とアセチル化木粉とは一層均等に混合された状態となる。また、例えば中空形状のある押出成形においても容易に製造することができる。
また、廃材混合樹脂固形化物は、廃材混合樹脂を20mm以下に粗粉砕されて、次いで、融着させて固形化しているので、第4の実施の形態に比して、熱硬化性樹脂、不純物、熱可塑性樹脂を分離することなく均等に混合された状態とすることができ、成形性が良好となる。
【0040】
なお、本発明の第2〜第5の実施の形態において、成形工程の後の説明を省略したが、第1の実施の形態と同様に木質様成形品にエンボス加工工程、ヘアライン加工工程、着色加工工程、乾燥工程、研磨工程、塗装工程等を行い、表面処理を施す。
また、本発明の第2〜第5の実施の形態における木質様成形品は、成形品全体に対して、廃材混合樹脂が5〜20wt%含まれ、熱可塑性樹脂が25〜40wt%含まれ、アセチル化木粉が10〜55wt%含まれるように配合量を調整して製造される。
【0041】
また、本発明の実施の形態で使用される押出成形機は、1軸押出成形機であっても良いし、2軸押出成形機であっても良い。
【実施例1】
【0042】
次に、本発明に係る木質様成形品の製造方法による効果を以下に示す試験によって明らかにした。
上述のように木質廃材を一次粉砕、二次粉砕及び三次粉砕工程を経て、木質廃材粉砕粉を得る。得られた木質廃材粉砕粉に対して120℃の無水酢酸に24時間浸漬して、取り出した後、水洗いし、乾燥することによってアセチル化木粉とする。
一方、アセチル化処理を行わない三次粉砕工程後の木質廃材粉砕粉を用意し、この木質廃材粉砕粉(比較例)と、上記アセチル化木粉(本発明例)とについて木粉状態における物性について表1に示す試験項目によって評価した。
【表1】

なお、含水率は、アセチル化木粉及び木質廃材粉砕粉をそれぞれ120℃で乾燥し、恒量に達したと認められるときの重量と乾燥前の重量とから計測したものである。
また、灰分は、800℃で2時間燃焼させた場合の計測結果である。
【0043】
次に、アセチル化木粉から作製した木質様成形品(本発明例)と、アセチル化処理を行わない木質廃材粉砕粉から作製した木質様成形品(比較例)とについてプレスシート状態における物性について表2に示す試験項目によって評価した。廃材混合樹脂、熱可塑性樹脂及びアセチル化木粉(又は木質廃材粉砕粉)の配合量は上述した通りとし、それぞれのプレスシートを作製した。
【表2】

なお、吸水率は、40℃の水を96時間吸水させた場合の計測結果であり、また、このときの寸法変化(長さ、幅、厚み)についても計測した。
【0044】
表1の結果より、アセチル化木粉は、アセチル化処理を行わない木質廃材粉砕粉に比べて含水率が少なく、また、アセチル化処理を行うことによって灰分が半分以下に減少したことが認められる。これは、アセチル化木粉は、その処理時に洗い流されるためであり、また、この灰分がかさ比重の軽さにも反映していると考えられる。
表2の結果より、アセチル化木粉から作製したプレスシートはアセチル化処理を行うことによって、曲げ強度やヤング率において向上が見られ、木粉と樹脂の馴染みがよくなっていると言える。さらに、吸水特性についても、アセチル化処理を行わないプレスシートに比べてアセチル化処理を行ったプレスシートは、吸水率半減となり、大きな改質効果が認められる。なお、寸法変化についてもアセチル化処理を行うことによって向上していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示すためのもので、木質様成形品の製造方法を示す概念図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態を示すためのもので、木質様成形品の製造方法を示す概念図である。
【図3】本発明の第4の実施の形態を示すためのもので、木質様成形品の製造方法を示す概念図である。
【図4】本発明の第5の実施の形態を示すためのもので、木質様成形品の製造方法を示す概念図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂廃材から得られ、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂と不純物とが混合されてなる廃材混合樹脂と、木質廃材を粉砕することによって得られた木質廃材粉砕粉とを含む木質様成形品の製造方法であって、
前記木質廃材粉砕粉にアセチル化処理を行ってアセチル化木粉とし、
前記廃材混合樹脂を20mm以下に粗粉砕して廃材混合樹脂粗粉砕物とし、
この廃材混合樹脂粗粉砕物と、粉砕された熱可塑性樹脂と、前記アセチル化木粉とを混練・成形して第1木粉含有コンパウンドを製造し、
この第1木粉含有コンパウンドを溶融して所要の形状に成形することを特徴とする木質様成形品の製造方法。
【請求項2】
樹脂廃材から得られ、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂と不純物とが混合されてなる廃材混合樹脂と、木質廃材を粉砕することによって得られた木質廃材粉砕粉とを含む木質様成形品の製造方法であって、
前記木質廃材粉砕粉にアセチル化処理を行ってアセチル化木粉とし、
前記廃材混合樹脂を20mm以下に粗粉砕して廃材混合樹脂粗粉砕物とし、
この廃材混合樹脂粗粉砕物を融着させて固形化して、廃材混合樹脂固形化物とし、
この廃材混合樹脂固形化物を粉砕して、固形化物粉砕粉とし、
この固形化物粉砕粉と、粉砕された熱可塑性樹脂と、前記アセチル化木粉とを混練・成形して第2木粉含有コンパウンドを製造し、
この第2木粉含有コンパウンドを溶融して所要の形状に成形することを特徴とする木質様成形品の製造方法。
【請求項3】
樹脂廃材から得られ、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂と不純物とが混合されてなる廃材混合樹脂と、木質廃材を粉砕することによって得られた木質廃材粉砕粉とを含む木質様成形品の製造方法であって、
前記木質廃材粉砕粉にアセチル化処理を行ってアセチル化木粉とし、
前記廃材混合樹脂を20mm以下に粗粉砕して廃材混合樹脂粗粉砕物とし、
この廃材混合樹脂粗粉砕物と、粉砕された熱可塑性樹脂と、前記アセチル化木粉とを混練・成形して第1木粉含有コンパウンドを製造し、
一方、前記廃材混合樹脂を20mm以下に粗粉砕して廃材混合樹脂粗粉砕物とし、
この廃材混合樹脂粗粉砕物を融着させて固形化して、廃材混合樹脂固形化物とし、
この廃材混合樹脂固形化物を粉砕して、固形化物粉砕粉とし、
この固形化物粉砕粉と、粉砕された熱可塑性樹脂と、前記アセチル化木粉とを混練・成形して第2木粉含有コンパウンドを製造し、
前記第1木粉含有コンパウンドと第2木粉含有コンパウンドとを混合・溶融して所要の形状に成形することを特徴とする木質様成形品の製造方法。
【請求項4】
樹脂廃材から得られ、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂と不純物とが混合されてなる廃材混合樹脂と、木質廃材を粉砕することによって得られた木質廃材粉砕粉とを含む木質様成形品の製造方法であって、
前記木質廃材粉砕粉にアセチル化処理を行ってアセチル化木粉とし、
前記廃材混合樹脂を1mm以下に粉砕して廃材混合樹脂粉砕物とし、
この廃材混合樹脂粉砕物と、粉砕された熱可塑性樹脂と、前記アセチル化木粉とを混練・溶融して所要の形状に成形することを特徴とする木質様成形品の製造方法。
【請求項5】
樹脂廃材から得られ、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂と不純物とが混合されてなる廃材混合樹脂と、木質廃材を粉砕することによって得られた木質廃材粉砕粉とを含む木質様成形品の製造方法であって、
前記木質廃材粉砕粉にアセチル化処理を行ってアセチル化木粉とし、
前記廃材混合樹脂を20mm以下に粗粉砕して廃材混合樹脂粗粉砕物とし、
この廃材混合樹脂粗粉砕物を融着させて固形化して、廃材混合樹脂固形化物とし、
この廃材混合樹脂固形化物を1mm以下に粉砕して、固形化物粉砕粉とし、
この固形化物粉砕粉と、粉砕された熱可塑性樹脂と、前記アセチル化木粉とを混練・溶融して所要の形状に成形することを特徴とする木質様成形品の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の木質様成形品の製造方法において、
成形品全体に対して、
前記廃材混合樹脂は、5〜20wt%、前記熱可塑性樹脂は25〜40wt%、前記アセチル化木粉は10〜55wt%それぞれ含まれていることを特徴とする木質様成形品の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−34951(P2009−34951A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202914(P2007−202914)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】