説明

木造建築部材の連結具

【課題】 二本の木材を斜めに連結する為に、木材の連結部分に施す加工を容易に行え、加工後も木材の強度を良好な状態に保持できる木造建築部材の連結具を提供すること。
【解決手段】主幹部材1に接合部材2の端面を当接して斜めに連結する為に、両者の内部に収納された状態で締結手段91,92によって固定される木造建築部材の連結具3であって、接合部材の接合面に設けた係合溝21に嵌まり込む接続片4と、主幹部材の接合面に設けた嵌合穴11に嵌まり込む状態で接続片の端部から突設する突起体5と、から構成し、突起体はカップ形状であって、その内部をボルト頭部又はナット用の収納部とし、カップ底部にボルト軸部を通す通孔を備える。接続片は長方形状であって、突起体寄りの辺の端部にU字型の切欠部を備え、突起体寄りの辺に対して両側辺の対向箇所に、U字型の受孔を設け、突起体とは対向する辺の端部に、係止ピンを通す取付孔を対向箇所に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば柱や、土台、梁、桁等の主幹部材に、火打ちばりや、方づえ、筋かい、合掌、或いは出隅、入隅等に設ける隅木部材に取付けるもや材等の接合部材を、斜めに連結するための木造建築部材の連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した種類の木造建築部材の連結構造は、主幹部材に形成した堀込みに、接合部材の端部を嵌込み、ボルト、ナットや、かすがいで連結する構造が従来より知られている。ところが、堀込みの加工は高度な技術を必要とする厄介な作業であり、腕の立つ職人が不足している現状もあって、加工の容易な連結構造が建築業界で望まれている。また、堀込みを形成すると、その部分の太さがその他の箇所に比べて格段に細くなり、木材の強度が大巾に低下するため、太い木材を用いないと十分な強度が得られないものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記実情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、木材の連結部分に施す加工を容易に行えると共に、加工を施した後も木材の強度を良好な状態に保持できる木造建築部材の連結具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、主幹部材に接合部材の端面を当接する状態で斜めに連結する為に、両者の内部に収納された状態で締結手段によって固定される木造建築部材の連結具であって、接合部材の接合面に設けた係合溝に嵌まり込む接続片と、接続片の端部から主幹部材の接合面に設けた嵌合穴に嵌まり込む状態で突設する突起体と、から構成し、突起体はカップ形状であって、カップ形状の内部を主幹部材用の締結手段のボルトの頭部若しくはナットを収める収納部とし、嵌合穴の底面の抜孔にボルトの軸部を挿通する通孔を、カップ形状の底部に備えていることを特徴とする。
【0005】
主幹部材とは柱や、土台、梁、桁等から成るものである。接合部材とは火打ちばりや、方づえ、筋かい、合掌、或いは出隅、入隅等に設ける隅木部材に取付けるもや材等から成るものである。締結手段はボルト、ナットを少なくとも備えるものである。接続片は接続片より僅かに幅広の係合溝内にがたつきなく収納される状態となる。突起体は突起体の径より僅かに大きな嵌合穴にがたつきなく収納される状態となる。
【0006】
また、請求項2記載の発明は、接続片は長方形状であって、突起体を設けた辺の端部には、主幹部材用の締結手段のボルト若しくはナットを挿入するU字型の切欠部を備え、突起体を設けた辺に直交する両辺の対向箇所には、係合溝を経て両側面に貫通する透孔に挿通する接合部材用の締結手段のボルトの軸部を引っ掛けるU字型の受孔を外部に開口する状態で設けると共に、突起体を設けた辺とは対向する辺の端部には、係合溝を経て両側面に貫通する貫通孔に打ち込む接合部材用の締結手段の係止ピンを挿通して支持する取付孔を、対向する箇所に備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の木造建築部材の連結具を使用すれば、主幹部材に接合部材の端面を当接する状態で斜めに連結することができ、しかも、主幹部材と接合部材には、連結具を構成する接続片と突起体の形状に合わせて、嵌合穴や係合溝を形成するだけで良く、その上、嵌合穴や係合溝は切削工具を用いて加工することができるので、両部材に施す加工を簡便に行える。また、嵌合孔や係合溝を形成しても、各部材の太さは加工前と同じであるので、各部材の強度は加工前と遜色のない良好な状態に保持される。
【0008】
請求項2記載の木造建築部材の連結具は、突起体を締結手段のボルト、ナットによって主幹部材に締結し、接合部材の係合溝に接続片を嵌め込むようにすると、接合部材に止めた別の締結手段のボルトの軸部が接続片の受孔に引っ掛かるし、接合部材の貫通孔から係止ピンを打ち込むだけで接続片の取付孔に固定できるので、組立作業を容易に行える。また、連結具を180度回転させれば、接続片が右肩上がりに傾斜する状態から左肩上がりに傾斜する状態になり、連結具を有効活用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
木造建築部材の連結構造の第一実施形態は図1に示すように、直交する梁及び桁からなる二本の主幹部材1,1と、火打ちばりからなる接合部材2と、両主幹部材1,1の隅角部分に接合部材2を斜めに連結する為の連結具3と、連結具3を主幹部材1並びに接合部材2に夫々固定する締結手段91、92とから構成されている。
【0010】
連結具3は図1〜図4に示してあり、そのうちの図4(イ)に基づいて説明すれば、右肩上がりに傾斜する長方形状の接続片4と、接続片4の下辺端部の中間部から下向きに突設したカップ状の突起体5とから構成される金属製品である。接続片4と突起体5を一体にする手段は、接続片4の下辺端部の中間部に、突起体5の周壁の端面の対向箇所を、押し当てた状態で強固に溶接することによって行われている。火打ちばりは梁や桁に約45度の角度で連結する構造が一般的であるので、突起体5に対して接続片4を約45度の角度で傾斜してある。また、連結具3は接続片4の突出方向が接合部材2の連結方向となるが、突起体5を中心にして180度回転させれば、右肩上がりに傾斜する状態の接続片4が、左肩上がりに傾斜する状態になり、これを利用することによって、接合部材2の両端部を同一構造の連結具3で固定できるようにしてある。
【0011】
接続片4は数ミリの厚みの板体であり、ボルトB、ナットN、係止ピンPからなる締結手段92で接合部材2に固定されるもので、突起体5を設けた下辺の端部には、突起体5を固定する締結手段91のボルトB若しくはナットNを挿入する為のU字型の切欠部41を備え、突起体5を設けた辺に直交する両辺の対向箇所に、ボルトBの軸部を引掛けるU字型の受孔42を外部に開口する状態で設けると共に、さらに、上辺の端部には、係止ピンPを挿通して支持する二つの取付孔43を対向する箇所に備えている。
【0012】
突起体5は主幹部材1にボルトB、ナットNからなる締結手段91で固定されるもので、上向きに開口するカップ形状の内部をボルトBの頭部若しくはナットNを収める収納部51となし、その底壁にボルトBの軸部を挿通する通孔52を備えている。なお、収納部51の径は、ボルトBの頭部、若しくはナットNの径の大きさより僅かに大きい程度であっても良いし、ボルトBの頭部、若しくはナットNに嵌め込んで締付ける工具が入る大きさに形成してあっても良い。
【0013】
主幹部材1は図2に示すように、その側面には、接合部材2の端面が当接する接合面の中央部分に、前記突起体5を嵌込む円盤形の嵌合穴11を備え、嵌合穴11の底面には、突起体5の通孔52に対応する箇所に、ボルトBの軸部を挿通する抜孔12を、反対面に貫通して設けてある。
【0014】
接合部材2は主幹部材1の側面に当接する接合面である両端面を、長手方向に対して傾斜して形成してあり、各端面には、接続片4を嵌込む係合溝21を、主幹部材1と接合部材2の両長手方向に直交する方向に貫通し且つ接合部材2の長手方向を深さ方向とする状態で設けてある。また、接合部材2の側面には、前記した二つの受孔42の一つ(図1で説明すれば、上側の受孔42)の奥部に対応する箇所に、ボルトBの軸部を挿通する透孔22を、係合溝21を経て反対面に貫通する状態で設けると共に、取付孔43に対応する箇所に、係止ピンPを打ち込んで保持する貫通孔23を設けてある。ところで係合溝21は、主幹部材1の長手方向に対して平行となる二辺を二等分する箇所に設けることが、接合部材2の強度上最も望ましいが、多少ずれた箇所に設けても何等支障ない。なお、主幹部材1と接合部材2には、丸ノコやドリル等の切削工具を用いて加工を行う。
【0015】
上記した第一実施形態の組立手順を以下に説明する。まず、各主幹部材1の嵌合穴11に連結具3の突起体5を夫々嵌込み、接続片4が接合部材2の架設方向を向くように調整した後に、締結手段91を用い、突起体5の通孔52から主幹部材1の抜孔12にボルトBの軸部を挿通し、ナットNを締付けて連結具3を固定する。次に、接合部材2の各端部に有する透孔22に、締結手段92のボルトBを夫々挿通して、ナットNを締付ける。続いて、接続片4の上方から接合部材2を下ろして、接合部材2の係合溝21に接続片4を嵌め込むようにすると、接合部材2に固定したボルトBの軸部が、接続片4の受孔42に引掛っかり、接合部材2が接続片4に支持される。最後に、接合部材2の貫通孔23から、接続片4の取付孔43に係止ピンPを打ち込んで固定する。
【0016】
上記した組み立て作業は、ボルトBの軸部が受孔42に引っ掛かることから、組立作業を一人で行える。また、受孔42の開口幅は、先部に近付くに連れて徐々に幅広くなるように設けてあるので、接合部材2に固定したボルトBの軸部を、接続片4の受孔42に引掛ける作業が行い易くなっている。なお、係止ピンPは接合部材2から食み出さないように、貫通孔23と同じか、若しくは幾分短い長さにして、体裁を良くしてある。
【0017】
木造建築部材の連結構造の第二実施形態は図5に示すように、大きな接続片4を用いた場合には、連結具3の突起体5を複数個設けると共に、係止ピンPを保持する取付孔43を多数設けたことを特徴とするものである。この場合、主幹部材1には、突起体5の数に合わせて嵌合穴11を設け、接合部材2には、取付孔43の数に合わせて貫通孔23を設けておくものである。突起体5は円形の底部を有するカップ形状であっても良いし、方形の底部を有するカップ形状であっても良い。なお、図6に示すように、接続片4と突起体5は元々別体であり、これを溶接して一体としたものであるが、突起体5を接続片4に強固に溶接するために、突起体5の周壁の対向箇所をV字型に切欠き、その切欠いた部分を接続片4の切欠部41の周縁部に押し当てた状態で溶接することによって、溶接面積を広くして補強してある。この場合、接合部材2の接合面に形成した係合溝21の入り口側部分を、突起体5の周壁の補強部分を嵌め込む為に切削しておく必要がある。
【0018】
木造建築部材の連結構造は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、一枚の接続片4と突起体5とから構成される連結具3は、図1では接続片4を接合部材2の架設方向を向くようにすると、接続片4の、主幹部材1に当接する辺が、直立した状態となる構造であったが、この構造に限らず、接続片4を接合部材2の架設方向を向くようにした際に、接続片4の、主幹部材1に当接する辺が、傾斜した状態となる構造や、水平な状態となる構造であっても良く、この場合、接続片4を嵌め込む接合部材2の係合溝21は、主幹部材1と接合部材2の両長手方向に直交する方向に貫通する状態で設けるのではなく、連結具3の接続片4の傾斜具合に応じて貫通する状態で設けておけば良い。また、一枚の接続片4と突起体5とから構成される連結具3は、接続片4の突出方向が接合部材2の架設方向と完全に一致する状態となるように形成してあるが、多少ずれても良く、この場合、接合部材2の係合溝21の深さ方向は、接合部材2の長手方向に対して平行ではなく、接続片4の突出方向に応じて設ければ良い。
【0019】
さらに、連結具3の突起体5に形成した収納部51内にナットNを予め溶接して一体として設けておいても良い。また、連結具3は突起体5を接続片4に対して約45度の角度で斜めに突設してあるが、必ずしもこの突設角度に限定されるものではなく、主幹部材1と接合部材2の連結角度に応じて変えることは何等差し支えない。その他には、接続片4は受孔42を有しない構造であっても良く、この場合、接続片4を接合部材2に固定する際には、接続片4の取付孔43と、接合部材2の貫通孔23を一致させ、その状態を保持しつつ貫通孔23から取付孔43にボルトBの軸部を挿通し、ナットNを締付けて固定する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】木造建築部材の連結構造の第一実施形態を示す斜視図である。
【図2】第一実施形態の要部を拡大した状態を示す断面図である。
【図3】第一実施形態に使用する連結具の斜視図である。
【図4】(イ)(ロ)(ハ)(ニ)図は、第一実施形態に使用する連結具の底面図、正面図、左側面図、A−A線断面図である。
【図5】木造建築部材の連結構造の第二実施形態を示す斜視図である。
【図6】突起体と接続片を一体にする手段を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1主幹部材、2接合部材、3連結具、4接続片、5突起体、11嵌合穴、12抜孔、
21係合溝、22透孔、23貫通孔、41切欠部、42受孔、43取付孔、
51収納部、52通孔、91締結手段、92締結手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主幹部材(1)に接合部材(2)の端面を当接する状態で斜めに連結する為に、両者(1,2)の内部に収納された状態で締結手段(91,92)によって固定される木造建築部材の連結具(3)であって、接合部材(2)の接合面に設けた係合溝(21)に嵌まり込む接続片(4)と、主幹部材(1)の接合面に設けた嵌合穴(11)に嵌まり込む状態で接続片(4)の端部から突設する突起体(5)と、から構成し、
突起体(5)はカップ形状であって、カップ形状の内部を主幹部材(1)用の締結手段のボルト(B)の頭部若しくはナット(N)を収める収納部(51)とし、嵌合穴(11)の底面の抜孔(12)にボルト(B)の軸部を挿通する通孔(52)を、カップ形状の底部に備えていることを特徴とする木造建築部材の連結具。
【請求項2】
接続片(4)は長方形状であって、突起体(5)を設けた辺の端部には、主幹部材用の締結手段(91)のボルト(B)若しくはナット(N)を挿入するU字型の切欠部(41)を備え、突起体(5)を設けた辺に直交する両辺の対向箇所には、係合溝(21)を経て両側面に貫通する透孔(22)に挿通する接合部材用の締結手段(92)のボルト(B)の軸部を引っ掛けるU字型の受孔(42)を外部に開口する状態で設けると共に、突起体(5)を設けた辺とは対向する辺の端部には、係合溝(21)を経て両側面に貫通する貫通孔(23)に打ち込む接合部材用の締結手段(92)の係止ピン(P)を挿通して支持する取付孔(43)を、対向する箇所に備えていることを特徴とする請求項1記載の木造建築部材の連結具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−336459(P2006−336459A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224394(P2006−224394)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【分割の表示】特願平9−340229の分割
【原出願日】平成9年12月10日(1997.12.10)
【出願人】(591235865)
【Fターム(参考)】