説明

末梢ベンゾジアゼピンレセプター(PBR)親和性を有するインビボイメージング剤としての四環式インドール誘導体

本発明は、インビボイメージング剤又は治療剤として式(I)の新規四環式インドール化合物を提供する。インビボイメージング剤化合物の製造方法並びに前記方法で使用するための前駆体もまた、本発明によって提供される。加えて、本発明の化合物を含んでなる医薬組成物も提供される。医薬組成物がインビボイメージングに適した化合物を含む場合、医薬組成物製造用のキットも提供される。さらなる態様として、PBRに関連する疾患のインビボイメージング又は治療のための該化合物の使用も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末梢レセプター(PBR)に対して高い親和性を有する化合物に関する。診断及び治療の両方で使用できる新規化合物が提供される。特に、本発明の化合物はPBRの発現がアップレギュレートされた病態のインビボイメージング及び治療のために有用である。
【背景技術】
【0002】
PBRは主として末梢組織及びグリア細胞に局在することが知られているが、その生理学的機能はまだ明確に解明されていない。細胞レベル以下では、PBRはミトコンドリア外膜に局在することが知られている。ミトコンドリアの外膜上におけるその存在は、ミトコンドリア機能の調節及び及び免疫系において役割を果たす可能性を表している。さらに、PBRが細胞増殖、ステロイド生成、カルシウム流れ及び細胞呼吸に関係することも仮定されてきた。PBR発現の変化は、急性及び慢性ストレス、不安、うつ病、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳損傷、癌[Gavish et al,1999,Pharm.Rev.,51,p629]、ハンチントン病[Neurosci.Lett.,1998,24(1),pp53−6]、喘息[Gen.Pharmacol.,1997,28(4),pp495−8]、慢性関節リウマチ[Eur.J.Pharmacol.,2002,452(1),pp111−22]、アテローム性動脈硬化症[J.Nucl.Med.,2004,45,pp1898−1907]及び多発性硬化症[Banati et al,2000,Brain,123,p2321]をはじめとする様々な状態で観察されてきた。PBRはニューロパシー性疼痛にも関連することがあり、Tsudaらはニューロパシー性疼痛をもった被験者で小グリア細胞の活性化を観察している[2005,TINS,28(2),pp101−7]。
【0003】
PBRに対して親和性を有するリガンドは当技術分野で公知である。米国特許第6,451,795号には、PBRに対して親和性(最も活性の高い化合物に関して0.2〜0.5nMのIC50値)を有する1群のインドール化合物が開示されている。この特許には、かかる化合物が末梢ニューロパシーの予防又は治療及び中枢神経変性疾患の治療のために有用であると述べられている。Okuboら[Bioorganic & Medicinal Chemistry,2004,12,3569−80]は、PBRに対して親和性(0.4nMという低いIC50値)を有する1群の四環式インドール化合物の設計、合成及び構造を記載している。かかる化合物の特別な用途は論じられていない。Campianiら[2002,J.Med.Chem.,45,4276−81]は、高い親和性[PK11195に比べて約0.1nMという低いKi]をもってPBRに結合する1群のピロロベンゾキサゼピン誘導体を開示している。
【0004】
PBR選択性リガンドを用いる陽電子放出断層撮影法(PET)イメージングでは、(R)−[11C]PK11195が中枢神経系(CNS)炎症の包括的指示薬を提供する。(R)−[11C]PK11195の使用の成功にもかかわらず、それには制約がある。それは、高いタンパク質結合性及び低特異性ないし非特異性結合を有することが知られている。その放射性標識代謝産物の役割は知られておらず、結合の定量化には複雑なモデル化が要求される。
【0005】
特開平07−165721号には、PBRに対して高い親和性を有する放射性ヨウ素化及び放射性臭素化イソキノリンカルボキサミド誘導体がPBR用の新規インビボイメージング剤又は放射線治療剤として開示されている。
【0006】
したがって、PBRを標的とする代替インビボイメージング剤及び治療剤を開発する余地が存在している。
【特許文献1】米国特許第6451795号明細書
【特許文献2】特開平07−165721号公報
【特許文献3】フランス特許出願公開第2788776号明細書
【非特許文献1】Gavish et al,1999,Pharm.Rev.,51,p629.
【非特許文献2】Neurosci.Lett.,1998,24(1),pp53−6.
【非特許文献3】Gen.Pharmacol.,1997,28(4),pp495−8.
【非特許文献4】Eur.J.Pharmacol.,2002,452(1),pp111−22.
【非特許文献5】J.Nucl.Med.,2004,45,pp1898−1907.
【非特許文献6】Banati et al,2000,Brain,123,p2321.
【非特許文献7】Tsuda et al,2005,TINS,28(2),pp101−7.
【非特許文献8】Okubo et al,Bioorganic & Medicinal Chemistry,2004,12,3569−80.
【非特許文献9】Campiani et al,2002,J.Med.Chem.,45,4276−81.
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、インビボイメージング剤又は治療剤として使用するのに適した新規な四環式インドール化合物を提供する。インビボイメージング剤化合物の製造方法並びに前記方法で使用するための前駆体もまた、本発明によって提供される。加えて、本発明の化合物を含んでなる医薬組成物も提供される。医薬組成物がインビボイメージングに適した化合物を含む場合、医薬組成物製造用のキットも提供される。さらなる態様として、PBRに関連する疾患のインビボイメージング又は治療のための該化合物の使用も提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
一態様では、本発明は、以下の式Iの化合物又はその塩もしくは溶媒和物であって、当該化合物がイメージング成分で標識されている化合物を提供する。
【0009】
【化1】

式中、
1及びX2は独立に水素、ハロゲン、C1-6アルコキシ及びC1-6アルキルから選択され、
1及びR2は独立にC1-6アルキル、C1-6アミノアルキル、C1-6アルコキシアルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ヒドロキシアルキル、ポリエチレングリコール(PEG)基、C3-10シクロアルキル、C3-10シクロエーテル及びC3-10シクロアミンから選択され、
3は−A−R5基(式中、Aは任意の−(CH2)z−R6−基(式中、zは0〜6であり、R6はN、S及びOから選択される1〜3のヘテロ原子を有する五員又は六員複素環である。)であり、R5は水素、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、C1-6アルカノイル、C1-6ハロアルキル、C1-6ハロアルケニル、C1-6ハロアルキニル、C1-6ハロアルコキシ、C1-6ハロアルキルチオール、C1-6ハロアルキルスルフィニル、C1-6ハロアルキルスルホニル、C1-6ハロアルキルケトン、C1-6ハロアルキルスルフィニル、C1-6ハロアルキルスルホニル、ポリエチレングリコール(PEG)基、C1-6ヒドロキシアルキル、窒素含有C2-10アルキル及びヒドロキシから選択される置換基である。)であり、
4は水素、C1-6アルキル、C1-6アルカノイル、C1-6シクロアルキル、C1-6フルオロアルキル、ヒドロキシ又はハロゲンであり、
1はS、SO、SO2又はCH2であり、
nは0〜10である。
【0010】
単独で又は組み合わせて使用される「アルキル」は、直鎖又は枝分れ鎖アルキル基を意味する。好適なアルキルには、特に限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル及びオクチルがある。
【0011】
本明細書中で使用する「ハロゲン」又は「ハロ」という用語はヨウ素、フッ素、塩素及び臭素を含み、ヨウ素及びフッ素が好ましい。
【0012】
「複素環」は、脂肪族又は芳香族の飽和又は部分不飽和単環を意味する。好適な複素環には、特に限定されないが、フラン、ピロール、イミダゾール、トリアゾール、チオフェノール、ピリジン、ピペリジン、ピラン及びヒペラジンがある。
【0013】
置換基がPEG基である場合、この基は好適には5〜20のエチレングリコール単位、好ましくは5〜10のエチレングリコール単位を含む。
【0014】
上記に定義した式Iの化合物については、いくつかのキラル中心が存在する可能性がある。したがって本発明は、1つのキラル中心を有する本発明の任意の化合物のラセミ体及び光学的に純粋な形態、並びに2つのキラル中心を有する本発明の任意の化合物のラセミ体、ジアステレオマー及び光学的に純粋な形態を包含する。これらの化合物の光学的に純粋な形態が好ましい。
【0015】
本発明に係る好適な塩には、生理学的に許容できる酸付加塩、例えば、鉱酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸及び硫酸)から導かれるもの並びに有機酸(例えば、酒石酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、メタンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸)から導かれるものがある。
【0016】
本発明に係る溶媒和物には、エタノール、水、食塩水、生理的緩衝液及びグリコールがある。
【0017】
「イメージング成分で標識されている」という用語は、(i)式Iの化合物の原子の1つそれ自体がイメージング成分である場合、又は(ii)イメージング成分を含む基が式Iの化合物にコンジュゲートされている場合を意味する。式Iの化合物の原子の1つそれ自体がイメージング成分である場合には、例えば、いずれかの炭素が11Cであり得るか、或いはいずれかのFが18Fであり得る。イメージング成分を含む基が式Iの化合物にコンジュゲートされている場合には、化合物中に存在する任意適宜の原子を介してそれを直接に組み込むことができる。イメージング成分を含む基の例には、金属イメージング成分を含む金属錯体、又は放射性ヨードフェニルがある。別法として、イメージング成分を含む基が式Iの化合物にコンジュゲートされている場合には、式−(L1)m−のリンカー基を介してそれを間接的に組み込むことができる。式中、
各Lは独立に−CO−、−CR2−、−CR=CR−、−C≡C−、−CR2CO2−、−CO2CR2−、−NR−、−NRCO−、−CONR−、−NR(C=R)NR−、−NR(C=S)NR−、−SO2NR−、−NRSO2−、−CR2OCR2−、−CR2SCR2−、−CR2NRCR2−、C4-8シクロヘテロアルキレン基、C4-8シクロアルキレン基、C5-12アリーレン基、C3-12ヘテロアリーレン基、アミノ酸残基、ポリアルキレングリコール部分、ポリ乳酸部分又はポリグリコール酸部分であり、
mは1〜5の値を有する整数であり、
各R基は独立にH、C1-6アルキル、C3-10アルキルアリール、C2-6アルコキシアルキル、C1-6ヒドロキシルアルキル又はC1-6フルオロアルキルであるか、或いは2以上のアルキル基がこれらに結合した原子と共に炭素環式又は複素環式の飽和又は不飽和環を形成する。
【0018】
イメージング成分及びイメージング成分を含む基に関する一層の詳細は後述する。
【0019】
以下、式Iに関する好ましい置換基を記載する。
【0020】
1及びX2は、好ましくは共に水素である。
【0021】
1及びR2は、好ましくは独立にC1-6アルキル、C1-6メトキシアルキル及びC1-6アルコキシから選択され、最も好ましくは共にC1-6アルキルであり、とりわけ最も好ましくは共にエチルである。
【0022】
3は、好ましくは水素、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、C1-6アルカノイル、C1-6フルオロアルキル又はC1-6フルオロアルコキシであるか、或いはA−C1-6アルキル又はA−C1-6フルオロアルキル(式中、Aは前記に定義した通りである。)であり、最も好ましくは水素、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、アセチル又はC1-6フルオロアルキルであるか、或いはA−C1-6アルキル又はA−C1-6フルオロアルキル(式中、Aについて、R6は五員又は六員のN含有複素環である。)であり、とりわけ最も好ましくはC1-3アルキル、C1-6アルコキシ、C1-3アルケニル、C1-3アルキニル、アセチル又はC1-6フルオロアルキルであるか、或いはA−C1-6フルオロアルキル(式中、Aについて、R6は五員のN含有複素環である。)である。
【0023】
4は、好ましくは水素、C1-6アルキル、C1-6アルカノイル、C1-6シクロアルキル又はC1-6フルオロアルキルであり、最も好ましくは水素、C1-6アルキル又はC1-6アルカノイルであり、とりわけ最も好ましくは水素又はC1-3アルキルである。
【0024】
1は、好ましくはS、SO2又はCH2であり、最も好ましくはS又はSO2であり、とりわけ最も好ましくはSである。
【0025】
nは、好ましくは0〜5であり、最も好ましくは0である。
【0026】
本発明の式Iの好ましい化合物に関しては、
1及びX2は共に水素であり、
1及びR2は独立にC1-6アルキル、C1-6メトキシアルキル及びC1-6アルコキシから選択され、
3は水素、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルカノイル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル又はC1-6フルオロアルキルであるか、或いはA−C1-6アルキル又はA−C1-6フルオロアルキル(式中、Aは前記に定義した通りである。)であり、
4は水素、C1-6アルキル、C1-6アセチル、C1-6シクロアルキル又はC1-6フルオロアルキルであり、
1はS、SO2又はCH2であり、
nは0である。
【0027】
本発明の式Iの最も好ましい化合物に関しては、
1及びX2は共に独立に水素であり、
1及びR2は共にC1-6アルキルであり、
3は水素、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、C1-3アルカノイル、C1-3アルケニル、C1-3アルキニル又はC1-6フルオロアルキルであるか、或いはA−C1-6アルキル又はA−C1-6フルオロアルキル(式中、Aについて、R6は五員又は六員のN含有複素環である。)であり、
4は水素、C1-6アルキル又はC1-6アセチルであり、
1はS又はSO2であり、
nは0である。
【0028】
本発明の式Iのとりわけ最も好ましい化合物に関しては、
1及びX2は共に水素であり、
1及びR2は共にエチルであり、
3は水素、メチル、エチル、2−メトキシエチル、プロプ−2−イニル、イソプロピル、イソブチル、2−メチルアリル、アセチル又は4−フルオロブチルであるか、或いはA−C1-6フルオロアルキル(式中、Aについて、R6は五員のN含有複素環である。)であり、
4は水素であり、
1はSであり、
nは0である。
【0029】
本発明のこの態様の別の実施形態は、式Iの化合物又はその塩もしくは溶媒和物であって、当該化合物がイメージング成分で標識されていると共に、式I中の符号が下記のように定義される化合物である。
【0030】
1及びX2は独立に水素、ハロゲン、C1-6アルコキシ及びC1-6アルキルから選択され、
1及びR2は独立にC1-6アルキル、C1-6アミノアルキル、C1-6メトキシアルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)基、C3-10シクロアルカン、C3-10シクロエーテル及びC3-10シクロアミンから選択され、
3は、水素、C1-6アルキル、C1-6アセチル、C1-6フルオロアルキル、C1-6フルオロアルコキシ、C1-6フルオロアルキルスルフィニル、C1-6フルオロアルキルスルホニル、トリフルオロメチルケトン、トリフルオロメチルスルフィニル、トリフルオロメチルスルホニル、ポリエチレングリコール(PEG)基、C1-6アルキルアルコール及びヒドロキシから選択される任意の置換基であり、
4は水素、C1-6アルキル、C1-6アセチル、C1-6シクロアルキル、C1-6フルオロアルキル、ヒドロキシ又はハロゲンであり、
1はS、SO、SO2又はCH2であり、
nは0〜10である。
【0031】
イメージング成分で標識されていない式Iの化合物の合成は、Okuboら[Bioorganic and Medicinal Chemistry,2004,12,3569−80]によって記載された方法で実施できる。
【0032】
式Iの化合物中にイメージング成分を組み込むための好ましい部位は、本発明のさらに特定の態様では、以下の式Ii〜Iviの化合物のようにR1〜R4のいずれか及びX1又はX2のいずれかである。
【0033】
【化2】

式中、IMはイメージング成分又はイメージング成分を含む基であり、R1〜R4、X1、X2及びY1は式Iに関して上記に定義した通りである。
【0034】
式Iの化合物中にイメージング成分を組み込むための最も好ましい部位はR1〜R3であり、特に好ましくはR3である。
【0035】
11Cに関しては、追加の好ましい組込み部位は以下の式Iviiの化合物のようにNR12に結合したカルボニル基の位置である。
【0036】
【化3】

式中、R1〜R4、X1、X2及びY1は式Iに関して上記に定義した通りである。
【0037】
放射性ヨウ素に関しては、追加の好ましい組込み部位は以下の式Iviiiのフェニル環A′の位置である。
【0038】
【化4】

式Iの化合物中に本発明の好ましいイメージング成分を組み込む方法は、本発明の追加の態様に関連して以下に記載される。
【0039】
「イメージング成分」は、本発明の化合物を哺乳類体に投与した後、適当なイメージング方法を用いてそれをインビボで検出することを可能にする。本発明の好ましいイメージング成分は、
(i)放射性金属イオン、
(ii)常磁性金属イオン、
(iii)γ放出型放射性ハロゲン、
(iv)陽電子放出型放射性非金属、
(v)過分極NMR活性核、
(vi)インビボ光学イメージングのために適したレポーター、及び
(vii)血管内検出のために適したβ放射体
から選択される。
【0040】
イメージング成分が放射性金属イオン(即ち、放射性金属)である場合、好適な放射性金属は、64Cu、48V、52Fe、55Co、94mTc又は68Gaのような陽電子放射体、及び99mTc、64Cu、111In、113mIn又は67Gaのようなγ放射体であり得る。好ましい放射性金属は99mTc、64Cu、68Ga及び111Inである。最も好ましい放射性金属はγ放射体、特に99mTcである。
【0041】
イメージング成分が常磁性金属イオンである場合、好適なかかる金属イオンには、Gd(III)、Mn(II)、Cu(II)、Cr(III)、Fe(III)、Co(II)、Er(II)、Ni(II)、Eu(III)及びDy(III)がある。好ましい常磁性金属イオンはGd(III)、Mn(II)及びFe(III)であり、Gd(III)が特に好ましい。
【0042】
イメージング成分がγ放出型放射性ハロゲンである場合、放射性ハロゲンは好適には123I、131I及び77Brから選択される。好ましいγ放出型放射性ハロゲンは123Iである。
【0043】
イメージング成分が陽電子放出型放射性非金属である場合、好適なかかる陽電子放射体には、11C、13N、15O、17F、18F、75Br、76Br及び124Iがある。好ましい陽電子放出型放射性非金属は11C、13N、18F及び124Iであり、特に好ましくは11C及び18Fであり、最も好ましくは18Fである。
【0044】
イメージング成分が過分極NMR活性核である場合、かかるNMR活性核は非ゼロ核スピンを有し、13C、15N、19F、29Si及び31Pを含む。これらのうち、13Cが好ましい。「過分極」という用語は、NMR活性核の分極度がその平衡分極を超えて増強されていることを意味する。(12Cに対する)13Cの天然存在度は約1%であり、好適な13C−標識化合物は過分極前に好適には5%以上、好ましくは50%以上、最も好ましくは約90%以上の存在度に濃縮される。
【0045】
イメージング成分がインビボ光学イメージングのために適したレポーターである場合、レポーターは光学イメージング手続きで直接又は間接に検出できる任意の部分である。レポーターは、光散乱剤(例えば、着色又は無着色粒子)、吸光剤又は発光剤であり得る。さらに好ましくは、レポーターは発色団又は蛍光化合物のような染料である。染料は、紫外域ないし近赤外域の波長をもった電磁スペクトル中の光と相互作用する任意の染料であり得る。最も好ましくは、レポーターは蛍光特性を有する。好ましい有機発色性及び発蛍光性レポーターには、広範な非局在化電子系を有する群、例えばシアニン類、メロシアニン類、インドシアニン類、フタロシアニン類、ナフタロシアニン類、トリフェニルメチン類、ポルフィリン類、ピリリウム染料、チアピリリウム染料、スクアリリウム染料、クロコニウム染料、アズレニウム染料、インドアニリン類、ベンゾフェノキサジニウム染料、ベンゾチアフェノチアジニウム染料、アントラキノン類、ナフトキノン類、インダスレン類、フタロイルアクリドン類、トリスフェノキノン類、アゾ染料、分子内及び分子間電荷移動染料及び染料錯体、トロポン類、テトラジン類、ビス(チオレン)錯体、ビス(ベンゾジアゼピン−ジチオレート)錯体、インドアニリン染料、ビス(S,O−ジチオレン)錯体がある。緑色蛍光タンパク質(GFP)及び異なる吸光/発光特性を有するGFPの変種のような蛍光タンパク質も有用である。特定の状況においてはある種の希土類金属(例えば、ユウロピウム、サマリウム、テルビウム又はジスプロシウム)の錯体が使用され、蛍光ナノ結晶(量子ドット)についても同様である。
【0046】
使用できる発色団の具体例には、フルオレセイン、スルホローダミン101(Texas Red)、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン19、インドシアニングリーン、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Marina Blue、Pacific Blue、Oregon Green 88、Oregon Green 514、テトラメチルローダミン、Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700及びAlexa Fluor 750がある。
【0047】
イメージング成分が血管内検出のために適したβ放射体である場合、好適なかかるβ放射体には、放射性金属である67Cu、89Sr、90Y、153Sm、186Re、188Re及び192Ir、並びに非金属である32P、33P、38S、38Cl、39Cl、82Br及び83Brがある。
【0048】
本発明の最も好ましいイメージング成分は、放射性のもの、とりわけ放射性金属イオン、γ放出型放射性ハロゲン及び陽電子放出型放射性非金属、特にSPECT又はPETを用いるイメージングに適するものである。本発明のとりわけ最も好ましいイメージング成分は、PETを用いるイメージングに適するもの(即ち、11C及び18F)である。
【0049】
好ましくは、本発明の化合物は、PBRへの結合に関し、(Le Furら(1983,Life Sci.USA,33:449−57)の方法で測定して)0.01〜10nM、最も好ましくは0.1〜5.0nM、とりわけ最も好ましくは0.1〜1.0nMのKi値を有する。
【0050】
イメージング成分で標識された式Iの最も好ましい化合物の例は下記の通りである。
【0051】
【化5】

【0052】
【化6】

最良の化合物に関するKi値は、後記実施例18の方法を用いて試験したところ、1.0〜0.1nMの範囲内にあることが判明した。
【0053】
好ましくは、本発明の化合物はインビボで容易に代謝を受けず、したがって最も好ましくはヒトにおいて60〜240時間のインビボ半減期を示す。かかる化合物は、好ましくは腎臓経由で排泄される(即ち、尿中排泄を示す)。かかる化合物は、好ましくは病巣で1.5以上、最も好ましくは5以上の信号/バックグラウンド比を示し、10以上が特に好ましい。化合物が放射性同位体を含む場合、非特異的に結合しているか又はインビボで遊離している化合物のピークレベルの1/2のクリアランスは、好ましくはイメージング成分の放射性同位体の放射性崩壊半減期以下の時間で起こる。
【0054】
かかる化合物の分子量は、好ましくは5000ダルトン以下である。最も好ましくは、分子量は150〜3000ダルトン、とりわけ最も好ましくは200〜1500ダルトンの範囲内にあり、300〜800ダルトンが理想的である。
【0055】
さらに別の態様では、本発明は以下の式IIの化合物又はその塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0056】
【化7】

式中、
7は、R7が水素、C1-5アルキル又は窒素含有C2-10アルキル基でないことを条件にして、R3に関して前記に定義した通りであり、
2はY1に関して上記に定義した通りである。
【0057】
式IIの化合物の合成は、Okuboら[Bioorganic and Medicinal Chemistry,2004,12,3569−80]によって記載された方法を改変することで実施できる。
【0058】
式IIの好ましい化合物の例は下記の通りである。
【0059】
【化8】

最良の化合物に関するKi値は、後記実施例18の方法を用いて試験したところ、1.0〜0.1nMの範囲内にあることが判明した。
【0060】
さらに別の態様では、本発明は、イメージング成分で標識された式Iの化合物の製造方法であって、好都合な化学形態のイメージング成分と以下の式Iaの前駆体とを反応させる段階を含んでなる方法を提供する。
【0061】
【化9】

式中、
11、X12、R13、R14及びY11は、上記式IのそれぞれX1、X2、R3、R4及びY11に関して定義した通りであるか、或いは独立に適当な保護基を含み、
15は、−(CH2)o−C(=C)−NR1112基(式中、o、R11及びR12は式Iのそれぞれn、R1及びR2に関して定義した通りであるか、或いは適当な保護基を含む。)であり、
16は水素である。
【0062】
ただし、X11、X12及びR11〜R16の1以上は、前記イメージング成分の適当な供給源と反応し得る化学基であって、
(i)金属イメージング成分を錯体化できるか、
(ii)トリアルキルスタンナン又はトリアルキルシランのような有機金属誘導体からなるか、
(iii)求核置換用のアルキルハライド又はアルキルスルホネート(例えば、アルキルトシレート又はアルキルメシレート)を含む誘導体からなるか、
(iv)求核又は求電子置換に向けて活性化された芳香環を含む誘導体からなるか、
(v)容易にアルキル化を受ける官能基を含む誘導体からなるか、或いは
(vi)チオール含有化合物をアルキル化してチオエーテル含有生成物を与える誘導体からなる
化学基を含むことを条件とする。
【0063】
「前駆体」は、好都合な化学形態のイメージング成分との化学反応が部位特異的に起こり、最小数の段階(理想的にはただ1つの段階)で反応を実施でき、かつ格別の精製の必要なしに(理想的にはいかなる追加の精製も必要なしに)所望のイメージング剤が得られるように設計された、式Iの化合物の誘導体からなる。かかる前駆体は合成品であり、良好な化学純度で簡便に得ることができる。「前駆体」は、任意には式Iの化合物のある種の官能基に対する保護基を含むことができる。
【0064】
「保護基」という用語は、望ましくない化学反応を阻止又は抑制するが、分子の残部を変質させない十分に温和な条件下で問題の官能基から脱離させ得るのに十分な反応性を有するように設計された基を意味する。脱保護後には所望の生成物が得られる。保護基は当業者に公知であり、アミン基に関してはBoc(ここでBocはtert−ブチルオキシカルボニルである)、Fmoc(ここでFmocはフルオレニルメトキシカルボニルである)、トリフルオロアセチル、アリルオキシカルボニル、Dde[即ち、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル]及びNpys(即ち、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)から適宜に選択され、カルボキシル基に関してはメチルエステル、tert−ブチルエステル及びベンジルエステルから適宜に選択される。ヒドロキシル基に関しては、好適な保護基は、メチル、エチル又はtert−ブチル、アルコキシメチル又はアルコキシエチル、ベンジル、アセチル、ベンゾイル、トリチル(Trt)、又はテトラブチルジメチルシリルのようなトリアルキルシリルである。チオール基に関しては、好適な保護基はトリチル及び4−メトキシベンジルである。さらに他の保護基の使用は、‘Protective Groups in Organic Synthesis’,Theorodora W.Greene and Peter G.M.Wuts(Third Edition,John Wiley&Sons,1999)に記載されている。
【0065】
イメージング成分が金属イオンからなる場合、前駆体は該金属イオンを錯体化して金属錯体を形成できる化学基を含むように誘導体化される。「金属錯体」という用語は、金属イオンと1以上のリガンドとの配位錯体を意味する。金属錯体は、「キレート交換に耐える」こと(即ち、金属配位座に関して他の潜在的に競合するリガンドとのリガンド交換を受けにくいこと)が極めて好ましい。潜在的に競合するリガンドには、インビトロでは式Iの化合物自体並びに製剤中の他の賦形剤(例えば、製剤中に使用される放射線防護剤又は抗菌防腐剤)があり、インビボでは内因性化合物(例えば、グルタチオン、トランスフェリン又は血漿タンパク質)がある。
【0066】
キレート交換に耐える金属錯体を形成するために本発明で使用するのに適したリガンドには、2〜6(好ましくは2〜4)の金属ドナー原子が(金属ドナー原子を結合する炭素原子又は非配位ヘテロ原子の非配位主鎖を有することで)五員又は六員のキレート環を生じるように配列されたキレート剤、或いは金属イオンと強く結合するドナー原子を含む単座リガンド(例えば、イソニトリル、ホスフィン、チオール又はジアゼニド)がある。キレート剤の一部として金属とよく結合するドナー原子種の例は、アミン、チオール、アミド、オキシム及びホスフィンである。ホスフィンは非常に強い金属錯体を形成するので、単座又は二座のホスフィンでも好適な金属錯体を形成する。イソニトリル及びジアゼニドの直線形状はキレート剤中に組み込みにくいものであり、したがって通例は単座リガンドとして使用される。好適なイソニトリルの例には、tert−ブチルイソニトリルのような単純アルキルイソニトリル、及びmibi(即ち、1−イソシアノ−2−メトキシ−2−メチルプロパン)のようなエーテル置換イソニトリルがある。好適なホスフィンの例には、テトロフォスミン(Tetrofosmin)、及びトリス(3−メトキシプロピル)ホスフィンのような単座ホスフィンがある。好適なジアゼニドの例には、HYNIC系列のリガンド(即ち、ヒドラジン置換ピリジン又はニコチンアミド)がある。
【0067】
キレート交換に耐える金属錯体を形成するテクネチウム用の好適なキレート剤の例には、特に限定されないが、下記のものがある。
【0068】
(i)以下の式IIIのジアミンジオキシム。
【0069】
【化10】

式中、E1〜E6は各々独立にR*基であり、各R*はH或いはC1-10アルキル、C3-10アルキルアリール、C2-10アルコキシアルキル、C1-10ヒドロキシアルキル、C1-10フルオロアルキル、C2-10カルボキシアルキル又はC1-10アミノアルキルであり、或いは2以上のR*基がそれに結合した原子と共に炭素環式又は複素環式の飽和又は不飽和環を形成し、R*基の1以上はベクターにコンジュゲートされている。
【0070】
Qは式−(J)f−(式中、fは3、4又は5であり、各Jは−(J)f−が−O−又は−NR*−である最大1つのJ基を含むことを条件にして独立に−O−、−NR*−又は−C(R*)2−(式中、R*は前記に定義した通りである。)である。)の橋かけ基である。
【0071】
好ましいQ基は下記の通りである。
Q=−(CH2)(CHR*)(CH2)−(即ち、プロピレンアミンオキシム又はPnAO誘導体)、
Q=−(CH2)2(CHR*)(CH2)2−(即ち、ペンチレンアミンオキシム又はPentAO誘導体)、及び
Q=−(CH2)2NR*(CH2)2−。
【0072】
1〜E6は、好ましくはC1-3アルキル、アルキルアリール、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、フルオロアルキル、カルボキシアルキル及びアミノアルキルから選択される。最も好ましくは、各E1〜E6基はCH3−である。
【0073】
本発明の化合物は、好ましくはE1又はE6のR*基或いはQ部分のR*基にコンジュゲートされている。最も好ましくは、それはQ部分のR*基にコンジュゲートされている。それがQ部分のR*基にコンジュゲートされている場合、R*基は好ましくはブリッジヘッドの位置にある。その場合、Qは、好ましくは−(CH2)(CHR*)(CH2)−、−(CH2)2(CHR*)(CH2)2−又は−(CH2)2NR*(CH2)2−であり、最も好ましくは−(CH2)(CHR*)(CH2)2−である。特に好ましい二官能性ジアミンジオキシムキレーターは下記の式■を有する。
【0074】
【化11】

式中、
7〜E20は各々独立に前記に定義したようなR*基であり、
GはN又はCE21(式中、E21は前記に定義したようなR*基である。)であり、
Zは式Iの化合物に対する結合部位であり、リンカー基−(L2)r−(式中、各L2は独立に−O−、−NR*−、−C(R*)2−又はC5-12アリーレン基(式中、R*は前記に定義した通りである。)であり、rは1〜5の整数である。)からなり得る。
【0075】
式■の好ましいキレーターは、以下の式■aのものである。
【0076】
【化12】

式中、Gは上記に定義した通りであり、したがって式Iの化合物はブリッジヘッドの−CH2CH2NH2基を介してコンジュゲートされる。
【0077】
本発明のさらに他の好適なキレーターには、下記のものがある。
【0078】
(ii)MAG3(メルカプトアセチルトリグリシン)のようなチオールトリアミドドナーセット又はPicaのようなジアミドピリジンチオールドナーセットを有するN3Sリガンド及び関連するリガンド。
【0079】
(iii)BAT又はECD(即ち、エチルシステイネート二量体)のようなジアミンジチオールドナーセット或いはMAMAのようなアミドアミンジチオールドナーセットを有するN22リガンド。
【0080】
(iv)シクラム、モノオキソシクラム又はジオキソシクラムのようなテトラアミン、アミドトリアミン又はジアミドジアミンドナーセットを有する開鎖又は大環状リガンドであるN4リガンド。
【0081】
(v)ジアミンジフェノールドナーセットを有するN22リガンド。
【0082】
上述のリガンドはテクネチウム(例えば、94mTc又は99mTc)を錯体化するために特に適しており、Jurissonら[Chem.Rev.,99,2205−2218(1999)]によって一層詳しく記載されている。かかるリガンドは、銅(64Cu又は67Cu)、バナジウム(例えば、48V)、鉄(例えば、52Fe)或いはコバルト(例えば、55Co)のような他の金属に対しても有用である。他の好適なリガンドはSandozの国際公開第91/01144号に記載されており、その中にはインジウム、イットリウム及びガドリニウムに対して特に好適なリガンド(特に大環状アミノカルボキシレート及びアミノホスフィン酸リガンド)が含まれる。ガドリニウムの非イオン性(即ち、中性)金属錯体を形成するリガンドも知られており、米国特許第4,885,363号に記載されている。放射性金属イオンがテクネチウムである場合、リガンドは好ましくは四座のキレート剤である。テクネチウム用の好ましいキレート剤は、ジアミンジオキシム或いは上述のようなN22又はN3Sドナーセットを有するものである。
【0083】
リンカー基−(L2)r−の役割は、金属配位後に生じる比較的バルキーなテクネチウム錯体を式Iの化合物の活性部位から遠ざけることで、例えばレセプターの結合を損なわないようにすることにあると想定されている。
【0084】
これらのキレーターに関連する好ましいリンカー基−(L2)r−は、2〜5の原子を含む主鎖(即ち、−(L2)r−部分を構成する結合原子)を有しており、2つ又は3つの原子が最も好ましい。2つの原子を含む最小リンカー基主鎖は、アザ−ジアミンジオキシムキレーターが生物学的標的部分から十分に引き離される結果としていかなる相互作用も最小限に抑えられるという利点を与える。さらに、ベクターが金属イオンに対するキレーターの配位と効果的に競合することはありそうにない。このようにして、ベクターの生物学的標的特性及びキレーターの金属錯体化能力が共に維持される。式Iの化合物は、結合が血中において容易に代謝を受けないようにしてキレーターに結合していることが極めて好ましい。それは、標識化合物が所望のインビボ標的部位に到達する前に、かかる代謝がイメージング金属錯体の切断をもたらすからである。したがって、式Iの化合物は、好ましくは容易に代謝されない−(L2)r−リンカー基を介して本発明の金属錯体に共有結合している。
【0085】
アルキレン基又はアリーレン基のような非ペプチドリンカー基は、式Iの複合化合物との顕著な水素結合相互作用が存在しない結果としてリンカーが化合物を包囲しないという利点を有する。好ましいアルキレンスペーサー基は−(CH2)q−(式中、qは2〜5の値を有する整数である。)である。好ましいアリーレンスペーサーは以下の式のものである。
【0086】
【化13】

式中、a及びbは各々独立に0、1又は2である。
【0087】
イメージング金属がテクネチウムである場合、通常のテクネチウム出発原料は、テクネチウムがTc(VII)酸化状態にある過テクネチウム酸塩(即ち、TcO4-)である。過テクネチウム酸塩自体は容易に金属錯体を形成せず、したがってテクネチウム錯体の調製には、第一スズイオンのような適当な還元剤を添加してテクネチウムの酸化状態を低い酸化状態(通常はTc(I)ないしTc(VI))に還元することで錯体化を容易にすることが通常必要である。溶媒は、有機溶媒又は水性溶媒或いはこれらの混合物であり得る。溶媒が有機溶媒を含む場合、有機溶媒は好ましくはエタノール又はDMSOのような生体適合性溶媒である。好ましくは、溶媒は水性溶媒であり、最も好ましくは等張食塩水である。
【0088】
イメージング成分が放射性ヨウ素である場合、好ましい前駆体は、求電子又は求核ヨウ素化を受ける誘導体或いは標識アルデヒド又はケトンとの縮合を受ける誘導体を含むものである。第1のカテゴリーの例は下記の(a)〜(c)である。
【0089】
(a)トリアルキルスタンナン(例えば、トリメチルスタンニル又はトリブチルスタンニル)、トリアルキルシラン(例えば、トリメチルシリル)或いは有機ホウ素化合物(例えば、ボロネートエステル又はオルガノトリフルオロボレート)のような有機金属誘導体。
【0090】
(b)ハロゲン交換用の非放射性アルキルブロミド、或いは求核ヨウ素化用のアルキルトシレート、メシレート又はトリフレート。
【0091】
(c)求電子ヨウ素化に向けて活性化された芳香環(例えば、フェノール類)、及び求核ヨウ素化に向けて活性化された芳香環(例えば、アリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩、アリールトリアルキルアンモニウム塩又はニトロアリール誘導体)。
【0092】
放射性ヨウ素化のためには、前駆体は、好ましくは(放射性ヨウ素交換を可能にするための)アリールヨージド又はブロミド、活性化前駆体アリール環(例えば、フェノール基)、有機金属前駆体化合物(例えば、トリアルキルスズ、トリアルキルシリル又は有機ホウ素化合物)、或いはトリアゼンのような有機前駆体又は求核置換のための良好な脱離基(例えば、ヨードニウム塩)からなる。有機分子中に放射性ヨウ素を導入するための前駆体及び方法は、Bolton[J.Lab.Comp.Radiopharm.,45,485−528(2002)]によって記載されている。タンパク質中に放射性ヨウ素を導入するための前駆体及び方法は、Wilbur[Bioconj.Chem.,(6),433−470(1992)]によって記載されている。好適なボロネートエステル有機ホウ素化合物及びその製法は、Kabalakaら[Nucl.Med.Biol.,29,841−843(2002)及び30,369−373(2003)]によって記載されている。好適なオルガノトリフルオロボレート及びその製法は、Kabalakaら[Nucl.Med.Biol.,31,935−938(2004)]によって記載されている。放射性ヨウ素化用の好ましい前駆体は有機金属前駆体化合物からなり、最も好ましくはトリアルキルスズからなる。
【0093】
放射性ヨウ素が結合できるアリール基の例を以下に示す。
【0094】
【化14】

いずれも、芳香環上への容易な放射性ヨウ素置換を可能にする置換基を含んでいる。放射性ヨウ素を含む代わりの置換基は、(例えば、以下の式のような)放射性ハロゲン交換による直接ヨウ素化で合成できる。
【0095】
【化15】

上記のアリール基を含むように誘導体化された式Iの前駆体化合物の例を以下に示す。
【0096】
【化16】

飽和脂肪族系に結合したヨウ素原子はインビボでの代謝を受けやすく、したがって放射線ヨウ素の損失を招きやすいことが知られているので、放射性ヨウ素原子は好ましくはベンゼン環のような芳香環への直接共有結合により又はビニル基を介して結合される。
【0097】
イメージング成分がフッ素の放射性同位体である場合、放射性フッ素原子はフルオロアルキル基又はフルオロアルコキシ基の一部をなすことができる。これは、アルキルフルオリドがインビボでの代謝に耐えるからである。別法として、放射性フッ素原子は直接共有結合によってベンゼン環のような芳香環に結合できる。放射性フッ素化は、18F−フッ化物と良好な脱離基を有する前駆体(例えば、アルキルブロミド、アルキルメシレート又はアルキルトシレート)中の適当な化学基との反応を用いる直接標識によって実施できる。18Fはまた、18F(CH2)3OMs又は18F(CH2)3OBrでヒドロキシル基をO−アルキル化することによっても導入できる。18Fはまた、18F(CH2)3OH反応体でN−ハロアセチル基をアルキル化して−NH(CO)CH2O(CH2)318F誘導体を得ることによっても導入できる。アリール系に関しては、アリールジアゾニウム塩、アリールニトロ化合物又はアリール第四級アンモニウム塩からの18F−フッ化物求核置換が、アリール−18F誘導体への好適な経路である。
【0098】
以下の式Ibを有する本発明の18F標識化合物は、下記の反応図式に示すように18F−フルオロジアルキルアミンを生成させ、次いでアミド生成を行うことによって得ることができる。
【0099】
【化17】

式中、
21、X22、Y21及びsは、式Iに関して前記に定義したX1、X2、Y1及びnのそれぞれと同じであり、
LGは適当な脱離基(例えば、Cl、Br、I、OTs、OMs又はOTf)であり、 Z*は、例えば、Cl、P(O)Ph3又は活性化エステルであり、
xは0〜6である。
【0100】
別法として、18Fによる標識は、式Iの誘導体からの脱離基(上記に定義したようなLG)の求核置換によって達成できる。かかる誘導体は、本発明のインビボイメージング化合物を製造するための前駆体である。
【0101】
別の方策は、前駆体上に存在するアルキルアミド基上に脱離基(上記に定義したようなLG)を設けることである。このようにすれば、通常は核反応18O(p,n)18Fからの水溶液として得られ、次いで陽性対イオンの添加及びそれに続く水の除去によって反応性にされる[18F]−フッ化物イオン(18-)の適当な供給源との反応によって前駆体化合物を一段階で標識できる。この方法のためには、前駆体化合物は、放射性フッ素化が化合物上の特定の部位で起こるように選択的に化学保護されるのが普通である。好適な保護基は既に前述したものである。
【0102】
11C−標識PETトレーサー化合物は、前駆体を11C−ヨウ化メチルと反応させることで合成できる。11Cの半減期は20.4分にすぎないので、11C−ヨウ化メチル中間体は高い比放射能を有すること、したがってできるだけ速い反応プロセスを用いてそれを製造することが十分である。かかる11C−標識技法に関する徹底的な総説を、Antoni et al,“Aspects on the Synthesis of 11C−Labelled Compounds”in Handbook of Radiopharmaceuticals,Ed.M.J.Welch and C.S.Redvanly(2003,John Wiley and Sons)中に見出すことができる。
【0103】
下記の反応図式を使用することで、式Icの11C−標識化合物を得ることができる。
【0104】
【化18】

式中、
31、X32、Y31及びtは、式IのX1、X2、Y1及びnのそれぞれに関して前記に定義した通りであり、
**は、遷移金属触媒に適した基質(例えば、水素、ハロゲン化物、ボロン酸、OTf又は有機スズ)であり、
yは0〜6である。
【0105】
前駆体は、理想的には無菌で非発熱性の形態で供給される。したがって、前駆体は医薬組成物の製造のために使用でき、また医薬組成物製造用のキット中に一成分として含めるためにも適している。これらの態様は、本発明の追加の態様に関連して以下に一層詳しく記載される。
【0106】
本発明の方法のさらに別の好ましい実施形態では、前駆体は固相に結合されている。前駆体は、好ましくは固体担体マトリックスに共有結合した状態で供給される。このようにすれば、所望の生成物は溶液状態で生成される一方、出発原料及び不純物は固相に結合したままに保たれる。かかる系の例としては、18F−フッ化物による固相求電子フッ素化用の前駆体が国際公開第03/002489号に記載されており、18F−フッ化物による固相求核フッ素化用の前駆体が国際公開第03/002157号に記載されている。
【0107】
以下の実施例セクションには、特定の前駆体を使用する本発明の化合物の若干の製造方法が記載される。
【0108】
実施例5では、化合物12の合成に際して6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸プロピルアミドが前駆体として使用される。
【0109】
実施例14では、化合物10の合成に際して11−(2−トシルオキシエチル)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミドが前駆体として使用される。
【0110】
実施例17では、化合物11の合成に際して11−(2−ヒドロキシエチル)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミドが前駆体として使用される。
【0111】
さらに別の態様では、本発明は、本発明のインビボイメージング化合物を製造するための前駆体であって、当該前駆体が上記に定義したような式Iaのものであり、前記イメージング成分と反応し得る化学基が
(i)金属イメージング成分を錯体化できるか、
(ii)トリアルキルスタンナン又はトリアルキルシランのような有機金属誘導体からなるか、
(iii)求核置換用のアルキルハライド又はアルキルスルホネート(例えば、アルキルトシレート又はアルキルメシレート)を含む誘導体からなるか、或いは
(iv)チオール含有化合物をアルキル化してチオエーテル含有生成物を与える誘導体からなる前駆体を提供する。
【0112】
好ましくは、前記化学基はPETイメージング用に適したイメージング成分と反応し得る。かかる好ましい前駆体の例は下記の通りである。
【0113】
【化19】

ここで、化合物8Pは化合物8製造用の前駆体であり、化合物9P1及び9P2(非放射性の化合物6でもある)は化合物9製造用の前駆体であり、化合物10Pは化合物10製造用の前駆体である。
【0114】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の化合物を哺乳類への投与に適した形態の生体適合性キャリヤーと共に含んでなる医薬組成物を提供する。
【0115】
医薬組成物がイメージング成分で標識された式Iの化合物を含む場合、「生体適合性キャリヤー」は、組成物が生理学的に許容できるようにして(即ち、毒性又は過度の不快感なしに哺乳類体に投与できるようにして)化合物を懸濁又は溶解するための流体(特に液体)である。生体適合性キャリヤー媒質は、好適には、無菌の無発熱原性注射用水、(有利には注射用の最終生成物が等張性又は非低張性になるように平衡させ得る)食塩水のような水溶液、或いは1種以上の張度調整物質(例えば、生体適合性対イオンを有する血漿陽イオンの塩)、糖(例えば、グルコース又はスクロース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール又はマンニトール)、グリコール(例えば、グリセロール)又は他の非イオン性ポリオール物質(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)の水溶液のような注射可能なキャリヤー液体である。生体適合性キャリヤー媒質はまた、エタノールのような生体適合性有機溶媒からなっていてもよい。かかる有機溶媒は、親油性化合物又は配合物を可溶化するために有用である。好ましくは、生体適合性キャリヤー媒質は無発熱原性注射用水、等張食塩水又はエタノール水溶液である。静脈内注射用生体適合性キャリヤー媒質のpHは好適には4.0〜10.5の範囲内にある。
【0116】
イメージング成分で標識された式Iの化合物を含むかかる医薬組成物は、好適には、無菌保全性を維持しながら皮下注射針による1回又は数回の穿刺に適したシール(例えば、クリンプ加工した隔壁シールクロージャー)を備えた容器に入った状態で供給される。かかる容器は1回分又は複数回分の患者用量を含み得る。好ましい複数用量容器は、複数の患者用量を含む(例えば、容積10〜30cm3の)単一のバルクバイアルからなり、したがって臨床的状況に合わせて製剤の実用寿命中に様々な時間間隔で1回分の患者用量を臨床グレードの注射器に抜き取ることができる。予備充填注射器は1回分の患者用量又は「単位用量」を含むように設計され、したがって好ましくは臨床用に適した使い捨て注射器又は他の注射器である。
【0117】
好ましくは、化合物がイメージング成分で標識された式Iの化合物である場合、医薬組成物は放射性医薬組成物である。放射性医薬組成物に関しては、予備充填注射器には、施術者を放射線量から保護するための注射器シールドを任意に設けることができる。好適なかかる放射性医薬品注射器シールドは当技術分野で公知であり、好ましくは鉛又はタングステンからなっている。
【0118】
放射性医薬品は、SPECT又はPETイメージングのため、所望の信号を生じるのに十分な量で患者に投与できる。通常、典型的には体重70kg当たり0.01〜100mCi、好ましくは0.1〜50mCiの放射性核種用量が十分である。
【0119】
イメージング成分で標識された式Iの化合物を含む医薬組成物は、以下に記載するようにキットから製造できる。別法として、かかる医薬組成物を無菌製造条件下で製造することで所望の無菌生成物を得ることができる。この医薬組成物を非無菌条件下で製造し、次いで例えばγ線照射、オートクレーブ処理、乾熱又は(例えば、エチレンオキシドによる)化学処理を用いて終末滅菌を施すこともできる。好ましくは、イメージング成分で標識された式Iの化合物を含む医薬組成物はキットから製造される。
【0120】
医薬組成物が式IIの化合物を含む場合には、生体適合性キャリヤーは固体又は液体の製剤学的に許容できる無毒性キャリヤーであり得る。かかる製剤用キャリヤーは、水及び(石油系、動物系、植物系又は合成のものを含む)油(例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ごま油など)のような無菌液体であり得る。医薬組成物が静脈内に投与される場合、水が好ましいキャリヤーである。食塩水並びにデキストロース及びグリセロール水溶液も、特に注射液用の液体キャリヤーとして使用できる。好適な製剤用賦形剤には、デンプン、グルコース、乳糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどがある。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉剤、徐放性製剤などの形態を取ることができる。好適な製剤用キャリヤーは、E.W.Martinの“Remington’s Pharmaceutical Sciences”中に記載されている。かかる組成物は、ホストへの適正な投与のための形態を与えるのに適した量のキャリヤーと共に、有効治療量の化合物を含んでいる。静脈内投与が非常に有効な投与形態であるが、他の形態(例えば、経口投与)も使用できる。
【0121】
薬用量は、所要の効果及び使用する投与方法に依存する。例えば、経口経路では、それは1日当たり20〜100mgの有効物質であり、単位用量は5〜200mgである。
【0122】
さらに別の態様では、本発明は、化合物がイメージング成分で標識された式Iの化合物である医薬組成物を製造するためのキットを提供する。かかるキットは、上述のような好適な前駆体、好ましくは無菌で無発熱原性の形態にある前駆体であって、イメージング成分の無菌供給源との反応により最小数の操作で所望の医薬品が得られるような前駆体を含んでいる。かかる考慮事項は、放射性医薬品(特に、放射性同位体が比較的短い半減期を有する場合)にとって特に重要であると共に、取扱いを容易にして放射線薬剤師に対する放射線量を低減させるため特に重要である。したがって、かかるキットの再構成用の反応媒質は好ましくは上記に定義したような「生体適合性キャリヤー」であり、最も好ましくは水性のものである。
【0123】
好適なキット容器は、注射器による溶液の添加及び抜取りを許しながら、無菌保全性及び/又は放射能安全性、さらに任意には不活性ヘッドスペースガス(例えば、窒素又はアルゴン)の維持を可能にする密封容器からなっている。好ましいかかる容器は、気密クロージャーを(通例はアルミニウムからなる)オーバーシールと共にクリンプ加工した隔壁密封バイアルである。かかる容器は、例えばヘッドスペースガスの変更又は溶液のガス抜きのために所望される場合、クロージャーが真空に耐え得るという追加の利点を有している。
【0124】
固相に結合された前駆体の場合、密封容器はキットの一部として提供されるカートリッジであってよく、これは適宜に改造された自動合成装置に挿入できる。カートリッジは、固体担体に結合された前駆体とは別に、不要のフッ化物イオンを除去するためのカラム、及び反応生成物を蒸発させかつ必要に応じて生成物を処方するために連結された適当な容器を含み得る。これらのカートリッジは、11C又は18Fのような短寿命の放射性同位体で標識された本発明の化合物を製造するため特に有用である。
【0125】
キット中に使用する場合、前駆体の好ましい実施形態は上述の通りである。キット中に使用するための前駆体を無菌製造条件下で使用すれば、所望の無菌で非発熱性の材料を得ることができる。また、前駆体を非無菌条件下で使用し、次いで例えばγ線照射、オートクレーブ処理、乾熱又は(例えば、エチレンオキシドによる)化学処理を用いる終末滅菌を施すこともできる。好ましくは、前駆体は無菌で非発熱性の形態で使用される。最も好ましくは、無菌で非発熱性の前駆体は上述したような密封容器内で使用される。
【0126】
99mTcに関しては、キットは好ましくは凍結乾燥されており、99mTc放射性同位体ジェネレーターからの無菌の99mTc−過テクネチウム酸塩(TcO4-)を用いて再構成することで、それ以上の操作なしにヒトへの投与に適した溶液を与えるように設計されている。好適なキットは、未錯体化キレート剤を、製剤学的に供給できる還元剤(例えば、亜ジチオン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、ホルムアミジン、スルフィン酸、第一スズイオン、Fe(II)又はCu(I))及び弱有機酸と生体適合性陽イオンとからなる1種以上の塩と共に含む密封容器(例えば、隔壁密封バイアル)からなっている。「生体適合性陽イオン」という用語は、イオン化して負に帯電した基と共に塩を形成する正に帯電した対イオンを意味する。この場合、前記正に帯電した対イオンも無毒性であり、したがって哺乳類体(特に人体)への投与に適している。好適な生体適合性陽イオンの例には、アルカリ金属であるナトリウム及びカリウム、アルカリ土類金属であるカルシウム及びマグネシウム、並びにアンモニウムイオンがある。好ましい生体適合性陽イオンはナトリウム及びカリウムであり、最も好ましくはナトリウムである。
【0127】
キットはさらに、放射線防護剤、抗菌防腐剤、pH調整剤又はフィラーのような追加成分を任意に含むことができる。
【0128】
「放射線防護剤」という用語は、水の放射線分解から生じる含酸素遊離基のような高反応性遊離基を捕捉することで分解反応(例えば、レドックス過程)を阻止する化合物を意味する。本発明の放射線防護剤は、好適には、アスコルビン酸、p−アミノ安息香酸(即ち、4−アミノ安息香酸)、ゲンチジン酸(即ち、2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、及び生体適合性陽イオンを有するこれらの塩から選択される。「生体適合性陽イオン」及びその好ましい実施形態は、上述した通りである。
【0129】
「抗菌防腐剤」という用語は、潜在的に有害な微生物(例えば、細菌、酵母又はかび)の増殖を阻止する薬剤を意味する。抗菌防腐剤はまた、用量に応じ、多少の殺菌性を示すこともある。本発明の抗菌防腐剤の主な役割は、再構成後の放射性医薬組成物(即ち、放射性イメージング剤そのもの)中におけるこのような微生物の増殖を阻止することである。しかし、抗菌防腐剤は、再構成前の本発明の非放射性キットの1種以上の成分中における潜在的に有害な微生物の増殖を阻止するためにも任意に使用できる。好適な抗菌防腐剤には、パラベン類(即ち、メチル、エチル、プロピル又はブチルパラベン或いはこれらの混合物)、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、セトリミド及びチオメルサールがある。好ましい抗菌防腐剤はパラベン類である。
【0130】
「pH調整剤」という用語は、再構成されたキットのpHがヒト又は哺乳類への投与のために許容し得る範囲(およそpH4.0〜10.5)内にあることを保証するために有用な化合物又は化合物の混合物を意味する。好適なかかるpH調整剤には、トリシン、リン酸塩又はTRIS(即ち、トリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタン)のような製剤学的に許容できる緩衝剤、及び炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又はこれらの混合物のような製剤学的に許容できる塩基がある。コンジュゲートを酸性塩の形態で使用する場合には、pH調整剤を任意には独立のバイアル又は容器に入れて供給することができ、その結果としてキットのユーザーは多段操作の一部としてpHを調整することができる。
【0131】
「フィラー」という用語は、製造及び凍結乾燥中における材料の取扱いを容易にすることができる製剤学的に許容できる増量剤を意味する。好適なフィラーには、塩化ナトリウムのような無機塩、及びスクロース、マルトース、マンニトール又はトレハロースのような水溶性糖又は糖アルコールがある。
【0132】
本発明の化合物はインビボイメージングのために有用である。したがって、さらに別の態様では、本発明は、SPECT又はPET(これらが好ましい)及び磁気共鳴イメージング(MRI)又は光学イメージングのようなインビボイメージング方法で使用するための本発明の化合物を提供する。かかるイメージング方法は、健常被験体或いはPBRの異常発現に伴う病的状態(「PBR疾患」)を有することが知られ又は疑われる被験体においてPBRを検査するために使用できる。好ましくは、前記方法はPBR疾患を有することが疑われる被験体のインビボイメージングに関し、したがって前記疾患の診断において有用である。インビボイメージングが役に立つかかるPBR疾患の例には、神経炎症が存在するパーキンソン病、多発性硬化症、アルツハイマー病及びハンチントン病のような神経疾患がある。本発明の化合物によるイメージングが有用であり得る他のPBR疾患には、ニューロパシー性疼痛、関節炎、喘息、アテローム性動脈硬化症及び癌がある。
【0133】
本発明のこの態様はまた、被験体におけるPBR疾患のインビボ診断又はイメージングを行うための方法であって、本発明の化合物を含む医薬組成物の投与を含んでなる方法を提供する。前記被験体は好ましくは哺乳類であり、最も好ましくはヒトである。別の実施形態では、本発明のこの態様はさらに、イメージング成分で標識した式Iの化合物を含む医薬組成物を予め投与した被験体におけるPBR疾患のインビボイメージングを行うための、本発明の化合物の使用を提供する。
【0134】
「予め投与した」という用語は、臨床医の関与の下でイメージング剤を例えば静脈内注射によって患者に投与する段階が既に実施されていることを意味する。本発明のこの態様は、PBR疾患のインビボ診断イメージング用の診断薬の製造における、イメージング成分で標識した式Iの化合物の使用を含んでいる。
【0135】
さらに、本発明のこの態様は、PBR疾患のインビボ診断又はイメージング用の医薬品の製造における本発明の化合物の使用を提供する。
【0136】
式Iの化合物はまた、研究ツールとしての使用に関連して、ヒト又は動物被験体におけるPBRのインビボイメージングのために使用できる。例えば、薬物とPBRとの相互作用を調べることを可能にする競合試験を実施するために使用できる。かかる試験には、用量−占有率試験、最適治療用量の決定、候補薬物選択試験、及び対象組織中におけるPBR分布の測定がある。
【0137】
別の態様では、本発明は、PBR疾患に対処するための薬物によるヒト又は動物の身体の治療効果をモニターする方法であって、イメージング成分で標識した式Iの化合物を前記身体に投与する段階、及び前記化合物の取込みを検出する段階を含んでなる方法を提供する。前記投与及び検出は、任意ではあるが好ましくは、例えば前記薬物による治療前、治療中及び治療後に繰り返して実施される。
【0138】
さらに別の態様では、本発明は、式IIの化合物を含む医薬組成物の投与により、哺乳類(好ましくはヒト)におけるPBR疾患を治療するための方法を提供する。かかる医薬組成物の性質並びにその投与及び用量の詳細は、上記に記載されている。
【0139】
実施例の簡単な説明
実施例1は、6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(これは本発明の化合物1の非放射性バージョンである。)を得るための、Okuboらの方法に代わる合成経路を記載する。代わりの合成法は、式Iの他の化合物を得るために容易に改変できる。この方法を用いたところ、Okuboらの方法に比べて増加した収率(54%)の生成物が得られた。
【0140】
実施例2は、GがCである式IIIaのキレートの合成法を記載する。このキレートは、99mTcとの錯体を形成するために適している。
【0141】
実施例3は、実施例1のキレートを式Iの化合物にコンジュゲートして本発明の前駆体化合物を得る方法を記載する。
【0142】
実施例4は、実施例2の方法で得られた前駆体化合物を99mTcで標識して本発明の化合物を得る方法を記載する。
【0143】
実施例5は、18Fとの反応に適した前駆体化合物の合成法及び前駆体化合物を18Fで標識して化合物12を生成させる方法を記載する。
【0144】
実施例6は、11Cとの反応に適した前駆体化合物の合成法及び前駆体化合物を11Cで標識して本発明の化合物を生成させる方法を記載する。
【0145】
実施例7〜13は、本発明の化合物3〜9の非放射性バージョンを得る方法を記載する。
【0146】
実施例14は、類推によって放射性バージョンを得るために使用できる経路を通じて化合物10の非放射性バージョンを得る方法を記載する。
【0147】
実施例15は、化合物10を得るために使用される合成経路を記載する。
【0148】
実施例16は、類推によって放射性バージョンを得るために使用できる経路を通じて化合物11の非放射性バージョンを得る方法を記載する。
【0149】
実施例17は、化合物11の製造に適した方法を記載する予測例である。
【0150】
実施例18は、PBRに対する親和性に関して本発明の化合物をスクリーニングするために使用される方法を記載する。
【実施例】
【0151】
実施例1:6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(非放射性化合物1)の合成
【0152】
【化20】

a)3−フェニルスルファニル−ジヒドロフラン−2,5−ジオン:
ベンゼンチオール(9.3ml、91mmol)及び無水マレイン酸(8.9g、91mmol)のトルエン(125ml)溶液にトリエチルアミン(0.8ml)を滴下した。室温で12時間撹拌した後、溶媒を蒸発させたところ、20gの粗3−フェニルスルファニル−ジヒドロフラン−2,5−ジオンが褐色の油状物として残った。1H NMR(CDCl3):δ7.20〜7.70(5H,m)、4.20(1H,dd)、3.40(1H,dd)、2.90(1H,dd)。
【0153】
b)4−オキソ−チオクロマン−2−カルボン酸:
粗3−フェニルスルファニル−ジヒドロフラン−2,5−ジオン(20g、91mmol)をCH2Cl2(30ml)に溶解し、0℃まで冷却した。塩化アルミニウム(18.16g、136mmol)を添加し、混合物を室温で1.5時間撹拌した。反応混合物をCH2Cl2(1000ml)で希釈し、氷冷濃HCl(1000ml)中に注ぎ込んだ。相を分離し、水性相をCH2Cl2(×3)で抽出した。合わせた有機相を水で洗浄し、乾燥(MgSO4)し、蒸発させて褐色の固体にした。固体をEt2Oでトリチュレートすることで、8.98gの4−オキソ−チオクロマン−2−カルボン酸を淡褐色の固体として得た。1H NMR(DMSO):δ7.96(1H,dd)、7.20〜7.60(3H,m)、4.40(1H,dd)、3.20〜3.33(2H,m)。
【0154】
c)6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸エチルエステル:
4−オキソ−チオクロマン−2−カルボン酸(3g、14mmol)及びフェニルヒドラジン(1.4ml、14mmol)のEtOH(14ml)溶液にH2SO4(1.8ml)を添加し、混合物を15時間加熱還流した。反応物を室温まで冷却し、1晩で生成した固体を濾別し、冷EtOH及びEt2Oで洗浄することで、2.26g(51%)の6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸エチルエステルをクリーム色の固体として得た。1H NMR(CDCl3):δ8.47(1H,br s)、7.53〜7.58(1H,m)、7.10〜7.40(7H,m)、5.00(1H,s)、4.09(2H,q)、1.15(3H,t)。
【0155】
d)6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸:
KOH(1.64g、29mmol)の水(6ml)溶液をEtOH(16ml)中の6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸エチルエステル(2.26g、7mmol)に添加し、混合物を2時間加熱還流した。反応混合物を2N HClで酸性化し、EtOAcで抽出した。有機相をブラインで洗浄し、乾燥(MgSO4)し、蒸発させることで、1.65g(80%)の6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸を黄色の泡状物として得た。1H NMR(DMSO):δ12.55(1H,br s)、11.70(1H,s)、7.74〜7.82(1H,m)、7.00〜7.57(7H,m)、5.17(1H,s)。
【0156】
e)6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド:
CH2Cl2(15ml)中の6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸(1.65g、6mmol)に、ジエチルアミン(0.7ml、7mmol)、ブロモトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(2.75g、6mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(3.1ml、18mmol)を添加した。反応物を室温で3日間撹拌した。反応混合物をCH2Cl2(100ml)で希釈し、1N HCl、飽和NaHCO3溶液及びブラインで洗浄し、乾燥(MgSO4)し、蒸発させた。残留物を50%EtOAc/石油エーテルで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製することで、1.07g(54%)の6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミドを黄色の固体として得た。1H NMR(CDCl3):δ9.23(1H,s)、7.33(1H,dd)、7.20(1H,dd)、7.69〜7.08(5H,m)、6.66〜6.72(1H,m)、5.33(1H,s)、3.34〜3.76(4H,m)、1.39(3H,t)、1.37(3H,t)。
【0157】
実施例2:式IIIa(式中、G=C)のキレートの合成
(段階a):トリス(メチルオキシカルボニルメチル)メタンの製造
メタノール(200ml)中の3−(メトキシカルボニルメチレン)グルタル酸ジメチルエステル(89g、267mmol)を、(10%木炭担持パラジウム:50%水)(9g)と共に、水素ガス(3.5バール)の雰囲気下で30時間振盪した。溶液をけいそう土で濾過し、真空中で濃縮することで、3−(メトキシカルボニルメチル)グルタル酸ジメチルエステルを油状物として得た。収量(84.9g、94%)。
【0158】
NMR 1H(CDCl3):δ2.48(6H,d,J=8Hz,3xCH2)、2.78(1H,六重線,J=8Hz,CH)、3.7(9H,s,3xCH3)。
【0159】
NMR 13C(CDCl3):δ28.6(CH)、37.50(3xCH3)、51.6(3xCH2)、172.28(3xCOO)。
【0160】
(段階b):p−メトキシ−ベンジルアミンによるトリメチルエステルのアミド化
トリス(メチルオキシカルボニルメチル)メタン[2g、8.4mmol]をp−メトキシ−ベンジルアミン(25g、178.6mmol)に溶解した。装置は蒸留用として組み立て、窒素流の下で120℃で24時間加熱した。反応の進行を捕集したメタノールの量でモニターした。反応混合物を周囲温度まで冷却し、30mlの酢酸エチルを添加し、次いで沈殿したトリアミド生成物を30分間撹拌した。トリアミドを濾過によって単離し、濾過ケークを十分な量の酢酸エチルで数回洗浄して過剰のp−メトキシ−ベンジルアミンを除去した。乾燥後、4.6g(100%)の白色粉末を得た。極めて不溶性の生成物は、それ以上の精製又は特性決定を行うことなく次の段階でそのまま使用した。
【0161】
(段階c):1,1,1−トリス[2−(p−メトキシベンジルアミノ)エチル]メタンの製造
氷水浴中で冷却した1000ml三つ口丸底フラスコ内において、段階2(a)からのトリアミド(10g、17.89mmol)を250mlの1Mボラン溶液(3.5g、244.3mmolボラン)に注意深く添加した。添加の完了後、氷水浴を取り除き、反応混合物を60℃までゆっくりと加熱した。反応混合物を60℃で20時間撹拌した。反応混合物の試料(1ml)を抜き取り、0.5mlの5N HClと混合し、30分間放置した。試料に0.5mlの50NaOH、次いで2mlの水を添加し、すべての白色沈殿が溶解するまで溶液を撹拌した。溶液をエーテル(5ml)で抽出し、蒸発させた。残留物を1mg/mlの濃度でアセトニトリルに溶解し、MSによって分析した。MSスペクトル中にモノアミド及びジアミド(M+H/z=520及び534)が見られるならば、反応は完結していない。反応を完結させるためには、さらに100mlの1MボランTHF溶液を添加し、反応混合物を60℃でさらに6時間撹拌し、前記の試料採取手順に従って新たな試料を抜き取った。トリアミンへの転化が完結するまで、必要に応じて1MボランTHF溶液の追加添加を続けた。
【0162】
反応混合物を周囲温度まで冷却し、5N HClをゆっくりと添加した[注意:激しい発泡が起こる!]。HClは、それ以上のガス発生が認められなくなるまで添加した。混合物を30分間撹拌し、次いで蒸発させた。ケークをNaOH水溶液(20〜40%、1:2w/v)中に懸濁し、30分間撹拌した。次に、混合物を水(3倍容)で希釈した。次に、混合物をジエチルエーテル(2×150ml)で抽出した[注意:ハロゲン化溶媒を使用しないこと]。次に、合わせた有機相を水(1×200ml)、次いでブライン(150ml)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。蒸発後の収量:油状物として7.6g、84%。
【0163】
NMR 1H(CDCl3)、δ:1.45(6H,m,3×CH2)、1.54(1H,七重線,CH)、2.60(6H,t,3×CH2N)、3.68(6H,s,ArCH2)、3.78(9H,s,3×CH3O)、6.94(6H,d,6×Ar)、7.20(6H,d,6×Ar)。
【0164】
NMR 13C(CDCl3)、δ:32.17(CH)、34.44(CH2)、47.00(CH2)、53.56(ArCH2)、55.25(CH3O)、113.78(Ar)、129.29(Ar)、132.61(Ar)、158.60(Ar)。
【0165】
(段階d):1,1,1−トリス(2−アミノエチル)メタンの製造
1,1,1−トリス[2−(p−メトキシベンジルアミノ)エチル]メタン(20.0g、0.036mol)をメタノール(100ml)に溶解し、Pd(OH)2(5.0g)を加えた。混合物を水素化し(3バール、100℃、オートクレーブ中)、5時間撹拌した。10時間後及び15時間後にPd(OH)2をさらに2部(2×5g)に分けて添加した。
【0166】
反応混合物を濾過し、濾液をメタノールで洗浄した。合わせた有機相を蒸発させ、残留物を真空蒸留(1×10-2、110℃)して2.60g(50%)の1,1,1−トリス(2−アミノエチル)メタンを得た。
【0167】
NMR 1H(CDCl3):δ2.72(6H,t,3×CH2N)、1.41(H,七重線,CH)、1.39(6H,q,3×CH2)。
【0168】
NMR 13C(CDCl3):δ39.8(CH2NH2)、38.2(CH2)、31.0(CH)。
【0169】
(段階e):式IIIa(式中、G=C)の製造
トリス(2−アミノエチル)メタン(4.047g、27.9mmol)の乾燥エタノール(30ml)溶液に、無水炭酸カリウム(7.7g、55.8mmol、2当量)を窒素雰囲気下において室温で激しく撹拌しながら添加した。3−クロロ−3−メチル−2−ニトロソブタン(7.56g、55.8mol、2当量)の溶液を乾燥エタノール(100ml)に溶解し、この溶液75mlを反応混合物にゆっくりと滴下した。反応は、シリカプレート上のTLC[ジクロロメタン、メタノール、濃(比重0.88)アンモニア(100/30/5)で展開、TLCプレートはニンヒドリンを吹き付けて加熱することで発色させた]によって追跡した。モノ−、ジ−及びトリ−アルキル化生成物は、この順序で増加するRFで見られた。分析用HPLCは、RPR逆相カラムを使用して3%アンモニア水中7.5〜75%アセトニトリルの勾配で実施した。反応物を真空濃縮してエタノールを除去し、水(110ml)中に再懸濁した。この水性スラリーをエーテル(100ml)で抽出してトリアルキル化化合物の一部及び親油性不純物を除去し、モノアルキル化及び所望のジアルキル化生成物を水層に残した。良好なクロマトグラフィーを保証するために水溶液を酢酸アンモニウム(2当量、4.3g、55.8mmol)で緩衝化した。水溶液を4℃で一晩貯蔵した後、自動化分取用HPLCによって精製した。
【0170】
収量(2.2g、6.4mmol、23%)。
【0171】
質量分析:正イオン10Vコーン電圧。実測値:344、計算値M+H=344。
【0172】
NMR 1H(CDCl3):δ1.24(6H,s,2×CH3)、1.3(6H,s,2×CH3)、1.25〜1.75(7H,m,3×CH2,CH)、(3H,s,2×CH2)、2.58(4H,m,CH2N)、2.88(2H,t,CH22)、5.0(6H,s,NH2,2×NH,2×OH)。
【0173】
NMR 1H((CD3)2SO):δ1.1(4×CH)、1.29(3×CH2)、2.1(4H,t,2×CH2)。
【0174】
NMR 13C((CD3)2SO):δ9.0(4×CH3)、25.8(2×CH3)、31.0(2×CH2)、34.6(CH2)、56.8(2×CH2N)、160.3(C=N)。
【0175】
HPLC条件:25mmPRPカラムを用いて流量8ml/分。
【0176】
A=3%アンモニア溶液(比重=0.88)/水、B=アセトニトリル。
時間 %B
0 7.5
15 75.0
20 75.0
22 7.5
30 7.5
1回の操作当り水溶液3mlを装入し、12.5〜13.5分の時間枠で捕集する。
【0177】
実施例3:99mTc標識用の本発明の前駆体の合成
実施例2で製造したキレートを、該キレートのブリッジヘッド−CH2CH2NH2基を介して式Iの化合物のR1又はR2にコンジュゲートすることで、前駆体化合物を形成できる。
【0178】
実施例4:実施例3の前駆体の99mTc標識
99mTc標識のためには、窒素を満たしたバイアルに50μgの前駆体化合物を加え、50μLの水、150μLのグルコン酸ナトリウム溶液[6mLのH2O中に25mg]、100μLの酢酸アンモニウム(pH4.0、50mM)、1mLのTcO4溶液(500MBq)及び50μLのSnCl2溶液(100mLのH2O中に20mg)に溶解する。混合物を75℃で20分間加熱した後、ITLC及びHPLCで分析する。
【0179】
実施例5:(±)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸N−1−[18F]−プロピル−N−プロピルアミド[化合物12]の製造
(i)(±)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸プロピルアミドの製造
【0180】
【化21】

この化合物は、ジプロピルアミンをN−プロピル−N−プロピルトシレートアミンで置き換えながら、ジプロピルアミドバージョン(Okuboら(Bioorg.Med.Chem.,2004,12,3569−3580)の化合物12f)に関して記載された合成経路を用いて製造できる。
【0181】
(ii)(±)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸N−1−[18F]−プロピル−N−プロピルアミドの製造
【0182】
【化22】

適当な溶媒(アセトニトリル、DMSO、DMF、THF、ジオキサン)中の5.1.4.(±)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸プロピルアミドに塩基(LDA、NaOHなど)を添加する。この混合物に18F−フルオロプロピルブロミド(又はトシレートのような他の脱離基)を添加し、混合物を50〜100℃で5〜30分間加熱した後、HPLCで精製する。放射性ヨウ素化時には、インドールアミンの保護が必要である。
【0183】
実施例6:(±)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−[11C]カルボン酸ジプロピルアミドの製造
【0184】
【化23】

炭酸カリウムのような強塩基を用いて6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレンを脱保護し、得られた脱保護中間体を1mMの[11C]CO2と反応させることで5.1.4.(±)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−[11C]カルボン酸を生成させる。この試薬を[Christensen(Molecules,2001,6,pp47−51)によって記載されたような]カップリング試薬と反応させて活性化エステル又は混合無水物を生成させ、次いでジプロピルアミンを添加して表題化合物を得る。
【0185】
実施例7:11−メチル−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(非放射性化合物3)の製造
【0186】
【化24】

この方法は、Okuboら(上述)によって記載された「方法D」の変法である。
【0187】
100mg(0.3mmol)の6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(合成法は実施例1に記載)を3mlのDMSOに溶解した。84mg(1.5mmol)の水酸化カリウムを添加し、反応混合物を室温で30分間撹拌した。0.04ml(0.6mmol)のヨウ化メチルを室温で滴下し、反応混合物を1時間撹拌した。反応を20mlの水でクエンチし、2×20mlのエーテルで抽出した。有機相を乾燥(MgSO4)し、真空中で除去した。残留物を、酢酸エチル及びヘキサンの3:7混合物を溶離剤として用いるシリカ上のカラムクロマトグラフィーで精製した。該当する画分を合わせ、溶媒を真空中で除去することで、表題化合物を黄色の固体として得た。
【0188】
HPLC:94.3%。
【0189】
500MHz 1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):1.10(3H,m)、1.34(3H,m)、3.39〜3.70(4H,m)、4.01(3H,s)、5.14(1H,s)、7.12〜7.7.41(7H,m)、7.72(1H,d)。
【0190】
実施例8:11−イソブチル−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(非放射性化合物4)の製造
【0191】
【化25】

請求項9の方法を使用したが、イソブチル誘導体を得るためにヨウ化メチルを1−ブロモ−2−メチルプロパンで置き換えた。生成物は白色の固体として得られた。
【0192】
HPLC:91.2%。
【0193】
500MHz 1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):0.76(6H,dd)、1.10(3H,m)、1.34(3H,m)、2.16(1H,m)、3.39〜3.70(4H,m)、4.24〜4.38(2H,m)、7.12〜7.7.41(7H,m)、7.72(1H,d)。
【0194】
実施例9:11−イソプロピル−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(非放射性化合物5)の製造
【0195】
【化26】

請求項9の方法を使用したが、イソブチル誘導体を得るためにヨウ化メチルを1−ブロモプロパンで置き換えた。生成物は白色の固体として得られた。
【0196】
HPLC:90%。収率:44%。
【0197】
500MHz 1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):1.10(3H,m)、1.34(3H,m)、1.60(3H,m)、1.88(3H,m)、3.39〜3.70(4H,m)、5.07(1H,s)、5.11(1H,m)、7.10〜7.60(8H,m)。
【0198】
実施例10:11−プロプ−2−イニル−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(非放射性化合物6/化合物9P2)の製造
【0199】
【化27】

請求項9の方法を使用したが、プロプ−2−イニル誘導体を得るためにヨウ化メチルを臭化プロパルギル(トルエン中80%)で置き換えた。生成物は黄色の固体として得られた。
【0200】
HPLC:99.3%。
【0201】
500MHz 1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):1.10(3H,m)、1.34(3H,m)、2.50(1H,s)、3.39〜3.70(4H,m)、4.91〜5.06(2H,m)、5.20(1H,s)、7.11〜7.50(7H,m)、7.89(1H,d)。
【0202】
実施例11:11−(2−メチルアリル)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(非放射性化合物7)の製造
【0203】
【化28】

請求項9の方法を使用したが、2−メチルアリル誘導体を得るためにヨウ化メチルを3−ブロモ−2−メチルプロペンで置き換えた。生成物は黄色の固体として得られた。
【0204】
HPLC:99.2%。収率:41%。
【0205】
500MHz 1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):1.10(3H,m)、1.34(3H,m)、1.91(3H,s)、3.31〜3.66(4H,m)、4.61〜4.82(3H,m)、5.08(1H,s)、5.21(1H,s)、7.12〜7.53(8H,m)。
【0206】
実施例12:11−(4−フルオロブチル)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(非放射性化合物8)の製造
【0207】
【化29】

請求項9の方法を使用したが、2−フルオロブチル誘導体を得るためにヨウ化メチルをブロモフルオロブタンで置き換えた。生成物は黄色の固体として得られた。
【0208】
HPLC:96%。収率:33%。
【0209】
500MHz 1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):1.10(3H,m)、1.34(3H,m)、1.78(2H,m)、2.08(1H,m)、3.31〜3.66(4H,m)、4.40〜4.50(4H,m)、5.10(1H,s)、7.11〜7.50(7H,m)、7.89(1H,d)。
【0210】
実施例13:11−[1−(2−フルオロエチル)−1H−[1,2,3]トリゾル−4−イルメチル]−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(非放射性化合物9)の製造
【0211】
【化30】

1−アジド−2−フルオロエタンを合成するため、フルオロエチルトシレート(100mg、0.46mmol)の無水ジメチルホルムアミド(2ml)溶液にアジ化ナトリウム(90mg、1.4mmol)を窒素下において室温で添加した。混合物を24時間撹拌した。固体を濾別した後、生成物をジメチルホルムアミド溶液として調製した。それ以上の精製を行うことなく、この溶液を次の段階で使用した。
【0212】
硫酸銅(II)五水塩(1.6mg、0.007mmol)及びL−アスコルビン酸(2.5mg、0.014mmol)の水(0.1ml)溶液に、実施例10で製造したままの非放射性化合物9P2(50mg、0.134mmol)の無水ジメチルホルムアミド(1ml)溶液及び1−アジド−2−フルオロエタンのジメチルホルムアミド溶液(0.16mmol)を窒素下において室温で添加した。反応混合物を90℃で10時間撹拌した。冷却後、反応を20mlの水でクエンチし、ジクロロメタン2×20mlで抽出した。有機相を乾燥(MgSO4)し、真空中で除去した。残留物を、酢酸エチル及びヘキサンの3:7混合物を溶離剤として用いるシリカ上のカラムクロマトグラフィーで精製した。該当する画分を合わせ、溶媒を真空中で除去することで、表題化合物を黄色の固体として得た。
【0213】
500MHz 1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):1.12(3H,m)、1.40(3H,m)、2.19(2H,s)、3.38〜3.60(4H,m)、5.12(1H,s)、5.45(2H,m)、5.56(2H,m)、7.12〜7.28(5H,m)、7.44(3H,m)。
【0214】
MS:m/z=462(M+)実測値(計算質量462)。
【0215】
実施例14:11−(4−フルオロエチル)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(非放射性化合物10)の製造
【0216】
【化31】

アセチル−2−(2−ヒドロキシエチル)−2−フェニルヒドラジン(i)の合成:
1−アセチル−2−フェニルヒドラジン(2g、13.3mmol)の無水トルエン(20ml)溶液に、ブロモエタノール(1.04ml、14.6mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(2.54ml、14.6mmol)を室温で添加した。反応混合物を窒素下で40時間還流した。冷却後、反応を100mlの水でクエンチし、ジクロロメタン2×100mlで抽出した。有機相を乾燥(MgSO4)し、真空中で除去した。残留物を、溶離剤として酢酸エチル及びヘキサンの50%混合物から100%酢酸エチルまでの勾配を用いるシリカ上のフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した。該当する画分を合わせ、溶媒を真空中で除去することで、生成物を黄色の油状物として得た(収率35%)。
【0217】
GC/MS:m/z=194(M+)。
【0218】
2−(N−フェニルヒドラジノ)エタノール(ii)の合成:
アセチル−2−(2−ヒドロキシエチル)−2−フェニルヒドラジン(i)(0.5g、2.57mmol)の6N塩化水素(5ml)溶液を2時間還流した。反応物を室温まで冷却し、6N水酸化ナトリウムでpH8に塩基性化した。溶液をDCM2×50mlで抽出し、ブライン2×30mlで洗浄した。有機相を乾燥(MgSO4)し、真空中で除去した。それ以上の精製を行うことなく、残留物を次の段階で使用した。
【0219】
GC/MS:m/z=152(M+)。
【0220】
11−(2−ヒドロキシエチル)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(iv)の合成:
2−(N−フェニルヒドラジノ)エタノール(ii)(0.59g、1.9mmol)及び4−オキソ−チオクロマン−2−カルボン酸ジエチルアミド(iii)(0.5g、1.9mmol)のエタノール(10ml)溶液に濃硫酸0.5mlを添加した。反応混合物を20時間撹拌還流した。次に、それを室温まで冷却し、水50ml中に注ぎ込んだ。生じた沈殿を濾過によって集め、水(3×30ml)で洗浄した。次に、乾燥剤としてP25を使用するデシケーター内においてそれを真空下で乾燥することで、生成物である11−(2−ヒドロキシエチル)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(iv)を黄色の固体0.62gとして得た。それ以上の精製を行うことなく、これを次の段階で使用した。収率:86%。
【0221】
500MHz 1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):1.12(3H,m)、1.40(3H,m)、3.38〜3.70(4H,m)、4.05〜4.15(2H,m)、4.40(1H,m)、4.60(1H,m)、5.31(1H,s)、7.12〜7.47(7H,m)、7.90(1H,d)。
【0222】
11−(2−トシルオキシエチル)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(化合物10P)の合成:
11−(2−ヒドロキシエチル)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(iv)(100mg、0.26mmol)の無水ジクロロメタン(3ml)溶液に、トルエンスルホニルクロリド(100mg、0.52mmol)及びピリジン(0.2ml、2.6mmol)を窒素下において0℃で添加した。次に、反応混合物を室温で48時間撹拌した。20mlの水でクエンチした後、混合物をジクロロメタン2×20mlで抽出した。有機相を乾燥(MgSO4)し、真空中で除去した。残留物を、溶離剤として酢酸エチル及びヘキサンの20%混合物から40%酢酸エチルまでの勾配を用いるシリカ上のフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した。該当する画分を合わせ、溶媒を真空中で除去することで、生成物である11−(2−トシルオキシエチル)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(化合物10P)を白色の固体98mgとして得た。収率:48%。
【0223】
500MHz 1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):1.12(3H,m)、1.40(3H,m)、2.12(3H,s)、3.38〜3.60(4H,m)、4.40〜4.71(4H,m)、5.02(1H,s)、7.12〜7.27(7H,m)、7.38(1H,d)、7.42(1H,d)、7.53(1H,d)、7.75(2H,d)。
【0224】
11−(2−フルオロエチル)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(非放射性化合物10)の合成:
11−(2−トシルオキシエチル)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(化合物10P)(100mg、0.19mmol)の無水アセトニトリル(5ml)溶液に、フッ化テトラブチルアンモニウム1.0Mのテトラヒドロフラン(0.4ml)溶液を窒素下において室温で添加した。反応物を3時間撹拌した。20mlの水でクエンチした後、混合物をジクロロメタン2×20mlで抽出した。有機相を乾燥(MgSO4)し、真空中で除去した。残留物を、溶離剤として酢酸エチル及びヘキサンの20%混合物から40%酢酸エチルまでの勾配を用いるシリカ上のフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した。該当する画分を合わせ、溶媒を真空中で除去することで、生成物である11−(2−フルオロエチル)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(非放射性化合物10)を黄色の固体41mgとして得た。収率:55%。
【0225】
500MHz 1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):1.12(3H,m)、1.40(3H,m)、3.38〜3.60(4H,m)、4.56〜4.78(2H,m)、4.85〜4.98(2H,m)、5.12(1H,s)、7.12〜7.48(7H,m)、7.64(1H,d)。
【0226】
MS:m/z=383(M+)実測値(計算質量383)。
【0227】
実施例15:11−(2−[18F]フルオロエチル)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(化合物10)の製造
【0228】
【化32】

炭酸カリウム(0.3mg)、Kryptofix(登録商標)2.2.2.(1.8mg)及び無水アセトニトリル(3×0.5ml)の存在下で水性[18F]フッ化物を共沸乾燥することで無水[18F]フッ化カリウムを調製した。無水[18F]フッ化カリウム−Kryptofix(登録商標)2.2.2.錯体を含むバイアルに、11−(2−トシルオキシエチル)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(1mg、化合物10P)の無水DMSO(0.4mL)溶液を加え、反応バイアルを密封し、急速に撹拌しながら130℃で10分間加熱した。得られた反応混合物を室温まで冷却し、次いで0.5mLのHPLC移動相(アセトニトリル:水、60:40)で希釈した。得られた溶液のアリコートを分析用HPLCカラム(Phenomenex Luna 5μ、C18(2)100A 150mm×4.6mm)上に注入し、1mL/分の流量で溶出させた。表題化合物は8.5分の保持時間でカラムから溶出し、HPLC積分による標識収率は50%であった。生成物の正体は、11−(2−フルオロエチル)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミドの基準非標識試料との共溶出によって確認した。
【0229】
実施例16:11−(2−メトキシエチル)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(非放射性化合物11)の製造
【0230】
【化33】

(実施例15に記載した合成法からの)中間体iv(60mg、0.158mmol)の撹拌した無水DMSO(3ml)溶液に、水酸化カリウム(84mg、1.58mmol)及びヨードメタン(1.58mmol、0.12ml)を室温で添加した。次に、混合物を窒素下で30分間撹拌した。反応物を水50ml中に注ぎ込み、ジクロロメタン2×20mlで抽出し、ブライン2×20mlで洗浄した。有機相を乾燥(MgSO4)し、真空中で除去した。残留物を酢酸エチル/ヘキサンから再結晶した。生成物を濾別し、真空中で乾燥して黄色の固体34mgを得た。収率:55%。
【0231】
実施例17:11−(2−[11C]メトキシエチル)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(化合物11)の製造
【0232】
【化34】

11−(2−ヒドロキシエチル)−6,11−ジヒドロ−5−チア−11−アザ−ベンゾ[α]フルオレン−6−カルボン酸ジエチルアミド(実施例14の中間体iv)及び適当な塩基(例えば、水酸化カリウム、10当量)の撹拌した無水DMSO(0.4mL)溶液中にヨウ化[11C]メチルを捕捉する。反応混合物を室温又は高温で急速に撹拌することで[11C]メチル化反応を行わせる。ヨウ化[11C]メチルの消費後、反応混合物を室温まで冷却し、HPLCクロマトグラフィーで精製する。
【0233】
実施例18:本発明の化合物のスクリーニング方法
Le Furら[Life Sci.USA,33,pp449−57]の方法を改変した方法を用いて、PBRに対する親和性に関する化合物のスクリーニングを行った。
【0234】
[1%DMSOを含む50mMトリス−HCl、pH7.4、10mM MgCl2に溶解した]試験すべき化合物を、ウィスター系ラットの心臓PBRとの結合に関して0.3nM[3H]PK−11195と競合させた。反応は50mMトリス−HCl、pH7.4、10mM MgCl2中において25℃で15分間実施した。
【0235】
試験した最良の化合物に関するKi値は、1.0〜0.1nMの範囲内にあることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式Iの化合物又はその塩もしくは溶媒和物であって、当該化合物がイメージング成分で標識されている、化合物。
【化1】

式中、
1及びX2は独立に水素、ハロゲン、C1-6アルコキシ及びC1-6アルキルから選択され、
1及びR2は独立にC1-6アルキル、C1-6アミノアルキル、C1-6アルコキシアルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ヒドロキシアルキル、ポリエチレングリコール(PEG)基、C3-10シクロアルキル、C3-10シクロエーテル及びC3-10シクロアミンから選択され、
3は−A−R5基(式中、Aは任意の−(CH2)z−R6−基(式中、zは0〜6であり、R6はN、S及びOから選択される1〜3のヘテロ原子を有する五員又は六員複素環である。)であり、R5は水素、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、C1-6アルカノイル、C1-6ハロアルキル、C1-6ハロアルケニル、C1-6ハロアルキニル、C1-6ハロアルコキシ、C1-6ハロアルキルチオール、C1-6ハロアルキルスルフィニル、C1-6ハロアルキルスルホニル、C1-6ハロアルキルケトン、C1-6ハロアルキルスルフィニル、C1-6ハロアルキルスルホニル、ポリエチレングリコール(PEG)基、C1-6ヒドロキシアルキル、窒素含有C2-10アルキル及びヒドロキシから選択される置換基である。)であり、
4は水素、C1-6アルキル、C1-6アルカノイル、C1-6シクロアルキル、C1-6フルオロアルキル、ヒドロキシ又はハロゲンであり、
1はS、SO、SO2又はCH2であり、
nは0〜10である。
【請求項2】
1及びX2が共に水素であり、
1及びR2が独立にC1-6アルキル、C1-6メトキシアルキル及びC1-6アルコキシから選択され、
3が水素、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルカノイル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル又はC1-6フルオロアルキルであるか、或いはA−C1-6アルキル又はA−C1-6フルオロアルキル(式中、Aは前記に定義した通りである。)であり、
4が水素、C1-6アルキル、C1-6アセチル、C1-6シクロアルキル又はC1-6フルオロアルキルであり、
1がS、SO2又はCH2であり、
nが0である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
1及びR2が共にC1-6アルキルであり、
3が水素、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、C1-3アルカノイル、C1-3アルケニル、C1-3アルキニル又はC1-6フルオロアルキルであるか、或いはA−C1-6アルキル又はA−C1-6フルオロアルキル(式中、Aについて、R6は五員又は六員のN含有複素環である。)であり、
4が水素、C1-6アルキル又はC1-6アセチルであり、
1がS又はSO2である、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
1及びR2が共にエチルであり、
3が水素、メチル、エチル、2−メトキシエチル、プロプ−2−イニル、イソプロピル、イソブチル、2−メチルアリル、アセチル又は4−フルオロブチルであるか、或いはA−C1-6フルオロアルキル(式中、Aについて、R6は五員のN含有複素環である。)であり、
4が水素であり、
1がSである、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
イメージング成分が、以下の式Ii〜Iviの化合物のようにR1〜R4のいずれかの位置及びX1又はX2のいずれかの位置に組み込まれており、
イメージング成分が11Cである場合には、追加の組込み部位が以下の式Iviiの化合物のようにNR12に結合したカルボニル基の位置であり、
イメージング成分が放射性ヨウ素である場合には、追加の好ましい組込み部位が以下の式Iviiiのフェニル環A′の位置である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の化合物。
【化2】

【化3】

【化4】

式中、IMはイメージング成分又はイメージング成分を含む基であり、式Ii〜Iviiiの各々についてR1〜R4、X1、X2及びYは式Iに関して請求項1乃至請求項4で定義した通りである。
【請求項6】
前記イメージング成分が、
(i)放射性金属イオン、
(ii)常磁性金属イオン、
(iii)γ放出型放射性ハロゲン、
(iv)陽電子放出型放射性非金属、
(v)過分極NMR活性核、
(vi)インビボ光学イメージングのために適したレポーター、及び
(vii)血管内検出のために適したβ放射体
から選択される、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
前記イメージング成分が、99mTc、64Cu、68Ga及び111Inから選択される放射性金属イオンである、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
前記放射性金属イオンが99mTcである、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
前記イメージング成分が、123I、131I及び77Brから選択されるγ放出型放射性ハロゲンである、請求項6記載の化合物。
【請求項10】
前記γ放出型放射性ハロゲンが123Iである、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
前記イメージング成分が、11C、13N、18F及び124Iから選択される陽電子放出型放射性非金属である、請求項6記載の化合物。
【請求項12】
前記陽電子放出型放射性非金属が18Fである、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
下記の化合物から選択される、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の化合物。
【化5】

【化6】

【請求項14】
以下の式IIの化合物又はその塩もしくは溶媒和物。
【化7】

式中、
7は、R7が水素、C1-5アルキル又は窒素含有C2-10アルキル基でないことを条件にして、R3に関して請求項1乃至請求項4で定義した通りであり、
2はY1に関して請求項1乃至請求項4で定義した通りである。
【請求項15】
請求項1乃至請求項13のいずれか1項記載の化合物の製造方法であって、好都合な化学形態のイメージング成分と以下の式Iaの前駆体とを反応させる段階を含んでなる方法。
【化8】

式中、
11、X12、R13、R14及びY11は、請求項1乃至請求項4の式IのそれぞれX1、X2、R3、R4及びY1に関して定義した通りであるか、或いは独立に適当な保護基を含み、
15は、−(CH2)o−C(=C)−NR1112基(式中、o、R11及びR12は請求項1乃至請求項4の式Iのn、R1及びR2に関して定義した通りであるか、或いは適当な保護基を含む。)であり、
16は水素であるが、
ただし、X11、X12及びR11〜R16の1以上が、前記イメージング成分の適当な供給源と反応し得る化学基であって、
(i)金属イメージング成分を錯体化できるか、
(ii)トリアルキルスタンナン又はトリアルキルシランのような有機金属誘導体からなるか、
(iii)求核置換用のアルキルハライド又はアルキルスルホネート(例えば、アルキルトシレート又はアルキルメシレート)を含む誘導体からなるか、
(iv)求核又は求電子置換に向けて活性化された芳香環を含む誘導体からなるか、
(v)容易にアルキル化を受ける官能基を含む誘導体からなるか、或いは
(vi)チオール含有化合物をアルキル化してチオエーテル含有生成物を与える誘導体からなる
化学基を含むことを条件とする。
【請求項16】
前記化学基が放射性イメージング成分で標識するのに適している、請求項15記載の方法。
【請求項17】
請求項1乃至請求項13のいずれか1項記載の化合物を製造するための前駆体であって、当該前駆体が請求項14に定義したような式Iaのものであり、前記イメージング成分と反応し得る化学基が、
(i)金属イメージング成分を錯体化できるか、
(ii)トリアルキルスタンナン又はトリアルキルシランのような有機金属誘導体からなるか、
(iii)求核置換用のアルキルハライド又はアルキルスルホネート(例えば、アルキルトシレート又はアルキルメシレート)を含む誘導体からなるか、或いは
(iv)チオール含有化合物をアルキル化してチオエーテル含有生成物を与える誘導体からなる、前駆体。
【請求項18】
請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載の化合物を、哺乳類への投与に適した形態の生体適合性キャリヤーと共に含んでなる医薬組成物。
【請求項19】
請求項1乃至請求項13のいずれか1項記載の化合物を含むインビボイメージング剤である、請求項18記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記インビボイメージング剤が放射性医薬品である、請求項19記載の医薬組成物。
【請求項21】
請求項14記載の化合物を含む治療薬組成物である、請求項18記載の医薬組成物。
【請求項22】
請求項15又は16記載の方法の前駆体を含んでなるキットであって、当該キットがそれぞれ請求項19又は請求項20記載の医薬組成物の製造に適している、キット。
【請求項23】
インビボ診断又はイメージング方法で使用するための、請求項1乃至請求項13のいずれか1項記載の化合物。
【請求項24】
前記方法がPBR疾患のインビボイメージングに関する、請求項23記載の化合物。
【請求項25】
被験体におけるPBR疾患のインビボ診断又はイメージングを行うための方法であって、請求項1乃至請求項13のいずれか1項記載の化合物を含む医薬組成物の投与を含んでなる方法。
【請求項26】
請求項14又は請求項15記載の医薬組成物を予め投与した被験体におけるPBR疾患のインビボイメージングを行うための、請求項1乃至請求項13のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項27】
PBR疾患のインビボ診断又はイメージング用の医薬品の製造における、請求項1乃至請求項13のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項28】
PBR疾患に対処するための薬物によるヒト又は動物の身体の治療効果をモニターする方法であって、請求項19又は請求項20記載の医薬品を前記身体に投与する段階、及び前記医薬品の取込みを検出する段階を含んでなる方法。
【請求項29】
哺乳類におけるPBR疾患を治療するための方法であって、請求項21記載の医薬組成物の投与を含んでなる方法。

【公表番号】特表2009−515940(P2009−515940A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540699(P2008−540699)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004342
【国際公開番号】WO2007/057705
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(504000591)ハマースミス・イメイネット・リミテッド (26)
【氏名又は名称原語表記】Hammersmith Imanet Ltd
【Fターム(参考)】